(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6270951
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】マシンルームレスエレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20180122BHJP
B66B 7/02 20060101ALI20180122BHJP
B66B 7/06 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
B66B7/00 B
B66B7/02 J
B66B7/06 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-187549(P2016-187549)
(22)【出願日】2016年9月26日
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸幸
【審査官】
中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/025396(WO,A1)
【文献】
特開2006−137514(JP,A)
【文献】
特開2013−112503(JP,A)
【文献】
特開2001−192190(JP,A)
【文献】
特開2014−009044(JP,A)
【文献】
国際公開第01/053184(WO,A1)
【文献】
国際公開第02/018256(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00− 1/52
B66B 7/00− 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械室を有しないマシンルームレスエレベータにおいて、
乗りかごの一方の側面側で、昇降路の頂部に配置される巻上機と、
前記乗りかごの背面側において昇降する釣合錘と、
前記乗りかごの他方の側面側で前記昇降路内に配置される主制御装置と、
前記乗りかごの背面側において前記釣合錘より前記主制御装置側の位置に配置され、非常時の運転機能を有する非常用制御装置と、を備え、
前記巻上機、前記主制御装置および前記非常用制御装置の下端が最上階の床面の高さよりも高い位置にあるように設置されていることを特徴とするマシンルームレスエレベータ。
【請求項2】
前記釣合錘の昇降を案内する左右一対の錘側ガイドレールの間隔を、前記乗りかごの幅よりも狭めることにより、前記非常用制御装置を配置するスペースを確保したことを特徴とする請求項1に記載のマシンルームレスエレベータ。
【請求項3】
前記左右一対の錘側ガイドレールのうち、右側の錘側ガイドレールを前記乗りかごの右側面よりも左側の錘側ガイドレール側に配置することにより、前記非常用制御装置を配置するスペースを確保したことを特徴とする請求項2に記載のマシンルームレスエレベータ。
【請求項4】
前記非常用制御装置は、前記乗りかごの背面側で右側の錘側ガイドレールにブラケットを介して取り付けられ、あるいは、前記昇降路の背面側の壁面にアンカー固定されたブラケット、若しくは縦柱に固定されたブラケットを介して取り付けられることを特徴とする請求項2または3に記載のマシンルームレスエレベータ。
【請求項5】
機械室を有しないマシンルームレスエレベータにおいて、
乗りかごの一方の側面側で、昇降路の頂部に配置される巻上機と、
前記乗りかごの背面側において昇降する釣合錘と、
前記乗りかごの他方の側面側で前記昇降路内に配置される主制御装置と、
前記乗りかごの背面側に配置され、非常時の運転機能を有する非常用制御装置と、を備え、
前記巻上機、前記主制御装置および前記非常用制御装置の下端が最上階の床面の高さよりも高い位置にあるように設置され、
前記非常用制御装置は、左右一対の錘側ガイドレールの上端間に架設され、一端側で巻上機を支持する支持梁上に設置されたことを特徴とするマシンルームレスエレベータ。
【請求項6】
前記非常用制御装置は、前記支持梁上に防振手段を介して設置されたことを特徴とする請求項5に記載のマシンルームレスエレベータ。
【請求項7】
機械室を有しないマシンルームレスエレベータにおいて、
乗りかごの一方の側面側で、昇降路の頂部に配置される巻上機と、
前記乗りかごの背面側において昇降する釣合錘と、
前記乗りかごの他方の側面側で前記昇降路内に配置される主制御装置と、
前記乗りかごの背面側に配置され、非常時の運転機能を有する非常用制御装置と、を備え、
前記巻上機、前記主制御装置および前記非常用制御装置の下端が最上階の床面の高さよりも高い位置にあるように設置され、
前記非常用制御装置は、左右一対の錘側ガイドレールの上端に近い位置で、前記左右一対の錘側ガイドレールの間に架け渡されるブラケットに取り付けられたことを特徴とするマシンルームレスエレベータ。
【請求項8】
前記マシンルームレスエレベータに主ロープをローピングするために、前記乗りかごの背面側に向いている前記巻上機のメインシーブと、前記メインシーブの下方に配置され、下位に位置する第1そらせシーブと上位に位置する第2そらせシーブとの対からなる、そらせシーブと、前記乗りかごの下面に配置され、前記第2そらせシーブの下方に位置する第1かご側シーブと、前記第1かご側シーブと前記乗りかごの重心に関して対称な位置に配置される第2かご側シーブを備え、
前記乗りかごを懸架する主ロープの部分は、前記巻上機のメインシーブ、前記第1そらせシーブ、第2そらせシーブ、第1かご側シーブ、第2かご側シーブの順に引き回され、末端が右側のかご側ガイドレールに支持された第1ヒッチ部に止着され、
前記釣合錘を経過する主ロープの部分は、前記巻上機のメインシーブ、釣合錘の上部に設置した釣合錘側シーブの順に引き回され、末端が右側の錘側ガイドレールに支持された第2ヒッチ部に止着されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のマシンルームレスエレベータ。
【請求項9】
前記巻上機は、前記昇降路からの平面視において、前記乗りかごと一部分が重なるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のマシンルームレスエレベータ。
【請求項10】
前記巻上機の斜め下方前側に調速機が配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のマシンルームレスエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マシンルームレスエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータを規制する我が国の法令では、従来から建築物の高さや床面積が一定条件を超える場合に、非常用エレベータを設置することを義務付けている。非常用エレベータは、平常時は、乗客や荷物を輸送する通常の用途で使用されているが、火災発生時などの非常時には火災消火活動、かご室内に閉じ込められた乗客の救出作業に使用される。
【0003】
従来、この種の非常用エレベータでは、昇降路の上部に耐火・防水構造の機械室を設置し、この機械室にエレベータの制御装置や巻上機を設置することが義務付けられていた。火災発生時には、非常用エレベータを消火活動で使用するため、放水によって制御装置や巻上機に水が入り込み使えなくなることを防止する必要があるからである。このため、従来の非常用エレベータは、機械室を有するエレベータシステムとして構成されていた(特許文献1)。
【0004】
ところで、近年では、昇降路の上部に機械室を設けずに、昇降路内に巻上機、制御装置を配置するマシンルームレスエレベータが普及しているが、これまで、法令の規制によってマシンルームレスエレベータを非常用エレベータに適用することはできなかった。
最近になって、法令が改正され、非常用エレベータにマシンルームレスエレベータを適用することが一定の条件の下で認められるようになっている(国土交通省告示第1274号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−49565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マシンルームレスエレベータの場合、消火活動で放水される水が直接かからないように、巻上機やすべての制御装置を最上階フロア床面よりも高い位置で昇降路内に配置する必要がある。
【0007】
ところが、最上階フロアより上の昇降路内では、狭い限られた空間の中に様々な機器が配置され、例えば、釣り合いおもりの昇降を確保するスペースや、乗りかごから横に出ている、かご側シーブに必要なスペースを確保すると、特に、制御装置(非常用の制御装置を含む)を設置するスペースの余裕が少ないという問題がある。
【0008】
本発明は、前記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであって、最上階フロアよりも高い位置で、昇降路内に巻上機、すべての制御装置等を配置できる合理的なレイアウトを創出し、マシンルームレスエレベータを非常用エレベータとして構成することを可能にしたマシンルームレスエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の実施形態に係るマシンルームレスエレベータは、 機械室を有しないマシンルームレスエレベータにおいて、乗りかごの一方の側面側で、昇降路の頂部に配置される巻上機と、前記乗りかごの背面側において昇降する釣合錘と、前記乗りかごの他方の側面側で、昇降路内に配置される縦長の第1の制御装置と、前記乗りかごの背面側において前記第1の制御装置に近い位置で前記昇降路内に確保されたスペースに配置される前記第1の制御装置よりも小さい縦長の第2の制御装置と、を備え、前記巻上機、前記第1の制御装置および前記第2の制御装置の下端が最上階の床面よりも高い位置にあるように設置されていることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態によるマシンルームレスエレベータにおいて、乗りかごを出入口のある正面側から見た斜視図である。
【
図2】
図1の乗りかごを正面の反対の背面側から見た斜視図である。
【
図3】第1実施形態によるマシンルームレスエレベータにおいて、昇降路の最上部を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態によるマシンルームレスエレベータにおいて、真上から昇降路を平面視した平面図である。
【
図5】昇降路の頂部における第2実施形態による非常用制御装置の配置を示す斜視図である。
【
図6】昇降路の頂部における第3実施形態による非常用制御装置の配置を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明によるマシンルームレスエレベータの実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1並びに
図2は、本発明が適用されるマシンルームレスエレベータの乗りかごを示す斜視図である。乗りかご20は、最上階のフロアに着床している位置に示されている。このうち、
図1は、乗りかご20を出入口のある正面側から見た図であり、
図2は、乗りかご20を正面の反対の背面側から見た図である。乗りかご20では、外壁を形成する側板で囲まれてかご室が構成されている。乗りかご20の正面には、かごドア20a,20bが設けられている。
【0012】
なお、以下の説明においては、かごドア20a,20bに向かって(
図1参照)、かごドア20a,20bが開閉する方向を乗りかご20の左右方向といい、乗客が乗りかご20内から出る方向を前方と、乗客が乗りかご20内に入り込む方向を後方と、鉛直方向を上下方向という。乗りかご20の各側面については、かごドア20a,20bのある面が正面、その後方にある面が背面、残り左右の面を側面という。
【0013】
図1及び
図2に示したマシンルームレスエレベータ100では、上下方向に延びる一対のかご側ガイドレール21L,21Rが乗りかご20の左右両側に配置されている。乗りかご20は、かご側ガイドレール21L,21Rに案内されて昇降路2の内部を昇降する。
【0014】
また、乗りかご20の背面側には、左右一対の錘側ガイドレール23L,23Rが上下方向に延びるように配置されている。釣合錘22は、錘側ガイドレール23L,23Rに案内されて昇降路2の内部を昇降する。本実施形態によるマシンルームレスエレベータ100は、釣合錘22の昇降軌道が乗りかご20の背面側に配置されている、いわゆる後落ちの形式のエレベータである。
【0015】
左側のかご側ガイドレール21L及び左側の錘側ガイドレール23Lの頂部間には、巻上機支持梁24が架け渡されている。この巻上機支持梁24の上面には、巻上機25が載置され固定されている。また、巻上機25のメインシーブ26は、乗りかご20の背面側に向いて、釣合錘22の左端上方に位置している。さらに、巻上機25及びメインシーブ26は同軸であり、その軸線は乗りかご20の左側面に平行に延びている。
【0016】
一方、乗りかご20の下部には、かご枠の一部を構成している下梁28が左右方向に水平に延びている。そして、
図1及び
図2から理解されるように、下梁28に対してX字形をなすように水平面内で前後左右方向に傾斜して延びるシーブ支持梁29が配設されている。
【0017】
このシーブ支持梁29の両端部には、左右一対のかご側シーブ30L,30Rが、それぞれ回転自在に支持されている。これらのかご側シーブ30L,30Rは、
図1及び
図2から理解されるように、乗りかご20の重心に対して対称な位置に配置されている。
【0018】
巻上機支持梁24の下方であって、左側のかご側シーブ30Lの上方には、2つ一組のそらせシーブ50a、50bを含むそらせシーブユニット50が設けられている。この実施形態では、そらせシーブユニット50は、
図2に示されるように、巻上機支持梁24の下面の中央部から、左側の錘側ガイドレール23Lに向けて後方且つ下方に延びるそらせシーブベース50cを有している。そらせシーブベース50cの下端部には、一方のそらせシーブ、すなわち第1そらせシーブ50aが、そらせシーブベース50cの上端部には他方のそらせシーブ、すなわち第2そらせシーブ50bが、それぞれ回動自在に支持されている。
【0019】
次に、本実施形態によるマシンルームレスエレベータ100における主ロープ27のローピングについて説明する。
主ロープ27のうち、乗りかご20を懸架する部分と、釣合錘22を懸架する部分とに分けて説明する。
【0020】
乗りかご20を懸架する部分は、次のようにローピングされる。
すなわち、メインシーブ26から下方に延びる主ロープ27の部分は、第1そらせシーブ50aに巻き掛けられてから、上方に向かって延びて第2そらせシーブ50bに巻き掛けられる。さらに、主ロープ27は、第2そらせシーブ50bから下方に向かって延び、左右一対のかご側シーブ30L,30Rの間で水平に延びた後、右側のかご側シーブ30Rから上方に延びて右側のヒッチ部31に係止される。このようにして、乗りかご20は2:1ローピングで懸架されている。
【0021】
他方、釣合錘22を懸架する主ロープ27の部分は、次のようにローピングされている。
すなわち、メインシーブ26から釣合錘22に向かって下方に延びる主ロープ27の部分は、左右一対の錘側シーブ22a、22bに水平に延びるように巻き掛けられ、さらに、右側の錘側シーブ22bに巻回されてから上方に延びて後方のヒッチ部32に係止されるようになっている。
【0022】
なお、後方のヒッチ部32は、左右一対の錘側ガイドレール23L,23Rの上端部に掛け渡された支持梁33の上面で、且つ、右側の錘側ガイドレール23Rの上端部近傍に配設され、巻上機25と同じ高さレベルにある。
【0023】
本実施形態によるマシンルームレスエレベータは、平常時には、乗客の輸送や荷物の運搬に利用される。本実施形態では、このようなエレベータを火災などの災害発生時も確実にエレベータの運転を確保できる非常用エレベータとしても利用されるようになっている。
【0024】
マシンルームレスエレベータを非常用エレベータとして構成するために、巻上機25や、主制御盤(主制御装置)40、非常用制御装置42などの駆動系の機器を昇降路2内において最上階の床面52の高さよりも高い位置に配置されている。
ここで、
図3は、昇降路2の最上部を示す図である。この
図3において、参照番号52は、最上階の床面を表している。前後方向、左右方向は、それぞれ矢印で示されている。
【0025】
左側のかご側ガイドレール21Lと、左側の錘側ガイドレール23Lの上端部間には、巻上機支持梁24が掛け渡され、この巻上機支持梁24の上面に巻上機25を設置されている。かご側ガイドレール21Lと錘側ガイドレール23Lは、共に最上階の床面52を超えて天井近くまで上方に延びているため、巻上機25の設置高さは、最上階の床面52の高さよりもかなり高い位置になっている。
【0026】
平常運転時にエレベータシステム全般の制御を行う主制御盤40は、右側のかご側ガイドレール21Rにブラケット34を介して取り付けられている。この実施形態の場合、主制御盤40は、縦長の筐体を有している制御盤であり、かご側ガイドレール21Rに沿って上方に延びるようになっている。
図3に示されるように、主制御盤40の下端は、最上階の床面52より上位にあり、主制御盤40の上端は、かご側ガイドレール21Rの上端よりもさらに高く、かつ巻上機25の上面よりも上位に位置している。
【0027】
最上階の床面52の高さから天井までのオーバーヘッドとの関係では、主制御盤40が長く収まらない場合には、オーバーヘッドを必要最小限だけ延ばすようにすればよい。もちろん、主制御盤40によっては、そのようなオーバーヘッドの延長は必要がない。
【0028】
ここで、
図4は、真上から昇降路2を平面視した図である。主制御盤40は、昇降路2の右壁面と乗りかご20の右側面に間にあって、かご側ガイドレール21Rの後側に配置されている。
【0029】
本実施形態によるマシンルームレスエレベータでは、以上のような主制御盤40に加えて、非常時にエレベータの運転を制御する非常用制御装置42が次のように配置されている。
非常用制御装置42は、乗客を安全に避難させたり、消火活動を行えるようにするために、平常時とは異なる非常時運転モードでエレベータを制御するための非常用補助盤43と、エレベータの動力電源用の変圧器44と、を含む。これら非常用補助盤43と変圧器44は、いずれも主制御盤40よりも小さい縦長のボックスを有している。
図4に示されるように、非常用制御装置42は、平面視において、昇降路2の後壁面と乗りかご20の背面の間に配置されている。
【0030】
本実施形態のマシンルームレスエレベータは、釣合錘22が後落ち型であるが、昇降路2の後壁面と乗りかご20の背面の間では、錘側ガイドレール23L、23Rの間隔Wが従来に比べて適当に狭く設定されている。この場合、右側の錘側ガイドレール23Rの位置を左側にずらして、間隔Wを狭くすることで、右側の錘側ガイドレール23Rの右隣に非常用制御装置42の設置スペースを確保している。なお、左側の錘側ガイドレール23Lについては、巻上機25のほぼ軸線上に位置するように設定されている。巻上機25は、好ましくは、昇降路2の頂部からの平面視において、乗りかご20と一部分が重なるように配置されている。
【0031】
図2に示されているように、非常用補助盤43は、ブラケット44a、44bを介して右側の錘側ガイドレール23Rに取り付けられている。非常用補助盤43の下端は、最上階の床面52の位置よりも上にある。変圧器44は、非常用補助盤43の直上に、ブラケット45を介して右側の錘側ガイドレール23Rに取り付けられている。変圧器44の上端は、巻上機25の設置高さよりも下に位置している。非常用補助盤43、変圧器44の取り付け方は様々であり、例えば、昇降路2の背面壁に沿って延びる縦柱にブラケットを介して取り付けたり、背面壁にアンカーを打って固定したブラケットに取り付けるようにしてもよい。
【0032】
なお、
図2乃至
図4において、参照番号54は、調速機を示している。調速機は巻上機25の斜め下方前側に配置されている。
【0033】
次に、本実施形態によるマシンルームレスエレベータの効果について説明する。
本実施形態によるマシンルームレスエレベータでは、
図3、
図4に示されるように、主制御盤40と、非常用制御装置42を構成している非常用補助盤43および変圧器44といったすべての制御装置と、巻上機25とが昇降路2内で最上階の床面52の高さよりも上の位置に配置されている。
【0034】
火災発生時には、エレベータの運転は非常時運転に切り替わり、非常用制御装置42によってエレベータは制御され、非常用エレベータとして機能することになる。エレベータは、消火活動でも使用することになるが、巻上機25と非常用制御装置42は、最上階の床面52より上にあるので、消火による放水の一部が制御装置や巻上機にかかるのを防止することができる。
【0035】
このようにマシンルームレスエレベータでありながら、主制御盤40や非常用制御装置42を水濡れから防護できる位置に配置することにより、非常用エレベータとしての機能を確実に維持させることができる。
【0036】
なお、主制御盤40は、非常運転には利用されないが、水に濡れないことで、消火が終わって平常運転に復旧させる際に、故障などのトラブルを未然に回避できるので、早期復旧が可能になる。
【0037】
本実施形態のように、釣合錘22が後落ち型のマシンルームレスエレベータであっても、昇降路2の有効寸法を拡大する必要もなく、また釣合錘22と干渉することなく、乗りかご20の背面側に非常用制御装置42を配置するのに必要なスペースを確保することができる。
【0038】
さらに、
図4に示したように、釣合錘22、巻上機25、そらせシーブ50a、50bの配置を最適化することができるので、非常用制御装置42を配置したからといって、マシンルームレスエレベータシステムとして主ロープ27のローピングを阻害することはない。
【0039】
(第2実施形態)
次に、
図5を参照して本発明の第2実施形態を説明する。
図5は、昇降路2の頂部における第2実施形態による非常用制御装置42の配置を示す図である。この第2実施形態では、錘側ガイドレール23L、23Rの上端間に架設された支持梁60に非常用制御装置42を載せて取り付けている。
【0040】
この支持梁60の場合、巻上機25を一部支持しているため、巻上機25で発生する振動が支持梁60から非常用制御装置42に伝わる。そこで、防振ゴムなどの防振手段62を支持梁60の上面に設け、この防振手段62の上に非常用制御装置42が設置されている。なお、非常用制御装置42は、機能毎のユニットとして複数のボックスに分割され、取付台61の上に支持梁60の長さ方向に配列されており、これにより、最上階のオーバーヘッドを増大させないようにしている。非常用制御装置42は、巻上機25とほぼ同じ高さに設置することができる。
【0041】
以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態と異なり、錘側ガイドレール23L、23Rの幅を狭くする必要なく、支持梁60を利用して非常用制御装置42を設置することができる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、
図6は、本発明の第3実施形態による非常用制御装置42の配置を示す図である。この第3実施形態は、
図5の第2実施形態のように支持梁60を利用する替わりに、支持梁60の下にブラケット64を架け渡し、このブラケット64に非常用制御装置42を設置するように実施の形態である。非常用制御装置42は、機能毎のユニットとして複数のボックスに分割されている点は、第2実施形態と同様であり、このように分割することで、支持梁60の下にスペースを取らずにまとめて配置することができる。
【0043】
以上のような第3実施形態によれば、錘側ガイドレール23L、23Rの幅を狭くする必要なく、支持梁60の下に架設したブラケットを利用して非常用制御装置42を設置することができる。
【0044】
以上、本発明に係るマシンルームレスエレベータについて、好適な実施形態を挙げて説明したが、これらの実施形態は、例示として挙げたもので、発明の範囲の制限を意図するものではない。もちろん、明細書に記載された新規な装置、方法およびシステムは、様々な形態で実施され得るものであり、さらに、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、種々の省略、置換、変更が可能である。請求項およびそれらの均等物の範囲は、発明の主旨の範囲内で実施形態あるいはその改良物をカバーすることを意図している。
【符号の説明】
【0045】
2…昇降路、20…乗りかご、20a、20b…かごドア、21L、21R…かご側ガイドレール、22…釣合錘、23L,23R…錘側ガイドレール、24…巻上機支持梁、25…巻上機、26…メインシーブ、27…主ロープ、28…下梁、29…シーブ支持梁、30L、30R…かご側シーブ、40…主制御盤、42…非常用制御装置、43…非常用補助盤、44…変圧器、50a、50b…そらせシーブ、52…最上階の床面、54…調速機、62…防振手段
【要約】
【課題】最上階フロアよりも高い位置で、昇降路内に巻上機、すべての制御装置等を配置できる合理的なレイアウトを創出し、マシンルームレスエレベータを非常用エレベータとして構成する。
【解決手段】発明の実施形態によるマシンルームレスエレベータは、乗りかご20の一方の側面側で、昇降路2の頂部に配置される巻上機25と、乗りかご20の背面側において昇降する釣合錘22と、乗りかご20の他方の側面側で、昇降路2内に配置される縦長の第1の制御装置40と、乗りかご20の背面側において第1の制御装置40に近い位置で昇降路2内に確保されたスペースに配置される前記第1の制御装置よりも小さい縦長の第2の制御装置42と、を備え、巻上機25、第1の制御装置40および記第2の制御装置42の下端が最上階の床面52よりも高い位置にあるように設置されている。
【選択図】
図1