(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸込口体の前記側板と前記側板に対向する前記調理室の側壁との間であって、前記調理台の前記載置面よりも高くかつ前記吸込口体と前記後壁との間に形成される前記開口よりも低い位置に、温度センサを備えた
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の加熱調理器。
前記調理室内において前記調理台を前後方向に移動可能に支持するスライドレールユニットを備え、前記スライドレールユニットに前記調理台が支持されて前記調理台が最後部に位置している状態において、
前記調理台の下面と前記調理室の底面との間、前記調理台の後端と前記調理室の前記後壁との間、及び前記調理台の前端と前記調理室扉との間には、空隙が設けられている
ことを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る加熱調理器の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものではない。これらの方向を示す用語は、特に明示しない限り、誘導加熱調理器を前面側(正面側)から見た場合の方向を意味している。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器100の全体斜視図である。加熱調理器100の筐体1の上部には、筐体上枠2が組み付けられている。筐体1と筐体上枠2とが組み合わされて形成される内部空間に、後述する各部品が収容される。筐体上枠2の上面の開口には、鍋等の被加熱物が載置されるトッププレート3が嵌め込まれている。トッププレート3よりも手前側には、ユーザーの操作を受け付ける操作部5が設けられている。本実施の形態では、操作部5は筐体1の前面側にも設けられている。トッププレート3の手前側には、加熱調理器100の動作状態や操作部5への入力内容を表示する表示部6が設けられている。筐体上枠2の背面側には、通気口カバー7が取り付けられている。通気口カバー7には通風可能な小孔が複数形成されており、吸排気の気流がスムースに通過することができる。通気口カバー7は、その下方に設けられた筐体吸気口8及び筐体排気口9(
図2参照)への異物の侵入を抑制している。
【0014】
トッププレート3は、例えば耐熱性ガラスやセラミック等の非金属材料で構成される。トッププレート3には、鍋等の被加熱物が載置される3つの加熱口4a、加熱口4b、加熱口4cが配置されている。トッププレート3の表面又は裏面には、加熱口4a、加熱口4b、加熱口4cのそれぞれに被加熱物を載置する際の目印となる表示が施されている。
【0015】
筐体1内には、グリル加熱やコンベクション加熱を行う調理室20が設けられている。筐体1の前面には、調理室20の前面の開口を開閉する調理室扉25が設けられている。調理室扉25はスライド式の扉であり、調理室扉25が引き出されると、調理室20内に被加熱物を出し入れできるようになっている。調理室扉25は、筐体1に対して着脱可能な構成であり、調理室20内や調理室扉25自体の清掃やメンテナンスが容易な構成である。
【0016】
なお、加熱調理器100における調理室20、操作部5、表示部6、及び加熱口4a〜4cの配置は一例であり、これらの配置及び数によって本願発明は限定されない。例えば、筐体1の前面の操作部5と調理室20との位置を入れ替えてもよいし、筐体1の前面に操作部5を設けない構成としてもよい。
【0017】
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器100のトッププレート3及び通気口カバー7が取り外された状態の斜視図である。筐体上枠2の背面側の紙面左側には筐体排気口9が設けられ、紙面右側には筐体吸気口8が設けられている。筐体排気口9は筐体1の内外を連通しており、筐体1内を流れる冷却風の排気口として機能する。筐体排気口9の下側には、調理室20に接続された調理室排気風路18の出口となる開口が位置しており、調理室20からの排気も筐体排気口9を介して行われる。筐体吸気口8は、後述する吸排気ファン13と連通しており、筐体1内への冷却風の入口として機能する。
【0018】
加熱口4a及び加熱口4bに対応する位置には、筐体1内に加熱コイル10a及び加熱コイル10bがそれぞれ設けられている。加熱口4cに対応する位置には、筐体1内にラジエントヒータ11が設けられている。加熱コイル10a、加熱コイル10b、及びラジエントヒータ11は、トッププレート3の上に載置される被加熱物を加熱する加熱手段の一例であり、ラジエントヒータ11及び加熱コイル10a、10bを相互に置き換えてもよい。
【0019】
加熱コイル10a及びラジエントヒータ11の下方には、内部に空間を有する概ね箱状の部材である調理室収納部17が設けられている。調理室収納部17の内部には、調理室20が配置される。調理室収納部17と調理室20との間には隙間が設けられており、この隙間の空気層が断熱機能を発揮して、調理室20の周囲に配置される部品の熱による劣化等を軽減している。
【0020】
調理室収納部17の紙面右側であって、加熱コイル10bの下側には、コントロールユニット12が配置されている。コントロールユニット12には、加熱コイル10a及び加熱コイル10bに高周波電力を供給するインバータ回路を含め、加熱調理器100を動作させる各種の電気部品が収容されている。
【0021】
図3は、実施の形態1に係る加熱調理器100のコントロールユニット12の斜視図である。コントロールユニット12は、インバータ回路を含む各種の電気部品16を収容するほか、吸排気ファン13の収容部と吸排気ファン13からの冷却風の風路を兼ねている。コントロールユニット12には、コントロールユニット12への冷却風の入口となるユニット吸気口14と、ユニット排気口15とが開口している。コントロールユニット12が筐体1内に収容された状態において、ユニット吸気口14は、筐体吸気口8の下方に位置する。吸排気ファン13が動作すると、ユニット吸気口14から吸引された冷却風の一部は、コントロールユニット12の上面に設けられたユニット排気口15から送出され、残りの冷却風は電気部品16を冷却する。電気部品16を冷却した冷却風は、コントロールユニット12の側面の下方に設けられたユニット排気口15から流出する。ユニット排気口15から流出した冷却風は、加熱コイル10a、10b等を冷却しながら筐体1の背面に向かって流れ、筐体排気口9から排気される。
【0022】
図4は、実施の形態1に係る調理室20の前面側斜視図である。調理室20は、左右一対の側壁22及び天井壁23を有する概ね直方体形状を有し、調理室20の前面はスライドして開閉する調理室扉25が設けられている。調理室20の背面には、加熱室30が設けられ、加熱室30の背面には調理室排気風路18が接続されている。
【0023】
図5は、実施の形態1に係る調理室20の背面側斜視図である。調理室20の背面を構成する後壁21からは、調理室20内を上方から加熱する第一加熱手段26の端子部が突出している。第一加熱手段26は、コントロールユニット12内の基板に配線され、制御手段によって加熱の有無や加熱量が制御される。
【0024】
また、調理室20の後壁21の下部には、スライドレールカバー27が取り付けられている。スライドレールカバー27は、調理室扉25をスライドさせる後述するスライドレールユニット60の端部をカバーする部材である。
【0025】
さらに、調理室20の後壁21には、加熱室30が設けられている。加熱室30は、調理室20の幅方向においては、一対のスライドレールユニット60の間に配置されている。また、高さ方向においては、加熱室30はスライドレールユニット60の少なくとも一部と重なるように配置されている。
【0026】
加熱室30の背面には電動機32が設けられている。電動機32の回転軸には、加熱室30内に配置される後述の遠心ファン31が取り付けられている。遠心ファン31と電動機32とで送風機を構成している。電動機32は、例えばDCモーターや誘導モーターが用いられる。電動機32はその仕様に応じて動作環境と回転軸軸受け寿命との兼ね合い等から必要に応じて冷却される。例えば、電動機32の回転軸に冷却用のファンを備えてもよいし、電動機32を冷却する冷却ファンを別途設けてもよい。電動機32は、コントロールユニット12に収容された制御手段によって、回転の有無や回転数が制御される。
【0027】
加熱室30の背面の電動機32よりも上側には、加熱室30内と連通し、加熱室30からの排気が通過する調理室排気風路18が取り付けられている。加熱室30が筐体1内に収容された状態において、調理室排気風路18の出口側の開口は筐体排気口9と連通する。
【0028】
また、加熱室30の背面からは、加熱室30内に設けられる第二加熱手段33の端子部が突出している。第二加熱手段33は、加熱室30内を加熱する例えば電気ヒータであり、コントロールユニット12内の回路基板に配線され、制御手段によって加熱の有無や加熱量が制御される。
【0029】
図6は、実施の形態1に係る調理室20の背面側斜視図であり、天井壁23、加熱室30の付帯部品、スライドレールカバー27、及び調理室排気風路18が取り外された状態を示している。調理室20の後壁21には、調理室吸込口28が設けられている。調理室吸込口28は、調理室20内の空気を加熱室30へ吸い込むための開口部である。本実施の形態の調理室吸込口28は、円形の開口で構成されており、調理室吸込口28の周囲にはベルマウス形状が形成されている。このようにベルマウス形状を設けることで、加熱室30に配置される遠心ファン31への空気の流入に伴う圧力損失及び渦の生成を抑制して騒音を低減するとともに、送風性能を高めている。
【0030】
また、調理室20の後壁21には、吹出口29が設けられている。吹出口29は、加熱室30内の空気を調理室20へ吹き出すための開口部である。本実施の形態の吹出口29は、複数の円形の小孔で構成されており、複数の小孔が後壁21の幅方向に並んで配置されている。図に示されるように、吹出口29は、調理室吸込口28よりも下側に設けられている。
【0031】
また、調理室20の後壁21からは、一対のスライドレールユニット60の端部が突出している。
【0032】
調理室20内の上部には、第一加熱手段26が設けられている。第一加熱手段26としては、例えば抵抗発熱体であるシーズヒータを用いることができる。なお、シーズヒータのほか、遠赤外線ヒータや近赤外性ヒータ、カーボンヒータ等のガラス管ヒータを第一加熱手段26として用いてもよい。また、調理室20内に第一加熱手段26を配置するのではなく、フラットヒータや誘導加熱コイルを調理室20の天井壁23の上側に設けて天井壁23を加熱することもできる。このような構成のほか、調理室20内の被加熱物を上方より放射や空気による伝熱により加熱できる手段であれば、具体的構成及び配置は限定されない。
【0033】
調理室20の一対の側壁22は、本実施の形態では、二枚の板が隙間を介して配置された二重壁構造で構成されている。
【0034】
調理室20の内部には、被加熱物が載置される調理台40が収容され、この調理台40の下側には受皿45が設けられている。
【0035】
図7は、実施の形態1に係る加熱室30及び加熱室30の付帯部品の前面を下方からみた斜視図である。加熱室30は、前面側を開口し、内部に収容空間を有する。加熱室30の内部には、遠心ファン31が設けられている。遠心ファン31は、加熱室30の背面に取り付けられた電動機32の回転軸に固定されており、電動機32の動作により回転する。遠心ファン31が回転すると、遠心ファン31の中央部に空気が吸引され、吸引された空気は遠心ファン31の外周部から送出される。本実施の形態では、遠心ファン31としてラジアルファンを用いた例を示しているが、ターボファンを用いてもよく、ラジアルファンを用いた場合と同様に後述する熱風循環による加熱が行われる。
【0036】
加熱室30の背面に形成された開口部に、調理室排気風路18が接続されている。加熱室30の背面の開口部を介して、加熱室30内と調理室排気風路18とが連通する。
【0037】
加熱室30内には、第二加熱手段33が設けられている。本実施の形態では、第二加熱手段33はシーズヒータであり、棒状のシーズヒータが遠心ファン31の外周の概ね全体を取り囲むようにして配置されている。第二加熱手段33は、遠心ファン31から送出される空気を加熱する。なお、第二加熱手段33の具体的構成としては、セラミックヒータ、ニクロム線ヒータ、ハロゲンランプヒータ、カーボンヒータ等のガラス管ヒータを用いてもよい。これらのほか、遠心ファン31からの送出される空気を加熱できる発熱体であれば、第二加熱手段33の具体的構成は限定されない。
【0038】
図8は、実施の形態1に係る調理室20の前面側斜視図であり、天井壁23及び調理室扉25が取り外された状態を示している。調理室20の両側の側壁22の内面には、左右一対のスライドレールユニット60が調理室20の前後方向に渡って設けられている。スライドレールユニット60は、調理室20の側壁22に取り付けられた固定レール61に対し、可動レール62が直線移動自在に保持されて構成されている。一対のスライドレールユニット60の間には、一対の可動レール62に跨がるようにして取り付けられた支持部63が設けられている。支持部63は、その上部に受皿45を着脱自在に保持する。スライドレールユニット60の可動レール62の一端は調理室扉25に接続され、調理室扉25のスライド移動による開閉が実現される。また、可動レール62に取り付けられた支持部63には受皿45が支持されており、調理室扉25の移動に伴って、受皿45、受皿45に保持される調理台40、及び調理台40に載置される被加熱物が一体的にスライドして概ね調理室20の外部に取り出される。このような構成により、被加熱物の調理室20内への載置及び搬出、調理台40及び受皿45の着脱が容易となり、調理の作業性、メンテナンス性、及び清掃性を高めている。なお、本実施の形態及びこれ以降の実施の形態において、固定レール61、可動レール62、及び支持部63を区別する必要のないときには、単にスライドレールユニット60と称する。
【0039】
スライドレールユニット60の可動レール62と固定レール61の背面側の端部にはそれぞれ磁石が取り付けられている。この磁石間の引力により、調理室扉25が閉状態近傍においては、調理室扉25を閉方向に付勢して調理室扉25を調理室20の前面開口に密着させ、調理室20の気密性を高めている。本実施の形態においては磁力を用いているが、バネ等の弾性体により閉方向に付勢してもよい。スライドレールユニット60の背面側の端部は、調理室20の後壁21から外側に突出して配置され、突出した部分はスライドレールカバー27によって覆われている。
【0040】
調理室20の後壁21には、吸込口体50が配置されている。吸込口体50は、調理室20の内部と後壁21に形成された調理室吸込口28との間に概ね機密な風路を形成する部品である。吸込口体50は、平板面が後壁21に対向するようにかつ後壁21との間に空間をおいて設けられた主板51と、主板51の左右両端部から主板51と概ね直交する方向に後壁21に向かって延びる左右一対の側板52とを有する。主板51は、その上部に対し下部の方が後壁21に近づくように、傾斜して設けられている。側板52が後壁21に接続されることにより、吸込口体50が後壁21に取り付けられている。主板51及び側板52の上端部と、後壁21との間には通風可能な開口(隙間)が設けられており、この開口を吸込口体吸込口70と称する。吸込口体吸込口70は、調理室吸込口28内への空気の流入口として機能し、吸込口体吸込口70と調理室吸込口28との間には風路が形成される。
【0041】
吸込口体50と後壁21との間には、調理室吸込口28の少なくとも一部を覆うようにして触媒体71が設けられている。触媒体71は、通風可能な小孔を有しており、通過する空気に含まれる臭気成分や油煙を吸着して酸化分解することで、調理室20や排気の清浄度を高める。触媒体71には酸化触媒が添着されており、白金、パラジウム、マンガン等のいずれかまたは全てが含有される。低温活性の白金やマンガンを含む触媒を用いることでより高い浄化性能を得ることができる。触媒体71における酸化分解に伴う酸化熱により、循環する空気を加熱し、被加熱物の加熱効率を高めている。
【0042】
吸込口体吸込口70は、調理室20の上下方向において中央よりも上側に設けられている。吸込口体吸込口70を形成する主板51の上端が後壁21の上端よりも下側に位置していることにより、吸込口体吸込口70は、調理室20の前方に向いて開口している。吸込口体吸込口70を介して調理室20の上方から空気を吸い込むことで、被加熱物が載置される調理台40の上面付近の風速が上昇することを抑えつつ、調理室20内の空気を吸い込むことができる。また、調理室20の上方に滞留する高温の空気を選択的に吸い込むことができるので、調理室20内の温度の不均一が軽減され、被加熱物である食材の加熱ムラが抑制されて良好な調理の仕上がりを得ることができる。
【0043】
また、吸込口体吸込口70を介して高温の空気を選択的に吸い込むことから、触媒体71の表面温度を上昇させることができ、これによって触媒体71の触媒活性が高くなる。このため、触媒体71における臭気成分や油煙の分解能力が高まり、調理室20内や排気の空気の清浄度を更に高めるとことができる。また、調理室20内上方に滞留する臭気成分や油煙を効率良く吸い込むことで、調理室20内の臭気成分や油煙を効率的に排出することができる。
【0044】
また、吸込口体50は、触媒体71の少なくとも一部が高さ範囲において第一加熱手段26と重なるようにして、触媒体71を保持する。また、吸込口体吸込口70の開口の高さ範囲は、触媒体71と及び第一加熱手段26が重なる範囲を含む。より詳しくは、本実施の形態では、第一加熱手段26の後壁21側の一部が左右方向に延びており、当該部分が触媒体71と略平行に対向している。対向する触媒体71と第一加熱手段26との間には、吸込口体50の主板51は位置しておらず、触媒体71の少なくとも一部と第一加熱手段26とが直接対向するので、触媒体71は第一加熱手段26からの放射を直接受け、触媒体71の表面温度が上昇して触媒活性が高くなる。これにより、高い酸化分解の性能が得られ、調理室20内や排気の空気の清浄度を更に高めるとともに、触媒体71を加熱する専用の加熱手段を不要として製品コストと消費電力を低減している。
【0045】
遠心ファン31から送出された空気の一部は、調理室排気風路18へ流入して調理室排気風路18の背面側垂直部の上端開口より排気される。排気される風量は触媒体71の圧力損失を含め調理室排気風路18の流路断面積により適切な排気風量となるよう調整され、適切な風量の排気により調理室20内での良好な調理効果及び仕上がりが得られるとともに、加熱効率が不要に低下することはない。
【0046】
調理室20の側壁22には、温度センサ72が設けられている。
図8では、温度センサ72は、側壁22の調理室扉25に近い位置に設けられているが、本実施の形態では温度センサ72の配置は特に限定されない。温度センサ72は、調理室20内の温度を検知する。温度センサ72の具体的構成としては、例えばサーミスタが用いられるほか、白金測温抵抗体、熱電対等を用いてもよい。また、被加熱物から放射される赤外線量を検知して被加熱物の表面温度を検知する被接触式の温度センサ72を備えてもよい。
【0047】
温度センサ72の出力は、コントロールユニット12内の回路基板に実装される制御回路やマイコン等を含む制御手段に入力され、制御手段が調理制御プログラムに基づいて実行する第一加熱手段26、第二加熱手段33、電動機32等の動作制御に用いられる。
【0048】
図9は、実施の形態1に係る調理室扉25及びその付帯部品が調理室20から取り出された状態の背面側斜視図である。調理室扉25の調理室20側(内側)の外周部には、気密部材73が取り付けられている。気密部材73は、ゴムやシリコンの弾性体で構成され、調理室扉25の外周のやや内側に取り付けられている。調理室扉25が閉められた状態では、調理室20の前面開口部の外周に気密部材73が接触して、調理室扉25と調理室20の前面開口部との隙間からの空気の漏れを抑制している。調理室扉25には、調理室20内を視認可能な透過部を設け、ユーザーが調理室20内を目視できるようにしてもよい。
【0049】
調理室扉25の内面側に取り付けられた可動レール62は、調理室20内に取り付けられた固定レール61に対して着脱自在に係合され、調理室扉25を調理室20から取り外すことができる。このため、調理室扉25の洗浄が容易であり、メンテナンス性のよい構造である。さらに、可動レール62を調理室扉25から取り外し可能な構成としてもよい。
【0050】
可動レール62及び支持部63の上には、受皿45が着脱自在に係止されている。受皿45の上には、調理台40が保持されている。受皿45の前後の周壁の高さは、背面側に対して前面側(調理室扉25に近い側)の方が高い構造であり、それに伴って受皿45の左右の周壁は、背面側から前面側に向かって徐々に高くなっている。
【0051】
本実施の形態の調理台40は、例えば左右方向に延びる棒状の鋼材を前後方向に間隔をあけて複数並べられ、これら棒状の鋼材が脚部によって支持された構成である。調理台40に載置される被加熱物が接触する部分を載置面41と称する。本実施の形態では物理的な面ではないが、棒状の鋼材の上端を接続して構成される面が載置面41に相当する。なお、本実施の形態において調理台40の構成は図示のものに限定されず、載置面41に通風可能な開口(隙間)があれば具体的形状は限定されない。例えば、棒状の鋼材を格子状に組み合わせたものや、前後方向に延びる棒状の鋼材を組み合わせたものを載置面41とする調理台40でもよい。また、平板状の鋼材に穿孔を施したいわゆるパンチングメタルを載置面41とする調理台40でもよい。調理台40の材料は、耐熱性のある素材で調理に適した毒性のない素材、例えばステンレス鋼を用いることができ、また、素材の表面に非粘着性や防汚性を備えた無機セラミックコーティング剤等を塗布してもよい。
【0052】
図10は、実施の形態1に係る調理室20の断面図であり、加熱室30を通る水平断面を示している。受皿45の左右の周壁の間隔は、背面側の長さL1に比べて前面側の長さL2の方が短くなるように形成されている。すなわち、受皿45の左右の周壁は、背面側から前面側に向かうにつれて互いに徐々に近づく構成である。また、
図9で示したように、受皿45の左右の周壁は、背面側よりも前面側の方が高い。このように受皿45の左右の周壁を、背面側より前面側を高くすることで、調理室20の後壁21側から受皿45内に吹き出された熱風の拡散を抑制することができる。通常、調理室20の後壁21側から受皿45内に吹き出された熱風は、前面側に進み吹出口29から離れるほど拡散し、左右の周壁から受皿45の外へ流出しやすくなるが、本実施の形態のように受皿45の左右の周壁を前面側ほど高くすることで、受皿45からの熱風の流出を抑制することができる。これにより、調理室20の側壁22への熱風の接触を抑制して熱漏洩を減らすことができるので、調理室20内の被加熱物の加熱効率を高めるとともに吸排気ファン13による筐体1内の冷却に係る冷却風量及び騒音を低減することができる。
【0053】
また、受皿45の左右の周壁同士の間隔を、背面側の間隔L1に比べ前面側の間隔L2方が狭くなるように形成したことにより、受皿45内に吹き出された熱風が調理台40の前面側に向かって集約する気流を形成することができる。これにより、比較的加熱されにくい調理台40の前面側における被加熱物の加熱効率を高め、加熱ムラを軽減している。
【0054】
また、受皿45の前面側の周壁を高くすることで、上方に向かう気流を形成することができ、更に加熱されにくい前面側の加熱効率を高めることができる。また、熱風は受皿45の前側の周壁に導かれて上方に向かうため、調理室扉25の内面に接触する熱風が抑制される。これにより、調理室扉25からの熱漏洩が軽減されて調理室20内の被加熱物の加熱効率を高めることができるとともに、調理室扉25の外面の温度上昇を抑制して調理室扉25への接触に対する安全性を高めることができる。
【0055】
図11は、実施の形態1に係る調理室20の断面図であり、後壁21に平行な垂直断面を前面側からみた図を示している。吹出口29は、調理室20の後壁21に複数形成されている。吹出口29は、調理台40の載置面41の両端よりも内側で、さらに吸込口体50の幅方向(左右方向)の両端よりも内側の範囲に配置されている。本実施の形態では、吹出口29の各々は、略円形の開口である。調理台40の載置面41の中心に対して、右側に配置された吹出口29の開口面積の合計は、左側に配置された吹出口29の開口面積の合計よりも大きい。ここで、本実施の形態の遠心ファン31は、前面視にて時計回りで回転する構成であり、吹出口29が配置される遠心ファン31の下方には遠心ファン31から送風される気流の旋回成分により右から左に向かう旋回成分が生じるため、吹出口29からの気流はまっすぐ前方ではなく左前方に傾斜して吹き出される。このため、左右中心よりも右側の吹出口29は等間隔に開口させることで、右側全体及び右側から左側へ流入する流れを形成している。また、左右中心よりも左側の吹出口29は、不等な間隔で開口されており、かつ左端部には吹出口29が設けられていない。このようにすることで、加熱室30内において左端から中心に気流が向かう圧力バランスを形成し、また左右中心よりも左側の吹出口29から吹き出される熱風の左側への傾斜を抑制することができるので、熱風によって加熱される被加熱物の左右の加熱ムラを軽減することができる。なお、遠心ファン31が前面視にて反時計回りで回転する構成である場合には、上述の吹出口29とは左右逆の構成とする。
【0056】
調理室20を形成する側壁22、天井壁23、及び底面24は、隙間を介して二枚の板材が設けられた二重壁構造である。隙間による断熱作用により、調理室20からの熱漏洩が抑制され、調理室20内の加熱効率を高めるとともに、調理室20の周囲に配置される部品の熱漏洩による温度上昇を抑制してそれらの部品の冷却効率を高めている。なお、本実施の形態では、隙間を配した二重壁構造による空気断熱を実現しているが、必要に応じてその隙間にグラスウールや真空断熱材等の断熱材を挿入して断熱性能を高めてもよく、そのようにすることで上述した加熱効率や冷却効率を高めることができる。
【0057】
図12は、実施の形態1に係る調理室20の断面図であり、側壁22に平行な加熱室30を通る垂直断面を示している。吸込口体50の主板51の上端と調理室20の天井壁23との間には、吸込口体吸込口70が設けられている。吸込口体吸込口70の下端と調理台40の載置面41との間には、高さ寸法で20mm以上の間隔を設けるのが好ましい。このような間隔を設けることで、被加熱物の典型例である魚の切り身や干物の上面よりも高い位置に吸込口体吸込口70が配置され、吸込口体吸込口70に吸い込まれる気流の被加熱物の上面近傍における風速が低減され、吸込口体吸込口70に近接する被加熱物の背面側上面が焼けすぎる加熱ムラを軽減する効果がある。
【0058】
吸込口体吸込口70の高さ範囲は、触媒体71及び調理室吸込口28と重なっている。吸込口体吸込口70から吸い込まれた気流が調理室吸込口28を介して遠心ファン31へ直線的に流れる流路が形成されることで、吸い込みの圧力損失が低減され、これによって遠心ファン31及び電動機32の負荷及び騒音を抑制することができる。また、吸込口体吸込口70の高さ範囲は、触媒体71及び第一加熱手段26とも重なっており、触媒体71は第一加熱手段26の略平行に対向して配置される部位から主に直接輻射による加熱され、触媒体71の表面温度が高まって浄化性能を高めることができる。
【0059】
吸込口体50は、主板51の下端部から後方に向かって延びる底板53を有する。ここで、吸込口体50の底板53及びこれに関連する構造について詳細に述べる。
【0060】
図13は、
図12の吹出口29及び吸込口体50の底板53近傍の拡大図である。吹出口29の下端部の上下方向における位置は、調理台40の載置面41よりも低く、かつ受皿45の吹出口29側の端部よりも高い位置である。また、吹出口29の上下方向における位置は、吸込口体50の底板53と後壁21との接続位置、すなわち底板53の最上端部よりも低い位置である。
【0061】
吸込口体50の底板53は、前後方向(
図13の紙面左右方向)において水平、または調理室扉25側が下降するように傾斜している。底板53を傾斜した構成とする場合の傾斜角度θは、水平から下方へ60度の範囲であるのが好ましい。このようにすることで、吹出口29からの熱風を水平から下方に向けて導風するとともに拡散させ、調理台40の載置面41の下方の風速を低減させることができる。このように、吸込口体50の底板53は、熱風の導風面として機能する。
【0062】
吸込口体50の底板53を傾斜させた場合の底板53と吹出口29との位置関係に着目すると、底板53の最上端部、すなわち底板53と後壁21との接続位置は、吹出口29の上端よりも高い位置にある。また、底板53の最下端部、すなわち前後方向において調理室扉25側の端部は、吹出口29の最下端部よりも高い位置にある。
図11を併せて参照すると分かるように、正面視において吹出口29の上下方向の概ね中心よりも上側は、吸込口体50の傾斜する底板53で覆われる。このような吹出口29及び底板53の構成により、吹出口29からの熱風を導風して上方に向かう気流を軽減するとともに、熱風を調理台40の下方に拡散させて速度を遅くしている。これによって、調理台40の載置面41に載置される被加熱物に熱風が直接的に衝突するのを抑制し、風速及び温度の不均一を緩和させて加熱ムラを軽減している。
【0063】
また、吸込口体50の底板53の後壁21からの突出寸法は、吹出口29の高さ寸法(内径の直径)の0.5倍〜3倍の突出寸法とするのが好ましい。このようにすることで、導風及び熱風の拡散効果を高めることができ、被加熱物の下面の加熱ムラをより軽減することができる。
【0064】
図12に戻って説明を続ける。受皿45の左右の周壁は、吹出口29から離れるほど高くなっており、また左右の周壁間の距離は吹出口29から離れるほど狭くなっている(
図10参照)。このため、調理台40の載置面41の下側を流れる熱風は、調理室扉25に向かって流れる過程で、徐々に高くなる受皿45の左右の周壁があることで受皿45の外部へ流出しにくい。また、受皿45の左右の周壁間の間隔は調理室扉25に向かって狭くなっているので、熱風の流れる方向に沿って受皿45内の流路断面積が縮小し、それによって風速が増す。このため、吹出口29から比較的遠く加熱されにくい領域である調理室扉25付近の加熱効率を高め、被加熱物の加熱ムラを軽減することができる。
【0065】
受皿45の周壁のうち前側部分、すなわち調理室扉25の近傍に位置する部分は、概ね垂直の面であるとともに、受皿45の底面と曲面で接続されている。また、受皿45における調理室扉25側の上端部は、吸込口体50の底板53における調理室扉25側の上端部よりも高い位置にある。このため、吹出口29から吹き出された前面側に向かう熱風は、受皿45の底面及びこれに連なる曲面に導かれて、受皿45の前側の周壁に沿って流れ、上方に導風される。これにより、熱風の直接的な調理室扉25への接触が軽減され、被加熱物の加熱効率を向上させることができるとともに、調理室扉25の高温化を抑制してユーザーが調理室扉25に接触したときに感じる熱さを抑制できる。
【0066】
次に、上記のように構成された加熱調理器100の動作を説明する。操作部5に操作入力が加えられると、コントロールユニット12内の回路基板に実装された制御手段に制御されて加熱コイル10a、10b、ラジエントヒータ11、第一加熱手段26、第二加熱手段33、電動機32が動作し、操作入力に応じた加熱調理が行われる。具体的には、制御手段は、操作入力に応じて予め記憶装置に記憶された制御シーケンスを読み出し、制御シーケンスにしたがって各部を制御する。また、制御手段によって吸排気ファン13が駆動され、加熱調理器100内の冷却も同時に行われる。表示部6には、入力された加熱条件、調理モード、調理メニューや、加熱調理器100における動作状態が表示される。
【0067】
調理室20において調理台40に被加熱物を載置して加熱する動作を詳細に説明する。ここでは、被加熱物である肉や魚等の食材を、調理台40の載置面41に直接載置して加熱する調理モードを例に、加熱調理の制御及び動作を説明する。
【0068】
調理工程が開始されると、第一加熱手段26及び第二加熱手段33は最大の加熱量となるように制御され、電動機32は停止するように制御される。調理工程を開始する際に電動機32が停止していることにより、調理室排気風路18からの排気は自然排気のみとなるので、排気量としては最少となる。このため、排気に伴う排熱が抑制され、調理室20及び加熱室30の内部における昇温速度を速めることができる。また、調理工程の開始時には調理室20及び加熱室30は比較的低温であって吹出口29から気流を吹き出したとしても被加熱物の加熱への寄与は低い。このため、電動機32を停止させておくことで、加熱に寄与しない気流が接触することによる被加熱物の乾燥を抑制することができる。
【0069】
加熱を開始して、加熱室30内の温度が概ね250℃以上となるような所定時間が経過した後、電動機32が駆動される。電動機32の動作により遠心ファン31が回転して送風が開始され、吹出口29から高温の気流が吹き出される。調理台40に載置された被加熱物の上面は、第一加熱手段26からの放射と周囲の空気からの伝熱により加熱され、被加熱物の下面は主に吹出口29から吹き出され調理台40の載置面41の下方を流れる熱風より強制対流熱伝達により加熱される。
【0070】
温度センサ72によって検出される調理室20内の温度が所定の温度(例えば250℃)となるまでは、第一加熱手段26と第二加熱手段33ともに最大出力で加熱を行う。これにより、短時間で被加熱物を70℃程度まで昇温させて被加熱物の表層部のタンパク質を凝固させ、内部の水分等の揮発を抑制して内部のジューシーさを保持するように制御される。
【0071】
さらに、加熱初期における調理室20内の温度の変化等を温度センサ72からの出力に基づいて検出し、その温度変化等に基づいて被加熱物の量や初期の温度を制御手段にて算出してもよい。そして、制御手段は、算出した被加熱物の量や初期の温度に基づいて調理時間等の加熱シーケンスを設定し、以降はその加熱シーケンスにしたがって第一加熱手段26、第二加熱手段33、及び電動機32を制御する。このようにすることで、被加熱物の量や状態に応じた適切な加熱調理を行うことができる。
【0072】
その後、調理室20内が所定の温度に達すると、その後は被加熱物の上面、下面、及び内部の焼き加減が適切になるように火力や風速が制御される。
【0073】
吹出口29から吹き出される熱風は、吸込口体50の底板53によって真上に向かう流れが抑制されて前方へ向かう流れとなる。さらに底板53が下方に向かって傾斜した構成の場合、吹出口29からの気流は、水平から下方へ向かう気流となる。これにより、気流が拡散して温度及び風速が均一に近づき、被加熱物の下面の加熱ムラを軽減して良好な調理の仕上がりを得ることができる。また、吹出口29から出た熱風は吸込口体50の底板53に接触して導風されるので、熱風の風速は遅くなり、また被加熱物に直接的には熱風が吹き付けられず間接的な気流であるので、被加熱物の乾燥が抑制される。このため、電動機32の精密な制御による風量制御を行わなくとも、安定した調理効果及び仕上がりを得ることができる。また、電動機32を精密に制御する場合と比較して制御手段の処理能力は低くてもよいので、制御ソフトウェアも簡素化できる。このため、加熱調理器100の開発コスト及び製品コストを低減できるとともに、製品の品質を高めることができる。
【0074】
上面を主に加熱する第一加熱手段26の放射伝熱による加熱では、時間の経過に伴い昇温速度は徐々に小さくなるが表面温度は上昇し続ける。一方、被加熱物の下面を主に加熱する吹出口29からの気流による対流熱伝達による加熱では、気流の温度(調理室20内の空気温度とほぼ同等)よりやや遅れて表面温度は高くなり、調理室20の空気温度に近づく傾向がある。このような加熱工程の違いより、第一加熱手段26での加熱を続けると、被加熱物上面の温度は高くなり過ぎて焦げてしまい食味を損なうことから、調理室20内の温度が所定となった時点で、第一加熱手段26の火力は低減され第二加熱手段33よりも平均的には低い出力に制御される。一方、被加熱物の下面の表面温度及び被加熱物の内部温度が所定温度になるまでの間は、第二加熱手段33は、調理室20内温度が上限温度を超えない範囲で、第一加熱手段26よりも高い出力となるよう制御される。
【0075】
調理工程の終盤においては、第一加熱手段26の出力はそれまでよりも高く制御される。このように制御することで、食材の表面に適切な(美味しそうな)焼色をつけるとともに表面の水分を揮発させてパリッとさせる。これにより、見た目も食味も良好な調理効果及び仕上がりを得ることができる。
【0076】
所定の制御シーケンスの実行が完了すると、第一加熱手段26及び第二加熱手段33による加熱動作は停止して、表示部6において調理完了を表示する。さらに、ブザーや音声によって調理完了を報知してもよい。
【0077】
以上のように本実施の形態では、調理台40と調理室20の底面24との間には、通風可能な空間が設けられており、この通風可能な空間に調理室20の後壁21に形成された吹出口29から熱風を吹き出す構成である。そして、調理室20内において吹出口29の上側に吸込口体50の底板53が配置され、吹出口29は、底板53と後壁21との接続位置より低くかつ調理室20の底面24よりも高い位置に配置されている。このため、吹出口29からの熱風は底板53で導風されて前方に向かうので、吹出口29からの熱風が上方に向かって調理台40に載置された被加熱物の下面に直接衝突するのを抑制することができる。また、吹出口29からの熱風の温度及び風速が均一に近づくので、被加熱物の加熱ムラが軽減される。また、熱風の風速を遅くすることで、被加熱物の下面の乾燥が抑制され、ジューシーで良好な食味とすることができる。
【0078】
また、吸込口体50の上端部に形成される吸込口体吸込口70を、調理室20の上方に設け、調理室20の上方の空気を吸込口体50内へ流入させる。これにより、吸込口体50を設けず調理室20の後壁21中央に形成された調理室吸込口28から加熱室30へ流入させる場合と比較して、被加熱物の上面に接触する熱風の流速を遅くすることができる。このため、被加熱物の上面の乾燥が抑制されジューシーで良好な食味とすることができる。
【0079】
また、吸込口体50の底板53で導風面を構成したので、ルーバーや導風板のような専用の部材は不要であり、部品点数を少なくして低コストで加熱調理器100を製造することができる。また、吸込口体50は、導風板として機能する底板53のほか、主板51及び左右一対の側板52を備えた部材であり、単なる平板ではなくて曲げ部あるいは溶接部を備えた立体的な構造である。このため、導風板として機能する底板53の熱による撓みや変形が抑制され、所望の方向への導風効果を安定的に得ることができ、加熱調理器100の信頼性及び品質を高めることができる。
【0080】
また、調理室20の上方から加熱する第一加熱手段26を備えるとともに、加熱室30には第二加熱手段33を備えた。そして、被加熱物の下面の焼き加減は主に吹出口29からの熱風の温度で調整され、その熱風の温度は第二加熱手段33の出力により制御される。また、被加熱物上面の焼き加減は主に第一加熱手段26の表面温度で調整され、第一加熱手段26の表面温度は第一加熱手段26の出力により制御される。このように、第一加熱手段26と第二加熱手段33を備え、それぞれが独立して動作させることが可能な構成であるので、被加熱物の上方と下方の焼き加減を個別に適切に調整することができ、ユーザーの食の嗜好に合わせた良好な調理効果及び仕上がりを得ることができる。
【0081】
また、調理台40と受皿45の間には、被加熱物の下面を加熱する下方加熱手段として物理的な発熱体を配置していない。このため、調理台40と受皿45との間の高さ方向のスペースを節約することができ、節約したスペースの分だけ調理台40の上方のスペースを増やすことができる。したがって、より厚みのある被加熱物を調理室20内で調理することが可能となり、調理範囲を広げて調理能力を高める効果がある。また、被加熱物の下側に下方加熱手段を配置していないので、被加熱物からの油脂分が下方加熱手段に接触することや受皿45に溜まった油脂分が下方加熱手段に直接加熱されることがない。このため、発煙を軽減することができ、安全性が高まり信頼性が高く製品寿命を長くする効果がある。また、下方加熱手段を調理室20内に設けないことから、調理室20内のメンテンス性及び清掃性を高める効果がある。
【0082】
また、調理台40は複数の開口を有する構成であり、調理台40の下側には受皿45を備えた。そして、吸込口体50の底板53の下端は、調理台40の載置面41よりも低くかつ受皿45の上端よりも高い位置に設けられている。このため、吹出口29からの熱風を、調理台40の載置面41と受皿45との間の空間に導き、調理室扉25側に向かって流れる気流を形成することができる。したがって、調理台40の載置面41に載置される被加熱物を効率よく加熱することができる。
【0083】
本実施の形態では、導風面として機能する吸込口体50の底板53は、水平、または調理室20の後壁21から調理室扉25に向かって下方に傾斜する構成である。このため、吹出口29からの熱風は、水平または前方に向かって斜め下方に導風され、被加熱物の加熱ムラが軽減される。底板53の傾斜角度は、水平から60度までの範囲が好ましい。底板53の傾斜角度が60度を超えて過度に大きくなると、吹出口29からの熱風が受皿45内に流入せず、受皿45の下面と調理室20の底面24との間に流入して、調理台40に載置された被加熱物の加熱効率が低下してしまうが、上述のような傾斜範囲とすることで、受皿45の内部に熱風得を導いて加熱効率を高めることができる。
【0084】
本実施の形態では、吸込口体50の底板53の、調理室20の後壁21からの突出寸法は、吹出口29の高さ寸法の0.5倍〜5倍の突出寸法である。このため、有効な導風効果が得られ所定の風向にできるとともに、熱風の風速及び温度が均一に近づき、加熱ムラ少ない調理効果が得られる。また、底板53の突出寸法を上記範囲よりも大きくした場合と比べて、圧力損失の増加を抑制することができ、これによって遠心ファン31の効率を高めるとともに騒音を低減する効果が得られる。
【0085】
本実施の形態では、吸込口体50の内部には触媒体71が設けられている。吸込口体50を正面視した状態において、吸込口体50の調理室20内側の開口である吸込口体吸込口70の高さ範囲は、触媒体71と第一加熱手段26とが重なる高さ範囲を含む。すなわち、触媒体71の少なくとも一部は、第一加熱手段26と重なる位置であって、かつ主板51と重ならない位置に配置されている。このため、第一加熱手段26からの輻射で触媒体71を加熱でき、触媒体71に添着された酸化触媒温度を高くすることができるので、調理室20内および調理室20からの排気の空気の清浄度を高める効果がある。
【0086】
また、吸込口体50の内部には触媒体71が設けられ、吸込口体50の調理室20内側の開口である吸込口体吸込口70の高さ範囲と、触媒体71と、調理室吸込口28の高さ範囲とは、少なくとも一部において三者が重なるよう構成した。すなわち、触媒体71の少なくとも秩父は、調理室吸込口28と重なる位置であって、かつ主板51と重ならない位置に配置されている。このため、吸込口体吸込口70から触媒体71、調理室吸込口28、遠心ファン31に至る直線の流路が形成され、遠心ファン31の吸込みの圧力損失が低減でき、遠心ファン31の効率を高めることができるとともに遠心ファン31の騒音を低くすることができる。
【0087】
受皿45の後壁21に形成された吹出口29側の周壁の上端は、吹出口29の上端よりも低い位置にあり、また、受皿45の調理室扉25側の周壁の上端は、吸込口体50の底板53の下端部よりも高い位置にある。このため、吹出口29から吹き出された熱風は、受皿45の背面側の周壁に阻害されることなく受皿45内に流入することができる。また、吸込口体50の底板53の導風作用により上方に向かう気流が抑制されるので、概ね吸込口体50の底板53の最下端部よりも低い領域が比較的流速の速い主流となり、その流れは受皿45の底面から前面側の周壁に導かれて、上方に向かう気流となる。このため、調理室扉25への熱風の衝突が抑制され、被加熱物の加熱効率を高めることができるとともに、調理室扉25の外郭温度の上昇を抑制して安全性を高める効果がある。
【0088】
受皿45の左右の周壁は、吹出口29側の端部は低く吹出口29から離れるほど高い。また、受皿45の左右の周壁の間隔は、吹出口29側に比べて吹出口29から遠い側の方が狭い。このため、吹出口29から受皿45に流入した熱風は、吹出口29から遠い側に流れる過程において受皿45の左右の周壁が障壁となって受皿45内から流出しにくい。また、受皿45の左右の周壁の間隔が狭くなることから徐々に風速が増す。このため、比較的加熱されにくい調理室扉25付近の被加熱物の加熱を促進して、加熱ムラを改善する効果がある。
【0089】
また、本実施の形態の加熱調理器100は、トッププレート3とトッププレート3上に載置された被加熱物を加熱する加熱手段である加熱コイル10a、10bやラジエントヒータ11を調理室20の上方に備えた。このため、筐体1の上面では鍋やフライパン等の調理容器を用いた加熱調理ができ、調理室20ではグリル、ロースター、オーブン、スチーム調理等ができることから、一台の加熱調理機で同時に多様な調理が行え、省スペースで多機能な加熱調理器にできる効果がある。
【0090】
実施の形態2.
本実施の形態2は、主に実施の形態1の調理台40A、吹出口29、及び吸込口体50に関連する構成を変更したものであり、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。なお、
図1〜
図5に示した構成は、本実施の形態にも適用される。
【0091】
図14は、実施の形態2に係る加熱調理器100の前面側斜視図であり、天井壁23及び調理室扉25が取り外された状態を示している。本実施の形態の調理台40Aは、被加熱物が載置される載置面41Aが開口を有さない遮蔽体で構成されている。調理台40Aは、熱伝導のよい材料、例えばアルミ、鉄、ステンレス等の金属で構成される。本実施の形態の調理台40Aは、上下の凹凸が前後方向に連続する波板状であり、この凸部の上面を繋ぐ面を載置面41Aと称する。波板状の調理台40Aの載置面41Aに載置される被加熱物の上面は、実施の形態1と同様に第一加熱手段26からの放射と周囲の高温の空気からの熱伝達で加熱され、被加熱物の下面は調理台40Aの載置部からの熱伝導と周囲の高温の空気からの熱伝達で加熱される。調理台40Aは吹出口29からの熱風と第一加熱手段26からの放射で加熱される。なお、本実施の形態では、実施の形態1の受皿45に相当する部材は設けられていない。
【0092】
調理台40Aは、スライドレールユニット60Aによって前後方向に移動可能に支持され、調理室扉25がスライドして開閉する動作と一体で移動する。前述の実施の形態1では、スライドレールユニット60に受皿45が係止されており、調理台40は受皿45を介してスライドレールユニット60に支持される構成であったが、本実施の形態では調理台40Aはスライドレールユニット60Aに直接的に支持される。調理台40Aの少なくとも一部は、調理室20の外部と内部とを出入りして、被加熱物の調理室20内への収容及び取り出しを容易にしている。スライドレールユニット60Aは、固定レール61及び可動レール62については実施の形態1と同様である。
【0093】
本実施の形態では、調理台40Aの下側の領域には、通風可能な開口が形成されており、調理台下部空隙76と称する。調理台下部空隙76は、調理台40Aと調理室20の底面24との間を流れる熱風の通り道となっており、熱風の流れを阻害しない構成である。このように構成することで、加熱効率を高めるとともに、圧力損失を低減して遠心ファン31の負荷を低減して騒音を低減している。
【0094】
調理室20の背面側には、吸込口体50、後壁21、側壁22、及び調理台40Aまたはスライドレールユニット60Aで囲まれた吸込口体側部空隙74が形成されている。この吸込口体側部空隙74は、調理台40Aの下方の空間に通じている。このため、吸込口体側部空隙74は、吹出口29からの熱風で負圧となる調理台40Aの下方の空間へ、調理台40Aの上方の空間から空気が流入する流路として機能する。したがって、調理室20内の熱風の循環が促進され、温度の均一化が促進されるとともに、風速が増して加熱効率を向上させることができる。
【0095】
調理室20の右側の吸込口体側部空隙74の上方であって調理台40Aより高い位置には、温度センサ72が配置されている。温度センサ72をこの位置に配置することで、吸込口体側部空隙74へ流入する攪拌された比較的均一な温度の気流の温度を測定することができ、調理室20内の温度の検知精度を高めることができる。また、温度センサ72は、加熱室30と間隔を設けて配置するのが好ましい。このようにすることで、高温の加熱室30からの伝熱の影響を軽減して更に測定精度を高めることができる。本実施の形態では右側の吸込口体側部空隙74の上方に温度センサ72を配置しているが、左側の吸込口体側部空隙74(
図18参照)の上方に温度センサ72を配置してもよく、同様の効果が得られる。また、加熱室30の右側または左側の第一加熱手段26の端子部及び第二加熱手段33の端子部と揃えた位置に温度センサ72を配置することで、配線を一方向に集中させることができ、配線の接続作業を簡易化する効果もある。
【0096】
図15は、実施の形態2に係る調理室20の背面側斜視図であり、天井壁23、加熱室30の付帯部品、スライドレールカバー27、及び調理室排気風路18が取り外された状態を示している。調理室扉25が閉じられた状態において、調理室扉25と調理台40Aとの間には、熱風の流路となる調理台前部空隙75が開口している。
【0097】
図16は、実施の形態2に係る調理室扉25及びその付帯部品が調理室20から取り出された状態の背面側斜視図である。スライドレールユニット60Aの背面側においては、調理台40Aよりも下側の領域に通風可能な空隙である調理台下部空隙76が形成されている。調理台40A及びスライドレールユニット60Aが調理室20内に収容された状態において、調理台40Aと調理室20の底面24との間を流れる熱風の流れを阻害しない構成となっており、吹出口29からの熱風がスライドレールユニット60Aに接触することによる熱ロスを軽減している。これにより、加熱効率を高めるとともに、圧力損失を低減して遠心ファン31の負荷及び騒音を抑制している。
【0098】
調理台40Aの周壁の上端部には、外周に向かって延びるフランジ42Aが設けられている。
【0099】
図17は、
図16の調理台40Aが取り外された状態の図である。スライドレールユニット60Aは、実施の形態1とは、調理台40Aを支持する支持部63Aの形状が異なる。実施の形態1の支持部63は、板状部材が上下方向に延びる形状であったが、本実施の形態の支持部63Aの上下方向の長さは、実施の形態1と比較して短く、支持部63Aを構成する部材の板厚程度の長さである。このように支持部63Aを構成することで、調理台下部空隙76への熱風の流入を阻害しないようにしている。
【0100】
また、スライドレールユニット60Aの可動レール62の内側面には、可動レール62の高さ寸法よりも大きい高さ寸法を有する板状の対向面64Aが設けられている。この対向面64Aは、調理台40Aが支持部63Aに載置されたときに、調理台40Aの左右の周壁と対向するとともに近接し、調理台40Aの周壁とスライドレールユニット60Aとの間の隙間からの熱風の漏れを抑制する。本実施の形態の調理台40Aは、前述のように上下に凹凸のある波板状であるので、この凹凸の高さ範囲を覆う高さで対向面64Aが設けられている。したがって、調理台40Aの凹凸の隙間からの熱風の漏れが抑制され、調理台40Aの前面側までの熱風の流れが維持され、加熱効率を高めることができる。
【0101】
図18は、実施の形態2に係る調理室20の断面図であり、加熱室30を通る水平断面を示している。調理室扉25が閉じられた状態において、調理台40Aの前端部と調理室扉25との間に形成される調理台前部空隙75の流路断面積は、調理台40Aの下端と調理室20の底面24との間に形成される流路(
図19参照)の流路断面積よりも大きい。このような調理台前部空隙75を設けたので、圧力損失が低減され、遠心ファン31の負荷及び騒音を抑制することができる。
【0102】
図18では、吸込口体50の左右両側に形成されている吸込口体側部空隙74を、説明のために網かけで示している。吸込口体側部空隙74は、調理室20内を循環する気流の第二の循環流路を形成するのに寄与する。すなわち、調理室吸込口28から加熱室30内に吸い込まれ、遠心ファン31に送出されて吹出口29から調理室20内に吹き出され、調理台40Aの下方を通って調理室扉25側に向かい、上方に進んだ後に後方に向かって再び吸込口体50を介して調理室吸込口28へ吸い込まれる気流の流れが、調理室20における主たる循環流路である。さらに、本実施の形態では、吸込口体側部空隙74を設けたので、調理室20の前方から後方に向かう気流の一部は、吸込口体側部空隙74を通って調理台40Aの下方に流入し、第二の循環流路が形成される。この第二の循環流路を流れる気流は、吸込口体50及び加熱室30を通過しないが、調理室20内の空気の淀みを減少させて調理室20内の温度の均一化を促すことができる。
【0103】
吸込口体側部空隙74を設けず当該部分を塞いで調理台40Aの下側へ気流が流入しないようにした場合、上述の主たる循環流路によって調理室20内の被加熱物は加熱されるものの、吸込口体50の左右の下部には空気の淀みが生じやすく、加熱ムラに繋がりうる。また、スライドレールユニット60Aの背面側部分が高温となりやすく、スライド機構の寿命を縮めるとともに熱ロスとなりうる。しかし、本実施の形態のように吸込口体側部空隙74を設けることで、上述のように加熱ムラを抑制することができる。また、吸込口体側部空隙74を通過する気流の一部は、吸込口体50の外面に接触して吸込口体50を加熱するので、間接的に上述の主たる循環気流の加熱に記よし、加熱効率を高める効果がある。
【0104】
図19は、実施の形態2に係る調理室20の断面図であり、側壁22に平行な加熱室30を通る垂直断面を示している。
図20は、
図19の吹出口29及び吸込口体50の底板53近傍の拡大図である。実施の形態1と同様に、本実施の形態の吸込口体50の底板53は、吹出口29からの熱風の導風面として機能する。底板53の下端部は、調理台40Aの載置面41Aよりも低い位置に配置されている。吹出口29からの熱風は吸込口体50の底板53に導かれ、上方に向かう気流が抑制されて調理台40Aの前方に向かって進む。このため、吹出口29からの熱風が調理台40Aの下面に向かって進んで直接衝突することが抑制され、調理台40Aの背面側付近が高温となることによる調理台40Aに載置される被加熱物の加熱ムラが軽減されて、良好な調理効果を得ることができる。
【0105】
吹出口29の下端部の上下方向における位置は、調理台40Aの載置面41Aよりも低く、かつ調理室20の底面24よりも高い位置である。また、吹出口29の上端部の上下方向における位置は、吸込口体50の底板53の最上端部よりも低い位置である。吸込口体50の底板53は、実施の形態1と同様に、前後方向(熱風の流れ方向)において水平、または背面側から前面側に向かって下降している。
【0106】
図20において破線で示すように、吸込口体50の底板53の下端部の上下方向における位置は、調理台40Aの下端部よりも低い位置にある。このため、吹出口29から吹き出されて底板53に導かれた熱風が、調理台40Aの下端部に直接的に接触するのが抑制され、凹凸のある調理台40Aであってもその下方における円滑な循環風の流れが形成される。
【0107】
図21は、実施の形態2に係る調理室20の断面図であり、後壁21に平行な垂直断面を前面側からみた図を示している。正面視において、吹出口29の概ね上半分は、吸込口体50の底板53及び主板51で遮蔽されている。より詳しくは、本実施の形態では、
図19及び
図20で示したように吸込口体50の底板53が背面側から前面側に向かって下降していることにより、正面からみたときに吹出口29の概ね上半分が隠れている。このような吹出口29及び吸込口体50の底板53の構成により、吹出口29からの熱風の下方への導風効果を得ることができる。また、そのような導風効果に伴う熱風の拡散による温度の均一化、導風による圧力損失増加の抑制効果、加熱ムラの軽減、遠心ファン31の負荷及び騒音の抑制効果については、実施の形態1で述べたとおりである。
【0108】
図22は、
図21のスライドレールユニット60Aの対向面64A近傍の拡大図である。
図22において、スライドレールユニット60Aの対向面の上端部と、調理台40Aのフランジ42Aの下面との距離を、記号D1で示している。また、対向面64Aと対向する調理台40Aの周壁の外面と、対向面64Aとの距離を、記号D2で示している。調理台40Aがスライドレールユニット60Aに支持された状態において、距離D1はゼロ、あるいはD1<D2(ただし、D1>0)の関係を満たす。すなわち、調理台40Aのフランジ42Aの下面と対向面64Aとは、接触している(D1=0)、あるいは、距離D2よりも短い範囲で離れている。フランジ42Aの下面と対向面64Aの上端とが接触することにより、調理台40Aの下側を流れる熱風が、スライドレールユニット60Aと調理台40Aの左右の周壁との隙間を通って調理台40Aの上方へ漏れるのを抑制することができる。また、フランジ42Aの下面と対向面64Aの上端とが接触していなくても、両者の距離D1が距離D2よりも小さいことで、調理台40Aの周壁と対向面64Aとの間の熱風に対して距離D1の隙間が抵抗となり、この隙間を通って調理台40Aの上方へ熱風が漏れるのを抑制することができる。
【0109】
調理台40Aの周壁の外面と対向面64Aとの間の距離D2の隙間は、スライドレールユニット60Aに支持された調理台40Aが前後に移動する際の、円滑な動き及び騒音の抑制を目的としたものである。距離D2はゼロより大きい値であるが、調理台40Aの下方を流れる熱風の漏れを抑制するという観点では、この距離D2の隙間はなるべく小さいのが好ましい。
【0110】
次に、
図23及び
図24を参照して、実施の形態2に係る調理台40Aの他の例を説明する。
図23は、実施の形態2の変形例に係る調理室20の断面図であり、加熱室30を通る水平断面を示している。
図24は、実施の形態2の変形例に係る調理室20断面図であり、側壁22に平行な加熱室30を通る垂直断面を示している。
図23及び
図24に示すように、調理台40Aの載置面41Aは、平らな板状部材で構成されている。このような構成であっても、上述の波板状の載置面41Aを有する調理台40Aと同様の作用効果が発揮される。
【0111】
以上のように本実施の形態では、調理台40Aの載置面41Aは、上下に連通する開口を有さない板で構成されている。吹出口29は、導風面として機能する吸込口体50の底板53の上端部よりも低い位置にある。さらに、吸込口体50の底板53の下端部は、調理台40Aの載置面41Aよりも低い位置に設けられている。このため、吸込口体50の底板53に導かれて吹出口29からの熱風の上方へ向かう流れが抑制され、吹出口29からの熱風が調理台40Aの載置面41Aの裏面に向かって直接接触することが軽減される。調理台40Aの載置面41Aに載置される被加熱物において、吹出口29に近い側が遠い側に比べて加熱されすぎるような加熱ムラを抑制することができる。
【0112】
また、本実施の形態では、調理台40Aは開口を有さない板で構成されていて、調理台40Aの下側に実施の形態1のような受皿45は不要な構成である。受皿を設けないことで、調理台40Aの載置面41Aから第一加熱手段26までのスペースを広くでき、より大きな厚みのある被加熱物である食材を加熱調理することができる。これにより、調理室20内で加熱できる被加熱物の範囲を拡大できるとともに、一度に大容積の調理を行える。また、受皿45が不要なため低コストにできるととともに、受皿45の清掃が不要となり清掃性及びメンテナンス性を高める効果がある。
【0113】
また、吸込口体50の底板は、水平、または吹出口29に近い側から遠い側に向かって下方へ傾斜している。吹出口29の上端は吸込口体50の底板53の上端と近接して配置され、吸込口体50の底板53が吹出口29から離れるほど、正面視において吹出口29は底板53によって遮蔽される。このため、吹出口29からの気流は底板53によって下方へ導かれ、調理台40Aへの熱風の直接的な接触が軽減される。また、複数の吹出口29から吹き出された高温の熱風は、底板53に接触して導かれる過程で拡散し、温度が均一に近づくことから、調理台40Aにおける温度ムラが軽減され、被加熱物の加熱ムラが抑制される。
【0114】
また、吸込口体50の底板53の後壁21からの突出寸法は、実施の形態1と同様に、吹出口29の高さ寸法の0.5倍〜5倍の突出寸法である。このため、有効な導風効果が得られ所定の風向にできるとともに、熱風の風速及び温度が均一に近づき、加熱ムラ少ない調理効果が得られる。また、底板53の突出寸法を上記範囲よりも大きくした場合と比べて、圧力損失の増加を抑制することができ、これによって遠心ファン31の効率を高めるとともに騒音を低減する効果が得られる。
【0115】
吸込口体50の側板52と調理室20の側壁22との間に、通風可能な空隙である吸込口体側部空隙74を設けた。また、調理室扉25と調理台40Aの前端との間には、調理台40Aの上下空間を連通させる調理台前部空隙75を設けた。このため、吹出口29から吹き出された熱風が調理台40Aの下面を通って調理台40Aの前端から上方に向かい、背面側に流れ、吸込口体側部空隙74を通って調理台40Aの下方へ流入するいわば第二の循環流路が形成される。この第二の循環流路は、調理室20の底部、調理室扉25の内面、調理室20の天井壁23、調理室20の後壁21、そして再び調理室20の底部へ流れる流路であり、調理台40Aを囲む。このため、調理室20内の空気の淀みを減少させることができ、調理室20内の温度を均一に近づけて加熱ムラを解消することができるとともに、循環風量を増やして風速が増すことで、加熱効率を高める効果がある。
【0116】
また、温度センサ72を、吸込口体50の側板52と調理室20の側壁22との間であって、調理台40Aの載置面41Aよりも高く吸込口体吸込口70よりも低い位置に配置した。このため、調理室20内を循環する気流のうち、調理室20の後壁21から底部に向かう気流の温度を測定することができる。上述のように本実施の形態では吸込口体側部空隙74を通る第二の循環流路が形成されていて温度センサ72が配置された場所は空気の淀みがほとんどないことから、流速が遅く淀んだ領域の温度を検知する場合と比べて、調理室20内の温度を精度よく検知することができる。
【0117】
また、調理台40Aはスライドレールユニット60Aに支持され、調理台40Aの下側には調理室20の底面24との間に調理台下部空隙76が設けられ、調理台40Aの前端部と調理室扉25との間には調理台前部空隙75が設けられている。また、調理台40Aが最後部に位置している状態において、調理台40Aの後端と後壁21との間には、通風可能な空隙がある。このため、吹出口29からの熱風は、後壁21と調理台40Aの後端との間を通って調理台40Aの下側の調理台下部空隙76を流れ、調理台前部空隙75を通って調理台40Aの上方に向かって円滑に流れ、熱風の流れが阻害されにくい。このように圧力損失が低下された構成であるので、遠心ファン31の送風効率を高めるとともに、騒音を低減することができる。また、調理台40Aの底面に沿った熱風の調理台40Aへの接触が阻害されないので、調理台40A及びその上に載置される被加熱物の加熱効率を高めることができる。
【0118】
また、調理台40Aはスライドレールユニット60Aに支持され、スライドレールユニット60Aは、調理台40Aの左右の周壁の外面との間に距離D2の隙間を介して対向する対向面64Aを備える。調理台40Aの左右の周壁の外面との間に距離D2の隙間を介して対向面64Aを設けることで、スライドレールユニット60Aに支持される調理台40Aの円滑な移動及び移動時の騒音の抑制を実現できる。また、この両者の隙間は、なるべく小さい値とすることで、調理台40Aの下側を流れる熱風が、スライドレールユニット60Aと調理台40Aの左右の周壁との隙間を通って調理台40Aの上方へ漏れるのを抑制することができる。また、調理台40Aの左右の周壁には、その上端部に外側へ向かって延びるフランジ42Aが形成されており、スライドレールユニット60Aはフランジ42Aの下面と接触あるいは近接する。近接する場合、フランジ42Aの下面と対向面64Aの上端との間の距離D1は、調理台40Aの左右の周壁の外面と対向面64Aとの間の距離D2よりも短い。フランジ42Aの下面とスライドレールユニット60Aの上端とが厳密に接触しなくても、両者の間の距離D1の隙間は調理台40Aの下側を流れる熱風に対する抵抗となるので、調理台40Aの下側を流れる熱風が、スライドレールユニット60Aの上端と調理台40Aの裏面との間を通って調理台40Aの上方へ漏れるのを抑制することができる。このように、調理台40Aの下側から上側への熱風の漏れを抑制して調理台40Aの下側空間の気密性を高めているので、調理台40Aの下側を流れる熱風の背面側から前面側に向かう円滑な流れが維持され、調理台40A及びその上に載置される被加熱物の加熱効率を高めることができる。