特許第6271282号(P6271282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271282
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】断熱スリーブ
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/147 20060101AFI20180122BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20180122BHJP
   F01N 13/14 20100101ALI20180122BHJP
   F02B 77/11 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   F16L59/147
   F01N13/08 F
   F01N13/14
   F02B77/11 D
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-26766(P2014-26766)
(22)【出願日】2014年2月14日
(65)【公開番号】特開2015-152097(P2015-152097A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 安津志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健二
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−157054(JP,U)
【文献】 国際公開第00/22329(WO,A2)
【文献】 特開平11−311396(JP,A)
【文献】 特表2005−530061(JP,A)
【文献】 特開昭59−043288(JP,A)
【文献】 実開昭53−69830(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/10
F16L 59/14
F16L 59/147
F16L 7/00
F16L 58/02
F01N 13/08
F01N 13/14
F02B 77/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温配管被覆用の断熱スリーブであって、
第一端および前記第一端と反対側の第二端を有する、無機質繊維を編組した筒状編組体により形成された第一スリーブ部と、
前記第一スリーブ部とは別の部材として構成され、前記第一スリーブ部の内周面に固定され、無機質繊維を編組した筒状編組体が折り返された形状の第二スリーブ部とを備え、
前記第二スリーブ部は、前記第一スリーブ部の、前記第一端における前記内周面を覆い、前記第一端から前記第一スリーブ部の外部にまで延びている、断熱スリーブ。
【請求項2】
前記第二スリーブ部は、前記第一スリーブ部の前記内周面に縫製処理により一体化されており、前記第一スリーブ部の外部に折り返しを有し、前記第二スリーブ部を形成するための縫製処理が前記第一スリーブ部の内部でのみ施されている、請求項に記載の断熱スリーブ。
【請求項3】
前記高温配管は、第1の配管と、前記第1の配管に対して径方向外側に突出する突出部とを有し、
前記第一スリーブ部は、前記第1の配管の外周面を被覆し、
前記第二スリーブ部は、前記突出部の外周面を覆う、請求項またはに記載の断熱スリーブ。
【請求項4】
前記高温配管は、前記第1の配管に繋ぎ合わされた第2の配管をさらに有し、
前記突出部は、前記第1の配管と前記第2の配管とを繋ぐ位置に設けられている、請求項に記載の断熱スリーブ。
【請求項5】
前記第1の配管と前記第2の配管とは、互いに溶接されており、
前記突出部は、溶接ビードである、請求項に記載の断熱スリーブ。
【請求項6】
前記第一スリーブ部と前記第二スリーブ部とは、異なる材料製である、請求項1からのいずれか1項に記載の断熱スリーブ。
【請求項7】
前記第二スリーブ部は、複数の前記折り返しを有する、請求項に記載の断熱スリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱スリーブに関し、特に、内部を高温の流体が流れる高温配管の被覆に用いられる断熱スリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温配管に好適な断熱スリーブが提案されている(たとえば、特開平11−311396号公報(特許文献1)参照)。特許文献1には、ガラス繊維などの無機質繊維を編組した筒状編組体からなる断熱スリーブにおいて、端部をスリーブの内側に折り返した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−311396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車に搭載される内燃機関などの、振動を発生する装置に取り付けられた配管は、当該装置とともに振動する。この配管の振動によって、配管を被覆する断熱スリーブが配管に対して摺動し、その結果、断熱スリーブにホツレ、破れなどの損傷が発生する問題があった。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、損傷の発生を抑制できる、断熱スリーブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る断熱スリーブは、高温配管被覆用の断熱スリーブであって、筒状の第一スリーブ部と、筒状の第二スリーブ部とを備えている。第一スリーブ部は、第一端、および第一端と反対側の第二端を有している。第二スリーブ部は、第一スリーブ部とは別の部材として構成されている。第二スリーブ部は、第一スリーブ部の、第一端における内周面を覆い、第二端における内周面を覆わない。
【0007】
上記断熱スリーブにおいて好ましくは、第二スリーブ部は、第一端から第一スリーブ部の外部にまで延びている。
【0008】
上記断熱スリーブにおいて好ましくは、第二スリーブ部は、第一スリーブ部の外部において、周方向に非拘束とされている。
【0009】
上記断熱スリーブにおいて好ましくは、高温配管は、第1の配管と、第1の配管に対して径方向外側に突出する突出部とを有している。第一スリーブ部は、第1の配管の外周面を被覆している。第二スリーブ部は、突出部の外周面を覆っている。
【0010】
上記断熱スリーブにおいて好ましくは、高温配管は、第1の配管に繋ぎ合わされた第2の配管をさらに有している。突出部は、第1の配管と第2の配管とを繋ぐ位置に設けられている。
【0011】
上記断熱スリーブにおいて好ましくは、第1の配管と第2の配管とは、互いに溶接されており、突出部は、溶接ビードである。
【0012】
上記断熱スリーブにおいて好ましくは、第一スリーブ部と第二スリーブ部とは、異なる材料製である。
【0013】
上記断熱スリーブにおいて好ましくは、第二スリーブ部は、第一スリーブ部の内周面に固定されている。
【0014】
上記断熱スリーブにおいて好ましくは、第二スリーブ部は、第一スリーブ部の内周面に縫い付けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の断熱スリーブによると、損傷の発生を抑制できるので、耐久性を向上でき、長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1の断熱スリーブの構成の概略を示す断面模式図である。
図2図1に示す第一スリーブ部の構成を示す断面図である。
図3】実施の形態2の断熱スリーブの構成を示す断面模式図である。
図4】実施の形態3の断熱スリーブの構成を示す断面模式図である。
図5】変形例の断熱スリーブの構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の実施の形態において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の断熱スリーブ1の構成の概略を示す断面模式図である。図2は、図1に示す第一スリーブ部10の構成を示す断面図である。図1に示す断熱スリーブ1は、高温配管100を被覆するために用いられている。高温配管100は、内部を高温の流体が流れることにより配管自体が高温になっている配管である。高温配管100は、たとえば、エンジンから排出された高温の排気ガスが流れる排気管である。
【0019】
図1に示す断面視において、断熱スリーブ1および高温配管100は、図中の一点鎖線で示す中心線CLに対して対称な形状を有している。そのため図1では、中心線CLに対して一方向のみの断熱スリーブ1および高温配管100の断面が図示されている。図2に示す断面視において、第一スリーブ部10は、図中の一点鎖線で示す中心線CLに対して対称な形状を有している。そのため図2では、中心線CLに対して一方向のみの第一スリーブ部10の断面が図示されている。
【0020】
高温配管100は、第1の配管110と、第1の配管110に繋ぎ合わされた第2の配管とを有している。第1の配管110は、外周面113と、内周面114とを有している。第1の配管110と第2の配管120とは、互いに溶接されて接合されている。
【0021】
第1の配管110と第2の配管120とを繋ぐ位置には、溶接痕が帯状に盛り上がった溶接ビード130が形成されている。溶接ビード130は、第1の配管110の外周面113に対して、径方向外側に突出している。第1の配管110と第2の配管120との溶接個所には、第1の配管110に対して径方向外側に突出する、突出部131が設けられている。突出部131は、溶接ビード130のうち、第1の配管110の外周面113よりも中心線CLから離れている一部である。
【0022】
断熱スリーブ1は、E GLASSに代表される、二酸化ケイ素(SiO)、アルミナ(Al)などを主成分とする無機質繊維を編組した筒状編組体により、形成されている。断熱スリーブ1は、高温配管100の周辺部品への熱害防止、または高温配管100の保温のために、高温配管100の外周に取り付けられている。断熱スリーブ1は、高温配管100の延びる方向において、熱害を防止したい周辺部品が存在する位置にのみ取り付けられてもよく、この場合、断熱スリーブ1を必要最小限にできるのでコストを低減できる。
【0023】
断熱スリーブ1は、中空筒状の第一スリーブ部10を備えている。図2を参照して、第一スリーブ部10は、一方の端部である第一端11、および、第一端11と反対側の他方の端部である第二端12を有している。第一スリーブ部10を構成している筒状編組体を折り返して二重構造を形成し、縫製処理31を施すことにより、第一端11が形成されている。筒状編組体を折り返した後、当該筒状編組体の縁部を内側に折り返して四層構造を形成し、縫製処理34を施すことにより、第二端12が形成されている。
【0024】
第一スリーブ部10は、外周面13と、内周面14とを有している。第一スリーブ部10の内周面14は、第1の配管の外周面113と向かい合っている。第一スリーブ部10は、第1の配管110の外周面113を被覆している。第一スリーブ部10は、断熱スリーブ1のうち、本来の目的である周辺部品への熱害防止または保温のために高温配管100を覆う、スリーブ本体である。
【0025】
断熱スリーブ1は、中空筒状の第二スリーブ部20を備えている。第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10とは別の部材として構成されている。断熱スリーブ1は、第一スリーブ部10と、第二スリーブ部20との、2つの部材によって構成されている。第二スリーブ部20は、一方の端部である第一端21と、第一端21と反対側の他方の端部である第二端22とを有している。第二スリーブ部20を構成している筒状編組体を内側に二回折り返して四層構造を形成し、第二端22側で縫製処理32を施すことにより、第二スリーブ部20が形成されている。
【0026】
第二スリーブ部20は、外周面23と、内周面24とを有している。第二スリーブ部20の外周面23は、第一スリーブ部10の内周面14と向かい合っている。第二スリーブ部20の内周面24は、第1の配管110の外周面113、および突出部131の外周面133と向かい合っている。第二スリーブ部20は、第1の配管110の外周面113を覆い、かつ突出部131の外周面133を覆っている。第二スリーブ部20は、高温配管100を構成している第1の配管110と第2の配管120との継ぎ目部を、外周側から覆っている。
【0027】
第一スリーブ部10の第一端11の近傍で、縫製処理33を施すことにより、第一スリーブ部10と第二スリーブ部20とが一体化した構造となっている。第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10の内周面14に縫製糸で縫い付けられることにより、第一スリーブ部10の内周面14に固定されている。
【0028】
第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10の第一端11にのみ設けられている。第一スリーブ部10の第一端11において、第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10の内周面14のみを覆うように設けられており、第一スリーブ部10の外周面13を覆っていない。第一スリーブ部10の第二端12には、第二スリーブ部20は設けられていない。第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10の第二端12における内周面14を覆っていない。
【0029】
軸方向(図1中の左右方向)における第二スリーブ部20の長さは、軸方向における第一スリーブ部10の長さよりも、小さい。第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10の第一端11における内周面14を覆うことのできる程度の軸方向長さを有していればよく、たとえば、第二スリーブ部20の軸方向長さを、第一スリーブ部10の軸方向長さの1/4以下に規定してもよい。
【0030】
第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10の第一端11から、第一スリーブ部10の外部にまで延びている。第二スリーブ部20の第二端22は、第一スリーブ部10によって取り囲まれた中空空間の内部に配置されている。第二スリーブ部20の第一端21は、第一スリーブ部10によって取り囲まれた中空空間の外部に配置されており、第一スリーブ部10の第一端11から外部にはみ出している。第二スリーブ部20の第一端21は、第一スリーブ部10の第一端11に対して、第一スリーブ部10の外部に向けて突出している。
【0031】
第二スリーブ部20には、第二端22の近傍において、第二スリーブ部20を四層構造に構成するための縫製処理32が施されている。第二スリーブ部20の、第一端21と第二端22との間の中間位置において、第一スリーブ部10と第二スリーブ部20を一体化するための縫製処理33が施されている。第二スリーブ部20の第一端21の近傍には、縫製処理は施されていない。第二スリーブ部20の、第一スリーブ部10の外部に存在している部分には、縫製処理が施されていない。
【0032】
縫製処理を施すことにより、第二スリーブ部20は、径方向外側へ広がる変形が抑制されている。縫製処理の施されていない第二スリーブ部20の第一端21の近傍の部分は、径方向外側へ広がる変形が許容されている。第二スリーブ部20が径方向外側へ広がるように変形すると、第二スリーブ部20の外周長さが増加する。第二スリーブ部20の、第一スリーブ部10の外部に存在している縫製処理されていない部分は、周方向に非拘束とされている。
【0033】
縫製処理33の施された第二端22を第一スリーブ部10の内部に配置し、縫製処理の施されていない第一端21を第一スリーブ部10の外部に配置することにより、高温配管100の突出部131の外周面133は、第二スリーブ部20の第一端21に近い部分によって覆われている。このような第二スリーブ部20の配置によって、第二スリーブ部20のうち突出部131の外周面133を覆っている部分の層数が、確実に四層になっている。
【0034】
次に、本実施の形態の断熱スリーブ1の作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、図1に示すように、断熱スリーブ1は、第一端11および第二端12を有する筒状の第一スリーブ部10と、第一スリーブ部10とは別の部材として構成された筒状の第二スリーブ部20とを備えている。第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10の第一端11における内周面14を覆っている。
【0035】
断熱スリーブ1の一方の端部が、2つの構成部品を一体化した構造によって構成されることになり、断熱スリーブ1の一方の端部を構成している編組体の層数が増加している。第二スリーブ部20が第一スリーブ部10に対して径方向内側に配置されているので、断熱スリーブ1の一方の端部が高温配管100に対して摺動するとき、最初にホツレおよび破れなどの損傷が発生するのは第二スリーブ部20である。そのため、第一スリーブ部10への損傷の発生を抑制できる。上述した通り、第一スリーブ部10は、周辺部品への熱害防止または保温のために高温配管100を覆うスリーブ本体としての機能を有しており、第一スリーブ部10に損傷が発生していなければ、断熱スリーブ1の所望の断熱性能を確保できる。
【0036】
これにより、断熱スリーブ1の全体としての、断熱性能が低下する程度に損傷するまでの時間を延ばすことができ、断熱スリーブ1の耐久性を向上できる。したがって、断熱スリーブ1の長寿命化を実現することができる。断熱スリーブ1をエンジンの排気管に用いた場合、エンジンの寿命に比較して断熱スリーブ1の寿命がより長くなれば、断熱スリーブ1のみの交換作業を不要にできるので、排気管の断熱構造のメンテナンス頻度を低減することができる。
【0037】
第二スリーブ部20を複数層構造に形成すれば、第二スリーブ部20の強度を向上でき、第二スリーブ部20が損傷するまでの時間が延びるので、第一スリーブ部10の損傷をより効果的に抑制することができる。断熱スリーブ1を全体の層数を増やすと、損傷を抑制できる効果が同様に得られるものの、断熱スリーブ1が太くなるため、重量の増加、配置スペースの増大、およびコストの増加が発生し好ましくない。第一スリーブ部10の第一端11のみの内周面14を覆い、第二端12の内周面14を覆わない、軸方向長さの小さい第二スリーブ部20を設けることにより、断熱スリーブ1の重量が増加して振動時に自重によって損傷しやすくなる不具合を回避でき、安価な断熱スリーブ1を実現することができる。
【0038】
第一スリーブ部10と第二スリーブ部20とを別の部材として形成した断熱スリーブ1は、筒状編組体の端部を折り返して複数層構造を形成した断熱スリーブと比較して、容易に作製することができる。本実施の形態の断熱スリーブ1は、全体を複数層構造とした断熱スリーブ、および端部を折り返して複数層構造を形成した断熱スリーブと比較して、製造コストを低減することができる。
【0039】
また図1に示す本実施の形態のように、第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10の第一端11から第一スリーブ部10の外部にまで延びている。この構成によれば、断熱スリーブ1の端部に第二スリーブ部20のみが設けられており、第一スリーブ部10の第一端11は断熱スリーブ1の端部から離れていることになる。そのため、第一スリーブ部10が高温配管100に対して摺動して損傷するまでの時間を、より長くすることができ、断熱スリーブ1の耐久性をより向上することができる。
【0040】
また図1に示す本実施の形態のように、第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10の外部において、周方向に非拘束とされている。第二スリーブ部20の第一端21が縫製糸によって拘束されていない構成であるため、高温配管100に対する第二スリーブ部20の相対移動が、より広い範囲で許容される。そのため、高温配管100が大きく振動した場合でも、第二スリーブ部20は高温配管100に追随して動くことができ、第二スリーブ部20と高温配管100との相対振動を小さくできる。したがって、第二スリーブ部20が高温配管100に対して摺動して損傷することを抑制でき、断熱スリーブ1の耐久性をより向上することができる。
【0041】
また図1に示す本実施の形態のように、高温配管100は、第1の配管110と、第1の配管110に対して径方向外側に突出する突出部131とを有している。第一スリーブ部10は、第1の配管110の外周面113を被覆している。第二スリーブ部20は、突出部131の外周面133を覆っている。断熱スリーブ1のうち、第1の配管110に対して突出している突出部131を覆う部分は、高温配管100との摺動によるホツレ、破れが最も発生しやすい。第二スリーブ部20が突出部131を覆うように断熱スリーブ1を設けることにより、第一スリーブ部10が高温配管100に対して摺動して損傷するまでの時間を長くでき、第一スリーブ部10に損傷が発生するのを抑制できる。したがって、断熱スリーブ1の耐久性を向上することができる。
【0042】
第二スリーブ部20が突出部131に乗り上げて覆うことにより、第二スリーブ部20に発生したホツレまたは破れが、外部から視認されにくくなる。これにより、長時間使用後の断熱スリーブ1の、外観を向上することができる。
【0043】
また図1に示す本実施の形態のように、高温配管100は、第1の配管110に繋ぎ合わされた第2の配管120をさらに有している。突出部131は、第1の配管110と第2の配管120とを繋ぐ位置に設けられている。このようにすれば、第1の配管110と第2の配管120とを繋ぐ位置において第1の配管に対して突出している突出部131が、第二スリーブ部20で覆われるので、断熱スリーブ1の耐久性を向上でき、断熱スリーブ1を備えている高温配管100の外観を向上することができる。
【0044】
また図1に示す本実施の形態のように、第1の配管110と第2の配管120とは互いに溶接されており、溶接ビード130の一部が突出部131を構成している。このようにすれば、第1の配管110と第2の配管120とを溶接することにより形成された溶接ビード130が、第二スリーブ部20で覆われるので、断熱スリーブ1の耐久性を向上でき、断熱スリーブ1を備えている高温配管100の外観を向上することができる。
【0045】
また図1に示す本実施の形態のように、第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10の内周面14に固定されている。このようにすれば、第一スリーブ部10のうち、高温配管100の外周面113に対向している内周面14が、第二スリーブ部20によって覆われるので、第一スリーブ部10に損傷が発生するのを抑制できる。したがって、断熱スリーブ1の耐久性を向上することができる。第一スリーブ部10に施された縫製処理31が、第二スリーブ部20によって覆われており、第1の配管110の外周面113に対して露出していない構成であるので、第一スリーブ部10の縫製糸が切れてホツレが増大することを効果的に抑制することができる。
【0046】
また図1に示す本実施の形態のように、第二スリーブ部20は、第一スリーブ部10の内周面14に縫い付けられている。このようにすれば、第一スリーブ部10と、第一スリーブ部10とは別の部材である第二スリーブ部20とを、それぞれ形成した後に、第二スリーブ部20を第一スリーブ部10に縫い付けて断熱スリーブ1を形成することができる。したがって、本実施の形態の断熱スリーブ1を、容易に製造することができる。
【0047】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2の断熱スリーブ1の構成を示す断面模式図である。実施の形態2の断熱スリーブ1は、上述した実施の形態1とほぼ同一の構成を備えている。ただし、実施の形態2の断熱スリーブ1では、第一スリーブ部10と第二スリーブ部20とは異なる材料製である点で、実施の形態1と異なっている。実施の形態2の第一スリーブ部10は、実施の形態1と同様の無機質繊維を編組した筒状編組体である。実施の形態2の第二スリーブ部20は、環状に形成した金属製の網を周方向に沿って二つ折りにした上で、第一スリーブ部10の内周面14に縫い付けられて、第一スリーブ部10に固定されている。
【0048】
第一スリーブ部10と第二スリーブ部20とが、別の部材として設けられているために、第二スリーブ部20の材質を自在に選定でき、第二スリーブ部20を第一スリーブ部10と異なる材料製とすることが容易になっている。または、第二スリーブ部20の編み方を、第一スリーブ部10の編み方と異ならせることができる。または、第一スリーブ部10の層数に関わらず、第二スリーブ部20の層数を任意に決定することができる。第一スリーブ部10と第二スリーブ部20とを異なる材料製にする、または、第一スリーブ部10と第二スリーブ部20との構成を変えることで、強度およびコストの面で最適な仕様の第二スリーブ部20を設けることができる。
【0049】
(実施の形態3)
図4は、実施の形態3の断熱スリーブ1の構成を示す断面模式図である。実施の形態1および2では、図2に示す第一スリーブ部10の第一端11に第二スリーブ部20が取り付けられていた。これに対し、実施の形態3では、図2に示す第一スリーブ部10の第二端12に第二スリーブ部20が取り付けられている。実施の形態3の第二スリーブ部20は、E GLASSに代表される、二酸化ケイ素(SiO)、アルミナ(Al)などを主成分とする耐熱性を有する無機質繊維を編組した帯状編組帯により形成されたものである。
【0050】
図4に示すように、第一スリーブ部10は、外周面13を構成している編組体の縁部が折り曲げられた、折り曲げ部15を有している。第一スリーブ部10はまた、内周面14を構成している編組体の縁部が折り曲げられた、折り曲げ部16を有している。折り曲げ部15,16は、外周面13および内周面14を構成している編組体の間に、折り込まれている。
【0051】
第二スリーブ部20は、径方向内側に設けられた内径部25と、径方向外側に設けられた外径部26とを有している。内径部25は、図4に示す中心線CLに対し相対的に近い位置に配置されている。外径部26は、中心線CLに対し相対的に遠い位置に配置されている。
【0052】
内径部25は、第一スリーブ部10の内周面14と第1の配管110の外周面113との間に配置されており、径方向内側から第一スリーブ部10の内周面14を覆っている。外径部26は、第一スリーブ部10の第二端12から、第一スリーブ部10に折り込まれている。外径部26は、第一スリーブ部10の折り曲げ部15,16の間に配置され、折り曲げ部15,16によって挟持されている。第二スリーブ部20は、縫製処理33によって、第一スリーブ部10に縫い付けられている。
【0053】
断熱スリーブ1を、図4に示す実施の形態3の構成とすることで、第一スリーブ部10と第二スリーブ部20とを縫製処理33によって一体化できるので、断熱スリーブ1を容易に作製することができ、断熱スリーブ1の外観を向上することができる。第二スリーブ部20が第一スリーブ部10の第二端12における内周面14を覆っていることにより、第一スリーブ部10の損傷を抑制して断熱スリーブ1の耐久性を向上できる効果を、同様に得ることができる。
【0054】
なお、実施の形態1〜3の説明においては、第1の配管110と第2の配管120の径が略同一である例について説明した。本発明の断熱スリーブ1は、径の異なる配管を繋ぎ合わせた拡縮管部にも適用することが可能である。
【0055】
図5は、変形例の断熱スリーブ1の構成を示す断面模式図である。図5に示す変形例では、高温配管100は、図中左側の第1の配管110(小径配管111)と、図中右側の第1の配管110(大径配管112)と、小径配管111と大径配管112とを繋ぐ第2の配管120とを有している。小径配管111と第2の配管120とは溶接により繋ぎ合わされており、大径配管112と第2の配管120とは溶接により繋ぎ合わされている。第2の配管120の外周面は、小径配管111から大径配管112へ向かって、テーパ状に拡大している。
【0056】
図5に示す拡縮管部において、第一スリーブ部10が小径配管111の外周面を覆い、第二スリーブ部20が小径配管111と第2の配管120とを接合する溶接ビード130の外周面を覆うように、実施の形態1で説明した断熱スリーブ1を配置することができる。加えて、第一スリーブ部10が大径配管112の外周面を覆い、第二スリーブ部20が大径配管112と第2の配管120とを接合する溶接ビード130の外周面を覆うように、実施の形態1で説明した断熱スリーブ1を配置することができる。これにより、第一スリーブ部10の損傷を抑制して断熱スリーブ1の耐久性を向上できる上述した効果を、同様に得ることができる。
【0057】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、振動の大きい高温の配管を被覆するために用いられる断熱スリーブに、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0059】
1 断熱スリーブ、10 第一スリーブ部、11,21 第一端、12,22 第二端、13,23,113,133 外周面、14,24,114 内周面、15,16 折り曲げ部、20 第二スリーブ部、25 内径部、26 外径部、31,32,33,34 縫製処理、100 高温配管、110 第1の配管、111 小径配管、112 大径配管、120 第2の配管、130 溶接ビード、131 突出部、CL 中心線。
図1
図2
図3
図4
図5