(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271207
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】鋼管の補強方法及び補強装置
(51)【国際特許分類】
E02D 5/28 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
E02D5/28
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-210913(P2013-210913)
(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2015-74902(P2015-74902A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
【審査官】
亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−348819(JP,A)
【文献】
特開平06−257150(JP,A)
【文献】
特開昭57−081529(JP,A)
【文献】
特開2012−136929(JP,A)
【文献】
特開平08−302686(JP,A)
【文献】
特開2012−207450(JP,A)
【文献】
米国特許第06047505(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22−5/80
E02D 17/04、17/08
E02D 7/00−13/10
E02D 5/00−5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に支保工が架設され当該側面に当該支保工から局部荷重を受ける鋼管の、当該支保工からの局部荷重作用点に相当する鋼管内面を支持して当該局部荷重に対する構造強度を補強する補強装置を鋼管の内部に着脱自在に設置する鋼管の補強方法であって、
前記補強装置として、鋼管内面と略等価曲率の支持面をそれぞれ有し、鋼管軸を中心にして前記支持面が外向きに配置される複数の支持部と、前記複数の支持部が鋼管軸を中心に集散するよう半径方向に前記複数の支持部を相対的に移動させる移動機構と、を備え、前記支持面が鋼管軸を中心とした最大径部位とされ、前記移動機構による前記最大径部位の径の拡大に伴い前記支持面を鋼管内面に当接させて鋼管内部に設置可能にされたものを用い、
前記支持面を、前記局部荷重作用点に相当する鋼管内面に当接させて、前記補強装置を鋼管内部に設置する鋼管の補強方法。
【請求項2】
前記支持面を、前記局部荷重作用点に相当する鋼管内面に当接させて、前記補強装置を鋼管内部に設置した後、
前記移動機構により前記最大径部位の径を縮小させて前記補強装置を前記鋼管内から撤去する請求項1に記載の鋼管の補強方法。
【請求項3】
側面に局部荷重を受ける鋼管の、当該局部荷重作用点に相当する鋼管内面を支持して当該局部荷重に対する構造強度を補強する補強装置であって、
鋼管内面と略等価曲率の支持面をそれぞれ有し、鋼管軸を中心にして前記支持面が外向きに配置される複数の支持部と、
前記複数の支持部が鋼管軸を中心に集散するよう半径方向に前記複数の支持部を相対的に移動させる移動機構と、
を備え、
前記支持面が鋼管軸を中心とした最大径部位とされ、前記移動機構による前記最大径部位の径の拡大に伴い前記支持面を鋼管内面に当接させて鋼管内部に設置可能にされ、
前記移動機構は、動力装置と、前記動力装置の動力を前記複数の支持部に伝達する伝達機構とによって前記複数の支持部を、鋼管軸を中心とした半径方向に移動させる機構であり、
前記動力装置の出力軸が鋼管軸上に配置される鋼管の補強装置。
【請求項4】
側面に局部荷重を受ける鋼管の、当該局部荷重作用点に相当する鋼管内面を支持して当該局部荷重に対する構造強度を補強する補強装置であって、
鋼管内面と略等価曲率の支持面をそれぞれ有し、鋼管軸を中心にして前記支持面が外向きに配置される複数の支持部と、
前記複数の支持部が鋼管軸を中心に集散するよう半径方向に前記複数の支持部を相対的に移動させる移動機構と、
を備え、
前記支持面が鋼管軸を中心とした最大径部位とされ、前記移動機構による前記最大径部位の径の拡大に伴い前記支持面を鋼管内面に当接させて鋼管内部に設置可能にされ、
前記移動機構は、複動シリンダーと、前記複動シリンダーの動力を前記複数の支持部に伝達するコッタとによって前記複数の支持部を、鋼管軸を中心とした半径方向に移動させる機構であり、
前記複動シリンダーの出力軸が鋼管軸上に配置される鋼管の補強装置。
【請求項5】
側面に局部荷重を受ける鋼管の、当該局部荷重作用点に相当する鋼管内面を支持して当該局部荷重に対する構造強度を補強する補強装置であって、
鋼管内面と略等価曲率の支持面をそれぞれ有し、鋼管軸を中心にして前記支持面が外向きに配置される複数の支持部と、
前記複数の支持部が鋼管軸を中心に集散するよう半径方向に前記複数の支持部を相対的に移動させる移動機構と、
を備え、
前記支持面が鋼管軸を中心とした最大径部位とされ、前記移動機構による前記最大径部位の径の拡大に伴い前記支持面を鋼管内面に当接させて鋼管内部に設置可能にされ、
前記移動機構は、モーターと、前記モーターの動力を前記複数の支持部に伝達するネジ及び歯車機構とによって前記複数の支持部を、鋼管軸を中心とした半径方向に移動させる機構であり、
前記モーターの出力軸が鋼管軸上に配置される鋼管の補強装置。
【請求項6】
側面に局部荷重を受ける鋼管の、当該局部荷重作用点に相当する鋼管内面を支持して当該局部荷重に対する構造強度を補強する補強装置であって、
鋼管内面と略等価曲率の支持面をそれぞれ有し、鋼管軸を中心にして前記支持面が外向きに配置される複数の支持部と、
前記複数の支持部が鋼管軸を中心に集散するよう半径方向に前記複数の支持部を相対的に移動させる移動機構と、
を備え、
前記支持面が鋼管軸を中心とした最大径部位とされ、前記移動機構による前記最大径部位の径の拡大に伴い前記支持面を鋼管内面に当接させて鋼管内部に設置可能にされ、
前記移動機構は、複動シリンダーと、前記複動シリンダーの動力を前記複数の支持部に伝達するリンク機構とによって前記複数の支持部を、鋼管軸を中心とした半径方向に移動させる機構であり、
前記複動シリンダーの出力軸が鋼管軸上に配置される鋼管の補強装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の補強方法及び補強装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、土留壁では壁面に支保工を設置するが、鋼管矢板や鋼管杭では鋼管が支保工と線接触するため、鋼管側面には局部荷重が作用する。
また、建築物の柱・梁接合部において柱が鋼管である場合も同様である。
鋼管矢板土留壁や建築物の鋼管柱・梁接合部などにおいて鋼管柱の側面に局部荷重が作用すると、鋼管側面は凹みなど損傷を受ける虞がある。
そこで、これら鋼管側面に作用する局部荷重に対しその作用点位置の鋼管の内部に補強部材を挿入して鋼管を補強することが行われる。そのために、例えば、特許文献1にあっては、短尺のコンクリート柱を膨張セメントで鋼管杭内に固着する。また特許文献2にあっては、縦リブを有する治具を梁接合位置の鋼管柱内部に溶接固定する。
また、特許文献3には、鋼管と鋼管との継手部に設置されるリング状の本体を成した継手部裏当リングが記載されている。この継手部裏当リングは、外周に設けられた突起部で溶接間隔を保持するためのものであって、リング本体に設けられたテーパー状スリットに楔を打ち込んでリング本体を拡径させて鋼管に密着安定させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−098524号公報
【特許文献2】特開平06−288001号公報
【特許文献3】特開2003−286718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、以上の従来技術にあっては次のような課題がある。
特許文献1に記載の方法では、膨張セメントを充填する作業や、その膨張セメントの硬化・強度発現を待たなければならず、補強完了までに時間を要して効率的でない。
特許文献2に記載の方法では、治具を鋼管内部に溶接するため、補強個所が鋼管の開口端より遠い中ほどになるほど、治具の位置決めや溶接作業が困難となり、相当の労力を要する。
特許文献3に記載の継手部裏当リングは、鋼管と鋼管の継手部にしか設置できず、かつ、外圧に対する補強を目的としておらず補強効果があまり期待でいない。
また以上の何れの従来技術においても、補強部材は1個所ずつの設置となり作業効率が悪いほか、補強が不要となった場合には容易に補強部材を撤去・回収ができず不経済である。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、鋼管の軸方向の任意の1又は2以上の個所を鋼管内部から補強するにあたり、所要の個所を作業効率よく補強でき、再利用性があって工期の短縮、工事費の節減に寄与できる鋼管の補強方法及び補強装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、側面に
支保工が架設され当該側面に当該支保工から局部荷重を受ける鋼管の、
当該支保工からの局部荷重作用点に相当する鋼管内面を支持して当該局部荷重に対する構造強度を補強する補強装置を鋼管の内部に着脱自在に設置する鋼管の補強方法
であって、
前記補強装置として、鋼管内面と略等価曲率の支持面をそれぞれ有し、鋼管軸を中心にして前記支持面が外向きに配置される複数の支持部と、前記複数の支持部が鋼管軸を中心に集散するよう半径方向に前記複数の支持部を相対的に移動させる移動機構と、を備え、前記支持面が鋼管軸を中心とした最大径部位とされ、前記移動機構による前記最大径部位の径の拡大に伴い前記支持面を鋼管内面に当接させて鋼管内部に設置可能にされたものを用い、
前記支持面を、前記局部荷重作用点に相当する鋼管内面に当接させて、前記補強装置を鋼管内部に設置する鋼管の補強方法である。
【0007】
請求項2記載の発明は、
前記支持面を、前記局部荷重作用点に相当する鋼管内面に当接させて、前記補強装置を鋼管内部に設置した後、
前記移動機構により前記最大径部位の径を縮小させて前記補強装置を前記鋼管内から撤去する請求項1に記載の鋼管の補強方法である。
【0008】
請求項3記載の発明は、側面に局部荷重を受ける鋼管の、当該局部荷重作用点に相当する鋼管内面を支持して当該局部荷重に対する構造強度を補強する補強装置であって、
鋼管内面と略等価曲率の支持面をそれぞれ有し、鋼管軸を中心にして前記支持面が外向きに配置される複数の支持部と、
前記複数の支持部が鋼管軸を中心に集散するよう半径方向に前記複数の支持部を相対的に移動させる移動機構と、
を備え、
前記支持面が鋼管軸を中心とした最大径部位とされ、前記移動機構による前記最大径部位の径の拡大に伴い前記支持面を鋼管内面に当接させて鋼管内部に設置可能にされ
、
前記移動機構は、動力装置と、前記動力装置の動力を前記複数の支持部に伝達する伝達機構とによって前記複数の支持部を、鋼管軸を中心とした半径方向に移動させる機構であり、
前記動力装置の出力軸が鋼管軸上に配置される鋼管の補強装置である。
【0009】
請求項4記載の発明は、
側面に局部荷重を受ける鋼管の、当該局部荷重作用点に相当する鋼管内面を支持して当該局部荷重に対する構造強度を補強する補強装置であって、
鋼管内面と略等価曲率の支持面をそれぞれ有し、鋼管軸を中心にして前記支持面が外向きに配置される複数の支持部と、
前記複数の支持部が鋼管軸を中心に集散するよう半径方向に前記複数の支持部を相対的に移動させる移動機構と、
を備え、
前記支持面が鋼管軸を中心とした最大径部位とされ、前記移動機構による前記最大径部位の径の拡大に伴い前記支持面を鋼管内面に当接させて鋼管内部に設置可能にされ、
前記移動機構は、複動シリンダーと、前記複動シリンダーの動力を前記複数の支持部に伝達するコッタとによって前記複数の支持部を、鋼管軸を中心とした半径方向に移動させる機構であり、
前記複動シリンダーの出力軸が鋼管軸上に配置される鋼管の補強装置である。
【0010】
請求項5記載の発明は、
側面に局部荷重を受ける鋼管の、当該局部荷重作用点に相当する鋼管内面を支持して当該局部荷重に対する構造強度を補強する補強装置であって、
鋼管内面と略等価曲率の支持面をそれぞれ有し、鋼管軸を中心にして前記支持面が外向きに配置される複数の支持部と、
前記複数の支持部が鋼管軸を中心に集散するよう半径方向に前記複数の支持部を相対的に移動させる移動機構と、
を備え、
前記支持面が鋼管軸を中心とした最大径部位とされ、前記移動機構による前記最大径部位の径の拡大に伴い前記支持面を鋼管内面に当接させて鋼管内部に設置可能にされ、
前記移動機構は、モーターと、前記モーターの動力を前記複数の支持部に伝達するネジ及び歯車機構とによって前記複数の支持部を、鋼管軸を中心とした半径方向に移動させる機構であり、
前記モーターの出力軸が鋼管軸上に配置される鋼管の補強装置である。
請求項6記載の発明は、側面に局部荷重を受ける鋼管の、当該局部荷重作用点に相当する鋼管内面を支持して当該局部荷重に対する構造強度を補強する補強装置であって、
鋼管内面と略等価曲率の支持面をそれぞれ有し、鋼管軸を中心にして前記支持面が外向きに配置される複数の支持部と、
前記複数の支持部が鋼管軸を中心に集散するよう半径方向に前記複数の支持部を相対的に移動させる移動機構と、
を備え、
前記支持面が鋼管軸を中心とした最大径部位とされ、前記移動機構による前記最大径部位の径の拡大に伴い前記支持面を鋼管内面に当接させて鋼管内部に設置可能にされ、
前記移動機構は、複動シリンダーと、前記複動シリンダーの動力を前記複数の支持部に伝達するリンク機構とによって前記複数の支持部を、鋼管軸を中心とした半径方向に移動させる機構であり、
前記複動シリンダーの出力軸が鋼管軸上に配置される鋼管の補強装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、補強装置を鋼管の内部に着脱自在に設置するので、短時間で補強を完了でき、位置決めのやり直しも容易であり、所要の個所を作業効率よく補強できる。補強が不要となった場合には、補強装置を容易に撤去、回収することができ、また、補強装置が撤去できるので、補強装置のみならず鋼管の再利用をも図ることができる。以上により、工期の短縮、工事費の節減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による鋼管の補強構造の縦断面図である。
【
図2】本発明の一構成例である補強装置を含む補強個所の垂直方向視模式図(a)及び水平方向視模式図(b)である。
【
図3】本発明の他の一構成例である補強装置を含む補強個所の垂直方向視模式図(a)及び水平方向視模式図(b)である。
【
図4】本発明の他の一構成例である補強装置を含む補強個所の垂直方向視模式図(a)及び水平方向視模式図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0014】
図1に示すように、立坑など鋼管を用いた連続壁の鋼管100の側面101,101,・・・に支保工200,200,・・・が架設される構造において、補強装置1,1,・・・を鋼管100の内部に着脱自在に設置して補強する場合について説明する。
鋼管100背面に作用する土水圧は支保工200によって支持されるが、支保工200と線接触する鋼管100の側面101には支保工200からの反力が局部荷重として作用する。この場合、鋼管100は局部荷重によって凹み等の損傷を受ける虞があるため、その局部荷重作用点に相当する鋼管内面102を補強装置1によって内側から突っ張るようにして支持することで当該局部荷重に対する補強を行う。
【0015】
図1に示すように、鋼管100の軸方向に位置の異なる2以上の補強対象個所の内部に補強装置1,1,・・・をそれぞれ設置するに場合には、ワイヤーや棒材などの連結材2により補強装置1,1,・・・を連結して鋼管100内に挿入する。
それには、まず、補強対象個所の数に相等する数の補強装置1を用意する。補強対象個所がN個所であるとすると、補強装置1をN個用意する。なお、
図1では3個所分を図示する。
最下位置の補強対象個所を1番目として、上へ向って2番目、3番目、・・・N番目とする。1番目を補強する補強装置1と2番目を補強する補強装置1とを、1番目と2番目の補強対象個所の間隔に相等する間隔で連結材2により連結する。1番目、2番目の補強対象個所にそれぞれ補強装置1を精度良く配置するためである。この間隔は、予め決まっているので連結材2の長さを適宜合うように調整しておけばよい。
同様にして、2番目を補強する補強装置1と3番目を補強する補強装置1とを、2番目と3番目の補強対象個所の間隔に相等する間隔で連結材2により連結する。
【0016】
さらにN番目を補強する補強装置1に連結材2を連結して、この連結材2は鋼管100の上端部や鋼管100外の適所に固定し、そこに固定したときにN番目を補強する補強装置1がちょうどN番目の補強対象個所に配置される長さに調整しておく。
【0017】
補強装置1を鋼管100内に挿入する作業は支保工架設前の適宜のタイミングで行えばよい。例えば、1番目を補強する補強装置1と2番目を補強する補強装置1とを連結材2で連結したら、1番目を補強する補強装置1を鋼管100内に挿入して下ろしていき、2番目を補強する補強装置1と3番目を補強する補強装置1とを連結材2で連結したら、2番目を補強する補強装置1を鋼管100内に挿入して下ろしていく、というように連結しながら順次に挿入してもよい。
また、使用するすべて補強装置1を使用するすべての連結材2で連結してから、1番目を補強する補強装置1から順次に鋼管100内に挿入してもよい。
また、使用するすべて補強装置1を使用するすべての連結材2で連結し、N番目を補強する補強装置1に連結した連結材2を鋼管100の上端部や鋼管100外の適所に固定した後、1番目を補強する補強装置1から順次に鋼管100内に挿入してもよい。連結材2で正しく連結された補強装置1を現場に持ち込めば、現場作業を格段に効率化できる。
【0018】
以上のように、すべて補強装置1を鋼管100内に挿入し、N番目を補強する補強装置1に連結した連結材2を鋼管100の上端部や鋼管100外の適所に固定すると、N番目を補強する補強装置1がちょうどN番目の補強対象個所に配置されるとともに、その下に続く1番目から(N−1)番目の補強装置1もそれぞれ精度良く補強対象個所に配置される。
【0019】
すべての補強装置1を補強対象個所に配置したら、各補強装置1をその着脱のための機能を用いて外圧を支持できる状態に設置する。補強装置1の着脱のための機能としては、
図2から
図4にそれぞれ例示するように、挿入作業時は鋼管100の内径未満に縮径し、設置時は鋼管100の内径以上に拡径する機能が好適に用いられる。
すなわち、拡径する機能を利用する場合、すべての補強装置1が補強対象個所に配置されたら、各補強装置1を拡径させて鋼管内面102に当接させて設置する。
以上で補強が完了する。
その後、補強が不要となれば、各補強装置1を縮径させて鋼管100内から順次引き抜き撤去できる。すべての補強装置1が連結材2で連結されているから、すべての補強装置1を引き抜き撤去する作業が迅速かつ容易に行える。
【0020】
次に、補強装置1の具体的構成例につき、
図2、
図3及び
図4を参照して説明する。
まず、
図2に示した一構成例である補強装置1Aにつき説明する。
図2に示すように補強装置1Aは、中心に配置されるコッタ10と、コッタ10を介して対向する2つの支持部11,11とを備える。
コッタ10は、軸方向の位置によって外径が増減する雄テーパー面を有した円錐台状の形状を有する。支持部11,11はそれぞれコッタ10の雄テーパー面にして相補的な雌テーパー面を有しており、コッタ10の雄テーパー面と支持部11,11の雌テーパー面とが接している。2つの支持部11,11は、ガイド部12,12により連結されている。2つの支持部11,11は、ガイド部12,12により径方向に沿って相対的に近づいたり離れたりできるようにガイドされている。また、2つの支持部11,11は、ガイド部12,12に設けられたバネ(不図示)によって互いに近づく方向に付勢されている。
支持部11,11は、上下の支持板13,13によって挟まれ、軸方向に移動規制され半径方向に移動自由にされている。支持板13に固定されたフレーム14を介して複動シリンダー15が設けられ、複動シリンダー15の出力軸が継手16を介してコッタ10に連結されている。
【0021】
したがって、複動シリンダー15を動作させることによって、コッタ10が支持部11,11に対して軸方向に移動し、これに伴いコッタ10の雄テーパー面と支持部11,11の雌テーパー面とが摺動して、2つの支持部11,11が鋼管軸Aを中心に集散するよう半径方向に移動する。
以上のように複数の支持部11,11を相対的に移動させる移動機構が構成されている。コッタ10、支持部11は、金属類のほかコンクリートや、塩ビ等のプラスチックなどで、耐荷部材であればよい。
【0022】
支持部11,11は、鋼管内面と略等価曲率の支持面11aをそれぞれ有している。
図2に示すように、鋼管軸Aを中心にして支持面11a,11aが外向きに配置される。また、支持面11a,11aが鋼管軸Aを中心とした最大径部位とされ、上述した移動機構による最大径部位の径の拡大に伴い支持面11a,11aを鋼管内面に当接させて鋼管100内部に設置可能である。支持面11a,11aが最大径部位であるので、鋼管内部の任意の個所に設置可能である。
図2(b)の場合、複動シリンダー15を縮ませてコッタ10を引き上げることにより、支持面11a,11aが拡径移動し、これにより支持面11a,11aを鋼管内面に当接させて補強装置1Aを鋼管100内部に設置でき、反対に、複動シリンダー15を伸ばしてコッタ10を押し下げることにより、支持面11a,11aがバネの力により縮径移動し、これにより補強装置1Aを取り外し鋼管100内部から撤去することができる。
【0023】
図2に示すように、局部荷重作用点に相当する鋼管内面102に支持面11a(好ましくは支持面11aの周方向中心)が当接する設置状態を確実に実現できることが好ましい。
そのためには、支持面11aの中心角θ(
図2(a)参照)は大きいほうが良い。中心角θを大きくするためには、支持部11は少ない方が良いため、本例のように最少の2つとすることが好ましい。そして、中心角θとして90度以上を確保するように支持部11を形成する。こうしたことで支保工が架設される側に対面する鋼管側面には、支持部材を介して反力が作用するが、支持部材に触れない部分の力の成分は法線方向に対して接線方向が卓越するため鋼管の変形を抑止できる。
またこの場合、±45度以上の設置誤差が許容されるが、設置誤差が大きくならないようにするために、連結材2を接続する連結部17(
図2(b)参照)を上下各2個所に設け、
図1に示したように2本の並列な連結材2,2で補強装置1,1間を連結することが好ましい。これにより、鋼管100内へ挿入時における補強装置1の回転を抑え、支持面11aが局部荷重作用点に相当する鋼管内面102から外れることを防ぐことができる。複動シリンダー15に替えてネジジャッキなど往復動可能なものとしてもよい。
【0024】
次に、
図3に示した一構成例である補強装置1Bにつき説明する。なお、
図2に示した補強装置1Aと対応する要素は同符号を付し説明を省略する。
本例の補強装置1Bは、モーターとネジ機構によって支持部11,11の半径方向への移動機構を実現するものである。
例えば
図3に示すとおり、モーター20と、かさ歯車21,22,22と、支持部11,11とをフレーム24に支持し、かさ歯車22,22の軸23に形成された雄ネジ23aを、支持部11に形成された雌ネジ11bに螺合連結し、モーター20の回転動力を、かさ歯車21,22,22を介して雄ネジ23aまで伝達することで、支持部11,11の半径方向への移動機構を実現できる。支持部11,11はフレーム24に対し半径方向にのみ可動にして支持される。
【0025】
次に、
図4に示した一構成例である補強装置1Cにつき説明する。なお、
図2に示した補強装置1Aと対応する要素は同符号を付し説明を省略する。
本例の補強装置1Cは、複動シリンダーとリンク機構によって支持部11,11の半径方向への移動機構を実現するものである。
例えば
図4に示すとおり、複動シリンダー30の両端に連結されたヒンジベース31,31をそれぞれ経由するように2つの支持部11,11を4つのリンク32,32,32,32を介して連結し、複動シリンダー30を伸縮させることで、支持部11,11の半径方向への移動機構を実現できる。
なお、リンク32,32,32,32とブラケット33,33を排して、複動シリンダー30の軸方向を一方の支持部11から他方の支持部11に至る方向に配置し、2つの支持部11,11を直接的に複動シリンダー30で連結した構成を実施してもよい。いわば、一方のヒンジベース31が一方の支持部11に固定され、他方のヒンジベース31が他方の支持部11に固定されたような構成である。
【0026】
以上説明した補強装置1A,1B,1Cは、動力装置(15,20,30)と、その動力を支持部11,11に伝達する機構とを個々に備えるものである。
各動力装置(15,20,30)と接続されたコントローラーを鋼管100の外部に設置しておき、必要数の補強装置1を鋼管100内に配置した後、コントローラーを操作して支持部11の拡径動作を実行させることで、補強装置1を鋼管100の内部に設置する。その際、コントローラーを操作して全補強装置1の支持部11の拡径動作を一斉に実行させることで、必要数の補強装置1を鋼管100の内部に短時間で設置することができる。
設置後、コントローラーを操作して支持部11の縮径動作を実行させれば、鋼管100内から補強装置1を引き抜き撤去することができる。その際、コントローラーを操作して全補強装置1の支持部11の縮径動作を一斉に実行させれば、鋼管100内から補強装置1を引き抜き撤去するための準備を短時間に行える。
動力装置(15,20,30)のエネルギー形態は、電気、油圧、空圧などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。
なお、補強装置1は、支持面11aの曲率を変えることで、各径の鋼管の補強に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1(1A,1B,1C) 補強装置
11 支持部
11a 支持面
2 連結材
100 鋼管
200 支保工