(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271008
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】ノンハロゲン樹脂組成物及びそれを用いて製造されたプリプレグと積層板
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20180122BHJP
C08L 61/34 20060101ALI20180122BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20180122BHJP
C08L 25/16 20060101ALI20180122BHJP
C08K 5/5399 20060101ALI20180122BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20180122BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20180122BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20180122BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20180122BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20180122BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20180122BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20180122BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20180122BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20180122BHJP
B32B 17/04 20060101ALI20180122BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20180122BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20180122BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20180122BHJP
B32B 27/02 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08L61/34
C08L71/12
C08L25/16
C08K5/5399
C08K5/521
C08K5/524
C08K5/3492
C08K5/3445
C08K3/22
C08K3/34
C08K3/28
C08K7/14
C08J5/24
B32B17/04 A
B32B27/18 B
B32B27/38
B32B27/20 Z
B32B27/02
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-528902(P2016-528902)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2017-502100(P2017-502100A)
(43)【公表日】2017年1月19日
(86)【国際出願番号】CN2014092841
(87)【国際公開番号】WO2016074290
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】201410631941.5
(32)【優先日】2014年11月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514309583
【氏名又は名称】廣東生益科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】李 輝
(72)【発明者】
【氏名】方 克洪
【審査官】
小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0316155(US,A1)
【文献】
特開平03−209375(JP,A)
【文献】
特開2011−074123(JP,A)
【文献】
特開2005−248164(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0075138(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
B29B11/16,15/08−15/14
C08G59/00− 59/72
C08J 5/04−5/10,5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分としてエポキシ樹脂50〜100重量部、ベンゾオキサジン20〜70重量部、ポリフェニレンエーテル5〜40重量部、イソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマー5〜40重量部、ノンハロゲン難燃剤10〜60重量部、硬化促進剤0.2〜5重量部、及びフィラー20〜100重量部を含み、
前記ベンゾオキサジンは、フッ素化ベンゾオキサジン樹脂、脂肪族ベンゾオキサジン樹脂、又はジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は、1000〜4000であり、
前記イソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマーの化学構造式は、
【化1】
であることを特徴とするノンハロゲン樹脂組成物。
(但し、xは1〜4、6、8であり、nは1〜12であり、x、nはすべて整数である。)
【請求項2】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三官能エポキシ樹脂、四官能エポキシ樹脂、イソシアネート改質エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、又はリン含有エポキシ樹脂から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ベンゾオキサジンは、フッ素化ベンゾオキサジン樹脂、又は脂肪族ベンゾオキサジン樹脂から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項4】
前記フッ素化ベンゾオキサジン樹脂は、
【化2】
から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であ
り、
前記脂肪族ベンゾオキサジン樹脂の化学構造式は、
【化3】
であ
り、但し、nは2又は3であり、
前記ジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂の化学構造式は、
【化4】
であ
る、ことを特徴とする請求項1
または2に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ノンハロゲン難燃剤は、ホスファゼン、ポリリン酸アンモニウム、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、ジメチル−メチルホスフェート、レゾルシノールジキシリルホスフェート、リン窒素系化合物、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、又はDOPO含有フェノール樹脂から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化促進剤は、イミダゾール系促進剤であり、
前記硬化促進剤は、2−メチルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、又は1−シアノエチル置換イミダゾールから選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項7】
前記フィラーは、無機フィラー又は有機フィラーであり、
前記無機フィラーは、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、雲母、ベーマイト、焼成タルク、タルカムパウダー、窒化ケイ素、又は焼成カオリンから選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記有機フィラーは、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリフェニレンサルファイド、又はポリエーテルスルホン粉末から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、
前記フィラーの粒径は、0.01〜50μmである、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のノンハロゲン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のノンハロゲン樹脂組成物を用いて製造されたプリプレグであって、基材と、浸漬乾燥後に基材に付着したノンハロゲン樹脂組成物とを含み、
前記基材は、ガラス繊維不織布、又はガラス繊維織布である、ことを特徴とするプリプレグ。
【請求項9】
請求項8に記載のプリプレグを含む、ことを特徴とする積層板。
【請求項10】
請求項9に記載の積層板を含む、ことを特徴とするプリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板の技術分野に関し、具体的に樹脂組成物に関し、特にノンハロゲン樹脂組成物及びそれを用いて製造されたプリプレグ、積層板及びプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハロゲン含有難燃剤(特に臭素系難燃剤)は、高分子難燃材料として幅広く用いられており、且つ比較的良好な難燃作用を果たすものである。しかしながら、火災現場に対して深く研究した後、ハロゲン含有難燃剤は難燃効果が高く、且つ添加量が少ないが、ハロゲン系難燃剤を用いた高分子材料が燃焼過程で大量の有毒な腐蝕性気体や煙を生じて、人を窒息死させやすく、その危害性が火災自体よりも深刻であるという結論を出した。従って、欧州連合の「廃電気電子機器についての指令」と「電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限についての指令」が2006年7月1日に正式実施されているにつれ、ノンハロゲン難燃性プリント回路基板の開発は、産業開発作業の重点となり、各銅張積層板の生産者は、次々とノンハロゲン難燃性銅張積層板を開発している。
【0003】
従来、工業上、一般的にリン含有樹脂を使用することで難燃効果を実現するが、リンを多く導入すると、基材の吸水性が高くなり、耐薬品性が悪くなる。近年、ベンゾオキサジンをマトリックス樹脂としてノンハロゲン基材に用いる開発は、ますます注目されている。ベンゾオキサジンは、酸素原子と窒素原子からなるベンゾ六員複素環式化合物であり、開環重合という特徴を有しており、重合の際に小分子を放出せず、重合後にフェノール樹脂と類似する網状構造を形成し、製品は硬化収縮性が低く、気孔率が低く、優れた力学的性質、電気的特性及び難燃性能等を有している。
【0004】
一方、電子工業が急速に発展するにつれ、電子製品が軽薄短小化、高密度化、安全化、及び高機能化の方向に発展しており、電子素子に対しより高い信号伝搬速度と伝送効率が求められており、こうして、担体であるプリント回路基板に対しより高い性能が求められている。電子製品の情報処理の高速化、多機能化に伴い、使用周波数が増加しており、3GHz以上の周波数が徐々に主流となる傾向にある。積層板材料の耐熱性に対してより高い要求を保持するほかに、その要求される誘電率と誘電正接がますます低くなっている。
【0005】
従来の伝統的なFR−4は、電子製品に対する高周波化及び高速化発展による要求を満たすことが困難であり、また、基板材料は、従来のように機械的支持作用を果たすものでなく、電子部品と共にPCBとなるものであり、端末メーカーのデザイナーにとって製品の性能を向上させるための重要な手段となるものである。高誘電率(Dk)は信号伝搬速度を遅くさせて、高誘電正接(Df)は信号の一部を熱エネルギーに変換させて基板材料で損失するため、低誘電率、低誘電正接を有する高周波伝送として、特にノンハロゲン高周波板材の開発は、銅張積層板業界の重点となっている。
【0006】
上記問題を解決するために、CN101684191Bにおいては、ベンゾオキサジン、スチレン−無水マレイン酸、リン含有硬化剤の組み合わせにより、エポキシ樹脂を硬化させて誘電率と誘電正接が低い硬化物を得ることが提案されているが、スチレン−無水マレイン酸だけで材料の誘電特性を低下させる際に、他の問題の発生が避けられず、特に粘着性への影響が顕著であり、なぜなら、スチレン−無水マレイン酸(SMA)は、分子構造における非極性スチレン構造単位が変性マトリックス樹脂の極性を低下させ、樹脂と銅箔の間の相互作用力を弱めると同時に、SMAにおける大量のベンゼン環構造によって樹脂架橋ネットワークの脆性を向上させるため、動的条件における粘着特性にも悪影響を及
ぼしたため基材同士及び基材と銅箔との接着強度を低下させるからである。
【0007】
CN100523081Cにおいては、ベンゾオキサジン、スチレン−無水マレイン酸及びその他の硬化剤の組み合わせにより、リン含有エポキシ組成物及びノンハロゲン・ノンリンエポキシ組成物を硬化させて誘電率と誘電正接が低い硬化物を得ることが提案されているが、リン含有エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする場合、優れた難燃性を実現するが、リンを多く導入した結果、基材の吸水性に大きな影響を及ぼすことに違いなく、こうして板材における他の多くの性能に悪影響を及ぼすことに違いない。
【0008】
CN103131131Aにおいては、ベンゾオキサジン、スチレン−無水マレイン酸及びアミン系硬化剤の組み合わせにより、エポキシ樹脂を硬化させて、誘電率と誘電正接が低い硬化物を得ることが提案されているが、普通のベンゾオキサジンを利用する際、エポキシ樹脂を硬化させて難燃性を付与するという目的に達したが、普通のベンゾオキサジンの誘電率が高いため、高周波高速伝送に対応できないことが多く、且つアミン系硬化剤を導入することにより、粘着性を向上させるが、吸湿性が高く、それを用いてエポキシ樹脂を硬化させる際に耐熱性が不足するという欠陥があるため、高多層回路基板における応用に悪影響を及ぼすことに違いない。
【0009】
そのため、低誘電率、低誘電正接を有するとともに、その耐薬品性に優れるプリプレグ及び積層板を生産することは、現在解決すべき問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、樹脂組成物、特にノンハロゲン樹脂組成物及びそれを用いて製造されたプリプレグ、積層板及びプリント回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の目的に達するために、本発明は、以下の技術方案を採用する。
【0012】
第1方面として、本発明は、成分としてエポキシ樹脂50〜100重量部、ベンゾオキサジン20〜70重量部、ポリフェニレンエーテル5〜40重量部、イソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマー5〜40重量部、ノンハロゲン難燃剤10〜60重量部、硬化促進剤0.2〜5重量部、及びフィラー20〜100重量部を含むノンハロゲン樹脂組成物を提供するものである。
【0013】
本発明のイソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマーの化学構造式は、以下のとおりである。
【0014】
【化1】
但し、xは1〜4、6、8であり、nは1〜12であり、x、nはすべて整数である。
【0015】
本発明のイソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマーの含有量は5〜40部であり、例えば、5部、10部、15部、17部、20部、22部、25部、30部、35部、40部であってもよく、好ましくは15〜22部であり、さらに好ましくは15部である。
【0016】
本発明は、イソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマーとベンゾオキサジンの組み合わせによりエポキシ組成物を硬化させることで、基材に低い誘電率と誘電正接を持たせるとともに、イソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマーにおいてメチル基の存在によって立体障害を増大させ、分子鎖内部の回転障害とポリマーの分子鎖剛性を増大させたので、基材の耐熱性を向上させ、またメチル基に疎水性を有するので、更に基材の耐湿性を顕著に向上させることができる。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三官能エポキシ樹脂、四官能エポキシ樹脂、イソシアネート改質エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、又はリン含有エポキシ樹脂から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂の含有量は、50〜100部であり、例えば、50部、55部、60部、65部、70部、75部、80部、85部、90部、95部、100部であってもよく、好ましくは60部である。
【0019】
本発明のベンゾオキサジンは、フッ素化ベンゾオキサジン樹脂、脂肪族ベンゾオキサジン樹脂、又はジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0020】
本発明のベンゾオキサジンは、フッ素化ベンゾオキサジン樹脂又は脂肪族ベンゾオキサジン樹脂から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であることが好ましい。
【0021】
本発明のフッ素化ベンゾオキサジン樹脂は、下記化学構造式から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0022】
【化2】
【0023】
本発明の脂肪族ベンゾオキサジン樹脂の化学構造式は、以下のとおりである。
【0024】
【化3】
(但し、nは2又は3である。)
【0025】
本発明のジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン樹脂の化学構造式は、以下のとおりである。
【0026】
【化4】
【0027】
本発明のベンゾオキサジンの含有量は、20〜70部であり、例えば、20部、25部、30部、35部、40部、45部、50部、55部、60部、65部、70部であってもよく、好ましくは40〜50部であり、さらに好ましくは40部である。
【0028】
本発明のポリフェニレンエーテルは、低分子量のポリフェニレンエーテルであり、数平
均分子量が1000〜4000である。
【0029】
本発明のポリフェニレンエーテルの含有量は、5〜40部であり、例えば5部、10部、15部、20部、25部、30部、35部、40部であってもよく、好ましくは20部である。
【0030】
本発明のノンハロゲン難燃剤は、ホスファゼン、ポリリン酸アンモニウム、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、ジメチル−メチルホスフェート、レゾルシノールジキシリルホスフェート、リン窒素系化合物、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、又はDOPO含有フェノール樹脂から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0031】
本発明のノンハロゲン難燃剤の含有量は10〜60部であり、例えば、10部、15部、20部、22部、25部、30部、40部、50部、60部であってもよく、好ましくは20〜22部であり、さらに好ましくは20部である。
【0032】
本発明は、難燃作用を有する低誘電ベンゾオキサジンを主な硬化剤として、少量のリン含有難燃剤を更に添加することで、リンと窒素との相乗難燃効果を実現し、リン含有量を大幅に減少させると同時に、基材の難燃性を向上させたとともに、基材に比較的良好な耐湿性を付与するものである。
【0033】
本発明の硬化促進剤は、イミダゾール系促進剤であってもよく、前記イミダゾール系促進剤は、2−メチルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、又は1−シアノエチル置換イミダゾールから選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0034】
本発明の硬化促進剤の含有量は0.2〜5部であり、例えば、0.2部、0.5部、1部、2部、3部、4部、5部であってもよい。
【0035】
本発明のフィラーは、無機又は有機フィラーであってもよく、前記フィラーが無機フィラーである場合、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、雲母、ベーマイト、焼成タルク、タルカムパウダー、窒化ケイ素、又は焼成カオリンから選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物であり、前記フィラーが有機フィラーである場合に、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリフェニレンサルファイド、又はポリエーテルスルホン粉末から選ばれるいずれか1種又は少なくとも2種の混合物である。
【0036】
本発明のシリカは、結晶シリカ、溶融シリカ又は球状シリカから選ばれるものである。
【0037】
本発明のフィラーの粒径は、0.01〜50μmであり、例えば、0.01μm、0.05μm、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、40μm、50μmであってもよく、好ましくは1〜15μmである。
【0038】
本発明のフィラーの含有量は20〜100部であり、例えば20部、30部、40部、50部、60部、70部、80部、90部、100部であってもよく、好ましくは50部である。
【0039】
前記フィラーを本発明の樹脂組成物に均一に分散させるために、分散剤を更に添加してもよく、用いられる分散剤は、アミノシランカップリング剤又はエポキシシランカップリング剤であり、無機及びガラス織布同士の結合性を改善するので、更に均一に分散させるという目的に達し、且つこのカップリング剤は、重金属を含まないため、人体に悪影響を及ぼせず、使用量がフィラーに対する0.5〜2%重量部であり、使用量が高過ぎると、反応を加速させ、貯蔵時間に影響し、使用量が低過ぎると、結合安定性を改善することは、顕著な効果を奏しない。
【0040】
第2方面として、本発明は、本発明の第1方面に記載のノンハロゲン樹脂組成物を用いて製造された、基材と、浸漬乾燥後に基材に付着したノンハロゲン樹脂組成物とを含むプリプレグを更に提供するものである。
【0041】
本発明の基材は、ガラス繊維不織布、又はガラス繊維織布である。
【0042】
第3方面として、本発明は、本発明の第2方面に記載のプリプレグを含む積層板を更に提供するものである。
【0043】
第4方面として、本発明は、本発明の第3方面に記載の積層板を含むプリント回路基板を更に提供するものである。
【発明の効果】
【0044】
従来技術に比べて、本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0045】
本発明のノンハロゲン樹脂組成物を用いて製造された積層板は、その誘電率を3.7以下に制御させることができ、誘電正接の最大値がせいぜい0.0060であり、難燃性試験UL−94におけるV−0標準に達することができ、PCT吸水率が0.34〜0.36であるので、該積層板は、ノンハロゲン難燃を確保すると同時に、低誘電率、低誘電正接、優れた耐熱性、粘着性及び耐湿性等の総合的性質を有しており、ノンハロゲン高多層回路基板に適用するものである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、具体的な実施形態によって、本発明の技術方案を更に説明する。
実施例は本発明を理解するためのものに過ぎず、本発明への具体的な制限と見なされるべきではないことを、当業者は了承すべきである。
【0047】
製造例、
イソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマーの合成
窒素ガスを保護雰囲気として、撹拌する条件で、単量体である無水マレイン酸と開始剤とを媒体に加えて溶解させて60〜80℃に加熱した際、単量体であるイソプロペニルベンゼンと分子量調整剤とを滴下し、滴下終了後に撹拌し続けて1〜8h反応させて、低分子量のイソプロペニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー粒子の分散系を得た。分散系を遠心分離し乾燥させて、低分子量のイソプロペニルベンゼン/無水マレイン酸交互共重合体を得た。なお、前記開始剤は、有機過酸化物又はアゾ化合物であり、前記媒体は、有機酸アルキルエステルとアルカンとの混合溶液であり、前記分子量調整剤は、ビニルアセテートであり、無水マレイン酸とイソプロペニルベンゼンの使用量のモル比は1:0.90〜0.96であり、反応系における無水マレイン酸とイソプロペニルベンゼン二つの単量体の質量濃度の合計は2.0〜7.5%であり、開始剤の質量濃度は0.05〜0.35%であり、分子量調整剤の質量濃度は0.10〜0.45%であり、有機酸アルキルエステルとアルカンとの混合溶液における有機酸アルキルエステルの体積分率は20〜80%である。
【0048】
下記構造式を有するイソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマーを得た。
【0049】
【化5】
(但し、xは1〜4、6、8であり、nは1〜12であり、x、nはすべて整数である。)
【0050】
実施例、銅張積層板の製造方法
エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン、ポリフェニレンエーテル、イソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマー、ノンハロゲン難燃剤、硬化促進剤、フィラー、及び溶媒等を容器に入れて、均一に混合させるまで撹拌し、接着剤を製造し、溶媒で溶液における固形分の含有量を60%〜70%に調整して接着液を製造し、即ち本発明のノンハロゲン樹脂組成物接着液を得て、2116電子グレードのガラス繊維布を接着液に浸漬し、オーブンで半硬化シートに焼成し、6枚の2116半硬化シートを取り出し、両面に35μm厚みの電解銅箔を被覆し、ホットプレス機で真空積層を行い、190℃で120分硬化させ、銅張積層板を製造する。
【0051】
実施例1〜8及び比較例1〜5に用いられる各成分及びその含有量(重量部)は表1に示し、各成分のコード及びその対応する成分名称は以下のように示す。
A エポキシ樹脂
A−1 ビフェニル型エポキシ樹脂:NC−3000−H(日本化薬製 商品名)
A−2 ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:HP−7200H(大日本インキ製 商品名)
B ベンゾオキサジン
B−1 脂肪族ベンゾオキサジン:KAH−F5404(韓国Kolon製 商品名)
B−2 フッ素化ベンゾオキサジン:KAH−F5301(韓国Kolon製 商品名)
B−3 ビスフェノールF型ベンゾオキサジン:LZ8280(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ製)
B−4 ジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジン:LZ8260(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ製)
C−1 低分子量のポリフェニレンエーテル:MX90(SABIC Innovative Plastics 商品名)、数平均分子量1000〜4000
C−2 高分子量のポリフェニレンエーテル:Sabic640−111(SABIC
Innovative Plastics製 商品名)、数平均分子量15000〜20000
D−1 製造例におけるイソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸オリゴマー
D−2 スチレン−無水マレイン酸オリゴマー:SMA−EF40(アメリカSartomer社製 商品名)
E ノンハロゲン難燃剤:リン含有フェノール樹脂:XZ92741(DOW化学製 商品名)
F 硬化促進剤:2E4MZ(四国化成製 商品名)
G フィラー:溶融シリカ
【0052】
実施例1〜8と比較例1〜5に用いられる銅張積層板の製造方法は実施例と同様である。
【0053】
以下の方法を用いて、実施例1〜8と比較例1〜5で製造された銅張積層板のガラス転移温度(Tg)、剥離強度(PS)、誘電率(Dk)、誘電正接(Df)、難燃性、PCT2時間後のディップ半田付耐性、及び吸水率を測定し、測定結果は表2に示す。
【0054】
各性能パラメータの測定方法は、以下のとおりである。
【0055】
A ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量法(DSC)に基づき、IPC−TM−650 2.4.25による指定されるDSC方法に従って測定する。
【0056】
B 剥離強度(PS)
IPC−TM−650 2.4.8方法における「熱応力後」の実験条件に基づき、金属キャップの剥離強度を測定する。
【0057】
C 誘電率(Dk)と誘電正接(Df)
ストリップライン共振法を用いて、IPC−TM−650 2.5.5.5に基づいて1GHzにおける誘電率(Dk)と誘電正接(Df)を測定する。
【0058】
D 難燃性
UL−94標準に基づいて測定する。
【0059】
E PCT2時間後のディップ半田付耐性及び吸水率
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬し、表面銅箔を除去して基板を評価し、基板を圧力鍋の中に放置し、121℃、2atm下で2h処理し、吸水率を測定した後、温度288℃の錫ストーブの中に浸漬し、基材に発泡又はクラックが発生する際に対応する時間を記録する。基材を錫ストーブの中に入れてから5分後にも発泡又はクラックが発生しない場合、評価を終了する。
【0062】
表1と表2から見て、以下のように見出した。
【0063】
(1)実施例2−3と比較例1−2との対比から分かるように、実施例2〜3の積層板は、比較例1−2の積層板よりも、誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が低く、即ち、イソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマーが用いられた実施例2−3は、スチレン−無水マレイン酸オリゴマーが用いられた比較例1よりも低い誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が得られるものである。
【0064】
(2)実施例3、5と比較例3との対比から分かるように、実施例3、5の積層板は、比較例3の積層板よりも、ガラス転移温度が高く、誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が低く、難燃性がV−0級に達することができ、即ち、脂肪族ベンゾオキサジン及びフッ素化ベンゾオキサジンがそれぞれ用いられた実施例3、5は、ビスフェノールF型ベンゾオキサジンが用いられた比較例3よりも高いガラス転移温度、低い誘電率、誘電正接及びPCT吸水率、高い難燃性が得られるものである。実施例7、8から分かるように、ジシクロペンタジエン型ベンゾオキサジンと脂肪族ベンゾオキサジンを用いる場合、いずれも高いガラス転移温度、低い誘電率が実現でき、なお、脂肪族ベンゾオキサジンを用いる場合は、より高いガラス転移温度及びより低い誘電率が得られる。
【0065】
(3)実施例5と比較例4との対比から分かるように、実施例5の積層板は比較例4の積層板よりも誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が低く、即ち、低分子量のポリフェニレンエーテル樹脂が用いられた実施例5は、上記成分が用いられていない比較例4よりも低い誘電率、誘電正接及びPCT吸水率が得られるものである。実施例5と比較例5との対比から分かるように、両者の総合的性質が同等であるが、高分子量のポリフェニレンエーテルを用いるため、加工性が悪くなってしまう。
【0066】
(4)実施例1〜4を比較して分かるように、実施例1のガラス転移温度が最も低く、誘電率、誘電正接が最も高く、実施例4のガラス転移温度が最も高く、誘電率、誘電正接が最も低く、即ち、イソプロペニルベンゼン−無水マレイン酸
オリゴマーの含有量が増加することに伴い、ガラス転移温度を向上させ、誘電率、誘電正接を低下させることができる。
【0067】
実施例1〜8によれば、本発明のノンハロゲン樹脂組成物を用いて製造された積層板は、誘電率を3.7以下に制御させることができ、誘電正接の最大値がせいぜい0.0060であり、難燃性試験UL−94におけるV−0標準に達することができ、PCT吸水率が0.34〜0.36であるので、該積層板は、ノンハロゲン難燃を確保すると同時に、低誘電率、低誘電正接、優れた耐熱性、粘着性及び耐湿性等の総合的性質を有しており、ノンハロゲン高多層回路基板に適用するものであることがわかった。
【0068】
以上の実施例は、本発明の最適な実例に過ぎず、本発明の実施範囲を制限するものではないので、本発明の保護範囲に記載の原理に従う同等変化又は修飾は、すべて本発明の保護範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。