特許第6271716号(P6271716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6271716シリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子及び高粘度アルコール溶媒を含有する印刷用インク
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271716
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】シリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子及び高粘度アルコール溶媒を含有する印刷用インク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/03 20140101AFI20180122BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20180122BHJP
   H01L 21/208 20060101ALI20180122BHJP
   H01L 21/22 20060101ALI20180122BHJP
   H01L 21/225 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   C09D11/03
   C09D11/037
   H01L21/208 Z
   H01L21/22 E
   H01L21/225 R
【請求項の数】28
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2016-515000(P2016-515000)
(86)(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公表番号】特表2016-526076(P2016-526076A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】US2014038721
(87)【国際公開番号】WO2014189886
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2016年5月18日
(31)【優先権主張番号】61/827,340
(32)【優先日】2013年5月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】リ,ウェイドン
(72)【発明者】
【氏名】添田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】ペングラ−レウン,ジーナ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】チルボル,シブクマール
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−256500(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/061433(WO,A1)
【文献】 特開2010−033911(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090647(WO,A1)
【文献】 特開2008−108569(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/055845(WO,A1)
【文献】 特開2011−060752(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/066669(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/
H05K
H01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.001重量%のナノ粒子と、少なくとも10重量%の粘性多環式アルコールとを含有し、前記粘性多環式アルコールが450℃以下の沸点を有し、前記ナノ粒子が、半導体材料であり、シリコン系ナノ粒子、ゲルマニウム系ナノ粒子、又はこれらの混合物であり、かつ遷移金属汚染が100ppb以下である、ナノ粒子ペースト。
【請求項2】
ポリマーが0.1重量%以下である、請求項1に記載のナノ粒子ペースト。
【請求項3】
少なくとも0.5重量%の元素シリコンナノ粒子を含有し、2s−1のせん断で少なくとも1Pa・sの粘度を有する、請求項1又は2に記載のナノ粒子ペースト。
【請求項4】
0.05〜10重量%の前記ナノ粒子を含有し、2s−1のせん断で少なくとも1Pa・sの粘度を有する、請求項1又は2に記載のナノ粒子ペースト。
【請求項5】
非ニュートン性のレオロジーを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノ粒子ペースト。
【請求項6】
前記粘性多環式アルコールが、7〜25個の炭素原子を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノ粒子ペースト。
【請求項7】
前記粘性多環式アルコールが、ノルボリルビシクロ部分を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノ粒子ペースト。
【請求項8】
前記粘性多環式アルコールが、ビニルノルボルニルアルコール;エチル、メチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、1−メチル−プロピル、2−メチル−プロピル、アリル、n−ヘキシル、3−メチル−ブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルの置換を有するC−8置換1,5−ジメチルビシクロ[3.2.1]オクタン−8−オール;イソボルニルシクロヘキサンジオール;トリメチル−2,2,3−ノルボルニル−5−(−3−シクロヘキサノール−1,3−(5,5,6トリメチルビシクロ[6.4.0.1]ヘプタン−2−イル)シクロヘキサノール;11−ヒドロキシ−2,13,13−トリメチル−トリシクロ[6.4.0.12.5]トリデカン;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のナノ粒子ペースト。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、50nm以下の平均一次粒子サイズを有するドープされた元素シリコンナノ粒子を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のナノ粒子ペースト。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、少なくとも0.5原子パーセントのドーパントレベルを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のナノ粒子ペースト。
【請求項11】
前記ナノ粒子が、75nm以下の平均一次粒子サイズを有する元素シリコンナノ粒子を含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のナノ粒子ペースト。
【請求項12】
基材表面にナノ粒子堆積物を堆積させる方法であって、
請求項1〜11のいずれか一項に記載のナノ粒子ペーストを、基材の表面にスクリーン印刷して、スクリーン印刷された基材を形成する工程と、
前記スクリーン印刷された基材を、実質的に酸素が存在しない雰囲気で、450℃以下の温度に加熱して、ナノ粒子堆積物を形成する工程と、を含む方法。
【請求項13】
前記ナノ粒子堆積物が、炭素が5原子パーセント以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ粒子堆積物が、150nm〜700nmの平均厚さを有する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記基材が、シリコン表面を有する、請求項1214のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記堆積物を有する基材を750℃〜1200℃の温度に加熱して、ドーパントを基材表面にドライブインさせ、堆積物をアニーリングすることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記堆積が、加熱される時に被覆されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アモルファスシリコンキャップ層によって前記被覆が提供される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アニーリングされた堆積物が、15Ω/sq〜60Ω/sqのシート抵抗を有する、請求項1618のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ドーパントドライブイン後の前記基材表面が、100Ω/sq以下のシート抵抗を有する、請求項1618のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
レーザーを基材に照射して前記ドーパントを堆積物に衝突させ、そしてドーパントを基材表面内にドライブインさせることを含む、請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ナノ粒子の堆積物を表面に有するコーティングされた基材であって、前記ナノ粒子が、半導体材料であり、かつ元素シリコン、元素ゲルマニウム、これらの合金又は混合物のナノ粒子であり、前記堆積物が、炭素が5原子パーセント以下であり、200Ω/sq以下のシート抵抗を有し、かつ遷移金属汚染が100ppb以下である、コーティングされた基材。
【請求項23】
前記堆積物が、元素シリコンナノ粒子を含み、前記元素シリコンナノ粒子が、50nm以下の平均一次粒子サイズを有し、前記元素シリコンナノ粒子が、少なくとも0.25原子パーセントのドーパント濃度を有する、請求項22に記載のコーティングされた基材。
【請求項24】
前記基材表面が、元素シリコンを含有する、請求項22又は23に記載のコーティングされた基材。
【請求項25】
前記堆積物が、元素シリコンナノ粒子の堆積物を本質的に含まない領域と元素シリコンナノ粒子の堆積物を有する領域とに、基材表面に沿ってパターン化されている、請求項2224のいずれか一項に記載のコーティングされた基材。
【請求項26】
前記堆積物がドープされている、請求項2225のいずれか一項に記載のコーティングされた基材。
【請求項27】
前記堆積物が、融合ナノ粒子を有する、請求項2226のいずれか一項に記載のコーティングされた基材。
【請求項28】
前記堆積物が、150Ω/sq以下のシート抵抗を有する、請求項27に記載のコーティングされた基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷のための所望の配合物を含むシリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子インクに関する。さらに、本発明は、そのようなインクの形成及び使用のための方法に関する。このインクは、非常に低い金属不純物レベルを有することができる。
【背景技術】
【0002】
シリコン系材料は重要な商業的材料である。具体的には、元素シリコンは、電子的用途及びソーラーセル用途について、幅広く用いられている半導体材料である。シリコンの半導体特性及びシリコンの電子移動度はドーパントを使用して変えることができる。半導体デバイスの形成は一般に、選択的にドープされたシリコンを有するデバイス領域の形成を伴う。このような領域において、ドーパントは、電気導電特性又は他の所望の特性を変化させる。選択されたドーピングプロセスによって、デバイスの異なるドメインを形成することができる。これは、半導体特性を活用するために特定のデバイスに対する機能を提供し、例えばp型ドーパントとn型ドーパントとを有する個別の材料を用いて形成されるダイオード接合を形成することができる。例えばn型ドーパントは、伝導バンドに存在させることができる過剰電子を提供し、そしてその結果として生じる材料はn型半導体と呼ばれる。p型ドーパントは電子欠乏又は正孔をもたらし、これらを使用することによってp型半導体を形成する。適切なドーピングによって、種々様々なデバイスを形成することができ、例えばトランジスタ及びダイオードなどを形成することができる。シリコン酸化物、シリコン窒化物及びシリコン酸窒化物は、誘電材料として用いることができ、これらの材料は、その適合性及びシリコン半導体へ移動する金属がないために、シリコン半導体と共に使用することが特に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に処理費は、商業的応用に関して重要な事項である。商業用印刷装置は入手可能であって、かつ処理費がリーズナブルであるため、中程度の解像度の用途に印刷アプローチを用いることが望ましい場合がある。スクリーン印刷は商業的に広く用いられている印刷技術である。スクリーン印刷機に適合する、許容範囲のレオロジー特性を有するペーストを用いて、スクリーン印刷は一般に行われる。その他商業的に可能な堆積アプローチとして、例えばインクジェット印刷、スピンコーティング、スプレーコーティング及びナイフエッジコーティングなどが挙げられる。
【0004】
広範囲の半導体用途は、数多くの形態でシリコン材料に関して商業的関連性を生み出している。例えば大面積薄膜トランジスタなどの形成は、代替の半導体処理アプローチに対する需要を生み出している。また、エネルギーコストの増加及びエネルギー需要の増加に伴って、ソーラーセルに関する市場はこれに応じて増大してきている。商業的なソーラーセルの大部分は、光導電性シリコン半導体を含み、そしてその半導体のディファレンシャルドーピングが、光電流の収集を促進する。デバイスの水平面に沿ってドープされた接触部を形成するために、いくつかのソーラーセルはシリコンドーピングのパターンを有する。薄膜シリコンソーラーセルは、デバイスの面に対して垂直な向きでドーパントの多様性を有することができる。性能に対する要求が高まるとともに、コストを低くする圧力があるので、許容可能なレベルでコストを維持しながら性能の問題に対処するためのアプローチとして、材料処理においての改善が非常に望ましい。ゲルマニウムは、同様の半導体特性を有するシリコンの代替物となりうる半導体材料である。また、シリコンとゲルマニウムとは、互いに半導体合金を形成することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、少なくとも0.001重量%のシリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子、少なくとも約10重量%の粘性多環式アルコールを含有するナノ粒子インクであって、上記多環式アルコールが約450℃以下の沸点を有する、ナノ粒子インクに関する。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、約0.05〜約10重量%のシリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子を含有し、ポリマーが約0.1重量%以下であり、2s−1のせん断速度で少なくとも約1Pa・sの粘度であり、かつ非ニュートン性のレオロジーを有する、ナノ粒子ペーストに関する。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、シリコン/ゲルマニウムナノ粒子を基材表面に堆積する方法に関する。いくつかの実施態様では、この方法は、シリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子を含有し、かつポリマーが約1重量%以下であるペーストを、基材の表面にスクリーン印刷すること、及びそのスクリーン印刷した基材を、実質的に酸素が存在しない雰囲気で450℃以下の温度に加熱して、堆積物を形成することを含む。そのいくつかの実施態様では、堆積物は、5原子パーセント以下の炭素を含んでもよい。いくつかの実施態様では、この方法は、堆積物を有する基材を、約750℃〜約1200℃の温度に加熱して、基材表面にドーパントを導入することを含むことができる。この堆積物は、加熱される場合に、例えばキャップ層でコーティングされてもよい。付加的又は代替的な実施態様において、この方法は、レーザーを基材に照射して、ドーパントを衝突させて、基材表面にドーパントを導入することを含むことができる。
【0008】
他の態様において、本発明は、元素のシリコン/ゲルマニウムナノ粒子堆積物を含むコーティングされた基材であって、その基材の表面は、炭素が約5原子パーセント以下であり、かつ約200Ω/sq以下のシート抵抗を有するようなコーティングされた基材に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、バックコンタクト型太陽電池の底面斜視図である。
図2図2は、図1に示されたバックコンタクト型太陽電池の底面図であり、その上に堆積されたドープされたアイランドを有する半導体層のみを示す。
図3図3は、粘性多環式アルコールについての粘度対せん断速度のプロットである。
図4図4は、プロピレングリコール中の5重量%と15重量%のシリコンナノ粒子を含有する2つのペーストと、テルピネオール中の15重量%のシリコンナノ粒子を含有する1つのペーストについての、粘度対せん断速度のプロットを含むグラフである。
図5図5は、66重量%の粘性多環式アルコール(VPA)を含有するナノ粒子ペーストについての粘度対せん断速度のプロットである。
図6図6は、83.1重量%のVPAを含有するナノ粒子ペーストについての粘度対せん断速度のプロットである。
図7図7は、50重量%のVPA(左のパネル)及び66.7重量%のVPA(右のパネル)を含有するナノ粒子ペーストを用いてスクリーン印刷された、200μm(上のパネル)及び300μm(下のパネル)の目標幅を有する線と、200μmの目標幅を有する点(中央のパネル)の光学顕微鏡画像の合成である。
図8図8は、VPAを含有し、窒素中で250℃(上の列)及び540℃(中央の列)で硬化されたペーストから、及びエチルセルロース(下の列)を含有し、窒素中で540℃で硬化されたペーストから、形成された硬化ナノ粒子ペースト層を含むコーティングされたウェハーの断面(左欄)と上面(右欄)のSEM画像の合成である。
図9図9は、VPA(上の列)を含有するペーストから、及びIPAと溶媒とを含むスピンコーティングインクから形成された、硬化ナノ粒子ペースト層を含むコーティングされたウェハーの断面(左欄)と上面(右欄)のSEM画像の合成である。
図10図10は、ホウ素をドープしたシリコンナノ粒子ペーストを、350μmのスクリーン線開口部を有するシリコン基材にスクリーン印刷することにより形成された、平均350ミクロン(μm)幅の線の光学像である。
図11図11は、ホウ素をドープしたシリコンナノ粒子ペーストを、200μmのスクリーン線開口部を有するシリコン基材にスクリーン印刷することにより形成された、平均200ミクロン(μm)幅の線の光学像である。
図12図12は、ホウ素をドープしたシリコンナノ粒子ペーストを、200μmのスクリーン線開口部を有するシリコン基材にスクリーン印刷することにより形成された、平均225ミクロン(μm)幅の線の光学像である。
図13図13は、ホウ素をドープしたシリコンナノ粒子ペーストを、200μmのスクリーン線開口部を有するシリコン基材にスクリーン印刷することにより形成された、平均198ミクロン(μm)幅の線の光学像である。
図14図14は、250nmの平均厚さを有するウェハーに印刷されたシリコンナノ粒子線を有するシリコンウェハーのSEM断面図であり、251nmの厚さを示す図である。
図15図15は、250nmの平均厚さを有するウェハーに印刷されたシリコンナノ粒子線を有する図14のシリコンウェハーのSEM断面図であり、549nmの厚さを示す図である。
図16図16は、250nmの平均厚さを有するウェハーに印刷されたシリコンナノ粒子線を有する図14のシリコンウェハーのSEM断面図であり、103nm〜178nmの範囲の厚さを示す図である。
図17図17は、ホウ素がドープされたシリコンナノ粒子の200ミクロン幅の線に交差するように印刷された、リンがドープされたシリコンナノ粒子の200ミクロンの線を有するシリコンウェハーの光学像である。
図18図18は、250℃及び540℃で硬化させたナノ粒子ペーストをコーティングされたウェハー上にドーパントドライブインを実行した後に、ウェハー表面からの深さの関数としてのリン濃度のプロットを含むグラフである。
図19図19は、図8の上の2つの列に示した硬化されコーティングされたウェハー上にドーパントドライブインを実行した後に得られた、ナノ粒子ペーストをコーティングされたウェハーの断面(左欄)と上面(右欄)のSEM像の合成である。
図20図20は、ナノ粒子をアモルファスシリコンキャップでアニーリングした後の、印刷されたナノ粒子ペーストの断面図のSEM顕微鏡写真であり、ここで、初期印刷線を形成するペーストは2.5重量%のホウ素ドープされたナノ粒子を有した。
図21図21は、右軸にプロットされた深さの関数としての、炭素と酸素の相対量を用いて、図20のアニーリングされたドープ線のドーパント深さを得るために使用されたSIMSデータのプロットである。
図22図22は、ナノ粒子をアモルファスシリコンキャップでアニーリングした後の、印刷されたナノ粒子ペーストの断面のSEM顕微鏡写真であり、ここで、初期印刷線を形成するペーストは5重量%のホウ素ドープされたナノ粒子を有した。
図23図23は、右軸にプロットされた深さの関数としての炭素と酸素の相対量を用いて、図22のアニーリングされたドープ線のドーパント深さを得るために使用されたSIMSデータのプロットである。
図24図24は、ナノ粒子をアモルファスシリコンキャップでアニーリングした後の、印刷されたナノ粒子ペーストの断面のSEM顕微鏡写真であり、ここで、初期印刷線を形成する前記ペーストは2.5重量%のリンドープされたナノ粒子を有した。
図25図25は、ナノ粒子をアモルファスシリコンキャップでアニーリングした後の、印刷されたナノ粒子ペーストの断面のSEM顕微鏡写真であり、ここで、初期印刷線を形成する前記ペーストは5重量%のリンドープされたナノ粒子を有した。
図26図26は、右軸にプロットされた深さの関数としての炭素と酸素の相対量を用いて、図25のアニーリングされたドープ線のドーパント深さを得るために使用されたSIMSデータのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
種々のシリコン系のナノ粒子インク組成物は、粘性多環式アルコールの導入により、望ましい印刷特性、例えば非ニュートン性のレオロジーを達成することができる。印刷用インク、例えばペースト、を使用するシリコン系ナノ粒子の堆積は、望ましいナノ粒子堆積をもたらすインクの工学的処理が関与する。いくつかの実施態様において、金属汚染は非常に少ないことが望ましく、いくつかの粘性多環式アルコールを使用することにより、顕著な金属汚染無しでインク特性を調節することができる。ペーストが印刷機中で及び印刷後に安定であるが、スクリーニングを介するせん断の適用により、大きな詰まり無しで輸送できるように、スクリーン印刷のためのナノ粒子ペーストは、一般に非ニュートン性流体であることが望ましい。種々の多環式アルコールは、適切に低い沸点により、適切な非ニュートン性流体挙動を提供することができ、したがって、粘性アルコールを効率的かつ有効に除去することができる。新しいインク配合物は、薄く均一なナノ粒子堆積物の形成を提供し、これは固化させて、低シート抵抗材料にすることができる。ドープした接触領域の一部として、融合ナノ粒子のドライブインと取り込みにより、非常に良好な特性を得ることができる。
【0011】
半導体用途及び同様の用途のためのシリコン系材料を使用して、低レベルの炭素を有する材料を形成することができ、したがって、その材料が炭素系材料を用いて輸送される場合、処理中に炭素系組成物を除去して少量の炭素汚染を残すことが望ましい。多環式アルコールなどの非ニュートン性アルコールはこの機能を果たすことができ、ほとんど又は全くポリマー無しで、望ましいインクを配合することができることがわかっており、これは、望ましいレオロジー特性を有するスクリーン印刷ペーストを提供するために使用されている。スクリーン印刷用に、良好な印刷特性、印刷ペーストの小さな広がり、及びあるとしても非常に少ないスクリーンの詰まりを示すポリマー無しで、シリコンナノ粒子ペーストを配合することができる。インクの新しい配合物に基づいて、10億分率範囲の非常に少ない金属汚染と堆積物特性の便利な設計とを有する、容易にスケール変更可能なインクを製造することができる。粘性多環式アルコール系のインクは、プリント回路及び太陽電池などの半導体用途に特に望ましい。
【0012】
インクは一般に、選択された量のシリコン系ナノ粒子、例えば、元素シリコンナノ粒子、シリコン酸化物ナノ粒子、シリコン窒化物ナノ粒子、又はこれらの組合せを含む。ナノ粒子は、ドープされてもドープされなくてもよい。ナノ粒子は、アモルファス、結晶性、又は多結晶であることができる。いくつかの実施態様において、インクは、シリコン系ナノ粒子を基材面に沿って輸送するために本質的に配合することができ、インクの他の成分は堆積後に除去して、表面上の堆積物としてナノ粒子を残すことができる。ナノ粒子は一般に、約100ナノメートル(nm)以下の平均粒子サイズを有する。一般にインクは、約0.05質量〜約25重量%のナノ粒子を含有する。追加のインク成分は一般に、印刷、コーティング又は他の輸送手法を提供するために、インクの望ましい特性を提供するように選択される。
【0013】
粘性多環式アルコール類を取り込んだ本明細書に記載のインクは、インク形成、インクの設計と特性、ナノ粒子の堆積物の特性、デバイス形成のためのナノ粒子堆積物の処理に関して、望ましい特徴を提供する。インク、例えばペースト、を配合するという点では、粘性のアルコールは、ナノ粒子分散物と容易に混ざる。ペーストをスクリーン印刷することについて、粘性アルコールは、所望であれば、低いナノ粒子濃度で良好なインクレオロジーを提供する。一般に、インク特性が望ましい範囲にわたって調整できるように、インクのレオロジーは、粘性多環式アルコールとともに柔軟に選択することができる。粘性アルコールで形成されたペーストは乾燥して、高密度のナノ粒子堆積物を形成することができる。粘性アルコールは、望ましいレオロジー特性と一致して適度の沸点で選択することができるため、アルコールは、比較的低い温度、例えば約450°以下で、有効に除去することができる。すなわち、粘性アルコールは、酸素が存在しない環境中で有効に除去して、低炭素汚染を有する堆積物を残すことができる。ナノ粒子インクを、低金属汚染と低炭素汚染の両方を有する構造に処理することができるように、粘性アルコールを提供することができる。非常に低い金属汚染及び有機成分の有効な除去を有する構造を形成するように粘度を制御するために、粘性アルコールは、ポリマー添加剤の便利で効率的な代替手段を提供することができる。
【0014】
特に興味のあるナノ粒子インクは、一般に、シリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子、溶媒化合物の混合物を含むことができる溶媒、及びペースト特性を調整する量で選択することができる粘性多環式アルコール、例えば非ニュートン液体、を含む。一般にナノ粒子は、ナノ粒子堆積物及び対応するインク特性に基づいて選択される。溶媒は、粘性多環式アルコールとは異なるインク中の液体を意味し、溶媒は一般にニュートン流体である。粘性多環式アルコールは、室温で液体又は固体であることができ、室温で固体は一般に、室温よりわずかに高い温度で溶融する。また、粘性多環式アルコールは一般に溶媒中で混和性であり、したがって、粘性多環式アルコールが室温で固体であっても、混合物は室温で液体である。種々の成分の金属汚染並びにインクの処理は、非常に低い金属汚染レベルのインクの目的を達成するために重要である。一般に、溶媒の性質は、他のインク成分、インクのレオロジー特性、印刷特性、印刷機成分との適合性、及び印刷後の処理条件と目標特性に基づいて選択することができる。例えば、いくつかのペースト配合物において、低沸点溶媒が、印刷処理中に少なくとも部分的に蒸発するか、又は次に印刷ペーストを安定化させて印刷ペーストの広がりを制限するように、低沸点溶媒は高沸点溶媒と組み合わされる。
【0015】
ナノ粒子は、一般に約100nm以下の平均直径を有し、そして、さらに後述されるように、より小さな平均粒子サイズが望ましい。いくつかの実施態様において、ナノ粒子は、サイズ及び/又は組成に関して高度に均一であることができるが、いくつかの実施態様については、ナノ粒子の混合物が望ましいことがある。また、ナノ粒子は適切な溶媒中で高度に分散することができ、したがってナノ粒子は、分散物中で望ましい二次粒子サイズを有することができる。適切に形成されたナノ粒子分散物は、ペースト又は他のナノ粒子インクに取り込まれて、望ましいペーストの均一性及び印刷適性を得ることができる。
【0016】
シリコン/ゲルマニウムは、特許請求の範囲を含む本明細書において、元素シリコン、元素ゲルマニウム、これらの合金又は混合物を指す。同様に、シリカ又はゲルマニナノ粒子の使用は、いくつかの実施態様に記載されており、シリカ/ゲルマニアは、特許請求の範囲を含む本明細書において、シリカ(シリコン酸化物)、ゲルマニ(ゲルマニウム酸化物)、これらの組み合わせ及び混合物を指す。これに対応して、本明細書中でシリカの議論は、一般的に組成物の類似性に基づいてゲルマニアに適用することができる。さらに、シリコン/ゲルマニウム窒化物及びシリコン/ゲルマニウム酸窒化物は、それに応じて、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、ゲルマニウム窒化物、ゲルマニウム酸窒化物、これらの組み合わせ及びこれらの混合物を指す。以下の議論は、シリコン系ナノ粒子に焦点を当てているが、ゲルマニウムとの組成物及びシリコンとゲルマニウムとの合金の同様の処理は、これらの元素の類似の化学的性質に基づく議論に従う。議論を簡単にするために、元素ゲルマニウム、ゲルマニウム化合物、及びゲルマニウムとシリコンとの合金は、一般に明示的に議論されておらず、シリコン系化合物への言及は、一般にゲルマニウム系化合物と同様に適用される。
【0017】
シリコン系ナノ粒子は、任意の適切な技術によって合成することができる。例えば、シリコン酸化物ナノ粒子は、ゾル−ゲル法、火炎熱分解、熱分解により合成することができる。また、元素シリコンナノ粒子は、例えば「Method for Preparing Nanoparticle Thin Films」と題するKelmanらの米国特許第7,718,707号(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されているようなプラズマ技術によって合成することができる。
【0018】
レーザー熱分解は、所望の組成と極めて低い金属汚染を有するシリコン系ナノ粒子を合成するための望ましい手法である。特にレーザー熱分解は、所望の化学量論だけでなく、高いドーピングレベルを含む所望のドーピングを有するシリコン系ナノ粒子の合成に有用であり得る。レーザー熱分解は、望ましい特性を有する高度に均一なシリコン系ナノ粒子を形成するように設計することができる反応を駆動するために、強力な光ビームを使用する。粒子は、反応物ノズルで開始し、収集システムで終わる流れで合成される。ドーパントレベルは、反応物流内のドーパント前駆体を用いて調整することができる。それに応じて粒子サイズは、レーザー熱分解の間に合成条件を調整することによって、調整することができる。高品質のインクを形成するために、約100nm以下の平均一次粒子サイズを有するナノ粒子を合成することが望ましい。レーザー熱分解は、任意選択的に所望のドーパントレベルを有する、非常に均一な一次粒子サイズを形成するために用いることができる。均一なナノ粒子は、比較的高濃度でインク中によく分散することができ、インクの特性は、選択された堆積プロセスに適するように調節することができる。
【0019】
レーザー熱分解プロセスでは、生成物粒子にドーパント元素を取り込むために、ドーパント元素は、シリコン前駆体と一緒に適切な前駆体組成物として、反応物質流に輸送することができる。一般に、シリコン材料について、高純度のガス状前駆体物質が、生成物粒子の高純度を達成するために望ましいが、反応物質流は、蒸気前駆体及び/又はエアロゾル前駆体を含むことができる。レーザー熱分解は、広範囲の選択されたドーパント又はドーパントの組み合わせでドープされたシリコン粒子を形成するために使用することができ、高いドーパントレベルを達成することができる。高いドーパントレベルを達成する能力は、対応するインクを、ドーパントが半導体材料に転送される用途のために、又はこれらの高いドーパントレベルを有するデバイスの形成のために特に望ましいものにする。また、平均粒子サイズと低不純物レベルとを制御しながら、及び良好な均一性を有する分散性粒子を達成しながら、高いドーパントレベルを達成することができる。半導体基材のドーピングのために、望ましいドーパントは、例えばB、P、Al、Ga、As、Sb、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ある範囲の材料を形成するためのレーザー熱分解の一般的な使用は、「Nanoparticle−Based Power Coatings and Corresponding Structures」と題するBiらの公開された米国特許第7,384,680号(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0020】
シリコン系ナノ粒子の分散物は高濃度で形成することができ、分散物の特性は、特定の用途に基づいて望ましい範囲で操作することができる。分散物の特性は、一般的に光散乱を使用して分散物中で測定されるZ平均粒子サイズ及び粒子サイズ分布など(これらは、液体中の分散粒子の大きさの尺度である)の二次粒子特性の検討を通して、分散物の特性を評価することができる。具体的に、良好な分散物は、二次粒子のサイズと分布に関して特徴付けることができる。また、レオロジー特性は、二次粒子サイズの測定値に反映されていないようインク特性について、さらなる情報を提供することができることが、見出された。
【0021】
また、シリコン酸化物ナノ粒子は、比較的高濃度で安定に分散させることができる。シリコン酸化物ナノ粒子は、分散を促進するための適切な組成物で、任意選択的に表面変性することができる。シリコン酸化物ナノ粒子の分散物はさらに、「Silicon/Germanium Oxide Particle Inks, Inkjet Printing and Processes for Doping Semiconductor Substrates」と題するHieslmairらの米国特許第7,892,872号(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。シリコン窒化物ナノ粒子の分散物は、「Particle Dispersions」と題するReitzらのPCT特許出願WO01/32799A(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0022】
初期の良好な分散物は、適切な溶媒中でシリコン系ナノ粒子を用いて形成することができ、溶媒又は溶媒混合物を操作して、ナノ粒子を用いて、選択された特性を有する全体的インク、すなわち、特定の堆積プロセスのために配合された選択された分散物、を形成することができ、一方、ナノ粒子を用いて、良好な分散物又は安定なインクを維持することができる。特に、特定の印刷手法用に、望ましい溶媒系が選択できるように、溶媒の多様な交換又は溶媒混合物の形成のための技術が開発されている。粒子濃度は、これに応じて所望の値に調整することができる。選択された溶媒を用いて高濃度の分散物中に高度に均一なシリコン系ナノ粒子を提供する能力により、望ましい手法を使用して印刷できるインクを配合することができる。
【0023】
さらに、シリコン系ナノ粒子分散物の形成中に汚染物質を除去するために、遠心分離を使用して、液体中に分散されて残っているシリコン系ナノ粒子を用いて、分散物から汚染物質を除去することができる。したがって、例えば比較的高い粒子濃度を有するナノ粒子分散物中では、ほとんどの金属濃度は、約10重量%の粒子濃度のインクについて、10億分の約20重量部(ppb)以下のレベルまで低下させることができ、総金属汚染は、約100重量ppb分散物以下のレベルまで低下させることができる。
【0024】
所望のシリコンインクの技術は、いくつかのパラメータを含むことができる。インク配合物のための出発点は、よく分散したシリコン系ナノ粒子の形成を含むことができる。粒子が十分に分散したら、得られる分散物を適切に変性して、選択されたインクを形成することができる。溶媒は、粒子濃度を増加させるために、蒸発により除去するか、及び/又は溶媒を加えて、分散物中に溶媒混合物又は低濃度の粒子を形成することができる。全体的に興味のある分散物は長期間安定であるが、良好な分散は、付加的な混合の適用なしで少なくとも1時間、粒子の顕著な沈降無しで懸濁されたままのナノ粒子によって特徴付けされる。
【0025】
分散物の適切な特徴付けは、一般に、インクの重要な機能的特性を評価するための十分な情報を提供するいくつかの特性を含む。特に、インクの品質が比較的良好なレベルを達成していたら、分散された二次粒子サイズの測定値は、印刷特性と完全には相関しない。しかし、レオロジー測定値は、堆積物中のインクの取り扱いに関するさらなる情報を提供することができる。当該分野において一般であるように、せん断速度の明示的な記載無しで粘度に言及することは、粘度測定値が低せん断限界であることを意味し、これは2S−1のせん断として有効に表すことができる。また、特に別の指定がなければ、粘度測定は、室温で、例えば20〜25℃で行われる。すなわち適切なレオロジー測定値を使用して、一次粒子サイズの測定値、二次粒子サイズの測定値、及びインク組成とともに、インクの更に重要な特徴を提供することができる。
【0026】
シリコン系ナノ粒子インクの設計は、複数の目標のバランスをとることができる。選択された堆積技術は、インク特性のパラメータの境界を提供することができる。いくつかのシリコンインク配合物について、インクは、比較的高いナノ粒子濃度を有することができるが、その堆積より少量のナノ粒子カバー率が望ましい場合は、比較的低い濃度が望ましいことがある。また、得られるシリコンナノ粒子堆積物の品質(例えば、均一性、平滑性など)もまた、インク特性の微妙な点に依存し得る。インクのレオロジーは、生じた堆積物についてインクの品質推定を補助するために試験することができる。改良された処理技術及び本明細書に記載のインク配合により、高いシリコン系粒子濃度と望ましいレオロジー特性を有するインクを配合することができる。
【0027】
適切なインクがコーティング、堆積又は印刷のために記載されており、これらは一般に、堆積中にパターン化することを含む。適切な印刷インクは、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷用に配合することができる。適切なコーティング技術は、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフエッジコーティングなどが挙げられる。この教示に基づいて、他のインクも同様に配合することができる。堆積インクの所望の厚みを得るために、コーティング又は印刷プロセスを繰り返して、対応する比較的大きな厚みを有する複数の層のインクを形成することができる。
【0028】
本明細書の議論は、インク特性を調整するために添加される粘性多環式アルコールを用いるインクの形成に焦点を当てている。特に、スクリーン印刷ペースト等の高純度のインクは、非常に低い金属汚染で形成することができ、ここで、インクは、レオロジーに影響を与えるために適切な量の粘性アルコールを有する。具体的には、スクリーン印刷ペーストは一般に非ニュートン流体である。しかしながら、非常に低い金属汚染を提供するための本明細書の技術は、コーティングプロセスの対応する特定の印刷に適した粘性多環式アルコールのより少ない量を有することができる、他のタイプのインクに適合させることができる。
【0029】
インクの特性は、溶媒のニュートン組成、粘性多環式アルコール、ナノ粒子、任意の付加的な組成物及びそれらの濃度を中心に、設計することができる。すなわち、インクのいくつかの特徴は、特定の用途によって設定されてもよいが、対象のインク特性を達成するために、残りのパラメータを調整してもよい。一般に、所望のインク特性は、所望の処理及び機能的目標を達成するように選択される。例えばレオロジーは、インクの種々の成分の濃度及び組成に依存し、特定のパラメータは、例えばスピンコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷などの所望の堆積手法と適合性があるように、レオロジーはあるパラメータ範囲内であることを目標とすることができる。さらに組成物は一般に、堆積後の所望の処理を示すように選択される。特に、組成や平均一次粒子サイズなどの粒子特性は、一般に所望の構造を形成するための更なる処理のために重要である。
【0030】
一般に、粘性多環式アルコールの組成及び濃度は、具体的にはインクの堆積特性を変化させるように選択される。具体的には、粘性アルコールを使用して、必ずしも対応して粒子濃度を増加させることなくインク粘度を増加させたり、及びいくつかの実施態様において、インクに望ましい非ニュートン挙動を提供したりすることができる。一般的に、インクの堆積後の特性は非常に重要である。例えば、粘性多環式アルコール組成物は、加熱して蒸発/沸騰を介して除去されるように選択することができる。
【0031】
本明細書中に記載のシリコン系ペースト及び他のインクのための低汚染レベルの達成には、いくつかの重要な検討事項の同時組合せが関与する。一般に、本明細書に記載の非常に低い汚染レベルを有するナノ粒子ペーストの形成は、対応して低い金属汚染レベルを有するインクを形成するための成分の使用を含む。具体的には、所望の低い金属汚染を有するインクを得るために、シリコン系ナノ粒子は所望の低い金属汚染を有することができ、そして、溶媒並びに粘性多環式アルコールは極めて低い金属汚染を有することができる。低い金属汚染を有するナノ粒子の合成及び収集が達成されており、半導体グレードの溶媒は、本明細書に記載のように極めて低い金属汚染を有するシリコン系インクを形成するために使用することができる。粘性多環式アルコールには、適切な低い金属汚染を設けることができる。これに対応して、材料の取り扱いも、許容量を超えて金属汚染を導入しないように設計されている。本明細書に記載の重要な成果は、一般にほとんど又は全くポリマー無しで、低い金属汚染レベルを維持しながら、所望のレオロジー特性を得ることである。本明細書の教示に基づいて、このようなインクの製造は合理的なコストで行うことができ、したがって、得られるインクは中程度なコストの用途のために商業的に使用するのに適している。
【0032】
シリコンナノ粒子インクは、選択された方法を用いて堆積することができる。具体的には、粘性多環式アルコールは、優れたスクリーン印刷特性を有するシリコン系ナノ粒子ペーストの形成のために特に望ましいことがわかっている。印刷後、インクは、半導体デバイスの構成要素を形成するのに、又は下層の半導体材料内に駆動されるドーパント源として、有用な要素を提供することができる。具体的には、シリコンインクは、太陽電池の、又は薄膜トランジスタ等の電子デバイスの、構成要素を形成するために使用することができる。いくつかの実施態様において、粒子は、最終形成物の構成要素に直接取り込むことができる。
【0033】
一般的にインク特性は、所望の物質の輸送と、選択された手法と所望の印刷物に一致する適切な堆積特性により印刷を提供するインク特性とを、中心に設計される。したがって、インクの設計において、2つの主要な目的は相関している。例えばナノ粒子濃度は、堆積したナノ粒子の厚さ並びに粘度と相関し、インクのレオロジー特性は、一般に、印刷されたインクを用いて達成可能な大きさとエッジのシャープネスとに相関する。本明細書に記載のインクは、高粘度のアルコールを有することができ、このアルコールはまた十分に低い沸点を有することができ、したがって、アルコールは、材料を熱分解することなく、処理中に効果的に除去することができる。次に、これらのアルコールについて、熱分解は行われないため、炭素を除去するために処理チャンバ内に酸素を導入する必要はない。同様に、アルコールの除去はほとんどあるいは全く残留物を残さないため、最終的な炭素汚染を低くすることができる。一般的には、インクはポリマーを含まないか、又はいくつかの実施態様において、約0.01重量%以下のポリマー、又は酸素の存在しない環境で450℃以下の温度では沸騰しない他の非揮発性有機組成物を含むことができる。
【0034】
得られるインクは、スクリーン印刷によって良好な印刷特性を有することが証明されている。印刷されたペーストは、下にある基材への適切なドーパントドライブインを提供しながら、アニーリング構造に加工することができる。例えば、ドーパントドライブインを促進するために、アモルファスシリコンのようなキャップ層を、印刷されたドープされた構造の上に堆積させることができる。アニーリングした構造は、p型又はn型ドーパントのいずれかで、望ましくは低いシート抵抗を示すことができる。アニーリングした構造は、アニーリングした構造をデバイスの構造に取り込むことが可能な太陽電池用ドープ接触部のようなデバイスを形成するために有用であり得る。印刷された電子デバイスなどの他のデバイスも同様に、形成することができる。
【0035】
《シリコン系ナノ粒子》
本明細書に記載の望ましいシリコン系ナノ粒子分散物は、一部はドーパント有り又は無しで、高品質のナノ粒子を形成する能力に基づいている。上述したように、レーザー熱分解は、高度に均一なシリコンのサブミクロン粒子又はナノ粒子の合成のために特に適した手法である。また、レーザー熱分解は、高ドーパント濃度のような選択された濃度での所望のドーパントの導入のための、多用途な手法である。またナノ粒子の表面特性は、レーザー熱分解プロセスにより影響され得るが、表面特性は、合成後さらに操作して、所望の分散物を形成することができる。小さくかつ均一なシリコン系粒子は、分散物/インクの形成に関連して、処理の利点を提供することができる。
【0036】
いくつかの実施態様において、粒子は、約1ミクロン以下の平均直径を有し、そしてさらなる実施態様において、所望の特性を導入するために、より小さい粒子サイズを有する粒子を有することが望ましい。例えば、十分に小さい平均粒子サイズを有するナノ粒子は、バルク材料よりも低い温度で溶融することが観察されており、これはいくつかの状況において有利となり得る。また、小さい粒子サイズは、所望の特性を有するインクの形成を提供し、これは、小さく均一なシリコン系粒子は、望ましいレオロジー特性を有するインクの形成に有利であり得るため、ある範囲のコーティング及び/又は印刷プロセスに特に有利であり得る。一般に、ドーパント及びドーパント濃度は、次に融合される材料の所望の特性に基づいて、又は隣接する基材にドーパント移動の所望の程度を提供するために、選択される。ドーパント濃度は、粒子の特性にも影響を与えることができる。
【0037】
具体的にレーザー熱分解は、組成、結晶性、及びサイズが高度に均一である粒子の形成において有用である。サブミクロン/ナノスケール粒子の集合体は、一次粒子について、約500nm以下、いくつかの実施態様において約2nm〜約100nm、あるいは約2nm〜約75nm、更なる実施態様において約2nm〜約50nm、追加の実施態様において約2nm〜約40nm、及び他の実施態様において約2nm〜約35nmの平均粒径を有することができる。これらの具体的な範囲内の他の範囲が本明細書の開示によってカバーされることを、当業者は認識するであろう。特に、いくつかの用途のために、より小さな平均粒径は特に望ましい。粒子径及び一次粒子径は、透過型電子顕微鏡によって評価される。一次粒子は、一次粒子の分離性を参照することなく顕微鏡写真で見える、小さな目に見える粒子単位である。粒子が球状でない場合は、直径は、粒子の主軸に沿った長さ測定値の平均として評価することができる。
【0038】
本明細書で限定なしに使用される用語「粒子」は、融合していない物理的粒子を指し、したがって、任意の融合した一次粒子は、凝集体すなわち物理的な粒子と見なされる。レーザー熱分解によって形成された粒子について、焼入れが適用される場合、元素シリコン粒子は、一次粒子、すなわち材料内の一次構造要素とほぼ同じオーダーのサイズを有することができる。したがって、上記の平均一次粒子サイズの範囲は、融合が無視できる程度に、粒子サイズに対して使用することもできる。いくつかの一次粒子の硬い融合が存在する場合、これらの硬い融合した一次粒子は、それに応じてより大きな物理的な粒子を形成し、平均一次粒子サイズが約10nm未満である非常に小さな元素シリコン粒子について、いくつかの注目すべき融合が観察される。一次粒子は、ほぼ球形の全体的外観を有することができるか、又はこれは非球面形状を有することができる。より綿密に観察すると、結晶性粒子は、基礎となる結晶格子に対応する表面を有することができる。アモルファス粒子は一般に、球形の側面を持っている。
【0039】
サイズが小さいため、粒子は、近くの粒子間とのファンデルワールス力及び他の電磁力により、緩い凝集体を形成する傾向がある。粒子が緩い凝集体を形成することができるにもかかわらず、粒子の透過型電子顕微鏡写真で、ナノメートルスケールの粒子が明らかに観察される。粒子は一般に、顕微鏡写真で観察されるように、ナノメートルスケールの粒子に対応する表面積を有する。さらに、粒子は、材料の重量あたりのその小さなサイズと大きな表面積に起因する固有の特性を発揮することができる。これらの緩い凝集体は、かなりの程度まで液体中に分散させることができ、いくつかの実施態様において、ほぼ完全に分散されて、分散粒子を形成することができる。
【0040】
粒子は、サイズの高度の均一性を有することができる。レーザー熱分解は一般に、非常に狭い範囲の粒子径を有する粒子を与える。透過型電子顕微鏡写真の観察から決定されるように、一次粒子は一般に、少なくとも約95パーセント、そしていくつかの実施態様において99パーセントの粒子が、平均直径の約35パーセントより大きい直径と、平均直径の約280パーセント未満の直径を有するような、サイズの分布を有する。さらなる実施態様において、粒子は一般に、少なくとも約95パーセント、そしていくつかの実施態様において99パーセントの一次粒子が、平均直径の約40パーセントより大きい直径と、平均直径の約250パーセント未満の直径を有するような、サイズの分布を有する。さらなる実施態様において、粒子は一般に、少なくとも約95パーセント、そしていくつかの実施態様において99パーセントの一次粒子が、平均直径の約60パーセントより大きい直径と、平均直径の約200パーセント未満の直径を有するような、サイズの分布を有する。当業者は、これらの特定の範囲内の均一性の他の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0041】
さらに、いくつかの実施態様において、平均直径の約5倍超の平均直径を有する一次粒子は本質的に存在せず、他の実施態様において平均直径の約4倍超、さらなる実施態様において平均直径の3倍超、及び追加の実施態様において平均直径の2倍超の平均を有する一次粒子は本質的に存在しない。すなわち、一次粒子サイズ分布は、有意に大きいサイズを有する少数の粒子を示すテイルを、効果的に有しない。これは、無機粒子を形成する小さな反応領域と、無機粒子の対応する急速なクエンチとの結果である。サイズ分布のテイルの有効なカットオフは、10個中の約1未満の粒子が、平均直径より高い特定されたカットオフ値を有することを示す。一次粒子の高い均一性は、種々の用途に活用することができる。
【0042】
高品質の粒子は、実質的に融合せずに製造することができる。しかし、例えば10nm未満の平均直径の非常に小さな一次粒子サイズの、より高い製造速度での製造のために、一次シリコン粒子は、ナノ構造材料に実質的な融合を含むことができる。これらの粒子はまだ液体中に分散されて、所望の範囲の二次粒子サイズを製造することができる。非常に小さい一次粒子径を有する粒子はかなりの融合を有することができるにもかかわらず、これらの粒子はまだ、小さい一次粒子サイズと対応する高表面積とが、対応する構造へのドーパント輸送及び/又は堆積インクの融合を促進することができる用途のために望ましいかもしれない。
【0043】
シリコン系ナノ粒子はさらに、BET表面積によって特徴付けることができる。表面積の測定は、粒子表面へのガス吸着に基づいている。BET表面積の評価は、小さな粒子サイズを高多孔性粒子から直接区別することはできないが、表面積の測定は粒子の有用な特徴付けを提供する。BET表面積の測定は当該分野において確立された手法であり、シリコン粒子についてBET表面積は、Nガス吸収物質を用いて測定することができる。BET表面積は、Micromeritics Tristar 3000(登録商標)装置などの市販の機器を用いて測定することができる。本明細書に記載のシリコン系ナノ粒子は、約100m/g〜約1500m/g、及びさらなる実施態様において、約200m/g〜約1250m/gの範囲のBET表面積を有することができる。当業者は、上記の明示的範囲内の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。粒径は、粒子が非多孔性で非凝集球体であるという仮定に基づいて、BET表面積から推定することができる。
【0044】
粒子の結晶性を評価するために、X線回折を使用することができる。さらに、レーザー熱分解によって製造される結晶性ナノ粒子は、高度の結晶性を有することができる。結晶質シリコン粒子のレーザー熱分解合成のために、一般的に一次粒子が結晶に対応すると考えられている。しかし、結晶子サイズを評価するために、X線回折も使用することができる。具体的には、サブミクロン粒子について、粒子表面での結晶格子の末端切断のために、回折ピークは広がっている。X線回折ピークの広がりの程度は、平均結晶サイズの推定値を評価するために使用することができる。粒子が本質的に球形であると仮定される場合、粒子の歪み及び機器の影響も、回折ピークの広がりに寄与することができるが、平均粒径に下限値を提供するために、当技術分野において周知であるSeherrer式を使用することができる。結晶サイズが約100nm未満の場合にのみ、意味のある広がりが観察される。一次粒子径のTEM評価からの粒子サイズ、BET表面積からの粒子サイズ推定値、及びScherrerの式からの粒子サイズ推定値がほぼ等しい場合、この測定値は、粒子の融合が過剰ではなく、一次粒子が有効に単結晶であるという重要な証拠を提供する。アモルファス又はガラス粒子は、広い範囲のオーダーの欠如を示す非常に広いX線回折スペクトルを有する。
【0045】
シリコン系粒子は、元素シリコン、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、及びこれらの混合物を含むことができる。一般にシリコン酸化物は、二酸化ケイ素(S1O)又は酸素欠乏酸化ケイ素、例えばSiO、0<x<2を含むことができる。窒化ケイ素は、Si又はシリコン富化シリコン窒化物、例えばSiN、0<x<4/3、であることができる。シリコン酸窒化物は、SiN、X<4/3及びy<2で、3x+2Y≦約4、を含むことができる。シリコン系ナノ粒子の集合体は、これらのシリコン系粒子混合物を所望の割合で含むことができる。
【0046】
ある範囲の材料を形成するためのレーザー熱分解の一般的な使用は、「Nanoparticle−Based Power Coatings and Corresponding Structures」と題するBiらの公開された米国特許第7,384,680号(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。均一な分散性シリコンナノ粒子の合成は、「Silicon/Germanium Particle Inks, Doped Particles」と題するHieslmairらの公開された米国特許出願第2008/0160265号にさらに記載されている。また、任意選択的なドーパントを用いるレーザー熱分解による、高分散性で均一なシリコン酸化物ナノ粒子の合成は、「Silicon/Germanium Oxide Particle Inks, Inkjet Printing and Processes for Doping Semiconductor Substrates」と題するHieslmairらの米国特許第7,892,872号(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。レーザー熱分解によるシリコン窒化物(Si)ナノ粒子の合成は、「Metal Silicon Nitride or Metal Silicon Oxynitride Submicron Phosphor Particles and Methods for Synthesizing These Phosphors」と題するRavilisettyらの公開された米国特許出願第2011/0135928号(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。シリコン酸窒化物ナノ粒子は、レーザー熱分解を使用して、これらの文献中の教示に基づいて、アンモニア(NH)と、シラン(SiH)との二次反応物としての酸素源(例えばNO又はCO)との混合物、又は他のシリコン源との混合物、の制御導入により合成することができる。あるいは、シリコン酸窒化物粒子は、シリコン酸化物ナノ粒子のNHによる部分的還元により、又はシリコン窒化物ナノ粒子の酸化剤、例えばO又はOによる酸化により、形成することができる。
【0047】
さらにサブミクロン粒子は、非常に高い純度レベルを有することができる。シリコン系粒子は、非常に低いレベルの金属不純物を用いて、適切な粒子処理手順を用いるレーザー熱分解を使用して、製造することができる。低い金属不純物レベルは、半導体処理の観点から非常に望ましい。汚染レベルは、ICP−MS分析(誘導結合プラズマ質量分析法)により評価することができる。
【0048】
いくつかの実施態様において、サブミクロンのシリコン系粒子は、約1百万分率重量部(ppm)以下の金属汚染物質を、さらなる実施態様において10億につき約900重量部(ppb)以下の、及び追加の実施態様において約700ppb以下の総金属汚染物質を有することがわかっている。半導体用途のために、鉄が特に懸念される汚染物質となり得る。改良された粒子の合成、取り扱い及び汚染物質除去手順では、粒子は粒子重量に対して、約200ppb以下の鉄で、さらなる実施態様において約100ppb以下、及び追加の実施態様において約15ppb〜約75ppbの鉄汚染物質で分散することができる。当業者であれば、上記の明示的範囲内の汚染レベルの追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。低汚染レベルは、ホウ素又はリンなどのドーパントの低ドーパントレベルを有する粒子の製造を可能にし、ここで、低ドーパントレベルは、粒子の電子的特性を、より高い汚染物質レベルでは達成することができない意味のある方法で調整するのに有効となり得る。
【0049】
非常に低い汚染レベルを達成するために、粒子は、周囲雰囲気から密封され、適切に洗浄され、合成の前にパージされた、レーザー熱分解装置で合成することができる。高純度のガス状反応物は、シリコン前駆体物質並びにドーパント前駆体について使用することができる。同様に、純酸素又はアンモニアを、それぞれシリコン酸化物又はシリコン窒化物を形成するための二次反応物として導入することができる。粒子が収集され、グローブボックス中で取り扱われて、周囲の大気からの汚染物質を含まない粒子を維持することができる。粒子を入れるために、ポリフルオロエチレン容器などの非常にきれいなポリマー容器を使用することができる。インクを形成するために、グローブボックス又はクリーンルーム内のきれいな容器内の非常に純粋な溶媒中に、粒子を分散させることができる。プロセスの全ての局面に細心の注意を払うことにより、本明細書に記載の高純度レベルが達成されており、一般的に達成することができる。クリーンな処理手順を有するシリコン粒子の製造は、「Silicon/Germanium Nanoparticle Inks, Laser Pyrolysis Reactors for the Synthesis of Nanoparticles and Associated Methods」と題するChiruvoluらの公開された米国特許出願番号2011/0318905号(参照のため本明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。
【0050】
液体中の分散粒子の大きさは、二次粒子サイズと呼ぶことができる。一次粒子サイズは、粒子の特定の集合についてほぼ二次粒子サイズの下限であり、したがって、一次粒子が実質的に融合しておらず、粒子が液体中で有効に完全に分散されている(これは、粒子間力を完全にうまく克服する溶媒和力を伴う)場合、平均二次粒子サイズは、ほぼ平均一次粒子サイズであり得る。二次粒子サイズは、初期形成後の粒子の後の処理と粒子の組成及び構造とに依存してもよい。具体的には、粒子表面の化学的性質、分散剤の特性、せん断力又は音波などの破壊的な力の適用などは、完全に粒子を分散させる効率に影響を与えることができる。分散したナノ粒子の二次粒子サイズは、以下にさらに記載されている。
【0051】
得られる粒子の特性を変化させるか、及び/又は隣接した元素シリコン並びに他のシリコン系材料への移行のために、ナノ粒子により供給されるドーパント源を提供するために、ドーパントを導入することができる。一般に、任意の合理的な要素を、所望の特性を達成するためのドーパントとして導入することができる。例えば、ドーパントは、粒子、特にシリコンの電気的特性を変更するために導入することができる。特にAs、Sb及び/又はPドーパントは、n型半導体材料を形成するために元素シリコン粒子中に導入することができ、ここで、ドーパントは過剰な電子を提供して伝導帯に追加され、そしてB、Al、Ga及び/又はInに中は、p型半導体材料を形成するために導入され、ここで、ドーパントは正孔を供給する。シリコン酸化物、シリコン窒化物、及びシリコン酸窒化物では、ドーパント元素は、シリコンウェハーなどの隣接する材料への転送のためのドーパント源であることができる。P及びBは、ジボラン(B)又はホスフィン(PH)等のそれぞれの適切な前駆体化合物を提供され、これらは非常に純粋な気体の形で提供することができる。
【0052】
いくつかの実施態様において、一つ以上のドーパントが、シリコン系粒子、例えば元素シリコン粒子、シリカ粒子、シリコン窒化物粒子及び/又はシリコン酸窒化物粒子中に、シリコン原子に対して約1.0×10−7〜約15原子パーセントの濃度、さらなる実施態様において約1.0×10−5〜約5.0原子パーセントの濃度、及びさらなる実施態様において、シリコン原子に対して約1×10−4〜約3.0原子パーセントの濃度で、導入することができる。低いドーパントレベルと高いドーパントレベルの両方とも、適切な状況において重要である。低ドーパントレベルが特に有用であるためには、粒子は、低汚染レベルに関して純粋であるべきである。小さな粒子については、低ドーパントレベルは、本質的に、平均して粒子当たり1個未満のドーパント原子に対応する。粒子について達成されている高純度と組合せると、約1.0×10−7〜5.0×10−3の低ドーパントレベルは、潜在的に有用な材料に対応する。いくつかの実施態様において、高ドーパントレベルが特に重要であり、高度にドープされた粒子は、約0.1原子パーセント〜約15原子パーセント、他の実施態様において約0.25原子パーセント〜約12原子パーセント、さらなる実施態様において約0.5原子パーセント〜約10原子パーセントのドーパント濃度を有することができる。当業者は、明示的なドーパントレベル範囲内の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0053】
《インク組成物及び特性》
望ましいシリコン系ナノ粒子インクは、ナノ粒子の初期の安定な分散物を加工して、選択された堆積法に適合するように特性を調整することにより形成される。粘性多環式アルコールは、ナノ粒子インクのレオロジー特性を調節するために、好都合に使用できることが見出された。すなわち特に興味のある分散物は、粘性多環式アルコールを含有することができる液体内に分散された、分散性液体又は溶媒及びシリコン系ナノ粒子を含有する。粘性多環式アルコールの使用により、例えばスクリーン印刷ペーストのため、インク特性を調整するためにポリマーを必ずしも使用することなく、良好な印刷特性を得ることができる。ポリマーの代わりの粘性多環式アルコールの使用は、いくつかの実施態様において、処理上の利点と、望ましい生産特性をもたらすことができる。適切な実施態様において、レーザー熱分解からのシリコン系ナノ粒子は粉末として回収され、混合により溶媒又は溶媒混合物中に分散されるが、十分な純度を有する場合は、他の供給源からの適切なシリコンナノ粒子を使用することができる。分散物は、合理的な期間にわたる沈降の回避に関して、さらに混合することなく、一般的に少なくとも1時間以上安定であることができる。分散物はインクとして使用することができ、インクの特性は、具体的な堆積法に基づいて調整することができる。例えば、いくつかの実施態様において、インクの粘度は、具体的なコーティング又は印刷用途における使用のために調整され、粒子濃度及び添加剤は、粘度及び他のインク特性を調整するためのいくつかの追加のパラメータを提供することができる。
【0054】
非ニュートン性レオロジーを有するスクリーン印刷ペーストは、特に重要であるが、インク特性を調整するために粘性多環式アルコールを取り込む他のインクもまた重要である。いくつかの実施態様において、粒子は、粒子を有機化合物で表面改質することなく、望ましい流体特性を有する濃縮分散物に形成することができる。本明細書で使用する場合、有機化合物による表面改質の欠如は、相互作用系溶媒への参照を除外する。一般的に溶媒は、粒子表面の強力かつ有効な耐久性のある化学変性を形成する別個の表面改質剤の包含とは異なる、変化する相互作用の程度により、粒子表面と相互作用することができる。小さな二次粒子サイズを有する安定な分散物を形成するための利用可能性は、他の方法では不可能な特定のインクを形成する能力を提供する。
【0055】
さらにシリコン系ナノ粒子は、粒子サイズ及び他の特性に関して均一であることが望ましいことがある。小さな二次粒子サイズを有する良好な分散物の形成は、粒子の表面化学を分散物の特性と一致させることにより促進することができる。粒子の表面化学は、粒子の合成中並びに粒子の収集後に、影響を受けることができる。
【0056】
堆積のために、乾燥したシリコン系ナノ粒子粉末を分散させ、高品質のシリコン系のインク等を形成するための適切な手法が見出されている。いくつかの実施態様において、粒子は、有機化合物で表面改質して、分散物中の粒子の表面特性を変更することができるが、更なる実施態様において、表面改質の無いことが、特定の用途への特性や潜在的に処理の簡素化への特性に関して、利点を提供することがあるため、粒子は、共有結合的に有機化合物で表面改質されない。すなわち、いくつかの実施態様において、表面改質なしで粒子の分散物を形成することにより、重要な利点が得られる。本明細書に記載の処理手法の1つ又はそれ以上を用いて、確立された商業的なパラメータに基づく便利なコーティング及び印刷手法を使用して堆積することができるインクを、形成することができる。すなわち、蒸気系の粒子合成の利点は、高度に分散された粒子を用いる望ましい溶液に基づく処理手法と組み合わせて、望ましい分散物及びインクを得ることができ、これはドープされた粒子を用いて形成することができる。適切な粒子サイズ分析器は、例えば、動的光散乱に基づくHoneywellのMicrotrac UPA装置、Horiba Particle Size Analyzer from Horiba, Japan、及び Photon Correlation Spectroscopyに基づくMalvernのZetaSizerシリーズの機器を含む。液体中の粒子サイズ測定のための動的光散乱の原理は、十分に確立されている。
【0057】
シリコン系ナノ粒子分散物に関して、分散物は低濃度〜約30重量%のナノ粒子の濃度を有することができる。一般に、二次粒子サイズは、動的光散乱(DLS)で測定されるキュムラント平均又はZ平均粒子サイズとして表すことができる。二次粒子サイズの測定値は、希薄試料中でより正確であり、したがって、より高濃度を評価するために、より高濃度で良好な分散物が形成された後、分散物は希釈されて、二次粒子サイズの測定が行われる。Z平均粒子サイズは、粒子サイズの関数としての散乱強度加重分布に基づいている。散乱強度は6乗の粒径の関数であり、したがって、大きな粒子ははるかに強く散乱する。この分布の評価は、ISO International Standard 13321, Methods for Determination of Particle Size Distribution Part 8: Photon Correlation Spectroscopy, 1996(参照のため本明細書に組み込まれる)に規定されている。しかし、小さな粒子は、分散物に、その容積寄与に比べて小さい強度で光を散乱する。所望であれば、強度加重分布は、容積加重分布に変換することができる。ナノスケール粒子については、容積に基づく分布は、Mie理論を用いた強度分布から評価することができる。容積平均粒子サイズは、容積に基づく粒子サイズ分布から評価することができる。二次粒子サイズ分布の操作のさらなる説明は、Malvern Instruments−DLS Technical Note MRK656−01(参照のため本明細書に組み込まれる)で見つけることができる。一般的な事項として、粒子径の3乗による容積平均粒子サイズのスケーリングと平均粒子径の6乗による散乱強度の平均値(Z平均)により、これらの測定値は、小さな粒子よりも大きな粒子にかなり重点を提供することができる。
【0058】
いくつかの実施態様において、Z平均粒子サイズは約1ミクロン以下であり、さらなる実施態様において約250nm以下であり、追加の実施態様において約200nm以下であり、いくつかの実施態様において約40nm〜約150nmであり、他の実施態様において約45nm〜約125nmであり、さらなる実施態様において約50nm〜約100nmである。特にいくつかの印刷用途のために、良好な印刷特性は一般的に、約200nm以下のZ平均粒子サイズと相関することが観察されている。ある程度の融合を示す一次粒子については、Z平均分散粒子サイズの絶対値は、シリコン系ナノ粒子分布の加工特性のために、依然として非常に重要である。当業者であれば、上記の明示的範囲内の二次粒子サイズの追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0059】
粒子サイズ分布に関して、いくつかの実施態様において、実質的にすべての二次粒子は、Z平均二次粒子サイズの5倍超、さらなる実施態様においてZ平均二次粒子サイズの約4倍以下、及び他の実施態様においてZ平均二次粒子サイズの約3倍以下に対応する、有効に強度の無い散乱結果からのサイズ分布を有することができる。さらに、DLS光散乱粒子サイズ分布は、いくつかの実施態様において、Z平均粒子サイズの約50パーセント以下の半値全幅を有することができる。また二次粒子は、粒子の少なくとも約95%がZ平均粒子サイズの約40パーセント超の、及びZ平均粒子サイズの約250パーセント未満の直径を有するような、サイズ分布を有することができる。さらなる実施態様において、二次粒子は、粒子の少なくとも約95%がZ平均粒子サイズの約60パーセント超の、及びZ平均粒子サイズの約200パーセント未満の粒子サイズを有するような、粒子サイズ分布を有することができる。当業者であれば、上記の明示的範囲内の粒子サイズ及び分布の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0060】
さらに、静的分散体の単独での、分散体特性又はインク特性の測定、例えば光散乱測定による測定では、インクの印刷特性の十分な特徴付けを提供するようには思えないことが発見されている。特に、レオロジー測定も、印刷品質に対応することができるインクの堆積特性に関連する重要な情報を提供する。レオロジーは、液体の流動特性に関連する。したがって、原理的には、レオロジー測定は、静的な粒子分散物の光散乱測定からは得られない追加情報を提供する。
【0061】
レオロジー測定は、粘度の測定を含む。粘度は、せん断応力に対する流体の抵抗の尺度である。一般的に、加えられた力(すなわちせん断応力)に応答して流体が変形する率(すなわち、せん断速度)は、試験されている流体の粘度を決定する。ニュートン流体の場合、粘度は一定であり、したがって、せん断速度はせん断応力とともに変化する。非ニュートン流体の場合、粘度は、せん断応力と非直線的に変化し、例えば、ずり粘性(せん断の増加に伴う粘度の低下)がある。インクの粘度は、レオメーターを用いて測定することができる。レオメーターのいくつかの実施態様において、試験される液体は、駆動シリンダとフリーシリンダとの間の環状部に配置される。次に、駆動シリンダを回転させることにより、せん断応力がインクに適用される。環状部内の移動するインクは、適用されたせん断応力に応じて、フリーシリンダの回転を開始させる。次に、せん断速度、したがって流体の粘度を、フリーシリンダの回転数から算出することができる。さらに、適用されるせん断応力は、駆動シリンダの回転数を調整することにより調整できるため、レオメーターを使用して、広範囲のせん断応力にわたって流体の粘度を得ることができる。レオメーターは、例えばBrookfield Engineering Laboratories,Inc.(Middleboro,MA)などの商業的供給源から広く入手可能である。
【0062】
一般に、粒子表面の化学的性質は、分散物を形成するプロセスに影響を与える。具体的には、分散する液体と粒子表面とが化学的に適合している場合には、粒子を分散させて、小さい二次粒子サイズを形成することは容易であるが、他のパラメータ、例えば密度、粒子表面電荷、溶媒分子構造なども、分散性に直接影響を与える。いくつかの実施態様において、液体は、印刷プロセスなどの、分散物の特定の用途のために、適切であるように選択することができる。シランを用いて合成したシリコンについて、得られるシリコンは一般に部分的に水素化されており、すなわち、シリコンは材料中に少量の水素を含む。この水素又は水素の一部がSi−H結合として表面にあるかどうかは、一般に不明である。しかし、少量の水素の存在は、現在、特に重要ではないようである。いくつかの実施態様において、元素シリコンナノ粒子は、例えば空気への曝露を介して、表面が酸化されることができる。これらの実施態様において、水素は、酸化プロセス中に利用可能である場合、表面はSi−O−Si構造又はSi−OH基中に架橋酸素原子を有することができる。周囲雰囲気への暴露を防止することにより、粒子の表面酸化は、例えば粒子中の約2重量%以下に、実質的に低下させることができる。有意な酸化無しでも、レーザー熱分解によって形成される元素シリコンナノ粒子は、適切に選択された溶媒中で、粒子を変性することなく、化学的に結合した有機化合物と良好な分散物を形成するのに適していることがわかっている。
【0063】
いくつかの実施態様において、粒子の表面特性は、粒子表面に化学的に結合した表面改質組成物を用いる粒子の表面改質により、改質することができる。しかし、特に興味のあるいくつかの実施態様において、粒子は表面改質されておらず、したがって、非変性粒子がさらなる処理のために堆積される。適切な実施態様において、粒子の表面改質は、粒子の分散性、並びに粒子を分散させるのに適している溶媒に、影響を与え得る。例えば、多くの界面活性剤のようないくつかの表面活性剤は、粒子表面との非結合性相互作用を介して作用し、これらの処理剤は以下にさらに記載されている。いくつかの実施態様において、望ましい特性、特に他の場合には利用できない溶媒中の分散性は、粒子表面に化学結合した表面改質剤の使用を介して得ることができる。粒子の表面の化学的性質は、表面改質剤の選択に影響を与える。シリコン粒子の表面特性を変化させる表面改質剤の使用は、「Silicon/Germanium Particle Inks,Doped Particles,Printing and Processes for Semiconductor Applications」と題するHieslmairらの公開された米国特許出願第2008/0160265号にさらに記載されている。表面改質を行うための任意の組成物は、インク中への金属汚染物質の望ましくない混入を避けるために、適切に低い金属汚染を提供されるべきである。
【0064】
表面改質粒子は、特定の溶媒との使用のために設計することができるが、望ましいインクは、高粒子濃度での表面改質無しで、及び適切な溶媒の選択及び処理を用いて、及び少なくともいくつかの状況では良好な輸送性を用いて形成することができることが、見出された。表面改質なしに所望のインクを形成する能力は、汚染の低いレベルで、所望のデバイス、特に半導体系デバイス、の形成のために有用であり得る。
【0065】
分散物は、選択された用途のために配合することができる。分散物は、分散物内の粒子の特徴付けと共に、組成について特徴付けることができる。一般に、用語インクは、コーティング又は印刷技術を用いて次に堆積される分散物を記述するために使用され、インクは、インクの特性を変更するために追加の添加剤を含んでも含まなくてもよい。
【0066】
本明細書において使用されるとき、安定な分散物は、1時間後に混合を続けなくても沈降しない。いくつかの実施態様において、分散物は、1日後に、さらなる実施態様において1週間後に、追加の混合無しでも粒子の沈降が無い。一般に、十分に分散した粒子を有する分散物は、少なくとも30重量%までの無機粒子の濃度で形成することができる。一般に、いくつかの実施態様において少なくとも約0.05重量%の、他の実施態様において少なくとも約0.25重量%の、追加の実施態様において約0.2重量%〜約25重量%の、さらなる実施態様において約0.25重量%〜約15重量%の、粒子濃度を有する分散物を有することが望ましい。当業者であれば、上記の明示的範囲内の安定時間及び濃度の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。本明細書に記載の粘性多環式アルコールを使用して、良好な印刷特性を有する高粘度及び非ニュートンナノ粒子ペーストは、低ナノ粒子濃度で配合することができ、これは、薄いナノ粒子の堆積物の形成を提供する。
【0067】
分散物は、分散物の特性を変性して特定の用途を促進するために、シリコン系粒子以外に追加の組成物、及び分散液体又は液体混合物を含むことができる。驚くべきことに、本明細書に記載の粘性多環式アルコールを使用して、いくつかの実施態様においてはポリマーを加えないで、レオロジー特性を有効かつ便利に調整することができる。このインクは、いくつかの実施態様において約5重量%以下のポリマーを、更なる実施態様において約2重量%以下のポリマーを、他の実施態様において約1重量%以下のポリマーを、及び追加の実施態様において約0.1重量%以下のポリマーを含む。具体的には、スクリーン印刷ペースト及び他のインクについて、このインクは、ポリマーを加えないで、非常に良好な印刷品質を有することができる。また、他の特性改質剤は、堆積プロセスを促進し、インクの特性に影響を与えるために、分散物に添加することができる。このインクは、非常に低い金属汚染レベルを達成するために配合することができる。適切に選択されたレオロジー特性を有する十分に分散されたインク組成物を用いて、粘性多環式アルコールを有するスクリーン印刷用インクは、複数の印刷サイクルの間にスクリーンの目詰まりを抑制するように配合することができる。
【0068】
粘性多環式アルコールは、対応するインクの印刷性能を向上させることができ、また、印刷後の望ましい処理の改善を提供することもできる。粘性多環式アルコールは、非常に低い金属汚染レベルで得ることができる。異なる粘性多環式アルコールの混合物はまた、所望の特性を得るためのインク配合物に使用することができる。印刷性能に関して、概念は2つの概念に分けることができる:(1)印刷装置に対するインクの性能(例えば、スクリーン印刷機)、及び(2)基材上の印刷要素としてのインクの性能(印刷線、パターン、構造など)。せん断の適用によりインクが基材に転送される印刷装置(例えばスクリーン印刷)のために、より低いせん断速度で比較的高い粘度(例えば絶対粘度)を有し、より高いせん断速度で比較的低い粘度を有するペーストを有することが望ましい。例えば、スクリーン印刷に関して、印刷の前にペーストがスクリーン上に存在している時に、スクリーンを介してインクを印刷するためにせん断を適用する前に、高粘度であることは、ペーストが印刷スクリーンを介してしたたり落ちることを防ぐのを、補助することができる。印刷時に、ペーストがスクリーンを通過するようにせん断が強制的にペーストに適用される場合、スクリーンを介して印刷されるペーストの量を増加させるために、ペーストはより低い粘度を有することが望ましいことがある。印刷された構造はまた、望ましくは高い静粘度を有するペーストから利益を得ることができる。具体的には、高い低せん断限界粘度は、印刷された要素の印刷後の広がりを防止するのを補助することができ、また、印刷された要素の解像度が向上するのを補助することができる。
【0069】
一般に、粘性多環式アルコールは、一般に少なくとも1つの架橋環を有しており、いくつかの実施態様において多環式アルコールは、1つの架橋環を有する3つ以上の環を有する。架橋された環構造はノルボリル(norboryl)基構造を含むことができ、ここでノルボルニル(norbornyl)基は、シクロヘキサンの1,4位に架橋メチレン基を有するシクロヘキサン環を有するビシクロ(2,2,1)ヘプタン又はノルボラン(norborane)の構造を含む。ビニルノルボルニルアルコール又は5−もしくは6−ビニル−2−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタンは、「Vinylnorbornyl Alcohol and Perfume Composition Containing the Same」と題するInoueらの米国特許第4,693,844号(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載された粘性の油状アルコールである、C−8置換架橋環は、「C−8−Substituted l,5−dimethyl−bicyclo[3,2,l]Octane−8−ols」と題するBrunkeらの米国特許第4,582,945号(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。’945特許は、R−を有するC−8置換体を特に記載し、ここで、Rは、エチル、メチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、1−メチル−プロピル、2−メチル−プロピル、アリル、n−ヘキシル、3−メチル−ブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルであり、ここで、生成組成物は、わずかに室温を超える融点を有する油状物又は固体として記載されている。
【0070】
目的の化合物の群は、第3の環がシクロヘキサン環又はノルボルニル基の1つの炭素に結合したボルボリル(borboryl)架橋環基を含む。いくつかの実施態様において、この化合物は不飽和であり、すなわち、2重結合炭素−炭素結合を含まない。架橋メチル基を有する置換ビシクロ−ヘキサンに結合した種々のシクロヘキサンアルコール又はジオール(ノルボルニルシクロヘキシル環の2位の2つのメチル基と3位の1つのメチル基で置換されたイソボルニルシクロヘキサンジオール及びノルボルニルシクロヘキサンジオール)が、「Cyclohexane Diol Composition」と題するHallらの米国特許第4,061,686号(’686特許)(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。’686特許は、シクロヘキサノールに結合したイソボルニル又はイソカンファニル(isocamphanyl)(例えば、トリメチル−2,2,3−ノルボルニル−5−)−3−シクロヘキサノール−1)基を有するいくつかのモノアルコール化合物をさらに記載し、ここで、−OH基は、架橋環に結合した炭素に隣接し、2つの炭素は離れているか又は3つの炭素は離れており、また、Demoleのスイス特許第423058号及びDorskyらの米国特許第3,499,937号中のジオールに似たモノアルコール化合物を参照している。’668特許中の種々の粘性多環式アルコールは、イソボルニルシクロヘキサノール、すなわち3−(5,5,6トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロヘキサノール(イソボルニルシクロヘキサノール)と類似性を有し、これは、他の類似の粘性多環式アルコールのように市販されている。粘性多環式アルコールである11−ヒドロキシ−2,13,13−トリメチル−トリシクロ[6.4.0.12.5]トリデカンは、「Polycyclic Alcohol,Compositions Containing Same and Process Therefor」と題するDorskyらの米国特許第3,499,937号(参照のため本明細書に組み込まれる)中で粘性油として記載されている。シクロヘキサノールと2−エチリデン−5−ノルボルネンの縮合生成物として形成される様々な粘性多環式アルコールは、「Cyclohexanol Derivatives and Fragrance Compositions Containing the Same」と題するFujikuraらの米国特許第4,604,488号(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。’488特許に記載されたアルコールは、様々な位置で2−エチルノルボルニル環構造に結合したシクロヘキサノール環を含有し、官能基の正確な配向は完全には特定されなかった。
【0071】
本明細書に記載の粘性多環式アルコールは、有利には、望ましくは非ニュートン粘度を有する最終的なインクを提供するために、インク配合物中に取り込むことができる。いくつかの実施態様において、粘性多環式アルコールは、それ自体、非ニュートン性レオロジーを有することができる。粘性多環式アルコールは、2s−1のせん断速度で、少なくとも約1Pa・sの粘度;他の実施態様において、少なくとも約5Pa・sの粘度;及び他の実施態様において、少なくとも約10Pa・sの粘度、を有することができる。いくつかの実施態様において。粘性多環式アルコールは、1000s−1のせん断速度で、2s−1での粘度の約90%以下、他の実施態様において約87%以下の粘度、及びさらなる実施態様において、2s−1のせん断での約85%以下の、粘度を有することができる。当業者であれば、上記の明示的範囲内の追加の粘度範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0072】
印刷後の処理の改善に関して、印刷インク、例えばスクリーン印刷ペーストは、妥当な沸点のために、酸素を導入することなく、比較的低い炭素濃度を有する印刷要素をもたらすことができる条件下で、粘性多環式アルコール成分を除去するために処理することができる。特定の用途の設定において、例えば半導体用途におけるシリコン系材料において、比較的低い炭素濃度が望ましい場合がある。本明細書に記載の粘性多環式アルコールは、望ましくは低い沸点を有することができるため、これらは、実質的にアルコールの熱分解又は分解を避ける比較的低温で、印刷要素から実質的に除去することができる。いくつかの実施態様において、粘性多環式アルコールは、約450℃以下の沸点、さらなる実施態様において約400℃以下の沸点、及び他の実施態様において約350℃以下の沸点を有することができる。当業者であれば、上記の明示的範囲内の沸点の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0073】
一般に、望ましいレオロジー特性を提供しながら、シリコンナノ粒子の分散物を安定化するために選択された溶媒系と適合するように、一つ以上の粘性多環式アルコールを選択することができる。いくつかの実施態様において、インクは、約0.1重量%〜約80重量%の、他の実施態様において約0.5重量%〜約65重量%の、及びさらなる実施態様において約1重量%〜約50重量%までの、粘性多環式アルコールの濃度を有することができる。非ニュートン性レオロジーを有するペーストの形成のために、インク中の粘性多環式アルコールの濃度は一般的に、約2重量%〜約75重量%、さらなる実施態様において約5重量%〜約70重量%、及び追加の実施態様において約7重量%〜約65重量%である。適切な堆積のためのニュートンインクの形成のために、粘性多環式アルコールの濃度は、約0.1重量%〜約20重量%、さらなる実施態様において約0.25重量%〜約15重量%、及び他の実施態様において約0.05重量%〜約12重量%であることができる。当業者であれば、上記の明示的範囲内のポリマー添加剤濃度の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0074】
他の潜在的な添加剤は、例えばpH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤などを含む。これらの追加の添加剤は、一般に、約2重量%以下の量で存在する。当業者であれば、上記の明示的範囲内の界面活性剤と添加剤濃度の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0075】
エレクトロニクス用途のために、生成物材料が有効に炭素が存在しなくなるように、特定の処理工程の前又はその最中に、インクの有機成分を除去することが望ましい。粘性多環式アルコールは、約450℃以下、いくつかの実施態様において約400℃以下、及びさらなる実施態様において約200℃〜約350℃、の沸点を有するように選択することができる。当業者であれば、上記の明示的範囲内の沸点の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。これらの適度な沸点に基づいて、粘性多環式アルコールは、適切な温度で印刷後に留去して、アルコールの任意の燃焼又は熱分解無しで、完全に又は実質的に完全に除去することができる。したがって、アルコールを除去するための処理は、比較的低い温度で行うことができ、炭素汚染を低くすることができる。さらに材料は、炭素の除去を促進するために、酸素環境に付される必要は無い。したがって、粘性多環式アルコールの使用は、望ましい処理手法を用いて、望ましいレオロジー制御を提供することができる。
【0076】
分散物/インクの粘度は、シリコン系ナノ粒子濃度、粘性多環式アルコール濃度、他の液体の性質、並びに任意の他の添加剤の存在に依存する。すなわち、粘度の調整を提供するいくつかのパラメータがあり、これらのパラメータは、全体的な所望のインク特性を得るために一緒に調整することができる。一般に、選択されたコーティング又は印刷手法は、適切な粘度範囲を有する。表面張力もまた、特定の印刷用途のために重要なパラメータとなり得る。いくつかの所望のインク配合物について、溶媒混合物の使用は、粘度を制御するために高沸点溶媒(沸点が少なくとも約170℃で、他の実施態様において少なくとも約175℃)を使用しながら、低沸点溶媒(沸点が約165℃以下で、他の実施態様において約160℃以下)の急速な蒸発を提供することができる。一般に高沸点溶媒は、印刷画像の過度のぼやけがないように、よりゆっくりと除去することができる。より高い沸点の溶媒を除去した後、印刷されたシリコン系ナノ粒子は、所望のデバイスに加工することができる。適切な印刷技術は、インクジェットインクのための比較的低粘度から、グラビア印刷インク用の中程度の粘度、及びスクリーン印刷ペースト用の高粘度まで、広い範囲の所望の粘度である。ナノ粒子濃度と粘性多環式アルコールの濃度は、所望のレオロジー特性と、堆積されるナノ粒子の量との、両方を達成するように調整することができる。
【0077】
一般に、ナノ粒子濃度の上昇及び/又は粘性多環式アルコール濃度の上昇は、それぞれインク粘度の上昇をもたらすことができる。これらの濃度のバランスは、堆積されたインクの所望の目標特性を達成するように選択することができるが、トレードオフは完全には釣り合っていない。例えばいくつかの用途のためには、有機物を除去した後に、堆積された材料の厚さを制御する方法として、若干低い濃度のナノ粒子を使用することが望ましいことがある。特に、堆積したシリコン系ナノ粒子のより薄いコーティングを得るために、ナノ粒子に関してインクをより希薄にして、ある定量のインクの堆積とインクの乾燥後に、コーティング率がより低いシリコン系粒子が残るようにすることができる。対応して、インクの粘度を上げるために、より高濃度の粘性多環式アルコールを使用することができるが、粘度を少し調整するために溶媒の調整も使用することもできる。したがって、所望のレオロジーを維持しながら、かつ所望よりも広いコーティング率のシリコン系ナノ粒子を堆積せずに、シリコン系ナノ粒子の充分量の堆積にとって、中程度のナノ粒子濃度は有効となることができる。例えば、スクリーン印刷ペーストでは、ペーストの粘度並びに実用的なコーティング厚の点で、印刷処理には制約がある。したがって、より薄いシリコン粒子の堆積が望まれる場合、スクリーン印刷ペーストは、ナノ粒子を用いてより希薄にすることができ、したがって、他のペースト成分を除去した後に、より少ない量の堆積されたナノ粒子に基づいて、残ったシリコンナノ粒子の堆積物を薄くすることができる。本明細書に記載の方法は、ポリマー濃度が増加している場合に、望ましい低金属汚染を維持するために使用することができる。粘性多環式アルコールに対して比較的多量のナノ粒子を使用して、特定の粘度のインク量からより多量のナノ粒子を堆積させることができ、逆に、ナノ粒子に対して比較的多量の粘性多環式アルコールを使用して、特定の粘度のインク量からより少量のナノ粒子を堆積させることができる。
【0078】
望ましいスピンコーティングインクの粘度と表面張力は、標的膜の所望の特性に関して選択することができる。膜の特性は、特に限定されるものではないが、膜の均一性及び厚さが挙げられる。いくつかのスピンコーティングの実施態様において、分散物/インクは、約0.5センチポアズ(cP)〜約150cP、さらなる実施態様において約1〜約100cP、及び追加の実施態様において約2cP〜約75cPの粘度を有することができる。いくつかの実施態様において、スピンコーティング分散物/インクは、約20〜約100ダイン/cmの表面張力を有することができる。いくつかのスプレーコーティングインクについて、粘度は、0.1cP(mPa・s)〜約100cP、他の実施態様において約0.5cP〜約50cP、さらなる実施態様において約1cP〜約30cPでもよい。当業者であれば、上記の明示的範囲内の粘度と表面張力の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0079】
標的の流動特性を達成するために、対応して液体の組成を調整することができる。スプレーコーティングインクについて、シリコン粒子の濃度は一般に、少なくとも約0.25重量%、さらなる実施態様において少なくとも約2.5重量%、追加の実施態様において約1重量%〜約15重量%である。いくつかの実施態様において、スプレーコーティングインクは、アルコールと極性非プロトン性溶媒を含むことができる。アルコールは、イソプロパノール、エタノール、メタノール、又はこれらの組み合わせなどの、比較的低沸点の溶媒であることができる。いくつかの実施態様において適切な非プロトン性溶媒は、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一般に、このインクは、約10重量%〜約70重量%のアルコール、及びさらなる実施態様において約20重量%〜約50重量%のアルコールを含有することができる、同様にこのインクは、約30重量%〜約80重量%の極性非プロトン性溶媒、追加の実施態様において約40重量%〜約70重量%の極性非プロトン性溶媒を含むことができる。当業者であれば、上記の明示的範囲内の追加の濃度と特性の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0080】
スクリーン印刷の場合、配合物はスクリーンを介して輸送することができるペーストとして調製される。スクリーンは、一般に繰り返し使用される。スクリーンの損傷及び/又はペーストによる目詰まりの回避を補助するために、ペーストの溶媒系は、所望の印刷特性とスクリーンへの適合性の両方に適合するよう選択すべきである。沸点が約165℃以下の好適な低沸点溶媒は、例えば、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、アセトン、又はこれらの組み合わせを含む。沸点が少なくとも約170℃であり、一般的に約400℃未満の適切な高沸点溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、N−メチルピロリドン、テルピネオール、例えば、α−テルピネオール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール(カルビトール)、グリコールエーテル類、例えばブチルセロソルブ、又はこれらの組み合わせが挙げられる。高沸点溶媒への参照は、上記で特定した異なる粘性多環式アルコールを除外する。スクリーン印刷ペーストは、界面活性剤及び/又は粘度調整剤をさらに含むことができる。
【0081】
一般的には、スクリーン印刷インク又はペーストは、低せん断速度で高粘度を有し、非ニュートン性である。具体的には、ペーストは低せん断速度で高粘度を有し、高せん断速度で有意に低い粘度を有する。ペーストは、印刷サイクルの間に画面上で安定であり、基材にスクリーンを通してインクを輸送するために、高いせん断を適用して印刷することができるため、この非ニュートン性挙動は、印刷処理を制御するために有効に使用することができる。
【0082】
いくつかの実施態様において、元素シリコンのスクリーン印刷ペーストは、2s−1のせん断で、約1Pa・s(ポアズ)〜約450Pa・sの、さらなる実施態様において約2Pa・s〜約350Pa・sの、及び追加の実施態様において約3Pa・s〜約300Pa・sの、平均粘度を有することができる。さらにペーストは、1000s−1のせん断で、約5Pa・s以下の、他の実施態様において約0.001Pa・s〜約4Pa・sの、さらなる実施態様において約0.01Pa・s〜約3.5Pa・sの、及び追加の実施態様において約0.02Pa・s〜約3Pa・sの平均粘度を有することができる。スクリーン印刷プロセスは粘度の変化に依存しているため、高せん断平均粘度に対する低せん断の比もまた重要である。高せん断平均粘度に対する低せん断平均粘度の比は、いくつかの実施態様においてでは約1.55〜約500、さらなる実施態様において約2〜約100、及び他の実施態様において約2.5〜約50であり得る。当業者であれば、上記の明示的範囲内のペーストレオロジーのパラメータの追加の濃度と特性の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0083】
スクリーン印刷インクは一般的に、約0.1重量%〜約25重量%のシリコン粒子、さらなる実施態様において約0.25重量%〜約20重量%のシリコン粒子、追加の実施態様において約0.5重量%〜約18重量%、及び他の実施態様において約0.75重量%〜約15重量%のシリコン粒子の、シリコン粒子濃度を有することができる。粘性多環式アルコールを含有するペーストを用いて、良好なスクリーン印刷特性を得ながら、より低い濃度のナノ粒子を使用することができることが見出された。また、スクリーン印刷インクは、約0〜約10重量%の低沸点溶媒、さらなる実施態様において約0.5〜約8、及び他の実施態様において約1〜約7重量%の低沸点溶媒、並びに、いくつかの実施態様において約45重量%〜約97重量%の高沸点溶媒、さらなる実施態様において約50重量%〜約95重量%の高沸点溶媒、及び他の実施態様において約55重量%〜約90重量%の高沸点溶媒を有することができる。非ニュートン性ペースト用の粘性多環式アルコールの濃度は、上記に記載されている。当業者であれば、上記の明示的範囲内のシリコンペーストの組成物の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0084】
グラビア印刷に適したインクの特性範囲は、インクジェットインクとスクリーン印刷ペーストの特性との中間である。グラビアインクの特性は、上記で引用した’905出願にさらに記載されている。
【0085】
シリコン系ナノ粒子インクは、鉄、クロム、銅、ニッケル汚染を、10億重量部当たり約250重量部(ppb)以下で、さらなる実施態様において約150ppb以下で、追加の実施態様において約100ppb以下で、他の実施態様において約50ppb以下で、及びいくつかの実施態様において約25ppb以下で、有することができる。さらに、シリコン系ナノ粒子インクは、各金属について、約500ppb以下の、さらなる実施態様において約400ppb以下の、他の実施態様において約300ppb以下の、他の実施態様において約300ppb以下の、追加の実施態様において約200ppb以下の、及びいくつかの実施態様において約100ppb以下の、汚染レベルを有することができる。またペーストは、約750ppb以下の、追加の実施態様において約500ppb以下の、さらなる実施態様において約250ppb以下の、いくつかの実施態様において約200ppb以下の、及び他の実施態様において約100ppb以下の、総遷移金属汚染レベルを有することができる。当業者であれば、上記の明示的範囲内のインクの汚染レベルの追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0086】
インクは、高濃度にドープされたシリコン系粒子を含有することができるが、インク中に液体ドーパント源をさらに含むことが望ましいことがある。適切な液体ドーパント源としては、例えば、有機リン化合物(例えば、ホスホネート、例えばエチドロン酸及びジメチルメチルホスホネート、有機ホスフィンオキシド、オルガノホスファン類、例えばジフェニルホスフィン、又はオルガノホスフェート類、例えばトリオクチルホスフェート)、有機ホウ素化合物(テトラフェニルボレート又はトリフェニルホウ素)、リン酸、ホウ酸、これらの組み合わせなどが挙げられる。一般的にはインクは、約10重量%以下の液体ドーパント組成物、並びにこの明示的な範囲内の任意の及び全ての部分範囲を含むことができる。
【0087】
ドーパントドライブイン用途には、ドーパントドライブインプロセスを促進するために、インクのさらなる成分を含むことが望ましいことがある。具体的には、インクは、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)などのシリコン酸化物前駆体を含むことができる。TEOSは、適切なpHで水を用いる加水分解反応でシリカに変換することができる。石英ガラスは、堆積した粒子上の蒸気相からのドーパントの少なくとも部分的な分離を介して、及び/又はウェハー表面への固相拡散経路を増大させるために、シリコン基材への、高度にドープされたシリコン粒子からのドーパントドライブインを促進することができる。シリコンインク中のスピンオンガラス及びシリカゾルゲルの代替的又は追加的使用は、「Silicon Substrates With Doped Surface Contacts Formed From Doped Silicon Inks and Corresponding Processes」と題するLiuらの公開された米国仮特許出願第2012/0193769号(’769出願)(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0088】
また、元素シリコンナノ粒子インクは、シリカエッチング剤をさらに含むことができる。従来のシリカウェットエッチング剤は、フッ化水素(HF)の水溶液を含有し、これは、重フッ化アンモニウム(NHHF)及び/又はフッ化アンモニウム(NHF)で緩衝化することができる。フッ化水素はアルコールに可溶性であり、そしてフッ化アンモニウムはアルコールにわずかに可溶性である。HFの濃度、及び任意選択的にフッ化アンモニウムの濃度は、シリコンインクのための所望の石英エッチング速度を達成するように選択することができる。シリカエッチング組成物はまた、シリコン窒化物及びシリコン酸窒化物の薄い層をエッチングするのに有効であり得ることも留意されたい。本明細書でエッチング組成物が参照される場合、この組成物は、文脈に特に記載されていない場合でも、これらの他のエッチング機能で有効であり得ることが理解されるであろう。いくつかの実施態様において、インクは少なくとも約1重量%のシリカエッチング剤を含むことができる。特定の堆積法に応じて適宜他のインクについて、本明細書に記載したように、シリコン粒子濃度及び他のインク成分の濃度は、一般的に選択することができる。より迅速なエッチングのために、インクは飽和HF溶液を含むことができる。他の有用なエッチング剤には、例えば、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、エチレンジアミン−ピロカテコール、エタノールアミン−没食子酸、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
シリカエッチング剤を有するシリコンナノ粒子インクは、シリコン基材が酸化物層、一般的にはシリコン酸化物、を有するシリコン基材上に、ドープされたか又はドープされていないシリコンナノ粒子の堆積物を適用するために、使用することができる。すなわち、別々のエッチング工程を省略することができる。シリカのエッチング剤は、酸化物層をエッチングして、酸化物層の下のシリコン表面をインクに露出することができる。一般にインクは、本明細書に記載の様々なコーティング及び印刷方法、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷、スピンコーティング、ナイフエッジコーティングなどを使用して堆積させることができる。さらなる処理中に、シリカのエッチング剤は一般に、適度な温度に加熱することにより、蒸発するか、ガス成分に分解される。したがって、組成物は、酸化物層をエッチングするために使用することができ、次に適度な温度に加熱してシリコン粒子のコーティングを残し、一方、溶媒を蒸発させ、それに応じてエッチング剤を除去することができる。いくつかの実施態様において、堆積されたインクは、約50℃〜約300℃の温度に加熱して、溶媒を蒸発させ、シリカのエッチング剤を除去することができる。
【0090】
材料の乾燥後、シリコン系ナノ粒子コーティングは残り、これは、ドーパントの輸送のために、及び/又はシリコンナノ粒子について、シリカエッチング剤無しでシリコンインクと同様の基材上にシリコン塊を形成するために、使用することができる。すなわち、シリカエッチング剤とシリコンナノ粒子を組み合わせたインク材料は、効果的にシリコン酸化被膜をエッチングしてシリコンの下層を露出させるために、使用することができ、このシリコン下層は、次にシリコンナノ粒子堆積物と接触し、堆積された材料の乾燥後、堆積する。インク堆積物を乾燥させた後に残っているシリコンナノ粒子の堆積物は、シリコンナノ粒子を融合するか、及び/又はシリコン基材中にドーパント原子を駆動するように、さらに処理することができる。シリコン原子を融合するためのさらなる処理は一般的に、約700℃〜約1200℃の温度で実施することができる。
【0091】
他の実施態様において、シリカナノ粒子は、インク/分散物中のシリコンナノ粒子と組み合わされる。シリコンナノ粒子とシリカナノ粒子の相対量は、インクの特定の用途に基づいて選択することができ、本明細書の他の箇所に記載のシリコンナノ粒子の濃度の全体的な範囲は、これらの混合された粒子インクにも同等に適用することができる。いくつかの実施態様においてインクは、少なくとも約0.01重量%のシリカ、さらなる実施態様において約0.025〜約10重量%のシリカ、及び他の実施態様において約0.05〜約5重量%のシリカを含むことができる。いくつかの実施態様において、シリカナノ粒子対シリコンナノ粒子の重量比は、少なくとも約0.01であり、さらなる実施態様において約0.025から約1.5であり、及び追加の実施態様において約0.05〜約1である。当業者であれば、上記の明示的範囲内のシリカ濃度とシリカ対シリコン比の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。シリコンナノ粒子、シリカナノ粒子、シリコンナノ粒子とシリカナノ粒子の両方又はこれらの一部も、ドープされてもよい。シリカナノ粒子は、インクの粘度を上昇させるだけでなく、ドーパントドライブインを促進することができる、より高密度に充填された堆積物の形成を補助するために使用することができる。
【0092】
本明細書に記載のように、シリコン系ナノ粒子インクは、商業的用途に適した印刷プロセスのために配合することができる。いくつかの実施態様において、有機化合物によるシリコンナノ粒子表面の化学変性無しで良好な分散物を形成する能力は、印刷後の粒子の処理を簡略化する。対応するデバイスへのインクの処理技術は、具体的な用途に基づいて選択することができる。非常に低い金属汚染物質レベルでインクを形成する能力は、いくつかの実施態様において、インクを用いて形成されたデバイスの性能を直接向上させることができる。すなわち、金属汚染物質の少ないシリコン系ナノ粒子インクの利用可用性は、より広い範囲の用途のためのインクの適用性を提供する。
【0093】
《シリコン系ナノ粒子インクを形成するための処理》
粘性多環式アルコール成分を用いたシリコン系ナノ粒子インクを形成するための処理を、所望の堆積特性を達成するために、かつ非常に低い金属汚染レベルを有するインクを形成するために、設計することができる。改良された堆積特性を有する望ましいインクの形成は、強力な混合工程(例えば、超音波処理工程、及び任意の遠心分離工程、及びいくつかの実施態様において、これらの工程の1つ又は2つ)を含むことができる、ナノ粒子分散物の初期形成を含むことができる。いくつかの実施態様では、最初の遠心分離工程の上清は、2回目の遠心分離を受け、2回目の上清は、ナノ粒子インクを形成するために使用され、遠心分離プロセスは、所望であれば3回以上繰り返すことができる。インクを形成するためのさらなる処理(例えばポリマーの添加)の前のナノ粒子の良好な初期分散物の形成は、後続の処理工程を促進することができ、望ましくは、標的インクの特性に影響を与えることができる。合成された粒子の初期の分散は、一般に、粒子の表面の化学的性質に基づいて、粒子と比較的適合性のある溶媒を選択することを含む。
【0094】
一般に、ナノ粒子の良好な分散物の形成を促進するための強力な混合工程を有することが望ましい。いくつかの実施態様では、強力な混合工程は、遠心分離工程と組み合わせて使用することができ、これは、金属汚染物質を除去するためにも、分散に耐性のナノ粒子の一部を除去するためにも、有効であり得る。一般に、遠心分離が有効であることができるように、遠心分離の実施前には顕著な混合を行うべきである。さらに、遠心分離工程の後に付加的な混合を行うことができる。選択された順序で行われる混合工程及び/又は遠心分離工程は、複数存在してもよい。粒子特性に依存して、所望の分散特性を達成するために、特定の粒子処理順序を選択することができる。適切なプロセスの一般的な議論を以下に記載する。ポリマーを用いて、元素シリコンナノ粒子スピンコーティングインク及びスクリーン印刷ペーストを形成するための処理に関するさらなる議論は、「Silicon/Germanium Nanoparticle Inks and Methods of Forming Inks With Desired Printing Properties」と題するLiらの公開された米国特許出願第2013/0189831号(’831出願)(参照のため本明細書に組み込まれる)に見いだされる。
【0095】
初期混合は、機械的混合及び/又は超音波混合を含むことができる。機械的混合は、特に限定されるものではないが、拍動、攪拌、及び/又は遠心遊星混合を含むことができる。いくつかの実施態様において、遠心遊星混合は、粒子の凝集を低減するための機械的混合法として、特に有効であることが示されているが、その他の初期の混合方法もまた、望ましくは粒子凝集を減少させることができる。初期混合を行うための手順は、得られるインクの濃度に顕著な影響を与えることができる。具体的には、初期混合工程は、その後の遠心分離工程の後に懸濁されたまま残る粒子の量に影響を与える。初期混合は、複数の別個の混合工程を含むことができ、これらは、品質が同様であってもなくてもよい。
【0096】
遠心遊星混合では、混合される材料は、それ自身の軸を中心に回転する容器に入れられ、容器自体はミキサーの別の軸を中心に回転して螺旋状の対流を発生させ、容器の内容物を混合する。このミキサーは、二軸スクリュー押出機中のような強力なせん断力を適用せずに、強力な混合条件を提供する。遠心遊星混合器は、THINKY USA.,Inc.(Laguna Hills,CA)などの商業的供給源から入手可能である。いくつかの実施態様において、合成された粒子と溶媒との混合物は、遠心遊星混合器中で約200rpm〜約10,000rpmで、そして他の実施態様において、約500rpm〜約8000rpmでまず混合される。いくつかの実施態様において、合成された粒子としての混合物はまず、遠心遊星混合器中で、例えば最大約1時間、及び他の実施態様において、約1分〜約30分混合される。当業者であれば、上記の明示的範囲内の遠心頻度と時間の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0097】
超音波処理は一般に、特に限定されるものではないが、浴超音波処理、プローブ超音波処理、超音波キャビテーション混合、これらの組み合わせなどを含むことができる。超音波処理プロセスは、一般に超音波周波数で音波の伝播を伴い、これが、液体中の空洞形成と得られる気泡の激しい崩壊をもたらす。ある範囲の商用超音波処理装置が利用可能である。浴及びプローブ超音波処理はまた、例えば低温で超音波処理を行うように、周囲の浴の温度を制御することにより、初期混合時の便利な温度制御を可能にすることができる。いくつかの実施態様において、混合物は約20時間以下超音波処理され、他の実施態様において約5時間以下、及びさらなる実施態様において約5分〜約30分超音波処理される。当業者であれば、上記の明示的範囲内の超音波処理時間の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0098】
一般に、分散物は、分散の特性を改善するために遠心分離することができる。ナノ粒子分散物の遠心分離は、本明細書に記載の非常に低い金属汚染を有する高純度の分散物を形成するのに有用であり得ることが見出されている。シリコン系ナノ粒子の合理的な画分が分散されたままであるが、汚染物質及び比較的乏しく分散した固体成分が遠心分離容器の底に沈降するように、遠心分離パラメータベースを選択することができる。
【0099】
分散特性の大きな改善を得るために、遠心分離は複数の遠心分離工程を含むことができ、各次の工程は、前工程と同じか又は異なる遠心分離パラメータを用いて実行される。いくつかの実施態様において、上清は、各遠心分離工程の後にデカントすることができるか、又は沈降した汚染物質から同様に分離し、続いて、その後の遠心分離工程において遠心分離することができる。複数の遠心分離工程を含む実施態様の遠心分離工程の間に、追加の混合又は他の処理工程を行うことができる。上清は、インクのさらなる処理又は使用のための遠心分離後デカントすることができるか、又は、更なる処理のために沈降した汚染物質から同様に分離することができる。いくつかの実施態様において、分散物は、約3000回転/分(rpm)〜15000rpmで遠心分離され、さらなる実施態様において約4000rpm〜約14000rpmで、及び他の実施態様において約5000rpm〜約13000rpmで遠心分離される。いくつかの実施態様において、分散物は約5分〜約2時間遠心分離され、さらなる実施態様において約10分〜約1.75時間、及び他の実施態様において約15分〜約1.5時間遠心分離される。当業者であれば、上記の明示的範囲内の遠心頻度と時間の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0100】
遠心分離後、分散物をさらに、遠心分離後の超音波処理に付すことが望ましいことがある。遠心分離後の超音波処理は、いくつかのシリコン系ナノ粒子のための高品質のインクの形成を補助することができることが見出されている。遠心分離後の超音波処理は、上記のように超音波処理の1つ以上の選択された形態を含むことができる。遠心分離後の浴超音波処理に関して、いくつかの実施態様において、分散物は約5時間以下超音波処理され、他の実施態様において約5分〜約3.5時間、さらなる実施態様において約10分〜約2時間、及びさらに他の実施態様において約15分〜約1.5時間超音波処理される。当業者であれば、上記の明示的範囲内の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。遠心分離後の超音波処理は、上記のような温度範囲と超音波周波数で行うことができる。インクが遠心分離後の超音波処理に付されても付されなくても、インクは、試料をホモジナイズするために遠心遊星混合などに付すことができる。
【0101】
粒子分散の安定性を維持するために、特定の添加剤を適切な順序で添加することができる。一般に添加剤は、シリコンナノ粒子分散物を遠心分離後に添加することができる。一部の混合は、インク組成物中に添加剤を分配するために行われる。当業者は、経験的に本明細書の教示に基づいて、添加剤と混合条件を選択することができる。
【0102】
一般に、乾燥ナノ粒子を液体に添加し、次に、強力な混合条件に付すことができる。処理を促進するために、粘性多環式アルコールは、他の選択された溶媒を用いて形成されたナノ粒子分散物に添加することができる。粘性多環式アルコールをナノ粒子分散物に添加後、適切な混合を適用することができる。
【0103】
特定の用途では、インクの配合に使用されるインク並びに対応する液体のかなり特異的な標的特性があり得る。分散工程中の適切な段階では、分散物中の溶媒を変更することが望ましいことがある。また、良好な分散物を形成するために使用される初期濃度に対して、分散物/インクの粒子濃度を上昇させることが望ましいこともある。
【0104】
溶媒組成物は一般に、処理中の任意の便利な時点にだけでなく、全体的な処理中の複数の時点で変更することができる。例えば、いくつかの実施態様において、選択された濃度の溶媒混合物は、最初の混合工程の後に形成することができる。また、溶媒の交換と組み合わせて、追加の混合工程は含めることができ、溶媒変更は、複数の遠心分離工程の間に行うことができる。溶媒を交換するための一つの手法は、分散物を不安定化させる液体の添加を含む。次に液体混合物は、実質的にデカンテーション等により粒子から分離することができる。次に粒子は、新しく選択された液体中に再分散される。溶媒を変更するためのこの手法は、「Silicon/Germanium Particle Inks, Doped Particles, Printing and Processes for Semiconductor Applications」と題するHieslmairらの公開された米国特許出願第2008/0160265号(現在は米国特許第8,632,702号)(参照のため本明細書に組み込まれる)で議論されている。
【0105】
粒子濃度の上昇に関して、溶媒は蒸発によって除去して、濃度を上昇させることができる。この溶媒除去は一般に、分散物を不安定にすることなく、適切に行うことができる。低沸点溶媒成分は、蒸発により優先的に除去することができる。標的溶媒混合物を得るために、蒸発とさらなる溶媒添加の組み合わせを使用することができる。溶媒混合物は、それぞれがインクに望ましい特性に寄与する複数の液体を有することができるため、溶媒混合物は、インク組成物の形成に特に有用であり得る。いくつかの実施態様において、低沸点溶媒成分は、印刷後比較的迅速に蒸発することができ、さらなる処理及び硬化の前に、印刷されたインクを安定させる。粘度を調整して、印刷後の拡散を制限するために、高温溶媒成分を使用することができる。すなわち、多くの印刷用途のために、溶媒混合物が望ましい。全体的な溶媒組成は、所望のインク特性と粒子濃度を与えるように調整することができる。
【0106】
適切な実施態様において、溶媒混合物の設計は、分散物の初期形成後に良好な分散性を維持する能力に基づくことができる。すなわち、所望の特性を有するインクを形成するための望ましい手法は、粒子の良好な分散を形成し、溶媒の混合を通して粒子の良好な分散を維持することである。溶媒の混合物は、異なる液体が組合わさって、互いに液体の混和性又は溶解性を介して単相を形成するように、選択される。いくつかの実施態様において、合成された粒子をまず溶媒の混合物中に分散させて、分散物を形成することが望ましい。いくつかの実施態様において、最初の混合後の分散物に追加の溶媒を添加することができる。一般に溶媒は、分散物を不安定化することなく、分散物に添加することができる。しかし、溶媒の添加後に、分散物をさらに混合することが望ましい。同様に、粘性多環式アルコールは、分散されたナノ粒子に適宜添加して、所望のインク/ペースト組成物を形成することができる。
【0107】
《インク堆積及び処理》
シリコン系ナノ粒子インクは、基材上に分散物の所望の分布を達成する選択された手法を使用して堆積させることができる。特に興味のあるインクは、粘性多環式アルコールを含有し、シリコン系ナノ粒子ペーストは特に重要である。一般に、表面にインクを適用するために、様々なコーティング及び印刷技術を使用することができる。コーティング方法は、比較的短時間で、インクで大きな表面積を均一にカバーするために特に効率的であり得る。選択された印刷手法を使用して、適度な解像度でパターンを形成することができる。いくつかの実施態様において、コーティング及び/又は印刷プロセスは、インクの比較的厚い堆積物を得るために、かつ/又は重複パターンを形成するために、繰り返すことができる。好適な基材としては、例えばポリマー、例えばポリシロキサン類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリエチレン類、ポリカーボネート類、ポリエステル類、これらの組み合わせなど、セラミック基材、例えば石英ガラス、及び半導体基材、例えばシリコンやゲルマニウム基材が挙げられる。基材の組成は、分散物/インクの堆積後の処理オプションの適切な範囲、並びに得られる構造に適した用途に影響を与える。堆積後、堆積した材料は、所望のデバイス又は状態に、さらに加工することができる。
【0108】
多くの用途のために、シリコン基材を用いることが望ましい。適切なシリコン基材は、例えばシリコンインゴットから切断することができるシリコンウェハー、又は当該技術分野で知られているもののような他のシリコン構造物を含む。シリコンウェハーは市販されている。他の実施態様において、適切な基材としては、例えば「Thin Silicon or Germanium Sheets and Photovoltaics Formed From Thin Sheets」と題するHieslmairらの公開された米国特許出願第2007/0212510A(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されたような、フォイルなどのシリコン/ゲルマニウムの種々の薄いシートがある。
【0109】
各印刷/コーティング工程は、パターン化を含んでも含まなくてもよい。インクは乾燥していても乾燥していなくてもよく、又は、各コーティング及び/又は印刷工程の間に部分的に乾燥されてもよい。シーケンシャルパターン化印刷工程は一般的に、最初に堆積されたインク材料上への堆積を含む。その後の堆積物は、最初に堆積した材料と整合してもしなくてもよく、さらに後に堆積された材料のパターンは、以前に堆積された層と整合してもしなくてもよい。すなわち、インクの堆積物のサブセットに、複数の層が存在することができる。堆積インクの所望の厚さを得るために、コーティング又は印刷プロセスを繰り返して、対応するより大きな厚さを有するインクの複数の層を形成することができる。いくつかの実施態様において、印刷/コーティングは、全部で2回の印刷/コーティング工程、3回の印刷/コーティング工程、4回の印刷/コーティング工程、又は5回以上の印刷/コーティング工程を繰り返すことができる。しかしながら、有機成分を乾燥及び除去した後に印刷堆積物の厚さを低減するために、低下したナノ粒子負荷を有するインクを形成するために、ポリマーを使用することができる。
【0110】
分散物の適用のために適切なコーティング手法は、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ナイフエッジコーティング、押出成形等が挙げられる。一般に、任意の適切なコーティング厚を適用することができるが、特に興味のある実施態様においては、平均コーティング厚は、約10nm〜約500ミクロン、いくつかの実施態様において約25nm〜約400ミクロン、及びさらなる実施態様において約50nm〜約250ミクロンの範囲であり得る。いくつかの実施態様において、適切な電子的特性は低平均コーティング厚により達成することができ、これは、材料の使用及び対応するコストを節約することができる。いくつかの実施態様において、平均コーティング厚は、約100nm〜約1.5ミクロン、さらなる実施態様において約125nm〜約1ミクロン、追加の実施態様において約150nm〜約700nmであることができる。当業者であれば、上記の特定の範囲内の追加の厚さ範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。この厚さの範囲は、基材の一部のみをカバーしてもよい印刷技術を使用して、同様に適用することができる。
【0111】
スピンコーティングは、基材の少なくとも一部の上にインクの堆積を含有し、基材を回転させて、堆積したインクで基材表面をコーティングする。基材の回転数並びにスピンコーティング時間は、インク粘度並びに得られるコーティングの所望の均一性と厚さを参照して選択することができる。基材は、単一の回転数で回転することができ、又はそれは、同じ又は異なる時間、連続的に異なる回転数で回転することができる。
【0112】
ナイフエッジコーティングでは、乾燥及び/又はさらに処理したコーティングが、コーティングの最終的な所望の厚さを有するように、選択された厚さで基材表面にインクを堆積させることにより、基材はコーティングされる。ナイフエッジコーティング用のインクは、比較的粘性があってもよく、本明細書に記載のポリマーを含むインクは、ナイフエッジコーティング用途に有用であり得る。ナイフの刃と基材表面との間の距離が、コーティングの選択された初期厚さに対応するように、鋭いエッジは基材上に懸架される。次に基材は、基材がブレードを通過する時、堆積インクが所望の厚さに低減されるように、ナイフに対して移動される。基材の移動速度は、形成される膜の所望の品質並びにインク特性に基づいて、選択することができる。例えば、速すぎる塗布速度は、ナイフエッジの下を通過する時、インクの圧力の望ましくない上昇により、形成されるコーティングに悪影響を与えることがある。より遅いコーティング速度は、表面上のインクのより長い滞留時間をもたらし、ナイフエッジを通過する前にインクからの溶媒の望ましくない蒸発をもたらすことがある。基材の移動速度の選択は、これらと他の因子(特に限定されるものではないが、所望のコーティング厚、インクの粘度、及びナイフの刃の幾何学的形状)のバランスに基づく。
【0113】
同様に、ある範囲の印刷技術を使用して、分散物/インクを基材上のパターンに印刷することができる。適切な印刷技術としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、平版印刷、グラビア印刷等がある。印刷技術の選択は、例えば、資本コスト、全体的な製造プロセスへの取り込みの容易さ、処理コスト、印刷構造の解像度、印刷時間等などの要因に影響され得る。本明細書中に記載されるポリマーを含むインクは、スクリーン印刷ペーストに特に有効である。
【0114】
スクリーン印刷は、いくつかの用途のシリコンインクを印刷するための望ましい特徴を提供することができる。スクリーン印刷装置は市販されており、適度な解像度を含む様々な用途のために広く使用されている。本明細書に記載されるシリコン系粒子及び方法は、以下の実施例で示すように、スクリーン印刷のための良好な性質のペーストを形成するのに適している。スクリーン印刷法では、スクリーン印刷ペーストは一般に、高い低せん断粘度を有する。すなわち、ペーストは印刷工程間の容器内で安定である。印刷工程中に、印刷画面を介して高いせん断力がペーストに強制的に適用される。高せん断力を適用することにより、非ニュートン性ペーストは著しく減少した粘度を有し、したがってペーストはスクリーン中を効果的に流れる。印刷処理の終了時に、ペーストは、せん断の適用なしに再び載置される。
【0115】
一般に、堆積後、液体は蒸発して、シリコン系ナノ粒子とインクの他の非揮発性成分を残す。適切な温度を許容する適切な基材と、有機インク添加剤とを、有するいくつかの実施態様において、添加剤が適切に選択されている場合、上記したように、添加剤を除去するために、適切な雰囲気中で熱を加えることにより、添加剤を除去することができる。溶媒及び任意の添加剤が除去されると、次にシリコン系粒子は、粒子から所望の構造を達成するために、さらに処理することができる。粘性多環式アルコールは、不活性雰囲気中で蒸発により有機物を除去するのに便利である。すなわち、蒸発は粘性多環式アルコールを他の有機溶媒とともに除去するための有効で効率な手法であるため、所望であれば酸素雰囲気無しでの乾燥、並びに低炭素汚染レベルのために、粘性多環式アルコールを有するインクは一般に、乾燥して、低レベル酸化を有するナノ粒子堆積物を形成することができる。
【0116】
例えば、シリコン系ナノ粒子が元素シリコンを含む場合、堆積されたナノ粒子は溶融されて、選択された位置に堆積されたシリコンの凝集塊を形成することができる。その条件に対して妥当に制御して熱処理を用いて行う場合、堆積塊は堆積位置から大きく移動せず、溶融塊は、所望のデバイスにさらに加工することができる。シリコン粒子を焼結するために使用される手法は、シリコン粒子の処理中に、基材への重大な損傷を回避するために、基材構造と一致するように選択することができる。例えば、いくつかの実施態様では、レーザー焼結やオーブンベースの熱的加熱を使用することができる。シリコンナノ粒子のレーザー焼結及び熱焼結は、「Silicon Inks for Thin Film Solar Cell Formation,Corresponding Methods and Solar Cell Structures」と題するLiuらの公開された米国特許出願第2011/0120537号(参照のため本明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。ドーパントドライブイン用途の高濃度ドープされたシリコンナノ粒子の使用は、以下にさらに記載されている。
【0117】
《アニーリング及びドーパントドライブイン》
ドープされたシリコン系ナノ粒子は、その後、シリコン基材などの隣接面に駆動するためのドーパント元素を提供することができるドーパント源として、使用されることができる。ドープされたシリコンナノ粒子の堆積物について、ドライブインプロセス中に形成されたアニーリングされたシリコン構造体は、最終的なデバイスの一部を形成するために使用することができる。特にリンのドーパントについて、ドライブインプロセス中のドーパントの蒸発を制限するためのキャップ層の使用により、ドーパントドライブインは改善することができる。適切なキャップ層は、物理的カバーから、ドライブイン表面に隣接した及びその上に置かれた基材、及びキャップ層としての種々のコーティングの範囲とすることができる。キャップ層を用いることにより、ナノ粒子の堆積物源を使用して、効果的なドーパントドライブインを行うことができる。
【0118】
物理的コーティング又は誘電体コーティングに基づくキャップ層は、ドープされたシリコンナノ粒子インクをカバーして、ドーパントドライブインを促進することが記載されている。上記’769出願を参照。’769出願に記載されているようなキャップ層は、シリコンナノ粒子層に実質的に浸透しない誘電体材料とであることができる。例えばキャップ層は、スピンオンガラスから形成することができる。アモルファスシリコンのキャップ層を用いて、望ましい結果が得られている。例えば、アモルファスシリコンキャップ層は、低圧CVDなどの化学蒸着(CVD)法を用いて効率的に堆積させることができる。高温ドーパントドライブイン工程の前に、初期アニーリング工程を行って、ナノ粒子及びアモルファスシリコンの合成を緻密化することができる。アニーリング処理した後、得られる材料は緻密なナノ結晶シリコン材料であってもよい。アモルファスシリコンのキャップ層の使用は、「Structures Incorporating Silicon Nanoparticle Inks, Densified Silicon Materials From Nanoparticle Silicon Deposits And Corresponding Methods」と題するLiuらの公開された米国特許出願第2013/0105806号(’806出願)(参照のため本明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。
【0119】
シリコン基材を有する実施態様について、ドーパントドライブイン後に、ドーパント濃度は、ナノ結晶−Si層の厚さ全体にわたって比較的一定のままであり、高濃度は次にシリコン基材内に延びる。ドーパントプロファイルは、シリコン基材内に延びるドーパントプロファイルに移行する、ナノ結晶表面層中のドーパント濃度を示す。いくつかの実施態様においてドーパント濃度は、基材表面下の深さとともに徐々に低下する。ドーパントプロファイルは、ガウス関数に近似する形状を有することができ、バックグラウンド濃度に到達するまでシリコンウェハー表面中に拡大する、ドーパント濃度の低下を示す。他の実施態様において、処理条件は、ドーパントドライブインを低減するように選択することができ、ドーパント濃度は、ナノ結晶層と基材との間の界面で、上昇したレベルからバックグラウンド濃度まで急激に低下する。次にドーパントプロファイルは、ほぼ矩形形状を有し、鋭い接合を形成する。基材が低ドーパント濃度を有すると仮定すると、鋭い接合は、逆のタイプ又は同様のタイプのドーパントが基材とナノ結晶層に導入されるかに応じて、p/n接合又は高/低ドーパント濃度接合とすることができる。鋭い接合は、ガウス型プロファイルを持つ拡散誘導接合と比較して、相対的に高い強度の電界を有する。本明細書に記載され実施例において達成されたドーパントプロファイルの特性は、効率的な太陽電池の形成に適している。
【0120】
ドーパントプロファイルの特性は一般に、堆積されたシリコンナノ粒子層とアモルファスシリコンキャップ層の特性、並びに加工条件に依存する。ドーパントプロファイルは、表面から異なる深さをサンプリングするためのスパッタリング又は他のエッチングと共に元素組成を評価するために、二次イオン質量分析(SIMS)を用いて測定することができる。例えば金属集電体のような表面との良好なオーミック接触が所望される場合、低い表面再結合を維持しながら良好なオーミック接触を提供するためには、表面ドーピングは、約5×1019ドーパント原子/立方センチメートル(原子/cc)〜約5×1021原子/cc、及びいくつかの実施態様において約7×1019原子/cc〜約2×1021原子/ccと、比較的大きくすることが望ましい。ドーパントプロファイルのプラトー領域は一般に、表面下の深さの関数として対数濃度の比較的平坦な傾斜で観察することができ、一般的に約0.5[log(atm/cc)micron]以下のおよそのログ(濃度)/深さ以下であり、いくつかの実施態様において約0.5[log(atm/cc)micron]以下で、約0.1〜約0.8ミクロンのプラトーの深さであり、及びさらなる実施態様において約0.15〜約0.6ミクロンである。当業者であれば、表面のドーパント特性を上記の明示的な範囲内の追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。シリコン基材への良好なドーパントドライブインがあってもなくても、これらの表面ドーパントパラメータは一般に適用可能である。
【0121】
ドーパントをシリコン基材表面に駆動するために使用されるドーパントドライブイン後のシリコン基材への全体的なドーパントプロファイルを特徴付けるために、我々は、追加のパラメータ、1×1019原子/ccのドーパント濃度での深さを使用する。深さに関して、ドーパントプロファイルは、約0.5ミクロン〜約2.5ミクロン、さらなる実施態様において約0.6ミクロン〜約2ミクロン、及び他の実施態様において約0.7ミクロン〜約1.8ミクロンの、1×1019原子/ccのドーパント濃度での深さを有することができる。ドーパントドライブインが制限された実施態様について、表面プラトー領域の端からドーパント濃度1×1018原子/ccまでの深さは、約0.3ミクロン以下であることができる。当業者であれば、上記の明示的範囲内のドーパントプロファイルパラメータの追加の範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0122】
ドーパントドライブインの後、得られたシリコンシートは、シート抵抗を用いて特徴付けることができる。シート抵抗は、4点プローブを用いて測定することができる。次に、4点プローブを用いた測定は、シート抵抗を得るために、幾何学的パラメータに応じてスケール変更することができる。本明細書に記載するようにドープされたシリコンナノ粒子とドーパントドライブインプロセスを使用するドーピングに基づいて、約120Ω/□以下の、さらなる実施態様において約100Ω/□〜約1Ω/□の、追加の実施態様において約60Ω/□〜約5Ω/□の,及び他の実施態様において約50Ω/□〜約10Ω/□の、シート抵抗を得ることができる。当業者であれば、上記の明示的範囲内のシート抵抗のさらなる範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。
【0123】
ドーパントドライブインは一般に、約700℃〜約1400℃、さらなる実施態様において約725℃〜約1200℃、及び他の実施態様において約750℃〜約1100℃の温度で行うことができる。ドーパントドライブインは、約5分〜約6時間、さらなる実施態様において約10分〜約3時間、及び追加の実施態様において約15分〜約2時間行うことができる。当業者であれば、上記の明示的範囲内のドーパントの処理温度及び時間のさらなる範囲が意図され、本開示の範囲内であることを認識するであろう。所望の場合、アニーリング工程を実行する前に合成物を安定化させるために、より低い温度での初期加熱工程を使用することができる。基材表面内のドーパントプロファイルは、ドーパントドライブインパラメータにある程度依存してもよく、処理パラメータの選択は、ドーパントドライブイン後の目標ドーパントプロファイルによって影響され得る。
【0124】
さらなる実施態様又は代替実施態様において、シリコンナノ粒子は、急速熱プロセスを用いて、効率的かつ迅速にアニーリング及び/又はでドーパントドライブインを行うことができる。例えば、シリコン合成物のアニーリングは、キセノンランプ等の加熱ランプを用いて達成することができる。加熱ランプからの放射線は表面上に照射することができ、他の実施態様において、基材表面全体に比較的迅速に走査されて、シリコンをアニーリングする。強度及び照射時間は、そうでなければシリコン基材に著しく影響を与えることなく、シリコン堆積物をアニーリングするように、及び好適な実施態様においてシリコン基材にドーパントを駆動するように、選択することができる。
【0125】
熱駆動型ドーパントドライブインに加えて、例えばレーザービームなどの集束エネルギービームによって、有効なドーパントドライブインを駆動することができる。例えばレーザービームが、ドープされたシリコンナノ粒子の堆積物に向けられている場合、レーザーからのエネルギーは局所的加熱を提供し、対応して基材にドーパントを駆動する。レーザードーパントドライブインは、「Solar Cell Structures,Photovoltaic Panels and Corresponding Processes」と題するHieslmairの米国特許第8,409,976号、及び「Back Contact Solar Cells with Effective and Efficient Designs and Corresponding Patterning Processes」と題するSrinivasanらの公開された米国仮特許出願第2010/0294349号(いずれも参照のため本明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。緑色レーザー、赤外レーザー、及び/又は紫外レーザーなどの、適切なレーザー周波数を選択することができる。
【0126】
製品を形成するための処理中及びさらなる処理の前に、材料の表面に沿って形成された可能性のあるシリコン酸化物を除去するための、アニーリング及び/又はドーパントドライブインの後に、シリコン酸化物のエッチングを実行することが望ましい場合がある。プロセス全体を通して酸素が材料から積極的に抑制されている場合は、シリコン酸化物エッチングを用いなくてもよい。シリコン酸化物のエッチングは、緩衝化フッ化水素水溶液又は他の適切な溶液を用いて行うことができる。同様に、プラズマエッチング又は他のドライエッチング処理を同様に使用することができる。緩衝酸化物エッチングは、数分間〜数時間実施することができるが、当業者は、この時間の範囲内でのすべての部分範囲が意図されていることを理解するであろう。インクへのシリカエッチャントの取り込みは、上記引用した’831出願に記載されている。
【0127】
例えばナノメートルのオーダーの厚さ上の、薄い表面層を除去して任意の表面汚染物質を除去するために、ウェットエッチングの代わりに、ドライエッチングを行うことができる。ドライエッチングは一般に、真空チャンバ内で行われる。プラズマは、一般にドライエッチングを行うために使用され、アルゴン等の元素のイオンは、不活性なエッチャントとして使用することができる。
【0128】
ドーパントドライブイン及び任意の緻密化及び/又はエッチング工程を実行した後、アニーリングしたシリコンコーティングを有する基材は、太陽電池、薄膜トランジスタ、又は他のデバイスなどの、所望の装置に組み立てることができる。代表的な応用装置は、以下にさらに記載されている。
【0129】
《半導体用途》
シリコン系ナノ粒子インクは、低い金属汚染が重要である範囲の用途、例えば太陽電池部品、電子回路部品等の形成、に適している。いくつかの実施態様において、低汚染レベルの高濃度にドープされた元素シリコンを輸送する能力は、適度な解像度で良好な電気特性を有する部品を形成する能力を提供する。具体的には、ドープされたインクは、結晶シリコン太陽電池のドープされた接触部を形成するために使用することができる。同様に、インクは、薄膜トランジスタの構成要素を形成するために使用することができる。インクの堆積及び乾燥後、得られたナノ粒子の堆積は、高密度化シリコン構造に加工することができる。他のシリコンナノ粒子組成物は、金属汚染が望ましくない同様の種類の用途において、ドーパントの輸送のため及び/又は誘電体成分のために使用することができる。
【0130】
太陽電池、薄膜トランジスタ及び他の半導体用途のために、シリコン粒子は、特定の装置の一部を形成することができるドープされた要素などの構造物を形成するために用いることができる。特定の用途について、所望のように特定の用途のために、パターン化有りで又は全くパターン化無しで使用することができる。いくつかの実施態様において、インクは、ドープドープされたシリコン又は真性シリコンの層などを形成するのに使用することができる。シリコン層の形成は、ディスプレイのためのポリマー膜上の薄膜半導体素子、薄膜太陽電池用の層の形成、又は他の用途に有用であり、これは、薄膜トランジスタ、太陽電池接触部等のための所望の機能を導入するために高度にドープすることができる。具体的には、ドープされたシリコンインクは、例えば選択エミッタ、局所的裏面電界接触部、又はバックコンタクト型太陽電池構造などの、結晶シリコン系太陽電池のドープされたエミッタ接触部を形成するための印刷に適している。
【0131】
太陽電池接合の形成は、例えば処理工程が全体的な処理スキーム中に折り畳まれる、熱高密度化を用いる元素シリコンインクのスクリーン印刷を使用して、実施することができる。いくつかの実施態様において、ドープされたシリコン粒子はドーパント源として使用することができ、これは、次にシリコン材料内に延在するドープ領域用の、下にある基材へ駆動されるドーパントを提供する。ドーパントドライブイン後に、シリコン粒子は除去されてもされなくてもよい。すなわち、ドープされたシリコン粒子は、太陽電池のドープされた接触部を形成するために使用することができる。ドーパントドライブインのためにドープされたシリコン粒子の使用は、上記に引用した’769出願にさらに記載されている。
【0132】
結晶シリコン系太陽電池については、ドープされたシリコン系インクは、ドープされた接触部、例えば電池の両面に沿った又は電池の裏面に沿った発光体、すなわち、背面接触型太陽電池、を形成するためのドーパントを提供するために使用することができる。ドープされた接触部は、光電流の収集を駆動するローカルダイオード接合を形成することができる。適切なパターン化は、インクを用いて達成することができる。薄い半導体箔と裏面接触処理を用いた太陽電池のいくつかの特定の実施態様は、「Solar Cell Structures,Photovoltaic Panels and Corresponding Processes」と題するHieslmairの公開された米国特許出願第2008/0202576号(’576出願)(参照のため本明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。
【0133】
図1及び図2を参照すると、個々の光電池の代表的な実施態様が示されている。これらの図における光電池は背面接触セルのみであるが、本明細書に記載されたインクは、他の光電池の設計のために効果的に使用することができる。光電池100は、半導体層110、表面不動態化層120、裏面不動態化層130、負極集電体140、及び正極集電体150を含む。図2は、光電池100の底面図であり、堆積されたnドープアイランド160とpドープアイランド170を有する半導体層110のみを示す。明瞭にするために、ドープされたアイランドの最初の2列のみがラベル付けされているが、連続したカラムも同様に交互のドーパント型でドープされている。集電体140は一般的に、nドープアイランド160との電気的接触部である。集電体150は一般的に、pドープアイランド170との電気的接触部である。ドープアイランド150、160と整列しており集電体材料で充填された裏面不動態化層130を介して正孔を作製し、ドープアイランド160、170と、対応する集電体140、150間で電気的接触を作製することができる。各集電体は、セルの対向する縁部に沿ってセクションを有して、列を接続し、集電体の接続を提供する。パターンが、一般的にドープされた接触部と重複しない集電体との接続を提供するドープコンタクトのために、他の選択されたパターンを使用することができる。
【0134】
’576出願は、いくつかの実施態様において、浅いドープ領域の形成を記載する。これらの浅いドープ領域は、好都合には、ドープされたシリコンを印刷し、例えばレーザー又はフラッシュランプからの熱及び/又は光を使用して、ドープされたシリコンを対応するドープされた接触部に溶融することにより、形成することができる。この処理はさらに、ドーパントドライブインにつながって、初期のシリコン材料にドーパントを供給する。また、本明細書に記載のドープされたシリコン粒子は、下層のシリコン基材にドーパント原子を輸送するために使用することができる。また、他の類似の太陽電池要素は、シリコン又は他の太陽電池用途の他の半導体基材上に形成することができる。ドーパントドライブイン及びシリコン粒子の融合は、上記で引用した’769出願にさらに記載されている。シリコン系ナノ粒子がドーパント源として単独で使用される場合、所望であれば、粒子の残りの一部又は全ては、処理後に除去することができる。ナノ粒子は、当技術分野で公知の適切なエッチング剤を使用して、処理後に除去することができる。
【0135】
インクは、薄膜太陽電池を形成するために、有効に使用することができる。具体的には、ナノ結晶シリコンは、高結晶性シリコンに比べて、材料の所定の厚さについて有意に多くの可視光を吸収することができる。特に、薄膜太陽電池について、p型及びn型シリコンの層を有する積層体は、任意選択的に、ドープ層間に真性シリコン層を堆積して、電池全体にp−(i)−nダイオード接合を形成する。所望であれば、複数のスタックを使用することができる。本明細書に記載されたシリコンインクは、1つ又はそれ以上の層又はその部分を形成するために使用することができる。シリコンインクを用いる薄膜太陽電池の形成は、「Silicon Inks for Thin Film Solar Cell Formation,Corresponding Methods and Solar Cell Structures」と題するLiuらの公開された米国特許出願第2011/0120537号(参照のため本明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。
【0136】
シリコン系インクはまた、特定の用途のための集積回路の形成に使用することができる。薄膜トランジスタ(TFT)は、例えば、アクティブマトリクス液晶ディスプレイ、電気泳動ディスプレイ、及び有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)を含む新しいディスプレイ構造体を、ゲート制御するのに使用することができる。トランジスタの適切な要素は、従来の写真平版手法を用いて、又は適度な解像度のためにスクリーン印刷又は他の適切な印刷技術を用いて、シリコン系インクで印刷することができる。基材は、インクの加工温度と適合するように選択することができる。TFTは、ドープされた半導体素子と対応するインタフェースとを含む。例えば、ある範囲のアクティブマトリクスディスプレイ用の電子ゲートとして使用される薄膜トランジスタは、「Backplanes for Display Applications,and Components for use Therein」と題するAmundsonらの公開された米国特許出願第2003/0222315A号(参照のため本明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。同様に、表示装置内の複数のTFTの使用は、「Display Device and Driving Method Thereof」と題するOhhashiらの米国特許第8,188,991号(参照のため本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0137】
シリコン系ナノ粒子の堆積物からデバイス構成要素を形成するために、材料を加熱することができる。例えば構造体は、塊に融合する粒子を軟化するように設定された温度で、オーブンなどの中に配置することができる。これは、例えばオーブン内で基材を比較的高い温度、例えば約750℃〜1250℃に加熱して、基材表面と密接に接触した粒子から固体の塊を得ることにより、行うことができる。時間及び温度は、所望の融合と、融合された塊の対応する電気的特性とを、生じるように調整することができる。堆積物を有する基材の表面を加熱するために、適切な手法を使用することができる。融合塊を形成するための、オーブン内のシリコン系ナノ粒子インクによるか又はレーザーによるシリコンウェハーの加熱は、上記で引用した’769出願にさらに記載されている。代替実施態様において、堆積されたシリコン系ナノ粒子の急速熱処理を提供するために、フラッシュランプ、赤外線ランプなどを使用することができる。シリコン粒子の熱及び光ベース融合は、上記引用した’905出願にさらに記載されている。
【実施例】
【0138】
例1
《ペーストの形成−リンドープナノ粒子》
本例は、粘性アルコールに基づくシリコンナノ粒子ペーストの形成を記載し、その純度を証明し、これらは、シリコンナノ粒子ペーストの特性及び性能に関して、さらに以下の実施例で説明される。
【0139】
ペーストは、リンドープシリコンナノ粒子、粘性多環式アルコール、溶媒又は溶媒混合物を含有する濃縮分散物から形成された。ドープされたシリコンナノ粒子は、「Silicon/Germanium Nanoparticle Inks,Laser Pyrolysis Reactors for the Synthesis of Nanoparticles and Associated Methods」と題するChiruvoluらの公開された米国特許出願第2011/0318905号(参照のため本明細書に組み込まれる)の実施例2に実質的に記載されたように、レーザー熱分解を用いて形成された。シリコン粒子は約20nmの平均一次粒子径を有し、2〜4原子パーセントのリンドーパント(100xP/シリコン(Si+P))を有した。
【0140】
各ペースト試料について、まず適量のナノ粒子シリコン粉末をある容量のイソプロピルアルコール(「IPA」)に加えることにより、スラリーを作製した。次に、混合物を超音波処理により混合して、分散物を形成した。次に分散物を回転蒸発させて一部のIPAを除去し、分散物をある程度濃縮した。次に、ある容量のプロピレングリコール(「PG」)を濃縮分散物に添加し、得られた混合物を超音波処理した。次に超音波処理した混合物をロータリーエバポレーターに入れ、さらなる凝縮が観察されなくなるまでIPAを除去して、ベースペーストを形成した。Siの分散システムからIPAを完全に除去することは、ロータリーエバポレーターによっては実際には不可能であり、少量のIPAが確実に残ることに留意されたい。指定されない限り、ベースペーストを、Si/IPAの同じ出発比に基づいて調製した。すなわち、最終ペースト中のIPA残留物の小さな部分は、議論のための成分や変数として列記されていない。
【0141】
次に、非ニュートン性粘性多環式アルコール(VPA)をベースペーストに、1〜7部のVPA対1部のベースペーストの重量比で加えることにより混合物を作製し、混合物を機械的ミキサー(Thinky USA,Inc.,California)を用いてホモジナイズした。VPAは、商業的供給業者から精製された形態で入手した。ホモジナイズされた混合物は次に、試験のための試料瓶に入れた。
【0142】
純度を証明するために、2部のVPA対1部のベースペーストの重量比で、上述したようにペースト試料を作製した。次にペースト試料を作製するために使用されたペースト試料とVPAを、誘導結合プラズマ−質量分析法(ICP−MS)を使用して分析して、その中に金属濃度を測定した。表1は、金属汚染物を10億分率(ppb)の重量部で示す。
【0143】
【表1】
【0144】
表1は、VPAが金属汚染が少なく、最も大きいものが10ppbのCa測定値であり、ほとんどの他の金属は2ppbレベル未満であることを示す。すべての測定された遷移金属は検出限界以下であった。同様に、VPAを有するSiナノ粒子ペーストの不純物データは、多数の金属が2ppb未満であり、最高濃度は、Caの48ppbであることを示している。最大の遷移金属汚染濃度は、亜鉛が42ppbであり、鉄は10ppbであった。全体的に、ペースト不純物レベルは低い。
【0145】
例2
《シリコンナノ粒子ペーストのレオロジーと印刷性能》
本実施例は、ナノ粒子ペーストのペーストレオロジーと印刷性能に対するペースト特性の影響を示す。ペースト特性に関して、本実施例は、ナノ粒子ペーストのレオロジーに対する溶媒タイプ、溶媒組成、及びナノ粒子濃度の影響を示す。
【0146】
これらのペースト配合物について、ペースト用の金属汚染レベルを、表2に示す。
【表2】
【0147】
《レオロジーに対するペースト組成の影響》
全てのレオロジー測定は、純粋なVPA試料を除いて、レオメーター(Brookfield R/S−CPS+)を使用して、25℃の温度で(0s−1〜少なくとも1800s−1)のせん断速度範囲で行なった。純粋なVPA試料は、同じ装置を用いて測定したが、より高い温度40℃で測定して粘度を低下させて、利用可能なスピンドルを使用できるようにした。
【0148】
ナノ粒子ペーストのレオロジーに対する溶媒組成の影響を証明するために、純粋な溶媒のレオロジーを最初に検討した。溶媒のレオロジー測定は、プロピレングリコール及びテルピネオールが、試験したせん断速度の範囲にわたってニュートン性であり、それぞれ0.049パスカル−秒(PA−S)及び0.037Pa・sの粘度を有することを示した。一方、VPAのレオロジー測定は、これが非ニュートン性であり、すなわちせん断依存粘度、特にずり粘性(shear thinning)を有することを示した。VPAの室温粘度はおおよそ50〜90Pa・sであると考えられた。図3は、VPAの粘度対せん断速度をプロットしたものである。さらに、試験した範囲にわたって、VPAの粘度は、プロピレングリコール及びテルピネオールの粘度よりも有意に高かった。
【0149】
溶媒にシリコンナノ粒子を添加する影響を証明するために、5つのペースト試料(試料1〜5)を、実施例1に記載のようにリンドープされたナノ粒子で形成した。試料1及び2は、上記したようにVPAを用いて形成された。試料1は、ペースト重量に対して66.7重量%のVPAを用いて形成した。試料2は、ペースト重量に対して83.1重量%のVPAを用いて形成した。VPA濃度が異なる以外に、これらの2つの試料は、異なるSiナノ粒子濃度(試料1の5重量%、及び試料2の1.9重量%)、及び異なるプロピレングリコール濃度(試料1の28.3重量%、及び試料2の15重量%)を有する。試料3〜5のペーストは、上記した方法に変更を加えて同様に形成された。具体的には、試料3及び4は、VPA無しで形成され、溶媒としてプロピレングリコールのみを含んでいた。同様に試料5もまた、VPA無しで形成されたが、溶媒としてテルピネオールを含んでいた。試料3は5重量%のシリコンナノ粒子を含有し、試料4及び5は15重量%のシリコンナノ粒子を含有した。形成された後、試料のレオロジー特性を測定した。
【0150】
図4は、試料3〜5について、粘度対せん断速度のプロットを示すグラフである。このプロットは、試験した試料について、溶媒へのシリコンナノ粒子の添加が、対応する溶媒に比べて、得られるペーストのレオロジーに有意な影響を与え得ることを証明している。具体的には、プロピレングリコール又はテルピネオール溶媒のみを含有するペースト試料(試料3〜5)は非ニュートン性であり、純粋な溶媒の測定とは異なっていた。図4は、ペースト試料が非ニュートン性であったことを示している。なお、プロピレングリコール及びテルピネオール溶媒にシリコン粒子を添加してペースト試料3及び4並びにペースト5を形成すると、それぞれ対応するニュートン性溶媒のレオロジーが定性的に変化した。
【0151】
さらに、図4に示される試料3及び4の粘度の比較は、試験した試料について、増加したナノ粒子濃度が、対応する純粋な溶媒と比較して、レオロジーのより大きな変化をもたらすことを示している。具体的には、試料3(5重量%のナノ粒子)の粘度は、約200s−1のせん断速度より低いせん断依存粘度であった。約200s−1より上では、粘度はせん断速度に弱くしか依存せず、純粋なプロピレングリコールの粘度に比較的早く近づいた。一方、試料4(15重量%のナノ粒子)の粘度は、試験した全範囲にわたってせん断速度に大きく依存しており、及び粘度も、試験したせん断速度範囲にわたって、純粋なプロピレングリコールと比較して大きく上昇していた。図4中の試料4と5の粘度の比較は、プロピレングリコール溶媒を含有するペースト(試料4)が、テルピネオール溶媒を含有するペースト(試料5)と比較して、試験したせん断速度範囲にわたって、わずかに上昇した粘度を有することを示している。これらの結果は、上記の対応する純粋な溶媒の粘度と一致している。
【0152】
図5及び図6は、試料1及び2(いずれもプロピレングリコール及びVPAを含む)のせん断速度対粘度のプロットである。図3図5及び図6との比較は、VPAへのナノ粒子とプロピレングリコールの添加が、対応するペーストのレオロジーを大きく変更させることができることを示している。具体的には図5及び図6は、試料1と2とが、せん断速度の試験範囲にわたって大幅に低い粘度を有し、せん断依存性粘度が、純粋なVPAと定性的に異なる挙動であったことを示す。図5図6との比較は、試料のレオロジーが、ペースト成分のみの比率を変えることによって調整できるであろうことを証明している。
【0153】
ホウ素濃度が2〜4原子パーセントのホウ素ドープされたペーストを用いて同様の配合物を作製し、リンドープされたナノ粒子について実施例1に記載したようにドープされたナノ粒子を製造した。選択された溶媒の配合物と粒子濃度を用いて、7つのペーストを形成した。粘度は150S−1のせん断速度で測定した。結果は、表3に示されている。これらの結果は、ホウ素ドープされた粒子とVPAを用いて、望ましいペースト配合物を形成する能力を、再度証明している。
【0154】
【表3】
【0155】
《Siナノ粒子ペーストのスクリーン印刷性能−Pドープ》
試料3〜5を含む非VPA含有ペーストは、15%のSiを有していても、その粘度は高せん断速度(例えば、1000〜1800/s)で低すぎたため、有意な拡散を回避できなかった。さらに、PG及びTPのみのベースペーストは、5%のSiでさえも、スクリーンを詰まらせた。VPA含有ペースト試料の印刷性能を証明するために、2つのVPA含有ペースト試料(ペースト試料6及び1)を、上記のように形成した。具体的にはペースト試料6は、ペーストに対して50重量%のVPA、42.5重量%のPG、及び7.5重量%のSiを含有し一方、上記した試料1は66.7%のVPAを有した。次にペースト試料1及び6は、テクスチャー形成した(texturized)pドープされたシリコンウェハー基材上にスクリーン印刷(HMI半自動スクリーン印刷機)して、200μm〜300μmの目標幅を有する線と200μmの目標直径を有するドットを形成した。スクリーン印刷の後、スクリーン印刷ペーストは、印刷された基材を段階的なプロセスで、250℃で空気中で5分間加熱することによって硬化させた。硬化されたウェハー試料を試料1−250A及び試料6−250aと命名し、これらは、それぞれペースト試料1及び試料6から印刷された。印刷された形状の特徴付けのために、光学顕微鏡を使用した。
【0156】
図7の左の列と右の列は、それぞれ、試料6−250a及び1−250aから硬化後の印刷された膜の光学顕微鏡画像の合成である。上部、中央及び下のパネルは、それぞれ、200μmの目標幅を有する印刷された線、200μmの目標直径を有する印刷されたドット、及び300μmの目標幅を有する印刷された線を示す。一般に、これらの2つの試料からの画像の比較は、上昇したVPA濃度を有するペースト試料1が、200μm構造の拡散の制限に関して改善された印刷性能を有し、より低いVPA濃度を有するペースト試料6と比較して、300μm構造について同様の印刷性能を有することを示す。具体的には、図7の上部パネルの比較は、200μmの目標幅で印刷された線について、ペースト試料6(50重量%のVPA)で印刷された線は250μmの最大幅を有し、一方、試料1(66.7重量%のVPA)で印刷された線は230μmの最大幅を有したことを示す。同様に図7の中央パネルの比較は、200μmの目標直径で印刷されたドットについて、試料6で印刷されたドットは215μmの最大直径を有し、試料1で印刷されたドットは200μmの最大直径を有したことを示す。300μmの構造体に関して、図7の下部パネルの比較は、300μmの目標直径で印刷された線について、ペースト試料6と1で印刷された線は、両方とも320μmの最大幅を有したことを示す。いずれの場合にも、VPA含有ペーストでスクリーン印刷されたすべての試料は、良好なスクリーン印刷性能を有していた。
【0157】
印刷されたペースト層の物理的特性を証明するために、試料1以外に、試料7,8、及び9も調製した。試料7は、VPAの代わりに66.7重量%のポリマーエチルセルロース(EC)を有する以外は、試料1と同じSiとPGパーセントを有した。エチルセルロースで形成されたSiナノ粒子ペーストは、上記で引用された’831出願にさらに記載されている。試料8は試料1と同様であったが、異なる比率の成分、特に低濃度のナノ粒子を有して、250ナノメートル(nm)の薄い厚さを達成した。さらに、試料1,7、及び8の配合物は、印刷された200μm線の広がりを15%に制限することを目標とした。試料9は、IPA溶媒/分散剤中のスピンコーティング可能なSiナノ粒子インクであり、これは、実施例1に記載のように、ペースト形成の初期の分散工程を用いて調製された。これは、適切なスピンコート条件下で250nm厚さの膜を達成するために配合された。試料1,7、及び8をスクリーン印刷し、試料9を、同じタイプのテクスチャー形成したp−ウェハーの上にスピンコートした後、全てのウェハーをN中で540℃の高温で5分間硬化させて、有機残留物を除去した。スピンオンコーティングの硬化した膜特性は、VPAを有するスクリーン印刷ペーストを用いて形成した堆積物の特性と同様であり、これは、ペーストのいくつかの用途にとって望ましいものとなり得る。少量のVPAをスピンコーティングインクに加えて粘度を調整することができ、VPAは、対応するコーティングの特性に負の影響を与えないであろうと予測される。
【0158】
硬化した試料を、ペースト試料1、7、8、及びインク試料9に対応して、それぞれ試料1−540n、7−540n、8−540n、及び9−540nと命名する。試料1、8、及び9から作製された膜中の有機化学物質の除去は、これらの試料中のアルコール(IPA、PG、及びVPA)の比較的低い沸点のために、必ずしも540℃の高温を必要としない。540℃の選択は、EC除去の考慮にのみ基づく。しかし、低温硬化の可能性を証明するために、もう1つのウェハー(試料1−250n)を試料1から印刷し、N中250℃の低い温度で5分間硬化させた。硬化膜の断面と上面図走査電子顕微鏡(SEM)画像が得られた。
【0159】
図8の上部、中央、下部の列は、それぞれウェハー試料1−250n、1〜540n及び7−540nのSEM画像である。試料1−250nと1−540nの画像の比較で、類似した構造が観察された。具体的には、653nm(試料1−250n)と633nm(試料1−540n)の断面の厚さは、均一性と測定誤差の範囲内で同じとみなされ、上の図の表面形態も、定性的に同様のレベルの密度を反映している。拡散能力及び電気的特性を損なうことなく低温硬化する可能性を証明するために、実施例3でさらなる特徴付け及び比較が例示されるであろう。
【0160】
試料1−540nと7−540nとのさらなる比較は、ペースト試料1とペースト試料7からのプリントが同様のエッジ解像度(<15%の拡散、画像は示されていない)を有し、VPAを含む印刷されたペースト試料(ペースト試料1)が、エチルセルロースを含む印刷されたペースト試料(ペースト試料7)と比較してより薄い厚さ(633nm)1.39μmを有することを示す。さらに、これらの2つの試料の上の図の画像の比較は、ペースト試料1に基づいて印刷された特徴が、ペースト試料7から印刷されたものよりも比較的密度の高い又は低い多孔質膜を有したことを示す。この異なる厚さと空隙率の結果は主に、ECとVPAの大幅に異なる化学的性質に起因する。例えばECは、大きな分子量と高燃焼オフ温度とを有するポリマーの性質を有しているが、一方、VPAは、一般的なアルコール性特性を有し、除去することが容易な小さい分子サイズを有している。すなわち、ペースト中のSiの分散の性質及びバインダー/混合Siが、これらの2つのバインダーの異なる特性によって実質的に影響を受ける可能性がある。
【0161】
VPAの利点を探索するために、さらに実験を行なった。図9の上部と下部の列は、それぞれ試料8−540nと9−540nからのSEM画像である。図9の画像の比較は、両方の試料が、定量的に適合性のある厚さと定性的に同様の密度を有する膜を有することを示している。また、ポリマーであるECに基づくペーストの計画された配合物が、薄い厚さと<15%の拡散要件の両方、又は高い密度と<15%の拡散要件の両方の上記特性を満たしていないことに留意されたい。VPAを含有するナノ粒子インクのスピンコーティング性が、粒子充填密度の上昇、膜厚の減少、表面粗さの低下、及び膜欠陥の減少を含むいくつかの利点を提供できることが期待される。
【0162】
《Siナノ粒子ペーストのスクリーン印刷性能−Bドープ》
上記のようにVPAとホウ素ドープされたシリコンナノ粒子を用いて形成されたスクリーン印刷ペーストをスクリーン印刷して、印刷結果を評価した。スクリーン印刷ペーストは、350ミクロン幅の線(図10)及び200ミクロン幅の線(図11〜13)として印刷した。平均水幅が350ミクロン(図10)、200ミクロン(図11)、225ミクロン(図12)、及び198ミクロン(図13)である3つの印刷線について、光学顕微鏡写真が示されている。インクのすべては、良好な印刷性を示した。
【0163】
線の均一性を評価するために、250nmの平均厚さを有する試料について、異なる位置で厚さ変動の測定値を得た。図14〜16を参照すると、251nmの厚さ(図14)、549nmの厚さ(図15)、及び103nm〜178nmの厚さの範囲(図16)が示される。これは、測定値を得るために使用された平坦性を有する基材のこの平均厚さの値について、厚さの範囲を与えます。
【0164】
これらのペーストについて、200ミクロン幅の線について目立つ広がりは無く、印刷された線の幅の増加はスクリーンに比較15%未満であった。厚さの変動は、インク配合物の調整によりさらに改善することができる。
【0165】
印刷特性をさらに試験するために、リンドープペーストとホウ素ドープペーストの線の交差を行なった。リンドープペーストと次にホウ素ドープペーストの順次印刷した交差線は、図17に示される。交差線印刷は、印刷の複雑さを誇張している。スクリーン/ウェハー谷での次の印刷時に、材料の一部の損失が観察された。
【0166】
例3
《VPAを有するシリコンナノ粒子ペーストのドーパントドライブイン性能》
本実施例は、ドーパントがシリコンウェハー表面に駆動される、VPAを含むドープされたシリコンナノ粒子ペーストのドーパントドライブイン性能を証明する。ドーパントドライブイン性能は、ドーパントドライブイン後の、シート抵抗及び基材濃度プロファイルの点で証明された。
【0167】
ドーピング性能を証明するために、テクスチャー形成し、HF洗浄したn型Si基材上に、4つのウェハーをペースト試料1からスクリーン印刷し、印刷した試料を250℃又は540℃のオーブン中で空気又は窒素雰囲気中で5分間硬化させた。試料1−250a、1−250n、1−540a、及び1−540nを、それぞれ250℃の空気、250℃の窒素、540℃の空気、及び540℃の窒素の硬化条件を用いて調製した。次に、コーティングされたウェハーを1000℃の拡散炉で1時間、窒素雰囲気下で加熱して、ドーパントドライブインを行って最終ウェハー試料を形成し、これらを、試料1−250a、1−250n、1−540a、及び1−540n由来の、それぞれ試料1−250ad、1−250nd、1−540ad、及び1−540ndと命名した。Neytech QEX炉を用いて、ドーパントドライブインを行なった。炉にはNの連続流を供給したが、これは、炉の設計のために100%のΟフリーではなかったことに留意されたい。すなわちすべての試料は、ドライブインの間、同じ低レベルの酸化に付した。Οパーセントは定量化していないが、それはこの研究の相対比較に影響を与えないはずである。
【0168】
ドライブインの間、すべてのコーティングされたウェハーは、二重ウェハースタック構成(DWS)で組み立てられた。DWS構成では、カバーとして使用された膜の無い一枚のウェハー(裸のウェハー)を、コーティングされたウェハーの上に積み重ね、各ウェハーのペースト層が裸のウェハーに接触するようにした。次に、両方の積層ウェハー(コーティング及び非コーティング)を、2つの比較的重い水晶板の間に挟むことにより固定した。次に、ドーパントドライブイン後、ウェハー上の試料ナノ粒子層を、緩衝酸化物エッチング(BOE)を用いて除去した。ウェハー基材の一部であるべき下のドープ層の偶発的オーバーエッチングを回避するために、Si膜の特定の厚さを保持する必要があるため、正確な元のウェハー表面は、エッチングプロセスによって実質的には露出されないことに留意すべきである。ウェハー試料のシート抵抗は、4点プローブ(4PP)を用いて測定した。4PP測定のすべてのサンプリングポイントを、ウェハーの中央領域に位置する1.5インチ直径の円形領域内で、均一に採取した。各試料について、ウェハーの各側面(膜側と対応する非膜側(裏面))上で、少なくとも5つの測定値を得た。裸のウェハーシート抵抗の測定のために、同じ方法を使用した。ウェハー表面のドーピング濃度とドーピング深さプロファイルは、二次イオン質量分析(SIMS)により測定した。
【0169】
表4は、ウェハー試料のシート抵抗(Rsh)及びドーパントドライブイン処理パラメータを示す。表のデータは、ウェハーの膜側の測定から収集した。表は、VPAを含むドープしたSiナノ粒子ペーストで印刷したウェハーが、適切な熱処理条件下でドープすることができることを示している。一般に、Rsh値によって示されるペーストのドーピング能力は、いくつかの特性を示す。まずドーピング能力は、硬化雰囲気依存性である。具体的には、250℃と540℃で窒素中で硬化した両方の試料(試料1−250nd及び1−540nd)は、空気中で硬化させた試料(試料1−250ad及び1−540ad)よりもはるかに低いRsh値を有していた。例えば、試料1−250adは121.4Ω/sqのRshを有し、これは、試料1−250ndの値(71.3Ω/sq)のほぼ倍である、第2に、ドーピング能力はまた、空気中で硬化した試料について硬化温度依存性を示す。具体的には、250℃の空気中で硬化した試料1−250adは121.4Ω/sqのRsh値を有し、これは、540℃の空気中で硬化した試料1−540adのRsh(207.7Ω/sq)のほぼ半分である。膜の中心を含む裸のウェハーによって覆われた試料1−540adの膜面積の大部分は、試料1−250adよりもはるかに酸化していた(データは示していない)。ドライブイン工程中の酸化寄与は、全ての試料について制限されて固定されていたため、試料1−540ad中の余分な酸化は、硬化工程中に温度上昇により発生する可能性がある。上記のドーピング特性は、シリコンペーストの最終的なドーピング能力における酸素の重要な役割を明らかにする。酸素の影響の正確な理由や機構は調査中である。また、ドーピング能力は、窒素中で硬化させた試料について、顕著な硬化温度依存性を示していない。具体的には、540℃でN中で硬化させた試料1−540ndは、250℃でN中で硬化させた試料1−250ndのものと適合するRsh(73Ω/sq)を有した。
【0170】
全体的に、VPAベースのSiペーストは、ECベースのSiペーストと同様のRshの硬化条件依存性を示すが、最後の特徴では逆に、ECベースのSiペーストは窒素中でRshの硬化温度依存性を示した。この差異は、ポリマーECと溶媒VPAの異なる熱挙動に基づいて理解することができるであろう。ECの熱除去は、主に解重合と酸化に基づく分解機構により駆動されるが、VPAの除去プロセスは、分子蒸発により駆動される。すなわち、特にN中での低温硬化は、より多くのEC及び/又は炭素残留物を試料内に残す可能性があり、これらは、DSW構成に導性されるシーリング効果のために、ドライブイン温度でさえ除去することが困難になった。ポリマーに関連する残留物は、最終的にはドーパントドライブイン特性に悪影響を及ぼす可能性がある。これに対して、VPAが関与するSiペーストでは、VPAが比較的低温で蒸発できるため、炭素を含むVPAの残留物は無視することができる。すなわち、Si酸化の問題がない限り、Rshの硬化温度依存性は無視することができる。Si/VPAペースト試料のさらなる評価のために、DSW法に加えて、アモルファスSiを利用する方法を含めてより多くの拡散実験が行われている。
【0171】
【表4】
【0172】
図18は、ウェハー試料1−250nd及び1−540ndについての、リンの濃度(ドーパントプロファイル)対シリコンウェハー表面からの深さの、プロットを示すSIMSグラフである。上記したように、正確な元々のウェハー表面をピンポイントで見つけることが困難なため、ドーピング深さとウェハー表面ドーパント濃度の測定について、ドーパント濃度の変化に基づいて大まかな推定が適用される。ウェハー試料1−250nd及び1−540ndの表面抵抗は、表4に示した4点プローブを用いて測定すると、両方とも約70Ω/sqであった。図18に表示されたドーパントプロファイルを参照すると、両方の試料は典型的なドーピング曲線を示し、試料1−540adでやや拡散していたが、これは低いRshを示さなかった。さらに、両方の試料は、0.5ミクロン未満の同様のドーピング深さを有していた。拡散プロファイルデータは、試料がN中で硬化された場合、ドライブイン挙動は、硬化温度依存性ではないことをさらに確認している。
【0173】
例4
《シリコンナノ粒子ペーストに対するドーパントドライブインの影響》
本実施例は、VAを含有するシリコンナノ粒子ペーストの構造及び組成に対するドーパントドライブインの影響を示す。
【0174】
ナノ粒子ペーストの構造と組成に対するドーパントドライブインの影響を証明するために、上記の実験から4つのウェハー試料(1−250n、1−540n、1−250nd、及び1−540nd)を、さらなる分析のために使用した。ウェハー試料1−250ndと1−540ndは、試料1−250nと1−540nから、その後のドーパント拡散により、それぞれ形成された。参照目的で、ウェハー試料1−250nと1−540nは、再度、前述のように調製された。調製後、すべての膜試料がBOEウェットエッチングはされず、粒子膜層は特徴付けのために保持された。走査型電子顕微鏡(SEM)及びX線光電子分光法(XPS)を行って、これらの試料の構造及び組成を特徴付けた。データ収集の前に、粒子の膜層をXPS真空チャンバ内でドライエッチングして、膜の最上部層を除去した。具体的には、O及びCの実験後汚染の影響が小さくなるように、2keVのエネルギーを有するArプラズマを1分間エッチングで適用して、薄層(<1nm)を除去した。したがって、Si粒子膜の上層内に位置するSi粒子の表面組成を分析した。
【0175】
図19の上部と下部の列はそれぞれ、ドーパントドライブインの後に得られたウェハー試料1−250ndと1−540ndの、SEM断面と上面の画像の合成である。試料1−250n(図8)と試料1−250nd(図19)の画像の比較、又は試料1−540n(図8)と試料1−540nd(図19)の画像の比較は、高温ドライブイン工程後の膜厚さと空隙率の有意差を明らかにしなかった。試料1−250ndは、試料1−250nと比べてわずかに厚さの減少(約50nm)があったが、その差異は均一性変動(参照:1つのSi粒子は20nm)内で無視することができる。しかし、粒子層とウェハー基材との間の、Si粒子のサイズ及びインタフェースの形態の変化のような、他の可能な膜構造の差異を明らかにするために、高分解能透過型電子顕微鏡法を含む、より多くの特徴付けが行われている。興味深いことに、図19中の試料1−250ndと1−540ndとの画像の比較は、Si粒子膜に対する硬化温度の影響を示さず、これは、前述の実施例の結果と一致している。具体的には、断面画像から2つの試料は、均一性と測定誤差の範囲内で同様の厚さ600nm(試料1−250nd)及び626nm(試料1−540n)を有していた。同様に、上図の画像はまた、上の形態や膜空隙率の大きな差異を示していない。この結果は、おそらくVPAの大部分を例えば250℃の低温で除去することができることを意味する、VPA除去の容易さに起因する。この観点から、540℃のような高温での硬化は不要である。
【0176】
【表5】
【0177】
表5は、ナノ粒子層の主要な構成を示すXPSの結果を有する。表では、「BE」は結合エネルギーを意味し、「AC」は元素の原子割合を指す。試料1−250ndと1−540ndの比較は、試験したウェハーの試料について、ナノ粒子層の総炭素濃度が、硬化温度からは比較的独立していることを示す。具体的には、試料1−250nd(N中250℃で硬化とドライブイン)及び試料1−540nd(N中540℃で硬化とドライブイン)の両方とも、Siナノ粒子表面上の炭素濃度は約4%であった。同様に、O(1s)とSi(2p)からのデータもまた、実験誤差の範囲内で硬化温度の独立性を示している。試料1−250nd(0.65at%)中のP濃度が、試料1−540nd(0.44at%)中の濃度よりもわずかに高いことに留意されたい。この差異は、図18に示したSIMSデータと一致しており、試料1−540ndが、ウェハー表面にわずかに多くのドーパントを有することを示していた。それにもかかわらず、これらの2つの試料から、同様のRsh値が得られた。
【0178】
例5
《キャップ層を有するVPAを有するシリコンナノ粒子ペーストのドーパントドライブイン性能》
本実施例は、アモルファスシリコンキャップ層を有するVPAインクのドーピング性能を証明する。
【0179】
ドーパントドライブイン性能を証明するために、キャップ層を用いてコーティングされたウェハーを調製した。実施例1に記載されたように、リンドーパントとホウ素ドーパントの両方を用いて、ドープされたシリコンナノ粒子ペーストを調製した。2つの異なるタイプのインクを試験した。印刷性能のために、平均厚さがおおよそ300nm〜500nmで、リン又はホウ素ドーパントを用いて、第一のインクタイプ(「タイプI」)と第二のインクタイプ(「タイプII」)を調製し、ここで、タイプIインクがやや低いナノ粒子濃度を含有した。I型インクは、ペーストに対して、80重量%のVPA、17.5重量%のPG、及び2.5質量%のドープしたシリコンナノ粒子で構成されていた。タイプIIインクは、ペーストに対して、65重量%のVPA、30重量%のPG、及び5重量%のドープされたシリコンナノ粒子で構成されていた。タイプI及びタイプIIのペーストは、150S−1で、それぞれ1.37Pa・s及び0.56Pa・sの粘度を有した。シリコンナノ粒子は、約20nmの平均一次粒子径と2〜4原子パーセントのドーパントを有していた。インクは、シリコンウェハー基材上にスクリーン印刷され、次にインク層を、インクコーティングされたウェハーをオーブン中で空気又は窒素雰囲気中で400℃で5分間加熱することにより、硬化させた。インク層の厚さは、プロファイルメーター(α−Step(登録商標)300,KLA Tencore)及びSEMを用いて測定される目標厚さを有するインク層を形成することが知られているスクリーン印刷法を使用して、推定した。具体的には、厚さ測定値を得るために、与えられたインク処方を使用して、研磨ウェハー基材上に乾燥インク層を形成した。次に、乾燥したインク層と接触するスタイラスを、乾燥したインク層の上に約0.5mm〜約1mmの距離にわたって水平に走査し、スタイラスの垂直方向の変位を記録した。スクライブを行ってステップを作製した。
【0180】
乾燥後、一部の試料では低圧化学蒸着(LPCVD)を用いて、アモルファスシリコンキャップ層を、乾燥したインク層の上に堆積させた。LPCVDは、インクコーティングされた基材のインク層中の粒子の周りに、アモルファスシリコンマトリックスを堆積させるために使用した。LPCVDプロセスは、商業的業者が行い、アモルファスシリコンをインクコーティングされた基材の表面上に、水平の石英管の炉内でシランの雰囲気下で毎分150標準立方センチメートル(sccm)の流量と200mTorrの圧力で、525℃の温度で90分間堆積させることを含んでいた。これらの条件でのアモルファスシリコンの成長速度は約1nm/分であり、研磨ウェハー上のアモルファスシリコンの90nm、及び断面SEMに基づくインク層の上の80〜100nmに相当した。アモルファスシリコンキャップ層を、インク層の上に50nm又は100nmの目標厚さを有するように堆積させた。アモルファスシリコンキャップ層の堆積及びその後の処理は、さらに、上記で引用した’806出願にさらに記載されている。
【0181】
アモルファスSiキャップ層を有する試料ウェハーをオーブン中で加熱して、実施例3に記載したようにドーパントドライブインを行なった。ホウ素ドープしたインクについて、ウェハーの断面のSEM顕微鏡写真とドーパントドライブインのSIMSデータが、図20〜21(タイプIインク)と図22〜23(タイプIIインク)に示されている。両方のインクとも、ウェハー表面に均一な層を形成し、ドーパントドライブイン後の融合膜中にいくつかの空隙が存在していた。II型インクは、炭素の減少とドーパントドライブインの上昇だけでなく、より高い表面ドーパント濃度をもたらした。リンドープされたインクについて、ウェハーの断面のSEM顕微鏡写真とドーパントドライブインのSIMSデータが、図24(タイプIインク)と図25〜26(タイプIIインク)に示されている。
【0182】
ホウ素ドープインクとアモルファスシリコンキャップ層を有する試料ウェハーを、種々の条件下でオーブンで加熱しながらドーパントドライブインに付して、得られるシート抵抗値を試験した。ナノ粒子インクは、2.5重量%のナノ粒子(II型インク)又は5重量%のナノ粒子(タイプIIIインク)のいずれかを有した。インクは一般的に実施例3で上記したように処理したが、ウェハーを積層しなかった。400℃での初期焼成を、空気中又は窒素下のいずれかで実施し、50nm以上100nmのキャップ層を使用し、1000℃でのアニーリング時間は15分又は60分であった。
【0183】
ドーパントドライブインの後、実施例3に記載したように、Rsh測定値を採取した。Rsh値は、異なる位置で表面に沿って測定した。50nmのキャップ層と60分のアニーリング時間で得られたタイプIIIインクを用いて形成された膜のシート抵抗は、一般的にほぼ33Ω/sq〜36Ω/sqを有した。タイプIIインクについて、より広い範囲の条件にわたる結果が得られた。タイプIIインクで形成された膜のすべては、48Ω/sq〜34Ω/sqのシート抵抗を有し、周囲空気対窒素、100nmのキャップ対50nmのキャップ、又は15分のアニーリング対60分のアニーリングで焼成した膜に、有意差はなかった。比較のために他の試料を、試料を凝縮するための最初の加熱工程なしの処理に付したが、試料を乾燥するために85℃で3分間の焼成を使用した。これらの試料のシート抵抗は、66Ω/sq〜83Ω/sqであり、結果は、アニーリング工程の時間又はアモルファスシリコンキャップの厚さに、特に敏感ではなかった。
【0184】
上記の具体的な実施態様は、例示であって制限的なものではないことが意図されている。追加の実施態様は、本明細書に記載の広い概念の範囲内である。さらに本発明は、特定の実施態様を参照して説明したが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の変更がなされ得ることを認識するであろう。本明細書の明示的な開示に反する主題が組み込まれないように、上記文書の参照によるすべての取り込みは制限される。
本発明の実施態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
少なくとも0.001重量%のシリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子と、少なくとも約10重量%の粘性多環式アルコールとを含有し、前記粘性多環式アルコールが約450℃以下の沸点を有する、ナノ粒子インク。
《態様2》
前記粘性多環式アルコールが、7〜25個の炭素原子を有する、態様1に記載のナノ粒子インク。
《態様3》
前記粘性多環式アルコールが、ノルボリルビシクロ部分を含む、態様1又は態様2に記載のナノ粒子インク。
《態様4》
前記粘性多環式アルコールが、ビニルノルボルニルアルコール;エチル、メチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、1−メチル−プロピル、2−メチル−プロピル、アリル、n−ヘキシル、3−メチル−ブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルの置換を有するC−8置換1,5−ジメチルビシクロ[3.2.1]オクタン−8−オール類;イソボルニルシクロヘキサンジオール;トリメチル−2,2,3−ノルボルニル−5−(−3−シクロヘキサノール−1,3−(5,5,6トリメチルビシクロ[6.4.0.1]ヘプタン−2−イル)シクロヘキサノール;11−ヒドロキシ−2,13,13−トリメチル−トリシクロ[6.4.0.12.5]トリデカン;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、態様1に記載のナノ粒子インク。
《態様5》
非ニュートン性のレオロジーを有し、ポリマーが約0.1重量%以下である、態様1〜4のいずれか一項に記載のナノ粒子インク。
《態様6》
遷移金属汚染が約100ppb以下である、態様1〜5のいずれか一項に記載のナノ粒子インク。
《態様7》
前記シリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子が、約50nm以下の平均一次粒子サイズを有するドープされた元素シリコンナノ粒子を含有する、態様1〜6のいずれか一項に記載のナノ粒子インク。
《態様8》
少なくとも約0.5重量%の元素シリコンナノ粒子を含有し、2s−1のせん断で少なくとも約1Pa・sの粘度を有する、態様1〜7のいずれか一項に記載のナノ粒子インク。
《態様9》
前記ナノ粒子が、少なくとも約0.5原子パーセントのドーパントレベルを有する、態様1〜8のいずれか一項に記載のナノ粒子インク。
《態様10》
約0.05〜約10重量%のシリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子を含有し、ポリマーが約0.1重量%以下であり、2s−1のせん断で少なくとも約1Pa・sの粘度と非ニュートン性のレオロジーを有する、ナノ粒子ペースト。
《態様11》
前記シリコン系ナノ粒子が、約75nm以下の平均一次粒子サイズを有する元素シリコンナノ粒子を含有する、態様10に記載のナノ粒子ペースト。
《態様12》
少なくとも約10重量%の多環式アルコールを含有する、態様10又は態様11に記載のナノ粒子ペースト。
《態様13》
ビニルノルボルニルアルコール;エチル、メチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、1−メチル−プロピル、2−メチル−プロピル、アリル、n−ヘキシル、3−メチル−ブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルの置換を有するC−8置換1,5−ジメチルビシクロ[3.2.1]オクタン−8−オール類;イソボルニルシクロヘキサンジオール;トリメチル−2,2,3−ノルボルニル−5−(−3−シクロヘキサノール−1,3−(5,5,6トリメチルビシクロ[6.4.0.1]ヘプタン−2−イル)シクロヘキサノール;11−ヒドロキシ−2,13,13−トリメチル−トリシクロ[6.4.0.12.5]トリデカン;及びこれらの組み合わせを含有し、遷移金属汚染が約100ppb以下である、態様10〜12のいずれか一項に記載のナノ粒子ペースト。
《態様14》
前記シリコン系ナノ粒子が、シリコンドーパント元素を含む、態様10〜13のいずれか一項に記載のナノ粒子ペースト。
《態様15》
基材表面にシリコン/ゲルマニウムナノ粒子を堆積させる方法であって、
シリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子を含有し、かつポリマーが約1重量%以下であるペーストを、基材の表面にスクリーン印刷して、スクリーン印刷された基材を形成する工程と、
前記スクリーン印刷された基材を、実質的に酸素が存在しない雰囲気で、450℃以下の温度に加熱して、ナノ粒子堆積物を形成する工程と、を含む方法。
《態様16》
前記スクリーン印刷ペーストが、約0.05重量%〜約10重量%のシリコン系ナノ粒子を含有し、ポリマーが0.1重量%以下であり、2s−1のせん断で少なくとも約1Pa・sの粘度を有し、かつ非ニュートン性レオロジーを有する、態様15に記載の方法。
《態様17》
前記ペーストが、少なくとも約10重量%の粘性多環式アルコールを含有する、態様15又は態様16に記載の方法。
《態様18》
前記ナノ粒子堆積物が、炭素が5原子パーセント以下である、態様15〜17のいずれか一項に記載の方法。
《態様19》
前記ナノ粒子堆積物が、約150nm〜約700nmの平均厚さを有する、態様15〜18のいずれか一項に記載の方法。
《態様20》
前記基材が、その上にスクリーン印刷ペーストが堆積されたシリコン表面を有し、前記シリコン/ゲルマニウム系ナノ粒子が、約50nm以下の平均一次粒子サイズを有するドープされた元素シリコンナノ粒子を含有する、態様15〜19のいずれか一項に記載の方法。
《態様21》
前記堆積物を有する基材を約750℃〜約1200℃の温度に加熱して、ドーパントを基材表面にドライブインさせ、堆積物をアニーリングすることをさらに含む、態様20に記載の方法。
《態様22》
前記堆積が、加熱される時に被覆されている、態様21に記載の方法。
《態様23》
アモルファスシリコンキャップ層によって前記被覆が提供される、態様22に記載の方法。
《態様24》
前記アニーリングされた堆積物が、約15Ω/sq〜約60Ω/sqのシート抵抗を有する、態様21〜23のいずれか一項に記載の方法。
《態様25》
ドーパントドライブイン後の前記基材表面が、約100Ω/sq以下のシート抵抗を有する、態様21〜23のいずれか一項に記載の方法。
《態様26》
レーザーを基材に照射して前記ドーパントを堆積物に衝突させ、かつドーパントを基材表面内にドライブインさせることを含む、態様21〜25のいずれか一項に記載の方法。
《態様27》
元素シリコン/ゲルマニウムナノ粒子の堆積物を表面に有するコーティングされた基材であって、前記堆積物が、炭素が約5原子パーセント以下であり、かつ約200Ω/sq以下のシート抵抗を有する、コーティングされた基材。
《態様28》
前記元素シリコン/ゲルマニウムナノ粒子が、約50nm以下の平均一次粒子サイズを有し、前記元素シリコンナノ粒子が、少なくとも約0.25原子パーセントのドーパント濃度を有する、態様27に記載のコーティングされた基材。
《態様29》
前記基材表面が、元素シリコンを含有する、態様27又は態様28に記載のコーティングされた基材。
《態様30》
前記元素シリコン/ゲルマニウムナノ粒子堆積物が、元素シリコン堆積物を本質的に含まない領域とシリコン堆積物を有する領域とに、基材表面に沿ってパターン化されている、態様27〜29のいずれか一項に記載のコーティングされた基材。
《態様31》
前記元素シリコン/ゲルマニウム堆積物がドープされている、態様27〜30のいずれか一項に記載のコーティングされた基材。
《態様32》
前記元素シリコン/ゲルマニウム堆積物が、遷移金属汚染が約100ppb以下である、態様27〜31のいずれか一項に記載のコーティングされた基材。
《態様33》
前記元素シリコン/ゲルマニウム堆積物が融合ナノ粒子を有する、態様27〜32のいずれか一項に記載のコーティングされた基材。
《態様34》
前記元素シリコン/ゲルマニウムナノ粒子堆積物が、約150Ω/sq以下のシート抵抗を有する、態様33に記載のコーティングされた基材。
図1
図2
図3
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