(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共役系導電性重合体を得るための単量体が、置換基を有してもよいピロール、置換基を有してもよいアニリン、および置換基を有してもよいチオフェンから選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の導電性重合体含有分散液の製造方法。
前記ポリアニオン中のアニオン基が、前記共役系導電性重合体を得るための単量体1モルに対し、0.25〜30モルである、請求項1に記載の導電性重合体含有分散液の製造方法。
エチレングリコール、プ口ピレングリコールおよびグリセリンから選ばれる少なくとも1つの電気伝導率向上剤をさらに含む、請求項12に記載の導電性重合体含有分散液。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の導電性重合体含有分散液の製造方法は、共役系導電性重合体を得るための単量体と、ポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子とを含む分散媒中で、上記単量体を重合する工程を有することを特徴とする。
【0013】
[導電性重合体含有分散液]
本発明の導電性重合体含有分散液は、共役系導電性重合体とポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子とからなる導電性重合体が、分散媒中に分散した導電性重合体含有分散液である。
上記導電性重合体は、シード粒子の表面にポリアニオンが保護コロイドとなるように配位し、シード粒子表面のポリアニオンが共役系導電性重合体にドープした粒子状の重合体である。
シード粒子にドーパントであるポリアニオンを配位させることで、低粘度の分散液とすることができる。さらにシード粒子表面にポリアニオンが配位することで、ポリアニオンと共役系導電性重合体との再配位が可能となり導電性が発現される。
【0014】
[共役系導電性重合体]
(共役系導電性重合体)
共役系導電性重合体は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に限定されない。共役系導電性重合体としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリピロール類、ポリチオフェン類およびポリアニリン類が好ましく、ポリチオフェン類がより好ましい。また、共役系導電性重合体は、アルキル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基等の置換基を有するものが高い導電性が得られる点で好ましい。
【0015】
好ましい共役系導電性重合体の具体例としては、ポリピロール類として、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)およびポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)等が挙げられ;
【0016】
ポリチオフェン類として、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)およびポリ(3,4−エチレンオキシチアチオフェン)等が挙げられ;
【0017】
ポリアニリン類として、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)およびポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
これらの中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)およびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が、導電性が高い点から好ましい。特に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)〔通称PEDOT〕は、導電性がより高い上に、耐熱性に優れる点からより好ましい。
共役系導電性重合体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
(単量体)
共役系導電性重合体を得るための単量体としては、置換基を有してもよいピロール、置換基を有してもよいアニリン、および置換基を有してもよいチオフェンから選ばれる少なくとも1つが好ましく用いられる。置換基としては例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数5〜10のヘテロアリール基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜18のアルキルチオ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子およびシアノ基が挙げられる。なお、上記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基およびアルキルチオ基は、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよい。また2つ以上の置換基が縮合して環を形成していてもよい。
【0019】
上記単量体の具体例としては、ピロール、N−メチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール;
【0020】
チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブチレンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、3,4−エチレンオキシチアチオフェン;
アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
共役系導電性重合体を得るための単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記の中でも共役系導電性重合体を得るための単量体として、下記式(I)で表される化合物が含まれることが好ましく、下記式(II)で表される化合物が含まれることがより好ましく、3,4−エチレンジオキシチオフェンが含まれることがさらに好ましい。
【0023】
上記式(I)中、R
1およびR
2は、各々独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、若しくは置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキルチオ基を示し、又は、R
1とR
2とが互いに結合して環を形成した、置換基を有してもよい炭素数3〜10の脂環、置換基を有してもよい炭素数6〜10の芳香環、置換基を有してもよい炭素数2〜10の酸素原子含有複素環、置換基を有してもよい炭素数2〜10のイオウ原子含有複素環、若しくは置換基を有してもよい炭素数2〜10のイオウ原子および酸素原子含有複素環を示す。置換基としては例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数5〜10のヘテロアリール基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜18のアルキルチオ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子およびシアノ基が挙げられる。なお、上記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基およびアルキルチオ基は、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよい。また2つ以上の置換基が縮合して環を形成していてもよい。
【0024】
上記酸素原子含有複素環としては、オキシラン環、オキセタン環、フラン環、ヒドロフラン環、ピラン環、ピロン環、ジオキサン環、トリオキサン環等が挙げられる。
上記イオウ原子含有複素環としては、チイラン環、チエタン環、チオフェン環、チアン環、チオピラン環、チオピリリウム環、ベンゾチオピラン環、ジチアン環、ジチオラン環、トリチアン環等が挙げられる。
上記イオウ原子および酸素原子含有複素環としては、オキサチオラン環、オキサチアン環等が挙げられる。
【0025】
上記式(II)中、R
3およびR
4は、各々独立に、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基を示し、又は、R
3とR
4とが互いに結合して環を形成した、置換基を有してもよい炭素数3〜6の酸素原子含有複素環を示す。
R
3およびR
4は、好ましくはR
3とR
4とが互いに結合して環を形成した、置換基を有してもよい炭素数3〜6の酸素原子含有複素環である。上記酸素原子含有複素環としては、ジオキサン環、トリオキサン環等が挙げられ、好ましくはジオキサン環である。置換基としては例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数5〜10のヘテロアリール基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜18のアルキルチオ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子およびシアノ基が挙げられる。なお、上記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基およびアルキルチオ基は、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよい。また2つ以上の置換基が縮合して環を形成していてもよい。
【0026】
[保護コロイド化されたシード粒子]
(シード粒子)
本発明に用いるシード粒子は、分散媒体中でポリアニオンによって保護コロイド化されるものであればよく、好ましい例として、エチレン性不飽和単量体を重合して得られる重合体又は共重合体の粒子が挙げられる。シード粒子の分散媒体中に分散している粒径のd50(体積基準での50%メジアン径)は、0.005〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜2μmであり、さらに好ましくは0.05〜1μmである。シード粒子の粒子径分布は、日機装(株)製、マイクロトラックUPA型粒度分布測定装置にて測定できる。
【0027】
エチレン性不飽和単量体としては、少なくとも1個の重合可能なビニル基を有するものであればよく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、メチルメタクリレートおよびt−ブチルメタアクリレート等)、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニルやアルカン酸ビニルに代表されるビニルエステル類、モノオレフィン類(エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等)、共役ジオレフィン類(ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等)、α,β−不飽和モノあるいはジカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等)、アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、アクロレインやダイアセトンアクリルアミド等のカルボニル基含有エチレン性不飽和単量体が挙げられる。これらのエチレン性不飽和単量体は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。また芳香族ビニル化合物の中でも、スチレンを用いることが好ましい。
【0028】
また、必要に応じて、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有α,β−エチレン性不飽和化合物、ビニルトリエトキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性アルコキシシリル基含有α,β−エチレン性不飽和化合物、多官能ビニル化合物(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート等)等の架橋性モノマーを重合体又は共重合体に導入し、それ自身同士を架橋させるか、もしくは活性水素基を持つエチレン性不飽和化合物成分と組み合わせて架橋させる、又はカルボニル基含有α,β−エチレン性不飽和化合物(特にケト基含有のものに限る)等の架橋性モノマーを重合体又は共重合体に導入し、ポリヒドラジン化合物(特に2つ以上のヒドラジド基を有する化合物;シュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等)と組み合わせて架橋させてもよい。このように重合体又は共重合体に架橋性モノマーを導入することで、導電性重合体の耐水、耐湿、耐熱性を向上させることができる。上記架橋性モノマーの導入させる割合は、重合体又は共重合体に対して、好ましくは50%以下であり、より好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは25%以下である。
【0029】
(ポリアニオン)
本発明に用いられるポリアニオンは、アニオン性基を有するポリマーである。アニオン性基としては、スルホン酸又はその塩からなる基、リン酸又はその塩からなる基、一置換リン酸エステル基、カルボン酸又はその塩からなる基、一置換硫酸エステル基等が挙げられる。これらのうち、強酸性基が好ましく、スルホン酸又はその塩からなる基、リン酸又はその塩からなる基がより好ましく、スルホン酸又はその塩からなる基がさらに好ましい。アニオン性基はポリマー主鎖に直接結合していてもよいし、側鎖に結合していてもよい。側鎖にアニオン性基が結合している場合、ドープ効果をより顕著に果たすので、アニオン性基は側鎖の末端に結合していることが好ましい。
【0030】
ポリアニオンは、アニオン性基以外の置換基を有してもよい。該置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、フェノール基、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、エステル基、ハロゲノ基、アルケニル基、イミド基、アミド基、アミノ基、オキシカルボニル基、カルボニル基等が挙げられる。これらの中でアルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、フェノール基、オキシカルボニル基が好ましく、アルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基がより好ましい。当該置換基はポリマー主鎖に直接結合していてもよいし、側鎖に結合していてもよい。側鎖に当該置換基が結合している場合、当該置換基のそれぞれの作用を果たすために、置換基は側鎖の末端に結合していることが好ましい。
【0031】
ポリアニオン中に置換し得るアルキル基は、分散媒への溶解性および分散性、共役系導電性重合体との相溶性および分散性等を高くする作用が期待できる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。分散媒への溶解性、共役系導電性重合体への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
【0032】
ポリアニオン中に置換し得るヒドロキシ基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくし、分散媒への溶解性、共役系導電性重合体との相溶性、分散性、接着性を高くする作用が期待できる。ヒドロキシ基は、ポリマー主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したものが好ましい。
【0033】
ポリアニオン中に置換し得るシアノ基およびヒドロキシフェニル基は、共役系導電性重合体との相溶性、分散媒への溶解性、耐熱性を高くする作用が期待できる。シアノ基は、ポリマー主鎖に直接結合したもの、ポリマー主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したもの、ポリマー主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したものが好ましい。
【0034】
ポリアニオン中に置換し得るオキシカルボニル基は、ポリマー主鎖に直接結合した、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、他の官能基を介在してなるアルキルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基が好ましい。
【0035】
ポリアニオンのポリマー主鎖は、特に制限されない。ポリマー主鎖としては、例えば、ポリアルキレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等が挙げられる。これらのうち、合成や入手し易さの観点から、ポリアルキレンが好ましい。
【0036】
ポリアルキレンは、エチレン性不飽和単量体の繰り返し単位で構成されるポリマーである。ポリアルキレンは主鎖に炭素−炭素二重結合を有してもよい。ポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0037】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の酸無水物とオキシジアニリン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとの重縮合反応で得られるものが挙げられる。
【0038】
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0039】
ポリアニオンとして好適に用いられるスルホン酸基を有するポリマーの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等が挙げられる。これらは単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。これらのうち、導電性付与の点から、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましく、ポリスチレンスルホン酸〔通称PSS〕がより好ましい。
ポリアニオン、特にスルホン酸基を有するポリマーは、共役系導電性重合体の熱分解を緩和することができ、共役系導電性重合体を得るための単量体の分散媒中での分散性を向上させ、さらに共役系導電性重合体のドーパントとして機能する。
【0040】
本発明に用いられるポリアニオンは、その重量平均分子量が好ましくは1,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000であり、さらに好ましくは10,000〜300,000である。重量平均分子量がこの範囲にあると、ポリアニオンの分散媒への溶解性、ポリアニオンと共役系導電性重合体との相溶性が良好となる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン換算分子量として測定する。
【0041】
ポリアニオンは市販品の中から選ばれる上記特性を有するものであってもよいし、又は公知の方法によって合成して得られるものであってもよい。ポリアニオンの合成法としては、例えば、Houben-Weyl, "Methoden derorganischen Chemle" Vol. E20, Makromolekulare Stoffe, No. 2 (1987) p1141 に記載の方法、および特許文献1〜3等に記載の方法等が挙げられる。
【0042】
シード粒子の保護コロイド化に使用されるものと、重合開始前に予め仕込んでおくもの又は重合途上で添加するものとを合わせた、ポリアニオンの総使用量は、ポリアニオン中のアニオン性基が、共役系導電性重合体を得るための単量体1モルに対して、好ましくは0.25〜30モル、より好ましくは0.8〜25モル、さらに好ましくは1〜20モルとなる量である。
また、本発明の製造方法における共役系導電性重合体100質量部に対するポリアニオンの使用量は、好ましくは10〜30,000質量部、より好ましくは50〜25,000質量部であり、さらに好ましくは100〜20,000質量部である。
ポリアニオンの使用量が多すぎると導電性重合体の導電性が低下する傾向があり、ポリアニオンの使用量が少なすぎると導電性重合体の分散媒中での分散性が低下する傾向がある。なお、エレクトロルミネッセント装置の正孔注入層に使用される場合は、発光効率を向上させるために、本発明の製造方法における共役系導電性重合体に対するポリアニオンの使用量を増やすことができる。
【0043】
(保護コロイド化されたシード粒子の製造)
シード粒子は、分散媒体中でポリアニオンによって保護コロイド化されるものであり、分散媒中に分散した保護コロイド化されたシード粒子の分散液は、樹脂エマルジョンとして製造することができる。
【0044】
樹脂エマルジョンの重合反応は、ラジカル重合反応であり、常圧反応器又は耐圧反応器を用い、バッチ式、半連続式、連続式のいずれかの方法で行われる。また、重合時の反応安定性や重合体の均一性の点から、エチレン性不飽和単量体およびポリアニオンを、それぞれ分散媒体中に予め溶解、乳化又は分散させ、該ポリアニオン含有液にエチレン性不飽和単量体溶液を連続的又は断続的に添加して重合させることが好ましい。
反応温度は、通常、10〜100℃で行われるが、30〜90℃が一般的である。反応時間は、特に制限されることはなく、各成分の使用量、重合開始剤の種類および反応温度等に応じて適宜調整すればよい。
【0045】
ラジカル重合する際、保護コロイドであるポリアニオンがエマルジョン粒子の安定性に寄与するが、必要に応じてアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤および反応性乳化剤等の乳化剤や、脂肪族アミン等を重合系内に添加してもよい。乳化剤、脂肪族アミンの種類や使用量は、ポリアニオンの使用量、エチレン性不飽和単量体の組成をはじめとした種々の条件に応じて適宜調節すればよい。
【0046】
このようなラジカル重合反応に使用する乳化剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル等のアニオン性乳化剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0047】
脂肪族アミンとしては、オクチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等の1級アミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン等の2級アミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチルミリスチルアミン、N,N−ジメチルパルミチルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N.N−ジメチルベヘニルアミン、N,N−ジメチルオレイルアミン、N−メチルジデシルアミン、N−メチルジオレイルアミン等の3級アミン等が挙げられる。
乳化剤および脂肪族アミンは、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
また、得られる導電性重合体の特性を損なわない範囲で、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子を併用してもよい。
【0049】
分散媒体は水性媒体であり、水、又は水と水溶性溶媒の混合溶媒が挙げられる。混合溶媒中での水溶性溶媒の割合は0〜30質量%が好ましい。水溶性溶媒の割合が30質量%を超えると、合成樹脂エマルジョンの重合安定性を著しく低下させる傾向にある。水溶性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。
【0050】
ラジカル重合に際して使用される重合開始剤としては、公知慣用のものを使用することができる。重合開始剤は、例えば、過酸化水素、過硫酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物類、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物類が挙げられる。また、必要に応じて、これらの重合開始剤をナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、アスコルビン酸類、亜硫酸塩類、酒石酸又はその塩類、硫酸鉄(II)等と組み合わせてレドックス重合としてもよい。また、必要に応じて、アルコール類、メルカプタン類等の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0051】
また、保護コロイド化されたシード粒子の製造におけるポリアニオンの使用量100質量部に対するエチレン性不飽和単量体の使用量は、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは20〜90質量部、さらに好ましくは10〜60質量部である。エチレン性不飽和単量体の上記使用量が10質量部未満であると、共役系導電性重合体に占めるポリアニオンによって保護コロイド化されたシード粒子を含む導電性重合体の割合が小さくなり、重合時の増粘抑制効果が得られにくくなる。100質量部を超えると、保護コロイド化されたシード粒子の安定性が低下するおそれがある。
【0052】
[導電性重合体含有分散液の製造方法]
本発明の製造方法は、共役系導電性重合体を得るための単量体を重合する工程を特徴とする。上記重合工程は、共役系導電性重合体を得るための単量体と、ポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子とを含む分散媒中で行われる。
【0053】
(重合中の分散液の粘度)
重合中の分散液の粘度の最大値は、好ましくは5000mPa・s以下であり、より好ましくは4500mPa・s以下であり、さらに好ましくは4000mPa・s以下である。重合中の分散液の粘度の最大値が5000mPa・s以下であると、工業的な取扱いが容易になり、大量生産時に送液に要するエネルギーを低減できる。なお、重合中の分散液の粘度は、25℃においてB型粘度計で、No.2のローターを用いて測定した値である。
【0054】
(単量体液)
共役系導電性重合体を得るための単量体を分散媒中で重合するためには、該単量体、ポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子の分散液(樹脂エマルジョン)および必要に応じて添加剤を分散媒に添加し、単量体と保護コロイド化されたシード粒子とを含む分散液(以下、単に単量体液と称すことがある)を得る。
上記単量体液は、せん断力もしくはキャビテーションを用いた乳化・分散可能な撹拌装置によって調製してもよい。前記撹拌装置として、超高圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ホモミキサー、ハイシェアミキサー、ディスパー、ボールミル、超音波装置、超臨界装置があげられる。ラモンドナノミキサー(商標登録)のような駆動部を持たない静止型流体混合器であってもよい。超音波照射による上記単量体液の調製が好ましい。超音波照射エネルギーは、均一な単量体液が得られるのであれば、特に限定されない。超音波照射は、消費電力5〜500W/L(リットル)で、照射時間0.1〜2時間/L(リットル)行うことが好ましい。なお、超音波照射の代わりに、又は超音波照射とともに、ハイシェアミキサー等(例えば、マジックラボ、クレアミックス、マイルダー、キャビトロン等)の強力な乳化・分散装置によって単量体液の調製を行ってもよい。
【0055】
また、重合開始前の共役系導電性重合体を得るための単量体と、ポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子とを含む分散液中には、重合の途上に生成する共役系導電性重合体の凝集を抑える観点から、上記保護コロイド化されたシード粒子の分散液に加え、さらにポリアニオンを含有させることができる。
上記ポリアニオンは単量体液に添加し、溶解、乳化又は分散させることによって、単量体液に含有させることができる。単量体液に、保護コロイド化されたシード粒子の分散液以外にポリアニオンを含有させる場合、その重合開始前における量は、使用するポリアニオンの、シード粒子の保護コロイドを除いた総量の5〜99質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましく、20〜80質量%がさらに好ましい。
【0056】
(分散媒)
単量体の重合に用いられる分散媒は、共役系導電性重合体とポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子とからなる導電性重合体を分散させることができるものであれば特に限定されないが、シード粒子の分散液に用いたのと同じ種類のものが好ましい。
分散媒として、例えば、水;N−ビニルピロリドン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のアミド類;クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類;ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物;ジオキサン、ジエチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物;アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類等が挙げられる。
これら溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、水を1〜99質量%含む分散媒を用いることが好ましく、水を50〜99質量%含むことがより好ましく、水を単独で用いることがさらに好ましい。
【0057】
分散媒の使用量は、共役系導電性重合体を得るための単量体とポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子の総計100質量部に対して、好ましくは10〜100,000質量部、より好ましくは100〜50,000質量部であり、さらに好ましくは300〜20,000質量部である。分散媒の使用量が少なすぎると分散液の粘度が高くなる傾向がある。分散媒の使用量が多すぎると、分散液から分散媒を除去するための操作に時間を要する等して本発明の分散液を用いた膜等の物品の生産効率が低下する傾向がある。
【0058】
(酸化剤)
上記単量体の重合において、例えば、ポリピロール類やポリチオフェン類を共役系導電性重合体として含む分散液を製造する場合、酸化剤の存在下に所定の温度にすることによって重合が開始される。
酸化剤としては、過硫酸、および、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;三フッ化ホウ素等の金属ハロゲン化合物;塩化第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物;酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物;過酸化水素、オゾン等の過酸化物;過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;酸素等が挙げられる。これらのうち過硫酸および過硫酸塩が好ましく、過硫酸塩がより好ましい。上記酸化剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
(重合温度)
上記単量体の重合における重合時の温度は通常、0〜100℃であり、好ましくは5〜80℃であり、より好ましくは10〜60℃であり、さらに好ましくは15〜40℃である。
重合時の温度を上記範囲内にすると、適度な反応速度で重合を行うことができ、重合中の粘度の上昇を抑えることができ、導電性重合体を含む分散液の製造を安定的に且つ経済的な時間で行うことができ、且つ得られる導電性重合体の導電率が高くなる傾向がある。重合時の温度は、公知のヒータやクーラを用いることにより管理することができる。また必要に応じ、上記範囲内で温度を変化させながら重合を行ってもよい。
【0060】
(分散処理)
本発明の導電性重合体含有分散液の製造方法においては、重合工程の途上に、生成する共役系導電性重合体を分散処理することをさらに含むことが好ましい。
この分散処理は、せん断力もしくはキャビテーションを用いた乳化・分散可能な撹拌装置によって行ってもよい。上記撹拌装置として、超高圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、低圧ホモジナイザー、ホモミキサー、ハイシェアミキサー、ディスパー、ボールミル、超音波装置、超臨界装置があげられる。ラモンドナノミキサー(商標登録)のような駆動部を持たない静止型流体混合器であってもよい。この分散処理は、超音波照射によって行うことが好ましい。この分散処理によって、長い主鎖を有する共役系導電性重合体の凝集を抑制することができる。超音波照射エネルギーは、共役系導電性重合体の凝集を抑制することができる限り、特に限定されない。超音波照射は、消費電力5〜500W/Lで、反応終了時まで行うことが好ましい。
【0061】
(シード粒子の分散液の添加)
また、単量体の重合工程の途上に、ポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子の分散液をさらに添加することが好ましい。重合工程の途上で、所定量の保護コロイド化されたシード粒子の分散液の一部をさらに添加することで、重合時の反応液の増粘を抑制でき撹拌混合効率の向上や製造装置への負荷を低減することができる。
重合途上に添加する保護コロイド化されたシード粒子の分散液の量は、使用する保護コロイド化されたシード粒子の分散液の総量の10〜90質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。
【0062】
単量体の重合工程の途上とは、共役系導電性重合体を得るための単量体と、ポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子とを含む分散媒中で、上記単量体が重合を開始してから終了するまでの間の途中の時間である。例えば、上記分散媒に酸化剤を重合開始剤として添加する場合、単量体の重合工程の途上とは、上記分散媒に酸化剤を添加してから、単量体の重合が完了するまでの間の途中の時間である。重合の完了とは共役系導電性重合体を得るための単量体の残存率が10%以下になるときとする。
【0063】
単量体の重合工程の途上に、ポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子の分散液を、所定時間かけて添加してもよい。シード粒子を含む、単量体を重合中の分散液は、時間の経過とともに徐々に大きくなるので、シード粒子を含む、単量体を重合中の分散液の粘度が低いときは、添加したシード粒子の分散液の添加量は少なく、シード粒子を含む、単量体を重合中の分散液の粘度が大きくなったとき、シード粒子の分散液の添加量は多くなる。これにより、シード粒子を含む、単量体を重合中の分散液の粘度を適切に低下させることができる。シード粒子の分散液の添加にかける時間は、好ましくは単量体の重合が完了するまでの間の途中の時間の0.01〜4倍の時間であり、より好ましくは0.1〜2倍の時間であり、さらに好ましくは0.25〜1.5倍の時間である。また、シード粒子の分散液の添加は連続的に行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。さらに、シード粒子の分散液の添加は、重合の開始とともに始めてもよいし、重合の開始から所定時間経過後から始めてもよい。また、重合中の分散液の粘度が反応開始時点に対して1.1倍値以上なったら、シード粒子の分散液の添加を始めてもよい。これにより、シード粒子を含む、単量体を重合中の分散液の粘度が高くなるときにシード粒子の分散液を添加するので、シード粒子を含む、単量体を重合中の分散液の粘度を効果的に低下させることができる。
【0064】
シード粒子の分散液の添加速度は一定でもよい。また、重合中のシード粒子の分散媒に、シード粒子の分散液を徐々に添加してシード粒子を含む、単量体を重合中の分散液の粘度を適切に低下させるために、シード粒子を含む、単量体を重合中の分散液に、シード粒子の分散液を滴下してもよい。これにより、単量体の重合工程の途上に添加するシード粒子の分散液を重合中の分散媒に均一に分散させながら添加することができる。さらに、シード粒子の分散液の添加速度は、重合中の分散液の粘度に応じて変わるようにしてもよい。これにより、重合中の分散液の粘度が高くなるとき、シード粒子の分散液の添加速度を大きくできるので、添加する対象の分散液の粘度を効果的に低下させることができる。
単量体の重合工程の途上に、ポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子の分散液を添加する平均添加速度は、単量体100g当たり、好ましくは10〜200g/hrであり、より好ましくは20〜100g/hrであり、さらに好ましくは40〜80g/hrである。
【0065】
単量体の重合工程の途上に添加する分散液のシード粒子は、添加する対象の分散媒のシード粒子と異なるものであってもよい。これにより、単量体の重合工程の途上に添加すると効果的に重合中の分散媒の粘度を低減させることができるシード粒子を選択することができる。
【0066】
(ポリアニオンの添加)
また、単量体の重合工程の途上に、シード粒子を保護コロイド化するために用いるポリアニオンをさらに添加してもよい。重合工程の途上で、所定量のポリアニオンの一部をさらに添加することで重合時の反応液の増粘を抑制でき撹拌混合効率の向上や製造装置への負荷を低減することができる。
重合途上にポリアニオンを添加する場合、その量は、使用するポリアニオンの総量の5〜90質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましい。
【0067】
(添加剤)
本発明の製造方法に用いられる単量体液又は本発明の製造方法によって得られる導電性重合体含有分散液に、必要に応じて添加剤を添加することができる。
上記添加剤は、共役系導電性重合体およびポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子と混合しうるものであれば特に制限されない。上記添加剤としては、例えば、水溶性高分子化合物、水分散性化合物、アルカリ性化合物、界面活性剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、電気伝導率向上剤等が挙げられ、これら添加剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
水溶性高分子化合物は、高分子の主鎖又は側鎖にカチオン性基やノニオン性基を有する水溶性ポリマーである。水溶性高分子化合物の具体例としては、例えば、ポリオキシアルキレン、水溶性ポリウレタン、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミド、水溶性ポリイミド、水溶性ポリアクリル、水溶性ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレンが好ましい。
【0069】
ポリオキシアルキレンの具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、オリゴポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノクロルヒドリン、ジエチレングリコールモノクロルヒドリン、オリゴエチレングリコールモノクロルヒドリン、トリエチレングリコールモノブロムヒドリン、ジエチレングリコールモノブロムヒドリン、オリゴエチレングリコールモノブロムヒドリン、ポリエチレングリコール、グリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリエチレンオキシド、トリエチレングリコール・ジメチルエーテル、テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル、ジエチレングリコール・ジメチルエーテル、ジエチレングリコール・ジエチルエーテル・ジエチレングリコール・ジブチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンジオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0070】
水分散性化合物は、親水性の低い化合物の一部が親水性の高い官能基で置換されたもの、あるいは、親水性の低い化合物の周囲に親水性の高い官能基を有する化合物が吸着したもの(例えばエマルジョン等)であって、水中で沈殿せずに分散するものが挙げられる。具体例としては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、およびこれらポリマーのエマルジョン等が挙げられる。
水溶性高分子化合物および水分散性化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。水溶性高分子化合物および水分散性化合物を添加すると導電性重合体を含む分散液の粘度調節ができたり、塗装性能を向上させたりすることができる。
【0071】
水溶性高分子化合物および水分散性化合物の量は、共役系導電性重合体とポリアニオンにより保護コロイド化されたシード粒子との合計100質量部に対して、好ましくは1〜4000質量部、より好ましくは20〜2000質量部であり、さらに好ましくは50〜500質量部である。
【0072】
導電性重合体を含む分散液に、アルカリ性化合物を添加してもよい。アルカリ性化合物の添加によって分散液を適用した物品に耐腐食性を付与することでき、また導電性重合体含有分散液のpHを調整することができる。例えば、固体電解コンデンサに使用される金属および金属酸化物の腐食を防止するために、pHを3〜13にすることが好ましく。より好ましくはpH4〜9さらに好ましくはpH5〜7に調整される。pHが3以上であれば、アルミニウム等
の弁金属
の腐食が進行するおそれがなくなる。また、pH13以下であれば、導電性重合体においてドープしているポリアニオンの脱ドープが起こるおそれがなくなる。
【0073】
アルカリ性化合物として、公知の無機アルカリ性化合物や有機アルカリ性化合物を使用できる。無機アルカリ性化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等が挙げられる。有機アルカリ性化合物として、芳香族アミン、脂肪族アミン、アルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。
【0074】
芳香族アミンのうち、窒素含有ヘテロアリール環化合物が好ましい。窒素含有ヘテロアリール環化合物は芳香族性を示す窒素含有ヘテロ環化合物である。芳香族アミンにおいては、ヘテロ環に含まれる窒素原子が他の原子と共役関係を持つ。
窒素含有ヘテロアリール環化合物としては、ピリジン類、イミダゾール類、ピリミジン類、ピラジン類、トリアジン類等が挙げられる。これらのうち、溶媒溶解性等の観点から、ピリジン類、イミダゾール類、ピリミジン類が好ましい。
【0075】
脂肪族アミンとしては、例えば、エチルアミン、n−オクチルアミン、ジエチルアミン、ジイソブチルアミン、メチルエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アリルアミン、2−エチルアミノエタノール、2,2’−イミノジエタノール、N−エチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0076】
アルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、カルシウムアルコキシド等が挙げられる。
【0077】
界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;アミン塩、4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤;カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0078】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
【0079】
電気伝導率向上剤は、導電性重合体を含む分散液の電気伝導率を増大させるものであれば特に制限されない。電気伝導率向上剤としては、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル結合を含む化合物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン基を含む化合物;カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、ピロリドン等のアミド若しくはラクタム基を含む化合物;テトラメチレンスルホン、ジメチルスルホキシド等のスルホン化合物若しくはスルホキシド化合物;スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース等の糖類又は糖類誘導体;ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類;スクシンイミド、マレイミド等のイミド類;2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸等のフラン誘導体;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジアルコール若しくはポリアルコール等が挙げられる。これらのうち、電気伝導率向上の観点から、テトラヒドロフラン、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、ソルビトールが好ましく、中でもエチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンがより好ましい。電気伝導率向上剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
本発明の製造方法によれば、シード粒子表面にポリアニオンが配位することで、導電性重合体の粒径が制御でき、重合時の増粘を抑制することができ導電性重合体含有分散液の生産性が優れたものとなる。また、導電性重合体においてドーパントであるポリアニオンへの共役系導電性重合体の配位が可能となり、透明性を有しつつ導電性が発現される。
【0081】
また、本発明の製造方法によって得られる分散液を物品に付着させた後、分散媒を除去することによって物品に導電性等の機能を付与することができる。付着手段としては、塗布、噴霧、浸漬等が挙げられる。本発明の製造方法によって得られる分散液から分散媒を除去することによって、導電性重合体の膜等の成形品を得ることができる。分散媒の除去方法として、室温乾燥、熱風乾燥、遠赤外線照射乾燥等の公知の手法を用いることができる。
【実施例】
【0082】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
また、実施例および比較例における各物性の測定は次のとおりおこなった。
【0083】
(1)固形分濃度
分散液中の固形分濃度は、各例で得られた分散液を試料容器におよそ2g秤量し、105℃の乾燥機中に1時間静置した後、試料容器中の試料の質量を測定し、乾燥前の質量に対する乾燥後の質量、すなわち〔乾燥後質量/乾燥前質量〕を固形分濃度として算出した。
(2)粘度
重合中の分散液の粘度は、25℃においてB型粘度計で、No.2のローターを用いて測定した。
(3)pH
各例で得られた分散液のpHは、25℃においてpHメーター(東亜ディーケーケー(株)製、型式HM−30G)を用いて測定した
(4)電導度
各例で得られた分散液100gを撹拌しながら、該分散液にアンモニア水を添加した。次いで、エチレングリコール10gを添加し、pH4.5の変性分散液を得た。JIS K 7194に準じて、pH調整された分散液をガラス板上に流涎し、100℃にて熱風乾燥させて厚さ10μmの膜を形成させた。該膜の導電率をロレスタ(三菱化学(株)製)により測定した。
(5)シード粒子の粒径
日機装(株)製マイクロトラックUPA型粒度分布測定装置により測定した。
【0084】
[実施例1]
(ポリアニオンによって保護コロイド化されたシード粒子の製造方法)
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学(株)製、商品名ポリナスPS−5、重量平均分子量:約120,000)22質量%水溶液1000gを窒素雰囲気化で撹拌しながら、80℃に昇温した。この溶液に、過硫酸カリウム2gを添加し、一方、スチレン135gとジビニルベンゼン(DVB)15gとポリスチレンスルホン酸ナトリウム(同上)22質量%水溶液500gからなる単量体乳化物および2.5質量%の過硫酸カリウム水溶液40gを、それぞれ、2時間、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後2時間80℃を維持した後に室温まで冷却した。得られた反応液に陽イオン交換樹脂1500mlおよび陰イオン交換樹脂1500mlを添加し、12時間撹拌したのち、イオン交換樹脂をろ別して、ポリアニオンによって保護コロイド化されたシード粒子の分散液(ポリスチレンエマルジョン)を得た。得られたポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.46μmであった。
【0085】
(ポリアニオンによって保護コロイド化されたシード粒子を含む導電性重合体含有分散液の製造方法)
イオン交換水579.94g、上記ポリスチレンエマルジョン(不揮発分28.0質量%)71.15gおよびp−トルエンスルホン酸鉄(III)6水和物(FePTs)2質量%水溶液36.05gを27℃にて混ぜ合わせた。この溶液に27℃にて超音波を照射しながら3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)8.57gを添加し混ぜ合わせた。
得られた混合液に27℃にて撹拌翼による撹拌と超音波照射とをしながらペルオキソ二硫酸ナトリウム(NaPS)18.0gを添加して重合反応を開始させた。次いで、予め仕込んだものと同じポリスチレンエマルジョン47.8g、イオン交換水237.9gを混合し、4時間かけて滴下した。その後、27℃にて4時間撹拌翼による撹拌と超音波照射とをしながら反応させた。
反応終了後、得られた反応液に陽イオン交換樹脂300mlおよび陰イオン交換樹脂300mlを添加して、反応液を12時間撹拌することによって、未反応モノマー、酸化剤および酸化触媒をイオン交換樹脂に吸着させた。該イオン交換樹脂をろ別して、ポリスチレンスルホン酸によって保護コロイド化されたシード粒子(ポリスチレンエマルジョン)および上記ポリスチレンスルホン酸によりドーピングされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)からなる導電性重合体含有分散液を得た。
【0086】
実施例1で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が93S/cmであった。
【0087】
[実施例2]
シード粒子の製造で、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学(株)製、商品名ポリナスPS−5、重量平均分子量:約120,000)22質量%水溶液の代わりにポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学(株)製、商品名ポリナスPS−1、分子量:約10,000〜約30,000)を使用した以外は実施例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0088】
ポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.15μmであった。また、実施例2で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が95S/cmであった。
【0089】
[実施例3]
シード粒子の製造で、2.5質量%の過硫酸カリウム水溶液の添加量を40gから20gに変更した以外は実施例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0090】
ポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.95μmであった。また、実施例3で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が90S/cmであった。
【0091】
[実施例4]
分散液の製造で、p−トルエンスルホン酸鉄(III)6水和物2質量%水溶液(FePTs)を36.05g添加する代わりに硫酸鉄(FeSO
4)2質量%水溶液を10.10g添加した以外は実施例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0092】
ポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.46μmであった。また、実施例4で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が93S/cmであった。
【0093】
[実施例5]
分散液の製造で、4時間撹拌翼による撹拌と超音波照射とを実施しながら混合液を反応させる代わりに分散粉砕機(IKA社製、商品名マジックラボ)を使用して混合液を4時間分散させながら反応させた以外は実施例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0094】
ポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.46μmであった。また、実施例5で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が85S/cmであった。
【0095】
[実施例6]
分散液の製造で、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)8.57g添加する代わりに3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)7.71gおよびピロール(1H−ピロール)0.86g添加し、撹拌翼による撹拌と超音波照射とを実施する時間を4時間から3時間に変更した以外は実施例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0096】
ポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.46μmであった。また、実施例6で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が87S/cmであった。
【0097】
[実施例7]
シード粒子の製造で、過硫酸カリウムを添加する代わりに過硫酸アンモニウム(APS)を添加し、分散液の製造で、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(NaPS)18.0g添加する代わりに過硫酸アンモニウム(APS)17.0g添加した以外は実施例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0098】
ポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.46μmであった。また、実施例7で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が93S/cmであった。
【0099】
[実施例8]
シード粒子の製造で、スチレンの添加量を135gから150gに変更し、ジビニルベンゼン(DBV)を添加しなかった以外は実施例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0100】
ポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.60μmであった。また、実施例8で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が94S/cmであった。
【0101】
[実施例9]
シード粒子の製造で、スチレンを135gおよびジビニルベンゼン(DVB)15g添加する代わりにメチルメタアクリレート(MMA)150g添加した以外は実施例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0102】
ポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.38μmであった。また、実施例9で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が90S/cmであった。
【0103】
[実施例10]
シード粒子の製造で、スチレンを135gおよびジビニルベンゼン(DBV)15g添加する代わりにt−ブチルメタアクリレート(t−BMA)150g添加した以外は実施例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0104】
ポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.72μmであった。また、実施例10で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が90S/cmであった。
【0105】
[実施例11]
シード粒子の製造で、スチレンを135g添加する代わりにスチレンを67.5gおよびメチルメタアクリレートを67.5g添加した以外は実施例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0106】
ポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.50μmであった。また、実施例11で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が92S/cmであった。
【0107】
[実施例12]
分散液の製造で、4時間撹拌翼による撹拌と超音波照射とを実施しなかった以外は実施例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0108】
ポリスチレンエマルジョン中の、シード粒子のd50粒子径は0.46μmであった。また、実施例12で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が4.2質量%、pHが1.9、電導度が83S/cmであった。
【0109】
[比較例1]
イオン交換水593.24g、ポリスチレンスルホン酸(東ソー有機化学(株)製、商品名ポリナスPS−50、重量平均分子量:約230,000)22質量%水溶液58.44gおよびp−トルエンスルホン酸鉄(III)6水和物2質量%水溶液36.05gを27℃にて混ぜ合わせた。この溶液に27℃にて超音波を照射しながら3,4−エチレンジオキシチオフェン8.57gを添加し混ぜ合わせた。
得られた混合液に27℃にて撹拌翼による撹拌と超音波照射とをしながらペルオキソ二硫酸ナトリウム18.0gを添加して重合反応を開始させた。次いで、予め仕込んだものと同じポリスチレンスルホン酸水溶液39.0g、イオン交換水246.8gを混合し、4時間かけて滴下した。その後、27℃にて4時間撹拌翼による撹拌と超音波照射とをしながら反応させた。
反応終了後、得られた反応液に陽イオン交換樹脂300mlおよび陰イオン交換樹脂300mlを添加して、反応液を12時間撹拌することによって、未反応モノマー、酸化剤および酸化触媒をイオン交換樹脂に吸着させた。該イオン交換樹脂をろ別して、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とそれにドープされたポリスチレンスルホン酸を含む分散液を得た。
【0110】
比較例1で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が3.0質量%、pHが1.9、電導度が102S/cmであった。
【0111】
[比較例2]
3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)8.57g添加する代わりに3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)7.71gおよびピロール(1H−ピロール)0.86g添加し、撹拌翼による撹拌と超音波照射とを実施する時間を4時間から3時間に変更した以外は比較例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0112】
比較例2で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が3.0質量%、pHが1.9、電導度が92S/cmであった。
【0113】
[比較例3]
4時間撹拌翼による撹拌と超音波照射とを実施しなかった以外は比較例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を得た。
【0114】
比較例3で得られた分散液の各物性を上述の方法により測定したところ、固形分濃度が3.0質量%、pHが1.9、電導度が86S/cmであった。
【0115】
[比較例4]
3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の添加量を8.57gから12.00gに変更し、p−トルエンスルホン酸鉄(III)6水和物(FePTs)2質量%水溶液の添加量を36.05gから50.48gに変更し、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(NaPS)の添加量を18.0gから25.2gに変更し、4時間撹拌翼による撹拌と超音波照射とを実施しなかった以外は比較例1と同様な方法で、導電性重合体含有分散液を製造しようと試みたが、反応液が増粘したため、分散液は得られなかった。
【0116】
実施例1〜12における、ポリアニオンによって保護コロイド化されたシード粒子の製造方法の条件を表1に示した。
【0117】
【表1】
【0118】
実施例1〜12における、ポリアニオンによって保護コロイド化されたシード粒子を含む導電性重合体含有分散液の製造方法の条件を表2に示した。
【0119】
【表2】
【0120】
比較例1〜4における、ポリアニオ
ンを含む導電性重合体含有分散液の製造方法の条件を表3に示した。
【0121】
【表3】
【0122】
また、上述の実施例1〜12および比較例1〜3の導電性重合体反応時の各時間における粘度を表4に示した。なお、比較例4の粘度は測定できなかった。
【0123】
【表4】
【0124】
実施例1〜12から、導電性重合体含有分散液は、保護コロイド化されたシード粒子を含むことにより、導電性重合体反応時の粘度を大きく低下させることができ、かつ電導度から実用性を十分満たす導電性を有することがわかる。また、適正粘度の導電性重合体反応物を含む分散液を短時間で得ることができた。
比較例1〜3では導電性重合体反応時の粘度が非常に大きくなり、生産性の面で実施例よりも劣ることが分かる。