特許第6270941号(P6270941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6270941粘着剤、粘着シート、および表示体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270941
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】粘着剤、粘着シート、および表示体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20180122BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180122BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20180122BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20180122BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J11/06
   C09J7/00
   G09F9/00 313
   G09F9/00 338
   G02F1/1333
【請求項の数】11
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-168008(P2016-168008)
(22)【出願日】2016年8月30日
(62)【分割の表示】特願2015-557257(P2015-557257)の分割
【原出願日】2014年10月23日
(65)【公開番号】特開2017-48385(P2017-48385A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】所司 悟
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−234322(JP,A)
【文献】 特開2014−196452(JP,A)
【文献】 特開2014−001318(JP,A)
【文献】 特開2010−077287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも貼合される側の面に段差を有する一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤であり、かつ、前記一の表示体構成部材および他の表示体構成部材に接する前の粘着剤であって、
前記粘着剤が、
重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含む(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、
2官能以上の活性エネルギー線硬化性成分(B)と、
熱架橋性の架橋剤(C)と
を含有する粘着性組成物を使用することにより、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が前記架橋剤(C)によって架橋された成分と、前記活性エネルギー線硬化性成分(B)が重合してなる成分とを含有しており、
前記粘着性組成物中における前記活性エネルギー線硬化性成分(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上、4質量部以下であり、かつ
厚さ600μm、幅10mmの粘着剤層とした場合に、23℃、50%RHの環境下で、測定長20mm、引張速度200mm/分で破断伸度まで伸長したときの最大応力が、2.8N以上である
ことを特徴とする粘着剤(ただし、エチレン性不飽和基を一つ含有するエチレン性不飽和化合物の含有量が、粘着剤全体に対して5〜70重量%であるものを除く)
【請求項2】
前記ゲル分率(G1)が40〜80%であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
厚さ600μm、幅10mmの粘着剤層とした場合に、23℃、50%RHの環境下で、測定長20mm、引張速度200mm/分で伸長したときの破断伸度が、1000%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、20万〜100万であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として前記反応性官能基含有モノマーを5〜30質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項6】
前記反応性官能基含有モノマーの反応性官能基が、カルボキシル基および/または水酸基であり、
前記架橋剤(C)が、イソシアネート系架橋剤および/またはエポキシ系架橋剤である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着剤からなる粘着剤層を有する粘着シート。
【請求項8】
前記粘着剤層の厚さは、10〜400μmであることを特徴とする請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着シートは、2枚の剥離シートを備えており、
前記粘着剤層は、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されている
ことを特徴とする請求項7または8に記載の粘着シート。
【請求項10】
少なくとも貼合される側の面に段差を有する一の表示体構成部材と、
他の表示体構成部材と
を備えた表示体を製造する方法であって、
請求項7〜9のいずれか一項に記載の粘着シートの粘着剤層を使用して前記一の表示体構成部材と前記他の表示体構成部材とを互いに貼合する
ことを特徴とする表示体の製造方法。
【請求項11】
前記段差は、平面視額縁状になっていることを特徴とする請求項10に記載の表示体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体構成部材を貼合するための粘着剤および粘着シート、ならびに当該粘着シートの粘着剤層を使用した表示体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機やタブレット端末等の各種モバイル電子機器は、液晶素子、発光ダイオード(LED素子)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子等を有する表示体モジュールを使用した表示体(ディスプレイ)を備えている。
【0003】
かかるディスプレイにおいては、通常、表示体モジュールの表面側に保護パネルが設けられている。保護パネルと表示体モジュールとの間には、外力により保護パネルが変形したときにも、変形した保護パネルが表示体モジュールにぶつからないように、空隙が設けられている。
【0004】
しかしながら、上記のような空隙、すなわち空気層が存在すると、保護パネルと空気層との屈折率差、および空気層と表示体モジュールとの屈折率差に起因する光の反射損失が大きく、ディスプレイの画質が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、保護パネルと表示体モジュールとの間の空隙を粘着剤層で埋めることにより、ディスプレイの画質を向上させることが提案されている。ただし、保護パネルの表示体モジュール側には、額縁状の印刷層が段差として存在することがある。粘着剤層がその段差に追従しないと、段差近傍で粘着剤層が浮いてしまい、それにより光の反射損失が生じる。そのため、上記の粘着剤層には、段差追従性が要求される。
【0006】
上記の課題を解決するために、特許文献1は、保護パネルと表示体モジュールとの間の空隙を埋める粘着剤層として、25℃、1Hzでのせん断貯蔵弾性率(G’)が1.0×10Pa以下であり、かつ、ゲル分率が40%以上である粘着剤層を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−97070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、粘着剤層における常温時の貯蔵弾性率を低くすることにより、段差追従性を向上させようとしている。また、別の方法として、熱架橋タイプの粘着剤の架橋の程度、すなわちゲル分率を低くすることにより、段差追従性を向上させることも考えられる。しかしながら、そのように貯蔵弾性率やゲル分率を低くすると、粘着剤層の被膜強度が低下して、加工性が悪化する。例えば、粘着シートを抜き加工する際に、刃に粘着剤が付着し、粘着剤層の一部が欠けてしまう等の問題が発生する。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、段差追従性に優れるとともに、高い被膜強度を示す粘着剤および粘着シート、ならびに当該粘着シートを使用した表示体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、少なくとも貼合される側の面に段差を有する一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤であり、かつ、前記一の表示体構成部材および他の表示体構成部材に接する前の粘着剤であって、前記粘着剤、重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含む(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、2官能以上の活性エネルギー線硬化性成分(B)と、熱架橋性の架橋剤(C)とを含有する粘着性組成物を使用することにより、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が前記架橋剤(C)によって架橋された成分と、前記活性エネルギー線硬化性成分(B)が重合してなる成分とを含有しており、前記粘着性組成物中における前記活性エネルギー線硬化性成分(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上、4質量部以下であり、かつ厚さ600μm、幅10mmの粘着剤層とした場合に、23℃、50%RHの環境下で、測定長20mm、引張速度200mm/分で破断伸度まで伸長したときの最大応力が、2.8N以上であることを特徴とする粘着剤を提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)に係る粘着剤は、上記の条件を満たすことにより、段差追従性に優れるとともに、高い被膜強度を示す。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記ゲル分率(G1)が40〜80%であることが好ましい(発明2)。
【0013】
上記発明(発明1,2)においては、厚さ600μm、幅10mmの粘着剤層とした場合に、23℃、50%RHの環境下で、測定長20mm、引張速度200mm/分で伸長したときの破断伸度が、1000%以上であることが好ましい(発明3)。
【0014】
上記発明(発明1〜3)において、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、20万〜100万であることが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明1〜4)において、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として前記反応性官能基含有モノマーを5〜30質量%含有することが好ましい(発明5)。
【0016】
上記発明(発明1〜5)においては、前記反応性官能基含有モノマーの反応性官能基が、カルボキシル基および/または水酸基であり、前記架橋剤(C)が、イソシアネート系架橋剤および/またはエポキシ系架橋剤であることが好ましい(発明6)。
【0017】
第2に本発明は、前記粘着剤(発明1〜6)からなる粘着剤層を有する粘着シートを提供する(発明7)。
【0018】
上記発明(発明7)において、前記粘着剤層の厚さは、10〜400μmであることが好ましい(発明8)。
【0019】
上記発明(発明7,8)において、前記粘着シートは、2枚の剥離シートを備えており、前記粘着剤層は、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されていることが好ましい(発明9)。
【0020】
第3に本発明は、少なくとも貼合される側の面に段差を有する一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを備えた表示体を製造する方法であって、前記粘着シート(発明7〜9)の粘着剤層を使用して前記一の表示体構成部材と前記他の表示体構成部材とを互いに貼合することを特徴とする表示体の製造方法を提供する(発明10)。
【0021】
上記発明(発明10)において、前記段差は、平面視額縁状になっていてもよい(発明11)。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る粘着剤および粘着シートの粘着剤層は、段差追従性に優れるとともに、高い被膜強度を示す。かかる粘着シートを使用して得られた表示体においては、貼合面側に段差がある場合に、粘着剤層がその段差に追従し、耐久条件後であっても当該段差と粘着剤との間に空隙または気泡ができ難く、粘着剤層が当該段差を埋めた状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着剤〕
本実施形態に係る粘着剤は、少なくとも貼合される側の面に段差を有する一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤である。表示体および表示体構成部材については、後述する。
【0025】
本実施形態に係る粘着剤は、重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含む(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、2官能以上の活性エネルギー線硬化性成分(B)と、熱架橋性の架橋剤(C)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を熱架橋および活性エネルギー線硬化してなるものである。かかる粘着剤において、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は架橋剤(C)によって架橋されて三次元網目構造を形成しており、活性エネルギー線硬化性成分(B)は互いに重合して上記三次元網目構造に絡み付いているものと推測される。この構造を、以下「構造X」という場合がある。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0026】
上記粘着性組成物Pにおける活性エネルギー線硬化性成分(B)の含有量は、本実施形態に係る粘着剤のゲル分率(G1)と、上記粘着性組成物Pから活性エネルギー線硬化性成分(B)を除いた粘着性組成物を熱架橋してなる粘着剤(以下「粘着剤H」という場合がある。)のゲル分率(G2)とが、実質的に同一になる量である。なお、ここでいう「実質的に同一」とは、以下に示すゲル分率変化率が15%以下のレベルにあることをいうものとする。
【0027】
ゲル分率変化率は、本実施形態に係る粘着剤のゲル分率をG1(%)、粘着性組成物Pから活性エネルギー線硬化性成分(B)を除いた粘着性組成物を熱架橋してなる粘着剤Hのゲル分率をG2(%)としたときに、下記式で示される。
ゲル分率変化率(%)={(G1−G2)/G2}×100
【0028】
本実施形態に係る粘着剤は、このゲル分率変化率が0〜15%であることが好ましく、特に0〜10%であることが好ましく、さらには0〜4%であることが好ましい。なお、ゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0029】
また、本実施形態に係る粘着剤は、厚さ600μm、幅10mmの粘着剤層とした場合に、23℃、50%RHの環境下で、測定長20mm、引張速度200mm/分で破断伸度まで伸長したときの最大応力が、2.8N以上であることを必要とする。これにより、切断時の粘着剤層の糊欠け等を防止できる被膜強度を得ることができる。同様の観点から、上記最大応力は3N以上であることが好ましく、4N以上であることが特に好ましい。一方、上記最大応力の上限は特に制限されないが、段差追従率を悪化させない観点から、7N以下であることが好ましく、6N以下であることが特に好ましい。なお、この引張試験の具体的な方法は、後述する試験例に示す通りである。かかる最大応力は、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(B)を所定量含有することにより達成される。
【0030】
本実施形態に係る粘着剤では、上記の量で活性エネルギー線硬化性成分(B)を含有する粘着性組成物Pを熱架橋および活性エネルギー線硬化することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および架橋剤(C)による三次元網目構造に、ゲル分率を実質的に変化させない程度に、重合した活性エネルギー線硬化性成分(B)が絡み付く構造Xを形成するものと推定される。かかる構造Xにより、本実施形態に係る粘着剤は、優れた応力緩和性を発揮し、段差追従性に優れたものとなる。したがって、少なくとも貼合される側の面に段差を有する一の表示体構成部材と、他の表示体構成部材とを貼合するにあたり、本実施形態に係る粘着剤は、その段差に良好に追従し、所定耐久条件後であっても当該段差と粘着剤との間に空隙または気泡ができ難く、粘着剤層が当該段差を埋めた状態を維持することができる(以下、所定耐久条件後の段差追従性を、単に「段差追従性」と称する場合がある)。また、上記の構造Xにより、本実施形態に係る粘着剤は、高い被膜強度を示す。したがって、例えば、粘着シートを抜き加工する際に、刃に粘着剤が付着して粘着剤層の一部が欠けてしまう等の問題が発生することが抑制される。
【0031】
(1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含む。この反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基が架橋剤(C)と反応して、架橋構造が形成される。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマー単位として含有する反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系架橋剤またはエポキシ系架橋剤との反応性に優れた水酸基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーが好ましい。
【0033】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(C)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)におけるカルボキシル基の架橋剤(C)との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを5〜30質量%含有することが好ましく、特に7〜25質量%含有することが好ましく、さらには10〜20質量%含有することが好ましい。反応性官能基含有モノマーの含有量が5質量%以上であると、架橋点を確保して、上記の構造Xを良好に形成することができる。また、反応性官能基含有モノマーの含有量が30質量%以下であると、所望の粘着性が得られ易い。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成する反応性官能基含有モノマーとして水酸基含有モノマーを含有する場合、その含有量は、10〜25質量%であることが好ましく、特に15〜20質量%であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成する反応性官能基含有モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを含有する場合、その含有量は、8〜25質量%であることが好ましく、特に10〜15質量%であることが好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、好ましい粘着性を発現することができる。なお、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルから後述のハードモノマーは除かれる。
【0039】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40〜95質量%含有することが好ましく、特に50〜93質量%含有することが好ましく、さらには55〜90質量%含有することが好ましい。
【0041】
ここで、表示体においては、高温高湿条件を施したときに、段差近傍に気泡が発生したり、保護パネルであるプラスチック板からアウトガスが発生して気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが発生したりするという問題が発生することがある。これを踏まえて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が70℃以上のハードモノマーを含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成するモノマー単位として、上記ハードモノマーを含有することにより、得られる粘着剤は、凝集力が向上し、表示体において耐ブリスター性に優れたものとなる。特に、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成するモノマー単位として(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が低いもの(例えば、Tgが好ましくは−30℃以下、特に好ましくは−60℃以下のもの)を主成分に使用する場合には、凝集力が低くなる傾向があるため、上記ハードモノマーを使用することが好ましい。上記ハードモノマーのホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)は、75〜200℃であることが好ましく、特に80〜180℃であることが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における反応性官能基含有モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーを使用する場合には、当該モノマーによってある程度の凝集力を得ることができる。従って、この場合には、上記ハードモノマーを使用しないことが多い。
【0042】
上記ハードモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル(Tg105℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg180℃)、アクリロイルモルホリン(Tg145℃)、アクリル酸アダマンチル(Tg115℃)、メタクリル酸アダマンチル(Tg141℃)、ジメチルアクリルアミド(Tg89℃)、アクリルアミド(Tg165℃)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記ハードモノマーの中でも、粘着性や透明性等の他の特性への悪影響を防止しつつハードモノマーの性能をより発揮させる観点から、メタクリル酸メチル、アクリル酸イソボルニルおよびアクリロイルモルホリンがより好ましく、段差追従性の低下をより少なくする観点から、アクリル酸イソボルニルおよびアクリロイルモルホリンが特に好ましい。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記ハードモノマーを10〜45質量%含有することが好ましく、15〜30質量%含有することが特に好ましい。上記ハードモノマーを10質量%以上含有することにより、当該モノマー単位による耐ブリスター性の改善効果を見込むことができる。一方、上記ハードモノマーを45質量%以下の含有量とすることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中におけるそれ以外のモノマー単位の相対的な不足を防止し、得られる粘着剤の粘着性および段差追従性を優れたものとすることができる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの作用を妨げないためにも、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は20万〜100万であることが好ましく、特に30万〜90万であることが好ましく、さらに40万〜70万であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が上記のように比較的低い範囲内にあることにより、段差追従性により優れた粘着剤が得られる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が100万を超えると、段差追従性に劣るものとなる場合がある。一方、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が20万未満であると、粘着剤が耐久性に劣るものとなる場合がある。
【0049】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(2)活性エネルギー線硬化性成分(B)
粘着性組成物Pが前述した配合量で2官能以上の活性エネルギー線硬化性成分(B)を含有することにより、当該粘着性組成物Pを硬化して得られる粘着剤は、段差追従性に優れるとともに、高い被膜強度を示すものとなる。
【0051】
活性エネルギー線硬化性成分(B)は、本発明の効果を妨げることなく、活性エネルギー線の照射によって硬化する成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)等との相溶性に優れる分子量1000未満の多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
【0052】
分子量1000未満の多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
活性エネルギー線硬化性成分(B)としては、活性エネルギー線硬化型のアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。このアクリレート系オリゴマーは重量平均分子量50,000以下のものが好ましい。このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系等が挙げられる。
【0054】
上記アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、50,000以下であることが好ましく、特に500〜50,000であることが好ましく、さらには3,000〜40,000であることが好ましい。これらのアクリレート系オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
また、活性エネルギー線硬化性成分(B)としては、(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアダクトアクリレート系ポリマーを用いることもできる。このようなアダクトアクリレート系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に架橋性官能基を有する単量体との共重合体を用い、当該共重合体の架橋性官能基の一部に、(メタ)アクリロイル基および架橋性官能基と反応する基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。
【0056】
上記アダクトアクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、5万〜90万程度であることが好ましく、10万〜50万程度であることが特に好ましい。
【0057】
活性エネルギー線硬化性成分(B)は、前述した多官能アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマーおよびアダクトアクリレート系ポリマーの中から、1種を選んで用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできるし、それら以外の活性エネルギー線硬化性成分と組み合わせて用いることもできる。
【0058】
粘着性組成物P中における活性エネルギー線硬化性成分(B)の含有量は、前述した通りであるが、具体的には、適切な被膜強度を得る観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.5質量部以上であることが好ましく、さらには1質量部以上であることが好ましい。一方、本実施形態に係る粘着剤のゲル分率(G1)と、粘着性組成物Pから活性エネルギー線硬化性成分(B)を除いた粘着性組成物を熱架橋してなる粘着剤Hのゲル分率(G2)とを実質的に同一にし、優れた段差追従性を得る観点から、活性エネルギー線硬化性成分(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2.5質量部以下であることが特に好ましく、2.0質量部未満であることが最も好ましい。
【0059】
(3)架橋剤(C)
粘着性組成物Pは、熱架橋性の架橋剤(C)を含有することで、加熱により(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋して三次元網目構造を形成し、得られる粘着剤の凝集力を向上させ、また、当該粘着剤に耐久性を付与する。
【0060】
上記架橋剤(C)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基がカルボキシル基の場合、カルボキシル基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(C)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0062】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0063】
粘着性組成物P中における架橋剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.001〜2質量部であることが好ましく、特に0.01〜1質量部であることが好ましく、さらには0.02〜0.3質量部であることが好ましい。架橋剤(C)の含有量が0.001質量部以上であると、得られる粘着剤に耐久性向上効果を付与することができる。架橋剤(C)の含有量が2質量部以下であると、架橋の程度を適度なものとし、得られる粘着剤の段差追従性を良好に確保することが可能である。
【0064】
(4)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えばシランカップリング剤、光重合開始剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
【0065】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよいものが好ましい。また、粘着剤が光学用途の場合には、光透過性を有するシランカップリング剤が好適である。
【0066】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
シランカップリング剤の添加量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して0.01〜1.0質量部であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量部であることが好ましい。
【0068】
また、粘着性組成物Pに対して照射する活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着性組成物Pは、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。このように光重合開始剤を含有することにより、活性エネルギー線硬化性成分(B)を効率良く硬化させることができ、また重合硬化時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
【0069】
このような光重合開始剤としては、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
光重合開始剤は、活性エネルギー線硬化性成分(B)100質量部に対して、2〜15質量部、特に4〜12質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
【0071】
(5)粘着性組成物の製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、活性エネルギー線硬化性成分(B)と、架橋剤(C)とを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。
【0072】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0073】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0074】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0075】
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、活性エネルギー線硬化性成分(B)、架橋剤(C)、および所望により添加剤を添加し、十分に混合することにより、粘着性組成物Pを得る。
【0077】
(6)粘着剤の製造
以上の粘着性組成物Pを、所望の対象物に塗布した後、熱架橋するとともに、活性エネルギー線の照射により硬化(活性エネルギー線硬化)することにより、本実施形態に係る粘着剤が得られる。
【0078】
粘着性組成物Pの熱架橋は、加熱処理によって行うことができる。この加熱処理は、粘着性組成物Pの塗布後の乾燥処理で兼ねることもできる。加熱処理の加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。
【0079】
ここで、活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0080】
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50〜1000mW/cm程度であることが好ましい。また、光量は、50〜10000mJ/cmであることが好ましく、80〜5000mJ/cmであることがより好ましく、200〜2000mJ/cmであることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10〜1000krad程度が好ましい。
【0081】
粘着性組成物Pを加熱処理すると、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は架橋剤(C)と反応して架橋構造、すなわち三次元網目構造を形成する。また、粘着性組成物Pに対し活性エネルギー線を照射すると、活性エネルギー線硬化性成分(B)が重合し、上記三次元網目構造に絡み付きながら硬化する。このようにして得られる本実施形態に係る粘着剤は、段差追従性に優れるとともに、高い被膜強度を示す。
【0082】
なお、本実施形態に係る粘着剤を製造するにあたり、加熱処理を行った後、活性エネルギー線照射を行ってもよいし、両処理を同時に行ってもよい。また、加熱処理後または活性エネルギー線照射後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けることも好ましい。
【0083】
(7)ゲル分率
本実施形態に係る粘着剤のゲル分率(G1)は、40〜80%であることが好ましく、特に45〜70%であることが好ましく、さらには50〜65%であることが好ましい。ゲル分率(G1)が40%以上であると、粘着剤の被膜強度を良好に確保することができる。また、ゲル分率(G1)が80%以下であると、粘着剤の段差追従性能を良好に確保することができる。
【0084】
(8)破断伸度
本実施形態に係る粘着剤は、厚さ600μm、幅10mmの粘着剤層とした場合に、23℃、50%RHの環境下で、測定長20mm、引張速度200mm/分で伸長したときの破断伸度が1000%以上であることが好ましく、特に1100〜4000%であることが好ましく、さらには1200〜2500%であることが好ましい。なお、この引張試験の具体的な方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0085】
本実施形態に係る粘着剤は、前述した粘着性組成物Pを熱架橋および活性エネルギー線硬化してなることにより、上記の破断伸度を達成することができる。破断伸度が上記のように大きいことにより、粘着剤は段差追従性により優れたものとなる。
【0086】
(9)段差追従率
本実施形態に係る粘着剤は、下記の式で示される段差追従率(%)が、20%以上であることが好ましく、特に25〜80%であることが好ましく、さらには30〜70%であることが好ましい。
段差追従率(%)={(所定耐久試験後、隙間や気泡無く埋められた状態が維持された段差の高さ(μm))/(粘着剤層の厚み)}×100
なお、段差追従率の試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0087】
本実施形態に係る粘着剤は、前述した粘着性組成物Pを熱架橋および活性エネルギー線硬化してなることにより、上記のように大きい段差追従率を達成することができる。
【0088】
〔粘着シート〕
図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0089】
(1)粘着剤層
粘着シート1における粘着剤層11は、前述した粘着剤から構成され、すなわち、粘着性組成物Pを熱架橋および活性エネルギー線硬化してなる粘着剤から構成される。
【0090】
粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、10〜1000μmであることが好ましく、30〜400μmであることがより好ましく、特に50〜300μmであることが好ましい。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0091】
粘着剤層11の厚さが10μm未満であると、十分な段差追従性が得られない場合がある。一方、粘着剤層11の厚さが1000μm以下であると、加工性が良好なものとなる。
【0092】
(2)剥離シート
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0093】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0094】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0095】
(3)粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例としては、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する。そして、塗布層に対して、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋するとともに、活性エネルギー線を照射して粘着性組成物Pを硬化させ、粘着剤層11を形成する。そのように形成した粘着剤層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせ、これを粘着シート1とする。なお、上記活性エネルギー線の照射は、粘着性組成物Pの塗布層を熱架橋し、当該塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合せた後に行ってもよい。
【0096】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、塗布層に対して、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋するとともに、活性エネルギー線を照射して粘着性組成物Pを硬化させ、第1の粘着剤層を形成する。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、塗布層に対して、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋するとともに、活性エネルギー線を照射して粘着性組成物Pを硬化させ、第2の粘着剤層を形成する。そして、第1の粘着剤層付きの剥離シート12aと第2の粘着剤層付きの剥離シート12bとを、両粘着剤層が互いに接触するように貼り合わせ、これを粘着シート1とする。なお、第1の粘着剤層および第2の粘着剤層を個別に形成してから粘着シート1を得るのではなく、それぞれの塗布層を熱架橋までした段階で、互いに接触させ、その後、まとめて活性エネルギー線を照射することにより粘着シート1を得てもよい。
【0097】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。塗布した粘着性組成物Pに対する加熱処理の条件は、前述した通りである。
【0098】
以上の粘着シート1においては、粘着剤層11が段差追従性に優れるため、段差を有する表示体構成部材に貼付した後、所定の耐久条件に曝された場合でも、当該段差と粘着剤層11との間に空隙または気泡ができ難く、粘着剤層11が当該段差を埋めることができる。また、粘着剤層11は、被膜強度が高いため、例えば、粘着シート1を抜き加工する際に、刃に粘着剤が付着して粘着剤層11の一部が欠けてしまう等の問題が発生することが抑制される。
【0099】
(4)ヘイズ値
本実施形態における粘着剤層11は、ヘイズ値(JIS K7136:2000に準じて測定した値)が、3%以下であることが好ましく、特に2%以下であることが好ましく、さらには1%以下であることが好ましい。ヘイズ値が3%以下であると、透明性が非常に高く、光学用途として好適なものとなる。
【0100】
(5)粘着力
本実施形態における粘着シート1は、耐久条件後にも優れた段差追従性を発揮するために、粘着力(JIS Z0237:2009に準じて測定した値)が、5N/25mm以上であることが好ましく、10N/25mm以上であることがより好ましく、25N/25mm以上であることが特に好ましい。また、粘着シート1にリワーク性を付与する観点から、上記粘着力は、50N/25mm以下であることが好ましく、40N/25mm以下であることがより好ましく、35N/25mm以下であることが特に好ましい。なお、粘着力の試験方法の詳細は、試験例に記載するとおりである。
【0101】
〔表示体〕
図2に示すように、本実施形態に係る表示体2は、少なくとも貼合される側の面に段差を有する第1の表示体構成部材21(一の表示体構成部材)と、第2の表示体構成部材22(他の表示体構成部材)と、それらの間に位置し、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22を互いに貼合する粘着剤層11とを備えて構成される。本実施形態に係る表示体2では、第1の表示体構成部材21は、粘着剤層11側の面に段差を有しており、具体的には、印刷層3による段差を有している。
【0102】
表示体2としては、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。
【0103】
第1の表示体構成部材21は、ガラス板、プラスチック板等の他、それらを含む積層体などからなる保護板であることが好ましい。この場合、印刷層3は、第1の表示体構成部材21における粘着剤層11側に、額縁状に形成されることが一般的である。
【0104】
第2の表示体構成部材22は、表示体モジュール(例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等)またはその一部(例えば、偏光板等の光学部材)であることが好ましい。
【0105】
上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1〜5mmであり、好ましくは0.2〜2mmである。
【0106】
上記プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2〜5mmであり、好ましくは0.4〜3mmである。
【0107】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。
【0108】
上記光学部材としては、例えば、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、ハードコートフィルム、半透過反射フィルム等が挙げられる。
【0109】
印刷層3を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層3の厚さ、すなわち段差の高さは、3〜45μmであることが好ましく、特に5〜35μmであることが好ましく、さらには7〜25μmであることが好ましく、7〜15μmであることが最も好ましい。
【0110】
上記表示体2を製造するには、一例として、最初に、粘着シート1を、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22に対応する大きさに裁断する。裁断においては、粘着シート1の厚み方向全部を切断してもよいし、粘着シート1の他方の剥離シート12bをカットせず、粘着剤層11および一方の剥離シート12aをハーフカットしてもよい。このとき、粘着剤層11の被膜強度は高いため、刃に粘着剤が付着して粘着剤層11の一部が欠けてしまうことは抑制される。
【0111】
次いで、粘着シート1の一方の剥離シート12aを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11を、第1の表示体構成部材21の印刷層3が存在する側の面に貼合する。その後、粘着シート1の粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11と第2の表示体構成部材22とを貼合する。
【0112】
上記工程において粘着剤層11と第1の表示体構成部材21とを貼合するとき、粘着剤層11は段差追従性に優れるため、所定耐久条件後も、印刷層3による段差と粘着剤層11との間に空隙ができ難く、粘着剤層11が当該段差を埋めることができる。
【0113】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0114】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。また、第1の表示体構成部材21は、印刷層3以外の段差を有するものであってもよいし、段差を有していなくてもよい。さらには、第1の表示体構成部材21のみならず、第2の表示体構成部材22も粘着剤層11側に段差を有するものであってもよい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0116】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸n−ブチル90質量部およびアクリル酸10質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)40万であった。
【0117】
2.粘着性組成物の調製
上記工程(1)で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、活性エネルギー線硬化性成分(B)としてのトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成社製,製品名「M−315」)0.1質量部と、エポキシ系の架橋剤(C)としての1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製,製品名「TETRAD−C」,固形分濃度:100質量%)0.05質量部と、シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,製品名「KBM−403」)0.2質量部とを混合し、さらに、光重合開始剤としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製,製品名「イルガキュア184」)を(B)成分の10質量%相当分の質量で添加し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度37質量%の粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0118】
ここで、当該粘着性組成物の配合を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体]
BA:アクリル酸n−ブチル
AA:アクリル酸
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
ACMO:アクリロイルモルホリン
VAc:酢酸ビニル
[活性エネルギー線硬化性成分]
M−315:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成社製,製品名「M−315」)
A−400:ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製,製品名「A−400」,ポリエチレングリコールの分子量:400)
A−TMM−3:ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業社製,製品名「A−TMM−3」)
A−DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製,製品名「A−DPH」)
[架橋剤]
エポキシ−1:1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製,製品名「TETRAD−C」)
エポキシ−2:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(三菱ガス化学社製,製品名「TETRAD−X」)
イソシアネート:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(綜研化学社製,製品名「L−45」)
【0119】
3.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、100℃で2分間加熱処理した後、下記の条件で紫外線を照射して、厚さ25μmの第1の粘着剤層を形成した。
[紫外線照射条件]
・光源:高圧水銀灯
・光量:500mJ/cm
・照度:200mW/cm
なお、照度および光量は、アイグラフィックス社製のUV照度・光量計「UVPF−36」により確認した。
【0120】
同様に、得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET382120」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、100℃で2分間加熱処理した後、上記と同様にして紫外線を照射し、厚さ25μmの第2の粘着剤層を形成した。
【0121】
次いで、上記で得られた第1の粘着剤層付きの重剥離型剥離シートと、上記で得られた第2の粘着剤層付きの軽剥離型剥離シートとを、両粘着剤層が互いに接触するように貼合し、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG−02」)を使用して測定した値である。
【0122】
〔実施例2〜17,比較例1〜4〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量、活性エネルギー線硬化性成分(B)の種類および配合量、架橋剤(C)の種類および配合量、ならびにシランカップリング剤の配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。なお、比較例1および4については、紫外線照射処理は行わなかった。
【0123】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0124】
〔試験例1〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PET A4300,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。その積層体を、幅25mm、長さ100mmに裁断し、これをサンプルとした。当該サンプルから重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付した。
【0125】
その後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、JIS Z0237:2009に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0126】
〔試験例2〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層について、JIS K7361−1:1997に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH−2000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0127】
〔試験例3〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0128】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(G1;%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
【0129】
〔試験例4〕(ゲル分率変化率の測定)
実施例および比較例において、活性エネルギー線硬化性成分(B)を添加しない以外、上記と同様にして粘着性組成物を調製した。その粘着性組成物を使用し、紫外線照射処理を行わない以外、上記と同様にして粘着シートを作製した。得られた粘着シートの粘着剤層について、試験例3と同様にしてゲル分率(G2;%)を測定した。このゲル分率をG2とし、試験例3で測定したゲル分率をG1としたときに、以下の式で示されるゲル分率変化率(%)を算出した。結果を表2に示す。
ゲル分率変化率(%)={(G1−G2)/G2}×100
【0130】
〔試験例5〕(引張試験)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、合計厚さが600μmとなるように複数層積層した後、10mm幅×75mm長のサンプルを切り出した。サンプル測定部位が10mm幅×20mm長(伸長方向)になるように上記サンプルを引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)にセットし、23℃、50%RHの環境下で当該引張試験機を用いて引張速度200mm/分で伸長させ、破断伸度(%)を測定した。また、サンプルを破断伸度まで伸長させ、最大応力(N)を測定した。結果を表2に示す。
【0131】
〔試験例6〕(耐ブリスター性評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ポリカーボネート(PC)板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR58」,厚さ:1mm)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるアクリル板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR200」,厚さ:1mm)とで挟み、積層体を得た。
【0132】
得られた積層体を、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて15時間放置した。次いで、85℃、85%RHの耐久条件下にて72時間保管した。その後、粘着剤層に気泡、浮きまたは剥がれがないか否か、目視により確認し、以下の基準により耐ブリスター性を評価した。結果を表2に示す。
◎…気泡、浮きおよび剥がれが全くなかった。
○…直径0.1mm以下の気泡のみが発生した。
×…直径0.1mm超の気泡、浮きまたは剥がれが発生した。
【0133】
〔試験例7〕(被膜強度の評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、合計厚さが1mmとなるように複数層積層し、その積層体を裁断装置(荻野製作所社製,製品名「スーパーカッター PN1−600」)によって裁断した。裁断後における粘着剤層の裁断面(長さ:100mm)を目視にて確認し、以下の基準により被膜強度を評価した。結果を表2に示す。
○:裁断面に粘着剤層の欠けなし(被膜強度高い)
×:裁断面に粘着剤層の欠けあり(被膜強度低い)
【0134】
〔試験例8〕(段差追従性評価)
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS−911墨」)を塗布厚が5μm、10μm、15μm及び20μmのいずれか1つとなるように額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10〜15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:5μm、10μm、15μm及び20μmのいずれか1つ)を有する段差付ガラス板を作製した。
【0135】
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥がし、粘着剤層を表出させた。そして、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように上記積層体を各段差付ガラス板にラミネートし、これを評価用サンプルとした。
【0136】
得られた評価用サンプルを、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。次いで、85℃、85%RHの耐久条件下にて72時間保管し(耐久試験)、その後、段差追従性を評価した。段差追従性は、粘着剤層により印刷段差が完全に埋められているか否かで判断し、印刷段差と粘着剤層との界面で隙間や気泡などが観察された場合は、印刷段差に追従できなかったと判断される。ここでは、段差追従性は、下記の式で示される段差追従率(%)として評価した。結果を表2に示す。
段差追従率(%)={(耐久試験後、隙間や気泡無く埋められた状態が維持された段差の高さ(μm))/(粘着剤層の厚み:50μm)}×100
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
表2から分かるように、実施例で得られた粘着剤層は、段差追従性に優れ、かつ、被膜強度も高いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の粘着シートは、例えば、表示体モジュールと、段差を有する保護板との貼合に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0141】
1…粘着シート
11…粘着剤層
12a,12b…剥離シート
2…表示体
21…第1の表示体構成部材
22…第2の表示体構成部材
3…印刷層
図1
図2