(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
演色評価数は、評価対象となる発光装置の光(試験光)が有するCCTに対応させて選択される「基準の光」で照明した色の見えに対して、試験光で照明した場合の色の見えがいかに近接しているかを示す指標である。すなわち、演色評価数は評価対象となる発光装置の忠実度を示す指標である。しかし、近年の研究から平均演色評価数(R
a)や特殊演
色評価数(R
i(iは1から14、日本においてはJISの規定によりiは1から15))が高いことは、必ずしも人間に対して良好な色の知覚を誘発する訳ではないことが明らかになりつつある。すなわち、演色評価数のスコアを向上させるこれらの手法は、必ずしも良好な色の見えを実現する訳ではないという問題がある。
【0011】
さらに、色の見えが照明される物体の照度によって変化する効果は、現在の種々の演色評価指標(color rendition metric)には含まれていない。通常10000lx程度以上の照度である屋外で見た鮮やかな花の色が、500lx程度の室内に持ち込むと、本来同じ色であるにも関わらず、色がくすんで彩度が下がった別物のように見えることは通常経験される。一般には、物体の色の見えに関する飽和度は照度に依存し、たとえ照明している分光分布が同一であったとしても、照度が下がると飽和度は下がる。すなわち、色の見えはくすむ。これはハント効果(Hunt effect)として知られている。
【0012】
ハント効果は演色性に大きく影響を与えるものの、現状の光源、器具、システム等の発光装置全般の評価には積極的には考慮されない。また、最も単純なハント効果の補償方法は、室内照度を極端に上げていくことであるが、これはエネルギー消費量を不要に増大させてしまう。また、具体的にどのようにすれば、室内照明環境程度の照度で、屋外で見たような、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見えを実現できるかは、明らかとされていない。
【0013】
一方、飲食店用、食品照明用等の特殊照明用に、例えば赤色の彩度を上げる方向にスペクトルを調整した光においては、基準光と比較して、黄色が赤みかかって見える、青色が緑かかって見えるなどの色相(角)ずれが大きくなる等の問題があった。すなわち、照明対象として限定されたもの以外の色の見えは自然でなくなってしまう。また、このような光で白色の物体を照らした場合には、白色物体そのものが着色し、白色に見えないという問題もあった。
【0014】
本発明者は、上記のような課題を解決するために、特願2011−223472などにおいて、細かな作業をするような場合も含め5000lx程度以下、あるいは一般的には1500lx程度以下である室内照度環境下において、人間の知覚する色の見えが、様々な演色評価指標(color rendition metric)のスコアによらず、屋外の高照度環境下で見たような、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見えを実現できる照明方法、及び、照明光源、照明器具、照明システム等
の発光装置全般の発明に到達している。本発明者は、同時に快適な照明環境を高効率で実現する照明方法にも到達している。さらに本発明者はそのような好ましい発光装置の設計指針にも到達している。
【0015】
特願2011−223472などに規定された本発明者がすでに見出している要件を満たす光源は、室内照明環境程度の照度で、屋外で見たような、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見えを実現できる。
しかし、LED照明はすでに普及しており、色の見えに配慮されていない商品も市中に出回っている。また、照明器具/照明システムとして実用に供されているものも多数存在する。しかし、たとえ利用者が色の見えに不自然さを感じ、不満を有していても、これら照明器具/照明システムの色の見えを改善すべく、対象器具/システム等を入れ替えることは時間的制約、利用者の経済的負担を考慮すると現実的ではない。
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであって、現状すでに存在し、あるいは実用に供されている、色の見えに劣る半導体発光装置が内在する発光装置の色の見えを改善するためになされたものである。さらに、本発明においては、このような発光装置の設計方法、製造方法も開示し、さらにこのような発光装置を用いた照明方法も開示する。
さらに、本発明においては、同様の技術を用いて、色の見えにすぐれる半導体発光装置の色の見えをさらに利用者の嗜好に応じて調節する方法等も開示する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の第一の実施態様は以下の事項に関する。
[1]
半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置であって、
波長をλ(nm)とし、
当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、
Φ
elm(λ)は下記条件1と条件2の少なくともいずれか一方を満たさず、φ
SSL(λ)は下記条件1と条件2をともに満たすことを特徴とする発光装置。
条件1:
対象となる光の分光分布におけるANSI C78.377で定義される黒体放射軌跡からの距離D
uvが、−0.0350 ≦ D
uv ≦ −0.0040となる光を含む。
条件2:
対象となる光の分光分布をφ(λ)、対象となる光の分光分布の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光の分光分布をφ
ref(λ)、対象となる光の分光分布の三刺激値を(X、Y、Z)、前記T(K)に応じて選択される基準の光の三刺激値を(X
ref、Y
ref、Z
ref)とし、
対象となる光の規格化分光分布S(λ)と、基準の光の規格化分光分布S
ref(λ)と、これら規格化分光分布の差ΔS(λ)をそれぞれ、
S(λ)=φ(λ)/Y
S
ref(λ)=φ
ref(λ)/Y
ref
ΔS(λ)=S
ref(λ)−S(λ)
と定義し、
波長380nm以上780nm以内の範囲で、S(λ)の最長波長極大値を与える波長をλ
R(nm)とした際に、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在する場合においては下記数式(1)で表される指標A
cgが−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たし、一方、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在しない場合においては下記数式(2)で表される指標A
cgが、−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たす。
【数1】
【数2】
[2]
[1]に記載の発光装置であって、Φ
elm(λ)は下記条件3と条件4の少なくともいずれか一方を満たさず、φ
SSL(λ)は下記条件3と条件4をともに満たすことを特徴とする発光装置。
条件3:
対象となる光の分光分布による照明を数学的に仮定した場合の#01から#15の下記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*
値をそれぞれa
*n、b
*n(ただしnは1から15の自然数)とし、
当該放射方向に出射される光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光での照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*
a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*値をそれぞれa
*nref、b
*nref(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、飽和度差ΔC
nが
−3.8 ≦ ΔC
n ≦ 18.6 (nは1から15の自然数)
を満たし、下記式(3)で表される飽和度差の平均SAT
avが下記式(4)を満たし、
【数3】
【数4】
かつ飽和度差の最大値をΔC
max、飽和度差の最小値をΔC
minとした場合に、飽和度差の最大値と、飽和度差の最小値との間の差|ΔC
max−ΔC
min|が
2.8 ≦ |ΔC
max−ΔC
min| ≦ 19.6
を満たす。
ただし、ΔC
n=√{(a
*n)
2+(b
*n)
2}−√{(a
*nref)
2+(b
*nr
ef)
2}とする。
15種類の修正マンセル色票
#01 7.5 P 4 /10
#02 10 PB 4 /10
#03 5 PB 4 /12
#04 7.5 B 5 /10
#05 10 BG 6 / 8
#06 2.5 BG 6 /10
#07 2.5 G 6 /12
#08 7.5 GY 7 /10
#09 2.5 GY 8 /10
#10 5 Y 8.5/12
#11 10 YR 7 /12
#12 5 YR 7 /12
#13 10 R 6 /12
#14 5 R 4 /14
#15 7.5 RP 4 /12
条件4:
対象となる光の分光分布による照明を数学的に仮定した場合の上記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間における色相角をθ
n(度)(ただしn
は1から15の自然数)とし、
当該放射方向に出射される光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光での照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*
a
*b
*色空間における色相角をθ
nref(度)(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、色相角差の絶対値|Δh
n|が
0 ≦ |Δh
n| ≦ 9.0(度)(nは1から15の自然数)
を満たす。
ただし、Δh
n=θ
n−θ
nrefとする。
[3]
半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置であって、
波長をλ(nm)とし、
当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、
Φ
elm(λ)は下記条件1と条件2をともに満たし、φ
SSL(λ)も下記条件1と条件2をともに満たすことを特徴とする発光装置。
条件1:
対象となる光の分光分布におけるANSI C78.377で定義される黒体放射軌跡からの距離D
uvが、−0.0350 ≦ D
uv ≦ −0.0040となる光を含む。
条件2:
対象となる光の分光分布をφ(λ)、対象となる光の分光分布の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光の分光分布をφ
ref(λ)、対象となる光の分光分布の三刺激値を(X、Y、Z)、前記T(K)に応じて選択される基準の光の三刺激値を(X
ref、Y
ref、Z
ref)とし、
対象となる光の規格化分光分布S(λ)と、基準の光の規格化分光分布S
ref(λ)と、これら規格化分光分布の差ΔS(λ)をそれぞれ、
S(λ)=φ(λ)/Y
S
ref(λ)=φ
ref(λ)/Y
ref
ΔS(λ)=S
ref(λ)−S(λ)
と定義し、
波長380nm以上780nm以内の範囲で、S(λ)の最長波長極大値を与える波長をλ
R(nm)とした際に、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在する場合においては下記数式(1)で表される指標A
cgが−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たし、一方、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在しない場合においては下記数式(2)で表される指標A
cgが、−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たす。
【数5】
【数6】
[4]
[3]に記載の発光装置であって、Φ
elm(λ)は下記条件3と条件4をともに満たし、φ
SSL(λ)も下記条件3と条件4をともに満たすことを特徴とする発光装置。
条件3:
対象となる光の分光分分布による照明を数学的に仮定した場合の#01から#15の下記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*値をそれぞれa
*n、b
*n(ただしnは1から15の自然数)とし、
当該放射方向に出射される光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光での照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*
a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*値をそれぞれa
*nref、b
*nref(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、飽和度差ΔC
nが
−3.8 ≦ ΔC
n ≦ 18.6 (nは1から15の自然数)
を満たし、下記式(3)で表される飽和度差の平均SAT
avが下記式(4)を満たし、
【数7】
【数8】
かつ飽和度差の最大値をΔC
max、飽和度差の最小値をΔC
minとした場合に、飽和度差の最大値と、飽和度差の最小値との間の差|ΔC
max−ΔC
min|が
2.8 ≦ |ΔC
max−ΔC
min| ≦ 19.6
を満たす。
ただし、ΔC
n=√{(a
*n)
2+(b
*n)
2}−√{(a
*nref)
2+(b
*nr
ef)
2}とする。
15種類の修正マンセル色票
#01 7.5 P 4 /10
#02 10 PB 4 /10
#03 5 PB 4 /12
#04 7.5 B 5 /10
#05 10 BG 6 / 8
#06 2.5 BG 6 /10
#07 2.5 G 6 /12
#08 7.5 GY 7 /10
#09 2.5 GY 8 /10
#10 5 Y 8.5/12
#11 10 YR 7 /12
#12 5 YR 7 /12
#13 10 R 6 /12
#14 5 R 4 /14
#15 7.5 RP 4 /12
条件4:
対象となる光の分光分布による照明を数学的に仮定した場合の上記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間における色相角をθ
n(度)(ただしn
は1から15の自然数)とし、
当該放射方向に出射される光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光での照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*
a
*b
*色空間における色相角をθ
nref(度)(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、色相角差の絶対値|Δh
n|が
0 ≦ |Δh
n| ≦ 9.0(度)(nは1から15の自然数)
を満たす。
ただし、Δh
n=θ
n−θ
nrefとする。
[5]
[1]または[3]に記載の発光装置であって、
当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出されるD
uvをD
uv(Φ
elm)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出されるD
uvをD
uv(φ
SSL)と定義した場合に、
D
uv(φ
SSL)<D
uv(Φ
elm)
を満たすことを特徴とする発光装置。
[6]
[1]または[3]に記載の発光装置であって、
当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出されるA
cgをA
cg(Φ
elm)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出されるA
cgをA
cg(φ
SSL)と定義した場合に、
A
cg(φ
SSL)<A
cg(Φ
elm)
を満たすことを特徴とする発光装置。
[7]
[2]または[4]に記載の発光装置であって、
当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出される前記飽和度差の平均をSAT
av(Φ
elm)、
当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出される前記飽和度差の平均をSAT
av(φ
SSL)と定義した場合に、
SAT
av(Φ
elm)<SAT
av(φ
SSL)
を満たすことを特徴とする発光装置。
[8]
[1]から[7]のいずれかに記載の発光装置であって、当該制御要素は380nm≦λ(nm)≦780nmの光を吸収または反射する光学フィルターであることを特徴とする発光装置。
[9]
[1]から[8]のいずれかに記載の発光装置であって、当該制御要素が発光要素から出射される光の集光および/または拡散機能を兼ね備えていることを特徴とする発光装置。
[10]
[9]に記載の発光装置であって、当該制御要素の集光および/または拡散機能が凹レ
ンズ、凸レンズ、フレネルレンズの少なくとも1つの機能によって実現することを特徴とする発光装置。
[11]
[1]〜[10]のいずれかに記載の発光装置であって、
前記発光装置から当該放射方向に出射される光は、分光分布φ
SSL(λ)から導出される波長380nm以上780nm以下の範囲の放射効率K(lm/W)が
180(lm/W) ≦ K(lm/W) ≦ 320(lm/W)
を満たすことを特徴とする発光装置。
[12]
[2]または[4]に記載の発光装置であって、発光装置の色相角差の絶対値|Δh
n|が
0.0003 ≦ |Δh
n| ≦ 8.3(度)(nは1から15の自然数)
を満たすことを特徴とする発光装置。
[13]
[2]または[4]に記載の発光装置であって、前記式(3)で表される発光装置としての飽和度差の平均SAT
avが下記式(4)´を満たすことを特徴とする発光装置。
【数9】
[14]
[2]または[4]に記載の発光装置であって、発光装置としての前記飽和度差ΔC
nが
−3.4 ≦ ΔC
n ≦ 16.8 (nは1から15の自然数)
を満たすことを特徴とする発光装置。
[15]
[2]または[4]に記載の発光装置であって、発光装置としての前記飽和度差の最大値と、前記飽和度差の最小値との間の差|ΔC
max−ΔC
min|が
3.2 ≦ |ΔC
max−ΔC
min| ≦ 17.8
を満たすことを特徴とする発光装置。
[16]
[1]〜[15]のいずれかに記載の発光装置であって、
前記発光装置から当該放射方向に出射される光は、黒体放射軌跡からの距離D
uvが
−0.0250 ≦ D
uv ≦ −0.0100
を満たすことを特徴とする発光装置。
[17]
[1]〜[16]のいずれかに記載の発光装置であって、前記数式(1)または(2)で表される発光装置としての指標A
cgが
−322 ≦ A
cg ≦ −12
を満たすことを特徴とする発光装置。
[18]
[1]〜[17]のいずれかに記載の発光装置であって、
前記発光装置から当該放射方向に出射される光は、分光分布φ
SSL(λ)から導出される波長380nm以上780nm以下の範囲の放射効率K(lm/W)が、
206(lm/W) ≦ K(lm/W) ≦ 288(lm/W)
を満たすことを特徴とする発光装置。
[19]
[1]〜[18]のいずれかに記載の発光装置であって、発光装置としての相関色温度
T(K)が
2550(K) ≦ T(K) ≦ 5650(K)
を満たすことを特徴とする発光装置。
[20]
[1]〜[19]のいずれかに記載の発光装置であって、前記発光装置から当該放射方向に出射される光が対象物を照明する照度が150lx以上5000lx以下であることを特徴とする発光装置。
[21]
[1]〜[20]のいずれかに記載の発光装置であって、前記発光装置は1種類以上6種類以下の発光要素から出射される光を当該放射方向に発することを特徴とする発光装置。
[22]
[1]〜[21]のいずれかに記載の発光装置であって、前記半導体発光素子の発光スペクトルのピーク波長が380nm以上495nm未満であって、かつ、半値全幅が2nm以上45nm以下であることを特徴とする発光装置。
[23]
[22]に記載の発光装置であって、前記半導体発光素子の発光スペクトルのピーク波長が395nm以上420nm未満であることを特徴とする発光装置。
[24]
[22]に記載の発光装置であって、前記半導体発光素子の発光スペクトルのピーク波長が420nm以上455nm未満であることを特徴とする発光装置。
[25]
[22]に記載の発光装置であって、当該半導体発光素子の発光スペクトルのピーク波長が455nm以上485nm未満であることを特徴とする発光装置。
[26]
[1]〜[21]のいずれかに記載の発光装置であって、前記半導体発光素子の発光スペクトルのピーク波長が495nm以上590nm未満であって、かつ、半値全幅が2nm以上75nm以下であることを特徴とする発光装置。
[27]
[1]〜[21]のいずれかに記載の発光装置であって、前記半導体発光素子の発光スペクトルのピーク波長が590nm以上780nm未満であって、かつ、半値全幅が2nm以上30nm以下であることを特徴とする発光装置。
[28]
[1]〜[21]のいずれかに記載の発光装置であって、前記半導体発光素子はサファイア基板、GaN基板、GaAs基板、GaP基板からなる群から選択されるいずれかの基板上で作成されたことを特徴とする発光装置。
[29]
[1]〜[21]のいずれかに記載の発光装置であって、前記半導体発光素子はGaN基板、またはGaP基板上で作成され、かつ前記基板の厚みが100μm以上2mm以下であることを特徴とする発光装置。
[30]
[1]〜[22]のいずれかに記載の発光装置であって、前記半導体発光素子はサファイア基板、またはGaAs基板上で作成され、かつ半導体発光素子は基板から剥離されてなることを特徴とする発光装置。
[31]
[1]〜[25]のいずれかに記載の発光装置であって、発光要素として蛍光体を備えることを特徴とする発光装置。
[32]
[31]に記載の発光装置であって、前記蛍光体は、発光スペクトルの異なる蛍光体を1種類以上5種類以下含むことを特徴とする発光装置。
[33]
[31]または[32]に記載の発光装置であって、前記蛍光体は、室温で光励起した場合の単体発光スペクトルのピーク波長が380nm以上495nm未満であって、かつ、半値全幅が2nm以上90nm以下である蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
[34]
[33]に記載の発光装置であって、前記蛍光体が下記一般式(5)で表される蛍光体、下記一般式(5)´で表される蛍光体、(Sr,Ba)
3MgSi
2O
8:Eu
2+、およ
び(Ba,Sr,Ca,Mg)Si
2O
2N
2:Euからなる群から選択される1種以上を
含むことを特徴とする発光装置。
(Ba,Sr,Ca)MgAl
10O
17:Mn,Eu (5)
Sr
aBa
bEu
x(PO
4)
cX
d (5)´
(一般式(5)´において、XはClである。また、c、d及びxは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1、0.3≦x≦1.2を満足する数である。さらに、a及びbは、a+b=5−xかつ0≦b/(a+b)≦0.6の条件を満足する。)
[35]
[31]または[32]に記載の発光装置であって、前記蛍光体は、室温で光励起した場合の単体発光スペクトルのピーク波長が495nm以上590nm未満であって、かつ、半値全幅が2nm以上130nm以下である蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。[36]
[35]に記載の発光装置であって、前記蛍光体がSi
6-zAl
zO
zN
8-z:Eu(ただし0<z<4.2)、下記一般式(6)で表される蛍光体、下記一般式(6)´で表される蛍光体、およびSrGaS
4:Eu
2+からなる群から選択される1種以上を含むことを
特徴とする発光装置。
Ba
aCa
bSr
cMg
dEu
xSiO
4 (6)
(一般式(6)においてa、b、c、dおよびxが、a+b+c+d+x=2、1.0 ≦ a ≦ 2.0、0 ≦ b < 0.2、0.2 ≦ c ≦ 1.0、0 ≦ d < 0.2
および0 < x ≦ 0.5を満たす。)
Ba
1-x-ySr
xEu
yMg
1-zMn
zAl
10O
17 (6)´
(一般式(6)´においてx、yおよびzはそれぞれ0.1≦x≦0.4、0.25≦y≦0.6及び0.05≦z≦0.5を満たす。)
[37]
[31]または[32]に記載の発光装置であって、前記蛍光体は、室温で光励起した場合の単体発光スペクトルのピーク波長が590nm以上780nm未満であって、かつ、半値全幅が2nm以上130nm以下である蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。[38]
[37]に記載の発光装置であって、前記蛍光体が下記一般式(7)で表される蛍光体、下記一般式(7)´で表される蛍光体、(Sr,Ca,Ba)
2Al
xSi
5-xO
xN
8-x
:Eu(ただし0≦x≦2)、Eu
y(Sr,Ca,Ba)
1-y:Al
1+xSi
4-xO
xN
7-x(ただし0≦x<4、0≦y<0.2)、K
2SiF
6:Mn
4+、A
2+xM
yMn
zF
n(A
はNaおよび/またはK;MはSiおよびAl;−1≦x≦1かつ0.9≦y+z≦1.1かつ0.001≦z≦0.4かつ5≦n≦7)、(Ca,Sr,Ba,Mg)AlSiN
3:Euおよび/または(Ca,Sr,Ba)AlSiN
3:Eu、並びに(CaAlSiN
3)
1-x(Si
2N
2O)
x:Eu(ただし、xは0<x<0.5)からなる群から選択
される1種以上を含むことを特徴とする発光装置。
(La
1-x-yEu
xLn
y)
2O
2S (7)
(一般式(7)において、x及びyはそれぞれ0.02≦x≦0.50及び0≦y≦0.50を満たす数を表し、LnはY、Gd、Lu、Sc、Sm及びErの少なくとも1種の3価希土類元素を表す。)
(k−x)MgO・xAF
2・GeO
2:yMn
4+ (7)´
(一般式(7)´において、k、x、yは、各々、2.8≦k≦5、0.1≦x≦0.7
、0.005≦y≦0.015を満たす数を表し、Aはカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、またはこれらの混合物である。)
[39]
[1]〜[21]のいずれかに記載の発光装置であって、発光要素としてさらに蛍光体を備え、前記半導体発光素子は発光スペクトルのピーク波長が395nm以上420nm未満であり、前記蛍光体は、SBCA、β−SiAlON、およびCASONを含むことを特徴とする発光装置。
[40]
[1]〜[21]のいずれかに記載の発光装置であって、発光要素としてさらに蛍光体を備え、前記半導体発光素子は発光スペクトルのピーク波長が395nm以上420nm未満であり、前記蛍光体は、SCA、β−SiAlON、およびCASONを含むことを特徴とする発光装置。
[41]
[1]〜[40]のいずれかに記載の発光装置であって、パッケージ化LED、LEDモジュール、LED照明器具、およびLED照明システムからなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする発光装置。
[42]
家庭用照明装置として用いられる、[1]〜[41]のいずれかに記載の発光装置。
[43]
展示物用照明装置として用いられる、[1]〜[41]のいずれかに記載の発光装置。[44]
演出用照明装置として用いられる、[1]〜[41]のいずれかに記載の発光装置。
[45]
医療用照明装置として用いられる、[1]〜[41]のいずれかに記載の発光装置。
[46]
作業用照明装置として用いられる、[1]〜[41]のいずれかに記載の発光装置。
[47]
工業機器内用照明装置として用いられる、[1]〜[41]のいずれか1項に記載の発光装置。
[48]
交通機関内装用照明装置として用いられる、[1]〜[41]のいずれかに記載の発光装置。
[49]
美術品用照明装置として用いられる、[1]〜[41]のいずれかに記載の発光装置。[50]
高齢者用照明装置として用いられる、[1]〜[41]のいずれかに記載の発光装置。[51]
半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置の製造方法であって、
発光要素を有する第一の発光装置を準備する工程、及び
第一の発光装置から主たる放射方向に出射される光の少なくとも一部に作用するように制御要素を配置し、第二の発光装置を製造する工程、を含み、
波長をλ(nm)とし、
当該第一の発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該第二の発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、
Φ
elm(λ)は下記条件1と条件2の少なくともいずれか一方を満たさず、φ
SSL(λ)は条件1と条件2をともに満たすことを特徴とする発光装置の製造方法。
条件1:
対象となる光の分光分布におけるANSI C78.377で定義される黒体放射軌跡
からの距離D
uvが、−0.0350 ≦ D
uv ≦ −0.0040となる光を含む。
条件2:
対象となる光の分光分布をφ(λ)、対象となる光の分光分布の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光の分光分布をφ
ref(λ)、対象となる光の分光分布の三刺激値を(X、Y、Z)、前記T(K)に応じて選択される基準の光の三刺激値を(X
ref、Y
ref、Z
ref)とし、
対象となる光の規格化分光分布S(λ)と、基準の光の規格化分光分布S
ref(λ)と、これら規格化分光分布の差ΔS(λ)をそれぞれ、
S(λ)=φ(λ)/Y
S
ref(λ)=φ
ref(λ)/Y
ref
ΔS(λ)=S
ref(λ)−S(λ)
と定義し、
波長380nm以上780nm以内の範囲で、S(λ)の最長波長極大値を与える波長をλ
R(nm)とした際に、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在する場合においては下記数式(1)で表される指標A
cgが−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たし、一方、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在しない場合においては下記数式(2)で表される指標A
cgが、−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たす。
【数10】
【数11】
[52]
[51]に記載の発光装置の製造方法であって、Φ
elm(λ)は下記条件3と条件4の少なくともいずれか一方を満たさず、φ
SSL(λ)は条件3と条件4をともに満たすことを特徴とする発光装置の製造方法。
条件3:
対象となる光の分光分布による照明を数学的に仮定した場合の#01から#15の下記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*
値をそれぞれa
*n、b
*n(ただしnは1から15の自然数)とし、
当該放射方向に出射される光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光での照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*
a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*値をそれぞれa
*nref、b
*nref(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、飽和度差ΔC
nが
−3.8 ≦ ΔC
n ≦ 18.6 (nは1から15の自然数)
を満たし、下記式(3)で表される飽和度差の平均SAT
avが下記式(4)を満たし、
【数12】
【数13】
かつ飽和度差の最大値をΔC
max、飽和度差の最小値をΔC
minとした場合に、飽和度差の最大値と、飽和度差の最小値との間の差|ΔC
max−ΔC
min|が
2.8 ≦ |ΔC
max−ΔC
min| ≦ 19.6
を満たす。
ただし、ΔC
n=√{(a
*n)
2+(b
*n)
2}−√{(a
*nref)
2+(b
*nr
ef)
2}とする。
15種類の修正マンセル色票
#01 7.5 P 4 /10
#02 10 PB 4 /10
#03 5 PB 4 /12
#04 7.5 B 5 /10
#05 10 BG 6 / 8
#06 2.5 BG 6 /10
#07 2.5 G 6 /12
#08 7.5 GY 7 /10
#09 2.5 GY 8 /10
#10 5 Y 8.5/12
#11 10 YR 7 /12
#12 5 YR 7 /12
#13 10 R 6 /12
#14 5 R 4 /14
#15 7.5 RP 4 /12
条件4:
対象となる光の分光分布による照明を数学的に仮定した場合の上記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間における色相角をθ
n(度)(ただしn
は1から15の自然数)とし、
当該放射方向に出射される光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光での照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*
a
*b
*色空間における色相角をθ
nref(度)(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、色相角差の絶対値|Δh
n|が
0 ≦ |Δh
n| ≦ 9.0(度)(nは1から15の自然数)
を満たす。
ただし、Δh
n=θ
n−θ
nrefとする。
[53]
半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置の製造方法であって、
発光要素を有する第一の発光装置を準備する工程、及び
第一の発光装置から主たる放射方向に出射される光の少なくとも一部に作用するように制御要素を配置し、第二の発光装置を製造する工程、を含み、
波長をλ(nm)とし、
当該第一の発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該第二の発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、
Φ
elm(λ)は下記条件1と条件2をともに満たし、φ
SSL(λ)も下記条件1と
条件2をともに満たすことを特徴とする発光装置の製造方法。
条件1:
対象となる光の分光分布におけるANSI C78.377で定義される黒体放射軌跡からの距離D
uvが、−0.0350 ≦ D
uv ≦ −0.0040となる光を含む。
条件2:
対象となる光の分光分布をφ(λ)、対象となる光の分光分布の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光の分光分布をφ
ref(λ)、対象となる光の分光分布の三刺激値を(X、Y、Z)、前記T(K)に応じて選択される基準の光の三刺激値を(X
ref、Y
ref、Z
ref)とし、
対象となる光の規格化分光分布S(λ)と、基準の光の規格化分光分布S
ref(λ)と、これら規格化分光分布の差ΔS(λ)をそれぞれ、
S(λ)=φ(λ)/Y
S
ref(λ)=φ
ref(λ)/Y
ref
ΔS(λ)=S
ref(λ)−S(λ)
と定義し、
波長380nm以上780nm以内の範囲で、S(λ)の最長波長極大値を与える波長をλ
R(nm)とした際に、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在する場合においては下記数式(1)で表される指標A
cgが−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たし、一方、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在しない場合においては下記数式(2)で表される指標A
cgが、−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たす。
【数14】
【数15】
[54]
[53]に記載の発光装置の製造方法であって、Φ
elm(λ)は下記条件3と条件4をともに満たし、φ
SSL(λ)も下記条件3と条件4をともに満たすことを特徴とする発光装置の製造方法。
条件3:
対象となる光の分光分分布による照明を数学的に仮定した場合の#01から#15の下記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*値をそれぞれa
*n、b
*n(ただしnは1から15の自然数)とし、
当該放射方向に出射される光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光での照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*
a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*値をそれぞれa
*nref、b
*nref(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、飽和度差ΔC
nが
−3.8 ≦ ΔC
n ≦ 18.6 (nは1から15の自然数)
を満たし、下記式(3)で表される飽和度差の平均SAT
avが下記式(4)を満たし、
【数16】
【数17】
かつ飽和度差の最大値をΔC
max、飽和度差の最小値をΔC
minとした場合に、飽和度差の最大値と、飽和度差の最小値との間の差|ΔC
max−ΔC
min|が
2.8 ≦ |ΔC
max−ΔC
min| ≦ 19.6
を満たす。
ただし、ΔC
n=√{(a
*n)
2+(b
*n)
2}−√{(a
*nref)
2+(b
*nr
ef)
2}とする。
15種類の修正マンセル色票
#01 7.5 P 4 /10
#02 10 PB 4 /10
#03 5 PB 4 /12
#04 7.5 B 5 /10
#05 10 BG 6 / 8
#06 2.5 BG 6 /10
#07 2.5 G 6 /12
#08 7.5 GY 7 /10
#09 2.5 GY 8 /10
#10 5 Y 8.5/12
#11 10 YR 7 /12
#12 5 YR 7 /12
#13 10 R 6 /12
#14 5 R 4 /14
#15 7.5 RP 4 /12
条件4:
対象となる光の分光分布による照明を数学的に仮定した場合の上記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間における色相角をθ
n(度)(ただしn
は1から15の自然数)とし、
当該放射方向に出射される光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光での照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*
a
*b
*色空間における色相角をθ
nref(度)(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、色相角差の絶対値|Δh
n|が
0 ≦ |Δh
n| ≦ 9.0(度)(nは1から15の自然数)
を満たす。
ただし、Δh
n=θ
n−θ
nrefとする。
【0017】
また、上記目的を達成するため、本発明の第三の実施態様は以下の事項に関する。
[55]
半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置の設計方法であって、
波長をλ(nm)とし、
当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、
Φ
elm(λ)は上記条件1と条件2の少なくともいずれか一方を満たさず、φ
SSL(λ)は上記条件1と条件2をともに満たすように設計することを特徴とする発光装置の設計方法。
[56]
[55]に記載の発光装置の設計方法であって、Φ
elm(λ)は上記条件3と条件4の少なくともいずれか一方を満たさず、φ
SSL(λ)は上記条件3と条件4をともに満たすことを特徴とする発光装置の設計方法。
[57]
半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置の設計方法であって、
波長をλ(nm)とし、
当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、
Φ
elm(λ)は上記条件1と条件2をともに満たし、φ
SSL(λ)も上記条件1と条件2をともに満たすように設計することを特徴とする発光装置の設計方法。
[58]
[57]に記載の発光装置の設計方法であって、Φ
elm(λ)は上記条件3と条件4をともに満たし、φ
SSL(λ)も上記条件3と条件4をともに満たすことを特徴とする発光装置。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明の第四の実施態様は以下の事項に関する。
[59]
照明対象物を準備する照明対象物準備工程、および、発光要素である半導体発光素子と制御要素を含む発光装置から出射される光により対象物を照明する照明工程、を含む照明方法であって、
前記照明工程において、前記発光要素から出射される光が対象物を照明した際に、前記対象物の位置で測定した光が、少なくとも以下の<1>、<2>及び<3>のいずれか1つを満たさず、前記発光装置から出射される光が対象物を照明した際に、前記対象物の位置で測定した光が以下の<1>、<2>及び<3>をすべて満たすように照明することを特徴とする照明方法。
<1>前記対象物の位置で測定した対象となる光のANSI C78.377で定義される黒体放射軌跡からの距離D
uvが、−0.0350 ≦ D
uv ≦ −0.0040である。
<2>前記対象物の位置で測定した対象となる光による照明を数学的に仮定した場合の#01から#15の下記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空
間におけるa
*値、b
*値をそれぞれa
*n、b
*n(ただしnは1から15の自然数)とし、
前記対象物の位置で測定した対象となる光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光による照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*値をそれぞれa
*nref、b
*nref
(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、飽和度差ΔC
nが
−3.8 ≦ ΔC
n ≦ 18.6 (nは1から15の自然数)
を満たし、
下記式(3)で表される飽和度差の平均SAT
avが下記式(4)を満たし、
【数18】
【数19】
かつ、飽和度差の最大値をΔC
max、飽和度差の最小値をΔC
minとした場合に、飽和度差の最大値と、飽和度差の最小値との間の差|ΔC
max−ΔC
min|が
2.8 ≦ |ΔC
max−ΔC
min| ≦ 19.6
を満たす。
ただし、ΔC
n=√{(a
*n)
2+(b
*n)
2}−√{(a
*nref)
2+(b
*nr
ef)
2}とする。
15種類の修正マンセル色票
#01 7.5 P 4 /10
#02 10 PB 4 /10
#03 5 PB 4 /12
#04 7.5 B 5 /10
#05 10 BG 6 / 8
#06 2.5 BG 6 /10
#07 2.5 G 6 /12
#08 7.5 GY 7 /10
#09 2.5 GY 8 /10
#10 5 Y 8.5/12
#11 10 YR 7 /12
#12 5 YR 7 /12
#13 10 R 6 /12
#14 5 R 4 /14
#15 7.5 RP 4 /12
<3>前記対象物の位置で測定した対象となる光による照明を数学的に仮定した場合の上記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間における色相角を
θ
n(度)(ただしnは1から15の自然数)とし、
前記対象物の位置で測定した対象となる光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光による照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間における色相角をθ
nref(度)(ただしnは1から15
の自然数)とした場合に、色相角差の絶対値|Δh
n|が
0 ≦ |Δh
n| ≦ 9.0(度)(nは1から15の自然数)
を満たす。
ただし、Δh
n=θ
n−θ
nrefとする。
[60]
[59]に記載の照明方法であって、更に以下の<4>を満たすように照明することを特徴とする、照明方法。
<4>前記対象物の位置で測定した対象となる光の分光分布をφ(λ)、前記対象物の位置で測定した対象となる光のT(K)に応じて選択される基準の光の分光分布をφ
ref(λ)、前記対象物の位置で測定した対象となる光の三刺激値を(X、Y、Z)、前記対
象物の位置で測定した対象となる光のT(K)に応じて選択される基準の光の三刺激値を(X
ref、Y
ref、Z
ref)とし、
前記対象物の位置で測定した対象となる光の規格化分光分布S(λ)と、前記対象物の位置で測定した対象となる光のT(K)に応じて選択される基準の光の規格化分光分布S
ref(λ)と、これら規格化分光分布の差ΔS(λ)をそれぞれ、
S(λ)=φ(λ)/Y
S
ref(λ)=φ
ref(λ)/Y
ref
ΔS(λ)=S
ref(λ)−S(λ)
と定義し、
波長380nm以上780nm以内の範囲で、S(λ)の最長波長極大値を与える波長をλ
R(nm)とした際に、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在する場合においては下記数式(1)で表される指標A
cgが−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たし、一方、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在しない場合においては下記数式(2)で表される指標A
cgが、−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たす。
【数20】
【数21】
[61]
照明対象物を準備する照明対象物準備工程、および、発光要素である半導体発光素子と制御要素を含む発光装置から出射される光により対象物を照明する照明工程、を含む照明方法であって、
前記照明工程において、前記発光要素から出射される光が対象物を照明した際に、前記対象物の位置で測定した光が上記<1>、<2>及び<3>をすべて満たし、前記発光装置から出射される光が対象物を照明した際に、前記対象物の位置で測定した光が上記<1>、<2>及び<3>もすべて満たすように照明することを特徴とする照明方法。
[62]
[61]に記載の照明方法であって、上記<4>を満たすように照明することを特徴とする、照明方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基準の光(実験用基準光と記載する場合がある)で照明された場合や、また、基準の光に近接した色の見えとなり高R
aかつ高R
iである光(実験用疑似基準光と記載する場合がある)を放射する発光装置で照明した場合等に比較して、ほぼ同様のCCT、ほぼ同様の照度であっても、統計的に多数の被験者がより良いと判断する真に良好な物体の色の見えを実現可能な発光装置及び照明方法が実現可能であって、かつ、現状すでに存在し、あるいは実用に供されている、色の見えに劣る半導体発光装置が内在する発光装置の色の見えを前述のような良好な色の見えに改善できる。さらに、本発明においては、同様の技術を用いて、色の見えにすぐれる半導体発光装置の色の見えをさらに利用者の嗜好に応じて調節可能と出来る。
【0020】
特に、照明用途に利用した際に色の見えに劣る半導体発光装置においても、屋外で見たような、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見えを実現
できる。このような色の見えの効果をより具体的に例示すれば、以下の通りである。
第一に、本発明による光源、器具、システム等の発光装置で照明した場合、又は、本発明の照明方法により照明した場合には、実験用基準光や実験用擬似基準光で照明した場合等に比較して、ほぼ同様のCCT、ほぼ同様の照度であっても、白色はより白く、自然に、心地よく見える。さらに、白、灰色、黒等の無彩色間の明度差も視認しやすくなる。このために、例えば、一般の白色紙上の黒文字等が読みやすくなる。なお、詳細は後述するが、このような効果はこれまでの常識に照らして全く予想外の効果である。
第二に、本発明による発光装置で実現された照度、又は、本発明の照明方法により照明した場合の照度は、数千Lxから数百Lx程度の通常室内環境程度であったとしても、紫色、青紫色、青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色、黄赤色、赤色、赤紫色などの大半の色、場合によってはすべての色について、たとえば晴れた日の屋外照度下のような数万lx程度の下で見たような真に自然な色の見えが実現される。また、中間的な彩度を有する、被験者(日本人)の肌色、各種食品、衣料品、木材色等も、多くの被験者がより好ましいと感じる、自然な色の見えとなる。
第三に、実験用基準光や実験用擬似基準光で照明した場合等に比較して、ほぼ同様のCCT、ほぼ同様の照度であっても、本発明による発光装置で照明した場合、又は、本発明の照明方法により照明した場合には、近接した色相における色識別が容易になり、あたかも高照度環境下の様な快適な作業等が可能となる。さらに具体的には、たとえば類似した赤色を有する複数の口紅などをより容易に識別可能となる。
第四に、実験用基準光や実験用擬似基準光で照明した場合等に比較して、ほぼ同様のCCT、ほぼ同様の照度であっても、本発明による光源、器具、システムで照明した場合、又は、本発明の照明方法により照明した場合には、あたかも高照度環境下で見たように、物体がよりはっきりと、容易に、視認できるようになる。
これらの効果に加え、照明用途に利用した際に色の見えに優れる半導体発光装置においても、利用者の嗜好に応じて、さらに色の見えを調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではな
く、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
本発明の第一の実施態様は、発光装置である。本実施態様に係る発光装置は、半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する。
本発明の発光要素は、半導体発光素子が必須要素として内在するが、その他の発光要素が内在してもよい。その他の発光要素としては、投入された種々のエネルギーを電磁放射のエネルギーに変換し、その電磁放射エネルギー中に380nmから780nmの可視光を含むものであれば、特に制約されない。例えば、電気エネルギーを変換しうる熱フィラメント、蛍光管、高圧ナトリウムランプ、レーザ、二次高調波発生(SHG)源等を例示することができる。また、光エネルギーを変換しうる蛍光体なども例示できる。
【0023】
本発明の制御要素は、それ単体では増幅機能を有さない受動的な要素であって、発光要素や、相対的に低加工度の発光装置から主たる方向に出射される光に対して適切な範囲で波長毎の強度変調を与え、高加工度の発光装置を構成しうるものであれば特に限定されない。例えば本発明の制御要素としては、反射ミラー、光学フィルター、各種光学レンズ等の受動デバイスを挙げることができる。また、本発明の制御要素は、パッケージLEDの封止材中に分散され、適切な範囲で波長毎の強度変調を与える吸光材であってもよい。ただし、発光要素や、相対的に低加工度の発光装置から出射される光に対して波長依存性の小さな強度変調しか与えない反射ミラー、光学フィルター、吸光材等は制御要素に含まない。
【0024】
本発明の発光装置の概要を、さらに
図43による例示で説明する。
図43の例では、発光要素として半導体発光素子であるLEDチップ2、蛍光体4が内在し、他の構成材料である封止材6、パッケージ材3とともに加工度の低い発光装置であるパッケージLED10を構成している。この際に、制御要素として適切な範囲で波長毎の強度変調を与える光学フィルター5をパッケージLED10の光の放射方向に設置し、全体として加工度の高い発光装置であるLED電球20を構成する。当該LED電球20は、本発明の発光装置でありうる。
【0025】
さらに、本発明の発光装置概要を、さらに
図44による例示で説明する。発光要素として半導体発光素子である青色LEDチップ2a、緑色LED2bチップ、赤色LEDチップ2cが内在し、他の構成材料である封止材6、パッケージ材3とともに低加工度の発光装置であるパッケージLED10を構成しているとする。この際に、制御要素として機能する光学フィルター5をパッケージLED10の放射方向に設置し、全体として加工度の高い発光装置であるLED電球20を構成している。当該LED電球20は本発明の発光装置でありうる。さらに、当該LED電球20をn個並べ、かつ、発光要素として熱フィラメント2dが内在する中加工度の発光装置である白熱電球11をm個並べ、さらに高加工度の発光装置である照明システム30を構成する。当該照明システムは、本発明の発光装置でありうる。
【0026】
本明細書で記載する発光要素から主たる放射方向に出射される光(放射束)とは、すべての発光要素から主たる放射方向に出射される光(放射束)の総和であって、ここではこの分光分布をΦ
elmと記載する。当該Φ
elmは波長λの関数である。Φ
elm(λ)の実測は、たとえば、発光装置から本明細書記載の制御要素を除外した形態で放射計測を行えば、実測可能である。
図43に示すように、発光要素としてLEDチップ、蛍光体が内在し、制御要素として適切な範囲で波長毎の強度変調を与える光学フィルターを有する発光装置においては、光学フィルターを除外した形態の発光装置から主たる放射方向に放射される光の分光分布を計測すれば、Φ
elm(λ)が得られる。すなわち、低加工度の発光装置であるパッケージLEDの主たる放射方向に出射される光の分光分布を計測すれば、Φ
elm(λ)が得られる。
また、
図44に示すように「さらに高加工度の発光装置」内に部分的に存在する「中加
工度の発光装置または高加工度の発光装置」があれば、制御要素が作用しない状態にしたn個のパッケージLEDと、m個の白熱電球を含む発光装置から主たる放射方向に放射される光の分光分布をΦ
elm(λ)とみなすことができる。
【0027】
一方、本発明の第一の実施態様では、発光装置内に内在する発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布Φ
elm(λ)が、当該発光装置内に内在する制御要素の作用を受け、その後「主たる放射方向」に出射される光により発明を特定するものである。そのため、制御要素の作用を受けることで、本発明の要件を満たす「主たる放射方向」の光を含む放射を行うことができる発光装置は、本発明の範囲に属するものである。また、本発明の第二、及び第三の実施態様では、制御要素の作用を受けることで、本発明の要件を満たす「主たる放射方向」の光を含む放射を行うことができる発光装置を製造する方法、及び設計する方法であり、制御要素を設置することで、当該発光装置を製造すること、及び設計することは、本発明の範囲に属するものである。また、本発明の第四の実施態様における照明方法は、上記発光装置から出射された光が対象物を照明した場合において、当該対象物が照明されている位置における光により、発明を特定するものである。そのため、制御要素を設置することで本発明の要件を満たす「対象物が照明されている位置」における光を出射できる発光装置による照明方法は、本発明の範囲に属するものである。
【0028】
ここで、本発明の第一乃至第四の実施態様における「主たる放射方向(radiant direction)」とは、発光装置の使用状況に即して、適した範囲を有し、かつ、適した向きへ光
が放射されている方向を示す。
例えば、発光装置の光度(luminous intensity)もしくは輝度(luminance)が最大もし
くは極大となる方向でありうる。
また、発光装置の光度もしくは輝度が最大もしくは極大となる方向を含む有限の範囲を持った方向でありうる。
また、発光装置の放射強度(radiant intensity)あるいは放射輝度(radiance)が最
大もしくは極大となる方向でありうる。
また、発光装置の放射強度あるいは放射輝度が最大もしくは極大となる方向を含む有限の範囲を持った方向でありうる。
以下、具体的に例示する。
発光装置が単体発光ダイオード(LED)、単体パッケージLED,単体LEDモジュール、単体LED電球、蛍光ランプと半導体発光素子の単体複合ランプ、白熱電球と半導体発光素子の単体複合ランプ等である場合には、主たる放射方向は各発光装置の鉛直方向、鉛直方向を含む有限の立体角内、例えば最大でπ(sr)、最小でπ/100(sr)でありうる。
発光装置が前記パッケージLED等にレンズ、反射機構等を付与したLED照明器具、蛍光ランプと半導体発光素子が内在する照明器具であって、いわゆる、直接型照明用途、半直接型照明用途、全般拡散照明用途、直接/間接型照明用途、半間接型照明用途、間接型照明用途に応用可能な配光特性を有する場合には、主たる放射方向は、各発光装置の鉛直方向、鉛直方向を含む有限の立体角内、例えば最大でπ(sr)、最小でπ/100(sr)でありうる。また、発光装置の光度もしくは輝度が最大もしくは極大となる方向でありうる。また、発光装置の光度もしくは輝度が最大もしくは極大となる方向を含む有限の立体角内、例えば最大でπ(sr)、最小でπ/100(sr)でありうる。また、発光装置の放射強度あるいは放射輝度が最大もしくは極大となる方向でありうる。また、発光装置の放射強度あるいは放射輝度が最大もしくは極大となる方向を含む有限の立体角内、例えば最大でπ(sr)、最小でπ/100(sr)でありうる。
発光装置が、前記LED照明器具や蛍光ランプが内在する照明器具を複数搭載した照明システムである場合は、主たる放射方向は、各発光装置の平面的中心の鉛直方向、当該鉛直方向を含む有限の立体角内、例えば最大でπ(sr)、最小でπ/100(sr)でありうる。また、発光装置の光度もしくは輝度が最大もしくは極大となる方向でありうる。
また、発光装置の光度もしくは輝度が最大もしくは極大となる方向を含む有限の立体角内、例えば最大でπ(sr)、最小でπ/100(sr)でありうる。また、発光装置の放射強度あるいは放射輝度が最大もしくは極大となる方向でありうる。また、発光装置の放射強度あるいは放射輝度が最大もしくは極大となる方向を含む有限の立体角内、例えば最大でπ(sr)、最小でπ/100(sr)でありうる。
発光装置から当該主たる放射方向に出射された光の分光分布を計測するためには、計測点における照度が実用上の照度(後述の通り150lx以上5000lx以下)となる距離で計測することが好ましい。
【0029】
本明細書においては、数学的な色の見えを予想する際に計算上用いるCIEで定義された基準の光を、基準の光、計算用基準の光、計算用基準光などと記載する場合がある。一方、視覚的な実比較で用いる実験用の基準の光、すなわちタングステンフィラメントが内在する白熱電球光などは、基準の光、実験用基準の光、実験用基準光と記載する場合がある。また、基準の光に近接した色の見えとなると予想される高R
aかつ高R
iである光、たとえばLED光源であって、比較視覚実験で実験用基準光の代替光として用いる光は、基準の光、実験用疑似基準の光、実験用擬似基準光と記載する場合がある。また、数学的にまた実験的に検討対象とした光を、基準の光に対して、試験光と記載する場合がある。
【0030】
本発明の第一の実施態様に係る発光装置は、半導体発光素子が内在する発光要素を含む。発光要素としては、半導体発光素子が必須要素として内在するが、その他の発光要素が内在してもよい。その他の発光要素としてはなんらかの方法で380nmから780nmの範囲に相当する光を放射しうるものであれば特に限定されないが、例えば、熱フィラメント等からの熱放射光、蛍光管、高圧ナトリウムランプ等からの放電放射光、レーザ等からの誘導放出光、半導体発光素子からの自然放出光、蛍光体からの自然放出光等を例示できる。本実施態様に係る発光装置は、制御要素をも含むが、それ以外の構成は特段限定されない。発光要素は単体の半導体発光素子に通電機構としてのリード線等を付与したものでも、放熱機構等をさらに付与し蛍光体等と一体にしたパッケージ化LED等でもよい。発光装置としては、このような1以上のパッケージ化LEDにさらに堅牢な放熱機構を付与し、一般的には複数のパッケージLEDを搭載したLEDモジュールでもよい。さらには、パッケージLED等にレンズ、反射機構等を付与したLED照明器具であってもよい。さらに、LED照明器具等を多数支持し、対象物を照明できるように仕上げた照明システムであってもよい。さらに、例えば放電管を発光要素として含む場合においては、本実施態様に係る発光装置は、単体の放電管に高圧を印加しうる機構を付与したものでも、放電管内部あるいは周辺に蛍光体を配置したものでもよい。また1以上の蛍光体を内在させた蛍光管を複数配置した照明器具でもよい。さらには、反射機構等を付与した照明器具であってもよい。さらに、これを照明システムとして制御回路等を付与してもよい。本実施態様に係る発光装置とは、これらをすべて含んだものである。
なお、本発明において発光要素は、発光装置の態様であってもよい。すなわち、本発明の発光要素は、上記発光装置として説明したLEDモジュール、LED照明器具、照明システム、その他の機構を付与した照明器具であってもよい。
【0031】
以下、本発明に関して詳細に説明をする。
本発明者は、一般の室内照度環境下にあっても、屋外の高照度環境下で見たように、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見えを実現できるスペクトルあるいは分光分布に共通する放射計測学的特性(radiometric property)、測光学的特性(photometric property)を見出した。さらに、当該スペクトルあるいは分光分布を有する光による照明を仮定した場合の特定の分光反射特性を有する色票の色の見えが、計算用基準光による照明を仮定した場合と比較して、どのように変化する場合(あるいは変化しない場合)に前記目的が実現可能かを、測色学(colorimetry)的観点から見出した。
さらに、例えば、美術品、生鮮食品等のように、光照射による副次的影響が懸念されるものが照明対象物であっても、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見えと、前記副次的影響の抑制を両立させうる発光装置の分光分布を検討し、その全体として本発明に到達した。
具体的な発明到達までの概要は以下の通りであった。
【0032】
[発明到達までの概要]
第一ステップとして、制御要素の機能を考慮に入れずに、分光分布設定の自由度が高い、A)半導体発光素子と蛍光体が共に内在するパッケージLED光源、B)蛍光体を含まず、半導体発光素子のみが発光要素として内在するパッケージLED光源を想定し、数学的な基礎検討を行った。
この際に、計算用基準光による照明を仮定した場合と、検討対象とする試験光による照明を仮定した場合とで、特定の分光反射特性を有する色票の色の見えに関する数学的変化を指針としつつ、色相、飽和度(彩度)等が変化する試験光に関して詳細な検討を行った。特に屋外に対して1/10から1/1000程度に照度が下がる通常の屋内環境下でのハント効果を意識し、照明された物体の色の見えの飽和度が変化するような光を中心に数学的に検討した。
【0033】
第二ステップとして、前記数学的に検討した試験光を元にパッケージLED光源、これが内在した照明器具を試作した。当該照明器具には制御要素の機能は入れなかった。また、第三ステップで行う比較視覚実験のために、タングステンフィラメントを有する白熱電球を実験用基準光として準備した。また、計算用基準の光に近接した色の見えとなる高R
aかつ高R
iである光(実験用擬似基準光)とし得る光源、これが内在した照明器具も試作した。さらに、これらを用いた視覚実験のために、実験用基準光もしくは実験用擬似基準光で対象物を照明した場合の色の見えと、パッケージLED光源が内在した照明器具の光(試験光)で対象物を照明した場合の色の見えを、被験者に評価してもらうために、多数の観察対象物に対して異なる照明光を照射可能な照明実験システムを作成した。
【0034】
第三ステップとして、当該制御要素の機能が内在しない照明器具、照明システムを用いて、比較視覚実験を行った。観察対象物の色は、紫色、青紫色、青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色、黄赤色、赤色、赤紫色等の全色相に渡る有彩色対象物を準備するように配慮した。さらに、白色物、黒色物などの無彩色の対象物も準備した。これらは静物、生花、食品、衣料品、印刷物等多数多種類なものを準備した。ここで、実験用基準光もしくは実験用擬似基準光で対象物を照明した場合の色の見えと、試験光で対象物を照明した場合の色の見えを、被験者に評価してもらった。前者と後者の比較は、類似したCCTと類似した照度で行った。評価は、いずれの光が、屋外で見たような、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見えを相対的に実現できているかの観点で行ってもらった。また、この際に優劣の判断理由も尋ねた。
【0035】
第四ステップとして、実験用基準光/実験用擬似基準光と試験光が有する放射計測学的特性、測光学的特性を実測値から抽出した。さらに、上記観察対象物とは異なる、特定の分光反射特性を有する色票の色の見えに関する測色学的特性に関し、計算用基準光の分光分布での照明を計算上仮定した場合と、実測した実験用基準光/実験用擬似基準光/試験光の分光分布光での照明を計算上仮定した場合との差を、視覚実験での被験者評価と照らし合わせ、真に快適と判断される照明方法又は発光装置の特徴を抽出した。
【0036】
さらに第五ステップとして、制御要素を含まない発光装置に、制御要素を導入するための検討を行った。
なお、第三ステップ、第四ステップの内容は、本発明の第一および第二の実施態様に係る参考実施例、参考比較例であり、第五ステップの内容は、本発明の第一乃至第四の実施
態様に係る実施例、比較例でもある。
【0037】
[色票選択と色の見えの定量化手法]
第一ステップにおいて、本発明の照明方法において主として検討した発光装置から出射された光が対象物を照明した位置における分光分布、又は、本発明の発光装置から出射される主たる放射方向の光が有する分光分布は、ハント効果を意識して、飽和度が基準の光で照明した場合から変化するものとした。ここで、色の見えやその変化を定量化するために、以下の選択を行った。
【0038】
上記分光分布から色の見えを定量的に評価するには、数学的な分光反射特性が明らかな色票を定義し、計算用基準光での照明を仮定した場合と、試験光での照明を仮定した場合を比較し、当該色票の色の見えの差を指標とするのが良いと考えた。
一般には、CRIで使用される試験色が選択肢となりうるが、平均演色評価数等を導出する際に使用しているR
1からR
8の色票は中彩度な色票であって、高彩度な色の飽和度を議論するには適さないと考えた。また、R
9からR
12は高彩度な色票であるが、全色相角範囲の詳細な議論にはサンプル数が足りない。
【0039】
そこで、修正マンセル表色系におけるマンセル色相環の中で、最も高彩度な最外周に位置する色票から、色相別に15種類の色票を選択することとした。なお、これらは、米国NIST(National Institute of Standards and
Technology)から提案されている新たな演色評価指標のひとつであるCQS(Color Quality Scale)(バージョン7.4及び7.5)で用いる色票と同じである。以下に本発明で用いた15種類の色票を列記する。また冒頭には、便宜上色票に与えた、番号を記載した。なお、本明細書中においては、これら番号をnと代表させる場合があり、たとえばn=3は、「5PB 4/12」の意味である。nは1から15の自然数である。
#01 7.5 P 4 /10
#02 10 PB 4 /10
#03 5 PB 4 /12
#04 7.5 B 5 /10
#05 10 BG 6 / 8
#06 2.5 BG 6 /10
#07 2.5 G 6 /12
#08 7.5 GY 7 /10
#09 2.5 GY 8 /10
#10 5 Y 8.5/12
#11 10 YR 7 /12
#12 5 YR 7 /12
#13 10 R 6 /12
#14 5 R 4 /14
#15 7.5 RP 4 /12
【0040】
本発明においては、各種指標の導出の観点では、計算用基準光での照明を仮定した場合と試験光での照明を仮定した場合との間で、これら15種類の色票の色の見えが、どのように変化した場合(あるいは変化しなかった場合)に、一般の室内照度環境下にあっても、屋外の高照度環境下で見たように、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見えとなるかを定量化し、発光装置が有すべき演色性として抽出することを試みた。
【0041】
なお、上記分光分布から数学的に導出される色の見えを定量評価するためには、色空間
の選択、色順応式の選択も重要である。本発明では、現在CIEによって推奨されている均等色空間であるCIE 1976 L
*a
*b
*(CIELAB)を用いた。さらに、色
順応計算には、CMCCAT2000(Colour Measurement Comittee’s Chromatic Adaptation Transform of 2000)を採用した。
【0042】
[制御要素を含まない発光装置から出射された主たる放射方向の光が有する分光分布から、又は、対象物が照明された位置における分光分布から、導出される色度点]
第一ステップにおいて、パッケージLED光源を各種試作するためには、光源の色度点選択も重要である。光源、光源からの光で対象物が照明された位置における分光分布、又は、発光装置から出射された主たる放射方向の光が有する分光分布から、導出される色度は、例えばCIE 1931(x、y)色度図でも定義できるが、より均等な色度図であるCIE 1976(u’、v’)色度図で議論することが好ましい。また、色度図上の位置をCCTとD
uvで記述する際には特に(u’、(2/3)v’)色度図(CIE 1960(u、v)色度図と同義)が用いられる。なお、本明細書中で記載するD
uvは、ANSI C78.377で定義されている量であって、(u’、(2/3)v’)色度図における黒体放射軌跡に対して最近接となる距離をその絶対値として示している。また、正符号は発光装置の色度点が黒体放射軌跡の上方(v’が大きい側)に位置し、負符号は発光装置の色度点が黒体放射軌跡の下方(v’が小さい側)に位置することを意味する。
【0043】
[飽和度とD
uv値に関する計算検討]
同一の色度点にあっても、物体の色の見えは変えることができる。例えば、
図1、
図2、
図3に示した3種類の分光分布(試験光)は、ピーク波長が425−475nmの半導体発光素子を内在させ、これを、緑色蛍光体と赤色蛍光体の励起光源としたパッケージLEDを仮定して、同一の色度(CCTは5500K、D
uvは0.0000)において、照明された物体の色の見えが異なるようにした例である。それぞれの分光分布を構成する緑色蛍光体と赤色蛍光体は同一材料を仮定しているが、青色半導体発光素子のピーク波長は、飽和度を変化させるべく、
図1は459nm、
図2は475nm、
図3は425nmとした。それぞれの分光分布での照明と、その分光分布に対応する計算用基準光での照明を仮定すると、当該15色票の予想される色の見えは、
図1から
図3のCIELAB色空間に示したようになる。ここで、図中点線で結んだ点は計算用基準光での照明を仮定した場合であって、実線はそれぞれの試験光での照明を仮定した場合である。なお、紙面垂直方向は明度であるが、ここでは簡便のためにa
*、b
*軸のみをプロットした。
【0044】
図1に示した分光分布に関しては以下のことが分かった。計算用基準光での照明を仮定した計算と、図中の試験光での照明を仮定した計算からは、当該15種類の色票の色の見えは近接することが予想された。また、当該分光分布から計算したR
aは95と高かった。
図2に示した試験光で照明したと仮定した場合では、計算用基準光で照明したと仮定した場合と比較して、赤色と青色は鮮やかに見えるものの、紫色と緑色はくすむことが予想された。当該分光分布から計算したR
aは76と相対的に低かった。逆に、
図3に示した試験光で照明したと仮定した場合では、計算用基準光で照明したと仮定した場合と比較して、紫色と緑色は鮮やかに見えるものの、赤色と青色はくすむことが予想された。当該分光分布から計算したRaは76と相対的に低かった。
このように同一色度点において色の見えは変化させ得ることが理解できる。
【0045】
しかし、本発明者の詳細検討によれば、黒体放射の軌跡近傍にある光、すなわちD
uvが0近傍の光では、分光分布を変化させ、飽和度の高い当該15色票の色の見えを変化させるには、その自由度が低いことが分かった。具体的には以下の通りであった。
【0046】
例えば
図2、
図3に示されるように、赤色/青色の飽和度変化と、紫色/緑色の飽和度変化は、傾向が逆と予想された。つまり、ある色相の飽和度が向上すると、別の色相の飽和度は低下してしまうと予想された。また、別の検討からは、簡便で実現可能な方法で、大多数の色相の飽和度を一度に変化させることも困難であった。よって、黒体放射軌跡近傍の光、あるいはD
uv=0近傍の光で照明した場合には、高彩度な当該15色票の大多数の色相の飽和度を一度に変化させる、あるいは、多数の色相において比較的均等に飽和度を向上させる、低下させるなどのことは困難であった。
【0047】
そこで、本発明者は、複数の分光分布に対して異なるD
uv値を与えた場合の当該15色票の色の見えを、計算用基準光での照明を仮定した場合と比較しつつ数学的に検討した。一般に、D
uvが正に偏ると白色は緑かかって見え、D
uvが負の場合には白色は赤みかかって見えるとされ、D
uvが0近傍から離れると色の見えは全体に不自然に見えるとされている。特に白色の着色がそのような知覚を誘発すると考えられている。しかし、本発明者は、飽和度の制御性を高めるべく、以下の検討を行った。
【0048】
図4から
図11に示した8つの分光分布は、ピーク波長459nmの青色半導体発光素子を内在させ、これを、緑色蛍光体と赤色蛍光体の励起光源としたパッケージLEDを仮定して、同一CCT(2700K)においてD
uvを−0.0500から+0.0150まで変化させた計算結果である。それぞれの分光分布(試験光)での照明を仮定した場合と、それぞれの試験光に対する計算用基準光での照明を仮定した場合に予想される当該15色票の色の見えは、
図4から
図11のCIELAB色空間の通りであった。ここで、図中点線で結んだ点は計算用基準光の結果であって、実線はそれぞれの試験光の結果である。なお、紙面垂直方向は明度であるが、ここでは簡便のためにa
*、b
*軸のみをプロットした。
【0049】
図4に示したD
uv=0.0000の試験光では、計算用基準光での照明を仮定した場合と、図中の試験光での照明を仮定した場合では、当該15種類の色票の色の見えは近接していることが予想された。当該分光分布から計算したR
aは95と高かった。
【0050】
図5、
図6の試験光は、D
uvを+0.0100から+0.0150まで正方向にシフトした例である。ここに見られるように、D
uvを正方向にシフトさせると、D
uv=0.0000の試験光の場合と比較して、より広範な色相域において当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることが予想された。また、D
uv=0.0000の試験光の場合と比較すると、比較的均等に当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることも分かった。なお、計算用基準光の場合と、図中の試験光の場合とでは、当該15種類の色票の色の見えはD
uvを正方向にシフトさせた場合、青から青緑領域を除いて、ほぼすべての色がくすんで見えることが予想された。さらにD
uvを正にすればするほど、飽和度が低下する傾向も予想された。
図5、
図6の分光分布から計算されるR
aは、それぞれ94と89であった。
【0051】
一方、
図7から
図11の試験光は、D
uvを−0.0100から−0.0500まで負方向にシフトした例である。ここに見られるように、D
uvを負方向にシフトさせると、D
uv=0.0000の試験光の場合と比較して、より広範な色相域において当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることが分かった。また、D
uv=0.0000の試験光の場合と比較すると、比較的均等に当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることも分かった。なお、計算用基準光での照明を仮定した場合と、図中の試験光での照明を仮定した場合では、当該15種類の色票の色の見えは、D
uvを負方向にシフトさせた場合、青から青緑領域と、紫領域を除いて、ほぼすべての色が鮮やかに見えることが予想された。さらにD
uvを負にすればするほど、飽和度が上昇する傾向も予想された。
図7から
図11の分光分布から計算されるR
aは、それぞれ92、88、83、77、71であって、
現在一般に広がっている理解に従えば、D
uvの値を負にすればするほど、色の見えは基準光で照明した場合から離れ、悪化すると予想された。
【0052】
加えて、本発明者は、スペクトルを形成する発光要素(発光材料)が異なる試験光に、種々のD
uv値を与えた場合、修正マンセル表色系の最外周にある最も鮮やかな15色票がどのような色の見えになると予想されるかを、計算用基準光との比較をしつつ、数学的に検討した。
【0053】
図12から
図21に示した10種類の分光分布は、4種類の半導体発光素子が内在するパッケージLEDを仮定し同一CCT(4000K)においてD
uvを−0.0500から+0.0400まで変化させた結果である。4種類の半導体発光素子のピーク波長は459nm、528nm、591nm、662nmとした。10種類それぞれの試験光での照明を仮定した場合と、それぞれの試験光に対応する計算用基準光での照明を仮定した場合とで、予想される当該15色票の色の見えを、
図12から
図21のCIELAB色空間に示した。ここで、図中点線で結んだ点は計算用基準光での結果であって、実線はそれぞれの試験光の結果である。なお、紙面垂直方向は明度であるが、ここでは簡便のためにa
*、b
*軸のみをプロットした。
【0054】
図12に示したD
uv=0.0000の試験光では、計算用基準光での照明を仮定した場合と、図中の試験光での照明を仮定した場合とでは、当該15種類の色票の色の見えは近接していることが予想された。当該分光分布から計算したR
aは98と高かった。
【0055】
図13から
図16の試験光は、D
uvを+0.0100から+0.0400まで正方向にシフトした例である。ここに見られるように、D
uvを正方向にシフトさせると、D
uv=0.0000の試験光の場合と比較して、より広範な色相域において当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることが分かった。また、D
uv=0.0000の試験光の場合と比較すると、比較的均等に当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることも分かった。なお、計算用基準光での照明を仮定した場合と、図中の試験光での照明を仮定した場合とでは、当該15種類の色票の色の見えはD
uvを正方向にシフトさせた場合、青から青緑領域と、赤色領域を除いて、ほぼすべての色がくすんで見えると予想された。さらにD
uvを正にすればするほど、飽和度が低下する傾向も予想された。
図13から
図16の分光分布から計算されるR
aは、それぞれ95、91、86、77と、現在一般に広がっている理解に従えば、D
uvの値を正にすればするほど、色の見えは基準光で照明した場合から離れ、悪化すると予想された。
【0056】
一方、
図17から
図21の試験光は、D
uvを−0.0100から−0.0500まで負方向にシフトした例である。ここに見られるように、D
uvを負方向にシフトさせると、D
uv=0.0000の試験光の場合と比較して、より広範な色相域において当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることが分かった。また、D
uv=0.0000の試験光の場合と比較すると、比較的均等に当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることも分かった。なお、計算用基準光での照明を仮定した場合と、図中の試験光での照明を仮定した場合では、当該15種類の色票の色の見えは、D
uvを負方向にシフトさせた場合、青から青緑領域と、赤領域を除いて、ほぼすべての色が鮮やかに見えると予想された。さらにD
uvを負にすればするほど、飽和度が上昇する傾向も予想された。
図17から
図21の分光分布から計算されるR
aは、それぞれ95、91、86、81、75であって、現在一般に広がっている理解に従えば、D
uvの値を負にすればするほど、色の見えは基準光で照明した場合から離れ、悪化すると予想された。
【0057】
加えて、本発明者は、スペクトルを形成する発光要素(発光材料)がさらに異なる試験光に、種々のD
uv値を与えた場合、修正マンセル表色系の最外周にある最も鮮やかな1
5色票がどのような色の見えになると予想されるかを、計算用基準光との比較をしつつ、数学的に検討した。
【0058】
図22から
図32に示した11種類の分光分布は、紫色半導体発光素子が内在し、これを、青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体の励起光源としたパッケージLEDを仮定し、近接したCCT(約5500K)においてD
uvを−0.0448から+0.0496まで変化させた計算結果である。内在させた半導体発光素子のピーク波長は405nmとした。なお、
図32の結果は、D
uvを極端に負値にすべく、緑色蛍光体を含まずに実現した結果である。11種類それぞれ試験光での照明を仮定した場合と、その試験光に対する計算用基準光での照明を仮定した場合の、数学的に予想される当該15色票の色の見えは、
図22から
図32のCIELAB色空間に示した通りである。ここで、図中点線で結んだ点は計算用基準光の結果であって、実線はそれぞれの試験光の結果である。なお、紙面垂直方向は明度であるが、ここでは簡便のためにa
*、b
*軸のみをプロットした。
【0059】
図22に示したD
uv=0.0001の試験光では、計算用基準光の場合と、図中の試験光の場合では、当該15種類の色票の色の見えは近接していると予想された。当該分光分布から計算したR
aは96と高かった。
【0060】
図23から
図27の試験光は、D
uvを+0.0100から+0.0496まで正方向にシフトした例である。ここに見られるように、D
uvを正方向にシフトさせると、D
uv=0.0001の試験光の場合と比較して、より広範な色相域において当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることが分かった。また、D
uv=0.0001の試験光の場合と比較すると、比較的均等に当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることも分かった。なお、計算用基準光での照明を仮定した場合と、図中の試験光での照明を仮定した場合では、当該15種類の色票の色の見えは、D
uvを正方向にシフトさせた場合、青領域を除いて、ほぼすべての色がくすんで見えることが予想された。さらにD
uvを正にすればするほど、飽和度が低下する傾向も予想された。
図23から
図27の分光分布から計算されるR
aは、それぞれ92、85、76、69、62と、現在一般に広がっている理解に従えば、D
uvの値を正にすればするほど、色の見えは基準光で照明した場合から離れ、悪化すると予想された。
【0061】
一方、
図28から
図32の試験光は、D
uvを−0.0100から−0.0448まで負方向にシフトした例である。前述の通りD
uv=−0.0448は緑色蛍光体を含まな
い系として実現したものである。ここに見られるように、D
uvを負方向にシフトさせると、D
uv=0.0001の試験光の場合と比較して、より広範な色相域において当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることが分かった。また、D
uv=0.0001の試験光の場合と比較すると、比較的均等に当該15種類の色票の飽和度を変化させ得ることも分かった。なお、計算用基準光での照明を仮定した場合と、図中の試験光での照明を仮定した場合では、当該15種類の色票の色の見えは、D
uvを負方向にシフトさせた場合、青領域を除いて、ほぼすべての色が鮮やかに見えることが予想された。さらにD
uvを負にすればするほど、飽和度が上昇する傾向も予想された。
図28から
図32の分光分布から計算されるR
aは、それぞれ89、80、71、61、56であって、現在一般に広がっている理解に従えば、D
uvの値を負にすればするほど、色の見えは基準光で照明した場合から離れ、悪化すると予想された。
【0062】
[飽和度制御とD
uv値に関する計算検討まとめ]
ここまでの計算検討から、「現在広く信じられている常識に従えば」以下のことが予想された。
(1)D
uv=0.0000近傍の色度点を有する試験光で、当該15色票の飽和度を変化させる自由度は低い。具体的には高彩度な当該15色票の大多数の色相の飽和度を一
度に変化させる、あるいは、多数の色相において比較的均等に飽和度を向上させる、低下させるなどのことは困難である。
(2)試験光のD
uvを正にすると、当該15色票の飽和度を比較的容易に低下できる。D
uv=0.0000の試験光の場合と比較して、より広範な色相域において、かつ、比較的均等に当該15種類の色票の飽和度を低下させ得る。さらにD
uvを正にすればするほど、飽和度がより低下する。また、Raがより低下することから、視覚実験等では、D
uvを正にすればするほど、実験用基準光や実験用疑似基準光で実際の照明対象物等を照明した場合と、試験光で照明した場合の色の見えは差が大きくなり、また、それは悪化したものとなってしまうと予想された。特に白色は黄色(緑色)かかり、色の見えは全体に不自然に見えると予想された。
(3)D
uvを負にすると、当該15色票の飽和度を比較的容易に上昇できる。D
uv=0.0000の試験光の場合と比較して、より広範な色相域において、かつ、比較的均等に当該15種類の色票の飽和度を向上させ得る。さらにD
uvを負にすればするほど、飽和度がより上昇する。また、R
aがより低下することから、D
uvを負にすればするほど、実験用基準光や実験用疑似基準光で実際の照明対象物等を照明した場合と、試験光で照明した場合の色の見えは差が大きくなり、また、それは悪化したものとなってしまうと予想された。特に白色は赤色(桃色)かかり、色の見えは全体に不自然に見えると予想された。
【0063】
ここまでの計算検討から、以上のことが「現在広く信じられている常識に照らして」予想されたことである。
【0064】
[定量指標の導入]
色の見えや、分光分布そのものが有する特徴、放射効率などを詳細に議論する準備として、また、色の見えを詳細に議論する準備として、本発明では、以下の定量指標を導入した。
[色の見えに関わる定量指標の導入]
先ず、発光装置が試験光を主たる放射方向に出射する場合における当該試験光(本発明の発光装置に係る)、又は、当該試験光で対象物を照明した場合における対象物の位置で測定した試験光(本発明の照明方法に係る)のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間にお
ける当該15種類の色票のa
*値、b
*値をそれぞれa
*nSSL、b
*nSSL(ただしnは1から15の自然数)、当該15種類の色票の色相角をそれぞれθ
nSSL(度)(ただしnは1から15の自然数)とし、上記試験光のCCTに応じて選択される計算用基準の光(5000K未満は黒体放射の光、5000K以上においてはCIE昼光)による照明を数学的に仮定した場合のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間における当該15種類
の色票のa
*値、b
*値をそれぞれa
*nref、b
*nref(ただしnは1から15の自然数)、当該15種類の色票の色相角をそれぞれθ
nref(度)(ただしnは1から15の自然数)とし、当該2つの光で照明された場合の当該15種類の修正マンセル色票のそれぞれの色相角差Δh
n(度)(ただしnは1から15の自然数)の絶対値を
|Δh
n|=|θ
nSSL−θ
nref|
と定義した。
【0065】
これは試験光と実験用基準光あるいは実験用擬似基準光を用いて視覚実験を行うに当たり、さまざまな物体、あるいは物体の色の見えを全体として評価し、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見えを実現する手段として、本発明で特別に選択した当該15種類の修正マンセル色票に関わる数学的に予想される色相角差は重要な指標になると考えたからである。
【0066】
加えて、試験光と計算用基準光の2つの光で照明された場合を仮定した当該15種類の修正マンセル色票の飽和度差ΔC
n(ただしnは1から15の自然数)をそれぞれ
ΔC
n=√{(a
*nSSL)
2+(b
*nSSL)
2}−√{(a
*nref)
2+(b
*
nref)
2}
と定義した。また、当該15種類の修正マンセル色票の飽和度差の平均値(以下、SAT
avと称する場合がある。)である下記式(3)も重要な指標と考えた。
【数22】
さらに、当該15種類の修正マンセル色票の飽和度差の最大値をΔC
max、飽和度差の最小値をΔC
minとした場合に、最大飽和度差と最小飽和度差の間の差(最大最小飽和度差間差)である
|ΔC
max−ΔC
min|
も重要な指標と考えた。これは試験光と実験用基準光あるいは実験用擬似基準光を用いて視覚実験を行うに当たり、さまざまな物体、あるいは物体の色の見えを全体として評価し、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見えを実現する手段として、本発明で特別に選択した当該15種類の修正マンセル色票の飽和度差に関わる種々の特性は重要な指標になると考えたからである。
【0067】
[分光分布に関する定量指標の導入]
本発明では、分光分布の放射計測学的特性、測光学的特性も議論するために、以下の2つの定量指標を導入した。ひとつは指標A
cgであって、もうひとつの指標は放射効率K(lm/W)である。
【0068】
指標A
cgは、実験用基準光もしくは実験用擬似基準光による色の見えと、試験光による色の見えの差を、分光分布あるいはスペクトル形状が有する放射計測学的特性と測光学的特性としても記述することを試みたものである。種々の検討の結果、指標A
cgを本発明では以下のように定義した。
【0069】
発光装置からの主たる放射方向に出射される光を測定した場合における(本発明の発光装置に係る)、又は、照明対象物の位置で測定した場合における(本発明の照明方法に係る)、異なる色刺激となる計算用基準光と試験光の分光分布をそれぞれφ
ref(λ)、
φ
SSL(λ)とし、等色関数をx(λ)、y(λ)、z(λ)、計算用基準光と試験光に対応する三刺激値をそれぞれ(X
ref、Y
ref、Z
ref)、(X
SSL、Y
SSL、Z
SSL)とする。ここで、計算用基準光と試験光に関して、kを定数として、以下が成立する。
Y
ref=k∫φ
ref(λ)・y(λ)dλ
Y
SSL=k∫φ
SSL(λ)・y(λ)dλ
ここで、計算用基準光と試験光の分光分布をそれぞれのYで規格化した規格化分光分布を
S
ref(λ)=φ
ref(λ)/Y
ref
S
SSL(λ)=φ
SSL(λ)/Y
SSL
と定義し、これら規格化基準光分光分布と規格化試験光分光分布の差を
ΔS(λ)=S
ref(λ)−S
SSL(λ)
とした。さらに、ここで、指標A
cgを以下のように定義した。
【数23】
なお、ここで各積分の上下限波長は、それぞれ
Λ1=380nm
Λ2=495nm
Λ3=590nm
とした。
【0070】
また、Λ4は、以下の2つの場合に分けて定義をした。まず、規格化試験光分光分S
SSL(λ)において、380nmから780nm内で、最長波長極大値を与える波長をλ
R(nm)、その分光強度をS
SSL(λ
R)とした際に、λ
Rよりも長波長側にあり、強
度がS
SSL(λ
R)/2となる波長をΛ4とした。もし、そのような波長が780nm
までの範囲内に存在しない場合は、Λ4は780nmとした。
【0071】
指標A
cgは色刺激となる放射に関わる可視域を大きく短波長領域(あるいは紫等も含む青領域)、中間波長領域(黄色等も含む緑色領域)、長波長領域(橙色等も含む赤領域)に分割し、数学的な規格化基準光分光分布に比較して、規格化試験光分光分布内の適切な位置に、適切な強度で、スペクトルの凹凸が存在するかどうかを判断する指標である。
図33、
図34に例示するように、長波長積分範囲は、最長波長極大値の位置によって異なる。また、試験光のCCTによって計算用基準光の選択は異なる。
図33の場合は図中実線で示された試験光のCCTが5000K以上なので、基準の光は図中点線で示されるようにCIE昼光(CIE daylight)が選択されている。
図34の場合は図中実線で示された試験光のCCTが5000K未満なので、基準の光は図中点線で示されるように黒体放射の光が選択されている。なお、図中網掛け部分は短波長領域、中間波長領域、長波長領域の積分範囲を模式的に示したものである。
【0072】
短波長領域においては、数学的な規格化基準光分光分布よりも規格化試験光分光分布のスペクトル強度が強い場合に、指標A
cgの第一項(ΔS(λ)の積分)はマイナスの値をとりやすい。中間波長領域においては、逆に、規格化基準光分光分布よりも規格化試験光分光分布のスペクトル強度が弱い場合に、指標A
cgの第二項(−ΔS(λ)の積分)はマイナスの値をとりやすい。さらに、長波長領域においては、規格化基準光分光分布よりも規格化試験光分光分布のスペクトル強度が強い場合に、指標A
cgの第三項(ΔS(λ)の積分)はマイナスの値をとりやすい指標となっている。
【0073】
また、前記のように、計算用基準光は試験光のCCTによって変えられる。すなわち、計算用基準光は試験光のCCTが5000K未満の際には黒体放射の光が用いられ、試験光のCCTが5000K以上の際には定義されているCIE昼光(CIE daylight)が用いられる。指標A
cgの値の導出においては、φ
ref(λ)は、数学的に定義されている黒体放射の光かCIE昼光を用い、一方、φ
SSL(λ)はシミュレーションに用いた関数、あるいは実験で実測した値を用いた。
【0074】
さらに、発光装置から出射された主たる放射方向の光を測定した場合における(本発明の発光装置に係る)、又は、照明対象物の位置で測定した場合における(本発明の照明方法に係る)、試験光分光分布φ
SSL(λ)を評価するに当たり、放射効率 K (Luminous Efficacy of radiation)(lm/W)は、広く使用されている以下の定義を踏襲した。
【数24】
上記式において、
K
m:最大視感度(lm/W)
V(λ):分光視感効率
λ:波長(nm)
である。
【0075】
発光装置から出射された主たる放射方向の光を測定した場合における(本発明の発光装置に係る)、又は、照明対象物の位置で測定した場合における(本発明の照明方法に係る)、試験光分光分布φ
SSL(λ)の放射効率K(lm/W)は、分光分布がその形状として有する効率であって、発光装置を構成するすべての材料特性に関する効率(例えば半導体発光素子の内部量子効率、光取り出し効率、蛍光体の内部量子効率、外部量子効率、封止剤の透光特性等々の効率)が100%であった際に、光源効率η(lm/W)となる量である。
【0076】
[第二ステップ詳細]
前述の通り、第二ステップとしては、数学的に検討したスペクトル(試験光)を元に、パッケージLED光源、制御要素を含まない照明器具を試作した。また、計算用基準光に近接した色の見えとなる高R
aかつ高R
iである光(実験用擬似基準光)用の光源、これが内在した照明器具も試作した。
具体的には、青色半導体発光素子で緑色蛍光体、赤色蛍光体を励起した光源、青色半導体発光素子で黄色蛍光体、赤色蛍光体を励起した光源、紫色半導体発光素子で青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体を励起した光源を試作し、器具化した。
青色蛍光体としてはBAMまたはSBCAを用いた。緑色蛍光体としては、BSS、β−SiAlON、またはBSONを用いた。黄色蛍光体としてはYAGを用いた。赤色蛍光体としてはCASONまたはSCASNを用いた。
【0077】
パッケージLEDを試作する際には、通常行われている方法を用いた。具体的には、電気的に導通可能な金属配線を内在させたセラミックパッケージ上に半導体発光素子(チップ)をフリップチップマウントした。次に、用いる蛍光体とバインダー樹脂を混合したスラリーを、蛍光体層として配置した。
【0078】
パッケージLEDを準備した後には、これらを用いてMR16 Gu10、MR16 Gu5.3のLEDバルブなどに仕上げた。このLEDバルブ中には駆動用回路を内蔵させ、また、発光波長に対する強度変調の影響がない反射ミラー、レンズ等も搭載し、1種の照明器具に仕上げた。また、市販のLEDバルブも一部準備した。かつ、実験用基準光とすべくタングステンフィラメントが内在する白熱電球も準備した。
【0079】
さらに、これらLEDバルブを多数配置し、比較視覚実験を行うための照明システムを製作した。ここでは、3種類のバルブを瞬時に切り替えて照明できるシステムをくみ上げた。駆動用電源線の一種は、タングステンフィラメントを有する白熱電球(実験用基準光)専用とし、その後段には可変トランスを配置し、100Vの入力電圧に対して、駆動電圧を110Vから130Vまで昇圧させることで、CCTを変化させられるようにした。また、駆動用電源線の残り2系統はLEDバルブ用とし、この中の1系統は実験用擬似基準光(LED光源)用、残り1系統は試験光用とした。
【0080】
[第三ステップ詳細]
第三ステップとしては、実験用基準光(あるいは実験用擬似基準光)と試験光を切り替えて、多数の観察対象物の色の見えを被験者に評価してもらう比較視覚実験を行った。当該照明システムは暗室中に設置し外乱を排除した。また、観察対象物の位置における照度は、照明システムに搭載した実験用基準光(あるいは実験用擬似基準光)、試験光の器具数を変化させて、ほぼ一致させた。照度は約150lxから約5000lxの範囲で実験を行った。
実際に照明対象物、観察物としたものを以下に例示する。ここでは、紫色、青紫色、青色、青緑色、緑色、黄緑色、黄色、黄赤色、赤色、赤紫色等の全色相に渡る有彩色対象物を準備するように配慮した。さらに、白色物、黒色物などの無彩色の対象物も準備した。色を有する照明対象物を準備した。また、静物、生花、食品、衣料品、印刷物等、多数多種類なものを準備した。また、実験においては被験者(日本人)自身の肌も観察対象とした。なお、以下の物体名称前に一部付記した色名称は、通常の環境下でそのように見えるという意味で、厳密な色の表現ではない。
【0081】
白色セラミック皿、ホワイトアスパラ、ホワイトマッシュルーム、白ガーベラ、白色ハンカチ、白Yシャツ、米飯、塩ゴマ、塩せんべい
紫色生花
青紫布製ハンカチ、ブルージーンズ、青緑タオル
緑色パプリカ、レタス、千切りキャベツ、ブロッコリー、緑ライム、緑色りんご
黄色バナナ、黄色パプリカ、黄緑色レモン、黄色ガーベラ、卵焼き
橙色オレンジ、橙色パプリカ、にんじん
赤色トマト、赤色りんご、赤色パプリカ、赤色ウインナー、梅干
ピンク色ネクタイ、ピンクガーベラ、しゃけ塩焼き
小豆色ネクタイ、ベージュ作業着、コロッケ、とんかつ、ごぼう、クッキー、チョコレート、落花生、木製器
被験者(日本人)自身の肌
新聞紙、白背景上の黒文字を含むカラー印刷物(多色ずり)、文庫本、週刊誌
外壁材色見本(三菱樹脂社製 アルポリック 白、青、緑、黄色、赤)
カラーチェッカー(X―rite社製 Color checker classic 18色の有彩色と6種類の無彩色(白1、灰色4、黒1)を含む計24色の色票)
なお、カラーチェッカー中の各色票の名称とマンセル表記は、以下の通りである。
Name Munsell Notation
Dark skin 3.05 YR 3.69/3.20
Light skin 2.2 YR 6.47/4.10
Blue sky 4.3 PB 4.95/5.55
Foliage 6.65 GY 4.19/4.15
Blue flower 9.65 PB 5.47/6.70
Bluish green 2.5 BG 7/6
Orange 5 YR 6/11
Purplish blue 7.5 PB 4/10.7
Moderate red 2.5 R 5/10
Purple 5 P 3/7
Yellow green 5 GY 7.08/9.1
Orange yellow 10 YR 7/10.5
Blue 7.5 PB 2.90/12.75
Green 0.1 G 5.38/9.65
Red 5 R 4/12
Yellow 5 Y 8/11.1
Magenta 2.5 RP 5/12
Cyan 5 B 5/8
White N 9.5/
Neutral 8 N 8/
Neutral 6.5 N 6.5/
Neutral 5 N 5/
Neutral 3.5 N 3.5/
Black N 2/
【0082】
なお、比較視覚実験で用いた各種照明対象物の色の見えと、計算で使用した15種類のマンセル色票の色の見えに関わる各種数学的指標との間に、相関があることは必ずしも自明ではない。これは視覚実験を通じて明らかとすることである。
【0083】
視覚実験は、以下のような手順で行った。
準備した実験用基準光、実験用擬似基準光、試験光の、主たる放射方向に出射された光を計測し、それぞれをCCT毎に(本発明の発光装置に係る)、又は、準備した実験用基準光、実験用擬似基準光、試験光を、照明対象物の位置で測定したCCT毎に(本発明の照明方法に係る)、6実験用に分類をした。すなわち、以下の通りである。
【表1】
【0084】
1つの視覚実験では、同一対象物を、実験用基準光(あるいは実験用擬似基準光)と試験光とを切り替えて照明し、いずれの光が屋外で見たような、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見えを実現できるかを、被験者に相対的に判断してもらった。この際に優劣の判断理由も尋ねた。
【0085】
[第四ステップ詳細 実験結果]
第四ステップでは、第二ステップで試作した、制御要素を含まないLED光源/器具/システムを用いて、第三ステップで行った比較視覚実験の結果をまとめた。表2は実験Aに対応し、表3は実験Bに対応する結果である。以下同様に、表7は実験Fに対応する結果である。表2〜7において、基準光に対する試験光の総合評価は、同程度の見えを表す「0」を中心に、試験光が若干好ましいとの評価は「1」、試験光が好ましいとの評価は「2」、試験光がより好ましいとの評価は「3」、試験光が非常に好ましいとの評価は「4」、試験光が格段に好ましいとの評価は「5」とした。一方、試験光が若干好ましくないとの評価を「−1」、試験光が好ましくないとの評価を「−2」、試験光がより好ましくないとの評価を「−3」、試験光が非常に好ましくないとの評価を「−4」、試験光が格段に好ましくないとの評価を「−5」とした。
【0086】
第四ステップでは、特に、視覚実験において、実験用基準光あるいは実験用擬似基準光で照明した場合よりも、試験光で照明した場合の照明対象物の色の見えが良好であったと判断された場合について、試験光に共通する分光分布の放射計測学的特性、測光学的特性
を実測スペクトルから抽出することを試みた。すなわち、A
cg、放射効率K(lm/W)、CCT(K)、D
uvなどの数値に関して、発光装置から主たる放射方向に出射された光(本発明の発光装置に係る)と、照明対象物の位置(本発明の照明方法に係る)との特徴を抽出した。同時に、計算用基準光で照明した場合を仮定した当該15色票の色の見えと、発光装置から主たる放射方向に出射された光を実測した試験光分光分布(本発明の発光装置に係る)、又は、照明対象物の位置で実測した試験光分光分布(本発明の照明方法に係る)で照明した場合を仮定した当該15色票の色の見えの間の差に関しても、|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|を指標としてまとめた。なお、|Δh
n|、ΔC
nは、nを選択すると値が変化するが、ここでは最大値と最小値を示した。これらの値も表2から表7に合わせて記載した。なお、照明対象物の色の見えに関して、発光装置から出射された主たる放射方向の試験光(本発明の発光装置に係る)、又は、被験者の総合的評価結果が照明対象物の位置における試験光(本発明の照明方法に係る)のD
uv値に比較的依存していたので、表2から表7は、D
uvの値が低下する順に並べた。
全体としては、本実験によって、D
uvが適切な値で負の値をとり、かつ、指標A
cg等が適切な範囲にある場合に、又は、|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|等が適切な範囲にある場合に、試験光で照明していた実観察物の物体の見え、色の見えは、実験用基準光で照明した場合よりも好ましいと判断された。これはステップ1で「現在広く信じられている常識に照らした結果」に対して予想外であった。
【0093】
[第四ステップ詳細 考察]
以下実験結果を考察する。なお、表中の試験光及び比較試験光を総称して「試験光」と称する場合がある。
1)試験光のD
uvが、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)よりも正側であった場合
表4、表5、表7には、試験光のD
uvが、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)よりも正側の結果が含まれている。ここから、試験光のD
uvが正になればなるほど、照明対象物の色の見えや物体の見えに関し、被験者は好ましくなくなったとの判断をしたことが分かる。具体的には、以下の通りであった。
【0094】
照明された白色物の見えは、D
uvが正になればなるほどより黄色み(緑色み)かかっ
て見え、違和感がより増大したと被験者は判断した。照明されたカラーチェッカーの灰色部分の見えは、明度差がより視認しにくくなったと被験者は判断した。さらに、照明された印刷物の文字もより見にくくなったと被験者は指摘した。さらに、照明された各種有彩色の色の見えは、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)で照明した場合と比較して、試験光のD
uvが正になればなるほど、より不自然で、くすんで見えたと被験者は判断した。照明された各種外壁材色見本は屋外で見た色の見えと非常に異なって知覚され、自身の肌色も、不自然に、不健康に見えたと被験者は指摘した。また、同種類似色の生花花弁の色差は、実験用基準光で照明した場合と比較して、識別しにくく、輪郭が見にくくなったと被験者は指摘した。
【0095】
また、これらの結果は、表4、表5、表7に記載した試験光のCCTにはあまり依存せず、また、発光装置の発光要素(発光材料)の構成にもあまり依存しないこともわかった。
試験光のD
uvが正になればなるほど、全体的傾向としてR
aが低下することから、これらの結果のいくつかは、ステップ1の数学的な詳細検討から予想可能な範囲であったと言える。
【0096】
2)試験光のD
uvが、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)よりも負側であった場合
表2から表7のすべてに、試験光のD
uvが、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)よりも負側の結果が含まれている。これらによれば、試験光のD
uvが適正範囲で負であって、かつ、表中の各種指標が適正範囲に入っていれば、照明対象物の色の見えや物体の見えに関し、被験者は若干好ましい、好ましい、より好ましい、非常に好ましい、また、格段に好ましいと判断したことが分かる。一方、試験光のD
uvが同様の範囲で負であっても、表中の各種指標が適正範囲になかった場合においては、表5に示されるように、試験光による色の見えや物体の見えが好ましくないと判断されたことも分かる。
【0097】
ここで、試験光のD
uvが適正範囲で負であって、かつ、表中の各種指標が適正範囲内の場合において、試験光で照明した場合の対象物の色の見えが、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)で照明した場合のそれに比較して、自然で好ましい色の見え、好ましい物体の見えとなることは全く予想外であった。被験者が指摘した特長の詳細は以下の通りであった。
【0098】
白色物は、試験光のD
uvが適正範囲で負で、かつ、表中の各種指標が適正範囲内の場合では、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)で照明した場合と比較して、黄色み(緑色み)が低減し、若干白く見えた、白く見えた、より白く見えた、非常に白く見えた、また、格段に白く見えたと被験者は判断した。また、最適範囲に近接するにつれ、より自然でより良好な見えになっていったことを指摘した。これは全く予想外の結果であった。
さらに、カラーチェッカーの灰色部分は、試験光のD
uvが適正範囲で負で、かつ、表中の各種指標が適正範囲内の場合では、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)で照明した場合と比較して、それぞれの明度差が、若干増したように見えた、増したように見えた、より増したように見えた、非常に増したように見えた、格段に増したように見えたと被験者は判断した。また、被験者は、最適範囲に近接するにつれ、より自然でより視認性の高い見えになっていったことを指摘した。これは全く予想外の結果であった。
【0099】
さらに、それぞれの無彩色色票の輪郭も、試験光のD
uvが適正範囲で負で、かつ、表中の各種指標が適正範囲内の場合では、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)で照明した場合と比較して、若干はっきり見えた、はっきり見えた、よりはっきり見えた、非常にはっきり見えた、格段にはっきり見えたと被験者は判断した。また、被験者は、最適
範囲に近接するにつれ、より自然でより視認性の高い見えになっていったことを指摘した。これは全く予想外の結果であった。
さらに、印刷物の文字は、試験光のD
uvが適正範囲で負で、かつ、表中の各種指標が適正範囲内の場合では、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)で照明した場合と比較して、若干見やすくなった、見やすくなった、より見やすくなった、非常に見やすくなった、格段に見やすくなったと被験者は判断した。また、被験者は、最適範囲に近接するにつれ、より自然でより視認性の高い文字の見えになっていったことを指摘した。これは全く予想外の結果であった。
【0100】
さらに、各種有彩色の照明対象物の色の見えは、試験光のD
uvが適正範囲で負で、かつ、表中の各種指標が適正範囲内の場合では、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)で照明した場合と比較して、若干ではあるが自然な鮮やかさであった、自然な鮮やかさであった、より自然な鮮やかさであった、非常に自然な鮮やかさであった、また、格段に自然な鮮やかさであったと被験者は判断した。また、被験者は、最適範囲に近接するにつれ、より自然で、好ましい色の見えになっていったことを指摘した。これは全く予想外の結果であった。
さらに、各種外壁材色見本の色の見えは、試験光のD
uvが適正範囲で負で、かつ、表中の各種指標が適正範囲内の場合では、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)で照明した場合と比較して、屋外で見た際の記憶と、若干近接していた、近接していた、より近接していた、非常に近接していた、また、格段に近接していたと被験者は判断した。また、被験者は、最適範囲に近接するにつれ、より自然で、屋外で見た際の記憶と近接した好ましい色の見えになっていったことを指摘した。これは全く予想外の結果であった。
【0101】
さらに、被験者自身(日本人)の肌の色の見えは、試験光のD
uvが適正範囲で負で、かつ、表中の各種指標が適正範囲内の場合では、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)で照明した場合と比較して、若干自然に見えた、自然に見えた、より自然に見えた、非常に自然に見えた、また、格段に自然に見えたと被験者は判断した。また、被験者は、最適範囲に近接するにつれ、より自然で、健康的な好ましい色の見えになっていったことを指摘している。これは全く予想外の結果であった。
さらに、同種類似色の生花花弁の色差は、試験光のD
uvが適正範囲で負で、かつ、表中の各種指標が適正範囲内の場合では、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)で照明した場合と比較して、若干識別しやすかった、識別しやすかった、より識別しやすかった、非常に識別しやすかった、また、格段に識別しやすかったと被験者は判断した。また、被験者は、D
uvが実験した範囲内で適正上限よりも負になればなるほど、より識別しやすかったことを指摘した。これは全く予想外の結果であった。
【0102】
さらに、各種照明対象物は、試験光のD
uvが適正範囲で負で、かつ、表中の各種指標が適正範囲内の場合では、実験用基準光(あるいは実験用疑似基準光)で照明した場合と比較して、若干輪郭がはっきり見えた、輪郭がはっきり見えた、より輪郭がはっきり見えた、非常に輪郭がはっきり見えた、また、格段に輪郭がはっきり見えたと被験者は判断した。また、被験者は、D
uvが実験した範囲内で適正上限よりも負になればなるほど、より輪郭がはっきり見えたことを指摘した。これは全く予想外の結果であった。
【0103】
試験光のD
uvが負になればなるほど、全体的傾向としてR
aが低下することからも、これらの結果は、ステップ1の数学的な詳細検討からは、全く予想外であったと言える。表2から表7にある通り、R
aの値のみに注目すれば、R
aが95以上である試験光も多数あったにも関わらず、たとえば、総合的に「格段に良好」とされた試験光のR
aは82から91程度であった。また、今回の比較視覚実験は、ANSI C78.377−2008に記載されているD
uvの範囲を超えて行っている。よって上記の結果は、現在の常識的推奨色度範囲の外に、照明された物体の色の見えに関する知覚良好領域があることを
新たに見出したものと言える。
【0104】
本発明の第一の実施態様に係る発光装置において、このような知覚を得るためにはD
uv以外にも、表2から表7に記載の指標A
cgが適正範囲にある必要があった。また、各種指標、すなわち、放射効率K(lm/W)、|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|、が適正範囲にあることが好ましいことが解った。当該要件は、本発明の第二の実施態様に係る発光装置の製造方法、第三の実施態様に係る発光装置の設計方法についても、同様である。
【0105】
第一に、視覚実験で良好と判断された試験光の結果から、D
uvと、指標A
cgに関しては、以下のようであった。
【0106】
先ず、D
uv値は、−0.0040以下であって、若干好ましくは−0.0042以下であって、好ましくは、−0.0070以下であって、より好ましくは−0.0100以下であって、非常に好ましくは−0.0120以下であって、格段に好ましくは−0.0160以下であった。
また、本発明におけるD
uvは、−0.0350以上であって、若干好ましくは−0.0340以上であって、好ましくは、−0.0290以上であって、より好ましくは−0.0250以上であって、非常に好ましくは−0.0230以上であって、格段に好ましくは−0.0200以上であった。
【0107】
さらに、表2から表7の結果より、本発明の第一の実施態様に係る発光装置において分光分布はA
cgが−10以下であって−360以上であった。正確な定義は前述の通りであるが、この物理的なおおよその意味、見通しの良い解釈は、以下の通りである。A
cgが適切な範囲で負の値を取るとの意味は、規格化試験光分光分布に適切な凹凸があり、380nmから495nm間の短波長領域では、数学的な規格化基準光分光分布よりも規格化試験光分光分布の放射束強度が強い傾向にあり、および/または、495nmから590nmの中間波長領域では、数学的な規格化基準光分光分布よりも規格化試験光分光分布の放射束強度が弱い傾向にあり、および/または、590nmからΛ4までの長波長領域では、数学的な規格化基準光分光分布よりも規格化試験光分光分布の放射束強度が強い傾向にあることを意味している。そのうえで、A
cgが定量的に−10以下−360以上の場合に、良好な色の見え、良好な物体の見えとなったと理解できる。
【0108】
本発明の第一の実施態様に係る発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出されるA
cgは、−10以下であって、若干好ましくは−11以下であって、より好ましくは−28以下であって、非常に好ましくは−41以下であって、格段に好ましくは−114以下であった。
また、本発明の第一の実施態様に係る発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出されるA
cgは−360以上であって、若干好ましくは−330以上であって、好ましくは−260以上であって、非常に好ましくは−181以上であって、格段に好ましくは−178以上であった。
なお、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にあるA
cgの好ましい範囲は、−322以上、−12以下であった。
【0109】
第二に、本発明は色の見えが良く効率も高い試験光の実現を目指したが、放射効率Kに関しては、以下の通りであった。
本発明の第一の実施態様に係る発光装置による分光分布が有する放射効率は、好適には180(lm/W)から320(lm/W)の範囲であって、通常の白熱電球等の値である150(lm/W)よりも最低でも20%以上高かった。これは半導体発光素子からの放射や蛍光体からの放射が内在しており、かつ、V(λ)との関係において、分光分布の
適切な位置に適切な凹凸があったためであると考えられる。色の見えとの両立との観点では、本発明の第一の実施態様に係る発光装置から主たる放射方向に出射される光が有する分光分布から求められる放射効率は、以下の範囲が好ましかった。
【0110】
本発明の第一の実施態様に係る発光装置による放射効率Kは、好適には180(lm/W)以上であったが、若干好ましくは205(lm/W)以上であって、好ましくは208(lm/W)以上であって、非常に好ましくは215(lm/W)以上であった。一方、放射効率Kは理想的には高い方が良いが、本発明においては、好適には320(lm/W)以下であって、色の見えとのバランスから、282(lm/W)以下が若干好ましく、232(lm/W)以下が好ましく、231(lm/W)以下が格段に好ましかった。
なお、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にあるKの好ましい範囲は、206(lm/W)以上、288(lm/W)以下であった。
【0111】
第三に、|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|の特性を考えると、以下の傾向であったことが分かる。すなわち、良好な色の見え、物体の見えとなる試験光は、計算用基準光で照明した場合を仮定した当該15色票の色の見えと、実測した試験光分光分布で照明した場合を仮定した当該15色票の色の見えに関して、以下の特性を有していた。
【0112】
試験光による照明と計算用基準光による照明の当該15色票の色相角差(|Δh
n|)は比較的少なく、かつ、試験光による照明の当該15色票の平均的飽和度SAT
avが、計算用基準光による照明のそれと比較して適正な範囲で上がっていた。かつ、当該平均値だけでなく、15色票の飽和度(ΔC
n)を個別に見ても、試験光による照明の当該15色票の各ΔC
nが、計算用基準光による照明のそれらと比較して、極端に低下しているものも極端に向上しているものもなく、すべてが適正範囲にあり、この結果として最大最小飽和度差間差|ΔC
max−ΔC
min|が適正な範囲で狭かった。さらに、簡略化すれば、当該15色票に対して基準光での照明を仮定した場合に比較して、試験光での照明を仮定した場合は、当該15色票すべての色相において、色相角差が少なく、かつ、適正な範囲で15色票の飽和度が比較的均等に向上している場合が理想的であると推察できる。
【0113】
図35の実線は、表3にあって、総合判断として「格段に好ましい」と判断された試験光5の規格化試験光分光分布である。また、同図中点線は、当該試験光のCCTから算出された計算用基準光(黒体放射の光)の規格化分光分布である。一方、
図36は、当該試験光5で照明した場合(実線)と、計算用基準光(黒体放射の光)で照明した場合(点線)を仮定した、当該15色票の色の見えに関するCIELABプロットである。なお、紙面垂直方向は明度であるが、ここでは簡便のためにa
*、b
*軸のみをプロットした。
さらに
図37と
図38は、表5の中で、総合判断として「格段に好ましい」と判断された試験光15の結果を上記と同様にまとめたもので、
図39と
図40は、表6中で、総合判断として「格段に好ましい」と判断された試験光19の結果を上記と同様にまとめたものである。
【0114】
この様に視覚実験で好ましい色の見え、物体の見えとなった場合は、当該15色票に対する基準光での照明を仮定した場合に比較して、試験光での照明を仮定した場合に、当該15色票すべての色相において、色相角差が少なく、かつ、適正な範囲で15色票の飽和度が比較的均等に向上していることが分かる。また、この観点で4000K近傍のCCTは、好ましいことも分かる。
【0115】
一方、D
uvが適正な範囲で負の値を有する場合であっても、たとえば表5中のD
uv≒−0.01831である比較試験光14の場合には、視覚実験において試験光による見
えが好ましくないと判断されている。これは、指標A
cgの特性が適正でなかったと考えられる。
図41、
図42は比較試験光14について、
図35、
図36等と同様に規格化分光分布と15色票の色の見えに関するCIELABプロットを行った結果である。この図からも明らかなように、当該15色票に対して基準光での照明を仮定した場合と、試験光での照明を仮定した場合とを比較すると、当該15色票のいくつかの色相において、色相角差がおおきく、また、15色票の飽和度が非常に不均等に変化していることが分かる。
【0116】
視覚実験結果と考察から、各定量指標は、以下の範囲が好ましいことが分かる。
本発明の第一の実施態様に係る発光装置におけるD
uvは、前述の通り、−0.0040以下であって、若干好ましくは−0.0042以下であって、好ましくは、−0.0070以下であって、より好ましくは−0.0100以下であって、非常に好ましくは−0.0120以下であって、格段に好ましくは−0.0160以下であった。
また、本発明の第一の実施態様に係る発光装置におけるD
uvは、−0.0350以上であって、若干好ましくは−0.0340以上であって、好ましくは、−0.0290以上であって、より好ましくは−0.0250以上であって、非常に好ましくは−0.0230以上であって、格段に好ましくは−0.0200以上であった。
【0117】
本発明の第一の実施態様に係る発光装置における|Δh
n|は9.0以下が好適であり、非常に好ましくは8.4以下であって、格段に好ましくは7.3以下であった。また|Δh
n|は、さらに小さいことがより好ましいと考えられ、6.0以下がより格段に好ましく、5.0以下が更に格段に好ましく、4.0以下が特に格段に好ましいと考えられる。
なお、本発明の第一の実施態様に係る発光装置における|Δh
n|は0以上が好適であり、視覚実験時の最小値は0.0029であった。さらに、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にある|Δh
n|の好ましい範囲は、8.3以下、0.003以上であった。
【0118】
本発明の第一の実施態様に係る発光装置におけるSAT
avは、1.0以上が好適であり、若干好ましくは1.1以上であって、好ましくは、1.9以上であって、非常に好ましくは2.3以上であって、格段に好ましくは2.6以上であった。
また、7.0以下であることが好適であり、好ましくは6.4以下であって、非常に好ましくは、5.1以下であって、格段に好ましくは4.7以下であった。
なお、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にある上記指標の好ましい範囲は、1.2以上、6.3以下であった。
【0119】
本発明の第一の実施態様に係る発光装置におけるΔC
nは、−3.8以上であることが好適であり、若干好ましくはは−3.5以上であって、非常に好ましくは−2.5以上であって、格段に好ましくは−0.7以上であった。
また、本発明の第一の実施態様に係る発光装置におけるΔC
nは、18.6以下であることが好適であり、非常に好ましくは17.0以下であって、格段に好適には15.0以下であった。
なお、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にあるΔC
nの好ましい範囲は、−3.4以上、16.8以下であった。
【0120】
本発明の第一の実施態様に係る発光装置における|ΔC
max−ΔC
min|は、19.6以下であることが好適であり、17.9以下であることが非常に好ましく、15.2以下であることが格段に好ましかった。加えて、|ΔC
max−ΔC
min|は小さいことがより好ましいと考えられ、14.0以下がさらに格段に好ましく、13.0以下が非常に格段に好ましいと考えられる。
また、本発明の第一の実施態様に係る発光装置における|ΔC
max−ΔC
min|は
2.8以上であることが好適であり、視覚実験時の最小値は3.16であった。さらに、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にある|ΔC
max−ΔC
min|の好ましい範囲は、3.2以上、17.8以下であった。
【0121】
第四に、本発明の第一の実施態様に係る発光装置におけるCCTに関しては、以下のようなことが分かった。比較視覚実験によって、好ましいと判断された各種指標すなわち|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|をより適切な値とするためには、本発明の第一の実施態様に係る発光装置において、CCTは4000Kに近い値をとることが好ましかった。これは4000K付近の光は基準の光を見てもその分光分布が波長にあまり依存せずに等エネルギー的であって、基準の光に対して容易に凹凸を形成した試験光分光分布が実現できるためと考えられる。換言すると、他のCCTの場合と比較しても、|Δh
n|と|ΔC
max−ΔC
min|を比較的小さく保持したまま、SAT
avを増加させ、大多数の色票に対するΔC
nを所望の値に容易に制御可能である。
【0122】
よって、本発明の第一の実施態様に係る発光装置におけるCCTは1800Kから15000Kであることが若干好ましく、2000Kから10000Kであることが好ましく、2300Kから7000Kであることがより好ましく、2600Kから6600Kであることが非常に好ましく、2900Kから5800Kであることが格段に好ましく、3400Kから5100Kであることが最も好ましい。
なお、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にあるCCTの好ましい範囲は、2550(K)以上、5650(K)以下であった。
本発明の第二の実施態様に係る発光装置の製造方法、及び第三の実施態様に係る発光装置の設計方法に係る上記各パラメータについても、上記第一の実施態様に係る発光装置と同様である。
【0123】
また、本発明の第四の実施態様に係る照明方法において、このような知覚を得るためにはD
uv以外にも、表2から表7に記載の各種指標、すなわち、|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|が適正範囲にある必要があった。また、指標A
cg、放射効率K(lm/W)が適正範囲にあることが好ましいことが解った。
【0124】
特に、視覚実験で良好と判断された試験光の結果から、|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|の特性を考えると、以下の傾向であったことが分かる。すなわち、良好な色の見え、物体の見えとなる試験光は、計算用基準光で照明した場合を仮定した当該15色票の色の見えと、実測した試験光分光分布で照明した場合を仮定した当該15色票の色の見えに関して、以下の特性を有していた。
【0125】
試験光による照明と計算用基準光による照明の当該15色票の色相角差(|Δh
n|)は比較的少なく、かつ、試験光による照明の当該15色票の平均的飽和度SAT
avが、計算用基準光による照明のそれと比較して適正な範囲で上がっていた。かつ、当該平均値だけでなく、15色票の飽和度(ΔC
n)を個別に見ても、試験光による照明の当該15色票の各ΔC
nが、計算用基準光による照明のそれらと比較して、極端に低下しているものも極端に向上しているものもなく、すべてが適正範囲にあり、この結果として最大最小飽和度差間差|ΔC
max−ΔC
min|が適正な範囲で狭かった。さらに、簡略化すれば、当該15色票に対して基準光での照明を仮定した場合に比較して、試験光での照明を仮定した場合は、当該15色票すべての色相において、色相角差が少なく、かつ、適正な範囲で15色票の飽和度が比較的均等に向上している場合が理想的であると推察できる。
【0126】
図35の実線は、表3にあって、総合判断として「格段に好ましい」と判断された試験光5の規格化試験光分光分布である。また、同図中点線は、当該試験光のCCTから算出された計算用基準光(黒体放射の光)の規格化分光分布である。一方、
図36は、当該試
験光5で照明した場合(実線)と、計算用基準光(黒体放射の光)で照明した場合(点線)を仮定した、当該15色票の色の見えに関するCIELABプロットである。なお、紙面垂直方向は明度であるが、ここでは簡便のためにa
*、b
*軸のみをプロットした。
さらに
図37と
図38は、表5の中で、総合判断として「格段に好ましい」と判断された試験光15の結果を上記と同様にまとめたもので、
図39と
図40は、表6中で、総合判断として「格段に好ましい」と判断された試験光19の結果を上記と同様にまとめたものである。
【0127】
この様に視覚実験で好ましい色の見え、物体の見えとなった場合は、当該15色票に対する基準光での照明を仮定した場合に比較して、試験光での照明を仮定した場合に、当該15色票すべての色相において、色相角差が少なく、かつ、適正な範囲で15色票の飽和度が比較的均等に向上していることが分かる。また、この観点で4000K近傍のCCTは、好ましいことも分かる。
【0128】
一方、D
uvが適正な範囲で負の値を有する場合であっても、たとえば表5中のD
uv≒−0.01831である比較試験光14の場合には、視覚実験において試験光による見えが好ましくないと判断されている。これは、|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|の特性のうちいくつかが適正でなかったと考えられる。
図41、
図42は比較試験光14について、
図35、
図36等と同様に規格化分光分布と15色票の色の見えに関するCIELABプロットを行った結果である。この図からも明らかなように、当該15色票に対して基準光での照明を仮定した場合と、試験光での照明を仮定した場合とを比較すると、当該15色票のいくつかの色相において、色相角差がおおきく、また、15色票の飽和度が非常に不均等に変化していることが分かる。
【0129】
視覚実験結果と考察から、各定量指標は、以下の範囲が好ましいことが分かる。
本発明の第四の実施態様に係る照明方法におけるD
uvは、−0.0040以下であって、若干好ましくは−0.0042以下であって、好ましくは、−0.0070以下であって、より好ましくは−0.0100以下であって、非常に好ましくは−0.0120以下であって、格段に好ましくは−0.0160以下であった。
また、本発明の第四の実施態様に係る照明方法におけるD
uvは、−0.0350以上であって、若干好ましくは−0.0340以上であって、好ましくは、−0.0290以上であって、より好ましくは−0.0250以上であって、非常に好ましくは−0.0230以上であって、格段に好ましくは−0.0200以上であった。
【0130】
本発明の第四の実施態様に係る照明方法における|Δh
n|は9.0以下であって、非常に好ましくは8.4以下であって、格段に好ましくは7.3以下であった。また|Δh
n|は、さらに小さいことがより好ましいと考えられ、6.0以下がより格段に好ましく、5.0以下が更に格段に好ましく、4.0以下が特に格段に好ましいと考えられる。
なお、本発明の第四の実施態様に係る照明方法における|Δh
n|は0以上で、視覚実験時の最小値は0.0029であった。さらに、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にある|Δh
n|の好ましい範囲は、8.3以下、0.003以上であった。
【0131】
本発明の第四の実施態様に係る照明方法におけるSAT
avは、1.0以上であって、若干好ましくは1.1以上であって、好ましくは、1.9以上であって、非常に好ましくは2.3以上であって、格段に好ましくは2.6以上であった。
また、7.0以下であって、好ましくは6.4以下であって、非常に好ましくは、5.1以下であって、格段に好ましくは4.7以下であった。
なお、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にある上記指標の好ましい範囲は、1.2以上、6.3以下であった。
【0132】
本発明の第四の実施態様に係る照明方法におけるΔC
nは、−3.8以上であって、若干好ましくは−3.5以上であって、非常に好ましくは−2.5以上であって、格段に好ましくは−0.7以上であった。
また、本発明の第四の実施態様に係る照明方法におけるΔC
nは、18.6以下であって、非常に好ましくは17.0以下であって、格段に好ましくは15.0以下であった。さらに、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にあるΔC
nの好ましい範囲は、−3.4以上、16.8以下であった。
【0133】
本発明の第四の実施態様に係る照明方法における|ΔC
max−ΔC
min|は、19.6以下であるが、17.9以下であることが非常に好ましく、15.2以下であることが格段に好ましかった。加えて、|ΔC
max−ΔC
min|は小さいことがより好ましいと考えられ、14.0以下がさらに格段に好ましく、13.0以下が非常に格段に好ましいと考えられる。
また、本発明の第四の実施態様に係る照明方法における|ΔC
max−ΔC
min|は2.8以上で、視覚実験時の最小値は3.16であった。さらに、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にある|ΔC
max−ΔC
min|の好ましい範囲は、3.2以上、17.8以下であった。
【0134】
一方、表2から表7を用いて、視覚実験で好ましい特性と総合的に判断された試験光に付随する特性を、試験光分光分布が有する放射計測学的特性と測光学的特性とで代表させることも試みた。
【0135】
この場合もD
uv値は、これまで考察してきたとおりであって、−0.0040以下であって、若干好ましくは−0.0042以下であって、好ましくは、−0.0070以下であって、より好ましくは−0.0100以下であって、非常に好ましくは−0.0120以下であって、格段に好ましくは−0.0160以下であった。
また、本発明におけるD
uvは、−0.0350以上であって、若干好ましくは−0.0340以上であって、好ましくは、−0.0290以上であって、より好ましくは−0.0250以上であって、非常に好ましくは−0.0230以上であって、格段に好ましくは−0.0200以上であった。
【0136】
一方、指標A
cgに関しては、以下の様であった。
表2から表7の結果より、本発明の第四の実施態様に係る照明方法の好適な分光分布はA
cgが−10以下であって−360以上であった。正確な定義は前述の通りであるが、この物理的なおおよその意味、見通しの良い解釈は、以下の通りである。A
cgが適切な範囲で負の値を取るとの意味は、規格化試験光分光分布に適切な凹凸があり、380nmから495nm間の短波長領域では、数学的な規格化基準光分光分布よりも規格化試験光分光分布の放射束強度が強い傾向にあり、および/または、495nmから590nmの中間波長領域では、数学的な規格化基準光分光分布よりも規格化試験光分光分布の放射束強度が弱い傾向にあり、および/または、590nmからΛ4までの長波長領域では、数学的な規格化基準光分光分布よりも規格化試験光分光分布の放射束強度が強い傾向にあることを意味している。A
cgは短波長領域、中間波長領域、長波長領域におけるそれぞれの要素の総和なので、各個別の要素は、必ずしも上記傾向でない場合もあり得る。そのうえで、A
cgが定量的に−10以下−360以上の場合に、良好な色の見え、良好な物体の見えとなったと理解できる。
【0137】
本発明の第四の実施態様に係る照明方法におけるA
cgは、好適には−10以下であって、若干好ましくは−11以下であって、より好ましくは−28以下であって、非常に好ましくは−41以下であって、格段に好ましくは−114以下であった。
また、本発明の第四の実施態様に係る照明方法においては、A
cgは好適には−360以上であって、若干好ましくは−330以上であって、好ましくは−260以上であって、非常に好ましくは−181以上であって、格段に好ましくは−178以上であった。
なお、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にあるA
cgの好ましい範囲は、−322以上、−12以下であった。
【0138】
さらに、本発明の第四の実施態様に係る照明方法においては、色の見えが良く効率も高い試験光の実現を目指したが、放射効率Kに関しては、以下の通りであった。
本発明の第四の実施態様に係る照明方法による分光分布が有する放射効率は、好適には180(lm/W)から320(lm/W)の範囲であって、通常の白熱電球等の値である150(lm/W)よりも最低でも20%以上高かった。これは半導体発光素子からの放射や蛍光体からの放射が内在しており、かつ、V(λ)との関係において、分光分布の適切な位置に適切な凹凸があったためであると考えられる。色の見えとの両立との観点では、本発明の照明方法の放射効率は、以下の範囲が好ましかった。
【0139】
本発明の第四の実施態様に係る照明方法による放射効率Kは、好適には180(lm/W)以上であったが、若干好ましくは205(lm/W)以上であって、好ましくは208(lm/W)以上であって、非常に好ましくは215(lm/W)以上であった。一方、放射効率Kは理想的には高い方が良いが、本発明においては、好適には320(lm/W)以下であって、色の見えとのバランスから、282(lm/W)以下が若干好ましく、232(lm/W)以下が好ましく、231(lm/W)以下が格段に好ましかった。
なお、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にあるKの好ましい範囲は、206(lm/W)以上、288(lm/W)以下であった。
【0140】
さらに本発明の第四の実施態様に係る照明方法におけるCCTに関しては、以下のようなことが分かった。比較視覚実験によって、好ましいと判断された各種指標すなわち|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|をより適切な値とするためには、本発明の照明方法において、CCTは4000Kに近い値をとることが好ましかった。これは4000K付近の光は基準の光を見てもその分光分布が波長にあまり依存せずに等エネルギー的であって、基準の光に対して容易に凹凸を形成した試験光分光分布が実現できるためと考えられる。換言すると、他のCCTの場合と比較しても、|Δh
n|と|ΔC
max−ΔC
min|を比較的小さく保持したまま、SAT
avを増加させ、大多数の色票に対するΔC
nを所望の値に容易に制御可能である。
【0141】
よって、本発明の第四の実施態様に係る照明方法におけるCCTは1800Kから15000Kであることが若干好ましく、2000Kから10000Kであることが好ましく、2300Kから7000Kであることがより好ましく、2600Kから6600Kであることが非常に好ましく、2900Kから5800Kであることが格段に好ましく、3400Kから5100Kであることが最も好ましい。
なお、視覚実験で実試験光を用いた検討がなされ、当該検討中の好ましい実験結果の内側にあるCCTの好ましい範囲は、2550(K)以上、5650(K)以下であった。
【0142】
[第五ステップ詳細 制御要素に係る検討]
第五ステップでは、第二ステップで試作した、制御要素を含まないLED光源/器具/システムに制御要素を導入して、制御要素を含む発光装置が放射する光の分光分布の放射計測学的特性、測光学的特性を実測スペクトルから抽出することを試みた。すなわち、発光要素及び発光装置から主たる放射方向に出射された光の指標A
cg、放射効率K(lm/W)、CCT(K)、D
uvなどの数値の特徴を抽出した。同時に、計算用基準光で照明した場合を仮定した当該15色票の色の見えと、実測した試験光分光分布で照明した場
合を仮定した当該15色票の色の見えの間の差に関しても、|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|を指標としてまとめた。なお、|Δh
n|、ΔC
nは、nを選択すると値が変化するが、ここでは最大値と最小値を示した。これらの値も表8、表9に合わせて記載した。なお、第五ステップにおける検討は、本発明に係る実施例、比較例をも表すものである。
【0143】
具体的には、制御要素を含むことで、発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布Φ
elm(λ)と発光装置から主たる方向に出射される光の分光分布φ
SSL(λ)がどのように変化するかの実験を行った。
以下、本発明に係る実験について説明する。
【0144】
実施例1
先ず、
図45に示された分光透過特性を有する光学フィルターを準備した。また、発光要素として紫LED、SBCA蛍光体、β−SiAlON蛍光体、CASON蛍光体を有するパッケージLEDを準備し、これらを6個、LEDボードに搭載し、LEDモジュールを作製した。この際に、当該LEDモジュールから軸上に放射された光の最大分光放射束で規格化した分光分布を
図46中に点線で示した。また、
図47には同分光分布と、#01から#15の15種類の修正マンセル色票を照明対象物とした場合を数学的に仮定し、当該LEDモジュールで照明した場合と、当該LEDモジュールの相関色温度から導出される基準の光で照明した場合のa
*値、b
*値をそれぞれ示したCIELABプロットも示した。さらに、この時の測光学的特性、測色学的特性を、表8中の参考実施例1にまとめた。ここで、当該参考実施例1に係るLEDモジュールから軸上に出射された光は、各値から明らかな様に、良好な色の見えを実現していた。
次に、当該LEDモジュールを用いて実施例1に係るLED照明器具を作製した。この際に、
図45に示した分光透過特性を有する光学フィルターを光の出射方向に搭載した。
図46中の実線は、前記LEDモジュールから軸上に放射された光の最大分光放射束で規格化した、実施例1に係るLED照明器具の分光分布である。ここでは、実施例1に係るLED照明器具の分光分布には、前記光学フィルターの特性によって、凹凸が付加されていることが分かる。また、
図47には同分光分布と、#01から#15の15種類の修正マンセル色票を照明対象物とした場合を数学的に仮定し、当該実施例1に係るLED照明器具で照明した場合と、当該LED照明器具の相関色温度から導出される基準の光で照明した場合のa
*値、b
*値をそれぞれ示したCIELABプロットも示した。さらに、この時の測光学的特性、測色学的特性は、表8中の実施例1にまとめた。
当該実施例1に係る照明器具のD
uv(φ
SSL)は−0.02063であって、当該参考実施例1に係るLEDモジュールのD
uv(Φ
elm)である−0.02110から0.00047増加した。当該実施例1に係る照明器具のA
cg(φ
SSL)は−267.09であって、当該参考実施例1に係るLEDモジュールのA
cg(Φ
elm)である−246.70から20.39低減した。また、当該実施例1に係る照明器具のSAT
av(φ
SSL)は5.06であって、当該参考実施例1に係るLEDモジュールのSAT
av(Φ
elm)である4.14から0.92増加し、同一照度で観測した際に、より鮮やかで、より良好な色の見えとなった。
【0145】
実施例2
先ず、
図48に示された分光透過特性を有する光学フィルターを準備する。また、発光要素として4種類の中心波長を有する半導体発光素子を準備し、これら4個を1つのパッケージ中に搭載し、パッケージLEDを作製する。さらにこれらパッケージLEDを12個LEDボードに搭載し、LEDモジュールを作製する。この際に、当該LEDモジュールから軸上に放射された光の最大分光放射束で規格化した分光分布は
図49中に点線で示したようになる。また、
図50には同分光分布と、#01から#15の15種類の修正マンセル色票を照明対象物とした場合を数学的に仮定し、当該LEDモジュールで照明した
場合と、当該LEDモジュールの相関色温度から導出される基準の光で照明した場合のa
*値、b
*値をそれぞれ示したCIELABプロットも示す。さらに、この時の測光学的特性、測色学的特性を、表8中の参考比較例1にまとめた。ここで、当該参考比較例1に係るLEDモジュールから軸上に出射された光は、各値から明らかな様に、良好な色の見えを実現できていない。
次に、当該LEDモジュールを用いて実施例2に係るLED照明器具を作製する。この際に、
図48に示した光学フィルターを光の出射方向に搭載する。
図49中の実線は、前記LEDモジュールから軸上に放射された光の最大分光放射束で規格化した、実施例2に係るLED照明器具の分光分布である。ここでは、実施例2に係るLED照明器具の分光分布中には、前記光学フィルターの特性によって、LED発光に由来する放射束の相対強度が変化し、かつ、凹凸が付加されることが分かる。また、
図50には同分光分布と、#01から#15の15種類の修正マンセル色票を照明対象物とした場合を数学的に仮定し、当該実施例2に係るLED照明器具で照明した場合と、当該LED照明器具の相関色温度から導出される基準の光で照明した場合のa
*値、b
*値をそれぞれ示したCIELABプロットも示す。さらに、この時の測光学的特性、測色学的特性は、表8中の実施例2にまとめる。
当該実施例2に係る照明器具のD
uv(φ
SSL)は−0.00424であって、当該参考比較例1に係るLEDモジュールのD
uv(Φ
elm)である0.00029から0.00453低減した。当該実施例2に係る照明器具のA
cg(φ
SSL)は−81.41であって、当該参考比較例1に係るLEDモジュールのA
cg(Φ
elm)である−6.75から74.66低減した。また、当該照明器具のSAT
av(φ
SSL)は5.28であって、当該参考比較例1に係るLEDモジュールのSAT
av(Φ
elm)である1.59から3.69増加する。
これらの結果、良好な色の見えを実現できていない半導体発光素子、パッケージLED、LEDモジュールを用いた照明器具であっても、制御要素の光学特性によって、良好な色の見えを実現可能なLED照明器具が実現可能となる。
【0146】
比較例1
発光要素として青色LED、緑色蛍光体、赤色蛍光体を有するパッケージLEDを準備した以外は、実施例1と同様にして参考比較例2に係るLEDモジュール、及び比較例1に係るLED照明装置を作製する。
この際に、当該LEDモジュールから軸上に放射された光の最大分光放射束で規格化した分光分布は
図51中に点線で示したようになる。また、
図52には同分光分布と、#01から#15の15種類の修正マンセル色票を照明対象物とした場合を数学的に仮定し、当該LEDモジュールで照明した場合と、当該LEDモジュールの相関色温度から導出される基準の光で照明した場合のa
*値、b
*値をそれぞれ示したCIELABプロットも示す。さらに、この時の測光学的特性、測色学的特性を、表8中の参考比較例2にまとめた。ここで、当該参考比較例2に係るLEDモジュールから軸上に出射された光は、各値から明らかな様に、良好な色の見えを実現できていない。
一方、実施例1と同様の、
図45に示した光学フィルターを搭載して作成した比較例1に係るLED照明器具の特性は、以下になる。
図51中の実線は、前記LEDモジュールから軸上に放射された光の最大分光放射束で規格化した、比較例1に係るLED照明器具の分光分布である。ここでは、比較例1に係るLED照明器具の分光分布中には、前記光学フィルターの特性によって、凹凸が付加されることが分かる。また、
図52には同分光分布と、#01から#15の15種類の修正マンセル色票を照明対象物とした場合を数学的に仮定し、当該比較例1に係るLED照明器具で照明した場合と、当該LED照明器具の相関色温度から導出される基準の光で照明した場合のa
*値、b
*値をそれぞれ示したCIELABプロットも示す。さらに、この時の測光学的特性、測色学的特性は、表8中の比較例1にまとめる。
当該比較例1に係る照明器具のD
uv(φ
SSL)は0.00716であって、当該参
考比較例2に係るLEDモジュールのD
uv(Φ
elm)である0.00819から0.00103低減した。当該比較例1に係る照明器具のA
cg(φ
SSL)は120.86であって、当該参考比較例2に係るLEDモジュールのA
cg(Φ
elm)である156.15から35.29低減した。また、当該比較例1に係る照明器具のSAT
av(φ
SSL)は−2.44であって、当該参考比較例2に係るLEDモジュールのSAT
av(Φ
elm)である−3.33から0.89増加する。
これらの結果、特定の発光要素と組み合わせた場合に良好な色の見えを実現可能な制御要素であっても、他の半導体発光素子、パッケージLED、LEDモジュールを用いた照明器具に組み合わせた場合に、良好な色の見えを実現できない場合もあることが分かる。
【0148】
実施例3
先ず、
図45に示された分光透過特性を有する光学フィルターを準備した。また、発光要素として青LED、CSO蛍光体、CASN蛍光体を有するパッケージLEDを準備し、これらを18個、LEDボードに搭載し、LEDモジュールを作製した。この際に、当該LEDモジュールから軸上に放射された光の最大分光放射束で規格化した分光分布を図
53中に点線で示した。また、
図54には同分光分布と、#01から#15の15種類の修正マンセル色票を照明対象物とした場合を数学的に仮定し、当該LEDモジュールで照明した場合と、当該LEDモジュールの相関色温度から導出される基準の光で照明した場合のa
*値、b
*値をそれぞれ示したCIELABプロットも示した。さらに、この時の測光学的特性、測色学的特性を、表9中の参考実施例2にまとめた。ここで、当該参考実施例2に係るLEDモジュールから軸上に出射された光は、各値から明らかな様に、良好な色の見えを実現していた。
【0150】
次に、当該LEDモジュールを用いて実施例3に係るLED照明器具を作製した。この際に、
図45に示した分光透過特性を有する光学フィルターを光の出射方向に搭載した。
図53中の実線は、前記LEDモジュールから軸上に放射された光の最大分光放射束で規格化した、実施例3に係るLED照明器具の分光分布である。ここでは、実施例3に係る
LED照明器具の分光分布には、前記光学フィルターの特性によって、凹凸が付加されていることが分かる。また、
図54には同分光分布と、#01から#15の15種類の修正マンセル色票を照明対象物とした場合を数学的に仮定し、当該実施例1に係るLED照明器具で照明した場合と、当該LED照明器具の相関色温度から導出される基準の光で照明した場合のa
*値、b
*値をそれぞれ示したCIELABプロットも示した。さらに、この時の測光学的特性、測色学的特性は、表9中の実施例3にまとめた。
当該実施例3に係る照明器具のD
uv(φ
SSL)は−0.01160であって、当該参考実施例2に係るLEDモジュールのD
uv(Φ
elm)である−0.01115から0.00045増加した。当該実施例3に係る照明器具のA
cg(φ
SSL)は−120.97であって、当該参考実施例2に係るLEDモジュールのA
cg(Φ
elm)である−24.30から96.67低減した。また、当該実施例1に係る照明器具のSAT
av(φ
SSL)は4.13であって、当該参考実施例1に係るLEDモジュールのSAT
av(Φ
elm)である3.08から1.05増加し、同一照度で観測した際に、より鮮やかで、より良好な色の見えとなった。
【0151】
実施例4
先ず、
図48に示された分光透過特性を有する光学フィルターを準備した。また、発光要素として青LED、LuAG蛍光体、CASN蛍光体を有するパッケージLEDを作製した。さらにこれらパッケージLEDを18個LEDボードに搭載し、LEDモジュールを作製した。この際に、当該LEDモジュールから軸上に放射された光の最大分光放射束で規格化した分光分布は
図55中に点線で示したようになる。また、
図56には同分光分布と、#01から#15の15種類の修正マンセル色票を照明対象物とした場合を数学的に仮定し、当該LEDモジュールで照明した場合と、当該LEDモジュールの相関色温度から導出される基準の光で照明した場合のa
*値、b
*値をそれぞれ示したCIELABプロットも示す。さらに、この時の測光学的特性、測色学的特性を、表9中の参考比較例3にまとめた。ここで、当該参考比較例3に係るLEDモジュールから軸上に出射された光は、各値から明らかな様に、良好な色の見えを実現できていない。
次に、当該LEDモジュールを用いて実施例4に係るLED照明器具を作製する。この際に、
図48に示した光学フィルターを光の出射方向に搭載する。
図55中の実線は、前記LEDモジュールから軸上に放射された光の最大分光放射束で規格化した、実施例4に係るLED照明器具の分光分布である。ここでは、実施例4に係るLED照明器具の分光分布中には、前記光学フィルターの特性によって、LED発光に由来する放射束の相対強度が変化し、かつ、凹凸が付加されることが分かる。また、
図56には同分光分布と、#01から#15の15種類の修正マンセル色票を照明対象物とした場合を数学的に仮定し、当該実施例2に係るLED照明器具で照明した場合と、当該LED照明器具の相関色温度から導出される基準の光で照明した場合のa
*値、b
*値をそれぞれ示したCIELABプロットも示す。さらに、この時の測光学的特性、測色学的特性は、表9中の実施例4にまとめる。
当該実施例4に係る照明器具のD
uv(φ
SSL)は−0.00593であって、当該参考比較例3に係るLEDモジュールのD
uv(Φ
elm)である−0.00129から0.00464低減した。当該実施例4に係る照明器具のA
cg(φ
SSL)は−19.95であって、当該参考比較例3に係るLEDモジュールのA
cg(Φ
elm)である141.23から161.18低減した。また、当該照明器具のSAT
av(φ
SSL)は3.45であって、当該参考比較例3に係るLEDモジュールのSAT
av(Φ
elm)である0.51から2.94増加する。
これらの結果、良好な色の見えを実現できていない半導体発光素子、パッケージLED、LEDモジュールを用いた照明器具であっても、制御要素の光学特性によって、良好な色の見えを実現可能なLED照明器具が実現可能となる。
【0152】
[考察]
以上の実験結果から、以下に示す発明事項を導き出すことができる。
第一に、参考比較例1及び実施例2の結果、また、参考比較例3及び実施例4の結果を考察することにより、良好な色の見えを実現できていない参考比較例1、参考比較例3に係る発光装置(本発明においては発光要素として把握される)に対し、適切な制御要素を配置することで、良好な色の見えを実現できる実施例2、実施例4に係る発光装置をそれぞれ実現することができる。
つまりは、半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置であって、波長をλ(nm)とし、当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、Φ
elm(λ)は下記条件1と条件2の少なくともいずれか一方を満たさず、φ
SSL(λ)は下記条件1と条件2をともに満たす場合、良好な色の見えを実現できていない発光装置(発光要素)が、制御要素により、良好な色の見えを実現できる発光装置となる。
特に、既に市中に頒布されている、良好な色の見えを実現できていないLED照明装置に対し、特定の制御要素を配置することで、本実施態様に係る良好な色の見えを実現できる発光装置とすることが可能となる。
【0153】
本実施態様に係る条件1及び条件2は、既に述べた第一ステップから第四ステップにより導き出される条件である。
条件1:
対象となる光の分光分布におけるANSI C78.377で定義される黒体放射軌跡からの距離D
uvが、−0.0350 ≦ D
uv ≦ −0.0040となる光を含む。
条件2:
対象となる光の分光分布をφ(λ)、対象となる光の分光分布の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光の分光分布をφ
ref(λ)、対象となる光の分光分布の三刺激値を(X、Y、Z)、前記T(K)に応じて選択される基準の光の三刺激値を(X
ref、Y
ref、Z
ref)とし、
対象となる光の規格化分光分布S(λ)と、基準の光の規格化分光分布S
ref(λ)と、これら規格化分光分布の差ΔS(λ)をそれぞれ、
S(λ)=φ(λ)/Y
S
ref(λ)=φ
ref(λ)/Y
ref
ΔS(λ)=S
ref(λ)−S(λ)
と定義し、
波長380nm以上780nm以内の範囲で、S(λ)の最長波長極大値を与える波長をλ
R(nm)とした際に、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在する場合においては下記数式(1)で表される指標A
cgが−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たし、一方、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在しない場合においては下記数式(2)で表される指標A
cgが、−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たす。
【数25】
【数26】
【0154】
また、Φ
elm(λ)は下記条件3と条件4の少なくともいずれか一方を満たさず、φ
SSL(λ)は条件3と条件4をともに満たす態様が好ましい。なお、条件3及び条件4についても、既に述べた第一ステップから第四ステップにより導き出される条件である。条件3:
対象となる光の分光分布による照明を数学的に仮定した場合の#01から#15の下記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*
値をそれぞれa
*n、b
*n(ただしnは1から15の自然数)とし、
当該放射方向に出射される光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光での照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*
a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*値をそれぞれa
*nref、b
*nref(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、飽和度差ΔC
nが
−3.8 ≦ ΔC
n ≦ 18.6 (nは1から15の自然数)
を満たし、上記式(3)で表される飽和度差の平均SAT
avが下記式(4)を満たし、
1.0 ≦ SAT
av ≦ 7.0 (4)
かつ飽和度差の最大値をΔC
max、飽和度差の最小値をΔC
minとした場合に、飽和度差の最大値と、飽和度差の最小値との間の差|ΔC
max−ΔC
min|が
2.8 ≦ |ΔC
max−ΔC
min| ≦ 19.6
を満たす。
ただし、ΔC
n=√{(a
*n)
2+(b
*n)
2}−√{(a
*nref)
2+(b
*nr
ef)
2}とする。
15種類の修正マンセル色票
#01 7.5 P 4 /10
#02 10 PB 4 /10
#03 5 PB 4 /12
#04 7.5 B 5 /10
#05 10 BG 6 / 8
#06 2.5 BG 6 /10
#07 2.5 G 6 /12
#08 7.5 GY 7 /10
#09 2.5 GY 8 /10
#10 5 Y 8.5/12
#11 10 YR 7 /12
#12 5 YR 7 /12
#13 10 R 6 /12
#14 5 R 4 /14
#15 7.5 RP 4 /12
条件4:
対象となる光の分光分布による照明を数学的に仮定した場合の上記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間における色相角をθ
n(度)(ただしn
は1から15の自然数)とし、
当該放射方向に出射される光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光での照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*
a
*b
*色空間における色相角をθ
nref(度)(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、色相角差の絶対値|Δh
n|が
0 ≦ |Δh
n| ≦ 9.0(度)(nは1から15の自然数)
を満たす。
ただし、Δh
n=θ
n−θ
nrefとする。
【0155】
第二に、参考実施例1及び実施例1の結果、また、参考実施例2及び実施例3の結果を
考察することにより、良好な色の見えを実現できる参考実施例1、参考実施例2に係る発光装置(発光要素として把握される)に対し、適切な制御要素を配置することで、更に良好な色の見えを実現できる実施例1、実施例3に係る発光装置を、それぞれ実現することができる。
つまりは、半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置であって、波長をλ(nm)とし、当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、Φ
elm(λ)は上記条件1と条件2をともに満たし、φ
SSL(λ)は上記条件1と条件2をともに満たす場合、良好な色の見えを実現できる発光装置(発光要素)が、制御要素により、更に良好な色の見えを実現できる発光装置となる。
特に、照明用途に利用した際に色の見えに優れる半導体発光装置においても、利用者の嗜好に応じて、さらに色の見えを調整することが可能となる。
また、Φ
elm(λ)は上記条件3と条件4をともに満たし、φ
SSL(λ)は上記条件3と条件4をともに満たす態様が好ましい。
【0156】
一方で、本発明の第二の実施態様に係る発光装置の製造方法は、同様に上記実験結果から導きだすことができる。
すなわち、半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置の製造方法であって、発光要素を有する第一の発光装置を準備する工程、及び第一の発光装置から主たる放射方向に出射される光の少なくとも一部が通過するように制御要素を配置し、第二の発光装置を製造する工程、を含み、波長をλ(nm)とし、当該第一の発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該第二の発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、Φ
elm(λ)は上記条件1と条件2の少なくともいずれか一方を満たさず、φ
SSL(λ)は上記条件1と条件2をともに満たすことを特徴とする発光装置の製造方法である。
特に、既に市中に頒布された、良好な色の見えを実現できていないLED照明装置に対して、特定の制御要素を配置する工程を実施し、本実施態様に係る良好な色の見えを実現できる発光装置を製造することは、本発明の技術的範囲に属するものである。
【0157】
また、半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置の製造方法であって、発光要素を有する第一の発光装置を準備する工程、及び第一の発光装置から主たる放射方向に出射される光の少なくとも一部が通過するように制御要素を配置し、第二の発光装置を製造する工程、を含み、波長をλ(nm)とし、当該第一の発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該第二の発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、Φ
elm(λ)は上記条件1と条件2をともに満たし、φ
SSL(λ)も上記条件1と条件2をともに満たすことを特徴とする発光装置の製造方法である。
【0158】
加えて、本発明の第三の実施態様に係る発光装置の設計方法は、同様に上記実験結果から導きだすことができる。
すなわち、半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置の設計方法であって、波長をλ(nm)とし、当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、Φ
elm(λ)は上記条件1と条件2の少なくともいずれか一方を満たさず、φ
SSL(λ)は上記条件1と条件2をともに満たすように設計することを特徴とする発光装置の設計方法である。
【0159】
また、半導体発光素子が内在する発光要素と制御要素とを有する発光装置の設計方法であって、波長をλ(nm)とし、当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布をΦ
elm(λ)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布をφ
SSL(λ)とし、Φ
elm(λ)は上記条件1と条件2をともに満たし、φ
SSL(λ)も上記条件1と条件2をともに満たすように設計することを特徴とする発光装置の設計方法である。
【0160】
加えて、本発明の第四の実施態様に係る照明方法は、同様に上記実験結果から導き出すことができる。
すなわち、照明対象物を準備する照明対象物準備工程、および、発光要素である半導体発光素子と制御要素を含む発光装置から出射される光により対象物を照明する照明工程、を含む照明方法であって、前記照明工程において、前記発光要素から出射される光が対象物を照明した際に、前記対象物の位置で測定した光が、少なくとも以下の<1>、<2>及び<3>のいずれか1つを満たさず、前記発光装置から出射される光が対象物を照明した際に、前記対象物の位置で測定した光が以下の<1>、<2>及び<3>をすべて満たすように照明することを特徴とする照明方法である。
このような<1>、<2>及び<3>は、既に述べた第一ステップから第四ステップにより導き出される条件である。
【0161】
<1>前記対象物の位置で測定した対象となる光のANSI C78.377で定義される黒体放射軌跡からの距離D
uvが、−0.0350 ≦ D
uv ≦ −0.0040である。
<2>前記対象物の位置で測定した対象となる光による照明を数学的に仮定した場合の#01から#15の下記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空
間におけるa
*値、b
*値をそれぞれa
*n、b
*n(ただしnは1から15の自然数)とし、
前記対象物の位置で測定した対象となる光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光による照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間におけるa
*値、b
*値をそれぞれa
*nref、b
*nref
(ただしnは1から15の自然数)とした場合に、飽和度差ΔC
nが
−3.8 ≦ ΔC
n ≦ 18.6 (nは1から15の自然数)
を満たし、
上記式(3)で表される飽和度差の平均SAT
avが下記式(4)を満たし、
1.0 ≦ SAT
av ≦ 7.0 (4)
かつ、飽和度差の最大値をΔC
max、飽和度差の最小値をΔC
minとした場合に、飽和度差の最大値と、飽和度差の最小値との間の差|ΔC
max−ΔC
min|が
2.8 ≦ |ΔC
max−ΔC
min| ≦ 19.6
を満たす。
ただし、ΔC
n=√{(a
*n)
2+(b
*n)
2}−√{(a
*nref)
2+(b
*nr
ef)
2}とする。
15種類の修正マンセル色票
#01 7.5 P 4 /10
#02 10 PB 4 /10
#03 5 PB 4 /12
#04 7.5 B 5 /10
#05 10 BG 6 / 8
#06 2.5 BG 6 /10
#07 2.5 G 6 /12
#08 7.5 GY 7 /10
#09 2.5 GY 8 /10
#10 5 Y 8.5/12
#11 10 YR 7 /12
#12 5 YR 7 /12
#13 10 R 6 /12
#14 5 R 4 /14
#15 7.5 RP 4 /12
<3>前記対象物の位置で測定した対象となる光による照明を数学的に仮定した場合の上記15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間における色相角を
θ
n(度)(ただしnは1から15の自然数)とし、
前記対象物の位置で測定した対象となる光の相関色温度T(K)に応じて選択される基準の光による照明を数学的に仮定した場合の当該15種類の修正マンセル色票のCIE 1976 L
*a
*b
*色空間における色相角をθ
nref(度)(ただしnは1から15
の自然数)とした場合に、色相角差の絶対値|Δh
n|が
0 ≦ |Δh
n| ≦ 9.0(度)(nは1から15の自然数)
を満たす。
ただし、Δh
n=θ
n−θ
nrefとする。
【0162】
また、発光装置から出射される光が<4>を満たすように照明する態様が好ましい。なお、<4>についても、既に述べた第一ステップから第四ステップにより導き出される条件である。
<4>前記対象物の位置で測定した対象となる光の分光分布をφ(λ)、前記対象物の位置で測定した対象となる光のT(K)に応じて選択される基準の光の分光分布をφ
ref(λ)、前記対象物の位置で測定した対象となる光の三刺激値を(X、Y、Z)、前記対象物の位置で測定した対象となる光のT(K)に応じて選択される基準の光の三刺激値を(X
ref、Y
ref、Z
ref)とし、
前記対象物の位置で測定した対象となる光の規格化分光分布S(λ)と、前記対象物の位置で測定した対象となる光のT(K)に応じて選択される基準の光の規格化分光分布S
ref(λ)と、これら規格化分光分布の差ΔS(λ)をそれぞれ、
S(λ)=φ(λ)/Y
S
ref(λ)=φ
ref(λ)/Y
ref
ΔS(λ)=S
ref(λ)−S(λ)
と定義し、
波長380nm以上780nm以内の範囲で、S(λ)の最長波長極大値を与える波長をλ
R(nm)とした際に、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在する場合においては下記数式(1)で表される指標A
cgが−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たし、一方、
λ
Rよりも長波長側にS(λ
R)/2となる波長Λ4が存在しない場合においては下記数式(2)で表される指標A
cgが、−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たす。
【数27】
【数28】
【0163】
また、照明対象物を準備する照明対象物準備工程、および、発光要素である半導体発光素子と制御要素を含む発光装置から出射される光により対象物を照明する照明工程、を含む照明方法であって、前記照明工程において、前記発光要素から出射される光が対象物を
照明した際に、前記対象物の位置で測定した光が上記<1>、<2>及び<3>をすべて満たし、前記発光装置から出射される光が対象物を照明した際に、前記対象物の位置で測定した光が上記<1>、<2>及び<3>もすべて満たすように照明することを特徴とする照明方法である。
また、発光装置から出射される光が<4>を満たすように照明する態様が好ましい。
【0164】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法及び照明方法を実施するための好ましい実施形態を以下に説明するが、本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法及び照明方法を実施するための態様は、以下の説明で用いたものに限定されない。
【0165】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法は、発光装置から主たる放射方向に出射され、照明対象物に対して色刺激となる試験光の放射計測学的特性、測光学的特性が適切な範囲にあれば、発光装置の構成、材料等に制約はない。
【0166】
本発明の照明方法は、照明対象物に対して照射され、色刺激となる試験光の測光学的特性が適切な範囲にあり、かつ、計算用基準光で照明した場合を仮定した当該15色票の色の見えと、実測した試験光分光分布で照明した場合を仮定した当該15色票の色の見えの差が適切な範囲にあれば、発光装置の構成、材料等に制約はない。
【0167】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法を実施するための照明光源、当該照明光源を含む照明器具、当該照明光源や照明器具を含む照明システム等の発光装置は、少なくとも発光要素と、少なくとも制御要素を含んでいる。また、発光要素としては半導体発光素子を含んでいることが好ましい。半導体発光素子を含む照明光源は、たとえば青色、緑色、赤色の種類の異なる複数の半導体発光素子が1つの照明光源中に内在していてもよく、また、1つの照明光源の中には青色半導体発光素子を含み、異なる1つの照明光源中に緑色半導体発光素子を含み、さらに異なる1つの照明光源中に赤色半導体発光素子を含み、これらが照明器具の中で、フィルター、レンズ、反射鏡、駆動回路等とともに一体とされて照明システムに提供されてもよい。さらに、1つの照明器具中に1つの照明光源があり、この中に単体の半導体発光素子が内在しているような場合であって、単体の照明光源、照明器具としては本発明の照明方法又は発光装置を実施できないものの、照明システム中に存在する異なる照明器具からの光との加法混色によって、照明システムとして放射される光が、照明対象物の位置で所望の特性を満足するようにしてもかまわないし、照明システムとして放射される光のうち主たる放射方向の光が、所望の特性を満足するようにしてもかまわない。いずれのような形態であっても、発光装置から出射される光のうち主たる放射方向の光が、又は、照明対象物に最終的に照射される色刺激としての光が、本発明の適切な条件を満たせばよい。
【0168】
以下は、前記の適切な条件を満たしたうえで、本発明の第一の実施態様に係る発光装置、第二の実施態様に係る発光装置の製造方法、第三の実施態様に係る発光装置の設計方法及び、本発明の第四の実施態様に係る照明方法を実施するための発光装置が好ましく有すべき特性に関して記載する。
【0169】
本発明の第一の実施態様に係る発光装置、第二の実施態様に係る発光装置の製造方法、第三の実施態様に係る発光装置の設計方法又は、本発明の第四の実施態様に係る照明方法を実施するための発光装置は、Λ1(380nm)からΛ2(495nm)の短波長領域内にピークを有する発光要素(発光材料)を有し、かつ、Λ2(495nm)からΛ3(590nm)の中間波長領域内にピークを有する別の発光要素(発光材料)を有し、さらに、Λ3(590nm)から780nmまでの長波長領域内にピークを有するさらに別な発光要素(発光材料)を有することが好ましい。これはそれぞれの発光要素を独立して強
度設定あるいは強度制御することが、好ましい色の見えを容易に実現し得るからである。
【0170】
よって、本発明の第一の実施態様に係る発光装置、第二の実施態様に係る発光装置の製造方法、第三の実施態様に係る発光装置の設計方法又は、本発明の第四の実施態様に係る照明方法を実施するための発光装置は、上記それぞれの3波長領域中に発光ピークを有する発光要素(発光材料)を少なくとも1種類ずつ有することが好ましく、また、当該3波長領域の中の2領域には1種類ずつ、他の1領域は複数の発光要素(発光材料)を有することがより好ましく、さらに、当該3波長領域中の1領域には1種類の、他の2領域は複数の発光要素(発光材料)を有することが非常に好ましく、当該3波長領域のすべてにおいて、複数の発光要素を有することが格段に好ましい。これは1領域中に2つ以上のピーク波長を有するように発光要素を内在させることで分光分布の制御性が格段に向上し、数学的には、照明された対象物の色の見えを所望のように制御しやすくなるからである。
【0171】
よって、半導体発光素子を蛍光体用励起光源として使用した現実の発光装置においては、1発光装置中の蛍光体種類は2種類とし、半導体発光素子の波長と合わせて当該3波長領域それぞれにピーク波長を有するのが好ましい。さらに、蛍光体種類は3種類とし、半導体発光素子の波長と合わせて当該3波長領域の中の少なくとも1領域は2種類の発光要素が内在するようにすることがより好ましい。このような考えから、蛍光体種類は4種類以上が非常に好ましく、5種類が格段に好ましい。特に6種類以上の蛍光体が1光源内に存在すると、蛍光体間の相互吸収等でスペクトルの制御性は逆に低下してしまうため好ましくなくなっていく。また、これとは別の観点で、簡便な発光装置実現との観点では、蛍光体種類は1種類とし、半導体発光素子の発光ピークと合わせて2種類の発光要素で発光装置を構成しても構わない。
【0172】
また、異なるピーク波長を有する半導体発光素子のみで実際の発光装置を構成した場合もこれと同様である。すなわち、好ましい分光分布を実現する観点では、1光源中の半導体発光素子の種類は、3種類以上が好ましく、4種類以上がより好ましく、5種類以上が非常に好ましく、6種類が格段に好ましい。7種類以上の場合には光源中への搭載の煩雑さ等が発生するために好ましくなくなってしまう。また、これとは別の、簡便な発光装置実現との観点では、半導体発光素子は2種類で発光装置を構成しても構わない。
【0173】
なお、半導体発光素子と蛍光体を自在に混合搭載することも可能であって、青色発光素子と2種類(緑色、赤色)の蛍光体を1光源内に搭載しても良く、また、青色発光素子と3種類(緑色、赤色1、赤色2)の蛍光体を1光源内に搭載してもよい。さらに、紫色発光素子と4種類の蛍光体(青色、緑色、赤色1、赤色2)を1光源内に搭載してもよい。さらには、1つの光源の中に、青色発光素子と2種類(緑色、赤色)の蛍光体搭載している部分と、紫色発光素子と3種類の蛍光体(青色、緑色、赤色)を搭載している部分を内在させてもよい。
【0174】
各3波長領域内の発光要素(発光材料)は、ピーク部分の強度やピーク間の谷の強度を制御する観点から、すなわち適切な凹凸を分光分布に形成する観点から、少なくとも1つは比較的狭帯域な発光要素を含んでいることが好ましい。逆に各3波長領域の幅と同程度の幅を有する発光要素だけでは、分光分布に適切な凹凸を形成することは難しい。よって、本発明においては、少なくとも1つは比較的狭帯域な発光要素を含んでいることが好ましいが、さらに、各3波長領域中の2領域に比較的狭帯域な発光要素を含んでいることはよりこのましく、3波長領域全ての領域に比較的狭帯域な発光要素を含んでいることはよりこのましい。この際に、比較的狭帯域な発光要素はそれ単体だけがある波長領域内の発光要素となっていてもよいが、比較的狭帯域な発光要素が当該波長領域内に複数種類存在していることはより好ましく、さらに、比較的狭帯域な発光要素と比較的広帯域な発光要素が当該波長領域内にともに存在していることもより好ましい。
【0175】
なお、ここで言う比較的狭帯域とは、発光要素(発光材料)の半値全幅が、短波長領域(380nmから495nm)、中間波長領域(495nmから590nm)、長波長領域(590nmから780nm)のそれぞれの領域幅である115nm、95nm、190nmに対して、2/3以下であるものをいう。また、比較的狭帯域の発光要素の中でも、その半値全幅は、それぞれの領域幅に対して1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましく、1/4以下であることが非常に好ましく、1/5以下であることが格段に好ましい。また、過度に極端な狭帯域スペクトルは、多種類の発光要素を発光装置内に搭載しなければ所望の特性を実現できない場合もあることから、当該半値全幅は、2nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましく、6nm以上が非常に好ましく、8nm以上が格段に好ましい。
【0176】
これらは、所望の分光分布実現の観点から記載すれば、比較的狭帯域の発光要素(発光材料)の組み合わせとすると、分光分布に凹凸形状が形成しやすく、視覚実験で適切な範囲が明らかとなった指標A
cg、放射効率K(lm/W)等を、所望の値にしやすくなるため、好ましい。また、当該光を色刺激としてとらえ、当該発光装置での照明を仮定した場合の当該15色票の色の見えと、計算用基準光での照明を仮定した場合の色の見えとの差も、発光要素の中に比較的狭帯域なそれを内在させることで、飽和度制御、特に視覚実験で適切な範囲が明らかとなった|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|等を適切な数値範囲にしやすくなるために好ましい。さらに、比較的狭帯域の蛍光体を用いると、広帯域蛍光体を用いる場合よりもD
uv制御も容易になるために好ましい。
【0177】
また、本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法、及び照明方法においては、発光要素から発する広帯域な分光分布に対して、制御要素によって当該分光分布の一部を吸収、反射、集光等することで、発光要素よりも狭帯域な分光分布を実現することも可能であって、好ましい。
【0178】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法及び照明方法においては以下の発光材料、蛍光体材料、半導体発光素子が発光要素として発光装置に内在することが好ましい。
【0179】
まず、当該3波長領域の中のΛ1(380nm)からΛ2(495nm)の短波長領域においては、熱フィラメント等からの熱放射光、蛍光管、高圧ナトリウムランプ等からの放電放射光、レーザ等からの誘導放出光、半導体発光素子からの自然放出光、蛍光体からの自然放出光等あらゆる光源から出る光を含むことが可能である。この中でも特に光励起された蛍光体からの発光、半導体発光素子からの発光、半導体レーザからの発光は、小型で、エネルギー効率が高く、比較的狭帯域発光も可能であることから、好ましい。
【0180】
具体的には、以下が好ましい。
半導体発光素子としては、サファイア基板上やGaN基板上に形成されたIn(Al)GaN系材料を活性層構造中に含む紫色発光素子(ピーク波長が395nmから420nm程度)、青紫色発光素子(ピーク波長が420nmから455nm程度)、青色発光素子(ピーク波長が455nmから485nm程度)が好ましい。さらに、GaAs基板上に形成されたZn(Cd)(S)Se系材料を活性層構造中に含む青色発光素子(ピーク波長が455nmから485nm程度)も好ましい。
【0181】
なお、半導体発光素子や蛍光体等の発光要素(発光材料)の呈する光の分光分布や、そのピーク波長は、周辺温度、パッケージや灯具等の発光装置の放熱環境、注入電流、回路構成、あるいは場合によっては劣化等によって、若干変動するのが常である。よって、あ
る駆動条件でのピーク波長が418nmの半導体発光素子は、周辺環境の温度が上昇するとたとえば421nmのピーク波長を呈する場合などもある。
以下に述べる半導体発光素子や蛍光体等の発光要素(発光材料)の呈する光の分光分布やそのピーク波長についても、同様のことが言える。
【0182】
活性層構造は、量子井戸層とバリア層を積層した多重量子井戸構造でも、あるいは比較的厚い活性層とバリア層(あるいはクラッド層)を含む一重あるいは二重ヘテロ構造でも、1つのpn接合からなるホモ接合であってもよい。
【0183】
特に、活性層がIn(Al)GaN系材料含む場合には、青色発光素子と比較すると、活性層構造内でIn濃度が低くなる青紫色発光素子、紫色発光素子は、Inの偏析による発光波長ゆらぎが小さくなり発光スペクトルの半値全幅が狭くなるために、好ましい。さらに、青紫色発光素子、紫色発光素子は、波長が本波長領域である380nmから495nmの比較的外側(短波長側)寄りに位置し、D
uvの制御が容易となるために、好ましい。すなわち、本発明においてΛ1(380nm)からΛ2(495nm)の短波長領域に発光ピークを有する半導体発光素子は、青色発光素子(ピーク波長が455nmから485nm程度)が好ましく、これより波長の短い青紫色発光素子(ピーク波長が420nmから455nm程度)がより好ましく、紫色発光素子(ピーク波長が395nmから420nm程度)が非常に好ましい。また、これらの発光素子を複数種類使用することも好ましい。
【0184】
また、発光要素として半導体レーザを用いることも好ましく、上記と同様の理由で、青色半導体レーザ(発振波長が455nmから485nm程度)が好ましく、これより波長の長い青紫色半導体レーザ(発振波長が420nmから455nm程度)がより好ましく、紫色半導体レーザ(発振波長が395nmから420nm程度)が非常に好ましい。
【0185】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法で用いる短波長領域の半導体発光素子は、その発光スペクトルの半値全幅が狭いことが好ましい。この観点で、短波長領域で用いる半導体発光素子の半値全幅は、45nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、35nm以下が非常に好ましく、30nm以下は格段に好ましい。また、極端な狭帯域スペクトルは、多種類の発光要素を発光装置内に搭載しなければ所望の特性を実現できない場合もあることから、短波長領域で用いる半導体発光素子の半値全幅は、2nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましく、6nm以上が非常に好ましく、8nm以上が格段に好ましい。
【0186】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法で用いる短波長領域の半導体発光素子は、In(Al)GaN系材料を活性層構造中に含むことが好ましいことから、サファイア基板上またはGaN基板上に形成された発光素子であることが好ましい。特にGaN基板上に形成された発光素子の活性層中のIn偏析度合は、サファイア基板上に形成された場合よりも良好である。これは基板と活性層構造材料との格子整合性に依っている。このため、GaN基板上のIn(Al)GaN発光スペクトルの半値全幅はより狭くできるために、本発明との格段の相乗効果が期待でき、非常に好ましい。さらには、GaN基板上の発光素子であっても、特に半極性面、無極性面上に形成された素子が好ましい。これは結晶成長方向に対する圧電分極効果が低減されるため、量子井戸層内の空間的な電子と正孔の波動関数の空間的な重なりが大きくなり、原理的に発光効率の向上とスペクトルの狭帯域化が実現できるからである。よって半極性あるいは無極性GaN基板上の半導体発光素子を用いることは、本発明との格段の相乗効果が期待できるため、非常に好ましい。
【0187】
また、基板の厚みは厚い場合か、半導体発光素子から完全に剥離されている場合のいず
れかが好ましい。特にGaN基板上に短波長領域の半導体発光素子を作成した場合においては、GaN基板側壁からの光取り出しを助長するように、基板は厚いことが好ましく、100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、400μm以上が非常に好ましく、600μm以上が格段に好ましい。一方で素子作成上の便から基板厚みは2mm以下が好ましく、1.8mm以下がより好ましく、1.6mm以下が非常に好ましく、1.4mm以下が格段に好ましい。
【0188】
一方サファイア基板上等に発光素子を作成した場合においては、レーザリフトオフ等の方法で基板を剥離しておくことが好ましい。このようにすると基板との極端な格子不整合のために広帯域化を助長してしまう量子井戸層にかかる応力が低減し、結果として発光素子のスペクトルの狭帯域化が実現できる。よって、サファイア基板等を剥離した発光素子は本発明との格段の相乗効果を期待でき、非常に好ましい。
【0189】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法に用いる短波長領域の蛍光体材料としては、その半値全幅が狭いことが好ましい。この観点で、短波長領域で用いる蛍光体材料の、室温で光励起された場合の発光スペクトルの半値全幅は、90nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、70nm以下が非常に好ましく、60nm以下は格段に好ましい。また、極端な狭帯域スペクトルは、多種類の発光要素を発光装置内に搭載しなければ所望の特性を実現できない場合もあることから、短波長領域で用いる蛍光体材料の半値全幅は、2nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましく、6nm以上が非常に好ましく、8nm以上が格段に好ましい。
【0190】
短波長領域の蛍光体材料においては、当該蛍光体材料を励起する都合とD
uvの制御性を考慮し、以下の範囲にピーク波長を有することが好ましい。光励起する場合には、ピーク波長が455nmから485nmであることが好ましく、これより波長の短い420nmから455nmであることがより好ましい。一方、電子線励起する場合には、ピーク波長が455nmから485nmであることが好ましく、これより波長の短い420nmから455nmであることがより好ましく、ピーク波長が395nmから420nmであることが非常に好ましい。
【0191】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法に用いる短波長領域の蛍光体材料の具体例としては、上記半値全幅を満たすものであれば好ましく用いることができるが、Eu
2+を付活剤としアルカリ土類アルミン酸塩またはアルカリ土類ハロリン酸塩からなる結晶を母体とする青色蛍光体がある。より具体的には下記一般式(5)で表される蛍光体、下記一般式(5)´で表される蛍光体、(Sr,Ba)
3MgS
i
2O
8:Eu
2+、および(Ba,Sr,Ca,Mg)Si
2O
2N
2:Euが挙げられる。
(Ba,Sr,Ca)MgAl
10O
17:Mn,Eu (5)
(一般式(5)で表されるアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体をBAM蛍光体と呼ぶ。)
Sr
aBa
bEu
x(PO
4)
cX
d (5)´
(一般式(5)´において、XはClである。また、c、d及びxは、2.7≦c≦3.3、0.9≦d≦1.1、0.3≦x≦1.2を満足する数である。さらに、a及びbは、a+b=5−xかつ0≦b/(a+b)≦0.6の条件を満足する。)(一般式(5)
´で表されるアルカリ土類ハロリン酸塩蛍光体のうちBaを含有するものをSBCA蛍光体と呼び、Baを含有しないものをSCA蛍光体と呼ぶ。)
これらの蛍光体である、BAM蛍光体、SBCA蛍光体、SCA蛍光体、およびBa−SION蛍光体((Ba,Sr,Ca,Mg)Si
2O
2N
2:Eu)、(Sr,Ba)
3MgSi
2O
8:Eu
2+蛍光体などが好ましく例示できる。
【0192】
次いで、当該3波長領域の中のΛ2(495nm)からΛ3(590nm)の中間波長領域においては、熱フィラメント等からの熱放射光、蛍光管、高圧ナトリウムランプ等か
らの放電放射光、非線形光学効果を用いた二次高調波発生(SHG)等を含むレーザ等からの誘導放出光、半導体発光素子からの自然放出光、蛍光体からの自然放出光等あらゆる光源から出る光を含むことが可能である。この中でも特に光励起された蛍光体からの発光、半導体発光素子からの発光、半導体レーザ、SHGレーザからの発光は、小型で、エネルギー効率が高く、比較的狭帯域発光も可能であることから、好ましい。
【0193】
具体的には、以下が好ましい。
半導体発光素子としては、サファイア基板上あるいはGaN基板上のIn(Al)GaN系材料を活性層構造中に含む青緑発光素子(ピーク波長が495nmから500nm程度)、緑色発光素子(ピーク波長が500nmから530nm程度)、黄緑色発光素子(ピーク波長が530nmから570nm程度)、黄色発光素子(ピーク波長が570nmから580nm程度)が好ましい。また、GaP基板上のGaPによる黄緑色発光素子(ピーク波長が530nmから570nm程度)、GaP基板上のGaAsPによる黄色発光素子(ピーク波長が570nmから580nm程度)も好ましい。さらに、GaAs基板上のAlInGaPによる黄色発光素子(ピーク波長が570nmから580nm程度)も好ましい。
【0194】
活性層構造は、量子井戸層とバリア層を積層した多重量子井戸構造でも、あるいは比較的厚い活性層とバリア層(あるいはクラッド層)を含む一重あるいは二重ヘテロ構造でも、1つのpn接合からなるホモ接合であってもよい。
特に、In(Al)GaN系材料を用いた場合には、黄色発光素子と比較すると活性層構造内でIn濃度が低くなる黄緑色発光素子、緑色発光素子、青緑色発光素子は、Inの偏析による発光波長ゆらぎが小さくなり発光スペクトルの半値全幅が狭くなるために、好ましい。すなわち、本発明においてΛ2(495nm)からΛ3(590nm)の中間波長領域に発光ピークを有する半導体発光素子は、黄色発光素子(ピーク波長が570nmから580nm程度)が好ましく、これより波長の短い黄緑色発光素子(ピーク波長が530nmから570nm程度)がより好ましくこれより波長の短い緑色発光素子(ピーク波長が500nmから530nm程度)が非常に好ましく、青緑色発光素子(ピーク波長が495nmから500nm程度)が格段に好ましい。
【0195】
また、発光要素として半導体レーザや、半導体レーザの発振波長を非線形光学効果によって波長変換したSHGレーザ等を用いることも好ましい。発振波長としては、上記と同様の理由で、黄色(ピーク波長が570nmから580nm程度)領域内であることが好ましく、これより波長の短い黄緑色(ピーク波長が530nmから570nm程度)領域内であることがより好ましく、これより波長の短い緑色(ピーク波長が500nmから530nm程度)領域内であることが非常に好ましく、さらに、青緑色(ピーク波長が495nmから500nm程度)領域内であることが格段に好ましい。
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法で用いる中間波長領域の半導体発光素子は、その発光スペクトルの半値全幅が狭いことが好ましい。この観点で、中間波長領域で用いる半導体発光素子の半値全幅は、75nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましく、50nm以下が非常に好ましく、40nm以下は格段に好ましい。また、極端な狭帯域スペクトルは、多種類の発光要素を発光装置内に搭載しなければ所望の特性を実現できない場合もあることから、中間波長領域で用いる半導体発光素子の半値全幅は、2nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましく、6nm以上が非常に好ましく、8nm以上が格段に好ましい。
【0196】
本発明で用いる中間波長領域の半導体発光素子は、In(Al)GaN系材料を活性層構造中に含む場合には、サファイア基板上かGaN基板上に形成された発光素子であることが好ましい。また、特にGaN基板上形成された発光素子であることがより好ましい。これは、中間波長領域のInAlGaN系素子を作成するには、Inを比較的多量に活性
層構造中に導入する必要があるが、GaN基板上に形成した場合には、サファイア基板上に形成した場合と比較して、基板との格子定数差に起因する圧電効果が低減し、量子井戸層内にキャリアを注入した場合の電子/正孔の空間的分離を抑制できるからである。この結果、発光波長の半値全幅は狭帯域化可能である。よって本発明においては、GaN基板上の中間波長領域の発光素子では、格段の相乗効果が期待されるため、好ましい。さらにはGaN基板上の発光素子であっても、特に半極性面、無極性面上に形成された素子が好ましい。これは結晶成長方向に対する圧電分極効果が低減されるため、量子井戸層内の空間的な電子と正孔の波動関数の空間的な重なりが大きくなり、原理的に発光効率の向上とスペクトルの狭帯域化が実現できるからである。よって半極性あるいは無極性GaN基板上の半導体発光素子を用いることは、本発明との格段の相乗効果が期待できるため、非常に好ましい。
【0197】
いずれの基板上に形成されたいずれの半導体発光素子であっても、基板の厚みは厚い場合か完全に除去されている場合のいずれかが好ましい。
特にGaN基板上に中間波長領域の半導体発光素子を作成した場合においては、GaN基板側壁からの光取り出しを助長するように、基板は厚いことが好ましく、100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、400μm以上が非常に好ましく、600μm以上が格段に好ましい。一方で素子作成上の便から基板厚みは2mm以下が好ましく、1.8mm以下がより好ましく、1.6mm以下が非常に好ましく、1.4mm以下が格段に好ましい。
【0198】
また、GaP基板上に中間波長領域の半導体発光素子を作成した場合においても同様で、GaP基板側壁からの光取り出しを助長するように、基板は厚いことが好ましく、100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、400μm以上が非常に好ましく、600μm以上が格段に好ましい。一方で素子作成上の便から基板厚みは2mm以下が好ましく、1.8mm以下がより好ましく、1.6mm以下が非常に好ましく、1.4mm以下が格段に好ましい。
【0199】
一方、GaAs基板上に形成されたAlInGaP系材料の場合には、基板のバンドギャップが活性層構造を形成する材料のバンドギャップよりも小さいために、発光波長領域の光を吸収してしまう。このために、基板の厚みは薄い場合が好ましく、半導体発光素子から完全に剥離されている場合が好ましい。
【0200】
さらに、サファイア基板上等に半導体発光素子を作成した場合においては、レーザリフトオフ等の方法で基板を剥離しておくことが好ましい。このようにすると基板との極端な格子不整合のために広帯域化してしまう量子井戸層にかかる応力が低減し、結果として発光素子のスペクトルの狭帯域化が実現できる。よって、サファイア基板等を剥離した半導体発光素子は本発明との格段の相乗効果を期待でき、非常に好ましい。
【0201】
本発明の実施態様に係る発光装置に用いる中間波長領域の蛍光体材料としては、以下の様な場合が好ましい。
例えば、特定の発光領域において紫色半導体発光素子のような紫色光を発する発光要素を用い、かつ、同じ発光領域内に青色蛍光体を同時に用いる場合は、前述の青色蛍光体と中間波長領域の蛍光体材料との分光分布の重なりから、中間波長領域で発光する蛍光体は狭帯域発光する事が好ましい。これは中間波長領域の蛍光体材料の半値全幅が狭い方が、特に465nm以上525nm以下の範囲に適切なくぼみ(相対分光強度の低い部分)を形成できるからであって、この適切なくぼみ部分は「自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見え」を実現する上で、重要であるからである。
この場合には、中間波長領域の蛍光体材料のピーク波長は、D
uvの制御性をも考慮し、495nmから500nmであることが好ましく、ピーク波長が500nmから530
nmである場合と、ピーク波長が570nmから580nmである場合が同程度により好ましく、ピーク波長が530nmから570nmであることが非常に好ましい。
また、特定の発光領域において紫色半導体発光素子のような紫色光を発する発光要素を用い、かつ、同じ発光領域内に青色蛍光体を同時に用いる場合は、中間波長領域で用いる蛍光体材料の、室温で光励起された場合の発光スペクトルの半値全幅は、130nm以下が好ましく、110nm以下がより好ましく、90nm以下が非常に好ましく、70nm以下は格段に好ましい。また、極端な狭帯域スペクトルは、多種類の発光要素を発光装置内に搭載しなければ所望の特性を実現できない場合もあることから、紫色の光を発する発光要素を用いる場合においては、中間波長領域で用いる蛍光体材料の半値全幅は、2nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましく、6nm以上が非常に好ましく、8nm以上が格段に好ましい。
【0202】
一方、例えば、特定の発光領域において青色半導体発光素子のような青色光を発する発光要素を用いる場合には、中間波長領域で発光する蛍光体は広帯域発光する事が好ましい。これは以下の理由による。一般に青色半導体発光素子の半値全幅は比較的狭いために、中間波長領域で発光する蛍光体が狭帯域発光する場合には、「自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見え」を実現する上で重要な465nm以上525nm以下に形成される分光分布中のくぼみが過剰な大きさ(相対分光強度が低下しすぎる)となってしまい、所望の特性を実現しにくくなるからである。
この場合には、中間波長領域の蛍光体材料のピーク波長は、D
uvの制御性をも考慮し、511nmから543nmであることが好ましく、ピーク波長が514nmから540nmである場合がより好ましく、ピーク波長が520nmから540nmである場合が非常に好ましく、ピーク波長が520nmから530nmであること格段に好ましい。
また、特定の発光領域において青色半導体発光素子のような青色光を発する発光要素を用いる場合には、中間波長領域で用いる蛍光体材料の、室温で光励起された場合の発光スペクトルの半値全幅は、90nm以上が好ましく、96nm以上がより好ましく、97nm以上が非常に好ましい。また、極端な広帯域スペクトルは、「自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見え、物体の見え」を実現する上で重要な465nm以上525nm以下に形成される分光分布中のくぼみが過小(相対分光強度が高すぎる)となってしまい、所望の特性を実現しにくくなる場合もあることから、中間波長領域で用いる蛍光体材料の半値全幅は、110nm以下が好ましく、108nm以下がより好ましく、104nm以下が非常に好ましく、103nm以下が格段に好ましい。
【0203】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法に用いる中間波長領域の蛍光体材料の具体例としては、上記半値全幅を満たすものであれば好ましく用いることができる。
【0204】
例えば、特定の発光領域において紫色半導体発光素子のような紫色光を発する発光要素を用い、かつ、同じ発光領域内に青色蛍光体を同時に用いる場合の中間波長領域で発光する蛍光体具体例としては、Eu
2+、Ce
3+などを付活剤として含む緑色蛍光体が挙げられる。Eu
2+を付活剤とする好適な緑色蛍光体は、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類ケイ酸窒化物またはサイアロンからなる結晶を母体とする緑色蛍光体である。この種の緑色蛍光体は、通常、紫外〜青色半導体発光素子を用いて励起可能である。
【0205】
アルカリ土類ケイ酸塩結晶を母体とするものの具体例には、下記一般式(6)で表される蛍光体、下記一般式(6)´で表される蛍光体が挙げられる。
Ba
aCa
bSr
cMg
dEu
xSiO
4 (6)
(一般式(6)においてa、b、c、dおよびxが、a+b+c+d+x=2、1.0 ≦ a ≦ 2.0、0 ≦ b < 0.2、0.2 ≦ c ≦ 1.0、0 ≦ d < 0.2
および0 < x ≦ 0.5を満たす。)(一般式(6)で表されるアルカリ土類ケイ酸塩
をBSS蛍光体と呼ぶ。)
Ba
1-x-ySr
xEu
yMg
1-zMn
zAl
10O
17 (6)´
(一般式(6)´においてx、yおよびzはそれぞれ0.1≦x≦0.4、0.25≦y≦0.6及び0.05≦z≦0.5を満たす。)(一般式(6)´で表されるアルカリ土類アルミン酸塩蛍光体をG−BAM蛍光体と呼ぶ。)
【0206】
サイアロン結晶を母体とするものの具体例には、Si
6-zAl
zO
zN
8-z:Eu(ただし0<z<4.2)で表される蛍光体が挙げられる(これをβ−SiAlON蛍光体と呼ぶ)。Ce
3+を付活剤とする好適な緑色蛍光体としては、ガーネット型酸化物結晶を母体とする緑色蛍光体、例えばCa
3(Sc,Mg)
2Si
3O
12:Ceや、アルカリ土類金属ス
カンジウム酸塩結晶を母体とする緑色蛍光体、例えばCaSc
2O
4:Ceがある。その他、SrGaS
4:Eu
2+なども挙げられる。
さらにその他としては、(Ba,Ca,Sr,Mg,Zn,Eu)
3Si
6O
12N
2で表
される酸窒化物蛍光体が挙げられる(これをBSON蛍光体と呼ぶ)。
【0207】
その他、(Y
1-uGd
u)
3(Al
1-vGa
v)
5O
12:Ce,Eu(但し、u及びvはそれぞれ0≦u≦0.3、及び0≦v≦0.5を満たす。)で表されるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(これをYAG蛍光体と呼ぶ。)、Ca
1.5xLa
3-XSi
6N
11:Ce(但し、xは、0≦x≦1)で表されるランタン窒化ケイ素蛍光体(これをLSN蛍光体と呼ぶ。)があげられる。
【0208】
これらの蛍光体のうち、BSS蛍光体、β−SiAlON蛍光体、BSON蛍光体、G−BAM蛍光体、YAG蛍光体、およびSrGaS
4:Eu
2+蛍光体などが好ましく例示
できる。
【0209】
一方、例えば、特定の発光領域において青色半導体発光素子のような青色光を発する発光要素を用いる場合には、中間波長領域で発光する蛍光体具体例としては、Ce
3+を付活剤としたアルミン酸塩、Ce
3+を付活剤としたイットリウムアルミニウム酸化物、Eu
2+付活アルカリ土類ケイ酸塩結晶、Eu
2+付活アルカリ土類ケイ酸窒化物を母体とする緑色蛍光体がある。これらの緑色蛍光体は、通常、紫外〜青色半導体発光素子を用いて励起可能である。
【0210】
Ce
3+付活アルミン酸塩蛍光体の具体例には、下記一般式(8)で表される緑色蛍光体が挙げられる。
Y
a(Ce,Tb,Lu)
b(Ga,Sc)
cAl
dO
e (8)
(一般式(8)において、a、b、c、d、eが、a+b=3、0≦b≦0.2、4.5≦c+d≦5.5、0.1≦c≦2.6、および10.8≦e≦13.4を満たす。)(一般式(8)で表されるCe
3+付活アルミン酸塩蛍光体をG−YAG蛍光体と呼ぶ。)
特にG−YAG蛍光体においては、一般式(8)を満たす前記組成範囲を適宜選択可能である。さらに、蛍光体単体の光励起時の発光強度最大値を与える波長と半値全幅が、本実施態様において好ましくなるのは以下の範囲である。
0.01≦b≦0.05かつ0.1≦c≦2.6である事が好ましく、
0.01≦b≦0.05かつ0.3≦c≦2.6である事がより好ましく、
0.01≦b≦0.05かつ1.0≦c≦2.6である事が非常に好ましい。
また、
0.01≦b≦0.03かつ0.1≦c≦2.6である事も好ましく、
0.01≦b≦0.03かつ0.3≦c≦2.6である事がより好ましく、
0.01≦b≦0.03かつ1.0≦c≦2.6である事が非常に好ましい。
【0211】
Ce
3+付活イットリウムアルミニウム酸化物系蛍光体の具体例には、下記一般式(9)で表される緑色蛍光体が挙げられる。
Lu
a(Ce,Tb,Y)
b(Ga,Sc)
cAl
dO
e (9)
(一般式(9)において、a、b、c、d、eが、a+b=3、0≦b≦0.2、4.5≦c+d≦5.5、0≦c≦2.6、および10.8≦e≦13.4を満たす。)(一般式(9)で表されるCe
3+付活イットリウムアルミニウム酸化物系蛍光体をLuAG蛍光体と呼ぶ。)
特にLuAG蛍光体においては、一般式(9)を満たす前記組成範囲を適宜選択可能である。さらには、蛍光体単体の光励起時の発光強度最大値を与える波長と半値全幅が、本実施態様において好ましくなるのは以下の範囲である。
0.00≦b≦0.13である事が好ましく、
0.02≦b≦0.13である事がより好ましく、
0.02≦b≦0.10である事が非常に好ましい。
【0212】
その他、下記一般式(10)および下記一般式(11)で表される緑色蛍光体が挙げられる。
M
1aM
2bM
3cO
d (10)
(一般式(10)において、M
1は2価の金属元素、M
2は3価の金属元素、M
3は4価の金属元素をそれぞれ示し、a、b、cおよびdが、2.7≦a≦3.3、1.8≦b≦2.2、2.7≦c≦3.3、11.0≦d≦13.0を満たす。)(一般式(10)で表される蛍光体をCSMS蛍光体と呼ぶ。)
【0213】
なお、上記式(10)において、M
1は2価の金属元素であるが、Mg、Ca、Zn、Sr、Cd、及びBaからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Mg、Ca、又はZnであるのが更に好ましく、Caが特に好ましい。この場合、Caは単独系でもよく、Mgとの複合系でもよい。また、M
1は他の2価の金属元素を含んでいてもよい。
M
2は3価の金属元素であるが、Al、Sc、Ga、Y、In、La、Gd、及びLuからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Al、Sc、Y、又はLuであるのが更に好ましく、Scが特に好ましい。この場合、Scは単独系でもよく、YまたはLuとの複合系でもよい。また、M
2はCeを含むことを必須とし、M
2は他の3
価の金属元素を含んでいてもよい。
M
3は4価の金属元素であるが、少なくともSiを含むことが好ましい。Si以外の4価の金属元素M
3の具体例としては、Ti、Ge、Zr、Sn、及びHfからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Ti、Zr、Sn、及びHfからなる群から選択された少なくとも1種であるのがより好ましく、Snであることが特に好ましい。特に、M
3がSiであることが好ましい。また、M
3は他の4価の金属元素を含んでいてもよい。
【0214】
特にCSMS蛍光体においては、一般式(10)を満たす前記組成範囲を適宜選択可能である。さらには、蛍光体単体の光励起時の発光強度最大値を与える波長と半値全幅が、本実施態様において好ましい範囲となるためには、M
2に含まれるCeのM
2全体に占める割合の下限は0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましい。また、M
2に含まれるCeのM
2全体に占める割合の上限は、0.10以下であることが好ましく、0.06以下であることがより好ましい。更に、M
1元素に含まれるMgのM
1全体に占める割合の下限は0.01以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましい。一方、上限は0.30以下であることが好ましく、0.10以下であることがより好ましい。
【0215】
さらに、下記一般式(11)で表される蛍光体が挙げられる。
M
1aM
2bM
3cO
d (11)
(一般式(11)において、M
1は少なくともCeを含む付活剤元素、M
2は2価の金属元素、M
3は3価の金属元素をそれぞれ示し、a、b、cおよびdが、0.0001≦a≦0.2、0.8≦b≦1.2、1.6≦c≦2.4、および3.2≦d≦4.8を満たす。)(一般式(11)で表される蛍光体をCSO蛍光体と呼ぶ。)
【0216】
なお、上記式(11)において、M
1は、結晶母体中に含有される付活剤元素であり、少なくともCeを含む。また、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選択された少なくとも1種の2〜4価の元素を含有させることができる。
M
2は2価の金属元素であるが、Mg、Ca、Zn、Sr、Cd、及びBaからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Mg、Ca、又は、Srであるのが更に好ましく、M
2の元素の50モル%以上がCaであることが特に好ましい。
M
3は3価の金属元素であるが、Al、Sc、Ga、Y、In、La、Gd、Yb、及びLuからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Al、Sc、Yb、又はLuであるのが更に好ましく、Sc、又はScとAl、又はScとLuであるのがより一層好ましく、M
3の元素の50モル%以上がScであることが特に好ましい。
M
2及びM
3は、それぞれ2価及び3価の金属元素を表すが、M
2及び/又はM
3のごく一部を1価、4価、5価のいずれかの価数の金属元素としてもよく、さらに、微量の陰イオン、たとえば、ハロゲン元素(F、Cl、Br、I)、窒素、硫黄、セレンなどが、化合物の中に含まれていてもよい。
【0217】
特にCSO蛍光体においては、一般式(11)を満たす前記組成範囲を適宜選択可能である。さらには、蛍光体単体の光励起時の発光強度最大値を与える波長と半値全幅が、本実施態様において好ましくなるのは以下の範囲である。
0.005≦a≦0.200である事が好ましく、
0.005≦a≦0.012である事がより好ましく、
0.007≦a≦0.012である事が非常に好ましい。
【0218】
さらに、Eu
2+付活アルカリ土類ケイ酸塩結晶を母体とする蛍光体の具体例には、下記一般式(12)で表される緑色蛍光体が挙げられる。
Ba
aCa
bSr
cMg
dEu
xSiO
4 (12)
(一般式(12)においてa、b、c、dおよびxが、a+b+c+d+x=2、1.0 ≦ a ≦ 2.0、0 ≦ b < 0.2、0.2 ≦ c ≦1,0、0 ≦ d < 0.2および0 < x ≦ 0.5を満たす。)(一般式(12)で表されるアルカリ土類ケイ酸塩蛍光体をBSS蛍光体と呼ぶ。)
BSS蛍光体においては、一般式(12)を満たす前記組成範囲を適宜選択可能である。さらには、蛍光体単体の光励起時の発光強度最大値を与える波長と半値全幅が、本実施態様において好ましくなるのは以下の範囲である。
0.20≦ c ≦1.00かつ0.25< x ≦ 0.50である事がより好ましく、
0.20≦ c ≦ 1.00かつ0.25<x ≦ 0.30である事が非常に好ましい
。
さらに、
0.50≦ c ≦ 1.00かつ0.00<x ≦ 0.50である事が好ましく、
0.50≦ c ≦ 1.00かつ0.25<x ≦ 0.50である事がより好ましく、
0.50≦ c ≦ 1.00かつ0.25<x ≦ 0.30である事が非常に好ましい
。
【0219】
さらに、Eu
2+付活アルカリ土類ケイ酸窒化物を母体とする蛍光体の具体例には、下記一般式(13)で表される緑色蛍光体が挙げられる。
(Ba,Ca,Sr,Mg,Zn,Eu)
3Si
6O
12N
2 (13) (これをBSON蛍光体と呼ぶ)。
BSON蛍光体においては、一般式(13)を満たす前記組成範囲を適宜選択可能である。さらには、蛍光体単体の光励起時の発光強度最大値を与える波長と半値全幅が、本実施態様において好ましくなるのは以下の範囲である。
一般式(13)において選択できる2価金属元素(Ba,Ca,Sr,Mg,Zn,Eu)のうち、BaとSrとEuの組合せとすることが好ましく、さらには、Baに対するSrの比率は10〜30%とすることがより好ましい。
【0220】
次いで、当該3波長領域の中のΛ3(590nm)から780nmの長波長領域においては、熱フィラメント等からの熱放射光、蛍光管、高圧ナトリウムランプ等からの放電放射光、レーザ等からの誘導放出光、半導体発光素子からの自然放出光、蛍光体からの自然放出光等あらゆる光源から出る光を含むことが可能である。この中でも特に光励起された蛍光体からの発光、半導体発光素子からの発光、半導体レーザからの発光は、小型で、エネルギー効率が高く、比較的狭帯域発光も可能であることから、好ましい。
【0221】
具体的には、以下が好ましい。
半導体発光素子としては、GaAs基板上に形成されたAlGaAs系材料、GaAs基板上に形成された(Al)InGaP系材料を活性層構造中に含む橙色発光素子(ピーク波長が590nmから600nm程度)、赤色発光素子(600nmから780nm)が好ましい。また、GaP基板上に形成されたGaAsP系材料を活性層構造中に含む赤色発光素子(600nmから780nm)が好ましい。
【0222】
活性層構造は、量子井戸層とバリア層を積層した多重量子井戸構造でも、あるいは比較的厚い活性層とバリア層(あるいはクラッド層)を含む一重あるいは二重ヘテロ構造でも、1つのpn接合からなるホモ接合であってもよい。
【0223】
特に、この波長領域においては、ピーク波長はD
uv制御性と放射効率の両立を考慮し、630nm近傍に近接していることが好ましい。この観点では、橙色発光素子と比較すると赤色発光素子はより好ましい。すなわち、本発明においてΛ3(590nm)から780nmの長波長領域に発光ピークを有する半導体発光素子は、橙色発光素子(ピーク波長が590nmから600nm程度)が好ましく、赤色発光素子(ピーク波長が600nmから780nm程度)がより好ましく、ピーク波長が630nm程度に近接している赤色発光素子が非常に好ましい。特にピーク波長が615nmから645nmの赤色発光素子が非常に好ましい。
【0224】
また、発光要素として半導体レーザを用いることも好ましい。発振波長としては、上記と同様の理由で、橙色(ピーク波長が590nmから600nm程度)領域内に発振波長を有することが好ましく、赤色(ピーク波長が600nmから780nm程度)領域内に発振波長を有することがより好ましく、さらに発振波長が630nm程度に近接した赤色領域にあることが非常に好ましい。特に発振波長が615nmから645nmの赤色半導体レーザが非常に好ましい。
【0225】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法で用いる長波長領域の半導体発光素子は、その発光スペクトルの半値全幅が狭いことが好ましい。この観点で、長波長領域で用いる半導体発光素子の半値全幅は、30nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましく、20nm以下が非常に好ましく、15nm以下は格段に好ましい。また、極端な狭帯域スペクトルは、多種類の発光要素を発光装置内に搭載しなければ所望の特性を実現できない場合もあることから、長波長領域で用いる半導体発光素子の半値全幅は、2nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましく、6nm以上が非常に
好ましく、8nm以上が格段に好ましい。
【0226】
長波長領域においては、GaAs基板のバンドギャップが活性層構造を形成する材料のバンドギャップよりも小さいために、発光波長領域の光を吸収してしまう。このために、基板の厚みは薄い場合が好ましく、完全に除去されている場合が好ましい。
【0227】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法に用いる長波長領域の蛍光体材料としては、その半値全幅が狭いことが好ましい。この観点で、長波長領域で用いる蛍光体材料の、室温で光励起された場合の発光スペクトルの半値全幅は、130nm以下が好ましく、110nm以下がより好ましく、90nm以下が非常に好ましく、70nm以下は格段に好ましい。また、極端な狭帯域スペクトルは、多種類の発光要素を発光装置内に搭載しなければ所望の特性を実現できない場合もあることから、長波長領域で用いる蛍光体材料の半値全幅は、2nm以上が好ましく、4nm以上がより好ましく、6nm以上が非常に好ましく、8nm以上が格段に好ましい。
長波長領域の蛍光体材料においては、ピーク波長はD
uv制御性と放射効率の両立を考慮し、他の材料と一体として発光装置を作成した際に、そのピーク波長が630nmに近接することが非常に好ましい。すなわち、本発明においてΛ3(590nm)から780nmの長波長領域に発光ピークを有する蛍光体材料は、590nmから600nmの間にピークを有するようになることが好ましく、600nmから780nm程度にピークを有するようになることがより好ましく、ピーク波長が630nmに近接することが非常に好ましい。特にピーク波長が620nmから655nmとなる蛍光体材料が非常に好ましい。
【0228】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法に用いる長波長領域の蛍光体材料の具体例としては、上記半値全幅を満たすものであれば好ましく用いることができる。また、当該具体例としては、Eu
2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ窒化物、αサイアロンまたはアルカリ土類ケイ酸塩からなる結晶を母体とする蛍光体が挙げられる。この種の赤色蛍光体は、通常、紫外〜青色半導体発光素子を用いて励起可能である。アルカリ土類ケイ窒化物結晶を母体とするものの具体例には、(Ca,Sr,Ba,Mg)AlSiN
3:Euおよび/または(Ca,Sr,Ba)AlSiN
3:Euで表される蛍光体(これをSCASN蛍光体と呼ぶ)、(CaAlSiN
3)
1-x(Si
2N
2O)
x:Eu(ただし、xは0<x<0.5)で表される蛍光体(これをCASON蛍光体
と呼ぶ)、(Sr,Ca,Ba)
2Al
xSi
5-xO
xN
8-x:Eu(ただし0≦x≦2)で
表される蛍光体、Eu
y(Sr,Ca,Ba)
1-y:Al
1+xSi
4-xO
xN
7-x(ただし0≦x<4、0≦y<0.2)で表される蛍光体が挙げられる。
【0229】
その他、Mn
4+付活フッ化物錯体蛍光体も挙げられる。Mn
4+付活フッ化物錯体蛍光体は、Mn
4+を付活剤とし、アルカリ金属、アミンまたはアルカリ土類金属のフッ化物錯体塩を母体結晶とする蛍光体である。母体結晶を形成するフッ化物錯体には、配位中心が3価金属(B、Al、Ga、In、Y、Sc、ランタノイド)のもの、4価金属(Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Re、Hf)のもの、5価金属(V、P、Nb、Ta)のものがあり、その周りに配位するフッ素原子の数は5〜7である。
【0230】
好ましいMn
4+付活フッ化物錯体蛍光体は、アルカリ金属のヘキサフルオロ錯体塩を母体結晶とするA
2+xM
yMn
zF
n(AはNaおよび/またはK;MはSiおよびAl;−
1≦x≦1かつ0.9≦y+z≦1.1かつ0.001≦z≦0.4かつ5≦n≦7)である。中でも特に好ましいのは、AがK(カリウム)またはNa(ナトリウム)から選ばれる1種以上で、MがSi(ケイ素)またはTi(チタン)であるもの、例えば、K
2S
iF
6:Mn(これをKSF蛍光体と呼ぶ)、この構成元素の一部(好ましくは10モル
%以下)をAlとNaで置換したK
2Si
1-xNa
xAl
xF
6:Mn、K
2TiF
6:Mn(
これをKSNAF蛍光体と呼ぶ)などである。
【0231】
その他、下記一般式(7)で表される蛍光体、および下記一般式(7)´で表される蛍光体も挙げられる。
(La
1-x-yEu
xLn
y)
2O
2S (7)
(一般式(7)において、x及びyはそれぞれ0.02≦x≦0.50及び0≦y≦0.50を満たす数を表し、LnはY、Gd、Lu、Sc、Sm及びErの少なくとも1種の3価希土類元素を表す。)(一般式(7)で表される酸硫化ランタン蛍光体をLOS蛍光体と呼ぶ。)
(k−x)MgO・xAF
2・GeO
2:yMn
4+ (7)´
(一般式(7)´において、k、x、yは、各々、2.8≦k≦5、0.1≦x≦0.7、0.005≦y≦0.015を満たす数を表し、Aはカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、またはこれらの混合物である。)(一般式(7)で表されるジャーマネート蛍光体をMGOF蛍光体と呼ぶ。)
【0232】
これらの蛍光体のうち、LOS蛍光体、MGOF蛍光体、KSF蛍光体、KSNAF蛍光体、SCASN蛍光体、CASON蛍光体、(Sr,Ca,Ba)
2Si
5N
8:Eu蛍
光体、(Sr,Ca,Ba)AlSi
4N
7蛍光体などが好ましく例示できる。
【0233】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法においては、発光装置の分光分布を適切に制御するための材料に格段の制約はない。しかし、具現化される発光装置が以下の場合は非常に好ましい。
【0234】
例えば、特定の発光領域において紫色半導体発光素子のような紫色光を発する発光要素を用い、かつ、同じ発光領域内に青色蛍光体を同時に用いる場合の中間波長領域で発光する蛍光体を有する場合は以下である。
紫色LED(ピーク波長が395nmから420nm程度)を、短波長領域の発光要素とし、さらに短波長領域における発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるSBCA、SCA、BAMの中から選択される少なくとも1以上を光源に内在させ、中間波長領域における発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるβ−SiAlON、BSS、BSON、G−BAMの中から選択される少なくとも1以上を光源に内在させ、長波長領域における発光要素としてCASON、SCASN、LOS、KSF、KSNAFの中から選択される少なくとも1以上を光源に内在させることは好ましい。
【0235】
さらには、以下の通りである。
紫色LED(ピーク波長が395nmから420nm程度)を、短波長領域の第一発光要素とし、さらに短波長領域における第二発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるSBCAを光源に内在させ、中間波長領域における第一発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるβ−SiAlONを用い、長波長領域における第一発光要素としてCASONを用いることは非常に好ましい。
加えて、紫色LED(ピーク波長が395nmから420nm程度)を短波長領域の第一発光要素とし、さらに短波長領域における第二発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるSCAを光源に内在させ、中間波長領域における第一発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるβ−SiAlONを用い、長波長領域における第一発光要素としてCASONを用いることは非常に好ましい。
加えて、紫色LED(ピーク波長が395nmから420nm程度)を短波長領域の第一発光要素とし、さらに短波長領域における第二発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるBAMを光源に内在させ、中間波長領域における第一発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるBSSを用い、長波長領域における第一発光要素としてCASONを用いることは非常に好ましい。
【0236】
一方、青紫色LED(ピーク波長が420nmから455nm程度)かつ/または青色LED(ピーク波長が455nmから485nm程度)を短波長領域の発光要素とし、中間波長領域における発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるβ−SiAlON、BSS、BSON、G−BAMの中から選択される少なくとも1以上を光源に内在させ、長波長領域における発光要素としてCASON、SCASN、LOS、KSF、KSNAFの中から選択される少なくとも1以上を光源に内在させることは好ましい。
【0237】
さらには、以下の通りである。
青紫色LED(ピーク波長が420nmから455nm程度)かつ/または青色LED(ピーク波長が455nmから485nm程度)を短波長領域の発光要素とし、さらに中間波長領域における第一発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるBSONを用い、長波長領域における第一発光要素としてSCASNを用いることは非常に好ましい。
青紫色LED(ピーク波長が420nmから455nm程度)かつ/または青色LED(ピーク波長が455nmから485nm程度)を短波長領域の発光要素とし、さらに中間波長領域における第一発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるβ−SiAlONを用い、長波長領域における第一発光要素としてCASONを用いることは非常に好ましい。
青紫色LED(ピーク波長が420nmから455nm程度)かつ/または青色LED(ピーク波長が455nmから485nm程度)を短波長領域の発光要素とし、さらに中間波長領域における第一発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるβ−SiAlONを用い、長波長領域における第一発光要素としてCASONを用い、長波長領域における第二発光要素としてKSFもしくはKSNAFを用いることは非常に好ましい。
青紫色LED(ピーク波長が420nmから455nm程度)かつ/または青色LED(ピーク波長が455nmから485nm程度)を短波長領域の発光要素とし、さらに中間波長領域における第一発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるβ−SiAlONを用い、長波長領域における第一発光要素としてSCASNを用いることは非常に好ましい。
青紫色LED(ピーク波長が420nmから455nm程度)かつ/または青色LED(ピーク波長が455nmから485nm程度)を短波長領域の発光要素とし、さらに中間波長領域における第一発光要素として比較的狭帯域な蛍光体であるβ−SiAlONを用い、長波長領域における第一発光要素としてSCASNを用い、長波長領域における第二発光要素としてKSFもしくはKSNAFを用いることは非常に好ましい。
【0238】
これらの発光要素の組み合わせは、それぞれの発光要素の有するピーク波長位置、半値全幅等が、視覚実験で被験者が好ましいとした色の見え、物体の見えを実現するうえで、非常に好都合である。
【0239】
一方、例えば、特定の発光領域において青色半導体発光素子のような青色光を発する発光要素を用いる場合に好ましい発光要素の組み合わせは以下である。
特定の発光領域に、青色発光素子を含み、中間波長領域における蛍光体としてCa
3(Sc,Mg)
2Si
3O
12:Ce(CSMS蛍光体)、CaSc
2O
4:Ce(CSO蛍光体)、Lu
3Al
5O
12:Ce(LuAG蛍光体)、Y
3(Al,Ga)
5O
12:Ce(G−YAG蛍光体)から選択される少なくとも1つの緑色蛍光体を含み、さらに、(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu(SCASN蛍光体)、CaAlSi(ON)
3:Eu(CASON蛍光体)、またはCaAlSiN
3:Eu(CASN蛍光体)から選択される少なくとも1つの赤色蛍光体を含む事は好ましく、このような発光領域を含む発光装置とする事は好ましい。
【0240】
本発明の発光装置、発光装置の製造方法、発光装置の設計方法又は照明方法においては
、これまで記載した発光要素(発光材料)を用いると、指標A
cg、放射効率K(lm/W)、D
uv等を所望の値に設定しやすくなるため、好ましい。また、当該光を色刺激としてとらえ、当該発光装置での照明を仮定した場合の当該15色票の色の見えと、計算用基準光での照明を仮定した場合の色の見えとの差に関する|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|も、上記記載の発光要素を用いると所望の値に設定しやすくなるため、好ましい。
【0241】
D
uvを0から低下させ、適切な負値にするには、種々の手段が考えられる。たとえば当該3波長領域それぞれにひとつの発光要素を有する発光装置を想定すれば、短波長領域内の発光要素の発光位置をさらに短波長側に移動させる、長波長領域内の発光要素の発光位置をさらに長波長側に移動させる、中間波長領域内の発光要素の発光位置を555nmからずらすなどのことが可能である。さらに、短波長領域内の発光要素の相対的発光強度を上げる、長波長領域内の発光要素の相対的発光強度を上げる、中間波長領域内の発光要素の相対的発光強度を下げるなどのことが可能である。また、この際にCCTを変化させずにD
uvを変化させるには、短波長領域内の発光要素の発光位置を短波長側に移動させ、かつ、長波長領域内の発光要素の発光位置を長波長側に移動させるなどのことを同時に行えばよい。さらに、D
uvを正側に変化させるには、上記記載と逆の操作を行えばよい。
【0242】
さらに、たとえば当該3波長領域それぞれに二つの発光要素を有する発光装置を想定し、D
uvを低下させるには、たとえば、短波長領域内の2つの発光要素の中の相対的に短波長側にある発光要素の相対強度を上げる、超波長領域内の2つの発光要素の中の相対的に長波長側にある発光要素の相対強度を上げるなどのことも可能である。また、この際にCCTを変化させずにD
uvを低下させるには、短波長領域内の2つの発光要素の中の相対的に短波長側にある発光要素の相対強度を上げ、かつ、長波長領域内の2つの発光要素の中の相対的に長波長側にある発光要素の相対強度を上げることを同時に行えばよい。さらに、D
uvを正側に変化させるには、上記記載と逆の操作を行えばよい。
【0243】
一方、当該発光装置での照明を仮定した場合の当該15色票の色の見えと、計算用基準光での照明を仮定した場合の色の見えとの差に関する|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|を変化させるための手段としては、特にΔC
nを増加させるためには、D
uvを所望の値となるように分光分布を全体を調整したうえで、以下のようなことが可能である。各発光要素の半値全幅を狭い材料に置換し、スペクトル形状として各発光要素間を適切に分離する、各発光要素のスペクトル中に凹凸を形成すべく、照明光源、照明器具等の中に所望の波長を吸収するフィルターを設置する、発光装置中にさらに狭帯域な発光をする発光要素を追加搭載する等のことを行えばよい。
【0244】
本発明の制御要素は、それ単体では増幅機能を有さない受動的な要素であって、発光要素や、相対的に低加工度の発光装置から主たる放射方向に出射される光に対して適切な範囲で波長毎の強度変調を与え、高加工度の発光装置を構成しうるものであれば特に限定されない。本発明においては、このような機能を制御要素が発光要素に作用すると表現する場合がある。例えば本発明の制御要素としては、反射ミラー、光学フィルター、各種光学レンズ等の受動デバイスを挙げることができる。また、本発明の制御要素は、パッケージLEDの封止材中に分散され、適切な範囲で波長毎の強度変調を与える吸光材であってもよい。ただし、発光要素や、相対的に低加工度の発光装置から出射される光に対して波長依存性の小さな強度変調しか与えない反射ミラー、光学フィルター、吸光材等は制御要素に含まない。
【0245】
本発明の制御要素は、発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布を、既に説明した条件1及び条件2を共に満たすような光の分光分布とするものである。従って、
本発明の制御要素の有するべき特性は、発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布に依拠する。
しかしながら、一般的に、発光装置から出射される光の良好な色の見えを、場合によってはより良好な色の見えを実現可能とするために有すべき、好ましい発光要素の性質は存在する。
【0246】
本発明の制御要素は、当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出されるD
uvをD
uv(Φ
elm)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出されるD
uvをD
uv(φ
SSL)と定義した場合に、D
uv(φ
SSL)<D
uv(Φ
elm)を満たすことが好ましい。
上記条件1では、−0.0350 ≦ D
uv ≦ −0.0040であることを規定する。この範囲のD
uvは、現在既に市中に頒布されている一般的なLED照明と比較して非常に小さな値である。そのため、本発明の制御要素は分光分布のD
uvを小さくする性質を有することが好ましい。しかしながら、本発明の制御要素は、D
uvを大きくするものであっても、発光装置が条件1を満たすものであればよいことはいうまでもない。例えば、色の見えがあまりにも強い(ケバケバしい)発光要素の場合には、D
uvを大きくする制御要素を配置することで、良好な色の見えが実現される場合も存在する。
【0247】
D
uvを0から低下させ、適切な負値にするための種々の手段について、既に説明したが、本発明の制御要素を適宜選択する際においても、上記手段を利用できる。例えば、短波長領域内の発光要素の相対的発光強度を上げ、長波長領域内の発光要素の相対的発光強度を上げ、中間波長領域内の発光要素の相対的発光強度を下げるような制御要素、具体的には、短波長領域内及び長波長領域内の光の透過率が高く、中波長領域内の光の透過率が低い制御要素を選択することがあげられる。加えて、発光要素から主たる方向に出射される光の分光分布に対し、凹凸付与するような制御要素もあげられる。一方、D
uvを正側に変化させるには、上記と逆の操作を行えばよい。
【0248】
また、本発明の制御要素は、当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出されるA
cgをA
cg(Φ
elm)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出されるA
cgをA
cg(φ
SSL)と定義した場合に、A
cg(φ
SSL)<A
cg(Φ
elm)を満たすことが好ましい。
上記条件2では、−360 ≦ A
cg ≦ −10を満たすことを規定する。この範
囲のA
cgは、現在既に市中に頒布されている一般的なLED照明と比較して非常に小さな値である。そのため、本発明の制御要素は分光分布のA
cgを小さくする性質を有することが好ましい。しかしながら、本発明の制御要素は、A
cgを大きくするものであっても、発光装置が条件2を満たすものであればよいことはいうまでもない。例えば、色の見えがあまりにも強い(ケバケバしい)発光要素の場合には、A
cgを大きくする制御要素を配置することで、良好な色の見えが実現される場合も存在する。
【0249】
また、本発明の制御要素は、当該発光要素から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出される前記飽和度差の平均をSAT
av(Φ
elm)、当該発光装置から主たる放射方向に出射される光の分光分布から導出される前記飽和度差の平均をSAT
av(φ
SSL)と定義した場合に、SAT
av(Φ
elm)<SAT
av(φ
SSL)を満たすことがこのましい。
飽和度差の平均SAT
avが適切な範囲で大きくなると色の見えが良好になるため、本発明の制御要素は分光分布による照明を数学的に仮定した場合のSAT
avを大きくする性質を有することが好ましい。しかしながら、本発明の制御要素は、SAT
avを小さくするものであっても、例えば、色の見えがあまりにも強い(ケバケバしい)発光要素の場合には、SAT
avを小さくする制御要素を配置することで、良好な色の見えが実現される場合も存在する。
【0250】
また、本発明の制御要素は、好適には380nm≦λ(nm)≦780nmの領域の光を吸収または反射することが好ましい。
また、本発明の制御要素は、発光要素から出射される光の集光および/または拡散機能、たとえば、凹レンズ、凸レンズ、フレネルレンズ等の機能を兼ね備えていてもよい。
また、本発明の制御要素は、発光要素に近接して配置される場合が多いため、耐熱性を有することが好ましい。耐熱性を有する制御要素としては、ガラスなどの耐熱性を有する材料により製造されている制御要素があげられる。また、本発明の制御要素は、たとえば所望の反射特性、透過特性を実現すべく、所望の元素等がドーピングされ、この結果着色されていてもよい。
【0251】
上記説明した、本発明の制御要素は、例えば市販されているフィルターのうち、本発明の要件を充足するものを適宜選択すればよい。また、発光装置から出射される光が所望の分光分布となるように、フィルターを設計し、作成してもよい。
例えば、複数の吸収ピークを有するフィルターを製造しようとする場合、ある波長領域の光を吸収する性質を持つフィルムと、別の波長領域の光を吸収する性質を持つフィルムを複数種類準備し、それらを積層して多層フィルターとしてもよい。また、誘電体膜を多層に積層して、所望の特性を実現してもよい。
【0252】
このように、本発明は、150lxから約5000lxの照度範囲で、種々の色相を有する多種多様な照明対象物を、屋外のような10000lxを超える高照度環境下で見たような、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見えとしつつ、光照射による副次的影響が懸念される照明対象物に対しても、そのような副次的影響を抑制した発光装置を実現方法を明らかにしている。特に各色相を自然な鮮やかさにできると同時に、白色物を実験用基準光と比較してより白く知覚させうる。
特に本発明は、既に市場に流通している良好な色の見えを実現できていない照明装置に対し、フィルターや反射ミラー等の制御要素を配置するという至極簡易な方法により、良好な色の見えを実現できる照明装置を提供できるという、極めて実用性に富んだ技術である。
【0253】
また、本発明の発光装置における、高照度環境下で見たような、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見えとするための手段が、主たる放射方向に出射される光の分光分布から求められるD
uvを適切な範囲とした発光装置とすることであって、かつ、指標A
cgを適切な範囲とした発光装置とすることである。
【0254】
換言すると、本発明は、発光要素から出射される光を制御要素で適切な波長に対する強度変調を与え、発光装置から出射される光が条件1−2を満たす発光装置であり、このような発光装置であれば、どのような構成をとる装置であっても構わない。当該装置は、たとえば照明光源単体であっても、当該光源を放熱板等の上に少なくとも1以上搭載している照明用モジュールであっても、当該光源あるいはモジュールにレンズ、反射機構、駆動用電気回路等を付与した照明器具であってもよい。さらには、光源単体、モジュール単体、器具単体等を集合させ、少なくともこれらを支持する機構を有する照明システムであってもよい。
【0255】
本発明の照明方法における、高照度環境下で見たような、自然で、生き生きとした、視認性の高い、快適な、色の見えとするための手段は、照明対象物の位置における光のD
uvを適切な範囲とすることであって、かつ、当該光での照明を仮定した当該15色票の色の見えと、計算用基準光での照明を仮定した当該15色票の色の見えとの差に関する|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|等の指標を適切な範囲にすることである。
【0256】
換言すると、本発明の照明方法は、半導体発光素子から出射される光を分光分布中に構成要素として含み、かつ、|Δh
n|、SAT
av、ΔC
n、|ΔC
max−ΔC
min|、D
uv等が適切な範囲となっている光を照明対象物に照射する照明方法であり、本発明の照明方法に用いる発光装置としては、このような照明が可能な装置であれば、どのような構成をとる装置であっても構わない。当該装置は、たとえば照明光源単体であっても、当該光源を放熱板等の上に少なくとも1以上搭載している照明用モジュールであっても、当該光源あるいはモジュールにレンズ、反射機構、駆動用電気回路等を付与した照明器具であってもよい。さらには、光源単体、モジュール単体、器具単体等を集合させ、少なくともこれらを支持する機構を有する照明システムであってもよい。
【0257】
本実施例の発光装置の放射計測学的、測光学的、測色学的特性は、表8、表9にまとめたとおりであって、照明対象物の色の見えは、総合的に非常に良好であった。
よって、本発明の発光装置は、良好な色の見えを実現できていない照明装置に対し、フィルターや反射ミラー等の制御要素を配置するという至極簡易な方法により、良好な色の見えを実現できる照明装置であり、また、良好な色の見えを実現できている照明装置に対しても、フィルターや反射ミラー等の制御要素を配置するという至極簡易な方法により、使用者の嗜好に合致した良好な色の見えを実現できる照明装置である。