特許第6270957号(P6270957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6270957
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】ロボット手術台
(51)【国際特許分類】
   A61G 13/00 20060101AFI20180122BHJP
   A61G 13/06 20060101ALI20180122BHJP
   A61G 13/04 20060101ALI20180122BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   A61G13/00 B
   A61G13/06
   A61G13/04
   A61N5/10 T
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-209901(P2016-209901)
(22)【出願日】2016年10月26日
【審査請求日】2016年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】特許業務法人ワンディーIPパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】須賀 和則
(72)【発明者】
【氏名】中西 徹弥
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−506748(JP,A)
【文献】 特開昭60−179072(JP,A)
【文献】 特開平09−131340(JP,A)
【文献】 特開2016−165454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/00−15/12
A61N 5/10
A61B 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者載置用のテーブルと、床に固定されるベースに一端が支持され、他端が前記テーブルを支持するロボットアームと、を備えたロボット手術台であって、
前記ロボットアームの前記一端は、鉛直軸回りに回転するように前記ベースに支持され、
前記ロボットアームは、
前記テーブルを支持し、前記テーブルを少なくとも2つの自由度で移動させるリストアセンブリと、
前記テーブルを並進自由度で水平面に沿って移動させるために水平面に沿って直線移動するように構成された直線移動アセンブリと、
を備えており、
前記ロボットアームは、前記テーブルが第1位置に位置しているとき、前記テーブルの下の空間である収容空間内に収容された第1姿勢をとることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット手術台において、
前記直線移動アセンブリは、前記リストアセンブリを水平軸回りに回転するように支持し、
前記ロボットアームは、少なくとも6つの自由度で前記テーブルを移動させることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項3】
請求項1に記載のロボット手術台において、
前記ロボットアームは、少なくとも2本のリンク部材を有し、前記リンク部材のそれぞれの一端が前記直線移動アセンブリに水平方向に延びる第1連結軸を介して回転可能に支持されており、前記リンク部材のそれぞれの他端が水平方向に延びる第2連結軸を介して前記リストアセンブリを回転可能に支持する平行リンク機構、を更に備えることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のロボット手術台において、
前記第1姿勢をとっているときの前記ロボットアームは、前記テーブルの幅方向と平行な方向における寸法が前記テーブルの幅寸法以下であり、前記テーブルの長さ方向と平行な方向における寸法が前記テーブルの長さ寸法以下であることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のロボット手術台において、
前記ロボットアームは、少なくとも一部が前記収容空間内から水平方向へはみ出した第2姿勢をとることにより、前記テーブルを、前記第1位置から離れた第2位置へ移動させることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のロボット手術台において、
前記ロボットアームは、鉛直軸回りに回転するように前記ベースに支持されたベース側可動部を更に備え、
前記直線移動アセンブリは、
水平面に沿う方向にスライド移動するように前記ベース側可動部に支持されるとともに、前記リストアセンブリを支持するスライド部、
を備えていることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のロボット手術台において、
前記ロボットアームは、鉛直軸回りに回転するように前記ベースに支持されたベース側可動部を更に備え、
前記直線移動アセンブリは、
水平面に沿う方向にスライド移動するように前記ベース側可動部に支持される第1スライド部と、
前記第1スライド部がスライドする方向と同じ方向にスライド移動するように前記第1スライド部に支持されるとともに、前記リストアセンブリを支持する第2スライド部と、
を備えていることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のロボット手術台において、
前記リストアセンブリは、前記テーブルを支持しつつ前記テーブルを線形自由度で移動させるテーブルスライド機構を有していることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のロボット手術台において、
前記リストアセンブリは、前記テーブルにロール動作、ピッチ動作、及びヨー動作をさせるように構成されていることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のロボット手術台において、
前記リストアセンブリは、前記テーブルにロール動作及びピッチ動作をさせるためのスチュワートプラットフォーム型のパラレルリンク機構を更に備え、
前記パラレルリンク機構は、ヨー軸回りに回転可能に支持されることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のロボット手術台において、
前記ロボットアームは、前記テーブルにロール動作、ピッチ動作、及びヨー動作をさせるように構成されていることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項12】
患者載置用のテーブルと、床に固定されるベースに一端が支持され、他端が前記テーブルを支持するロボットアームと、を備えたロボット手術台であって、
前記ロボットアームの前記一端は、鉛直軸回りに回転するように前記ベースに支持され、
前記ロボットアームは、
前記テーブルを支持し、前記テーブルを少なくとも2つの自由度で移動させるリストアセンブリと、
前記テーブルを並進自由度で水平面に沿って移動させるために水平面に沿って直線移動するように構成された直線移動アセンブリと、
少なくとも2本のリンク部材を有し、前記リンク部材のそれぞれの一端が前記直線移動アセンブリに水平方向に延びる第1連結軸を介して回転可能に支持されており、前記リンク部材のそれぞれの他端が水平方向に延びる第2連結軸を介して前記リストアセンブリを回転可能に支持する平行リンク機構と、
を備えていることを特徴とする、ロボット手術台。
【請求項13】
患者載置用のテーブルと、床に固定されるベースに一端が支持され、他端が前記テーブルを支持するロボットアームと、を備えたロボット手術台であって、
前記ロボットアームの前記一端は、鉛直軸回りに回転するように前記ベースに支持され、
前記ロボットアームは、
前記テーブルを支持し、前記テーブルを少なくとも2つの自由度で移動させるリストアセンブリと、
前記テーブルを並進自由度で水平面に沿って移動させるために水平面に沿って直線移動するように構成された直線移動アセンブリと、
を備えており、
前記リストアセンブリは、前記テーブルにロール動作及びピッチ動作をさせるためのスチュワートプラットフォーム型のパラレルリンク機構を備え、
前記パラレルリンク機構は、ヨー軸回りに回転可能に支持されることを特徴とする、ロボット手術台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置対象物が載置されたテーブルを移動させるロボットアームを備えたロボット手術台に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド手術室における、術前、術中でのX線透視撮影装置による撮影により、手術成績の向上が認められている。例えば特許文献1に開示される手術台2には、キャスタ6が設けられている。医療従事者は、麻酔導入、手術、X線透視撮影等において手術台2を押して移動させる。
【0003】
しかし、この手術台では、手術のために使用される各種周辺機器との干渉や各種周辺機器の配管やケーブルに留意しながら患者の状態や安全に細心の注意を払って手術台を移動させる必要がある。また、移動後に手術台が動かないようにするブレーキをかけ忘れてしまうというヒューマンエラーが発生する場合がある。
【0004】
この点につき、特許文献2及び特許文献3では、ロボットアームによって患者を載置したテーブルを移動させる治療用放射線処置システムに関する技術が記載されている。この技術を手術台に適用すれば、手術台を移動させる際に生じる上記の問題は解消できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−126454号公報
【特許文献2】特表2008−539963号公報
【特許文献3】特開2009−131718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献2及び特許文献3に開示される技術では、テーブルを移動させるロボットアームが大きいため、手術台周りのスペースが狭くなってしまい手術の際に医療従事者の妨げになる。また、ロボットアームの動作範囲が大きく、例えば、アームを畳んだ状態からテーブルを水平に直進させる際に、アームが大きくテーブルの側部からはみ出して医療従事者との干渉が発生する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、ロボットアームを小型化することができ、また、テーブルを水平に直進させる際にロボットアームがテーブルの側部から大きくはみ出してしまうことを防止することができるロボット手術台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のある局面に係るロボット手術台は、患者載置用のテーブルと、床に固定されるベースに一端が支持され、他端が前記テーブルを支持するロボットアームと、を備えたロボット手術台であって、前記ロボットアームの前記一端は、鉛直軸回りに回転するように前記ベースに支持され、前記ロボットアームは、前記テーブルを支持し、前記テーブルを少なくとも2つの自由度で移動させるリストアセンブリと、前記テーブルを並進自由度で水平面に沿って移動させるために水平面に沿って直線移動するように構成された直線移動アセンブリと、を備えており、前記ロボットアームは、前記テーブルが第1位置に位置しているとき、前記テーブルの下の空間である収容空間内に収容された第1姿勢をとることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、直線移動アセンブリ及びリストアセンブリを適宜、動作させることにより、テーブルに載置された患者を所望の位置へ移動させることができる。こうすると、従来のように、キャスターが設けられた手術台を手動により移動させる必要がなくなるため、手術台の移動に伴う周辺機器のケーブルの絡まり、手術台のブレーキのかけ忘れ、等の問題が解消される。すなわち、この構成によれば、テーブルに載置された患者を、所望の位置へ安全に移動させることができる。
【0010】
しかも、この構成によれば、直線移動アセンブリによって患者を水平方向へ直線状に移動させることができる。この構成によれば、患者が載置されたテーブルをベースから離れた位置へ移動させる際、テーブル下方に位置付けられているロボットアームが、テーブルの移動方向に垂直な方向へ向かって大きくはみ出してしまうことがない。この構成によれば、複数の回転軸を用いてテーブルを水平方向に直線移動させるロボットアームに比べてロボットアームを小型化することが可能になる。
【0011】
従って、この構成によれば、テーブルを移動させる際に動作するロボットアームとテーブル周辺の医療従事者との干渉を防止できる。
【0012】
また、この構成によれば、直線移動アセンブリだけでなく、リストアセンブリによって、テーブルに載置された患者の位置及び姿勢を調整することができる。これにより、医療従事者によって処理が施される患者の位置及び姿勢、或いは検査装置に対する患者の位置及び姿勢を適切に調整することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロボットアームを小型化することができ、テーブルを移動させる際に動作するロボットアームとテーブル周辺の医療従事者との干渉を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の構成例に係るロボット手術台を模式的に示す側面図である。
図2】ベース側可動部、第1スライド部、及び第1直動機構を底面側(床側)から視た模式図である。
図3図3(A)は、第1スライド部の内側から第1スライド部の幅方向一方側(第3モータ、減速機等が設けられている側)を視た模式図であって、図3(B)は、第1スライド部の内側から第1スライド部の幅方向他方側(第3モータ、減速機等が設けられていない側)を見た模式図である。
図4】ロボットアームが第1姿勢をとっているときの状態を側方から視た図であって、図4(A)はテーブルが最低位置に位置している状態を示す図、図4(B)はテーブルが最低位置から少し上方へ上がっている状態を示す図、である。
図5】ロボット手術台が設置された手術室を上方から視た模式図であって、患者が載置されたテーブルが手術位置に位置している様子を示す図である。
図6】ロボット手術台が設置された手術室を上方から視た模式図であって、テーブルが手術位置から検査位置へ移動している最中の様子を示す図である。
図7】ロボット手術台が設置された手術室を上方から視た模式図であって、患者が検査位置に到達した状態を示す図である。
図8】第2の構成例に係るロボット手術台の側面図であって、図8(A)はテーブルが最低位置から少し高い位置にある状態を示す図、図8(B)は、テーブルが最低位置にある状態を示す図、である。
図9図8(A)及び(B)に示すロボット手術台の一部を拡大して示す斜視図である。
図10】第3の構成例に係るロボット手術台の側面図である。
図11】第4の構成例に係るロボット手術台の側面図である。
図12図11に示すロボット手術台の一部を拡大して示す斜視図である。
図13】第5の構成例に係るロボット手術台の側面図である。
図14図13に示すパラレルリンク機構を模式的に示す斜視図である。
図15】他の構成例に係る平行リンク機構の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
医療現場においては様々な場面において安全性を保ちながら、効率的かつ精度の高い治療・検査・測定などのために医療現場の改善の試みがなされている。本発明においては、患者載置用のテーブルを、多自由度を有するロボットアームによって支持したロボット手術台を医療現場に導入することにより、これらを促進することを提案する。
【0016】
本構成例、及び以下で説明する第2から第5の構成例に係るロボット手術台は、例えばX線透視撮影装置によるX線撮影とその撮影結果に応じた手術とを同じ室内で行うハイブリッド手術を行う際に、その機能を十分に発揮することができる。以下では、ロボットベッドが上述のようなハイブリッド手術で用いられる例を挙げて説明する。
【0017】
(第1の構成例)
図1は、本発明の第1の構成例に係るロボット手術台1の側面図である。ロボット手術台1は、ロボットアーム2、ベース3、及びテーブル8を備えている。ロボット手術台1では、多自由度(第1の構成例の場合、6自由度)を有するロボットアーム2の一端が、ベース3に対して鉛直軸回りに回転自在に支持される一方、前記ロボットアーム2の他端で、患者Pを載置するためのテーブル8が支持される。第1の構成例で使用されるテーブル8としては、例えば一例として、長さ寸法が2100mm、幅寸法が500mmのテーブルが用いられる。なお、本構成例、及び以下で説明する各構成例におけるロボットアームの自由度には、ロボットアームとベースとの間の回転自由度も含まれる。
【0018】
なお、以下では、ロール軸を、テーブル8の長手方向と平行な方向に延びる軸、ピッチ軸を、テーブル8の幅方向と平行な方向に延びる軸、ヨー軸を、ロール軸及びピッチ軸の双方に直交する軸、として定義する。
【0019】
ベース3は、床FLに固定される基台部分である。ベース3の内部には、詳しくは後述する制御装置7が設けられている。なお、ベース3は床に埋め込むようにしてもよい。
【0020】
ロボットアーム2は、ベース側可動部9と、直線移動アセンブリ5と、リストアセンブリ6とを備えている。
【0021】
ベース側可動部9は、ベース3に対して第1軸Ax回りに回転可能となっている。ベース側可動部9は、図1及び図2を参照して、鉛直方向から視て円板状に形成された基板部9aと、基板部9aの上面に固定された一対の被案内部9bとを有している。ベース側可動部9は、ロボットアーム2に含まれる第1モータ9cによって、ベース3に対してD1方向に回転駆動される。
【0022】
[直線移動アセンブリの構成]
図2は、直線移動アセンブリ5が有する第1スライド部10、及び第1直動機構11を底面側(床側)から視た模式図である。また、図3(A)は、第1スライド部10の内側から第1スライド部10の幅方向一方側(第3モータ22、減速機23等が設けられている側)を視た模式図であって、図3(B)は、第1スライド部10の内側から第1スライド部10の幅方向他方側(第3モータ22、減速機23等が設けられていない側)を見た模式図である。なお、図2では、ベース側可動部9を2点鎖線で図示している。また、図3(A)及び図3(B)では、第2スライド部20を2点鎖線で図示している。
【0023】
直線移動アセンブリ5は、鉛直方向に延びる第1軸Ax回り(D1方向)に回転可能なように、ベース側可動部9を介してベース3に支持されている。直線移動アセンブリ5は、図2及び図3を参照して、第1スライド部10と、第1直動機構11と、第2スライド部20と、第2直動機構21とを備えている。第1スライド部10は、上方に開口する長方形状の略箱状に形成されている。
【0024】
第1スライド部10は、水平方向に延びるように設けられていて、下側の部分がベース側可動部9によって支持されている。第1スライド部10は、ベース側可動部9に対して、スライド部10の長手方向(D2方向)に沿ってスライド移動可能である。第1スライド部10は、基板部9aがスライド部10の一端側(図1における右端側)に位置した状態と、スライド部10の長手方向中央部付近に位置した状態との間でスライド移動する。
【0025】
第1直動機構11は、図2を参照して、第2モータ12と、減速機13と、ネジ軸14と、一対の軸受15と、ナット部16と、一対のレール17とを有している。第1直動機構11では、第2モータ12の出力軸の回転力が減速機13によって減速された後、ネジ軸14に伝達される。そうすると、ネジ軸14及びナット部16等を備えたボールねじ機構によって、ナット部16と一体に形成された被案内部9bが、レール17の長手方向に沿ってスライド移動する。被案内部9bは基板部9aに固定されているため、第1スライド部10は、第2モータ12、減速機13、軸受15等とともに、基板部9aに対してレール17の長手方向に沿ってスライド移動する。
【0026】
第2直動機構21は、図3(A)を参照して、第1スライド部10の一方の側壁の内側に、第3モータ22と、減速機23と、ネジ軸24と、一対の軸受25と、ナット部26と、被案内部27aと、レール28aとを有している。また、第2直動機構21は、図3(B)を参照して、第1スライド部10の他方の側壁の内側に、被案内部27bとレール28bとを有している。第2直動機構21では、第3モータ22の出力軸の回転力が減速機23によって減速された後、ネジ軸24に伝達される。そうすると、ネジ軸24及びナット部26等を備えたボールねじ機構によって、ナット部26が固定された被案内部27aが、レール28aに沿ってスライド移動する。これにより、被案内部27aに支持された第2スライド部20が第1スライド部10の長手方向に沿って(D3方向に沿って)スライド移動する。また第2スライド部20は、レール28aと平行に設けられたレール28bに沿ってスライド移動可能な被案内部27bにも支持されている。これにより、第2スライド部20は、一対の被案内部27a,27bを介して一対のレール28a,28bに支持されるとともに、これら一対のレール28a,28bに沿ってスライド移動する。
【0027】
[リストアセンブリの構成]
リストアセンブリ6は、図1を参照して、直線移動アセンブリ側可動部30と、第5モータ31と、ロール可動部32と、第6モータ33と、ピッチ可動部34と、第7モータ35とを備えている。
【0028】
直線移動アセンブリ側可動部30は、リストアセンブリ6における最も直線移動アセンブリ5側に設けられた可動部である。直線移動アセンブリ側可動部30は、第1ジョイント36を介して第2スライド部20に連結されていて、水平面に平行な方向であって且つ第1スライド部10の長手方向に直交する方向に延びる水平軸としての第2軸Ax回り(D4方向)に回転可能である。すなわち、リストアセンブリ6は、第1ジョイント36を介して直線移動アセンブリ5に連結されている。直線移動アセンブリ側可動部30は、第1ジョイント36に対応して設けられた第4モータ37によって、第2軸Ax回りに回転駆動される。
【0029】
ロール可動部32は、第2ジョイント38を介して直線移動アセンブリ側可動部30に連結されていて、前記第2軸Axに直交する方向に延びる第3軸Ax回り(D5方向)に回転可能である。ロール可動部32は、第2ジョイント38に対応して設けられた第5モータ31によって、第3軸Ax回りに回転駆動される。このようにロール可動部32が回転駆動されることで、テーブル8をロール軸回りに移動(ロール動作)させることができる。
【0030】
ピッチ可動部34は、第3ジョイント39を介してロール可動部32に連結されていて、第3軸Axに直交する方向に延びる第4軸Ax回り(D6方向)に回転可能である。ピッチ可動部34は、第3ジョイント39に対応して設けられた第6モータ33によって、第4軸Ax回りに回転駆動される。このようにピッチ可動部34が回転駆動されることで、テーブル8をピッチ軸回りに移動(ピッチ動作)させることができる。
【0031】
第7モータ35は、ピッチ可動部34とテーブル8における長手方向一端側の部分との間に設けられている。テーブル8は、この第7モータ35によって、第4軸Axに直交する方向に延びる第5軸Ax回りに回転駆動される。これにより、テーブル8をヨー軸回りに移動(ヨー動作)させることができる。
【0032】
以上説明したように、ロボットアーム2は、D1〜D7方向へ回転可能又はスライド移動可能なジョイントを備えている。しかし、D2方向及びD3方向は、同じ直線上でのスライド移動であるため、ロボットアーム2は、6自由度(5回転自由度及び1線形自由度)を有している。また、ロボットアーム2が有するリストアセンブリ6は、テーブル8を、D5方向(ロール方向)、D6方向(ピッチ方向)、D7方向(ヨー方向)へ回転可能である。すなわち、リストアセンブリ6は、3自由度を有している。
【0033】
[各モータの構成]
第1の構成例に係るロボット手術台1が有する各モータ9c,12,22,31,33,35,37は、無励磁作動形の電磁ブレーキ及び位置検出器を有するサーボモータで構成されている。各モータによれば、各モータが駆動する各可動部が所定の位置及び姿勢となったことを位置検出器によって検出した後に電磁ブレーキを作動させることにより、ロボットアーム2を所望の位置及び姿勢で維持することができる。なお、本構成例、及び以下で説明する第2〜第5の構成例に係るロボット手術台に用いられる各モータは、減速機を介して各可動部を動作させる。
【0034】
なお、電動モータとしては、例えばサーボモータが用いられるが、これに限らず、その他の電動モータであってもよい。また、位置検出器としては、例えばモータの回転角や方向を検出するエンコーダが用いられるが、これに限らず、レゾルバ、ポテンショメータ等が用いられてもよい。また、電磁ブレーキとしては、無励磁作動形の電磁ブレーキが好ましいが、これに限らず、励磁作動形の電磁ブレーキが用いられてもよい。
【0035】
以上のように構成されたロボット手術台1を用いれば、テーブル8上に載置された患者Pを、所望の位置間で移動させることができる。具体的には、例えば一例として、テーブル8上に載置された患者Pの検査が行われる検査位置と、医師が患者Pに対して手術を行う手術位置と、の間で移動させることができる。このようにロボット手術台1を用いて患者Pを手術室内で移動させることにより、例えば、キャスター付きのテーブルにより患者を移動させるのと比較して、患者に大きな振動を与えることなくテーブルをスムーズに移動させることができる他、医療室の床上に多数存在する医療機器に付随するコード類や医療器具に付随するチューブ類との絡まりやこれらを跨ぐことによるテーブルのがたつき回避することができ、安全性と移動効率を高めることができる。
【0036】
[ロボット手術台の動作]
図4(A)及び図4(B)は、ともにロボットアーム2が第1姿勢をとっているときの状態を側面から視た図であって、図4(A)はテーブル8が最低位置(下降位置)に位置している状態を示す図、図4(B)はテーブルが最低位置から上方へ上がっている状態(上昇位置に位置している状態)を示す図、である。なお、最低位置とは、テーブル8がとりうる床FLを基準とした高さ位置のうち最も低い位置である。
【0037】
図4(A)及び図4(B)を参照して、ロボットアーム2が第1姿勢をとっている状態では、ロボットアーム2は、テーブル8の下の空間である収容空間S内に収容される。言い換えれば、ロボットアーム2が第1姿勢をとっている状態では、ロボットアーム2は、上方から視て、テーブル8に隠れて見えない状態となっている。この状態において、テーブル8は、第1位置に位置している。すなわち、第1位置とは、上方から視てロボットアーム2がテーブル8に隠れて見えない状態となっているときの位置である。なお、この第1位置には、最低位置(下降位置)、及び最低位置からテーブル8が上昇した上昇位置、の間の任意の位置が含まれる。ロボット手術台1では、テーブル8を第1位置に位置させつつ、各可動部(第2スライド部20、直線移動アセンブリ側可動部30等)を適宜駆動させることにより、テーブル8を最低位置と上昇位置との間で上下動できる。そして、ロボットアーム2の各可動部(第1スライド部10、第2スライド部20、直線移動アセンブリ側可動部30等)が回転又はスライド移動して、ロボットアーム2の少なくとも一部が収容空間Sから水平方向へはみ出した第2姿勢をとることにより、テーブル8が第1位置から第2位置へ移動する。第2位置に位置している状態では、ロボットアーム2は、上方から視て、テーブル8からはみ出して露出した状態となっている。すなわち、第2位置とは、上方から視てロボットアーム2の少なくとも一部がテーブル8からはみ出して露出しているときの位置である。
【0038】
本実施例に係るロボットアーム2に支持されたテーブル8を複数の位置の間で移動させる動作を図5図7に説明する。
【0039】
図5図7は、ロボット手術台1が設置された手術室を上方から視た模式図であって、図5は、患者Pが載置されたテーブル8が第1位置に位置している様子を示す図、図6は、テーブル8が第1位置から第2位置(検査位置)へ移動している最中の様子を示す図、図7は、患者が検査位置に到達した状態を示す図、である。なお、図5におけるテーブル8の位置は手術位置でもあり得、テーブル8が図7の検査位置から図5の位置まで各可動部が逆方向に動いて元の第1位置(手術位置)に戻り、この手術位置において、検査直後に検査結果を判断して医師が治療を行うことができる。なお、図5図7では、検査装置Aとして、アンギオ検査に使用されるX線撮影装置を模式的に図示している。
【0040】
ロボットアーム2による各位置間でのテーブル8の移動は、例えば操作装置によって制御装置7にテーブル8を所定の方向に移動させる指令を与え、ロボットアーム2の各可動部を動かすことによって行うことができる。具体的には、ユーザが操作装置を用いて制御装置7に移動指令を与えている間だけロボットアーム2はテーブル8の移動を行う。また、手術位置および検査位置などの各位置を予め制御装置7に記憶させておけば、例えばユーザが操作装置を使って移動指令を制御装置に与えると、目標とする位置に移動するように可動部が動作するので、目標とする位置へのテーブル8の移動をスムーズに行うことができる。さらに、目標位置と移動させたい経路上のいくつかの位置を指定しておくと、例えばユーザが操作装置を使って制御装置7に移動指令を与えると、自動的に望む経路を辿って目標位置に到達することができる。各位置を記録させるには、操作装置によってロボットアーム2を実際に目標とする位置に移動させることによって直接的に記憶させてもよいし、x,y,z座標を入力することによって指定してもよい。
【0041】
第1の構成例に係るロボット手術台1は、上述した第1姿勢及び第2姿勢をとることができる。ロボット手術台1では、ロボットアーム2の姿勢が第1姿勢から第2姿勢に変化することにより、テーブル8を手術位置から検査位置へ移動させることができる。
【0042】
図5を参照して、ロボット手術台1は、手術位置に位置している状態では(すなわち、第1姿勢をとった状態では)、テーブル8の幅方向と平行な方向におけるロボットアーム2の寸法W2が、テーブル8の幅寸法W8以下(W2≦W8)になっていて、且つ、テーブル8の長さ方向と平行な方向におけるロボットアーム2の寸法L2が、テーブル8の長さ寸法L8以下(L2≦L8)になっている。
【0043】
そして、図5を参照して、ロボット手術台1は、ロボット手術台1が設置された手術室において、テーブル8が手術位置に位置している状態では(すなわち、第1姿勢をとった状態では)、テーブル8の下の空間である収容空間S内にロボットアーム2が収容される。これにより、検査後の患者Pに対して手術を行う際に、ロボットアーム2がテーブル8の下に収容された状態となるため、テーブル8を囲む医療従事者Tがテーブル8近辺で作業を行う際にロボットアーム2が邪魔になることがない。すなわち、医療従事者Tによる患者への処置が必要な状態において、医療従事者Tとロボットアーム2との干渉を防止することができる。また、ロボットアーム2によりテーブル8を手術位置から離れた検査位置に移動させることができるので、ロボット手術台1を検査装置Aから離れた位置に設置することができ、手術の際に検査装置Aが医療従事者Tの邪魔になることを防止することができる。
【0044】
一方、テーブル8に載置された患者Pを、検査位置まで移動させる際には、ロボットアーム2の各可動部が適切に駆動され、患者Pが検査位置まで搬送される。具体的には、図5から図7を参照して、第1姿勢をとった状態のロボットアーム2において、患者Pの頭部が検査装置Aを向くようにベース側可動部9がベース3に対して回転し、且つ患者Pが検査装置A側へ搬送されるように、第1スライド部10及び第2スライド部20が検査装置A側へスライド移動する。これにより、図6に示す状態を経て、患者Pを検査装置Aまで搬送することができる(図7参照)。
【0045】
なお、患者Pを検査装置Aまで搬送する際、上述したように、第1スライド部10及び第2スライド部20が検査装置A側へスライド移動する。具体的には、第1スライド部10が、ベース側可動部9に対して、第1スライド部10の長手方向に沿ってスライド移動し、第2スライド部20が、第1スライド部10に対して、第1スライド部10の長手方向に沿ってスライド移動する。すなわち、第1の構成例に係るロボット手術台では、患者Pを検査装置Aまで搬送する際に、テーブル8の下方に位置付けられているロボットアーム2が、テーブル8の移動方向に垂直な方向(図5から図7に示す例の場合、テーブル8の幅方向)へ向かって大きくはみ出してしまうことがない。これにより、検査装置Aへの患者搬送時における、テーブル8周辺に位置する医療従事者Tとロボットアーム2との干渉を防止できる。
【0046】
検査位置まで搬送された患者Pの位置を、検査装置Aに対して微調整したい場合には、リストアセンブリ6が有する各可動部(直線移動アセンブリ側可動部30、ロール可動部32、及びピッチ可動部34等)を適宜、駆動させればよい。これにより、テーブル8の高さ、及びロール方向、ピッチ方向、及びヨー方向への傾きを調整することができる。なお、その際、直線移動アセンブリ5も動作させることにより、患者Pを検査装置Aに対してより正確に位置合わせできる。
【0047】
そして、ロボット手術台1を用いて行われるハイブリッド手術では、患者Pの検査後、テーブル8を再び手術位置まで移動させることにより、その検査結果に基づいて、同じ手術室内で患者Pに対して手術を行うことができる。具体的には、テーブル8を検査位置まで搬送した状態のロボットアーム2において、ロボットアーム2の各可動部を適切に駆動させることにより、テーブル8を手術位置に戻すことができる。このようにテーブル8が手術位置に位置した状態では、ロボットアーム2がテーブル8の下の収容空間Sに収容された状態となる。すなわち、ロボットアーム2がテーブル8の下の収容空間Sから水平方向外側へはみ出した状態とならず、医師が患者Pに手術を行う際にロボットアーム2が邪魔にならない。よって、この手術位置では、医師が患者Pに対して自然な姿勢で手術を行うことができる。
【0048】
ところで、手術では、医師が立った状態で(立位姿勢で)患者に対して手術を行うこともあり、或いは長時間に及ぶ手術では、医師が椅子に座った状態で(座位姿勢で)患者に対して手術を行うこともある。本構成例に係るロボット手術台1では、手術位置において各可動部を適切に駆動させることにより、医師の身長や医師の手術時の姿勢に応じてテーブル8の高さ位置を上昇位置と最低位置の間で任意に調整することができる。これにより、本構成例によれば、使い勝手のよいロボット手術台を提供できる。
【0049】
そして、本構成例に係るロボット手術台1では、手術位置(上述した最低位置及び上昇位置の間の任意の位置)において、テーブル8の高さ位置によらず、ロボットアーム2がテーブル8の下の収容空間S内に収容された状態となる。すなわち、ロボット手術台1によれば、手術時における医師の姿勢(立位姿勢、座位姿勢)に合わせて適切な高さ位置に上下動された状態におけるテーブル8の高さ位置によらず、ロボットアーム2をテーブル8の下の収容空間S内に収容できる。
【0050】
なお、第1の構成例のテーブル8の高さ位置は、最も下げられた状態において、450mm〜600mmの範囲内に含まれることが好ましく、500mm〜600mmの範囲内に含まれることがより好ましい。この高さは、術者が座った状態で患者に対して手術等の処置を施しやすい高さである。また、テーブル8の高さ位置は、最も上げられた状態において、1000mm〜1500mmの範囲内に含まれるのが好ましい。ここで例示した1000mmの高さは、一般的な検査装置で患者を検査する際に必要とされる高さである。また、テーブル8の水平方向における可動範囲(テーブル8の長手方向の可動範囲)は、1000〜2500mmであることが好ましい。テーブル8は、ベース側可動部9が回転する鉛直軸を中心として、水平面におけるいずれの面内方向へも移動可能である。
【0051】
[効果]
以上のように、第1の構成例に係るロボット手術台1によれば、直線移動アセンブリ5及びリストアセンブリ6を適宜、動作させることにより、テーブル8に載置された患者Pを所望の位置へ移動させることができる。こうすると、従来のように、キャスターが設けられた手術台を手動により移動させる必要がなくなるため、手術台の移動に伴う周辺機器のケーブルの絡まり、手術台のブレーキのかけ忘れ、等の問題が解消される。すなわち、この構成によれば、テーブル8に載置された患者Pを、所望の位置へ安全に移動させることができる。
【0052】
しかも、ロボット手術台1によれば、直線移動アセンブリ5によって患者Pを水平方向へ直線状に移動させることができる。ロボット手術台1によれば、患者Pが載置されたテーブル8をベース3から離れた位置へ移動させる際、テーブル8の下方に位置付けられているロボットアーム2が、テーブル8の移動方向に垂直な方向へ向かって大きくはみ出してしまうことがない。
【0053】
従って、ロボット手術台1によれば、テーブル8を移動させる際に動作するロボットアーム2とテーブル8周辺の医療従事者Tとの干渉を防止できる。
【0054】
また、ロボット手術台1によれば、直線移動アセンブリ5だけでなく、3つの自由度を有するリストアセンブリ6によって、テーブル8に載置された患者Pの位置及び姿勢を調整することができる。これにより、医療従事者Tによって処理が施される患者Pの位置及び姿勢、或いは検査装置Aに対する患者Pの位置及び姿勢を適切に調整することができる。
【0055】
また、ロボット手術台1では、直線移動アセンブリ5がリストアセンブリ6を水平軸回りに(図1を参照して、第2軸Ax回りに)回転するように支持している。この構成によれば、リストアセンブリ6を水平軸回りに回転させることにより、テーブル8の高さ位置を適切に調整することができる。
【0056】
また、ロボット手術台1では、6つの自由度を有するロボットアーム2によって、テーブル8の位置及び姿勢を自在に調整することができる。
【0057】
また、ロボット手術台1では、テーブル8が手術位置に位置しているときには、ロボットアーム2がテーブル8の下の収容空間S内に収容されるため、ロボットアーム2が邪魔になることがない。これにより、医療従事者Tとしての医師は、テーブル8に近づいた状態で、自然な姿勢で患者Pに対して手術を行うことができる。
【0058】
また、ロボット手術台1では、ロボットアーム2が第1姿勢をとっている状態において、テーブルの幅方向と平行な方向におけるロボットアーム2の寸法がテーブルの幅寸法以下となっていて、且つテーブルの長さ方向と平行な方向におけるロボットアーム2の寸法がテーブルの長さ寸法以下となっている。これにより、ロボットアーム2を確実にテーブル8の下のスペースである収容空間S内に収容することができる。
【0059】
また、ロボット手術台1では、ロボットアーム2の姿勢が第1姿勢から第2姿勢へ変化するように各可動部(第1スライド部10、第2スライド部20等)を移動させることで、テーブル8をベース3から離れた検査位置へ適切に移動することができる。
【0060】
また、ロボット手術台1のように、2つのスライド部(第1スライド部10及び第2スライド部20)を設けることで、ロボットアーム2の大型化を抑制しつつ、テーブル8を遠方まで移動させることが可能なロボット手術台を提供できる。
【0061】
また、ロボット手術台1によれば、リストアセンブリ6によってテーブル8をロール軸、ピッチ軸、及びヨー軸回りに移動させることができるため(ロール動作、ピッチ動作、ヨー動作できるため)、テーブル8を自在に移動させて患者Pを所望の姿勢に動かすことができる。
【0062】
また、ロボット手術台1によれば、ロボットアーム2がテーブル8にロール動作、ピッチ動作、及びヨー動作をさせるように構成されているため、患者Pの姿勢を自在に調整することができる。
【0063】
(第1の構成例の変形例)
(1)第1の構成例に係るロボット手術台1の第1直動機構11及び第2直動機構21は、いわゆるボールねじ構造を用いて構成されているが、これに限らず、第1スライド部10及び第2スライド部20をスライド移動可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。例えば一例として、上述した直動機構として、ラックアンドピニオン構造を採用してもよい。
【0064】
(2)第1の構成例に係るロボット手術台1としては、6自由度を有するロボット手術台1を例に挙げて説明したが、これに限らず、ロボット手術台1の自由度は5であってもよく、或いは7以上であってもよい。
【0065】
(3)本構成例では、テーブル8の長手方向における一端部をロボットアーム2で支持する例を挙げて説明した。こうすると、テーブル8をより遠くの位置にまで移動できるためテーブル8の可動範囲を広げることができる。しかし、これに限らず、テーブル8の長手方向中央部分をロボットアーム2で支持する構成としてもよい。これにより、ロボットアームによるテーブル8支持強度を高めることができる。
【0066】
(第2の構成例)
図8は、本発明の第2の構成例に係るロボット手術台1aの側面図であって、図8(A)は、テーブル8が最低位置から少し高い位置にある状態を示す図、図8(B)は、テーブル8が最低位置にある状態を示す図である。また、図9は、図8(A)及び(B)に示すロボット手術台1aの一部(具体的には、詳しくは後述する平行リンク機構45及びその付近の部分)を拡大して示す斜視図である。ロボット手術台1aは、ロボットアーム2a、ベース3、及びテーブル8を備えている。ロボット手術台1aでは、多自由度(第2の構成例の場合、7自由度)を有するロボットアーム2aの一端が、ベース3に対して鉛直軸回りに回転自在に支持される一方、前記ロボットアーム2aの他端で、患者載置用のテーブル8が支持される。ベース3の構成は、第1の構成例のベース3の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0067】
ロボットアーム2aは、ベース側可動部41と、直線移動アセンブリ5aと、平行リンク機構45と、リストアセンブリ6aとを備えている。
【0068】
ベース側可動部41は、水平方向に延びるように形成された部分であって、長手方向一端側の下側部分が、ベース3に対して第1軸Ax回りに(D1方向に)回転可能なように、ベース3に連結されている。ベース側可動部41は、長手方向他端側の部分に、外側に向かって開口する開口部41aを有している。
【0069】
[直線移動アセンブリの構成]
直線移動アセンブリ5aは、第1の構成例の場合と同様、鉛直方向に延びる第1軸Ax回りに回転可能なように、ベース側可動部41を介してベース3に支持されている。直線移動アセンブリ5aは、ベース3とベース側可動部41との間に設けられた、ロボットアーム2に含まれる第1モータ40によって、第1軸Ax回りに回転駆動される。直線移動アセンブリ5は、図8を参照して、スライド部42と、第2モータ43a等を有する直動機構43と、を備えている。
【0070】
スライド部42は、水平方向に細長い棒状に形成された部分であって、その長手方向がベース側可動部41の長手方向に沿うように、その一端側の部分がベース側可動部41に収容されている。スライド部42は、その他端側の部分が、ベース側可動部41の開口部41aから外側へ進出可能、且つベース側可動部41内へ退避可能である。すなわち、スライド部42は、ベース側可動部41の長手方向に沿ってスライド移動可能に設けられている。スライド部42は、スライド部42とベース側可動部41との間に設けられた直動機構43によってスライドされる。直動機構43は、スライド部42をベース側可動部41に対してスライド移動させることが可能な機構であればどのような機構であってもよい。直動機構43としては、例えば一例として、ボールねじ機構、或いはラックアンドピニオン機構を用いることができる。
【0071】
[平行リンク機構の構成]
平行リンク機構45は、直線移動アセンブリ5aとリストアセンブリ6aとを連結するリンク機構である。平行リンク機構45は、図9を参照して、4本のリンク部材46と、2つの第1連結軸47aと、2つの第2連結軸47bとを有している。
【0072】
各リンク部材46は、直線状に形成されている。各リンク部材46の長さは、互いに同じである。各リンク部材46では、一端側の部分(下側の部分)が、第1連結軸47aを介してスライド部42に対して回転自在に連結されている一方、他端側の部分(上側の部分)が、第2連結軸47bを介して直線移動アセンブリ側可動部52に対して回転自在に連結されている。4つのリンク部材のうちの2本は、テーブル8の幅方向一方側に設けられ、残りの2本は、テーブル8の幅方向他方側に設けられている。4本のリンク部材46は、上側に設けられた2本の上側リンク部材48と、下側に設けられた2本の下側リンク部材49とで構成されている。
【0073】
第1連結軸47aは、各リンク部材46の下端部分をスライド部42の先端部分に対して回転自在に連結する軸状の部分である。各第1連結軸47aは、各リンク部材46をスライド部42に対して連結した状態において、テーブル8の幅方向に沿って延びている。
【0074】
第2連結軸47bは、各リンク部材46の上端部分を、リストアセンブリ6aの直線移動アセンブリ側可動部52に対して回転自在に連結する軸状の部分である。各第2連結軸47bは、各リンク部材46を直線移動アセンブリ側可動部52に対して連結した状態において、テーブル8の幅方向に沿って延びている。
【0075】
平行リンク機構45では、図9を参照して、テーブル8の幅方向一方側に設けられている2本のリンク部材46と、テーブル8の幅方向他方側に設けられている2本のリンク部材46との間の距離d45は、ベース側可動部41の幅寸法d41(テーブル8の幅方向に平行な方向の寸法)よりも大きくなっている。これにより、リンク部材46とベース側可動部41との干渉を防止できるため、テーブル8を低い位置まで下げることが可能となる(図8(B)参照)。
【0076】
平行リンク機構45は、第3モータ51によって駆動される。具体的には、第3モータ51は、例えば、下側リンク部材49をスライド部42に連結する第1連結軸47aに対応する位置に設けられて、下側リンク部材49を第1連結軸47aの中心軸Ax周りに(D3方向に)回転駆動させる。これにより、下側リンク部材49が第1連結軸47aを中心として揺動するため、下側リンク部材49の上端部分に連結されたリストアセンブリ6aが上下動する。なお、下側リンク部材49が第3モータ51によって回転駆動させられるのに伴って、上側リンク部材48も下側リンク部材49に連動して動作する。これにより、4本のリンク部材46によって、リストアセンブリ6aを下側からしっかりと支持することができる。
【0077】
[リストアセンブリの構成]
リストアセンブリ6aは、直線移動アセンブリ側可動部52と、第4モータ53と、ヨー可動部54と、第5モータ55と、ピッチ可動部56と、第6モータ57と、ロール可動部58と、テーブルスライド機構63とを備えている。
【0078】
直線移動アセンブリ側可動部52は、リストアセンブリ6aにおける最も直線移動アセンブリ5側に設けられた可動部である。直線移動アセンブリ側可動部52は、テーブル8の長手方向に沿う方向に延びるように設けられ、水平面に対して平行な姿勢を保つように平行リンク機構45に支持されている。直線移動アセンブリ側可動部52は、D3方向に回動する平行リンク機構45によって揺動しながら上下方向に移動する。
【0079】
ヨー可動部54は、第1ジョイント59を介して直線移動アセンブリ側可動部52に連結されていて、鉛直方向に延びる第3軸Ax回りに(D4方向に)回転可能である。ヨー可動部54は、第1ジョイント59に対応して設けられた第4モータ53によって、第3軸Ax回りに回転駆動される。このようにヨー可動部54が回転駆動されることで、テーブル8をヨー軸回りに移動させることができる。
【0080】
ピッチ可動部56は、第2ジョイント61を介してヨー可動部54に連結されていて、第3軸Axに直交する方向に延びる第4軸Ax回りに(D5方向に)回転可能である。ピッチ可動部56は、第2ジョイント61に対応して設けられた第5モータ55によって、前記第4軸Ax回りに回転駆動される。このようにピッチ可動部56が回転駆動されることで、テーブル8をピッチ軸回りに移動させることができる。
【0081】
ロール可動部58は、第3ジョイント62を介してピッチ可動部56に連結されていて、テーブル8の長手方向に沿って延びる第5軸Ax回りに(D6方向に)回転可能である。ロール可動部58は、第3ジョイント62に対応して設けられた第6モータ57によって、第5軸Ax回りに回転駆動される。このようにロール可動部58が回転駆動されることで、テーブル8をロール軸回りに移動させることができる。
【0082】
[テーブルスライド機構の構成]
テーブルスライド機構63は、ロール可動部58に対してテーブル8を、テーブル8の長手方向に沿って(D7方向に沿って)スライド移動させるための機構である。すなわち、テーブルスライド機構63は、1つの線形自由度でテーブル8を移動させることができる。テーブルスライド機構63は、モータ63a等を用いて構成されている。テーブルスライド機構63としては、例えばボールねじ機構、或いはラックアンドピニオン機構等が採用される。テーブル8は、このテーブルスライド機構63によって、スライド移動可能に支持されている。
【0083】
なお、第2の構成例における各モータの構成については、第1の構成例の場合と同様であるため、その説明を省略する。本構成例でも、第1の構成例の場合と同様、各モータは、減速機を介して各可動部を動作させる。
【0084】
以上説明したように、ロボットアーム2aは、D1〜D7方向へ回転可能又はスライド移動可能なジョイントを備えているため、7自由度(5回転自由度及び2線形自由度)を有している。また、リストアセンブリ6aは、図8を参照して、テーブル8を、D4方向(ヨー方向)、D5方向(ピッチ方向)、D6方向(ロール方向)へ回転可能、且つD7方向へスライド移動可能である。すなわち、リストアセンブリ6aは、4自由度を有している。
【0085】
以上のように構成されたロボット手術台1aを用いれば、上述した第1の構成例の場合と同様、テーブルを所定の目的位置まで正確に移動させることができるため、医療現場における検査や治療の効率を格段に向上させることができ、且つ安全性、移動効率を高めることができる。
【0086】
[ロボット手術台の動作]
本構成例に係るロボットアーム2aによっても、可動範囲であればテーブルを複数の位置の間を自由なルートで移動させることができるので、テーブルを第1の構成例で説明した図5図7と同じ軌跡で検査装置等に移動させることができる。具体的には、テーブル8の下の収容空間S内に収容されて第1姿勢をとっているロボットアーム2aを第2姿勢に変化させることにより、テーブル8を手術位置から検査位置へ移動させることができる。或いは、第2姿勢をとっているロボットアーム2aを第1姿勢に変化させることにより、テーブル8を検査位置から手術位置へ移動させることができる。
【0087】
[効果]
以上のように、第2の構成例に係るロボット手術台1aによれば、第1の構成例の場合と同様、テーブル8を移動させる際に動作するロボットアーム2aとテーブル8周辺の医療従事者Tとの干渉を防止できる。
【0088】
(第2の構成例の変形例)
第2の構成例では、図8を参照して、リストアセンブリ6aにおける直線移動アセンブリ側可動部52側に設けられた可動部(ヨー可動部54)をヨー方向へ(D4方向)へ回転させることによりテーブル8をヨー方向へ回転させる例を挙げて説明したが、これに限らない。具体的には、例えば一例として、リストアセンブリ6aにおけるテーブル8側に設けられた可動部(ロール可動部58)とテーブルスライド機構63との間にモータを設け、このモータによってテーブル8をヨー方向へ回転させてもよい。
【0089】
(第3の構成例)
図10は、本発明の第3の構成例に係るロボット手術台1bの側面図である。ロボット手術台1bは、ロボットアーム2b、ベース3、及びテーブル8を備えている。ロボット手術台1bでは、多自由度(第3の構成例の場合、7自由度)を有するロボットアーム2bの一端が、ベース3に対して鉛直軸回りに回転自在に支持される一方、前記ロボットアーム2の他端で、患者載置用のテーブル8が支持される。ベース3の構成は、第1の構成例のベース3の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0090】
ロボットアーム2bは、ベース側可動部41と、直線移動アセンブリ5aと、リストアセンブリ6bとを備えている。これらのうち、ベース側可動部41及び直線移動アセンブリ5aの構成は、第2の構成例のベース側可動部41及び直線移動アセンブリ5aと同じであるため、説明を省略する。
【0091】
[リストアセンブリの構成]
リストアセンブリ6bは、図10を参照して、直線移動アセンブリ側可動部65と、第4モータ66と、ロール可動部67と、第5モータ68と、ピッチ可動部69と、第6モータ70と、テーブルスライド機構63とを備えている。これらのうち、テーブルスライド機構63の構成は、第2の構成例のテーブルスライド機構63の構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0092】
直線移動アセンブリ側可動部65は、リストアセンブリ6bにおける最も直線移動アセンブリ5a側に設けられた可動部である。直線移動アセンブリ側可動部65は、第1ジョイント72を介してスライド部42に連結されていて、水平面に沿う方向であってスライド部42の長手方向に直交する方向に延びる第2軸Ax回りに(D3方向に)回転可能である。すなわち、リストアセンブリ6bは、第1ジョイント72を介して直線移動アセンブリ5aに連結されている。直線移動アセンブリ側可動部65は、第1ジョイント72に対応して設けられた第3モータ73によって、第2軸Ax回りに回転駆動される。
【0093】
ロール可動部67は、第2ジョイント74を介して直線移動アセンブリ側可動部65に連結されていて、第2軸Axに直交する方向に延びる第3軸Ax回り(D4方向)に回転可能である。ロール可動部67は、第2ジョイント74に対応して設けられた第4モータ66によって、第3軸Ax回りに回転駆動される。このようにロール可動部67が回転駆動されることで、テーブル8をロール軸回りに移動させることができる。
【0094】
ピッチ可動部69は、第3ジョイント75を介してロール可動部67に連結されていて、第3軸Axに直交する方向に延びる第4軸Ax回りに(D5方向に)回転可能である。ピッチ可動部69は、第3ジョイント75に対応して設けられた第5モータ68によって、第4軸Ax回りに回転駆動される。このようにピッチ可動部69が回転駆動されることで、テーブル8をピッチ軸回りに移動させることができる。
【0095】
第6モータ70は、ピッチ可動部69とテーブルスライド機構63における長手方向一端側の部分との間に設けられている。テーブル8は、この第6モータ70によって、第4軸Axに直交する方向に延びる第5軸Ax回りに回転駆動される。これにより、テーブル8をヨー軸回りに移動させることができる。
【0096】
なお、第3の構成例における各モータの構成については、第1の構成例の場合と同様であるため、その説明を省略する。本構成例でも、第1の構成例の場合と同様、各モータは、減速機を介して各可動部を動作させる。
【0097】
以上説明したように、ロボットアーム2bは、D1〜D7方向へ回転可能又はスライド移動可能なジョイントを備えているため、7自由度(5回転自由度及び2線形自由度)を有している。また、リストアセンブリ6bは、図10を参照して、テーブル8を、D4方向(ロール方向)、D5方向(ピッチ方向)、D6方向(ヨー方向)へ回転可能、且つD7方向へスライド移動可能である。すなわち、リストアセンブリ6bは、4自由度を有している。
【0098】
以上のように構成されたロボット手術台1bを用いれば、上述した第1及び第2の構成例の場合と同様、テーブルを所定の目的位置まで正確に移動させることができるため、医療現場における検査や治療の効率を格段に向上させることができ、且つ安全性、移動効率を高めることができる。
【0099】
[ロボット手術台の動作]
本構成例に係るロボットアーム2bによっても、可動範囲であればテーブルを複数の位置の間を自由なルートで移動させることができるので、テーブルを第1の構成例で説明した図5図7と同じ軌跡で検査装置等に移動させることができる。具体的には、テーブル8の下の収容空間S内に収容されて第1姿勢をとっているロボットアーム2bを第2姿勢に変化させることにより、テーブル8を手術位置から検査位置へ移動させることができる。或いは、第2姿勢をとっているロボットアーム2bを第1姿勢に変化させることにより、テーブル8を検査位置から手術位置へ移動させることができる。
【0100】
[効果]
以上のように、第3の構成例に係るロボット手術台1bによれば、第1及び第2の構成例の場合と同様、テーブル8を移動させる際に動作するロボットアーム2bとテーブル8周辺の医療従事者Tとの干渉を防止できる。
【0101】
(第4の構成例)
図11は、本発明の第4の構成例に係るロボット手術台1cの側面図である。また、図12は、図11に示すロボット手術台1cの一部(具体的には、詳しくは後述する平行リンク機構45a及びその付近の部分)を拡大して示す斜視図である。ロボット手術台1cは、ロボットアーム2c、ベース3、及びテーブル8を備えている。ロボット手術台1cでは、多自由度(第4の構成例の場合、7自由度)を有するロボットアーム2cの一端が、ベース3に対して鉛直軸回りに回転自在に支持される一方、前記ロボットアーム2の他端で、患者載置用のテーブル8が支持される。ベース3の構成は、第1の構成例のベース3の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0102】
ロボットアーム2cは、ベース側可動部41と、直線移動アセンブリ5aと、平行リンク機構45aと、リストアセンブリ6cとを備えている。これらのうち、ベース側可動部41及び直線移動アセンブリ5aの構成は、第2の構成例のベース側可動部41及び直線移動アセンブリ5aの構成と同じであるため、説明を省略する。
【0103】
[平行リンク機構の構成]
平行リンク機構45aは、直線移動アセンブリ5aとリストアセンブリ6cとを連結するリンク機構である。平行リンク機構45aは、図12に示すように、4本のリンク部材76と、2つの第1連結軸77と、2つの第2連結軸78とを有している。
【0104】
各リンク部材76は、直線状に形成されている。各リンク部材46の長さは、互いに同じである。各リンク部材76では、一端側の部分(スライド部42側の部分)が、第1連結軸77を介してスライド部42に対して回転自在に連結されている一方、他端側の部分(直線移動アセンブリ側可動部81側の部分)が、第2連結軸78を介して直線移動アセンブリ側可動部81に対して回転自在に連結されている。4つのリンク部材76のうちの2本は、テーブル8の幅方向一方側に設けられ、残りの2本は、テーブル8の幅方向他方側に設けられている。4本のリンク部材76は、上側に設けられた2本の上側リンク部材76aと、下側に設けられた2本の下側リンク部材76bとで構成されている。
【0105】
平行リンク機構45aは、第3モータ79によって駆動される。具体的には、第3モータ79は、例えば、上下方向に2つ設けられた連結軸77のうちの一方に対応する位置に設けられていて、一方の(図11における上側の)リンク部材76を連結軸77の中心軸Ax2回りに(D3方向に)回転駆動させる。これにより、上側のリンク部材76が連結軸77を中心として揺動するため、リストアセンブリ6cが上下動する。なお、上側のリンク部材76が第3モータ79によって回転駆動させられるのに伴って、下側のリンク部材76も上側のリンク部材76に連動して動作する。
【0106】
[リストアセンブリの構成]
リストアセンブリ6cは、直線移動アセンブリ側可動部81と、第4モータ82と、ロール可動部83と、第5モータ84と、ピッチ可動部85と、第6モータ86と、テーブルスライド機構63を備えている。テーブルスライド機構63の構成は、第2及び第3の構成例のテーブルスライド機構63と同じ構成のため、その説明を省略する。
【0107】
直線移動アセンブリ側可動部81は、リストアセンブリ6cにおける最も直線移動アセンブリ5a側に設けられた可動部である。直線移動アセンブリ側可動部81は、水平面に対して平行な姿勢を保つように平行リンク機構45aに支持されている。直線移動アセンブリ側可動部81は、平行リンク機構45aがD3方向に回転することにより、上下動する。
【0108】
ロール可動部83は、第1ジョイント87を介して直線移動アセンブリ側可動部81に連結されていて、鉛直方向に延びる第3軸Ax回りに(D4方向に)回転可能である。ロール可動部83は、第1ジョイント87に対応して設けられた第4モータ82によって、第3軸Ax回りに回転駆動される。なお、図11において、詳しくは後述するピッチ可動部85をD5方向に回転させてテーブル8をピッチ方向に傾けた状態で、ロール可動部83をD4方向に回転させることで、テーブル8をロール方向へ回転させることが可能となる。
【0109】
ピッチ可動部85は、第2ジョイント88を介してロール可動部83に連結されていて、第3軸Axに直交する方向に延びる第4軸Ax回りに(D5方向に)回転可能である。ピッチ可動部85は、第2ジョイント88に対応して設けられた第5モータ84によって、第4軸Ax回りに回転駆動される。このようにピッチ可動部85が回転駆動されることで、テーブル8をピッチ軸回りに移動させることができる。
【0110】
第6モータ86は、ピッチ可動部85とテーブルスライド機構63における長手方向一端側の部分との間に設けられている。テーブル8は、この第6モータ86によって、第4軸Axに直交する方向に延びる第5軸Ax回りに回転駆動される。これにより、テーブル8をヨー軸回りに移動させることができる。
【0111】
なお、第4の構成例における各モータの構成については、第1の構成例の場合と同様であるため、その説明を省略する。本構成例でも、第1の構成例の場合と同様、各モータは、減速機を介して各可動部を動作させる。
【0112】
以上説明したように、ロボットアーム2cは、D1〜D7方向へ回転可能又はスライド移動可能なジョイントを備えているため、7自由度(5回転自由度及び2線形自由度)を有している。また、リストアセンブリ6cは、テーブル8を、ロール方向、ピッチ方向、ヨー方向へ回転可能、且つD7方向へスライド移動可能である。すなわち、リストアセンブリ6cは、4自由度を有している。
【0113】
以上のように構成されたロボット手術台1cを用いれば、上述した第1から第3の構成例の場合と同様、テーブルを所定の目的位置まで正確に移動させることができるため、医療現場における検査や治療の効率を格段に向上させることができ、且つ安全性、移動効率を高めることができる。
【0114】
[ロボット手術台の動作]
本構成例に係るロボットアーム2cによっても、可動範囲であればテーブルを複数の位置の間を自由なルートで移動させることができるので、テーブルを第1の構成例で説明した図5図7と同じ軌跡で検査装置等に移動させることができる。具体的には、テーブル8の下の収容空間S内に収容されて第1姿勢をとっているロボットアーム2cを第2姿勢に変化させることにより、テーブル8を手術位置から検査位置へ移動させることができる。或いは、第2姿勢をとっているロボットアーム2cを第1姿勢に変化させることにより、テーブル8を検査位置から手術位置へ移動させることができる。
【0115】
[効果]
以上のように、第4の構成例に係るロボット手術台1cによれば、第1から第3の構成例の場合と同様、テーブル8を移動させる際に動作するロボットアーム2cとテーブル8周辺の医療従事者Tとの干渉を防止できる。
【0116】
(第5の構成例)
図13は、本発明の第5の構成例に係るロボット手術台1dの側面図である。ロボット手術台1dは、ロボットアーム2d、ベース3、及びテーブル8を備えている。ロボット手術台1dでは、多自由度を有するロボットアーム2dの一端が、ベース3に対して鉛直軸回りに回転自在に支持される一方、前記ロボットアーム2の他端で、患者載置用のテーブル8が支持される。ベース3の構成は、第1の構成例のベース3の構成と同じであるため、説明を省略する。
【0117】
ロボットアーム2dは、ベース側可動部41と、直線移動アセンブリ5aと、平行リンク機構45aと、リストアセンブリ6dとを備えている。第5の構成例に係るロボット手術台1dは、第4の構成例に係るロボット手術台1cと比べて、リストアセンブリの構成が異なる。以下では、リストアセンブリ6dの構成について主に説明し、それ以外の構成については説明を省略する。
【0118】
[リストアセンブリの構成]
リストアセンブリ6dは、直線移動アセンブリ側可動部81と、第4モータ89と、パラレルリンク機構90と、テーブルスライド機構63とを備えている。これらのうち、直線移動アセンブリ側可動部81及びテーブルスライド機構63の構成は、第4の構成例におけるそれらの構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0119】
第4モータ89は、直線移動アセンブリ側可動部81における上側の部分と、詳しくは後述するパラレルリンク機構90との間に設けられている。第4モータ89は、パラレルリンク機構90を、鉛直軸方向に延びる第3軸Ax回りに(D4方向に)回転駆動させる。これにより、テーブル8をヨー軸回りに移動させることができる。
【0120】
図14は、パラレルリンク機構90を模式的に示す斜視図である。本構成例のパラレルリンク機構90は、いわゆるスチュワートプラットフォーム型のパラレルリンク機構90である。パラレルリンク機構90は、基台部91と、可動板92と、6つのシリンダ93とを備えている。なお、図13では、図面が煩雑になるのを避けるため、3つのシリンダ93のみを図示している。
【0121】
基台部91は、平板状に形成されている。基台部91と直線移動アセンブリ側可動部81との間には、上述した第4モータ89が設けられている。基台部91は、第4モータ89によって、第3軸Ax回りに(D4方向に)回転駆動させられる。
【0122】
可動板92は、基台部91と同様、平板状に形成されている。可動板92は、テーブルスライド機構63を介して、テーブル8の背面側を支持している。
【0123】
各シリンダ93は、筒状に形成された筒部94と、自在継手95を介して筒部94の底部94aを基台部91に接続する基台部側ロッド96と、一端側の部分が筒部94内に収容されている一方、他方側の部分が自在継手97を介して可動板92に固定される進退ロッド98と、を備えている。なお、シリンダ93としては、電動シリンダ、エアシリンダ、油圧シリンダ、いずれのタイプのシリンダが用いられてもよい。
【0124】
パラレルリンク機構90では、制御装置7からの指令に伴って、筒部94に対する進退ロッド98の突出量が調整される。これにより、基台部91に対する可動板92の姿勢(すなわち、テーブル8の姿勢)を調整することができる。本構成例のパラレルリンク機構90は、スチュワートプラットフォーム型のパラレルリンク機構である。すなわち、パラレルリンク機構90では、進退ロッド98の突出量が適宜、調整されることにより、可動板92、すなわちテーブル8を少なくともロール方向(D5方向)及びピッチ方向(D6方向)へ移動させることができる。言い換えれば、パラレルリンク機構90によれば、テーブル8をロール動作及びピッチ動作させることができる。
【0125】
なお、第5の構成例における各モータの構成については、第1の構成例の場合と同様であるため、その説明を省略する。本構成例でも、第1の構成例の場合と同様、各モータは、減速機を介して各可動部を動作させる。
【0126】
以上説明したように、ロボットアーム2dは、D1〜D7方向へ移動可能である。また、リストアセンブリ6dは、図13を参照して、テーブル8を、少なくともD4方向(ロール方向)、D5方向(ピッチ方向)、D6方向(ヨー方向)へ移動可能、且つD7方向へスライド移動可能である。すなわち、リストアセンブリ6dは4自由度を有している。
【0127】
以上のように構成されたロボット手術台1dを用いれば、上述した第1から第4の構成例の場合と同様、テーブルを所定の目的位置まで正確に移動させることができるため、医療現場における検査や治療の効率を格段に向上させることができ、且つ安全性、移動効率を高めることができる。
【0128】
[ロボット手術台の動作]
本構成例に係るロボットアーム2dによっても、可動範囲であればテーブルを複数の位置の間を自由なルートで移動させることができるので、テーブルを第1の構成例で説明した図5図7と同じ軌跡で検査装置等に移動させることができる。具体的には、テーブル8の下の収容空間S内に収容されて第1姿勢をとっているロボットアーム2dを第2姿勢に変化させることにより、テーブル8を手術位置から検査位置へ移動させることができる。或いは、第2姿勢をとっているロボットアーム2dを第1姿勢に変化させることにより、テーブル8を検査位置から手術位置へ移動させることができる。
【0129】
[効果]
以上のように、第5の構成例に係るロボット手術台1dによれば、第1から第4の構成例の場合と同様、テーブル8を移動させる際に動作するロボットアーム2dとテーブル8周辺の医療従事者Tとの干渉を防止できる。
【0130】
また、ロボット手術台1dによれば、上述のように、リストアセンブリ6dにスチュワートプラットフォーム型のパラレルリンク機構90が採用されている。パラレルリンク機構90は、剛性面において優れた機構である。従って、第5の構成例に係るロボット手術台1dによれば、移動時或いは術時等に患者Pに振動を与えにくいロボット手術台を提供できる。
【0131】
[各構成例に共通する特徴及び変形例]
以下には、第1〜第5の構成例全てに適用可能な追加の特徴及び変形例を記す。
【0132】
(1)上述した各構成例の各モータは、位置検出器及び電磁ブレーキを備えている方が好ましいが、この限りでなく、それらが備わっていない電動モータを用いてもよい。この場合、位置検出器及び電磁ブレーキを、電動モータの外部に設けることができる。また、上述した各構成例では、各可動部を駆動する駆動源として電動モータを例示したが、これに限らず、電動モータ以外のアクチュエータが用いられてもよい。
【0133】
(2)第1の構成例では、テーブルスライド機構を有さないロボット手術台1を例示し、第2〜第5の構成例では、テーブルスライド機構を有するロボット手術台1a〜1dを例示したが、これに限らず、各構成例におけるテーブルスライド機構63の有無は、どちらでもよい。しかしながら、各構成例にテーブルスライド機構63を設けることで、水平方向におけるテーブル8の可動範囲を広げることができる。また、上述した構成例では、テーブルスライド機構63にサーボモータを用いる例を挙げて説明したが、これに限らず、手動でスライド移動可能なテーブルスライド機構を採用してもよい。
【0134】
(3)ロボットアーム2〜2dの自由度は、各構成例において例示したもの以外であってもよい。
【0135】
(4)上述した第1及び第3の構成例では、直線移動アセンブリとリストアセンブリとが、水平方向に延びる軸に対して回転可能なジョイントによって連結されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、直線移動アセンブリが鉛直方向に延びる軸に対して回転可能な可動部材を支持し、この可動部材がリストアセンブリを水平方向に延びる軸に対して回転可能なジョイントを介して支持するようにされていてもよい。
【0136】
(5)上述した各構成例が有するリストアセンブリは、ロール方向への回転自由度、ピッチ方向への回転自由度、及びヨー方向への回転自由度、という3つの回転自由度を有しているが、これに限らない。リストアセンブリの自由度は、ロール、ピッチ、ヨーの回転自由度のうちの2つと、線形自由度1つとを含む3自由度であってもよい。
【0137】
(6)第2,第4,及び第5の構成例に係るロボット手術台では、4本のリンク部材46,76を有する平行リンク機構45,45aを例に挙げて説明したが、これに限らず、2本のリンク部材を有する平行リンク機構を構成してもよい。この2本のリンク部材を有する平行リンク機構は、例えば一例として、図9におけるテーブル幅方向一方側に設けられた2本のリンク部材46,46を1本のリンク部材46aに置き換え、且つ、図9におけるテーブル幅方向他方側に設けられた2本のリンク部材46,46を1本のリンク部材46aに置き換えたものである(図15参照)。この平行リンク機構45bでは、各リンク部材46aの一端部が第1連結軸47cを介してスライド部42に回転自在に連結されている一方、各リンク部材46aの他端部が第2連結軸47dを介して直線移動アセンブリ側可動部52に連結されている。リンク部材46aは、第1連結軸47cに対応する位置に設けられたモータ50aによってD3方向に回転駆動される。直線移動アセンブリ側可動部52は、第2連結軸47dに対応する位置に設けられたモータ50bによってD4方向に回転駆動される。
【0138】
(7)上述した各構成例が有するリストアセンブリの自由度は、各構成例で例示した数に限定されるものではなく、少なくとも2以上であればよい。具体的には、例えば一例として、リストアセンブリは、ロール動作及びピッチ動作を行うように、2つの自由度を有するようにし、ヨー動作は、ロボットアームにおけるリストアセンブリ以外の部分によって行われるようにしても良い。
(8)上述した各構成例においては、手術位置と検査位置との間のテーブルの移動について説明したが、これに限定されない。例えば、カテーテル治療を行う際には各構成例のロボット手術台のテーブルが、治療位置と検査位置との間を移動するようにすればよい。この場合、治療位置において、ロボットアームは第1姿勢をとり、テーブルの下の空間である収容空間内に収容されるので、治療を行う医療従事者の邪魔にならない。
【0139】
[他の治療等への適用]
第1〜第5の構成例で示したロボット手術台は、アンギオ検査に使用されるX線撮影装置が導入されたハイブリッド手術室のみならず、例えば、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)が導入されたハイブリッド手術室に適用することもできる。
【符号の説明】
【0140】
1,1a〜1d ロボット手術台
2,2a〜2d ロボットアーム
3 ベース
5,5a 直線移動アセンブリ
6,6a〜6d リストアセンブリ
8 テーブル
【要約】
【課題】テーブルを移動させる際に動作するロボットアームとテーブル周辺の医療従事者との干渉を防止する。
【解決手段】患者載置用のテーブル8と、床FLに固定されるベース3に一端が支持され、他端がテーブル8を支持するロボットアーム2とを備えたロボット手術台1を対象とする。ロボットアーム2の一端は、鉛直軸Ax回りに回転するようにベース3に支持されている。ロボットアーム2は、テーブル8を支持しテーブルを少なくとも2つの自由度で移動させるリストアセンブリ6と、テーブル8を並進自由度で水平面に沿って移動させるために水平面に沿って直線移動するように構成された直線移動アセンブリ5と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15