特許第6271012号(P6271012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271012
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】液冷式圧縮機及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F04C 28/06 20060101AFI20180122BHJP
   F04C 29/02 20060101ALI20180122BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20180122BHJP
   F04B 39/06 20060101ALI20180122BHJP
   F04C 18/16 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   F04C28/06 E
   F04C29/02 311L
   F04C29/04 H
   F04B39/06 P
   F04C18/16 F
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-531323(P2016-531323)
(86)(22)【出願日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2015068406
(87)【国際公開番号】WO2016002635
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2016年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-136877(P2014-136877)
(32)【優先日】2014年7月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】太田 広志
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−221492(JP,A)
【文献】 特開平08−200234(JP,A)
【文献】 特開2009−243365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 28/06
F04B 39/06
F04C 18/16
F04C 29/02
F04C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却のための液体を循環させるための冷却経路を備え、圧縮空気と液体を分離するための分離器と圧縮機本体との圧力差により圧縮機本体内に前記液体を循環させる液冷式圧縮機であって、
前記圧縮機本体の空気流入調整を行う吸入弁を有し、
前記吸入弁からの空気流入量を変化させることで、前記圧力差が、無負荷運転時に最小循環給圧力以上の値と最小循環給液圧力よりも低い値の二段階の減圧運転圧力となるように減圧運転を行うことを特徴とする液冷式圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の液冷式圧縮機において、
前記圧縮機本体の下流側に位置し無負荷運転時に圧力が保持される箇所と前記吸入弁を連通する第1の経路と、
前記第1の経路に開閉装置を備え、
前記開閉装置の作動により、前記二段階の減圧運転圧力で減圧運転を行うことを特徴とする液冷式圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載の液冷式圧縮機において、
前記吸入弁の上流側と下流側を連通する第2の経路と、
前記第2の経路に開閉装置を備え、
前記開閉装置の作動により、前記二段階の減圧運転圧力で減圧運転を行うことを特徴とする液冷式圧縮機。
【請求項4】
請求項2または3に記載の液冷式圧縮機において、
温度検出装置を備え、
前記温度検出装置で検出される値に応じて、前記開閉装置を作動させることを特徴とする液冷式圧縮機。
【請求項5】
請求項2または3に記載の液冷式圧縮機において、
無負荷運転連続時間を算出する時間積算装置を備え、該算出される無負荷運転連続時間に応じて、前記開閉装置を作動させることを特徴とする液冷式圧縮機。
【請求項6】
請求項4に記載の液冷式圧縮機において、
前記温度検出装置で検出される値が第1の値を超えた場合、前記開閉装置を開状態にして、前記吸入弁を微開状態とし、最小循環給圧力以上の減圧運転圧力で減圧運転を行い、
前記温度検出装置で検出される値が第1の値よりも小さい第2の値を下回った場合、前記開閉装置を閉状態にして、前記吸入弁を閉状態とし、最小循環給圧力よりも低い減圧運転圧力で減圧運転を行うことを特徴とする液冷式圧縮機。
【請求項7】
請求項5に記載の液冷式圧縮機において、
無負荷運転時に、前記無負荷運転連続時間が第1の値を超えた場合、前記開閉装置を開状態にして、前記吸入弁を微開状態とし、最小循環給圧力以上の減圧運転圧力で減圧運転を行い、
その後、前記無負荷運転連続時間が第2の値を超えた場合、前記開閉装置を閉状態にして、前記吸入弁を閉状態とし、最小循環給圧力よりも低い減圧運転圧力で減圧運転を行うことを特徴とする液冷式圧縮機。
【請求項8】
冷却のための液体を循環させるための冷却経路を備え、圧縮空気と液体を分離するための分離器と圧縮機本体との圧力差により圧縮機本体内に前記液体を循環させる液冷式圧縮機であって、
最小循環給圧力よりも低い減圧運転圧力と圧縮機本体の上限温度と下限温度を設定できる設定画面を設け、
無負荷運転時において、圧縮機本体の温度が前記上限温度を超えた場合に前記圧力差が最小循環給圧力以上の圧力となるように運転を行い、圧縮機本体の温度が前記下限温度を下回った場合に前記圧力差が前記減圧運転圧力となるように運転を行うことを特徴とする液冷式圧縮機。
【請求項9】
冷却のための液体を循環させるための冷却経路を備え、圧縮空気と液体を分離するための分離器と圧縮機本体との圧力差により圧縮機本体内に前記液体を循環させる液冷式圧縮機の運転方法であって、
前記圧力差が、無負荷運転時に最小循環給圧力より低い減圧運転圧力となる第1の減圧運転と最小循環給圧力以上の減圧運転圧力となる第2の減圧運転とを行うことを特徴とする液冷式圧縮機の運転方法。
【請求項10】
請求項9に記載の液冷式圧縮機の運転方法において、
圧縮機本体の温度に応じて、前記第1の減圧運転と第2の減圧運転を切換えることを特徴とする液冷式圧縮機の運転方法。
【請求項11】
請求項9に記載の液冷式圧縮機の運転方法において、
無負荷運転連続時間に応じて、前記第1の減圧運転と第2の減圧運転を切換えることを特徴とする液冷式圧縮機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力差を利用して圧縮機本体や軸受に液体を注入する液冷式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な液冷式圧縮機では、圧縮工程において、潤滑とシール、冷却を目的として液体を注入する。空気圧縮機が供給する圧縮空気中には液滴を含んではならないため、液冷式圧縮機の内部には圧縮空気と液体を分離するための分離器を有する。分離器で分離された液体は分離器下部に貯留し、液体は分離器と圧縮機本体との圧力差を利用して、熱交換器やフィルタを通過して圧縮機本体や軸受へ注入され、雌雄ロータおよび軸受の潤滑や冷却を行う。
【0003】
そのため、無負荷時に減圧運転を行う容量制御状態では、液体が圧縮機本体へ回収できる圧力差(以下、最小循環給油圧力P2)を保持し、軸受等へ液体を注入して潤滑・冷却を行うことにより信頼性を確保するために、吸入弁を微開にして流体を吸込み、所定の圧力(以下、減圧運転圧力P1、1>P2)まで流体を圧縮する必要があった。そのため余分な圧縮動力を必要とし、無負荷運転時のエネルギー効率が悪化する問題点があった。
【0004】
上記問題を解決するために、無負荷時に圧縮機を停止する技術も知られているが、大出力の電動機では発停頻度回数を多くすると電動機内部の熱が放熱せず、コイル焼損等が発生する可能性が高くなり、圧縮機の信頼性が低下する問題点があった。
【0005】
本技術分野の背景技術として、特許第3262011号公報(特許文献1)がある。特許文献1では、回転数制御装置を備えたスクリュー圧縮機において、容量制御運転時に圧縮機を自動発停し、無負荷運転時の動力を削減する技術を前提として、自動停止する際に、仕様圧力よりも高い圧力まで圧縮した後に停止することにより、停止時間の延長を図り停止回数の増加を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3262011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように必要空気量に応じて電動機の発停を繰り返すことにより、無負荷動力を削減することは有効な手段であるが、急激な負荷変動に対応するため、圧縮機の下流側に設置する空気槽の容量を大きくしなければならない可能性がある。また、大出力の電動機では発停頻度回数が多くなり電動機の信頼性低下につながるという点に関して考慮されていなかった。
【0008】
本発明の目的は、大出力の電動機での無負荷運転時の圧縮機および電動機の信頼性を確保しつつ、余分な動力を削減しエネルギー効率の向上を両立させた圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、冷却のための液体を循環させるための冷却経路を備え、圧力差により圧縮機本体内に液体を循環させる液冷式圧縮機であって、圧縮機本体の空気流入調整を行う吸入弁を有し、吸入弁からの空気流入量を変化させることで、無負荷運転時に最小循環給油圧力以上の値と低い値の二段階の減圧運転圧力で減圧運転を行う構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大出力の電動機での無負荷運転時の圧縮機および電動機の信頼性を確保しつつ、余分な動力を削減し無負荷運転時のエネルギー効率の向上を両立させた圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1における液冷式圧縮機の系統図である。
図2】一般的な液冷式圧縮機の系統図である。
図3】一般的な液冷式圧縮機における無負荷運転時のPV線図である。
図4】実施例1における液冷式圧縮機の無負荷運転時のPV線図である。
図5】実施例1における液冷式圧縮機の無負荷時における圧縮動力の低減効果を示す図である。
図6】実施例2における液冷式圧縮機の系統図である。
図7】実施例3における液冷式圧縮機の系統図である。
図8】実施例4における液冷式圧縮機の操作パネルを示す図である。
図9】実施例4における液冷式圧縮機の設定値の設定手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【0013】
まず一般的な液冷式圧縮機について説明する。図2は一般的な液冷式圧縮機の系統図である。図2において、吸込空気は圧縮機から発生する騒音を低減する防音カバ(図示しない)に設けられた開口部から吸入フィルタ1、吸入弁2を通過し、圧縮機制御基板を搭載した電気箱9より電力を供給されて回転する電動機4によって駆動される圧縮機本体3によって所定の圧力まで圧縮される。その後、油分離器5や調圧逆止弁6、アフタークーラ7、ドライヤ(図示しない)を通過したのち圧縮機の外部へ接続され、各用途に使用される。一方、循環油は、圧縮機本体3で空気と共に圧縮され、油分離器5で圧縮空気と分離されたのちにオイルクーラ8で冷却され、オイルフィルタ(図示しない)等を通過したのちに圧縮機本体内部に収納された雌雄ロータ、軸受等に供給される経路を循環する。
【0014】
無負荷運転時には、調圧逆止弁6の逆止機能により調圧逆止弁より下流(2次側)の圧力が保持されるため、油分離器5に保持された圧力を大気解放することにより圧縮動力の削減を図っている。
【0015】
図3は一般的な液冷式圧縮機における無負荷運転時のPV(Pressure Volume)線図である。無負荷運転時には、図3に示すように、圧縮機本体内部に収納された雌雄ロータおよび軸受の潤滑・冷却を行うために、オイルクーラ8や経路圧力損失を考慮した最小循環給油圧力Pより高くなるよう、吸入弁2を微開にして、仕様運転圧力よりも減圧して運転する減圧運転圧力P1まで圧縮している。そのため、無負荷運転時に余分な圧縮動力を発生させている。
【実施例1】
【0016】
図1は本実施例の液冷式圧縮機の系統図である。なお、図2と共通する部分については説明を省略する。図1において、本実施例の液冷式圧縮機は、調圧逆止弁6の下流側(2次側)、すなわち、無負荷運転時に圧力が保持される箇所、と吸入弁2を接続する経路に開閉装置10を備え、圧縮機本体3に軸受温度を検出する温度検出装置11と、温度検出装置11からの出力により開閉装置10の開閉を制御する電気箱9に収納された温度制御装置12を備える構成とする。
【0017】
本実施例の液冷式圧縮機の動作について、以下説明する。図4は、本実施例の液冷式圧縮機における無負荷運転時のPV線図である。図4に示すように、無負荷運転時において、最小循環給油圧力P2(例えば、0.25MPa)よりも低い減圧運転圧力P1(例えば、0.15MPa)で運転を行う。P1<P2では潤滑油が循環しないため、無負荷運転状態が長時間連続すると圧縮機本体内部の軸受温度が上昇し始める。圧縮機3に取り付けられた温度検出装置11で軸受温度を監視しつつ、圧縮機制御基板内に組み込まれた温度制御装置12により、検出される温度データとあらかじめ決定された温度メモリ(例えば、上限温度TP=100℃、下限温度TP=60℃)とを比較する。温度検出データが100℃を超えた場合、圧縮機制御基板より開閉装置10へ開指令を出し、調圧逆止弁6より下流側の圧力を吸入弁2へ供給する。
【0018】
吸入弁2は、圧力が高くなると開く弁であって、その結果、吸入弁2が微開となり、圧縮機本体3が微量の空気を吸い込むことにより、減圧運転圧力P1が最小循環給油圧力P2以上(P1≧P2)となる。その結果、潤滑油が循環し始め、軸受および雌雄ロータの潤滑・冷却を行い、温度検出データが60℃を下回った場合、圧縮機制御基板より開閉装置10へ閉指令を出し、吸入弁2を微開から閉状態へ移行させ、図4に示すように、再び減圧運転圧力P1=0.15MPaで運転を行う。
【0019】
図5は、本実施例による無負荷時における圧縮動力の低減効果を示す図である。図5において、斜線部が仕事量を削減した部分であり、その圧縮動力低減分は約30%となる。
【0020】
以上のように、本実施例は、冷却のための液体を循環させるための冷却経路を備え、圧力差により圧縮機本体内に前記液体を循環させる液冷式圧縮機であって、
圧縮機本体の空気流入調整を行う吸入弁を有し、吸入弁からの空気流入量を変化させることで、無負荷運転時に最小循環給油圧力以上の値と低い値の二段階の減圧運転圧力で減圧運転を行うようにした。
【0021】
また、言い換えれば、冷却のための液体を循環させるための冷却経路を備え、圧力差により圧縮機本体内に前記液体を循環させる液冷式圧縮機の運転方法であって、無負荷運転時に最小循環給油圧力より低い減圧運転圧力での第1の減圧運転と最小循環給油圧力以上の減圧運転圧力での第2の減圧運転とを行うようにした。
【0022】
本実施例によれば、通常の無負荷運転時は最小循環給油圧力Pよりも低い減圧運転圧力Pで運転をしながら、一時的に軸受等の保護のため最小循環給油圧力Pまで圧力を上昇させる。強制的に液体を循環させることにより、大出力の電動機での無負荷運転時の圧縮機および電動機の信頼性の確保しつつ、余分な動力を削減し無負荷運転時のエネルギー効率の向上を両立させた圧縮機を提供することができる。
【0023】
すなわち、無負荷運転時に減圧運転圧力P1を最小循環給油圧力P2以上の値と低い値の二段階で減圧運転を行うことにより、電動機を停止することなく圧縮機および電動機の信頼性を確保しつつ、余分な動力を削減しエネルギー効率の向上を両立させた圧縮機を提供することができる。
【0024】
なお、上記実施例では、被圧縮流体を空気としているが、他のガスであっても構わない。また、圧縮機本体へ注入する液体を油としているが、水やその他の液体であっても構わない。また、電動機としているが、原動機であっても構わない。
また、上記実施例における圧縮機本体は、スクリュー圧縮機や、スクロール圧縮機、レシプロ圧縮機などに適用可能で、圧縮方式にこだわらない。
【0025】
また、上記実施例では、温度検出装置11で検出する温度を軸受温度としているが、圧縮機ケース温度、雌雄ロータ温度であっても構わない。また、温度検出装置ではなく、振動・音を検出する装置であっても構わない。
【0026】
また、上記実施例では、温度制御装置12にて検出温度による判定を行っているが、圧縮機へ吸入される大気温度との温度差、すなわち温度上昇値で判定を行っても構わない。この場合、大気温度を測定する温度検出装置が必要となるが、温度上昇値で判断することにより、季節や設置地域といった周囲環境に因らず判定することができる。
【実施例2】
【0027】
図6は本実施例の液冷式圧縮機の系統図である。なお実施例1と共通する部分については説明を省略する。本実施例が実施例1と異なる点は、吸入弁2の上流側と下流側(1次側と2次側)を接続する経路に開閉装置10を備える構造とした点である。
【0028】
本実施例の液冷式圧縮機の動作について、以下説明する。図6において、無負荷運転時においては、最小循環給油圧力P2よりも低い減圧運転圧力P1(P1<P2)で運転を行う。無負荷運転状態が長時間連続し、温度検出装置11で軸受温度の上昇を検出すると、温度制御装置12から開閉装置10へ開指令を出し、吸入弁2の上流側と下流側を連通させる。すると、吸入弁2の上流側である吸入フィルタ1の2次側から圧縮機本体3に空気を吸い込むことにより、最小循環給油圧力P2以上の減圧運転圧力P1(P1≧P2)で運転することになる。その後、軸受が冷却したことを温度検出装置11が検出し、温度制御装置12から開閉装置10へ閉指令が出ることで、再度、最小循環給油圧力P2よりも低い減圧運転圧力P1(P1<P2)で運転を行う。
【0029】
このように、本実施例によれば、実施例1に比べて、吸入弁2の上流側と下流側をバイパスするだけであるので、構造が簡単となる効果がある。また、実施例1と同様に、無負荷運転時に減圧運転圧力P1を最小循環給油圧力P2以上の値と低い値の二段階となるように減圧運転を行うことにより、電動機を停止することなく、大出力の電動機での無負荷運転時の圧縮機および電動機の信頼性を確保しつつ、余分な動力を削減しエネルギー効率の向上を両立させた圧縮機を提供することができる。
【0030】
なお、本実施例では、開閉装置10を吸入弁2の上流側と下流側を連通させる経路に設置しているが、調圧逆止弁6より下流側(2次側)と吸入弁2の下流側(2次側)を連通させる経路に設置しても構わない。この場合、圧力差が大きいため開閉装置10や接続経路の小型化が可能となる効果がある。
【実施例3】
【0031】
図7は本実施例の液冷式圧縮機の系統図である。なお実施例1,2と共通する部分については説明を省略する。本実施例が実施例2と異なる点は、温度検出装置11を使用せず、開閉装置10の開閉を制御する電気箱9に収納された温度制御装置12は、無負荷運転連続時間で制御する点である。
【0032】
本実施例の液冷式圧縮機の動作について、以下説明する。図7において、無負荷運転時においては、まず最小循環給油圧力P2よりも低い減圧運転圧力P1(P1<P2)で運転を行う。圧縮機制御基板内に組み込まれた温度制御装置12は、無負荷運転連続時間を算出する時間積算装置の機能を有し、無負荷運転連続時間とあらかじめ決定された無負荷時間メモリとを比較する。所定の無負荷時間(例えば、T=10min)を超えた場合に、圧縮機制御基板より開閉装置10へ開指令を出し、吸入弁2の上流側と下流側を連通させ、最小循環給油圧力P2以上の減圧運転圧力P1(P1≧P2)で運転する。また所定の無負荷時間(例えば、T=5min)を経過した際に、温度制御装置12より開閉装置10へ閉指令が出ることで、再度、最小循環給油圧力Pよりも低い減圧運転圧力P1(P1<P2)で運転を行う。
【0033】
このように、本実施例によれば、実施例1,2に比べて、温度検出装置が不要となり安価に構成できるという効果がある。また、実施例1、2と同様に、無負荷運転時に減圧運転圧力P1を最小循環給油圧力P2以上の値と低い値の二段階となるように減圧運転を行うことにより、電動機を停止することなく、大出力の電動機での無負荷運転時の圧縮機および電動機の信頼性を確保しつつ、余分な動力を削減しエネルギー効率の向上を両立させた圧縮機を提供することができる。
【0034】
なお、本実施例では、温度制御装置12を無負荷運転連続時間にて判断しているが、無負荷運転回数でも構わない。この場合、例えば10回の無負荷運転のうち、1回だけは、最小循環給油圧力P2以上の減圧運転圧力P1(P1≧P2)で運転するよう制御する。
【実施例4】
【0035】
上記実施例では、減圧運転圧力Pや温度メモリ等はあらかじめ設定されたものとして説明したが、それらの値を圧縮機を操作する操作パネルから設定する構成について本実施例で説明する。
【0036】
図8は本実施例における液冷式圧縮機の操作パネルを示す図である。図8において、19は表示ブロックであって、それ以外の機能ボタンとして、14は圧縮機の運転を開始する運転ボタン、13は圧縮機の運転を停止する停止ボタン、15、16は表示値の順送り、逆送りボタン、17は設定したデータを保存する記憶ボタン、18は入力モードを切り替える機能ボタンである。また、それ以外は運転状況を表示する表示部である。
【0037】
また、図9図8の操作パネルの表示ブロック19の状態を示した図であり、設定値を設定するときの手順を示した図である。
【0038】
図9において、まず機能ボタン18を押すと、項目選択モードとなり、項目を選択することが出来る。すなわち、表示ブロックの左端が項目番号、右側が数値を表示しており、機能ボタン18を押し、順送り、逆送りボタン15,16を用いて項目を選択する。図9の例では、20が項目1を選択した場合を示している。ここで、項目番号に対する項目内容はあらかじめ登録されており、本実施例では、1:最小循環給油圧力P2よりも低い減圧運転圧力P、2:上限温度TP、3:下限温度TPとして説明する。
【0039】
次に、変更したい項目番号を選択したあと、機能ボタン18を押して、数値入力モードとする。その後、順送り、逆送りボタン15,16を用いて設定したい数値に合わせる。そして記憶ボタン17でデータ保存する。
【0040】
その後、機能ボタン18、順送り、逆送りボタン15,16を同様に操作して、他の変更したい項目の設定を行う。図9の例では、21が、1:減圧運転圧力=0.15Mpaを設定した場合を示しており、22が、2:上限温度=100℃、23が、3:下限温度=60℃を設定した場合を示している。
【0041】
本実施例では、機能ボタンと、順送り、逆送りボタンを用いて、すくなくとも最小循環給油圧力よりも低い減圧運転圧力と上限温度と下限温度を設定できる設定画面を設けるとして説明したが、もちろん、これに限定されず、例えば、2段階の減圧運転圧力である2つの減圧運転圧力それぞれを設定するようにしてもよいし、実施例3で用いる無負荷運転時間TやT2を設定できるようにしてもよい。また、プルダウン式であらかじめ決められた項目から数値を選択設定するようにしてもよい。
【0042】
以上のように、本実施例によれば、すくなくとも最小循環給油圧力よりも低い減圧運転圧力と上限温度と下限温度を任意に設定できるので、例えば実施例1で説明した減圧運転圧力P1を0に近づければ、余分な動力を削減しエネルギー効率を向上させることが可能となり、また上限温度TPを100℃より大きな設定値にすれば、無負荷運転時間が長くなり、エネルギー効率を向上させることが可能となる。
【0043】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1:吸入フィルタ、2:吸入弁、3:圧縮機本体、4:電動機、
5:油分離器、6:調圧逆止弁、7:アフタークーラ、8:オイルクーラ、
9:電気箱、10:開閉装置、11:温度検出装置、12:温度制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9