(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271142
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】加熱要素及びキッカーによる塞栓コイルの離脱機構
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
A61B17/12
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-68510(P2013-68510)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-212374(P2013-212374A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2016年3月28日
(31)【優先権主張番号】13/436,289
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ファン・エイ・ロレンツォ
【審査官】
槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−107191(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0149108(US,A1)
【文献】
特開2002−017736(JP,A)
【文献】
米国特許第05108407(US,A)
【文献】
特開2006−181088(JP,A)
【文献】
米国特許第06575965(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療装置を患者の血管系内に送達するためのシステムであって、
作用要素と、前記作用要素からぶら下がる長手方向の延長部と、を有する治療装置と、
近位端と遠位端とを有し、かつ管腔を画定する可撓性チューブと、
前記可撓性チューブの前記遠位端に配設され、そこから遠隔操作により作動可能な加熱要素であって、前記治療装置の前記長手方向の延長部に接着剤で接着される、前記加熱要素と、
前記可撓性チューブの内壁に固定され、かつ、前記可撓性チューブ内で前記治療装置の近位に配設される圧縮バネであって、前記長手方向の延長部および前記治療装置を前記可撓性チューブの外に押すように長手方向の力を印加するように付勢されている、圧縮バネと、を含み、
前記接着剤が前記加熱要素によって加熱されるまで、前記接着剤は、前記圧縮バネが前記長手方向の延長部および前記治療装置を前記可撓性チューブの外に押すのを抑制するように構成されている、患者の血管系内に前記治療装置を送達するためのシステム。
【請求項2】
前記治療装置が動脈瘤治療用に構成された塞栓コイルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記治療装置の前記長手方向の延長部が、前記治療装置の外径よりも小さい外径を有する円筒部材である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記加熱要素が抵抗加熱コイルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記接着剤が60℃以上の軟化温度を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記接着剤がエポキシである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記圧縮バネが前記治療装置の前記長手方向の延長部の近位端に当接する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記圧縮バネが、前記治療装置と前記可撓性チューブ内の近位固定位置との間で弾性的に圧縮される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
塞栓要素を送達するためのカテーテルであって、
近位端と遠位端とを有しかつ管腔を画定する可撓性チューブと、
前記可撓性チューブの前記遠位端に配設された円筒形加熱要素であって、当該円筒形加熱要素が前記円筒形加熱要素を通過する導管を画定し、前記円筒形加熱要素が前記可撓性チューブに沿って長手方向に延びる電気導体を備える、円筒形加熱要素と、
前記可撓性チューブ内で、かつ前記円筒形加熱要素の近位に配設されたバネであって、前記バネが近位端と遠位端とを有し、前記近位端が前記可撓性チューブ内に固定されており、かつ前記遠位端が前記可撓性チューブの内部で長手方向に移動するように構成され、前記遠位端が非圧縮状態では前記円筒形加熱要素で画定された前記導管を通過して延びる、バネと、を含むカテーテル。
【請求項10】
前記円筒形加熱要素が内部表面上に低温接着剤の層を備える、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記低温接着剤が60℃以上の軟化温度を有する、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記可撓性チューブの前記遠位端内に少なくとも部分的に配設された塞栓コイルを更に含む、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記塞栓コイルが作用部分と固定部分とを備え、前記固定部分が、前記円筒形加熱要素の前記導管内に保持されるように寸法決めされた円筒部材を含む、請求項12に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記固定部分が、前記可撓性チューブ内に前記低温接着剤によって保持される、請求項13に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記塞栓コイルの前記作用部分が前記可撓性チューブの外部にある、請求項13に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記円筒部材の直径が前記バネの直径より大きい、請求項13に記載のカテーテル。
【請求項17】
作用部分と固定部分とを有する塞栓コイル用の送達システムであって、
近位端と遠位端とを有し、かつ管腔を画定する可撓性チューブと、
遠隔操作により作動可能な円筒形加熱要素と、
前記円筒形加熱要素の内部表面と前記塞栓コイルの前記固定部分との間に塗布された低温接着剤の層と、
前記可撓性チューブの内壁に固定され、かつ、前記可撓性チューブ内で前記塞栓コイルの近位に配設される圧縮バネであって、前記塞栓コイルの前記固定部分に接触する圧縮バネと、を含み、
前記圧縮バネは、前記円筒形加熱要素の作動後に前記低温接着剤の接着力に打ち勝つように選択され、
前記圧縮バネは、前記塞栓コイルを前記円筒形加熱要素から押し離すように長手方向の力を印加するように付勢され、前記低温接着剤の層が前記円筒形加熱要素によって加熱されるまで、前記低温接着剤の層は、前記圧縮バネが前記塞栓コイルを前記円筒形加熱要素から押し離すのを抑制するように構成されている、塞栓コイル用の送達システム。
【請求項18】
前記低温接着剤が60℃以上の軟化温度を有する、請求項17に記載の送達システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、人体の血管内の予め選択された部位に塞栓コイルを配置するための医療装置に関し、より詳細には、予め選択された部位に塞栓コイルを送達するための、送達部材の遠位端に加熱要素とイジェクト部材とを有する可撓性の送達部材に関する。
【0002】
人体の血管内に様々な装置を配置する目的に、細長い可撓性カテーテルが用いられている。このような装置としては、膨張バルーン、放射線不透過性流体、液体薬物、ならびにバルーン及び塞栓コイル等の様々な形式の閉塞装置が挙げられる。塞栓コイル等の閉塞装置は、動脈瘤を治療する目的、または標的部位において血管を閉塞する目的に使用できる。
【0003】
血管内に配置されるコイルは、螺旋状に巻装されたコイルの形態とすることができ、別の方法としては、ランダムに巻装されたコイル、回旋状コイル、他のコイル内に巻装されたコイル、もしくは血管をより良好に閉塞するような他の多くの構成であり得る。塞栓コイルは一般的に、プラチナ、金、タングステン、またはこれらの合金等の放射線不透過性の金属材料から形成される。血栓形成性を改善する目的でコイルは様々な材料でコーティングできる。いくつかのコイルを所定の部位に配置して、その特定の部位における血栓形成を促して血管内を流れる血液を閉塞させる場合がよくある。血流が減少すると、動脈瘤上にかかる圧力が降下するため、動脈瘤が破裂する危険性が低減される。
【0004】
従来、塞栓コイルはカテーテルの遠位端内に配置されていた。カテーテルの遠位端が適切に配置されたら、例えばガイドワイヤを用いてコイルをカテーテルの末端部から押し出して、所望の部位にてコイルを離脱させることができる。このように塞栓コイルを配置する手技は、人体の血管構造を通るコイルの動きを監視して所望の部位にコイルを配置できるように、蛍光透視下で行われる。これらの配置システムでは、カテーテルの末端部を越えて少し離れた部位にコイルがイジェクトされる可能性があるため、コイルが正確な位置に置かれるように制御することはほとんど不可能である。更に、ガイドワイヤを用いて塞栓コイルをイジェクトすると、コイル及びガイドワイヤが患者の血管系に沿って移動している間にずれて、問題が生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生命を脅かす恐れのある出血性脳動脈瘤をもつ患者には、カテーテルを介して塞栓コイルを留置するための安全で信頼性のある精密な離脱機構が必要である。コイルをより精密に血管内に位置決めできるようにするための手技は多数開発されてきた。現在利用されている商品の1つとして、Guglielmi Detachable Coil(GDC)が挙げられる。GDCは、指定されたガイドワイヤ接合部の電解溶解(electrolytical dissolution)を利用して離脱作用を発生させる。この手技は典型的には10〜30分を要するうえ、その制御は信頼できるものとは言い難い。血流内に溶解された物質の影響によって、患者に危険が及ぶ恐れがある。コイルの離脱に伴う問題としては、コイルが送達カテーテルから抜け出す力により、コイルが、所望の部位を通り越したり、以前に配備されたコイルを押し除けてしまうことが挙げられる。このように、カテーテルベースの治療用途向け小型アクチュエータの開発にこれまで多くの努力があったとしても、塞栓コイルを送達するための安全かつ精密な離脱アクチュエータ機構が依然として必要である。
【0006】
カテーテルの全長を通って延びてカテーテルの遠位端から要素を押し出すための堅いプッシャーワイヤを利用する塞栓コイル送達システムに関連するもう1つの問題は、プッシャーワイヤが本質的にカテーテルを相当に堅いものにさせてしまい、結果として、カテーテルを身体の血管構造を通過させて導くのが極めて困難になることである。したがって、可撓性本体を有するカテーテルの遠位端から塞栓コイルを配備するための機構が必要とされ、この可撓性本体はカテーテル遠位端が患者の血管構造の蛇行経路を通過航行することを妨げないものである必要がある。
【0007】
また、治療用の要素または装置(例えば、塞栓コイル)をヒトの脳内血管の狭窄領域(例えば、直径250〜500マイクロメートル)内に配備するように構成された高精度な治療アクチュエータも必要とされている。本発明は前述及び他の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、簡潔かつ概括的には、治療要素もしくは装置を標的部位に送達するための離脱機構、治療アクチュエータ、またはシステムを提供する。標的部位は、人体の血管構造における動脈瘤を治療するための部位(例えば、脳内血管)である。
【0009】
最も基本的な形態において離脱機構は治療要素(塞栓コイル等)を含み、この治療要素は延長継手上に装着された塞栓要素を有し、この延長継手は塞栓コイルの近位端からぶら下がるペグを含む。カテーテル本体の遠位端には、延長継手のペグが、延長継手を円筒形加熱要素に固定させる低温接着剤で保持されている。延長継手のペグもまた、圧縮バネに接触し、それによって、延長継手及びその延長継手上に装着された塞栓コイルに、遠位に誘導された力を印加する。バネの力は、延長継手をカテーテル本体からイジェクトするのに十分であるが、延長継手が低温接着剤によって加熱要素に接着されている力に打ち勝つには不十分である。加熱要素は、カテーテル本体の近位端まで延びる2本の導線を含み、そのため、カテーテル本体が患者の血管系内に配備されているときに、加熱要素が患者の外側から作動できるようになっている。
【0010】
カテーテル本体の遠位端が塞栓コイルを離脱させるのに望ましい部位に位置決めされているときは、加熱要素を導線を介して作動させ、結果として、塞栓コイルの延長継手のペグと加熱要素との間の界面上に熱が蓄積する。この蓄熱は、加熱要素と延長継手との間の結合が弱まるまで、低温接着剤を軟化させる。更に熱が加えられると、バネによる延長継手のペグへの力が、加熱要素との接着力に打ち勝ち、バネがカテーテル本体の遠位端から延長継手及びその装着されているコイルを所望の部位においてイジェクトさせる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に従う治療装置送達システムにおいて、カテーテル本体に固定された延長部材の上に治療装置が装着されている状態を示す側面図。
【
図2】本発明の実施形態に従う治療装置送達システムにおいて、カテーテル本体から延長部材が離脱した状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
制限目的にではなく例示目的で提供されている図面を参照すると、本発明は、治療要素送達システム100(治療アクチュエータまたは離脱機構とも呼ばれる)を提供し、この治療要素送達システムは、治療要素140を体内の標的部位に送達するための可撓性チューブ102と、可撓性チューブ102から治療要素140を分離するための熱的に分断可能な離脱システムと、を含んでいる。治療要素140は、動脈瘤嚢を充填し、動脈瘤中への血流を減少させる物理的バリアを作り、血栓形成またはその中での凝固を誘発することによって、動脈瘤を閉塞する役目を果たす塞栓コイルまたは別の閉塞装置であり得る。可撓性チューブ102はカテーテル本体であってもよく、その全長にわたって可撓性である場合もあれば、可撓性領域がチューブの遠位端だけに制限される場合もある。
【0013】
治療要素140は、延長部材132を含めて形成することも、または延長部材132の上に装着することもでき、その延長部剤は、治療要素140を支持する遠位端装着部分134と、チューブ102内に収容されたペグ136とを含む。以下に更に詳述するように、延長部材は、患者の内部で配備する準備が完了するまで、治療要素140を可撓性チューブの遠位端にて固定する役目を果たす。
【0014】
本発明は、延長部材132を可撓性チューブ102から熱的に分断させることによって、治療要素を治療要素140のより的確な位置に配備することを可能にしている。先行技術の装置は押出しワイヤ及びその他のイジェクション機構を利用し、しばしば制御不能かつ予測不能な力を治療要素に及ぼして配備していたが、それとは対照的に、熱的に活性化される分断システムは、治療要素を送達チューブから前進させることが無く、迅速かつ容易に分断できる。この分離システムが望ましいものとされる理由は、無制御の治療要素がチューブから時期尚早に離脱し、結果として不正確に配置されたコイルをもたらし、又は以前に配置された別のコイルを押し除けたコイルをもたらすためである。
【0015】
可撓性チューブ102内では、一対の電気伝導体が近位端(不図示)から遠位端まで延在する。例えば、正に帯電した電気伝導体104と、負に帯電した電気伝導体106とが存在し得る。電気伝導体は、電気接点108、110を介して、熱的に感応する加熱要素112(加熱コイルまたは同種のもの等)に取付けられる。電流が伝導体104、106に導通されると、熱的に感応する要素112が昇熱し始める。いったん治療装置140が所望の部位に位置決めされると、伝導体104、106は可撓性チューブ102を通過して延び、患者の外側から作動できるようになる。
【0016】
延長部材132が遠位端にビーズ126を、及び中間部に襟部138を有して形成されるか又はそこに装着されており、治療装置140がそのビーズ126と襟部138との間に取り込まれる。ビーズ126の遠位外表面は実質的に半球状、彎曲状、または丸味を帯びた形であり、これにより、治療要素140が傷つけないで導入されるのに役立つ。ビーズ126は、治療要素140を可撓性チューブ102の遠位端148に、またはビーズ126と襟部138との間に押しつけて圧縮することによって、圧縮構成で治療要素140を保持する。ビーズ126と可撓性チューブの遠位端148との間に治療要素140が圧縮されている場合、延長継手132と可撓性チューブ102との間の接続が加熱要素112の加熱によって切断されると、治療要素140が膨張して患者の血管構造内の意図された位置を占有し得る。代替の実施形態においては、治療要素140の少なくとも一部もまた、可撓性チューブ102の遠位端148内に配置される。
【0017】
延長継手132は、可撓性チューブ102の遠位端148内に配設されているときに、圧縮バネ150に隣接するペグ136を有する。バネ150の近位端154は、可撓性チューブ部材102の内面152に接着手段(接着剤等)で固定され、一方、バネ150の遠位端156は、固定された近位端から離れた遠位に自由に延びることができる。
図1に示すように、延長継手132が送達位置にあるときは、延長継手132のペグ136がバネ150の遠位端156を圧迫し、ペグ136の近位端では、バネ150が延長継手132上に力を印加して可撓性チューブ102の外側に延長継手132を押し出す傾向がある。延長継手132は、延長継手132のペグ136を熱的に感応する加熱要素112に結合する低温接着剤160によって可撓性チューブ102内に保持される。規準状態では、ペグ136にかかるバネ150の力は、低温接着剤160の結合力に打ち勝つのに不十分である。よって、治療要素140は、治療部位に離脱される準備が完了するまでは延長継手132上に担持されるので、安全かつ確実に配置部位に送達できる。
【0018】
いったん可撓性チューブが治療部位に到達し、かつ治療要素が離脱されることになると、伝導体104、106が可撓性チューブ102の近位端から作動される。電流が伝導体104、106を通過すると、熱的に感応する加熱要素112が昇熱し始め、昇熱中に低温接着剤160が軟化される。そのような低温接着剤の例としてはエポキシが挙げられる。好ましい実施形態において、接着剤160の軟化温度は60℃以上である。低温接着剤160が軟化すると、バネ150の力は接着剤160の結合力に打ち勝ち、バネ150は、可撓性チューブ102の遠位端148から、延長継手132及び装着された治療要素140をイジェクトする。次いで、治療要素140は膨張することができ、かつ例えば塞栓の部位を満たすことができ、それによって病状が治療される。その後、治療要素140を延長継手132と共に所定の位置に残して、可撓性チューブ102を患者から引き出すことができる。延長継手132は好ましくは、血流の途絶をいっさい引き起こさずに身体によって吸収される生物学的適合性の吸収性材料から製造される。
【0019】
いくつかある実施形態のうちの1つによれば、本明細書に記載されている治療要素送達システムは、ヒトの脳の静脈などの小径(250〜500マイクロメートル)用途での手術に対応でき、これによりカテーテルベースの装置を脳内の動脈瘤に到達させて治療することが可能になる。
【0020】
上述の内容から、本発明の具体的な形態が図示され説明されているが、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な修正が可能であることは明らかとなる。例えば、延長継手を可撓性チューブからイジェクトする場合は、コイルバネ以外に、他の形式のイジェクション装置を使用することもできる。同様に、治療装置は、患者の血管構造内に留置するように意図された任意の数の装置であってよい。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によるものを除き、限定されないことが意図されている。
【0021】
〔実施の態様〕
(1) 治療装置を患者の血管系内に送達するためのシステムであって、
作用要素と、前記作用要素からぶら下がる長手方向の延長部と、を有する治療装置と、
近位端と遠位端とを有し、かつ管腔を画定する可撓性チューブと、
前記可撓性チューブの前記遠位端に配設され、そこから遠隔操作により作動可能な加熱要素であって、前記治療装置の前記長手方向の延長部に接着剤で接着される、前記加熱要素と、
前記可撓性チューブ内で前記治療装置の近位に配設されるイジェクタであって、前記治療装置に長手方向の力を印加するように構成された、イジェクタと、を含む、患者の血管系内に前記治療装置を送達するためのシステム。
(2) 前記治療装置が動脈瘤治療用に構成された塞栓コイルである、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記イジェクタがバネである、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記バネの近位端が前記可撓性チューブの内壁に固定されている、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記治療装置の前記長手方向の延長部が、前記治療装置の外径よりも小さい外径を有する円筒部材である、実施態様1に記載のシステム。
【0022】
(6) 前記加熱要素が抵抗加熱コイルである、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記接着剤が60℃以上の軟化温度を有する、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記接着剤がエポキシである、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記イジェクタが前記治療装置の前記長手方向の延長部の近位端に当接する、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記イジェクタが、前記治療装置と前記可撓性チューブ内の近位固定位置との間で弾性的に圧縮される、実施態様1に記載のシステム。
【0023】
(11) 塞栓要素を送達するためのカテーテルであって、
近位端と遠位端とを有しかつ管腔を画定する可撓性チューブと、
前記可撓性チューブの前記遠位端に配設された円筒形加熱要素であって、当該円筒形加熱要素が前記円筒形加熱要素を通過する導管を画定し、前記円筒形加熱要素が前記可撓性チューブに沿って長手方向に延びる電気導体を備える、円筒形加熱要素と、
前記可撓性チューブ内で、かつ前記円筒形加熱要素の近位に配設されたバネであって、前記バネが近位端と遠位端とを有し、前記近位端が前記可撓性チューブ内に固定されており、かつ前記遠位端が前記可撓性チューブの内部で長手方向に移動するように構成され、前記遠位端が非圧縮状態では前記円筒形加熱要素で画定された前記導管を通過して延びる、バネと、を含むカテーテル。
(12) 前記円筒形加熱要素が内部表面上に低温接着剤の層を備える、実施態様11に記載のカテーテル。
(13) 前記低温接着剤が60℃以上の軟化温度を有する、実施態様12に記載のカテーテル。
(14) 前記可撓性チューブの前記遠位端内に少なくとも部分的に配設された塞栓コイル装置を更に含む、実施態様11に記載のカテーテル。
(15) 前記塞栓コイルが作用部分と固定部分とを備え、前記固定部分が、前記円筒形加熱要素の前記導管内に保持されるように寸法決めされた円筒部材を含む、実施態様13に記載のカテーテル。
【0024】
(16) 前記固定部分が、前記可撓性チューブ内に前記低温接着剤によって保持される、実施態様15に記載のカテーテル。
(17) 前記塞栓コイルの前記作用部分が前記可撓性チューブの外部にある、実施態様15に記載のカテーテル。
(18) 前記円筒部材の直径が前記バネの直径より大きい、実施態様15に記載のカテーテル。
(19) 治療装置を配備する方法であって、
加熱要素及び治療装置が収容されるように可撓性チューブを構成することと、
前記可撓性チューブ内に弾性部材を設け、前記治療装置によって圧縮されるように前記弾性部材を位置決めすることと、
前記加熱要素によってエネルギー供給されたときに軟化するように選択された低温接着剤を用いて、前記治療装置を前記加熱要素に接着することと、
前記治療装置を収容する前記可撓性チューブを、体内の標的部位に送達することと、
前記加熱要素を活性化させて前記低温接着剤を軟化させることであって、それにより前記弾性部材によって印加された力が、前記低温接着剤で印加された接着力に打ち勝ち、前記治療装置をイジェクトさせる、ことと、を含む、治療装置の配置方法。
(20) 前記弾性部材がバネである、実施態様19に記載の方法。
【0025】
(21) 前記治療装置が塞栓コイルである、実施態様19に記載の方法。
(22) 前記円筒形加熱要素が、内部表面上に低温接着剤の層を備える、実施態様19に記載の方法。
(23) 前記低温接着剤が60℃以上の軟化温度を有する、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記塞栓コイルが、前記可撓性チューブの前記遠位端内に少なくとも部分的に配設されている、実施態様21に記載の方法。
(25) 前記塞栓コイルが作用部分と固定部分とを備え、前記固定部分が、加熱要素内に保持されるように寸法決めされた円筒部材を含む、実施態様21に記載の方法。
【0026】
(26) 前記固定部分が前記加熱要素内に前記低温接着剤によって保持される、実施態様25に記載の方法。
(27) 前記塞栓コイルの前記作用部分が前記可撓性チューブの外部にある、実施態様25に記載の方法。
(28) 作用部分と固定部分とを有する塞栓コイル用の送達システムであって、
遠隔操作により作動可能な円筒形加熱要素と、
前記円筒形加熱要素の内部表面と前記塞栓コイルの前記固定部分との間に塗布された低温接着剤の層と、
前記塞栓コイルの前記固定部分に接触する圧縮バネであって、前記円筒形加熱要素の作動後に前記低温接着剤の接着力に打ち勝つように選択された、圧縮バネと、を含む、塞栓コイル用の送達システム。
(29) 前記低温接着剤が60℃以上の軟化温度を有する、実施態様28に記載の送達システム。