(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シールケースが、回転機器のハウジングに取り付けられて第一静止密封環を固定する第一フランジと、第二静止密封環を固定する第二フランジと、両フランジ間を連結する連結部材とを具備するものであり、連結部材を、両メカニカルシール間におけるシールケース内の領域を大気に開放する開口部を有するものに構成してあることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載する軸封装置。
シールケースが、回転機器のハウジングに取り付けられて第一静止密封環を固定する第一フランジと、第二静止密封環を固定する第二フランジと、両フランジ間を連結する連結部材とを具備するものであり、連結部材を両フランジ間を閉塞する筒状のものに構成すると共に連結部材にシールガス排出管を設けて、両メカニカルシール間におけるシールケース内の領域を大気圧又は略大気圧に保持するように構成したことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載する軸封装置。
スプリングリテーナに軸線方向に延びる長孔を形成すると共に、この長孔に挿通させたスライドピンを回転軸に固定することにより、スプリングリテーナが回転軸に対する相対回転を阻止された状態で回転軸に軸線方向に相対移動自在に挿通されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載する軸封装置。
第一メカニカルシールにおいて、第一回転密封環を軸線方向に所定間隔を隔てて並列する一対のOリングを介してスプリングリテーナに軸線方向に相対移動可能に嵌合保持させて、第一回転密封環とスプリングリテーナとの対向周面間に前記両Oリングでシールされた第一環状空間を形成すると共に、第一回転密封環に第一密封端面間と第一環状空間とを連通する第一シールガス導入路を形成したことを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載する軸封装置。
第二メカニカルシールにおいて、第二回転密封環を軸線方向に所定間隔を隔てて並列する一対のOリングを介してスプリングリテーナに軸線方向に相対移動可能に嵌合保持させて、第二回転密封環とスプリングリテーナとの対向周面間に前記両Oリングでシールされた第二環状空間を形成すると共に、第二回転密封環に第二密封端面間と第二環状空間とを連通する第二シールガス導入路を形成したことを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載する軸封装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような軸封装置にあっては、回転軸が熱膨張したり或いは回転軸の軸受が長期使用のうちに摩耗損傷すること等によって、回転軸における一定位置(以下「回転軸基準位置」という)が適正なメカニカルシール組み立て状態における位置(以下「適正回転軸基準位置」という)から軸線方向に変位すると、これに伴って回転軸に設けられた回転密封環の位置が軸線方向に変位して密封環相対位置が適正密封環相対位置から変化する。また、メカニカルシールの組立ないし再組立において、回転密封環の回転軸への取付位置の精度不良により当該取付位置が適正なメカニカルシール組立状態における回転密封環取付位置から偏倚している場合や回転軸の軸受位置の精度不良により回転軸基準位置が適正回転軸基準位置から偏倚している場合にも、密封環相対位置が適正密封環相対位置から変位する。
【0006】
而して、このように密封環相対位置が適正密封環相対位置と異なる状態となると、スプリングによる押圧附勢力が必要以上に高くなったり或いは低くなったりして、良好なメカニカルシール機能を発揮できなくなる。
【0007】
すなわち、静圧形の非接触形メカニカルシールにあって、回転軸基準位置が回転密封環を静止密封環に近づく方向に移動させる方向に変位したり或いは回転密封環の回転軸への設置位置(回転密封環の回転軸への取付位置ないしスプリングリテーナの回転軸への取付位置)が適正密封環相対位置より静止密封環に近づく方向に変位していると、スプリングが適正密封環相対位置の場合より圧縮されて当該スプリングによる閉力が開力より大きくなって、開力と閉力とのバランスが崩れ、その結果、密封端面が相手密封端面と接触して摩耗損傷する等、メカニカルシール機能が低下或いは喪失する虞れがある。また、逆に、回転軸基準位置が回転密封環を静止密封環から離れる方向に移動させる方向に変位したり或いは回転密封環の回転軸への設置位置が適正密封環相対位置より静止密封環から遠ざかる方向に変位していると、スプリングが適正密封環相対位置の場合より伸張されてスプリングによる閉力が開力より小さくなって、密封端面間が必要以上に開き、その結果、適正なメカニカルシール機能が発揮されず、密封端面間から被密封流体が漏洩する虞れがある。
【0008】
本発明は、このように回転軸が熱膨張する等により回転軸基準位置が適正回転軸基準位置から変位したり或いはメカニカルシールの組立精度不良により回転密封環の回転軸への設置位置が不適正となった場合にも、静圧形の非接触形メカニカルシールにおける静止密封環と回転密封環との軸線方向相対位置(密封環相対位置)を適正密封環相対位置に自動的に修正、保持させておくことができ、当該メカニカルシールによるシール機能を良好に発揮させることができる軸封装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、回転機器の機内領域を静圧形の非接触形メカニカルシールによりシールするように構成された軸封装置において、上記の目的を達成すべく、特に、当該非接触形メカニカルシールである第一メカニカルシールに加えて、その機外領域側に静圧形の非接触形メカニカルシールである第二メカニカルシールを配置してあり、第一メカニカルシールが第一静止密封環及び第一回転密封環を具備しており、第二メカニカルシールが第二静止密封環及び第二回転密封環を具備しており、回転機器に取り付けられたシールケースに、第一及び第二静止密封環が軸線方向に所定間隔を隔てて固定保持されており、当該回転機器の回転軸に、両静止密封環間に配した筒状スプリングリテーナが、回転軸に対する相対回転を阻止された状態で回転軸に軸線方向に相対移動自在に挿通されており、スプリングリテーナにおける機内領域側の端部に、第一回転密封環が、回転軸との間を第一Oリングにより二次シールされ且つ回転軸に対して軸線方向に相対移動可能な状態で、軸線方向に相対移動可能に且つ相対回転不能に保持されており、スプリングリテーナにおける機外領域側の端部に、第二回転密封環が、回転軸との間を第二Oリングにより二次シールされ且つ回転軸に対して軸線方向に相対移動可能な状態で、軸線方向に相対移動可能に且つ相対回転不能に保持されており、スプリングリテーナと第一回転密封環との間に、第一回転密封環を第一静止密封環へと押圧附勢する第一スプリングが装填されており、スプリングリテーナと第二回転密封環との間に、第二回転密封環を第二静止密封環へと押圧附勢する第二スプリングが装填されており、両メカニカルシール間におけるシールケース内の領域が、大気圧又は略大気圧に保持されており、シールケース及び第一静止密封環に、第一静止密封環と第一回転密封環との対向端面たる第一密封端面間に機内領域及び前記シールケース内の領域より高圧の第一シールガスを供給する第一シールガス供給路が形成されており、シールケース及び第二静止密封環に、第二静止密封環と第二回転密封環との対向端面たる第二密封端面間に機外領域及び前記シールケース内の領域より高圧の第二シールガスを供給する第二シールガス供給路が形成されており、第二密封端面間をこれに供給された第二シールガスにより非接触状態に保持した状態で、第一メカニカルシールにより第一密封端面間をこれに供給された第一シールガスにより非接触状態に保持しつつ第一密封端面の内周側領域である機内領域をシールするように構成しておくことを提案するものである。
【0010】
かかる軸封装置の好ましい実施の形態においては、第一メカニカルシールと第二メカニカルシールとが、軸線方向の向きを逆に配置した同一構造をなしている。また、シールケースは、回転機器のハウジングに取り付けられて第一静止密封環を固定する第一フランジと、第二静止密封環を固定する第二フランジと、両フランジ間を連結する連結部材とを具備するものに構成される。シールケースをかかる構成となす場合にあっては、連結部材を、両メカニカルシール間におけるシールケース内の領域を大気に開放する開口部を有するものに構成しておくか、或いは、連結部材を両フランジ間を閉塞する筒状のものに構成すると共に連結部材にシールガス排出管を設けて、両メカニカルシール間におけるシールケース内の領域を大気圧又は略大気圧に保持させておく。また、スプリングリテーナは、これに軸線方向に延びる長孔を形成すると共にこの長孔に挿通させたスライドピンを回転軸に固定することにより、回転軸に対する相対回転を阻止された状態で回転軸に軸線方向に相対移動自在に挿通されていることが好ましい。また、第一メカニカルシールにおいて、第一回転密封環を軸線方向に所定間隔を隔てて並列する一対のOリングを介してスプリングリテーナに軸線方向に相対移動可能に嵌合保持させて、第一回転密封環とスプリングリテーナとの対向周面間に前記両Oリングでシールされた第一環状空間を形成すると共に、第一回転密封環に第一密封端面間と第一環状空間とを連通する第一シールガス導入路を形成しておくことが好ましい。さらに、第二メカニカルシールにおいても、第二回転密封環を軸線方向に所定間隔を隔てて並列する一対のOリングを介してスプリングリテーナに軸線方向に相対移動可能に嵌合保持させて、第二回転密封環とスプリングリテーナとの対向周面間に前記両Oリングでシールされた第二環状空間を形成すると共に、第二回転密封環に第二密封端面間と第二環状空間とを連通する第二シールガス導入路を形成しておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の軸封装置にあっては、両メカニカルシールの回転密封環を回転軸に相対回転不能に且つ軸線方向相対移動自在に挿通させた一つのスプリングリテーナに保持させ、両回転密封環を両静止密封環間に配してスプリングリテーナとの間に装填したスプリングにより当該静止密封環へと押圧附勢させるようにすると共に第一密封端面間及び第二密封端面間にスプリングによる閉力とバランスさせる開力を発生させるべくシールガスを供給させるようにしたから、回転軸が熱膨張等により軸線方向に変形ないし変形したり或いはメカニカルシールの組立ないし再組立の精度が不良である等により密封環相対位置が適正密封環相対位置から偏倚している場合にも、第一メカニカルシールにおける密封環相対位置がスプリングリテーナの回転軸に対する軸線方向相対移動により自動的に修正されて適正密封環相対位置に保持されることになり、第一メカニカルシールによるシール機能が適正に発揮される。
【0012】
したがって、本願発明の軸封装置は、機内領域をシールする第一メカニカルシールが第一密封端面間を機内領域及びメカニカルシール間におけるシールケース内の領域より高圧の第一シールガスを供給することにより非接触状態に保持する静圧形の非接触形メカニカルシールに構成されていて、第一シールガスを第一密封端面間から機内領域に噴出するものであることから、機内領域をコンタミネーションを生じることなく確実にシールすることができ、高度のコンタミレスを必要とする回転機器や機内領域からの漏れを許容しない回転機器等の軸封手段として好適に使用することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を
図1〜
図4に基づいて具体的に説明する。
【0015】
図1は本発明に係る軸封装置の一例を示す断面図であり、
図2は当該軸封装置の
図1と異なる断面を示す
図1対応の断面図であり、
図3は
図1の要部を拡大して示す詳細図であり、
図4は
図3のIV−IV線に沿う断面図である。なお、以下の説明において、前後とは
図1〜
図3における左右をいうものとする。
【0016】
本発明に係る軸封装置は、
図1及び
図2に示す如く、横型の回転機器に装備されたもので、当該回転機器のハウジング1に取り付けられたシールケース2とこれを軸線方向に洞貫する水平軸である当該回転機器の回転軸3との間に軸線方向(前後方向)に並列する機内領域側の第一メカニカルシール4と機外領域側の第二メカニカルシール5とを配設して、機内領域Aと大気領域である機外領域Bとをシールするように構成されている。
【0017】
シールケース2は、
図1及び
図2に示す如く、回転機器のハウジング1の前端部に取り付けられた円環状の第一フランジ2aと、第一フランジ2aに取り付けられて機外領域B方向(前方)に延びる円筒状の連結部材2bと、連結部材2bの後端部に取り付けられた円環状の第二フランジ2c,2dとからなる金属製の分割円筒構造をなすものである。第二フランジは、第一フランジ2aと前後対称形状をなすフランジ本体2cとその前端面に取り付けられた押さえ板2dとからなる。連結部材2bには、シールケース2内を大気に開放する開口部2eが設けられている。
【0018】
第一メカニカルシール4は、
図1に示す如く、第一フランジ2aに固定された第一静止密封環6と、回転軸3に挿通された円筒状のスプリングリテーナ7と、第一静止密封環6に対向してスプリングリテーナ7の一端部たる後端部(機内領域A側の端部)に軸線方向に相対移動可能に保持された第一回転密封環8と、第一回転密封環8を第一静止密封環6へと押圧附勢する第一スプリング9と、両密封環6,8の対向端面である第一密封端面6a,8a間に第一シールガスS1を供給する第一シールガス供給路10と、第一回転密封環8の自励振動を防止する第一振動防止機構11とを具備して、第一密封端面6a,8aの内周側領域である機内領域Aをシールするように構成された静圧形の非接触形メカニカルシールである。
【0019】
第二メカニカルシール5は、
図1に示す如く、第二フランジ2c,2dに固定された第二静止密封環16と、前記スプリングリテーナ7と、第二静止密封環16に対向してスプリングリテーナ7の他端部たる前端部(機外領域B側の端部)に軸線方向に相対移動可能に保持された第二回転密封環18と、第二回転密封環18を第二静止密封環16へと押圧附勢する第二スプリング19と、両密封環16,18の対向端面である第二密封端面16a,18a間に第二シールガスS2を供給する第二シールガス供給路20と、第二回転密封環18の自励振動を防止する第二振動防止機構21とを具備するもので、第一メカニカルシール4と同様構造の静圧形の非接触形メカニカルシールである。
【0020】
而して、第一メカニカルシール4と第二メカニカルシール5とは、
図1及び
図2に示す如く、軸線方向の向きを逆に配置された点を除いて同一構造をなすもの、つまり前後対称構造をなすものに構成されている。
【0021】
すなわち、第一及び第二静止密封環6,16は、
図1〜
図3に示す如く、夫々、第一フランジ2aの内周部及び第二フランジのフランジ本体2cの内周部に前後一対のOリング22,22及び23,23を介して内嵌固定することにより、シールケース2に軸線方向に所定間隔を隔てて固定保持されている。両静止密封環6,16は軸線方向の向きを逆にして配置される点を除いて同一形状をなすもの、つまり前後対称形状をなすものである。両静止密封環6,16の対向端面は、軸線に直交する平滑な環状平面である密封端面6a,16aに構成されている。なお、この例では、両静止密封環6,16がカーボン製のものとされている。
【0022】
スプリングリテーナ7は、
図1及び
図2に示す如く、両静止密封環6,16間に配置されており、回転軸3に対する相対回転を阻止された状態で回転軸3に軸線方向に相対移動自在に挿通された金属製の円筒体である。
【0023】
すなわち、スプリングリテーナ7は、
図1及び
図2に示す如く、円筒状の本体部7aと、本体部7aの一端部である後端部に構成された第一リテーナ部7b,7cと、本体部7aの他端部である前端部に構成された第二リテーナ部7d,7eとからなる一体構造物である。第一及び第二リテーナ部は前後対称形状をなすもので、夫々、本体部7aの端部内周縁から軸線方向に突出する円筒状の挿通部7b,7dと本体部7aの端部外周縁から軸線方向に突出する円筒状の保持部7c,7eとで構成された二重円筒構造をなしている。スプリングリテーナ7は、挿通部7b,7dの内径を本体部7aの内径より小さく且つ回転軸3の外径より若干大きく設定して、回転軸3に微小隙間を有した状態で軸線方向相対移動自在に挿通されている。なお、保持部7c,7eの軸線方向長さは挿通部7b,7dの軸線方向長さより長く設定されており、保持部7c,7eの外径は本体部7aの外径と同一に設定されている。
【0024】
スプリングリテーナ7の本体部7aには、
図1及び
図2に示す如く、径方向に貫通し且つ軸線方向に延びる長孔7fが形成されていて、この長孔7fに回転軸3に突設したスライドピン24を係合させることにより、スプリングリテーナ7を、スライドピン24が長孔7fの一端部たる後端部に係合する第一スライド位置(
図1及び
図2に示す一点鎖線位置)と長孔7fの他端部たる前端部に係合する第二スライド位置(
図1及び
図2に示す二点鎖線位置)とに亘って、回転軸3に対して相対回転を阻止された状態で軸線方向に相対移動できるように構成されている。スライドピン24は、
図2に示す如く、回転軸3にその軸線に直交した状態で固着されたボルト24aと、このボルト24aに回転自在に嵌合された円筒状のスライドカラー24bとで構成されており、スライドカラー24bを長孔7fに係合させている。
【0025】
スライドピン24は、両メカニカルシール4,5が適正に組立てられた状態において両静止密封環6,16間に位置するように回転軸3に設けられている。この例では、回転軸3におけるスライドピン24の位置を回転軸基準位置に設定しており、両メカニカルシール4,5が適正に組立てられた状態におけるスライドピン24の位置を適正回転軸基準位置としている。すなわち、両メカニカルシール4,5が適正に組み立てられている状態においては、
図1及び
図2に実線図示する如く、回転軸3がスライドピン24の位置(回転軸基準位置)が適正回転軸基準位置に位置する状態にあり、スプリングリテーナ7が当該両静止密封環6,16間の軸線方向中央位置(以下「適正スプリングリテーナ位置」という)に位置する状態という)にあり、静止密封環6,16と回転密封環8,18との軸線方向相対位置(密封環相対位置)がスプリング9,19が適正な押圧附勢力を発揮する適正密封環相対位置にある。なお、長孔7fの軸線方向長さは、当該軸封装置において想定される回転軸3の軸線方向における変形量ないし変位量や適正密封環相対位置にある回転密封環8,18の回転軸基準位置から当該回転密封環8,18の設置位置までの軸線方向距離が組立精度不良により変化する場合における当該変化量を考慮して適宜に設定される。例えば、長孔7fの軸線方向長さは、スプリングリテーナ7が適正スプリングリテーナ位置に保持されているときにおいて、回転軸基準位置が適正回転軸基準位置から第一静止密封環6方向に移動するように回転軸3が軸線方向に変形ないし変位した場合及び回転軸基準位置が適正回転軸基準位置から第二静止密封環16方向に移動するように回転軸3が軸線方向に変形ないし変位した場合、その変形量ないし変位量が想定される最大量となるときにおいてもスライドピン24が前記第一スライド位置と第二スライド位置との間で軸線方向に相対移動できるように設定されている。
【0026】
第一及び第二回転密封環8,18は、
図1〜
図3に示す如く、夫々、内径を回転軸3の外径より若干大きくすると共に外径をスプリングリテーナ7の保持部7c,7eの内径より若干小さくした本体部8b,18bと内径をスプリングリテーナ7の挿通部7b,7dより若干大きくすると共に外径を本体部8b,18bの外径と同一として本体部8b,18bから突出する二次シール部8c,18cとからなる円環状の一体構造物である密封環本体と、これとは別体に構成された円環状体であって、ドライブピン8d,18d(
図2参照)により二次シール部8c,18cに相対回転不能に衝合されたドライブカラー8e,18eとからなり、二次シール部8c,18c(及びドライブカラー8e,18e)を挿通部7b,7dと保持部7c,7eとの間に挿入させると共に本体部8b,18b及び二次シール部8c,18cをこれらの外周部に係合させた前後一対のOリング25,25及び26,26を介して保持部7c,7eに内嵌させることにより、スプリングリテーナ7に軸線方向移動可能に保持されている。また、各回転密封環8,18は、
図1に示す如く、ドライブカラー8e,18eに突設した回り止めピン27,28をスプリングリテーナ7の本体部7aに形成した軸線方向の係合孔7g,7hに係合させることにより、スプリングリテーナ7に対する相対回転が軸線方向移動を許容しつつ阻止されるようになっている。なお、スプリングリテーナ7の本体部7aには、
図1に示す如く、係合孔7g,7hに連通する径方向の貫通孔7i,7jが形成されていて、この貫通孔7i,7jに回り止めピン27,28の先端部分が係合孔7g,7hから突出している。
【0027】
第一及び第二回転密封環8,18は、
図1及び
図2に示す如く、夫々、当該回転密封環8,18の本体部8b,18bとスプリングリテーナ7の挿通部7b,7dとの間に配して二次シール部8c,18cと回転軸3との対向周面間に第一及び第二Oリング29,30を装填することにより、回転軸3との間を二次シールされた状態で回転軸3に対して軸線方向に相対移動可能とされている。
【0028】
両回転密封環8,18は、
図1及び
図2に示す如く、夫々、本体部8b,18bの端面を軸線方向に直交する平滑な環状平面である密封端面8a,18aに構成したもので、軸線方向の向きを逆にして配置される点を除いて同一形状をなす(前後対称形状をなす)ものであり、両静止密封環6,16間に配置されている。なお、この例では、両回転密封環8,18を炭化珪素等のセラミックス製のものとしている。
【0029】
第一及び第二スプリング9,19は、
図1に示す如く、夫々、回転密封環8,18のドライブカラー8e,18eとスプリングリテーナ7の本体部7aとの間に周方向に等間隔を隔てて介装された複数個のコイルスプリング(一個のみ図示)で構成されていて、回転密封環8,18を静止密封環6,16へと押圧附勢するものであり、第一密封端面6a,8a及び第二密封端面16a,18aを閉じる方向に作用する閉力を発生させるものである。両スプリング9,19は同一の附勢力を有するもので、第一密封端面6a,8aに作用する第一スプリング9による閉力と第二密封端面16a,18aに作用する第二スプリング19による閉力とは同一となる。スプリング9,19の附勢力(閉力)は、後述する密封端面6a,8a及び16a,18a間に作用するシールガスS1,S2による開力とバランスされて、密封端面6a,8a及び16a,18a間の隙間が適正(一般に5〜15μm)に保持されるように設定されている。
【0030】
第一及び第二シールガス供給路10,20は、
図1に示す如く、夫々、シールケース2のフランジ2a,2c及びこれに保持された静止密封環6,16に形成された一連のものであり、フランジ2a,2cと静止密封環6,16との対向周面間に形成された連通空間10a,20aと、フランジ2a,2cを貫通して連通空間10a,20aに連通するケース側通路10b,20bと、静止密封環6,16の密封端面6a,16aに形成された静圧発生溝10c,20cと、静止密封環6,16を貫通して連通空間10a,20aから静圧発生溝10c,20cに至る密封環側通路10d,20dと、密封環側通路10d,20dに配設されたオリフィス10e,20eとからなり、機内領域A及び両メカニカルシール4,5間におけるシールケース2内の領域(以下「シールケース内領域」という)Cより高圧の第一シールガスS1及び機外領域B及びシールケース内領域Cより高圧の第二シールガスS2を静圧発生溝10c,20cに供給させることにより、第一密封端面6a,8a及び第二密封端面16a,18a間にこれを開く方向に作用する静圧(開力)を発生させるものである。この例では、静圧発生溝10c,20cに供給させるシールガスS1,S2を同圧(機内領域A、機外領域B及びシールケース内領域Cより高圧)としてある。
【0031】
各連通空間10a,20aは、
図1に示す如く、シールケース2のフランジ2a,2cの内周面と静止密封環6,16の外周面との間に形成された環状空間であって、当該周面間に装填されたOリング22,22及び23,23によってシールされている。
【0032】
各ケース側通路10b,20bは、その上流端部を所定のシールガス供給源(図示せず)に接続したもので、シールガスS1,S2を連通空間10a,20aに供給する。この例では、両ケース側通路10b,20bを同一のシールガス供給源に接続して、第一シールガス供給路10から供給される第一シールガスS1と第二シールガス供給路20から供給される第二シールガスS2とを同一圧力の同一性状ガスとしてある。シールガスS1,S2としては、機外領域Bである大気中に放出しても無害であり且つ機内領域Aの流体に悪影響を及ぼさない性状のもの(窒素、空気等)を、シール条件に応じて適宜に選定する。この例では、各種物質に対して不活性であり且つ人体に無害である清浄な常温の窒素ガスが使用されている。また、シールガス供給源からケース側通路10b,20bに供給されるシールガスS1,S2の圧力は、一般に、静圧発生溝10c,20c内の圧力(ポケット圧)が機内領域A、機外領域(大気領域)B及びシールケース内領域Cの圧力より0.5〜1.5bar高くなるように設定されている。
【0033】
各静圧発生溝10c,20cは、
図1〜
図4に示す如く、静止密封環6,16の密封端面6a,16aの径方向における中央部又は略中央部に形成されており、当該密封端面6a,16aと同心状の環状をなして連続又は断続する断面三角形状の浅い凹溝であり、この例では後者を採用している。すなわち、第一静止密封環6の密封端面6aに形成される静圧発生溝10cは、
図4に示す如く、当該密封端面6aと同心環状をなして並列する複数の円弧状凹溝で構成されており、第二静止密封環16の密封端面16aに形成される静圧発生溝20cも、当該静圧発生溝10cと同一形状の円弧状凹溝(当該密封端面16aと同心環状をなして並列する複数の円弧状凹溝)で構成されている。
【0034】
各密封環側通路10d,20dは、
図2に示す如く、その上流端部を静止密封環6,16の外周面において連通空間10a,20aに開口させたもので、その下流側部分は分岐されていて、各分岐部分が静圧発生溝10c,20cの各円弧状凹溝に連通接続されている。
【0035】
各オリフィス10e,20eは密封環側通路10d,20dの上流側部分つまり分岐されていない部分の適所に配設されている。したがって、ケース側通路10b,20bから連通空間10a,20aに供給されたシールガスS1,S2は密封環側通路10d,20dからオリフィス10e,20eを経た上、当該密封環側通路10d,20dの各分岐部分から静圧発生溝10c,20cの各円弧状凹溝に供給される。
【0036】
以上のように構成された軸封装置によれば、第一及び第二スプリング9,19により第一密封端面6a,8a及び第二密封端面16a,18aにこれらを閉じる方向に作用する閉力が発生すると共に、第一密封端面6a,8a及び第二密封端面16a,18a間に供給された第一及び第二シールガスS1,S2により当該密封端面6a,8a及び16a,18a間にこれらを開く方向に作用する開力が発生し、スプリング9,19の附勢力及びシールガスS1,S2の圧力をこれらの閉力と開力とがバランスするように設定しておくことにより、第一密封端面6a,8a間及び第二密封端面16a,18a間が適正な隙間(一般に5〜15μm)を有する非接触状態に保持される。
すなわち、第一メカニカルシール4にあっては、第一密封端面6a,8a間が非接触状態に保持されると共に、第一密封端面6a,8a間から機内領域A及びシールケース内領域Cに第一シールガスS1が噴出される。したがって、、機内領域Aのガスが機外領域(大気領域)Bより高圧(正圧)である場合及び機外領域Bより低圧(負圧)である場合の何れにおいても、機内領域Aがコンタミネーションを生じることなく確実にシールされる。
また、第二メカニカルシール5は後述する如く機内領域Aをシールするシール手段として機能するものではないが、第一メカニカルシール4と同様に第二密封端面16a,18a間が非接触状態に保持されると共に、第二密封端面16a,18a間から機外領域B及びシールケース内領域Cに第二シールガスS2が噴出される。このように、シールケース内領域Cには、第一及び第二密封端面6a,8a及び16a,18a間からシールガスS1,S2が噴出されるが、この噴出ガスS1,S2はシールケース2に設けられた開口部2eからシールケース2外の機外領域Bに放出される。したがって、シールケース内領域Cは機外領域Bと同一圧の大気圧に保持される。
【0037】
ところで、シールガスS1,S2はオリフィス10e,20eで絞られた上で静圧発生溝10c,20cに導入されることから、密封端面6a,8a及び16a,18a間の隙間が変動した場合にも、その隙間が自動的に調整されて適正に保持される。すなわち、回転機器の振動等により当該隙間が大きくなったときは、静圧発生溝10c,20cから密封端面6a,8a及び16a,18a間に流出するシールガス量とオリフィス10e,20eを通って静圧発生溝10c,20cに供給されるシールガス量とが不均衡となり、静圧発生溝10c,20c内の圧力が低下して、開力が閉力より小さくなるため、密封端面3a,6a間の隙間が小さくなるように変化して、その隙間が適正なものに調整される。逆に、密封端面6a,8a及び16a,18a間の隙間が小さくなったときは、上記したと同様のオリフィス10e,20eによる絞り機能により静圧発生溝10c,20c内の圧力が上昇して、開力が閉力より大きくなり、密封端面6a,8a及び16a,18a間の隙間が大きくなるように変化して、その隙間が適正なものに調整される。
【0038】
而して、当該軸封装置にあっては、回転軸3が熱膨張する等により軸線方向に変形ないし変位して回転軸基準位置が適正回転軸基準位置から変位した場合やメカニカルシール4,5の組立精度不良により回転密封環6,16ないしスプリングリテーナ7の設置位置が適正でない場合(上記オリフィス10e,20eの自動調整によってはカバーできない程度以上の変位ないし精度不良があった場合)にも、第一及び第二メカニカルシール4,5が前後対称構造をなしていて、
(1)シールケース2に固定された第一及び第二静止密封環6,8間に一つのスプリングリテーナ7が配置されていること、
(2)スプリングリテーナ7が長孔7fとスライドピン24とを介して回転軸3に相対回転不能に且つ軸線方向相対移動自在に挿通されていること、
(3)第一及び第二回転密封環8,18が第一及び第二静止密封環6,8間においてスプリングリテーナ7に保持されていて、同一の附勢力で第一及び第二スプリング9,19により当該静止密封環6,16へと押圧附勢されていること、
(4)第一密封端面6a,8a間及び第二密封端面16a,18a間に同一圧力の第一及び第二シールガスS1,S2を供給することにより第一及び第二スプリング9,19による閉力とバランスされる開力が発生すること、
から、回転密封環8,18の静止密封環6,16に対する軸線方向相対位置(密封環相対位置)をスプリング9,19による附勢力が適正となる適正密封環相対位置に自動調整し、当該適正密封環相対位置に保持させておくことができる。
【0039】
例えばメカニカルシール4,5の組立ないし再組立における精度不良により、回転軸基準位置が適正回転軸基準位置から軸線方向に変位した場合や回転密封環8,18の静止密封環6,16に対する軸線方向相対位置である密封環相対位置が適正密封環相対位置から偏倚した場合には、(1)〜(3)のように構成されていることにより、両回転密封環8,18を押圧附勢するスプリング9,19によりスプリングリテーナ7が回転軸3に対して軸線方向に移動されて適正スプリングリテーナ位置(
図1及び
図2に実線で示す位置)に保持されて、両メカニカルシール4,5における密封環相対位置が適正密封環相対位置に自動修正される。したがって、メカニカルシール4,5の組立ないし再組立が第一メカニカルシール4における密封環相対位置が適正密封環相対位置から偏倚した状態で行われた場合にも、両メカニカルシール4,5がスプリング9,19による附勢力が適正となる状態に組み立てられることになり、シールガスS1,S2が密封端面6a,8a及び16a,18間に供給されることにより、第一密封端面6a,8a及び第二密封端面16a,18a間が適正な隙間を有する非接触状態に保持され、第一メカニカルシール4によるシール機能が適正に発揮される。
【0040】
また、メカニカルシール4,5の運転中において、回転軸3が熱膨張したり或いは回転軸3の軸受が摩耗損傷する等によって回転軸基準位置が適正回転軸基準位置から変位した場合にあって、第一メカニカルシール4における密封環相対位置が適正密封環相対位置から偏倚したときには、(1)〜(4)のように構成されていることにより、スプリング9,19による閉力とシールガスS1,S2による開力とがバランスして密封端面6a,8a及び16a,18a間が適正な隙間を有する非接触状態を保持するようにスプリングリテーナ7が回転軸3に対して軸線方向に移動される。すなわち、回転軸基準位置が適正回転軸位置から変位した場合にも、当該変位に追随してスプリングリテーナ7が軸線方向に移動せず、適正スプリングリテーナ位置に保持される。その結果、第一メカニカルシール4における密封環相対位置が適正密封環相対位置に保持され、第一メカニカルシール4によるシール機能が適正に発揮される。
【0041】
このように、上記した軸封装置にあっては、メカニカルシール4,5の組立精度が不良である場合やメカニカルシール4,5の運転中において回転軸3が不測に軸線方向に変形ないし変位した場合にも、つまり第一メカニカルシール4における密封環相対位置が適正密封環相対位置から偏倚した場合にも、第一メカニカルシール4とスプリングリテーナ7を兼用する第二メカニカルシール5の存在によって、第一メカニカルシール4を密封環相対位置が適正密封環相対位置となる適正な組立状態に修正、保持して、第一メカニカルシール4によるシール機能を適正に発揮することができる。すなわち、本発明に係る軸封装置にあっては、第一メカニカルシール4が機内領域Aをシールするためのシール手段として機能し、第二メカニカルシールはシール手段としての機能を発揮するものではなく、専ら、第一メカニカルシール4における密封環相対位置を適正密封環相対位置に修正、保持するための補助手段として機能する。
【0042】
ところで、上記した静圧形の非接触形メカニカルシール4,5にあっては、シールガス供給路10,20から密封端面6a,8a及び16a,18a間に供給されるシールガスS1,S2が圧縮性のものであることから、密封端面6a,8a及び16a,18a間に至るシールガスS1,S2の流動経路には、いわゆるニューマチックハンマと称せられる自励振動が不可避的に生じる。その結果、シールケース2に固定されている静止密封環6,16については何らの問題も生じないが、回転軸3及びスプリングリテーナ7に弾性材であるOリング25,29及び26,30を介して嵌挿保持されているにすぎない回転密封環8,18については、上記自励振動により、密封端面6a,8a間及び16a,18a間の隙間と同程度若しくはそれ以下の微小振幅で振動することになる。このような回転密封環8,18aの振動は、第一メカニカルシール4のシール機能及び第二メカニカルシール5による上記補助手段としての機能には格別の悪影響を与えるものではないが、振動音を発生するために防止しておくことが好ましい。そこで、上記したメカニカルシール4,5においては、このような回転密封環8,18aの振動を次のような第一及び第二振動防止機構11,21により防止するように工夫している。
【0043】
すなわち、第一及び第二振動防止機構11,21は、
図1及び
図3に示す如く、回転密封環8,18とスプリングリテーナ7の保持部7c,7eとの対向周面間に形成され且つOリング25,25及び26,26でシールされた第一及び第二環状空間11a,21aと、回転密封環8,18aに形成された一又は複数の貫通路であって、密封端面6a,8a間及び16a,18a間に供給されたシールガスS1,S2を環状空間11a,21aに導入させる第一及び第二シールガス導入路11b,21bとからなる。シールガス導入路11b,21bの上流端は、
図3に示す如く、回転密封環8,18の密封端面8a,18aにおいて静圧発生溝10c,20cに直対向して開口されており、その開口径(より正確には回転密封環8,18の径方向における長さ)は静圧発生溝10c,20cの溝幅(円弧状凹溝の溝幅)と同一若しくは小さく設定されている。なお、各Oリング25,26は、回転密封環8,18とスプリングリテーナ7の保持部7c,7eとの対向周面間に適度に圧縮された状態であって回転密封環8,18のスプリングリテーナ7に対する軸線方向相対移動を妨げない状態で装填されており、各Oリング29,30は、回転密封環8,18と回転軸3との対向周面間に適度に圧縮されて当該対向周面間をシール(二次シール)する状態であって回転密封環8,18及びスプリングリテーナ7の回転軸3に対する軸線方向相対移動を妨げない状態で装填されている。
【0044】
このような振動防止機構11,21によれば、静圧発生溝10c,20cに供給されたシールガスS1,S2により密封端面6a,8a及び16a,18a間が適正な非接触状態に保持されると共に、当該密封端面6a,8a及び16a,18a間に供給されたシールガスS1,S2がシールガス導入路11b,21bから環状空間11a,21aに導入されて、環状空間11a,21a内が密封端面6a,8a及び16a,18a間の圧力と同一に保持される。したがって、各Oリング25,26は、環状空間11a,21a内のシールガスS1,S2によって回転密封環8,18の軸線方向に圧縮され、回転密封環8,18とスプリングリテーナ7の保持部7c,7eとの対向周面への圧接力が増大する。その結果、密封端面6a,8a及び16a,18aに至るシールガス流動経路において自励振動(ニューマチックハンマ)が発生せず、これによって回転密封環8,18が振動するようなことがなく、一般に「鳴き」と称せられる振動音が発生することがない。
【0045】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲で適宜に改良,変更することができる。
【0046】
例えば、スプリングリテーナ7を回転軸3に相対回転不能に且つ軸線方向相対移動自在に保持させておく手段としては、上記した長孔7fとスライドピン24とを係合させるものに限定されない。例えば、回転軸3にキーを固定すると共にスプリングリテーナ7の内周部に軸線方向に延びるキー溝を形成して、このキー溝にキーを係合させることにより、或いは回転軸3の一部をスプライン軸に構成すると共に、スプリングリテーナ7の内周部に当該スプライン軸に係合するスプライン溝を形成しておくことにより、スプリングリテーナ7を回転軸3に相対回転不能に且つ軸線方向相対移動自在に挿通させておくように構成することができる。
【0047】
また、シールケース2は、静止密封環6,16を軸線方向に所定間隔を隔てて固定でき且つシールケース内領域Cを大気圧又は略大気圧に保持するものであれば任意に構成することができ、例えば、連結部材を
図5に示す如く第一フランジ2aと第二フランジ2c,2dとを連結する複数のボルト2b(一個のみ図示)で構成して、シールケース内領域Cをボルト2b間の開口部2eによって機外領域Bに開放する。また、
図1及び
図5に示す軸封装置では、シールケース内領域Cを開口部2eにより機外領域Bに開放して大気圧に保持するように構成したが、当該軸封装置及びこれが装填される回転機器が屋内に設置される場合にあって、シールガスS1,S2がシールケース内領域Cから開口部2eを経て機外領域Cに放出されることによって弊害(例えば、シールガスS1,S2が窒素ガスである場合において、機外領域C(軸封装置及び回転機器の設置空間)が酸欠状態となる等)が生じる場合には、
図6に示す如く、連結部材2bを第一フランジ2aと第二フランジ2c,2dとの間を閉塞する筒状のものに構成して、連結部材2bに形成した排気口2fに連結したシールガス排出管2gから、シールケース内領域CのシールガスS1,S2を軸封装置及び回転機器の設置空間外に放出するようにすることができる。かかる場合、シールケース内領域Cは大気圧又は略大気圧に保持される。
【0048】
また、上記した実施の形態にあっては、第一メカニカルシール4と第二メカニカルシール5とを、
図1及び
図2に示す如く、両メカニカルシール4,5のスプリング9,19を同一の附勢力を有するものとすると共に両メカニカルシール4,5の静圧発生溝10c,20cに同圧のシールガスS1,S2を供給するようにする等、軸線方向の向きを逆に配置された点を除いて同一構造をなすもの(前後対称構造をなすもの)に構成したが、両メカニカルシール4,5は、このような同一構造とせず、第1メカニカルシール4が適正なメカニカルシール機能を発揮できることを条件として、スプリング9,19の附勢力及びシールガスS1,S2の圧力を含めて非同一構造としておくことも可能である。
【0049】
また、本発明は、上記した如く、回転軸が水平に延びる横型の回転機器の軸封装置として適用される他、回転軸が上下方向に延びる竪型の回転機器の軸封装置(一般に、第一メカニカルシール4が上位に位置すると共に第二メカニカルシール5が下位に位置するように設置される)としても、上記した実施の形態と同様に、好適に適用することができる。また、本発明に係る軸封装置は、機内領域Aのガスが大気領域Bより高圧(正圧)となる条件下及び大気領域Bより低圧(負圧)となる条件下の何れにおいても、第一メカニカルシール4によるシール機能を適正に発揮させることができる。