(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、実施形態に係る保守点検作業のガイドシステムの概略構成例を示す。なお、以下では、保守点検の対象が昇降機(具体的にはエレベータ)である場合を想定して説明するが、これに限定されず、保守点検の対象は、その他の昇降機(例えばエスカレータや動く歩道など)であっても良い。
【0010】
保守点検の対象であるエレベータ11は、通信ネットワーク12を介して監視センタ13に接続されている。なお、
図1の例では、1台のエレベータ11しか図示されていないが、実際には多数のエレベータ11が保守点検の対象として通信ネットワーク12を介して監視センタ13に接続されている。また、保守員が所持する保守員端末14もまた、通信ネットワーク12を介して監視センタ13に接続されている。
【0011】
エレベータ11には、エレベータ制御装置21(「制御盤」と称されても良い)及び遠隔監視装置22が設けられている。具体的には、エレベータ11が設置されたビルの機械室などにエレベータ制御装置21及び遠隔監視装置22が設けられている。
【0012】
エレベータ制御装置21は、例えば乗りかごの速度制御やドアの開閉制御、各種操作ボタンに対応した制御などを含むエレベータ全体の運転制御を行う。このエレベータ制御装置21には遠隔監視装置22が接続されている。また、エレベータ制御装置21は、エレベータ11を構成する各部に不具合や故障(以下、まとめて「異常」と表記する)が生じると、どのような異常が生じたかを示唆するエラーデータを含むエラー通知を監視センタ13に向けて発報(通知)する。エラーデータには、エレベータ11を識別するためのかご識別データ、異常が生じた日時、エラーコード及びコンディションデータが少なくとも含まれている。但し、エラーデータには、上述したデータ以外のデータがさらに含まれていても良い。
【0013】
エラーコードとは、エラーデータの中核をなすデータであり、これにより、エレベータ11にどのような異常が生じているか(すなわち、異常の内容)が示唆される。異常としては、例えば、乗りかごの緊急停止、駆動系統の故障、停電などが一例として挙げられる。コンディションデータとは、異常が生じたときのエレベータ11の動作状態を示すものであり、例えば、上方向に移動中、下方向に移動中、所定階に停車中などが一例として挙げられる。なお、後述する
図2では、説明の簡略化のために、コンディションデータにより示されるエレベータ11の動作状態が「かご走行中」または「かご停止中」のどちらかであるものとしている。
【0014】
遠隔監視装置22は、エレベータ11の動作状態を監視するための端末装置であり、通信機能を備えている。遠隔監視装置22は、この通信機能を利用して、エレベータ制御装置21から発報されたエラー通知を監視センタ13に送信する。
【0015】
監視センタ13には、エラー解析データベース(以下、「エラー解析DB」と表記する)31及びサーバ装置32が設けられている。エラー解析DB31には、
図2に示す解析時参照データが格納されている。解析時参照データとは、後述するエラー解析処理時に参照されるデータであり、エラーコード(の組み合わせ)、コンディションデータ及び手順書候補が対応づけられたデータである。エラーコード及びコンディションデータについては、上述にて既に説明したため、その詳しい説明を省略し、ここでは手順書候補について説明する。手順書候補とは、対応づけられたエラーコード(の組み合わせ)により示唆される異常が、対応づけられたコンディションデータにより示される動作状態時に生じた場合に、当該異常を解消するにあたって好適な点検手順が記されていると思われる手順書の候補を示している。なお、手順書とは、保守員が保守点検作業時に参照するものであり、エレベータ11に生じた不具合や故障の解消方法や、エレベータ11の点検手順などが記されている。手順書は、文書であっても良いし、動画であっても良いし、これらの組み合わせであっても良い。
【0016】
例えば、
図2に示す解析時参照データ31Aによれば、エラーコード「A」によって示唆される異常が「かご走行中」に生じた場合、「手順書1〜10」のいずれか又はその組み合わせが、当該異常を解消するにあたって好適な手順書になり得ることが示されている。また、
図2に示す解析時参照データ31Nによれば、エラーコードの組み合わせ「A,B,C」によって示唆される異常が「かご停止中」に生じた場合、「手順書11,15,19」のいずれか又はその組み合わせが、当該異常を解消するにあたって好適な手順書になり得ることが示されている。なお、ここでは、解析時参照データの一例として解析時参照データ31A,31Nについて説明したが、
図2に示すその他の解析時参照データ31B〜31Mについても同様であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0017】
また、解析時参照データは、エレベータ11に生じた異常が解消したときに保守員によって行われる報告を基に適宜更新される。例えば、エラーコード「D」により示唆される異常が「かご走行中」に生じた場合であって、当該異常が「手順書1」によって解消した旨の報告が保守員によって行われた場合、エラーコード「D」、コンディションデータ「かご走行中」及び手順書候補「手順書1」が対応づけられた解析時参照データがエラー解析DB31に追加(格納)される。さらに、エラーコード「A」により示唆される異常が「かご走行中」に生じた場合であって、当該異常が上述した「手順書1〜10」のいずれかではなく「手順書11」によって解消した旨の報告が保守員によって行われた場合、エラーコード「A」、コンディションデータ「かご走行中」及び手順書候補「手順書1〜10」が対応づけられた解析時参照データ31Aは、手順書候補の項目に「手順書11」を追加するように更新される。この場合、手順書11を単に追加するだけでも良いし、手順書11を手順書1〜10のいずれかと入れ替えるとしても良い。このように、エラー解析DB31に格納されていない新たな解析時参照データは追加され、エラー解析DB31に既に格納されている解析時参照データは更新されることで、後述するエラー解析処理の精度をより高めることができる。
【0018】
サーバ装置32は、エレベータ11内の遠隔監視装置22から送信されたエラー通知を受けると、当該エラー通知に含まれるエラーデータと、エラー解析DB31に格納された解析時参照データとに基づいてエラー解析処理を実行し、エレベータ11に生じている異常を解消するにあたって好適な手順書になり得る手順書を推定し、これを保守員に提示する。
【0019】
なお、本実施形態では、監視センタ13内にエラー解析DB31及びサーバ装置32が設けられているものとしたが、これに限定されず、エラー解析DB31及びサーバ装置32は、監視センタ13とは別に設けられても良い。また、エラー解析DB31及びサーバ装置32のどちらか一方が監視センタ13内に設けられ、他方が監視センタ13とは別に設けられても良い。
【0020】
次に、
図3のフローチャートを参照して、サーバ装置32によって実行されるエラー解析処理の手順の一例について説明する。
【0021】
始めに、サーバ装置32は、入力を受け付けたエラー通知の数が1つであるか否かを判定する(ステップS1)。
【0022】
入力を受け付けたエラー通知の数が1つである場合(ステップS1のYES)、サーバ装置32は、当該エラー通知に含まれるエラーデータ内のエラーコードと、エラー解析DB31に格納される解析時参照データとに基づいて、多数の手順書の中から好適な手順書を保守員に提示するために、手順書の絞り込みを行う(ステップS2)。
【0023】
続いて、サーバ装置32は、入力を受け付けた1つのエラー通知に含まれるエラーデータ内のコンディションデータと、エラー解析DB31に格納される解析時参照データとに基づいて、手順書のさらなる絞り込みを行い(ステップS3)、後述するステップS6の処理に進む。
【0024】
一方、入力を受け付けたエラー通知の数が1つでない、つまり、複数であった場合(ステップS1のNO)、サーバ装置32は、入力を受け付けた複数のエラー通知にそれぞれ含まれるエラーデータ内のコンディションデータに基づいて、当該各エラー通知を分類する(ステップS4)。具体的には、サーバ装置32は、コンディションデータによって示されるエレベータ11の動作状態が同じエラー通知を1つのグループにまとめることで、各エラー通知を分類する。すなわち、各エラー通知は、異常が生じたときのエレベータ11の動作状態毎に分類される。
【0025】
続いて、サーバ装置32は、グループ毎(エレベータ11の動作状態毎)に、各エラー通知にそれぞれ含まれるエラーデータ内のエラーコードの組み合わせと、エラー解析DB31に格納される解析時参照データとに基づいて、多数の手順書の中から好適な手順書を保守員に提示するために、手順書の絞り込みを行う(ステップS5)。この場合、エレベータ11の動作状態毎に、エラーコードの組み合わせによる手順書の絞り込みが行われるため、実質的には、上述したステップS2及びS3の処理が一度で実行される。
【0026】
しかる後、サーバ装置32は、絞り込みの結果として得られた手順書が、現在エレベータ11に生じている異常を解消するにあたって好適な手順書であることを保守員に知らせるための通知を生成し、これを保守員端末14に送信し(ステップS6)、ここでの処理を終了させる。
【0027】
ここで、サーバ装置32が、エラーコード「A」によって示唆される異常が「かご走行中」に生じたことを示す1つのエラー通知の入力を受け付けた場合を想定して、上述したエラー解析処理について具体的に説明する。但し、エラー解析DB31には、
図2に示す解析時参照データが格納されているものとする。
【0028】
この場合、サーバ装置32は1つのエラー通知の入力を受け付けているので、ステップS1の処理の後、ステップS2の処理が実行される。つまり、サーバ装置32は、エラー解析DB31に格納される解析時参照データのうち、エラーコードの項目で「A」だけを含む解析時参照データ31A,31Bを参照して、保守員に提示する可能性のある手順書を「手順書1〜20」に絞り込む。
【0029】
続いて、サーバ装置32は、ステップS2の処理において参照された解析時参照データ31A,31Bのうち、コンディションデータの項目で「かご走行中」を示す解析時参照データ31Aを参照して、保守員に提示する可能性のある手順書を「手順書1〜10」にさらに絞り込む。
【0030】
その後、サーバ装置32は、「手順書1〜10」が、現在エレベータ11に生じている異常を解消するにあたって好適な手順書であることを保守員に知らせるための通知を生成し、これを保守員端末14に送信する。
【0031】
これによれば、保守員は、エラーコード「A」によって示唆される異常が「かご走行中」に生じたエレベータ11の保守点検作業に「手順書1〜10」を使用すれば良いことが分かり、保守点検作業を円滑に進めることができる。また、保守員は、当該異常を解消するにあたってどの手順書が好適な手順書であるかを推定する必要がないので、経験の浅い保守員であっても、熟練した保守員と同様に、保守点検作業を行うことができる。
【0032】
次に、サーバ装置32が、エラーコード「A」によって示唆される異常が「かご停止中」に生じたことを示すエラー通知と、エラーコード「B」によって示唆される異常が「かご停止中」に生じたことを示すエラー通知と、エラーコード「C」によって示唆される異常が「かご走行中」に生じたことを示すエラー通知との入力を受け付けた場合を想定して、上述したエラー解析処理について具体的に説明する。但し、エラー解析DB31には、
図2に示す解析時参照データが格納されているものとする。
【0033】
この場合、サーバ装置32は3つのエラー通知の入力を受け付けているので、ステップS1の処理の後、ステップS4の処理が実行される。つまり、サーバ装置32は、3つのエラー通知を、エラーデータ内のコンディションデータにしたがって、「かご停止中」のコンディションデータを含む2つのエラー通知と、「かご走行中」のコンディションデータを含む1つのエラー通知とに分類する。
【0034】
続いて、サーバ装置32は、「かご停止中」のコンディションデータを含む2つのエラー通知に関し、コンディションデータの項目で「かご停止中」を示す解析時参照データのうち、エラーコードの項目で「A,B」の組み合わせを含む解析時参照データ31Hを参照して、保守員に提示する可能性のある手順書を「手順書11〜15」に絞り込む。
【0035】
同様に、サーバ装置32は、「かご走行中」のコンディションデータを含む1つのエラー通知に関し、コンディションデータの項目で「かご走行中」を示す解析時参照データのうち、エラーコードの項目で「C」だけを含む解析時参照データ31Eを参照して、保守員に提示する可能性のある手順書を「手順書1〜10」に絞り込む。
【0036】
その後、サーバ装置32は、「手順書11〜15」が、エラーコード「A,B」の組み合わせにより示唆される異常を解消するにあたって好適な手順書であり、「手順書1〜10」が、エラーコード「C」により示唆される異常を解消するにあたって好適な手順書であることを保守員に知らせるための通知を生成し、これを保守員端末14に送信する。
【0037】
これによれば、保守員は、エラーコード「A,B」によって示唆される異常が「かご停止中」に生じたエレベータ11の保守点検作業に「手順書11〜15」を使用し、エラーコード「C」によって示唆される異常が「かご走行中」に生じたエレベータ11の保守点検作業に「手順書1〜10」を使用すれば良いことが分かり、保守点検作業を円滑に進めることができる。また、保守員は、当該異常を解消するにあたってどの手順書が好適な手順書であるかを推定する必要がないので、経験の浅い保守員であっても、熟練した保守員と同様に、保守点検作業を行うことができる。
【0038】
なお、本実施形態では、サーバ装置32がエレベータ制御装置21から発報されたエラー通知の入力を受け付け、上述したエラー解析処理を実行する場合について説明したが、例えば、保守員端末14をエレベータ制御装置21に接続し、当該エレベータ制御装置21から発報されたエラー通知を吸い上げ、当該保守員端末14にて、上述したエラー解析処理が実行されるとしても良い。或いは、吸い上げられたエラー通知が保守員端末14から監視センタ13に送信され、監視センタ13内のサーバ装置32にて、上述したエラー解析処理が実行されるとしても良い。
【0039】
以上説明した第1の実施形態によれば、保守点検作業のガイドシステムは、上述したエラー解析処理を実行可能な構成を備えているので、エレベータ11に生じている異常を解消するにあたって好適な手順書を保守員に提示することができる。これによれば、保守員は保守点検作業を円滑に進めることができる。また、保守員は、当該異常を解消するにあたってどの手順書が好適な手順書であるかを推測する必要がないので、経験の浅い保守員であっても、熟練した保守員と同様に、保守点検作業を行うことができる。
【0040】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、エレベータ11の設置環境をさらに考慮したエラー解析処理について説明する。なお、本実施形態においては、監視センタ13内に図示せぬ管理データベースがさらに設けられているものとする。この図示せぬ管理DBには、かご識別データ、設置日時及び設置地域が対応づけられた設置環境データが格納されているものとする。この設置環境データは、エレベータ11が設置された際に、管理DBに格納(登録)されるデータである。
【0041】
図4は、第2の実施形態に係るエラー解析DB31に格納される解析時参照データのデータ構造の一例を示す。本実施形態に係る解析時参照データには、
図4に示すように、季節、設置経過年数及び設置地域の項目がさらに付加されている。つまり、本実施形態に係る解析時参照データは、エラーコード(の組み合わせ)、コンディションデータ、季節、設置経過年数、設置地域及び手順書候補が対応づけられたデータである。
【0042】
季節は、対応づけられたエラーコードによって示唆される異常が生じた季節を示し、例えば、春、夏、秋、冬のいずれかを示す。設置経過年数は、エレベータ11が設置されてからの経過年数を示す。設置地域は、エレベータ11が設置されている地域を示し、例えば、北海道、東北、関東、甲信越、中部、関西、四国、九州、沖縄のいずれかを示す。なお、季節や設置地域は、上述したものに限定されず、より細かく分けられても良いし、より大まかに分けられても良い。
【0043】
次に、
図5のフローチャートを参照して、第2の実施形態に係るエラー解析処理の手順の一例について説明する。なお、
図3に示すエラー解析処理の手順と同一の手順については同一の符号を付し、その詳しい説明を省略するものとする。
【0044】
ステップS1〜S5の処理が実行された後に、サーバ装置32は、ステップS2,S3又はステップS4,S5の処理によって絞り込まれた手順書を、季節に基づいてさらに絞り込む(ステップS11)。具体的には、サーバ装置32は、入力を受け付けたエラー通知に含まれるエラーデータ内の異常が生じた日時を参照し、当該日時に基づいて季節を特定した上で、解析時参照データを参照することで、手順書のさらなる絞り込みを行う。
【0045】
続いて、サーバ装置32は、設置経過年数に基づいて手順書をさらに絞り込む(ステップS12)。具体的には、サーバ装置32は、入力を受け付けたエラー通知に含まれるエラーデータ内のかご識別データと同一の値を有する設置環境データを図示せぬ管理DBから取得し、当該取得された設置環境データに含まれる設置日時と、当該エラー通知に含まれるエラーデータ内の異常が生じた日時とから設置経過年数を特定した上で、解析時参照データを参照することで、手順書のさらなる絞り込みを行う。
【0046】
さらに、サーバ装置32は、設置地域に基づいて手順書をさらに絞り込む(ステップS13)。具体的には、サーバ装置32は、入力を受け付けたエラー通知に含まれるエラーデータ内のかご識別データと同一の値を有する設置環境データを図示せぬ管理DBから取得し、当該取得された設置環境データに含まれる設置地域によりエレベータ11の設置地域を特定した上で、解析時参照データを参照することで、手順書のさらなる絞り込みを行う。
【0047】
なお、ステップS11〜S13の処理は、任意に入れ替えて実行されても良い。
【0048】
また、ステップS11〜S13の処理が実行されると、サーバ装置32は、上述したステップS6の処理を実行し、ここでの処理を終了させる。
【0049】
なお、解析時参照データには、さらに「かご位置」の項目が付加されても良い。この場合、サーバ装置32は、エラー通知の入力を受け付けると、当該エラー通知に含まれるエラーデータ内のかご識別データにより特定されるエレベータ11の現在のかご位置をエレベータ制御装置21から取得し、エレベータ11の現在のかご位置を特定した上で、解析時参照データを参照することで、手順書のさらなる絞り込みを行うとしても良い。
【0050】
以上説明した第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果が得られると共に、好適な手順書の絞り込みをより精度高く行うことができる。
【0051】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、優先度(信頼度)をさらに考慮したエラー解析処理について説明する。
【0052】
図6は、第3の実施形態に係るエラー解析DB31に格納される解析時参照データのデータ構造の一例を示す。本実施形態に係る解析時参照データには、
図6に示すように、手順書候補の項目に優先度がさらに付加されている。優先度とは、手順書を絞り込むための新たなパラメータである。
図6の手順書候補の項目において、手順書の横に位置する括弧内の数字は、当該手順書が、対応づけられたエラーコードによって示唆される異常を解消するにあたって使用された回数を示している。つまり、括弧内の数字が大きいほど、その手順書は、対応づけられたエラーコードによって示唆される異常を解消するために使用されている頻度が高いことを示している。
【0053】
例えば、
図6の解析時参照データ31Aによれば、エラーコード「A」によって示唆される異常が「かご走行中」に生じた場合、「手順書1〜10」のいずれか又はその組み合わせが当該異常を解消するにあたって好適な手順書になり得るものと推定されるが、この中の「手順書1」は当該異常を解消するにあたって既に5回使用されており、手順書1が他の手順書2〜9に比べて、信頼度(優先度)の高い手順書であることが分かる。
【0054】
次に、
図7のフローチャートを参照して、第3の実施形態に係るエラー解析処理の手順の一例について説明する。なお、
図3に示すエラー解析処理の手順と同一の手順については同一の符号を付し、その詳しい説明を省略するものとする。また、エラー解析DB31には、
図6に示す解析時参照データが格納されているものとする。
【0055】
ステップS1〜S5の処理が実行された後に、サーバ装置32は、ステップS2,S3またはステップS4,S5の処理によって絞り込まれた手順書を優先度に基づいてさらに絞り込む(ステップS21)。
【0056】
例えば、エラーコード「A」によって示唆される異常が「かご走行中」に生じたことを示す1つのエラー通知の入力を受け付けた場合であって、ステップS2,S3の処理において解析時参照データ31Aが参照されることによって、保守員に提示する可能性のある手順書が手順書1〜10にまで絞り込まれている場合、サーバ装置32は、当該解析時参照データ31Aに付加された優先度に基づいて、保守員に提示する可能性のある手順書をさらに絞り込む。例えば、保守員に提示する手順書の数が3つまでといった設定が予めなされている場合、手順書1〜10のうち、優先度の高い手順書3つ(具体的には、手順書1〜3)が好適な手順書と推定される。
【0057】
また、ステップS21の処理が実行されると、サーバ装置32は、上述したステップS6の処理を実行し、ここでの処理を終了させる。
【0058】
なお、上述したように、保守員に提示する手順書の数が所定数に制限されている場合であって、保守員端末14に上述した優先度の高い手順書3つ(具体的には、手順書1〜3)のうちのいずれかが表示された場合、保守員端末14には、優先度の低いその他の手順書(具体的には、手順書4〜10)が関連資料として存在する旨の通知がポップアップなどで表示されても良い。
【0059】
また、ここでは説明の便宜上、第1の実施形態に係る解析時参照データに優先度が付加された場合について説明したが、これに限定されず、第2の実施形態に係る解析時参照データに優先度が付加されても良い。
【0060】
以上説明した第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果が得られると共に、好適な手順書の絞り込みをより精度高く行うことができる。
【0061】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。この第4の実施形態では、以下のような場合を想定したときに生じ得る不都合を解消可能なエラー解析処理について説明する。
【0062】
例えば、サーバ装置32が、3つのエラー通知の入力を受け付け、これらエラー通知に含まれるエラーコードがそれぞれ「A」、「B」、「C」と異なっている(但し、コンディションデータによって示される動作状態は全て同じ)場合を想定する。また、エラー解析DB31には、後述する
図8に示すように、エラーコードの組み合わせ「A,B」、「A,C」、「B,C」を含む解析時参照データは格納されているものの、エラーコードの組み合わせ「A,B,C」を含む解析時参照データは格納されていない場合を想定する。この場合、サーバ装置32は、エラーコードによる絞り込みを行う際に、エラーコードの組み合わせ「A,B,C」を含む解析時参照データがエラー解析DB31に格納されていないので、2つのエラーコードの組み合わせを含む解析時参照データを参照して、手順書の絞り込みを行う。しかしながら、2つのエラーコードの組み合わせを含む解析時参照データは、上述したように3つも格納されているため、どの解析時参照データを参照すれば良いかを判断することができず、エレベータ11に生じている異常を解消するにあたって好適な手順書を保守員に提示することができない可能性がある。
【0063】
そこで、本実施形態においては、エラーコードに重み係数を付与しておくことで、上述したような場合であっても、好適な手順書を保守員に提示可能なエラー解析処理が実現される。以下、詳細に説明する。
【0064】
図8は、第4の実施形態に係るエラー解析DB31に格納される解析時参照データのデータ構造の一例を示す。本実施形態に係る解析時参照データには、
図8に示すように、エラーコードに重み係数が付与されている。この重み係数は、例えば、異常の原因になっている可能性(重要度)が高いエラーコードほど大きな値が割り当てられる。
図8の例では、例えば、エラーコード「A」には重み係数「1」が付与され、エラーコード「B」には重み係数「2」が付与され、エラーコード「C」には重み係数「3」が付与されている。また、複数のエラーコードの組み合わせの場合、各エラーコードに付与された重み係数の和が当該組み合わせの重み係数に相当する。
【0065】
ここで、
図9のフローチャートを参照して、第4の実施形態に係るエラー解析処理の手順の一例について説明する。なお、ここでは、サーバ装置32が、エラーコード「A」によって示唆される異常が「かご走行中」に生じたことを示すエラー通知と、エラーコード「B」によって示唆される異常が「かご走行中」に生じたことを示すエラー通知と、エラーコード「C」によって示唆される異常が「かご走行中」に生じたことを示すエラー通知との入力を受け付けた場合を想定して、具体的に説明する。
【0066】
また、エラー解析DB31には、
図8に示す解析時参照データが格納されているものとする。さらに、
図3に示すエラー解析処理の手順と同一の手順については同一の符号を付し、その詳しい説明を省略するものとする。
【0067】
この場合、サーバ装置32は3つのエラー通知の入力を受け付けているので、ステップS1の処理の後、ステップS4の処理を実行する。但し、この場合、3つのエラー通知にそれぞれ含まれるエラーデータ内のコンディションデータが全て「かご走行中」を示すため、全てのエラー通知が同じグループに分類される。
【0068】
続いて、サーバ装置32は、「かご走行中」を示すコンディションデータを含む3つのエラー通知に関し、コンディションデータの値が「かご走行中」である解析時参照データのうち、3つのエラー通知に含まれるエラーコードの組み合わせ「A,B」、「A,C」、「B,C」を含む解析時参照データ31G,31I,31Kを参照する。そして、サーバ装置32は、これら解析時参照データ31G,31I,31Kのうち、重み係数が最も大きいエラーコードの組み合わせ「B,C」を含む解析時参照データ31Kを選択する(ステップS31)。
【0069】
ステップS31の処理が実行されると、サーバ装置32は、解析時参照データ31Kを参照して、ステップS5の処理を実行し、保守員に提示する可能性のある手順書を「手順書1,3,5,7,9」に絞り込む。その後、ステップS6の処理が実行され、ここでの処理は終了する。
【0070】
なお、ここでは説明の便宜上、第1の実施形態に係る解析時参照データに重み係数が付加された場合について説明したが、これに限定されず、第2の実施形態に係る解析時参照データに重み係数が付加されても良いし、第3の実施形態に係る解析時参照データに重み係数が付加されても良いし、第2及び第3の実施形態の組み合わせに係る解析時参照データに重み係数が付加されても良い。
【0071】
以上説明した第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果が得られると共に、好適な手順書の絞り込みをより精度高く行うことができる。
【0072】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、保守員に対して好適な手順書を提示可能な保守点検作業のガイドシステムを提供することができる。
【0073】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。