特許第6271353号(P6271353)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271353
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】電流遮断装置とそれを用いた蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20180122BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20180122BHJP
   H01G 11/14 20130101ALN20180122BHJP
【FI】
   H01M2/34 A
   H01G11/74
   !H01G11/14
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-131670(P2014-131670)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-9667(P2016-9667A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 英明
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】岩 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】小川 義博
(72)【発明者】
【氏名】光安 淳
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 騎慎
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/154166(WO,A1)
【文献】 特開平09−106803(JP,A)
【文献】 特開平11−238494(JP,A)
【文献】 特開2015−162426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/20 − 2/34
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置のケース内の圧力が所定値を超えたときに電極端子と電極の間の導通を遮断する電流遮断装置であって、
前記電極端子に接続されている第1通電部材と、
前記電極に接続されている第2通電部材と、
前記第1通電部材と前記第2通電部材の間に配置されており、前記第1通電部材に接続されており、ケース内の圧力が所定値以下のときは前記第2通電部材に接触しているとともにケース内の圧力が所定値を超えたときに前記第2通電部材と非接触になる第1変形部材と、
前記第2通電部材に対して前記第1変形部材とは反対側に配置されているとともに、前記ケース内の圧力が所定値を超えたときに中央部が前記第2通電部材に向けて移動する第2変形部材と、を備えており、
前記中央部に、前記第2通電部材に向かって突出した形状の突起が設けられており、
前記第2変形部材の端部が、前記第2通電部材に支持されており、
前記中央部と前記端部の間の中間部が蛇腹状であり、
前記ケース内の圧力が所定値以下のときは、
前記突起と前記第2通電部材の間に隙間が設けられているとともに、
前記中央部が、前記中央部が移動する方向において、前記電流遮断装置を構成する部品の前記中央部及び前記中間部以外の少なくとも一部分よりも、前記ケース内の圧力が所定値を超えたときに前記中央部が移動する側に位置している電流遮断装置。
【請求項2】
前記第1通電部材と前記第2通電部材を固定する支持部材を備えており、
前記中央部が、前記中央部が移動する方向における前記支持部材の前記第2通電部材側の端面を含むとともに前記第2通電部材に沿って延びる第1平面よりも、前記第2通電部材側に位置している請求項1に記載の電流遮断装置。
【請求項3】
前記中央部が、前記端部を含むとともに前記第2通電部材に沿って延びる第2平面よりも、前記第2通電部材側に位置している請求項1又は2に記載の電流遮断装置。
【請求項4】
前記中間部が、前記第2平面よりも、前記第2通電部材側に位置している請求項3に記載の電流遮断装置。
【請求項5】
前記ケース内の圧力が所定値を超えて前記第2変形部材の中央部が前記第2通電部材に向けて移動した後に、前記第1変形部材が、前記第2通電部材と非接触の状態を維持し続ける請求項1から4のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項6】
前記第1変形部材がダイアフラムであり、
前記ケース内の圧力が所定値を超える前後において、前記第1変形部材の中央部が、前記第1変形部材の端部に対して反対側に突出している請求項5に記載の電流遮断装置。
【請求項7】
前記第2変形部材の中央部が前記第2通電部材に向けて移動するときに、前記中間部が塑性変形する請求項1から6のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電流遮断装置を備える蓄電装置。
【請求項9】
前記蓄電装置は、二次電池である請求項8に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電流遮断装置及びそれを用いた蓄電装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置が過充電されたり、内部で短絡が発生したときに、蓄電装置に流れる電流を遮断する電流遮断装置の開発が進められている。電流遮断装置は、電極端子と電極の間(正極端子と正極の間又は負極端子と負極の間)に配置される。特許文献1の電流遮断装置は、電極端子に接続されている第1通電部材と、電極に接続されている第2通電部材を備えている。第2通電部材は、第1通電部材に対向する位置に配置されている。
【0003】
第1通電部材と第2通電部材の間には、第1変形部材が配置されている。また、第2変形部材が、第2通電部材に対して第1変形部材とは反対側に配置されている。第1変形部材は、ケース内の圧力が所定値以下のときは中央部が第2通電部材に接触している。第2変形部材には突起が設けられている。第2変形部材は、ケース内の圧力が所定値以下のときに第2通電部材とは反対側に凸な状態であり、ケース内の圧力が所定値を超えたときに第2変形部材側に凸な状態に変形する。第2変形部材が第2変形部材側に凸な状態に変形することにより、突起が第2通電部材に接触し、第2通電部材を破断する。第2通電部材が破断されることにより、第1変形部材と第2通電部材が非接触になり、電極端子と電極の間の導通が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2013/154166A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電流遮断装置は、ケース内の圧力の上昇に応じて第2変形部材が第2通電部材に対して反対側に凸な状態から第2通電部材側に反転することにより、電極端子と電極の間の導通を遮断している。特許文献1の蓄電装置は、第2変形部材の反転を妨げないために、第2変形部材の周囲に空間を確保することが必要である。具体的には、電流遮断装置(第2変形部材)と電極組立体の間の隙間を十分に確保することが必要である。そのため、特許文献1の蓄電装置は、上記隙間を確保するために、電極組立体(正極と負極を備える構造体)のサイズが小さくなり、蓄電装置の蓄電容量が小さくなる。あるいは、特許文献1の蓄電装置は、上記隙間を確保するために、ケースのサイズを大きくすることが必要である。本明細書では、蓄電容量を確保しながら蓄電装置を小型化する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する電流遮断装置は、蓄電装置のケース内の圧力が所定値を超えたときに電極端子と電極の間の導通を遮断する。その電流遮断装置は、第1通電部材と、第2通電部材と、第1変形部材と、第2変形部材を備えている。上記第1通電部材は、上記電極端子に接続されている。上記第2通電部材は、上記電極に接続されている。上記第1変形部材は、上記第1通電部材と上記第2通電部材の間に配置されている。また、上記第1変形部材は、上記第1通電部材に接続されている。さらに、上記第1変形部材は、上記ケース内の圧力が所定値以下のときは上記第2通電部材に接触しており、上記ケース内の圧力が所定値を超えたときに上記第2通電部材と非接触になる。上記第2変形部材は、上記第2通電部材に対して、上記第1変形部材とは反対側に配置されている。上記第2変形部材は、上記ケース内の圧力が所定値を超えたときに中央部が上記第2通電部材に向けて移動する。上記第2変形部材の上記中央部には、上記第2通電部材に向かって突出した形状の突起が設けられている。本明細書で開示する電流遮断装置では、上記第2変形部材の端部が、上記第2通電部材に支持されている。また、上記第2変形部材では、上記中央部と上記端部の間の中間部が蛇腹状である。上記第2変形部材の中央部は、上記中央部が移動する方向において、上記電流遮断装置を構成する部品の上記第2変形部材の中央部及び中間部以外の少なくとも一部分よりも、上記ケース内の圧力が所定値を超えたときに上記第2変形部材の中央部が移動する側に位置している。
【0007】
上記の電流遮断装置では、ケース内の圧力の上昇とともに、第2変形部材に力(ケース内の圧力)が加わる。第2変形部材に加わる力が所定値を超えると、第2変形部材の中央部が第2通電部材に向かって移動し、第1変形部材と第2通電部材を非接触にすることにより、電極端子と電極の間の導通を遮断する。上記の電流遮断装置では、第2変形部材の中央部が、第2変形部材の中央部及び中間部以外の部分(第2変形部材以外の部品,第2変形部材の端部)よりも第2通電部材側に位置している。換言すると、第2変形部材の中央部及び中間部以外の部分が、第2変形部材の中央部よりも第2通電部材とは反対側に位置している。すなわち、第2変形部材の中央部が、第2通電部材から最も離れた場所に位置していない。そのため、従来の電流遮断装置と比較して、第2変形部材を配置するためのスペースを省略することができ、小型の蓄電装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示される技術によると、蓄電容量を確保しながら蓄電装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施例の蓄電装置の断面図を示す。
図2】第1実施例の蓄電装置で用いられている電流遮断装置の拡大断面図を示す。
図3図2に示す電流遮断装置が作動した後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書で開示する蓄電装置の技術的特徴の幾つかを記す。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
【0011】
蓄電装置は、ケースと、電極組立体と、電極端子と、電流遮断装置を備えている。電極組立体は、ケース内に収容されており、正極及び負極を備えていてよい。電極端子は、ケースの内外を通じていてよい。すなわち、電極端子の一部がケースの外部に位置しており、電極端子の他の一部がケースの内部に位置していてよい。電流遮断装置は、負極端子と負極に接続されていてもよい。この場合、電流遮断装置は、負極端子と負極の通電経路上に配置され、ケースの内圧が所定値を超えたときに、負極端子と負極を導通状態から非導通状態に切換える。電流遮断装置は、正極端子と正極に接続されていてもよい。この場合、電流遮断装置は、正極端子と正極の通電経路上に配置され、ケースの内圧が所定値を超えたときに、正極端子と正極を導通状態から非導通状態に切換える。
【0012】
電流遮断装置は、第1通電部材と、第2通電部材と、第1変形部材と、第2変形部材を備えていてよい。電流遮断装置は、ケースの内壁と電極組立体の間の空間に配置されていてよい。電極組立体からケースの内壁に向かって、第2変形部材,第2通電部材,第1変形部材及び第1通電部材の順に配置されていてよい。第1通電部材は、蓄電装置のケースに固定されていてよい。第1通電部材は、正極端子の一部、又は、負極端子の一部であってもよい。あるいは、第1通電部材は、導電性の部品を介して電極端子(正極端子又は負極端子)に接続されていてもよい。
【0013】
第2通電部材は、電極に接続されていてよい。また、第2通電部材は、第1通電部材と間隔をおいて第1通電部材に対向する位置に配置されていてよい。第2通電部材の中央部の厚みは、端部の厚みより薄くてよい。第2通電部材の中央部に、ケース内の圧力が所定値を超えたときに破断の起点となる破断溝が設けられていてもよい。破断溝は、第2通電部材の中央部において、連続的又は断続的に一巡していてよい。なお、破断溝は、ケース内の圧力が所定値を超えたときに破断の起点となる脆弱部であればよく、第2通電部材の中央部に局所的に設けられていてもよい。なお、第1通電部材と第2通電部材は、支持部材によって固定されていてもよい。
【0014】
第1変形部材は、第1通電部材と第2通電部材の間に配置されていてよい。第1変形部材は、第1通電部材に接続されていてよい。第1変形部材の端部が第1通電部材に接続されていてよい。第1変形部材は、ケース内の圧力が所定値以下のときは第2通電部材に接触していてよい。第1変形部材の中央部が、第2通電部材に接触していてよい。第1変形部材は、破断溝に囲まれた位置で第2通電部材に固定されていてもよい。第1変形部材は、ケース内の圧力が所定値を超えたときに第2通電部材と非接触になってよい。ケース内の圧力が所定値を超えたときに第2通電部材の中央部が破断し、第1変形部材が、第2通電部材の他の部分(中央部の周囲の部分)から離れてもよい。第1変形部材は、ケース内の圧力が所定値を超えたときに第2通電部材から離れるように反転してもよい。
【0015】
第1変形部材は、ケース内の圧力が所定値を超えた後に、第2通電部材と非接触の状態を維持し続けてもよい。この場合、第1変形部材がダイアフラムであり、ケース内の圧力が所定値を超える前後において、第1変形部材の中央部が、第1変形部材端部に対して反対側に突出してよい。具体的には、ケース内の圧力が所定値を超える前後において、第1変形部材の中央部が、第2通電部材側に凸な状態から第1通電部材側に凸な状態に反転してもよい。
【0016】
第2変形部材は、第2通電部材に対して第1変形部材とは反対側に配置されていてよい。すなわち、第2通電部材が、第1変形部材と第2変形部材の間に設けられていてよい。第2変形部材は、第2通電部材と電極組立体の間に設けられていてよい。第2変形部材の端部は、第2通電部材に支持されていてよい。第2変形部材の端部は、第2通電部材に溶接されていてよい。第2変形部材の端部は、支持部材によって、第2通電部材に固定されていてよい。
【0017】
第2変形部材の中央部は、ケース内の圧力が所定値を超えたときに第2変形部材の中央部が移動する方向において、電流遮断装置を構成する部品の第2変形部材の中央部及び中間部以外の少なくとも一部分よりも、ケース内の圧力が所定値を超えたときに第2変形部材の中央部が移動する側に位置していてよい。換言すると、第2変形部材の中央部は、電流遮断装置を構成する部品のうち、第2変形部材以外の部品、及び/又は、第2変形部材の端部よりも、ケース内の圧力が所定値を超えたときに第2変形部材の中央部が移動する側に位置していてよい。より具体的には、第2変形部材の中央部が移動する方向において、電極組立体に最も近い位置に存在する電流遮断装置の部品,部分が、第2変形部材の中央部,中間部以外の部品,部分であってよい。
【0018】
電流遮断装置が第1通電部材と第2通電部材を固定する支持部材を備えている場合、第2変形部材の中央部が、その中央部が移動する方向における支持部材の第2通電部材側の端面を含むとともに第2通電部材に沿って延びる第1平面よりも、第2通電部材側に位置していてよい。第2変形部材の中央部は、第2変形部材の端部を含むとともに第2通電部材に沿って延びる第2平面より第2通電部材側に位置していてよい。具体的には、第2変形部材の中央部は、第2変形部材の端部を含み、第2通電部材の第1通電部材側の中央部の面に平行である仮想面よりも第2通電部材側に位置していてよい。換言すると、第2変形部材の中央部と電極組立体との距離が、第2変形部材の端部の少なくとも一部と電極組立体との距離以上であってよい。
【0019】
第2変形部材の中間部(中央部と端部の間)は、蛇腹状であってよい。第2変形部材の中間部は、第2変形部材の端部を含むとともに第2通電部材に沿って延びる第2平面より第2通電部材側に位置していてよい。すなわち、第2変形部材の中間部と電極組立体との距離が、第2変形部材の端部の少なくとも一部と電極組立体との距離以上であってよい。
【0020】
第2変形部材が、電流遮断装置の内部と外部を隔てていてよい。すなわち、第2変形部材が電流遮断装置の外側面を構成しており、ケース内の圧力が第2変形部材に直接作用してもよい。第2変形部材は、ケース内の圧力が所定値を超えたときに中央部が第2通電部材に向けて移動してもよい。第2変形部材の中央部が第2通電部材に向けて移動するときに、第2変形部材の中間部が塑性変形してもよい。第2変形部材の第2通電部材側の中央部に、第2通電部材に向かって突出した形状の突起が設けられていてよい。その突起は、ケース内の圧力が所定値以下のときは、第1通電部材から離れた状態であるとともに、第1通電部材の破断溝に囲まれた部分に対向していてもよい。突起は、絶縁性であってもよい。第2変形部材の中央部が第2通電部材に向けて移動したときに、突起が、第2通電部材に接触してもよい。突起が第2通電部材に接触して第2通電部材を破断することにより、第1変形部材が第2通電部材から離れてもよい。
【0021】
ケース内の圧力が所定値を超えて第2変形部材の中央部が第2通電部材に向けて移動した後に、上記突起が第2通電部材を破断し、その突起の一部が、第2通電部材の第1通電部材側の表面よりも第1通電部材側に留まっていてもよい。突起が第1変形部材と第2通電部材の間に介在することにより、第1変形部材が、第2通電部材と非接触の状態を維持し続けてもよい。
【0022】
本明細書で開示する蓄電装置の一例として、二次電池、キャパシタ等が挙げられる。二次電池の電極組立体の一例として、セパレータを介して対向する電極対(負極及び正極)を有するセルが複数積層された積層タイプの電極組立体、セパレータを介して対向する電極対を有するシート状のセルが渦巻状に加工された捲回型の電極組立体が挙げられる。また、本明細書で開示する蓄電装置は、例えば車両に搭載され、モータに電力を供給することができる。以下、蓄電装置の構造について説明する。なお、以下の説明では、電流遮断装置が負極端子と負極に接続されている蓄電装置について説明する。本明細書で開示する技術は、電流遮断装置が正極端子と正極に接続されている蓄電装置に適用することもできる。
【実施例】
【0023】
図1を参照し、蓄電装置100の構造を説明する。蓄電装置100は、ケース18と、電極組立体52と、正極端子2と、負極端子30と、電流遮断装置50を備えている。ケース18は、金属製であり、略直方体形状である。ケース18は、蓋部18aと本体部18bを備えている。ケース18の内部には、電極組立体52と電流遮断装置50が収容されている。電極組立体52は、正極と負極を備えている(図示省略)。正極タブ16が正極に固定されており、負極タブ20が負極に固定されている。ケース18の内部には、電解液が収容されている。
【0024】
正極端子2と負極端子30が、ケース18の内外を通じている。正極端子2と負極端子30は、ケース18の一方向に配置されている。すなわち、正極端子2と負極端子30の双方が、電極組立体52に対して同じ方向(蓋部18aが設けられている側)に配置されている。正極端子2は、ボルト部8を備えている。ボルト部8とは、正極端子2のうち、ナット10を締結するためにねじ切りされている部分のことである。正極端子2は、ボルト部8にナット10を係合することにより、ケース18に固定されている。正極端子2の一端はケース18の外部に位置しており、他端はケース18の内部に位置している。同様に、負極端子30は、ボルト部36を備えている。ボルト部36とは、負極端子30のうち、ナット38を締結するためにねじ切りされている部分のことである。負極端子30は、ボルト部36にナット38を係合することにより、ケース18に固定されている。負極端子30の一端はケース18の外部に位置しており、他端はケース18の内部に位置している。
【0025】
正極端子2に、正極リード14が接続されている。正極リード14は、正極タブ16に接続されている。正極端子2は、正極リード14を介して、正極タブ16に電気的に接続されている。すなわち、正極端子2は、電極組立体52の正極に電気的に接続されている。正極リード14は、絶縁シート12によってケース18から絶縁されている。正極端子2及びナット10は、絶縁部材58によってケース18から絶縁されている。ケース18内において、正極端子2とケース18の間に絶縁性のシール部材56が配置されている。正極端子2とケース18の隙間は、シール部材56によってシールされている。シール部材56は、絶縁性のOリングである。なお、バスバー4が、バスバーボルト6によって、正極端子2に固定されている。
【0026】
電流遮断装置50は、負極端子30に接続されている。電流遮断装置50は、金属製の接続部材26を介して、負極リード24に接続されている。電流遮断装置50の詳細は後述する。負極端子30は、負極リード24を介して、負極タブ20に電気的に接続されている。すなわち、負極端子30は、電極組立体52の負極に電気的に接続されている。負極リード24は、絶縁シート22によってケース18から絶縁されている。負極端子30及びナット38は、絶縁部材28によってケース18から絶縁されている。ケース18内において、負極端子30とケース18の間に絶縁性のシール部材42が配置されている。負極端子30とケース18の隙間は、シール部材42によってシールされている。シール部材42は、絶縁性のOリングである。なお、バスバー32が、バスバーボルト34によって、負極端子30に固定されている。
【0027】
蓄電装置100では、ケース18内の圧力が所定値以下のときは、負極端子30と負極タブ20が、電流遮断装置50を介して電気的に接続している。すなわち、負極端子30と負極の間が導通している。ケース18内の圧力が所定値を超えると、電流遮断装置50が、負極端子30と負極タブ20の導通を遮断し、蓄電装置100に電流が流れることを防止する。
【0028】
図2を参照し、電流遮断装置50について説明する。電流遮断装置50は、負極端子30と、破断板88と、第1変形部材80と、第2変形部材93を備えている。負極端子30,破断板88,第1変形部材80及び第2変形部材93は、金属製である。ケース18内において、負極端子30に固定部37が設けられている。固定部37は、負極端子30の一部である。ケース18をナット38と固定部37で挟むことにより、負極端子30がケース18に固定されている。固定部37(負極端子30)は、第1通電部材の一例である。固定部37の破断板88側に、溝92と窪み86が設けられている。窪み86は、溝92の内側に設けられている。固定部37の破断板88側の端面に、対向面35が設けられている。対向面35は、破断板88に対向しており、中央に向かって窪んでいる。具体的には、対向面35は、固定部37の端部から中央に向かうに従って、破断板88から離れるように傾斜している。なお、対向面35とは、固定部37の破断板88側の端面のうち、第1変形部材80が固定されている部分よりも中央部側の面である。
【0029】
破断板88は、固定部37と間隔をおいて固定部37に対向する位置に配置されている。破断板88は、第2通電部材の一例である。電極組立体52(図1も参照)とケース18の間において、電極組立体52の上方に、第2変形部材93,破断板88,第1変形部材80,固定部37の順に配置されている。破断板88の固定部37側に、溝96が設けられている。溝96は、溝92に対向する位置に形成されている。破断板88には、接続部材26が固定されている。破断板88は、接続部材26,負極リード24を介して、負極タブ20と導通している(図1も参照)。破断板88の中央部88aの厚みは、端部88bの厚みより薄い。
【0030】
破断板88の固定部37側の表面は、溝96が形成されていることを除き、平坦である。具体的には、破断板88の固定部37側の表面のうち、溝96より中央部88aの表面は一平面を形成している。また、破断板88の第2変形部材93側において、中央部88aに破断溝90が設けられている。破断溝90は、中央部88aで連続的に一巡している。
【0031】
第1変形部材80は、固定部37と破断板88の間に配置されている。第1変形部材80は、金属製のダイアフラムである。第1変形部材80の端部80bは、固定部37に固定されている。より具体的には、第1変形部材80の外周縁を固定部37の窪み86の側壁に当接させた状態で、第1変形部材80の端部80bが固定部37に溶接されている。第1変形部材80の中央部80aは、固定部37から離れるように、破断板88に向かって突出している。換言すると、第1変形部材80は、端部80bから中央部80aに向かうに従って、破断板88に近づいている。第1変形部材80の中央部80aは、破断溝90の内側で、破断板88に固定されている。より具体的には、中央部80aは、破断溝90に囲まれた範囲で、破断板88に溶接されている。
【0032】
第2変形部材93は、破断板88に対して、第1変形部材80とは反対側に配置されている。すなわち、破断板88は、第1変形部材80と第2変形部材93の間に配置されている。第2変形部材93の端部93bが、破断板88に固定されている。より具体的には、第2変形部材93の外周縁が破断板88の窪み89の側壁に当接した状態で、第2変形部材93の端部93bが破断板88に溶接されている。
【0033】
第2変形部材93の破断板88側には、絶縁性の突起95が設けられている。突起95は、第2変形部材93の中央部93aに固定されており、破断板88に向かって突出している形状である。突起95は、破断板88の中央部88aに対向している。より具体的には、電流遮断装置50を平面視(ボルト部36が伸びている方向、すなわち、負極端子30の軸方向から観察)したときに、突起95が、破断溝90で囲まれた範囲内に位置している。
【0034】
第2変形部材93は、中央部93aと端部93bの間に中間部93cを有する。中間部93cは、破断板88側、及びその反対側に交互に湾曲した蛇腹状である。中間部93cは、中央部93aと同様に、平面87より破断板88側に位置している。そのため、第2変形部材93のうち、端部93bが最も電極組立体52に位置している。すなわち、第2変形部材93の中央部93aと電極組立体52距離、及び、第2変形部材93の中間部93cと電極組立体52距離は、第2変形部材93の端部93bと電極組立体52との距離以上である。上記したように、第2変形部材93の端部93bは、窪み89内に位置している。そのため、負極端子30の軸方向において、電流遮断装置50の長さは、第2変形部材93を有していない電流遮断装置の長さと等しい。換言すると、電流遮断装置50と電極組立体52との隙間は、第2変形部材93を有していない電流遮断装置と電極組立体52との隙間と等しい(図1も参照)。
【0035】
電流遮断装置50の他の構造について説明する。絶縁部材94が、固定部37と破断板88の間に配置されている。絶縁部材94は、固定部37と破断板88の間隔を維持している。絶縁部材94は、固定部37と破断板88が直接接することを防止している。すなわち、絶縁部材94は、固定部37と破断板88が直接導通することを防止している。絶縁部材94の一部が、溝92,96内に位置している。また、絶縁部材94の外側に、シール部材84が配置されている。シール部材84は、絶縁性のOリングである。シール部材84は、固定部37と破断板88を絶縁するとともに、電流遮断装置50の内部を気密に保っている。すなわち、シール部材84によって、電流遮断装置50の内部の空間が、電流遮断装置50の外部の空間(ケース18内の空間)から遮断されている。なお、シール部材84は、絶縁部材94によって、第1変形部材80側に移動することが規制されている。
【0036】
固定部37と破断板88は、支持部材78によって固定されている。換言すると、支持部材78が、負極端子30の固定部37と破断板88を固定している。支持部材78は、金属製の外側部72と、絶縁性の第1内側部74と、絶縁性の第2内側部75を備えている。第1内側部74は、外側部72の内側に配置されており、第2内側部75の上方(ケース18側)に配置されている。第2内側部75は、外側部72の内側に配置されており、第1内側部74の下方(電極組立体52側)に配置されている。外側部72によって、固定部37と破断板88が位置決めされている。具体的には、第1内側部74と第2内側部75を所定の位置に配置した後、外側部72をかしめることによって、破断板88を固定部37に固定している。なお、内側部74,75は、固定部37と破断板88を絶縁している。
【0037】
蓄電装置100では、電流遮断装置50を構成する部品のうち、第2変形部材93の中央部93a以外の部品(支持部材78)が、電極組立体52に最も近い位置に配置されている(図1も参照)。中央部93aは、支持部材78の破断板88側の端部を含むとともに破断板88の中央部88aに平行な平面85より破断板88側に位置している。さらに、中央部93aは、端部93bを含むとともに破断板88の中央部88aに平行な平面87より破断板88側に位置している。なお、平面85は第1平面の一例であり、平面87は第2平面の一例である。また、平面85、87は仮想面である。
【0038】
ケース18の内圧が所定値以下のときは、負極端子30は、第1変形部材80,破断板88,接続部材26,負極リード24,負極タブ20を介して、負極と導通している。図2に示しているように、ケース18の内圧が所定値以下のときは、突起95と破断板88の間には隙間が設けられている。
【0039】
例えば、蓄電装置100が過充電状態になると、ケース18の内圧が上昇し、所定値を超える。ケース18の内圧が所定値を超えると、電流遮断装置50の内部と外部に圧力差が生じる。その結果、第2変形部材93にケース18内(電流遮断装置50の外部)の圧力が加わり、図3に示しているように、中央部93aが破断板88の中央部88aに向けて移動する。具体的には、蛇腹状の中間部93cが伸び、中央部93aが、破断板88に向かうように変形する。その結果、突起95が破断板88に接触し、破断板88が破断溝90を起点として破断する。突起95の一部は、破断板88の第1変形部材80側にまで達する。なお、中央部88aが破断板88に向けて移動する際に、中間部93cは塑性変形しながら伸びる。
【0040】
破断板88が破断し、突起95の一部が破断板88の第1変形部材80側にまで達すると、突起95が第1変形部材80を固定部37側に移動させる。第1変形部材80が破断板88から分離し、第1変形部材80と破断板88が非導通となる。このときに、第1変形部材80は、破断板88側に凸な状態から固定部37側に凸な状態に反転する。第1変形部材80と破断板88が非導通になると、負極端子30と負極が非導通になり、蓄電装置100に電流が流れることを防止することができる。
【0041】
なお、上記したように、固定部37の対向面35が窪んでいるので、中央部80aが固定部37側に凸な状態になることが妨げられることはない。また、上記したように、第2変形部材93の中央部93aが破断板88に向けて移動するときに、中間部93cは塑性変形する。そのため、中央部93aが破断板88に向けて移動した後に、再び中央部93aが元の位置に戻ることを防止することができる。すなわち、突起95の一部が破断板88の第1変形部材80側に留まり続けるので、第1変形部材80と破断板88が再度接触することを防止することができる。
【0042】
蓄電装置100の利点を説明する。上記したように、第2変形部材93の中央部93aは、電流遮断装置50を構成する部品のうちで、電極組立体52の最も近くに位置していない。そのため、蓄電装置100は、第2変形部材の中央部が電極組立体52側に突出している形態の蓄電装置(典型的に、第2変形部材の中央部が、電流遮断装置を構成する部品のうちで、電極組立体の最も近くに位置している)と比較して、電流遮断装置50と電極組立体52の隙間を確保しやすい。換言すると、蓄電装置100は、第2変形部材93を配置するための隙間を、電極組立体52の上部(電流遮断装置50と電極組立体52の間)に確保する必要がない。そのため、蓄電装置100は、従来の蓄電装置より小型にすることができる。あるいは、蓄電装置100は、従来の蓄電装置より電極組立体のサイズを大きくし、蓄電容量を増加させることができる。
【0043】
なお、上記実施例では、電流遮断装置が接続部材を介して負極リードに接続されている形態について説明した。しかしながら、接続部材と負極リードは一体の部品であってもよい。すなわち、電流遮断装置が、負極タブに接続されている部材(負極リード)に直接接続されていてもよい。また、電流遮断装置が正極端子と正極の間に配置されている場合、電流遮断装置が、正極タブに接続されている部材(正極リード)に直接接続されていてもよい。
【0044】
上記実施例では、第2変形部材の中央部と中間部の双方が端部より破断板側(電極組立体とは反対側)に位置している形態について説明した。しかしながら、第2変形部材の中央部が破断板側に位置していればよく、中間部の一部又は全部が端部より電極組立体側に位置していてもよい。このような形態であっても、電流遮断装置と電極組立体の隙間を確保することができる。また、第2変形部材の中央部は、端部より電極組立体側に位置しており、第2変形部材以外の部品より破断板側に位置していてもよい。すなわち、第2変形部材の中央部は、第1平面と第2平面の間に位置していてよい。
【0045】
上記した蓄電装置は、第2変形部材の中央部が、電極組立体に最も近い位置に配置されていなければよい。そのため、電流遮断装置の構造、及び、蓄電装置を構成する部品,材質は様々なものを使用することができる。以下に、蓄電装置の一例であるリチウムイオン二次電池について、蓄電装置を構成する部品,材質を例示する。
【0046】
電極組立体について説明する。電極組立体は、正極と、負極と、正極と負極の間の位置に介在しているセパレータを備えている。正極は、正極用金属箔と、正極用金属箔上に形成されている正極活物質層を有する。正極タブは、正極活物質層が塗布されていない正極用金属箔に相当する。負極は、負極用金属箔と、負極用金属箔上に形成されている負極活物質層を有する。負極タブは、負極活物質層が塗布されていない負極用金属箔に相当する。なお、活物質層に含まれる材料(活物質、バインダ、導電助剤等)には特に制限がなく、公知の蓄電装置等の電極に用いられる材料を用いることができる。
【0047】
正極用金属箔として、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ステンレス鋼又はそれらの複合材料を用いることができる。特に、アルミニウム又はアルミニウムを含む複合材料であることが好ましい。また、正極リードの材質として、正極用金属箔と同様の材質を用いることができる。
【0048】
正極活物質は、リチウムイオンが侵入及び脱離可能な材料であればよく、LiMnO、Li(NiCoMn)0.33、Li(NiMn)0.5、LiMn、LiMnO、LiNiO、LiCoO、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiMnO、LiMn等を使用することができる。また、正極活物質としてリチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、あるいは、硫黄などを用いることもできる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。正極活物質は、必要に応じて導電材,結着剤等とともに正極用金属箔に塗布される。
【0049】
負極用金属箔として、アルミニウム、ニッケル、銅(Cu)等、又はそれらの複合材料等を使用することができる。特に、銅又は銅を含む複合材料であることが好ましい。また、負極リードの材質として、負極用金属箔と同様の材質を用いることができる。
【0050】
負極活物質として、リチウムイオンが侵入及び脱離可能な材料を用いる。リチウム(Li)、ナトリウム(Na)等のアルカリ金属、アルカリ金属を含む遷移金属酸化物、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、高配向性グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料、シリコン単体又はシリコン含有合金又はシリコン含有酸化物を使用することができる。なお、負極活物質は、電池容量を向上させるため、リチウム(Li)を含まない材料であることが特に好ましい。負極活物質は、必要に応じて導電材,結着剤等とともに負極用金属箔に塗布される。
【0051】
セパレータは、絶縁性を有する多孔質を用いる。セパレータとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、あるいは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布または不織布を使用することができる。
【0052】
電解液は、非水系の溶媒に支持塩(電解質)を溶解させた非水電解液であることが好ましい。非水系の溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状エステルを含んでいる溶媒、酢酸エチル、プロピロン酸メチルなどの溶媒、又はこれらの混合液を使用することができる。また、支持塩(電解質)として、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF等を使用することができる。
【0053】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0054】
18:ケース
30:負極端子
37:第1通電部材
50:電流遮断装置
80:第1変形部材
88:第2通電部材
93:第2変形部材
93a:第2変形部材の中央部
93b:第2変形部材の端部
93c:第2変形部材の中間部
95:突起
100:蓄電装置
図1
図2
図3