(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パワータービン入口配管は、前記過給機入口配管から分岐しており、前記過給機入口配管内の排気ガスの一部を前記パワータービンへ導くように構成されている、請求項2に記載のエンジンシステム。
前記エンジン本体の負荷が上昇しているときの前記切換負荷である上昇切換負荷は、前記エンジン本体の負荷が下降しているときの前記切換負荷である下降切換負荷よりも大きく設定されている、請求項2又は3に記載のエンジンシステム。
前記エンジン本体の負荷が上昇して前記上昇切換負荷よりも大きくなったとき、前記抽気弁を閉じた後に前記開閉弁を開くように構成されている、請求項4に記載のエンジンシステム。
前記パワータービンを通過した排気ガスを排出するパワータービン出口配管をさらに備え、前記パワータービン出口配管は、前記過給機出口配管に連結されている、請求項7に記載のエンジンシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の過給機側へ排気ガスを優先的に供給するような制御が行われるエンジンシステムでは、エンジン本体から排出される排気ガスの量の変動によって最も影響を受けるのはパワータービンであり、パワータービンの設定が問題となる。例えば、パワータービンは、エンジン本体が通常運転のときに高効率となるように設定されるのが合理的であるが、この場合、通常運転時よりも多くの排気ガスが供給されると、パワータービン回転数が許容値を超えないように排気ガスの一部を捨てることになる。このような運用は、廃熱エネルギを十分回収できているとは言えない。また、当然ながら、エンジンシステムにはシステムの簡素化が求められている。
【0006】
また、パワータービン側へ排気ガスが流れないようにする制御については、上記の開閉弁を閉じて排気ガスがパワータービンに流れないようにしても、パワータービンがエンジン本体に連結されている場合は、パワータービンはエンジン本体によって駆動される。このとき、パワータービンは送風機のように働いて、気体を搬送しようとするが、上記の開閉弁が閉じていることで気体が流れなくなってしまう。そのため、パワータービンを駆動するのに大きな力が必要となり、エンジン本体に大きな負荷となってしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、廃熱エネルギを効率よく回収することができ、かつ、システムの簡素化を図ることができるエンジンシステムを提供することを目的としている。
【0008】
また、本発明は、パワータービンが排気ガスによって駆動されないときに、エンジン本体に過度の負荷が生じるのを抑えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の形態に係るエンジンシステムは、エンジン本体と、前記エンジン本体から排出された排気ガスによって駆動される過給機と、前記エンジン本体から排出された排気ガスによって駆動されるパワータービンと、前記エンジン本体から排出された排気ガスを前記過給機へ導く過給機入口配管と、排気エンジン本体から排出された排気ガスを前記パワータービンへ導くパワータービン入口配管と、を備え、前記パワータービンは入口側に設けられた可変ノズルを有し、前記エンジン本体から排出される排気ガスの量が減少したとき、前記可変ノズルの開口面積を小さくすることで、前記エンジン本体から排出される排気ガスの量に対する前記過給機に供給される排気ガスの量の割合を大きくするとともに、前記エンジン本体から排出される排気ガスの量が増加したとき、前記可変ノズルの開口面積を大きくすることで、前記エンジン本体から排出される排気ガスの量に対する前記過給機に供給される排気ガスの量の割合を小さくする排気ガス流量制御を行うように構成されている。
【0010】
通常、可変ノズルはその開口面積を変化させることで排ガス量に応じてタービン(上記の構成ではパワータービン)の効率を向上させるために用いられる。上記の構成によれば、この可変ノズルの開口面積の変化によって過給機に供給する排気ガスの量も同時に調整している。つまり、上記の構成によれば、排ガス量に応じて廃熱エネルギを効率よく回収する制御と、過給機に適切な量の排気ガスを供給する制御の両方の制御を可変ノズルによって行うことができる。よって、上記のエンジンシステムによれば、廃熱エネルギを効率よく回収することができ、かつ、システムの簡素化を図ることができる。
【0011】
上記のエンジンシステムにおいて、前記パワータービン入口配管は、前記過給機入口配管から分岐しており、前記過給機入口配管内の排気ガスの一部を前記パワータービンへ導くように構成されていてもよい。
【0012】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記エンジン本体は前記過給機で昇圧した新気を収容する掃気管を有しており、前記排気ガス流量制御は、前記掃気管内の圧力が所定の下限値よりも小さいときには前記可変ノズルの開度を小さくするとともに、前記掃気管内の圧力が所定の上限値よりも大きいときには前記可変ノズルの開度を大きくすることで行われてもよい。かかる構成によれば、掃気管内の圧力に基づいて可変ノズルが開閉されるため、より確実かつ容易に過給機へ適正な量の排気ガスを供給することができる。
【0013】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記所定の下限値及び前記所定の上限値は、前記エンジン本体の負荷が大きくなるに従って大きくなるように設定されていてもよい。かかる構成によれば、エンジン負荷に応じて、掃気管内の圧力の上限値及び下限値を適切に設定することができる。
【0014】
さらに、本発明の他の形態に係るエンジンシステムは、エンジン本体と、前記エンジン本体から排出された排気ガスによって駆動される過給機と、前記エンジン本体から排出された排気ガスによって駆動され、前記エンジン本体のクランク軸に連結されているパワータービンと、前記エンジン本体から排出された排気ガスを前記過給機へ導く過給機入口配管と、前記エンジン本体から排出された排気ガスを前記パワータービンへ導くパワータービン入口配管と、前記パワータービン入口配管に設けられ、前記エンジン本体の運転条件に応じて開閉する開閉弁と、前記パワータービン入口配管のうち前記開閉弁よりも下流側の部分に連結され、前記パワータービン入口配管から気体を抽出する抽気配管と、前記抽気配管に設けられた抽気弁と、を備え、前記エンジン本体が正回転であってかつ前記エンジン本体の負荷が所定の切換負荷よりも大きい第1条件のとき、前記開閉弁を開くとともに前記抽気弁を閉じ、前記エンジン本体が逆回転のとき又は前記エンジン本体の負荷が前記所定の切換負荷よりも小さい第2条件のとき、前記開閉弁を閉じるか又は前記第1条件における前記開閉弁の開度よりも小さい小開度とするとともに前記抽気弁を開くように構成されている。
【0015】
かかる構成によれば、パワータービンが排気ガスによって駆動されないときに、パワータービンがエンジン本体のクランク軸によって駆動されたとしても、パワータービンを通過した気体は、抽気配管から抽気されるため、パワータービンを駆動するエンジン本体にとって過度の負荷が生じるのを抑えることができる。
【0016】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記パワータービン入口配管は、前記過給機入口配管から分岐しており、前記過給機入口配管内の排気ガスの一部を前記パワータービンへ導くように構成されていてもよい。
【0017】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記エンジン本体の負荷が上昇しているときの前記切換負荷である上昇切換負荷は、前記エンジン本体の負荷が下降しているときの前記切換負荷である下降切換負荷よりも大きく設定されていてもよい。かかる構成によれば、エンジン本体の負荷が上昇するときと下降するときの異なる特性を考慮した上で、エンジンシステムを運用することができる。よって、より適切なエンジンシステムの運用が可能となる。
【0018】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記エンジン本体の負荷が上昇して前記上昇切換負荷よりも大きくなったとき、前記抽気弁を閉じた後に前記開閉弁を開くように構成されていてもよい。かかる構成によれば、抽気弁を閉じるのと同時に開閉弁を開くのではなく、抽気弁を閉じた後に開閉弁を開くため、一時的にでも抵抗の小さい流路が形成されることはなく、過給機への排気ガスの供給を安定的に行うことができる。
【0019】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記エンジン本体の負荷が下降して前記下降切換負荷よりも小さくなったとき、前記開閉弁を閉じた後に前記抽気弁を開くように構成されていてもよい。この場合も、一時的にでも抵抗の小さい流路が形成されることはなく、過給機への排気ガスの供給を安定的に行うことができる。
【0020】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記パワータービンを通過した排気ガスを排出するパワータービン出口配管をさらに備え、前記抽気配管は、前記パワータービン出口配管に連結されており、前記パワータービン入口配管から抽出した気体を前記パワータービン出口配管に排出してもよい。かかる構成によれば、パワータービンが排気ガスによって駆動されないときに、パワータービンがエンジン本体のクランク軸によって駆動されたとしても、パワータービンを通過した気体は抽気配管を含む循環流路を循環することになるため、エンジン本体に過度の負荷が生じるのを抑えることができる。
【0021】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記パワータービン出口配管のうち、前記抽気配管が連結する部分と前記パワータービンの間に連結されており、外気を前記パワータービン出口配管に取り込むことができる空気取込配管と、該空気取込配管に設けられた空気取込弁と、をさらに備え、前記第1条件のとき前記空気取込弁を閉じ、前記第2条件のとき前記空気取込弁を開くように構成されていてもよい。かかる構成によれば、上記循環流路内の気体が入れ替わるため、当該循環流路内の気体の温度が過上昇するのを抑えることができる。
【0022】
また、上記のエンジンシステムにおいて、前記過給機を通過した排気ガスを排出する過給機出口配管をさらに備え、前記抽気配管は、前記過給機出口配管に連結されており、前記パワータービン入口配管から抽出した気体を前記過給機出口配管に排出してもよい。かかる構成によれば、そもそも上記のような循環流路が形成されないため、循環流路内の気体の温度が過上昇することはない。
【0023】
さらに、本発明のある形態に係る船舶は、上記のうちいずれかのエンジンシステムを備えている。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、上記の一の形態に係るエンジンシステムによれば、廃熱エネルギを効率よく回収することができ、かつ、システムの簡素化を図ることができる。
【0025】
また、他の形態に係るエンジンシステムによれば、パワータービンが排気ガスによって駆動されないときに、エンジン本体に過度の負荷が生じるのを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態に係るエンジンシステムについて図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0028】
(第1実施形態)
<エンジンシステムの全体構成>
まず、第1実施形態に係るエンジンシステム100の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るエンジンシステム100の全体図である。
図1に示すように、本実施形態に係るエンジンシステム100は、船舶101を航行させるためのいわゆる主機であって、エンジン本体10と、過給機20と、パワータービン30と、各種配管41〜45と、各種弁51、52と、を備えている。以下、これらについて順に説明する。
【0029】
エンジン本体10は、エンジンシステム100の中心となる装置である。本実施形態のエンジン本体10は、いわゆる低速ディーゼルエンジンである。エンジン本体10は、先端にプロペラ102が取り付けられたプロペラ軸103を回転させるためのものであり、船舶101が前進する方向に推進力を発生する正回転と、船舶101が後進する方向に推進力を発生する逆回転を行うことができる。プロペラ軸103はクランク軸11に連結されており、クランク軸11は複数のピストン12に連結されている。各ピストン12はシリンダ13内での燃料の爆発に伴って往復運動し、各ピストン12の往復運動によってクランク軸11は回転する。なお、エンジン本体10には、クランク軸11の回転数、すなわちエンジン本体10の回転数を計測するエンジン回転計14が設けられている。
【0030】
また、エンジン本体10は、各シリンダ13の上流側に共通の掃気管15と、各シリンダ13の下流側に共通の排気管16を備えている。掃気管15は、過給機20で圧縮された空気を一旦溜めて各シリンダ13へ供給する。掃気管15には、掃気管15内の圧力(以下、「掃気圧」と称す)を計測する掃気圧計17が設けられている。排気管16は、シリンダ13から排出された排気ガスを一端溜めて過給機20及びパワータービン30へ供給する。エンジン本体10は、掃気管15及び排気管16を備えることで、各シリンダ13の燃焼サイクルによって生じる脈動を抑えることができる。なお、エンジン本体10の負荷(以下、「エンジン負荷」と称す)が大きくなると、それに伴ってエンジン本体10から排出される排気ガスの量も増えることになる。
【0031】
過給機20は、外部から取り込んだ空気を圧縮してエンジン本体10に供給する装置である。過給機20は、タービン部21と、コンプレッサ部22とを有している。エンジン本体10(排気管16)から排出された排気ガスは、タービン部21に供給される。タービン部21は、排気管16から供給された排気ガスのエネルギを利用して回転する。タービン部21を通過した排気ガスは過給機出口配管46を介して煙道へ導かれる。コンプレッサ部22は、連結軸23を介してタービン部21と連結されている。そのため、タービン部21が回転するのに伴って、コンプレッサ部22も回転する。コンプレッサ部22は、外部から取り込んだ空気を圧縮し、掃気管15に供給する。なお、エンジン負荷が小さいときには、エンジン本体10から排出される排気ガスの量は過給機20が必要とする量よりも少ないが、エンジン負荷が大きくなるに従ってエンジン本体10から排出される排気ガスの量は過給機20が必要とする量を超えて次第に増加していく。
【0032】
パワータービン30は、排気ガスのエネルギを利用してエンジン本体10を助勢する装置である。パワータービン30は、タービン部31と、可変ノズル32とを有している。パワータービン30に排気ガスが供給されると、タービン部31は供給された排気ガスのエネルギによって回転する。タービン部31はエンジン本体10のクランク軸11に減速機33を介して連結さており、タービン部21の回転動力が減速機33を介してクランク軸11に伝達される。なお、排気ガスによって回転するときのパワータービン30の回転方向は一定であり、エンジン本体10が正回転する場合にのみエンジン本体10を助勢することができる。
【0033】
可変ノズル32は、パワータービン30の入口側に設けられており、環状に配置された複数の可動ベーンによって主に構成されている。この可動ベーンの角度を変えることで、可変ノズル32の開口面積(開度)を調整することができる。可変ノズル32は、開度を調整することで、タービン部21への流入速度を変えてパワータービン30を効率よく運用することができる。つまり、パワータービン30に供給される排気ガスの流量が大きい場合には可変ノズル32の開度を大きくし、パワータービン30に供給される排気ガスの流量が小さい場合には可変ノズル32の開度を小さくする。一方、可変ノズル32は、開口面積が変わるのであるから「絞り」としても機能する。本実施形態において、可変ノズル32の絞りとしての機能は非常に重要である。すなわち、本実施形態では、可変ノズル32の開度を調整することで、単にパワータービン30(タービン部31)を効率よく回転させるだけでなく、過給機20に供給される排気ガスの量(エンジン本体10から排出される排気ガスの量に対する過給機20に供給される排気ガスの量の割合)を制御している(排気ガス流量制御)。
【0034】
本実施形態に係るエンジンシステム100は、過給機入口配管41、パワータービン入口配管42、パワータービン出口配管43、抽気配管44、及びエンジン入口配管45を備えている。このうち、過給機入口配管41は、排気管16と過給機20のタービン部21とをつないでおり、エンジン本体10から排出された排気ガスを過給機20へ導く配管である。また、パワータービン入口配管42は、過給機入口配管41から分岐してパワータービン30へと延びており、過給機入口配管41内の排気ガスの一部をパワータービン30へ導く配管である。また、パワータービン出口配管43は、パワータービン30の下流側に配置されており、パワータービン30を通過した排気ガスを煙道へ導く配管である。また、抽気配管44は、パワータービン入口配管42のうち後述する開閉弁51よりも下流側の部分とパワータービン出口配管43とを連結する配管である。また、エンジン入口配管45は、過給機20のコンプレッサ部22と掃気管15をつないでおり、過給機20で圧縮した空気を掃気管15へ導く配管である。
【0035】
開閉弁51は、パワータービン入口配管42に設けられた弁である。開閉弁51は、エンジン本体10が逆回転のとき(船舶101が後進するとき)、及び、エンジン負荷が小さいときに閉じられる。エンジン本体10が逆回転しているときには、パワータービン30とエンジン本体10(クランク軸11)とは互いに抵抗となる方向に回転するため、開閉弁51を閉じてパワータービン30への排気ガスの流れを止め、パワータービン30が駆動しないようにしている。また、エンジン負荷が小さいときには、エンジン本体10から排出される排気ガスの量が少ないため、全ての排気ガスを過給機20に供給しなければ、エンジン本体10の燃焼室部材の温度が上昇する。そのため、エンジン負荷が小さいときには、開閉弁51を閉じることでエンジン本体10から排出された排気ガスを全て過給機20に供給している。なお、本実施形態の開閉弁51は「開」と「閉」の2つの状態を維持できる弁であれば十分であるが、開度を調整できる弁であってもよい。
【0036】
抽気弁52は、抽気配管44に設けられた弁である。前述した開閉弁51を閉じたときパワータービン30は排気ガスによって駆動されることはないが、パワータービン30とクランク軸11は連結されているため、エンジン本体10が回転している間は、パワータービン30はクランク軸11(エンジン本体10)によって駆動される。このとき、パワータービン30は送風機のような働きをする。本実施形態では、開閉弁51を閉じたときには抽気弁52を開くことで、パワータービン30を通過した気体が循環する循環流路を形成している(循環流路形成制御)。つまり、開閉弁51が閉じたときに抽気弁52を開くことにより、エンジン本体10が正回転する場合及び逆回転する場合のいずれも、気体はパワータービン出口配管43、パワータービン30、パワータービン入口配管42、抽気配管44、パワータービン出口配管43の順に流れ、
図1でいえば反時計回りの循環流路が形成される。
【0037】
仮に、抽気配管44及び抽気弁52がなく、開閉弁51を閉じたときに循環流路が形成されない場合には、次のような問題が生じる。エンジン本体10が正回転する場合及び逆方回転する場合のいずれであっても、パワータービン30はパワータービン出口配管43内の気体をパワータービン入口配管42へ送ろうとする。しかしながら、開閉弁51が閉まっている場合には、パワータービン入口配管42内の圧力が次第に上がり、パワータービン30の前後差圧が大きくなる結果、パワータービン30を駆動することがエンジン本体10にとって大きな負荷となる。そこで、本実施形態では開閉弁51を閉じたときに循環流路を形成し、上記の問題を回避している。なお、本実施形態の場合、抽気弁52は「開」と「閉」の2つの状態を維持できる弁であれば十分であるが、開度を調整できる弁であってもよい。
【0038】
続いて、エンジンシステム100の設定について説明する。上述したように、開閉弁51が開いているときにおいては、過給機20への排気ガスの供給量は、可変ノズル32の開度によって調整される。ここで、過給機20に適正な量の排気ガスを供給するための可変ノズル32の開度を「適正量供給開度」と呼ぶこととする。また、このとき所定量の排気ガスがパワータービン30に供給されるが、その排気ガスの量がパワータービン30に流れたときに最も効率よくパワータービン30が回転できる可変ノズル32の開度を「最高効率開度」と呼ぶこととする。そうすると、本実施形態に係るエンジンシステム100は、この「適正量供給開度」と「最高効率開度」とが、いずれのエンジン負荷においてもほぼ一致するように(例えば、誤差が5%以内となるように)設定されている。つまり、いずれのエンジン負荷においても、可変ノズル32の開度を調整して過給機20に適切な量の排気ガスを供給すれば、必然的にパワータービン30が効率よく回転するようにエンジンシステム100が設定されている。なお、この設定は、パワータービン30のタービン部31のタービン翼と可変ノズル32の組合せを変えたり、過給機20のタービンノズル、タービン翼、コンプレッサホイール、コンプレッサディフューザなどの要目を変更することで行うことができる。
【0039】
<制御系の構成>
次に、エンジンシステム100のうち制御系の構成について説明する。エンジンシステム100は、エンジンシステム100全体を制御する制御装置60を備えている。制御装置60は、CPU、ROM、RAM等によって構成されている。
図2は、エンジンシステム100の制御系のブロック図である。
図2に示すように、制御装置60は、船舶101を操作する運転操作盤104、エンジン本体10の回転数を測定するエンジン回転計14、シリンダ13内への燃料の投入量を測定する燃料投入量指示計18、及び掃気圧を測定する掃気圧計17と電気的に接続されている。制御装置60は、これら各機器からの入力信号に基づいて、エンジン本体10の回転方向、エンジン回転数、燃料投入量、掃気圧といった種々の情報を取得する。
【0040】
また、制御装置60は、上記の各機器から入力信号に基づいて種々の演算等を行い、エンジンシステム100の各部を制御する。本実施形態では、制御装置60は、開閉弁51、抽気弁52、及び可変ノズル32と電気的に接続されており、各入力信号に基づいて行った演算等の結果に基づいて、開閉弁51、抽気弁52、及び可変ノズル32へ制御信号を送信する。
【0041】
さらに、制御装置60は、機能的な構成として、弁制御部61と、可変ノズル制御部62とを有している。このうち、弁制御部61は、開閉弁51及び抽気弁52の開閉を制御する部分であり、後述する循環流路形成制御を行う。一方、可変ノズル制御部62は、可変ノズル32の開度を決定する部分であり、後述する排気ガス流量制御を行う。以下、制御装置60によって行われる循環流路形成制御、及び排気ガス流量制御について順に説明する。
【0042】
<循環流路形成制御>
まず、
図3を参照して循環流路形成制御について説明する。
図3は、エンジンシステム100の制御内容を示すフローチャートである。エンジンシステム100が運転される間、制御装置60は
図3のステップS1〜S16のサイクルを繰り返す。
図3のうちステップS1〜S10が、循環流路形成制御に関する部分である。循環流路形成制御は、既に概要を説明したとおり、開閉弁51を閉じたときに抽気弁52を開くことでパワータービン30を通過した気体の循環流路を形成する制御である。
【0043】
まず、制御装置60は、各種情報を取得する(ステップS1)。具体的には、制御装置60は、各機器からの入力信号に基づいて、エンジン本体の回転方向、エンジン回転数、燃料投入量、掃気圧を取得する。
【0044】
続いて、制御装置60は、エンジン本体10が正回転であるか否かを判定する(ステップS2)。エンジン本体10が正回転の場合(ステップS2でYES)、ステップS3へ進み、エンジン本体10が逆回転の場合(ステップS2でNO)、ステップS4へ進む。このうちステップS4では、開閉弁51を閉じると同時に抽気弁52を開き、その後ステップS1へ戻る。このように、エンジン本体10が逆回転のときに開閉弁51を閉じるのは、パワータービン30とクランク軸11が互いに動力を打ち消し合うのを避けるためである。また、開閉弁51を閉じたときに抽気弁52を開くのは、上述したように、パワータービン30を通過した気体が循環する循環流路を形成してエンジン負荷を軽減するためである。
【0045】
ステップS3では、現状において、開閉弁51が閉じており、かつ、抽気弁52が開いているか否かを判定する。つまり、ステップS3では、1つ前のサイクルで開閉弁51及び抽気弁52の開閉がどう決定されたかを判定(確認)している。なお、少なくともステップS3の判定時においては、開閉弁51が開いているときは必ず抽気弁52は閉じており、開閉弁51が閉じているときは必ず抽気弁52は開いている。制御装置60は、開閉弁51が閉じており、かつ、抽気弁52が開いていると判定した場合(ステップS3でYES)、ステップS5へ進む。また、開閉弁51が開いており、かつ、抽気弁52が閉じていると判定した場合は(ステップS3でNO)、ステップS6へ進む。
【0046】
ステップS5では、エンジン本体10の回転数と燃料投入量に基づいてエンジン負荷を算出し、そのエンジン負荷が上昇切換負荷以上か否かを判定する。ステップS3において開閉弁51が閉じていると判断した結果ステップS5に進んだのであるから、少なくとも1つ前のサイクルでは開閉弁51を閉じる制御がなされたといえる。開閉弁51を閉じたのは、エンジン負荷が小さく、パワータービン30に排気ガスを供給できなかったためである。そこで、ステップS5では、エンジン負荷がパワータービン30に排気ガスを供給できないほど小さい状態のままなのか、あるいはパワータービン30に排気ガスを供給できる程度にまで上昇しているかを判定している。すなわち、ステップS5における「上昇切換負荷」は、エンジン負荷が上昇して排気ガスをパワータービン30に供給できるようになるときのエンジン負荷であり、本実施形態では例えば50%負荷(エンジン本体10の最大負荷を100%としたときの50%の負荷)に設定されている。
【0047】
ステップS5において、エンジン負荷が上昇切換負荷以上であるときは(ステップS5でYES)、排気ガスをパワータービン30に供給できるようになったときであるから、開閉弁51を開き、抽気弁52を閉じる(ステップS7)。ただし、本実施形態では、開閉弁51を閉じるのと抽気弁52を開くのを同時に行うのではなく、抽気弁52を閉じた後、一定の時間をおいてから開閉弁51を開く。仮に開閉弁51を開くのと同時に抽気弁52を閉じると、開閉弁51と抽気弁52の両方が開いた状態が一時的に発生し、パワータービン入口配管42内の気体がパワータービン30を経由せずに抽気配管44を通ってパワータービン出口配管43へ抜けるバイパス流路が形成される。この流路は抵抗が少ないため、多くの排気ガスがこの流路に流れ込む結果、過給機入口配管41を通過する排気ガスの量が低下する。これにより、過給機20から供給される空気の圧力が変動し、エンジン本体10が不安定になるおそれがある。これに対し、本実施形態では、抽気弁52を閉じた後に開閉弁51を開くことで、過給機20に流れる排気ガスの量が一気に減るのを抑えている。ステップS7を経た後は、ステップS11へ進む。
【0048】
ステップS5において、エンジン負荷が上昇切換負荷よりも小さいときは(ステップS5でNO)、引き続き排気ガスをパワータービン30へ供給できない状態のままであるから、開閉弁51が閉じて抽気弁52が開いている状態を維持する(ステップS8)。ステップS8を経た後は、ステップS1へ戻る。
【0049】
ステップS6では、ステップS1で取得したエンジン回転数と燃料投入量に基づいてエンジン負荷を算出し、そのエンジン負荷が下降切換負荷以上か否かを判定する。ステップS3において開閉弁51が開いていると判断した結果ステップS6に進んだのであるから、少なくとも1つ前のサイクルでは開閉弁51を開く制御がなされたといえる。開閉弁51を開いたのは、エンジン負荷が大きく、パワータービン30に排気ガスを供給することができたからである。これを踏まえ、ステップS6では、エンジン負荷がパワータービン30に排気ガスを供給できるほど大きい状態を維持しているのか、あるいはパワータービン30に排気ガスを供給できなくなる程度にまで低下したのかを判定している。すなわち、ステップS6における「下降切換負荷」は、エンジン負荷が下降して排気ガスをパワータービン30に供給できなくなったときのエンジン負荷であり、本実施形態では例えば45%負荷(エンジン本体の最大負荷を100%としたときの45%の負荷)に設定されている。なお、下降切換負荷と上昇切換負荷の値が異なるのは、いわゆるヒステリシスによるためである。
【0050】
ステップS6において、エンジン負荷が下降切換負荷以上であるときは(ステップS6でYES)、引き続き排気ガスをエンジン本体10へ供給できる状態を維持しているのであるから、開閉弁51が開いて抽気弁52が閉じている状態を維持する(ステップS9)。ステップS9を経た後は、ステップS11へ進む。
【0051】
ステップS6において、エンジン負荷が下降切換負荷よりも小さいときは(ステップS6でYES)、排気ガスをパワータービン30に供給できなくなったときであるから、開閉弁51を閉じ、抽気弁52を開く(ステップS10)。ただし、本実施形態では、開閉弁51を閉じるのと抽気弁52を開くのを同時に行うのではなく、開閉弁51を閉じた後、一定の時間をおいてから抽気弁52を開く。このように、開閉弁51を閉じた後に抽気弁52を開くのは、ステップS7のところで説明した理由と同じであって、過給機20に流れる排気ガスの量が一気に減るのを抑えるためである。ステップS10を経た後は、ステップS1へ戻る。
【0052】
<排気ガス流量制御>
続いて、排気ガス流量制御について説明する。
図3のステップS11〜S16が、排ガス流量制御に関する部分である。排ガス流量調整制御は、パワータービン30に設けられた可変ノズル32の開度を調整することで、過給機20に適切な量の排気ガスを供給するとともに、パワータービン30を効率的に運用する制御である。排気ガス流量制御は、ステップS7又はステップS9を経た後に行われる。すなわち、排気ガス流量制御は、開閉弁51が開いている状態のときにのみ行われる。なお、過給機20に適切な排気ガスを供給できているか否かは、掃気圧によって判断することができる。すなわち、掃気圧が所定の値よりも高いときには過給機20に供給する排気ガスの量が過剰であり、掃気圧が所定の値よりも低いときには過給機20に供給する排気ガスの量が不足していると判断することができる。
【0053】
まず、制御装置60は、適正な掃気圧の範囲を設定する(ステップS11)。ここで、
図4は、適正な掃気圧の範囲を示すグラフである。
図4の横軸はエンジン負荷であり、縦軸は掃気圧である。図中の2本の直線のうち、上の直線が上限掃気圧を示しており、下の線が下限掃気圧を示している。この2本の直線に挟まれた部分が適正な掃気圧の範囲である。例えば、
図4に示すように、エンジン負荷がL
1であったときには、下限掃気圧はP
Lとなり、上限掃気圧はP
Hとなる。下限掃気圧及び上限掃気圧は、エンジン負荷によって異なり、エンジン負荷が大きくなるに従って大きく設定される。実際のステップS11では、
図4の直線を表す数式を用いて、適正な掃気圧の範囲を算出する。
【0054】
続いて、制御装置60は、ステップS1で取得した実際の掃気圧が適正範囲内にあるか否かを判定する(ステップS12)。すなわち、実際の掃気圧がステップS11で設定した下限掃気圧よりも大きく、かつ、上限掃気圧よりも小さいか否かを判定する。掃気圧が適正範囲内にあれば(ステップS12でYES)、可変ノズル32の開度を維持し(ステップS13)、ステップS1へ戻る。可変ノズル32の開度を変更しなくとも、過給機20には適正な量の排気ガスが供給されているからである。また、上述したように、可変ノズル32の開度を調整して過給機20に適切な量の排気ガスが供給されているときには、必然的にパワータービン30が効率よく駆動される。
【0055】
一方、掃気圧が適正範囲内になければ(ステップS12でNO)、実際の掃気圧が適正範囲よりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。すなわち、実際の掃気圧が上限掃気圧よりも大きいか否かを判定する。掃気圧が適正範囲よりも大きい場合(ステップS14でYES)、可変ノズル32の開度を大きくし(ステップS15)、ステップS1へ戻る。この場合、過給機20には必要以上の排気ガスが流れているのであるから、可変ノズル32の開度を大きくして過給機20側に流れる排気ガスの量を減らす制御を行う。つまり、エンジン本体10から排出される排気ガスの量に対する過給機20に供給される排気ガスの量の割合を小さくする。また、このように制御すると、過給機20に適切な量の排気ガスを供給することになるから、必然的にパワータービン30も効率よく駆動される。
【0056】
ステップS14において、実際の掃気圧が適正範囲よりも大きくないと判定した場合(ステップS14でNO)、可変ノズル32の開度を小さくし(ステップS16)、ステップS1へ戻る。この場合、実際の掃気圧が適正範囲よりも大きくないのであるから、実際の掃気圧は適正範囲よりも小さい(下限掃気圧よりも小さい)ことになる。そうすると、過給機20には排気ガスの量が不足しているのであるから、可変ノズル32の開度を小さくして過給機20側に流れる排気ガスの量を増やす制御を行う。つまり、エンジン本体10から排出される排気ガスの量に対する過給機20に供給される排気ガスの量の割合を大きくする。また、このように制御すると、過給機20に適切な量の排気ガスを供給することになるから、必然的にパワータービン30も効率よく駆動される。
【0057】
以上のとおり、本実施形態に係るエンジンシステム100は、抽気配管44と抽気弁52を備えており、開閉弁51が閉じたときに抽気弁52を開いてパワータービン30を通過する気体の循環流路を形成するように構成されている。そのため、開閉弁51が閉じたときに、パワータービン30がクランク軸11によって駆動されたとしても、パワータービン30の前後差圧が大きくなりすぎず、エンジン本体10に過度の負荷が生じるのを抑えることができる。
【0058】
また、本実施形態に係るエンジンシステム100は、パワータービン30が有する可変ノズル32によって、パワータービン30の効率を向上させるだけでなく、過給機20へ供給する排気ガスの量を調整することができる。そのため、エンジンシステム100全体の制御及び構成の簡略化を図ることができる。
【0059】
(第1実施形態の変形例)
以上では、エンジン本体10が正回転であってかつエンジン本体10の負荷が所定の切換負荷よりも大きい(以下、「第1条件」と称す)とき開閉弁51を開き、エンジン本体10が逆回転のとき又はエンジン本体10の負荷が切換負荷よりも小さい(以下、「第2条件」と称す)とき開閉弁51を閉じる(全閉する)場合について説明した。ただし、第2条件のときには、開閉弁51を閉じるのではなく小開度としてもよい。すなわち、
図3のフローチャートのステップS3、S8の「開閉弁が閉」を「開閉弁が小開度」と読み替え、ステップS4、S8、S10の「開閉弁を閉じ」を「開閉弁を小開度とし」と読み替えた制御を行ってもよい。
【0060】
ここでいう「小開度」は、第1条件時における開閉弁51の開度よりも小さい開度であって、第1小開度と第2小開度が含まれる。第1小開度は、開閉弁51を通過した排気ガスが、パワータービン30によって搬送される状態とパワータービン30を駆動する状態の境界にあるときの開閉弁51の開度である。また、第2小開度は、第1小開度よりも小さく、循環流路にわずかに排気ガスが流入する状態のときの開閉弁51の開度である。
【0061】
前述したように、開閉弁51を閉じて抽気弁52を開けると、パワータービン30を通過した気体は循環流路を通って再度パワータービン30を通過するが、場合によっては循環流路内の気体の温度がパワータービン30からエネルギを受けて過上昇するおそれがある。一方、第2条件のときに、開閉弁51を第1小開度又はこれに近い開度にすると、循環流路内の気体がパワータービン30から受けるエネルギは減少し、環流路内の気体の温度が過上昇するのを抑えることができる。また、第2条件のときに、開閉弁51を第2小開度としたときには、排気ガスがわずかに循環流路に流れ込んで、循環流路の気体が入れ替わるため、環流路内の気体の温度が過上昇するのを抑えることができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、
図5を参照して、第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態に係るエンジンシステム200の全体図である。
図5に示すように、本実施形態に係るエンジンシステム200は、空気取込配管47と、空気取込弁53と、パワータービン出口弁54とを備えている点で、第1実施形態に係るエンジンシステム100と構成が異なる。それ以外の点は、第1実施形態に係るエンジンシステム100と基本的に同じ構成である。
【0063】
空気取込配管47は、パワータービン出口配管43のうち、抽気配管44が連結している部分とパワータービン30の間に連結されており、外気をパワータービン出口配管43に取り込めるように構成されている。また、空気取込弁53は、空気取込配管47に設けられており、その開閉は制御装置60によって制御される。さらに、パワータービン出口弁54は、パワータービン出口配管43のうち、抽気配管44が連結している部分と空気取込配管47が連結されている部分の間に設けられており、その開閉は制御装置60によって制御される。
【0064】
そして、本実施形態の循環流路形成制御では、開閉弁51を開けて抽気弁52を閉じたとき(第1条件のとき)空気取込弁53を閉じるとともに、開閉弁51を閉じて抽気弁52を開けたとき(第2条件のとき)空気取込弁53を開くように構成されている。
【0065】
本実施形態に係るエンジンシステム200は上記のように構成されているため、開閉弁51が閉じて抽気弁52が開くことで、気体がパワータービン30を通過する循環流路を循環する場合にも、外気が空気取込配管47を介してパワータービン出口配管43に取り込まれるため、循環流路の気体(空気及び排気ガス)が入れ替わり、環流路内の気体の温度が過上昇するのを抑えることができる。
【0066】
なお、パワータービン出口弁54は、開閉弁51を開けて抽気弁52を閉じたとき(第1条件のとき)には開けられ、開閉弁51を閉じて抽気弁52を開けたとき(第2条件のとき)には閉じられる。このように制御することで、空気取込配管47を介してパワータービン出口配管43に外気を取り込む際、これに伴って煙道から排気ガスが取り込まれてしまうのを防ぐことができる。これにより、環流路内の気体の温度が過上昇するのをより一層抑えることができる。
【0067】
(第3実施形態)
次に、
図6を参照して、第3実施形態について説明する。
図6は、第3実施形態に係るエンジンシステム300の全体図である。
図6に示すように、本実施形態に係るエンジンシステム300は、抽気配管44及びパワータービン出口配管43の連結位置が、第1実施形態に係るエンジンシステム100の場合と異なる。それ以外の点は、第1実施形態に係るエンジンシステム100と基本的に同じ構成である。
【0068】
本実施形態では、パワータービン出口配管43は、過給機出口配管46に連結されている。そのため、パワータービン30を通過した排気ガスは、パワータービン出口配管43及び過給機出口配管46を介して、煙道に導かれる。また、抽気配管44は、パワータービン入口配管42のうち開閉弁51よりも下流側の部分と、過給器出口配管46のうちパワータービン出口配管が連結されている部分よりも下流側の部分とを連結している。
【0069】
本実施形態に係るエンジンシステム300は、以上のように構成されているため、開閉弁51が閉じて抽気弁52を開いたとき、第1実施形態のような循環流路は形成されず、パワータービン入口配管42から抽出した気体は過給機出口配管46に排出される。そのため、パワータービン30を通過した気体が再度パワータービン30を通過することはなく、パワータービン30のエネルギによって気体の温度が徐々に上昇して過上昇となるようなことはない。
【0070】
以上、実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0071】
なお、エンジンシステムの一部の部品が破損するなどして過給機やパワータービンが危険回転数に達したり、掃気圧が危険掃気圧に達したりするような異常な場合には、以上で説明したエンジンシステムの動作が行われない場合もある。しかしながら、正常時において本発明に係る制御が行われるのであれば、そのエンジンシステムは本発明に含まれることは言うまでもない。
【0072】
実施形態に係るエンジンシステムは、パワータービンが減速機を介してクランク軸に常に連結されているが、例えば、減速機とクランク軸の間にクラッチを設け、パワータービンとクランク軸の連結を解除できるように構成されていたとしても、パワータービンとクランク軸が連結されたままであれば、開閉弁が閉じられたときには同じようにエンジン本体に過剰な負荷がかかるという問題が発生する。
【0073】
また、以上では、パワータービン入口配管が、過給機入口配管から分岐している場合について説明したが、パワータービン入口配管と過給機入口配管は独立して形成されており、それぞれが排気管から過給機へ又は排気管からパワータービンへ排気ガスを搬送するように構成されていてもよい。
【0074】
さらに、上記の実施形態では、エンジンシステムが船舶に搭載されている場合について説明したが、発電設備に用いるエンジンシステムであっても、本発明の構成を備えるのであれば当然ながら本発明に含まれる。