(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271544
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】反射スペクトルを用いた物体の色強調及び保存
(51)【国際特許分類】
H05B 37/02 20060101AFI20180122BHJP
G01J 3/46 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
H05B37/02 L
G01J3/46 Z
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-523634(P2015-523634)
(86)(22)【出願日】2013年7月15日
(65)【公表番号】特表2015-529940(P2015-529940A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】IB2013055814
(87)【国際公開番号】WO2014016730
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年7月14日
(31)【優先権主張番号】61/676,460
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】バーアイエンス ヨハネス ペトルス ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】バン フーフ ウィレム ピエト
(72)【発明者】
【氏名】ラトガース アンドリュー ウーリッヒ
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−040241(JP,A)
【文献】
特開2008−071662(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0115406(US,A1)
【文献】
特開2011−238621(JP,A)
【文献】
特開2000−050286(JP,A)
【文献】
特開2012−048860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
G01J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を照射し、複数の色の光を放射する照明装置であって、
照射される物体のタイプを決定し、
前記物体の反射スペクトルを受け取り、
前記照明装置によって放射される混合光を制御するための制御パラメータを選択し、
選択された前記制御パラメータに基づいて、前記物体を照射する前記照明装置を制御し、
前記混合光は、前記物体のタイプに関連する所定のパラメータに基づいて、前記物体の前記反射スペクトルにマッチする照明スペクトルを有する、制御ユニットを含み、
前記制御ユニットと通信し、前記物体を特定する検出器と、複数の事前に記憶された反射スペクトルを記憶するデータベースと、を更に含み、前記物体の事前に記憶された反射スペクトルは、前記複数の事前に記憶された反射スペクトルを含む前記データベースから獲得される、照明装置。
【請求項2】
前記混合光を放射する複数の光源を更に含む、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記所定のパラメータは、前記照明装置によって放射される前記混合光の所定の最小演色評価数レベルを含み、前記制御ユニットは、前記照明装置によって放射される前記混合光のパラメータを、前記所定の最小演色評価数レベルが達成されるように選択する、請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記照明装置によって放射される前記混合光の演色評価数レベルは、少なくとも70である、請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記データベースは、前記照明装置内の複数の光源の色に基づいた照明スペクトルの色飽和度レベル及び演色評価数の計算結果を含む、請求項1乃至4の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記制御ユニットと通信し、前記物体の前記反射スペクトルを測定するセンサを更に含む、請求項1乃至5の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、人間の目の感色性に基づいて前記照明スペクトルを調節することによって、知覚される色を維持し、前記照明装置によって放射される前記混合光の前記制御パラメータは、前記知覚される色が達成されるように決定される、請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項8】
前記所定のパラメータは、人間の目の感色性スペクトルを含み、前記制御ユニットは、前記照明装置によって放射される光を減少させるように、前記人間の目の感色性スペクトルに対して前記照明スペクトルに重み付けする、請求項1、2又は7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記検出器は、前記物体を当該物体の色及び形状を通じて特定する、請求項1に記載の照明装置。
【請求項10】
照明装置を制御する方法であって、
照射される物体のタイプを決定するステップと、
前記物体の反射スペクトルを受け取るステップと、
前記物体のタイプに関する所定パラメータに基づいて、照明スペクトルを前記物体の前記反射スペクトルにマッチさせるステップと、
前記物体のタイプに関して前記照明スペクトルが前記反射スペクトルにマッチしているように、前記照明装置によって放射される混合光の制御パラメータを選択するステップと、
選択された前記制御パラメータに従って光を放射するように前記照明装置を制御するステップと、
を含み、
検出器で前記物体を特定するステップと、
データベースから、前記物体の事前に記憶された反射スペクトルを獲得するステップと、
を更に含む、方法。
【請求項11】
前記照明装置によって放射される前記混合光の所定の最小演色評価数レベルを設定するステップと、
前記所定の最小演色評価数レベルが達成されるように、前記照明装置によって放射される前記混合光の制御パラメータを選択するステップと、
を更に含む、請求項10に記載の照明装置を制御する方法。
【請求項12】
前記データベースは、前記照明装置内の複数の光源の色に基づいた照明スペクトルの色飽和度レベル及び演色評価数の計算結果を更に含む、請求項11に記載の照明装置を制御する方法。
【請求項13】
センサで前記物体の前記反射スペクトルを測定することによって、前記反射スペクトルを獲得するステップを更に含む、請求項11に記載の照明装置を制御する方法。
【請求項14】
人間の目の感色性に基づいて前記照明スペクトルを調節することによって、知覚される色を維持するステップと、
前記知覚される色が達成されるように、前記照明装置によって放射される前記混合光の制御パラメータを選択するステップと、
を更に含む、請求項10に記載の照明装置を制御する方法。
【請求項15】
人間の目の感色性スペクトルで前記物体の前記反射スペクトルにマッチする前記照明スペクトルに重み付けするステップを更に含む、請求項10又は14に記載の照明装置を制御する方法。
【請求項16】
制御ユニットに、物体を照射する照明装置を制御させるコンピュータプログラム手段を、コンピュータ可読媒体上に記憶したコンピュータプログラムであって、
照射される物体のタイプを決定するためのコードと、
前記物体の反射スペクトルを受け取るためのコードと、
前記物体のタイプに関する所定のパラメータに基づいて、照明スペクトルを前記物体の前記反射スペクトルにマッチさせるためのコードと、
混合された場合に、前記照明スペクトルが、前記物体のタイプに関して前記反射スペクトルにマッチするように、前記照明装置によって放射される混合光の制御パラメータを選択するためのコードと、
選択された前記制御パラメータに従って光を放射するように前記照明装置を制御するためのコードと、
を含み、
検出器で前記物体を特定するためのコードと、
データベースから、前記物体の事前に記憶された反射スペクトルを獲得するためのコードと、
を更に含む、コンピュータプログラム。
【請求項17】
前記物体は、光に敏感な人工物である、請求項10に記載の照明装置を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、物体を照射する照明装置、当該照明装置を制御する方法、及び、物体の知覚をエンハンスするために物体を照射する当該照明装置によって放射された光の色混合を制御するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、標識、美術館内の物体、人工物及び製品といった物体は、観察者の注意及び関心を捉えるようにデザインされ、展示される。最近では、照明は、外観を更にエンハンスして物体を強調するツールとなってきており、物体の照明を増加する、即ち、薄暗い照明を回避するためだけに使用されるわけではない。これに応じて、例えば白色光を実現するために、異なる色の光を放射する発光ダイオードを組み合わせた色混合光源を使用することの関心も増加し、今日では、商業施設及び家屋の両者において、一般的に使用されている。色混合光源は、ほとんどの場合、それぞれ特定の色を放射する複数の光源からなり、物体を更にエンハンスするように放射された光を操作する可能性を提供する。
【0003】
しかし、照明専門家の助けがなければ、物体の外観がエンハンスされる一方で、物体が照明によって損傷されることがないように、色混合光源によって放射される光の輝度、色及び彩度パラメータを設定することは困難である。色混合光源の調節が幾分複雑であるが、色混合光源に対する需要が高まることによって、ユーザ入力がほとんどない又は全くない色混合光の制御方法の開発が促進された。更に、例えば製品の特定の色を強調することによって、当該物体を周囲から目立たせることが興味深い応用が幾つかある。また、例えば美術館内の一部の物体は、値段の付けようのない歴史的な人工物の損傷を引き起こしうる、照明を含む外的影響に敏感である。照明によって引き起こされる損傷は、例えば人工物である物体が入射光によって加熱されることによって、又は、例えば化学反応を引き起こすといった、人工物によって吸収される光に関連する光化学反応によって、しばしば、生じる。
【0004】
国際特許公開公報WO2011/092625には、物体の特定の色に基づいて当該物体を照射する色調節可能な光源を制御する方法と、それに対応するシステムとが開示されている。当該方法及びシステムでは、特定の色の彩度成分が照射光に混ぜ入れられ、色温度に関して、当該特定の色をエンハンスする。国際特許公開公報WO2011/092625では、色調節可能な光源の向上された自動制御が提供されているが、物体のエンハンスメントは、当該物体の所与の色情報に制限され、当該物体から利用可能である多くの情報が捨てられている。一部の物体では、エンハンスするための特定の色を決定することが難しい場合もあり、また、捨てられる情報は、より包括的な描写に従って物体の知覚をより増加させる一方で、ぼやけた色といった、光によって引き起こされる物体の物理的な影響を減少させる照明光が得られるように、改良された方法で、照明光を調節するために使用することができる。したがって、照射される物体から得られるより多くの情報を利用して、当該物体をハイライトする色混合光源を制御する改良型照明装置、コンピュータプログラム及び方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の上記及び他の欠点を鑑みて、本発明は、複数の波長における物体の反射スペクトル及び人間の目による知覚に関して物体をエンハンスする一方で、物体の物理的な光影響を最小限に抑えるように照明を調節する能力を有する、使い易い照明装置を提供することを一態様とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光によって引き起こされる物体の物理的影響とは、物体が、当該物体によって吸収され、当該物体内に加熱又は光化学過程を引き起こす波長の光で照射されることと理解されるべきである。
【0007】
本発明の一態様によれば、上記使い易い照明装置は、物体を照射し、複数の色の光を放射する照明装置であって、当該装置は、当該照明装置を制御する制御ユニットを含み、当該制御ユニットは、照射される物体のタイプを決定し、物体の反射スペクトルを受け取り、照明装置によって放射される混合光を制御するための制御パラメータを選択し、選択された制御パラメータに基づいて、物体を照射する照明装置を制御し、混合光は、物体のタイプに関連する所定のパラメータに基づいて、物体の反射スペクトルにマッチする照明スペクトルを有する照明装置によって、少なくとも部分的に満足される。
【0008】
照明装置には、物体を照射する複数の光源を含む発光デバイスが具備される。更に、光源とは、RGBW又はRGBA色混合光源といった4つ以上の異なる色を含む任意の色混合光源を意味する。更に、出力スペクトルにおいて狭い発光ピークを有する発光ダイオード(LED)は、白色光として知覚される光を放射する広い出力スペクトルを有する光源と組み合わされてもよい。広い出力スペクトルを有する光源は、例えば蛍光体変換発光ダイオードであってよい。照明装置は更に、調整された蛍光体素子を有する単一のLED源を含んでもよい。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、照明装置によって放射される混合光は、複数の光源によって提供される。複数の光源は、RGBW又はRGBA色混合光源といった4つ以上の異なる色を有する任意のタイプの色混合光源を含んでもよい。複数の光源は、発光ダイオード、レーザー又は蛍光体変換発光ダイオードを含んでもよい。
【0010】
光源の照明スペクトルは、照明装置内の複数の光源のそれぞれ(又は上記したような調整された蛍光体素子を有する光源)のスペクトル分布の組み合わせである。「色」との用語は、400nm乃至700nmの任意の光波長、又は、可視スペクトル内の様々な光波長の任意の組み合わせを指すものと理解されるべきである。
【0011】
なお、本願のコンテキストでは、「物体」との用語は、客に向けて展示される製品、人工物、絵画、光に敏感な物体、光に敏感な材料、歴史的な人工物、商品、美術品、標識、ウィンドウディスプレイ又はウィンドウ面(例えば壁、天井、床又は他のタイプの表面)を含む任意のタイプの物理的な物体であってよい。物体のタイプは、2つのグループに分けられる。即ち、美術品、歴史的な人工物、又は、光に敏感な材料を用いた物体といった光に敏感な物体か、又は、標識、食品及び商品(例えば消費者製品のパッケージ)といった光に対する敏感性が問題にならない物体とに分けられる。
【0012】
本発明は、物体の反射スペクトルを分析し、照明スペクトルのパワー分布を、対応する波長において、照射された物体の反射スペクトルのパワー分布にマッチさせることによって、物体から得られた波長に依存する情報を使用して、物体の幾つかの色を同時にエンハンスさせるという認識に基づいている。加えて、照明スペクトルを、照射された物体の反射スペクトルにマッチさせることは更に、物体を照射することから生じる物体の損傷を減少させる。これに対応して、物体から反射した光は、熱によって、又は、物体内に光化学過程を生じさせることによって物体に影響を及ぼさない。当該過程が生じるためには、物体によって光が吸収されることを必要とする。
【0013】
物体の(例えば完全な)反射スペクトルを考慮することによって、より完全な現実観が提示される。これは、物体が、例えば黄色といった特定の色を放射すると知覚されても、反射スペクトルは、黄色光に対応する約570〜590nmの明らかなピーク波長を有する反射スペクトルの直感的な概念ではなく、緑色と赤色の間の色に対応する500〜700nmの波長間に延在する広い範囲のより高い反射を示す場合がある。
【0014】
物体のタイプに依存して、照明装置は、しばしば、放射される光に、様々な要求を課す様々な環境に置かれる。物体が、オレンジといった果物である場合、照明装置は、店内に配置される。店という環境では、客も、商品から離れている照明装置によって放射される光によって照射される可能性が非常に高い。この例としては、客が、照明装置によって照射されている陳列棚からオレンジを選択する状況である。美術館内といった別の実施態様では、照明装置は、しばしば、絵画を直接照射する。したがって、来館者は、照明装置からの光によって照射されることはない。したがって、店内に配置され、商品を照射する照明装置から放射される光は、動き回っていない客が例えば緑色に見えるように、光が、「白色」又は白色に近い光として知覚されるように、光の組成を調節する必要がある。美術館内の絵画の場合、周囲環境は同じ重要度を持たない。これは、来館者は、照明装置によって照射されず、来館者が原因で光の組成を変更する要求はあまり重要ではないからである。しかし、代わりに、絵画に向けられる光は、照明によって引き起こされる絵画への損傷を減少させるように、調節される必要がある。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、所定のパラメータは、照明装置によって放射される混合光の所定の最小演色評価数レベルを含み、照明装置によって放射される混合光の制御パラメータは、当該所定の最小演色評価数レベルが達成されるように選択される。有利には、当該所定の最小演色評価数レベルに対して、エンハンスされた色飽和が達成される。混合光は、複数の光源、又は、上記した適合された蛍光体素子を有する単一の発光ダイオードによって放射される。
【0016】
照射光の波長分布における相対ピークを調節することによって、各ピークの色飽和がエンハンスされる一方で、許容可能な演色評価数を維持するような望ましい光特性が達成される。望ましい光特性は、様々な適用に伴って変化する。更に、エンハンスされた出力スペクトルは、境界条件(即ち、白色点及び演色評価数)内の反射スペクトルが、これらのパラメータのすべての可能なスペクトルを計算し、ベストマッチするスペクトルを選択することによって得られた後に調節される。調節されたスペクトルの制御パラメータが特定され、複数の光源は、その特定された制御パラメータに従って光を放射する。
【0017】
更に、反射スペクトルが、狭い反射ピークを有するスペクトルを示す場合、照明装置が、対応する波長において光分布を有する光源を提供することが有利である。更に、適切な照明を達成するためには、光源は、反射ピークに対応する波長における光の飽和と組み合わされた所望の演色評価数を達成するように、白色光と知覚される光で、物体を照射するように操作される。したがって、より広い反射範囲が、反射スペクトル内に示される場合、望ましい演色評価数に関して反射スペクトルの当該波長領域におけるパワー分布に従って調節される光源の組み合わせが使用されるように、当該波長領域において幾つかの光源を有することが有利である。
【0018】
更に、照射光のスペクトル分布は、スペクトルの特定の部分がより強い寄与を有する一方で、一定の色温度を維持するように変更されてもよい。色混合光源は、多数の方法で各色点を作成し、これによって、色混合光源のスペクトルを変更する一方で、色点を固定したままとすることが可能となる。特定の色点の幾つかの可能な照明スペクトルから、所定の演色評価数のベストマッチスペクトルが決定される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、制御ユニットと通信し、物体を特定する検出器と、複数の事前に記憶された反射スペクトルを記憶するデータベースとが更に含まれ、物体の事前に記憶された反射スペクトルは、検出器で物体を特定することによって複数の事前に記憶された反射スペクトルを含むデータベースから獲得され、当該データベースは、照明装置によって放射される混合光に基づいた色飽和度レベル及び演色評価数レベルの設定値を含む。
【0020】
物体は、検出器で特定され、データベースに記憶された当該物体の事前に記憶された反射スペクトルが獲得される。検出器は、特定の物体を、当該物体の色及び形状によって特定する。検出器は、画像から照射商品又は物体を抽出する能力を有するソフトウェアを有するカラーカメラであってよい。反射スペクトルは、色及び形状によってカラーカメラで物体を認識することによって受け取られ、次に、反射スペクトルは、様々な物体及び商品の反射スペクトルを含むデータベース内に見つけられる。したがって、店内では、反射スペクトルの測定は回避することが有利であり、幾つかの適用では、客が、物体の反射スペクトルの測定を妨げるからである。更に、データベースは、照明装置内の複数の光源の照明スペクトルを含む。複数の光源を含む照明装置の照射スペクトルは、スペクトル分布を決定するセンサで測定されてもよい。しかし、照明装置内の複数の光源からの光出力の複数の様々な組み合わせ、即ち、照明スペクトルは、各スペクトルに対する特定の制御パラメータを有するデータベースに記憶されてもよい。データベースは、照明装置内の複数の光源の幾つかの照明スペクトルに基づいた色飽和レベル及びCRIの値を含む。エンハンスされた色飽和及び許容可能な演色評価数の組み合わせを満たす、色混合光源の照射スペクトル分布が、データベースに記憶されてもよい。照明装置内の複数の光源の色に基づいた照明スペクトルの色飽和レベル及び演色評価数の計算結果を含むデータベースと、既知の物体の反射スペクトルの既存のデータベースとには、照射スペクトルの相対高さを計算するために必要な計算が回避され、安価なマイクロコントローラが使用できるという利点がある。
【0021】
本発明の一実施形態では、制御ユニットと通信し、物体の反射スペクトルを測定するセンサが更に含まれる。照明装置のケーシング内、又は、反射スペクトルを測定する手持ち式デバイス内に組み込まれたセンサが使用される。センサは、比較し、照明スペクトルに対するベストフィットを見つけるために、反射スペクトルのヒストグラムを生成する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、照明装置によって放射される混合光の演色評価数レベルは、少なくとも70である。演色評価数を70よりも高く維持することは、演色評価数が高いほど、光源がより良好に色を表現するという利点がある。演色評価数は、自然光源と比較した場合に、物体における色を再現する光源の能力の尺度である。幾つかの適用では、例えば娯楽及び/又は舞台照明では、演色評価数は約60よりも低い。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、知覚される色は、人間の目の感色性に基づいて照明スペクトルを調節することによって維持され、照明装置によって放射される混合光の制御パラメータは、当該知覚される色が達成されるように決定される。人間の目の中の受容器官の光に対する反応は、光の波長及び強度によって異なり、光の波長に対し異なる感度を有する3つのタイプの受容器官がある。最初に、照明スペクトルを反射スペクトルに調節し、次に、照明スペクトルを人間の目の感色性に基づいて調節することによって、複数の光源から放射される光は少なくて済み、これは、エネルギーを節約し、また、光に敏感な人工物への損傷を減少させる。反射スペクトルは、所定の物体と対応する所定の所望の外観とを有するデータベースから選択される。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、所定のパラメータは、照明装置によって放射される光を減少させるように、照明スペクトルに重み付けするように構成された人間の目の感色性スペクトルを含む。人間の目の感色性スペクトルは、人間の目の感色性に対応する3つの異なる曲線を含む。複数の光源によって放射される照明スペクトルを反射スペクトルに調節することによって、望ましくない波長が除去される。望ましくない波長は、加熱又は光化学反応をもたらす、物体によって吸収される波長であり、当該波長は、光強度を減少させるように、人間の目の感色性スペクトルに向かって重み付けされる。除外されない波長における照明を選択的に増加させることによって、所望の照明が生成される一方で、望ましくない波長は除外される。更に、物体によって吸収される光は、物体の外観には寄与しない。
【0025】
本発明の一実施形態では、物体は、光に敏感な人工物である。光に敏感な人工物は、人工物、絵画、光に敏感な物体、光に敏感な材料、歴史的な人工物、美術品、織物、文書又は絵画のうちの任意のタイプであってよい。光に敏感な人工物は、強い照明によって損傷を受けるが、大抵の美術館では、人工物は、しばしば、物体を保存するために、弱い照明下で展示されている。
【0026】
当業者には知られているように、人間の目は、約400nmよりも下と720nmよりも上の波長には反応しない。したがって、本発明の概念に従って、複数の光源を、430nmと720nmとの間(のみ)の波長を放射するように構成することによって、一部の光に敏感な人工物への損傷は、減少される。一般に、例えば430nm未満の波長といった強いエネルギーを有する波長は、しばしば、光に敏感な人工物に損傷をもたらす化学反応を引き起こしてしまう。
【0027】
本発明の別の態様によれば、照明装置を制御する方法が提供される。当該方法は、照射される物体を決定するステップと、物体の反射スペクトルを受け取るステップと、物体のタイプに関する所定パラメータに基づいて、照明スペクトルを物体の反射スペクトルにマッチさせるステップと、物体のタイプに関して照明スペクトルが反射スペクトルにマッチしているように、照明装置によって放射される混合光の制御パラメータを選択するステップと、選択された制御パラメータに従って光を放射するように照明装置を制御するステップとを含む。本発明に係る方法を使用して照明装置を制御することによって、複数の光源の照明スペクトルが反射スペクトルにマッチするように、物体を照射するステップが容易にされ、照明の品質が、物体のタイプに関して、エンハンスされる。本発明のこの態様の特徴は、本発明の前の態様に関連して上記したものと同様の利点を提供する。
【0028】
本発明の更に別の態様によれば、制御ユニットに、物体を照射する照明装置を制御させるコンピュータプログラム手段をコンピュータ可読媒体上に記憶したコンピュータプログラムが提供され、当該コンピュータプログラムは、照射される物体のタイプを決定するためのコードと、物体の反射スペクトルを受け取るためのコードと、物体のタイプに関する所定のパラメータに基づいて、照明スペクトルを物体の反射スペクトルにマッチさせるためのコードと、混合された場合に、照明スペクトルが、物体のタイプに関して反射スペクトルにマッチするように、照明装置によって放射される混合光の制御パラメータを選択するためのコードと、選択された制御パラメータに従って光を放射するように照明装置を制御するためのコードとを含む。上記と同様に、本発明のこの態様の特徴は、本発明の前の態様に関連して上記したものと同様の利点を提供する。
【0029】
更に、照明装置は、物体の物体識別コードを読み取り、物体識別コードに対応する反射スペクトルを取り出すコードリーダーを含んでもよい。例えばコードリーダーは、RFIDリーダー又はバーコードリーダーであってよい。また、照明装置は、識別コードの読出しを容易にするために、コードリーダーを含む遠隔制御器を含んでもよい。更に、照明装置は、照射される物体のタイプに対する所定の設定値及び代替設定値での手動設定を容易にするために、遠隔制御器、測定デバイス又は他の識別デバイスを含んでもよい。
【0030】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の請求項及び以下の説明を検討することにより明らかとなろう。当業者であれば、本発明の様々な特徴が組み合わされて、以下に記載される実施形態とは別の実施形態を、本発明の範囲から逸脱することなく、作成できることは認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の特徴及び利点を含むその態様は、以下の詳細な説明及び添付図面から容易に理解されるであろう。
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る装置を示す。
【
図2】
図2は、本発明に係る方法のフローチャートである。
【
図3】
図3は、検出器を含む本発明の一実施形態に係る装置を示す。
【
図4】
図4は、センサを含む本発明の一実施形態に係る装置を示す。
【
図5a】
図5aは、様々な色を有する複数のLEDのスペクトル分布を示す。
【
図5b】
図5bは、狭い反射ピークを有する反射スペクトルと、広い反射分布を有する反射スペクトルとを示す。
【
図6】
図6は、光に敏感な人工物を照射する照明装置を示す。
【
図8a】
図8aは、光源が430nm未満の光を除去するように調節された場合の照明スペクトルと人間の目の感色性に基づいた光の応答とを示す。
【
図8b】
図8bは、光源が約550nmの特定波長を除去するように調節された場合の照明スペクトルと人間の目の感色性に基づいた光の応答とを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、本発明の好適な実施形態が示される添付図面を参照して、以下により詳しく説明される。しかし、本発明は、多くの様々な態様で具現化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、徹底さ及び完璧さのために提供され、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるものである。同様の参照符号は、全体にわたって、同様の要素を指す。
【0034】
図1には、物体108を照射する発光デバイス106内に配置されている複数の光源102を含む例示的な照明装置100が示される。また、複数の光源102は、それぞれ、特定の(異なる)色を放射する。更に、照明装置は、複数の光源102と通信する制御ユニット(図示せず)も含む。ここでは、制御ユニットは、発光デバイス106と一体にされている。しかし、制御ユニットは、代替方法として、複数の光源102とワイヤレス通信してもよい。制御ユニットは、物体の反射スペクトルに基づいて、複数の光源102を制御する制御パラメータを選択する。制御ユニットは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ又は別のプログラマブルデバイスを含んでよい。制御ユニットは更に、又は、代わりに、特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ若しくはプログラマブルアレイロジック、上記したマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ若しくはプログラマブルデジタル信号プロセッサといったプログラマブルデバイスを含んでもよい。プロセッサは更に、プログラマブルデバイスの動作を制御するコンピュータ実行コードを含んでもよい。
【0035】
次に、物体108を照射する複数の光源102を制御するための例示的なステップを示す
図2と併せて、
図1のシステムの動作が説明される。
【0036】
第1のステップ201では、物体108が、特定のタイプの物体に属するとして決定される。物体のタイプは、どのタイプの設定で物体が照射されるか、また、どのように照明光が制御されるかに影響を及ぼす。オレンジ又はバナナといった商品は、客が当該商品の周りを動き回り、商品と同じ照明光で照射される店内に置かれる。別のタイプの物体は、例えば美術館内で展示される絵画といった光に敏感な物体又は人工物である。美術館内の照明は、通常、絵画に向けて直接方向付けられ、美術館の来館者が照明装置によって照射されることはほとんどない。
【0037】
第2のステップ202では、照明装置は、物体の反射スペクトルを受け取る。反射スペクトルは、物体の色及び形状を捕捉する検出器と、物体の反射スペクトル、色及び形状の情報を有するデータベースから物体を特定する制御ユニットとを使用して獲得される。物体は更に、RFIDリーダーを使用して特定されてもよい。或いは、反射スペクトルは、基準光源で照射された場合にヒストグラムを生成するセンサで反射スペクトルを測定することによっても得られる。
【0038】
第3のステップ203では、複数の光源によって放射された光を含む照明スペクトルが、物体の反射スペクトルに一致するように構成される。照明スペクトルを反射スペクトルに調節することによって、物体は、物体の強調をエンハンスする。更に、物体を照射するために必要な光の量が減少され、物体によって反射される光を利用して、損傷は回避される。当該損傷は、物体によって吸収される光が加熱するか又は光化学反応を引き起こすので、照明に由来する。
【0039】
第4のステップ204として、物体のタイプに基づいて、照明スペクトルが調節されるように、制御パラメータが選択される。店内に配置され、商品を照射する照明装置から放射される光は、当該光が、白色光又は白色に近い光として知覚されるように、光の組成を調節する必要がある。客又は人が同じ光で照射される場所に配置される商品については、演色評価数レベルが、歩き回っていない客は、例えば緑色に見えるように設定される。更に、演色評価数レベルを維持しつつ、照明の彩度レベルもエンハンスされる。しかし、美術館内の絵画の場合、周囲環境は同じ重要度を持たない。これは、来館者は、照明装置によって照射されず、来館者が原因で光の組成を変更する要求はあまり重要ではないからである。しかし、代わりに、絵画に向けられる光は、照明によって引き起こされる絵画への損傷を減少させるように調節される必要がある。照明は、物体を照射するために使用される光は少ないが、知覚される輝度を保つように、人間の目の感色性に基づいて調節される。制御パラメータは、各照明スペクトルに対するすべての制御パラメータを記憶するデータベースから、又は、パラメータを計算することによって受け取られる。
【0040】
第5のステップ205では、複数の光源が、決定された制御パラメータに従って光を放射する。
【0041】
図3には、複数の光源302と検出器304とを含む例示的な照明装置300が示される。複数の光源302は、ここでは、1本のバナナである物体308を照射する発光デバイス306内に配置されている。更に、この場合、発光デバイス306は、色RGBAを含む色混合光源である。また、発光デバイスは、ここでは、物体の色及び形状を検出する検出器304を含む。或いは、検出器304は、発光デバイス306とは別個のユニットとして構成されてもよい。照明装置300は更に、検出器304及び複数の光源302と通信する、
図1において説明されたような制御ユニット(図示せず)も含む。ここでは、制御ユニットは、検出器によって与えられる情報に基づいて、物体の反射スペクトルを決定し、物体の反射スペクトル、所定の最小演色レベル及び照明光の彩度レベルに基づいて、複数の光源302を制御するための制御パラメータを選択する。
【0042】
図4には、複数の光源402と、センサ404と、基準光源410とを含む例示的な照明装置400が示される。色混合光源内に配置された複数の光源402は、ここでは、1個のリンゴである物体408を照射する。複数の光源402は、それぞれ、別個の色を有する狭帯域発光ダイオードと、白色帯域スペクトルを有する蛍光体変換LEDとの組み合わせである。この場合、センサ404は、基準光源410が物体を照射したときの物体の反射スペクトルを測定する。照明装置400は更に、
図1において説明されたような制御ユニット(図示せず)も含む。制御ユニットは、物体の反射スペクトルを受け取るように、センサ404と通信する。更に、制御ユニットは、反射スペクトル、所定の演色レベル及び彩度レベルに関して、ベストマッチを有する複数の光源の照明出力分布の制御パラメータを決定する。或いは、複数の光源402は更に、基準光源401であってもよい。また、センサ404及び基準光源410は、色混合光源406とは別個に配置されてもよい。任意選択的に、照明装置400は更に、センサ404及び基準光源410を含んでもよい遠隔制御器も含む。
【0043】
図5aには、
図3及び
図4における照明装置内の複数の光源として機能してもよい様々な色の幾つかの狭帯域発光ダイオードのスペクトル分布502が示される。
図5bは、狭い反射ピーク501又は広い反射分布503を有する異なる物体の例示的反射スペクトルを示す。例えば590nm及び630nmにおける主波長を有する明確に規定されたピーク501を有する反射スペクトルを有する物体では、これらの波長における出力分布を有する狭帯域発光ダイオードがエンハンスされる。しかし、所定の演色評価数レベルに関して、適切な光を達成するためには、照明装置内の複数の光源はすべて、590及び630nm辺りで飽和した白色光と見なされる光で、物体を照射するように操作される。しかし、反射スペクトルについては、より高い反射を有する広い分布503、複数の発光ダイオードが、より高い反射の分布において組み合わされる一方で、波長領域において使用される発光ダイオードの数及びパワーは、演色評価数のレベルによって制限される。或いは、狭帯域発光ダイオードは、例えば、より広い反射スペクトルで物体を強調できるように、より広いスペクトルを有する蛍光体変換発光ダイオードと組み合わされてもよい。照明装置は、
図3及び
図4の両方を参照して説明される。まず、物体を照射する照明装置のために、物体の反射スペクトルが得られる。
図3を参照するに、検出器304が、物体の色及び形を捕捉し、制御ユニットが、当該所与の情報を用いて、データベースから、物体を特定する。データベースは更に、所与の基準光に対する各物体の反射スペクトルも含む。或いは、反射スペクトルは、
図4におけるように、基準光源を用いて照射された場合に、ヒストグラムを生成するセンサ404を用いて反射スペクトルを測定することによって得られる。次に、所定の最小演色評価数が受け取られる。各物体に対する所定の最小演色評価数が、データベース内に記憶されてもよい。しかし、アプリケーションに応じて、所定の最小演色レベルが選択可能であることも可能である。ウィンドウディスプレイでは、所定の演色レベルは、店内の生鮮食品を照射する照明装置よりも低い値に設定される。野菜及び果物といった生鮮食品については、70のCRI値が、色強調のために容認可能である。例えばおもちゃが置かれた店のウィンドウでは、もっと強い色光効果が好適であり、60といった低いCRI値が使用されて、製品が照射され、惹きつける力が作り出される。演色評価数レベルは、適用の要件に応じて調節可能なパラメータとして設定されることが有利である。照明光の制御パラメータは、どの照明スペクトルが、所定の最小演色レベルの間に、反射スペクトルにベストマッチするかに基づいて選択される。大きくされた彩度を有する反射スペクトルにベストマッチする複数の光源の制御パラメータが、境界条件が特定の白色点で、最小色演色評価数レベルが達成されるように選択される。制御ユニットは、すべての可能なスペクトルに対し、これらのパラメータを計算してもよく、そして、ベストマッチするスペクトルが決定される。次に、ベストマッチするスペクトルの制御パラメータが特定される。様々な制御パラメータが、境界条件に応じて照明装置内に配置された光源の相対パワーを変更することに対応する。彩度レベルは、基準光源下の物体の色と、物体を照射する光とによって計算される。色は、CIELAB定義に従って、色相及び彩度(chroma)に変換される。その後、相対的彩度シフトが計算され、演色評価数値と同じ大きさのオーダーを有するように、好適には100である定数で乗算することによって、彩度指数(saturation index)が受け取られる。演色評価数値は、周知の理論に従って計算される。複数の光源は、物体の色を誇張するように、特定された制御パラメータに従って調節される。
【0044】
図6では、
図1において説明されたような照明装置100が、ここでは、絵画である光に敏感な人工物608を照射している。この実施形態では、照明装置600は、検出器604及びデータベースを含む。検出器604は、物体を検出し、当該物体は、データベースに記憶されている情報を用いて特定される。データベースは更に、特定の物体を照射する際に、複数の光源によって放射されるべきではない幾つかの有害な波長に関する情報も含む。有害な波長は、制御パラメータを指定することによって、又は、フィルタを使用することによって回避される。更に、データベースは、スペクトルでの人間の目の感色性の曲線に関する情報も含む。照明デバイス606内に使用される複数の光源602は、色発光ダイオード又はレーザーの組み合わせであってよい。
図6に示される照明装置600は、光に敏感な物体が展示される場所に使用される。当該装置は、美術館、アートギャラリー、考古学的調査研究所、及び、光に敏感な人工物が展示又は使用されるプライベートディスプレイにおいて使用される。更に、当該照明装置は、光に敏感な材料が関与する工業的プロセスにおいても使用される。
【0045】
図7には、人間の目の受容器官のスペクトル応答703a、703b及び703cが示される。人間の目は、赤色、緑色及び青色受容器官を使用して色光に応答し、光に敏感な物体を照射する照明装置からの光は、マッチする反射スペクトル以外は、人間の目の感度スペクトル701に対して重み付けされている。照明スペクトルを物体の反射スペクトルにマッチすることによって、望ましくない波長の光が除去された後、除外されない波長における照明を選択的に増加させることによって、望ましい見掛けの照明がもたらされる一方で、照明スペクトルを人間の目がより敏感である波長に向けて重み付けすることによって、依然として、望ましくない波長が除外される。照明スペクトルを、人間の目の感度スペクトル701で重み付けすることは、物体を照射するために必要な光強度を減少させる。
【0046】
図8aは、光源が430nm未満の光を除去するように調節されている場合の照明スペクトル801と、目の受容器官に基づいた光の応答803a〜cとを示す。一般的に、430mn未満の波長は、高エネルギーを有し、光に敏感な人工物によって吸収されると、加熱又は光化学反応をもたらす。光化学反応及び熱は、人工物の色が褪せたり退色したりして、光に敏感な人工物に影響を及ぼす。絵画、人工物、美術品、歴史的な物体、光に敏感な材料といった光に敏感な物体に関して、複数の光源は、当該物体を、430nm乃至700nmの波長で照射する。波長は、同じ色が知覚されるように調節されてもよい。
【0047】
図8bには、狭波長範囲が複数の光源によって出力された光から除去されている場合の照明スペクトル805と、目の受容器官に基づいた光の応答807a〜cとが示される。照射される物体は、光に敏感な物体、反射スペクトル、光に敏感な物体に特に有害な波長に関する情報を含むデータベースと通信する検出器又はセンサで特定される。これらの有害な波長は、特定の物体を照射する際には、複数の光源によって使用されない。
図8bでは、約550nmの波長における光が除去され、残りのスペクトルは、知覚される外観が同じであるように調節される。
【0048】
本発明は、その特定の実施形態を参照して説明されているが、当業者には、多くの異なる変更態様、修正態様等が明らかであろう。例えば光に敏感な物体を照射する照明装置は、依然として、適当な色温度又は外観を得るために、光出力を調節し、商品を照射する照明装置の光出力は、当該物体の損傷を回避するために、特定の波長は放射しない。システムの一部が、省略されても、交換されても、又は、様々な方法で構成されても、当該システムは、依然として、本発明の方法を実行することができる。
【0049】
更に、開示された実施形態に対する変更は、図面、開示内容及び添付の請求項を検討した当業者によって、請求項に係る発明を実施する際に、理解されまた実現される。請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、また、「a」又は「an」との不定冠詞も、複数形を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載される幾つかのアイテムの機能を実現してもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されるからといって、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。