(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、通常、リールに巻回保持された状態で、使用に備えている。光ファイバはその製造時に、その全長がボビンに巻回され、このボビンから使用に適切な長さだけ引き出されてリールに巻回される。リールは巻取機により回転駆動を受けて光ファイバを巻回する。したがって、光ファイバは巻回中にリールの回転により張力を受けることとなるが、その張力を伴ったままリールに巻回保持されていることは、光ファイバの特性に対して好ましくないし、巻回状態下で光ファイバの特性を正しく測定・検査することができない。そこで、特許文献1では、リールに巻回後、光ファイバの張力を除去して、光ファイバが緩い状態でリールに巻回保持することのできるリールを開示している。
【0003】
特許文献1に開示されたリールは、光ファイバが巻回される外周面が形成された短円筒状の胴部と、該胴部の軸線方向の両側端で該胴部から半径方向外方に突出して環板状をなす一対のフランジとを有している。該フランジには、周方向の一箇所で、上記外周面に近接した半径位置に、ピン状部材挿入孔が小孔として貫通形成されている。
【0004】
特許文献1に開示されたリールに光ファイバを巻回するには、巻回に先立ち、ピン状部材を上記リールのピン状部材挿入孔に嵌入させる。このピン状部材の嵌入により、リールの胴部の外周面に近接して上記ピン状部材が軸方向に延びるように位置することになり、上記外周面には周方向の一箇所で突起が形成された状態となる。
【0005】
かかるピン状部材が嵌入されたリールに光ファイバを巻回すると、周方向で上記ピン状部材の位置以外では、光ファイバは上記円筒状の外周面に密着して巻回層を形成するが、上記ピン状部材の位置では、ピン状部材の直径分だけもち上がって巻回される。巻回終了時の光ファイバには巻回時の張力が残存しているものの、ピン状部材の位置でもち上がっているので、一周のファイバの長さは、外周面の一周分より長くなっている。
【0006】
巻回終了後、上記ピン状部材は抜出される。その結果、外周面の一周分よりも長い分だけ、光ファイバは余長をもつようになり、外周面上での巻回が緩くなって張力から解放される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような光ファイバ巻回のためのリールは、使用に好適な長さの光ファイバを巻回すれば十分なので、比較的小径に作られており、その一方で数多くのリールが生産される。したがって、リールは安価に製造できることが求められる。一般には、そのために、合成樹脂を一体成形して作られる。
【0009】
円筒形状物を合成樹脂の一体成形で作る場合、特にリールに軸用の孔部が形成されている場合、成形用の金型は、軸線方向に分割されたものとなる。
【0010】
しかしながら、特許文献1のリールでは、円筒状の胴部の両側端には、環板状のフランジが設けられており、このようなリールは、上記軸線方向に分割された金型のみでは作ることができない。特許文献1には、リールは熱可塑性樹脂で形成された射出成型品により構成される旨の記載があるが、そのためには、軸線方向でフランジよりも外面側に位置して軸線方向に接離するように分割された金型に加え、上記フランジよりも内面側、すなわち両フランジ間に位置する胴部に対して直径方向で接離するように分割された半円筒面を有する金型をも必要とすることとなり、金型も成形工程も複雑になり、リールはコスト高なものとなってしまう。また、直径方向で分割された金型を用いると、金型同士の当接部位で、リールの円筒部の外周面に成形バリが出たり、真円度が確保できなくなる虞れもある。
【0011】
さらには、特許文献1では、光ファイバの巻回前にリールにピン状部材を嵌入させてリールの外周面の一箇所に突起状個所を形成し、巻回後にこのピン状部材を抜出することで、巻回された光ファイバに余長を与え、その結果、張力から解放された光ファイバ巻回体を得ることとしている。しかしながら、光ファイバは、応力はもとより変形によってその特性が変化あるいは劣化しやすい。したがって、特許文献1によりリールに巻回された光ファイバは、上記張力が解放されても、ピン状部材との当接部分は小径のピン状部材によって局部的に変形度の大きい変形を受けていて、ピン状部材の抜出後もその影響が残ってしまう傾向にある。このような局部的な変形が残存することは、光ファイバの特性に好ましくない影響をもたらす。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑み、軸線方向に分割された金型のみで容易に、その結果、安価に作れるリールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る光ファイバ巻回のためのリールは、光ファイバを巻回して保持する円筒外周面が形成された円筒部と、該円筒部の軸線方向における両方の側端位置に設けられたフランジ部とを有する。
【0014】
かかるリールにおいて、本発明では、フランジ部は、周方向の複数位置で上記円筒外周面から半径方向外方に延出するフランジ片と、周方向で隣接するフランジ片同士間の切欠部とで形成されており、一方の側端位置におけるフランジ片が他方の側端位置における切欠部の周方向範囲内に位置しており、上記リールは、円筒部の内径から半径方向内方に延びる環状円板部と、該環状円板部の内径から上記他方の側端側へ向けて軸線方向に延びる筒状の内軸部をも有し、上記円筒部は、切欠部が形成されている周方向範囲内に、上記他方の側端位置で軸線方向に開口する溝部が円筒部を半径方向に貫通して形成されており、該溝部を形成し周方向で対向する溝内壁面が凸曲面をなしており、上記内軸部は、軸線方向で環状円板部との間に間隔をもつ位置に、該内軸部の外周面から半径方向外方へ突出する規制突部が設けられていることを特徴としている。
【0015】
本発明では、一方の側端位置におけるフランジ片が他方の側端位置における切欠部の周方向範囲内に位置している。したがって、他方の側端位置となる位置に金型を軸線方向で他方の側端位置の方向へ向けて配置して、上記一方の側端位置におけるフランジ片をモールド成形した後、この金型を、該フランジ片と対応して位置する他方の側端位置の切欠部を経て軸線方向で一方の側端位置の方向へ抜出することができる。つまり、他方の側端位置におけるフランジ片が金型の抜出の障害とはならない。したがって、本発明では、軸線方向で接離する金型のみによってリールを成形することができ、フランジ部の形成に際して、従来のような直径方向で接離する金型は不要となるので、その分だけ少ない数の金型で、金型配置を複雑にすることなく、容易にリールを成形することができる。また、本発明では、上述したように直径方向で接離する金型が不要となるので、巻取面を形成する円筒部の円筒外周面に成形バリができず、さらに、真円度も正確となる。
【0016】
また、本発明では、リールの円筒部は、切欠部が形成されている周方向範囲内に、上記他方の側端位置で軸線方向に開口する溝部が円筒部を半径方向に貫通して形成されている。このような溝部を形成することにより、光ファイバの端部を円筒外周面から溝部を通して内軸部へ向け導入して、該光ファイバの端部を円筒部内に収容することができる。さらに、本願発明では、内軸部を設けることにより、リールに対して光ファイバを巻回する際に、該内軸部に対し、光ファイバの巻回始端側となる一端部を巻回して支持しておくこと可能となる。また、内軸部に規制突起を設けることにより、該内軸部に対し巻回された光ファイバの軸線方向での外れを、上記規制突起での規制により防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように、フランジ部が軸線方向の両側端で周方向の複数位置に設けられたフランジ片と該フランジ片同士間の切欠部とで形成されており、一方の側端位置におけるフランジ片が他方の側端位置の切欠部の周方向範囲に位置しているようにした。したがって、金型を用いてリールを成形する場合、成形後に上記切欠部から金型を軸線方向に抜出できるので、かかる金型を用いて、少ない数の金型ですむとともに、金型配置を複雑にすることなく、容易にリールの成形が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
<第一実施形態>
本実施形態に係るリール1は、光ファイバF(
図4参照)を巻回して保持するようになっている。本実施形態では、光ファイバFは、コーティングが施された光ファイバ芯線が電気絶縁材で被覆されたケーブルであり、リール1に巻回された後に、その両端にそれぞれ光電気変換コネクタ(
図4におけるコネクタC1,C2)が取り付けられる。光ファイバFの形態はこれに限られず、被覆やコーティングは必須ではなく、また、コネクタが取り付けられていなくてもよい。また、コネクタC1,C2は、光電気変換コネクタに代えて、光コネクタであってもよい。
【0022】
リール1は、合成樹脂等の電気絶縁材を成形することによりリール全体が一部材をなしてモールド成形により形成されている。該リール1は、
図1に見られるように、光ファイバF(図示せず)を巻回して保持する円筒外周面が形成された円筒部11と、該円筒部11の軸線方向における一方の側端位置に設けられた第一フランジ部12および他方の側端位置に設けられた第二フランジ部13(
図2(B)をも参照)と、円筒部11の一方の側端位置で該円筒部11の内径から半径方向内方に延びる環状円板部14と、該環状円板部14の中央位置で該環状円板部14の内径から他方の側端側へ向けて上記軸線方向に延びる筒状の内軸部15とを有している。また、リール1の全面には帯電防止材料が塗布されて帯電防止材料層が形成されており、後述のコネクタC1に内蔵された半導体の帯電が防止され、該半導体の保護が図られている。また、リール1に上記帯電防止材料層を形成するのに代えて、リール1自体が、帯電防止材料(例えば、帯電防止樹脂)の一体モールド成形により構成されていてもよい。
【0023】
第一フランジ部12は、円筒部11の一方の側端位置、すなわち上記軸線方向で環状円板部14と同位置に設けられており、円筒部11の周方向で等間隔をもった複数位置(本実施形態では四箇所)で円筒外周面から半径方向外方に延出する第一フランジ片12Aと、該周方向で隣接するフランジ片12A同士間の第一切欠部12Bとで形成されている。また、第二フランジ部13は、円筒部11の他方の側端位置に設けられており、円筒部11の周方向で等間隔をもった複数位置(本実施形態では四箇所)で円筒外周面から半径方向外方に延出する第二フランジ片13Aと、該周方向で隣接する第二フランジ片13A同士間の第二切欠部13Bとで形成されている。円筒部11の円筒外周面に巻回される光ファイバFは、第一フランジ片12Aおよび第二フランジ片13Aにより軸線方向での移動を規制され、これによって、円筒部11からの光ファイバFの不用意な外れが防止されるようになっている。
【0024】
第一フランジ部12および第二フランジ部13は、互いに同形状に形成されており、外縁(半径方向先端に位置する縁部)が円弧状をなしている。また、第一フランジ部12と第二フランジ部13は、フランジ自体は同形状をなしているものの、
図1に見られるように、第一フランジ片12Aが第二切欠部13Bの周方向範囲内に位置するとともに、第二フランジ片13Aが第一切欠部12Bの周方向範囲内に位置するように、周方向にずれた形態をなしている。
【0025】
円筒部11は、上記軸線方向での上記他方の側端位置(第二フランジ部13が形成されている位置)で、第二切欠部13Bが形成されている周方向範囲内に、上記軸線方向に開口する溝部11Aが円筒部11を半径方向に貫通して形成されている。該溝部11Aは、円筒外周面に巻回される光ファイバFの巻回始端側となる一端部を内軸部15の内部へ導入するための導入口として形成されている(
図4参照)。
【0026】
環状円板部14は、周方向で各第一フランジ片12Aと対応する位置に、上記軸線方向で貫通する係止孔14Aが形成されている。該係止孔14Aは、後述するように、光ファイバの巻回のために治具2の駆動ピン24を上記軸線方向で受け入れることにより、該駆動ピン24に上記周方向で係止してリール1の回転駆動を可能としている(
図3(B),(C)参照)。また、環状円板部14は、
図1や
図2(A),(C)に見られるように、内軸部15に設けられた後述の規制突起15Aに上記軸線方向で対向する位置、換言すると周方向で規制突起15Aと同じ位置に、上記軸線方向に貫通する抜出孔部14Bが形成されている。該抜出孔部14Bは、後述するように、リール1が成形された際、上記規制突起15Aを形成するために配された金型(図示せず)の上記軸線方向での抜出を許容する。したがって、抜出孔部14Bは規制突起15Aと類似形状をなしているが、該規制突起15Aの外形よりも若干大きい内縁をなしている。
【0027】
内軸部15は、光ファイバFの始端側である一端部が、溝部11Aを通して引き込まれた後、該内軸部15の外周面に巻回されるようになっている(
図4参照)。該内軸部15は、周方向での第二フランジ片13Aと対応する位置に、内軸部15の外周面から半径方向外方へ突出する規制突起15Aが形成されている。該規制突起15Aは、上記軸線方向で環状円板部14との間に間隔をもつ位置に設けられており、半径方向で円筒部11の内周面に寄った位置まで延びている。
【0028】
上記規制突起15Aは、環状円板部14と規制突起15Aとの間で内軸部15に巻回された光ファイバFが上記軸線方向で環状円板部14から離れる方向への移動を規制するようになっており、これによって、内軸部15からの光ファイバFの不用意な外れが防止される。
【0029】
内軸部15は、軸線方向に貫通して延びる取付孔部15Bが該内軸部15の内周面で形成されている。該取付孔部15Bは、後述する光ファイバFの巻回のための治具2に設けられた取付軸部23を上記軸線方向に受け入れるようになっている(
図3(B),(C)参照)。
【0030】
このような構成のリール1は、該リール1の軸線方向に接離するように分割された二つの金型(図示せず)を用いて電気絶縁材で一体モールド成形することにより作られる。具体的には、二つの金型を上記軸線方向で対向させて当接配置し、該金型同士間に溶融した電気絶縁材を注入し固化させた後、これら二つの金型を軸線方向で互いに離間するように抜出することにより、リール1全体が一部材として一体成形される。
【0031】
本実施形態では、既述したように、第一フランジ片12Aが第二切欠部の周方向範囲に位置しているとともに、第二フランジ片13Aが第一切欠部12Bの周方向範囲に位置している。したがって、第一フランジ片12Aを成形するための一方の金型を軸線方向で第二切欠部13B側から配置するとともに、第二フランジ片13Aを成形するための他方の金型を軸線方向で第一切欠部12B側から配置することができる。また、該第一フランジ片12Aおよび第二フランジ片13Aの成形後、各金型を第二切欠部13Bおよび第一切欠部12Bを経て軸線方向に抜出することができる。つまり、フランジ片12A,13Bは金型の抜出の障害とはならない。
【0032】
したがって、本実施形態では、軸線方向で接離する金型のみによってリール1を成形することができ、従来のような直径方向で接離する金型は不要となるので、その分だけ、少ない数の金型で、金型配置を複雑にすることなく、容易にリールを成形することができる。また、本実施形態では、リールの半径方向で接離する金型が不要となるので、巻取面を形成する円筒部の円筒外周面に成形バリができず、さらに、真円度も正確となる。
【0033】
次に、
図3(A)〜(C)にもとづいて、リール1に光ファイバFを巻回させるための治具2について説明する。
図3(A)に示される治具2は、巻取機に設けられた回転駆動部材であり、該治具2にリール1が取り付けられた状態で該リール1を回転駆動するようになっている。このリール1の回転駆動により、該リール1が、光ファイバの全長が巻回されたボビン(図示せず)から該光ファイバFを引き出してリール1で巻き取る。
【0034】
治具2は、電気絶縁材もしくは金属材料で作られており、リール1とほぼ同径の円板をなす基板部21と、該基板部21の周方向での複数位置で該基板部21の外周縁から軸線方向へ延びる複数の爪部22と、基板部21の二つの側面(軸線方向に対して直角な円状の面)のうちリール1が取り付けられる取付面の中央位置で突出形成された円筒状の取付軸部23と、該取付軸部23の周囲で上記取付面から突出する複数の駆動ピン24とを有している。また、周方向で互いに隣接する爪部22同士間に形成された空間は、リール1が治具2に取り付けられる際に第一フランジ片12Aを受け入れる受入部25として形成されている。
【0035】
上記複数の爪部22は、リール1の第一切欠部12Bに対応した位置で周方向に等間隔をもって形成されている。各爪部22は、
図3(A)に見られるように、上記軸線方向に対して直角な面で円弧状断面をなす薄板状をなしている。また、爪部22は、
図3(C)によく見られるように、周方向での寸法が第一切欠部12Bの周方向での寸法よりも若干小さくなっている。
【0036】
取付軸部23は、その直径がリール1の内軸部15の取付孔部15Bの直径とほぼ等しくなっており、リール1が治具2に取付けられる際、
図3(B)に見られるように、環状円板部14の背面(軸線方向にて第一フランジ部12が位置する側の側面)側から内軸部15の取付孔部15Bに嵌入されることにより、リール1の内軸部15を回転可能に支持する。
【0037】
複数の駆動ピン24は、リール1の係止孔14Aに対応して位置しており、リール1が治具2に取り付けられる際、
図3(B)に見られるように、環状円板部14の背面側から係止孔14Aに嵌入される。したがって、治具2が回転すると、駆動ピン24と係止孔14Aとが周方向で係止ので、リール1は回転駆動を受けるようになっている。
【0038】
次に、光ファイバFをリール1に巻回保持させるための動作を説明する。まず、作業者は、巻取機に設けられた治具2の取付軸部23そして駆動ピン24をそれぞれリール1の取付孔部15Bそして係止孔14Aに嵌入させて、該リール1を治具2に取り付ける。この結果、
図3(B)に見られるように、リール1の第一フランジ片12Aが治具2の受入部25に収容されるとともに、治具2の爪部22が第一切欠部12Bを経てから円筒部11の円筒外周面に軸線方向で外嵌され、該円筒部11上に周方向で間欠的に位置する突状部の形を呈するようになる。すなわち、リール1の円筒部11の外周面は、周方向での治具2の爪部22同士間で半径方向に没した位置にある。
【0039】
次に、作業者が、ボビン巻回されている光ファイバFの一端部を始端側として引き出して、リール1に設けられた複数の溝部11Aのうちの一つに挿通して円筒部11と内軸部15との間に形成された環状空間内に導入する。そして、
図4に見られるように、該光ファイバFを、軸線方向での規制突起15Aと環状円板部14との間に配されるようにして、内軸部15の外周面に少なくとも一回、巻回する。このように光ファイバを少なくとも一回巻回しておくことにより、光ファイバFの一端部を円筒部11内に留めておくことができる。また、内軸部15に巻回された光ファイバは、軸線方向で環状円板部14から離れる方向への移動が規制突起15Aによって規制されるので、光ファイバFが軸線方向で内軸部15から不用意に外れることを防止できる。
【0040】
次に、巻取機に設けられた治具2を回転駆動することにより、該治具2に取り付けられたリール1を回転させる。この結果、ボビンに巻回されている光ファイバFが引き出され、リール1の円筒部11の外周面上に光ファイバFが巻回される。このとき、周方向で治具2の爪部22の位置以外では、光ファイバFは円筒部11の外周面上に巻回されるが、爪部22の位置では、爪部22の厚み分だけもち上がって巻回される。したがって、光ファイバFはリール1の円筒部11の外周面の直径よりも大きい直径で巻回される。また、周方向で隣接する爪部同士間の間隔が狭い場合には、光ファイバFは、該爪部同士間の位置では円筒部の外周面に触れることなく、爪部の位置で該爪部の厚み分だけもち上がって巻回される。
【0041】
円筒部11に巻回された光ファイバFの長さが所定の長さに達した時点で治具2の回転駆動を停止して巻回を終了する。巻回終了時の光ファイバFには巻回時の張力が残存している。しかし、爪部22は周方向に延びる薄板状であるとともに、周方向で等間隔に配置されているので、巻回された光ファイバFに局所的な変形はほとんど生じていない。
【0042】
次に、光ファイバFを切断した後、光ファイバFが巻回されたリール1を軸線方向で治具2から取り外す。この結果、治具2の爪部が軸線方向でリール1から抜出され、巻回された光ファイバFが円筒部11の円筒外周面に残留する。このようにしてリール1が治具2から取り外されると、爪部が抜き出された分だけ巻回光ファイバは周方向で均一に緩くなり、張力が解放され、しかも光ファイバに局所的変形は生じていない。したがって、光ファイバの特性に好ましくない影響がもたらされることがないので、巻回状態下での光ファイバの特性を正しく測定そして検査することが可能となる。
【0043】
リール1を治具2から外した後、光ファイバFの始端および終端のそれぞれにコネクタ接続のための処理を施してから、光電素子等の半導体が内蔵されたコネクタC1,C2を接続する。本実施形態では、光ファイバFの始端に接続されたコネクタC1をリール1の円筒部11内に保持しておくための部分は特に設けられていないが、例えば、環状円板部14の側面にコネクタC1を保持するための保持部を形成することにより、該コネクタC1を確実に円筒部11内に留めておくことができる。
【0044】
<第二実施形態>
第一実施形態に係るリール1は全体が一部材として形成されていたが、第二実施形態に係るリールは、軸線方向に分割された二部材を結合して形成されている点で第一実施形態と異なる。また、本実施形態に係るリールへの光ファイバを巻回する形態は第一実施形態と同様であり、爪部を有する冶具にリールが取り付けた状態で回転駆動することにより光ファイバが巻回される。
【0045】
図5(A),(B)は、第二実施形態に係るリール3を示す斜視図であり、
図5(A)は二つの半リール体3A,3Bが分離された状態、
図5(B)は
図5(A)の半リール体3A,3B同士が結合されてリール3を完成した状態を示している。
図5(B)に見られるように、第二実施形態に係るリール3は、軸線方向に対して直角な面で分割形成された二つの半リール体、すなわち第一半リール体3Aと第二半リール体3Bとを結合させて作られている。各半リール体3A,3Bは、それぞれ電気絶縁材を一体モールド成形して得られる。リール3は、第一実施形態のリール1と同様に、円筒部31の円筒外周面に光ファイバが巻回されるようになっている。円筒部31は、第一半リール体3Aに設けられた第一円筒半部31−1と、第二半リール体3Bに設けられた第二円筒半部31−2とに分割可能となっている。また、半リール体3A,3Bの全面には、第一実施形態のリール1と同様に、帯電防止材料が塗布されて帯電防止材料層が形成されている。また、半リール体3A,3B自体が、帯電防止材料(例えば、帯電防止樹脂)の一体モールド成形により構成されていてもよい。
【0046】
第一半リール体3Aは、上述の第一円筒半部31−1と、第一フランジ部32と、環状円板部34と内軸部35とを有している。第一円筒半部31−1には、第二円筒半部31−2との結合のための第一ねじ孔半部36Aが周方向で等間隔をもった複数位置で軸線方向に貫通して形成されている。第一フランジ部32は、第一実施形態の第一フランジ部12と同様に、第一フランジ片32Aと第一切欠部32Bとで形成されている。また、
図5(A),(B)の環状円板部14には第一実施形態のような係止孔が示されていないが、実際には、係止孔が形成されている。内軸部35には、治具への取付けのための取付孔部35Bが軸線方向に貫通形成されている。また、
図5(A),(B)に示される内軸部35の外周面には、第一実施形態のような規制突起が設けられていないが、内軸部35に巻回された光ファイバの外れをより確実に防止するためには、該内軸部35に規制突起が設けられていることが好ましい。
【0047】
第二半リール体3Bは、上述の第二円筒半部31−2と、第二フランジ部33とを有している。第二円筒半部31−2には、第二円筒半部と31−1の結合のための複数の第二ねじ孔半部36Bが第一半リール体3Aの第一ねじ孔半部36Aに対応する位置で軸線方向に貫通して形成されている。半リール体3A,3B同士が結合される際、第一ねじ孔半部36Aと第二ねじ孔半部36Bとが連通して一つのねじ孔36を形成し、該ねじ孔36にねじ(図示せず)が螺入されるようになっている。
【0048】
第二円筒半部31−2には、第一実施形態の円筒部11と同様に、光ファイバの始端側である一端部を円筒部31内に導入するための溝部31Aが形成されている。また、第二フランジ部33は、第一実施形態の第二フランジ部13と同様に、第二フランジ片32Aと第二切欠部32Bとで形成されている。
【0049】
本実施形態に係るリール3は以下の要領で作られる。まず、合成樹脂等の電気絶縁材の一体成形により第一半リール体3Aおよび第二半リール体3Bを成形する。次に、第一円筒半部31−1と第二円筒半部31−2の側面(軸線方向に対して直角な面)同士を、第一ねじ孔半部36Aの位置と第二ねじ孔半部36Bの位置とが周方向で一致するようにして接面させる。次に、上記側面同士が接面した状態を維持したまま、第一ねじ孔半部36Aと第二ねじ孔半部36Bとで形成されるねじ孔36へ結合部材としてのねじ(図示せず)を螺入して、第一円筒半部31−1と第二円筒半部31−2とを結合することにより、リール3が完成する。
【0050】
このように、本実施形態では、二つの半リール体同士を結合して一つのリールを完成することとしたので、リールの形状の自由度を増大させることができる。
【0051】
本実施形態では、ねじによって半リール体3A,3B同士を結合することとしたが、結合の手段はこれに限られず、例えば、半リール体3A,3B同士を溶着や接着剤によって結合してもよい。また、半リール体3A,3Bの結合面(互いに接面する面)に、孔部および該孔部に圧入可能な突起を形成し、一方の半リール体の突起が他方の半リール体の孔部に圧入されることにより半リール体3A,3B同士を結合してもよい。
【0052】
<第三実施形態>
第二実施形態では、リール3を構成する半リール体3A,4Aは、互いに形状の異なる部材で形成されていたが、本実施形態では、リールを構成する半リール体が同一形状の部材で形成されている点で、第二実施形態と異なっている。また、本実施形態に係るリールへの光ファイバを巻回する形態は第一実施形態と同様であり、爪部を有する冶具にリールが取り付けた状態で回転駆動することにより光ファイバが巻回される。
【0053】
図6(A),(B)は、第三実施形態に係るリール4を示しており、
図6(A)は二つの半リール体40が分離された状態の斜視図、
図6(B)は
図6(A)の半リール体40同士が結合されてリール4が完成した状態の斜視図、
図6(C)は
図6(B)のIV−IV断面図である。本実施形態に係るリール4は、軸線方向に対して直角な面に対して対称な形状をなす、同一形状の二つの半リール体40を軸線方向で結合させて作られている。半リール体40は、
図6(A)を
図3(A)と比較すると判るように、第一実施形態のリール1の第一フランジ片12Aを省略するとともに、円筒部11の軸線方向での寸法を小さくしたような形状をなしている。
【0054】
半リール体40は、光ファイバ(図示せず)を巻回して保持する円筒外周面が形成された円筒部41と、円筒部41の一方の側端位置で該円筒部41の内径から半径方向内方に延びる環状円板部44と、軸線方向での他方の側端位置に設けられたフランジ部42と、該環状円板部44の内径から他方の側端側へ向けて上記軸線方向に延びる筒状の内軸部45とを有している。また、リール4の全面には、第一実施形態のリール1と同様に、帯電防止材料が塗布されて帯電防止材料層が形成されている。また、リール4自体が、帯電防止材料(例えば、帯電防止樹脂)の一体モールド成形により構成されていてもよい。
【0055】
フランジ部42は、第一実施形態の第二フランジ部13と同様に、複数のフランジ片42Aと切欠部42Bとを有している。円筒部41の上記他方の側端位置には、第一実施形態の溝部11Aと同様に、切欠部42Bが形成されている周方向範囲内に、上記軸線方向に開口する溝部41Aが円筒部41を半径方向に貫通して形成されている。内軸部45には、周方向での切欠部42Bと対応する位置に、内軸部45の外周面から半径方向外方へ突出する規制突起45Aが形成されている。該規制突起45Aは、上記軸線方向にて、内軸部45の上記他方の側端位置に設けられており、内軸部15に巻回された光ファイバの軸線方向での移動を規制して、内軸部45からの光ファイバの外れを防止するようになっている。
【0056】
環状円板部44には、規制突起45Aを形成する金型を軸線方向に抜出するための抜出孔部44Bが、周方向で規制突起45Aと同じ位置に上記軸線方向に貫通して形成されている。また、環状円板部44は、半リール体40の結合のためのねじ孔半部46が、周方向での等間隔をもった複数位置で軸線方向に貫通して形成されている。内軸部45には、治具への取付けのための取付孔部45Bが軸線方向に貫通形成されている。
【0057】
本実施形態に係るリール4は以下の要領で作られる。まず、合成樹脂等の電気絶縁材の一体成形により半リール体40を成形する。次に、二つの半リール体40の環状円板部44の背面(一方の側端側の側面)同士を接面させる。このとき、一方の半リール体40のフランジ片42Aが他方の半リール体40の切欠部42Bの周方向範囲内に位置させるとともに、ねじ孔半部46同士の位置を一致させる。次に、上記背面同士が接面した状態を維持したまま、ねじ孔半部46同士が連通して形成されるねじ孔へ結合部材としてのねじ(図示せず)を螺入して、二つの半リール体40同士を結合することにより、リール4が完成する。
【0058】
本実施形態では、二つの半リール体40は、同一形状で成形されているので、半リール体を互いに異なる形状とする場合と比較して、半リール体40の成形のための金型の数を減らすとともに該金型を小型化することができる。
【0059】
本実施形態では、ねじによって半リール体40同士を結合することとしたが、結合の手段はこれに限られず、例えば、半リール体40同士を溶着や接着剤によって結合してもよい。また、例えば、半リール体40の背面にほぼ同径の孔部および突起を形成して、一方の半リール体40の突起が他方の半リール体の孔部に圧入されることにより半リール体40同士が結合されてもよい。さらに、例えば、半リール体40の背面に、周方向で隣接する抜出孔部44B同士間の位置に、該抜出孔部44Bに圧入可能な突起を形成して、一方の半リール体40の突起が他方の半リール体40の抜出孔部44Bに圧入されることにより半リール体40同士が結合されてもよい。