(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表示装置を構成する一対のワークを、エネルギーの照射により硬化する接着剤を介して貼り合せるために、前記一対のワークの少なくとも一方に対して、接着剤を塗布する接着剤塗布装置において、
ワークと相対移動して接着剤をワークに始端と終端を有する形状に塗布する塗布部と、
前記ワークと相対移動し、前記塗布部により塗布された前記接着剤に対して、エネルギーを照射することにより、前記接着剤を仮硬化させる照射部と、
を有し、
前記照射部は、塗布された前記接着剤の終端において、前記塗布部の移動による前記ワーク側の接着剤と前記塗布部側の接着剤との切り離しにより前記ワーク側の接着剤に生じた突出部分が消失する第1のタイミングと、前記突出部分が消失した後の前記接着剤の終端に崩れが発生する第2のタイミングとの間に、前記エネルギーを照射するタイミングが設定されていることを特徴とする接着剤塗布装置。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
【0032】
[構成]
まず、本実施形態の構成を、
図1〜
図9を参照して説明する。
[ワーク]
本実施形態において、貼り合わせの対象となるワークS1、S2は、表示装置用部材を構成する部材であり、表示パネルに保護パネル(カバーパネル)を接着剤Rを介して貼り合わせることにより、表示装置用部材の積層体が構成される。本装置は、このような表示装置用部材の積層体を製造する表示装置用部材の製造装置である。
【0033】
[表示装置用部材の製造装置]
図1に示すように、表示装置用部材の製造装置100は、接着剤塗布装置1、貼合装置2、硬化装置3及び搬送装置4を有する。表示装置用部材の製造装置100は、また、制御装置7を備えている。制御装置7は、各部を構成する装置の動作の制御や、ワークS1、S2の搬送タイミングの制御等を行う。
【0034】
搬送装置4は、ワークS1、S2を各部へ搬送する搬送部とその駆動機構から構成される。搬送部としては、たとえば、ターンテーブル、コンベア等が考えられるが、上記の各装置の間でワークS1、S2搬送可能なものであれば、どのような装置であってもよい。
【0035】
ワークS1、S2は、ローダ5によって表示装置用部材の製造装置100に搬入され、搬送装置4で搬送される。搬送装置4に沿って接着剤塗布装置1、貼合装置2及び硬化装置3が配置されている。不図示のピックアップ手段によって、ワークS1、S2は搬送装置4からピックアップされ、不図示の搬入口を介して各装置への搬入及び搬出がなされる。各装置での、以下に詳述する工程を経て、表示装置用部材Lが製造され、アンローダ6によって表示装置用部材の製造装置100から搬出される。
【0036】
[接着剤塗布装置]
接着剤塗布装置1は、
図2に示すように、支持部12、塗布部10、照射部11を有する。
[支持部]
支持部12は、接着剤塗布装置1におけるワークS1を、塗布面を上に向けて支持する。この支持部12は、ステージ12a、駆動機構12bを有する。ステージ12aは、ワークS1が載置される平板状のテーブルである。駆動機構12bは、ステージ12aを水平方向に往復移動させる機構である。駆動機構12bとしては、例えば、駆動源によって回転するボールねじとすることが考えられる。ただし、載置されたワークS1を水平方向に往復移動可能な装置であれば、どのような装置であってもよい。駆動機構12bにおけるステージ12aの移動の開始、停止及び速度は、制御装置7によって制御される。
【0037】
[塗布部]
塗布部10は、例えば、タンクTに収容された接着剤Rを、流通経路である配管及び供給量を調節するバルブを介して、ポンプにより送り出すことによりワークS1に供給するスリットを備えたスリットコータである。
【0038】
スリットは、ワークS1の塗布面に平行で、ワークS1の相対移動の方向に直交する方向に細長く延びた開口であり、その長手方向の長さが、ワークS1の幅と同等若しくは僅かに短くなっている。
図3に示すように、塗布部10の先端部分は、このようなスリットをワークS1に対向する位置に備えたノズル(スリットノズル)を形成している。
【0039】
さらに、塗布部10には、遮蔽部10aが設けられている。遮蔽部10aは、照射部11からのエネルギーを遮って、ノズル先端の接着剤Rに照射されることを防止する部材である。この遮蔽部10aは、例えば、塗布部10の照射部11側に取り付けられた板状の部材とすることができる。なお、塗布部10と照射部11との距離、照射部11の照射強度、照射方向、照射範囲等によっては、ノズル先端の接着剤Rへの照射エネルギーの影響が少ない場合もあり、かかる場合には、遮蔽部10aは設けなくてもよい。
【0040】
また、塗布部10は、例えば、不図示の駆動機構によって、ワークS1の塗布面に対して直交する方向に昇降するように設けられている。ノズルからの接着剤Rの吐出量は、制御装置7のバルブ制御及びポンプ制御によって調節される。なお、吐出直後の接着剤Rの形状は、接着剤Rの吐出速度、粘度及び温度、塗布面と塗布部10との相対移動速度及びクリアランスなどに左右される。また、塗布後の接着剤Rの形状は、後述するように変化する。
【0041】
なお、接着剤Rは、外部からエネルギーの照射により硬化する樹脂であればよい。例えば、紫外線(UV)硬化樹脂や熱硬化樹脂が考えられる。本実施形態では、紫外線(UV)硬化樹脂を用いて説明する。使用される接着剤Rの粘度は、特に限定はされない。但し、仮硬化による流動の抑制の必要性が高い粘度としては、2千〜数万cpsが想定され、比較的粘度の低い2千〜5千cpsが好ましい。
【0042】
[照射部]
照射部11は、接着剤Rに対して仮硬化のためのエネルギーを照射する処理部である。この照射部11は、
図4に示すように、エネルギーを照射する照射源11aを複数有している。この照射部11においては、例えば、複数のLEDやLD、ランプ等の照射源11aが、ワークS1の塗布面に平行であって、図中、白矢印で示すワークS1の相対移動の方向に直交する方向に等間隔でワークS1に対向して配置されている。例えば、接着剤RがUV硬化樹脂である場合、照射源11aはUV(紫外線)光を出力するものとし、照射源11aからのUV光を、ワークS1に塗布された接着剤Rに照射する。また、接着剤Rが熱硬化樹脂の場合は、照射部11は、熱源からの熱エネルギーを照射することになる。この場合の照射部11は、例えば、Ir(赤外線)を出力するものとすることができる。なお、
図3では、2列となっているが、1列であっても、3列以上であってもよく、特に限定されない。また、照射源11a同士が密着又は連結していてもよく、その配置も千鳥(ジグザク)状態で配置されていてもよい。
【0043】
照射部11による照射は、接着剤Rが仮硬化状態となるように行われる。仮硬化とは、完全には至らない硬化状態となることをいう。例えば、完全硬化に必要なエネルギー量より少ないエネルギー量を照射することで接着剤Rを仮硬化状態にできる。これは、弱い強度で照射することや短い時間で照射することにより、接着剤Rを仮硬化状態とすることができる。また、ある種のUV硬化樹脂では、大気中でUV照射すると、酸素阻害等により接着剤Rの表面の硬化が進まないタイプの仮硬化状態となる。
【0044】
照射部11によるエネルギー照射のON、OFF、照射エネルギーの強度は、制御装置7によって制御される。また、照射部11は、塗布部10との間隔が可変に構成されている。例えば、
図2に示すように、位置変更手段である変位機構11xによって、塗布部10に対する水平方向の間隔が変動可能に設けられている。この変位機構11xは、塗布部10との水平方向の間隔を所望の距離に固定した状態と、ワークS1の相対移動の方向に塗布部10とは独立して移動する状態と、を切り替え可能に設けられている。変位機構11xとしては、例えば、駆動源によって回転するボールねじとすることが考えられる。変位機構11xによる照射部11の移動の開始、停止及び速度は、制御装置7によって制御される。
【0045】
なお、変位機構11xは、照射部11を水平方向に往復移動可能な装置であれば、どのような装置であってもよい。例えば、変位機構11xに、塗布部10と独立して移動する機能を設けずに、照射部11と塗布部10との間隔を所望の位置に固定できるだけとしてもよい。つまり、相対移動の加減速、定常速度を予め設定すれば、所望の照射タイミングで照射が可能となるように、照射部11と塗布部10との間隔を決定することができる。よって、そのように決定された間隔で、照射部11を配置すればよい。従って、例えば、変位機構11xとしては、塗布部10を、取り付け穴としての長孔にスライド移動可能に且つ、ねじ等により所望の位置で固定可能な構成としてもよい。複数の取り付け穴のいずれに取り付けるかにより、塗布部10の位置を変更可能な変位機構11xとしてもよい。スライダにスライド移動可能に設け、複数箇所のストッパにより固定位置を決定できる変位機構11xとしてもよい。このような構成とした場合、温度変化などに応じて、塗布部10の位置を微調整することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、照射部11が接着剤Rにエネルギーを照射する照射タイミングが、制御装置7によって制御される。この照射タイミングは、発明者が精査した以下のような接着剤Rの流動態様に基づいて、接着剤Rの表面におけるワークS2との貼合面が平坦となる第1のタイミングと、貼合面に崩れが発生する第2のタイミングとの間に設定されている。
【0047】
(接着剤の流動態様)
発明者が、接着剤Rの流動を精査したところ、以下のような現象が生じていることが判明した。接着剤RがワークS1上に平面状に塗布された場合、その塗布された接着剤Rの端部は、時間とともにその形状が変化する。つまり、接着剤Rが矩形状に塗布された場合、その端部である4辺の形状が、塗布された時から変化する。この時、ワークS1と接触する塗布部分に対向する接着剤Rの表面側、つまり貼合面となる上面側の形状が主に変化する。この変化は、塗布直後から始まり、一定の時間で収束する。この収束までの時間は、接着剤Rの状態(粘度、厚さ、塗布直後の形状等)によって変動する。
【0048】
より具体的には、接着剤Rを吐出する塗布部10のノズルとワークS1とを相対的に移動させて、ワークS1表面に接着剤Rを塗布する場合、塗布直後、つまりワークS1の表面に接着剤Rが接触した直後の接着剤Rにおける塗布の始端の表面は、
図5の(a)に示すように、ワークS1と接着剤Rの接触部分をアンカーにして、塗布部10が移動する方向に引かれて緩やかに傾斜した曲率半径の大きな曲面r1が生じる。同時に、接着剤Rには、始端方向、つまり始端での外縁に向かう方向に表面張力が働く。塗布部10が離れるに従って引っ張られる力が弱くなり、代わりに表面張力が強く働くので、
図5の(b)に示すように、表面の断面縁部の角部の曲率半径が最小となる略直角近くまで接着剤Rが流動し、接着剤Rの表面のうち、他方のワークS2との貼合面に、ワークS1の表面と略平行な平坦面r2が生じる。この平坦面r2が生じる時点が第1のタイミングである。
【0049】
その後、時間の経過に従って、
図5の(c)に示すように、表面張力により、断面角部の接着剤Rがさらに外縁に向かう方向とは逆となる内側に移動して、平坦面r2と異なる高さの隆起r3が生じる。このとき、一部に窪みが生じる場合もある。このように接着剤Rに隆起、窪みの少なくとも一方が生じた状態を、崩れと呼ぶ。この崩れが生じる時点が第2のタイミングである。この第2のタイミングが過ぎた後も崩れはしばらく続いて収束する。
【0050】
一方、塗布の終端では、塗布部10が接着剤Rの吐出を停止した後、上昇して行くに従って、
図6の(a)に示すように、接着剤Rが引き伸ばされ、その後、
図6の(b)に示すように、ワークS1側と塗布部10側の接着剤Rが切れるので、その縁部の角部に突出r4が生じる。この突出r4は、
図6の(c)に示すように、時間の経過に従って、ワークS1側の接着剤Rに重力や表面張力等によって吸収されて消失するので、接着剤Rの表面のうち、他方のワークS2との貼合面に、ワークS1の表面と略平行な平坦面r5が生じる。この平坦面r5が生じる時点も、第1のタイミングである。その後、時間の経過に従って、
図5(c)と同様に、平坦面r5と異なる高さの崩れが生じる。この崩れが生じる時点も、第2のタイミングである。
【0051】
なお、塗布の始端から終端に至る途中における塗布方向と平行な縁部、つまり側端でも、
図5と同様の変化を生じる。但し、後述するように、塗布部10が移動することによる引っ張り状態や塗布方向との位置関係から、始端とは相違するタイミングで変化が進む。
【0052】
以上から、始端における第1のタイミングと第2のタイミングとの間隔、終端における第1のタイミングと第2のタイミングとの間隔、および側端における第1のタイミングと第2のタイミングとの間隔は、必ずしも一致していない。また、塗布の始端又は側端においては、塗布の開始とほぼ同時に平坦面が生じている場合もある。その場合には、始端又は側端においては、第1のタイミングは塗布開始のタイミングとほぼ同時となる。
【0053】
もし、第1のタイミングよりも早く仮硬化してしまうと、曲率半径の大きな曲面のr1状態で形状が固定されてしまうので、
図19(B)に示したような二重線や、接着剤Rの縁部の角部が見えることによる線が生じやすい。第2のタイミングより仮硬化が遅くなると、崩れが生じた状態で形状が固定されてしまうので、
図19(D)に示すように、ボイドBが発生しやすい。
【0054】
第1のタイミング、第2のタイミングは、接着剤Rの各部に照射を開始するタイミングとして許容される時間の前端と後端となる。接着剤Rの各部に対する照射時間は、接着剤Rの形状が固定される最低時間であればよい。これは、照射によって生ずる仮硬化の状態に依存する。例えば、少なくとも仮硬化率20%となることが望ましい。これ以下だと、貼り合わせ時に貼り合わせ圧力で流動し、
図19(C)に示すように、接着剤Rのはみ出しにつながる。
【0055】
以上のことは、特に、照射タイミングの後端となる第2のタイミングに影響する。すなわち、第2のタイミングが、崩れが生じるまでの限界点であるため、照射を第2のタイミングで行うと、上記のような仮硬化率を維持することができない可能性がある。この場合、第2タイミングよりも少し前に、照射タイミングを設定することになる。
【0056】
(照射タイミングの設定態様)
本実施形態における第1のタイミングと第2のタイミングとの間の照射タイミングは、例えば、
図5の(b)、
図6の(c)に示すように、接着剤Rの縁部に平坦面r2、r5が生じてから、これに崩れが生じるまでの間である。崩れが生じるまでとは、崩れがボイドの原因とならない許容範囲内で維持されている状態である。
【0057】
このような照射タイミングの設定は、以下のような態様によって実現できる。
(1) 照射箇所への照射部の到達時間
まず、塗布済の接着剤Rに対する照射部11の到達時間が、上記の第1のタイミングと第2のタイミングの間となるように設定する。つまり、照射部11によって照射を行いたい接着剤Rの位置へ照射部11が位置付けされ、その照射を行いたい接着剤Rの部分が塗布された時から上記照射部11の位置付けまでの時間、すなわち照射部11の接着剤Rへの到達時間が、第1のタイミングと第2のタイミングの間となるように、塗布部10と照射部11との間隔を設定して、塗布部10と照射部11の同一箇所への到達時間差を生じさせる。この到達時間差によって、到達とともにエネルギーを照射すると、照射時間差を生じさせることができる。ここでいう間隔は、照射部11が塗布部10から独立して移動して、変動する態様も含む。
【0058】
このような間隔設定により、照射部11が塗布の始端に到達した時に照射を開始して、その後の照射を継続することにより、接着剤Rが平坦な状態で仮硬化させることができる。この場合、照射部11と塗布部10との間隔の設定によっては、後述のように塗布の終端の手前で照射部11の照射を一旦停止することなく、照射を連続して行うことも可能となる。
【0059】
(2) 所定時間の設定
接着剤Rの塗布開始時から塗布の始端に照射部10が照射するまでの時間である始端照射タイミングと、接着剤Rの塗布終了時から塗布の終端に照射部10が照射するまでの時間である終端照射タイミングとを設定する。なお、塗布開始時とは、例えば、塗布部10から吐出した接着剤Rがワークに付着して、塗布部10が相対移動を始める時点をいう。塗布終了時とは、例えば、塗布部10が接着剤Rの吐出を終了して、塗布部10が上昇を開始する時点をいう。
【0060】
(3) 塗布の始端及び終端におけるタイミング設定
例えば、接着剤Rの塗布の始端における第1のタイミングを、塗布部10の移動により引きずられるようにして、その断面が曲面変形している接着剤Rの端面が、その曲面状の変形の曲率が最小状態に戻って平坦化するタイミングとする。一方、接着剤Rの塗布の終端における第1のタイミングを、塗布部10の移動によるワークS1側の接着剤Rと塗布部10側の接着剤Rとの切り離しにより、ワークS1側の接着剤Rに生じた突出部分が消失するタイミングとする。また、接着剤Rの塗布の始端及び終端における第2のタイミングを、縁部に崩れが発生するタイミングとする。
【0061】
(4) 接着剤の粘度に応じたタイミング設定
また、接着剤Rの粘度により、
図5及び
図6に例示したような接着剤Rの変化の速度は異なる。つまり、接着剤Rの粘度が高いほど流動が遅くなるので変化が遅く、粘度が低いほど流動が速くなるので変化が速い。このため、接着剤Rの粘度が高い程、第1のタイミング及び第2のタイミングを遅くして、接着剤Rの粘度が低いほど、第1のタイミング及び第2のタイミングを早くする。
【0062】
(試験)
上記のような接着剤Rの粘度は、接着剤Rの種類や温度で決まる。さらに、接着剤Rの塗布厚も、接着剤Rの流動に影響を与える。この塗布厚や初期の塗布形状は、接着剤の吐出量や塗布部10の移動速度によっても影響される。このため、上記の第1のタイミング、第2のタイミングは、あらかじめ想定される接着剤の種類、温度、塗布厚、塗布動作状態等によって試験を行なって、決定することができる。
【0063】
例えば、第2のタイミングを決定するための試験の例を説明する。まず、ワークS1として、10インチサイズの表示装置用の基板を用い、塗布部10としてスリットノズルを用いる。この基板に対して、スリットノズルで5秒かけて略全面に接着剤Rを塗布する。粘度2500cpsの接着剤を、常温で、塗布厚200μmで塗布した場合、その縁部は、1〜2秒で崩れが始まる。第2のタイミングは、この崩れの状態を観察して時間を計測することにより求めることができる。この崩れが始まる時間が、例えば、塗布後、始端、終端、側端ともに2秒とすると、第2のタイミングは、塗布開始から2秒となる。第1のタイミングについても、始端においては、塗布開始からの接着剤Rの形状、終端においては、塗布終了から接着剤Rが切れた後の形状を観察して時間を計測することにより、求めることができる。
【0064】
なお、上記のような試験結果から、粘度、塗布厚、温度、塗布動作状態と、貼合面が平坦化する時間、あるいは崩れが始まる時間との関係式を求め、この関係式に基づいて制御することもできる。
【0065】
[貼合装置]
貼合装置2は、
図7(A)に示すように、ワークS1、S2を積層して貼り合せる貼合部20を備える。貼合部20は、チャンバ21内に下側プレート22と上側プレート23を対向配置した構成となっている。チャンバ21は上下動が可能であり、上方に移動すると下側プレート22と上側プレート23が外部に開放されワークS1、S2が搬入可能となる。下方に移動すると下側プレート22と上側プレート23はチャンバ内に収容され、チャンバ内部に密閉空間が形成される。チャンバ21は不図示の排気手段によって内部圧力を調整可能となっている。つまり、ワークS1、S2が搬入されると、チャンバ21が下降して内部が密閉された上で減圧され、減圧雰囲気下で貼り合せが行われるようになっている。
【0066】
下側プレート22は、支持部として、プレート上に載置されたワークS1を支持する。上側プレート23は、保持部として、ワークS2を保持機構により保持する。本実施形態では、例として、下側プレート22に、接着剤Rが塗布されたワークS1が支持され、上側プレート23にワークS2が保持される場合を説明する。
【0067】
上側プレート23の保持機構として、たとえば、静電チャック、メカチャック、真空チャック、粘着チャック等、現在又は将来において利用可能なあらゆる保持機構が適用可能である。複数の種類のチャックを併用することも可能である。上側プレート23には、駆動部として、昇降機構25が備えられている。この昇降機構25によって、上側プレート23は下側プレート22に接離可能に移動し、
図7(B)に示すように、上側プレート23に保持されたワークS2を下側プレート22に支持されたワークS1に押し付けて積層する。ワークS1とワークS2は、ワークS1の表面に塗布された接着剤Rを介して貼り合わされ、積層体S10が形成される。
【0068】
下側プレート22は、載置されたワークS1の位置がずれないように、上側プレート23と同様の保持機構を備えていてもよい。
【0069】
[硬化装置]
図8に示すように、硬化装置3は、ワークS1とワークS2を接着している接着剤Rを硬化する硬化部30を備える。硬化部30は、積層体S10が載置されるステージ31と、ステージ31上に配置された照射ユニット33を備える。
【0070】
照射ユニット33は、硬化エネルギー、例えば、UVを発することができる1つまたは複数のランプやLED等から構成されている。照射ユニット33の照射は、接着剤Rを硬化するのに必要な量のエネルギーを照射することができるように調節されている。このエネルギーの量は、照射の強度と時間により調整される。
【0071】
[制御装置]
制御装置7は、表示装置用部材の製造装置100の動作を制御する装置である。本実施形態においては、特に、上記のように、照射部11による照射のタイミングが、接着剤Rにおける貼合面の形状が平坦となる第1のタイミングと、貼合面の形状に崩れが生じる第2のタイミングとの間となるように、ステージ12aの移動、塗布部10の昇降及び接着剤Rの吐出量、照射部11の照射タイミング、照射強度、移動等を制御する。制御装置7は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって実現できる。この制御装置の制御による各部の動作の詳細は、本実施形態の作用として後述する。
【0072】
このような制御を実現するための制御装置7の構成を、仮想的な機能ブロック図である
図9を参照して説明する。すなわち、制御装置7は、機構制御部70、記憶部71、照射指示部72、照射強度指示部73、入出力制御部74を有する。なお、オペレータが、制御装置7を操作するためのスイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力装置については、説明を省略する。
【0073】
機構制御部70は、支持部3、塗布部10、照射部11、貼合部20、硬化部30等の
機構部の駆動源、バルブ、スイッチ、電源等を制御する処理部である。
【0074】
記憶部71は、始端照射タイミング、終端照射タイミング等、本装置の処理に必要な情報を記憶する処理部である。上記のように、始端照射タイミング、終端照射タイミングは、それぞれ第1のタイミングと第2のタイミングとの間に設定されている。
【0075】
照射指示部72は、始端照射タイミング、終端照射タイミングに従って、照射部11の照射を制御する処理部である。照射強度指示部73は、照射部11の照射強度を制御する処理部である。入出力制御部74は、制御対象となる各部との間での信号の変換や入出力を制御するインタフェースである。
【0076】
なお、制御装置7には、装置の状態を確認するためのディスプレイ、ランプ、メータ等の出力装置75が接続されている。上記の第1のタイミング、第2のタイミング、始端照射タイミング、終端照射タイミング等を、出力装置75に表示してもよい。
【0077】
[作用]
以上のような構成を有する本実施形態の作用を、上記の
図1〜
図9に加えて、
図10のタイムチャート、
図11及び
図12の状態遷移図を参照して説明する。なお、
図11及び
図12におけるステージ12a、ワークS1、S2、塗布部10、照射部11の位置及び大きさ等は、説明のための便宜的な表現に過ぎない。
【0078】
(概要)
まず、
図1に示すように、塗布部10と照射部11の直下を、ワークS1を載置したステージ12aが、駆動機構12bによって水平方向(図中、矢印が示す右から左)に、移動する。塗布部10と照射部11のステージ12aに対する相対移動は、ワークS1に対する相対移動と同義である。
【0079】
接着剤Rの塗布は、ワークS1の一辺の端部(図中、左端)から始まり、これに対向する一辺の端部(図中、右端)で終了する。この塗布が開始する始端側を、塗布上流側とし、塗布が終了する終端側を塗布下流側とする。そして、
図3に示すように、塗布部10の塗布上流側に配置された照射部11が、その直下の塗布部分に仮硬化のためのエネルギー、例えばUV光を照射することにより、接着剤Rを仮硬化状態(図中、網掛け部分)とする。
【0080】
(タイムチャート)
次に、接着剤塗布装置1における各部の動作タイミングを、
図10のタイムチャートを参照して説明する。
図10の横軸は時間である。
図10の縦軸は、(a)はステージ12aの移動速度、(b)は塗布部10からの接着剤Rの吐出量、(c)は塗布部10の高さ、(d)は照射部11による接着剤Rへの照射のON・OFF及び照射強度である。また、上記の始端側の第1のタイミングをT1、第2のタイミングをT2、終端側の第1のタイミングをT1´、第2のタイミングをT2´で示す。以下、(a)〜(d)を詳説する。
【0081】
(a)ステージの移動速度
時点Aは塗布の開始を示す。時点Bから時点Cは、ステージ12aの移動が定常速度となっている時間を示す。この定常速度は、塗布部10による単位時間当たりの接着剤Rの吐出量が一定量の場合に、ワークS1に均一な厚さで接着剤Rが塗布される一定の速度である。また、この定常速度は、塗布部10とステージ12aの相対移動速度であって、接着剤Rの粘度、吐出量、所望の塗布厚等によって相違する。
【0082】
時点Aからステージ12aの速度が加速して行き、時点Bで定常速度に達する。ステージ12aは、そのまま定常速度を維持し、塗布終了の時点Dの手前の時点Cから減速を開始し、時点Dで一旦停止する。これは、後述するように、塗布済の接着剤Rを、塗布部10の上昇によりノズル側の接着剤Rから切り離すためである。接着剤Rの切り離しを安定して行い、第1のタイミングまでの変動を抑えるには、停止することが好ましい。但し、接着剤Rの粘度等によっては、切り離しが容易な場合があり、そのような場合には、停止をせずに、定常速度のまま又は減速して移動したままで切り離しをしてもよい。その後、ステージ12aは、塗布部10をステージ12a上から退避させて、照射部11が接着剤Rの塗布終端に来るように、時点Eから再び移動を開始して、短時間加速した後、減速して時点Fで停止する。
【0083】
(b)塗布部からの接着剤の吐出量
時点Aで、塗布部10のノズルから接着剤Rの吐出が開始する。塗布部10は、時点Aから、ステージ12aの加速に応じて、ワークS1の単位面積当たりの塗布量が一定となるように、吐出量を増加させて行く。時点Bから時点Cまでは、ステージ12aは定常速度を維持しているため、塗布部10の吐出量も一定とする。これにより、ワークS1の単位面積当たりの塗布量が一定となる。時点Cから、ステージ12aの減速に応じて、ワークS1の単位面積当たりの塗布量が一定となるように、塗布部10は吐出量を減少させて行く。そして、時点Dで吐出を停止する。吐出停止時には、供給時とは逆にポンプを動作させることにより、接着剤Rの液垂れを防止できる。
【0084】
上記の吐出量は、時点Aから時点Dまでの全てにおいて、所望の一定の塗布厚さになるように決定される。つまり、ステージ12aの加減速があっても、定常速度の区間と同じ塗布厚さとなるように、吐出量を変化させる。
【0085】
なお、
図10における(b)は、塗布部10からの接着剤Rの吐出量の変化を示すものであり、接着剤Rの供給、供給停止のためのポンプ及びバルブ等の制御タイミングとは必ずしも一致しない。つまり、ポンプ及びバルブ等の制御タイミングと、結果的に生じる吐出量の変化とそのタイミングにはタイムラグが生じるため、このタイムラグを考慮して、吐出量が(b)になるように、ポンプ及びバルブ等が制御される。また、ステージ12aの移動開始と接着剤Rの吐出を時点Aとしているが、吐出された接着剤Rが塗布部10のノズル先端とワークS1との間に行き渡るまでに僅かな時間がかかる。このため、吐出開始からステージ12aの移動開始のタイミングには僅かなずれがある。
【0086】
(c)塗布部の高さ
塗布部10は、初期状態では、ワークS1から離れた待機位置の高さ(待機高さ)にある。接着剤Rの塗布を開始するには、塗布部10は、ワークS1に接近して、ノズルからワークS1の所望の位置への塗布が可能な高さ(塗布高さ)まで下降する必要がある。
【0087】
つまり、時点Aより前に、塗布部10は待機高さから塗布高さまでの下降を開始する。そして、塗布部10が塗布高さに達した時点Aで、接着剤Rの吐出を開始する。なお、
図10では、塗布高さへの到達のタイミングは、時点Aと同じになっているが、時点Aよりも前であれば問題はない。
【0088】
時点Dでステージ12aが停止した時、塗布部10は塗布終端となるワークS1の終端に位置する。上記の接着剤Rの吐出量の制御で述べたように、停止と同時に吐出も終了する。そして、塗布部10は、待機高さへ上昇する。これにより、ワークS1側の接着剤Rとノズル側の接着剤Rが切れる。待機高さは、このように接着剤Rが切れるために十分な高さとする。なお、上記の説明の各動作のタイミングは、一例である。塗布部10の上下動作と吐出動作は、必ずしもステージ12aの移動とタイミングを合わせる必要はない。
【0089】
(d)照射部の照射
時点Bでステージ12aの移動速度が定常速度となった後、ワークS1に塗布されている接着剤Rの始端に対して照射部11によるエネルギー照射を開始する。この照射開始タイミングは、あらかじめ設定された始端照射タイミングに従う。この始端照射タイミングは、第1のタイミングT1と第2のタイミングT2の間であればよく、必ずしも時点Bの後でなくてもよいが、単位面積当たりの照射エネルギー量の均一の観点からは、時点B以後が好ましい。
【0090】
この始端照射タイミングでは、
図5(b)に示すように、接着剤Rにおける貼合面が平坦面r2となっていて、この状態で仮硬化する。照射部11は、ステージ12aの移動によって塗布部同様にワークS1と相対移動する。したがって、ワークS1の移動に連れて塗布される接着剤Rに対して相対移動しながらエネルギーを照射する。そして、照射部11は、ステージ12aの移動及び塗布部10の塗布が終了した時点Dで一旦照射を停止する。
【0091】
ステージ12aが、照射部11が接着剤Rの塗布終端に来るように、再び移動を開始した時点Eで、照射部11が照射を開始する。ステージ12aが短時間加速した後、減速して時点Fで停止すると、照射部11が照射を停止する。
【0092】
このように、照射部11が照射を一旦停止するのは、以下のような理由による。塗布部10が塗布の終端で接着剤Rを切る動作を行っている時、照射部11は、その手前の接着剤Rの上方で停止することになる。この状態で照射を継続していると、照射部11の直下の接着剤Rは、単位面積当たりの照射エネルギー量が過剰となり、貼り合わせに適さない仮硬化率(80%以上)となってしまう可能性がある。そこで、ステージ12aの停止とともに、照射部11は一旦照射を停止して、過剰照射を防止している。このように、仮硬化の進行状態を確実にコントロールするためには、照射を一旦停止することが好ましい。但し、照射強度や停止時間によっては、照射エネルギー量が過剰とならない場合もあり、その場合には、照射を停止しなくてもよいし、照射強度を弱めることで対応してもよい。さらに、変位機構11xにより、照射部11を塗布方向に移動させ続けて、一箇所に照射が集中するのを避けることもできる。
【0093】
このように、照射を一旦停止してから、再度照射を開始するタイミングは、すなわち接着剤Rの塗布の終端に対して仮硬化するエネルギーを照射するタイミングであり、あらかじめ設定された終端照射タイミングに従う。この終端照射タイミングは、第1のタイミングT1´と第2のタイミングT2´の間であればよい。この終端照射タイミングでは、
図6(c)に示すように、他のワークとの貼合面が平坦面r5となっていて、この状態で仮硬化する。
【0094】
なお、上記のように、照射部11による照射を一旦停止させない場合に、停止したステージ12a及び塗布部10に対して、変位機構11xにより照射部11を相対移動させることもできる。つまり、照射部11が照射を停止させずに、移動を開始して塗布部10に近づいていく。その間は、照射を継続することで、終端近くまで定常速度に近い速度での照射を継続することができる。その後、照射部11の終端への到達が、第1のタイミングT1´の後であれば、終端まで停止せずに照射を継続してもよい。また、照射部11は、終端の手前で第1のタイミングT1´が到来するまで停止するとともに照射を一旦停止して、第1のタイミングT1´が到来してから再度移動するとともに照射を開始してもよい。このように、照射部11が移動する過程では、定常速度を維持することが望ましいが、移動開始時の加速、停止前の減速は必要となる。また、第1のタイミングT1´後に終端に到達するように、減速してもよい。
【0095】
(塗布工程)
次に、上記のようなタイムチャートに従った本実施形態の塗布工程を、
図11、
図12を参照して説明する。なお、以下の説明の(1)〜(8)は、
図11及び
図12の(1)〜(8)にそれぞれ対応する。
【0096】
(1)ステージ12aが塗布開始位置に移動することにより、待機高さにある塗布部10の吐出口が、ワークS1の塗布始端の直上に位置付けられる。そして、塗布部10が、塗布高さへの下降を開始する。
【0097】
(2)塗布部10が塗布高さまで達して停止した後、塗布部10からの接着剤Rの吐出を開始すると、接着剤RがワークS1に供給される。ワークS1から塗布高さの間に接着剤Rが行き渡った後に、ステージ12aが塗布方向への移動を開始するので、ワークS1の表面への接着剤Rの塗布が開始する(
図10:時点A)。この時点Aから、ステージ12aは加速し、塗布部10は接着剤Rの吐出量を徐々に増やしていく。
【0098】
(3)時点Bにおいて、ステージ12aは加速を止めて一定の定常速度となり、塗布部10の接着剤Rの吐出量も増加を止めて一定となる。つまり、この状態で、ステージ12a、ワークS1、接着剤Rに対する塗布部10及び照射部11の相対移動速度は、定常速度になる。照射指示部72は、塗布の開始すなわちステージ12aの移動開始から、時間のカウントを開始して、始端照射タイミングになると、照射部11に照射を開始させる(
図10:時点C)。
【0099】
なお、ステージ12aの駆動機構12bの設定等から、ステージ12aの移動開始から定常速度に達するまでの時間が分かる。このため、この時間に基づいて、ステージ12aが定常速度となった後で照射部11が塗布の始端に来るように、塗布部10と照射部11との間隔を設定しておけばよい。これにより、照射部11の接着剤Rへの照射を、塗布の始端から定常速度で行うことができる。
【0100】
但し、塗布の始端への照射は、上述のように始端照射タイミングによって決まる。このため、始端照射タイミングのための第1のタイミングT1と第2のタイミングT2との間で、照射部11が始端に照射できるように、塗布部10と照射部11との間隔を設定するとよい。従って、定常速度で照射を開始できる間隔は、始端照射タイミングで照射できる間隔であればよい。例えば、設計時において又は変位機構11xを利用して、塗布部10と照射部11との間隔を設定することができる。
【0101】
接着剤Rの種類を変更した場合等、始端照射タイミングを変更する場合には、照射部11と塗布部10との間隔を、適宜変更すればよい。さらに、照射部11の位置ではなく、照射開始の時間を調整することによっても、接着剤Rに対する始端照射タイミングを調整することができる。このため、塗布部10と照射部11との間隔、照射部11の照射のON、OFFのタイミング、あるいは両者を組み合わせることにより、始端照射タイミングでの照射を実現することができる。始端照射タイミングで、照射部11が始端に来るように設定してあれば、始端に到達する前に照射を開始していてもよい。例えば、
図11(2)に示した時点で、照射を開始していてもよい。この場合は、塗布部10と照射部11との間隔のみで、始端照射タイミングを調整すればよい。
【0102】
定常速度で照射することにより、単位面積当たりの接着剤Rに対する照射エネルギー量を均一化することができる。但し、速度に応じて照射強度を変えることにより、照射エネルギー量を均一化することもできる。また、速度の程度や、接着剤Rの粘度、要求される仮硬化の程度によっては、照射強度を一定にして速度が変わっても、ある程度の照射エネルギー量の均一性は維持できるか、又は許容できるバラつきの範囲内に収まる。従って、必ずしも、定常速度で照射を開始しなくてもよい。
【0103】
(4)ステージ12aは、塗布部10がワークS1の塗布終端に到達する手前から(
図10:時点C)、減速を開始する。この減速にしたがって、塗布部10は、接着剤Rの吐出量を徐々に減少させていく。
【0104】
(5)塗布部10が、ワークS1の塗布終端の直上に到達すると、ステージ12aは一旦停止するとともに、照射部11も一旦、照射及び移動を停止する(
図10:時点D)。この時、塗布部10は、接着剤Rの吐出を停止する。
【0105】
(6)このように塗布部10に対して、ステージ12aが停止した状態で、塗布部10は上昇して待機高さで停止する。既に、塗布部10は接着剤Rの吐出を停止していているので、塗布部10が待機高さに達するまでの間のいずれかの時点で、ワークS1側とノズル側の接着剤Rが切れる。
【0106】
(7)接着剤Rが確実に切れたタイミングの後で、ステージ12aは再び移動を開始する(
図10:時点E)。この移動距離は、少なくとも照射部11が塗布の終端へ到達できる距離である。この間のステージ12aの移動速度は、短時間の加速後に減速に転じる。照射指示部72は、塗布部10の上昇開始から、時間のカウントを開始して、終端照射タイミングになると、照射部11に照射を開始させる。この終端照射タイミングは、第1のタイミングT1´と第2のタイミングT2´の間であればよく、必ずしも時点Eでなくてもよいが、照射エネルギー量の均一の観点からは、時点Eが好ましい。また、接着剤Rが確実に切れるタイミングは、予め試験で確認しておくことで、設定しておくことができる。
【0107】
(8)ステージ12aが停止して、照射部11が塗布の終端に達した時点で、照射部11は照射を停止する(
図10:時点F)。なお、必ずしも照射部11が、塗布の終端上に位置している状態で、ワークS1への一連の塗布動作を完了とする必要はない。ステージ12aが、塗布の終端上を照射部11が通過して、ワークS1上から退避するまで移動してから停止してもよい。従って、必ずしも照射部11が終端に達した時点で照射を停止しなくてもよく、照射しながら終端を通過してもよい。
【0108】
なお、
図10の(d)の一点鎖線に示すように、ステージ12aの移動速度が低下するに従って、照射強度指示部73が、照射部11の照射強度を徐々に低下させ、ステージ12aの移動速度が短時間に昇降(変化)するに従って、照射部11の照射強度を昇降(変化)させることにより、照射エネルギー量の均一化を図ることもできる。
【0109】
また、時点Dから、照射部11を塗布部10とは独立に移動させてもよい。例えば、時点Dから照射部11が、塗布方向への移動を開始し、その速度を加速していく。ステージ12aの減速度と照射部11の加速度とは、絶対値を同じとすれば、ワークS1に対する照射部11の相対移動は、定常速度が維持される。したがって、塗布の終了のためにワークS1と塗布部10の相対移動速度が変化しても、ワークS1上に塗布された接着剤Rと照射部11との相対移動速度は定常速度が維持されて、接着剤Rに対する単位面積当たりの照射エネルギー量は維持される。これによって、接着剤Rの仮硬化の状態もそれまでと同じに維持される。この場合、照射部11の塗布の終端への到達のタイミングが、第1のタイミングT1´と第2のタイミングT1´との間に設定されていればよい。また、照射部11が塗布の終端に達した時点で停止して、照射も停止してもよいし、終端を通過してから停止して、照射を停止してもよいことは、上記の通りである。
【0110】
(貼合工程)
上記のように、接着剤Rが塗布されたワークS1は、不図示のピックアップ手段によって塗布部1から搬出され、搬送部4で搬送され、貼合装置2に搬入される。ここで、ワークS2も、貼合装置2に搬入される。
図7(A)に示すように、下側プレート22は、プレート上に載置されたワークS1を支持する。上側プレート23は、ワークS2を保持機構により保持する。ワークS1とワークS2の搬送タイミングは、貼合装置2で合流することができるように調整すれば良く、一つに限定されるものではない。
【0111】
例えば、ワークS2をワークS1と同時に表示装置用部材の製造装置100に搬入するが、塗布装置1は通過して先に貼合装置2に搬入する。そして、ワークS1が塗布装置1で接着剤Rを塗布されている間は、貼合装置2において待機していても良い。あるいは、ワークS2は、ワークS1よりも後のタイミングで表示装置用部材の製造装置100に搬入し、塗布装置1での塗布が完了したワークS1と同じタイミングで貼合装置2に搬入するようにしてもよい。ワークS1への塗布にかかる時間とワークS2の貼合装置2への搬入にかかる時間との兼ね合いで、ロス時間が生じないようにすればよい。
【0112】
ワークS1、S2が搬入されると、チャンバ21が下降して内部が密閉された上で減圧され、減圧雰囲気下で、
図7(B)に示すように、上側プレート23に保持されたワークS2を下側プレート22に支持されたワークS1に押し付けて貼り合せが行われる。ワークS1とワークS2を貼り合せて形成された積層体S10は、不図示のピックアップ手段によって貼合装置2から搬出され、搬送装置4で搬送され、硬化装置3に搬入される。
【0113】
(硬化工程)
図8(A)に示すように、搬送装置4で搬送された積層体S10は硬化装置3のステージ31に載置される。そして、
図8(B)に示すように、照射ユニット33が、接着剤Rが完全に硬化するのに必要な量のエネルギーを照射し、接着剤Rの硬化が完了する。
【0114】
なお、表示装置用部材の製造装置100は、塗布装置1、貼合装置2及び硬化装置3の前後又はその間に別の工程を行ってもよい。そのために、表示装置用部材の製造装置100は、例えば、塗布装置1の前段又は貼合装置2の前段でワークS1、S2の外観を撮像して位置合わせを行う位置合わせ部や、完成した積層体S10を梱包するテーピングユニット等を備えてもよい。また、貼り合せ時に生じるワークS1とワークS2のずれを修正する位置合わせ部や、貼合面に発生したボイドを大気圧で加圧して消滅させる待機時間を確保する待機部等を貼合装置2の後段に備えてもよい。
【0115】
また、搬送装置4、塗布装置1又は貼合装置2に、ワークS1を反転する機構を設け、接着剤Rが塗布されたワークS1を反転して、貼合装置2の上側プレート23に保持させてもよい。この場合、ワークS2を、下側プレート24に載置して、貼り合わせを行うことができる。もちろん、ワークS2を反転して、貼合装置2の上側プレート23に保持させてもよい。
【0116】
[効果]
(1)以上のような本実施形態によれば、接着剤Rの塗布後、平坦面が生じてからそれに崩れが生じるまでに、仮硬化を行うため、隆起や窪みが無い若しくは許容範囲内の状態で接着剤Rの形状を固定できる。すなわち、塗布した接着剤Rを適切な形状に限定できる。このため、平坦面を維持した状態で、他のワークとの貼り合わせを行うことができる。また、仮硬化を行うことにより、貼り合わせ時における圧力で、接着剤Rが外周へ押し出されることを抑制できる。
【0117】
また、照射部11が照射位置に到達するタイミングが、第1のタイミングと第2のタイミングとの間となるように、照射部11と塗布部10との間隔を設定するという簡単な構造で実現することができる。また、あらかじめ試験等により求めた適切な始端照射タイミングと、終端照射タイミングを設定しておけばよいので、制御構成も簡易となる。
【0118】
本実施形態のようなタイミング制御をせずに、塗布の開始前、例えば、
図10の時点Aよりも前から、照射部11のエネルギー照射は開始しておき、照射部11がエネルギーを照射しながら塗布の始端を通過する場合を考える。この場合、照射部11が塗布の始端を通過する時に、
図10で示した第1のタイミングT1を経過しているとは限らない。このため、始端がまだ平坦化する前に仮硬化によって形状が固定されてしまう可能性がある。本実施形態では、第1のタイミングT1以降に仮硬化するので、平坦化前に形状が固定されてしまうことがない。また、本実施形態のような始端照射タイミングが設定されていない場合、塗布部10と照射部11との配置間隔から、ステージ12aが加速中に、エネルギー照射が開始されてしまう場合もある。この場合には、接着剤Rの単位面積当たりの照射エネルギー量が均一とならない可能性がある。本実施形態では、ステージ12aとの相対移動が定常速度になってから、照射部11がエネルギー照射を開始するように設定することで、照射エネルギー量を均一化することができる。但し、前述又は後述のように、加速中のエネルギー照射について、照射部11を塗布部10から独立して移動させることや、照射強度を調整することで、照射エネルギー量の均一化を実現することもできる。
【0119】
接着剤Rの粘度が高いほど、第1のタイミング及び第2のタイミングを遅く、接着剤Rの粘度が低いほど、第1のタイミング及び第2のタイミングを早くすることにより、粘度に応じた適切なタイミングを設定できる。つまり、低粘度の接着剤Rの場合、接着剤Rが流動しやすいが、仮硬化により素早く形状を固定できる。
【0120】
一方、高粘度の場合、塗布の始端は比較的早期に仮硬化を行うべきであるが、塗布の終端では接着剤Rに生じる突出部分が残存する時間が長い。このため、単純に始端と終端とを同様のタイミングで照射した場合には、塗布の終端において接着剤Rに生じる突出部分が残存したまま固定されてしまう。本実施形態においては、突出部分が消失する第1のタイミングまで仮硬化を待つため、始端、終端ともに均一な貼合が可能となる。
【0121】
さらに、例えば、ワークに対して、塗布を全て完了させた後、全体に対する一照射でまとめて仮硬化する場合、塗布から仮硬化までに時間がかかるため、塗布の始端、終端、その途中で、それぞれの経過時間に伴う形状変化が生じてしまう。本実施形態では、始端、終端、あるいはその途中で刻一刻と変化する塗布形状に対して、どの場所、どのタイミングでも適切な形状で仮硬化させることができるので、それぞれの箇所での経過時間に伴う形状変化が生じない。また、別途、仮硬化用のポジションを設ける必要がないので、装置が大型化することがない。
【0122】
(2)本実施形態のようにステージ12a側の移動によって塗布を行うようにした場合、昇降する塗布部10と塗布方向に加減速動作を行う照射部11とを独立に駆動する構成に、さらに塗布方向に移動する構成を組み込む場合に比べて、構成を簡略化できる。
【0123】
(3)塗布部10として、本実施形態のように直線状の吐出口から吐き出すスリットを有するノズルを用いれば、塗布方向に直交する方向の厚みを容易に均一にすることができ、さらには、移動による面状の塗布も厚みを均一にすることができる。
【0124】
(4)ワークSに塗布された接着剤Rに対する塗布部10、照射部11の相対速度が、常に定常速度に維持される。このため、接着剤Rに対する単位面積当たりの照射エネルギー量が一定となるので、仮硬化状態の不均一は発生しない。これにより、接着剤Rの流動が防止されるとともに、クッション性および接着性は維持されるので、貼り合わせ時の歪み等もなく、均一な接着層を形成でき、また接着性も損なわれない。さらに、塗布部10は、ワークSとの相対速度に応じて、接着剤Rの塗布量を変化させるので、均一な厚みの塗布が可能となる。
【0125】
[他の実施形態]
上記のように、接着剤の塗布の始端と終端における塗布直後から形状が変化し始め、平坦部が生じて、その後、崩れが生じる現象は、塗布方向に平行な縁部、つまり、側端においても生じる。但し、この側端では、塗布後に形状が変化する現象は、始端よりも速く進行する場合がある。例えば、
図5の(a)から
図5の(b)、
図5の(c)の状態になる速度が速い場合や、
図6の(a)から
図6の(b)、
図6の(c)の状態になる速度が速い場合がある。
【0126】
特に、
図13に示すように、塗布の終端においては、接着剤Rが引き伸ばされる過程で、側端が先に分離して、中央部分が最後に分離する。以上のことから、例えば、塗布の終端の側端における第2のタイミングは、その終端の中央部分における第2のタイミングよりも早く設定してもよい。
【0127】
塗布の始端、側端、終端における接着剤Rの変化を起こす力には、以下のような特徴がある。
(始端)
スリットから接着剤Rを吐出しながら塗布部10が相対移動することにより、ワークS1の表面へ接触した(塗布された)接着剤Rは塗布方向へ引っ張られる。また、始端での外縁に向かう始端方向への表面張力が働く。つまり、塗布部10が相対移動する方向に働く引張力と、平坦面、崩れを生じさせる表面張力の方向は逆となる。
(側端)
上記の塗布方向と側端の面が向かう方向が、略直交する方向となっているので、塗布方向の引張力と外縁に向かう表面張力が略90度ずれている。このため、引張力と表面張力の相殺の度合いが弱まり、側端での外縁に向かう側端方向に働く表面張力は、始端よりも強く働く。
(終端)
塗布部10は塗布方向に対して停止しているので、上記のような塗布部10の相対移動に伴う引張力は働かない。塗布部10が接着剤Rを切り離すための動作方向にかかる引張力と、接着剤Rの表面に生じる表面張力とが複雑に影響し合うことになる。そして、接着剤Rが切れた後は、表面張力のみがかかるが、変化の状態は、中央部の突出部が生じることの影響を受ける。(
図6、
図13参照)。
以上のことから、第1、第2のタイミングは、側端が最も早く、次に始端、終端の側部、最後が終端中央部となる。
【0128】
このようなさまざまなタイミングを実現するために、以下のような構成とすることも可能である。
(1) 照射部を分割構成して照射タイミングを変える
図14に示すように、照射部11を、中央部分の照射部11Aと、両側端の照射源11Bに分割構成し、複数の照射源11aの一部が、塗布箇所への到達時間に差が生じるように、照射部11Aと照射部11Bとを独立に移動可能に設ける。これにより、接着剤Rの塗布方向に平行な側端における照射タイミングを、中央部分における照射タイミングよりも早くする。
【0129】
(2) 複数の照射源の照射タイミングを変える
図15に示すように、照射部11に、塗布方向に複数の照射源11aを設け、複数の照射源11aの照射タイミングを変えることにより、接着剤Rの塗布方向に平行な側端における照射タイミングを、中央部分における照射タイミングよりも早くする。かかる構成とすれば、接着剤Rの変化の態様に応じて、照射タイミングを種々の態様に変更することができる。なお、
図15の照射源11aは、白丸が照射状態、黒丸が非照射状態である。さらに、
図16に示すように、側端における照射源11aの配置位置を、中央部分から塗布方向にずらすことにより、側端における照射タイミングを、中央部分における照射タイミングよりも早くすることもできる。
【0130】
始端照射タイミング及び終端照射タイミングは、それぞれ第1のタイミング、第2のタイミングの間であればよい。始端における第1のタイミング及び第2のタイミングの間隔と、終端における第1のタイミング及び第2のタイミングの間隔、さらに始端照射タイミングと終端照射タイミングがそれぞれ第1のタイミングと第2のタイミングの間のどの時点とするかは、必ずしも一致しない。塗布部10と照射部11との間隔は、始端照射タイミングが始端における第1のタイミング及び第2のタイミングの間になるとともに、終端照射タイミングが終端における第1のタイミング及び第2のタイミングの間になるように設定すればよい。但し、塗布中に、照射部11と塗布部10との間隔を変えて、終端への到達タイミングを調整してもよい。例えば、
図16に示すように、定常速度で移動中に、塗布方向に徐々に移動することにより、終端照射タイミングを第2のタイミングT2´に近づけたり、これと逆方向に徐々に移動することにより、終端照射タイミングを第1のタイミングT1´に近づけたりすることもできる。このように、始端及び終端の照射タイミングの制御に、側端への照射タイミングの制御を含めることで、よりきめ細かな形状の限定が可能となる。
【0131】
接着剤Rは、貼り合わせのために必要な面状に塗布されればよい。例えば、ワークS1の片面の全体に行き渡るように塗布してもよいし、一部に塗布されていない領域があってもよい。また、接着剤RがワークS1の縁に達していてもよいし、達していなくてもよい。接着剤RがワークS1の縁の一部に達していて、一部に達していない部分があってもよい。
【0132】
つまり、接着剤Rは、少なくとも表示装置の視野領域に対して一つの面状の塗布がされていれば良い。例えば表示パネルの表示領域の側部に駆動回路部などが存在する場合、駆動回路部分には接着剤Rを塗布しないが、表示領域には切れ目のない面状の接着剤塗布がなされる。
【0133】
また、接着剤Rを吐出するノズルとして、スリットノズルを例に挙げて説明したが、塗布部10は、スリットノズルに限られない。例えば、塗布部10を、スリットノズルの代わりに、多数の針状ノズルが並んだマルチノズルとして、このマルチノズルによって接着剤Rを複数のスジ状に塗布してもよい。複数のスジ状に塗布された接着剤R同士が展延して一体化して面状になっても、スリットノズルによる塗布と同様に、面状の塗布が可能である。例えば、
図18に示すように、塗布部10からの接着剤Rが複数のスジ状に塗布され、各スジの接着剤Rが流動して一体化した後に、照射部11からエネルギーを照射することにより、仮硬化させる。
【0134】
この場合、例えば、矩形の面状に塗布された四辺の縁部以外に、中央部においては、スジ状の接着剤Rが一体化するまで、仮硬化のための照射を待つ必要がある。すなわち、この場合、中央部における第1のタイミングは、縁部とは相違することになる。したがって、本願実施形態において、始端、終端、側端に加えて、中央部についても、仮硬化の照射を開始する照射タイミングを設定することもできる。これにより、マルチノズルでの塗布も適切な形状に限定することができる。
【0135】
貼り合せ対象となるワークS1、S2は、表示装置を構成する積層体となる部材であって、片面に接着剤Rを面状に塗布して貼り合わせるものであれば、その大きさ、形状、材質等は問わない。つまり、偏光板等を含む表示パネル、操作用のタッチパネル、表面を保護する保護パネル、平板状のバックライトやバックライトの導光板等、これらの少なくとも2種を貼合して表示装置用部材を構成するものであればよい。表示装置としても、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等、貼り合わされる平板状のワークを有し、現在又は将来において利用可能な表示装置を広く含む。
【0136】
また、互いに貼り合わされる一対のワークS1、S2は、1枚であっても、複数枚の積層体であってもよい。表示パネル、駆動回路、プリント基板を貼合した積層体に、さらに、タッチパネル、保護パネル又は複合パネルを貼合する等であってもよい。すなわち、表示装置用部材として積層されるワークの積層数は、特定の数には限定されない。
【0137】
接着剤Rが塗布されるワークS1は、表示装置の表示パネルまたは表示パネルを含む積層体であってもよいし、保護パネル、タッチパネル又はタッチパネルを含む保護パネル(複合パネル)であってもよい。但し、偏光板やカラーフィルタ等を含む表示パネルは、歪みも大きく、その歪みの固体差も大きい。保護パネルのみ、タッチパネルのみ又はそれらの複合パネルのように、シンプルな構成のものの方が、歪みが少なく、接着剤Rを均一に塗布しやすい。なお、接着剤Rの流動を抑制してボイドの発生を防止することは、平板上のバックライトやバックライトの導光板等を貼り合わせる場合にも要求される。つまり、バックライトや導光板もワークS1、S2として捉えることができる。接着剤Rは、積層体、バックライト、導光板のいずれに塗布してもよいが、この場合にも、シンプルな構成のバックライト、導光板側に塗布することが好ましい。
【0138】
また、貼り合わされるワークS1、S2の双方に接着剤Rを塗布してもよい。双方のワークS1、S2に接着剤Rを塗布する場合、一方に塗布した接着剤Rのみ仮硬化させても、双方に塗布した接着剤Rを仮硬化させてもよい。双方に接着剤Rを塗布する場合、塗布装置をそれぞれ設けても良いし、1つの塗布装置に双方のワークS1、S2を順に投入してもよい。
【0139】
ステージ12aによりワークS1側を移動させるのではなく、塗布部10及び照射部11側を移動させることにより、塗布を行なってもよい。この場合も、塗布部10の加速時及び減速時には、照射部11は塗布部10とは独立して減速及び加速することにより、上記と同様の定常速度の維持が可能となる。
【0140】
照射部11は、上記で例示したように、照射強度を変化させることにより、接着剤Rの単位面積当たりの照射エネルギー量を一定とすることもできる。つまり、塗布部10とワークS1との相対移動の速度が加速して行くときには、照射エネルギー量を徐々に増加させ、相対移動の速度が一定の時は照射エネルギー量を一定として、相対移動の速度が減速していくときには、照射エネルギー量を徐々に減少させていく。これにより、照射エネルギーを均一にするために、ワークS1に対する照射部の相対移動速度を維持する必要がなくなり、照射部11を塗布部10に対して独立に移動可能に構成する必要がなくなるので、装置構成をさらに簡略化できる。
【0141】
このような照射エネルギー量の変化は、照射強度指示部73が、照射部11の各照射源11aの発光(出力)強度を変化させるばかりでなく、複数ある照射源11aのうち、照射させる照射源11aの数を変化させることにより実現できる。例えば、照射部11における長手方向に配置された複数の照射源11aの発光(出力)の有無若しくは発光(出力)強度を制御する。また、照射部11を、昇降機構によって昇降可能に設け、照射強度指示部73が、この昇降を制御することによって、照射部の照射強度、照射幅等を調整することによっても、実現可能である。
【0142】
照射部11の構成も、複数の照射源11aを配列したものには限定されない。ステージ12aとは関係なく別に構成された照射源11aからの光を、光ファイバーによって導くことにより、その先端を照射部11として構成してもよい。また、照射部11として、塗布部10のスリットと平行な線状に照射させる光学部材を備えていてもよい。光学部材としては、例えば、集光レンズ、スリット等が適用可能である。照射強度は、照射源11aの強度調整による他、かかる光学部材によっても調整可能である。照射幅等も、かかる光学部材によって調整可能である。また、照射範囲を選択的に変更できるシャッター、マスク等の遮蔽部を備えてもよい。
【0143】
照射部11を、エネルギーをスポット的に照射する装置として、この照射部11を、走査機構により、塗布部10のスリットと平行(塗布方向に直交する方向)若しくはこれに近似した方向に走査する構成とすることもできる。この場合も、照射タイミングを、上記の第1のタイミングと第2のタイミングとの間に設定することにより、平坦面を維持できる。
【0144】
また、上記で例示したように、照射強度を変化させることにより、照射エネルギーを一定とすることもできる。つまり、塗布部10とワークS1との相対移動が加速する時には照射部11の照射強度を増加させて、相対移動の速度が一定の時には照射強度を一定として、相対移動が減速する時には照射強度を低下させる。これにより、照射箇所について、単位面積当たりの照射エネルギーが一定となるようにすることもできる。さらに、複数の照射源11aを、塗布方向に順次発光させることによって、照射部11の移動に代えることもできる。これにより、機構の簡素化を図ることができる。
【0145】
照射部11と、塗布部10との間隔を、接着剤Rの貼合面に平坦面が生じて、崩れが生じる前に、照射が開始できる間隔とすれば、照射を一旦停止させることなく、継続的に照射し続けることもできる。照射エネルギーの均一化が厳密には要求されない場合には、始端照射タイミングと終端照射タイミングを上記のように設定できれば、塗布部10、ステージ12aの制御は、上記の速度制御、吐出量制御の態様には限定されない。
【0146】
接着剤塗布装置1におけるステージ12a上へのワークSの支持は、バキュームチャック、静電チャック、メカチャック、粘着チャック等、現在又は将来において利用可能なあらゆる保持機構により、安定化させることができる。複数の種類の保持機構を併用することも可能である。
【0147】
使用する接着剤Rの種類は、紫外線硬化型の樹脂には限定されない。電磁波や熱の照射により硬化する樹脂が一般的であるが、現在又は将来において利用可能なあらゆる接着剤であって、エネルギーの照射により硬化するものに適用可能である。この場合、接着剤の種類に応じて、照射部を、種々の赤外線、放射線等の照射装置、加熱装置、乾燥装置等に変えることになる。