(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸収性物品は縦長形状であり、前記離間部は溝と凹部吸収部とからなっており、該溝として物品長手方向に沿って前記吸収層を縦断して延在する長手方向溝を備える、請求項1に記載の吸収性物品。
前記溝として、前記長手方向と直交する方向である幅方向に沿って前記吸収層を横断して延在する幅方向溝も備えるとともに、該幅方向溝は前記長手方向溝と交差している請求項1又は2に記載の吸収性物品。
前記表面層が、肌当接面側に第1層を有し、これに隣接する第2層を非肌当接面側に有し、前記第1層と前記第2層とが多数の接合部によって接合されており、多数の該接合部に囲まれて該第1層の肌当接面側に隆起する凸部が、該第1層側の肌当接面側に多数形成されており、前記凸部において、前記第2層は前記第1層の肌当接面側へ向けて隆起して該第1層内に入り込んでおり、前記凸部において、前記第2層の非肌当接面側の面が平坦であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る吸収性物品の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明における吸収性物品の好ましい一実施形態としての生理用ナプキン(以下、「ナプキン」とも言う)1を肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。
本実施形態のナプキン1は、
図1に示すような縦長の形状をしており、肌当接面側に配置される液透過性シートの表面層2、非肌当接面側に配置される液難透過性の防漏層4、及び該両シートの間に配置され、体液を吸収保持する液吸収層3を備えている。表面層2及び防漏層4は、液吸収層3の長手方向前後及び幅方向左右からそれぞれ外方へ延在し、重なり部分において接合されて一体化されている。また、左右方向外方部においては防漏層4が表面層2よりも長く、防漏層4の肌当接面側は撥水性のサイドシート5によって覆われている。本実施形態においては、サイドシート5の幅方向内側が表面層2と重なっているとともに、液吸収層3の左右両側部においても重なっている。この構成によって、ナプキン1の幅方向中央寄りの領域は液体透過性であるが、幅方向左右外側領域では撥水性となって、液吸収層3内に吸収された体液が幅方向左右に拡散された際にも、体液の滲み出しを抑制することができる。
【0011】
なお、本明細書においては、着用者の肌と接触する面を肌当接面、これと反対側の面を非肌当接面と言い、相対的に肌当接面に近い方を肌当接面側、遠い方を非肌当接面側と言う。また、長手方向における両端部方向を前後方向、幅方向における両端部方向を左右方向とも言う。
【0012】
本実施形態における液吸収層3は、ほぼ矩形をなしており、
図1に示すように、その長手方向をナプキンの長手方向(Y方向)に一致させ、ナプキン1の幅方向(X方向)の中央寄りに位置するよう、防漏層の肌当接面側に接着剤等で接合され配設されている。また、液吸収層3は、
図2(A)〜
図2(C)に示すように、吸収コア31がコアラップシート32によって肌当接面側と非肌当接面側とが覆われた構造である。
【0013】
本実施形態の液吸収層3は、肌当接側面を含んで平面方向に連続する連続層6と、これと連続一体となって非肌当接面側に突出する複数の小吸収部8とを備えている。具体的には、液吸収層3は、肌当接面を含んで平面方向に連続する連続層6と、非肌当接面側に、溝71を備えた離間部7によって区分された複数の小吸収部8,8・・・とが配置されて構成された吸収コア31を備えている。離間部7は、溝71とその肌当接面側に位置する凹部吸収部72とからなる。このため、液吸収層3の肌当接面側は平坦な連続層6となっており(
図2(A)及び(B))、その非肌当接面側が溝71と小吸収部8によって凹凸形状となっている(
図2(B)及び(C)参照)。連続層6と小吸収部8とは、両者が物理的に連続した一体構造のものであり、別個の層を接合手段によって一体化したものとは異なる。
【0014】
溝71についてより具体的に説明すると、溝71は、吸収コア31の非肌当接面側から肌当接面側に向かって窪んだ凹部となっている。つまりこの部分は、吸収コア31の構成材料が配されない空間部分となっている。空間部分である溝71によって区画された吸収コア31の部分は、相対的に非肌当接面側に突出し、複数が独立して整列配置された、突出吸収部81とも言うべき構造となっている。また、液吸収層3を厚み方向に見て、溝71の肌当接面側の上部は吸収コア31の一部として凹部吸収部72となっている。凹部吸収部72は、溝71の空間の分だけ小吸収部8よりも厚みが薄く、肌当接面側へと偏在している。このため、離間部
7は隣接する小吸収部8よりも坪量が小さくなっている。また、小吸収部8は突出吸収部81とこれと厚み方向に連続する連続層6の部分を含む構成となっている。したがって、凹部吸収部72と小吸収部8とは、液吸収層3の肌当接面側で連続層6となって平坦面を形成する(
図2(A)参照)。
【0015】
ナプキン1では、溝71が、ナプキン1の長手方向(Y方向)とこれに直交する幅方向(X方向)それぞれに連続的に延びていて、これらによって四方を囲まれたブロック状の吸収コア部分である小吸収部8が連続層6と一体となって、非肌当接面側に向かって凸の複数の小吸収部8,8・・・が、所謂格子状に配置された吸収コアとなって構成されている。長手方向溝71a及び幅方向溝71bは、平面視した際の吸収コア31が存在する領域の前後端及び左右両端に達して配設されている。なお、ナプキン1では、溝71は長手方向に沿って液吸収層3を縦断して延在している。
【0016】
なお本発明において、「連続」ないし「連続的」とは、本実施形態のように溝が直線的に連なる形状に限定されるものではなく、溝がなす空隙が途切れない種々の形態を含む。例えば、千鳥状や亀甲状等の配置形態でも良く、溝の連なりの途中で幅が変化する形態であっても良く、また途中に調整弁のような小空間が配設される形態であっても良い。
【0017】
ナプキン1では、液吸収層3が溝71によって区画され、小吸収部8が動き易くなる。これにより外力に対する可撓性を有する。これを配置した生理用ナプキンは、肌面の起伏にフィットする「身体適合性」、及び着用者の動きにも良好に追随して肌との部分的な隙間を生じ難くできる「動作追随性」が極めて高くなる。
【0018】
吸収コア31において、溝71や小吸収部8の大きさ、形状等は吸収性物品の大きさや使用目的に応じて異なるため一義的に定められない。生理用品や軽失禁パッドの場合、小吸収部8の大きさに関しては、0.25cm
2以上、特に0.5cm
2であることが好ましく、25cm
2以下、特に20cm
2以下であることが好ましい。具体的には、0.25cm
2以上25cm
2以下が好ましく、特に0.5cm
2以上20cm
2以下であることが好ましい。下限値以上であると、確実に圧搾により加圧できること、小吸収部内に適切な粗密勾配を設けることができるという観点から好ましく、上限値以下であると、効率よく湿気を排出するための必要な数の溝を確保することが容易になるという観点から好ましい。なお、ここで大きさとは平面視での面積(圧搾部10による開口部がないものした場合の非肌側面の面積)のことである。
【0019】
溝71の大きさに関しては、長手方向溝71aの幅(r)は、0.2mm以上、特に0.5mm以上が好ましく、5mm以下、特に3mm以下が好ましい。前記下限値以上とすることで肌とナプキンの間に滞留した湿気を外気に逃がし易くなり、上限値以下とすることで溝を経血が一気に流れることによる漏れの発生を防止することができる。また、幅方向溝71bの幅(s)は、0.25mm以上、特に0.5mm以上が好ましく、5mm以下、特に3mm以下が好ましい(
図2参照)。前記下限値以上とすることで肌とナプキンの間に滞留した湿気を外気に逃がし易くなり、前記上限値以下とすることで溝71を経血が一気に流れることによる漏れの発生を防止することができる。なお、上記の好ましい幅は、溝71の非肌当接面側の端における幅が上記範囲であれば良いが、溝71の幅方向全域に亘って上記範囲であることが更に好ましい。
【0020】
また溝71の深さ(すなわち、溝71の非肌当接面側の端から底部である肌当接面側の端までの距離)の吸収コア31全体の厚みに対する割合は、20%以上、特に30%以上が好ましく、80%以下、特に70%以下が好ましい(
図2(B)参照)。前記下限値以上とすることで肌とナプキンの間に滞留した湿気を外気に逃がし易くなり、前記上限値以下とすることで凹部吸収部72によって隣接する小吸収部同士が繋ぎ合わされ、吸収コア31が着用者の動作により破断することを防止することができる。また、溝を経血が一気に流れることによる漏れの発生を防止することができる。なお、多層タイプの液吸収層など、一部が他の部分よりも厚みが大きい部分を有する液吸収層の場合には、厚みの大きい部分に溝が設けられていれば、当該部分の厚みに対する溝の深さが上記範囲であれば良い。一方、厚みの小さい部分に溝が設けられていれば、当該部分の厚みに対する溝の深さが上記範囲であれば良い。
【0021】
本発明のナプキン1においては、液吸収層3に、小吸収部8の非肌当接面側から肌当接面側に向かう圧搾部10が設けられている。圧搾部10は、着用者の排泄部に対向する領域(以下、排泄部対向領域と言う。)における小吸収部8に設けられていれば良いが、好ましくは各小吸収部8に少なくとも1つ設けられている。本実施形態のナプキン1では各小吸収部8に複数の圧搾部10が設けられている。本実施形態では、各ブロック状の小吸収部8内に納まるように、各圧搾部が設けられている。
図2(B)には、密度が高い領域を濃く、低い領域を薄く、模式的に示している。ナプキン1では、圧搾部10によって、小吸収部8内には、圧搾部10の周囲部にはその外側よりも密度が高い高密度領域が設けられている。すなわち、小吸収部8内には、相対的に密度が高い高密度部と密度が低い低密度部が存在する。
図2(B)の形態においては、圧搾部10周囲及び圧搾部10から厚み方向に関して肌当接面側の領域に高密度部が存在する。この密度勾配によって、液吸収層3に吸収された体液は高密度部へと導かれ易くなる。高密度部の周囲には圧搾部10による空隙11が存在している。このため、高密度部に集中的に集まった体液の一部が空隙11から蒸気となって外部へ放出され易くなっている。加えて、小吸収8を区画している溝71と高密度部とが、圧搾部10の存在によって近接する構造となっていることから、体液の一部が蒸気となって溝71へと導かれ易い構造となっている。このために、ナプキン1内の蒸気は一箇所に留まりにくく、しかも、非肌当接面側に集中し易い構造となっているので、着用者とナプキン1との間に蒸気が残り難く、ムレ感を感じにくくなる。加えて、本発明の液吸収層3は小吸収部8と肌当接側面を構成する連続層6が連続一体的に構成されているので、体液が吸収体に接触してから吸収、拡散する行程がスムーズに行われ、上記効果を得られ易い。
【0022】
また、本発明のナプキンと、従来の平坦な吸収体との非肌当接面側の表面積の違いによる水分の吸湿・蒸散の挙動を
図4に示した。平坦な吸収体では、吸収された体液の水分は外界と接する平坦な面を通してのみ放出され得るのに対し、本発明品では、非肌当接面側の表面積が大きく水分の吸湿、蒸散を促し、肌側への蒸散を防ぐのに有効である。特に、ナプキン1では、吸収コア31とコアラップ32に一体的な圧搾部10を設けるため、コアラップ32の密度を吸収コア31より高くすることにより液が通過し易くなる。ただし、コアラップ32を含まない吸収コア31のみに圧搾を設けてもムレ感の抑制は得られる。また、本実施形態のナプキン1の液吸収層3の構造に代えて、コアラップ32を含まない液吸収層3としても良い。
【0023】
ナプキン1においては、溝71によって、液吸収層3の内部に空気との接触する構造(長手方向中空路及び幅方向中空路)が備わる。より具体的には、溝71の底部は表面層に近い位置で空気と接触でき、排泄初期などの液が少量の場合でも、積極的に水分を内部蒸発(以下、内部放湿又は単に放湿とも言う。)させることができる。加えて、溝71の側壁部が、表面層に近い位置から防漏層の位置まで厚み方向に形成されていることで広く空気と接触でき、液保持量の少ないときには側壁部の肌当接面側に近い位置から内部蒸発させ、液保持量の増加に合わせて、側壁部で内部蒸発させることが可能となる。したがって、この長手方向中空路及び幅方向中空路は、排泄量の多寡に係わらず、水分の内部蒸発を可能とする。
【0024】
加えて、ナプキン1では、
図2(B)及び
図4に示すように、小吸収部8に配された圧搾部10により液吸収層3内に有効な密度差が設けられ、吸収した体液をナプキン1の非肌当接面側に素早く導いて、肌に近い側から体液を遠ざけることができるとともに、湿気の内部放湿と内部循環構造により、肌側への放湿を抑えて、肌との間の湿度低減を効果的に実現することができる。排泄液の多寡に係わらず、着用者に高いドライ感を与えてムレ感を与え難く、肌荒れ等を効果的に低減することができる。しかも、溝71が長手方向と幅方向に交差しながら延びる構造によって、より内部循環が効率的に行われると、ムレ感抑制には有効である。また、小吸収部8の密度が離間部7の密度よりも高くなっている。それによって、体液が液吸収層3の肌当接面側から侵入した際に離間部7から小吸収部8側へ移行、拡散し易くなるので、体液が表面に溜まり難く、着用者にドライ感を与え易くなっている。
【0025】
圧搾部10の、非肌側面の平面形状は、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形など種々の形状を採用することが可能である。本実施形態においては、円形のピンエンボスを採用している。圧搾部の表面積、すなわち、液吸収層3の非肌当接側の面における開口部面積は、小吸収部8の非肌側面の平面積(圧搾部10による開口部がないものした場合の非肌側面の面積)に対して、1%以上、特に3%以上、更に10%以上であることが好ましく、70%以下、特に60%以下、更に50%以下であることが好ましい。具体的には、1%以上70%以下、特に3%以上60%以下、更に10%以上50%以下が好ましい。下限値以上であると、十分な導液性が得られ易いとともに、蒸気放出によるムレ感抑制が得られ易くなる。また、上限値以下であると、十分な液保持量を確保しつつ、吸収体が適度な柔らかさを保ち、着用者に違和感を与え難くなる。
【0026】
ナプキン1においては、上述したように、各小吸収部8に複数の圧搾部10(
図2(C)においては2個の圧搾部10)を設けているが、各小吸収部8に1つずつ圧搾部10を設けても良い。また、いずれの場合においても、圧搾部10は液吸収層3全体に設けても良いが、液吸収層3の排泄対向部、又は排泄対向部とその近傍に設けてれば良い。こうすることによって、液吸収層3の排泄対向部での剛性が高まって、溝との剛性差が顕著となり、着用者の肌へのフィット性が高まり、好適な着用感が得られ易くなるとともに、液漏れの抑制にも有効である。
【0027】
ナプキン1においては、圧搾部10の肌側面端部、すなわち、圧搾部10の底部は、前記連続層6の非肌当接面よりも非肌当接面側に位置している。言い換えると、圧搾部10の肌当接面側端部である底部が、溝71の肌当接面側端部である底部よりも非肌当接面側に位置している。したがって、
図2(B)に示すように、小吸収部8では、いずれの位置においても溝71の底部よりも非肌当接面側まで吸収材料が存在していることとなる。このために、吸収コア31の液吸収性能を厚み方向に関して有効に使うことができるとともに、液吸収層3の柔軟性を確保することができる。したがって、溝71の上から吸収された体液を、相対的に密度が高い圧搾部10の周囲部へと導いたとき、該密度の高い周囲部の体積が大きいので、効率的に体液を保持することができる。また、その際に、着用者の動作によって溝71を可撓軸として液吸収層3が変形した際に、小吸収部8が柔軟なので、小吸収部8に過度の力が加わっても吸収コア31が壊れたりすることや、吸収した液が絞りだされたりすることを抑制することができる。
圧搾部10の厚み方向長さ(深さ)は、液吸収層3の全厚みの20%以上、更に30%以上であることが好ましく、また、80%以下、更に75%以下であることが好ましい。この数値範囲であると、吸収コア31の柔軟性と小吸収部8内で低密度部と高密度部との間に液が移行容易な密度勾配を設け易い観点から好ましい。
また、吸収性コア31において、圧搾部10の底部の位置が、溝71の底部の位置よりも、吸収性コア31の全厚みの10%以上の距離だけ非肌当接面側に位置していることが、密度の高い、圧搾部8の周囲領域への体液の迅速な拡散と、その後の液保持性能の両立の観点から好ましい。
【0028】
本発明において、溝71の幅や深さ等は、本実施形態のものに限定されず、前記と同様の作用を奏する溝として任意に変更できる。例えば、
図5に示すような形態とすることも好ましい。
図5は、本発明における液吸収層3の溝の変形例について、吸収体の非肌当接面側から示した平面図である。
図5に示すように、液吸収層の中央から長手方向の前後方向それぞれに向かって溝幅が広がるようにされていても良い。これにより、湿った空気の外部排出をより効果的にすることができ、更に湿度低減を促すことができるので好ましい。
【0029】
更に本発明において、液吸収層3の構造は、本実施形態の1層に限定されず、前記作用を奏する限り、2層以上にしても良い。また、液吸収層3は、排泄部対向領域の厚みを他の領域よりも厚くする、所謂中高構造としても良い。
【0030】
吸収コア31の構成材料としては、特に制限はないが繊維材料、多孔質体、それらの組み合わせなどを用いることができる。繊維素材としては例えば、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を2種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成繊維からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状が変化する熱収縮繊維であっても良い。例えば、熱によって繊度は大きくなるが繊維長が短くなるものや、繊度はほとんど変化しないが、形状がコイル状に変化することでみかけの繊維の占有する長さが短くなるものであっても良い。多孔質体としては、スポンジ、不織布、高吸水性ポリマーの凝集物(高吸水性ポリマーと繊維とが凝集したもの)などを用いることができる。また、コアラップシート32の材料としては、パルプ製シートや不織布製シート等を使用することができる。
【0031】
表面層2としては、各種不織布(例えば、エアスルー不織布やスパンボンド不織布など)を単独、又は複数の重ね合わせた構成や、不織布とフィルムとのラミネートからなり多数の開孔が形成されている複合シート等が用いられる。また表面層は、前記の突起のある上層及び下層とからなるものや、起伏のある上層と平坦な下層との層からなるものであっても良い。この場合、表面層に繊維の密度勾配ができ、表面層1上の液を素早く液吸収層側へ透過させることができるので好ましい。上層及び下層の部材として、カード法によって形成されたウェブや嵩高な不織布などの繊維同士が極めて緩く絡んでいる状態の繊維集合体を用いることができ、下層の部材としてカード法によって形成されたウェブや熱収縮性を有する不織布を用いることができる。好ましい形態としては、
図3に示すように、より液の引き込み性が高く、表層部位に液残りが起こりづらく、また液戻りが起こりにくくするために、肌当接面側に、芯鞘型の熱融着性複合繊維を含み、該熱融着性複合繊維は、熱伸長性繊維が熱処理によって伸長したものからなり、非肌当接面側に、捲縮性繊維を含む繊維層を含み、これらが多数の接合部によって接合されている表面層が好ましいと思われる。具体的には、表面層2として、肌当接面側に第1層を有し、これに隣接する第2層を非肌当接面側に有し、第1層と第2層とが多数の接合部によって接合されており、多数の該接合部に囲まれて該第1層の肌当接面側に隆起する凸部が、該第1層側の肌当接面側に多数形成されており、凸部において、第2層は第1層の肌当接面側へ向けて隆起して該第1層内に入り込んでおり、凸部において、第2層の非肌当接面側の面が平坦である層を用いることができる。
【0032】
防漏層4は、透湿性フィルム単独、又はフィルムに不織布を貼り合わせたもの、撥水性の不織布(SMSやSMMS等)を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、透湿フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。この場合のフィルム材としては、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔をあけたフィルム、又は、本質的に水分の相溶性が高く、浸透膜のように水蒸気排出可能な無孔性のフィルムが挙げられる。本発明に関わる湿度排出の性能を十分に発現し、かつ、水分のにじみ出しがない防漏層を具現化するには、透湿度は、0.7〜3.0g/100(cm
2hr)の範囲にあることが好ましく、1.0〜2.5g/100(cm
2hr)の範囲にあることが更に好ましい。さらっと感を十分に高める観点からは1.5〜2.5g/100(cm
2hr)の範囲にあることが最も好ましい。また、フィルムの破れ等のトラブルなく使用可能であるためには、フィルム坪量は18〜70g/m
2、より好ましくは25〜60g/m
2である。また好ましい無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量%として30〜65質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0033】
本発明の吸収性物品は、上記の実施形態の生理用ナプキンに制限されるものではなく、例えば使い捨ておむつや尿とりパッド、失禁パッド、失禁ライナ等に適応することができる。また、経血に限らずその他、尿、おりもの、軟便等に対しても効果的である。また、表面層、液吸収層、防漏層及びサイドシートの他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでも良い。なお、上記実施形態の生理用ナプキンの表面層、液吸収層及び防漏層の材料、製法における条件や、製品の寸法等は特に限定されず、通常の生理用ナプキン等において用いられている各種材料を用いることができる。
【0034】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の吸収性物品を開示する。
<1>肌当接面に液透過性の表面層、非肌当接面側に防漏層、及び該表面層と該防漏層の間に液吸収層を有する吸収性物品であって、前記液吸収層は、肌当接側面を含んで平面方向に連続する連続層と、これと連続一体となって非肌当接面側に突出する複数の小吸収部とを備えており、前記小吸収部各々は小吸収部よりも坪量が低い離間部で離間しており、前記離間部は前記液吸収層の肌当接面を貫通しておらず、前記小吸収部には非肌当接面側から肌当接面側に向かって窪む圧搾部が設けられている吸収性物品。
【0035】
<2>前記小吸収部では、前記離間部よりも密度が高い前記<1>記載の吸収性物品。
<3>前記吸収性物品は着用者の前後方向に対応する方向に縦長の形状であり、前記離間部は溝と凹部吸収部とからなっており、前記溝として、物品長手方向に沿って前記液吸収層を前後端に亘り縦断する長手方向溝を備える、前記<1>又は<2>記載の吸収性物品。
<4>前記長手方向溝の幅が0.2mm以上5mm以下である前記<3>記載の吸収性物品。
<5>前記溝として、前記長手方向と直交する方向である幅方向に沿って前記吸収層を横断して延在する幅方向溝も備えるとともに、該幅方向溝は前記長手方向溝と交差している前記<3>又は<4>に記載の吸収性物品。
【0036】
<6>前記幅方向溝の幅が0.25mm以上5mm以下である前記<5>記載の吸収性物品。
<7>前記圧搾部の肌当接面側端部が、前記溝の肌当接面側端部よりも非肌当接面側に位置する前記<1>〜<6>いずれか1つに記載の吸収性物品。
<8>前記圧搾部の深さが液吸収層の厚みの20%以上80%以下である前記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<9>前記防漏層が透湿性のフィルムである前記<1>〜<8>いずれか1つに記載の吸収性物品。
<10>前記液吸収層が吸収コアを含んでおり、前記溝の深さが該吸収コアの厚みの20〜80%である前記<1>〜<9>いずれか1つに記載の吸収性物品。
<11>前記圧搾部は各前記小吸収部に複数配置されている前記<1>〜<10>いずれか1つに記載の吸収性物品。
【0037】
<12>前記小吸収部の平面積が0.25cm
2以上25cm
2以下である前記<1>〜<11>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<13>前記圧搾部は小吸収部の非肌側面の平面積に対して当り1%以上70%以下の開口面積で設けられている前記<1>〜<12>いずれか1つに記載の吸収性物品。
<14>前記表面層が、肌当接面側に第1層を有し、これに隣接する第2層を非肌当接面側に有し、前記第1層と前記第2層とが多数の接合部によって接合されており、多数の該接合部に囲まれて該第1層の肌当接面側に隆起する凸部が、該第1層側の肌当接面側に多数形成されており、前記凸部において、前記第2層は前記第1層の肌当接面側へ向けて隆起して該第1層内に入り込んでおり、前記凸部において、前記第2層の非肌当接面側の面が平坦である前記<1>〜<13>いずれか1つに記載の吸収性物品。
<15>前記液吸収層が吸収コアの肌当接面側と非肌当接面側をコアラップで覆ったものであり、前記圧搾部が非肌当接面側のコアラップを含んで形成されている前記<1>〜<14>いずれか1つに記載の吸収性物品。
<16>前記液吸収層は、排泄部対向領域が他の領域よりも厚みが大きい中高構造である、前記<1>〜<15>いずれか1つに記載の吸収性物品。
【0038】
<17>前記圧搾部が、着用者の排泄部に対向する排泄部対向部に設けられている前記<1>〜<14>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<18>前記圧搾部が、全ての小吸収部に設けられている前記<1>〜<15>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<19>圧搾部の非肌側面の平面形状が、円形、楕円形、正方形又は三角形である、前記<1>〜<18>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<20>前記吸収性物品が生理用品又は失禁パッドである前記<1>〜<19>いずれか1つに記載の吸収性物品。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0040】
〔実施例1〕
図1に示す構成の生理用ナプキンを常法に従って製造し、これを実施例1のサンプルとした。表面層及びサイドシートとしては坪量25g/m
2のポリエチレン製エアスルー不織布を使用し、表面層には親水化処理を施して液透過性とした。防漏層として、坪量30g/m
2の非透湿ポリエチレン製フィルムを使用した。
液吸収層は、特開2012−125270の実施例に従って作製し、小吸収部(ブロック部分)の非肌当接面側から肌当接面に向かって、直径3mm、深さ0.7mmの圧搾部(ピンエンボス)を設けた。液吸収層の寸法は、液吸収層の長さが275mm、液吸収層の幅が80mm、液吸収層の厚みが2mmであった。液吸収層の溝の幅は2mm、深さは1mmであった。
また、液吸収層の小吸収部の密度は、0.10g/cm
3であった。液吸収層の凹部吸収部の密度は、0.05g/cm
3であった。液吸収層の小吸収部のパルプの坪量は160g/m
2、吸水ポリマーの坪量は50g/m
2であり、液吸収層の凹部吸収部のパルプの坪量は80g/m
2、吸水ポリマーの坪量は25g/m
2であった。
【0041】
[実施例2]
表面材として、特開2012−5701の実施例1記載の凹凸シートを用いる以外は実施例1と同様にして生理用ナプキンを作製した。
【0042】
〔比較例1〕
液吸収層として、小吸収部に圧搾部を設けない液吸収層を実施例1と同様の寸法で作製した。
液吸収層のパルプの坪量は160g/m
2、吸水ポリマーの坪量は50g/m
2であった。
【0043】
〔比較例2〕
吸収体として、溝のない吸収体を実施例1と同様の寸法で作製した。これを積層したものと吸収体として用い、実施例1と同様にして生理用ナプキンを製造して得た。これを比較例のサンプルとした。
吸収体のパルプの坪量は160g/m
2、吸水ポリマーの坪量は50g/m
2であった。
【0044】
〔性能評価〕
<表面液残り量>
表層液戻り量の測定方法を以下に説明する。この表層液戻り量とは、液吸収層に吸収された液が加圧によってどれだけ表面層側へ戻るかを示したものである。この量が少ないほど、液吸収層の液保持性が高く、装着時のドライ感、低いムレ感が得られ易い。
まず生理用ナプキンを水平に置いた。この生理用ナプキン上に、底部に直径1cmの注入口がついた円筒つきアクリル板を重ねて、サンプルの排泄部対向領域(サンプルの長手方向前端から40mmの位置)に注入口から粘度を8.0±0.1cPに調整した3gの脱繊維馬血を注入した。注入後、その状態を1分間保持した。次に、円筒つきアクリル板を取り除き、表面シートの表面上に、縦6cm×横9.5cmで坪量13g/m
2の予め質量を測定しておいた吸収紙(市販のティッシュペーパー)を載せた。更にその上に圧力が4.5×10
2Paになるように錘を載せて5秒間加圧した。加圧後、吸収紙を取り出し、加圧前後の吸収紙の質量変化を測定し、吸収紙に吸収された脱繊維馬血の質量を表層液残り量とした。
次いで、試験後のサンプルに再び上記のアクリル板を重ね、1回目の注入から3分後に再び注入口から3gの脱繊維馬血を追加して注入した。生理用ナプキンへの馬血の注入位置は、最初の3gを注入した位置と同じとした。そして、注入後1分間その状態を保持したままにした後、アクリル板を取り除き、前回と同様にして2回目の表層液残り量を測定した。更に、2回目の注入から3分後、その測定方後のサンプルに、前記と同様にして、3gの脱繊維馬血を追加して注入し、前回と同様にして3回目の表面液残り量を測定した。また、各々の液注入の際、液を注入してから全ての液を吸収するまでの時間(液吸収時間)を測定した。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示す結果から明らかなように、実施例1の生理用ナプキンは、表層液残り量が少なく、液の引き込み性に優れることがわかった。また、表面シートを特定のものとした実施例2においては、更に表層液残り量が少なくなった。このように各実施例の生理用ナプキンは、液の保持性に優れ、着用者の肌側の湿度を効果的に低減できることから、液量の多寡に係わらず、着用者に優れたドライ感を与えてより快適な着用感を提供することができる。