特許第6270968号(P6270968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62709682つの隣接するバンドにおいて動作する同時アクセスデュアルバンド端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270968
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】2つの隣接するバンドにおいて動作する同時アクセスデュアルバンド端末
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20180122BHJP
【FI】
   H04B7/0413
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-225307(P2016-225307)
(22)【出願日】2016年11月18日
(62)【分割の表示】特願2013-553002(P2013-553002)の分割
【原出願日】2012年1月13日
(65)【公開番号】特開2017-63474(P2017-63474A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】1151063
(32)【優先日】2011年2月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501263810
【氏名又は名称】トムソン ライセンシング
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ル ナウール,ジャン−イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート,ジャン−リュック
(72)【発明者】
【氏名】ロ ヒーネ トン,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ルジール,アリ
【審査官】 吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−93622(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/083668(WO,A1)
【文献】 特開2008−219868(JP,A)
【文献】 特開2007−19939(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0142416(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0413
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数バンドにおいて信号を同時に送信及び/又は受信することができる無線通信端末であって、
ベースバンドにある2以上のn個の信号から前記所定の周波数バンドにあるnよりも多いN個のMIMO信号を生成すること又は、前記所定の周波数バンドにあるN個のMIMO信号からベースバンドにあるn個の信号を生成することができるMIMOデバイスと
前記N個のMIMO信号を受信及び/又は送信するN/2以上のM個のアンテナと、
前記MIMOデバイスを前記M個のアンテナへ接続するスイッチングデバイスと
を有する無線通信端末において、
前記MIMOデバイスは、前記所定の周波数バンドの第1のサブバンドにあるN1個のMIMO信号をベースバンド信号から生成すること又は、ベースバンド信号を前記第1のサブバンドにあるN1個のMIMO信号から生成することができる第1のMIMO回路と、前記所定の周波数バンドの第2のサブバンドにあるN2個のMIMO信号をベースバンド信号から生成すること又は、ベースバンド信号を前記第2のサブバンドにあるN2個のMIMO信号から生成することができる第2のMIMO回路とを有し、N1+N2=Nであり、前記第1のサブバンド及び前記第2のサブバンドは重なり合わず、
前記スイッチングデバイスは、第1のチャネルを介して前記M個のアンテナへ前記第1のMIMO回路を、及び第2のチャネルを介して前記M個のアンテナへ前記第2のMIMO回路を接続し、前記M個のアンテナの夫々は、前記第1のMIMO回路の前記N1個のMIMO信号のうちの1つを受信又は送信すること及び、前記第2のMIMO回路の前記N2個のMIMO信号のうちの1つを受信又は送信することができ、前記スイッチングデバイスは、前記アンテナによって受信又は送信される前記第1のサブバンドのMIMO信号及び前記第2のサブバンドのMIMO信号を互いから分離するために、前記第1及び第2のチャネルを有する夫々のアンテナと関連付けられるフィルタリングデバイスを更に有し、
前記スイッチングデバイスは、前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路を夫々のアンテナと関連付けられる前記フィルタリングデバイスへ夫々接続するために第1及び第2のスイッチング回路を有する、
ことを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記所定の周波数バンドは5GHzWiFiバンドに対応する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記第1のサブバンドはバンド[4.9GHz,5.35GHz]であり、前記第2のサブバンドはバンド[5.47GHz,5.875GHz]である、
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記アンテナは単アクセスアンテナであり、夫々のアンテナと関連付けられる前記フィルタリングデバイスはダイプレクサである、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記スイッチングデバイスは、前記アンテナからのMIMO信号及び/又は前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路からのMIMO信号を増幅するために前記第1及び第2のスイッチング回路と夫々のアンテナと関連付けられる前記フィルタリングデバイスとの間に取り付けられるフロントエンドモジュールを更に有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の無線通信端末。
【請求項6】
前記スイッチングデバイスは、前記第1のMIMO回路と前記第1のスイッチング回路との間に取り付けられるN1個のバンドパスフィルタ及び/又は前記第2のMIMO回路と前記第2のスイッチング回路との間に取り付けられるN2個のバンドパスフィルタを更に有し、前記N1個のバンドパスフィルタの夫々は、前記第1のMIMO回路に向けられた又は該第1のMIMO回路から発せられたMIMO信号にフィルタをかけるために前記第1のサブバンドに対応するバンド幅を有し、前記N2個のバンドパスフィルタの夫々は、前記第2のMIMO回路に向けられた又は該第2のMIMO回路から発せられたMIMO信号にフィルタをかけるために前記第2のサブバンドに対応するバンド幅を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の無線通信端末。
【請求項7】
前記スイッチングデバイスは、前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路から発せられたMIMO信号を増幅するよう前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路と前記第1のスイッチング回路及び前記第2のスイッチング回路との間に取り付けられる増幅手段を更に有する、
ことを特徴とする請求項6に記載の無線通信端末。
【請求項8】
前記スイッチングデバイスは、前記第1のスイッチング回路及び前記第2のスイッチング回路から発せられたMIMO信号を増幅するよう前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路と前記第1のスイッチング回路及び前記第2のスイッチング回路との間に取り付けられる増幅手段を更に有する、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の無線通信端末。
【請求項9】
前記アンテナは夫々特定の角度領域をカバーする指向性アンテナであり、前記M個のアンテナは全部で望ましくは360°の角度領域をカバーする、
ことを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の無線通信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭環境における映像、音声又はデータ信号の高速伝送のための端末に関する。それはより具体的には、標準規格IEEE802.11nに従って動作し、同時に複数の周波数チャネルを用いる端末の枠組みにおいて適用される。
【背景技術】
【0002】
標準規格IEEE802.11a/b/g又は11nに従うWiFi技術は現在、家庭環境における高速無線伝送のために最も使用されている技術である。標準規格IEEE802.11nは、IEEE802.11a/b/gに対して幾つかの改善を提供する。特に、それは、伝送のビットレートの及び、干渉によって左右される、例えば家庭環境のような環境におけるそれらのロバスト性の改善を可能にするマルチアンテナ技術であるMIMO(Multiple Input Multiple Output)(多入力多出力)の使用を認める。
【0003】
標準規格IEEE802.11nは、2.4から2.5GHzのバンド及び4.9から5.9GHzのバンドにおいて動作する。それら2つのバンドは以降2.4GHzバンド及び5GHzバンドと呼ばれる。それら2つのバンドにおいて同時に動作する端末が存在する。仏国特許出願第2911739号明細書はそのような端末について記載している。この端末は、2.4GHzバンドにある信号及び4.9から5.9GHzバンドにある信号を同時に受信及び/又は送信することができる。5GHzバンドは映像の伝送のために使用され、2.4GHzバンドはデータの伝送のために使用される。
【0004】
米国特許出願公開第2010/0166098号明細書において記載されているように、3G又は4G携帯電話の目的でユーザへ夫々割り当てられるサブバンドへとバンドを分割する基地局が存在するが、チャネルの周波数近接により、5GHzバンドにおいて同時に2つの周波数チャネルを使用するMIMO端末は、現在のところ存在しない。より一般的には、とても近い周波数チャネルに含まれる信号を同時に送信及び/又は受信することができる、WiFi分野において機能するMIMO端末は、現在のところ存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の欠点を解消するMIMO端末を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、所定の周波数バンドにおいて信号を同時に送信及び/又は受信することができる無線通信端末であって、
ベースバンドにある2以上のn個の信号から前記所定の周波数バンドにあるnよりも多いN個のMIMO信号を生成すること又は、前記所定の周波数バンドにあるN個のMIMO信号からベースバンドにあるn個の信号を生成することができるMIMOデバイスと
前記N個のMIMO信号を受信及び/又は送信するN/2以上のM個のアンテナと、
前記MIMOデバイスを前記M個のアンテナへ接続するスイッチングデバイスと
を有する無線通信端末において、
前記MIMOデバイスは、前記所定の周波数バンドの第1のサブバンドにあるN1個のMIMO信号をベースバンド信号から生成すること又は、ベースバンド信号を前記第1のサブバンドにあるN1個のMIMO信号から生成することができる第1のMIMO回路と、前記所定の周波数バンドの第2のサブバンドにあるN2個のMIMO信号をベースバンド信号から生成すること又は、ベースバンド信号を前記第2のサブバンドにあるN2個のMIMO信号から生成することができる第2のMIMO回路とを有し、N1+N2=Nであり、前記第1のサブバンド及び前記第2のサブバンドは重なり合わず、
前記スイッチングデバイスは、前記M個のアンテナの夫々が前記第1のMIMO回路の前記N1個のMIMO信号のうちの1つを受信又は送信すること及び、前記第2のMIMO回路の前記N2個のMIMO信号のうちの1つを受信又は送信することが同時にできるように前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路を前記アンテナへ接続するよう構成される第1及び第2のチャネルを有し、更に、前記アンテナによって受信又は送信される前記第1のサブバンドのMIMO信号及び前記第2のサブバンドのMIMO信号を互いから分離するために前記第1及び第2のチャネルを有する夫々のアンテナと関連付けられるフィルタリングデバイスを有する、
ことを特徴とする無線通信端末を提案する。
【0007】
よって、本発明に従って、端末の夫々のアンテナは、所定の周波数サブバンドの別個のサブバンドにおいて動作する2つのMIMO回路へ接続され、フィルタリングデバイスは、アンテナを介して受信又は送信される第2のサブバンドのMIMO信号から第1のサブバンドのMIMO信号を分離するよう夫々のアンテナと関連付けられる。
【0008】
特定の実施形態に従って、前記所定の周波数バンドは5GHzWiFiバンドに対応する。前記第1のサブバンドはバンド[4.9GHz,5.35GHz]であり、前記第2のサブバンドはバンド[5.47GHz,5.875GHz]である。
【0009】
変形例において、前記所定の周波数バンドは、アナログ跡地(digital dividend)の周波数バンド[790MHz−862MHz]であり、あるいはUHFバンド[470MHz−790MHz]に分布する。
【0010】
本発明の変形例に従って、前記アンテナは単アクセスアンテナであり、前記フィルタリングデバイスはダイプレクサである。
【0011】
特定の実施形態に従って、前記スイッチングデバイスは2つのスイッチング回路を有し、一方のスイッチング回路は第1のサブバンドのMIMO信号用であり、他方は第2のサブバンドのMIMO信号用である。よって、前記スイッチングデバイスは、前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路を夫々のアンテナと関連付けられる前記フィルタリングデバイスへ夫々接続するよう第1及び第2のスイッチング回路を有する。
【0012】
有利に、前記スイッチングデバイスは、前記アンテナからのMIMO信号及び/又は前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路からのMIMO信号を増幅するために前記第1及び第2のスイッチング回路と夫々のアンテナと関連付けられる前記フィルタリングデバイスとの間に取り付けられるフロントエンドモジュールを更に有する。夫々のフロントエンドモジュールは、例えば、前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路に向けられるMIMO信号を増幅する低ノイズ増幅器と、アンテナに向けられるMIMO信号を増幅する電力増幅器とを有する。これらの増幅器の役割は、具体的に、アンテナと関連付けられるフィルタリングデバイス及び/又は端末のスイッチング回路を介して導入される信号損失を少なくとも部分的に補償することである。
【0013】
有利に、前記スイッチングデバイスは、前記第1のMIMO回路と前記第1のスイッチング回路との間に取り付けられるN1個のバンドパスフィルタ及び/又は前記第2のMIMO回路と前記第2のスイッチング回路との間に取り付けられるN2個のバンドパスフィルタを更に有し、前記N1個のバンドパスフィルタの夫々は、前記第1のMIMO回路に向けられた又は該第1のMIMO回路から発せられたMIMO信号にフィルタをかけるために前記第1のサブバンドに真に対応するバンド幅を有し、前記N2個のバンドパスフィルタの夫々は、前記第2のMIMO回路に向けられた又は該第2のMIMO回路から発せられたMIMO信号にフィルタをかけるために前記第2のサブバンドに真に対応するバンド幅を有する。
【0014】
望ましくは、前記スイッチングデバイスは、前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路から発せられたMIMO信号を増幅するよう前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路と前記第1のスイッチング回路及び前記第2のスイッチング回路との間に取り付けられる増幅手段と、前記第1のスイッチング回路及び前記第2のスイッチング回路から発せられたMIMO信号を増幅するよう前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路と前記第1のスイッチング回路及び前記第2のスイッチング回路との間に取り付けられる増幅手段とを更に有する。これらの増幅手段の役割は、バンドパスフィルタを介して導入される信号損失の少なくとも一部を補償することである。
【0015】
特定の実施形態に従って、当該無線通信端末の前記アンテナは夫々特定の角度領域をカバーする指向性アンテナである。MIMO技術とセクタ分割との連関は、干渉が多い環境、例えば家庭環境における性能及びカバレッジに関して有意な利得をもたらす。有利に、前記M個のアンテナは全部で望ましくは360°の角度領域をカバーする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に従う無線通信端末のブロック図である。
図2図1の無線通信端末の基本ブロックのブロック図を詳述する。
図3】所定の周波数バンドの2つの別個のサブバンドにおいて動作する2つのMIMO回路2*2を有する本発明に従う無線通信端末の部分ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は添付の図面を参照してより良く理解されるとともに、他の目的、詳細、特徴及び利点は以下の詳細な記載を通してより明らかになるであろう。
【0018】
本発明は、5GHzWiFiバンドにおいて動作するMIMO無線伝送システムの端末の目的で記載される。かかる端末は、このバンドにおいて少なくとも2つの信号を同時に送信及び/又は受信することができる。
【0019】
5GHzのバンドは2つのサブバンドを有し、第1のサブバンドは5.150GHzから5.350GHzの範囲であり、低サブバンドと呼ばれ、第2のサブバンドは、欧州については5.470GHzから5.725GHzの範囲にあり、あるいは米国については5.470GHzから5.835GHzの範囲にあり、高サブバンドと呼ばれる。これらの2つの低サブバンド及び高サブバンドは近接し、たった120MHzだけしか離れていないので、端末の送信及び受信チャネルでは有効な無線周波数フィルタリング手段の実施が必要である。5GHzバンドにおける伝送において認められる電力レベルは、伝送システムが配置される領域及びサブバンド(低又は高)に依存する点に留意されたい。伝送において認められる電力は、高サブバンド及び低サブバンドの幾つかの部分について、欧州においてよりも米国において高い。
【0020】
図1は、5GHzバンドにおいて同時に信号を送信及び/又は受信することができる本発明に従う端末のブロック図を示す。それは、ベースバンドにおけるデジタル処理回路(BB)10と、5GHz周波数バンドにあるMIMO信号からベースバンド信号を生成する又は、回路10を介して伝送されるベースバンド信号から5GHz周波数バンドにあるMIMO信号を生成するMIMOデバイス20と、MIMOデバイス20をM個のアンテナ40へ接続するためのスイッチングデバイス30とを有する。なお、M≧Nであり、NはMIMO信号の数を表す。
【0021】
本発明に従って、MIMOデバイス20はN個のMIMO信号を同時に処理することができ、2つの独立したMIMO回路を有する。1つのMIMO回路20aは、ベースバンド信号にあるn個の信号から高サブバンドにあるN1個のMIMO信号を生成すること又はその逆の処理をすることができ、他のMIMO回路20bは、ベースバンドにある信号から低サブバンドにあるN2個のMIMO信号を生成すること又はその逆の処理をすることができる。NはN1及びN2の和であり(N=N1+N2)、N>n≧2である。更に、夫々のアンテナ40は、高サブバンドのN1個のMIMO信号のうちの1つと、低サブバンドのN2個のMIMO信号のうちの1つとを同時に送信又は受信することができる。
【0022】
図1を参照して、MIMO回路20aは、MIMO信号を受信するN1個の入力端子RX1乃至RXN1と、MIMO信号を送信するN1個の出力端子TX1乃至TXN1とを有する。同様に、MIMO回路20bは、MIMO信号を受信するN2個の入力端子RX1乃至RXN2と、MIMO信号を送信するN2個の出力端子TX1乃至TXN2とを有する。本発明に従って、スイッチングデバイス30は、選択的にMIMO回路20aの入力端子又は出力(高サブバンド)及びMIMO回路20bの入力端子又は出力(低サブバンド)を夫々のアンテナ40へ接続するよう設計される。
【0023】
このために、スイッチングデバイス30は2つのスイッチングマトリクスを有する。1つのスイッチングマトリクス32aは高サブバンドのMIMO信号用であり、他のスイッチングマトリクス32bは低サブバンドのMIMO信号用である。スイッチングマトリクス32aは、セレクタ31aを介してMIMO回路20aの入力及び出力端子へ接続される。よって、セレクタ31aは、端子RXi又は端子TXiをスイッチングマトリクス32aへ選択的に接続するよう、端子の各対RXi TXi(i∈[1・・・N1])と関連付けられる。同様に、セレクタ31bは、端子RXj又は端子TXjをスイッチングマトリクス32bへ選択的に接続するよう、端子の各対RXj TXj(j∈[1・・・N2])と関連付けられる。
【0024】
スイッチングデバイス30はフィルタリングデバイス34を更に有する。フィルタリングデバイス34は、スイッチングマトリクス32a、32bとアンテナ40の夫々との間に取り付けられ、関連するアンテナを介して受信又は送信される高サブバンドのMIMO信号及び低サブバンドのMIMO信号を互いから分離する。示されている実施形態では、フィルタリングデバイス34は、デュアルアクセスダイプレクサである。夫々のダイプレクサは、スイッチングマトリクス32a又は32b及びセレクタ31a又は31bを介して、MIMO回路20aの入力又は出力端子(高サブバンド)及びMIMO回路20bの入力又は出力端子(低サブバンド)へ接続される。
【0025】
有利に、スイッチングデバイス30は、端末を介して送信されるMIMO信号及び/又は受信されるMIMO信号を増幅するために、スイッチングマトリクス32aとダイプレクサ34のアクセスの1つとの間に接続されるM個のフロントエンドモジュール33aと、スイッチングマトリクス32bと他のダイプレクサアクセスとの間に接続されるM個のフロントエンドモジュール33bとを有する。よって、本発明に従って、夫々のダイプレクサ34は、1つのフロントエンドモジュール33a及び1つのフロントエンドモジュール33bへ接続される。
【0026】
セレクタ31a及び31b並びにフロントエンドモジュール33a及び33bは、図2を参照してより詳細に記載される。図2は、図1の端末の基本ブロックを表す。端末は、M個のアンテナ40のうちの夫々1つと関連付けられるM個のブロックを有する。この基本ブロックは、関連するアンテナによって受信又は送信されるMIMO信号の処理に介在する全ての回路を有する。
【0027】
よって、夫々の基本ブロックは、その基本ブロックのアンテナ40へ接続されるダイプレクサを有する。ダイプレクサ34は、そのアクセスの1つによってセレクタ31a、スイッチングマトリクス32a及びフロントエンドモジュール33aを介してMIMO回路20a(高サブバンド)へ接続され、且つ、そのアクセスの他によってセレクタ31b、スイッチングマトリクス32b及びフロントエンドモジュール33bを介してMIMO回路20b(低サブバンド)へ接続される。
【0028】
フロントエンドモジュール33aは、アンテナ40によって受信される高サブバンドのMIMO信号を増幅する低ノイズ増幅器332aと、送信される高サブバンドのMIMO信号を増幅する電力増幅器331aとを有する。これらの増幅器は、330aとして参照される第1のSPDT(Single Pole Double Throw)(単極双投)スイッチを介してスイッチングマトリクス32aへ及び、333aとして参照される第2のSPDTスイッチを介してダイプレクサ34の高サブバンドアクセスへ接続される。
【0029】
同様に、フロントエンドモジュール33bは、アンテナ40によって受信される低サブバンドのMIMO信号を増幅する低ノイズ増幅器332bと、送信される低サブバンドのMIMO信号を増幅する電力増幅器331bとを有する。これらの増幅器は、SPDTスイッチ330bを介してスイッチングマトリクス32bへ及び、SPDTスイッチ333bを介してダイプレクサ34の低サブバンドアクセスへ接続される。
【0030】
増幅器331a及び331bの役割は、スイッチングマトリクス32a又は32b及びスイッチ330a又は330bによって導入される信号損失を少なくとも部分的に補償することである。増幅器332a及び332bの役割は、フィルタリングデバイス34及びスイッチ333a又は333bによって導入される信号損失を少なくとも部分的に補償することである。
【0031】
高サブバンド及び低サブバンドは比較的近い(低サブバンドの最後のチャネルと高サブバンドの最初のチャネルとの間は120MHzである。)ので、増幅器331a及び331bはすっかり同じである。同様に、増幅器332a及び332bはすっかり同じである。
【0032】
フロントエンドモジュールは、スイッチング回路とアンテナのフィルタリングデバイスとの間に置かれ、これらの要素によって導入される損失を補償して、電力増幅器331a及び331bによってもたらされる電力が最小限にされ且つ受信における端末の感度が高められることを可能にする。
【0033】
スイッチングマトリクス32aの他の側では、セレクタ31aはSPDTスイッチ312aを有し、MIMO回路20aの端子TXi又は端子RXiを選択して、それをスイッチングマトリクス32aへ接続する。セレクタ31aは有利に、高サブバンドに真に対応するバンド幅を有するバンドパスフィルタ313aを有する。フィルタ313aは、スイッチ312aとスイッチングマトリクス32aとの間に取り付けられる。セレクタ31aは、MIMO回路20aの端子TXiとSPDTスイッチ312aとの間に取り付けられる電力増幅器310aと、MIMO回路20aの端子RXiとSPDTスイッチ312aとの間に取り付けられる低ノイズ増幅器311aとを更に有し、バンドパスフィルタ313aを介して導入される信号における損失を少なくとも部分的に補償する。セレクタ31bのための同一の回路がスイッチングマトリクス32bの他の側において設けられ、この回路はSPDTスイッチ312bと、バンドパスフィルタ313bと、2つの増幅器310a及び311bとを有し、これら一式はセレクタ31aについて先に記載されたように取り付けられる。
【0034】
高サブバンド及び低サブバンドは比較的近い(低サブバンドの最後のチャネルと高サブバンドの最初のチャネルとの間は120MHzである。)ので、2つの別個のチャネル(1つは低サブバンドにおけるチャネルであり、もう1つは高サブバンドにおけるチャネルである。)にわたる端末の同時の且つ独立した働きは、一方ではダイプレクサ34のフィルタのレベルでの及び、他方ではバンドパスフィルタ313a及び313bのレベルでのフィルタリング制限を生じさせる。
【0035】
フィルタ34のレベルでのフィルタリング制限は、ダイプレクサの高サブバンドアクセス(又は低サブバンドアクセス)において増幅器331a(又は331b)によって生成される有用なチャネルの外のノイズと、低サブバンドアクセス(又は高サブバンドアクセス)における受信閾値とによって定義される。第1の近似において、増幅器331aが増幅器331bと全く同じであり且つ増幅器332aが増幅器332bと全く同じであると考えられるならば、ダイプレクサの高サブバンドへのアクセスと低サブバンドへのアクセスとの間に必要とされる分離(ISO_DIPLとして知られる。)は、次の通りでなければならない:
ISO_DIPL=NF_PA+Gain_PA−NF_LNA+MARGE
ここで、
NF_PAは、増幅器331a及び331bのノイズ係数である;
Gain_PAは、増幅器331a及び331bの利得である;
NF_LNAは、増幅器332a及び332bのノイズ係数である;
MARGEは、安全のマージンである。
【0036】
例えば、増幅器331a、331b、332a及び332bが次の特性、すなわち、NF_PA=10dB、Gain_PA=30dB、NF_LNA=5dB及び5dBのマージン、を有するとするならば、2つのダイプレクサアクセスのレベルで必要とされる分離は40dBである。
【0037】
同様に、フィルタ313a及び313bのレベルでの更なるフィルタリング制約は、送信のためにMIMO回路20a(又は20b)によって生成されるMIMO信号の有用なバンドの外のノイズと、送信中に端末の性能を低下させないようにMIMO回路20b(又は20a)の受信において必要とされる保護とによって定義される。必要とされる除去は、主として、MIMO回路の有用なチャネルの外の迷放射(stray emission)によって決定される。第1の近似において、この必要とされる除去‘REJECTION’は次の式によって定義される:
REJECTION=NF_MIMO−NF_PA’+MARGE
ここで、
NF_MIMOは、MIMO回路20a及び20bの見掛けのノイズ係数である;
NF_PA’は、増幅器310a及び310bのノイズ係数である;
MARGEは、更なる安全のマージンである。
【0038】
増幅器310a、310b並びにMIMO回路20a及び20bが次の特性、すなわち、NF_MIMO=41dB、NF_PA’=10dB及び5dBのマージン、を有するとするならば、2つのフィルタ313a及び313bに必要とされる除去は36dBである。
【0039】
この端末は、夫々特定の角度領域をカバーする指向性アンテナを備えてよい。望ましくは、M個のアンテナは360°の完全な角度領域の全体をカバーし、アンテナの角度領域は重なり合っても合わなくてもよい。その場合、夫々のアンテナと関連付けられる角度領域は、スイッチングデバイスによって行われるアンテナの選択処理において切り替えられる。
【0040】
データ及び映像信号の伝送の場合に、低サブバンドは有利にデータの伝送のために使用され、高サブバンドは映像信号の伝送ために使用される。
【0041】
図3は、2つのMIMO回路2*2を有する本発明に従う端末の例を与える。この図において、図1及び図2の図解の要素と同じである要素は同じ参照符号を有する。図3の端末は2つのMIMO回路2*2を有し、1つのMIMO回路20aは高サブバンドで動作し、もう1つのMIMO回路20bは低サブバンドで動作し、それらは、2つのセレクタ31aと、2つのセレクタ31bと、2つのスイッチングマトリクス32a及び32bと、4つのフロントエンドモジュール33aと、4つのフロントエンドモジュール33bと、4つのダイプレクサ34とを有するスイッチングデバイスを介して、指向性又は非指向性の4つのアンテナ40へ接続される。この例では、よって、N1=4、N2=4、N=N1+N2=8及びM=4である。夫々のアンテナ40は、高サブバンドにあるMIMO信号及び低サブバンドにあるMIMO信号を送信又は受信する。
【0042】
本発明は特定の実施形態に関連して記載されてきたが、本発明の要旨の範囲内にあるならば、かかる実施形態には全く限定されず、且つ、それは、記載されている手段の全ての技術的な同等物及びそれらの組み合わせを有することが明らかである。
【0043】
示されている実施形態において、ダイプレクサはデュアルアクセスであり、アンテナはモノアクセスである。それらのアンテナは2つのサブバンド、すなわち、高サブバンド及び低サブバンドをカバーする。このアセンブリは、アンテナのアクセスと夫々のアクセスにおいて設けられる独立したフィルタとの間の良好な分離を有するデュアルアクセスアンテナによって置換されてよい。
【0044】
示されている実施形態では、フィルタ313a及び313bは、MIMO回路とスイッチング回路との間に置かれている。それらを別な場所、例えばスイッチングマトリクスとSPDTスイッチ330a、330bとの間に置くことが考えられてよい。
【0045】
最後に、家庭環境におけるブロードバンドマルチメディアネットワークの配置の適用範囲において、ここで提案されるユーザ端末の具体的なアーキテクチャ概念は、デュアルバンドMIMOWiFi解決法が、指向性アンテナと関連付けられる又は関連付けられない求められる5GHzにおいて実施されることを可能にする。この概念は、5GHzバンドにおいて少なくとも2つのチャネルにわたって同時の且つ独立した伝送を可能にする。この概念は、例えばアナログ跡地に対応する開放されたUHFバンドのような周波数バンドに拡張され得る。
【0046】
上記の実施形態に加えて、以下の付記を開示する。
(付記1)
所定の周波数バンドにおいて信号を同時に送信及び/又は受信することができる無線通信端末であって、
ベースバンドにある2以上のn個の信号から前記所定の周波数バンドにあるnよりも多いN個のMIMO信号を生成すること又は、前記所定の周波数バンドにあるN個のMIMO信号からベースバンドにあるn個の信号を生成することができるMIMOデバイスと
前記N個のMIMO信号を受信及び/又は送信するN/2以上のM個のアンテナと、
前記MIMOデバイスを前記M個のアンテナへ接続するスイッチングデバイスと
を有する無線通信端末において、
前記MIMOデバイスは、前記所定の周波数バンドの第1のサブバンドにあるN1個のMIMO信号をベースバンド信号から生成すること又は、ベースバンド信号を前記第1のサブバンドにあるN1個のMIMO信号から生成することができる第1のMIMO回路と、前記所定の周波数バンドの第2のサブバンドにあるN2個のMIMO信号をベースバンド信号から生成すること又は、ベースバンド信号を前記第2のサブバンドにあるN2個のMIMO信号から生成することができる第2のMIMO回路とを有し、N1+N2=Nであり、前記第1のサブバンド及び前記第2のサブバンドは重なり合わず、
前記スイッチングデバイスは、前記M個のアンテナの夫々が前記第1のMIMO回路の前記N1個のMIMO信号のうちの1つを受信又は送信すること及び、前記第2のMIMO回路の前記N2個のMIMO信号のうちの1つを受信又は送信することが同時にできるように前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路を前記アンテナへ接続するよう構成される第1及び第2のチャネルを有し、更に、前記アンテナによって受信又は送信される前記第1のサブバンドのMIMO信号及び前記第2のサブバンドのMIMO信号を互いから分離するために前記第1及び第2のチャネルを有する夫々のアンテナと関連付けられるフィルタリングデバイスを有する、
ことを特徴とする無線通信端末。
(付記2)
前記所定の周波数バンドは5GHzWiFiバンドに対応する、
ことを特徴とする付記1に記載の無線通信端末。
(付記3)
前記第1のサブバンドはバンド[4.9GHz,5.35GHz]であり、前記第2のサブバンドはバンド[5.47GHz,5.875GHz]である、
ことを特徴とする付記2に記載の無線通信端末。
(付記4)
前記アンテナは単アクセスアンテナであり、夫々のアンテナと関連付けられる前記フィルタリングデバイスはダイプレクサである、
ことを特徴とする付記1乃至3のうちいずれか一つに記載の無線通信端末。
(付記5)
前記スイッチングデバイスは、前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路を夫々のアンテナと関連付けられる前記フィルタリングデバイスへ夫々接続するために第1及び第2のスイッチング回路を有する、
ことを特徴とする付記1乃至4のうちいずれか一つに記載の無線通信端末。
(付記6)
前記スイッチングデバイスは、前記アンテナからのMIMO信号及び/又は前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路からのMIMO信号を増幅するために前記第1及び第2のスイッチング回路と夫々のアンテナと関連付けられる前記フィルタリングデバイスとの間に取り付けられるフロントエンドモジュールを更に有する、
ことを特徴とする付記5に記載の無線通信端末。
(付記7)
前記スイッチングデバイスは、前記第1のMIMO回路と前記第1のスイッチング回路との間に取り付けられるN1個のバンドパスフィルタ及び/又は前記第2のMIMO回路と前記第2のスイッチング回路との間に取り付けられるN2個のバンドパスフィルタを更に有し、前記N1個のバンドパスフィルタの夫々は、前記第1のMIMO回路に向けられた又は該第1のMIMO回路から発せられたMIMO信号にフィルタをかけるために前記第1のサブバンドに真に対応するバンド幅を有し、前記N2個のバンドパスフィルタの夫々は、前記第2のMIMO回路に向けられた又は該第2のMIMO回路から発せられたMIMO信号にフィルタをかけるために前記第2のサブバンドに真に対応するバンド幅を有する、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の無線通信端末。
(付記8)
前記スイッチングデバイスは、前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路から発せられたMIMO信号を増幅するよう前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路と前記第1のスイッチング回路及び前記第2のスイッチング回路との間に取り付けられる増幅手段を更に有する、
ことを特徴とする付記7に記載の無線通信端末。
(付記9)
前記スイッチングデバイスは、前記第1のスイッチング回路及び前記第2のスイッチング回路から発せられたMIMO信号を増幅するよう前記第1のMIMO回路及び前記第2のMIMO回路と前記第1のスイッチング回路及び前記第2のスイッチング回路との間に取り付けられる増幅手段を更に有する、
ことを特徴とする付記7又は8に記載の無線通信端末。
(付記10)
前記アンテナは夫々特定の角度領域をカバーする指向性アンテナであり、前記M個のアンテナは全部で望ましくは360°の角度領域をカバーする、
ことを特徴とする付記1乃至9のうちいずれか一つに記載の無線通信端末。
図1
図2
図3