特許第6270988号(P6270988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6270988-粘着剤層および飛散防止粘着シート 図000004
  • 特許6270988-粘着剤層および飛散防止粘着シート 図000005
  • 特許6270988-粘着剤層および飛散防止粘着シート 図000006
  • 特許6270988-粘着剤層および飛散防止粘着シート 図000007
  • 特許6270988-粘着剤層および飛散防止粘着シート 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6270988
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】粘着剤層および飛散防止粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20180101AFI20180122BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20180122BHJP
   C09J 11/00 20060101ALI20180122BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20180122BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20180122BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180122BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   C09J7/00
   C09J201/00
   C09J11/00
   C09J133/04
   C09J4/02
   B32B27/30 A
   B32B27/00 M
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-509727(P2016-509727)
(86)(22)【出願日】2014年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2014058651
(87)【国際公開番号】WO2015145635
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年2月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】又野 仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
(72)【発明者】
【氏名】所司 悟
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−039170(JP,A)
【文献】 特開2013−127546(JP,A)
【文献】 特開2011−194679(JP,A)
【文献】 特開2013−107214(JP,A)
【文献】 特開2011−168652(JP,A)
【文献】 特開2013−010839(JP,A)
【文献】 特開2006−016515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00
B32B 27/00
B32B 27/30
C09J 4/02
C09J 11/00
C09J 133/04
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量方式のタッチパネルに使用されるカバーガラスの少なくとも一方の面に貼付される飛散防止粘着シート用の粘着剤層であって、
前記粘着剤層が、粘着成分と光拡散微粒子とを含有する粘着性組成物から形成され、
前記粘着成分の屈折率と前記光拡散微粒子との屈折率の差が、0.005〜0.2であり、
前記光拡散微粒子の遠心沈降光透過法による平均粒径が、0.8〜2.9μmであり、
前記粘着剤層のヘイズ値が、55%以下である
ことを特徴とする粘着剤層。
【請求項2】
前記粘着成分は、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着剤層。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基を有するモノマーを含有しないことを特徴とする請求項2に記載の粘着剤層。
【請求項4】
前記粘着成分は、さらに架橋剤を含有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、前記架橋剤と反応する官能基を有するモノマーを含有する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の粘着剤層。
【請求項5】
前記粘着成分は、さらに活性エネルギー線硬化性化合物を含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の粘着剤層。
【請求項6】
前記活性エネルギー線硬化性化合物は、分子量1000以下の多官能アクリレート系モノマーであることを特徴とする請求項5に記載の粘着剤層。
【請求項7】
静電容量方式のタッチパネルに使用されるカバーガラスの少なくとも一方の面に貼付される飛散防止粘着シートであって、
基材と、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着剤層と
を備えたことを特徴とする飛散防止粘着シート。
【請求項8】
前記基材は、ハードコート層を有する樹脂フィルムであることを特徴とする請求項7に記載の飛散防止粘着シート。
【請求項9】
前記カバーガラスの一方の面には、透明導電膜が設けられていることを特徴とする請求項7または8に記載の飛散防止粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量方式のタッチパネルに使用されるカバーガラスの少なくとも一方の面に貼付される飛散防止粘着シート、ならびに当該飛散防止粘着シート用の粘着剤層に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスマートフォンやタブレット端末等の各種モバイル電子機器では、ディスプレイパネルとして、静電容量方式のタッチパネルが使用されることが多くなってきている。
【0003】
静電容量方式のタッチパネルの構成は種々存在するが、典型的な一例として、液晶モジュール等の表示体モジュールと、その上に粘着剤層を介して積層されたフィルムセンサーと、その上に粘着剤層を介して積層されたカバーガラスとを備えた構成が挙げられる。
【0004】
上記のようなモバイル電子機器は、落下等により大きな衝撃を受けると、カバーガラスが割れてガラスの破片が飛散するという問題がある。そのため、カバーガラスの表面に粘着剤層付きの飛散防止フィルム(飛散防止粘着シート)を貼り付けて、ガラスの飛散を防止することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
ここで、上記フィルムセンサーは、通常、基材フィルムと、パターニングされたスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜とから構成される。また、上記カバーガラスの一例として、ガラス基板に、パターニングされたITOからなる透明導電膜とから構成されるものが例示される。このようなパターニングされた透明導電膜を有するタッチパネルでは、当該透明導電膜の回路パターンが見えて外観を損ねる、いわゆる骨見えの問題がある。
【0006】
上記骨見えの問題を解決すべく、特許文献2は、絶縁性の透明基材と、透明基材の表面に形成された高屈折率層と、高屈折率層の表面に形成された低屈折率層と、低屈折率層の表面においてパターン形成された透明配線層とを有する透明導電積層体であって、低屈折率層または高屈折率層に凹凸形成用粒子(シリカ系粒子、金属酸化物粒子等)が配置された透明導電積層体を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−168652号公報
【特許文献2】特開2013−107214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の透明導電積層体では、低屈折率層および透明配線層の表面が凹凸面を構成しており、これにより、透明導電積層体を透過する透過光や透明導電積層体において反射する反射光を散乱させ、透明配線層が目立たないようにしている。しかしながら、上記の透明導電積層体を、高精細な液晶モジュールを備えたタッチパネルに使用した場合、液晶モジュールの映像光の散乱が生じ、その部分がぎらついて光るいわゆる「ぎらつき」が発生し、タッチパネルの表示性能が悪化する。また、特許文献2の透明導電積層体では、上記骨見えの問題を解決するためだけに別途の層を設ける必要があり、さらにその層を設けるために多段階工程を必要とするため、コスト的な観点からも透明配線層を目立たないようにする新たな方法が求められている。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、パターニングされた透明導電膜を目立たなくするとともに、タッチパネルにおけるぎらつきを抑制することのできる飛散防止粘着シート、ならびに当該飛散防止粘着シート用の粘着剤層を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、静電容量方式のタッチパネルに使用されるカバーガラスの少なくとも一方の面に貼付される飛散防止粘着シート用の粘着剤層であって、前記粘着剤層が、粘着成分と光拡散微粒子とを含有する粘着性組成物から形成され、前記粘着成分の屈折率と前記光拡散微粒子との屈折率の差が、0.005〜0.2であり、前記光拡散微粒子の遠心沈降光透過法による平均粒径が、0.8〜2.9μmであり、前記粘着剤層のヘイズ値が、55%以下であることを特徴とする粘着剤層を提供する(発明1)。
【0011】
上記発明(発明1)に係る粘着剤層を備えた飛散防止粘着シートによれば、タッチパネルにおけるカバーガラスの飛散を防止することができる。また、上記のように屈折率差、光拡散微粒子の平均粒径およびヘイズ値が規定されることにより、別途の層を設けることなく、パターニングされた透明導電膜が目立たなくなり、かつ、ぎらつきを抑制することができ、特に高精細なタッチパネルにおいても優れたぎらつき抑制効果が得られる。
【0012】
上記発明(発明1)において、前記粘着成分は、(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有することが好ましい(発明2)。
【0013】
上記発明(発明2)において、当該粘着剤層が透明導電膜と接するような場合には、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基を有するモノマーを含有しないことが好ましい(発明3)。
【0014】
上記発明(発明2,3)において、前記粘着成分は、さらに架橋剤を含有し、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、前記架橋剤と反応する官能基を有するモノマーを含有することが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明2〜4)において、前記粘着成分は、さらに活性エネルギー線硬化性化合物を含有してもよい(発明5)。
【0016】
上記発明(発明5)において、前記活性エネルギー線硬化性化合物は、分子量1000以下の多官能アクリレート系モノマーであることが好ましい(発明6)。
【0017】
第2に本発明は、静電容量方式のタッチパネルに使用されるカバーガラスの少なくとも一方の面に貼付される飛散防止粘着シートであって、基材と、前記粘着剤層(発明1〜6)とを備えたことを特徴とする飛散防止粘着シートを提供する(発明7)。
【0018】
上記発明(発明7)において、前記基材は、ハードコート層を有する樹脂フィルムであってもよい(発明8)。
【0019】
上記発明(発明7,8)において、前記カバーガラスの一方の面には、透明導電膜が設けられていてもよい(発明8)。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る粘着剤層および飛散防止粘着シートによれば、タッチパネルにおけるカバーガラスの飛散を防止することができるとともに、パターニングされた透明導電膜が目立たず、かつ、ぎらつきを抑制することができ、特に高精細なタッチパネルにおいても優れたぎらつき抑制効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る飛散防止粘着シートの断面図である。
図2】タッチパネルの一構成例を示す断面図である。
図3】タッチパネルの他の構成例を示す断面図である。
図4】試験例6で作製した抵抗値測定サンプルの断面図である。
図5】試験例6における試験方法を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着剤層〕
本発明の一実施形態に係る粘着剤層は、静電容量方式のタッチパネルに使用されるカバーガラスの少なくとも一方の面に貼付される飛散防止粘着シート用の粘着剤層である。この粘着剤層は、粘着成分と光拡散微粒子とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という。)から形成される。
【0023】
上記粘着性組成物Pにおいて、粘着成分の屈折率と光拡散微粒子との屈折率の差は、0.005〜0.2であり、光拡散微粒子の遠心沈降光透過法による平均粒径は、0.8〜2.9μmである。また、本実施形態に係る粘着剤層のヘイズ値は、55%以下である。かかる粘着剤層を備えた飛散防止粘着シートを、タッチパネルのカバーガラスの少なくとも一方の面に貼付することにより、カバーガラスが割れたときにもガラスの飛散を防止することができる。また、パターニングされた透明導電膜を目立たなくする(視認されにくくする)ことができるとともに、ぎらつきを抑制することができ、特に高精細なタッチパネルにおいても優れたぎらつき抑制効果が得られ、タッチパネルは表示性能に優れたものとなる。
【0024】
1.粘着成分
粘着性組成物Pが含有する粘着成分は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を含有することが好ましく、さらに架橋剤(B)を含有することが好ましい。また、所望により、さらに活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有してもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0025】
(1)(メタ)アクリル酸エステル重合体
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマーとして、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、好ましい粘着性を発現することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、反応性の官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)と、所望により用いられる他のモノマーとの共重合体であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマーとして反応性官能基含有モノマーを含有することにより、架橋剤(B)と反応して架橋構造を形成することができる。
【0026】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10〜98質量%含有することが好ましく、特に30〜90質量%含有することが好ましく、さらには50〜85質量%含有することが好ましい。
【0028】
上記反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられ、中でも特に水酸基含有モノマーが好ましい。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)におけるカルボキシル基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、耐湿熱白化性と粘着力との両立の観点から、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマー(特に水酸基含有モノマー)を2〜30質量%含有することが好ましく、特に7〜20質量%含有することが好ましく、さらには10〜20質量%含有することが好ましい。
【0033】
ここで、タッチパネルが高温高湿の環境下に置かれると、粘着剤層中に水分が浸入し、タッチパネルが常温に戻ったときに、粘着剤層が白化して透明性が低下する「湿熱白化」の問題がある。反応性官能基含有モノマー(特に水酸基含有モノマー)を7質量%以上、好ましくは10質量%以上含有すると、粘着剤層中に、所定量の反応性官能基が残存することとなる。反応性官能基(特に水酸基)は通常親水性基であり、そのような親水性基が所定量粘着剤層中に存在すると、粘着剤層が高温高湿条件下に置かれた場合でも、その高温高湿条件下で粘着剤層に浸入した水分との相溶性がよく、その結果、粘着剤層の白化が抑制されることとなる。
【0034】
本実施形態に係る粘着性組成物Pを硬化させてなる粘着剤層を備えた飛散防止粘着シートを、一方の面側に透明導電膜が形成されたカバーガラスの当該透明導電膜に貼付する場合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを含有しないことが好ましい。これにより、透明導電膜を腐食させたり、透明導電膜の抵抗値を変化させることを抑制することができる。
【0035】
なお、「カルボキシル基を有するモノマーを含有しない」とは、カルボキシル基を有するモノマーを実質的に含有しないことを意味し、カルボキシル基含有モノマーを全く含有しない他、カルボキシル基による透明導電膜に不具合が生じない程度にカルボキシル基含有モノマーを含有することを許容するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中に、モノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを0.1質量%以下、好ましくは0.01質量%以下の量で含有することを許容するものである。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成する他のモノマーとして、炭素数が7以上の脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有してもよい。上記粘着性組成物Pにおいては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が上記脂環式構造含有モノマーを含有することで、当該(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が酸成分(カルボキシル基)を含有しなくても、得られる粘着剤は、透明導電膜に対する密着性が高く、耐久性にも優れたものとなる。これは、透明導電膜と炭素数が7以上の脂環式構造との親和性や相互作用が比較的強いためと考えられる。
【0037】
炭素数が7以上の脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を有するものであってもよい。また、炭素数が7以上の脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよいが、透明導電膜に適用したときの耐久性の観点から、多環の脂環式構造であることが好ましい。脂環式構造の炭素数は、7〜15であることが好ましく、特に9〜12であることが好ましい。
【0038】
炭素数が7以上の脂環式構造としては、例えば、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格、イソボルニル骨格、シクロアルカン骨格(シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格、シクロノナン骨格、シクロデカン骨格、シクロウンデカン骨格、シクロドデカン骨格等)、シクロアルケン骨格(シクロヘプテン骨格、シクロオクテン骨格等)、ノルボルネン骨格、ノルボルナジエン骨格、多環式骨格(キュバン骨格、バスケタン骨格、ハウサン骨格等)、スピロ骨格などを含むものが挙げられ、中でも、より優れた密着性・耐久性向上効果を発揮する、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格またはイソボルニル骨格を含むものが好ましい。
【0039】
上記脂環式構造含有モノマーとしては、上記の骨格を含む(メタ)アクリル酸エステルモノマーが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が挙げられ、中でも、より優れた密着性・耐久性向上効果を発揮する、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチルまたは(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記脂環式構造含有モノマーを含有する場合、当該脂環式構造含有モノマーを1〜50質量%含有することが好ましく、特に5〜40質量%含有することが好ましく、さらには10〜30質量%含有することが好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマーとして含有し得る他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は10万〜200万であることが好ましく、特に30万〜140万であることが好ましく、さらには40万〜90万であることが好ましい。重量平均分子量が10万未満の場合、高温条件や温暖湿潤条件に長期間曝された場合に、粘着剤層の端部で浮きなどが発生するおそれがある。一方、静電容量方式のタッチパネルでは、配線層を隠すために、カバー材の周縁部に段差となる印刷層が設けられることが多い。上記重量平均分子量が200万を超える場合、当該印刷段差への追従性が悪化するおそれがある。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0044】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(2)架橋剤
粘着性組成物Pは、粘着成分として、架橋剤(B)を含有することが好ましい。粘着性組成物Pの粘着成分が、重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含む(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する場合、当該粘着性組成物Pを加熱等すると、架橋剤(B)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する反応性官能基含有モノマーの反応性官能基と反応する。これにより、架橋剤(B)によって(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が架橋された構造が形成され、得られる粘着剤の凝集力が向上する。
【0046】
架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が反応性官能基として水酸基を有する場合、上記の中でも、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0048】
架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、特に0.05〜1質量部であることが好ましく、さらには0.1〜0.5質量部であることが好ましい。
【0049】
(3)活性エネルギー線硬化性化合物
粘着性組成物Pは、粘着成分として、活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有してもよい。光拡散微粒子を含有する粘着剤は、一般的に凝集力が低下し易く、粘着剤層から剥離シートを剥離する時に、粘着剤層が剥離シート側に取られてしまうことがあるが、活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有する粘着性組成物Pは、活性エネルギー線の照射によって硬化させることにより上記のような問題が発生し難く、得られる粘着剤層がハンドリング性に優れたものとなる。
【0050】
活性エネルギー線硬化性化合物(C)は、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)等との相溶性に優れる分子量1000以下の多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
【0051】
分子量1000以下の多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有する場合、当該活性エネルギー線硬化性化合物(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、特に5〜30質量部であることが好ましく、さらには7〜20質量部であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性化合物(C)の含有量が上記の範囲内にあることで、得られる粘着剤層のハンドリング性が優れたものとなり、また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)による粘着性が良好に維持される。
【0053】
2.光拡散微粒子
本実施形態に係る粘着性組成物Pが含有する光拡散微粒子は、上記粘着成分との屈折率差が0.005〜0.2であり、遠心沈降光透過法による平均粒径が0.8〜2.9μmであるものである。
【0054】
上記光拡散微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、二酸化チタン等の無機系微粒子;アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂等の有機系の透光性微粒子;無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(例えば、シリコーン樹脂の微粒子であるモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のトスパールシリーズ)などが挙げられる。中でも、アクリル樹脂微粒子、および無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子は、ぎらつき抑制効果の観点から好ましい。また、無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子は、少量の添加でもその効果を発揮し、粘着成分の粘着性が良好に維持されるため、特に好ましい。以上の光拡散微粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
上記アクリル樹脂微粒子としては、例えば、メタクリル酸メチルの単独重合体や、メタクリル酸メチルと酢酸ビニル、スチレン、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の単量体との共重合体などからなるものが挙げられる。
【0056】
光拡散微粒子の形状としては、光拡散が均一な球状の微粒子が好ましい。光拡散微粒子の遠心沈降光透過法による平均粒径は、0.8〜2.9μmであることを要し、1〜2.7μmであることが好ましく、特に1.2〜2.5μmであることが好ましい。このように光拡散微粒子の平均粒径が比較的小さいことにより、前述した粘着成分および光拡散微粒子の屈折率差との相互作用により、パターニングされた透明導電膜が目立たなく、かつ、高精細なタッチパネルにおいても、ぎらつきが抑制される。光拡散微粒子の平均粒径が2.9μmを超えると、得られる粘着剤を適用したタッチパネルにおいてぎらつきが発生する。一方、光拡散微粒子の平均粒径が0.8μm未満であると、パターニングされた透明導電膜が視認されやすくなる。
【0057】
なお、上記遠心沈降光透過法による平均粒径は、微粒子1.2gとイソプロピルアルコール98.8gとを十分に撹拌したものを測定用試料とし、遠心式自動粒度分布測定装置(堀場製作所社製,CAPA−700)を使用して測定したものである。
【0058】
粘着性組成物P中における光拡散微粒子の含有量は、上記粘着成分100質量部に対して、0.5〜30質量部であることが好ましく、特に0.8〜15質量部であることが好ましく、さらには2〜4質量部であることが好ましい。光拡散微粒子の含有量が上記の範囲内にあることで、パターニングされた透明導電膜が視認されず、かつ、ぎらつきが効果的に抑制され、また、粘着成分による粘着性も阻害されない。
【0059】
3.各種添加剤
粘着性組成物Pは、所望により、各種添加剤、例えば光重合開始剤、シランカップリング剤、屈折率調整剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤等を含有してもよい。
【0060】
粘着性組成物Pの粘着成分が活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有する場合において、粘着性組成物Pを硬化させる活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着性組成物Pは光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤を含有することにより、活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有する粘着成分を効率良く硬化させることができ、また重合硬化時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
【0061】
光重合開始剤としては、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
光重合開始剤は、活性エネルギー線硬化性化合物(C)100質量部に対して、0.1〜30質量部、特に1〜15質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
【0063】
また、粘着性組成物Pは、得られる粘着剤の粘着力を改善する観点から、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着成分との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0064】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤の含有量は、粘着成分100質量部に対して、0.01〜2質量部であることが好ましく、特に0.05〜1質量部であることが好ましく、さらには0.1〜0.5質量部であることが好ましい。
【0066】
4.屈折率差
本実施形態に係る粘着性組成物Pにおいて、粘着成分の屈折率と光拡散微粒子との屈折率の差は、0.005〜0.2であることを要し、0.007〜0.1であることが好ましく、特に0.008〜0.08であることが好ましい。このように粘着成分および光拡散微粒子の屈折率差が比較的小さいことにより、前述した光拡散微粒子の平均粒径との相互作用により、高精細なタッチパネルにおいても、ぎらつきが抑制される。上記の屈折率差が0.005未満であると、ヘイズ発現性が低下し、パターニングされた透明導電膜を目立たなくする効果が得られなくなる。また、上記の屈折率差が0.2を超えると、ぎらつきを抑制できなくなる。
【0067】
なお、粘着成分の屈折率は、1.40〜1.55であることが好ましく、特に1.42〜1.50であることが好ましく、さらには1.44〜1.49であることが好ましい。また、光拡散微粒子の屈折率は、1.40〜1.55であることが好ましく、特に1.41〜1.52であることが好ましく、さらには1.42〜1.50であることが好ましい。
【0068】
ここで、粘着成分の屈折率は、アッベ屈折計を使用して、JIS K0062−1992に準じて測定した値である。なお、粘着成分の屈折率は、その硬化前後で変化しないため、硬化前に測定した値であっても、硬化後に測定した値であってもよい。一方、光拡散微粒子の屈折率は、後述する試験例に示すように、屈折率標準液を使用して測定した値である。
【0069】
5.粘着性組成物の製造方法
粘着性組成物Pは、粘着成分と、光拡散微粒子と、所望により添加剤とを混合することにより製造することができる。粘着成分が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を含有する場合には、先に(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製し、所望により架橋剤(B)および/または活性エネルギー線硬化性化合物(C)を配合する。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマー単位の混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0071】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0072】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0073】
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0074】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、光拡散微粒子、ならびに所望により、架橋剤(B)、活性エネルギー線硬化性化合物(C)および添加剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
【0075】
粘着性組成物Pを希釈して塗布溶液とするための希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0076】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10〜40質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。
【0077】
6.粘着剤層
本実施形態に係る粘着剤層は、粘着性組成物Pから形成され、具体的には、粘着性組成物Pの塗布溶液を所望の材料(剥離シートや飛散防止粘着シートの基材等)に塗布し、硬化(架橋)することにより形成される。粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有しない場合、当該粘着性組成物Pを、塗布後に乾燥、好ましくは加熱処理して硬化させることにより、粘着剤層を得ることができる。なお、加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けてもよい。
【0078】
また、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有する場合、当該粘着性組成物Pを、塗布後に乾燥、好ましくは加熱処理した後、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、粘着剤層を得ることができる。
【0079】
粘着性組成物Pの塗布溶液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0080】
粘着性組成物Pの乾燥は、風乾によって行ってもよいが、通常は加熱処理(好ましくは熱風乾燥)によって行う。加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。
【0081】
活性エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。活性エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で50〜1000mJ/cmが好ましく、特に100〜500mJ/cmが好ましい。また、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0082】
粘着性組成物Pの粘着成分が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および架橋剤(B)を含有する場合、粘着性組成物Pの乾燥(加熱処理)により、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は架橋剤(B)によって架橋されて、架橋構造を形成する。また、粘着性組成物Pの粘着成分がさらに活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有する場合、粘着性組成物Pに対する活性エネルギー線の照射により、複数の活性エネルギー線硬化性化合物(C)は互いに結合して三次元網目構造を形成し、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の架橋構造と絡み付いた構造が形成されるものと推定される。
【0083】
本実施形態に係る粘着剤層の厚さは、5〜100μmであることが好ましく、特に10〜50μmであることが好ましく、さらには15〜30μmであることが好ましい。
【0084】
本実施形態に係る粘着剤層のヘイズ値(JIS K7105に準じて測定した値)は、55%以下であることを要する。このヘイズ値の規定と、前述した屈折率差および光拡散微粒子の平均粒径の規定とにより、パターニングされた透明導電膜を目立たなくすることができるとともに、ぎらつきを抑制することができる。これら2つの効果を良好に両立させる観点から、粘着剤層のヘイズ値は、5〜50%であることが好ましく、特に10〜45%であることが好ましく、さらには20〜35%であることが好ましい。
【0085】
本実施形態に係る粘着剤層を備えた飛散防止粘着シートを、タッチパネルのカバーガラスの少なくとも一方の面に貼付することにより、カバーガラスが割れたときにもガラスの飛散を防止することができるとともに、ぎらつきを抑制することができ、特に高精細なタッチパネルにおいても優れたぎらつき抑制効果が得られ、タッチパネルは表示性能に優れたものとなる。
【0086】
〔飛散防止粘着シート〕
図1に示すように、本実施形態に係る飛散防止粘着シート1は、下から順に、剥離シート13と、剥離シート13の剥離面に積層された粘着剤層12と、粘着剤層12に積層された基材11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0087】
(1)粘着剤層
上記飛散防止粘着シート1において、粘着剤層12は、前述した実施形態に係る粘着剤層からなる。
【0088】
(2)基材
基材11としては、タッチパネルのカバーガラスが割れたときに、ガラスの飛散を防止できる程度の強度を有する材料からなるものであればよく、通常はプラスチックフィルムを主体とし、プラスチックフィルムのみからなってもよいし、プラスチックフィルムに所望の機能性層が形成されたものであってもよい。
【0089】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
【0090】
上記機能性層としては、例えば、ハードコート層、反射防止層、防眩層、易滑層、帯電防止層、色補正層等が挙げられる。
【0091】
基材11の厚さは、通常10〜500μmであり、好ましくは50〜300μmであり、特に好ましくは80〜150μmである。
【0092】
(3)剥離シート
剥離シート13としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0093】
上記剥離シート13の剥離面(特に粘着剤層12と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
【0094】
剥離シート13の厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0095】
(4)飛散防止粘着シートの製造方法
粘着剤層12が活性エネルギー線硬化性を有さない粘着剤からなる場合、飛散防止粘着シート1の一製造例としては、剥離シート13の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを硬化し、塗布層を形成した後、その塗布層に基材11を貼合する。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層12となる。これにより、上記飛散防止粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0096】
一方、粘着剤層12が活性エネルギー線硬化性を有する粘着剤からなる場合、飛散防止粘着シート1の一製造例としては、剥離シート13の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを硬化し、塗布層を形成した後、その塗布層に基材11を貼合する。そして、剥離シート13越しに上記塗膜層に活性エネルギー線を照射することにより、粘着剤層12を形成する。これにより、上記飛散防止粘着シート1が得られる。活性エネルギー線の照射条件については、前述した通りである。
【0097】
また、上記のように剥離シート13越しに活性エネルギー線を照射して粘着剤層12を形成することに替えて、剥離シート13上に粘着性組成物Pの塗膜層を形成し、その塗膜層が露出した状態のまま、活性エネルギー線を照射して粘着剤層12を形成し、その後、当該粘着剤層12に基材11を貼合してもよい。さらには、剥離シート13ではなく、基材11上に直接粘着性組成物Pの塗膜層を形成し、粘着剤層12を形成してもよい。
【0098】
(5)飛散防止粘着シートの使用
上記飛散防止粘着シート1を使用することにより、例えば、図2に示す静電容量方式のタッチパネル10Aまたは図3に示す静電容量方式のタッチパネル10Bを製造することができる。
【0099】
本実施形態におけるタッチパネル10Aは、下から順に、表示体モジュール7と、その上に粘着剤層6を介して積層されたフィルムセンサー5と、その上に粘着剤層4を介して積層された、パターニングされた透明導電膜3付きのカバーガラス2と、カバーガラス2の上に、粘着剤層12を介して貼付された飛散防止粘着シート1(剥離シート13は剥離済み)とを備えて構成される。すなわち、このタッチパネル10Aでは、飛散防止粘着シート1は、カバーガラス2の表面側(表示体モジュール7とは反対側)に設けられている。
【0100】
また、本実施形態におけるタッチパネル10Bは、下から順に、表示体モジュール7と、その上に粘着剤層6を介して積層されたフィルムセンサー5と、その上に粘着剤層4を介して積層された飛散防止粘着シート1(剥離シート13は剥離済み)と、その飛散防止粘着シート1の粘着剤層12を介して積層された、パターニングされた透明導電膜3付きのカバーガラス2とを備えて構成される。すなわち、このタッチパネル10Bでは、飛散防止粘着シート1は、カバーガラス2の裏面側(表示体モジュール7側)に設けられている。
【0101】
上記のタッチパネル10A,10Bでは、カバーガラス2に透明導電膜3が設けられているが、これに限定されるものではなく、透明導電膜3は別の部位に設けられていてもよい。また、上記のタッチパネル10Bでは、飛散防止粘着シート1の粘着剤層12は透明導電膜3に接着しているため、透明導電膜3の腐食や抵抗値変化を抑制するために、粘着剤層12を構成する粘着性組成物Pの(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、カルボキシル基含有モノマーを含有しないことが好ましい。
【0102】
上記表示体モジュール7としては、例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール、電子ペーパー等が挙げられる。これらの表示体モジュール7、特に液晶(LCD)モジュールが高精細なものであっても、タッチパネル10A,10Bでは、上記飛散防止粘着シート1の粘着剤層11により、後述する優れた効果(特にぎらつき抑制効果)が発揮され、表示性能に優れる。なお、かかる優れた効果は、高精細でない表示体モジュール7を使用した場合においても当然十分に発揮される。
【0103】
粘着剤層6および粘着剤層4は、所望の粘着剤または粘着シートによって形成すればよく、上記飛散防止粘着シート1の粘着剤層11と同様の粘着剤によって形成してもよい。上記所望の粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられるが、中でもアクリル系粘着剤が好ましい。
【0104】
フィルムセンサー5は、通常、基材フィルム51と、パターニングされた透明導電膜52とから構成される。基材フィルム51としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレンフィルム等が使用される。
【0105】
透明導電膜52としては、例えば、白金、金、銀、銅等の金属、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化亜鉛、二酸化亜鉛等の酸化物、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛等の複合酸化物、カルコゲナイド、六ホウ化ランタン、窒化チタン、炭化チタン等の非酸化化合物などからなるものが挙げられ、中でもスズドープ酸化インジウム(ITO)からなるものが好ましい。
【0106】
なお、上記タッチパネル10A,10Bにおけるフィルムセンサー5の透明導電膜52は、図2および図3中、フィルムセンサー5の上側に位置しているが、これに限定されるものではなく、フィルムセンサー5の下側に位置してもよい。
【0107】
カバーガラス2のガラス材料としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。カバーガラス2の表面には、所望の機能性層が設けられていてもよい。
【0108】
カバーガラス2の厚さは、特に限定されることはないが、通常0.5〜2.0mmであり、好ましくは0.7〜1.5mmである。
【0109】
上記のタッチパネル10A,10Bでは、カバーガラス2に透明導電膜3がパターニングされて設けられている。透明導電膜3の材料としては、上記フィルムセンサー5の透明導電膜52と同様のものを使用することができる。なお、透明導電膜3およびフィルムセンサー5の透明導電膜52は、通常、一方がX軸方向の回路パターンを構成し、他方がY軸方向の回路パターンを構成する。
【0110】
タッチパネル10Aを製造する場合、飛散防止粘着シート1の剥離シート13を剥離して、露出した粘着剤層12をカバーガラス2の表面側(透明導電膜3が存在しない側)に貼付した後、当該飛散防止粘着シート1付きのカバーガラス2を使用して、常法によりタッチパネル10Aを製造してもよいし、常法によりタッチパネル(飛散防止粘着シート1が貼付されていない状態のタッチパネル10A)を製造した後、カバーガラス2の表面側(表示体モジュール7とは反対側)に飛散防止粘着シート1を貼付してもよい。
【0111】
また、タッチパネル10Bを製造する場合、飛散防止粘着シート1の剥離シート13を剥離して、露出した粘着剤層12を、カバーガラス2の裏面側に設けられている透明導電膜3に貼付した後、当該飛散防止粘着シート1付きのカバーガラス2を使用して、常法によりタッチパネル10Bを製造すればよい。
【0112】
上記タッチパネル10A,10Bにおいては、落下等により大きな衝撃を受けてカバーガラス2が割れた場合であっても、カバーガラス2に貼付された飛散防止粘着シート1の存在により、ガラスの破片が飛散することが防止される。また、上記タッチパネル10A,10Bのいずれの形態であっても、飛散防止粘着シート1の粘着剤層11の存在により、透明導電膜3,52のパターンが目立たず(視認されにくく)、かつ、ぎらつきが抑制されて、表示性能に優れる。
【0113】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0114】
例えば、飛散防止粘着シート1の剥離シート13は省略されてもよい。また、タッチパネル10A,10Bにおける透明導電膜3は、カバーガラス2に接触していなくてもよく、その場合、第2のフィルムセンサーの一部として設けられてもよい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0116】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸2−エチルヘキシル65質量部、メタクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル15質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0117】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(三井武田ケミカル社製,製品名「タケネートD−110N」)0.2質量部と、シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,製品名「KBM−403」)0.2質量部、および光拡散微粒子としての、無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール120」,平均粒径:2.0μm,屈折率:1.43)5質量部を添加し、十分に撹拌し、酢酸エチルで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0118】
ここで、当該粘着性組成物の配合を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
BA:アクリル酸n−ブチル
MA:アクリル酸メチル
AA:アクリル酸
[架橋剤(B)]
XDI:トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(三井武田ケミカル社製,製品名「タケネートD−110N」)
TDI:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製,製品名「コロネートL」)
[光拡散微粒子]
シリコーン微粒子(2μm):無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール120」,平均粒径:2.0μm,屈折率:1.43)
シリコーン微粒子(4.5μm):無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール145」,平均粒径:4.5μm,屈折率:1.43)
PMMA微粒子(2.5μm):架橋したメタクリル酸重合体からなる樹脂ビーズ(積水化成品工業社製,製品名「SSX102」,平均粒径:2.5μm,屈折率:1.49)
PMMA微粒子(4μm):架橋したメタクリル酸重合体からなる樹脂ビーズ(積水化成品工業社製,製品名「SSX104」,平均粒径:4.0μm,屈折率:1.49)
【0119】
3.ハードコート層用コート剤の調製
紫外線硬化型化合物含有組成物(荒川化学工業社製,製品名「ビームセット575CB」,濃度:100質量%,光重合開始剤入り)100質量部に、レベリング剤(ビックケミージャパン社製,製品名「BYK−300」,濃度:52質量%)0.1質量部を加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈して、40質量%濃度のハードコート層用コート剤を調製した。
【0120】
4.飛散防止粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET3811」,厚さ:38μm)の剥離処理面にナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して粘着性組成物の塗膜層を形成した。
【0121】
一方、上記工程3で得られたハードコート層用コート剤を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,製品名「コスモシャインA4300」,厚さ75μm)の一方の面に塗布し、乾燥させ、光硬化させることにより、膜厚3μmのハードコート層を有する基材を得た。得られた基材を、ハードコート層がない側の面が上記塗膜層と接触するように、上記塗膜層の露出面側に貼合し、23℃、50%RHで7日間養生することにより、粘着剤層を形成し、飛散防止粘着シートを得た。なお、形成された粘着剤層の厚さは25μmであった。
【0122】
〔実施例2,3〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして飛散防止粘着シートを製造した。
【0123】
〔実施例4〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0124】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)92.5質量部と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(三井武田ケミカル社製,製品名「タケネートD−110N」)0.2質量部と、活性エネルギー線硬化性化合物(C)としてのトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成社製,製品名「アロニックスM−315」)7.5質量部とを混合した後、光重合開始剤としてのベンゾフェノンおよび1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを1:1の質量比で混合したもの(チバ・スペシャリティケミカルズ社製,製品名「イルガキュア500」)0.75質量部、シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,製品名「KBM−403」)0.2質量部、および光拡散微粒子としての、無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール120」,平均粒径:2.0μm,屈折率:1.43)5質量部を添加し、十分に撹拌し、酢酸エチルで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0125】
3.飛散防止粘着シートの製造
上記工程で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面にナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して粘着性組成物の塗膜層を形成した。
【0126】
一方、実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にハードコート層を有する基材を作製した。得られた基材を、ハードコート層がない側の面が上記塗膜層と接触するように、上記塗膜層の露出面側に貼合した。その後、剥離シート越しに以下の条件で紫外線を照射して、上記塗膜層を粘着剤層にすることにより、飛散防止粘着シートを得た。なお、形成された粘着剤層の厚さは25μmであった。
<紫外線照射条件>
・フュージョン社製無電極ランプ Hバルブ使用
・照度600mW/cm,光量150mJ/cm
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF−36」を使用
【0127】
〔実施例5〜10,比較例1〜6〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、架橋剤(B)の種類および配合量、活性エネルギー線硬化性化合物(C)および光重合開始剤の配合量、ならびに光拡散微粒子の種類および配合量を表1に示すように変更する以外、実施例4と同様にして飛散防止粘着シートを製造した。
【0128】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0129】
〔試験例1〕(屈折率の算出)
実施例および比較例で使用した光拡散微粒子の屈折率は、以下の方法により測定した。スライドガラス上に微粒子を載せ、屈折率標準液を微粒子上に滴下し、カバーガラスを被せ、試料を作製した。当該試料を顕微鏡で観察し、微粒子の輪郭が最も見づらくなった屈折率標準液の屈折率を微粒子の屈折率とした。
【0130】
一方、実施例および比較例で使用した粘着成分の屈折率は、以下の方法により測定した。実施例および比較例のそれぞれの粘着性組成物において光拡散微粒子を添加せず、かつ、飛散防止粘着シートの作製に使用した基材に替えて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3801,厚さ:38μm)を使用し、その他は同様にして、剥離シート(SP−PET3801)/粘着剤層(厚さ:25μm)/剥離シート(SP−PET3811)の構成からなる粘着シートを作製した。
【0131】
上記粘着シートから2枚の剥離シートを剥がして得られた単層の粘着剤層を測定試料とした。この測定試料について、アッベ屈折計を使用して、JIS K0062−1992に準じて屈折率を測定し、これを粘着成分の屈折率とした。
【0132】
以上の測定結果から、粘着成分と光拡散微粒子との屈折率差を算出した。結果を表2に示す。
【0133】
〔試験例2〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例にて飛散防止粘着シートの作製に使用した基材に替えて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3801,厚さ:38μm)を使用し、剥離シート(SP−PET3801)/粘着剤層(厚さ:25μm)/剥離シート(SP−PET3811)の構成からなる粘着シートを作製した。
【0134】
得られた粘着シートの粘着剤層(厚さ:25μm)について、ヘイズメーター(日本電色工業社製,NDH2000)を用いて、JIS K7105に準じてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0135】
〔試験例3〕(目視によるぎらつき抑制の評価)
実施例および比較例で得られた飛散防止粘着シートの剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層をタブレット端末(アップル社製,iPad)の表示面に貼付した。そして、タブレット端末の表示面を緑一色の発光となるように調整し、飛散防止粘着シートによるぎらつき抑制効果を、目視にて以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
◎:ぎらつきが全く見えない。
○:◎の物と比較したときに、僅かにぎらつきが感じられる程度のぎらつきが存在する。
△:他の物と比較せずにそれ単独で見ても、ぎらつきの存在が若干認められる程度にぎらつきが存在する。
×:表示面全体がぎらついている。
【0136】
〔試験例4〕(精細度によるぎらつき抑制の評価)
ガラス板上に金属蒸着層を設け、レジスト処理およびエッチング処理を行うことにより、60ppi(ピクセル/インチ)の大きさの光透過部を有する格子状パターンを形成した。この格子状パターンが設けられたガラス板を、バックライト(キング社製,ブライトボックス5000)上に載置した。
【0137】
次いで、実施例および比較例で得られた飛散防止粘着シートの剥離シートを剥がし、上記格子状パターン上に、飛散防止粘着シートのハードコート層側が下になるように載置し、ぎらつきの発生箇所を確認した。そして、上記飛散防止粘着シートを、格子状パターン上にてガラス板と平行な方向に移動させ、予め確認しておいたぎらつきの発生箇所が飛散防止粘着シートと共に移動した場合は、当該ぎらつきの発生が飛散防止粘着シートに起因するものと判断した。
【0138】
また、60ppiの格子状パターンでは飛散防止粘着シートに起因したぎらつきの発生が確認されなかった場合には、70ppiの格子状パターン、それでも飛散防止粘着シートに起因したぎらつきの発生が確認されなかった場合には、さらに80ppiの格子状パターンというように、順次、10ppiずつ大きな格子状パターンを用いて、飛散防止粘着シートに起因したぎらつきの発生が確認されるまで同様の作業を行った。表2に、飛散防止粘着シートに起因したぎらつきの発生が確認されない、ppiの一番大きな格子状パターン(ppi)を示す。
【0139】
なお、飛散防止粘着シートに起因したぎらつきは、格子状パターンにおけるppiが大きくなる程、言い換えればディスプレイが高精細になるほど発生しやすくなる。したがって、表2に示すppiの値が大きいほど、ぎらつきの発生が効果的に抑制できていることを意味する。
【0140】
〔試験例5〕(パターン視認性の評価)
(1)パターニングされた透明導電膜を有するカバーガラスの作製
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の一方の面に、スパッタリングにより、透明導電膜として厚さ30nmのITO膜を形成した。次に、得られたITO膜上にレジスト液(東京応化工業社製,製品名「0FPR−800 LB」)を塗布してレジスト塗膜を形成し、当該塗膜を、幅1cmの光照射部と幅1cmの未照射部とを交互に繰り返すストライプ状のパターンとなるように露光した。
【0141】
その後、塩基性溶液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド溶液)により上記レジスト塗膜を洗浄し、上記未照射部のレジスト塗膜を洗い流した。続いて、塩酸および硝酸の混合水溶液に浸すことにより、レジスト塗膜が設けられていない部分のITO膜を除去した(エッチング処理)。
【0142】
最後に、強塩基性溶液で洗浄することにより、上記光照射部のレジスト塗膜を洗い流し、200℃で90分間加熱することにより、ITO膜を結晶化させた。これにより、幅1cmのITO膜部分と幅1cmのITO膜非存在部分とが交互に繰り返されるようにストライプ状にパターニングされた透明導電膜を有するカバーガラスを得た。
【0143】
(2)評価サンプルの作製
実施例および比較例で得られた飛散防止粘着シートの剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を上記カバーガラスの透明導電膜形成面側に貼付した。これにより、ガラス板/パターニングされた透明導電膜/粘着剤層/基材の構成(カバーガラスと飛散防止粘着シートとの積層体)からなる評価サンプルを得た。
【0144】
(3)パターン視認性の評価
得られた評価サンプルのカバーガラス面側から、パターニングされた透明導電膜を目視することにより、以下の基準で飛散防止粘着シートのパターン視認性(透明導電膜のパターンの目立ちにくさ)を評価した。結果を表2に示す。
◎:パターンが見えない。
○:パターンがうっすら見える。
×:パターンが見える。
【0145】
〔試験例6〕(抵抗値増加率の測定)
実施例および比較例で得られた飛散防止粘着シートについて、以下の試験方法により、ITO膜の電気抵抗値を測定し、抵抗値増加率を計算した。
【0146】
図4に、抵抗値測定サンプルSの断面図を示す。スパッタにより、一方の面81aにITO膜82が設けられたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム81を用意し、PETフィルム81のITO膜82が設けられていない面81bと、ガラス板83の一方の面83aとを、接合テープ84(リンテック社製,商品名「タックライナーTL−70」)を介して接合した。
【0147】
次に、ITO膜82のPETフィルム81と接している面とは反対側の面(以下「一方の面」という。)82aに、銀を含有する導電性樹脂材料(藤倉化成社製,商品名「FA−301CA」,ドータイトタッチパネル回路タイプ)を20mm×5mmの長方形の電極形状になるように塗布した後、温度80℃で20分間加熱し、乾燥させて、抵抗値の測定点となる電極85を2点形成した。その際、2点の電極85,85間の距離が20mmより僅かに大きくなるように、それらの位置を調整した。
【0148】
一方、実施例または比較例で得られた飛散防止粘着シート1を、20mm×250mmの大きさに裁断し、剥離シートを剥離した(この時点で飛散防止粘着シート1は、基材11と粘着剤層12とからなる積層体となっている)。そして、飛散防止粘着シート1の粘着剤層12が2点の電極85,85の際に沿うように(ギリギリ接しないように)、ITO膜82の一方の面82aに、飛散防止粘着シート1を貼付し、図4に示す抵抗値測定用サンプルSを作製した。
【0149】
続いて、図5に示すように、デジタルハイテスタ(日置電機社製,商品名「3802−50」)80を用いて、電極85,85間の初期抵抗値R(Ω)を測定した。さらに、抵抗値測定用サンプルSを、60℃、90%RHの環境下に500時間放置した後、湿熱促進後抵抗値R(Ω)を測定した。得られた初期抵抗値Rおよび湿熱促進後抵抗値Rに基づき、抵抗値測定用サンプルSの抵抗値増加率を、以下の式に従って算出した。結果を表2に示す。
抵抗値増加率(%)={(R−R)/R}×100
【0150】
〔試験例7〕(飛散防止効果の評価)
平滑な台の上に、2枚のステンレススチール板(厚さ2cm)を50mmの間隔にて互いに平行になるように配置した。そして、試験例5で得られた評価サンプル(カバーガラスと飛散防止粘着シートとの積層体)を、カバーガラス側が上となるように、かつ、評価サンプルの縦方向の両端部20mmにて評価サンプルの飛散防止粘着シートの基材と上記ステンレススチール板とが接するように配置した。
【0151】
次いで、130gのステンレス鋼球を高さ60cmから上記評価サンプルの中心部分に落下させた。これにより割れたガラスが、飛散防止粘着シートにより保持され、ガラス片が飛び散らなかった場合を○とし、ガラス片が少しでも飛び散った場合を×とした。結果を表2に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
表2から分かるように、粘着成分と光拡散微粒子との屈折率差が0.005〜0.2の範囲にあり、光拡散微粒子の平均粒径が0.8〜2.9μmの範囲にあり、粘着剤層のヘイズ値が55%以下である実施例1〜10の飛散防止粘着シートは、飛散防止効果に優れるとともに、透明導電膜のパターンを視認し難く、かつ、高精細な液晶モジュールへの使用においてぎらつき抑制効果に優れていた。また、構成モノマー成分としてカルボキシル基含有モノマーを含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を使用した実施例1〜9の飛散防止粘着シートは、被着体である透明導電膜の抵抗値を変化させ難いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明に係る飛散防止粘着シートおよび粘着剤は、高精細なタッチパネルのカバーガラスに貼付される飛散防止粘着シートおよびその粘着剤層として好適である。
【符号の説明】
【0156】
1…飛散防止粘着シート
11…基材
12…粘着剤層
13…剥離シート
2…カバーガラス
3…透明導電膜
4…粘着剤層
5…フィルムセンサー
51…基材フィルム
52…透明導電膜
6…粘着剤層
7…表示体モジュール
10A,10B…タッチパネル
80…デジタルハイテスタ
81…PETフィルム
81a,81b…面
82…ITO膜
82a…面
83…ガラス板
83a…面
84…接合テープ
85…電極
S…抵抗値測定用サンプル
図1
図2
図3
図4
図5