(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271303
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】ダイカスト金型用入子及びダイカスト法
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20180122BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
B22D17/22 B
B22D17/22 Q
B22C9/06 Q
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-46478(P2014-46478)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-167994(P2015-167994A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大本 剛士
【審査官】
川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−268061(JP,A)
【文献】
特開2009−195914(JP,A)
【文献】
特開2006−044247(JP,A)
【文献】
特開2006−082096(JP,A)
【文献】
特開2008−284555(JP,A)
【文献】
特開2008−260048(JP,A)
【文献】
特開2009−208127(JP,A)
【文献】
実開昭58−023246(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/06
B22D 17/22
B29C 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と、該固定型に対して進退可能な可動型とを有するダイカスト用金型に設置され、鋼からなる外側部材と該外側部材の穴部に挿入される銅又は銅合金からなる内側部材とを拡散接合で一体化することにより製造されるダイカスト金型用入子において、
該外側部材と該内側部材との間の所定範囲には該外側部材よりも熱伝導率が低い金属材質からなる中間部材が、該外側部材と該内側部材と拡散接合で一体化されて設置されていることを特徴とするダイカスト金型用入子。
【請求項2】
該内側部材は、大径部と小径部とを備え、該中間部材はスリーブ形状であり、該内側部材の小径部が該中間部材の孔部に嵌入されていることを特徴とする請求項1に記載のダイカスト金型用入子。
【請求項3】
請求項1〜請求項2のいずれかに記載のダイカスト金型用入子を用いてダイカストすることを特徴とするダイカスト法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト金型用入子と、このダイカスト金型用入子を使用したダイカスト法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト用金型に用いられる入子として、第1の金属(鋼)と、第2の金属(銅または銅合金)とを拡散接合により一体化して製造するものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1によれば、このようにして製造された入子は、第2の金属に形成された冷却水路によって高い耐腐食性を有しつつ、第1の金属との稠密な拡散接合部位によって良好な熱伝導特性を発揮し、長期にわたって高い冷却効果を奏することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5113549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される入子構造においては、部分的に冷却効率を低減させることが必要な場合には対応することができないという問題を有している。本発明は、この課題を解決するために成されたものであり、その目的は部分的に冷却効率を低減させることができるダイカスト金型用入子と、このダイカスト金型用入子を用いたダイカスト法を提供することにある。
【0006】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0007】
本発明は、固定型と、該固定型に対して進退可能な可動型とを有するダイカスト用金型に設置され、鋼からなる外側部材(10)と該外側部材(10)の穴部(10A)に挿入される銅又は銅合金からなる内側部材(20)とを拡散接合で一体化することにより製造されるダイカスト金型用入子(1)において、該外側部材(10)と該内側部材(20)との間の所定範囲には該外側部材(10)よりも熱伝導率が低い金属材質からなる中間部材(30)が
、該外側部材(10)と該内側部材(20)と拡散接合で一体化されて設置されていることを特徴とする。
【0009】
また、該内側部材(20)は、大径部(21)と小径部(22)とを備え、該中間部材(30)はスリーブ形状であり、該内側部材(20)の小径部(22)が該中間部材(30)の孔部(31)に嵌入されていることが好ましい。
【0010】
なお、本発明に係るダイカスト法は、上述したダイカスト金型用入子(1)を用いてダイカストを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部分的に冷却効率を低減することができるダイカト金型用入子と、このダイカスト金型用入子を用いるダイカスト法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係るダイカスト金型用入子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
本実施形態に係るダイカスト金型用入子1及びこのダイカスト金型用入子を用いるダイカスト法について図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態のダイカスト金型用入子1の断面図であり、
図2は
図1のA−A線断面図である。
【0015】
一般にダイカスト金型は、固定型と、固定型に対して進退可能な可動型を備えており、固定型は固定ダイスと固定ホルダとにより構成され、可動型は可動ダイスと可動ホルダとにより構成されている。本実施形態に係るダイカスト金型用入子1は、固定ダイス又は可動ダイスに形成された凹部に嵌合されキャビティを画成するものである。ダイカスト金型用入子1は、鋼からなる外側部材10と、銅又は銅合金からなる内側部材20と、外側部材10よりも熱伝導率の低い金属材質からなる中間部材30とを拡散接合で一体化することにより製造されている。特に、本実施形態では、前記鋼についてはSKD61が採用され、前記銅又は銅合金については無酸素銅が採用されている。無酸素銅は、銅又は銅合金のなかでも純度の高いものであり、熱伝導率が非常に高いという性質を有している。そして、前記熱伝導率の低い金属材料についてはステンレス鋼が採用されている。
【0016】
外側部材10は、固定ダイス又は可動ダイスに形成された凹部に嵌合される基部11と、この基部11の前面11Aから突出する突出部12とを備えている。外側部材10は、基部11の裏面11Bに開口する穴部10Aを有しており、この穴部10A内に後述する内側部材20と中間部材30とが収容されるようになっている。突出部12は円柱形状であり、先端面12Aと外周面12Bとを有している。基部11の前面11Aと、突出部12の先端面12A及び外周面12Bはキャビティ面とされ、ダイカスト金型の内部にキャビティを画成する。
【0017】
内側部材20は、外側部材10の穴部10A内に収容された際に外側部材10の突出部12の先端側に位置する大径部21と、外側部材10の突出部12の基端側に位置する小径部22とを有している。小径部22の端面22Aには冷却穴部23が形成されており、ダイカスト金型の内部に設けられる冷媒通路によって循環供給される水等の冷却媒体を接触させることができるようになっている。
【0018】
中間部材30はスリーブ形状であり、中間部材30の孔部31には内側部材20の小径部22が嵌入されている。中間部材30の外径は内側部材20の大径部21の外径と略同一であり、中間部材30の孔部31の孔径は内側部材20の小径部22の外径と略同一である。
【0019】
外側部材10の穴部10A内に埋め込まれた内側部材20と中間部材30とは拡散接合等の公知の異材接合技術を採用することで、隙間無く分離不能に接合されている。
【0020】
上述したとおり、内側部材20には冷却穴部23が形成されており、冷却媒体が接触することで内側部材20から熱を奪うことができる。ダイカスト法が行われると外側部材10は溶湯からの熱に曝されて高温となるが、外側部材10の熱は熱伝導率が高い無酸素銅からなる内側部材20を経由して冷却媒体により除去される。外側部材10の突出部12の先端側においては、外側部材10と内側部材20との間に中間部材20が存在していないので積極的な冷却効果が発揮されることになる。一方、外側部材10の突出部12の基端側の所定範囲には、外側部材10と内側部材20との間に熱伝導率が低い中間部材30が配置されているので、中間部材30が配置されている範囲については冷却効果が低減されることになる。
【0021】
次に、本実施形態のダイカスト金型用入子1を用いたダイカスト法について説明する。ダイカスト法は、固定型又は可動型の少なくとも一方に本実施形態のダイカスト金型用入子1が設置さたダイカスト金型を用いて行われる。ダイカスト法では、先ず、可動型を固定型に合わせてキャビティを画成する。次に、固定型に設けられるスリーブ内にアルミニウム合金等の溶湯を供給し、プランジャチップにより溶湯をキャビティに充填する。そして、キャビティの溶湯がダイカスト金型用入子1により冷却されて凝固した後に型開きを行い、ダイカスト品をダイカスト金型から取り出す。以上がダイカスト法である。
【0022】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。すなわち、本実施形態に係るダイカスト金型用入子1は、外側部材10と内側部材20との間の所定範囲に外側部材10よりも熱伝導率が低い金属材料からなる中間部材30を設置して拡散接合で一体化したものである。このような構成を有することで、中間部材30が設置されている範囲については冷却効果を低減することができるようになるので、多様なダイカスト品の製造に対応することができる。
【0023】
ただし、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0024】
例えば、上述した実施形態では、ダイカスト金型用入子1は固定ダイス又は可動ダイスに設置されるものであったが、固定ダイス又は可動ダイスそのものとして固定ホルダ又は可動ホルダに設置されてもよい。また、ダイカスト用金型用入子1はダイカスト品の孔部を形成するために固定ダイス又は可動ダイスに設置される鋳抜きピンであってもよい。
【0025】
また、上述した実施形態では、中間部材をステンレス鋼としたが、外側部材よりも熱伝導率が低い金属材料であればよく、例えば、SKD11等を採用しもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 ダイカスト金型用入子
10 外側部材
10A 穴部
11 基部
11A 表面
11B 裏面
12 突出部
12A 先端面
12B 外周面
20 内側部材
21 大径部
22 小径部
23 冷却穴部
30 中間部材
31 孔部