(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271120
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】切断及び凝固のための超音波装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/32 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
A61B17/32 510
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-231513(P2012-231513)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2013-85963(P2013-85963A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2015年9月29日
(31)【優先権主張番号】61/549,977
(32)【優先日】2011年10月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/653,497
(32)【優先日】2012年10月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595057890
【氏名又は名称】エシコン・エンド−サージェリィ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon Endo−Surgery,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ダブリュ・ティム
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ジェイ・シャイブ
(72)【発明者】
【氏名】エイミー・エル・マルコット
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・エム・アッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ビー・シュルテ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ・エス・ジー
【審査官】
宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−011987(JP,A)
【文献】
特表2010−503506(JP,A)
【文献】
特開2008−136845(JP,A)
【文献】
特開2007−050181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 − 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波医療用装置であって、近位端及び遠位端を有する超音波導波管と、前記導波管の前記遠位端に取り付けられた、超音波により起動されるブレードであって、前記ブレードは第1組織接触表面、及び第2組織接触表面を有する、ブレードと、組織接触表面を有し、前記ブレードに対して枢動可能である第1クランプアームであって、前記第1クランプアームの少なくとも一部が前記ブレードから離間している開放位置、及び前記第1クランプアームの前記組織接触表面が前記ブレードの第1組織接触表面と隣接する閉鎖位置を有する、第1クランプアームと、組織接触表面を有し、前記ブレードに対して枢動可能である第2クランプアームであって、前記第2クランプアームの少なくとも一部が前記ブレードから離間する開放位置、及び前記第2クランプアームの前記組織接触表面が、前記ブレードの第2組織接触表面と隣接する閉鎖位置を有する、第2クランプアームと、を含み、
前記第1クランプアームが前記開放位置から前記閉鎖位置への移動面を画定し、前記移動面は、前記ブレードの第1組織接触表面および前記第1クランプアームの前記組織接触表面の垂線から、アプローチ角度θだけ角度を付けられている、超音波医療用装置。
【請求項2】
前記第1組織接触表面及び前記第2組織接触表面が交差して切断縁部を形成する、請求項1に記載の超音波医療用装置。
【請求項3】
前記ブレードが真っ直ぐである、請求項1に記載の超音波医療用装置。
【請求項4】
前記ブレードが湾曲している、請求項1に記載の超音波医療用装置。
【請求項5】
前記第1クランプアーム及び前記第2クランプアームが前記閉鎖位置にあるときに、前記第1クランプアーム及び前記第2クランプアームが間隙距離Gを画定する、請求項1に記載の超音波医療用装置。
【請求項6】
前記間隙距離Gが、約0.13mm(0.005インチ)〜約3.81mm(0.150インチ)の範囲に及ぶ、請求項5に記載の超音波医療用装置。
【請求項7】
前記第1クランプアーム及び前記第2クランプアームが、一致して第1開放位置から第2閉鎖位置まで移動する、請求項1に記載の超音波医療用装置。
【請求項8】
前記第1クランプアーム及び前記第2クランプアームが独立して動作可能である、請求項1に記載の超音波医療用装置。
【請求項9】
前記アプローチ角度θは、0°を除いた約−45°〜約45°の範囲に及ぶ、請求項1に記載の超音波医療用装置。
【請求項10】
前記第2クランプアームが前記開放位置から前記閉鎖位置への移動面を画定し、前記移動面は、前記ブレードの第2組織接触表面の垂線から、アプローチ角度θだけ角度を付けられている、請求項1に記載の超音波医療用装置。
【請求項11】
前記アプローチ角度θは、0°を除いた約−45°〜約45°の範囲に及ぶ、請求項10に記載の超音波医療用装置。
【請求項12】
前記第1組織接触表面と前記第2組織接触表面との交点が、約20°〜約170°の角度を画定する、請求項2に記載の超音波医療用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その内容が本明細書において参照により組み込まれる、2011年10月21日出願の米国特許仮出願第61/549,977号の優先権の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般的に超音波外科用システム、より具体的には、外科医が組織切断及び凝固、並びに向上した組織切開を行うことを可能にする、超音波装置に関連する。
【背景技術】
【0003】
超音波手術器具は、そのような器具の特有の性能特性によって、外科的処置にますます広範に用いられるようになってきている。特定の器具の構成及び操作パラメータによっては、超音波外科用器具は、組織の切断及び凝固によるホメオスタシスを実質的に同時にもたらし、患者の外傷を望ましく最小限にすることができる。切断行為は、通常、器具の遠位端にあるエンドエフェクタ又はブレードの先端によって実現され、エンドエフェクタが接触した組織に超音波エネルギーが伝達される。このような性質の超音波器具は、ロボット支援処置を含む開腹手術用途、腹腔鏡又は内視鏡手術処置用に構成され得る。
【0004】
外科用器具の中には超音波エネルギーを正確な切開及び凝固の調節の両方の目的で利用するものもある。超音波エネルギーは、電気外科手術で使用される温度より低い温度を使用して切断及び凝固を行う。高周波(例えば、毎秒55,500回)で振動する超音波ブレードは、組織内のタンパク質を変性して、べったりとした凝塊を形成する。ブレード表面が組織に及ぼす圧力は血管を崩壊し、凝塊が止血シールを形成することを可能にする。切断及び凝固の精度は、外科医の技術、及び電力レベル、ブレードエッジ、組織のけん引摩擦(traction)、ブレード圧力の調整によって制御される。
【0005】
患者の組織に超音波エネルギーを連結させるためにエンドエフェクタのブレードに組織を押し付けるためのクランプ機構を含む超音波手術器具が開発された。このような構成(場合により、クランプ凝固鋏(clamp coagulator shears)又は超音波横切装置(ultrasonic transector)とも呼ぶ)は、米国特許第5,322,055号、同第5,873,873号、及び同第6,325,811号において開示され、これらは全て本明細書において、参照により組み込まれる。外科医はクランプアームを起動し、把持部又はトリガーハンドルを圧迫することによって、クランプハンドルをブレードに押し付ける。クランプ凝固構成はまた、外科医が組織を切開することを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在の器具の欠点のいくつかを克服する超音波手術器具を提供することが望ましいであろう。本明細書に記述する超音波手術器具は、それらの欠点を克服する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明自体は、しかしながら、編成及び操作方法のいずれに関しても、以下の添付の図面と共になされた以下の説明を参照することによって最良に理解され得る。
【
図2a】開放位置における、分岐クランプアームの姿勢の等角図。
【
図2b】分岐クランプアームが閉鎖位置にある、
図2aの姿勢の等角図。
【
図3a】組織切開に使用される際の、従来技術のアーム及びブレードの図形表示。
【
図3b】組織切開に使用される際の、本発明の一実施形態の図形表示。
【
図4】例えば切開部の形成など、組織切開に使用される際の、掘削動作に使用される、本発明の一実施形態の図形表示。
【
図5a】凝固のみのモードにおける、分岐クランプの別の使用の図形表示。
【
図5b】部分的に開いた状態の、本発明の別の姿勢の等角遠位端であり、別個のクランプアーム間の間隙距離Gの例示。
【
図6】クランプアームからブレードへのアプローチ角度を例示する、本発明の別の姿勢の、等角遠位端図。
【
図7a】ブレードを部分的に被覆する、冷却及び/又は保護シースを例示する、本発明の別の実施形態の等角図。
【
図7b】明確性のために外部管及びクランプアームが取り除かれた、ブレードの冷却及び/又は保護のために使用される内部管の等角図。
【
図8a】1つのクランプアームのみの制御を例示する、本発明の別の実施形態の側面図。
【
図8b】両方のクランプアームの制御を例示する、
図8aの実施形態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を詳細に説明するのに先立ち、本発明は、その用途又は使用において添付の図面及び説明文で説明される部品の構成及び配置の細部に限定されるものではない点に留意されたい。本発明の例示的な実施形態は、他の実施形態、変形物、及び修正物において実践又は組み込まれてもよく、様々な方法で実行又は実施されることができる。更に、特に指示がない限り、本明細書に採用される用語及び表現は、読者の便宜上、本発明の例示的な実施形態を説明するために選択されており、本発明を制限するためではない。
【0009】
「近位」及び「遠位」という用語は、本明細書において、超音波外科用器具のハンドルアセンブリのハンドル部分を臨床医が把持することに関して使用されることが理解されるであろう。そのため、エンドエフェクタは、より近位のハンドル部分に対して遠位にある。更に、便利かつ明瞭にするため、「頂部」及び「底部」などの空間的用語も、本明細書において、ハンド部分を臨床医が把持することに関して使用されることが理解されるであろう。しかしながら、外科用器具は、多くの向き及び位置で使用され得、これらの用語は、限定的及び絶対的であることを意図したものではない。「右」という用語は、遠位端から近位端への器具の「前側」を見るユーザの視点からの器具の右側を指す。「左」という用語は、遠位端から近位端への器具の「前側」を見るユーザの視点からの器具の左側を指す。「後ろ」という用語は、器具の近位端から遠位端を見るユーザの視点からの器具の後ろを指す。
【0010】
更に、以下に記述される実施形態、実施形態の具現、実施例などの任意の1つ以上を、以下に記述される他の実施形態、実施形態の具現、実施例などの任意の1つ以上と組み合わせることができるものと理解されたい。
【0011】
本発明は、外科手術中において、組織切開、切断及び/又は凝固を実行するように構成される、改善された超音波外科用器具を特に対象としている。この器具は、開腹又は腹腔鏡手術において、軟組織アクセスを促進するように構成されている。超音波エネルギーの選択的使用によって、多方面の用途が容易になる。本装置の超音波要素が作動していない場合には組織を切開又は損傷することなく思いどおりに組織を操作することができる。超音波構成要素が起動される際、超音波エネルギーは、組織切断及び凝固、又は組織凝固を単独で提供する。
【0012】
以下の説明から明らかになるように、本発明の外科用装置は、その分かりやすい構造を利用した使い捨て用途のために特に構成される。したがって、装置は、外科用システムの部分において、又は器具内に封入されて、超音波発生器ユニットに付随して使用され、これによって発生器ユニットからの超音波エネルギーが、本外科用器具のための所望の超音波作動を提供するものと考えられる。本発明の原理を具体化する外科用器具は、非使い捨て式、又は複数回使用されるように構成され、関連する超音波発生器ユニットと取り外し不可能に一体化することができるということが認識されるであろう。しかし、本発明の外科用器具を付随の超音波発振器ユニットに取り外し可能に接続し、本装置を一患者使用向けとすることが本発明では好ましい。
【0013】
図1は、超音波外科用器具100の一実施形態の右側面図である。示された実施形態では、超音波外科用器具100は、内視鏡又は従来の開腹外科的処置を含む様々な外科的処置において使用することができる。一実施形態では、超音波外科用器具100は、ハウジングアセンブリ102と、細長内視鏡シャフトアセンブリ110と、超音波変換器114とを備える。ハウジングアセンブリ102は、トリガーアセンブリ104と、遠位回転アセンブリ106と、スイッチアセンブリ108とを備える。細長内視鏡シャフトアセンブリ110は、超音波導波管113、及び導波管の遠位端に位置するエンドエフェクタアセンブリ112を含む。エンドエフェクタ112は、組織を切開するか、又は血管及び/若しくは組織を相互に把持し、切断し、凝固するための要素を含む。ハウジングアセンブリ102は、近位端で超音波変換器114を受容するように適合される。超音波変換器114は、導波管113、及びエンドエフェクタアセンブリ112に機械的に係合する。超音波変換器114は、ケーブル118を介して発生器116に電気的に連結される。図面のほとんどが、内視鏡外科手術に関連する使用のためのエンドエフェクタアセンブリ112を描写するが、超音波外科用器具100は、より従来的な開腹外科手術において使用される場合がある。本明細書における目的のために、超音波外科用器具100は、内視鏡器具に関して記載されるが、開腹型の超音波外科用器具100も、本明細書において記載されるものと同じか、又は同様の操作構成要素及び機構を含むことができることが想定される。更に、例えば、その内容が本明細書において参照として組み込まれる米国特許出願第12/503,770号に開示されるような外科用器具100の他の実施形態が想到される。
【0014】
超音波変換器114は、超音波信号発生器116からの電気信号を機械的エネルギーに変換し、これは主に、超音波変換器114、及びエンドエフェクタアセンブリ112のブレード2(
図2a)部分の、超音波周波数における、長手方向の振動運動の定在音波を生じる。湾曲したブレードなど、別の実施形態において、超音波変換器の振動運動により、湾曲したブレードが移動面において振動し得る。好適な発生器は、Ethicon Endo−Surgery.(Cincinnati,Ohio)から、モデル番号GEN11として入手可能である。超音波外科用器具100は、共鳴で操作するように設計され、それにより、所定の振幅の音響定常波パターンが生み出される。音響アセンブリに沿った任意の時点での振動運動の振幅は、振動運動が測定される音響アセンブリに沿った位置に基づく。振動運動定常波における最小又はゼロ交差は、一般的にノード(すなわち、運動が最小である)として称され、定常波における局所的最大絶対値又はピークは、一般的に、アンチノード(すなわち、局所的運動は最大である)として称される。アンチノードとその最も近いノードとの間の距離は、4分の1波長(λ/4)である。
【0015】
図2a及び
図2bは、分岐クランプアーム4と、縁部22、及び縁部22から横方向に延びる2つの封止区域18及び20を有するブレード2と、を含む、本発明の一実施形態による、エンドエフェクタ112を開示する。縁部22は、鋭い縁部として図示されるが、縁部22は、狭くても、広くてもよい。更に、ブレード2は、真っ直ぐなブレードとして(すなわち、湾曲がない)図示されるが、本発明は、米国特許第6,325,811号に開示されるような湾曲したブレードにも同等に適用できる。縁部22は切断ゾーンを提供し、それによってクランプアーム10、14の下方圧力が、縁部22に対して組織を引き、それによって組織を切断する。隣接する封止表面18、20は、血管封止を形成する。第1実施形態の1つの姿勢において、封止表面18、20は、入手可能な超音波器具よりも、表面積が大きく、したがってより強い組織封止を提供する。例えば、0.018インチの封止表面積が、5mmの血管封止を達成するための、必要最低限の面積であるということが理解される。封止表面18、20は、2.9m
2(0.45平方インチ)〜6.45m
2(0.10平方インチ)の大きさであり得る。
【0016】
分岐クランプアーム4は、第1クランプ要素10及び第2クランプ要素14を含む。各クランプ要素は、
図2bに示されるように、各封止表面18、20と係合するために、組織パッド12、16を含む。組織パッド12、16は、TEFLON(登録商標)、又は他の任意の好適な低摩擦材料から形成されてもよい。組織パッド12、16は、米国特許第7,544,200号、及び米国特許出願第11/751,733号、及び同第12/357,846号に開示される2つ以上の好適な材料を含んでもよく、これらは本明細書において参照として組み込まれる。第1実施形態のこれらの姿勢において、クランプ要素10、14のそれぞれは、上記にて参照された米国特許において開示されるように、ピン又はタブ枢動手段、及び内部管に取り付けられた駆動ピンの手段により、外部管24の遠位端に取り付けられる。
【0017】
エンドエフェクタ112を使用する組織切開は、
図3aにおいて図示される従来的な単一クランプジョー装置と比較して、二点において有利である。
図3bに図示されるように、従来技術の単一クランプ及びブレードの矢印Cによって示される単一の方向に対し、本発明による分岐クランプジョーは、組織ウィンドー又は開口部(すなわち、切開部)Oを矢印A及びBによって示される二方向に形成するように組織Tを伸張し、したがって外科医が、エンドエフェクタ112の単一の開放及び閉鎖機能において組織開口部を拡張するための効率性を改善する。当業者におって明白であるが、クランプ要素10、14(
図2a)の間の分離角度βは、組織開口部Oの寸法を決定し、設計者に委ねられる。
【0018】
更に、電圧を印加された切開において、本発明の分岐クランプアームの実施形態は、2つのジョーの装置による背部切開と比較して、
図4に図示されるように、D方向における押圧又は掘削動作によって、組織平面の分離及び横切を提供する。従来技術の単一のクランプ及びブレード設計による「掘削」は、背部切断縁部の反対側の面におけるクランプアームにより阻止され得る。本開示の分岐クランプアームの実施形態は、切断縁部と同じ側にクランプアームを有し、よってクランプアームが動作と干渉しない。本実施形態は、膀胱などのデリケートな構造から、組織面を分離及び切断するために特に有用である。分岐クランプアーム構成は、十分な組織伸張を達成することが困難である場合に、横切による、剪断補助による達成という、追加的な利益を有する。
【0019】
図5a及び
図5bを参照し、本発明の本実施形態の別の姿勢は、「凝固のみ」のモードの動作を提供する。具体的に、クランプ要素10及び14は、クランプ要素の間の間隙距離Gを画定し、それによって1つの要素のみが単一の封止表面に対して組織を圧迫し、切断縁部を迂回することを可能にする。好ましくは、間隙距離Gは、約0.13mm(0.005インチ)〜約3.81mm(0.150インチ)、及びより好ましくは約1.27mm(0.050インチ)の範囲である。
図5aに図示されるように、クランプ要素10及び組織パッド12は、封止表面18に対して血管Vを含む。クランプ要素14は組織Vに係合しないため、組織Vは切断縁部22にわたって伸張されず、よって血管Vを切断又はせん断力に供さない。このような構成は、遥かに遅いせん断時間を生じ、これを、組織を切断せずに組織の凝固のみを行うために好適なものとする。
【0020】
図6を参照し、本実施形態の別の姿勢において、ブレード2は合計ブレード角度αを画定する。角度αは、封止表面18、20の交点によって形成され、約20°〜約170°の角度を有する。クランプ要素10、14はまた、アプローチ角θを画定し、これは、各封止表面18、20の垂線Nに対する開放から閉鎖、及び閉鎖から開放位置のクランプ要素10、14の矢印Aの方向(又はA’の方向における−θ)の方向に移動面を画定する。小さいアプローチ角度θは、組織を切開するためのより遅い時間を呈し、一方でより大きなアプローチ角度θは、組織を切開するためのより速い時間を呈する。したがって、アプローチ角度θはまた、組織凝固又は止血に影響し、より速い切断(より大きなアプローチ角度θ)は、限定された組織凝固又は封止強度を提供し、より遅い切断(より小さいアプローチ角度θ)はより良好な組織凝固又は堅牢な組織強度を提供する。マイナスのθは、切断しない封止を提供する(矢印A’)。好ましくは、かつθの値にかかわらず、クランプ要素10、14は、各封止表面18、20と面一の接触を形成する(垂直方向)。アプローチ角度θは、0〜約45°であってもよく、アプローチ角度−θは、0°〜約−45°であってもよい。アプローチ角度θは、クランプ要素及び旋回軸の幾何学的構成の関数である。当業者に理解されるように、封止表面と面一の接触を維持しながら、非垂直なアプローチ角度は、クランプアームの幾何形状を調節し、各クランプ部材の旋回軸をクランプアーム表面に対して角度付けすることによって達成され得る。必要とされる構造を達成するための他の機構は、当業者に委ねられる。更に、当業者に明白であるように、アプローチ角度θは、各クランプ要素10、14において異なる場合がある。
【0021】
本実施形態の第1実施形態の更なる姿勢において、
図7a及び
図7bは、内部管26がブレード2の後側に沿って延びる、動作中の冷却チャネル28を開示する。内部管及び一連の孔29を通じたルーメンは、ブレード2への生理食塩水又は空気流を供給する。内部管26の延長はまた、組織が意図せずしてブレード2と接触することを防ぐための保護シースとして機能する。
【0022】
第1実施形態の更なる姿勢において、
図8a及び
図8bに図示される制御機構が図示され、これはクランプ要素10、14の両方の別個の制御を可能にする。図示されるように、内部管26は、2つの別個の要素26a及び26bに分岐し、これは、2つのクランプ要素10、14それぞれの、別個の制御を可能にする。この姿勢において、例えば、ばね鋼又はニチロールから作製される、選択的に起動される係合機構32は、係合タブ部材36を介して、分岐内部管26bと選択的に係合し、並びに分岐内部管26bを選択的に外す。選択スイッチ34は、シャフトに沿って軸方向に摺動することにより、係合機構32が分岐内部管26bと係合し、並びに分岐内部管26bを外すのを制御する。見られるように、選択スイッチ34は、押圧要素36、38に動作可能に連結され、これらは別個の要素であり得るか、又は例えばドーナツ型押圧要素など、共に接合されてもよい。
【0023】
使用中、両方の内部管26a、26bは、選択スイッチ34を遠位方向に摺動することによって、ユーザーによって係合することができる(
図8b)。これは、トリガー104がクランプ要素10、14の両方を同時に閉鎖するか、ブレード2と、クランプ要素10、14との間に一致して組織を係合させることを可能にする。選択スイッチを近位方向に摺動することにより(
図8a)、クランプ要素10、14はオフセットするように動作し、それによって係合要素32は分岐内部管26bから外れ、これはトリガー104がクランプ要素10を閉じて組織と係合させることを防ぎ、上記のように封止モードにおいて、クランプ要素14のみがブレード2との間で組織に係合するようにもたらす。
【0024】
本実施形態の姿勢は、外れることができる、1つのクランプ要素のみを図示するが、2つの選択的に起動する係合機構を有することは、クランプ要素10又はクランプ要素14のいずれかの選択的な起動、又はクランプ要素10、14両方の選択的な起動を可能にする。これは、各係合要素30、32に対して、相対する端部において係合タブを有することにより、行われ得る。係合機構は様々な形状であってもよく、各内部管側部につき、2つ以上の係合タブが存在してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態の説明によって本発明を例示してきたが、添付の請求項の趣旨及び範囲をそのような詳細に限定又は制限することは、出願者の意図ではない。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく多くの変形、変更、及び代用が想到されるであろう。更に、本発明に付随するそれぞれの要素の構造は、その要素によって実行される機能を提供するための手段としてもまた説明され得る。したがって本発明は、付属の特許請求の範囲の趣旨及び範囲によってのみ限定されるものとする。
【0026】
〔実施の態様〕
(1) 超音波医療用装置であって、近位端及び遠位端を有する超音波導波管と、前記導波管の前記遠位端に取り付けられた、超音波により起動されるブレードであって、前記ブレードは第1組織接触表面、及び第2組織接触表面を有する、ブレードと、組織接触表面を有し、前記ブレードに対して枢動可能である第1クランプアームであって、前記第1クランプアームの少なくとも一部が前記ブレードから離間している開放位置、及び前記第1クランプアームの前記組織接触表面が前記ブレードの第1組織接触表面と隣接する閉鎖位置を有する、第1クランプアームと、組織接触表面を有し、前記ブレードに対して枢動可能である第2クランプアームであって、前記第2クランプアームの少なくとも一部が前記ブレードから離間する開放位置、及び前記第2クランプアームの前記組織接触表面が、前記ブレードの第2組織接触表面と隣接する閉鎖位置を有する、第2クランプアームと、を含む、超音波医療用装置。
(2) 前記第1組織接触表面及び前記第2組織接触表面が交差して切断縁部を形成する、実施態様1に記載の超音波医療用装置。
(3) 前記ブレードが真っ直ぐである、実施態様1に記載の超音波医療用装置。
(4) 前記ブレードが湾曲している、実施態様1に記載の超音波医療用装置。
(5) 前記第1クランプアーム及び前記第2クランプアームが前記閉鎖位置にあるときに、前記第1クランプアーム及び前記第2クランプアームが間隙距離Gを画定する、実施態様1に記載の超音波医療用装置。
(6) 前記間隙距離Gが、約0.13mm(0.005インチ)〜約3.81mm(0.150インチ)の範囲に及ぶ、実施態様5に記載の超音波医療用装置。
(7) 前記第1クランプアーム及び前記第2クランプアームが、一致して第1開放位置から第2閉鎖位置まで移動する、実施態様1に記載の超音波医療用装置。
(8) 前記第1クランプアーム及び前記第2クランプアームがオフセットするように動作する、実施態様1に記載の超音波医療用装置。
(9) 前記第1クランプアームが前記開放位置から前記閉鎖位置への移動面を画定し、前記移動面は、前記ブレードの第1組織接触表面の垂線から、アプローチ角度θだけオフセットしている、実施態様1に記載の超音波医療用装置。
(10) 前記アプローチ角度θは、約−45°〜約45°の範囲に及ぶ、実施態様9に記載の超音波医療用装置。
【0027】
(11) 前記第2クランプアームが前記開放位置から前記閉鎖位置への移動面を画定し、前記移動面は、前記ブレードの第2組織接触表面の垂線から、アプローチ角度θだけオフセットしている、実施態様1に記載の超音波医療用装置。
(12) 前記アプローチ角度θは、約−45°〜約45°の範囲に及ぶ、実施態様11に記載の超音波医療用装置。
(13) 前記第1組織接触表面と前記第2組織接触表面との交点が、約20°〜約170°の角度を画定する、実施態様2に記載の超音波医療用装置。