(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271024
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】前嚢切開装置
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20180122BHJP
A61B 17/32 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
A61F9/007 130H
A61B17/32 510
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-540982(P2016-540982)
(86)(22)【出願日】2014年1月14日
(65)【公表番号】特表2016-540601(P2016-540601A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】KR2014000396
(87)【国際公開番号】WO2015093678
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年6月30日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0156651
(32)【優先日】2013年12月16日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516178789
【氏名又は名称】ティーアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TI INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】ムーン サン−ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジェ ウク
【審査官】
松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05269787(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0158573(US,A1)
【文献】
特表2012−528675(JP,A)
【文献】
特表2012−505067(JP,A)
【文献】
米国特許第06383194(US,B1)
【文献】
特表2009−504313(JP,A)
【文献】
特開平01−232946(JP,A)
【文献】
特表2012−515017(JP,A)
【文献】
特表2008−538306(JP,A)
【文献】
特表2013−528447(JP,A)
【文献】
特表2012−511407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜の切開部位に挿入されて、水晶体を取り囲む前嚢を切開する前嚢切開装置において、
閉曲線状を有し、切開された角膜の切開部位に挿入されて、前記角膜の下部に位置する前嚢を円形に切開し、前記前嚢を切開するために、高周波振動を用いて熱を発生させる前嚢切開部と、
前記前嚢切開部が内部で摺動しながら、前記前嚢切開部が、前記前嚢を切開時には、外部に露出され、前記前嚢を切開しない時には、内部に挿入される胴部と、
前記胴部の一面に形成され、前記前嚢切開部を前記胴部の内部で摺動させるボタン部と、を含み、
前記前嚢切開部は、前嚢を円形に切開するとともに平面に沿う円形切開口と、前記円形切開口と一端が連結されて、前記円形切開口を摺動させる移動部材と、を含み、
前記胴部は、前記前嚢切開部が内部で摺動し、一端が前記角膜の切開部位に挿入されて、前記前嚢切開部が、前記角膜の切開部位を通るようにガイドするガイド部であり、前記ガイド部の長手軸が前記平面に平行なガイド部と、前記ガイド部と一端が連結され、前記移動部材が内部で摺動するボディーと、を含み、
前記ボタン部は、前記ボディーの一面に備えられ、
前記ボディーが前記平面に対して傾斜するように、前記ガイド部の他端は前記ボディーに連結されている、前嚢切開装置。
【請求項2】
前記円形切開口は、
弾性力を有するように複数本のワイヤ部材が縄状に縒られたワイヤ部と、
前記ワイヤ部の外側にコーティングされたコーティング部と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の前嚢切開装置。
【請求項3】
前記ワイヤ部材は、複数本の微細ワイヤが縄状に縒られたことを特徴とする請求項2に記載の前嚢切開装置。
【請求項4】
前記微細ワイヤは、弾性力を有しながら発熱させるために、金属材を有することを特徴とする請求項3に記載の前嚢切開装置。
【請求項5】
前記ガイド部は、シリコン材を有し、
前記ガイド部の中央部には、前記前嚢切開部が摺動する移動ホールが形成されることを特徴とする請求項1に記載の前嚢切開装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前嚢切開装置に係り、より詳細には、眼球の水晶体を取り囲む前嚢の前面を円形にきれいかつ正確に切開することができる前嚢切開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の背景技術を参照すれば、身体を構成する目(あるいは、‘眼球’)1は、光の強弱及び波長を感知して視野を確保する器官であって、
図1のように、強膜10の外側を取り囲むように形成され、透明な無血管組織からなって、光を屈折させる角膜20と、カメラのレンズの役割を果たす無色透明な水晶体30と、色素があって瞳の色を決定づけ、目に入る光の量を調節する絞りの役割を果たす虹彩40、及びカメラのフィルムに該当する部分であって、透明な神経組織からなる網膜(図示せず)などを含む。
【0003】
一方、前記のように、目を構成する水晶体30は、カメラのレンズに該当し、当該レンズが汚れれば、写真の鮮明度が落ちるようになると同じく、水晶体30にも混濁が生じれば、目の中に光をよく通過させることができないので、物体が曇ったように見えるが、このように、多様な原因によって水晶体30に混濁が来ることを白内障と言う。
【0004】
これにより、白内障が発生すれば、速やかな治療を通じて視力が落ちるか、失うことを防止しなければならないが、白内障を治療する方法には、水晶体30を取り囲む水晶体嚢50を切開して、その中に位置した水晶体30を超音波を用いて粉砕した後、その粉砕された水晶体30を超音波などを使って除去し、該除去された水晶体30の代わりをするように、人工水晶体(図示せず)を挿入する方法が多く使われている。
【0005】
すなわち、ダイヤモンドナイフなどを用いて強膜10または角膜20を約2〜3mmの幅に切開し、その切開窓(W)を通じて針の先端を曲げた切開道具(図示せず)などを挿入して、水晶体嚢50の前面を掻き出して所定の形状(L)に除去し、それによって露出された水晶体30を超音波を用いて粉砕した後、その粉砕された水晶体30を吸い込んで外部に排出し、その位置に人工水晶体を代わりに挿入固定する方式が使われている。
【0006】
しかし、従来の切開道具は、施術者が針を切開窓(W)を通じて挿入した後、水晶体嚢50の前面を切開するために、当該水晶体嚢50を数回にわたって掻き出す動作を行わなければならなかった。
【0007】
したがって、このような切開道具を用いては、水晶体嚢50を適切なサイズ及び形状(特に、円形)にきれいかつ正確に切開しにくく、ひどい場合には、前嚢の放射状破裂などの問題が発生して、人工水晶体(図示せず)が適切に挿入されず、眼内炎が発生するか、人工水晶体を取り替えるなどの再手術が必要であるという問題点があった。
【0008】
また、水晶体嚢50の前面を切開するために、切開道具を非常に気をつけて数回にわたって動かなければならないので、その手術が難しく、それによる時間が長くかかるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2010−0016724号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記問題点を解決するために案出されたものであって、眼球の水晶体を取り囲む前嚢を円形に切開するに当って、前嚢の前面を円形にきれいかつ正確に切開することができるということはもとより、その手術を、安全かつ簡便にする前嚢切開装置を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記のような目的を果たすための本発明によれば、角膜の切開部位に挿入されて、水晶体を取り囲む前嚢を切開する前嚢切開装置において、閉曲線状を有し、切開された角膜の切開部位に挿入されて、前記角膜の下部に位置する前嚢を円形に切開し、前記前嚢を切開するために、高周波振動を用いて熱を発生させる前嚢切開部と、前記前嚢切開部が内部で摺動しながら、前記前嚢切開部が、前記前嚢を切開時には、外部に露出され、前記前嚢を切開しない時には、内部に挿入される胴部と、前記胴部の一面に形成され、前記前嚢切開部を前記胴部の内部で摺動させるボタン部と、を含む前嚢切開装置を提供する。
【0012】
本発明による前嚢切開装置において、前記前嚢切開部は、前嚢を円形に切開する円形切開口と、前記円形切開口と一端が連結されて、前記円形切開口を摺動させる移動部材と、を含み、前記円形切開口は、弾性力を有するように複数本のワイヤ部材が縄状に縒られたワイヤ部と、前記ワイヤ部の外側にコーティングされたコーティング部と、を含みうる。
【0013】
前記ワイヤ部材は、複数本の微細ワイヤが縄状に縒られ、前記微細ワイヤは、弾性力を有しながら発熱させるために、金属材を有しうる。
【0014】
前記胴部は、前記前嚢切開部が内部で摺動し、一端が前記角膜の切開部位に挿入されて、前記前嚢切開部が、前記角膜の切開部位を通るようにガイドするガイド部と、前記ガイド部と一端が連結され、前記移動部材が内部で摺動するボディーと、を含み、前記ボタン部は、前記ボディーの一面に備えられうる。
【0015】
前記ガイド部は、シリコン材を有し、前記ガイド部の中央部には、前記前嚢切開部が摺動する移動ホールが形成され、前記ボディーに連結される前記ガイド部の一端は、前記ボディーと傾斜して連結されうる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による前嚢切開装置は、次のような効果を有する。
【0017】
第1に、水晶体を取り囲む前嚢の前面を円形に正確に切開することができて、手術の失敗による再手術を防止することはもとより、その手術を、安全かつ容易にすることができる。
【0018】
第2に、前嚢を切開する前嚢切開部の円形切開口を複数本の微細ワイヤ及びワイヤ部材を縒って形成して、熱による変形を防止することはもとより、原型復元力を向上させて、一回の手術後、廃棄せず、数回使うことができて、コストを節減させることができる。
【0019】
第3に、前嚢切開部の円形切開口が電流ではない高周波を用いて熱を発生させた後、前嚢を切開することによって、円形切開口の自体発熱による形態変形を防止し、熱によって加熱される時間を短縮させることができて、手術時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】本発明による前嚢切開装置を概略的に示す正面図である。
【
図3】
図2に示された前嚢切開装置を示す平面図である。
【
図4】
図2に示された前嚢切開部が胴部のガイド部に挿入された状態を示す図面である。
【
図5】本発明による前嚢切開装置の前嚢切開過程を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明による望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立って、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は、通常的に、または辞書的な意味として限定して解釈されてはならず、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義できるという原則を踏まえて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0022】
図1は、身体の眼球を概略的に示す図面であり、
図2は、本発明による前嚢切開装置を概略的に示す正面図であり、
図3は、
図2に示された前嚢切開装置を示す平面図であり、
図4は、
図2に示された前嚢切開部が胴部のガイド部に挿入された状態を示す図面であり、
図5は、本発明による前嚢切開装置の前嚢切開過程を示す図面である。
【0023】
図面を参照すれば、本発明による前嚢切開装置100は、角膜20の切開部位または強膜10の切開部位(図示せず)に挿入されて、水晶体30を取り囲む前嚢50を切開するためのものであって、前嚢切開部110と、胴部120と、ボタン部130と、を含む。
【0024】
前記前嚢切開部110は、閉曲線状を有し、前記角膜20の切開部位22または前記強膜10の切開部位(図示せず)に挿入されて、前記前嚢50を円形に切開する役割を果たし、前記前嚢切開部110は、高周波振動によって発生する熱を用いて、前記前嚢切開部110と接触する前記前嚢50の水分を短期間(1秒内)に加熱して、前記前嚢50を切開する。
【0025】
前記前嚢切開部110は、円形切開口111と移動部材115とを含む。前記円形切開口111は、前記前嚢50を円形に切開する役割を果たし、前記移動部材115は、前記円形切開口111と一端が連結されて、前記円形切開口111を摺動させる役割を果たす。
【0026】
前記円形切開口111は、ワイヤ部112とコーティング部113とを含む。前記ワイヤ部112は、弾性力を有するように複数本のワイヤ部材112aが縄状に縒られることが望ましい。前記ワイヤ部112が、複数本ではない1本のワイヤ部材112aからなる場合、前記円形切開口111が後述する胴部120のガイド部122を通過した後、十分な円形を保持することが大変であり、熱によって前記ワイヤ部材112aが変形されて、正確な切開のために再使用することができないためである。
【0027】
前記ワイヤ部112の外側上部には、コーティング部113がコーティングされる。前記コーティング部113は、前記円形切開口111の熱による角膜20の内皮細胞の損傷を防止する役割を果たし、前記コーティング部113は、眼球の色と対比される色を有することが望ましい。これは、角膜20の切開部位22に挿入された円形切開口111が、前記前嚢50の前面中心部に正確に位置するか否かを手術者が容易に判別させるためである。
【0028】
前記ワイヤ部材112aは、複数本の微細ワイヤ112bが縄状に縒られたことが望ましい。前記微細ワイヤ112bが縄状に縒られることによって、弾性力をさらに増大させ、前記微細ワイヤ112bは、弾性力を有しながら発熱させるために、弾性力を有しながら、電流の移動が容易な金属材を有することが望ましい。
【0029】
前記前嚢切開部110は、胴部120の内部に摺動しながら、前記前嚢50の切開時には、前記胴部120の外部に露出され、前記前嚢50を切開しない時には、前記胴部120の内部に挿入される。
【0030】
前記胴部120は、ガイド部122とボディー124とを含む。前記ガイド部122は、前記前嚢切開部110が内部で摺動し、前記前嚢切開部110が、前記角膜20の切開部位22を通るようにガイドする役割を果たす。
【0031】
前記ガイド部122は、シリコン材を有し、前記ガイド部122の中央部には、前記前嚢切開部110が摺動する移動ホール122aが形成される。前記ガイド部122に移動ホール122aが形成されることによって、前記前嚢切開部110が前記移動ホール122aの内部で摺動しながら、前嚢50の切開時には、前記移動ホール122aの内部から外部に露出され、前嚢50を切開しない時には、前記移動ホール122aの内部に挿入された状態を保持する。
【0032】
前記ガイド部122の一端は、前記ボディー124と連結され、前記ボディー124には、前記前嚢切開部110の移動部材115が内部で摺動し、前記ボディー124の内部には、前記移動部材115が摺動する移動孔(図示せず)が形成されることが望ましい。
【0033】
前記ボディー124に連結される前記ガイド部122は、前記ボディー124と傾斜して連結されることが望ましく、前記円形切開口111と連結される前記移動部材115の一端は、傾斜して形成されることが望ましい。
【0034】
前記ボディー124と前記ガイド部122が傾斜して連結され、前記移動部材115が傾斜して形成されることによって、手術者が前記角膜20の切開部位22または前記強膜10の切開部位(図示せず)に前記ガイド部122を挿入した後、円形切開口111を用いて前嚢50を円形に切開する作業を容易に行う。
【0035】
前記胴部120の一面には、前記前嚢切開部110を前記胴部120の内部で摺動させるボタン部130が形成される。前記ボタン部130を手術者が操作することによって、前記ボタン部130の操作によって摺動する前記前嚢切開部110が、前記胴部120の内部で露出されて、前嚢50を円形に切開するか、または胴部120の内部に挿入される。
【0036】
本発明による前嚢切開装置100を用いて前嚢50を切開する過程を概略的に説明すれば、次の通りである。
【0037】
まず、手術者が角膜20または強膜10に切開道具を用いて切開部位(図示せず)22を形成した後、切開部位にガイド部122の一端を挿入する。前記ガイド部122を挿入した後、手術者がボタン部130を操作すれば、前記円形切開部110が前記胴部120の外部に露出されて、切開しようとする前嚢50の上部に位置する。
【0038】
前記前嚢の上部に位置した前記前嚢切開部110が高周波を用いて熱を発生させれば、前記前嚢切開部110の円形切開口111が前嚢50を迅速に円形に切開し、前嚢50を円形に切開後、手術者が前記ボタン部130を逆方向に操作すれば、前記前嚢切開部110は、前記胴部120の内部に挿入されることによって、手術者が円形に切開しようとする前嚢50を迅速かつ正確に円形に切開する。
【0039】
したがって、水晶体30を取り囲む前嚢50の前面を円形に正確に切開することができて、手術の失敗による再手術を防止することはもとより、その手術を、安全かつ容易にし、前嚢50を切開する前嚢切開部110の円形切開口111を複数本の微細ワイヤ112b及びワイヤ部材112aを縒って形成して、熱による変形を防止することはもとより、原型復元力を向上させて、一回の手術後、廃棄せず、数回使うことができて、コストを節減させ、前嚢切開部110の円形切開口111が電流ではない高周波を用いて熱を発生させた後、前嚢50を切開することによって、円形切開口111の自体発熱による形態変形を防止し、熱によって加熱される時間を短縮させることができて、手術時間を短縮させることができる。
【0040】
本発明は、図面に示された実施形態を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、白内障手術の前嚢切開に用いられうる。