(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記超音波プローブの、複数のトランスデューサ素子を有する第3のアレイを用いて前記ファントムを画像化して第2の試験画像を得ること、前記基準画像と該第2の試験画像との間の第2の誤差を定量化すること、及び該第2の誤差が最小となるまで、該第3のアレイの各素子の位置を表すデータを反復的に最適化すること、をさらに含む、請求項1記載の方法。
前記第2のアレイの前記トランスデューサ素子の前記位置を表す前記データを調整することが、前記アレイの基準点の位置及び該アレイの表面の角度を調整することを含むが、該第2のアレイの該素子間の間隔を調整することを含まない、請求項4記載の方法。
前記第1の誤差を定量化するステップが、前記基準画像の反射体及び孔のパターンと前記試験画像の孔及び反射体のパターンとの間の差異を定量化することを含む、請求項1記載の方法。
前記ファントムの反射体の位置を特定するステップ、及び数学的に画定された曲線を反射体の検出されたパターンに適合させるステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
超音波プローブを校正する方法が提供され、該方法は、該超音波プローブの第1のアレイ及び第2のアレイを所定の位置に配置してファントムを画像化するステップであって、該第1及び該第2のアレイが、複数のトランスデューサ素子を有する、該ステップと、該第1のアレイを用いて該ファントムを画像化して基準画像を得るステップであって、該画像化が、該第1のアレイの各トランスデューサ素子の位置を表すデータに依存する、該ステップと、該第2のアレイを用いて該ファントムを画像化して試験画像を得るステップであって、該画像化が、該第2のアレイの各トランスデューサ素子の位置を表すデータに依存する、該ステップと、該基準画像と該試験画像との間の第1の誤差を定量化するステップと、該第1の誤差が最小となるまで、該第2のアレイの該各トランスデューサ素子の位置を表す該データを反復的に最適化するステップとを含む。
【0008】
一部の実施態様では、該方法は、該超音波プローブの、複数のトランスデューサ素子を有する第3のアレイを用いて該ファントムを画像化して第2の試験画像を得ること、該基準画像と該第2の試験画像との間の第2の誤差を定量化すること、及び該第2の誤差が最小となるまで、該第3のアレイの各素子の位置を表すデータを反復的に最適化することをさらに含む。
【0009】
一部の実施態様では、該方法は、該ファントムを該第2のアレイを用いて画像化している間に、受信した生エコーデータを保存することをさらに含む。
【0010】
一実施態様では、該反復的に最適化するステップは、該第2のアレイの該トランスデューサ素子の該位置を表す該データを調整して第1の調整された位置データを生成すること、該第1の調整された位置データを用いて該保存されたエコーデータを再ビーム形成して反射体の第2の試験画像を形成すること、該第2の試験画像と該基準画像との間の第2の誤差を定量化すること、及び該第2の誤差が該第1の誤差よりも小さいか否かを決定することを含む。
【0011】
一実施態様では、該第2のアレイの該トランスデューサ素子の該位置を表す該データを調整することは、該アレイの基準点の位置及び該アレイの表面の角度を調整することを含むが、該第2のアレイの該素子間の間隔を調整することを含まない。
【0012】
一部の実施態様では、該方法は、第1の反復的に最適化するステップの後に、第2の反復的に最適化するステップを行うことをさらに含み、該第2の反復的に最適化するステップは、該第2のアレイの少なくとも2つのトランスデューサ素子間の間隔を調整して第2の調整された位置データを生成することを含む、該第1の調整された位置データを調整すること、該第2の調整された位置データを用いて該保存されたエコーデータを再ビーム形成して該反射体の第3の試験画像を形成すること、該第3の試験画像と該基準画像との間の第3の誤差を定量化すること、及び該第3の誤差が該第2の誤差よりも小さいか否かを決定することを含む。
【0013】
一実施態様では、該トランスデューサ素子の位置データを反復的に最適化するステップは、最小二乗最適化プロセスを用いて最適化することを含む。
【0014】
他の実施態様では、該第1の誤差を定量化するステップは、該基準画像の反射体の位置と該試験画像の同じ反射体の位置との間の距離を定量化することを含む。一部の実施態様では、該第1の誤差を定量化するステップは、該基準画像の反射体と該試験画像の反射体との間の輝度の差異を定量化することを含む。追加の実施態様では、該第1の誤差を定量化するステップは、該基準画像の反射体及び孔のパターンと該試験画像の孔及び反射体のパターンとの間の差異を定量化することを含む。
【0015】
一実施態様では、該基準画像及び該試験画像は、反射体、孔、又は該反射体と該孔の両方の3次元パターンの3次元ボリューム画像である。
【0016】
他の実施態様では、該ファントムは生きた組織を含む。
【0017】
一部の実施態様では、該方法は、該ファントムの反射体の位置を特定するステップ、及び数学的に画定された曲線を反射体の検出されたパターンに適合させるステップをさらに含む。
【0018】
一実施態様では、該曲線は直線である。
【0019】
他の実施態様では、該第1の誤差を定量化するステップは、反射体のパターンに対する曲線の適合の程度を定量化する決定係数を計算することを含む。
【0020】
超音波プローブを校正する方法が提供され、該方法は、ファントムの複数の反射体を該超音波プローブを用いて超音波照射するステップ、該超音波プローブでエコーデータを受信するステップ、該エコーデータを保存するステップ、第1のトランスデューサ素子の位置データを用いて該保存されたエコーデータをビーム形成して該反射体の画像を形成するステップ、該反射体を表す基準データを得るステップ、該画像と該基準データとの間の誤差を定量化するステップ、及び該定量化された誤差に基づいて該トランスデューサ素子の位置データを反復的に最適化するステップを含む。
【0021】
一部の実施態様では、該反復的に最適化するステップは、該トランスデューサ素子の位置データを最小二乗最適化プロセスで反復的に最適化することを含む。
【0022】
一実施態様では、該反復的に最小化するステップは、該トランスデューサ素子の位置データを調整すること、該調整されたトランスデューサ素子の位置データを用いて該保存されたエコーデータを再ビーム形成して該反射体の第2の画像を形成すること、該第2の画像に基づいて第2の誤差を定量化すること、及び該第2の誤差を評価して、該調整されたトランスデューサ素子の位置データが該画像を改善するか否かを決定することを含む。
【0023】
一部の実施態様では、該トランスデューサ素子の位置データを調整することは、アレイの水平位置変数、アレイの垂直位置変数、及びアレイの角度変数を調整することを含む。他の実施態様では、該トランスデューサ素子の位置データを調整することは、共通アレイ上の隣接するトランスデューサ素子間の間隔を調整することを含まない。
【0024】
一実施態様では、該基準データは、該ファントムの物理的測定に基づいている。
【0025】
一部の実施態様では、該方法は、該ファントムの基準画像から該基準データを導出することをさらに含む。
【0026】
一実施態様では、該基準画像は、該超音波を照射するステップ及び該受信するステップに使用されたトランスデューサ素子の群とは異なる該プローブのトランスデューサ素子の群を用いて得られる。
【0027】
追加の実施態様では、該トランスデューサ素子の位置データを反復的に最適化するステップは、最小二乗最適化プロセスを用いることを含む。
【0028】
一部の実施態様では、該方法は、該ファントムの反射体の位置を特定すること、及び数学的に画定された曲線を反射体の検出されたパターンに適合させることをさらに含む。一実施態様では、該曲線は直線である。
【0029】
一部の実施態様では、該第1の誤差を定量化するステップは、該反射体のパターンに対する該曲線の適合の程度を定量化する決定係数を計算することを含む。
【0030】
超音波イメージングデータを校正する方法が提供され、該方法は、生エコーデータをメモリ装置から取り出すステップであって、該生エコーデータが複数のエコーストリングを含み、該各エコーストリングが、1つの送信開口から送信されて1つの受信素子で受信される1つの超音波ピングのエコーに対応するエコー記録の集合体を含む、ステップ、該各エコーストリングに対応する各受信トランスデューサ素子の位置を表す第1の校正データを取り出すステップ、該各エコーストリングに関連した送信ピングに対応する少なくとも1つのトランスデューサ素子の位置を表す第2の校正データを取り出すステップ、受信トランスデューサ素子の第1の群に対応するエコーストリングの第1の集合体をビーム形成することによって基準画像を形成するステップであって、ビーム形成することが、該第1及び該第2の校正データに基づいて反射体の位置を三角測量することを含む、該ステップ、該トランスデューサ素子の第1の群と同一ではないトランスデューサ素子の第2の群に対応するエコーストリングの第2の集合体をビーム形成することによって試験画像を形成するステップ、該基準画像と該試験画像との間の第1の誤差を定量化するステップ、該第1の校正データを調整して、該第2の群の素子の調整された位置を表すステップ、該第2の群の素子の調整された位置を用いて該試験画像を再ビーム形成して、第2の試験画像を得るステップ、該第2の試験画像と該基準画像との間の第2の誤差を定量化するステップ、及び新しい誤差を評価して、該第2の誤差が該第1の誤差よりも小さいか否かを決定するステップを含む。
【0031】
一部の実施態様では、該方法は、該生エコーデータを生成するために使用されるプローブに対する物理的又は電子的な接続を一切用いずに行われる。
【0032】
一部の実施態様では、該メモリ装置に接続された超音波プローブが存在しない。
【0033】
超音波プローブ校正システムが提供され、該システムは、複数の送信トランスデューサ素子及び複数の受信トランスデューサ素子を有する超音波プローブ、反射体のパターンを有するファントム、該ファントムの反射体のパターンを表す基準データを含む第1のメモリ装置、該各送信トランスデューサ素子及び該各受信トランスデューサ素子の共通座標系に対する位置を表すトランスデューサ素子の位置データを含む第2のメモリ装置、及び校正プログラムコードを含むイメージング制御システムを含み、該イメージング制御システムが、該送信トランスデューサ素子を用いて該ファントムを超音波照射し、該受信トランスデューサ素子でエコーデータを受信し、そして第3のメモリ装置にエコーデータを保存し、該トランスデューサ素子の位置データを用いて該保存されたエコーデータをビーム形成することによって該反射体のパターンの第1の画像を形成し、該第1の画像によって示される該反射体のパターンの位置を表す測定データを決定し、該測定データと該基準データとの間の誤差を定量化し、かつ該定量化された誤差に基づいて該トランスデューサ素子の位置データを反復的に最適化するように、該校正プログラムコードが構成されている。
【0034】
一部の実施態様では、該イメージング制御システムは、該トランスデューサ素子の位置データを調整すること、該調整されたトランスデューサ素子の位置データを用いて該保存されたエコーデータを再ビーム形成することによって該反射体のパターンの第2の画像を形成すること、該第2の画像に基づいて第2の誤差を定量化すること、及び該第2の誤差を評価して、該調整されたトランスデューサ素子の位置データが該画像を改善するか否かを決定することによって、該ファントムを反復的に最適化するように構成されている。
【0035】
一実施態様では、該基準データは、該ファントムの物理的測定に基づいている。
【0036】
他の実施態様では、該基準データは基準画像に基づいている。
【0037】
一部の実施態様では、該イメージング制御システムは、最小二乗最適化プロセスを用いて該トランスデューサ素子の位置データを反復的に最適化するように構成されている。
【0038】
他の実施態様では、該ファントムは、超音波信号を吸収する少なくとも1つの領域をさらに含む。
【0039】
一部の実施態様では、該超音波プローブは、複数のトランスデューサアレイを備える。別の実施態様では、該超音波プローブは、1つの連続トランスデューサアレイを備える。一実施態様では、該超音波プローブは、凹状湾曲を有するトランスデューサアレイを備える。
【0040】
一部の実施態様では、該ファントムはピンのパターンを含む。
【0041】
一実施態様では、該ファントムは生きた組織を含む。
【0042】
一部の実施態様では、該校正プログラムコードは、反射体の検出されたパターンに曲線を適合させることによって測定データを決定するように構成されている。
【0043】
一実施態様では、該校正プログラムコードは、該曲線の適合の程度を定量化する決定係数を決定することによって誤差を定量化するように構成されている。
【0044】
別の実施態様では、該第1のメモリ装置、該第2のメモリ装置、及び該第3のメモリ装置の少なくとも2つは、1つの物理的メモリ装置の論理部分である。
【0045】
(図面の簡単な説明)
本発明の新規な特徴は、特に添付の特許請求の範囲で説明する。本発明の特徴及び利点は、本発明の原理が利用されている例示的な実施態様を説明する以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照すればより良く理解できるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0060】
(詳細な説明)
様々な実施態様を、添付の図面を参照して詳細に説明する。特定の例及び実施についての言及は、例示目的であり、本発明の範囲又は特許請求の範囲を限定することを意図とするものではない。
【0061】
本明細書の様々な実施態様は、静止ファントムを用いて多数開口超音波プローブを動的に校正するためのシステム及び方法を提供する。多数開口超音波イメージングプローブの校正は、一般に、プローブの各トランスデューサ素子の音響位置を決定すること含み得る。動的校正プロセスの一部の実施態様は、一般に、反射体の既知のパターンを有する校正ファントムを画像化するステップ、ファントムについての既知の情報と画像化で得られる情報との間の誤差を定量化するステップ、及び改善されたトランスデューサ素子の位置変数を得るために、反復最適化ルーチンを行って誤差関数を最小化するステップを含み得る。次いで、このような改善されたトランスデューサ素子の位置変数を、校正されたプローブを用いる後の画像化で使用するために保存することができる。
【0062】
(イントロダクションと定義)
様々な実施態様が、様々な解剖学的構造の超音波イメージングに関連付けて本明細書で説明されるが、本明細書に図示され、説明される多くの方法及び装置を、他の用途、例えば、非解剖学的構造及び物体のイメージング及び評価にも使用することができることを理解されたい。例えば、本明細書で説明されるプローブ、システム、及び方法は、様々な機械的物体、構造的物体、又は材料、例えば、接合部、管、梁、板材、圧力容器などの非破壊試験又は評価に使用することができる。
【0063】
本明細書で使用される「超音波トランスデューサ」及び「トランスデューサ」は、超音波イメージング技術の分野の技術者が理解する通常の意味を有することができ、限定されるものではないが、電気信号を超音波信号に変換することができ、かつ/又は逆も同様に行うことができる任意の1つの構成要素を指し得る。例えば、一部の実施態様では、超音波トランスデューサは、圧電素子を含み得る。他の実施態様では、超音波トランスデューサは、容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)を含み得る。
【0064】
トランスデューサは、多数の個々のトランスデューサ素子のアレイに構成される場合が多い。本明細書で使用される「トランスデューサアレイ」又は「アレイ」という語は、一般に、共通の支持プレートに取り付けられたトランスデューサ素子の集合体を指す。このようなアレイは、1次元(1D)、2次元(2D)、1.X次元(1.XD)、又は3次元(3D)を有し得る。当業者に理解される他の次元のアレイも使用することができる。環状アレイ、例えば、同心円アレイ及び楕円アレイも使用することができる。トランスデューサアレイの素子は、アレイの最も小さい別個に機能する構成要素であり得る。例えば、圧電トランスデューサ素子のアレイの場合には、各素子は、単一の圧電結晶、又は圧電結晶の単一の機械加工ブロックとすることができる。
【0065】
本明細書で使用される「送信素子」及び「受信素子」という語は、超音波イメージング技術の分野の技術者が理解する通常の意味を有し得る。「送信素子」という語は、限定されるものではないが、電気信号が超音波信号に変換される送信機能を少なくとも瞬間的に果たす超音波トランスデューサ素子を指すこともある。同様に、「受信素子」という語は、限定されるものではないが、該素子に衝当する超音波信号を電気信号に変換する受信機能を少なくとも瞬間的に果たす超音波トランスデューサ素子を指すこともある。超音波の媒体への送信は、本明細書では「超音波照射」と呼ばれることもある。超音波を反射する物体又は構造は、「反射体」又は「散乱体」と呼ばれることもある。
【0066】
本明細書で使用される「開口」という語は、超音波信号を送信し、かつ/又は受信することができる概念的な「開口部」を指し得る。実際の実施では、開口は、単に、1つのトランスデューサ素子、又はイメージング制御電子機器によって共通の群としてまとめて管理されるトランスデューサ素子群である。例えば、一部の実施態様では、開口は、隣接する開口の素子から物理的に分離することができる物理的な素子群とすることができる。しかしながら、隣接する開口は、必ずしも物理的に分離する必要はない。
【0067】
本明細書で使用される「受信開口」、「超音波照射開口」、及び/又は「送信開口」という語は、所望の物理的視点又は開口から所望の送信機能又は受信機能を果たす個々の素子、アレイ内の素子群、又は共通のハウジング内のアレイ全体を指すために使用されることに留意されたい。一部の実施態様では、このような送信開口及び受信開口は、専用の機能を有する物理的に別個の構成要素として形成することができる。他の実施態様では、任意の数の送信開口及び/又は受信開口を、必要に応じて、動的かつ電子的に定義することができる。他の実施態様では、多数開口超音波イメージングシステムは、専用の機能の開口と動的機能の開口との組み合わせを使用することができる。
【0068】
本明細書で使用される「全開口」という語は、全てのイメージング開口の全積算サイズを指す。言い換えれば、「全開口」という語は、特定のイメージングサイクルに使用される送信素子及び/又は受信素子の任意の組み合わせにおける最も遠いトランスデューサ素子間の最大距離によって決定される1つ以上の寸法を指すこともある。従って、全開口は、特定のサイクルで送信開口又は受信開口として指定される任意の数のサブ開口から構成される。単一開口イメージング構成の場合は、全開口、サブ開口、送信開口、及び受信開口は、全て同じ寸法を有する。多数アレイプローブの場合は、全開口の寸法は、全てのアレイの寸法の合計を含み得る。
【0069】
一部の実施態様では、2つの開口が、連続アレイ上に互いに隣接して位置し得る。なお他の実施態様では、2つの開口は、少なくとも1つの素子が2つの別個の開口の一部として機能するように、連続アレイ上に互いに重ね合わせることができる。開口の位置、機能、素子の数、及び開口の物理的サイズを、特定の適用例に必要な任意の方式で動的に決定することができる。特定の適用例のこれらのパラメータに対する制約が以下に示され、かつ/又は、このような制約は当業者には明白であろう。
【0070】
本明細書で説明される素子及びアレイは、多機能であっても良い。すなわち、ある時点でのトランスデューサ素子又はアレイの送信機としての指定は、次の時点でのこれらの受信機としての即時の再指定を排除するものではない。さらに、本明細書の制御システムの実施態様は、このような指定を、ユーザーの入力、プリセットスキャン、プリセット解像度基準、又は他の自動的に決定される基準に基づいて電子的に行う能力を有する。
【0071】
本明細書で使用される「点源送信」という語は、1つの空間位置からの送信超音波エネルギーの媒体への導入を指すこともある。これは、1つの超音波トランスデューサ素子、又は1つの送信開口として一緒に送信する隣接するトランスデューサ素子の組み合わせを用いて達成することができる。点源送信開口からの1回の送信を、均一な球形波面に、又は2Dスライスを画像化する場合には該2Dスライス内の均一な円形波面に近づける。場合によっては、点源送信開口からの円形又は球形の波面の1回の送信は、本明細書では「ピング」又は「点源パルス」と呼ばれることもある。
【0072】
点源送信は、トランスデューサ素子アレイから特定の方向にエネルギーを集束させる「フェーズドアレイ送信」とはその空間的特徴の点で異なる。フェーズドアレイ送信は、目的の特定の領域への波面の照射を強める、又は誘導するようにトランスデューサ素子群の位相を順に操作する。短期間のフェーズドアレイ送信は、本明細書では「フェーズドアレイパルス」と呼ばれることもある。
【0073】
一部の実施態様では、一連の送信ピングを使用する多数開口イメージングは、第1の送信開口から点源ピングを送信して、2つ以上の受信開口の素子でエコーを受信することによって行うことができ、これらの受信開口の1つ以上が、送信開口の一部又は全ての素子を含み得る。完全な画像は、ピングの送信とエコーの受信との間の遅延時間、音速、及び送信トランスデューサ素子と受信トランスデューサ素子との相対位置に基づいて散乱体の位置を三角測量することによって形成することができる。結果として、各受信開口は、各送信ピングのエコーから完全な画像を形成することができる。一部の実施態様では、1つの時間領域フレームは、1つの送信ピングからの、2つ以上の受信開口で受信されるエコーから形成される画像を組み合わせることによって形成することができる。他の実施態様では、1つの時間領域フレームは、2つ以上の送信ピングからの、1つ以上の受信開口で受信されるエコーから形成される画像を組み合わせることによって形成することができる。一部のこのような実施態様では、多数の送信ピングは、異なる送信開口を起源とし得る。
【0074】
図1は、3アレイ多数開口超音波イメージングプローブ10及び画像化されるファントム20の一実施態様を例示している。ファントム20は、一般に、固体又は液体媒体35内の反射体30のパターンを含む。一部の実施態様では、ファントム20は、超音波信号を実質的に吸収して超音波信号をそれほど反射しない1つ以上の「孔」−領域又は物体も含み得る。プローブ10は、「n」、「j」、及び「k」(本明細書では簡略化して参照符号Ln、Lj、及びLkで示すこともある)と付された3つの送信開口を有し得る左トランスデューサアレイ12を備えて示されている。右トランスデューサアレイ14も、「n」、「j」、及び「k」(本明細書では簡略化して参照符号Rn、Rj、及びRkで示すこともある)と付された3つの送信開口を有し得る。左トランスデューサアレイ12の一部又は全ての素子は、左受信開口13として指定することもできる。同様に、右トランスデューサアレイ14の一部又は全ての素子は、右受信開口15として指定することもできる。これらの左アレイ及び右アレイに加えて、多数開口超音波プローブ10は、中心トランスデューサアレイ16を備えることができ、該トランスデューサアレイ16は、「n」、「j」、及び「k」(本明細書では簡略化して参照符号Cn、Cj、及びCkで示すこともある)と付された3つの送信開口を備えることができる。中心トランスデューサアレイ16の一部又は全ての素子は、中心受信開口17として指定することもできる。3つの開口はそれぞれ、1次元、2次元、又は3次元において、互いに離間させることができる任意の数のトランスデューサ素子を含み得ることを理解されたい。
【0075】
他の実施態様では、その他の多数開口超音波イメージングプローブも、以下に説明されるシステム及び方法を用いて校正することができる。例えば、
図2は、ファントム20の上に配置された1つの大きい(即ち、意図するイメージングの適用例の予想コヒーレント幅よりも大きい)連続湾曲アレイ18を備えた多数開口超音波プローブ55を例示している。以下の校正の方法及び装置の一部の実施態様は、
図3に例示されているような調整可能なプローブに特に有用であり得る。
図3は、ファントム20の上に配置された調整可能な多数開口超音波プローブ11を例示している。
図4Aは、経食道配置及びイメージングのためのサイズ及び構成の、内視鏡104の遠位端部に配置された1つ以上のトランスデューサアレイ102を備える多数開口超音波プローブ100を例示している。
図4Bは、経直腸配置及びイメージングのためのサイズ及び構成の、1つ以上のトランスデューサアレイ112及びハウジング114を備える多数開口超音波プローブ110を例示している。
図4Cは、それぞれ静脈内配置及びイメージングのためのサイズ及び構成にすることができる、1つ以上のトランスデューサアレイ122及びカテーテル126の遠位端部に配置されたハウジング124を備えた多数開口超音波プローブ120を例示している。
図4Dは、経膣配置及びイメージングのためのサイズ及び構成の、1つ以上のトランスデューサアレイ132及びハウジング134を備える多数開口超音波プローブ130を例示している。
図4Eは、湾曲した解剖学的構造、例えば、腕及び脚に配置するためのサイズ及び構成の、連続湾曲トランスデューサアレイ142、ハウジング144、及び側面に取り付けられたケーブル416を備える多数開口超音波プローブ140を例示している。
図4Fは、2つの軸を中心に凹状湾曲を有し得る大きい円形アレイ152を備えた多数開口超音波プローブ150を例示している。
図4Fのプローブ及び他のプローブは、直交軸に沿った実質的に変位したトランスデューサ素子を備えることができる。このようなプローブは、3次元ボリュームからエコーデータを直接得るのに特に適し得る。これら又は他の超音波プローブ(単一開口超音波プローブを含む)はいずれも、本明細書のシステム及び方法を用いて校正することができる。
【0076】
本明細書で使用される「ファントム」という語は、超音波プローブによって画像化される任意の実質的に静止している物体を指し得る。例えば、超音波検査者の訓練用に設計された任意の数のファントムが、医療機器の様々な供給者、例えば、Gammex, Inc.(gammex.com)によって広く販売されている。一部の市販のファントムは、画像化されるべき物体、例えば、特殊又は一般的なヒト組織のイメージング特性に似るように形成されている。このような特性は、以下にさらに説明される本発明の様々な実施態様に必要な場合もあるし、必要でない場合もある。「ファントム」という語は、実質的に静止した反射体を備える他の物体、例えば、実質的に静止した強力な反射体を備えるヒト又は動物の体の領域も含み得る。物体は、本明細書に説明される校正プロセス用のファントムとして使用されるファントムとして専用に形成する必要はない。
【0077】
図1を参照すると、多数開口イメージングプロセスの例示的な一実施態様では、第1の送信開口Lnから第1のピングを送信して、左受信開口13で第1のピングのエコーを受信することによって第1の画像を形成することができる。第2の画像は、右受信開口15で受信される第1のピングのエコーから形成することができる。第3及び第4の画像は、第2の送信開口Ljから第2のピングを送信して、左受信開口13及び右受信開口15で第2のピングのエコーを受信することによって形成することができる。一部の実施態様では、次いで、4つ全ての画像を組み合わせて1つの時間領域フレームを形成することができる。他の実施態様では、1つの時間領域フレームは、任意の数の送信開口によって送信される任意の数のピングからの、任意の数の受信開口で受信されるエコーから得ることができる。次いで、時間領域画像フレームを、連続動画としてディスプレイ画面上に連続的に表示することができる。静止画も、任意の上記の技術を用いて形成することができる。
【0078】
一部の実施態様では、受信開口の幅は、散乱体から受信開口の各素子までのどの経路でも音速が同じであるという仮定によって限定することができる。十分に狭い受信開口では、この仮定の単純化は許容範囲である。しかしながら、受信開口の幅が広くなると、変曲点に達し(本明細書では「最大コヒーレント開口幅」又は「コヒーレント幅」と呼ばれる)、エコーの戻り経路が、音速が異なる様々な種類の組織を通過しなければならない。この差異が180度を超える位相シフトとなると、最大コヒーレント受信開口幅を超える追加の受信素子は、画像を向上させるのではなく、実際には画像を劣化させることになる。コヒーレント幅は、目的とするイメージングの適用例によって異なり、事前に予測することは不可能ではないにしても困難である。
【0079】
従って、最大コヒーレント幅よりも広い全開口幅を有する広幅プローブを使用するために、全プローブ幅を、多数の開口に物理的又は理論的に分割することができ、分割される各開口は、最大コヒーレント開口幅よりも狭い幅に限定して、受信信号の位相相殺を回避する十分に小さい大きさにすることができる。最大コヒーレント幅は、患者によって、及び同じ患者でもプローブ位置によって異なり得る。一部の実施態様では、所与のプローブシステムに対して妥当な幅を決定することができる。他の実施態様では、多数開口超音波イメージング制御システムを、動的アルゴリズムを用いて構成して、多数開口の利用可能な素子を、著しい位相相殺を回避するために十分に小さい群にさらに分割することができる。
【0080】
一部の実施態様では、最大コヒーレント幅よりも狭い幅の開口に素子をグループ分けするときに、さらなるデザインの制約を満たすことが困難になる、又は不可能になるであろう。例えば、非常に狭い領域に対して物質の種類が多すぎると、最大コヒーレント幅よりも狭くなるように十分に小さい開口を形成することは実現困難であろう。同様に、システムが、かなりの深さで非常に小さい標的を画像化するようにデザインされると、最大コヒーレント幅よりも幅の広い開口が必要になり得る。このような場合、最大コヒーレント幅よりも幅の広い受信開口は、異なる経路に沿った音速の差異を考慮するためにさらなる調整又は補正を行うことができるようにすることにより達成することができる。このような音速の調整の一部の例が本明細書に記載されている。
【0081】
点源送信イメージング技術(ピングベースイメージングとも呼ばれる)を用いる多数開口プローブでは、各画像画素は、受信エコーデータをビーム形成して、多数の各送信開口からの、多数の各受信開口で受信されるエコーからの情報を組み合わせることによって構築することができる。点源送信を用いる多数開口イメージングの一部の実施態様では、受信ビーム形成は、検査される物体の散乱体から受信トランスデューサ素子に戻る時間遅延エコーを合計することによって再構成画像の画素を形成することを含む。この時間遅延は、プローブ素子の幾何学的形状及び画像化される媒体を通る音速の仮定値によって決定することができる。
【0082】
1つの反射体の位置は、送信トランスデューサ素子(複数可)の位置に第1の焦点を有し、かつ受信トランスデューサ素子の位置に第2の焦点を有する楕円上にある。いくつかの他の可能な反射体が同じ楕円上に存在するが、同じ反射体のエコーは、受信開口の他の各受信トランスデューサ素子によっても受信される。各受信トランスデューサ素子の僅かに異なる位置は、各受信素子が、所与の反射体に対してやや異なる楕円を画定することを意味する。共通の受信開口の全ての素子の楕円をコヒーレント加算することによる結果の累積は、反射体の楕円の交差、従って、反射体を表す画素を表示する点に向かって収束することを示す。従って、任意の数の受信素子によって受信されるエコーの振幅を各画素値に組み合わせることができる。他の実施態様では、実質的に同じ画像に到達するように計算を異なる方式で行うことができる。
【0083】
各送信素子及び受信素子の位置が、ピングベース超音波イメージング中に画像の形成で重要な役割を果たすため、ピングベースイメージングから形成される画像の質は、トランスデューサ素子の相対位置を表す情報の精度によって実質的に決まる。
【0084】
別個の受信素子によって受信されるエコー信号の組み合わせに様々なアルゴリズムを使用することができる。例えば、一部の実施態様は、エコー信号を個々に処理し、各エコー信号をその楕円に沿った全ての可能な位置にプロットし、次いで、次のエコー信号に進むことができる。あるいは、各画素位置を個々に処理し、次の画素位置に進む前にその画素位置に寄与する可能性がある全てのエコーを特定して処理することができる。
【0085】
同じ又は異なる点源(又は多数の異なる点源)から送信される、1つ以上の後の送信ピングからビームフォーマーによって形成される画像を組み合わせることによって、画質をさらに改善することができる。2つ以上の受信開口によって形成される画像を組み合わせることによって、画質のなおさらなる改善を達成することができる。重要な検討事項は、異なるピング、異なる送信点源、又は異なる受信開口からの画像の加算が、コヒーレント加算(位相感受性)であるか、又はインコヒーレント加算(位相情報を考慮しない信号の大きさの加算)であるかである。
【0086】
一部の実施態様では、一連の送信ピングを用いる多数開口イメージングは、第1の送信開口から点源ピングを送信して、1つ以上の受信開口(送信開口と重複し得る)の素子でエコーを受信することによって行うことができる。完全な画像は、送信と受信エコーとの間の遅延時間、及び各受信素子の各点源送信開口に対する既知の位置に基づいて散乱体の位置を三角測量することによって形成することができる。結果として、完全な画像は、各送信ピングのエコーからの、各受信開口で受信したデータから形成することができる。
【0087】
ピングと受信開口の様々なユニークな組み合わせから得られる画像を、本明細書では画像層と呼ぶことがある。多数の画像層を組み合わせて、最終組み合わせ画像の全体の質を改善することができる。従って、一部の実施態様では、画像層の数は、受信開口の数と送信開口の数との積とすることができる(この場合、「送信開口」は、1つの送信素子又は一群の送信素子とすることができる)。他の実施態様では、同じピングイメージングプロセスも、1つの受信開口を用いて行うことができる。
【0088】
(ファントムの校正の実施態様)
ファントムを用いる超音波プローブ校正法の一部の実施態様は、一般に、いくつかの既知のベースライン基準データを用いてファントムを特徴付けるステップ、次に、校正されるべきプローブを用いてファントムを画像化するステップを含む。次いで、既知の基準データと形成される画像から得られるデータとの間の誤差を定量化することができ、反復最適化ルーチンを使用して、改善されたトランスデューサ素子の位置情報を得ることができる。次いで、このような改善されたトランスデューサ素子の位置変数を、校正されたプローブを用いる後のイメージングで使用するために保存することができる。
【0089】
図1は、多数開口プローブの校正に使用することができるファントム20の一実施態様を例示している。一部の実施態様では、多数開口プローブを校正するためのファントム20は、一定で既知の音速を有する固体、液体、又はゲル材料35内で2次元パターンに配置された複数の反射体30を含み得る。反射体は、任意の材料、例えば、プラスチック、金属、木材、セラミック、又は周囲の媒体よりも超音波の反射率が実質的に高い任意の他の固体材料から形成することができる。
【0090】
一部の実施態様では、反射体30は、校正プロセスを容易にするために選択される特徴を有し得るパターンでファントム20内に配置することができる。例えば、非反復反射体パターンでは、校正プロセスが、混乱することなく反射体の画像化位置を認識することができる。例えば、完全な格子パターンは、該パターンの各部分が、全格子位置が1つずれるだけで同一に複製されるため、高度に反復的である。一部の実施態様では、反射体のパターンは、Y軸47に沿って変位した多数の反射体にほぼ等しいX軸46に沿って変位した多数の反射体も含み得る。従って、一部の実施態様では、十字型又はプラス記号のパターンを使用することができる。他の実施態様では、反射体は、ランダムに配置しても良いし、又は他のパターン、例えば、X型、アスタリスク、日輪型、螺旋、もしくは任意の他のパターンに配置しても良い。
【0091】
一部の実施態様では、反射体は、z方向48に深度又は識別可能な細部も有し得る。例えば、反射体30は、z方向48に沿った長手方向軸を有するロッドとすることができる。あるいは、反射体は、実質的に球形又は均一な3次元形状とすることができる。他の実施態様では、交差するワイヤ又はロッドの構成を使用して、ファントム内の3次元空間に識別可能なパターンを形成することができる。
【0092】
校正ファントム20内の反射体30は、所望に応じて任意のサイズ又は形状にすることができる。一部の実施態様では、反射体30は、使用される超音波信号の波長とほぼ同じ大きさの円の直径を有し得る。一般に、小さい反射体ほど、優れた校正を行うことができるが、一部の実施態様では、反射体の正確なサイズは、必ずしも重要な因子ではない。一部の実施態様では、ファントム内の全ての反射体30は、互いに同じサイズにすることができ、他の実施態様では、反射体30は、様々なサイズにすることができる。
【0093】
一部の実施態様では、ファントム20内の反射体の物理的なサイズ及び位置は、ファントムの形成の前、最中、もしくは後でのファントムの機械的な測定によって(又は他の方法、例えば、既知の校正システムを用いる光測定もしくは超音波測定によって)決定することができる。次いで、反射体の位置の基準データを、校正プロセスを行うソフトウェア又はファームウェアがアクセス可能なメモリ装置に反射体の位置情報を保存することによって得ることができる。このような基準データは、ファントム内の反射体及び/又は孔についての情報、例えば、位置、サイズ、向き、構成、又は他の情報を含み得る。基準データは、基準画像として、又は一連のデータ点として表す又は保存することができる。あるいは、基準データは、基準超音波画像から取り出すことができる。
【0094】
一部の実施態様では、ファントムの基準画像は、十分に校正されていることが分かっているプローブ又はプローブ内のアレイを用いて得ることができる。他の実施態様では、ファントムの基準画像は、プローブの選択された素子群を用いて得ることができる。次いで、反射体のサイズ及び/又は位置情報を、プローブの残りの素子又は別のプローブの校正に使用される基準画像から決定することができる。
【0095】
従って、一部の実施態様では、基準画像は、以前に決定された反射体の位置データをメモリ装置から取り出すことによって得ることができる。他の実施態様では、基準画像は、プローブ内の素子のサブセット又は全素子を用いてファントムを画像化することによって得ることができる。一部の実施態様では、仮定最大コヒーレント幅(上記説明された)以下の開口を用いて基準画像を得ることが望ましいであろう。これにより、異なる超音波経路に沿った音速の変動を補正しなくても、基準画像を形成することが可能となる。ファントムが、均一の音速(反射体及び/又は孔を除く)を有することが分かっている場合は、コヒーレント幅は、多数開口プローブの全開口全体と同じ大きさにすることができる。このような実施態様では、意図するイメージングの適用例のコヒーレント幅よりも小さい受信開口を用いて基準画像を得ることは、開始点として有用であり得る。
【0096】
例えば、
図1に示されているような3アレイプローブを校正する場合、基準画像は、唯1つのアレイ(例えば、中心アレイ16、左アレイ12、又は右アレイ14)を用いてファントム20を画像化することによって得ることができる。他の実施態様では、例えば、
図2に示されているような連続凸状トランスデューサアレイ19を用いてプローブを校正する場合、基準画像は、アレイのトランスデューサ素子の少数の群のみを用いてファントム20を画像化することによって得ることができる。例えば、湾曲アレイの中心に近い素子の群を、基準画像を得るための送信素子及び/又は受信素子として使用することができる。同様に、基準画像は、
図3に示されているような調整可能なプローブ11の1つの調整可能なアレイ19を用いて得ることができる。基準画像は、同様の方式で任意の多数開口超音波イメージングプローブを用いて得ることができる。
【0097】
例えば、
図2に示されているように、一部の実施態様では、ファントムは、プローブ保持部50を備えるエンクロージャ内に取り付けることができる。取り付けブラケット52を、校正プロセス中にプローブ55をファントム20に対して一定の位置に確実に保持するために設けることもできる。任意の機械的なブラケットを使用することができる。一部の実施態様では、結合ゲル及び/又はゲルもしくは流体充填スタンドオフ42を使用して、超音波信号が通過する連続媒体を形成することができる。結合ゲル及び/又はスタンドオフ42は、ファントム媒体とほぼ同じ音速を有するべきである。一部の実施態様では、スタンドオフ42は、液体又はゲル充填バッグとすることができる。
【0098】
図5Aは、特定の形状のプローブを受容するように設計された複数の受容スロット310を有するドッキングセクション342を含む代替の構成を例示している。ドッキングセクション342は、ファントム20の材料と同じ材料から形成することができる。あるいは、ドッキングセクション342は、ファントム20と同じ音速特性を有する材料から形成することができる。
図5Bに例示されているように、多数のプローブ受容スロット310を1つのドッキングセクション342に設けることができる。様々な実施態様では、各プローブ受容スロット310は、1つ以上の特定の超音波プローブを受容するサイズ、形状、及び構成にすることができる。
【0099】
図6は、ファントムを用いて多数の開口プローブを校正するプロセス400の一実施態様を例示する工程系統図である。一般に、プロセス400の一部の実施態様は、ファントムについての既知の情報(例えば、反射体又は孔の位置、サイズなど)を特徴付ける基準データを得るステップ402、試験送信(TX)開口を用いてファントムを超音波照射するステップ404、試験受信(RX)開口でエコーを受信するステップ405、受信したエコーデータを少なくとも一時的に保存するステップ406、エコーデータをビーム形成することによって反射体の試験画像を形成するステップ408、形成した画像と基準データとの比較に基づいて誤差関数を決定するステップ412、及び誤差関数を最小化して414、改善されたトランスデューサ素子の位置変数を得るステップ416を含み得る。得られる改善された素子の位置情報を、ビーム形成プロセスでの後の使用のためにメモリ装置に保存することができる。次いで、ステップ404〜416を、プローブの追加の送信開口及び/又は開口のそれぞれに対して繰り返すことができ、プローブ内の送信開口及び/又は受信開口のそれぞれにおける各トランスデューサ素子の位置を、共通の座標系に対して決定することができる。
【0100】
一部の実施態様では、プロセス400は、ソフトウェア又はファームウェアで完全に自動化することができる。他の実施態様では、少なくとも一部のステップは、人間の関与、例えば、得られた画像と基準画像との間の誤差の確認又は定量化を伴い得る。他の実施態様では、人間の使用者も、得られる画像が「十分良好である」かどうか、又は校正プロセスが反復もしくは継続されるかどうかを決定する際に必要とされ得る。
【0101】
様々な実施態様では、プロセス400を使用して、1つ以上の試験送信開口、1つ以上の試験受信開口、又は両方の位置を校正することができる。どのタイプの開口を校正するかの選択は、因子、例えば、プローブの構造、送信開口もしくは受信開口の数、又は他の因子に基づくことができる。校正プロセスに使用される試験送信開口及び試験受信開口の定義は、プローブを用いた通常の画像化に使用される開口の定義と同じにすることができるが、必ずしも同じにする必要はない。従って、本明細書で使用される「試験開口」という熟語は、特段の記載がない限り、送信試験開口又は受信試験開口のいずれかを指し得る。
【0102】
一部の実施態様では、
図6のプロセス400の最中に使用される試験送信開口及び試験受信開口は、実質的に互いに近接させることができる。例えば、一部の実施態様では、試験送信開口及び試験受信開口は、互いに対して、意図するイメージングの適用例の予想コヒーレント幅の範囲内にすることができる。例えば、一部の実施態様では、受信開口は、共通のアレイ上の全ての素子(例えば、共通のバッキングブロック(backing block)を共有する素子)を含み得る。あるいは、受信開口は、2つ以上の別個のアレイの素子を含み得る。さらなる実施態様では、受信開口は、大きい連続アレイに沿ったトランスデューサ素子の選択された群を含み得る。他の実施態様では、試験送信開口及び試験受信開口は、互いに接近させる必要がなく、どの予想コヒーレント幅よりも大きい距離、互いに離間させることができる。さらなる実施態様では、ファントムが、均一な音速を有することが分かっている場合は、コヒーレント幅は、それほど考慮する必要がない。
【0103】
一部の実施態様では、1つの送信試験開口を使用して、基準画像、及び試験画像を形成することができるデータの両方を得ることができる。このような実施態様では、第1の受信開口を使用して基準画像を形成することができ、第2(又は第3など)の受信開口を使用して試験画像データを得ることができる。同様に、異なる送信開口が基準画像及び試験画像データに使用される場合も、1つの受信開口を、基準画像及び試験画像用のデータの両方を得るために使用することができる。従って、試験送信開口及び試験受信開口は、必ずしも互いに近づける必要がない。他の実施態様では、基準画像は、第1のアレイの送信素子及び受信素子を用いて得ることができ、試験画像用のデータは、第2のアレイの送信素子及び受信素子を用いて得ることができ、該第2のアレイは、校正されるべき試験アレイである。
【0104】
上記説明されたように、一部の実施態様では、基準データを得るステップ402は、データ保存装置から基準データを取り出すことを含み得る。このようなデータ保存装置は、校正制御装置内、超音波イメージングシステム内、プローブ内、又は有線もしくは無線ネットワーク接続を介してアクセス可能な別個の保存装置に物理的に配置することができる。あるいは、基準データを得るステップ402は、トランスデューサ素子の基準の群を用いてファントムを画像化することを含み得る。
【0105】
一部の実施態様では、試験送信開口を用いてファントムを超音波照射するステップ404は、送信開口の1つ以上の送信素子から1つ以上のピングを送信することを含み得る。1つの送信開口は、典型的には、1つ、2つ、3つ、又は少数の隣接した素子を含み得る。
【0106】
各ピングが送信された後に、戻りエコーを、試験受信開口の全ての受信素子で受信することができ、エコーデータをデジタル化してデジタルメモリ装置に保存することができる406。このメモリ装置は、イメージング及び校正プロセスを行う計算装置によって電子的にアクセス可能な、任意の物理的位置にある任意の揮発性又は不揮発性デジタルメモリ装置とすることができる。
【0107】
次いで、受信したエコーデータを、ビーム形成し、処理して試験画像を形成することができる408。一部の実施態様では、試験送信開口からファントムを超音波照射するステップ404及び試験受信開口でエコーを受信するステップ405は、異なる送信開口及び/又は受信開口の多数の組み合わせを用いて繰り返すことができ、このような送信及び受信から得られた(408)画像を、プロセス400の後のステップに進む前に画像層の組み合わせと呼ばれるプロセスで組み合わせることができる。
【0108】
様々な実施態様では、誤差関数は、ファントム基準データ(例えば、ファントム内の反射体の位置についての既知の情報)と試験受信開口で得られるファントムの画像との間のある種の差異から決定することができる。一部の実施態様では、誤差関数の選択は、使用されるファントムの特性、利用可能な処理能力、選択される最適化法、又は多数の他の因子に基づくことができる。
【0109】
一部の実施態様では、修正された最小二乗最適化法を使用して、予想反射体中心と画像化された反射体中心との間の集約直線誤差距離(aggregated straight-line error distance)の二乗に基づいて誤差関数を最小化することができる。例えば、試験受信開口で受信されたエコーを用いてファントムの画像を形成した後に、システムは、既知の反射体のそれぞれの大よその予想位置で大よそ予想されるサイズの画像における最も明るい点を特定することによって画像における各反射体の位置を特定することができる。各反射体の位置が特定されたら、各反射体の画像化された位置と予想位置との間の誤差を決定することができる。一部の実施態様では、次いで、これらの個々の反射体位置の誤差を、例えば、全ての個々の反射体の誤差を加算することによって集団反射体パターン誤差(collective reflector pattern error)に集約することができる。あるいは、個々の誤差を、任意の他の関数を用いて、例えば、最大誤差、平均、又は個々の誤差の加重和をとって集約することができる。例えば、ファントムが、他の反射体よりも検出が困難なある種の反射体を有する場合、検出が困難な反射体に、よりバランスの取れた結果を得るために集約誤差関数で少なめの重みを付加することができる。様々な実施態様では、このような個々の誤差及び/又は集約誤差は、スカラー量又はベクトル量とすることができる。
【0110】
一部の実施態様では、反射体画像を、各反射体の予想位置を取り囲む所定の探索領域内で探すことができる。探索領域の形状及びサイズは、反射体の既知のパターン及び反射体間の距離に基づいて画定することができる。一部の実施態様では、反射体の画像は、近傍の反射体についての情報及び反射体の既知のパターンを用いる人工知能又は確率分析法によって確認することができる。他の実施態様では、各反射体を取り囲む探索領域は、予想反射体位置の中心の点を中心とする円、長方形、又は他の幾何学的領域を含み得る。探索領域のサイズは、画像化される反射体よりも大きいが、典型的には隣接する探索領域が重複しないように十分に小さいサイズに選択することができる。
【0111】
一部の実施態様では、ファントム内の反射体の実際の位置が既知である場合、この知識を使用して、ファントムの画像を形成するプロセスを大幅に単純化することができる。例えば、画像を形成するステップ408は、(全画像範囲をビーム形成するのではなく)ファントム内の反射体の予想位置を取り囲む探索領域を表すエコーのみをビーム形成することに限定することができる。他の実施態様では、ビーム形成は、反射体のパターン全体を画定する探索領域に限定することができる。例えば、これは、一部の実施態様では、
図1のピンの予想位置よりも僅かに広い垂直及び水平の画素バンドをビーム形成することによって達成することができる。
【0112】
一部の実施態様では、誤差関数は、1つ以上の仮定の単純化に基づいて定義することができる。例えば、それぞれの反射体の2次元位置又は3次元位置に基づいた検出及び最適化の代わりに、直線又は曲線を一連の反射体に適合させることができる。例えば、
図1に示されているファントムレイアウトを用いて、Y軸に沿って離間したピンを通る垂線を引くことができる。実際、垂直ピンの近似位置にある反射体を検出することができ、検出された反射体を通る適合線を計算することができ、適合線の質を、因子、例えば、決定係数(R
2値)を用いて評価することができる。次いで、誤差関数を、垂直ピンを連結する線のR
2値に基づいて定義することができる。同様のアプローチを、水平ピンでもとることができる。線に適合するピンの仮定の単純化は、適合線に沿ったピン間の間隔を無視することがあり、従って、各ピンの2次元位置に基づいて誤差関数を定義する方法よりも精度が低くなることがある。しかしながら、1本の線の線分に基づいた最適化は、複数のそれぞれのピン反射体位置に基づく最適化よりも処理時間を実質的に短縮することができる。従って、このような単純化は、処理時間の短縮と引き換えに有益な情報をなお提供することができる。代替の実施態様では、多項式曲線、円形、又は他の数学的に定義される幾何学的形状を、ファントム内の反射体のパターンを表すための単純化として使用することができる。
【0113】
他の実施態様では、誤差関数は、反射体の位置以外のある種の量として定義することができる。例えば、一部の実施態様では、誤差関数は、基準画像に対する個々の画像化された反射体の輝度における絶対値の差の合計として定義することができる。別の実施態様では、誤差関数は、完全な集団反射体のパターンに基づいて定義することができる。例えば、ファントムは、2進数の形式で参照数字を表す反射体のアレイを含むように設計することができる(即ち、反射体は「1」で表すことができ、格子位置における反射体の非存在は「0」で表すことができる)。このような実施態様では、校正プロセスは、2進値を「読み取る」ように構成することができ、誤差関数は、予想参照数字とは異なるビット数として定義することができる。さらなる実施態様では、誤差関数は、「孔」−超音波エネルギーを吸収するファントムの領域のパターンに少なくとも部分的に基づくことができる。多くの他の誤差関数も使用することができる。
【0114】
図7は、トランスデューサ素子の位置変数を調整することによって誤差関数を最小化するための反復最適化プロセス414の一実施態様を例示している。ステップ412で初期誤差関数(E
0)を決定した後、プロセス414は、次に進んで、試験送信開口及び/又は試験受信開口の素子位置を表す1つ以上の変数に対して増分調整を行うことによって最小の誤差関数を反復的に求めることができる。従って、第1の反復中に、このプロセスは、1つ以上の初期試験開口素子の位置変数(P
0)を調整して452、新しい試験開口素子の位置変数(P
1)を得ることができる。次いで、ファントムを再び超音波照射しなくても、保存された受信エコーデータ(
図6の406から)を、新しいファントムの画像を形成するために、調整された素子位置のパラメータ(P
1)を用いて再ビーム形成することができる454(このステップ中に必要に応じて、画像層を組み合わせることもできる)。新しい画像から、新しい誤差関数(E
1)を定量化し456、次いで、第2の反復のために評価又は保存して460、ステップ452に戻ることができる。調整452及び誤差の評価460の特性は、使用される最適化ルーチンの種類によって異なり得る。
【0115】
一部の実施態様では、素子の位置変数に対する調整は、各反復で本質的にランダムにすることができる(即ち、前の反復で行われた調整に関連しない)。このようなランダム調整は、既存の素子位置データの校正ミスが起きる頻度の予想に基づいて、現在の素子位置データに対する値の所定範囲内で行うことができる。ランダム調整の場合は、各反復から得られる誤差関数を保存することができ、全ての反復の結果を比較することによって最小誤差関数を見つけることができる。
【0116】
他の実施態様では、調整は、前の反復からの情報、例えば、誤差値における変化の大きさ及び/又は方向の評価に直接基づくことができる。例えば、一部の実施態様では、新しい誤差関数E
1が、初期誤差関数E
0よりも小さい場合は、ステップ452で行われる調整が、良好な調整であると決定することができ、プロセスは、位置変数(複数可)に対するさらなる増分調整を行うより多くの反復のために繰り返すことができる。第1の反復で得られた新しい誤差関数E
1が、初期誤差関数E
0以上である場合(即ち、E
1≧E
0)、ステップ452の調整が誤った方向で行われたと見なすことができる。従って、第2の反復では、ステップ452中に、元の素子の位置変数(複数可)P
0を、第1の反復中に試された方向とは反対方向に調整することができる。得られる新しい誤差関数E
2が、初期誤差関数E
0以上である場合は、(少なくとも、調整された素子の位置変数(複数可)に対しては)誤差関数は最小である。このような場合、誤差最小化プロセスを停止することができ、最後の良好な位置変数を、新しいトランスデューサ素子位置として保存することができる。
【0117】
一部の実施態様では、プロセス414は、誤差関数が最小になるまで必要に応じて反復を何回でも繰り返すことができる。他の実施態様では、プロセス414は、一定数の反復の後に停止することができる。当業者には明らかなように、多数の「最適」解が存在し得る。結果として、一部の実施態様では、反復校正プロセスは、複数回繰り返すことができ、何回かの校正の結果を(画像処理技術を用いて自動的に、又は個人が手動で)比較して、適切な解を見つけることができる。いずれの場合も、必ずしも絶対的な最善の結果を見つけ出す必要はない。
【0118】
様々な実施態様では、トランスデューサ素子の位置は、多数の変量によって表すことができる。最終的に、一部の既知の座標系に対する各トランスデューサ素子の音響位置(素子の明らかな機械的位置とは異なり得る)を知ることが望ましい。従って、一部の実施態様では、各トランスデューサ素子の音響位置は、(例えば、
図1〜
図3に示されているようなデカルト座標系45を基準とする)x位置、y位置、及びz位置によって定義することができる。最適化プロセス414中のこのような量の調整では、位置変数を、個々に又は群で調整することができる。
【0119】
各トランスデューサ素子のx位置、y位置、及びz位置を調整することによる最適化プロセスの実施は、1つの開口が数百の個々の素子を含み得るため、計算がやや集中的であり得る。これは、数千の変数ではないにしても、数百の反復的な調整となり得る。これは、2Dアレイ(即ち、X方向及びZ方向に互いに離間したトランスデューサ素子を備えるアレイ)、湾曲1D又は2Dアレイ(即ち、X軸又はZ軸を中心とする湾曲を有するアレイ)、及び3Dアレイ(即ち、2つの軸を中心とする湾曲を有するプローブ)を備えるプローブに特に当てはまる。計算が集中する可能性があるが、本明細書の様々な実施態様を使用して、大きい連続平面又は湾曲1Dもしくは2Dアレイ及び2つの軸を中心とする湾曲を有する大きい連続3Dアレイを備える任意の超音波プローブを校正することができる。
【0120】
代替として、一部の実施態様は、1つ以上の仮定の単純化を利用することができる。例えば、一部の実施態様では、1つのアレイ内での素子の位置関係が、互いに対して固定が維持され、これにより共通のバッキングブロックを有するアレイのみが移動する、均一に膨張又は収縮すると仮定することもできる。一部の実施態様では、素子がアレイ全体に均一に分布すると仮定することもできる。このような仮定を用いると、既知のデータに対するアレイの中心点、アレイの幅、及びアレイ表面の角度を決定することにより、各素子の音響位置についての十分な情報を提供することができる。例えば(
図1を参照すると)、左アレイ12の全ての素子の位置を、全アレイの位置変数に基づいて仮定することができ、該変数は、アレイ幅(「w」)、スキャン平面(即ち、X−Y平面)におけるアレイの中心の位置(i)、及びスキャン平面におけるアレイ表面のある種のベースラインに対する角度(θ)を含み得る。素子の音響中心が、1Dアレイの場合にはX方向に、2Dアレイの場合にはX及びZ方向に一定の間隔でアレイ全体に均一に分布すると仮定すると、各トランスデューサ素子の音響中心を、上記4つの変数(中心−X、中心−Y、幅、及び角度)について数学的に表すことができる。一部の実施態様では、アレイが2Dアレイである場合、Z方向におけるアレイの中心の位置を表す第5の変数(中心−Z)も使用することができる。あるいは、これらの変数の1つ以上を、一部の実施態様では固定として取り扱うことができる。このような単純化を使用すると、誤差関数最小化プロセスは、4つ又は5つのトランスデューサ素子の位置変数を反復的に最適化するだけで良い。様々なプローブ構成の場合には、様々な仮定の単純化を使用することもできる。
【0121】
一部の実施態様では、プロセスの効率、校正の精度、又はこれらの両方を改善するために、2つ以上の最適化プロセスを組み合わせて、並列又は逐次プロセスにすることができる。例えば、一実施態様では、2段階最適化プロセスを使用することができ、このプロセスでは、第1の段階で、1つ以上の仮定の単純化に依存して素子の位置変数の粗改善が行われる。次いで、第2の段階で、より少ない仮定の単純化に依存するが、第1の段階で得られた改善された情報から開始する、素子の位置変数に対するより詳細な改善を行うことができる。例示的な一実施態様の第1の段階で、多数の反射体を、1つの幾何学的形状、例えば、線で表すことができ、トランスデューサ素子間の間隔を固定(即ち、このような値が最適化中に変動しない)として取り扱うことができる。次いで、2段階プロセスを行って、各ピンの位置を、トランスデューサ素子間の間隔を含む素子の位置変数を変更することによって最適化することができる。
【0122】
一部の実施態様では、同様の校正プロセスを使用して、
図2に例示されているような大きい連続アレイ18を備えるプローブ55を校正することができる。この連続アレイ18は、物理的に分離されていないため、
図1のプローブに関連して上記説明された同じ仮定の単純化を適用することができない。代わりに、
図2のプローブ55は、大きいアレイの形状についての仮定の単純化を行うことによって校正することができ、開口を、アレイに沿った様々な位置にある素子の比較的小さい群を用いることによって定義することができる。一部の実施態様では、開口における各素子のx−y位置を、最適化されるべき素子の位置パラメータとして使用することができる。次いで、このような選択された開口を、上記説明された方式と実質的に同じ方式で校正することができる。
【0123】
反復誤差関数最小化プロセス414で最適化される変数の数に関係なく、素子の位置変数を、直列又は並列のいずれかで調整することができる452。例えば、位置変数が直列に調整される実施態様では、1つの変数のみを、各反復中に調整することができる。直列最適化の一部の実施態様は、次の変数に進む前に1つの変数を最適化することができる(即ち、誤差関数を、その1つの変数のみを調整することによって最小化することができる)。2つ以上の位置変数が並列に調整される実施態様では、2つ以上の変数をそれぞれ、各反復中に調整することができる。一部の実施態様では、これらの2つの変数を、他の変数の最適化に進む前に最適化することができる。あるいは、全ての変数を並列に最適化することができる。他の実施態様では、位置変数を、直列アプローチと並列アプローチの組み合わせを用いて最適化することができる。直列最適化アプローチと並列最適化アプローチとの間のこの差異は、並列計算処理と混同するべきではないことに留意されたい。使用される計算ハードウェアによっては、上記説明されたように直列で行われる最適化でさえも、並列プロセスで別のスレッドを用いて同時に計算することができる。
【0124】
第1のアレイ又は開口の校正が完了したら、
図6のプロセスを、残りの各アレイ又は開口に対して個々に繰り返すことができる。例えば、
図1の3アレイプローブを用いて、校正プロセスを、右アレイ14に対して繰り返し、次いで左アレイ12に対しても同様に繰り返すことができる。第1のアレイについての最新の素子の位置データを決定した後に、続く各試験アレイの最新の素子の位置データを決定し、共通の座標系に対して保存して、プローブのどの素子の位置も他の素子に対して決定できるようにする。例えば、校正プロセスは、中心アレイの中心を決定することができ、この中心を、他のアレイの座標系の中心として使用することができる。中心アレイの角度は、他のアレイの角度を定義することができるデータとしても使用することもできる。他の実施態様では、開口の位置及び向きは、どのアレイからも独立して、ある種の他のデータに対して決定することができる。他の実施態様では、素子の位置は、プローブに対する任意の点を中心とする任意の座標系を用いて最終的に決定することができる。
【0125】
一部の実施態様では、トランスデューサ素子の位置調整を、新しく訂正された素子の位置座標の形式で得て保存することができる。他の実施態様では、位置調整は、前の素子の位置座標に加えられる又は乗じられる係数として得て保存することができる。例えば、一部の実施態様では、「工場」での素子の位置データを、超音波システム、例えば、プローブハウジング内のROMチップによって読み取り可能な位置にある読み取り専用メモリ装置に保存することができる。このような工場での位置データは、プローブを製造する時に設定することができ、これに続く校正データを、工場での位置データに対する調整として適用することができる係数として保存することができる。
【0126】
一部の実施態様では、プローブ内の各トランスデューサ素子の調整された素子の位置データを、プローブハウジング内に配置された不揮発性メモリ装置に保存することができる。他の実施態様では、調整された素子の位置データは、イメージングシステム内、遠隔サーバー上、又は画像ビーム形成中にイメージングシステムによって情報を取り出すことができる任意の他の位置に配置された不揮発性メモリ装置に保存することができる。
【0127】
一部の実施態様では、上記説明された方法を使用する校正プロセスは、
図3に例示されているような調整可能なプローブを迅速に再校正するのに特に有用であり得る。一般に、「調整可能なプローブ」は、1つ以上のトランスデューサアレイ又はトランスデューサ素子の位置及び/又は向きを1つ以上の他のトランスデューサアレイ又は素子に対して変更することができる超音波イメージングプローブとすることができる。
図3に示されている以外の多数の調整可能なプローブ構成も可能であり、このような調整可能なプローブ構成は、特定のイメージングの適用例のために設計することができる。
【0128】
一部の実施態様では、調整可能なプローブ内の1つ以上のアレイ(例えば、中心アレイ、左端アレイ、又は右端アレイ)を、固定された向き及び位置でハウジングに永久的に固定することができ、残りのアレイを、画像化されるべき物体の形状に適合するように移動可能とすることができる。従って、固定されたアレイは、永久的に既知の位置及び向きである。あるいは、1つ以上のアレイの位置及び向きは、調整可能なプローブ内の1つ以上の位置センサを基準に既知とすることができる。次いで、位置が既知のアレイ(複数可)を使用して、ファントムの基準画像(又は画像化されるべき物体もしくは患者のある領域さえも)を得ることができ、最適化プロセスを使用して、移動可能アレイの調整された位置を決定することができる。例えば、音波検査者が、調整可能なプローブの調整可能なアレイを調整して患者の解剖学的構造に適合させることができる。次いで、通常の画像化の際に、基準画像を既知のアレイを用いて得ることができ、残りのアレイの位置を、中心アレイから得られる基準画像と調整可能な各アレイから得られる画像との間の誤差を決定する誤差関数を(例えば、上記説明された最適化ルーチンを使用して)最小化するように構成された最適化ルーチンによって決定することができる。
【0129】
他の実施態様では、音波検査者が、調整可能なプローブのアレイを調整して患者の解剖学的構造に適合させることができる。次いで、音波検査者は、調整された位置でプローブを受容するように構成された適合可能な部分を備えるファントムに該プローブを配置することができる。例えば、適合可能な部分は、ファントムの材料と実質的に同じ音速で超音波信号を送信するように選択された液体又はゲルを含む可撓性バッグを備え得る。次いで、校正プロセスを開始することができ、調整可能な各アレイの位置を、ファントムを表す基準データを各アレイで得られたファントムの画像と比較する反復最適化ルーチンによって決定することができる。
【0130】
一部の実施態様では、素子の位置情報は、校正作業の実施と生の超音波データの収集との間で変化し得る。例えば、プローブが、生のサンプルデータの収集セッションの前又は最中に落下する、損傷する、又は変形する(例えば、かなりの温度変化による熱膨張又は収縮によって)ことがある。一部の実施態様では、プローブは、以下に説明されるように収集されて保存された生のエコーデータを用いて再校正することができる。
【0131】
他の実施態様では、校正システムは、超音波イメージングシステムに含めることができる。一部の実施態様では、例えば、
図8に示されているように、超音波イメージングシステム500は、生のビーム形成されていないエコーデータを収集して保存するように構成された生データメモリ装置502を含み得る。
図8に示されているように、最適化ベースの校正を行うように構成された超音波イメージングシステムは、送信制御サブシステム504、プローブサブシステム506、受信サブシステム508、画像形成サブシステム510、ビデオサブシステム512、校正メモリ530、及び校正プロセッサ540を含み得る。画像形成サブシステムは、ビームフォーマー520(ハードウェア又はソフトウェア)及び画像層組み合わせブロック522を含み得る。
【0132】
一部の実施態様では、校正システムは、イメージングシステムとは独立して設けることができる。このような実施態様では、構成要素、例えば、ビデオサブシステム512を排除することができる。
図8に示されている他の構成要素も、実施可能な場合は排除することができる。
【0133】
実際、送信制御サブシステム504は、プローブに超音波信号をファントムに直接送信させることができる。プローブに戻るエコーは、電気信号を生成することができ、該電気信号が受信サブシステム508に送られ、アナログフロントエンドによって処理され、そしてアナログデジタル変換器によってデジタルデータに変換される。次いで、デジタルエコーデータを、生データメモリ装置502に保存することができる。次いで、デジタルエコーデータを、各反射体の位置を決定して画像を形成するために、ビームフォーマー520によって処理することができる。ビーム形成の計算を行う際に、ビームフォーマーは、校正メモリ530から構成データを取り出すことができる。校正データは、プローブ内の各トランスデューサ素子の位置を表すことができる。新たな校正を行うために、校正プロセッサは、画像形成ブロック520から、又は1つの画像フレーム及び/もしくは個々の画像層を保存することができる画像バッファメモリ装置526から画像データを受け取ることができる。
【0134】
次いで、校正プロセスは、最適化ベースの校正ルーチンを行うことができる。校正プロセスが完了すると、新しい校正情報を、後にイメージングプロセッサ又は追加の校正プロセスで使用するために校正メモリ装置530に保存することができる。
【0135】
このようなシステムを用いて、ファントムの生エコーデータを収集して、(例えば、患者を用いる)標的物体イメージングセッションからの生エコーデータと共に収集して保存することができる。イメージングセッションの前及び/又は後のファントムの生エコーデータの収集及び保存は、後のイメージングセッションデータの最適化を可能にし得る。このような最適化は、保存された生データ及び上記説明された方法を用いてイメージングセッション後の任意の時点で適用することができる。
【0136】
図8に示されているように、超音波イメージングシステム500は、複数の個々の超音波トランスデューサ素子を含み得る超音波プローブ506を備えることができ、これらの超音波トランスデューサ素子の一部を送信素子として指定し、残りを受信素子として指定することができる。一部の実施態様では、各プローブトランスデューサ素子は、超音波振動を時変電気信号に変換することができ、逆も同様である。一部の実施態様では、プローブ506は、任意の数の超音波トランスデューサアレイをあらゆる所望の構成で備え得る。本明細書で説明されるシステム及び方法に関連して使用されるプローブ506は、単一開口プローブ及び多数開口プローブを含め、所望に応じて任意の構成とすることができる。
【0137】
プローブ506の素子からの超音波信号の送信は、送信制御装置504によって制御することができる。送信信号のエコーを受信すると、プローブ素子は、受信超音波振動に一致する時変電気信号を生成することができる。受信エコーを表す信号を、プローブ506から出力して、受信サブシステム508に送信することができる。一部の実施態様では、受信サブシステム508は、多数のチャネルを含み得る。各チャネルは、アナログフロントエンド装置(「AFE」)509及びアナログデジタル変換装置(ADC)511を備え得る。一部の実施態様では、受信サブシステム508の各チャネルは、ADC 511の後にデジタルフィルタ及びデータ調整装置(不図示)も備え得る。一部の実施態様では、ADC 511の前にアナログフィルタを設けることもできる。各ADC 511の出力は、生データメモリ装置502に案内することができる。一部の実施態様では、受信サブシステム508の1つの独立したチャネルを、プローブ506の各受信トランスデューサ素子に設けることができる。他の実施態様では、2つ以上のトランスデューサ素子が、共通の受信チャネルを共有することができる。
【0138】
一部の実施態様では、超音波イメージングシステムは、さらなるビーム形成、フィルタリング、画像層の組み合わせ、又は他の画像処理が行われる前に、個々の受信素子によって受信される超音波エコー信号のタイミング、位相、大きさ、及び/又は周波数を表すデジタルデータを生データメモリ装置502に保存することができる。
【0139】
受信エコーデータに加えて、エコーデータの特定のセットを生成した1つ以上の超音波送信信号についての情報を、メモリ装置、例えば、生データメモリ装置502又は別のメモリ装置に保存することもできる。例えば、上記説明された多数開口ピング超音波法で画像化する場合、エコーの特定のセットを生成した送信ピングについての情報を知ることが望ましい。このような情報は、1つ以上の送信素子の識別及び/又は位置、並びに送信超音波信号の周波数、大きさ、継続期間、又は該信号を表す他の情報を含み得る。送信データは、本明細書ではまとめて「TXデータ」と呼ばれる。一部の実施態様では、このようなTXデータは、生エコーデータが保存される同じ生データメモリ装置に明示的に保存することができる。例えば、送信信号を表すTXデータは、送信信号によって生エコーデータのセットが生成される前はヘッダーとして、生エコーデータのセットが生成された後はフッターとして保存することができる。他の実施態様では、TXデータは、ビーム成形プロセスを行っているシステムもアクセス可能な別個のメモリ装置に明示的に保存することができる。送信データが明示的に保存される実施態様では、「生エコーデータ」又は「生データ」という熟語は、このように明示的に保存されたTXデータも含み得る。
【0140】
TXデータは、黙示的に保存することもできる。例えば、イメージングシステムが、矛盾しない又は既知の順序で矛盾なく定義された超音波信号(例えば、矛盾しない大きさ、形状、周波数、継続期間など)を送信するように構成されている場合は、ビーム形成プロセス中にこのような情報を仮定することができる。このような場合、エコーデータに関連させる必要がある情報は、送信トランスデューサ(複数可)の位置(又は識別)のみである。一部の実施態様では、このような情報は、生データメモリ内の生エコーデータの編成に基づいて黙示的に得ることができる。
【0141】
例えば、システムは、各ピングの後に一定数のエコー記録を保存するように構成することができる。このような実施態様では、第1のピングからのエコーを、メモリ位置0〜「n」(「n」は各ピングについて保存される記録数)で保存することができ、第2のピングからのエコーを、メモリ位置n+1〜2n+1に保存することができる。他の実施態様では、1つ以上の空の記録を、エコーのセット間に残すことができる。一部の実施態様では、受信エコーデータは、送信ピングと受信エコーデータ点(又はエコーの群)との間の関係を暗示するために、様々なメモリインターリービング技術を用いて保存すことができる。一般に、1つの受信素子によって受信される1つの送信ピングのエコーに対応するエコー記録の集合体は、本明細書では1つの「エコーストリング」と呼ばれることもある。完全なエコーストリングは、受信素子によって受信される1つのピングの全てのエコーを指すことができ、部分ストリングは、受信素子によって受信される1つのピングの全てのエコーのサブセットを指すことができる。
【0142】
同様に、仮定データが、矛盾しない既知のサンプリングレートでサンプリングされるとすると、各エコーデータ点が受信された時間は、メモリ内のそのデータ点の位置から推測することができる。一部の実施態様では、同じ技術を使用して、多数の受信チャネルからのデータを1つの生データメモリ装置に黙示的に保存することもできる。
【0143】
他の実施態様では、エコーデータを取り出すシステムが、どのエコー信号がどの受信トランスデューサ素子及び送信ピングに対応するかを決定できるとすると、生データメモリ装置520に保存された生エコーデータを、所望に応じて任意の他の構造にすることができる。一部の実施態様では、各受信トランスデューサ素子の位置を表す位置データを、その同じ素子によって受信されるエコーデータに関連付けることができる情報と共に校正メモリ装置に保存することができる。同様に、各送信トランスデューサ素子の位置を表す位置データを、各送信ピングを表すTXデータに関連付けることができる情報と共に校正メモリ装置に保存することができる。
【0144】
一部の実施態様では、生データメモリ装置内の各エコーストリングは、エコーを受信した受信トランスデューサ素子の位置を表す位置データ、及びエコーデータを生成するピングを送信した送信開口の1つ以上の送信素子の位置を表すデータに関連付けることができる。各エコーストリングも、送信ピングの特徴を表すTXデータに関連付けることができる。
【0145】
一部の実施態様では、プローブは、ファントム画像の生データを用いずに、メモリ装置に保存された生エコーデータを用いて校正することができる。少なくとも1つのアレイ(又はアレイの一部分)が、十分に校正されていることが既知である、又は十分に校正されていると推測されるとすると、強い反射体のパターンを有するほぼどの画像データを使用しても、第2、第3、又は別のアレイもしくはアレイセグメントを校正することができる。例えば、既知の校正された開口、アレイ、又はアレイセグメントからのエコーデータをビーム形成して基準画像を得ることができる。次いで、残りの開口/アレイからの保存されたエコーデータを、上記説明された任意の方法を用いて校正して、第1のアレイ、開口、又はアレイセグメントに対する残りのアレイ、開口、又はアレイセグメントの位置を校正することができる。保存されたエコーデータを用いて校正プロセスを行うことにより、たとえプローブ自体及び患者(又は他の画像化された物体)のいずれもが、再ビーム形成及び画像処理を行っている装置に物理的に近接して存在しなくても、プローブを校正することができる。このような実施態様では、ファントムを超音波照射するステップ404及びエコーを受信するステップ405は、これらのステップが、生データが収集されるイメージングセッション中に行われるため、校正プロセスの時点で
図6のプロセス400から排除することができる。
【0146】
本発明は、特定の好ましい実施態様及び例の文脈で開示されているが、当業者であれば、本発明が、特別に開示された実施態様だけではなく他の代替の実施態様並びに/又は本発明及びその明らかな変更形態や等価物の使用にまで拡大されることを理解されよう。上記実施態様の様々な変更形態は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般原理を、本発明の概念又は範囲から逸脱することなく他の実施態様に適用することができる。従って、本明細書で開示される本発明の範囲は、上記の特定の開示された実施態様によって限定されるべきものではなく、以下の特許請求の範囲の正しい解釈によってのみ限定されるべきものである。
【0147】
特に、材料及び製造技術は、当業者のレベルの範囲内で利用することができる。さらに、単数のアイテムの言及は、同じアイテムが複数存在する可能性があることを含む。より具体的には、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1つの(a)」、「及び(and)」、「前記(said)」、及び「その(the)」は、文脈上他の意味に解釈するべき場合を除き、複数の指示対象を含む。特段の記載がない限り、本明細書で使用される「又は」という語は、提示される全ての代替物を含み、一般的に使用される句「及び/又は」と本質的に同じ意味である。従って、例えば、「A又はBは青色であり得る」という句は、次のいずれも意味し得る:Aのみが青色である、Bのみが青色である、AとBの両方が青色である、及びAとBとCが青色である。特許請求の範囲は、任意選択の要素を全て排除するように起草できることにさらに留意されたい。従って、この文章は、クレームの構成要素の記述に関連した「だけ(solely)」及び「のみ(only)」などの排他的な語の使用、又は「負の」限定の使用のための先行詞として役立たせることを目的とする。本明細書に特段の記載がない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明の属する分野の一般的な技術者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
[構成1]
超音波プローブを校正する方法であって:
該超音波プローブの第1のアレイ及び第2のアレイを所定の位置に配置してファントムを画像化するステップであって、該第1及び該第2のアレイの各々が、複数のトランスデューサ素子を有する、該ステップ;
該第1のアレイを用いて該ファントムを画像化して基準画像を得るステップであって、該画像化が、該第1のアレイの各トランスデューサ素子の位置を表すデータに依存する、該ステップ;
該第2のアレイを用いて該ファントムを画像化して試験画像を得るステップであって、該画像化が、該第2のアレイの各トランスデューサ素子の位置を表すデータに依存する、該ステップ;
該基準画像と該試験画像との間の第1の誤差を定量化するステップ;
該第1の誤差が最小となるまで、該第2のアレイの該各トランスデューサ素子の位置を表す該データを反復的に最適化するステップ;を含む、前記方法。
[構成2]
前記超音波プローブの、複数のトランスデューサ素子を有する第3のアレイを用いて前記ファントムを画像化して第2の試験画像を得ること、前記基準画像と該第2の試験画像との間の第2の誤差を定量化すること、及び該第2の誤差が最小となるまで、該第3のアレイの各素子の位置を表すデータを反復的に最適化すること、をさらに含む、構成1記載の方法。
[構成3]
前記ファントムを前記第2のアレイを用いて画像化している間に、受信した生エコーデータを保存することをさらに含む、構成1記載の方法。
[構成4]
前記反復的に最適化するステップが:
前記第2のアレイの前記トランスデューサ素子の前記位置を表す前記データを調整して第1の調整された位置データを生成すること;
該第1の調整された位置データを用いて前記保存されたエコーデータを再ビーム形成して反射体の第2の試験画像を形成すること;
該第2の試験画像と前記基準画像との間の第2の誤差を定量化すること;及び
該第2の誤差が前記第1の誤差よりも小さいか否かを決定すること;を含む、構成3記載の方法。
[構成5]
前記第2のアレイの前記トランスデューサ素子の前記位置を表す前記データを調整することが、前記アレイの基準点の位置及び該アレイの表面の角度を調整することを含むが、該第2のアレイの該素子間の間隔を調整することを含まない、構成4記載の方法。
[構成6]
第1の反復的に最適化するステップの後に、第2の反復的に最適化するステップを行うことをさらに含み、該第2の反復的に最適化するステップが:
前記第2のアレイの少なくとも2つのトランスデューサ素子間の間隔を調整して第2の調整された位置データを生成することを含む、前記第1の調整された位置データを調整すること;
該第2の調整された位置データを用いて前記保存されたエコーデータを再ビーム形成して前記反射体の第3の試験画像を形成すること;
該第3の試験画像と前記基準画像との間の第3の誤差を定量化すること;及び
該第3の誤差が前記第2の誤差よりも小さいか否かを決定すること;を含む、構成5記載の方法。
[構成7]
前記トランスデューサ素子の位置データを反復的に最適化するステップが、最小二乗最適化プロセスを用いて最適化することを含む、構成1記載の方法。
[構成8]
前記第1の誤差を定量化するステップが、前記基準画像の反射体の位置と前記試験画像の同じ反射体の位置との間の距離を定量化することを含む、構成1記載の方法。
[構成9]
前記第1の誤差を定量化するステップが、前記基準画像の反射体と前記試験画像の反射体との間の輝度の差異を定量化することを含む、構成1記載の方法。
[構成10]
前記第1の誤差を定量化するステップが、前記基準画像の反射体及び孔のパターンと前記試験画像の孔及び反射体のパターンとの間の差異を定量化することを含む、構成1記載の方法。
[構成11]
前記基準画像及び前記試験画像が、反射体、孔、又は該反射体と該孔の両方の3次元パターンの3次元ボリューム画像である、構成1記載の方法。
[構成12]
前記ファントムが生きた組織を含む、構成1記載の方法。
[構成13]
前記ファントムの反射体の位置を特定するステップ、及び数学的に画定された曲線を反射体の検出されたパターンに適合させるステップをさらに含む、構成1記載の方法。
[構成14]
前記曲線が直線である、構成13記載の方法。
[構成15]
前記第1の誤差を定量化するステップが、反射体のパターンに対する曲線の適合の程度を定量化する決定係数を計算することを含む、構成12記載の方法。
[構成16]
超音波プローブを校正する方法であって:
ファントムの複数の反射体を該超音波プローブを用いて超音波照射するステップ;
該超音波プローブでエコーデータを受信するステップ;
該エコーデータを保存するステップ;
第1のトランスデューサ素子の位置データを用いて該保存されたエコーデータをビーム形成して該反射体の画像を形成するステップ;
該反射体を表す基準データを得るステップ;
該画像と該基準データとの間の誤差を定量化するステップ;及び
該定量化された誤差に基づいて該トランスデューサ素子の位置データを反復的に最適化するステップ;を含む、前記方法。
[構成17]
前記反復的に最適化するステップが、前記トランスデューサ素子の位置データを最小二乗最適化プロセスで反復的に最適化することを含む、構成16記載の方法。
[構成18]
前記反復的に最適化するステップが:
前記トランスデューサ素子の位置データを調整すること;
該調整されたトランスデューサ素子の位置データを用いて前記保存されたエコーデータを再ビーム形成して前記反射体の第2の画像を形成すること;
該第2の画像に基づいて第2の誤差を定量化すること;及び
該第2の誤差を評価して、該調整されたトランスデューサ素子の位置データが該画像を改善するか否かを決定すること;を含む、構成16記載の方法。
[構成19]
前記トランスデューサ素子の位置データを調整することが、アレイの水平位置変数、アレイの垂直位置変数、及びアレイの角度変数を調整することを含む、構成18記載の方法。
[構成20]
前記トランスデューサ素子の位置データを調整することが、共通アレイ上の隣接するトランスデューサ素子間の間隔を調整することを含まない、構成19記載の方法。
[構成21]
前記基準データが、前記ファントムの物理的測定に基づいている、構成16記載の方法。
[構成22]
前記ファントムの基準画像から前記基準データを導出することをさらに含む、構成16記載の方法。
[構成23]
前記基準画像が、前記超音波を照射するステップ及び前記受信するステップに使用されたトランスデューサ素子の群とは異なる前記プローブのトランスデューサ素子の群を用いて得られる、構成22記載の方法。
[構成24]
前記トランスデューサ素子の位置データを反復的に最適化するステップが、最小二乗最適化プロセスを用いることを含む、構成16記載の方法。
[構成25]
前記ファントムの反射体の位置を特定すること、及び数学的に画定された曲線を反射体の検出されたパターンに適合させることをさらに含む、構成16記載の方法。
[構成26]
前記曲線が直線である、構成25記載の方法。
[構成27]
前記第1の誤差を定量化するステップが、前記反射体のパターンに対する前記曲線の適合の程度を定量化する決定係数を計算することを含む、構成25記載の方法。
[構成28]
超音波イメージングデータを校正する方法であって:
生エコーデータをメモリ装置から取り出すステップであって、該生エコーデータが複数のエコーストリングを含み、該各エコーストリングが、1つの送信開口から送信されて1つの受信素子で受信される1つの超音波ピングのエコーに対応するエコー記録の集合体を含む、ステップ;
該各エコーストリングに対応する各受信トランスデューサ素子の位置を表す第1の校正データを取り出すステップ;
該各エコーストリングに関連した送信ピングに対応する少なくとも1つのトランスデューサ素子の位置を表す第2の校正データを取り出すステップ;
受信トランスデューサ素子の第1の群に対応するエコーストリングの第1の集合体をビーム形成することによって基準画像を形成するステップであって、ビーム形成することが、該第1及び該第2の校正データに基づいて反射体の位置を三角測量することを含む、該ステップ;
該トランスデューサ素子の第1の群と同一ではないトランスデューサ素子の第2の群に対応するエコーストリングの第2の集合体をビーム形成することによって試験画像を形成するステップ;
該基準画像と該試験画像との間の第1の誤差を定量化するステップ;
該第1の校正データを調整して、該第2の群の素子の調整された位置を表すステップ;
該第2の群の素子の調整された位置を用いて該試験画像を再ビーム形成して、第2の試験画像を得るステップ;
該第2の試験画像と該基準画像との間の第2の誤差を定量化するステップ;及び
新しい誤差を評価して、該第2の誤差が該第1の誤差よりも小さいか否かを決定するステップ;を含む、前記方法。
[構成29]
前記生エコーデータを生成するために使用されるプローブに対する物理的又は電子的な接続を一切用いずに行われる、構成28記載の方法。
[構成30]
超音波プローブ校正システムであって、
複数の送信トランスデューサ素子及び複数の受信トランスデューサ素子を有する超音波プローブ;
反射体のパターンを有するファントム;
該ファントムの反射体のパターンを表す基準データを含む第1のメモリ装置;
該各送信トランスデューサ素子及び該各受信トランスデューサ素子の共通座標系に対する位置を表すトランスデューサ素子の位置データを含む第2のメモリ装置;及び
校正プログラムコードを含むイメージング制御システムを含み、該イメージング制御システムが:
該送信トランスデューサ素子を用いて該ファントムを超音波照射し、該受信トランスデューサ素子でエコーデータを受信し、そして第3のメモリ装置にエコーデータを保存し、
該トランスデューサ素子の位置データを用いて該保存されたエコーデータをビーム形成することによって該反射体のパターンの第1の画像を形成し、
該第1の画像によって示される該反射体のパターンの位置を表す測定データを決定し、
該測定データと該基準データとの間の誤差を定量化し、かつ
該定量化された誤差に基づいて該トランスデューサ素子の位置データを反復的に最適化するように、該校正プログラムコードが構成されている、前記システム。
[構成31]
前記イメージング制御システムが:
前記トランスデューサ素子の位置データを調整すること;
前記調整されたトランスデューサ素子の位置データを用いて前記保存されたエコーデータを再ビーム形成することによって前記反射体のパターンの第2の画像を形成すること;
前記第2の画像に基づいて第2の誤差を定量化すること;及び
該第2の誤差を評価して、該調整されたトランスデューサ素子の位置データが該画像を改善するか否かを決定することによって、前記ファントムを反復的に最適化するように構成されている、構成30記載のシステム。
[構成32]
前記基準データが、前記ファントムの物理的測定に基づいている、構成30記載のシステム。
[構成33]
前記基準データが基準画像に基づいている、構成30記載のシステム。
[構成34]
前記イメージング制御システムが、最小二乗最適化プロセスを用いて前記トランスデューサ素子の位置データを反復的に最適化するように構成されている、構成30記載のシステム。
[構成35]
前記ファントムが、超音波信号を吸収する少なくとも1つの領域をさらに含む、構成30記載のシステム。
[構成36]
前記超音波プローブが、複数のトランスデューサアレイを備える、構成30記載のシステム。
[構成37]
前記超音波プローブが、1つの連続トランスデューサアレイを備える、構成30記載のシステム。
[構成38]
前記超音波プローブが、凹状湾曲を有するトランスデューサアレイを備える、構成30記載のシステム。
[構成39]
前記ファントムがピンのパターンを含む、構成30記載のシステム。
[構成40]
前記ファントムが生きた組織を含む、構成30記載のシステム。
[構成41]
前記校正プログラムコードが、反射体の検出されたパターンに曲線を適合させることによって測定データを決定するように構成されている、構成30記載のシステム。
[構成42]
前記校正プログラムコードが、前記曲線の適合の程度を定量化する決定係数を決定することによって誤差を定量化するように構成されている、構成41記載のシステム。
[構成43]
前記第1のメモリ装置、前記第2のメモリ装置、及び前記第3のメモリ装置の少なくとも2つが、1つの物理的メモリ装置の論理部分である、構成30記載のシステム。
[構成44]
前記メモリ装置に接続された超音波プローブが存在しない、構成28記載の方法。