(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271645
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】ビーコン・デバイス、携帯式電子機器およびビーコン・デバイスの特定方法
(51)【国際特許分類】
H04W 8/00 20090101AFI20180122BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20180122BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20180122BHJP
【FI】
H04W8/00 110
H04W84/10 110
H04W88/02 110
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-123133(P2016-123133)
(22)【出願日】2016年6月22日
(65)【公開番号】特開2017-228908(P2017-228908A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2016年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
(72)【発明者】
【氏名】森田 大作
(72)【発明者】
【氏名】山崎 誠仁
(72)【発明者】
【氏名】増谷 修
【審査官】
青木 健
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−054373(JP,A)
【文献】
特開2015−061312(JP,A)
【文献】
特開2014−110635(JP,A)
【文献】
特開2010−011064(JP,A)
【文献】
特開2013−126092(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/199537(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の形式のパケットと第2の形式のパケットを受信することが可能な携帯式電子機器がビーコン・デバイスを特定する方法であって、
前記ビーコン・デバイスが送信する前記第1の形式のパケットを受信するステップと、
前記第2の形式のパケットを前記第1の形式のパケットから区別する識別データを含み特定操作がされた前記ビーコン・デバイスが送信する前記第2の形式のパケットを受信するステップと、
前記第2の形式のパケットの識別子を前記第1の形式のパケットの識別子から外形的に区別できるように表示するステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記特定操作が、前記ビーコン・デバイスに対するユーザの直接のアクションを伴う物理的な入力操作である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特定操作が、前記ビーコン・デバイスに対するユーザの無線通信を通じた入力操作である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記表示するステップが、
前記第2の形式のパケットの識別子を背景のハイライト、文字の着色、フォントの選択、サイズの選択、点滅、および文字の付加からなるグループのいずれかの要素または複数の要素の組み合わせで表示する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記表示するステップが、
前記第2の形式のパケットの識別子だけを表示する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の形式のパケットを受信するステップが、
前記特定操作がされた複数の前記ビーコン・デバイスが送信する複数の前記第2の形式のパケットを受信するステップを含み、
前記表示するステップが、
前記複数の第2の形式のパケットの識別子を相互に外形的に区別できるように表示するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の形式のパケットと第2の形式のパケットを受信することが可能な携帯式電子機器がビーコン・デバイスを特定する方法であって、
前記第2の形式のパケットを前記第1の形式のパケットから区別する識別データと該識別データの読み取りを無効に設定したフラグを含み前記ビーコン・デバイスが送信する前記第1の形式のパケットを受信するステップと、
前記識別データと前記識別データの読み取りを有効に設定した前記フラグを含み特定操作がされた前記ビーコン・デバイスが送信する前記第2の形式のパケットを受信するステップと、
前記第2の形式のパケットの識別子を前記第1の形式のパケットの識別子から外形的に区別できるように表示するステップと
を有する方法。
【請求項8】
第1の形式のパケットと第2の形式のパケットを受信することが可能な携帯式電子機器がビーコン・デバイスの識別子に簡易名称を関連付ける方法であって、
複数の前記ビーコン・デバイスがそれぞれ送信する第1の形式のパケットを受信するステップと、
前記第2の形式のパケットを前記第1の形式のパケットから区別する識別データを含み特定操作がされた前記ビーコン・デバイスが送信する第2の形式のパケットを受信するステップと、
前記識別データに基づいて前記第2の形式のパケットを認識するステップと、
前記第2の形式のパケットの識別子に対して前記簡易名称を関連付けるステップと
を有する方法。
【請求項9】
モバイル・デバイスに第1の形式のパケットと第2の形式のパケットを送信することが可能なビーコン・デバイスであって、
ユーザの入力操作に応じて特定イベントを生成するイベント生成部と、
定期的に前記第1の形式のパケットを選択し、前記特定イベントが生成されたときに前記第2の形式のパケットを前記第1の形式のパケットから区別する識別データを含む前記第2の形式のパケットを選択する制御部と、
選択した前記第1の形式のパケットまたは前記第2の形式のパケットを送信する送信部と
を有するビーコン・デバイス。
【請求項10】
前記制御部は、前記第2の形式のパケットを選択してから所定の時間が経過したときに前記第1の形式のパケットを選択する請求項9に記載のビーコン・デバイス。
【請求項11】
ビーコン・デバイスが送信する第1の形式のパケットと第2の形式のパケットを受信することが可能な携帯式電子機器であって、
前記ビーコン・デバイスが定期的に搬送する前記第1の形式のパケット、および前記第2の形式のパケットを前記第1の形式のパケットから区別する識別データを含み特定操作がされた前記ビーコン・デバイスが一時的に搬送する前記第2の形式のパケットを受信する受信部と、
前記識別データに基づいて前記第2の形式のパケットを認識する識別部と、
前記第2の形式のパケットの識別子を前記第1の形式のパケットの識別子と異なる表示形式で表示する表示部と
を有する携帯式電子機器。
【請求項12】
前記第2の形式のパケットの識別子に簡易名称を関連付ける登録部と、
前記識別子と前記簡易名称の組を登録する格納部と
を有する請求項11に記載の携帯式電子機器。
【請求項13】
ビーコン・デバイスが送信する第1の形式のパケットと第2の形式のパケットを受信することが可能な携帯式電子機器であって、
前記第2の形式のパケットを前記第1の形式のパケットから区別する識別データと該識別データの読み取りを無効に設定したフラグを含み前記ビーコン・デバイスが定期的に搬送する前記第1の形式のパケット、および前記識別データと前記識別データの読み取りを有効に設定した前記フラグを含み特定操作がされた前記ビーコン・デバイスが一時的に搬送する前記第2の形式のパケットを受信する受信部と、
前記識別データに基づいて前記第2の形式のパケットを認識する識別部と、
前記第2の形式のパケットの識別子を前記第1の形式のパケットの識別子と異なる表示形式で表示する表示部と
を有する携帯式電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯式電子機器がビーコン・デバイスを特定する技術に関し、さらには、ビーコン・デバイスの識別子に簡易名称を関連付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレット端末またはラップトップ型パーソナル・コンピュータなどの携帯式電子機器は、屋外ではGPSを利用して位置を特定することができる。アプリケーション・プログラムは用途に応じてGPSが提供する地球上での経度緯度をユーザにとってわかりやすい位置名称に変換して提供する。ビルの中や地下鉄のホームなどのGPSを利用できない環境では、無線LANやBluetooth(登録商標)などの無線通信を利用して位置を推定することが行われている。
【0003】
特許文献1は、複数の小売店のそれぞれに近い位置に設けたビーコン・デバイスからメッセージを含むビーコンを送信し、特定のビーコンを受信したモバイル・デバイスが、当該ビーコンに関連付けられた小売店のキャンペーン・メッセージを表示する発明を開示する。同文献には、ビーコン・デバイスとして、Bluetooth(登録商標)low energy(BLE)の技術を利用することを記載する。
【0004】
特許文献2は、街中に配置されたアクセス・ポイント装置が放出している電波ビーコンを検知して、SSIDの履歴を蓄積し、所定のタイミングで当該履歴をサーバ装置に送信したときに、サーバ装置が、当該履歴に含まれるSSIDに対応付けられた広告情報を端末装置に送信することで、ユーザの場所やユーザの移動方向に応じた内容の広告を提供する広告提供システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0148270号明細書
【特許文献2】特開2009−188922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
所定の送信距離のビーコンを検出してビーコン・デバイスに関連付けられた位置名称を認識する近接法(proximity)を採用した位置測位システムでは、ビーコンの識別子と位置名称を関連付ける必要がある。1つの方法として、ビーコン・パケットのなかにビーコン・デバイスの位置名称を示す情報を組み込むことが考えられる。この場合、携帯式電子機器は、当該ビーコンを受信するだけでビーコン・デバイスに関連付けられた位置名称を取得することができる。
【0007】
しかし、ビーコン・パケットは、携帯式電子機器に対する位置の通知やペアリングのために定期的に送信する必要があるため、できるだけデータ量が少ない方が消費電力やトラフィックの低減の点で都合がよい。したがって、既存の無線通信規格では、ビーコン・パケットのサイズを制約しており、位置名称を組み込めないことが多い。たとえ位置名称を組み込めたとしても、位置名称の変更や、ビーコン・デバイスの位置の変更、撤去、追加などがあるたびに、ビーコン・パケットを書き換えることは管理者にとって大きな負担になる。
【0008】
ビーコンの識別子と位置名称を関連付ける他の方法として、あらかじめ関連付けた識別子と位置名称をデータ・ベースに登録することが考えられる。このときビーコン・デバイスを設置する前に、その識別子と位置名称を関連付けることもできるが、設置場所での電波状況の確認や取り間違いの有無の確認などのために、ビーコン・デバイスの設置後に関連付けをすることが望ましい。
【0009】
ビーコンの識別子と位置名称の関連付けをするために、管理者が携帯式電子機器を所定の場所に持ち込むと、近辺に設置したビーコン・デバイスが送信する複数のビーコンの識別子を検出する。このとき管理者が、識別子だけで関連付けたいビーコン・デバイスを特定することは負担が大きい。本発明の目的は、ビーコン・デバイスの識別子とユーザが容易に認識できる簡易名称を簡単に関連付けることができるようにするとともにこれに関連する課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、携帯式電子機器がビーコン・デバイスを特定する方法を提供する。ビーコン・デバイスが送信する第1の形式のパケットを受信し、特定操作がされたビーコン・デバイスが送信する第2の形式のパケットを受信し、第2の形式のパケットの識別子を第1の形式のパケットの識別子から区別できるように表示する。
【0011】
本発明の第2の態様は、携帯式電子機器がビーコン・デバイスの識別子に簡易名称を関連付ける方法を提供する。複数のビーコン・デバイスがそれぞれ送信する第1の形式のパケットを受信し、特定操作がされたビーコン・デバイスが送信する第2の形式のパケットを受信し、第2の形式のパケットの識別子を第1の形式のパケットの識別子から区別し、第2の形式のパケットの識別子に対して簡易名称を関連付ける。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、以下の単一または複数の効果を奏することができた。本発明により、携帯式電子機器が、ユーザが意図するビーコン・デバイスを容易に特定することができた。さらに本発明により、携帯式電子機器が、特定のビーコン・デバイスに関連する識別子を他の識別子から区別できるように表示することができた。さらに本発明により、携帯式電子機器において容易にビーコン・デバイスと簡易名称を関連付けることができた。さらに本発明により、既存のビーコン・パケットに変更を加えないでユーザが意図するビーコン・デバイスを特定することができた。さらに本発明により、携帯式電子機器が、ビーコン・デバイスの識別子と簡易名称を関連付けたデータ・ベースを容易に構築することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】複数のビーコン・デバイス101を配置したユーザ空間100をモバイル・デバイス10が移動するときの様子を説明するための図である。
【
図2】通常のビーコン・リスト103の一例を示す図である。
【
図3】ビーコン・パケットのデータ構造の一例を説明するための図である。
【
図4】ビーコン・パケットのデータ構造の他の例を説明するための図である。
【
図5】ビーコン・デバイス101の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】モバイル・デバイス10の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図7】特定表示をしたビーコン・リスト103aの一例を示す図である。
【
図8】ビーコン・デバイス101の動作手順を示すフローチャートである。
【
図9】モバイル・デバイス10の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ユーザ空間]
図1は、複数のビーコン・デバイス101を配置したユーザ空間100をモバイル・デバイス10が移動するときの様子を説明するための図である。ユーザ空間100は、ビーコンの受信が可能な2次元または3次元の領域に相当する。モバイル・デバイス10は、ユーザ空間100の内部または近辺に配置した、複数のビーコン・デバイス101がそれぞれ送信するビーコンのいずれかまたは複数を同時に受信する。モバイル・デバイス10は一例においてビーコンの受信が可能な、スマートフォン、タブレット端末またはラップトップ型パーソナル・コンピュータなどの携帯式電子機器とすることができる。
【0015】
図には、黒丸でビーコン・デバイス101を示しその周囲を囲う丸い点線でビーコンの送信距離を示している。ビーコンの送信距離が短いほど位置推定の精度は高くなるが、ユーザ空間100の全体をカバーするためにはビーコン・デバイス101の数が増加する。したがって、ビーコン・デバイス101の数、位置、および送信出力などは位置名称に対応する領域の面積と要求される測位の精度に応じて適宜選定することができる。
【0016】
ユーザ空間100は屋外でもよいが、本実施の形態ではオフィス・ビルの内部を例示して説明する。ユーザ空間100は、それぞれ位置名称#1〜#nが付与された複数の領域に区分されている。位置名称は、ユーザ空間100の一定の領域に対して付与したユーザが容易に認識および記憶できる簡易名称の一例に相当する。オフィス・ビル内の位置名称は、一例において自席、会議室、組織名、食堂、およびホールのような名称とすることができる。
【0017】
ビーコンはビーコン・デバイス101の識別子を含み、電波、音声、または光などの無線媒体を通じて定期的に伝送される情報をいう。ビーコンが送信する情報は所定のサイズのビーコン・パケットで搬送される。本発明においてビーコン・パケットのフォーマットやサイズは特に限定する必要はない。ビーコン・パケットは簡易名称を埋め込むスペースがなくてもよい。ビーコン・デバイス101は、その位置を知らせるためだけにビーコンを送信する専用デバイスでもよいし、モバイル・デバイス10とペアリングして通信する通信デバイスでもよい。
【0018】
図2は、モバイル・デバイス10が所定の位置名称#xに属する領域に存在するときに、ディスプレイに表示される一般的なビーコン・リスト103の一例を示している。位置名称を含まないビーコンを受信したモバイル・デバイス10のディスプレイには、ビーコン・デバイスB1〜B4の識別子に相当するMACアドレスおよびUUID(Universally Unique Identifier)またはいずれか一方がリスト形式で表示される。MACアドレスおよびUUIDは、そのビーコンを送信するビーコン・デバイス101を一意に特定できる識別子である。以下、ビーコン・デバイスB1〜B4を適宜ビーコンB1〜B4という場合もある。
【0019】
モバイル・デバイス10は、複数のビーコンB1〜B4を位置名称#xに属する領域で同時に受信する場合があるが、位置名称#xとは異なる位置名称に属する領域で受信する場合もある。通常、ビーコン・デバイスB1〜B4は、いずれかの位置名称を代表する位置に配置する。ビーコン・デバイスB1を、位置名称#xを代表する位置に配置する場合は、モバイル・デバイス10が位置名称#xに属する領域に存在するときに、受信確率および受信する電波強度(RSSI)の点で最もビーコンB1を受信しやすい。
【0020】
したがって、ビーコンB1を受信したモバイル・デバイス10は位置名称#xに存在することを認識することが求められる。そのために、あらかじめビーコン・デバイスB1を位置名称#xに関連付ける必要がある。しかしビーコン・リスト103では、各識別子は異なるが表示形式は同じであるため、位置名称#xに属する領域に移動したモバイル・デバイス10のユーザは、いずれの識別子がビーコン・デバイスB1に対応するかをビーコン・リスト103から外形的に認識することは困難である。
【0021】
ユーザがビーコン・デバイス101に物理的に貼り付けられた識別子を確認したり、周辺のビーコン・デバイスを停止させたりして確認することは負担が大きい。ここで、ユーザがビーコン・リスト103から容易に関連付けしたいビーコン・デバイスB1を特定することができれば、ユーザはその識別子に位置名称#xや用途名称のようなユーザが記憶しやすいシンプルな簡易名称を関連付けることができる。
【0022】
[ビーコン・パケット]
図3は、ビーコン・パケットのデータ構造の一例を説明するための図である。ビーコンを送信する媒体は音波や光でもよいが、ここではBLEの規格に基づく電波で送信するアドバータイジング・パケットを例示して説明する。本発明では関連付けの対象となるビーコン・デバイス101が送信するビーコン・パケットが他のビーコン・デバイス101が送信するビーコン・パケットとは異なることをモバイル・デバイス10が認識できるように構成する。
【0023】
BLEでは、アドバータイジング・パケットを、ビーコン・デバイス101がその存在をモバイル・デバイス10に通知(アドバタイジング)するために使用する。基準パケット111および特定パケット113は、いずれもアドバータイジング・パケットのフォーマットに適合する。基準パケット111は、プリアンブル111a、アクセス・アドレス111b、プロトコル・データ・ユニット(PDU)111c、およびCRC111dの4つのフィールドを含んでいる。
【0024】
プリアンブル111aは、周波数同期やゲイン調整に利用する。アクセス・アドレス111bは、アドバータイジング・パケットであることを示しながらブロードキャストで送信するために固定された値に設定する。PDU111cは、アドバータイジング・パケットのペイロードに相当し2〜39オクテットのフィールドに送信対象となるデータを書き込むことができる。PDU111cは、ビーコン・デバイスの識別子115を含む。識別子115は、モバイル・デバイス10がビーコン・デバイス101を一意に特定するためのデータで、一例においてUUIDおよびMACアドレスまたはいずれか一方とすることができる。CRC111dは、PDU111cのデータの誤りを検出するために使用する。
【0025】
基準パケット111は、一例において、米国アップル(登録商標)社のiBeacon(登録商標)や、グーグル(登録商標)社のEddystone(登録商標)でもよい。iBeaconでは、PDU111cを、UUID、メジャー(Major)、マイナー(Minor)、およびパワー(Measured Power)の4つのフィールドで使用する。UUIDは、16オクテットのフィールドに書き込まれる。メジャー・フィールドとマイナー・フィールドはそれぞれ2オクテットで、ビーコンの発信者が自由にデータを書き込むことができる。しかし、合計4オクテットのフィールドには、ビーコン・デバイス101の簡易名称を書き込むことはできない。
【0026】
各ビーコン・デバイス101は、基準パケット111を定期的に送信する。各基準パケット111は、相互に識別子115が異なるが、ユーザの簡易名称との関連付けの意図を示す情報を含まない。よって、複数の基準パケット111を受信したモバイル・デバイス10は、それらを送信したビーコン・デバイス101のMACアドレスやUUIDを同じスタイルでしか表示できないため、ユーザはビーコン・リスト103からユーザ空間100において物理的な存在を認識して選択した関連付けしたいビーコン・デバイス101を特定することが困難である。
【0027】
特定パケット113は、複数のビーコン・デバイス101のなかでユーザが関連付けのために所定の入力操作をしたビーコン・デバイス101だけが、基準パケット111に代えて一時的に送信する。特定パケット113は、BLEの規格に適合すれば任意のデータ構造にすることができる。特定パケット113は基準パケット111に対して、PDU113cのデータ構造だけが異なる。PDU113cは、識別子115、および識別データ117を含む。識別データ117はモバイル・デバイス10に対して当該ビーコンが特定対象であることを示すデータに相当し、一例では2オクテットのフィールドに書き込まれる。識別データ117が必要とするビット数は、簡易名称が必要とするビット数に比べてはるかに小さい。
【0028】
図4は、ビーコン・パケットのデータ構造の他の例を説明するための図である。基準パケット123および特定パケット125は、いずれもアドバータイジング・パケットのフォーマットに適合し、基準パケット111とは、PDU123c、125cのデータ構造だけが異なる。PDU123c、125cは、識別子115、フラグ119、および識別データ117を含む。フラグ119は識別データ117の有効または無効を設定するために一例として1オクテットのフィールドに書き込まれる。
【0029】
基準パケット123のフラグ119はリセットされている。特定パケット125は基準パケット123に対して、フラグ119がセットされている点だけが異なる。基準パケット123は、フラグ119がリセットされているときも、識別データ117は書き込まれたままである。基準パケット123を受信したモバイル・デバイス10はフラグ119の状態を判断して識別データ117の読み取りをスキップする。特定パケット125を受信したモバイル・デバイス10は識別データ117を読み取ることができる。
【0030】
[ビーコン・デバイス]
図5は、ビーコン・デバイス101の構成の一例を示す機能ブロック図である。特定イベント生成部201はユーザの入力操作に応じて、基準パケット111から特定パケット113への切り換えまたは基準パケット123から特定パケット125への切り換えを行うための特定イベントを生成する。特定イベント生成部201は、ビーコン・パケットにデータを書き込むユーザ・インターフェースを含んでもよい。
【0031】
特定イベント生成部201は、ビーコン・デバイス101に対するユーザの特定操作に応じて特定イベントを生成し、I/Oコントローラ203に出力する。特定操作は、ビーコン・デバイス101に対するユーザの直接のアクションを伴う物理的な入力操作または外部の無線通信デバイスを利用した入力操作とすることができる。物理的な入力操作を受け入れる特定イベント生成部201は、操作スイッチ、加速度センサ、振動センサ、タッチセンサ、マイクロフォン、照度センサ、および近接センサなどで構成することができる。
【0032】
ユーザは、操作スイッチの押下、筐体に対する揺動または衝撃の付与、タッチ操作、音声の入力、入射光の遮蔽、および人体の接近などの入力操作をして特定イベントを生成することができる。無線通信を通じた入力操作を受け入れる特定イベント生成部201は、NFCデバイスや、WiFi(登録商標)デバイスなどで構成することができる。
【0033】
I/Oコントローラ203は、基準パケット111、123および特定パケット113をビーコン格納部205に格納する。I/Oコントローラ203は、特定イベントをパケット制御部207に送る。パケット制御部207は、パケット格納部205から取り出した基準パケット111または基準パケット123を定期的にビーコン送信部211に送る。パケット制御部207は定期的に基準パケット111を送信するときに、特定イベントを受け取ったときは、基準パケット111に代えてビーコン格納部205から取り出しておいた特定パケット113をビーコン送信部211に送る。
【0034】
パケット制御部207は定期的に基準パケット123を送信するときに、特定イベントを受け取ったときは、基準パケット123のフラグ119をセットした特定パケット125をビーコン送信部211に送る。パケット制御部207は、特定パケット113または特定パケット125を送ってから一定の時間が経過したときに、再び、基準パケット111または基準パケット123をビーコン送信部211に送る。表示部209は、複数のビーコン・デバイス101が同時に特定パケット113または特定パケット125を送信することがある場合に、複数の特定パケット113、125を受信したモバイル・デバイス10において、特定パケット113、125と対応するビーコン・デバイスをユーザに区別させる。
【0035】
パケット制御部207は、特定イベントを受け取ったときにあらかじめ設定した色の中から乱数を生成してランダムな色を選択し表示部209に指示する。色はランダムに選択されているため、同時に特定パケット113、125を送信する複数のビーコン・デバイスの表示部209が同一の色を表示することを回避する。表示部209は、一例においてLEDで構成し、指示された特定の色の光を発光する。パケット制御部207は、表示部209に指示した色を示す情報を特定パケット113、125に書き込む。特定パケット113、125を受信したモバイル・デバイス10は、対応する識別子115を表示部209が発光する色と同じ色で表示する。
【0036】
色の情報は、特定パケット113においては識別データ117の中に埋め込み、特定パケット125においては、フラグ119または識別データ117に埋め込むことができる。表示部209は、色に代えて点滅の周期を変更するようにしてもよい。この場合、モバイル・デバイス10は、周期の情報が埋め込まれた特定パケット113、125に対応する識別子115を同じ周期で点滅させて表示することができる。ビーコン送信部211は、パケット制御部207から受け取った基準パケット111、123または特定パケット113、125をビーコンとして定期的に送信する。
【0037】
[モバイル・デバイス]
図6は、モバイル・デバイス10の構成の一例を示す機能ブロック図である。ビーコン受信部301は、受信した基準パケット111、123および特定パケット113、125のPDUが含むデータを識別部305に送る。識別部303は、基準パケット111、123と特定パケット113、125を識別データ117で認識する。識別部303は、特定パケット113、125を認識したときは、識別子115と特定パケットであることを示すデータを組にしてリスト表示部305に送る。
【0038】
識別部303は、基準パケット111、123を認識したときは、識別子115だけをリスト表示部305に送る。リスト表示部305はディスプレイを含み、識別部303から基準パケット111、123の識別子115だけを受け取った場合に、ビーコン・リスト103にすべての識別子を外形的に同じ表示形式で表示する。リスト表示部305は、特定パケット113、125の識別子115と特定パケットであることを示すデータを受け取った場合に、その識別子115を基準パケット111、123の識別子からユーザが外形的に区別できる表示形式で表示する。特定パケット113、125の識別子を所定の表示形式で表示することを特定表示という。
【0039】
特定表示は、特定パケット113、125の識別子だけを背景のハイライト、文字の着色、フォントの選択、サイズの選択、点滅表示、または文字や記号の付加などの方法でユーザが外形的に区別できるようにして実現することができる。特定表示は、特定パケット113、125をビーコン・リスト103の最上位に表示するなどのリスト上の表示位置として実現することもできる。特定表示は、ビーコン・リスト103に基準パケット111、123の識別子115を表示しないで特定パケット113、125の識別子115だけを表示することで実現することもできる。
図7に、特定表示をしたビーコン・リスト103aの一例を示す。
【0040】
登録部307は、ユーザがビーコン・リスト103のなかから特定パケット113、125を選択して、対応する簡易名称を関連付けて入力するための、タッチスクリーンやキーボードのようなユーザ・インターフェースを含む。格納部309は、識別子115と簡易名称の組を登録する。ユーザは登録したデータを、外部のデータ・ベースに提供することができる。リスト表示部305は、基準パケット111、123および特定パケット113、125のいずれも表示しないで、登録部307に特定パケット113、125の識別子だけを送るようにしてもよい。
【0041】
[ビーコン・デバイスの動作]
図8は、ビーコン・デバイス101の動作手順を示すフローチャートである。ブロック401で、複数のビーコン・デバイス101が基準パケット123を格納している。ビーコン・デバイス101が、基準パケット111と特定パケット113を格納する場合も同様の手順を採用することができる。ビーコン・デバイス101は、すでにユーザ空間100の所定の場所に配置されている場合を想定する。
【0042】
ブロック403で、各ビーコン・デバイス101は、それぞれ基準パケット123を送信する。基準パケット123が含む識別子115は、ビーコン・デバイス101ごとに異なっている。ブロック405で、モバイル・デバイス10を保持したユーザが、簡易名称の関連付けをしたいビーコン・デバイスを選択する。通常、関連付けをしたいビーコン・デバイス101は、モバイル・デバイス10の位置から最も近い位置に存在しており、ユーザはその物理的な存在を認識して直接的なアクセスができる。
【0043】
ブロック407で、ユーザは選択したビーコン・デバイス101に対して特定操作をする。特定操作がされたビーコン・デバイス101は、ブロック409でフラグ119をセットした特定パケット125を定期的に送信する。このとき、ビーコン・デバイス101は、表示部209に特定の色を表示し、フラグ119または識別データ117に当該色を示す情報を埋め込むことができる。ブロック411でビーコン・デバイス101は、特定パケット125を送信してから所定の時間が経過すると、ブロック413で特定パケット125の送信を停止して基準パケット123を定期的に送信する。
【0044】
[モバイル・デバイスの動作]
図9は、モバイル・デバイス10の動作手順を示すフローチャートである。ブロック511でユーザ空間100に存在するモバイル・デバイス10は、
図2に示すような外形的に区別できない識別子115だけのビーコン・リスト103を表示する。
図8のブロック407で特定操作をしたユーザが保持するモバイル・デバイス10は、ブロック513で基準パケット123に加えて特定操作がされたビーコン・デバイス101が送信した特定パケット125を受信する。
【0045】
モバイル・デバイス10は、識別データ117を読み取って、特定パケット125を認識する。ブロック515でモバイル・デバイス10は、特定パケット125の識別子をビーコン・リスト103において特定表示する。モバイル・デバイス10は、フラグ119または識別データ117に埋め込まれた識別子115を特定の色で表示する情報を読み取ったときは、当該識別子115を指示された色で表示する。指示された色は、ビーコン・デバイス101の表示部209が発光する色に一致する。
【0046】
ブロック517でユーザは、ビーコン・リスト103から特定パケット125を選択して、その識別子に簡易名称を関連付けて登録部309に登録する。簡易名称は、ユーザがモバイル・デバイス10に対して直接入力してもよいし、あらかじめ、サーバから受け取った簡易名称のリストのなかから選択してもよい。ユーザはユーザ空間100を移動しながら必要な場所で同様の手順を繰り返してビーコンの識別子115と簡易名称の関連付けを行うことができる。
【0047】
上記の手順によれば、モバイル・デバイス10を保持するユーザがユーザ空間100を移動することで、ビーコンと簡易名称を関連付けたデータ・ベースを容易に構築することができる。ビーコン・パケットに簡易名称を埋め込むスペースがない場合でも、ユーザが入力操作をしたビーコン・デバイス101をモバイル・デバイス10で特定して簡易名称を容易に関連付けることができる。ビーコン・パケットには簡易名称を埋め込んでいないために、ビーコン・デバイス101や簡易名称の変更があっても容易に対応することができる。
【0048】
簡易名称をビーコン・パケットに埋め込んでいないため、同一のビーコン・デバイス101に対して異なるモバイル・デバイス10がそれぞれ独自の簡易名称を付与してカスタマイズすることができる。このとき関連付けを行ったモバイル・デバイス10は、位置測位システムのデータ・ベースに、モバイル・デバイス10の識別子とビーコン・デバイスの識別子と簡易名称を登録することができる。位置測位システムのサーバは、モバイル・デバイス10から特定パケット125の識別子を受け取ったときに、当該モバイル・デバイスの識別子とビーコン・デバイスの識別子に関連付けられた簡易名称を返送することができる。
【0049】
基準パケット111と特定パケット113の組を使用する場合は、基準パケット111に変更を加える必要がないため、本発明はiBeacon(登録商標)やEddystone(登録商標)などの既存のシステムにも適用することができる。特定パケット113、125は、モバイル・デバイス10で識別子を特定して簡易名称を付与するために想定する所定の時間送信されるため、同時に複数のビーコン・デバイス101が特定パケット113、125を送信する場合がある。この場合に、対応する特定パケット113、125の識別子115と表示部209を同じ色で表示および発光し、識別子115と表示部209の組同士を相互に異なる色で表示および発光することで、関連付け付けを行うことができる。
【0050】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0051】
10 モバイル・デバイス
100 ユーザ空間
101 ビーコン・デバイス
103、103a ビーコン・リスト
111、123 基準パケット
113、125 特定パケット
115 識別子
117 識別データ
119 フラグ