【文献】
Okada M, et al.,Protective effect of vaccination with culture supernate of M. hyopneumoniae against experimental infection in pigs,Journal of veterinary medicine. B, Infectious diseases and veterinary public health,2000年,Vol.47, No.7,p.527-533
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyo)の全細胞調製物の可溶性部分が含まれる免疫原性組成物であって、該M.hyo調製物の可溶性部分が、M.hyo特異的可溶性タンパク質抗原を含み、そして、不溶性細胞物質から分離されており、そして、IgG、及び、抗原/免疫グロブリンの免疫複合体の両方を実質的に含まない、前記組成物。
アジュバントが水中油型アジュバント、ポリマーおよび水のアジュバント、油中水型アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント、ビタミンEアジュバントおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
1回量投与として投与された場合に、M.hyoに対する防御免疫応答を引き出し、そして、1回量投与として投与された場合に、存在する場合に、ブタにおいて疾患を引き起こし得る少なくとも1種類の追加の微生物に対する防御免疫応答も引き出すための組成物の製造における、請求項1〜7のいずれか1項の組成物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0025】
配列の簡潔な記載
SEQ ID NO:1は、M.hyoのP−5722株からのp46をコードするヌクレオチド配列の1態様であり;
SEQ ID NO:2は、M.hyoのP−5722株からのp46に対応するアミノ酸配列の1態様であり;
SEQ ID NO:3は、M.hyoのP−5722株からのp97をコードするヌクレオチド配列の1態様であり;
SEQ ID NO:4は、M.hyoのP−5722株からのp97に対応するアミノ酸配列の1態様であり;
SEQ ID NO:5は、キメラPCV1−2ウイルスをコードするゲノム配列の1態様であり;
SEQ ID NO:6は、ブタサーコウイルスのORF2に対応するヌクレオチド配列の1態様であり;
SEQ ID NO:7は、ブタサーコウイルスのORF2ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の1態様であり;
SEQ ID NO:8は、キメラPCV1−2ウイルスをコードするゲノム配列の1態様であり;
SEQ ID NO:9は、ブタサーコウイルスのORF2に対応するヌクレオチド配列の1態様であり;
SEQ ID NO:10は、ブタサーコウイルスのORF2ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の1態様であり;
SEQ ID NO:11は、ブタサーコウイルスのORF2ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の1態様であり;
SEQ ID NO:12は、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の1態様であり;
SEQ ID NO:13は、ブタサーコウイルスのORF2ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の1態様であり;
SEQ ID NO:14は、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の1態様であり;
SEQ ID NO:15は、ブタサーコウイルスのORF2ポリペプチドに対応するアミノ酸配列の1態様であり;
SEQ ID NO:16は、P129と名付けられた北米型PRRSウイルス分離株の非病毒性形態のゲノム配列の1態様であり;そして
SEQ ID NO:17は、ISU−55と名付けられたPRRSウイルス分離株のORF2〜ORF5に対応するヌクレオチド配列の1態様である。
【0026】
SEQ ID NO:18は、ISU−55と名付けられたPRRSウイルス分離株のORF6〜ORF7に対応するヌクレオチド配列の1態様である。
【0027】
本発明はM.hyoの全細胞調製物の可溶性部分が含まれる免疫原性組成物を提供し、ここでそのM.hyo調製物の可溶性部分は(i)IgGおよび(ii)抗原結合免疫複合体の両方を実質的に含まない。出願者らは、驚くべきことに、M.hyo全細胞調製物の不溶性部分は非免疫原性であることを発見した。対照的に、IgGを含まないM.hyo可溶性調製物は免疫原性であり、他の病原体、例えばPCV2からの抗原と、抗原間の分析的または免疫学的干渉なしで有効に組み合わせることができる。これはこの発明のM.hyo可溶性調製物を1ボトルの使用準備済配合物が含まれる多価ワクチンのための有効なプラットフォームにする。出願者らは、驚くべきことに、免疫グロブリンおよび不溶性細胞破壊片の除去はその免疫原性組成物の安全性を高めることも発見した。
【0028】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる際、単数形“a”、“an”、および“the”には、内容が明確に別途指示しない限り、複数への言及が含まれる。例えば、用語“タンパク質抗原(a protein antigen)”には、複数のタンパク質抗原が、それらの混合物を含めて含まれる。
【0029】
本明細書で用いられる際、用語“含んでいる”は、その組成物および方法に列挙された要素が含まれるが他の要素を除外しないことを意味することを意図している。
【0030】
本明細書で定義されるように、M.hyo全細胞調製物の可溶性部分は、不溶性物質の分離ならびにIgGおよび抗原結合免疫複合体の実質的な除去後のM.hyo全細胞調製物の可溶性液体画分を指す。そのM.hyo可溶性部分は、あるいは本明細書において上清画分、培養上清等と呼ばれ得る。それには、不溶性タンパク質、細菌全体、および他の不溶性M.hyo細胞性物質から一般に用いられる手段、例えば遠心分離、濾過、または沈殿により分離または単離されている、M.hyoが発現した可溶性タンパク質(M.hyoタンパク質抗原)が含まれる。M.hyo特異的可溶性タンパク質が含まれるのに加えて、M.hyo全細胞調製物の可溶性部分には異種タンパク質、例えばM.hyoの発酵に用いられた培地中に含有される異種タンパク質も含まれる。
【0031】
用語“抗原”は、動物において抗体の産生もしくはT細胞応答、または両方を刺激することができる化合物、組成物、または免疫原性物質を指し、動物中に注射する、または吸収させる組成物が含まれる。その免疫応答は分子全体に対して、またはその分子の一部(例えばエピトープまたはハプテン)に対して生成され得る。
【0032】
本明細書で定義されるように、“免疫原性または免疫学的組成物”は、宿主において対象の組成物またはワクチンに対する細胞および/または抗体に媒介される免疫応答の免疫学的応答を引き出す少なくとも1種類の抗原を含む物質の組成物を指す。
【0033】
用語“免疫応答”は、本明細書で用いられる際、動物において引き出される応答を指す。免疫応答は細胞性免疫(CMI);体液性免疫を指してよく、または両方を含んでよい。本発明は、免疫系の一部に限定された応答も意図している。通常、“免疫学的応答”には以下の作用の1つ以上が含まれるが、それらに限定されない:対象の組成物またはワクチン中に含まれる抗原(単数または複数)に特異的に方向付けられた、抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、および/または細胞傷害性T細胞および/またはyd T細胞の産生または活性化。好ましくは、宿主は療法的または防御的免疫学的応答のどちらかを、新しい感染に対する抵抗性が高められ、および/またはその疾患の臨床的重症度が低減するであろうように示すであろう。そのような防御は、感染した宿主が通常示す症状の低減もしくは欠如のどちらか、感染した宿主におけるより迅速な回復時間および/または低下したウイルス力価により示されるであろう。
【0034】
本明細書で用いられる際、用語“免疫原性”は、宿主動物において抗原(単数または複数)に対する免疫応答を生じさせることができることを意味する。この免疫応答は、ある特定の感染性生物に対するワクチンにより引き出される防御免疫の基礎を形成する。
【0035】
“アジュバント”は、本明細書で用いられる際、抗原(単数または複数)に対する免疫応答を高める1種類以上の物質からなる組成物を意味する。どのようにアジュバントが作用するのかの機序は完全には知られていない。一部のアジュバントは抗原をゆっくりと放出することにより免疫応答を高めると信じられており、一方で他のアジュバントは単独でも強力に免疫原性であり、相乗的に機能すると信じられている。
【0036】
本明細書で用いられる際、用語“多価”は、同じ種(すなわちマイコプラズマ・ハイオニューモニエの異なる分離株)からのものであれ、異なる種(すなわちパスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella hemolytica)およびパスツレラ・マルトシダ両方からの分離株)からのものであれ、または異なる属からの抗原の組み合わせを含有するワクチン(例えばパスツレラ・マルトシダ、サルモネラ属、大腸菌、ヘモフィルス・ソムナス(Haemophilus somnus)およびクロストリジウム属からの抗原を含むワクチン)であれ、1種類より多くの抗原を含有するワクチンを意味する。
【0037】
用語“ブタ”または“子ブタ”は、本明細書で用いられる際、ブタ由来の動物を意味し、一方で“雌ブタ(sow)”は生殖可能年齢および能力のメスを指す。“若雌ブタ(gilt)”は、妊娠したことがない雌のブタである。
【0038】
本明細書で用いられる際、用語“病毒性”は、動物宿主において感染性であるその能力を保持している分離株を意味する。
【0039】
“不活化ワクチン”は、もはや複製または増殖することができない感染性生物または病原体を含有するワクチン組成物を意味する。その病原体は、細菌、ウイルス、原生動物または真菌由来であってよい。不活化は、凍結融解、化学的処理(例えばチメロサールまたはホルマリンによる処理)、超音波処理、放射線、熱またはその生物の複製もしくは増殖を防ぐ一方でその免疫原性を維持するのに十分なあらゆる他の一般に用いられる(convention)手段が含まれる様々な方法により成し遂げることができる。
【0040】
用語“変異体”は、本明細書で用いられる際、対応するポリペプチドが野生型ポリペプチドと比較した際に実質的に同等の機能を有するような1個以上の保存的アミノ酸変異または他の重要でない変更を有するポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸配列を指す。
【0041】
“保存的変異”は、アミノ酸残基の別の生物学的に類似の残基による置き換え、または核酸配列中のヌクレオチドの、コードされるアミノ酸残基が変化しない、もしくは別の生物学的に類似の残基であるような置き換えを意味する。保存的変異の例には、ある疎水性残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニンの別の疎水性残基に関する置換、またはある極性残基の置換、例えばアルギニンのリジンに関する置換、グルタミン酸のアスパラギン酸に関する置換、もしくはグルタミンのアスパラギンに関する置換等が含まれる。用語“保存的変異”には、非置換の親アミノ酸の位置における置換されたアミノ酸の使用も、その置換されたポリペプチドに対して産生された抗体が非置換のポリペプチドとも免疫反応するという条件の下で含まれる。
【0042】
本明細書で用いられる際、用語“薬学的に許容可能なキャリヤー”および“薬学的に許容可能なビヒクル”は互換的であり、有害な作用なしで宿主中に注射することができるワクチン抗原を含有するための流体ビヒクルを指す。当該技術で既知の適切な薬学的に許容可能なキャリヤーには、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロース、または緩衝溶液が含まれるが、それらに限定されない。キャリヤーには、希釈剤、安定剤(すなわち糖類およびアミノ酸)、保存剤、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、粘度増進添加剤、顔料等が含まれるがそれらに限定されない補助剤が含まれ得る。
【0043】
本明細書で用いられる際、用語“ワクチン組成物”には、宿主において免疫応答を誘導するために有用な薬学的に許容可能なビヒクル中の少なくとも1種類の抗原または免疫原が含まれる。ワクチン組成物は、医学または獣医学の技術分野の当業者に周知の投与量で、および技法により、受容動物の年齢、性別、体重、種および状態、ならびに投与経路のような要因を考慮して投与することができる。その投与経路は、経皮的であるか、粘膜投与(例えば経口、経鼻、肛門、膣)によるか、または非経口経路(皮内、経皮、筋内、皮下、静脈内、または腹腔内)によることができる。ワクチン組成物は単独で投与することができ、または他の処置もしくは療法と同時投与もしくは連続投与することができる。投与の形態には、懸濁液、シロップまたはエリキシル剤、および非経口、皮下、皮内、筋内または静脈内投与(例えば注射可能な投与)のための製剤、例えば無菌の懸濁液もしくはエマルジョンが含まれ得る。ワクチン組成物は噴霧剤として投与されてよく、または食物および/または水中に混合されてよく、または適切なキャリヤー、希釈剤、もしくは賦形剤、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコース等との混合状態で送達されてよい。その組成物は、所望の投与経路および製剤に応じて、補助物質、例えば湿潤または乳化剤、pH緩衝剤、アジュバント、ゲル化または粘度増進添加剤、保存剤、香味料、顔料等を含有することができる。標準的な薬学の教科書、例えば“Remington's Pharmaceutical Sciences”1990を調べて、過度の実験を行わずに適切な製剤を調製することができる。
【0044】
“北米型PRRSウイルス”は、北米型PRRSウイルス分離株、例えば(それらに限定されないが)以下の分離株と関係する遺伝子特性を有するあらゆるPRRSウイルスを意味する:米国で1990年代初期ごろに最初に分離されたPRRSウイルス(例えばCollins, J. E., et al., 1992, J. Vet. Diagn. Invest. 4:117-126を参照);北米型PRRSウイルス分離株MN−1b(Kwang, J. et al., 1994, J. Vet. Diagn. Invest. 6:293-296);PRRSウイルスのケベックLAF−exp91分離株(Mardassi, H. et al., 1995, Arch. Virol. 140:1405-1418);および北米型PRRSウイルス分離株VR 2385(Meng, X.-J et al., 1994, J. Gen. Virol. 75:1795-1801)。北米型PRRSウイルス株の追加の例が本明細書において記載されている。遺伝子特性は、北米型PRRSウイルス株により共有されるゲノムのヌクレオチド配列の類似性およびアミノ酸配列の類似性を指す。中国型PRRSウイルス株は一般に北米株との約80〜93%のヌクレオチド配列の類似性を明示する。
【0045】
“欧州型PRRSウイルス”は、欧州で1991年ごろに最初に分離されたPRRSウイルスと関係する遺伝子特性を有するPRRSウイルスのあらゆる株を指す(例えば、Wensvoort, G., et al., 1991, Vet. Q. 13:121-130を参照)。“欧州型PRRSウイルス”は当該技術において時々“レリスタッドウイルス”とも呼ばれる。欧州型PRRSウイルス株のさらなる例が本明細書において記載されている。
【0046】
遺伝子改変されたウイルスは、それがその未改変の親株よりも病毒性が低い場合、“弱毒化されている”。ある株は、それが疾患の重症度を決定する1種類以上のパラメーターにおいて統計的に有意な低下を示す場合、“より病毒性が低い”。そのようなパラメーターには、ウイルス血症のレベル、発熱、呼吸困難の重症度、生殖系症状の重症度、または肺の病変の数もしくは重症度等が含まれ得る。
【0047】
“感染性クローン”は、実験室において特異的および意図的に改変して、次いでそれを用いて生きた遺伝子改変された生物を再形成することができる、疾患因子(例えばウイルス)の単離もしくはクローニングされたゲノムである。感染性クローンから産生された生きた遺伝子改変されたウイルスを、生ウイルスワクチンにおいて用いることができる。あるいは、その感染性クローンに由来する生ウイルスを、不活化剤、例えばホルマリンまたは疎水性溶媒、酸等により、紫外線もしくはX線の照射により、加熱により、等で処理することにより、不活化ウイルスワクチンを調製することができる。
【0048】
全ての現在利用可能なM.hyoワクチンは、死菌全細胞マイコプラズマ調製物から作られる(バクテリン)。対照的に、本発明はマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyo)の全細胞調製物の可溶性部分を用いており、ここでそのM.hyo調製物の可溶性部分は(i)IgGおよび(ii)免疫グロブリンに結合した抗原からなる免疫複合体の両方を実質的に含まない。
【0049】
M.hyoは外来性のステロール類および脂肪酸に関する絶対的必要性を有する。これらの必要性は一般にM.hyoのブタ血清のような血清含有培地中での増殖を必要とする。M.hyo全細胞調製物の可溶性部分からの(例えば遠心分離、濾過、または沈殿による)不溶性物質の分離は、ブタIgGまたは免疫複合体を除去しない。本発明の1態様において、培養上清中に含有されるIgGおよび免疫複合体を実質的に除去するために、M.hyo可溶性部分をプロテインAまたはプロテインGで処理する。この態様において、プロテインA処理はM.hyoの発酵後に行われることが理解されている。これはあるいは本明細書において下流プロテインA処理と呼ばれる。別の態様において、上流の(すなわちM.hyoの発酵の前の)増殖培地のプロテインA処理を用いることができる。プロテインAはIgGのFc部分に結合する。プロテインGはIgGのFc部分に優先的に結合するが、Fab領域にも結合することができる。粗製のタンパク質混合物、例えば組織培養上清、血清および腹水から総IgGを精製/除去するための方法は、当該技術で既知である。
【0050】
一部の態様において、M.hyo調製物の可溶性部分には、少なくとも1種類のM.hyoタンパク質抗原が含まれる。他の態様において、M.hyo調製物の可溶性部分には、2種類以上のM.hyoタンパク質抗原が含まれる。
【0051】
1態様において、M.hyo上清画分には、以下のM.hyo特異的タンパク質抗原の1種類以上が含まれる:おおよそ46kD(p46)、64kD(p64)および97kD(p97)の分子量のM.hyoタンパク質。別の態様において、その上清画分には少なくともp46、p64およびp97のM.hyoタンパク質抗原が含まれる。おおよそ64kDのM.hyoタンパク質(p64)は、あるいは本明細書においてKimら[Infect. Immun. 58(8):2637-2643 (1990)]により、ならびに米国特許第5,788,962号において記載されたM.hyoからのp65表面抗原と呼ばれ得る。
【0052】
Futoらは、この発明の組成物において用いることができるM.hyoからの46kDの表面タンパク質のクローニングおよび特性付けを記載した[J. Bact 177: 1915-1917 (1995)]。1態様において、そのM.hyo培養上清にはp46が含まれ、P−5722株からのその対応するヌクレオチドおよびアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:1および2において示されている。さらに、下記で記載されるようにそのようなp46配列の変異体を本発明の組成物において用いることができることが意図されている。
【0053】
Zhangらは、M.hyoのp97アドヘシンタンパク質を記載し、特性付けた[Infect. Immun. 63: 1013-1019, 1995]。加えて、KingらはM.hyoのP−5722株からのMhp1と名付けられた124kDのタンパク質を記載し、Mhp1およびp97が同じタンパク質であることを示唆するデータを示した[Vaccine 15:25-35 (1997)]。そのようなp97タンパク質をこの発明の組成物において用いることができる。1態様において、そのM.hyo培養上清にはp97が含まれ、P−5722株からのその対応するヌクレオチドおよびアミノ酸配列がそれぞれSEQ ID NO:3および4において示されている。さらに、下記で記載されるようにそのようなp97配列の変異体を本発明の組成物において用いることができることが意図されている。
【0054】
そのM.hyo培養上清には、さらにM.hyo特異的タンパク質抗原、例えば(それらに限定されないが)おおよそ41kD(p41)、42kD(p42)、89kD(p89)、および65kD(p65)のタンパク質が含まれている可能性がある。Okada et al., 2000, J. Vet. Med. B 47:527-533およびKim et al., 1990, Infect. Immun. 58(8):2637-2643を参照。加えて、そのM.hyo培養上清にはおおよそ102kD(p102)および216kD(p216)のM.hyo特異的タンパク質抗原が含まれている可能性がある。Minnionらへの米国特許第6,162,435号および第7,419,806号を参照。
【0055】
あらゆるM.hyo株を、本発明のM.hyo調製物の可溶性部分を生成するための出発物質として用いることができる。M.hyoの適切な株は商業的または学術的な源から得ることができ、それにはアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)(バージニア州マナサス)およびNRRL微生物株保存機関(米国農務省農業研究サービス、イリノイ州ピオリア)のような保管所が含まれる。ATCCは単独で以下の6種類のM.hyoの株を販売のためにリストに載せている:M.hyo ATCC 25095、M.hyo ATCC 25617、M.hyo ATCC 25934、M.hyo ATCC 27714、M.hyo ATCC 27715、およびM.hyo ATCC 25934D。この発明の態様における使用のための好ましいM.hyoの株は、米国特許商標庁により要求されるアクセシビリティルール(accessibility rules)に従って1990年5月30日に寄託された株P−5722−3、ATCC #55052として同定される。その疾患の広範囲にわたる伝播(dissemination)を考慮すると、ブタにおいてマイコプラズマ肺炎を引き起こす既知の株に感染したブタからの肺分泌物または組織からM.hyoを回収することによっても株を得ることができる。
【0056】
当業者には、M.hyo配列の変異体を本発明の組成物において用いることができることは理解されている。そのような変異体は、配列の同一性において10〜20%も異なり、なおそれを免疫原性組成物において有用にする抗原性特性を保持している可能性がある。好ましくは、そのM.hyo変異体は野生型M.hyo株の完全長ゲノム配列との少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにもっと好ましくは少なくとも95%の配列の同一性を有する。免疫学的組成物の抗原性特性は、例えば実施例において提供されるような負荷実験により推定することができる。さらに、改変されたM.hyo抗原の抗原性特徴は、その改変された抗原が野生型M.hyoタンパク質と比較した場合にその防御免疫の少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%を与える場合、まだ保持されている。
【0057】
1態様において、M.hyoの可溶性p46抗原は本発明の組成物中に約1.5μg/ml〜約10μg/mlの終濃度で、好ましくは約2μg/ml〜約6μg/mlで含まれる。p46はM.hyo力価試験(下記の実施例の節を参照)のために用いられるタンパク質であることを特筆する。別の態様において、そのM.hyo抗原はその組成物中に、M.hyoの全培養物のプロテインA処理された上清の約5.5%〜約35%の最終的な量で含まれ得る。
【0058】
本発明のM.hyo可溶性調製物は、安全かつM.hyoに対して有効の両方であり、1回量投与に適している。加えて、出願者らは驚くべきことにそのM.hyo可溶性調製物は抗原間の免疫学的干渉なしで他の病原体からの抗原と有効に組み合わせることができることを発見している。これはこの発明のM.hyo可溶性調製物を多価ワクチンのための有効なプラットフォームにする。その追加の抗原は、M.hyo組成物と同時に(すなわち別々の単独のワクチンとして)、または使用準備済のワクチン中で組み合わせて与えることができる。
【0059】
1態様において、本発明の免疫原性組成物には、少なくとも1種類のM.hyo可溶性抗原および少なくとも1種類の追加の抗原が含まれる。1態様において、その少なくとも1種類の追加の抗原は、ブタにおいて疾患を引き起こし得る微生物に対して防御的である。
【0060】
一部の態様において、その少なくとも1種類の追加の抗原構成要素は、ブタに感染することが知られている細菌、ウイルス、または原生動物に対して防御的である。そのような微生物の例には以下のものが含まれるが、それらに限定されない:ブタサーコウイルス2型(PCV2)、ブタ生殖および呼吸症候群ウイルス(PRRSV)、ブタパルボウイルス(PPV)、ヘモフィルス・パラスイス、パスツレラ・マルトシダ、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcum suis)、ストレプトコッカス・ヒカス、アクチノバチルス・プルロニューモニエ、ボルデテラ・ブロンキセプティカ、サルモネラ・コレラエスイス、サルモネラ・エンテリティディス、エリジペロスリックス・ルジオパシエ、マイコプラズマ・ハイオリニス(Mycoplama hyorhinis)、マイコプラズマ・ヒオシノヴィエ、レプトスピラ属の細菌、ローソニア・イントラセルラリス、ブタインフルエンザウイルス(SIV)、大腸菌抗原、ブラキスピラ・ヒオディセンテリア、ブタ呼吸器コロナウイルス、ブタ流行性下痢(PED)ウイルス、ロタウイルス、トルクテノウイルス(TTV)、ブタサイトメガロウイルス、ブタエンテロウイルス、脳心筋炎ウイルス、オーエスキー病(Aujesky’s Disease)、ブタコレラ(CSF)を引き起こす病原体、およびブタ伝染性胃腸炎を引き起こす病原体、またはそれらの組み合わせ。
【0061】
1態様において、本発明の免疫原性組成物には、少なくとも1種類のM.hyo可溶性抗原(例えば2種類以上)およびPCV2抗原の組み合わせが含まれる。別の態様において、その組成物はブタにおいてM.hyoおよびPCV2の両方に対する防御免疫応答を引き出す。
【0062】
1態様において、本発明に従うM.hyo/PCV2混合ワクチンは、1ボトルワクチンでの使用準備済の1回量として提供される。そのような使用準備済の混合ワクチンは別々のワクチンの混合を必要とせず、従って混合と関係する汚染の危険性または追加の労力がなく、そしてその混合物を数時間以内に使用する必要がない。また、1ボトルのM.hyo/PCV2混合ワクチンは、廃棄物および冷凍機の保管スペースを半分に削減する。さらに、1回量投与はその動物への2回目の用量の投与と関係する労力を削除する。PCV2/M.hyo混合ワクチンは現在存在するが、それらは2回量の使用準備済ワクチンとして(Circumvent(登録商標)PCVM)、または別々のワクチンの同時投与を必要とする1回量の2ボトルワクチンとして(例えば、Ingelvac CircoFLEX(登録商標)およびIngelvac MycoFLEX(登録商標))のどちらかで提供されている。好ましくは、本発明に従うM.hyo/PCV2の組み合わせは、他の抗原、例えばPRRSウイルス抗原と、全ての抗原を1回量中で投与することができるように、適合性であろう。
【0063】
一部の態様において、M.hyo/PCV2混合ワクチンのPCV2抗原構成要素は、キメラ1型−2型サーコウイルスの形態である。そのキメラウイルスには、ブタサーコウイルス2型のORF2タンパク質を発現する不活化組み換えブタサーコウイルス1型が含まれる。キメラブタサーコウイルスおよびそれらの調製のための方法は、国際公開第03/049703 A2号において、そして米国特許第7,279,166号および第7,575,752号においても記載されており、それは参照により本明細書にそのまま援用される。
【0064】
1態様において、下記に記載するように、キメラPCV1−2ウイルスのゲノムの完全長DNA配列はSEQ ID NO:5またはその変異体に対応する。別の態様において、キメラPCV1−2ウイルスの免疫原性ORF2カプシド遺伝子はSEQ ID NO:6に対応する。さらなる態様において、キメラPCV1−2ウイルスにより発現される免疫原性ORF2タンパク質のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に対応する。
【0065】
さらに別の態様において、キメラPCV1−2ウイルスのゲノムの完全長DNA配列はSEQ ID NO:8に対応する。1態様において、キメラPCV1−2ウイルスの免疫原性ORF2カプシド遺伝子はSEQ ID NO:9に対応する。さらなる態様において、キメラPCV1−2ウイルスにより発現される免疫原性ORF2タンパク質のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に対応する。
【0066】
しかし、キメラPCV1−2ウイルスのPCV2 ORF2 DNAおよびタンパク質は、PCV2 ORF2 DNAおよびタンパク質はPCV2分離株内で高度に保存されたドメインであるため、上記で記載した配列に限定されない。
【0067】
一部の態様において、M.hyo/PCV2混合ワクチンのPCV2抗原構成要素は組み替えORF2タンパク質の形態である。1態様において、その組み換えORF2タンパク質はバキュロウイルスベクターから発現される。あるいは、他の既知の発現ベクターを用いることができ、それには例えばパラポックスベクターが含まれるが、それに限定されない。
【0068】
1態様において、その組み換えPCV2 ORF2タンパク質はSEQ ID NO:11のタンパク質であり、それはSEQ ID NO:12(GenBank受け入れ番号AF086834)によりコードされている。別の態様において、その組み換えORF2タンパク質はSEQ ID NO:13のタンパク質であり、それはSEQ ID NO:14によりコードされている。さらに別の態様において、その組み換えORF2タンパク質はSEQ ID NO:15に対応する。さらに別の態様において、その組み換えPCV2 ORF2タンパク質はSEQ ID NO:7に対応する。さらに別の態様において、その組み換えPCV2 ORF2タンパク質はSEQ ID NO:10に対応する。
【0069】
しかし、本発明は、上記で記載した特定のORF2 DNAおよびタンパク質配列に限定されない。PCV2 ORF2 DNAおよびタンパク質はPCV2分離株内で高度に保存されたドメインであるため、あらゆるPCV2 ORF2がそのキメラPCV1−2ウイルスにおいて、または組み換えPCV2タンパク質において用いられるようなPCV2 ORF2 DNAおよび/またはポリペプチドの源として有効である可能性が非常に高い。
【0070】
そのPCV2 ORF2 DNAおよびタンパク質配列が由来し得る適切なPCV2分離株の1つの例は、PCV2分離株番号40895(2001年12月7日にATCCにおいて寄託され、ATCC特許寄託名称PTA−3914を割り当てられた)である。PCV2分離株番号40895のゲノム(ヌクレオチド)配列はGenBank受け入れ番号AF264042の下で入手可能である。PCV2 ORF2 DNAおよびタンパク質配列が由来し得る適切なPCV2分離株の他の例には以下の分離株が含まれるが、それらに限定されない:Imp.999、Imp.1010−Stoon、Imp.1011−48121、およびImp.1011−48285。これらのPCV2分離株に対応するゲノム配列のGenBank受け入れ番号は、それぞれAF055391、AF055392、AF055393およびAF055394である。
【0071】
一部の形態において、PCV2 ORF2タンパク質の免疫原性部分がその組成物中の抗原性構成要素として用いられる。例えば、PCV2 ORF2タンパク質の切り詰められた、および/または置換された形態または断片を本発明の組成物において用いることができる。
【0072】
当業者には、そのPCV2配列の変異体を本発明の組成物において用いることができることは理解されている。そのような変異体は、配列の同一性において10〜20%も異なり、なおそれを免疫原性組成物において有用にする抗原性特性を保持している可能性がある。好ましくは、そのPCV2変異体は野生型PCV2分離株の完全長ゲノム配列との少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにもっと好ましくは少なくとも95%の配列の同一性を有する。免疫学的組成物の抗原性特性は、例えば実施例において提供されるような負荷実験により推定することができる。さらに、改変されたPCV2抗原の抗原性特徴は、その改変された抗原が野生型PCV2 ORF2タンパク質と比較した場合にその防御免疫の少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%を与える場合、まだ保持されている。
【0073】
そのPCV2抗原構成要素は、その免疫原性組成物中に、所望の免疫応答を誘導する、すなわちPCV2感染の結果として生じる臨床徴候の発生率を低減する、または重症度を低下させるために有効な抗原含有レベルで提供される。
【0074】
1態様において、キメラPCV1−2ウイルスは本発明の組成物中に少なくとも1.0≦RP≦5.0のレベルで含まれ、ここでRPはELISA抗原定量化(インビトロ力価試験)により決定される参照ワクチンと比較した相対力価単位である。別の態様において、キメラPCV1−2ウイルスは本発明の組成物中に約0.5%〜約5%の20倍(20×)濃縮されたバルクPCV1−2抗原の終濃度で含まれる。
【0075】
別の態様において、そのPCV2 ORF2組み換えタンパク質は本発明の組成物中に少なくとも0.2μgの抗原/最終的な免疫原性組成物1ml(μg/ml)のレベルで含まれる。さらなる態様において、そのPCV2 ORF2組み換えタンパク質の含有レベルは約0.2から約400μg/mlまでである。さらに別の態様において、そのPCV2 ORF2組み換えタンパク質の含有レベルは約0.3から約200μg/mlまでである。さらに別の態様において、そのPCV2 ORF2組み換えタンパク質の含有レベルは約0.35から約100μg/mlまでである。さらに別の態様において、そのPCV2 ORF2組み換えタンパク質の含有レベルは約0.4から約50μg/mlまでである。
【0076】
1態様において、本発明の免疫原性組成物には、少なくとも1種類のM.hyo可溶性抗原(例えば2種類以上)、ブタサーコウイルス2型(PCV2)抗原、およびPRRSウイルス抗原の組み合わせが含まれる。別の態様において、その組成物はブタにおいてM.hyo、PCV2およびPRRSウイルスに対する防御免疫応答を引き出す。
【0077】
1態様において、本発明に従うM.hyo/PCV2/PRRS混合ワクチンは1回量、2ボトルワクチンとして提供される。例えば、一部の態様において、M.hyo/PCV2の組み合わせが第1ボトル中で安定な液体配合物として提供され、PRRSウイルスは第2ボトル中で凍結乾燥された状態で提供される。一部の態様において、追加のブタ抗原をその第1または第2ボトルのどちらかに添加することができる。
【0078】
1態様において、そのPRRSウイルス構成要素は凍結乾燥された、遺伝子改変された生ウイルスとして提供される。投与の前に、全ての3種類の抗原を動物に1回量中で投与することができるように、第1ボトルからのM.hyo/PCV2の液体を用いて第2ボトル中のPRRSウイルスを再水和させることができる。PCV2/M.hyo/PRRS混合ワクチンは現在存在するが、それらは3つに分かれたワクチンの同時投与を必要とする1回量の3ボトルワクチンとして提供されている(例えば、Ingelvac CircoFLEX(登録商標)、Ingelvac MycoFLEX(登録商標)およびIngelvac(登録商標)PRRS MLV)ことを特筆する。
【0079】
PRRSの病因因子はオランダで最初に分離され、レリスタッドウイルスと名付けられた。このウイルスは国際公開第92/21375号(Stichting Centraal Diegeneeskundig Instituut)において記載された。欧州型PRRSウイルスの分離株はパリのパスツール研究所に番号I−1102で寄託された。北米型は欧州型ウイルスの分離とほぼ同時に分離され、国際公開第93/03760号(Collins et al.)において記載されている。北米型ウイルスの分離株はアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)に番号VR−2332で寄託された。
【0080】
異なる株が欧州および北米ウイルス型の両方から分離されている。国際公開第93/07898号(Akzo)は、CNCM(パスツール研究所)に番号I−1140で寄託された欧州株およびそれに由来するワクチンを記載している。また、国際公開第93/14196号(Rhone−Merieux)は、フランスで分離され、CNCM(パスツール研究所)に番号I−1153で寄託された新しい株を記載している。さらに、欧州特許第0595436 B1号(Solvay)は、最初に記載された株よりも病毒性の高い新しい北米型株およびそのワクチンを記載している。この株はATCCに寄託されているが、その寄託番号はその特許出願において詳細に記載されていない。加えて、スペイン特許第2074950 BA号(Cyanamid Iberica)およびその対応特許である英国特許第2282811 B2号は、いわゆる“スペイン株”を記載しており、それは他の欧州および北米株とは異なっている。この“スペイン株”は欧州動物細胞系統保存機関(EACCC)に番号V93070108で寄託されている。
【0081】
本発明のM.hyo/PCV2/PRRS組成物における使用のための適切なPRRSウイルス抗原には、北米型PRRSウイルス分離株、中国型PRRSウイルス株、および欧州型PRRSウイルス株、ならびにそのような分離株/株の遺伝子改変版が含まれる。1態様において、本発明に従う組成物中で用いられるPRRSウイルス抗原構成要素は北米型PRRSウイルスである。
【0082】
一部の態様において、この発明の組成物において用いられるPRRSウイルス抗原構成要素は、P129と名付けられた北米型PRRSウイルス分離株またはその生きた遺伝子改変版である。好ましくは、その遺伝子改変されたPRRSウイルスは病原性感染をもたらすことができないが、野生型PRRSウイルスによる感染に対する有効な免疫防御応答を引き出すことができる。
【0083】
本発明の組成物における使用のための遺伝子改変PRRSウイルスは、感染性クローンから産生することができる。P129と名付けられた北米型PRRSウイルス分離株の感染性cDNAクローンの調製は米国特許第6,500,662号において記載されており、それは参照により本明細書に完全に援用される。P129のcDNAの配列は、Genbank受け入れ番号AF494042において、および米国特許第6,500,662号において開示されている。
【0084】
1態様において、本発明の組成物における使用のためのP129の非病毒性形態のヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:16により表される。しかし、本発明はこの配列に限定されない。この配列およびP129の他の非病毒性形態の配列は2011年11月9日に出願された国際出願第PCT/IB2011/055003号において記載されており、その内容(この国際出願に基づくあらゆる米国国内段階出願が含まれる)は参照により本明細書にそのまま援用される。好ましくは、そのPRRSウイルスはインターフェロンに媒介される機能の下方制御を妨げるように改変されている。
【0085】
他の態様において、本発明の組成物において用いられるPRRSウイルス抗原構成要素は、ISU−55と名付けられたPRRSウイルス分離株である。そのISU−55分離株はアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)に受け入れ番号VR2430の下で寄託された。ISU−55分離株のORF2〜ORF5遺伝子のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:17により表される。ISU−55分離株のORF6およびORF7遺伝子のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:18により表される。
【0086】
本組成物中で用いることができる別の適切な北米型PRRSウイルス分離株はISU−12であり、それはATCCに受け入れ番号VR2385[3回プラーク純化されたもの]およびVR2386[プラーク純化されていないもの]の下で寄託された。この発明の組成物において用いることができるさらに他の適切な北米型PRRSウイルス分離株は、以下の分離株:ISU−51、ISU−3927、ISU−1894、ISU−22およびISU−79であり、それはそれぞれATCCに受け入れ番号VR2498、VR2431、VR2475、VR2429およびVR2474の下で寄託された。これらのISU分離株のいずれかの遺伝子改変版をこの発明の組成物において用いることができる。これらのISU分離株およびISU−55分離株は、Paulらへの以下の米国特許において詳細に記載されており:米国特許第5,695,766号、第6,110,467号、第6,251,397号、第6,251,404号、第6,380,376号、第6,592,873号、第6,773,908号、第6,977,078号、第7,223,854号、第7,264,802号、第7,264,957号、および第7,517,976号、その全ては参照により本明細書にそのまま援用される。
【0087】
さらに他の態様において、本発明に従う組成物において用いられるPRRSウイルス抗原構成要素は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)に番号VR−2332で寄託された北米型またはその遺伝子改変版である。例えば、そのPRRSウイルスはATCC VR2332として同定される分離株に基づく改変された生ウイルスであることができ、それはBoehringer Ingelheim Vetmedica, Inc.からのINGELVAC(登録商標)PRRS ATPおよびINGELVAC(登録商標)PRRS MLVにおいて用いられている。
【0088】
さらに他の態様において、本発明の組成物において用いられるPRRSウイルス抗原構成要素は欧州型PRRSウイルス分離株またはレリスタッドウイルスまたはそれらの遺伝子改変版である。適切なPRRSウイルス株の例は、上記で記載した寄託番号I−1102として同定される。I−1102寄託株(deposit)に対応するヌクレオチドおよびアミノ酸配列はWensvoortらへの米国特許第5,620,691号において記載されており、それは参照により本明細書に完全に援用される。欧州型PRRSウイルス分離株またはレリスタッドウイルスの感染性クローンの調製が米国特許第6,268,199号において記載されており、それは参照により本明細書に完全に援用される。
【0089】
適切なPRRSウイルス分離株の他の例には、上記で記載された分離株が含まれるが、それらに限定されない。また、そのPRRSウイルス分離株の生きた遺伝子改変版を本発明の組成物において用いることができる。感染性クローンを用いてそのような生きた遺伝子改変生物を再形成することができる。
【0090】
当業者には、PRRSウイルス配列の変異体を本発明の組成物において用いることができることは理解されている。そのような変異体は、配列の同一性において10〜20%も異なり、なおそれを免疫原性組成物において有用にする抗原性特性を保持している可能性がある。好ましくは、そのPRRSウイルス変異体は野生型PRRSウイルス分離株の完全長ゲノム配列との少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにもっと好ましくは少なくとも95%の配列の同一性を有する。免疫学的組成物の抗原性特性は、例えば負荷実験により推定することができる。さらに、改変されたPRRSウイルス抗原の抗原性特徴は、その改変された抗原が野生型PRRSウイルス抗原と比較した場合にその防御免疫の少なくとも70%、好ましくは80%、より好ましくは90%を与える場合、まだ保持されている。
【0091】
1態様において、そのPRRSウイルス抗原構成要素は遺伝子改変された生ウイルスであり、それは本発明の組成物中に少なくとも2.1≦TCID
50≦5.2のレベルで含まれ、ここでTCID
50は抗原定量化(インビトロ力価試験)により決定される50%組織培養感染量である。
【0092】
本発明のM.hyo/PCV2/PRRS組成物のPCV2抗原構成要素はキメラ1型−2型サーコウイルスの形態であることができ、そのキメラウイルスにはブタサーコウイルス2型のORF2タンパク質を発現する不活化組み換えブタサーコウイルス1型が含まれる。別の態様において、本発明のM.hyo/PCV2/PRRS組成物のPCV2抗原構成要素は組み替えORF2タンパク質の形態である。
【0093】
M.hyo/PCV2/PRRS組成物における使用のための適切なPCV2抗原は、上記で記載したPCV2分離株のいずれかならびに他のPCV2分離株に由来することができる。本発明の組成物において用いられるべき適切なPCV2抗原には、上記で記載したPCV2配列およびその変異体が含まれるが、それらに限定されない。
【0094】
本発明のワクチンは、受け入れられている慣習に従って、(適用可能ならば)ヒトが含まれる動物のための許容可能なキャリヤー、例えば標準的な緩衝剤、安定剤、希釈剤、保存剤、および/または可溶化剤が含まれるように配合することができ、持続放出を促進するように配合することもできる。希釈剤には、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロール等が含まれる。等張性のための添加剤には、とりわけ塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースが含まれる。安定剤にはとりわけアルブミンが含まれる。他の適切なワクチンビヒクルおよび添加剤は、改変生ワクチンの配合において特に有用であるワクチンビヒクルおよび添加剤を含め、当業者に既知であり、または明らかになるであろう。例えば、参照により本明細書に援用されるRemington's Pharmaceutical Science, 第18版, 1990, Mack Publishingを参照。
【0095】
本発明のワクチンは、例えばとりわけアジュバントまたはサイトカインのような、さらに1種類以上の追加の免疫調節構成要素を含むことができる。本発明の組成物における使用に関する適切なアジュバントのタイプには、以下のアジュバントが含まれる:水中油型アジュバント、ポリマーおよび水のアジュバント、油中水型アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント、ビタミンEアジュバントおよびそれらの組み合わせ。アジュバントの一部の具体的な例には以下のものが含まれるが、それらに限定されない:完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、コリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)、バシラス・カルメット・ゲラン(Bacillus Calmette Guerin)、水酸化アルミニウムゲル、グルカン、デキストラン硫酸、酸化鉄、アルギン酸ナトリウム、Bactoアジュバント、特定の合成ポリマー、例えばポリアミノ酸およびアミノ酸のコポリマー、ブロックコポリマー(CytRx、ジョージア州アトランタ)、QS−21(Cambridge Biotech Inc.、マサチューセッツ州ケンブリッジ)、SAF−M(Chiron、カリフォルニア州エメリービル)、AMPHIGEN(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil Aまたは他のサポニン画分、モノホスホリルリピドA、およびAvridine脂質−アミンアジュバント(N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−プロパンジアミン)、“REGRESSIN”(Vetrepharm、ジョージア州アセンズ)、パラフィン油、RIBIアジュバントシステム(Ribi Inc.、モンタナ州ハミルトン)、ムラミルジペプチド等。
【0096】
本発明のワクチンにおいて有用な水中油型エマルジョンの限定的でない例には、改変SEAM62およびSEAM 1/2配合物が含まれる。改変SEAM62は、5%(v/v)スクアレン(Sigma)、1%(v/v)SPAN(登録商標)85界面活性剤(ICI Surfactants)、0.7%(v/v)TWEEN(登録商標)80界面活性剤(ICI Surfactants)、2.5%(v/v)エタノール、200μg/ml Quil A、100μg/mlコレステロール、および0.5%(v/v)レシチンを含有する水中油型エマルジョンである。改変SEAM 1/2は、5%(v/v)スクアレン、1%(v/v)SPAN(登録商標)85界面活性剤、0.7%(v/v)Tween 80界面活性剤、2.5%(v/v)エタノール、100μg/ml Quil A、および50μg/mlコレステロールを含む水中油型エマルジョンである。
【0097】
本発明の組成物において有用なアジュバントの別の例は、SPオイルである。明細書および特許請求の範囲において用いられる際、用語“SPオイル”は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、スクアレン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートおよび緩衝塩溶液を含む油エマルジョンを示す。ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーは、固体および液体構成要素の懸濁を助ける界面活性剤である。これらの界面活性剤は、商品名Pluronic(登録商標)の下でポリマーとして商業的に入手可能である。好ましい界面活性剤はポロキサマー401であり、それは商品名Pluronic(登録商標)L−121の下で商業的に入手可能である。一般に、SP油エマルジョンは、約1〜3%体積/体積のブロックコポリマー、約2〜6%体積/体積のスクアレン、より詳細には約3〜6%のスクアレン、および約0.1〜0.5%体積/体積のポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを含み、残りの部分は緩衝塩溶液であろう免疫刺激アジュバント混合物である。1態様において、そのSPオイルエマルジョンは最終組成物中に約1%〜25%、好ましくは約2%〜15%、より好ましくは約5%〜12%v/vのv/v量で存在する。
【0098】
本発明の組成物における使用に関する適切なアジュバントのさらに別の例は、油、通常は軽質流動パラフィン中に溶解した脱油レシチンからなるAMPHIGEN(商標)アジュバントである。
【0099】
本発明の組成物において有用なアジュバントの他の例は、以下の専売のアジュバントである:Microsol Diluvac Forte(登録商標)二重(duel)エマルジョンアジュバントシステム、Emunadeアジュバント、およびXsolveアジュバント。EmunadeおよびXsolveアジュバントは両方とも水中軽鉱油のエマルジョンであるが、Emunadeはalhydrogelも含有し、d,l−α−トコフェリルアセテートはXsolveアジュバントの一部である。本発明の組成物における使用に関する適切なアジュバントのさらに別の例は、ImpranFLEX(商標)アジュバント(油中水型アジュバント)である。適切なアジュバントのさらに別の例は、カルボマー(Carbopol(登録商標))に基づくアジュバントである。好ましいCarbopol(登録商標)アジュバントには、Carbopol(登録商標)934ポリマーおよびCarbopol(登録商標)941ポリマーが含まれる。
【0100】
1態様において、そのアジュバントまたはアジュバント混合物は用量あたり約100μg〜約10mgの量で添加される。別の態様において、そのアジュバント/アジュバント混合物は用量あたり約200μg〜約5mgの量で添加される。さらに別の態様において、そのアジュバント/アジュバント混合物は用量あたり約300μg〜約1mgの量で添加される。
【0101】
そのアジュバントまたはアジュバント混合物は典型的には本発明のワクチン組成物中に約1%〜25%、好ましくは約2%〜15%、より好ましくは約5%〜12%v/vのv/v量で存在する。
【0102】
そのワクチン中に含ませることができる他の“免疫調節剤”には、例えば1種類以上のインターロイキン類、インターフェロン類、または他の既知のサイトカイン類が含まれる。1態様において、そのアジュバントはシクロデキストリン誘導体またはポリ陰イオン性ポリマー、例えばそれぞれ米国特許第6,165,995号および第6,610,310号において記載されているシクロデキストリン誘導体またはポリ陰イオン性ポリマーであることができる。
【0103】
さらなる観点は、本発明に従う免疫原性組成物を調製するための方法に関する。この方法には以下の工程が含まれる:i)M.hyoを適切な培地中で18〜144時間の範囲の期間にわたって培養し;ii)続いてそのM.hyo培養物を不活化し;iii)その不活化された培養液を回収し、ここでその不活化された培養液は可溶性液体画分および不溶性細胞性物質の両方を含むM.hyo全細胞調製物を含み;iv)その可溶性液体画分を不溶性細胞性物質から分離し;そしてv)IgGおよび抗原/免疫グロブリン免疫複合体の両方をその分離された可溶性液体画分から実質的に除去する。
【0104】
M.hyoを培養するための適切な培地の例は、PPLOブロス(マイコプラズマブロス基礎培地)であり、それは栄養強化物質を補った場合マイコプラズマを分離および培養するために用いられる。
【0105】
一部の態様において、M.hyoの培養物を後期対数増殖期まで増殖させ、その後その培養物を不活化する。一部の他の態様において、その培養物をpHを(例えば約7.8まで)上げることにより不活化する。これはその生産培養物(production culture)を不活化剤、例えばバイナリーエチレンイミン(binary ethyleneimine)(BEI)に曝露することにより行われる。BEIはL−ブロモエチルアミン臭化水素酸塩(BEA)の生産培養物中での保温の間にその場で生成される。続いて、その不活化された培養物のpHを、例えば1当量のその溶液内の不活化剤を中和する薬剤を添加することにより中和する。一部の態様において、その不活化剤はBEIであり、その中和剤はチオ流酸ナトリウムである。1態様において、その不活化された培養物のpHをチオ流酸ナトリウムを添加することにより約7.4に調節する。
【0106】
一部の態様において、M.hyo全細胞調製物の可溶性液体画分を一般に用いられる方法を用いて不溶性細胞性物質から分離する。1態様において、この分離は濾過工程による。別の態様において、この分離は遠心分離工程による。さらに別の態様において、その分離は沈殿工程による。
【0107】
1態様において、不活化され中和されたM.hyo全細胞調製物の可溶性液体画分をプロテインA樹脂で処理してその中のIgGおよび抗原/免疫グロブリン免疫複合体の両方を実質的に除去する。他の態様において、プロテインG樹脂を用いてその可溶性液体画分中に含有されるIgGおよび抗原/免疫グロブリン免疫複合体の両方を実質的に除去することができる。IgGおよび抗原/免疫グロブリン免疫複合体の両方をプロテインAまたはプロテインG樹脂のどちらかを用いて除去するための方法は、当該技術で周知である。
【0108】
さらなる観点によれば、本発明に従う免疫原性組成物、例えばワクチンを調製するための方法は、上記で記載したような可溶性M.hyo抗原を調製し、これを適切なアジュバントおよび1種類以上の薬学的に許容可能なキャリヤーと混合することを含む。この方法には場合により少なくとも1種類の追加のブタ抗原、例えば上記で記載したようなPCV2抗原および/またはPRRSウイルス抗原を添加することが含まれる。
【0109】
本発明のさらなる観点はキットに関する。“キット”は、一緒にまとめられた複数の構成要素を指す。1態様において、本発明に従うキットには、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyo)全細胞調製物の可溶性部分が含まれる免疫原性組成物を含むボトル(または他の適切な容器(receptable))が含まれ、ここでそのM.hyo調製物の可溶性部分は(i)IgGおよび(ii)抗原/免疫グロブリン免疫複合体の両方を実質的に含まない。場合により、そのキットにはさらに取扱い説明書が含まれることができる。その取扱い説明書には、その免疫原性組成物を投与するための情報が含まれる。
【0110】
一部の態様において、そのM.hyo調製物の可溶性部分を含有するボトルにはさらにPCV2抗原が含まれる。一部の態様において、そのボトル中のM.hyo/PCV2の組み合わせは使用準備済の液体組成物として提供される。
【0111】
他の態様において、そのキットにはPRRSウイルス抗原を含む第2のボトルが含まれる。一部の態様において、そのPRRSウイルス抗原は遺伝子改変された生ウイルスの形態であり、それは凍結乾燥状態で提供される。そのような場合では、その取扱い説明書には、そのPRRSウイルス構成要素をM.hyo/PCV2の組み合わせを含有するボトルからの液体内容物を用いて再水和させるための指示が含まれるであろう。その取扱い説明書には、結果として得られたM.hyo/PCV2/PRRSの3価配合物(単数または複数)を投与するための情報も含まれるであろう。
【0112】
一部の態様において、この発明に従う免疫原性組成物は、M.hyoに対する母系由来抗体を有するブタに投与される。他の態様において、本発明の免疫原性組成物は、M.hyoおよびブタにおいて疾患を引き起こし得る少なくとも1種類の他の微生物の両方に対する母系由来抗体を有するブタに投与される。
【0113】
一部の態様において、本発明の免疫原性組成物、例えば単価または多価ワクチンは、3週齢以上の子ブタに投与される。しかし、本発明に従う単価または多価ワクチン組成物は若雌ブタを繁殖前に再ワクチン接種するために用いることもできることが意図されている。当該技術で既知であるように、若雌ブタは妊娠したことがない雌のブタである。ワクチン接種された若雌ブタは、母系由来抗体をそれらの授乳している新生仔に初乳を介して渡すであろう。
【0114】
さらに、本発明に従う単価または多価ワクチンは繁殖している畜群を年1回再ワクチン接種するために用いることができることが意図されている。好ましくは、本発明に従う単価または多価ワクチンは1回量でブタ(例えば子ブタまたは若雌ブタ)に投与される。1態様において、本発明に従う多価ワクチンは別々の単価ワクチンを投与前に混合する必要がなく、すなわち、それは使用準備済の配合物として提供される。別の態様において、多価配合物は、第1ボトル中に収容された2価ワクチンを第2ボトル中に収容された単価ワクチンと混合することを必要とする。場合により、追加の抗原をこれらのボトルのどちらかに添加することができる。
【0115】
一部の態様において、免疫の開始は本発明に従う単価または多価ワクチン組成物によるワクチン接種の2〜3週間後からである。他の態様において、免疫の期間は本発明に従う単価または多価ワクチン組成物によるワクチン接種後約17〜23週間である。
【0116】
以下の実施例は、本発明に従う好ましい材料および手順を述べる。しかし、これらの実施例は説明としてのみ提供されているのであって、その中のいずれも本発明の範囲全体に対する限定とみなされるべきではない。
【実施例】
【0117】
実施例1:PCV2と組み合わせ可能なM.hyo抗原に関するマイコプラズマ・ハイオニューモニエの産生法
M.hyoの発酵および不活化
シードスケール(seed scale)および抗原生成のための培地は以下のように調製された。ブタ心臓由来胸膜肺炎(Pleuropenumonia)様生物(PPLO)ブロス(BD Biosciencesカタログ番号21498)を製造業者の指示通りに作製し(すなわち21g/L)、酵母抽出物溶液をUSP中で21g/Lで作製した。次いで酵母抽出物溶液をPPLOに6.25%で添加し、その混合物を121℃で30分以上加熱することにより滅菌した。システイン塩酸塩を90g/Lで調製し、濾過滅菌した。デキストロース溶液を、USP水1リットルあたり450gのデキストロースを添加し、続いて加熱滅菌することにより作製した。最終的な培地を調製するため、ブタ血清をその基礎培地に10%で添加し、続いてシステインを0.01%で、デキストロースを1.0%で添加した。その培地に10%v:vのM.ハイオニューモニエ(M.hyopeumoniae)(株P−5722−3)の対数期培養物を植え付けた。その培養物を37℃に保ち、pHおよびdOをそれぞれ7.0および25%で維持した。後期対数増殖期において、その培養物を2−ブロモエチルアミン臭化水素酸塩(BEA)から生成されるアジリジン化合物であるバイナリーエチレンイミン(BEI)により不活化した。具体的には、不活化は2−ブロモエチルアミン臭化水素酸塩(BEA)を4mMの終濃度まで添加することによりpHを7.8に上げ、24時間保温することにより行われた。BEIを、チオ流酸ナトリウムを1:1のモル比で添加し、続いてさらに24時間保温することにより中和した。その不活化された培養液を、さらなる処理まで2〜8℃で保った。
【0118】
実施例2:キメラブタサーコウイルス(cPCV)1−2の生成法
cPCV1−2を、病原性ブタサーコウイルス2型(PCV2)の免疫原性カプシド遺伝子を非病原性ブタサーコウイルス1型(PCV1)のゲノムバックボーン中にクローニングすることにより構築した。そのキメラDNAクローンの構築に関する手順は、例えば米国特許第7,279,166号において記載されており、それは参照により本明細書にそのまま援用される。そのキメラウイルスの感染性ストックをDr.X.J.Meng(バージニア工科大学、バージニア州ブラックスバーグ)から得て、それを用いて0.05%ラクトアルブミン加水分解物(LAH)、30μg/mLゲンタマイシン硫酸塩、および5%ウシ胎児血清を補った最少必須培地(MEM)中で増殖させたブタ腎臓(PK)−15細胞を感染させた。結果として得られたcPCV1−2に感染したPK−15細胞を、2〜3%のウシ胎児血清を含むことを除いて同じ増殖培地を用いてさらに4回連続して継代することにより、さらに増やした。5回目の継代培養物を凍結し、融解させ、濾過し、得られた溶解物を用いてプレマスターシード(pre−master seed)を調製し、続いてマスターシードを調製した。
【0119】
ウイルスシードを生成するために用いた培地は、ウイルスストックの生成において用いた培地と同じであった。その増殖培地に関して、MEM、OptiMEM、または均等物がPK−15細胞株を増殖のために蒔く(planting)ために用いることができる基礎培地である。その増殖培地に、10%までのウシ血清、0.5%までのラクトアルブミン加水分解物、0.5%までのウシ血清アルブミン、および30μg/mLまでのゲンタマイシンを補うことができる。ウイルス繁殖培地に関して、MEM、OptiMEM、または均等物が用いられる。そのウイルス繁殖培地に、0.5%までのラクトアルブミン加水分解物、2%までのウシ血清、0.5%までのウシ血清アルブミン、および30μg/mLまでのゲンタマイシンを補うことができる。必要に応じて、細胞を維持するために5g/Lまでのグルコースおよび5mmol/LまでのL−グルタミンをその増殖培地および/またはそのウイルス繁殖培地に添加することができる。
【0120】
そのcPCV1−2マスターシードウイルスをPK−15細胞の細胞懸濁液に添加し、3時間までの間吸着させる。シードウイルスを0.1〜0.0001の感染多重度(MOI)を与えるように増殖基礎培地中で希釈する。
【0121】
PK−15細胞の培養物に、最初にワーキングシードウイルスを細胞を蒔く時点で、または細胞がおおよそ20%〜50%培養密度に達した際に植え付ける。この最初の継代は、抗原ストックの生成のための“1工程感染法”と呼ぶことができ、またはさらに連続継代のために用いることができる。連続継代に関して、cPCV1−2に感染したPK−15細胞を、ウイルス繁殖のために、1:5〜20の比率での連続分割によりさらに7継代まで拡張する。前の継代からの感染した細胞懸濁液を含有する培地は、次の継代のためのシード物質の役目を果たす。そのcPCV1−2に感染した細胞を、細胞が90%以上の培養密度に達した際に、それぞれの継代に関して3(3)〜14日間36±2℃で培養する。そのcPCV1−2ウイルスはウイルス複製の間に観察可能な細胞変性変化を引き起こす。回収時に、細胞の丸まりおよびかなりの浮遊している破壊片が観察される。培養物を細菌または真菌の汚染の視覚的な証拠に関しても観察する。cPCV抗原に関する回収間の培養時間を下記の表1において提供する:
【0122】
【表1】
【0123】
cPCV1−2培養液を無菌の容器中に回収し、既知の方法を用いたマイコプラズマ試験のために試料採取する。複数回の回収をローラーボトル、バイオリアクターおよび灌流容器から行うことができる。
【0124】
回収したcPCV1−2ウイルスの不活化の前に、1以上の抗原ロットを限外濾過により(例えば60倍まで)濃縮することができる。その濃縮物を平衡塩類溶液で洗浄して血清タンパク質を低減することができる。
【0125】
cPCV1−2ウイルスの不活化、弱毒化、または解毒の方法がここで記載されるであろう。cPCV抗原の濃縮後、ベータ−プロピオラクトン(BPL)をプールしたcPCV1−2ウイルス物質に添加して、0.2%v/vのおおよその濃度を得る。次いでそのプールしたウイルス液を最低15分間攪拌し、次いでその不活化バルク抗原液を第2の無菌容器に移す。移した抗原液を2〜7℃で一定して攪拌しながら最低24時間維持する。最低24時間後、0.2%v/vのBPLの2回目の添加分をそのプールした懸濁液に添加する。その内容物を続いて攪拌し、第3の容器に移し、2〜7℃で一定して攪拌しながら84時間より短くない追加の時間の間維持する。一般に、その総不活化時間は108時間より短くなく、120時間より長くない。その不活化法を下記の表2において要約する。
【0126】
【表2】
【0127】
不活化を0.1Mより高くない終濃度のチオ硫酸ナトリウムの溶液の添加により終了する。不活化抗原ストックのpHを、NaOHまたはHClを用いて約6.8に調節する。不活化後、代表試料をそのプールから採取して不活化の完了に関して試験する。その不活化cPCV1−2抗原製品を、力価ELISAにより測定した際に1.0RPより大きい目標値を満たすように標準化する。
【0128】
実施例3:M.hyo抗原の下流の処理およびこれらの処理された抗原の分析試験
M.hyo抗原の下流の処理:
(上記で実施例1において記述したように調製された)不活化された発酵液を、以下のようなそれぞれの示された群に関して処理した。これらの処理されたM.hyo抗原を、下記の実施例4において用いた。
【0129】
T02:(バルク全体) 未処理。
【0130】
T03:(10倍UF濃縮) 100KDa分子量カットオフ膜(中空繊維)によるタンジェント流濾過により濃縮した。最終的な体積の低減は10倍に等しかった。
【0131】
T04およびT05:(10倍UF濃縮および遠心分離) (T03からの)濃縮したマイコプラズマ細胞を約20,000gでの遠心分離(Sorvall model RC5B)により集め、PBSで1回洗浄した。
【0132】
T06およびT07:(10倍遠心分離) 不活化した発酵液を約20,000gで遠心分離し(Sorvall model RC5B)、細胞をPBS中で再懸濁し、続いて追加の遠心分離を行うことにより1回洗浄した。最終的な体積の低減は10倍に等しかった。
【0133】
T08:(10倍遠心分離および加熱) マイコプラズマ細胞を濃縮し、T06に従って濃縮および洗浄し、65℃で10分間加熱した。
【0134】
T09:(無細胞上清) T06に関して記載したような最初の遠心分離から集めた上清を、0.2ミクロンフィルター(Nalgene)を通して濾過滅菌した。
【0135】
T10:(無細胞上清−プロテインA処理) (T09に従って調製された)無菌の上清をプロテインA樹脂(プロテインA Sepharose、Pharmacia Inc)と10:1の体積比で4時間混合した。樹脂を滅菌濾過により除去し、濾過された流体を2〜8℃で保管した。このプロセスは、抗体および免疫複合体を除去するために発酵後の“下流の”プロテインA処理を用いる。本発明は上流のタンパク質A処理を除外しないが、本発明者らは、M.hyoの場合、増殖培地の上流のプロテインA処理は未処理の培地と比較してより低く一貫しないp46の結果をもたらすことを見出している(データは示していない)。
【0136】
M.hyoの下流処理された抗原の分析試験
(上記で記載したように調製された)下流処理されたM.hyo抗原調製物を、M.hyo特異的p46抗原の回収およびPCV2抗体の存在に関して試験した。加えて、これらのM.hyo抗原調製物を、遺伝子型1(g1TTV)および遺伝子型2(g2TTV)が含まれるトルクテノウイルス(TTV)の存在に関して試験した。その結果を下記で表3において示す。
【0137】
【表3】
【0138】
上記の表3に関して、M.hyo特異的p46抗原の回収がM.hyoの下流処理された抗原の調製のそれぞれに関して実証された。加えて、以下の処理はPCV2抗体をうまく除去した:10倍UF濃縮および遠心分離、10倍遠心分離、10倍遠心分離および加熱、ならびに無細胞上清(プロテインA処理)。TTVに関して、以下の処理はg1TTVをうまく除去した:10倍UF濃縮および遠心分離、10倍遠心分離および加熱、ならびに無細胞上清(プロテインA処理)。10倍UF濃縮および遠心分離と名付けられた処理のみがg2TTVを除去した。遺伝子型1および2が含まれるトルクテノウイルス分離株は米国特許出願公開第20110150913号において記載されており、それは参照により本明細書にそのまま援用される。
【0139】
当該技術においてプロテインAはIgGに結合することが知られているため、当業者にはPCV2抗体だけでなくPRRS抗体、HPS抗体、およびSIV抗体が含まれる他のブタ抗体もプロテインA処理により有効に除去されるであろうことは理解されている。これは、この発明の無細胞のプロテインA処理されたM.hyo上清を、抗原間の免疫学的干渉がないことにより、PCV2抗原とだけではなく他のブタ抗原とも適合性にする。加えて、非防御的細胞破壊片の除去ならびに免疫グロブリンおよび抗原/免疫グロブリン複合体の除去はより安全なワクチンを作製することが当然予想される。
【0140】
実施例4:M.hyo実験ワクチン配合物の調製
全ての実験的なM.hyoワクチンは5%の終濃度のAmphigenアジュバントを用いて配合された。加えて、全てのワクチンをp46 ELISAで標準化し、チメロサール(thimerosol)で保存した。その実験ワクチン配合物を、上記の処理T02〜T10に従って処理したM.hyo抗原を用いて調製した。加えて、処理T01はプラセボ(M.hyo抗原なし、5%Amphigenアジュバントのみ)に対応しており、一方で処理T11は有効期限が切れたバクテリンに基づくM.hyoワクチン(RespiSure−ONE(登録商標)、Pfizer Animal Health)に対応する陽性対照である。これらの配合物を下記の表4において記載する。
【0141】
【表4】
【0142】
実施例5:異なる下流のプロセスからのM.hyo抗原を用いたM.hyoワクチンのインビボ有効性の評価
この研究は、異なる下流のプロセス(DSP)からのM.hyo抗原を用いたマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(M.hyo)ワクチンのインビボ有効性を評価するために実施された。3週齢のブタに、上記の表4において記載された1回量の異なるワクチン配合物を筋内接種した。16匹の動物がその処置群のそれぞれに含まれていた。動物にワクチン接種の21日後に病毒性M.hyo野生分離株(field isolate)を用いて負荷をかけた。動物を負荷の28日後に検死し、肺を取り出してM.hyo感染と一致する硬化に関して採点した。M.hyo負荷に対する防御に関する主な基準は肺硬化スコアであった。一般に、家畜地方病性肺炎により引き起こされる肺病変の大きさおよび増殖速度への有害な作用の間には関連があることが受け入れられている。下記の表5は、それぞれの処置群に関する肺病変スコアを含有する。統計的有意性はそれぞれの群に関する肺スコアの混合モデル分析により決定された。
【0143】
【表5】
【0144】
上記の表5に関して、異なる下流の処理からのM.hyo抗原を用いた結果は、T04以外の全ての実験ワクチンはプラセボと有意に異なることを示した。これらのM.hyo病変の結果を
図1においてグラフにより示す。
図1において示されるように、T04は許容できない結果を与えた。全ての他の処置はプラセボ(T01)と有意に異なっていた。肺硬化スコアは、T02、T03およびT09〜T11はM.hyo負荷に対する最も有効な防御を与えることを示した。
【0145】
実験ワクチンのp46相対力価を、二重抗体サンドイッチ酵素結合免疫吸着アッセイ(DAS ELISA)を用いることにより評価した。上記の表5において示したp46 DAS ELISAの結果は、全ての実験ワクチンが目標力価を超えたことを示している。加えて、そのp46相対強度は、1ヶ月の期間にわたるワクチンの貯蔵の間維持されるか、または増大するかのどちらかであった(データは示していない)。時間の経過にわたる力価の認知される増大が、熱処理した抗原を除いて、遠心分離した抗原において観察された。いずれか1つの理論により束縛されることを望むわけではないが、時間の経過に伴い細胞の“死骸(carcasses)”が壊れ、遠心分離した抗原の場合においてより多くの膜に結合したp46抗原を放出したと思われる。
【0146】
実施例6:PCV2抗原を用いた実験M.hyoワクチンの適合性の評価
この試験は、異なる下流のプロセスからのM.hyo抗原を用いたM.hyo実験ワクチンのPCV2抗原との適合性を評価するために実施された。そのM.hyo実験ワクチン配合物は上記の表4および5において記載されている。これらのワクチンに関する観察されたp46相対力価は上記の表5において記載されている。これらのM.hyo実験ワクチンをそれぞれPCV2抗原と組み合わせた。この実施例において、そのPCV2抗原は、上記で実施例2において記載した通りに調製した死菌PCV1型−2型キメラウイルス(Fostera PCV)であった。そのキメラウイルスを組成物中に約1.6≦RPの初期レベルで含ませ、ここでそのRPは、有効参照ワクチンと比較したPCV2 ELISA抗原定量化(インビトロ力価試験)により決定された相対力価単位である。
【0147】
実験M.hyo/PCV2組み合わせ配合物をPCV2 ELISAにより評価した。その結果を
図2において示す。
図2において示されるように、以下の下流プロセスからのM.hyo抗原調製物のみがPCV2抗原と適合性であった:限外濾過および遠心分離(T04およびT05)、遠心分離(T06およびT07)、遠心分離+熱(T08)およびプロテインA処理した上清(T10)。これらの内で、M.hyoのプロテインA処理した上清は、キメラウイルスおよびAmphigenアジュバントが含まれるがM.hyo抗原は含まれないプラセボ対照と比較した場合に最もPCV2抗原と適合性であった。プロテインA処理した上清中のキメラPCVウイルスのレベルは、プラセボに関する1.69RPと比較して1.5RPであった。従って、プロテインA処理したM.hyo可溶性抗原調製物およびキメラウイルスのPCV2抗原の間には免疫学的干渉はない、または最小限であると結論付けられた。
【0148】
上記の実施例5において実証されたプロテインA処理したM.hyo上清のインビボ有効性は、本実施例において記載した結果と合わせて、プロテインA処理した上清はM.hyo−PCV2の組み合わせに関する有効なプラットフォームである可能性があることを示した。
【0149】
実施例7:異なるアジュバント配合物における1ボトルPCV2/M.hyo混合ワクチンのPCV2有効性の評価
この研究は、異なるアジュバント配合物における1ボトルPCV2/M.hyo混合ワクチンにおけるPCV2有効性を評価するために設計された。この実施例において、そのPCV2抗原は死菌PCV1型−2型キメラウイルス(Fostera PCV)であった。そのキメラウイルスを、実質的にIgGを含まないM.hyo可溶性抗原調製物(すなわち、プロテインA処理した上清)と組み合わせた。
【0150】
液体の処理:
(上記で実施例1において記載した)不活化M.hyo発酵液を、以下のような示した群のそれぞれに関して処理した。
【0151】
T02〜T04:(上記で記載した)生M.ハイオニューモニエ細胞を含有する発酵液を約20,000×gで遠心分離し(Sorvall RC5B)、上清を集め、0.2μMフィルターを通して滅菌した。rProtein A Sepharose(製品番号17−5199−03、GE Healthcare)を1Lのクロマトグラフィーカラム中に充填した。貯蔵用緩衝液を除去し、2カラム体積の1M酢酸で処理した後、その樹脂を5カラム体積の50mM NaPO4/1M NaCl緩衝液、pH 7.04で平衡化した。おおよそ2リットルの澄ませた/濾過したM.ハイオニューモニエ抗原含有液を、プロテインA樹脂に100cm/hrの流速で通した。その素通り画分を集め、0.2μMフィルターにより滅菌した。
【0152】
T05:これはFostera PCV様配合物(M.hyo抗原なし)に対応する陽性対照である。このFostera PCV様配合物中のキメラウイルスのレベルは、おおよそ最小免疫用量(MID)配合レベルであった。そのキメラウイルスはそのPCV2/M.hyo実験ワクチン中に類似の配合レベルで含まれていた。
【0153】
全ての実験PCV2/M.hyoワクチンは異なるアジュバント配合物を用いて配合された。その実験ワクチン配合物は、上記の処理T02〜T04に従って処理されたM.hyo抗原を用いて調製された。加えて、処理T01はプラセボ(滅菌生理食塩水)に対応していた。
【0154】
全てのワクチンをp46 ELISAにより標準化し、チメロサール(thimerosol)を用いて保存した。これらの実験配合物を下記の表6において記載し、ここで記号
*はグローバル(global)M.hyoシードからのM.hyo抗原(プロテインA処理した上清)を示し、記号
**は治験中の獣医学用製品(Investigational Veterinary Product)(IVP)一連番号を示す。
【0155】
【表6】
【0156】
3週齢のブタに1回量の上記で表6において記載した異なるワクチン配合物を筋内接種した。16匹の動物がその処置群のそれぞれに含まれていた。動物にワクチン接種の21日後に病毒性PCV2野生分離株を用いて負荷をかけた。
【0157】
図3は、異なるアジュバントプラットフォームを用いて観察されたPCV2ウイルス血症の結果(PCV2定量的PCR)を示すグラフである。PCV2ウイルス血症が主要有効性変数として用いられたことを特筆する。そのPCV2ウイルス血症の結果はDNAコピー数/mlとして示されている。
図3において示されるように、全ての処置は28、35および42日目(負荷は21日目であった)においてプラセボと比較して有意に低いウイルス血症を有していた。10% SPオイルアジュバントは28および35日目において5%Amphigenと比較して有意に低いウイルス血症を有していた。5%Amphigen+5%SLCDアジュバントは、28および35日目において5%Amphigenと比較して有意に低いウイルス血症を有していた。20%SLCDアジュバントプラットフォームは、28、35および42日目において5%Amphigenと比較して有意に低いウイルス血症を有していた。
【0158】
PCV2の血清学、PCV2の糞便への排出、PCV2の鼻への排出、細胞媒介免疫(CMI)応答、リンパ球枯渇、および免疫組織化学(IHC)も二次有効性変数として監視した。これらの結果がここで下記に記載されるであろう。
【0159】
図4は、その試験の1、20および42日目(負荷は21日目であった)におけるPCV2 ELISAの結果を示すグラフである。それぞれの試料の状態を試料対陽性比(S/P)として表した。
図4において示されるように、20%SLCDは20日目および42日目の両方においてプラセボ(T01)と有意に異なる唯一の処置であった。また、5%Amphigenは20日目においてプラセボと有意に異なっていない唯一の処置であった。
【0160】
図5は、T02〜T04処理対プラセボ(T01)により得られたPCV2の糞便への排出を示すグラフである。これらの結果は、PCV2のDNAのコピー数/mlとして表されている。
図5における結果は、全ての処置は42日目においてプラセボと比較した際に有意により少ない糞便への排出を有していたことを示している。加えて、5%Amphigenおよび5%SLCD(T04)は42日目において5%Amphigen(T03)と比較して有意により少ない糞便への排出を有していた。他には処置による差は認められなかった。
【0161】
図6は、T02〜T04処理対プラセボ(T01)により得られたPCV2の鼻への排出を示すグラフである。これらの結果は、PCV2のDNAのコピー数/mlとして表されている。
図6における結果は、全ての処置は42日目においてプラセボと比較した際に有意により少ない鼻への排出を有していたことを示している。加えて、20%SLCD(T05)は42日目において5%Amphigen(T03)と比較して有意により少ない鼻への排出を有していた。他には処置による差は認められなかった。
【0162】
図7(AおよびB)は、PCV2特異的な細胞媒介免疫(CMI)応答を測定するインターフェロン−ガンマ(IFN−γ)試験の結果を示す2つのグラフである。ワクチン接種後/負荷前(
図7A)およびワクチン接種後/負荷後(
図7B)のCMIの結果が示されている。これらのグラフにおいて、5×10
6細胞の刺激を有意であるとみなした(...)。全てのPCV2/M.hyo実験ワクチンはワクチン接種後に検出可能なIFN−γ応答を与えた。10% SPオイル(T02)はワクチン接種後に最も強いIFN−γ応答を駆り立てた(drove)。20%SLCD(T05)はより早い応答を誘導したが、20日目において最も低い応答であった。大きな負荷後の応答が存在し、特にプラセボ群において見られた。加えて、その負荷後の応答はプラセボ群と比較してワクチン接種したブタの処置群においてより低かった。
【0163】
下記の表7は、プラセボと対比した実験処置により得られたリンパ球枯渇を示す。
【0164】
【表7】
【0165】
上記で表7において示した結果は、全てのワクチンがリンパ球枯渇に対する強い保護を与えたことを示している。また、統計的に有意なワクチン処置による差異は観察されなかった。
【0166】
下記の表8は、プラセボと対比した実験処置により得られた免疫組織化学を示す。
【0167】
【表8】
【0168】
上記で表8において示した結果は、全てのワクチンが免疫組織化学により証明されるようにPCV2コロニー形成に対する強い防御を与えたことを示している。また、統計的に有意なワクチン処置による差異は観察されなかった。
【0169】
結論として、この実施例において示した結果は、M.hyo可溶性抗原調製物はPCV2有効性に干渉しないことを実証している。その結果は、全てのPCV/M.hyo実験ワクチン配合物はPCV2負荷に対する有効性を提供することも示している。加えて、その結果は、異なるアジュバント配合物を用いて得られたいくらかの統計的および数値的な差が存在し、10%SPオイルが最も強い有効性をもたらすことを示している。
【0170】
実施例8:異なるアジュバント配合物を用いた1ボトルPCV2/M.hyo混合ワクチンのM.hyo有効性の評価
この研究は、異なるアジュバント配合物を用いた1ボトルPCV2/M.hyo混合ワクチンのM.hyo有効性を評価するために設計された。そのM.hyo抗原を1つのボトル中でブタサーコウイルス(1型−2型キメラ、またはPCV1−2、死菌ウイルス)と組み合わせた。
【0171】
液体の処理:
(上記で実施例1において記載した)不活化M.hyo発酵液を、以下のようなそれぞれの示した群に関して処理した。
【0172】
T02〜T04:これらの処理は、上記で実施例7において処理群T02〜T04に関して記載した処理と同じであった。
【0173】
T05:これは上記で実施例1において見出し“発酵および不活化”の下で記載したような不活化M.hyo細胞(M.hyoバクテリン)を用いて配合された。
【0174】
全ての実験PCV2/M.hyoワクチンは異なるアジュバント配合物を用いて配合された。その実験ワクチン配合物は、処理T02〜T04に従って処理されたM.hyo抗原を用いて調製された。加えて、処理T01はプラセボ(無菌生理食塩水)に対応していた。処理T05は有効期限が切れたRespiSure(登録商標)ワクチンに対応する陽性対照であり、それはM.hyoバクテリンに基づくワクチンである(Pfizer Animal Health)。
【0175】
これらの実験配合物を下記の表9において記載し、ここで記号
*はグローバルM.hyoシードからのM.hyo抗原(プロテインA処理した上清)を示し、記号
**は治験中の獣医学用製品(IVP)一連番号を示す。
【0176】
【表9】
【0177】
3週齢のブタに1回量の上記で表9において記載した異なるワクチン配合物を筋内接種した。14匹の動物がプラセボおよび10%SPオイル群の両方に含まれており、13匹の動物が陽性対照群に含まれており、16匹の動物が5%Amphigenおよび5%Amphigen+5%SLCD群の両方に含まれていた。
【0178】
動物にワクチン接種の21日後に病毒性M.hyo野生分離株を用いて負荷をかけた。動物を負荷の28日後に検死し、肺を取り出してM.hyo感染と一致する硬化に関して採点した。下記の表10は、それぞれの処置群に関する肺病変スコアを含有する。統計的有意性はそれぞれの群に関する肺スコアの混合モデル分析により決定された。
【0179】
【表10】
【0180】
上記で表10において示したように、それぞれ4.3%および4.7%の平均肺スコアを有していた10%SPオイルおよび5%Amphigen処置群と比較した場合に、プラセボ群は13.1%の平均肺病変スコアを有していた。10%SPオイルおよび5%Amphigen配合物は両方とも肺病変を低減し、および/または予防した。従って、その10%SPオイルまたは5%Amphigenを用いて配合した実験PCV/M.hyoワクチンは有効であると考えられた。PCV2抗原はこれらの配合物のM.hyo有効性に干渉しているようには見えなかった。
【0181】
対照的に、5%Amphigen+5%SLCD群は12.0%の平均肺病変スコアを有しており、それは、それがプラセボと比較した場合に異なっていなかった点で、許容できない結果であった。結果として、5%Amphigen+5%SLCDを用いて配合した実験PCV/M.hyoワクチンは有効とは考えられなかった。
【0182】
低減した動物の数および肺病変スコアにおける高い変動性のため、統計的な処置の作用をこの研究において確証的に実証することはできなかった。この理由のため、10%SPオイル中のPCV/M.hyo実験配合物のM.hyo有効性を試験するために別の研究を設計するであろうことが決められた。この反復研究を下記の実施例9において示す。
【0183】
実施例9:10%SPオイル中の1ボトルPCV2/M.hyo混合ワクチンのM.hyo有効性の評価
この研究は、標準的なM.hyo製造プロセスにより調製された対照ワクチンと比較した、IgG除去のためにプロテインAを利用する異なるM.hyo製造プロセスにより調製された4種類の実験PCV2/M.hyoワクチン(下記の表11中の一連番号L0711RK11、L0711RK12、L0711RK13およびL0711RK14)のM.hyo画分有効性を評価するために設計された概念実証である。これらの4種類の実験PCV2/M.hyoワクチンのそれぞれには10%SPオイルがアジュバントとして含まれていた。
【0184】
液体の処理:
T02:上記で実施例1において“発酵および不活化”の下で記載したような不活化M.ハイオニューモニエ抗原。
【0185】
T03およびT04:上記で実施例1において“発酵および不活化”の下で記載したような不活化M.ハイオニューモニエ細胞を用いて配合した。
【0186】
T05:M.ハイオニューモニエを増殖させるために用いられる培地のプロテインA処理。PPLO(ブタ心臓由来)を製造業者の指示通りに作製し(すなわち21g/L)、酵母抽出物溶液をUSP中で21g/Lで作製した。酵母抽出物溶液をPPLOに6.25%で添加し、その混合物を121℃で30分以上加熱することにより滅菌した。システイン塩酸塩を90g/Lで調製し、濾過滅菌した。デキストロース溶液を、USP水1リットルあたり450gのデキストロースを添加し、続いて加熱滅菌することにより作製した。最終的な培地を調製するため、ブタ血清をその基礎培地に10%で添加し、続いてシステインを0.01%で、デキストロースを1.0%で添加した。完成したPPLO培地中の抗体をプロテインAを用いた処理により除去した。簡潔には、1リットルのrProtein A Sepharose(製品番号17−5199−03 GE Healthcare)をガラスカラム(10×11.5cm)中に充填した。貯蔵用緩衝液を除去した後、そのカラムを2カラム体積の1M酢酸で処理した。その樹脂を5カラム体積の50mM NaPO4、1M NaCl緩衝液(pH 7.0)で平衡化した。15リットルの完成したPPLO培地をその樹脂上に140cm/hrの線形流速で装填した。そのカラム素通り画分を集め、0.2ミクロンフィルター(Sartorius)を通して濾過滅菌した。その処理した培地を用いて、上記で“発酵および不活化”の下で記載したようにM.ハイオニューモニエ細胞を繁殖させた。(細胞が含まれる)不活化培養物全体を最終的なワクチン中に配合した。
【0187】
T06:上記で実施例1において“発酵および不活化”の下で記載したように不活化M.ハイオニューモニエ細胞を調製した。その不活化した発酵液を、約20,000×gで30分間遠心分離(Sorvall RC5B)し、上清を0.2uM濾過により滅菌した。115mlのrProtein A樹脂(製品番号17−1279−04、MAbSelect、GE Healthcare)をクロマトグラフィーカラム(5×6cm)中に充填した。貯蔵用緩衝液を除去し、2カラム体積の1M酢酸で処理した後、その樹脂を5カラム体積の50mM NaPO4/1M NaCl緩衝液、pH 7.01で平衡化した。おおよそ1.2リットルの澄ませた/濾過したM.ハイオニューモニエ抗原含有液を、その樹脂に120cm/hrの流速で通した。その素通り画分を集め、0.2μMフィルターにより滅菌した。
【0188】
T07:上記で実施例1において“発酵および不活化”の下で記載したように不活化M.ハイオニューモニエ細胞を調製した。その不活化した発酵液を、タンジェント流濾過により澄ませた。簡潔には、0.2μMの公称孔径を有するポリエーテルスルホンフィルター(GE HealthCare、製品番号56−4102−71)を0.5Nの水酸化ナトリウム溶液で衛生化し、続いて滅菌USP水で大規模に(extensive)すすいだ。不活化マイコプラズマ培養液をその装置に14.6L/分を目標とした再循環速度および2〜3.4PSIの膜間圧で導入した。清澄化は室温で実施された。フィルターの透過液を集め、さらなる処理まで2〜8Cで保管した。115mlのrProtein A樹脂(製品番号17−1279−04、MAbSelect、GE Healthcare)をクロマトグラフィーカラム(5×6cm)中に充填した。貯蔵用緩衝液を除去し、2カラム体積の1M酢酸で処理した後、その樹脂を5カラム体積の50mM NaPO4/1M NaCl緩衝液、pH 7.01で平衡化した。おおよそ2.3リットルの澄ませた/濾過したM.ハイオニューモニエ抗原含有液を、その樹脂に120cm/hrの流速で通した。その素通り画分を集め、0.2μMフィルターにより滅菌した。
【0189】
T08:上記で“発酵および不活化”の下で記載したように不活化M.ハイオニューモニエ細胞を調製した。その不活化した発酵液を、約20,000×gで30分間遠心分離(Sorvall RC5B)し、上清を0.2uM濾過により滅菌した。115mlのrProtein A Sepharose(製品番号17−5199−03 GE Healthcare)をクロマトグラフィーカラム(5×6cm)中に充填した。貯蔵用緩衝液を除去し、2カラム体積の1M酢酸で処理した後、その樹脂を5カラム体積の50mM NaPO4/1M NaCl緩衝液、pH 7.01で平衡化した。おおよそ1.2リットルの澄ませた/濾過したM.ハイオニューモニエ抗原含有液を、その樹脂に120cm/hrの流速で通した。その素通り画分を集め、0.2uMフィルターにより滅菌した。
【0190】
その実験ワクチン配合物は、上記の処理T02〜T08に従って処理されたM.hyo抗原を用いて調製された。T02、T03およびT04は陽性対照に対応していた。加えて、T01はプラセボ(滅菌生理食塩水)に対応していた。
【0191】
これらの実験配合物を下記の表11において記載する。M.hyo抗原は、グローバルM.hyoシードからのM.hyo抗原(プロテインA処理した上清)に対応する。“プロテインA処理”の縦列中の情報は、そのM.hyo上清が発酵の前または後のどちらでプロテインAにより処理されたかを示している。
【0192】
【表11】
【0193】
3週齢のブタに1回量の上記で表11において記載した異なるワクチン配合物を筋内接種した。18匹のブタがそれぞれの処置群に含まれていた。
【0194】
動物にワクチン接種の21日後に病毒性M.hyo野生分離株を用いて負荷をかけた。動物を負荷の28日後に検死し、肺を取り出してM.hyo感染と一致する硬化に関して採点した。
図8(AおよびB)は、それぞれの処置群に関する肺病変スコアを示す。統計的有意性はそれぞれの群に関する肺スコアの混合モデル分析により決定された。
【0195】
図8Aおよび8Bにおいて示した肺病変の結果は、全ての処置の内で2つ(T07およびT08)のみが100%のブタが<5%肺病変のカテゴリーに入ったことを示している。強い統計的な差がこの研究において観察されたことを特筆する。
【0196】
本実施例における結果は、プロテインA処理したM.hyo上清を用いて、かつSPオイルをアジュバントとして利用した1ボトルPCV2/M.hyo実験配合物における有意なM.hyo有効性を実証している。加えて、上記の実施例7は、プロテインA処理したM.hyo上清を用いて、かつSPオイルをアジュバントとして利用した1ボトルPCV2/M.hyo配合物におけるPCV2有効性を実証した。まとめると、M.hyoおよびPCV2有効性の両方がプロテインA処理したM.hyo上清を用いた1ボトルのPCV2/M.hyoの組み合わせにおいて実証されている。
【0197】
実施例10:実験PCV2/M.hyo実験ワクチンのインビボ安全性
この研究は、最も若い年齢(3週齢)において与えた場合の、宿主動物における様々なアジュバント配合物で最大抗原用量で配合された実験PCV2−M.hyoワクチンのインビボ安全性を評価するために実施された。異なるアジュバントプラットフォームを、これらのプラットフォームのどれが許容可能な安全性プロフィールを提供するかを決定するために、温度、注射部位反応および臨床的観察に基づいて評価した。20%SLCD/10%SPオイル配合物を、本研究グループおよび他のグループにより観察された注射部位反応に関する歴史的問題(historic issues)のため、陽性(“安全ではない”)対照として用いた。
【0198】
液体の処理:全てのワクチンは、実施例1において“発酵および不活化”の下で記載したような不活化M.ハイオニューモニエ抗原を用いて調製された。M.hyoバルク全体抗原を、それはプロテインA処理の際に除去されるであろう免疫グロブリンおよび免疫複合体に加えて可溶性および不溶性M.hyo抗原を含有することが知られているため、用いた。不溶性細胞破壊片および免疫グロブリンおよび免疫複合体の除去だけがそのワクチン配合物の安全性をさらに高めるであろうと結論付けることは理にかなっている。この研究の意図は、PCV2抗原およびM.hyo抗原を含有する様々なアジュバント配合物の安全性を厳密に試験することであった。PCV2およびM.hyo抗原は、安全性をさらに評価するために最大放出レベルで配合された。これらの実験配合物を下記の表12において記載する。IVPは治験中の獣医学用製品(IVP)を示す。
【0199】
【表12】
【0200】
この研究において用いた安全性パラメーターは、直腸温度プロフィールおよび注射部位反応であった。この研究の結果は、全ての候補アジュバントプラットフォームは直腸温度プロフィールおよび臨床的観察の点で許容可能な安全性プロフィールを提供することを示した(結果は示していない)。20%SLCD+10%SPオイル(すなわち陽性対照)のみがプラセボワクチンと有意に異なっており、いくつかの重症の注射部位反応を有していた(結果は示していない)。
【0201】
実施例11:中心的な研究のためのプロテインA処理されたM.hyo抗原の調製
図9は、PCV2と適合性のプロテインA処理されたM.hyo抗原を調製するために用いられた製造プロセスの1態様を示す流れ図である。不活化したM.hyoの培養物全体を、タンジェント流濾過により細胞を取り除いて澄ませた。簡潔には、0.45μMの公称孔径を有するポリエーテルスルホンフィルター(GE HealthCare、部品番号56−4102−49)を0.5N水酸化ナトリウム溶液で衛生化し、続いて滅菌USP水で大規模にすすいだ。不活化マイコプラズマ培養液をその装置に11.0L/分を目標とした再循環速度および約5PSIの膜間圧で導入した。清澄化は室温で実施された。フィルターの透過液を集め、さらなる処理まで2〜8℃で保管した。
【0202】
清澄化の後、抗原含有液をプロテインA樹脂で処理して抗体レベルを低減した。簡潔には、MAbSelectプロテインA樹脂(GE Healthcare)を12cmの高さのガラスカラム中に充填した。その樹脂を5カラム体積の50mMリン酸ナトリウム、250mM NaCl緩衝液(pH 7.0)で平衡化した。10カラム体積に相当する抗原含有液を、その樹脂上に100cm/hourの線形流速で装填した。そのカラム素通り画分を集め、0.2ミクロンフィルターを通して濾過滅菌した。カラムの再生は、3カラム体積のpH3.7の25mMアセテート溶液を流し、続いて4カラム体積の1M酢酸溶液を流すことにより達成した。抗PCV2抗体およびM.ハイオニューモニエ抗原レベルを、最終的な抗原液においてそれぞれPCV2特異的抗体ELISAおよびp46抗原定量化ELISAにより測定した。
【0203】
実施例12:PRRSウイルスに対する殺ウイルス活性の評価
この実施例において示される研究は、様々なアジュバントプラットフォームをPRRSウイルスに対する殺ウイルス活性に関して評価するために設計された。最初の実験はアジュバントのみに焦点を合わせた(すなわち、その配合物はPCV抗原もM.hyo抗原も含有していなかった)。PRRS殺ウイルス活性に関するアジュバントの評価を
図10において示す。予備的な殺ウイルス評価は、10%SPオイル、0.2% Carbopolおよび2.5%AmphigenはPRRSウイルスに対して非殺ウイルス性であることを示した。対照的に20%SLCDアジュバントはPRRSウイルスに対して殺ウイルス性であるようであった。
【0204】
異なるアジュバントプラットフォームで抗原性補強したPCV/M.hyo配合物がPRRSウイルスに対して非殺ウイルス性であるかどうかを評価するためにさらなる研究を実施した。これらの結果を表13において示し、ここで記号
*はPRRSVに対して殺ウイルス性であったワクチン一連番号を示す。
【0205】
【表13】
【0206】
上記の表13において示した結果は、10%SPオイルはPRRSウイルスに対して非殺ウイルス性であることを示している。
【0207】
さらなるPCV/M.hyoワクチン系列を、10%SPオイルをアジュバントとして用いて調製した(表14)。これらのワクチン系列の抗原力価を、0.688%の(実施例2において記載したように調製した)PCV2抗原の20倍濃縮物および9.40%の実施例11において記載したように調製したM.hyo抗原を含有する参照PCV/M.hyoワクチン系列(L1211RK15)と比較した。下記の表14中に示した結果はさらに、10%SPオイルはPRRSウイルスに対して非殺ウイルス性であることを示している。下記の表14中の試験試料の値はそれぞれ殺ウイルスアッセイ対照よりも高く(+記号)、それは約5.9±0.5log/mlの幾何平均力価(GMT)を有していた。
【0208】
【表14】
【0209】
この実施例において示した結果は、10%SPオイルはPRRSウイルスに対して非殺ウイルス性であることを実証している。この実施例において示した結果はさらに、10%SPオイルで抗原性補強したPCV/M.hyo配合物は、PRRSウイルスに対して非殺ウイルス性であると考えられるワクチン系列の中にあったことを実証している(表13および表14)。結論として、10%SPオイルで抗原性補強したPCV/M.hyo配合物は、PCV、M.hyo、およびPRRSウイルスが含まれる3価の組み合わせの基礎とするための有効なプラットフォームであると考えられた。
【0210】
実施例13:PCV/M.hyo/PRRS混合ワクチンの調製
PRRSウイルスに対して非殺ウイルス性であるアジュバントプラットフォームで抗原性補強したPCV/M.hyo配合物(上記の表13および14参照)は、1ボトル液体組成物中で使用準備済のものとして提供される。この1ボトルPCV/M.hyo配合物は、プロテインA処理したM.hyo上清を用いている。M.hyoおよびPCV2有効性の両方が、M.hyoプロテインA処理上清を用いるそのようなPCV2/M.hyo配合物において実証されている(実施例7〜9参照)。本実施例において、この2価PCV2/M.hyo配合物を単価PRRSウイルス抗原と組み合わせる。
【0211】
1態様において、上記の表11中のワクチン系列L0711RK11、L0711RK12、L0711RK13およびL0711RK14の1つに対応する10%SPオイル中のPCV/M.hyoの組み合わせが1ボトル液体組成物中で使用準備済のものとして提供される。上記の実施例12において示される結果は、10%SPオイルはPRRSウイルスに対して非殺ウイルス性であることを実証した。実施例12は、10%SPオイルで抗原性補強したPCV2/M.hyo配合物はPRRSウイルスに対して非殺ウイルス性であると考えられるワクチン系列の中にあることも実証した。本実施例において、全ての抗原が適切な年齢の(例えば3週齢以上の)ブタに投与される前に単一のボトル中に収容されるように、そのような1ボトルPCV2/M.hyo液体組成物を用いて第2ボトル中に収容された凍結乾燥された遺伝子改変生PRRSウイルス組成物を再水和させる。
【0212】
1態様において、そのPRRSウイルスはSEQ ID NO:16またはその変異体に対応するゲノム配列を有する。別の態様において、その3価組成物において用いられるPRRSウイルスはISU−55と名付けられたPRRSウイルス分離株であり、それはATCCに受け入れ番号VR 2430の下で寄託された。それぞれの抗原の適切な量は本明細書に記載されている。望ましくは、全ての抗原は1回量でブタに投与される。