(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位相補償部は、前記電源制御アンプの出力端子および反転入力端子間の静電容量を変化させる可変容量手段として構成されており、前記設定電圧が高くなるにつれて前記静電容量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の半導体試験装置。
前記位相補償部は、前記電源制御アンプの出力端子および反転入力端子間の静電容量を変化させる可変容量手段として構成されており、前記複数の被測定半導体装置の個数に応じて前記静電容量を増加させることを特徴とする請求項4に記載の半導体試験装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、従来の半導体試験装置では、試験電圧VRの上限付近で位相補償量を最適化している。このため、試験電圧VRを上限から乖離した値に設定すればするほど、電源制御アンプの出力に対して位相補償量が過大となり、電源制御アンプの出力信号の立ち上がりが遅くなる。その結果、電源部の出力する試験電圧VRの立ち上がりが遅くなり、試験時間が長くなってしまうという課題があった。
【0010】
上述の課題は、順方向電圧(VF)測定を行うためのVFテスターの場合についても同様である。VFテスターは、ダイオードに所定の順方向電流(試験電流IF)を印加し、ダイオードのアノード−カソード間の電圧が安定した後に電圧を測定することにより、ダイオードの順方向特性を試験するものである。VFテスターは、試験電流IFを出力する電源部、および電源部を制御するための信号を出力する電源制御アンプを有する。IRテスターの場合と同様、試験電流IFの上限付近で位相補償量を最適化しているため、試験電流IFを上限から乖離した値に設定すればするほど、電源制御アンプの出力信号の立ち上がりが遅くなり、試験時間が長くなってしまうという課題があった。
【0011】
また、VF測定の場合には、試験電流IFが大電流であるため、試験時間が長くなるとダイオードに熱的な影響を及ぼす。この影響により順方向電圧(VF)が低下して本来の順方向電圧の測定が困難となり、その結果、試験精度が低下するという課題もあった。
【0012】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、その目的は、被測定半導体装置に印加する試験電圧または試験電流が上限値から乖離した場合であっても、試験時間が長くなることを回避し、被測定半導体装置の試験効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る半導体試験装置は、
被測定半導体装置に電気的に接続される第1および第2の検査端子と、
直流電圧源と、前記直流電圧源が前記第1の検査端子に供給する電圧を制御することにより、前記被測定半導体装置に印加される試験電圧を調節する電圧調節部とを有する電源部と、
前記試験電圧に対応した設定電圧を出力する制御部と、
前記制御部から前記設定電圧を入力する第1の入力端子と、前記電源部から前記試験電圧に基づくフィードバック電圧を入力する第2の入力端子と、前記電源部の前記電圧調節部に電源制御信号を出力する出力端子とを有し、前記フィードバック電圧が前記設定電圧に等しくなるように前記電源部を制御する電源制御アンプと、
前記設定電圧に応じて前記電源制御信号を位相補償して、前記第1および第2の入力端子のうち反転入力端子に対応する端子にフィードバックする位相補償部と、
前記第2の検査端子に電気的に接続され、前記被測定半導体装置に流れる電流を測定する電流測定部と、
を備え、
前記制御部は、前記電流測定部により測定された電流値に基づいて前記被測定半導体装置の良否を判定することを特徴とする。
【0014】
また、前記半導体試験装置において、
前記位相補償部は、前記設定電圧が高くなるにつれて前記電源制御信号に対する位相補償量を大きくしてもよい。
【0015】
また、前記半導体試験装置において、
前記位相補償部は、前記電源制御アンプの出力端子および反転入力端子間の静電容量を変化させる可変容量手段として構成されており、前記設定電圧が高くなるにつれて前記静電容量を増加させるようにしてもよい。
【0016】
また、前記半導体試験装置において、
前記電流測定部は、前記第1の検査端子に電気的に接続された複数の被測定半導体装置に流れる電流をそれぞれ測定し、
前記制御部は、前記電流測定部により前記各被測定半導体装置について測定された電流値に基づいて、前記各被測定半導体装置の良否を判定するようにしてもよい。
【0017】
また、前記半導体試験装置において、
前記位相補償部は、前記電源制御アンプの出力端子および反転入力端子間の静電容量を変化させる可変容量手段として構成されており、前記複数の被測定半導体装置の個数に応じて前記静電容量を増加させるようにしてもよい。
【0018】
また、前記半導体試験装置において、
前記静電容量は、式(1)で与えられるようにしてもよい。
【数1】
【0019】
ここで、C:前記可変容量手段の静電容量、C0:前記被測定半導体装置の個数が1個の場合における前記可変容量手段の静電容量、n:前記被測定半導体装置の個数である。
【0020】
また、前記半導体試験装置において、
前記位相補償部は、静電容量の異なる複数のコンデンサを有し、
前記各コンデンサの一端は、前記各コンデンサに対応付けて設けられた複数の絶縁手段を介して前記電源制御アンプの前記反転入力端子に電気的に接続され、前記各コンデンサの他端は、前記電源制御アンプの前記出力端子に電気的に接続され、
前記複数の絶縁手段は、前記設定電圧に応じて前記制御部が出力する位相補償量制御信号を受信し、前記位相補償量制御信号に基づいて、対応付けられたコンデンサと、前記電源制御アンプの前記反転入力端子との間を、電気的に接続された状態または電気的に絶縁された状態にするようにしてもよい。
【0021】
また、前記半導体試験装置において、
前記被測定半導体装置は、ダイオードであり、
前記電源部は、前記ダイオードの逆方向に前記試験電圧を印加し、
前記制御部は、前記電流測定部により測定された、前記ダイオードのアノード−カソード間を流れる電流の値が所定の閾値よりも小さい場合に前記ダイオードが正常であると判定するようにしてもよい。
【0022】
本発明の別態様に係る半導体試験装置は、
被測定半導体装置に電気的に接続される第1および第2の検査端子と、
直流電流源と、前記直流電流源が前記第1の検査端子に供給する電流を制御することにより、前記被測定半導体装置に印加される試験電流を調節する電流調節部とを有する電源部と、
前記試験電流に対応した設定電圧を出力する制御部と、
前記制御部から前記設定電圧を入力する第1の入力端子と、前記電源部から前記試験電流に基づくフィードバック電圧を入力する第2の入力端子と、前記電源部の前記電流調節部に電源制御信号を出力する出力端子とを有し、前記フィードバック電圧が前記設定電圧に等しくなるように前記電源部を制御する電源制御アンプと、
前記設定電圧に応じて前記電源制御信号を位相補償して、前記第1および第2の入力端子のうち反転入力端子に対応する端子にフィードバックする位相補償部と、
前記第1の検査端子および前記第2の検査端子間の電圧を測定する電圧測定部と、
を備え、
前記制御部は、前記電圧測定部により測定された電圧値に基づいて前記被測定半導体装置の良否を判定することを特徴とする。
【0023】
また、前記半導体試験装置において、
前記位相補償部は、前記設定電圧が高くなるにつれて前記電源制御信号に対する位相補償量を大きくするようにしてもよい。
【0024】
また、前記半導体試験装置において、
前記被測定半導体装置は、ダイオードであり、
前記電源部は、前記ダイオードの順方向に前記試験電流を印加し、
前記制御部は、前記電圧測定部により測定された、前記ダイオードのアノード−カソード間の電圧値が所定の閾値よりも小さい場合に前記ダイオードが正常であると判定するようにしてもよい。
【0025】
本発明の一態様に係る半導体装置は、本発明に係る半導体試験装置により試験されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る半導体試験装置では、位相補償部が設定電圧に応じて電源制御信号を位相補償して電源制御アンプの反転入力端子にフィードバックする。これにより、被測定半導体装置に印加する試験電圧(または試験電流)が上限値から乖離した場合であっても、被測定半導体装置の端子間に流れる電流(または被測定半導体装置の端子間電圧)の測定時間が長くなることを回避することができる。
【0027】
よって、本発明によれば、被測定半導体装置に印加する試験電圧または試験電流が上限値から乖離した場合であっても、被測定半導体装置の試験時間が長くなることを回避し、試験効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について具体的に説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体試験装置1について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1は第1の実施形態に係る半導体試験装置1の概略的な構成を示している。
図2は半導体試験装置1の電源部2の構成例を示し、
図3は半導体試験装置1の電流測定部6の構成例を示し、
図4は半導体試験装置1の位相補償部5の構成例を示している。
【0030】
半導体試験装置1は、
図1に示すように、検査端子T1と、検査端子T2と、電源部2と、制御部3と、電源制御アンプ4と、位相補償部5と、電流測定部6とを備えている。
【0031】
次に、半導体試験装置1の各構成要素について詳しく説明する。
検査端子T1,T2は、被測定半導体装置90を接続するための端子であり、被測定半導体装置90に電気的に接続される。
図1に示すように、検査端子T1は電源部2に電気的に接続され、検査端子T2は電流測定部6に電気的に接続されている。
【0032】
被測定半導体装置90は、例えばダイオードである。この場合、
図1に示すように、検査端子T1はダイオードのカソードに接続され、検査端子T2はダイオードのアノードに接続される。これにより、電源部2は、ダイオードの逆方向に試験電圧VRを印加することになる。
【0033】
電源部2は、被測定半導体装置90に所定の試験電圧VRを印加するように構成されている。電源部2は、設定電圧VR_REFに応じた試験電圧VRを検査端子T1から出力するように構成されている。電源部2は、
図2に示すように、所定の直流電圧を出力する直流電圧源21と、試験電圧VRを調節する電圧調節部22と、試験電圧VRを検出する電圧検出回路23と、電源電圧VCCに接続された抵抗Rcとを有している。
【0034】
電圧調節部22は、直流電圧源21が検査端子T1に供給する電圧を制御するように構成されている。これにより、電圧調節部22は、被測定半導体装置90に印加される試験電圧VRを調節する。
【0035】
電圧調節部22は、
図2に示すように、スイッチング素子Q1,Q2と、抵抗Rd,Reとを有する。ここで、スイッチング素子Q1,Q2は、例えば、n型の電界効果型トランジスタ(MOSFET)である。
【0036】
スイッチング素子Q1は、ゲート端子が電源制御アンプ4の出力端子に接続され、ソース端子が接地され、ドレイン端子が抵抗Reを介してスイッチング素子Q2のゲート端子に接続されている。
【0037】
スイッチング素子Q2は、ソース端子が検査端子T1に接続され、ドレイン端子が直流電圧源21の正極に接続されている。
【0038】
抵抗Rdは、直流電圧源21の正極に一端が接続され、スイッチング素子Q1のドレイン端子に他端が接続されている。
【0039】
抵抗Reは、スイッチング素子Q2のゲート端子に一端が接続され、スイッチング素子Q1のドレイン端子に他端が接続されている。
【0040】
なお、スイッチング素子Q1,Q2は、所要の耐圧を得るために、複数のスイッチング素子をカスケード接続したものとして構成されてもよい。また、スイッチング素子Q1,Q2は、MOSFETに限らず、バイポーラトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)でもよい。
【0041】
電圧検出回路23は、試験電圧VRに基づく電圧をフィードバック電圧VR_FBとして電源制御アンプ4に出力する。例えば、電圧検出回路23は、
図2に示すように、抵抗Raおよび抵抗Rbからなる分圧回路である。この分圧回路は、電源部2の出力電圧を分圧して得られた分圧電圧をフィードバック電圧VR_FBとして電源制御アンプ4に出力する。
【0042】
抵抗Rcは、
図2に示すように、電源制御アンプ4の出力端子に一端が接続され、電源電圧VCCに他端が接続されている。電源電圧VCCは、制御部3等を駆動するための電圧である。抵抗Rcを設けることで、電圧調節部22のスイッチング素子Q1(後述)はゲート電圧が0においてオン状態(即ちノーマリー・オン)となる。
【0043】
次に、電源部2の動作の詳細について説明する。
まず、被測定半導体装置90に試験電圧VRを印加しない場合について説明する。この場合、電源制御アンプ4は電源制御信号を出力しないが、電圧調節部22のスイッチング素子Q1は、抵抗Rcによりオン状態となる。このため、電圧調節部22のスイッチング素子Q2のゲート端子の電圧は0となり、スイッチング素子Q2はオフ状態となる。その結果、検査端子T1と直流電圧源21とは電気的に絶縁され、被測定半導体装置90に試験電圧VRは印加されない。
【0044】
一方、被測定半導体装置90に試験電圧VRを印加する場合、電源制御アンプ4は、出力端子から電源制御信号を出力する。電源制御信号の電圧は、
図2の構成例の場合には負の電圧であり、電圧調節部22のスイッチング素子Q1がオフ状態となる境界付近の電圧である。これにより、スイッチング素子Q2のゲート端子には、抵抗RdおよびReを介して直流電圧源21の電圧が印加され、スイッチング素子Q2はオン状態になる。スイッチング素子Q2のオン状態の程度は、電源制御アンプ4の出力電圧に応じて変化する。例えば、試験電圧VRを上げたい場合には、電源制御アンプ4は出力電圧を下げる。これにより、スイッチング素子Q1はより完全なオフ状態に近づき、スイッチング素子Q2はより完全なオン状態に近づく。その結果、検査端子T1の電圧は上昇する。
【0045】
次に、制御部3について説明する。制御部3は、
図1に示すように、SIG_OUT出力端子、VR_REF出力端子およびIR_dct入力端子を有する。なお、制御部3は、マイコン等により構成される。
【0046】
制御部3は、VR_REF出力端子から、被測定半導体装置90に印加する試験電圧VRに対応した設定電圧VR_REFを出力する。例えば、制御部3は、所望の試験電圧VRの1/100の電圧を設定電圧VR_REFとして出力する。
【0047】
制御部3は、SIG_OUT出力端子から、位相補償部5の位相補償量を制御するための信号(位相補償量制御信号)を出力する。位相補償量制御信号は、設定電圧VR_REFに対応して出力される。
【0048】
なお、制御部3は、SIG_OUT出力端子としてn本のデジタル出力端子を備え、位相補償量制御信号として、設定電圧VR_REFに対応したnビットの信号を出力してもよい。即ち、制御部3は、設定電圧VR_REFに基づくデコード信号を位相補償量制御信号として出力してもよい。
【0049】
制御部3は、IR_dct入力端子から、後述の電流測定部6により測定された電流値を入力する。そして、制御部3は、電流測定部6により測定された電流値に基づいて、被測定半導体装置90の良否を判定する。具体的には、被測定半導体装置90がダイオードの場合、制御部3は、電流測定部6により測定された電流値(即ち、ダイオードのアノード−カソード間を流れる電流の値)が所定の閾値よりも小さい場合に、当該ダイオードの逆方向特性が正常であると判定する。
【0050】
電源制御アンプ4は、フィードバック電圧VR_FBが設定電圧VR_REFに等しくなるように、電源部2を制御するように構成されている。電源制御アンプ4は、
図1に示すように、オペアンプにより構成される。
【0051】
電源制御アンプ4は、
図1に示すように、制御部3から設定電圧VR_REFを入力する第1の入力端子(−)と、電源部2からフィードバック電圧VR_FBを入力する第2の入力端子(+)と、電源部2を制御するための電源制御信号を電圧調節部22に出力する出力端子とを有する。電源制御信号は、電源制御アンプ4が第1および第2の入力端子から入力した電圧値に基づいて生成される。
【0052】
次に、電流測定部6について説明する。電流測定部6は、
図1に示すように、検査端子T2に一端が電気的に接続され、制御部3のIR_dct入力端子に他端が電気的に接続されている。電流測定部6は、被測定半導体装置90に流れる電流IRを測定するように構成されている。
【0053】
図3は、電流測定部6の一例を示している。この場合、電流測定部6は、オペアンプ61および抵抗Rgを有する。オペアンプ61は、検査端子T2に接続された第1の入力端子(−)と、接地された第2の入力端子(+)と、IR_dct入力端子に接続された出力端子とを有する。抵抗Rgは、オペアンプ61の出力端子に一端が接続され、オペアンプ61の第1の入力端子(−)に他端が接続されている。このように構成した場合、第1の入力端子(−)が接地電位に等しくなるため、試験電圧VRを全て被測定半導体装置90に印加することができる。
【0054】
次に、位相補償部5について
図4を参照して詳しく説明する。
位相補償部5は、電源制御アンプ4の出力端子から出力された電源制御信号を設定電圧VR_REFに応じて位相補償して、電源制御アンプ4の第1の入力端子(−)にフィードバックする。
【0055】
なお、電源制御アンプ4の第2の入力端子(+)に設定電圧VR_REFが入力され、第1の入力端子(−)にフィードバック電圧VR_FBが入力される場合であっても、位相補償部5は、位相補償した電源制御信号を第1の入力端子(−)にフィードバックすることが好ましい。即ち、位相補償部5は、位相補償した電源制御信号を電源制御アンプ4の反転入力端子にフィードバックすることが好ましい。
【0056】
また、設定電圧VR_REFが高いほど電源制御アンプ4の出力が大きくなることから、位相補償部5は、設定電圧VR_REFが高くなるにつれて、電源制御信号に対する位相補償量を大きくすることが好ましい。これにより、設定された試験電圧VRに適した位相補償を行うことができる。
【0057】
位相補償部5は、電源制御アンプ4の出力端子および反転入力端子間の静電容量を変化させる可変容量手段として構成される。このような可変容量手段は、複数のコンデンサを用いて構成することが可能であり、例えば、
図4に示すように、静電容量の異なる複数のコンデンサC1〜C5を用いて構成される。各コンデンサの静電容量は、例えば、C1<C2<C3<C4<C5となるように選択される。
【0058】
各コンデンサC1〜C5の一端はそれぞれ、絶縁手段として機能するフォトカプラPC1〜PC5を介して、電源制御アンプ4の反転入力端子(第1の入力端子(−))に電気的に接続されている。フォトカプラPC1〜PC5は、それぞれコンデンサC1〜C5に対応付けて設けられている。
【0059】
また、各コンデンサC1〜C5の他端は、電源制御アンプ4の出力端子に電気的に接続されている。
【0060】
図4に示すように、抵抗R1〜R5は、電源電圧VCCに一端が接続され、フォトカプラPC1〜PC5のダイオードのアノードに他端が接続されている。
【0061】
位相補償部5(フォトカプラPC1〜PC5)は、制御部3のSIG_OUT出力端子から出力された位相補償量制御信号を受信する。この場合、位相補償量制御信号は、設定電圧VR_REFに基づく5ビットのデコード信号である。そして、フォトカプラPC1〜PC5は、受信した位相補償量制御信号に基づいて、対応付けられたコンデンサと、電源制御アンプ4の反転入力端子との間を、電気的に接続された状態または電気的に絶縁された状態にする。ここで、対応付けられたコンデンサとは、フォトカプラPCi(i=1,2,・・,5)に対してコンデンサCiのことである。
【0062】
次に、位相補償部5による電源制御信号の位相補償について詳しく説明する。
位相補償部5は、第1のレンジ〜第5のレンジごとに位相補償量を設定する。ここで、第1〜第5のレンジは、設定電圧VR_REFのとり得る範囲を小さい順に区分したものである。
【0063】
例えば、第1のレンジは設定電圧VR_REFが1V以上1.3V未満のレンジであり、第2のレンジは設定電圧VR_REFが1.3V以上2V未満のレンジであり、第3のレンジは設定電圧VR_REFが2V以上3V未満のレンジであり、第4のレンジは設定電圧VR_REFが3V以上5V未満のレンジであり、第5のレンジは設定電圧VR_REFが5V以上のレンジである。
【0064】
設定電圧VR_REFが第1のレンジ内にある場合、フォトカプラPC1に接続されたSIG_OUT出力端子からLレベル信号が出力され、残りのフォトカプラPC2〜PC5に接続されたSIG_OUT出力端子からHレベル信号が出力される。これにより、フォトカプラPC1は、コンデンサC1と、電源制御アンプ4の第1の入力端子(−)との間を電気的に接続された状態とする。一方、フォトカプラPC2〜PC5は、コンデンサC2〜C5と、電源制御アンプ4の第1の入力端子(−)との間を電気的に絶縁された状態とする。よって、位相補償部5の位相補償量は、コンデンサC1の静電容量で決まる値となる。
【0065】
設定電圧VR_REFが第2のレンジ内にある場合は、フォトカプラPC2のみが、対応付けられたコンデンサと、電源制御アンプ4の第1の入力端子(−)との間を電気的に接続された状態とする。よって、位相補償部5の位相補償量は、コンデンサC2の静電容量で決まる値となる。前述のようにコンデンサC1〜C5の静電容量はC1<C2<C3<C4<C5となるように選択されるため、設定電圧VR_REFのレンジが上がるにつれて、位相補償部5による位相補償量は大きくなる。これにより、設定電圧VR_REFに応じた位相補償量が自動的に設定される。
【0066】
なお、位相補償部5の構成は上記のものに限られない。別の例として、静電容量が同じ複数のコンデンサを用い、設定電圧VR_REFのレンジが上がるにつれて、コンデンサの並列接続数が増えるように位相補償部5を構成してもよい。この場合、設定電圧VR_REFが第1のレンジ内にある場合、一つのコンデンサの静電容量のみが位相補償部5の位相補償量となり、設定電圧が第2のレンジ内にある場合、2つのコンデンサの合成容量が位相補償部5の位相補償量となる。
【0067】
また、さらに別の例として、位相補償量制御信号に応じて静電容量を変化させることが可能な可変容量コンデンサを用いて位相補償部5を構成してもよい。
【0068】
なお、絶縁手段については、フォトカプラ以外のもの(半導体スイッチ、リレー素子など)を用いて、位相補償用のコンデンサと電源制御アンプ4との間を、電気的に接続された状態または電気的に絶縁された状態にしてもよい。
【0069】
上述したように、半導体試験装置1において、位相補償部5による位相補償量は、設定電圧VR_REFに応じた値に設定される。このため、設定電圧VR_REFが上限値から乖離した場合(例えば設定電圧が前述の第1〜第4のレンジ内の場合)であっても、設定電圧VR_REFに適した位相補償量が設定されるため、電源制御アンプ4の電源制御信号の立ち上がり時間が長くならない。従って、試験電圧VRの立ち上がり時間が長くなることを回避することができる。
【0070】
試験対象のダイオードに印加する逆方向電圧(試験電圧VR)が上限値から乖離した場合であっても、逆方向電流(電流IR)の測定時間が長くなることを回避することができる。その結果、ダイオードのIR試験の効率を向上させることができる。
【0071】
図5は、試験電圧VRの上限値が1000Vであり、試験電圧VRとして200Vを出力した場合における、試験電圧VRの時間波形の一例を示している。この場合、従来の半導体試験装置では試験電圧VRが立ち上がるのに5ms要していたのに対して、本発明の半導体試験装置1では2.5msで試験電圧VRが立ち上がっており、試験電圧VRの立ち上がり時間が大幅に短縮されていることがわかる。
【0072】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、被測定半導体装置に印加する試験電圧が上限値から乖離した場合であっても、被測定半導体装置の端子間に流れる電流の測定時間が長くなることを回避することができる。その結果、被測定半導体装置の試験効率を向上させることができる。
【0073】
(第1の実施形態の変形例)
次に、半導体試験装置1の変形例に係る半導体試験装置1Aについて、
図6を参照して説明する。変形例に係る半導体試験装置1Aは、複数個の被測定半導体装置を同時に試験し、それらの中から良品を選別するもの(いわゆるチップ自動選別機)である。チップ自動選別機を用いることで、複数個の被測定半導体装置を同時に試験できることから試験効率が改善する。
【0074】
図6は、半導体試験装置1Aの概略的な構成を示している。なお、
図6では、3個の被測定半導体装置91〜93が試験されるが、被測定半導体装置の個数はこれに限るものではない。
【0075】
半導体試験装置1Aは、
図6に示すように、検査端子T1と、検査端子T21〜T23と、電源部2と、制御部3と、電源制御アンプ4と、位相補償部5と、電流測定部6とを備えている。
【0076】
図6に示すように、被測定半導体装置91〜93は例えばダイオードであり、カソードが検査端子T1に電気的に接続されている。被測定半導体装置91,92,93のアノードは、検査端子T21,T22,T23にそれぞれ電気的に接続されている。
【0077】
電源部2は、被測定半導体装置91〜93に試験電圧VRを印加する。
【0078】
半導体試験装置1Aの制御部3は、
図6に示すように、SIG_OUT出力端子、VR_REF出力端子、IR_dct1入力端子、IR_dct2入力端子およびIR_dct3入力端子を有する。
【0079】
半導体試験装置1Aの電流測定部6は、
図6に示すように電流測定ユニット7,8,9を有し、被測定半導体装置91〜93に流れる電流をそれぞれ測定する。
【0080】
電流測定ユニット7は、検査端子T21に一端が電気的に接続され、制御部3のIR_dct1入力端子に他端が電気的に接続されている。電流測定ユニット8は、検査端子T22に一端が電気的に接続され、制御部3のIR_dct2入力端子に他端が電気的に接続されている。電流測定ユニット9は、検査端子T23に一端が電気的に接続され、制御部3のIR_dct3入力端子に他端が電気的に接続されている。電流測定ユニット7,8,9はそれぞれ、被測定半導体装置91,92,93に流れる電流を測定する。
【0081】
半導体試験装置1Aの制御部3は、IR_dct1入力端子、IR_dct2入力端子およびIR_dct3入力端子から、電流測定ユニット7、電流測定ユニット8および電流測定ユニット9により測定された電流値をそれぞれ入力する。そして、制御部3は、被測定半導体装置91〜93について測定された電流値に基づいて、被測定半導体装置91〜93の良否をそれぞれ判定する。
【0082】
上記の半導体試験装置1Aによれば、第1の実施形態と同様、被測定半導体装置に印加する試験電流が上限値から乖離した場合であっても試験時間が長くなることを回避し、被測定半導体装置の試験効率を向上させることができる。
【0083】
ところで、チップ自動選別機の場合、複数の(例えば数十以上の)被測定半導体装置が半導体試験装置1Aに並列に接続されることから、電源制御アンプ4からみた容量が被測定半導体装置の個数に応じて増大する。したがって、従来の半導体試験装置のように試験電圧VRの上限付近で位相補償量を最適化した場合、位相補償量は被測定半導体装置の個数が増えるほど大きくなる。このため、試験電圧VRが上限値から乖離した場合、電源制御アンプ4の出力電圧の立ち上がり時間(ひいては試験電圧VRの立ち上がり時間)は大幅に長くなり、その結果試験効率が大きく低下することになる。
【0084】
これに対して、本変形例によれば、設定電圧VR_REFに応じて位相補償量を制御するため、試験電圧VRが上限値から乖離した場合であっても、試験電圧VRの立ち上がり時間が大幅に長くなることを回避することができる。換言すれば、本変形例によれば、同時試験する被測定半導体装置の数が増えるほど、試験効率の向上効果が大きくなるといえる。
なお、半導体試験装置1Aの位相補償部5は、被測定半導体装置の個数に応じて、電源制御アンプ4の出力端子および反転入力端子間の静電容量Cを増加させることが好ましい。例えば、静電容量は、式(1)で与えられる値とする。
【数2】
【0085】
ここで、C:可変容量手段の静電容量(即ち、電源制御アンプ4の出力端子および反転入力端子間の静電容量)、C0:被測定半導体装置の個数が1個の場合における可変容量手段の静電容量(即ち、第1の実施形態に係る半導体試験装置1の位相補償部5による静電容量)、n:被測定半導体装置の個数である。
【0086】
これにより、同時試験する被測定半導体装置の個数が増減した場合であっても、被測定半導体装置の個数に応じた位相補償量を設定することができる。
【0087】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る半導体試験装置1Bについて、
図7を参照して説明する。
図7は、半導体試験装置1Bの概略的な構成を示している。
【0088】
半導体試験装置1Bは、検査端子T3と、検査端子T4と、電源部2Aと、制御部3Aと、電源制御アンプ4Aと、位相補償部5と、電圧測定部10とを備えている。
【0089】
次に、半導体試験装置1Bの各構成要素について詳しく説明する。
検査端子T3,T4は、被測定半導体装置90を接続するための端子であり、被測定半導体装置90に電気的に接続される。
図7に示すように、検査端子T3は電源部2Aの電流調節部26に電気的に接続され、検査端子T4は電源部2Aの電流検出回路27に電気的に接続されている。
【0090】
被測定半導体装置90は、例えばダイオードである。この場合、
図7に示すように、検査端子T3はダイオードのアノードに接続され、検査端子T4はダイオードのカソードに接続される。これにより、電源部2Aは、ダイオードの順方向に試験電流IFを印加することになる。
【0091】
電源部2Aは、被測定半導体装置90に所定の試験電流IFを印加するように構成されている。電源部2Aは、設定電圧IF_REFに応じた試験電流IFを検査端子T3から出力するように構成されている。電源部2Aは、
図7に示すように、所定の直流電流を出力する直流電流源25と、試験電流IFを調節する電流調節部26と、試験電流IFを測定する電流検出回路27とを有している。
【0092】
電流調節部26は、直流電流源25が検査端子T3に供給する電流を制御するように構成されている。これにより、電流調節部26は、被測定半導体装置90に印加される試験電流IFを調節する。
【0093】
図7に示すように、電流調節部26は、例えば、直流電流源25にドレイン端子が電気的に接続され、検査端子T3にソース端子が電気的に接続されたスイッチング素子Q3により構成される。ここで、スイッチング素子Q3は、例えば、n型の電界効果型トランジスタ(MOSFET)である。
【0094】
電源制御アンプ4Aから出力される電源制御信号が大きいほどスイッチング素子Q3はより完全なオン状態になるため、電源部2Aは被測定半導体装置90に対して、より大きな試験電流IFを流すことになる。
【0095】
なお、スイッチング素子Q3は、バイポーラトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)でもよい。
【0096】
電流検出回路27は、
図7に示すように、検査端子T4に一端が電気的に接続され、直流電流源25に他端が電気的に接続されている。電流検出回路27は、検出した試験電流IFに基づいて生成されたフィードバック電圧IF_FBを、電源制御アンプ4Aに出力する。なお、電流検出回路27は、例えば、抵抗または電流センサから構成される。
【0097】
次に、制御部3Aについて説明する。制御部3Aは、
図7に示すように、SIG_OUT出力端子、IF_REF出力端子およびVF_dct入力端子を有する。なお、制御部3Aは、マイコン等により構成される。
【0098】
制御部3Aは、IF_REF出力端子から、被測定半導体装置90に印加する試験電流IFに対応した設定電圧IF_REFを出力する。例えば、制御部3Aは、所望の試験電流IFの1/100の電流を1Ωの抵抗に流したときに抵抗の両端に発生する電圧を設定電圧IF_REFとして出力する。
【0099】
制御部3Aは、SIG_OUT出力端子から、位相補償部5の位相補償量を制御するための信号(位相補償量制御信号)を出力する。位相補償量制御信号は、設定電圧IF_REFに対応して出力される。
【0100】
なお、制御部3Aは、SIG_OUT出力端子としてn本のデジタル出力端子を備え、位相補償量制御信号として、設定電圧IF_REFに対応したnビットの信号を出力してもよい。即ち、制御部3Aは、設定電圧IF_REFに基づくデコード信号を位相補償量制御信号として出力してもよい。
【0101】
制御部3Aは、VF_dct入力端子から、後述の電圧測定部10により測定された電圧値を入力する。そして、制御部3Aは、電圧測定部10により測定された電圧値に基づいて、被測定半導体装置90の良否を判定する。具体的には、被測定半導体装置90がダイオードの場合、制御部3Aは、電圧測定部10により測定された電圧値(即ち、ダイオードのアノード−カソード間の電圧値)が所定の閾値よりも小さい場合に、当該ダイオードの順方向特性が正常であると判定する。
【0102】
電源制御アンプ4Aは、フィードバック電圧IF_FBが設定電圧IF_REFに等しくなるように、電源部2Aを制御するように構成されている。電源制御アンプ4Aは、
図7に示すように、オペアンプにより構成される。
【0103】
電源制御アンプ4Aは、
図7に示すように、制御部3Aから設定電圧IF_REFを入力する第1の入力端子(+)と、電源部2Aからフィードバック電圧IF_FBを入力する第2の入力端子(−)と、電源部2Aを制御するための電源制御信号を電流調節部26に出力する出力端子とを有する。電源制御信号は、電源制御アンプ4Aが第1および第2の入力端子から入力した電圧値に基づいて生成される。
【0104】
位相補償部5は、電源制御アンプ4Aの出力端子から出力された電源制御信号を設定電圧IF_REFに応じて位相補償して、電源制御アンプ4Aの第2の入力端子(−)にフィードバックする。
【0105】
位相補償部5は、設定電圧IF_REFが高いほど電源制御アンプ4Aの出力が大きくなることから、設定電圧IF_REFが高くなるにつれて、電源制御信号に対する位相補償量を大きくすることが好ましい。これにより、設定された試験電流IFに適した位相補償を行うことができる。
【0106】
なお、位相補償部5は、電源制御アンプ4Aの出力端子および反転入力端子間の静電容量を変化させる可変容量手段として構成されるが、具体的な構成は第1の実施形態と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0107】
次に、電圧測定部10について説明する。電圧測定部10は、検査端子T3および検査端子T4間の電圧を測定する。これにより、電圧測定部10は、被測定半導体装置90の電圧(被測定半導体装置90がダイオードの場合はアノード−カソード間の電圧)を測定する。
【0108】
上述したように、半導体試験装置1Bにおいて、位相補償部5による位相補償量は、設定電圧IF_REFに応じた値に設定される。このため、設定電圧IF_REFが上限値から乖離した場合であっても、設定電圧IF_REFに適した位相補償量が設定されるため、電源制御アンプ4Aの電源制御信号の立ち上がり時間が長くならない。従って、試験電流IFの立ち上がり時間が長くなることを回避することができる。
【0109】
試験対象のダイオードに印加する順方向電流(試験電流IF)が上限値から乖離した場合であっても、順方向電圧(電圧VF)の測定時間が長くなることを回避することができる。その結果、ダイオードのVF試験の効率を向上させることができる。
【0110】
さらに、大電流の試験電流IFを被測定半導体装置90に印加する時間が短縮されるため、被測定半導体装置90への熱的な影響を軽減し、VF測定を高精度に行うことができる。
【0111】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、被測定半導体装置に印加する試験電流が上限値から乖離した場合であっても、被測定半導体装置の端子間の電圧の測定時間が長くなることを回避することができる。その結果、被測定半導体装置の試験効率を向上させることができる。
【0112】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。