(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のシリンダを有するエンジン、前記エンジンシリンダと流体連通している吸気マニフォールド、前記吸気マニフォールド内の圧力を大気圧より高めるための吸気マニフォールドに結合された過給機及び前記エンジンシリンダのそれぞれに燃料を供給する燃料給送系を備え、前記燃料給送系が、前記エンジンシリンダ当たり少なくとも1つの燃料インジェクタ、中RONの液体燃料を貯蔵するための燃料タンク及び車載セパレータを含む、伝動機構の動作方法において、前記方法が、
前記車載セパレータに前記液体燃料を送り込む工程、
前記液体燃料を予備加熱する工程、
前記液体燃料をパーベーパレーション部材に通過させて、前記液体燃料を低RON成分と高RON成分に分離する工程であって、多孔質チャネル壁体で定められた複数本の流路チャネルを有するセラミックモノリス体を含むパーベーパレーション部材、および、壁領域によって相互に隔てられた複数の開口を有する分区エンドキャップを備え、前記液体燃料の前記高RON成分が前記多孔質チャネル壁体を通って透出し、前記液体燃料の前記低RON成分が前記多孔質チャネル壁体によって保留されて前記流路チャネルを通って流れるようにする工程、
前記低RON成分及び前記高RON成分を冷却する工程、
前記高RON成分を高RON貯槽に貯蔵する工程、
前記エンジンシリンダのそれぞれに空気及び液体燃料を給送する工程、
前記エンジンシリンダのいずれかにおいて圧縮点火がおこっているか否かを判定する工程、及び
圧縮点火が検出されれば、前記高RON貯槽から前記エンジンシリンダのそれぞれに給送される燃料の比率を高める工程、
を含むことを特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
供給燃料を低オクタン価成分と高オクタン価成分に分離する燃料給送系を有する内燃機間及びこれを動作させるための方法の実施形態をここで詳細に参照する。可能であれば必ず、同じ参照数字が全図面を通して同じかまたは同様の要素を指して用いられる。そのような燃料給送系を有する伝動機構の一例が
図1に簡略に示される。過給機が吸気マニフォールドと流体連通し、吸気マニフォールド内の空気の圧力を高める。燃料が1つ以上のエンジンシリンダに給送される。燃料給送系は燃料、例えばガソリンスタンドからエンドユーザによって購入された燃料を保持するための燃料タンクを備える。燃料タンクは燃料流を低オクタン価成分と高オクタン価成分に分離する車載セパレータと流体連通している。燃料流の成分のそれぞれは相互に分けられて貯蔵される。エンジン制御ユニットが、エンジンシリンダ内のエンジンノックの測定を含む、エンジンの性能パラメータを評価する。エンジン制御ユニットが、エンジンの性能パラメータ及びエンジン内のエンジンノックセンサによって与えられる信号に基づいて、低オクタン価成分及び/または高オクタン価成分の給送を命令する。伝動機構及び伝動機構の動作方法が添付図面を特に参照して本明細書にさらに詳細に説明される。
【0012】
本明細書に用いられるように、語「オクタン価」は燃料の爆燃性向を指す。この語は、燃料の抗爆燃性のイソオクタン及びn-ヘプタンに対する比較である、「リサーチオクタン価(RON)」と互換で用いられる。
【0013】
本明細書で用いられるように、「制動」は、付属部品損失及びドライブトレーン損失を勘定に入れる前の、エンジンのクランクシャフトにおいて評価されるエンジン性能の尺度を指す。本明細書で示されるように、「図示」は、エンジンに摩擦がないとした場合に、膨張している作動流体を仕事に変換するエンジンの理論出力を指す。すなわち、制動エンジン性能パラメータは、[図示エンジン性能パラメータ]+[シリンダとシリンダ壁の間の摩擦損失、風損失、潤滑油ポンピング損失、等]と等価である。一般に、図示エンジン性のパラメータの増大は制動エンジン性能パラメータの増大に対応する。
【0014】
本明細書に用いられるように、語「貯槽」は、燃料インジェクタへの給送のために燃料を保持する、タンク、アキュムレータ及び/または燃料配管を意味して互換で用いられ得る。
【0015】
図1をここで参照すれば、伝動機構100が簡略に示されている。エンジン110は一般に、従来から知られているように、往復運動してクランクシャフトを回転させるピストンをそれぞれが有する複数のエンジンシリンダを備える。エンジンシリンダのそれぞれは、吸気マニフォールド120と流体連通している吸気弁及び排気マニフォールドと流体連通している排気弁を有するシリンダヘッドを備える。過給機130が吸気マニフォールド120と流体連通し、吸気マニフォールド120内の空気90の圧力を高める。
【0016】
燃料は様々な構成の1つ以上でエンジンシリンダに給送される。
図1に示される実施形態において、燃料は吸気マニフォールド120に給送され、空気がエンジンシリンダに入る前に燃料が吸気マニフォールド120内で空気と混合される。燃料給送系200はポンプ燃料を保持するための燃料タンク210を含む。燃料タンク210は、燃料流を低RON成分と高RON成分に分離する、車載セパレータ220と流体連通している。高RON成分は高RON貯槽240に戻される。いくつかの実施形態において、低RON成分は低RON貯槽230内に保持される。他の実施形態において、低RON成分は燃料タンク210に戻される。燃料流の高RON成分は、エンジンに給送される高RON燃料の比率が供給に応じて修正され得るように、低RONを有する燃料流とは分けて貯蔵される。
【0017】
伝動機構100はさらにECU140を備える。エンジン制御ユニット(ECU)140は、スロットル位置センサ、吸気マニフォールド圧力センサ、空気流量計、エンジン速度センサ、クランクシャフト位置センサ、燃料インジェクタ、点火コイル、排気O
2センサ、等を含む、複数のエンジンコンポーネントに電気的に接続される。ECU140は、エンジンシリンダ内のエンジンノックの測定を含む、エンジンの性能パラメータの評価を行う。ECU140は、エンジン110の性能パラメータ及びエンジン内のエンジンノックセンサ150によって与えられる信号に基づいて、低オクタン価成分及び/または高オクタン価成分の給送を命令する。
【0018】
理論にはこだわらずに、エンジンの圧縮比の増大は一般にエンジンの熱効率を高めると考えられる。オットーサイクルにしたがって動作しているエンジンの熱効率は、式:
【0020】
で近似される。ここで、γは作動流体の比熱(すなわち、C
P/C
V)であり、rはエンジンの圧縮比である。エンジンの圧縮比が大きくなるにつれて、エンジンの熱効率は高くなる。しかし、燃料が圧縮点火において爆燃するから、エンジンの熱効率は実用限界に達する。
【0021】
過給機130にはターボチャージャー及びスーパーチャージャーがある。ターボチャージャーは相互に結合されたコンプレッサ及びタービンを有する。ターボチャージャーのタービンは、エンジンシリンダからの排気ガスがタービン及びコンプレッサを回転させるように、エンジンシリンダの排気弁と流体連通して配置される。コンプレッサは、コンプレッサの回転が吸気マニフォールド内の空気の圧力を高めるように、吸気マニフォールドと流体連通して配置される。スーパーチャージャーは吸気マニフォールドと流体連通して配置されたコンプレッサを有する。スーパーチャージャーのコンプレッサはエンジンのクランクシャフトに機械的に結合される。クランクシャフトの回転がコンプレッサの回転を生じさせて、吸気マニフォールド内の空気の圧力を高める。ターボチャージャー及びスーパーチャージャーのいずれも、標準温度及び圧力において、エンジンシリンダ自体の最大容積よりも大きな体積の空気がエンジンシリンダに入るように、マニフォールド内の空気の圧力を高める。したがって、過給機を備えるエンジンは一般に1より大きな吸込効率を示す。さらに、過給機を備えるエンジンの有効圧縮比は同じエンジンの幾何学的圧縮比より大きい。したがって、過給機を備えるエンジンは一般に、同じピストン、クランクシャフト及びエンジンシリンダ構成の自然吸気エンジンより高い熱効率を示す。さらに、過給機を備えるエンジンは、流体が、スロットル体のような制限された容積を流過し、エンジン弁にわたってエンジンシリンダに流入及び流出することで生じる、スロットル損失を減じることができる。
【0022】
ターボチャージャーを備える伝動機構100については、ターボチャージャーがタービンと流体連通しているウェイストゲート(図示せず)を有することができる。ウェイストゲートは排気ガスを選択的にタービンから転流させる弁である。ウェイストゲートは排気ガスを緩徐してタービン速度を制御し、吸気マニフォールド内の最大圧力を調整する。いくつかの実施形態において、ウェイストゲートは液圧バランスに基づいて受動制御され得る。他の実施形態において、ウェイストゲートは、例えば電気制御ウェイストゲートを用いて、能動制御され得る。
【0023】
ターボチャージャーを備える伝動機構100については、ターボチャージャーにタービンと流体連通している可変容量ターボチャージャー(図示せず)を含めることができる。一般に、ターボチャージャーのタービンにかけて導かれる排気ガスの圧力及び速度を修正するため、可変容量ターボチャージャーの上流ノズルが角度を変えて、開閉する。可変容量ターボチャージャーは、タービン速度を制御するためにタービンに送り込まれる排気ガスを緩徐して、吸気マニフォールド内の最大圧力を調整し、タービン及びコンプレッサの過渡速度変化を調整する。
【0024】
図2を次に参照すれば、圧縮/膨張サイクル中のエンジンシリンダ内部で測定されるような仮の圧力曲線が示される。「高RON燃料」と標識された圧力曲線は燃料がスパーク点火によって燃焼するエンジンシリンダ内の圧力を示す。燃料は圧縮サイクル内でピストンが上死点(TDC)に達する前に点火される。TDC前に点火が起発されるクランク角度値は「点火進角」と称される。
図2において、完全エンジンサイクルにわたって評価されるエンジンシリンダ内のネット積算圧力は図示平均有効圧力(IMEP)と称され、図示エンジン出力の尺度である。
【0025】
図2をまだ参照すれば。「低RON燃料」と標識された圧力曲線は、同じエンジンシリンダ内であるが、燃料がスパーク点火の前に圧縮点火によって爆燃している場合の圧力を示す。図示されるように、低RON燃料に対するエンジンシリンダ内部の圧力は高RON燃料に対するエンジンシリンダ内の圧力より急速に高くなる。この急速な圧力上昇は一般に「エンジンノック」として示され、エンジンノックセンサによって検知することができる。図示されるように、低RON燃料の圧縮点火はTDC前のエンジンシリンダ内の圧力に大きなスパイクを生じさせ、この結果、高RON燃料で動作しているエンジンに比較してIMEPが低められる。
【0026】
図3を次に参照すれば、フル出力時のエンジンの仮のIMEP曲線が、スパーク点火源の点火進角に基づいてIMEPが変わるであろうことを示している。例えば、「高RON燃料」と標識されたIMEP曲線について、エンジンのIMEPが、最大制動トルク(MBT)タイミングに到達するまで、点火進角が大きくなるにともなって大きくなる。MBTタイミング後、エンジンのIMEPは減少し始める。MBTタイミングは与えられた動作点におけるエンジンシリンダの最大ネット積算圧力を表す。MBTタイミングが、例えば、エンジン負荷、エンジン速度、周囲温度及び周囲圧力のような、与えられたエンジン動作条件に対して変わるであろうことは当然である。
【0027】
図3をまだ参照すれば、「低RON燃料」と標識されたIMEP曲線は点火進角が大きくなっているエンジンについてのIMEPを示す。低RON燃料で動作しているエンジンのIMEPは、低RON燃料が爆燃し、圧縮または自動点火を受ける点まで点火が進角するまでは、高RON燃料で動作しているエンジンのIMEPにしたがう。図示されるように、低RON燃料で動作しているエンジンのIMEPは、高RON燃料で動作しているエンジンのIMEPに比較して急速に減少する。低RON燃料で動作しているエンジンの点火タイミングは、エンジンノックを防止するため、最大IMEP以前の点まで遅延される。したがって、低RON燃料で動作しているエンジンはエンジン設計が発生可能な最大IMEPを出力することはできないであろう。
【0028】
過給機130を備えるエンジン110は自然吸気エンジンよりも圧縮点火がおこり易いであろう。一般に、過給機130を備えるエンジン110の有効圧縮比は、自然吸気エンジンよりも燃料を自動点火点に近づける。
【0029】
図4を次に参照すれば、部分出力条件で動作しているエンジンの仮のIMEP曲線が示されている。
図3のIMEP曲線とは対照的に、エンジンが部分出力条件で動作している場合、低RON燃料の爆燃はMBTタイミングより進められたスパークタイミングにおいておこる。したがって、低RON燃料を用いて動作しているエンジンはそのようなエンジン動作条件で高RON燃料を用いて動作しているエンジンと同じIMEPを出力する。したがって、高RON燃料の所要は、エンジンの動作範囲内の領域において高RON燃料が必要とされる、エンジン動作条件に依存し得る。
【0030】
図5を次に参照すれば、車載セパレータ220を含む燃料給送系200の一実施形態が示されている。燃料給送系200は中RONの燃料を貯蔵する燃料タンク210及び車載セパレータ220を含む。燃料タンク210からの燃料は燃料ヒータ212を通して流体分離部材221に導かれる。いくつかの実施形態において、燃料ヒータ212は、燃料の温度を高めるためにエンジン110から取り込まれる排気ガスを用いることができる。以下でさらに詳細に説明されるように、車載セパレータ220の流体分離部材221は燃料を透出分と保留分に分離する。いくつかの実施形態において、燃料の透出分は、燃料タンク210内の燃料の中RONより高いRONを有する、高RON成分になる。燃料の保留分は、燃料タンク210内の燃料の中RONより低いRONを有する、低RON成分になる。高RON成分は、燃料の高RON成分の温度を下げる、高RON燃料冷却器224を通って流れる。高RON成分は、高RON燃料インジェクタ250によってエンジンに給送されるまで高RON成分が貯蔵される、高RON貯槽240内に導かれる。同様に、低RON成分は、燃料の低RON成分の温度を下げる、低RON燃料冷却器222を通って流れる。低RON成分は、低RON燃料インジェクタ260によってエンジンに給送されるまで低RON成分が貯蔵される、低RON貯槽230内に導かれる。
【0031】
図6を次に参照すれば、別の実施形態の燃料給送系290が示されている。燃料給送系290は中RONの燃料を貯蔵する燃料タンク210及び車載セパレータ220を含む。燃料タンク210からの燃料は燃料ヒータ212を通して流体分離部材221に導かれる。車載セパレータ220の流体分離部材221は燃料を透出分と保留分に分離する。いくつかの実施形態において、燃料の透出分は、燃料タンク210内の燃料の中RONより高いRONを有する、高RON成分になる。燃料の保留分は、燃料タンク210内の燃料の中RONより低いRONを有する、低RON成分になる。高RON成分は、燃料の高RON成分の温度を下げる、高RON燃料冷却器224を通って流れる。高RON成分は高RON貯槽240内に導かれる。同様に、低RON成分は、燃料の低RON成分の温度を下げる、低RON燃料冷却器222を通って流れる。低RON成分は低RON貯槽230内に導かれる。燃料の高RON成分及び燃料の低RON成分は混合弁270内に導かれる。混合弁は燃料の高RON成分と燃料の低RON成分を要求された比率で混合する。混合された低RON成分と高RON成分はインジェクタ280に送り込まれ、インジェクタ280からエンジンに給送される。いくつかの実施形態において、混合弁270及びインジェクタ280は、エンジンに給送される燃料の高RON成分と低RON成分の比を要求に応じて迅速に変えられるように、一体化して単体コンポーネントとするか、そうではなくとも混合弁とインジェクタ280の間の燃料体積を最小化するように連結することができる。
【0032】
図7を次に参照すれば、一実施形態において、車載セパレータ220は、多孔質チャネル壁体324で隔てられた複数本の平行流路チャネル322を有するハニカム様構造のセラミックモノリス体320を有するパーベーパレーション部材310を含む。複数の多孔質壁体324はセラミックモノリス体320の軸長313に沿って機能性メンブランで被覆される。セラミックモノリス体320は、セラミックモノリス体320の最外表面である、スキン315を有する。上で論じたように、機能性メンブランはセラミックモノリス体320を通って流れている流体をパーベーパレーションプロセスによって保留分と透出分に分離する。そのようなパーベーパレーションメンブランは、米国特許出願公開第2008/0035557号及び米国特許第8119006B2号の各明細書に説明されている。
【0033】
術語「パーベーパレーション」は目標流体が多孔質チャネル壁体324上の機能性メンブランを流過できる能力を指す。この現象は、供給成分の(与えられた成分の溶解度に対し、S
iで表される)メンブラン内への吸着、メンブランを通る(与えられた成分の拡散率に対し、D
iで表される)拡散及び、メンブランの裏側からモノリス体内への上記成分の脱離によって表される、溶液拡散プロセスである。S及びDはアセンブリへの供給流体内のそれぞれの化学種について異なる。これは与えられた材料の透過率または透過速度,P
iを、D
i×S
iとして、与える。さらに、ある化学種の別の化学種に対する選択比,α
i/jはP
i/P
jで与えられる。したがって、機能性メンブランにより、流体流(これらの実施形態においては、中RONを有する燃料)の高RON成分と低RON成分への分離が可能になる。
【0034】
中RONを有する予備加熱された燃料、特に米国特許第7803275号明細書に説明されているような蒸気−液体混合体は分離部材流入口342を通ってセラミックモノリス体320に送り込まれる。燃料はセラミックモノリス体320の流路チャネル322に送り込まれる。燃料は流入面330から入り、流出面332に向けて流れる。燃料がセラミックモノリス体320の流路チャネル322を通って流れると、燃料の高RON成分が多孔質チャネル壁体324上に被覆された機能性メンブランを透過する。高RON成分はセラミックモノリス体320を外側に向かって通り抜けてスキン325の外面の位置に達し、ハウジング340内で冷却される。燃料の高RON成分は透出分流出口346でハウジング340を出る。
【0035】
燃料の低RON成分はセラミックモノリス体320の流路チャネル322に沿って流れる。多孔質チャネル壁体324を被覆する機能性メンブランは低RON成分の多孔質チャネル壁体324の透過を制限する。燃料の低RON成分はセラミックモノリス体320の軸長313に沿って流れて、保留分流出口344でハウジング340を出る。
【0036】
本明細書に説明される実施形態において、セラミックモノリス体320は約500チャネル/平方インチ(cpsi)(77.5チャネル/cm
2)までのチャネル密度をもって形成することができる。例えば、いくつかの実施形態において、セラミックモノリス体320は約70cpsi(10.85チャネル/cm
2)から約400cpsi(62.0チャネル/cm
2)の範囲にあるチャネル密度を有することができる。いくつかの実施形態において、セラミックモノリス体320は約200cpsi(31.0チャネル/cm
2)から約250cpsi(38.75チャネル/cm
2)の範囲に、さらには70cpsiから約150cpsi(23.25チャネル/cm
2)の範囲にある、チャネル密度を有することができる。
【0037】
本明細書に説明される実施形態において、セラミックモノリス体320の多孔質チャネル壁体324は約10ミル(254μm)より大きい厚さを有することができる。例えば、いくつかの実施形態において、多孔質チャネル壁体324の厚さは約10ミルから約30ミル(762μm)までの範囲にあることができる。いくつかの実施形態において、多孔質チャネル壁体324の厚さは約15ミル(381μm)から約26ミル(660μm)までの範囲にあることができる。
【0038】
本明細書に説明される流体分離部材221の実施形態において、セラミックモノリス体320の多孔質チャネル壁体324は、セラミックモノリス体320へのいずれかの被覆の適用に先立ち、≧35%の素開放多孔度%P(すなわち、セラミックモノリス体320にいずれかの被覆が施される前の多孔度)を有することができる。いくつかの実施形態において、多孔質チャネル壁体324の素開放多孔度は20%≦%P≦60%であるようにすることができる。他の実施形態において、多孔質チャネル壁体324の素開放多孔度は25%≦%P≦40%であるようにすることができる。
【0039】
一般に、約1μmより大きい平均細孔径をもって作製されたセラミックモノリス体320では基板上の有効なメンブラン被覆の形成が困難になる。したがって、多孔質チャネル壁体324の平均細孔径を約0.01μmから約0.80μmの間に維持することが一般に望ましい。
【0040】
本明細書に説明される実施形態において、セラミックハニカムモノリス体320は、例えば、コージェライト、ムライト、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸アルミニウムまたは、高温粒子フィルタリング用での使用に適する、その他いずれかの多孔質材料のような、セラミック材料で形成される。
【0041】
セラミックモノリス体320は多孔質チャネル壁体324で隔てられた流路チャネルのアレイを有する。多孔質チャネル壁体324はセラミックモノリス体320の軸長313に沿って延びる。多孔質チャネル壁体324により、液体及び/または蒸気を含む流体の、隣り合う流路チャネル322間の多孔質チャネル壁体324の透過を可能にする。複数の多孔質チャネル壁体324が機能性メンブランで被覆される。機能性メンブランは流体流のある部分に対して透過性であり、他の部分に対しては不透過性である。流体に流体分離メンブランを流過させることにより、機能メンブランが流体を、複数本の流路チャネル322を通って流れる保留分と被覆されたチャネル壁体324を通過する透出分に分離する。
【0042】
いくつかの実施形態において、多孔質チャネル壁体324は、機能性メンブランの曲げ性能を向上させるために多孔質チャネル壁体324に施される中間層である無機被覆層で被覆される。
【0043】
機能性メンブランの例には、有機ポリマー材料の、ジエポキシオクタン-ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(MW400)(DENO-D400)がある。一例において、DENO-D400は、多孔質基材上で固化すると、高RONを有する燃料(例えば、燃料の約100より大きいRONを有する部分)のような、燃料流の固化ポリマー及び多孔質基材の通過を可能にするが、低RONを有する燃料の固化ポリマー及び多孔質基材の通過は制限する。すなわち、機能性メンブランは燃料流を、低RONを有する保留分と高RONを有する透出分に分離する。機能性メンブランの一例はDENO-D400であるが、ポリエステル-ポリイミド及びポリエーテル-エポキシアミンのような、他の機能性メンブランも使用できるであろうことは当然である。機能性メンブランの例には、米国特許第7708151号明細書、米国特許第8119006号明細書及び米国特許出願公開第2008/0035557号明細書に開示されている機能性メンブランがある。
【0044】
車載セパレータ220の実施形態は中RONを有する燃料流を高RON成分と低RON成分に分離する。車載セパレータ220のいくつかの実施形態は、例えば車載セパレータ220に導かれる中RON燃料の流量及び温度を変えることによって、中RON燃料から透出される高RON成分の量及びオクタン価を変えることができる。例えば、燃料流を分離して比較的高いRONを有する高RON成分を比較的少量に供給するように車載セパレータ220を構成することができる。同じ車載セパレータ220を、燃料流を分離して比較的低いRONを有する高RON成分を比較的多量に供給するように構成することもできる。したがって、車載セパレータ220は、与えられたエンジン動作条件に必要なオクタン価を有する燃料の高RON成分を、必要な量で供給することができる。
【0045】
図7を再び参照すれば、多孔質チャネル壁体324上に被覆された機能性メンブランの透過率は流路チャネル322に送り込まれる燃料の温度に基づいて変わり得る。一般に、燃料の温度が上がるにつれて、機能性メンブランの透過速度は高くなる。しかし、機能性メンブランの透過速度が高くなると、流体流の透出分の平均RONは低くなるであろう。流体の透出分の平均RON対透過速度のバランスをとる、最適動作設定点が達成される。約90℃から約180℃にある燃料流を約20kPaから約1000kPaの圧力で流体分離部材221に送り込むとRONが約99より高い透出分が得られる。
【0046】
図8を次に参照すれば、車載セパレータ220の別の実施形態の流体分離部材421が示されている。この実施形態において、流体分離部材421は、多孔質チャネル壁体324で隔てられた複数本の平行流路チャネル322を有するハニカム様構造のセラミックモノリス体320を有するパーベーパレーション部材310を含む。複数の多孔質壁体324はセラミックモノリス体320の軸長313に沿って機能性メンブランで被覆される。セラミックモノリス体320は、セラミックモノリス体320の最外表面である、スキン315を有する。上で論じたように、機能性メンブランはセラミックモノリス体320を通って流れている流体をパーベーパレーションプロセスによって保留分と透出分に分離する。流体分離部材421は複数の開口334を有する分区エンドキャップ332を備える。分区エンドキャップ332はセラミックモノリス体320を、流体がそれを通過させられるかまたはそこから送り出される複数の個別貫通セグメント321に分割する。そのようなパーベーパレーション部材の例は、名称を「流体を分離するための分区セラミックモノリス体(Partitioned Ceramic Monoliths for Separating Fluids)」とする、米国仮特許出願第61/563860号(弁理士整理番号:SP11-254P)の明細書に説明されている。
【0047】
図13A〜13Cを参照すれば、いくつかの実施形態の分区エンドキャップ332,532,632が示されている。これらの実施形態において、分区エンドキャップ332,532,632は、壁領域336によって相互に隔てられた、変動する数の開口334を有する。壁領域336は、
図8に示されるように、多孔質チャネル壁体324の領域及び、車載セパレータ220に入る流体から遮蔽された、セラミックモノリス体330の流路チャネル322に対応する。いくつかの実施形態において、分区エンドキャップ332,532,632の開口334に直に接して配置された個別貫通セグメント321は、分区エンドキャップ332,532,632の壁領域336の背後に配置された、無被覆多孔質チャネル壁体324(図示せず)によって相互に隔てられ得る。したがって、分区エンドキャップ332,532,632の開口334を、分区エンドキャップ332,532,632が取り付けられているモノリスアセンブリの個別貫通セグメントを隔離し、よってセラミックモノリス体330への流体の流入を開口334内に露出された個別貫通セグメントだけに限定し、他の多孔質チャネル壁体324及び流路チャネル322は遮蔽するために用い得ることは当然である。
図13Aは、分区エンドキャップ332の壁領域336の背後に配置された多孔質チャネル壁体324及び流路チャネル322によって相互に隔離されたセラミックモノリス体の4つの貫通セグメント(図示せず)に対応する、4つの開口334を有する分区エンドキャップ332を示す。
図13Bは、分区エンドキャップ532が取り付けられたセラミックモノリス体330(図示せず)の対応する貫通セグメントを隔離する1つの開口334を有する分区エンドキャップ532を示す。
図13Cは、分区エンドキャップ632が取り付けられたセラミックモノリス体330(図示せず)の対応する貫通セグメントを隔離する2つの開口334を有する分区エンドキャップ632を示す。これらの実施形態において、分区エンドキャップ332,532,632は、開口334内に露出されたセラミックモノリス体330の個別貫通セグメントにだけ流体を流入させ、分区エンドキャップ332,532,632の壁領域366によって遮蔽されたセラミックモノリス体330の個別貫通セグメントへの流入は阻止する。
【0048】
図13A,13B及び13Cはそれぞれ、4つ、1つ及び2つの開口をもつ分区エンドキャップを示しているが、セラミックモノリス体の所望の数の貫通セグメントの露出及び/または遮蔽を容易にするため、分区エンドキャップがいかなる数の開口ももって構成され得ることは当然である。分区エンドキャップを用いる特定の数の個別貫通セグメントへの流体の流入の制御は、パーベーパレーション部材の収率、パーベーパレーション部材の透出/保留分離速度及び分離された流体の透出分及び保留分内の揮発成分の濃度を制御するために用いることができる。例えば、露出貫通セグメント数を2(すなわち、
図13Cの分区エンドキャップの使用)から1(すなわち、
図13Bの分区エンドキャップの使用)に減らすと、パーベーパレーション部材の透出分収率が1/2に減り、分離速度も低下する。しかし、透出分は2つの貫通セグメントを用いるパーベーパレーション部材から得られる透出分より低い揮発性分濃度を有し得る。したがって、流体が通過するセラミックモノリス体の露出貫通セグメントの数を変えて、所望の量及び特定のエンドユーザの用途に望ましい揮発成分濃度を有する透出分を提供することができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、パーベーパレーション部材に送り込まれた燃料は分区エンドキャップの開口334の背後に配置される個別貫通セグメントの数の全てより少ない数の個別貫通セグメントに選択的に導くことができる。
図13Aを参照すれば、一実施形態において、分区エンドキャップ332は4つの開口314を有し、対応するセラミックモノリス体は(
図8に示されるように)4つの個別貫通セグメント321を有しているが、燃料がパーベーパレーション部材を流過している間に保留分から分離される透出分の量及びRONを制御するため、燃料を開口334の内の1つ及び対応する個別貫通セグメントだけに導き、残りの開口及び対応する個別貫通セグメントからは転流させることができる。したがって、燃料が送り込まれる個別貫通セグメントの数はセラミックモノリス体の個別貫通セグメントの総数より少なくすることができる。
【0050】
本開示の範囲を逸脱することなく、セラミックモノリス体の個別貫通セグメントに燃料を選択的に分配するための別の装置及び方法を組み入れうることは当然である。
【0051】
図9を次に参照すれば、ECU140は相互に接続されたメモリ142及びプロセッサ144を有する。エンジンの動作を管理するための一連の動作命令がECU140のメモリ142に格納される。いくつかの実施形態において、ECU140のメモリ142に格納される動作命令は、複数のエンジン性能センサによってECU140に与えられる複数のエンジン動作状態に基づく、エンジンシリンダのそれぞれに給送されるべき燃料の量を制御する、「燃料マップ」を含む。ECU140のメモリ142に格納される動作命令は、エンジンシリンダのそれぞれにおけるスパーク点火源のタイミングを制御する、「スパークマップ」も含む。
【0052】
一実施形態において、ECU140は、(
図5に示される)高RON燃料インジェクタ250及び低RON燃料インジェクタ260に電気的に接続される。この実施形態において、ECU140はエンジンの動作パラメータに基づいて選択的に高RON燃料及び低RON燃料をエンジンシリンダに送り込む。例えば、エンジンがフル出力条件またはほぼフル出力条件で動作している場合、ECU140は、それぞれのエンジンシリンダに給送される総燃料の過半部分が、低RON燃料インジェクタ260からよりも高RON燃料インジェクタ250から給送されるように、命令することができる。ECU140は、上述したように、高RON燃料インジェクタ250から給送される燃料の比率に対する命令を、エンジンノックセンサ150によって与えられる信号に基づいて、燃料マップで指定される基準値から修正することができる。
【0053】
図10を次に参照すれば、エンジンシリンダ400が簡略に示されている。エンジン110は、従来から知られているように、様々な構成で配置された複数のエンジンシリンダ400を有することができる。エンジンシリンダ400はエンジンシリンダ400内で往復運動するピストン410を有する。ピストン410はコネクティングロッド424によってクランクシャフト420に連結される。吸気マニフォールド120のプレナム122から空気90がエンジンシリンダ400に送り込まれる。空気がエンジンシリンダ400に流入すると、高RON燃料インジェクタ250は吸気ラナー124内に高RON燃料を噴射することができる。空気90は、エンジンヘッド430の吸気ポート432内に配置された、開状態の、吸気弁440を巡ってエンジンシリンダ400に入る。ピストンの往復運動によってエンジンシリンダ400内の圧力が高まり、エンジンシリンダ400の容積が減少する間、エンジンシリンダ400内の空気90の量が一定に保たれるように、吸気弁440が閉じる。ピストン400がエンジンヘッド430に向けて進むにつれて、エンジンシリンダ400内の空気の圧力が高まる。圧縮ストローク中、低RON燃料インジェクタ260を通してエンジンシリンダ400に低RON燃料成分を送り込むことができる。
図10に示されるように、低RON燃料インジェクタ260はエンジンシリンダ400内に燃料を直接噴射する。
【0054】
ピストン410がTDCに近づくと、ECU140はスパークプラグ470に信号を送ってスパークを発生させる。スパークプラグ470はスパークプラグ470の近傍にある空気−燃料混合気を局所的に加熱し、エンジンシリンダ400内に広がってエンジンシリンダ400内の燃料を燃焼させる、火炎面を生じさせる。空気−燃料混合気内の燃料の燃焼は燃焼済空気−燃料混合気の温度及び圧力を高める。圧力の上昇は、膨張ストロークにおいてピストン410が下向きに、エンジンヘッド430から離れて、往復運動するにつれて燃焼済空気−燃料混合気から抜き取られる。膨張ストロークの完了後、燃焼済空気−燃料混合気はエンジンヘッド430の排気ポート434内に配置された開状態の排気弁450を通ってエンジンシリンダ400から外へ導かれる。
【0055】
図10に示されるように、吸気マニフィールド120の吸気ラナー124内に噴射された燃料は一般に均質な空気−燃料混合気を形成する、すなわち、エンジンシリンダ400内で概ね均等に混合される。この均質な空気−燃料混合気は一般に、燃料が完全に燃焼し、燃焼済空気−燃料混合気内に酸素が残らないように、空気の量と燃料の量が釣り合っている、「化学量論的」である。化学量論的空気−燃料混合気は、空気−燃料混合気内の燃料の完全燃焼を促進する。化学量論的空気−燃料混合気は、与えられた動作点において最大IMEPを与える。化学量論的空気−燃料混合気は、与えられたエンジン動作点に対して最高シリンダ内温度も与える。
【0056】
エンジンシリンダ400内に噴射された燃料は、エンジンシリンダ400内に均質な空気−燃料混合気を形成することができ、あるいはエンジンシリンダ400内に層状空気−燃料混合気を形成することができる。エンジンの圧縮ストローク中に燃料が噴射されると、低RON燃料インジェクタ260近傍の空気−燃料混合気は、燃焼を促進する、化学量論的状態に近づくことができるが、低RON燃料インジェクタ260から遠くにある空気−燃料混合気は薄いままである。ガソリンエンジンに対する化学量論的空気−燃料比は重量で14.7:1である。層状空気−燃料混合気に対する平均空気−燃料比は重量で16:1より大きくすることができる。いくつかの実施形態において、層状空気−燃料混合気に対する平均空気−燃料比は重量で20:1より大きくすることができる。別の実施形態において、層状空気−燃料混合気に対する平均空気−燃料比は重量で40:1より大きくすることができる。また別の実施形態において、層状空気−燃料混合気に対する平均空気−燃料比は重量で65:1より大きくすることができる。リーンバーン層状空気−燃料混合気は、化学量論的均質空気−燃料混合気に比較して、与えられたエンジン動作点におけるシリンダ内温度を低くする。リーンバーン層状空気−燃料混合気では一般に、燃料使用量が減少し、γが高くなり、これはエンジンの熱効率を高めるからストローク当たりの燃料消費が低下する。
【0057】
一般に、エンジンは低出力エンジン動作状態にあるときより高出力エンジン動作状態にあるときにエンジンノックがおこり易い。高出力エンジン動作状態にある間は高RON成分を有する燃料がエンジンシリンダに給送されるから、エンジンは、エンジンの燃焼効率及び熱効率が最大化されるように、化学量論的空気−燃料混合気で動作することができる。したがって、本開示にしたがう燃料給送系を用いて動作しているエンジンの仕様燃料消費量は低RON燃料を用いて動作しているエンジン及び/またはエンジンノックを防止するために入れられる「アンチノック」剤を用いて動作しているエンジンの仕様燃料消費量よりも少ない。
【0058】
図11及び12を次に参照すれば、他の実施形態のエンジンシリンダ500,600が簡略に示されている。
図11に示される実施形態においては、高RON燃料インジェクタ250及び低RON燃料インジェクタ260がいずれも吸気マニフォールド120の吸気ラナー124内に配置される。高RON燃料インジェクタ250及び低RON燃料インジェクタ260は燃料を吸気ラナー124に送り込み、燃料はエンジンヘッド430の入力ポートに配置された、開状態の、吸気弁440を巡ってエンジンシリンダ500に入る。
【0059】
図12に示される実施形態においては、高RON貯槽240及び低RON貯槽230が混合弁270に連結される。混合弁270は、エンジンシリンダ600内に燃料を直接噴射するための、エンジンヘッド430に配置されたインジェクタ280に連結される。混合弁270をインジェクタ280の近くに配置することにより、エンジンシリンダ600内に噴射される燃料の高RON成分と低RON成分の比率を、エンジン110の出力要求に応じるため及びまたはエンジンノックを軽減するために、迅速に調節することができる。いくつかの実施形態において、燃料の高RON成分と低RON成分の比率はサイクル毎ベースで調節することができる(すなわち、インジェクタ280の噴射パルス毎に調節することができる)。
【0060】
図1を再び参照すれば、伝動機構100のいくつかの実施形態は、排気ガス再循環(EGR)システム160を備えることができる。EGRシステム160はエンジン110の排気マニフォールド及び吸気マニフォールド120のいずれとも流体連通している。EGRシステム160は燃焼済空気−燃料混合気をエンジン排気から吸気マニフォールド120に戻す。EGRシステム160は燃焼済空気−燃料混合気の温度を下げ、したがって密度を高める、インタークーラー(図示せず)を備えることができる。EGRシステム160を通過する燃焼済空気−燃料混合気はゼロに近い酸素含有量を有する。燃焼済空気−燃料混合気は吸気マニフォールド120内で未燃焼空気と混合される。燃焼済空気と未燃焼空気の混合気はエンジンシリンダ内に導かれて、エンジンサイクルの作動流体になる。燃焼済空気−燃料混合気は酸素量が少なくなっているから、燃焼済空気−燃料混合気は燃料の燃焼に利用できる酸素量を減じる。したがって、EGRシステム160からの燃焼済空気−燃料混合気がエンジンシリンダに送り込まれる場合は、化学量論的空気−燃料時を維持するためにエンジンシリンダ内に噴射されるに必要な燃料が少なくなる。エンジンシリンダ内の酸素及び燃料の低減はシリンダ内の温度を低下させることができ、これにより、自動車排ガスを低減し、エンジンからの廃熱を少なくすることができる。
【0061】
図1をまだ参照すれば、エンジンノックを検知するため、エンジンノックセンサ150がエンジンに結合される。いくつかの実施形態において、エンジンノックセンサ150はエンジンノック音を検出する圧電センサである。エンジンノックセンサ150はECU140に電気的に接続される。エンジンノックセンサ150がエンジンノックを検知してエンジンノックを示す信号をECU140に送ると、ECU140は、エンジンノックを防止するため、エンジン動作パラメータを調節する。例えば、ECU140は高RON燃料インジェクタに流量を上げさせる信号を送り、低RON燃料インジェクタ260に流量を下げさせる信号を送ることができる。したがって、高RON燃料インジェクタから流れる燃料の相対比率が、低RON燃料インジェクタ260からの燃料に比較して、高くなるであろう。すなわち、エンジンシリンダに送り込まれる燃料の平均RONが高くなるであろう。
【0062】
あるいは、またはさらに、ECU140は、エンジンサイクルの後の方でスパークプラグが発火するように、タイミングを遅らせることができる。上で論じたように、タイミングを遅らせることでエンジン出力が下がり、ノックによって生じるエンジン損傷の可能性が低められる。
【0063】
あるいは、またはさらに、ECU140は、過給機のウエィストゲートを開かせ、よって燃焼済排気にターボチャージャーのタービンをバイパスさせる、信号を送ることができる。ターボチャージャーのタービン及びコンプレッサは速度を落とし、よって吸気マニフォールド内の圧力が低下するであろう。吸気マニフォールド内の圧力が低下すれば、エンジン出力が下がり、ノックによって生じるエンジン損傷の可能性が低められる。
【0064】
あるいは、またはさらに、ECU140は、可変容量ターボチャージャーにノズルの位置を修正し、よってターボチャージャーのタービンにかかる燃焼済排気ガスの圧力を下げるように、命令することができる。ターボチャージャーのタービン及びコンプレッサの速度が下がり、よって吸気マニフォールド内の圧力が低下するであろう。吸気マニフォールド内の圧力が低下すれば、エンジン出力が下がり、ノックによって生じるエンジン損傷の可能性が低められる。
【0065】
さらに、ECU140は、燃料の高RON成分の量及びオクタン価が調節されるように、車載セパレータ220に送り込まれる燃料の温度または圧力を変更することができる。車載セパレータ220に入る燃料の温度及び圧力の修正により、動作し続けるに十分な高オクタン価燃料をエンジンに供給することができる。
【実施例】
【0066】
燃料分離実施例
92.5RONの基礎オクタン価を有し、9.7空量%のエタノールを含有する、無鉛レギュラー燃料ブレンドを、燃料から高RON成分及び低RON成分を得るため、(米国特許第8119006号及び米国仮特許出願第61/476988号の明細書に説明されているような)パーベーパレーションメンブランを用いて分離した。
図8に示され、名称を「流体を分離するための分区セラミックモノリス体」とする、米国仮特許出願第61/563860号(弁理士整理番号:SP-254P)の明細書に説明されているような、4区画セラミックモノリス体を用いた。
【0067】
パーベーパレーション部材の代表的動作条件には、4〜6g/秒-m
2の供給率、500kPa(絶対)の圧力、140〜160℃の燃料流入口温度及び25kPa(絶対)の透出側圧力を含めた。表1は、複数区分を用いることで、代表的動作条件において97RONを有する高RON成分の40%(重量比)の収率(透出分)が得られたことを示す。1区画だけを用いた結果、収率(透出)は20%に低下したが101RONを有する高RON成分が得られた。燃料から生産された、対応する低RON成分(保留分)も示される。
【0068】
【表1】
【0069】
本開示にしたがう伝動機構がエンジンの出力を高めるために過給機を備えることは当然である。伝動機構は、燃料を高RON成分と低RON成分に分離する車載セパレータを有する、燃料給送系をさらに備える。高RON成分はエンジンがノックをおこし易い高出力動作条件においてエンジンに給送される。低RON成分は低出力動作条件においてエンジンに給送される。エンジンは、さらに高い出力を発生するため、耐早期点火性を高めることで点火進角をさらに進めることが可能になる動作条件において、燃料の高RON成分を利用する。
【0070】
第1の態様において、本開示は、
それぞれが吸気ポート432及び排気ポート434を有する、複数のエンジンシリンダ400を有するエンジン110,
エンジン100のエンジンシリンダ400のそれぞれの吸気ポートと流体連通している吸気マニフォールド120,
吸気マニフォールド120内の空気90の圧力を大気圧より高める、エンジン110に結合された過給機130,及び
エンジン110のエンジンシリンダ400のそれぞれに燃料を供給する燃料給送系200,
を備え、
燃料給送系200が、エンジンシリンダ400当たり少なくとも1つの燃料インジェクタ280,中RONを有する燃料を貯蔵するための燃料タンク210及び、エンジン110の動作パラメータに基づくエンジン100のエンジンシリンダ400のそれぞれへの目標値が定められた給送のため、燃料を高RON成分と低RON成分に分離する車載セパレータ220を有する、
車用伝動機構100を提供する。
【0071】
第2の態様において、本開示は、
複数のシリンダを有するエンジン110,
エンジンシリンダ400と流体連通している吸気マニフォールド120,
吸気マニフォールド120内の圧力を大気圧より高めるための、吸気マニフォールド120に結合された過給機130,及び
エンジンシリンダ400のそれぞれに燃料を供給する燃料給送系200,
を備え、
燃料給送系200が、エンジンシリンダ400当たり少なくとも1つの燃料インジェクタ280,中RONの燃料を貯蔵するための燃料タンク210及び車載セパレータ220を有する、
車用伝動機構100の動作方法を提供し、方法は、
燃料を車載セパレータ220に送り込む工程、
燃料を予備加熱する工程、
燃料にパーベーパレーション部材310を通過させて、燃料を低RON成分と高RON成分に分離する工程、
低RON成分及び高RON成分を冷却する工程、
高RON成分を高RON貯槽240に貯蔵する工程、
エンジンシリンダ400のそれぞれに空気90及び燃料を送る工程、
エンジンシリンダ400のいずれかにおいて圧縮点火がおこっているか否かを判定する工程、及び
圧縮点火が検出されれば、高RON貯槽240からエンジンシリンダ400のそれぞれに給送される燃料の比率を高める工程、
を含む。
【0072】
第3の態様において、本開示は、車載セパレータ220が多孔質チャネル壁体324で隔てられた複数本の平行流路チャネルを有するセラミックモノリス体320を含むパーベーパレーション部材310を備え、多孔質チャネル壁体324の少なくとも一部がパーベーパレーションプロセスによって燃料を高RON成分と低RON成分に分離する機能性メンブランで被覆されており、燃料の高RON成分が多孔質チャネル壁体324を通って透出し、低RON成分がポリマー被覆多孔質チャネル壁体324によって保留されて流路チャネル322に沿って流れる、第1の態様または第2の態様の伝動機構100を提供する。
【0073】
第4の態様において、本開示は、パーベーパレーション部材310がさらに無被覆多孔質チャネル壁体324で相互に隔てられた個別貫通セグメントを有する、第2または第3の態様の伝動機構100を提供する。
【0074】
第5の態様において、本開示は、過給機130がコンプレッサに結合されたタービンを有するターボチャージャーを含み、タービンが複数のシリンダの排気ポートと流体連通していて、コンプレッサが吸気マニフォールド120と流体連結している、第1から第4の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0075】
第6の態様において、本開示は、エンジン110がさらにクランクシャフト420を備え、過給機130が吸気マニフォールド120と流体連結していてクランクシャフトに連結されているコンプレッサを有するスーパーチャージャーを含む、第1から第5の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0076】
第7の態様において、本開示は、車載セパレータ220がポリマー被覆多孔質壁体324によって定められる複数本の流路チャネル322を有するポリマー被覆セラミックモノリス体320を含むパーベーパレーション部材310を有し、燃料の高RON成分がポリマー被覆多孔質チャネル壁体324を通って透出し、低RON成分がポリマー被覆多孔質チャネル壁体324によって保留されて流路チャネル322に沿って流れる、第1から第6の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0077】
第8の態様において、本開示は、車載セパレータ220がさらに燃料タンク210からパーベーパレーション部材310に向けて通過する燃料の温度を高める燃料ヒータ212を有する、第1から第7の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0078】
第9の態様において、本開示は、燃料給送系200がさらに高RONを有する燃料を貯蔵する高RON貯槽240を備える、第1から第8の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0079】
第10の態様において、本開示は、
エンジン110に結合されたエンジンノックセンサ150であって、エンジンシリンダ400内の空気90−燃料混合気の圧縮点火を検知するエンジンノックセンサ150、及び
エンジンノックセンサ150及び燃料インジェクタに電気的に接続されたエンジン110の制御ユニット、
をさらに備え、
エンジンノックセンサ150がエンジンシリンダ400内の空気90−燃料混合気の圧縮点火を検知すると、エンジン110の制御ユニットが燃料インジェクタによってエンジンシリンダ400に送り込まれる燃料のRONを高める、
第1から第9の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0080】
第11の態様において、本開示は、燃料が吸気ポート432を通してエンジンシリンダ400に給送されるように、複数の燃料インジェクタが吸気マニフォールド120に結合される、第1から第10の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0081】
第12の態様において、本開示は、燃料がエンジンシリンダ400に直接噴射によって給送されるように、複数の燃料インジェクタがエンジン110に結合される、第1から第11の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0082】
第13の態様において、本開示は、エンジンシリンダ400の排気ポート及びエンジンシリンダ400の吸気ポートと流体連通している排気ガス再循環システム160をさらに備える、第1から第12の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0083】
第14の態様において、本開示は、低出力動作条件においてエンジンシリンダ400のそれぞれ内で燃焼される空気90−燃料混合気が化学量論的混合気より少なくとも10%薄い、第1から第13の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0084】
第15の態様において、本開示は、エンジン110の複数のシリンダ内の空気90がエンジン110の幾何学的圧縮比より大きい有効圧縮比を有する、第1から第14の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0085】
第16の態様において、本開示は、エンジン110の動作条件において燃料タンク210内の燃料のスパーク点火に対するスパークタイミングがその動作条件に対する最大制動トルクタイミングから遅延される、第1から第15の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0086】
第17の態様において、本開示は、エンジン110の高出力動作条件において、高RON成分を用いたときのスパークタイミングが中RONの燃料を用いたときに比較して進められる、第1から第16の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0087】
第18の態様において、本開示は、空気−燃料混合気が高出力動作条件において均質である、第1から第17の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0088】
第19の態様において、本開示は、パーベーパレーション部材310によって分離された燃料の高RON成分が燃料のエタノール含有量より少なくとも約50%多いエタノール含有量を有する、第1から第17の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0089】
第20の態様において、本開示は、パーベーパレーション部材310によって分離された燃料の高RON成分が燃料のエタノール含有量より少なくとも約100%多いエタノール含有量を有する、第1から第19の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0090】
第21の態様において、本開示は、パーベーパレーション部材310によって分離された燃料の低RON成分が燃料のエタノール含有量より少なくとも約10%少ないエタノール含有量を有する、第1から第20の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0091】
第22の態様において、本開示は、高RON成分が燃料のRONより少なくとも約3%高いRONを有する、第1から第21の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0092】
第23の態様において、本開示は、低負荷動作条件において、高RON貯槽240からエンジンシリンダ400のそれぞれに給送される燃料の比率を減じる、第1から第21の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0093】
第24の態様において、本開示は、ある数のパーベーパレーション部材310の個別貫通セグメントを通して燃料を導く、
−その数は、分離プロセス中に生産される透出分の透出速度、収率またはRONの内の少なくとも1つを制御するため、パーベーパレーション部材310の個別貫通セグメントの総数より少ない、
第1から第23の態様のいずれかの伝動機構100を提供する。
【0094】
第25の態様において、本開示は、さらに、分離プロセス中に生産される透出分の収率を低め、分離プロセス中に生産される透出分のRONを高めるために、個別貫通セグメントの第1の数より少ない第2の数の個別貫通セグメント内に燃料を導く、第24の態様の伝動機構100を提供する。
【0095】
特許請求される主題の精神及び範囲を逸脱することなく本明細書に説明される実施形態に様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書に説明される様々な実施形態の改変及び変形が添付される特許請求項及びその等価形態の範囲内に入れば、本明細書はそのような改変及び変形を包含するとされる。