(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明における温度検知装置および加熱調理器の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、細かい構造および重複または類似する説明については、適宜簡略化または省略している。以下の実施の形態では、加熱調理器の一例として誘導加熱調理器について説明する。
【0011】
実施の形態1.
(加熱調理器の構成)
図1は、本発明の実施の形態1における加熱調理器100の斜視図である。加熱調理器100は、本体1と、本体1の上面に配置され、耐熱ガラスで形成されたトッププレート2とを有し、トッププレート2の上に載置される鍋やフライパン等の容器10を、本体1の内部に設けられた加熱部により加熱する。本実施の形態では、トッププレート2の左側手前、右側手前、および中央側奥の3箇所に、それぞれ加熱口6が設けられている。
【0012】
本体1には、魚等の調理物の調理を行うためのグリル9が収容されている。グリル9の内部には、グリル9に載置された調理物を加熱するための熱源となるグリルヒータ(図示せず)が設けられている。また、グリル9の隣には、例えばダイヤルスイッチによって構成され、加熱条件や加熱指示の入力操作を受け付ける前面操作表示部4と、加熱調理器100の電源をON/OFFするために操作される電源スイッチ4aが配置されている。
【0013】
トッププレート2の手前側には、加熱条件や加熱指示の入力操作を受け付けるとともに、加熱状況を表示する操作表示部3が配置されている。操作表示部3は、例えば静電容量スイッチおよび液晶パネルなどで構成される。また、各加熱口6の手前側には、火力表示部5が設けられる。火力表示部5は、火力を複数段階に表示するものであり、火力に応じて表示態様が切り替わる。火力表示部5は、例えば複数のLEDを有し、これらLEDの点灯状態(点灯、消灯、点滅等)を切り替える、あるいは点灯色を切り替えることにより、火力を表現する。これにより、使用者が直感的に分かりやすい火力の報知を行うことができる。
【0014】
使用者が、被加熱物を収容した容器10をトッププレート2上に載置し、加熱口6に対応する操作表示部3または前面操作表示部4を操作して加熱条件等の設定を行い、設定された内容に従って、容器10が加熱部により加熱される。加熱の進行状況や調理モードなどの設定に関する情報は、操作表示部3に表示され、加熱の火力は各加熱口に対応して配置された火力表示部5に表示される。
【0015】
また、トッププレート2の加熱口6に対応する部分には、容器10を載置する箇所を示す例えば円形の表示が印刷等によって設けられており、使用者は容器10を載置すべき場所がわかるようになっている。
【0016】
本体1内において加熱口6の下側には、加熱コイル14が設けられている。加熱コイル14が、本発明の「加熱部」に相当する。なお、
図1では、加熱コイル14の配置を破線にて図示している。加熱コイル14に高周波電流を流すことでトッププレート2上に載置された容器10に渦電流が発生し、発生した渦電流と容器10との抵抗により容器10が発熱する。これにより、容器10を直接加熱する加熱効率の良い調理を実現できる。なお、加熱調理器100の加熱口6の加熱部として電気ヒータ等の他の加熱部を設けてもよい。
【0017】
また、トッププレート2の奥側には、複数の排気口7が設けられている。排気口7は、本体1の内部と連通するように配置される。本体1の内部に取り込まれた空気は、排気口7から排気される。排気口7の上部には、本体1の内部への埃その他の異物が侵入するのを防止する通気性を有するカバー(図示せず)を設けてもよい。
【0018】
また、排気口7の手前には、後述する温度検知装置30との間で、無線通信を行うための通信ポート8が設けられている。通信ポート8は、例えばガラス繊維強化プラスチック(GFRP)樹脂等の電波透過性の高い材質で構成される。
図1では、通信ポート8は、トッププレート2の上面に載置される容器10によって無線電波が遮蔽されないように、加熱口6と排気口7との間に配置されている。しかしながら、通信ポート8の位置はこれに限定されるものではなく、例えば、各加熱口6との距離が均等となる位置に配置されてもよい。または、通信ポート8を操作表示部3の一部として設けてもよい。
【0019】
図2は、本実施の形態における加熱調理器100の主要部の構成と機能とを説明する図である。なお、
図2では、1つの加熱口6に対応する構成のみ図示しており、また、例えば水や食材等の被加熱物が収容された容器10と、容器10の温度を検知する温度検知装置30とを併せて図示している。温度検知装置30は、加熱調理器100とは別体に設けられ、容器10の底部の温度を検知し、検知した温度の情報を加熱調理器100へ送信するものである。温度検知装置30の詳細については後述する。
【0020】
図2に示すように、トッププレート2に設けられた加熱口6の下部には、加熱コイル14が配置されている。本実施の形態では、加熱コイル14は、略環状の内側加熱コイル14aと、その外側に設けられた略環状の外側加熱コイル14bとを備えた二重環形状である。
【0021】
本体1の内部には、温度検知装置30と通信する機器側通信部21と、駆動部23を制御する機器側制御部22と、高周波インバータ24を駆動する駆動部23と、加熱コイル14に高周波電流を供給する高周波インバータ24と、が配置されている。機器側制御部22は、操作表示部3による設定内容と、温度検知装置30からの温度の情報に基づいて、駆動部23に対して高周波電力指令(火力情報)を送信する。機器側制御部22は、その機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成されるか、またはマイコンやCPU等の演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとで構成される。駆動部23は、機器側制御部22からの指令に基づき、高周波インバータ24を制御して加熱コイル14に流れる高周波電流を調整する。これにより、容器10の加熱制御が行われる。また、機器側制御部22は、温度検知装置30の状態を確認するための信号を生成し、その信号を、機器側通信部21から通信ポート8を介して温度検知装置30へ送信する。
【0022】
また、加熱調理器100のトッププレート2の下方には、赤外線温度センサ27が配置されている。赤外線温度センサ27は、加熱コイル14上のトッププレート2に載置された容器10の底部から放射される赤外線を検知する。なお、赤外線温度センサ27の直上部は、赤外線が遮蔽されない構造(例えば空洞または透過素材)とすることが望ましい。赤外線温度センサ27によって検知された信号は、赤外線温度検知部270へ出力される。赤外線温度検知部270は、赤外線温度センサ27による検知信号をA/D変換し、温度に換算する。赤外線温度検知部270によって換算された温度情報は、機器側制御部22へ出力される。
【0023】
また、加熱調理器100のトッププレート2の裏面の加熱コイル14と対向する面には、サーミスタなどの接触式温度センサ28がトッププレート2の裏面に接触するように配置されている。接触式温度センサ28は、容器10からトッププレート2へ伝わる熱を検知する。接触式温度センサ28によって検知された信号は、接触式温度検知部280へ出力される。接触式温度検知部280は、接触式温度センサ28による検知信号をA/D変換し、温度に換算する。接触式温度検知部280によって換算された温度情報は、機器側制御部22へ出力される。
【0024】
なお、機器側通信部21は、本発明における「第2通信部」に相当する。また、機器側制御部22は、本発明における「制御部」に相当する。
【0025】
次に、加熱調理器100の操作表示部3の構成について説明する。
図3は、本実施の形態における加熱調理器100の操作表示部3を説明する図である。
図3に示すように、操作表示部3は、各加熱口6の動作状況を示す状況表示部3aと、自動調理メニューを設定するための自動メニューキー3bと、火力を設定するための火力設定キー3cと、加熱時間を設定するタイマー設定キー3dとを備える。
【0026】
状況表示部3aは、各加熱口6に対応する表示を有し、各加熱口6の動作状態に応じて表示態様が切り替わる。状況表示部3aの表示により、どの加熱口6が動作中であるかを使用者に示すことができる。自動メニューキー3bは、「煮込み」キー、「麺ゆで」キー、「湯沸し」キー、「焼き物」キー、「揚げ物」キー、「温度」設定キーからなる。これらのキーが押下されると、各メニューに対して予め設定され記憶部(図示せず)に記憶された制御シーケンスに従って、機器側制御部22が加熱制御を行う。
【0027】
火力設定キー3cは、「弱」火キー、「中」火キーおよび「強」火キーからなり、使用者は、これらのキーを用いて3段階の火力の何れかを設定することができるようになっている。火力に応じて個別にキーを設けることで、使用者は、必要な火力の設定を一回の操作で入力できるようになっている。タイマー設定キー3dは、タイマー設定部とタイマー表示部とからなり、使用者は、タイマー設定部を操作することで、加熱時間を設定し、設定された時間がタイマー表示部に表示され、時間の経過とともに表示が変更される。機器側制御部22は、タイマー設定キー3dによって設定された時間に従って、加熱制御を行う。
【0028】
なお、
図3には図示しないが、例えば「予熱中」や「適温到達」等の火力や経過状況、設定されているメニューの内容等に関する情報を表示する、液晶画面等で構成される表示部を別途設けてもよい。
【0029】
(温度検知装置の構成)
次に、本実施の形態の温度検知装置30の構成について説明する。
図4は本実施の形態の温度検知装置30の斜視図であり、
図5は温度検知装置30の平面図である。また、
図6は、温度検知装置30の内部構成を説明する図である。
図4および
図5に示すように、温度検知装置30は、鍋敷きのような平面的な形状を有し、容器10が載置される載置部31と、機器側通信部21と通信する通信部33とを備える。
【0030】
載置部31は、弾力性および耐熱性を有するシリコーンゴム等で構成される。また、載置部31の容器10が載置される面には、複数のドーム状の突起部311が形成される。
図5に示すように、複数の突起部311は、直径Dの円周上に等間隔で配置される。突起部311が配置される円の直径Dは、載置される容器10の最小径などから定められる。または、直径Dは、温度検知装置30が加熱コイル14の内側に配置された場合に、加熱コイル14の特性上、容器10の底部の発熱部で最も高い温度になる位置を基にして定められてもよく、例えば中心部から40mmの位置に設けられる。
【0031】
また、
図6に示すように、複数の突起部311の内部にはそれぞれ温度センサ34が配置される。温度センサ34は、接触式の温度センサであり、載置部31に載置される容器10の底部の温度を検知する。温度センサ34は、例えばサーミスタまたは熱電対により構成される。
【0032】
容器10が載置部31に載置されると、容器10の底部が突起部311と接触する。突起部311を、弾力性を有するシリコーンゴム等で形成することで、容器10の底部と突起部311とが密着し、接触面積が増加する。また、容器10の底部に密着する突起部311内に温度センサ34を設けることで、温度センサ34が容器10の底部に接触し、容器10の温度を高精度で検知することができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、4つの突起部311が形成され、各突起部311に温度センサ34が配置される構成となっているが、これに限定されるものではない。例えば、3つの突起部311の何れか1つに温度センサ34を備える構成としてもよく、または2つ以下もしくは4つ以上の突起部311に1つ以上の温度センサ34を備える構成としても良い。ただし、突起部311の数を3つ以上とすることで、容器10を安定して支持することができる。また、温度センサ34を複数設けることで、断線等が生じた場合にも温度検知を継続することができる。
【0034】
また、
図6に示す載置部31の厚みtは、突起部311を含む最大厚みで5mm未満とする。載置部31の厚みtを5mmとした場合、温度検知装置30に載置される容器10は、加熱調理器100のトッププレート2から約5mm離れることになる。ここで、容器10が加熱コイル14から離れると、磁束は距離の二乗に反比例して減衰する。そのため、一般的に容器10を加熱コイル14から離すことにより、加熱効率も低下すると考えられる。しかしながら、実際には、トッププレート2と容器10とが接触している場合、容器10の熱の一部がトッププレート2に逃げてしまう。
【0035】
図7は、トッププレート2から容器10の底部までの距離と加熱効率との関係を示すグラフである。
図7では、トッププレート2と容器10との間に絶縁物を配置し、トッププレート2と容器10との間に空気層を形成する。そして、絶縁物の大きさを変えてトッププレート2から容器10までの距離を変更し、各距離における湯沸しの加熱効率を測定した実験より得られた結果である。
図7に示すように、トッププレート2から容器10までの距離が0mmの場合よりも、トッププレート2から容器10までの距離が約2mmの場合の方が、加熱効率が高くなり、特に鍋底部の放射率が低い鏡面の鍋等の場合には約2%程度効率が高くなる。ここで、トッププレート2に一般的に用いられるネオセラムガラスの熱伝導率Kは、1.6であり、空気の熱伝導率Kは0.0241である。そのため、容器10とトッププレート2が接触している場合よりも、空気層が形成される場合の方が、熱伝導が少なくなり、加熱効率が良くなる。
【0036】
ただし、
図7に示すように、トッププレート2から容器10までの距離が5mm以上になると、トッププレート2から容器10までの距離が0mmの場合よりも、加熱効率が低下する。そのため、トッププレート2から容器10までの距離を5mm未満とすることで、トッププレート2と容器10との間の隙間量が0mmの場合の加熱効率と略同等もしくはそれ以上の加熱効率を実現することができる。なお、載置部31に用いられるシリコーンゴムの熱伝導率Kは、0.2であり、空気の熱伝導率よりは高いものの、突起部311上に容器10を載置することで、容器10との接触面積が限定され、熱伝導が抑制される。
【0037】
また、突起部311の高さは、容器10の底部の反りを考慮して、1〜2mmとする。詳しくは、容器10として用いられる鍋またはフライパンの中には、加熱による変形を考慮して、底部を予め上側(凸状)に反らせているものがある。例えば、容器10の底部の中心における反りの最大値が3mmであると想定した場合、容器10の径方向の外側に向かって次第に反りが小さくなり、突起部311が配置される直径80mmの位置(すなわち中心から半径40mmの位置)では、1〜2mm程度の反りとなる。そのため、突起部311を1〜2mm以上とすることで、容器10の底部が予め反っている場合でも、突起部311を確実に容器10の底部に接触させることができる。
【0038】
図5および
図6に戻って、複数の温度センサ34による検知温度は、通信部33へ出力される。通信部33は、載置部31に載置される容器10と接触しないように、使用時の平面視で載置部31の外側に配置される。より詳しくは、載置部31は、加熱コイル14の外径よりも若干大きい外径を有し、温度検知装置30が加熱口6上に配置された状態において、通信部33および載置部31の外郭は加熱コイル14よりも外側に配置される。
【0039】
図6に示すように、通信部33は、センサ側通信部331、センサ側制御部332および電源部333を備えている。上記各部は、円筒形状の筐体330内に収容され、水密状態で封止されている。筐体330は、耐熱性および耐衝撃性を有し、かつ電波を遮蔽しない構造を有する。詳しくは、筐体330の上面330aは、耐衝撃性および防磁効果を有する材料(例えばアルミなど)で形成される。また、本体330bは、電波を遮蔽せず、耐熱性および摩擦係数が高い材料(例えばPPS、PC、シリコーンゴム、セラミックスなど)で形成され、表面をシリコーンゴムで皮膜される。なお、本体330bの少なくとも一部に金属以外の電波を透過する材料を用いてもよい。また、筐体330には、図示しない電源スイッチが設けられる。この電源スイッチが操作されることにより、温度検知装置30がオン状態とされる。
【0040】
センサ側通信部331は、センサ側制御部332による制御の下、加熱調理器100の本体1に配置された機器側通信部21と、双方向の情報通信を行う。センサ側通信部331と機器側通信部21との情報通信は、例えば、2.4GHz帯域の無線通信モジュールを用いて行われる。無線モジュールを用いる事で、温度検知装置30の外部にコネクタ部分を設ける必要がなくなり、温度検知装置30内部への浸水により回路がショートすることを軽減することができる。また、配線レスとなり容器10の取っ手等に配線が引っかかることを防止でき、例えば奥側の加熱口6で使いやすくなり、使い勝手も向上する。また、宅内に設けた2.4GHzのWi−Fi(IEEE802.11規格)モジュールへと情報伝送する事が可能となり、外部無線通信機器との拡張性を有する。なお、センサ側通信部331は、本発明における「第1通信部」に相当する。
【0041】
なお、周波数帯に関しては、2.4GHz帯に限らず900MHz帯や300〜500MHz帯以下の周波数帯の通信周波数帯を用いた特定小電力無線局通信モジュールを使用してもよい。例えば、誘導加熱調理器(IHクッキングヒータ)における誘導電流の周波数は20〜30kHz帯の周波数帯を用いており、電子レンジにおける電磁波の周波数は2.45GHz帯の周波数帯を用いている。このため、900MHzや300〜500MHz帯の周波数であれば、他の調理機器と干渉を起こすことなく通信が可能となる。
【0042】
さらに、上記以外にもBluetooth(登録商標)またはRFID(Radio Frequency Identifier)などを用いて情報通信を行ってもよい。ただし、RFIDを用いる場合は、センサ側通信部331と機器側通信部21とを位置決めする必要があるため、トッププレート2の上面に通信部33の配置位置を示す表示を行う。また、センサ側通信部331と機器側通信部21との情報通信は無線通信に限定されるものではなく、ケーブルを用いた有線通信であってもよい。
【0043】
センサ側制御部332は、温度検知装置30の各構成部を制御する。センサ側制御部332は、その機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアを用いて構成されるか、またはマイコンやCPU等の演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとで構成される。センサ側制御部332は、温度センサ34によって検知された温度情報を、センサ側通信部331を介して機器側通信部21へ送信する。具体的には、複数の温度センサ34によって検知された温度のうち最も高い温度が、温度情報として送信される。なお、別の実施の形態では、複数の温度センサ34によって検知された温度の平均値を温度情報として送信してもよい。また、センサ側制御部332は、機器側制御部22から状態確認の信号を受信した場合、センサ側通信部331を介して、機器側制御部22へ電源がオン状態であることを示す信号を送信する。電源部333は、各構成部に電力を供給するための電池である。
【0044】
次に、本実施の形態における温度検知装置30の温度センサ34およびその配線について説明する。
図5および
図6に示すように、本実施の形態の複数の温度センサ34は、それぞれ銅線などから形成されるリード線312を介して通信部33に接続される。ここで、上記のように、温度センサ34として、例えばサーミスタが用いられる。サーミスタは、温度接触部の温度により抵抗値が変化する素子であり、通信部33内に備えた分圧回路(図示せず)により出力される電圧値から温度を検出する。また、温度センサ34は、リード線312との結線やサーミスタ素子の劣化を防ぐため、耐熱性を有するガラスなどによって被膜される。
【0045】
温度センサ34およびリード線312は、シリコーンゴムで形成される載置部31の内部に配置され、加熱調理器100の加熱コイル14の上に載置される。そして、温度センサ34で検出された信号が、通信部33内に設けたセンサ側制御部332でA/D変換され、センサ側通信部331から加熱調理器100の機器側通信部21へ送信される。ここで、加熱調理器100の駆動時には、加熱コイル14に、20〜30kHz程度の高周波電流が通電され、電流に鎖交する向きに磁界が発生する。これにより、加熱コイル14の直上に配置された金属などからなる容器10に渦電流が発生し、当該電流による抵抗発熱で容器10が加熱される。
【0046】
このとき、温度検知装置30は、容器10の底面と加熱コイル14との間に配置されているため、電気的に高周波磁界にさらされた状態となる。また、加熱コイル14に投入される電力や周波数は、自動調理メニューなどに応じて可変に制御される。そのため、温度検知装置30の載置部31内のリード線312において、温度センサ34の検出結果に電磁ノイズが重畳してしまう恐れがある。
【0047】
そこで、本実施の形態では、使用時の平面視において、温度センサ34から載置部31の外郭に向かって延びるように、リード線312が配置される。具体的には、
図5に示すように、リード線312は、温度センサ34から載置部31の外郭に向かって放射状に延びるように配置される。これにより、載置部31が加熱口6に載置された状態において、リード線312が、加熱コイル14の巻回方向Rに対して略直交して配置される。その結果、リード線312が磁界の影響を受ける面積が小さくなり、電磁ノイズによる影響も小さくなる。このような電磁ノイズの低下は、実験を行った結果からも明らかになっている。なお、載置部31の外郭は加熱コイル14の外側に位置するよう配置されるため、加熱コイル14の巻回方向Rに対して直交する方向に引き出されたリード線312は、載置部31の外郭に沿って引き回され、通信部33に接続される。また、
図5に示すように、リード線312は、加熱コイル14の巻回方向Rに対して直交する方向になるように引き回すことが望ましいが、加熱コイル14の巻回方向Rに対して平行とならないように加熱コイル14とリード線312が交差すればよい。
【0048】
また、図示しないが、リード線312は、被膜を備えるものであってもよく、または金属部を露出するものであってもよい。ただし、載置部31は、シリコーンゴムで形成されるため、柔軟性を有している。そのため、温度検知装置30を使用する際または持ち運びをする際に変形して、リード線312同士が接触し導通してしまうこともある。そこで、リード線312の少なくともどちらか一方を、フッ素やポリカーボネイトなどの耐熱性と絶縁性を有した被膜で覆い、変形時にも短絡することを防いでもよい。
【0049】
(加熱調理動作)
次に、本実施の形態における加熱調理器100の加熱動作を説明する。加熱調理器100の機器側制御部22は、目標温度が設定された自動調理モードを有している。自動調理モードでは、温度検知装置30から取得した温度が目標温度となるように加熱コイル14の加熱制御が行われる。自動調理モードは、操作表示部3の自動メニューキー3bによって設定される。
【0050】
自動調理モードにおいて、温度検知装置30と加熱調理器100とを連動させて加熱制御を行う場合、温度検知装置30が加熱される加熱口6上に配置されていないと、加熱される容器10の温度を検知できず、誤った加熱制御が行われてしまう。そこで、本実施の形態の機器側制御部22は、自動調理モードを実行する前に、加熱対象の加熱口6上に温度検知装置30が配置されているか否かを判定するセンサ判定処理を行う。詳しくは、機器側制御部22は、加熱開始後、所定時間が経過した際の温度検知装置30の温度変化が所定の許容範囲内に入っている場合、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30が配置されていると判定し、自動調理モードによる加熱制御を実行する。一方、温度検知装置30の温度変化が許容範囲内に入っていない場合、機器側制御部22は、加熱されている加熱口6の上に温度検知装置30が配置されていないと判定し、加熱を停止する。
【0051】
自動調理モードによる加熱制御において、温度検知装置30のセンサ側制御部332は、例えば1秒周期にて、温度センサ34によって検知した温度情報を、センサ側通信部331に送信させる。本体1の機器側通信部21は、温度検知装置30からの温度情報を受信し、機器側制御部22は、機器側通信部21が受信した温度情報を取得する。機器側制御部22は、予め設定されている目標温度に向けて高周波インバータ24を制御し、温度情報が目標温度になるよう、加熱の停止と開始とを繰り返す。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、温度検知装置30によって容器10の温度を直接検知することで、検知精度および検知の追従性の向上を図ることができる。その結果、自動調理モードにおける高精度な温度制御が可能となり、温度の上げ過ぎによる調理の失敗を抑制でき、使用者が火力変更動作をすることなく食材に適した調理が可能となる。よって、利便性の向上や吹き零れや空焼きなどによる温度上昇を抑える事が可能となり、無駄な加熱を抑えることができる。
【0053】
また、載置部31と通信部33とが一体型に形成された温度検知装置30を用いることで、容器10に温度センサおよび通信部を設ける必要がなく、どのような形状の鍋にも用いることができる。さらに、機器側制御部22にてセンサ判定処理を行うことで、加熱口6に温度検知装置30が配置されていない場合の誤った加熱制御を防ぐことができる。また、平板状の温度検知装置30を容器10とトッププレート2との間に設けることで、トッププレート2の焦げ付きも抑制される。
【0054】
さらに、温度検知装置30内の温度センサ34とセンサ側制御部332とを接続するリード線312を、使用時の平面視において、加熱コイル14の巻回方向と交差させる(例えば巻回方向に対して直交する方向に配置させる)ことで、電磁ノイズによる影響を抑制し、検知精度を向上させることができる。リード線における電磁ノイズの重畳を抑制し、高精度に安定した容器の温度検知および通信が可能となる。その結果、調理物の温度制御を適切に行うことが可能となる。
【0055】
なお、リード線312を、使用時の平面視において、加熱コイル14の巻回方向に対して直交する方向に配置させることに替えて、または加えて、温度検知装置30における温度検知のタイミングを調整することで、電磁ノイズによる影響を抑制してもよい。
【0056】
具体的には、加熱コイル14の通電を所定のタイミングで停止させ、加熱コイル14の通電が停止されている期間に、温度検知装置30による温度検知および検知結果の送信を行うことで、電磁ノイズの影響を緩和することができる。または、加熱コイル14を所定の電力で統一して駆動させ、ノイズの影響度を一定として、温度検知装置30の検知結果をその影響度で補正して、温度換算してもよい。これらの場合は、機器側制御部22と、センサ側制御部332によってタイミングの通知が行われる。
【0057】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態の温度検知装置30Aは、載置部31の外郭を保持するフレーム313を備える点において、実施の形態1と相違する。温度検知装置30Aのその他の構成および加熱調理器100の構成については、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付する。
【0058】
図8は、実施の形態2における温度検知装置30Aの平面図である。温度検知装置30Aの載置部31は、実施の形態1と同様にシリコーンゴムによって構成される。ここで、シリコーンゴムは柔軟性があり、使用時や持ち運びをする際に変形することで温度センサ34のリード線312の断線または短絡を引き起こす恐れがある。このような断線または短絡の発生を抑制するため、本実施の形態の温度検知装置30Aは、載置部31を形成するシリコーンゴムの外郭に、フレーム313を備える。
【0059】
フレーム313は、電気抵抗の小さいアルミまたは銅などの金属、もしくはセラミックスを用いて形成される。また、フレーム313は、一部を切り欠いた円環筒形状を有し、リード線312は、載置部31の外郭に添わせるようにして、フレーム313内に配置される。
【0060】
本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、フレーム313によってシリコーンゴムで形成される載置部31の変形が抑制されるとともに、リード線312をフレーム313内に固定することで、断線のリスクを低減することができる。
【0061】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態の温度検知装置30Bは、載置部31の下面に支持部314を備える点において、実施の形態1と相違する。温度検知装置30Bのその他の構成および加熱調理器100の構成については、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付する。
【0062】
図9は、実施の形態3における温度検知装置30Bの平面図であり、
図10は、温度検知装置30Bの側面模式図である。
図9および
図10に示すように、本実施の形態の温度検知装置30Bの底面には、支持部314が設けられる。支持部314は、電気抵抗の小さいアルミまたは銅などの金属、もしくはセラミックスで形成され、各温度センサ34およびリード線312に対応して、4つの支持部314が設けられる。また、
図9に示すように、支持部314は、使用時の平面視において、温度センサ34およびリード線312を含む領域を覆う扇形を有している。
【0063】
本実施の形態では、支持部314を設けることにより、実施の形態1の効果に加え、温度センサ34とリード線312との接合部分、特に温度センサ34を皮膜するガラスとのエッジ部などの、最も断線の可能性が高く、リード線312同士が接近し、短絡のリスクが高い箇所の断線または短絡のリスクを低減させることができる。
【0064】
なお、支持部314の配置は、載置部31の下面に限定されるものではなく、載置部31の内部、または上面に配置されてもよい。また、支持部314の形状は、扇形に限定されるものではなく、温度センサ34およびリード線312を支持する形状であればよい。
【0065】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態の温度検知装置30Cは、突起部311の表面に保護部315を設ける点において、実施の形態1と相違する。温度検知装置30Cのその他の構成および加熱調理器100の構成については、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付する。
【0066】
図11は、実施の形態4における温度検知装置30Cの断面模式図である。温度検知装置30Cの載置部31に載置される容器10は、複数の突起部311によって支持される。そのため、突起部311の表面は、容器10との擦れにより摩耗してしまう。そこで、本実施の形態の温度検知装置30Cでは、突起部311の表面、すなわち容器10と接触する面に、保護部315が形成される。
【0067】
保護部315は、例えば突起部311の表面にアルミを蒸着または貼付して形成される。または、突起部311の表面にガラス塗料を塗布して保護部315を形成してもよい。保護部315は、複数の突起部311の全ての表面に形成されてもよく、または複数の突起部311の内の何れか(例えば温度センサ34が配置される突起部311)の表面に形成されてもよい。また、保護部315は、突起部311のドーム状の表面全てを覆うように形成されてもよく、容器10と接触する一部のみに形成されてもよい。本実施の形態では、突起部311の表面に保護部315を設けることにより、突起部311の摩耗強度を向上させることができる。
【0068】
なお、載置部31の上面の全域に保護部315を形成すると、加熱コイル14から発生する磁束を弱めてしまい加熱効率が低下してしまう。そのため、最も摩耗する突起部311の表面にのみ保護部315が設けられる。また、本実施の形態の変形例として、突起部311を耐熱性と耐摩耗性の高いフッ素ゴム、シリコーンゴムよりも熱伝導性の高い材料(カーボンまたは金属)、またはガラスなどのセラミック材で形成してもよい。この場合、突起部311に用いる金属は、誘導加熱されにくい非磁性材料であることが望ましい。また、フッ素ゴムを用いる場合は、温度が250℃以下となるように制御する。
【0069】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態の温度検知装置30Dは、温度センサ34の下方に断熱層を設ける点において、実施の形態1と相違する。温度検知装置30Dのその他の構成および加熱調理器100の構成については、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付する。
【0070】
図12は、実施の形態5における温度検知装置30Dの断面模式図である。加熱調理器100において加熱調理を行う際、加熱コイル14により発生する磁束によって、容器10が誘導加熱される。そのため、容器10の底面温度とトッププレート2の温度との間には温度差が生じる。また、本実施の形態では、容器10の底面とトッププレート2との間に温度検知装置30Dを介在させる。そのため、トッププレート2の温度は、容器10の底部の温度と比べると低くなる。これにより、温度センサ34による検知温度が、容器10の底面温度だけでなく、トッププレート2の温度の影響を受けてしまうことがある。
【0071】
そこで、本実施の形態の温度検知装置30Dでは、温度センサ34の下方に断熱層を設ける。具体的には、載置部31の下面、すなわちトッププレート2と接触する面の、温度センサ34の下方に、突起部311の突出方向に凹となる凹部316が形成される。これにより、温度検知装置30Dがトッププレート2に載置された状態において、トッププレート2と温度センサ34との間に空気層が形成され、断熱層として機能する。その結果、トッププレート2の温度の影響が抑制され、温度センサ34による容器10の底面温度の検知精度が向上する。なお、凹部316は、突起部311と同様のドーム形状であってもよく、空気層を形成するものであれば、その他の形状であってもよい。
【0072】
図13は、実施の形態5の変形例における温度検知装置30Eの断面模式図である。本変形例では、凹部316に断熱材317が充填されることで、温度センサ34の下方に断熱層が形成される。凹部316に充填される断熱材317は、載置部31の材料であるシリコーンゴムよりも熱容量の大きい材料(例えばセラミックなど)が用いられる。このように、トッププレート2と温度センサ34との間に、断熱材317による断熱層を形成することで、トッププレート2の温度の影響がさらに抑制され、温度センサ34による容器10の底面温度の検知精度がより向上する。なお、
図13の例では、凹部316に断熱材317を充填し、トッププレート2と断熱層とが接する構成となっているが、凹部316を形成することなく、突起部311の内部の温度センサ34の下方に断熱材317を配置して断熱層を形成してもよい。
【0073】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して説明したが、本発明の具体的な構成はこれに限られるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、上記実施の形態における温度検知装置30は、載置部31および通信部33からなる構成としたが、載置部31と通信部33とを接続する接続部を備える構成としてもよい。この場合、接続部の長さを調整することで、通信部33を任意の位置に配置することができる。また、載置部31の形状は、円形に限定されるものではなく、楕円、矩形、多角径など、様々な形状とすることができる。
【0074】
また、上記実施の形態1〜5における構成は、適宜組み合わせることが可能である。例えば、実施の形態3の温度検知装置30Bに、実施の形態2のフレーム313を備える構成としてもよい。また、実施の形態4における突起部311の保護部315と、実施の形態5における断熱層との両方を備える構成としてもよい。
【0075】
また、複数の突起部311の配置は、上記実施の形態に限定されるものではなく、容器10の底面温度の検知に適した配置とされる。例えば、複数の突起部311は、加熱コイル14の外径に応じて配置されてもよい。
図14は、本変形例の温度検知装置30Fにおける突起部311の配置の一例を示す図である。
図14は、温度検知装置30Fが加熱コイル14上に載置された状態を平面視したものであり、温度検知装置30Fの下方に配置される内側加熱コイル14aを一点鎖線、外側加熱コイル14bを二点鎖線、接触式温度センサ28を破線でそれぞれ示している。
【0076】
加熱調理器100に使用される加熱コイル14の多くは、上記実施の形態のように、略環状の内側加熱コイル14aと、その外側に設けられた略環状の外側加熱コイル14bとを備えた二重環形状である。また、内側加熱コイル14aと外側加熱コイル14bとで通電を切り替えて加熱を行っているものもある。そのため、内側加熱コイル14aのみで加熱された場合でも、温度検知が可能な様に、温度センサ34が配置される突起部311は、内側加熱コイル14aよりも内側、または加熱コイル14の内側加熱コイル14aと外側加熱コイル14bとの間に配置されることが望ましい。
【0077】
具体的には、温度検知装置30Fを加熱コイル14上に載置した場合に、加熱コイル14の中心から、加熱コイル14の外径の略2/3までの領域を、突起部311を配置する突起部配置領域D2とする(
図14)。また、温度検知装置30Fの載置部31の外径は、加熱コイル14の外径よりも若干大きいものである。そのため、言い換えると、突起部配置領域D2は、載置部31の中心から載置部31の外径の略2/3までの領域である。このように突起部311を配置することにより、小径の容器10が使用された場合にも温度検知を行うことができる。
【0078】
また、加熱調理器100の接触式温度センサ28は、加熱コイル14の内側加熱コイル14aと外側加熱コイル14bとの間、または内側加熱コイル14aよりも内側に配置される。そして、接触式温度センサ28を用いてトッププレート2の温度影響分を補完する計算をおこなってもよい。これにより、温度センサ34の検知温度がトッププレート2の温度影響を受ける場合にも、接触式温度センサ28と温度センサ34との値を演算することで、より精度の高い温度検知が可能となる。