特許第6271807号(P6271807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6271807スラリー重合プロセスでアルミニウムアルキル供給を調節するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271807
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】スラリー重合プロセスでアルミニウムアルキル供給を調節するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20180122BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20180122BHJP
   C08F 4/622 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   C08F2/01
   C08F10/02
   C08F4/622
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-505725(P2017-505725)
(86)(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公表番号】特表2017-514007(P2017-514007A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】EP2015059119
(87)【国際公開番号】WO2015165861
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】14166219.7
(32)【優先日】2014年4月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト・キュール
(72)【発明者】
【氏名】ロドリーゴ・カルバハル
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルドゥス・マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】エルケ・ダム
(72)【発明者】
【氏名】フィル・パイマン
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−504185(JP,A)
【文献】 米国特許第06355742(US,B1)
【文献】 特開2000−063405(JP,A)
【文献】 特開昭49−083784(JP,A)
【文献】 米国特許第03931135(US,A)
【文献】 特開昭58−164606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08F 2/01
C08F 4/622
C08F 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ステップを含む一つの反応器セットアップ中または2つ以上の重合反応器の反応器カスケードでポリエチレンを製造するためのスラリー重合方法:
a)重合反応器に一定量のエチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、及び新たな希釈剤、一定濃度のアルミニウムアルキルを含むリサイクル懸濁媒体、またはその混合物から選択された希釈剤、及び任意に一定量の水素及び任意に一定量の一つ以上のC〜C10アルファオレフィンを供給するステップ;
b)60℃〜95℃の反応器温度及び0.15MPa〜3MPaの反応器圧力で重合反応機内で前記量のエチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、希釈剤及び任意に水素及び C〜C10アルファオレフィンを接触させ、粒状ポリエチレン及び懸濁媒体を含むスラリー生成物を形成させるステップ;
c)前記スラリー生成物を重合反応器から排出するステップ;
d)前記反応器カスケードの第2重合反応器に前記スラリー生成物を任意に供給するステップ;
d’)前記重合反応器に追加量のエチレン、新たな希釈剤、一定濃度のアルミニウムアルキルを含むリサイクル懸濁媒体、またはその混合物から選択された希釈剤、及び任意に追加量の水素及びC〜C10アルファオレフィンを供給し;
60℃〜95℃の反応器温度及び0.15MPa〜3MPaの反応器圧力で重合反応内で、重合反応器に供給されたスラリー生成物及び追加量のエチレン、希釈剤、及び任意に水素及びC〜C10アルファオレフィンを接触させ、スラリー生成物中に追加量のポリエチレンを形成させ;
前記スラリー生成物を重合反応器から排出させるステップ;
e)ステップd’)で得られたスラリー生成物を反応器カスケードの第3重合反応器に任意に供給するステップ;
e’)ステップd’)のすべての動作を前記第3重合反応器において繰り返すステップ;
f)反応器カスケードのすべての追加重合反応器のために、前の重合反応器のスラリー生成物を前記追加重合反応器に供給するステップを任意に繰り返すステップ;
f’)ステップd’)のすべての動作を前記追加重合反応器において繰り返すステップ;
g)前記一つの重合反応器セットアップの重合反応器から、または反応器カスケードの最後の重合反応器から排出されたスラリー生成物を分離器に供給するステップ;
h)前記分離器中で懸濁媒体から前記粒状ポリエチレンを分離するステップ;
i)前記一つの重合反応器セットアップの重合反応器に、または前記反応器カスケードの少なくとも一つの重合反応器にリサイクル懸濁媒体として、分離器中にスラリー生成物から分離された懸濁媒体の少なくとも一部をリサイクルさせるステップ;
j)熱量測定によって、リサイクル懸濁媒体中にアルミニウムアルキルの濃度を決定するステップ;及び
k)前記一つの重合反応器セットアップの重合反応器に、または前記反応器カスケードの第1重合反応器に新たなアルミニウムアルキルの量を調節して、リサイクル懸濁媒体中に標的アルミニウムアルキル濃度を維持させるステップ。
【請求項2】
前記リサイクル懸濁媒体中に標的アルミニウムアルキル濃度が、0.05mmol/l〜3mmol/lである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記新たなアルミニウムアルキルが、トリアルキルアルミニウム化合物を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記トリアルキルアルミニウム化合物が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム、及びトリ−n−ヘキシルアルミニウムから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記新たなアルミニウムアルキルが、トリ−イソブチルアルミニウムまたはトリエチルアルミニウムを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記新たなアルミニウムアルキルが、トリエチルアルミニウムを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スラリー重合方法が、一つの重合反応器セットアップで行われる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記スラリー重合方法が、反応器カスケードで行われる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応器カスケードシステムが、2つの反応器を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記反応器カスケードシステムが、3つの反応器を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器カスケードの第1反応器に供給された希釈剤が、新たな希釈剤である、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記一つの重合反応器セットアップの重合反応器から、または反応器カスケードの最後の重合反応器から排出されたスラリー生成物は、第2粒状ポリエチレン及び第2懸濁媒体を含む少なくとも一つの追加的なスラリー生成物と共に、第1粒状ポルリエチルリン及び第1懸濁媒体を含む第1スラリー生成物として、組み合わせされ、こうして、組み合わせされたスラリー生成物を形成し、前記組み合わせされたスラリー生成物は、分離器に供給され、こうして、分離器内で前記第1ポリエチレン及び第2ポリエチレンを含む組み合わせされた粒状ポリエチレンを前記第1懸濁媒体及び前記第2懸濁媒体を含む組み合わせされた懸濁媒体から分離し、リサイクル懸濁媒体として、前記組み合わせされたスラリー生成物から分離された組み合わせされた懸濁媒体の少なくとも一部を前記一つの重合反応器セットアップの重合反応器に、または前記反応器カスケードの少なくとも一つの重合反応器にリサイクル懸濁媒体として、リサイクルさせる、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリエチレンが、0.935g/cm〜0.970g/cm範囲の密度を有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エチレン重合プロセスにおける供給調節方法に関する。より詳細には、本開示は、一定の収率及び選択性を維持するために、スラリーエチレン重合プロセスでアルミニウムアルキルの供給を調節するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンを含有する製品の使用が知られている。ポリエチレンは、一般に、最終用途に適用するためのガイドとして使用されているそれらの密度に応じて分類される。例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)は、高い引張強度を有するコンパクトな構造となる低い分岐度を有する。これは、パイプ及びドラムなどの製品に使用されている。中密度ポリエチレン(MDPE)は、高いレベルの内薬品性だけでなく、耐衝撃性及び耐落下性を有する。これは、収縮フィルムなどの製品に使用されている。低密度ポリエチレン(LDPE)は、分岐上に分岐を有するランダムな長鎖分岐を有する。これは、高温及び衝撃に対する良好な耐性を提供することができ、クリングフィルムやスクイズボトルなどの用途に使用されている。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、実質的に直鎖状構造を有しているだけでなく、その短鎖分岐のため低密度を有している。これは、ケーブルのストレッチフィルム及びコーティングなどの用途に使用されている。
【0003】
様々な方法などがポリエチレンを製造するために使用することができる。エチレンスラリー重合プロセスにおいて、ヘキサンなどの希釈剤がエチレン単量体、共単量体及び水素を溶解するために使用され、前記単量体(など)は、触媒を使用して重合される。重合後、形成された重合体生成物は、液体媒体の中に懸濁させたスラリーとして存在する。例えば、WO2012/028591A1、US6,204,345B1、及びWO2005/077992A1に示した典型的な多反応器カスケードプロセスにおいて、単量体(など)、水素、触媒及び希釈剤は、3つの反応器のうち、一番目の反応器に供給され、ここで前記希釈剤及び未反応単量体内に含有された重合体粒子からスラリーが形成される。反応器は、並列または直列に作動されることができ、単量体の種類/量及び条件は、単峰性(分子量分布)または多峰性ポリエチレン材料を含む様々なポリエチレン材料を製造するために反応器ごとに変えることができる。このような多峰性組成物は、様々な用途に使用され、例えば、WO2012/069400A1は、ブロー成形のための三峰性ポリエチレン組成物を開示する。
【0004】
チーグラー型触媒は、エチレンの重合プロセスに使用されている。これらの触媒は、触媒上にチタンまたはバナジウムサイトを活性化するために共触媒活性化剤としてアルミニウムアルキル化合物を使用する。従って、反応器内に存在する共触媒の量は、エチレンのスラリー重合プロセスの収率及び選択性を決定する際に、特に、各反応器で異なる重合体を製造することができるマルチ反応器システムで、重要な役割を果たすが、同一の共触媒は、各反応器に順に流動する。
【0005】
例えば、WO95/07941A1、WO96/39450A1、WO2004/085488A2、及びEP0206794A1に記載されたように、酸素含有極性分子などの様々な化合物がチーグラー型触媒を被毒してその収率及び選択性を低下させ得るものとして知られている。これは、例えば、前記毒などが触媒のTiClまたはMgCl担体と相互作用するとき、発生することができる。WO2004/085488A2に記載されたように、重合溶液中に毒のスカベンジャーとして、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム及びトリ−n−ヘキシルアルミニウムなどのアルミニウムアルキル類を使用することが知られている。しかしながら、このようなアルミニウムアルキル材料は前述したように、触媒重合用共触媒であり、従って、触媒毒を消去する方法は、エチレン重合用アルミニウムアルキル共触媒の利用可能性を変化させる。
【0006】
通常的なエチレン重合プロセスは、一般的に、アルミニウムアルキル共触媒の含量が触媒の活性及び生成されたポリエチレンの特性に影響を及ぼすため、反応器内のAl/Ti比を標的とする。しかしながら、供給原料中に酸素含有毒の含量が変化する場合、効果的なAl/Tiも変化するが、その理由は、活性アルミニウムのレベルがアルミニウムアルキルが酸素含有毒と反応するに応じて減少されるためである。これは、反応器の収率及び製品特性の変化をもたらす。さらに、重合プラントは、周期的に触媒を変化させて異なる最終用途を標的とするポリエチレンの等級を生成し、例えば、射出成形等級を膜等級に切り替える。このような触媒は、毒に対して異なる感度及びそれらがもたらすことができる効果的なアルミニウムアルキルの変動レベルを有することができる。複数のスラリー反応器が直列に作動される状況がさらに要求され、ここで、ポリエチレン生成物内の活性触媒は、反応器から反応器に流れ、また、エチレンは、各反応器に供給されるが、新たなアルミニウムアルキルは、第1反応器にのみ供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、供給汚染物質を変化させる反応器収率及び選択性に対する逆効果を最小化するエチレン重合プロセスに対する必要性が継続存在する。
【0008】
アルミニウムアルキル供給が調節されるエチレンスラリー重合方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の主題は、下記ステップを含む一つの反応器セットアップ中または2つ以上の重合反応器の反応器カスケードでポリエチレンを製造するためのスラリー重合方法に関する:
a)重合反応器に一定量のエチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、及び新たな希釈剤、一定濃度のアルミニウムアルキルを含むリサイクル懸濁媒体、またはその混合物から選択された希釈剤、及び任意に一定量の水素及び任意に一定量の一つ以上のC〜C10アルファオレフィンを供給するステップ;
b)60℃〜95℃の反応器温度及び0.15MPa〜3MPaの反応器圧力で重合反応器内で前記量のエチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、希釈剤及び任意に水素及びC〜C10アルファオレフィンを接触させ、粒状ポリエチレン及び懸濁媒体を含むスラリー生成物を形成させるステップ;
c)前記スラリー生成物を重合反応器から排出するステップ;
d)前記反応器カスケードの第2重合反応器に前記スラリー生成物を任意に供給し、前記重合反応器に追加量のエチレン、新たな希釈剤、一定濃度のアルミニウムアルキルを含むリサイクル懸濁媒体、またはその混合物から選択された希釈剤、及び任意に追加量の水素及びC〜C10アルファオレフィンを供給し;
60℃〜95℃の反応器温度及び0.15MPa〜3MPaの反応器圧力で重合反応器内で、重合反応器に供給されたスラリー生成物及び追加量のエチレン、希釈剤、及び任意に水素及びC〜C10アルファオレフィンを接触させ、スラリー生成物中に追加量のポリエチレンを形成させ;
前記スラリー生成物を重合反応器から排出させるステップ;
e)ステップd)で得られたスラリー生成物を反応器カスケードの第3重合反応器に任意に供給した後、ステップd)のすべての動作を繰り返すステップ;
f)反応器カスケードのすべての追加重合反応器に対してステップe)を任意に繰り返すステップ;
g)前記一つの重合反応器セットアップの重合反応器から、または反応器カスケードの最後の重合反応器から排出されたスラリー生成物を分離器に供給するステップ;
h)前記分離器中で懸濁媒体から前記粒状ポリエチレンを分離するステップ;
i)前記一つの重合反応器セットアップの重合反応器に、または前記反応器カスケードの少なくとも一つの重合反応器にリサイクル懸濁媒体として、分離器中にスラリー生成物から分離された懸濁媒体の少なくとも一部をリサイクルさせるステップ;
j)リサイクル懸濁媒体中にアルミニウムアルキルの濃度を決定するステップ;及び
k)前記一つの重合反応器セットアップの重合反応器に、または前記反応器カスケードの第1重合反応器に新たなアルミニウムアルキルの量を調節して、リサイクル懸濁媒体中に標的アルミニウムアルキル濃度を維持させるステップ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
関連分野の通常の技術者がその主題を作って利用することを補助するために、添付された図面に対して説明する。
図1】一つの反応器システムのエチレンスラリー重合プロセスの例示的な流れ図を示す。
図2】3つの反応器システムのエチレンスラリー重合プロセスの例示的な流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本出願人は、現在、エチレンのスラリー重合反応器システムにリサイクルされる懸濁媒体中にアルミニウムアルキルの濃度を調節することにより、反応器等級または触媒毒レベルの変化にかかわらず、反応器収率及び選択性をもっとよく維持することができると考える。
【0012】
本開示の方法は、反応器に一定量のエチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、及び新たな希釈剤、リサイクル懸濁媒体、またはその混合物から選択された希釈剤、及び任意に一定量の水素及び任意に一定量のC〜C10アルファオレフィンを共単量体として供給するステップを含むポリエチレンを製造するためのスラリー重合方法に関する。前記反応器は、一つの重合反応器セットアップの単一反応器、または反応器カスケードの第1反応器であることができる。エチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、希釈剤、及び任意の共単量体及び水素が60℃〜95℃の反応器温度及び0.15MPa〜3MPaの反応器圧力で反応器スラリー中で反応する。重合反応器に新たなアルミニウムアルキルの供給を調節して、リサイクル懸濁媒体中に標的アルミニウムアルキル濃度を維持させる。
【0013】
ポリエチレンスラリー製造方法
ポリエチレンを製造するための方法は、触媒、希釈剤、例えば、ヘキサンまたはイソブタン、及び任意に、水素及び一つ以上の共単量体の存在下でスラリー重合中にエチレンを使用する。前記重合は、希釈剤、未反応単量体及び触媒中に重合体粒子から形成された懸濁スラリーに進行する。本開示に記載された方法によって得られたポリエチレン重合体は、エチレン単独重合体、または40重量%以下のC−C10−1−アルケンを含むエチレンの共重合体であることができる。好ましくは、共単量体は、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、またはこれらの混合物から選択される。スラリー重合プロセスは、60℃〜95℃、好ましくは65℃〜90℃、及びより好ましくは70℃〜85℃の反応器温度、及び0.15MPa〜3MPa、好ましくは0.2MPa〜2MPa、より好ましくは0.25MPa〜1.5MPaの反応器圧力で行われる。
【0014】
ポリエチレンスラリー製造方法は、少なくとも一つの重合反応器で行われる。従って、一つの実施形態において、本開示の主題は、下記ステップを含むポリエチレンを製造するためのスラリー重合方法に関する。
a)重合反応器に一定量のエチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、及び新たな希釈剤、一定濃度のアルミニウムアルキルを含むリサイクル懸濁媒体、またはその混合物から選択された希釈剤、及び任意に一定量の水素及び任意に一定量の一つ以上のC〜C10アルファオレフィンを供給するステップ;
b)60℃〜95℃の反応器温度及び0.15MPa〜3MPaの反応器圧力で重合反応器内で前記量のエチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、希釈剤及び任意に水素及びC〜C10アルファオレフィンを接触させ、粒状ポリエチレン、及び懸濁媒体を含むスラリー生成物を形成させるステップ;
c)前記スラリー生成物を重合反応器から排出させるステップ;
d)前記スラリー生成物を分離器に供給するステップ;
e)前記分離器中で前記懸濁媒体から前記粒状ポリエチレンを分離するステップ;
f)前記リサイクル懸濁媒体として、分離器中にスラリー生成物から分離された懸濁媒体の少なくとも一部を重合反応器でリサイクルさせるステップ;
g)リサイクル懸濁媒体中にアルキルアルミニウムの濃度を決定するステップ;及び
h)前記重合反応器に供給された新たなアルミニウムアルキルの量を調節して、リサイクル懸濁媒体中に標的アルミニウムアルキル濃度を維持させるステップ。
【0015】
好ましくは、ポリエチレンスラリー製造方法は、並列または直列に作動され得る複数の反応器で行われる。これは、特に、反応器カスケードシステムにおいて、すなわち、直列に作動する反応器で前記ポリエチレンスラリー製造方法を行うのが好ましい。このような反応器カスケードシステムは、2つ、3つまたはそれ以上の反応器を備えることができる。最も好ましくは、前記方法は、直列に作動する3つの反応器カスケードプロセスで行われる。
【0016】
従って、好ましい実施形態において、本開示の主題は、下記ステップを含むポリエチレンを製造するためのスラリー重合方法に関する。
a)2つの反応器の反応器カスケードの第1重合反応器に一定量のエチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、及び新たな希釈剤、一定濃度のアルミニウムアルキルを含むリサイクル懸濁媒体、またはその混合物から選択された希釈剤、及び任意に一定量の水素及び任意に一定量の一つ以上のC〜C10アルファオレフィンを供給するステップ;
b)60℃〜95℃の反応器温度及び0.15MPa〜3MPaの反応器圧力で第1重合反応器内で前記量のエチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、希釈剤及び任意に水素及びC〜C10アルファオレフィンを接触させ、粒状ポリエチレン及び懸濁媒体を含むスラリー生成物を形成させるステップ;
c)前記スラリー生成物を第1重合反応器から排出するステップ;
d)前記反応器カスケードの第2重合反応器に前記スラリー生成物を供給し、前記第2重合反応器に追加量のエチレン、新たな希釈剤、一定濃度のアルミニウムアルキルを含むリサイクル懸濁媒体、またはその混合物から選択された希釈剤、及び任意に追加量の水素及びC〜C10アルファオレフィンを供給し;
60℃〜95℃の反応器温度及び0.15MPa〜3MPaの反応器圧力で重合反応器内で、重合反応器に供給されたスラリー生成物及び追加量のエチレン、希釈剤、及び任意に水素及びC〜C10アルファオレフィンを接触させ、スラリー生成物中に追加量のポリエチレンを形成させ;
前記スラリー生成物を第2重合反応器から排出させるステップ;
e)前記反応器カスケードの第2重合反応器から排出されたスラリー生成物を分離器に供給するステップ;
f)前記分離器中で懸濁媒体から前記粒状ポリエチレンを分離するステップ;
g)リサイクル懸濁媒体として、分離器中にスラリー生成物から分離された懸濁媒体の少なくとも一部を前記反応器カスケードの少なくとも一つの重合反応器でリサイクルさせるステップ;
h)リサイクル懸濁媒体中にアルミニウムアルキルの濃度を決定するステップ;及び
i)前記反応器カスケードの第1重合反応器に供給された新たなアルミニウムアルキルの量を調節して、リサイクル懸濁媒体中に標的アルミニウムアルキル濃度を維持させるステップ。
【0017】
最も好ましい実施形態において、本開示の主題は、下記ステップを含むポリエチレンを製造するためのスラリー重合方法に関する。
a)3つの反応器の反応器カスケードの第1重合反応器に一定量のエチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、及び新たな希釈剤、一定濃度のアルミニウムアルキルを含むリサイクル懸濁媒体、またはその混合物から選択された希釈剤、及び任意に一定量の水素及び任意に一定量の一つ以上のC〜C10アルファオレフィンを供給するステップ;
b)60℃〜95℃の反応器温度及び0.15MPa〜3MPaの反応器圧力で第1重合反応器内で前記量のエチレン、チーグラー触媒、新たなアルミニウムアルキル、希釈剤及び任意に水素及びC〜C10アルファオレフィンを接触させ、粒状ポリエチレン及び懸濁媒体を含むスラリー生成物を形成させるステップ;
c)前記スラリー生成物を第1重合反応器から排出させるステップ;
d)前記反応器カスケードの第2重合反応器に前記スラリー生成物を供給し、前記第2重合反応器に追加量のエチレン、新たな希釈剤、一定濃度のアルミニウムアルキルを含むリサイクル懸濁媒体、またはその混合物から選択された希釈剤、及び任意に追加量の水素及びC〜C10アルファオレフィンを供給し;
60℃〜95℃の反応器温度及び0.15MPa〜3MPaの反応器圧力で重合反応器内で、重合反応器に供給されたスラリー生成物及び追加量のエチレン、希釈剤、及び任意に水素及びC〜C10アルファオレフィンを接触させ、スラリー生成物中に追加量のポリエチレンを形成させ;
前記スラリー生成物を第2重合反応器から排出するステップ;
e)前記第2重合反応器から排出されたスラリー生成物を反応器カスケードの第3重合反応器に供給し、前記第3重合反応器に追加量のエチレン、新たな希釈剤、一定濃度のアルミニウムアルキルを含むリサイクル懸濁媒体、またはその混合物から選択された希釈剤、及び任意に追加量の水素及びC〜C10アルファオレフィンを供給し;
60℃〜95℃の反応器温度及び0.15MPa〜3MPaの反応器圧力で第3重合反応器内で前記重合反応器に供給されたスラリー生成物、及び追加量のエチレン、希釈剤、及び任意に水素及びC〜C10アルファオレフィンを接触させ、前記スラリー生成物中に追加量のポリエチレンを形成させ;
前記スラリー生成物を重合反応器から排出するステップ;
f)前記反応器カスケードの第3重合反応器から排出された前記スラリー生成物を分離器に供給するステップ;
g)前記懸濁媒体から前記粒状ポリエチレンを前記分離器内で分離するステップ;
h)前記リサイクル懸濁媒体として、分離器中のスラリー生成物から分離された懸濁媒体の少なくとも一部を前記反応器カスケードの少なくとも一つの重合反応器にリサイクルさせるステップ;
i)前記リサイクル懸濁媒体中にアルミニウムアルキルの濃度を決定するステップ;及び
j)前記反応器カスケードの第1重合反応器に供給された新たなアルミニウムアルキルの量を調節して、前記リサイクル懸濁媒体中に標的アルミニウムアルキル濃度を維持させるステップ。
【0018】
複数の反応器で前記ポリエチレンスラリー製造方法を行うとき、触媒は、各反応器に個別的に並列に供給するとか、または好ましくはカスケード多重反応器システムにおいて、第1重合反応器に供給することができ、ここで、第1重合反応器から触媒は、第2重合反応器に流れ、次いで、それぞれの反応器スラリー生成物中に後続重合反応器に流れる。操作が並列の場合、前記一つの重合反応器セットアップの重合反応器から排出されたスラリー生成物、または前記スラリー重合プロセスが反応器カスケードで行われる場合、前記カスケードの最後の重合反応器から排出されたスラリー生成物は、前記第2懸濁媒体及び第2粒状ポリエチレンを含む少なくとも一つの追加的なスラリー生成物と共に、第1懸濁媒体及び第1粒状ポリエチレンを含む第1スラリー生成物として組み合わせされ、こうして、組み合わせされたスラリー生成物を形成させ、前記組み合わせされた粒状ポリエチレンは、前記第1懸濁媒体及び前記第2懸濁媒体を含む組み合わせされた懸濁媒体から前記第1粒状ポリエチレン及び前記第2粒状ポリエチレンを含む。前記組み合わせスラリー生成物から分離された組み合わせされた懸濁液の少なくとも一部は、前記一つの重合反応器セットアップの重合反応器に、または前記反応器カスケードの少なくとも一つの重合反応器にリサイクル懸濁媒体として、リサイクルされる。操作が並列の場合、ポリエチレンスラリー製造方法は、好ましくは、反応器システムのすべての重合反応器が並列に作動する方式で、すなわち、触媒が重合反応器のそれぞれに供給される方式で行われる。
【0019】
反応器に供給された希釈剤は、新たな希釈剤、または反応器スラリー中に粒状ポリエチレンから分離された後、直接リサイクルされる希釈剤、すなわち、リサイクル懸濁媒体、またはこれらの組み合わせであることができる。新たな希釈剤は、新たな未処理された材料、または不純物、例えば、低沸点成分またはワックスを除去するために処理された反応器スラリーから以前に分離された希釈剤であることができる。一般的に、リサイクル懸濁媒体及び新たな希釈剤の任意の組み合わせは、直列に作動するとき、多重反応器システムにおいて、重合反応器に、供給することができるとか、または並列に作動するとき、反応器のそれぞれに供給することができる。分離器で粒状ポリエチレンから分離された懸濁媒体及び、従って、リサイクル懸濁媒体は、希釈剤、アルミニウムアルキル及び共単量体、例えば、1−ブテン、及びワックスを含む。前記1−ブテンは、通常0%〜5%のレベルで存在する。前記ワックスは、通常0%〜5%の量で存在する。従って、リサイクル懸濁媒体は、一つ以上の重合反応器で重合混合物の成分などと、または重合混合物の成分中に不純物と反応じない一定濃度のアルミニウムアルキルを有する。リサイクル懸濁媒体中にアルミニウムの濃度は、好ましくは、0.05mmol/l〜3mmol/l、より好ましくは、0.5mmol/l〜2mmol/lである。好ましくは、カスケードモードで作動するとき、反応器カスケードシステムの第1重合反応器に供給される希釈剤は、新たな希釈剤、任意に新たな希釈剤と組み合わせされたリサイクル懸濁媒体は、後続重合反応器に供給される。特に、反応器カスケードシステムの第1重合反応器に供給された希釈剤は、新たな希釈剤であり、後続重合反応器に供給された希釈剤は、リサイクル懸濁媒体である。
【0020】
好ましくは、重合プロセスによって生産されたポリエチレン重合体は、好ましくは、0.935g/cm〜0.970g/cm範囲の密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂である。より好ましくは、密度は、0.94g/cm〜0.970g/cmである。最も好ましくは、密度は、0.945g/cm〜0.965g/cmの範囲である。密度は、所定の熱履歴を用いて製造され、180℃、20MPaで8分間加圧し、その後に、沸騰水中に30分間結晶化された厚さ2mmの圧縮成形プラークを使用し、DIN EN ISO 1183−1:2004、方法A(浸漬)によって測定する。
【0021】
好ましくは、HDPE樹脂は、1dg/分〜100dg/分、より好ましくは、1.5dg/分〜50dg/分、及び最も好ましくは、2dg/分〜35dg/分のメルトインデックス(MI21.6)を有する。MI21.6は、190℃の温度及び21.6kgの荷重でDIN EN ISO 1133:2005、条件Gによって測定する。
【0022】
好ましくは、HDPE樹脂は、エチレン繰り返し単位の90重量%〜99.8重量%及びC〜C10アルファオレフィンの繰り返し単位の0.2重量%〜10重量%を含むエチレン単独重合体または共重合体である。前記C〜C10アルファオレフィンは、好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、及びこれらの混合物を含む。
【0023】
触媒
重合は、好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒、すなわち、チタンまたはバナジウムの化合物、マグネシウム化合物及び任意に粒状無機酸化物を担体として含む、時には、チーグラー・ナッタ触媒として指定されるチーグラー型の触媒を使用して行う。
【0024】
チタン化合物は、好ましくは、チタンアルコキシハロゲン化合物または様々なチタン化合物の混合物と共に、3価または4価チタンのハロゲン化物またはアルコキシドから選択される。適切なチタン化合物の例は、TiBr、TiBr、TiCl、TiCl、Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(O−i−C)Cl、Ti(O−n−C)Cl、Ti(OC)Br、Ti(O−n−C)Br、Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O−n−CCl、Ti(OCBr、Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O−n−CCl、Ti(OCBr、Ti(OCH、Ti(OCまたはTi(O−n−Cである。ハロゲンとして塩素を含むチタン化合物を使用するのが好ましい。同様に、チタン他にもハロゲンのみ含むチタンハロゲン化物、及びこれらのうち、特にハロゲン化チタン及び特に四塩化チタンが好ましい。バナジウム化合物のうち、バナジウムハロゲン化物、バナジウムオキシハロゲン化物、バナジウムアルコシド、バナジウムアセチルアセトネートが好ましい。酸化状態3〜5でバナジウム化合物が好ましい。
【0025】
固体成分の製造において、好ましくは、マグネシウムの少なくとも一つの化合物が使用される。このような類型の適切な化合物は、ハロゲン含有マグネシウム化合物、例えば、ハロゲン化マグネシウム、及び特に、塩化物または臭化物;及びハロゲン化マグネシウムが通常の方法で、例えば、ハロゲン化剤との反応によって、収得することができるハロゲン化マグネシウムである。好ましくは、ハロゲンは、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素、またはハロゲンの2以上の混合物である。より好ましくは、ハロゲンは、塩素または臭素である。最も好ましくは、ハロゲンは、塩素である。
【0026】
可能なハロゲン含有マグネシウム化合物は、塩化マグネシウム、または臭化マグネシウムである。ハロゲン化物が得られることができるマグネシウム化合物は、例えば、マグネシウムアルキル、マグネシウムアリール、マグネシウムアルコキシ化合物またはマグネシウムアリールオキシ化合物またはグリニャール化合物である。適切なハロゲン化剤は、例えば、ハロゲン、ハロゲン化水素、SiClまたはCClである。好ましくは、塩素または塩化水素は、ハロゲン化剤である。
【0027】
マグネシウムの適切なハロゲンを含まない化合物の例としては、ジエチルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−sec−ブチルマグネシウム、ジ−tert−ブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、n−ブチルエチルマグネシウム、n−ブチル−sec−ブチルマグネシウム、n−ブチルオクチルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジ−n−プロピルオキシマグネシウム、ジイソプロピルオキシマグネシウム、ジ−n−ブチルオキシマグネシウム、ジ−sec−ブチルオキシマグネシウム、ジ−tert−ブチルオキシマグネシウム、ジアミルオキシマグネシウム、n−ブチルオキシエトキシマグネシウム、n−ブチルオキシ−sec−ブチルオキシマグネシウム、n−ブチルオキシオクチルオキシマグネシウム、及びジフェノキシマグネシウムである。これらのうち、n−ブチルエチルマグネシウムまたはn−ブチルオクチルマグネシウムを使用するのが好ましい。
【0028】
グリニャール化合物の例は、塩化メチルマグネシウム、塩化エチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、ヨウ化エチルマグネシウム、塩化n−プロピルマグネシウム、塩化n−ブチルマグネシウム、臭化n−ブチルマグネシウム、塩化sec−ブチルマグネシウム、臭化sec−ブチルマグネシウム、塩化tert−ブチルマグネシウム、臭化tert−ブチルマグネシウム、塩化ヘキシルマグネシウム、塩化オクチルマグネシウム、塩化アミルマグネシウム、塩化イソアミルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、及び臭化フェニルマグネシウムである。
【0029】
粒状固体を製造するためのマグネシウム化合物としては、二塩化マグネシウムまたは二臭化マグネシウムジとは別に、前記ジ(C−C10−アルキル)マグネシウム化合物を使用するのが好ましい。好ましくは、チーグラー触媒は、チタン、ジルコニウム、バナジウム及びクロムから選択された遷移金属を含む。
【0030】
チーグラー触媒は、好ましくは、ポンピングに適したスラリーを形成するために、混合タンク中に、使用された希釈剤、例えば、ヘキサンと触媒を先に混合してスラリー反応器に添加する。好ましくは、重合反応器にポンピングされた触媒スラリー中の触媒の濃度は、触媒化合物のチタン含量に対して10mmol/l〜150mmol/lである。好ましくは、容積型ポンプ、例えば、膜ポンプは、触媒スラリーをスラリー重合反応器へ移動させるために使用される。
【0031】
共触媒
チーグラー型触媒は、アルミニウムアルキル共触媒活性化剤の存在下で重合される。アルミニウムアルキルは、好ましくは、トリアルキルアルミニウム化合物から選択される。より好ましくは、アルミニウムアルキルは、トリエチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEAL)、トリ−イソブチルアルミニウム(TIBAL)、またはトリ−n−ヘキシルアルミニウム(TNHAL)から選択される。最も好ましくは、アルミニウムアルキルは、TEALである。
【0032】
新たなアルミニウムアルキルは、このようなスラリー反応器に添加することができる。好ましくは、アルミニウムアルキルは、混合タンクで使用された希釈剤、例えば、ヘキサンとアルミニウムアルキルを先に混合して添加する。好ましくは、スラリー重合反応器にポンピングされた溶液中のアルミニウムアルキルの濃度は、50mmol/l〜600mmol/lである。好ましくは、容積型ポンプ、例えば、膜ポンプは、アルミニウムアルキルを重合反応器へ移動させるために使用される。
【0033】
エチレン
エチレンスラリー重合プロセスで使用するためのエチレンは、酸素含有極性分子などの不純物を含有することができる。酸素含有極性分子は、水、グリコール、フェノール、エーテル、ケトンなどのカルボニル化合物、アルデヒド、カルボン酸、エステル、脂肪酸及び二酸化硫黄及び三酸化硫黄、及び硫化カルボニルを含むことができる。存在する場合、酸素含有極性化合物は、0.1体積ppm〜50体積ppmの範囲でエチレン中に存在する。
【0034】
重合反応器に供給されたアルミニウムアルキルは、エチレン重合反応で部分的に消費され、前述したように、アルミニウムアルキル共触媒は、触媒上のTiまたはVサイトを活性化するとか、またはこれは、エチレンまたはヘキサン、1−ブテン及び水素のような他の供給流と共にスラリー重合反応器に入って行く酸素含有極性化合物と反応によって部分的に不活性化することができる。これらの不純物中に、酸素は、アルミニウムアルキルと化学的に結合し、こうして、スラリー重合反応器中で共触媒のエチレン重合反応性を妨害する。従って、リサイクル懸濁媒体中のアルミニウムアルキルの濃度は、同一類型及び濃度の新たなアルミニウムアルキルから予想されるものよりも低く、このような差は、触媒との反応によってアルミニウムアルキルの消費の結果であり、不活性化は、供給流の不純物と反応によって生ずる。
【0035】
先ず、単一エチレンスラリー重合反応器100を使用した本開示の実施形態を示す図1に対して言及する。触媒は、ライン121を介して触媒混合タンク500内に導入され、希釈剤は、ライン120を介して導入される。混合触媒スラリーは、ミキサーモーター102、回転軸103、インペラー104及び冷却ジャケット101が備えられたスラリー重合反応器100内にライン113及び114を介してポンプ501によってポンピングされる。反応器スラリーは、ライン116を使用して冷却器105を介して外部冷却のために送られた後に、エチレンスラリー重合反応器100内に再び送られる。
【0036】
アルミニウムアルキル供給流は、ライン106を介して新たなアルミニウムアルキル材料を、また、ライン107を介して希釈剤を共触媒混合タンク400に投入して製造する。混合物は、膜型ポンプ401によってライン108及び109を介して共触媒制御バルブ600へポンピングされる。
【0037】
希釈剤供給流は、ライン110を介してポンピングされたリサイクル懸濁媒体、またはライン111を介してポンピングされた新たな希釈剤、またはライン112を介してエチレン重合反応器100に供給されるその混合物からなる。
【0038】
リサイクル懸濁媒体中のアルミニウムアルキルの濃度は、好ましくは、0.05mmol/l〜3mmol/l、より好ましくは、0.5mmol/l〜2mmol/lである。このような値は、アルミニウムアルキルの濃度に相応する熱上昇と共に、リサイクル懸濁媒体の試料にtert−ブタノールを添加する熱量測定によって得ることができる。このような測定システムは、ドイツのフランクフルト アム マインのビルフィンガー メンテナンス ズート ゲーエムベーハー(Bilfinger Maintenance Sud GmbH)から市販されている。
【0039】
エチレン及び共単量体は、ライン115を介してエチレンスラリー重合反応器100に投入される。
【0040】
スラリー生成物は、エチレン重合反応器100からライン117を介して排出され、分離装置200に送られ、ここで、懸濁媒体は、ポリエチレンから分離される。分離装置200は、一般的に、関連する温度及び圧力で粒状重合体から懸濁媒体の分離のための任意の適切な分離器であり得る。好ましくは、分離装置は、遠心分離器、デカンター、圧力フィルターまたはその組み合わせから選択される。より好ましくは、分離器は、遠心分離器である。
【0041】
懸濁媒体は、希釈剤、1−ブテンなどの共単量体、ワックス及び一定濃度の未反応のアルミニウムアルキルを含む。ポリエチレンは、制限されないが、炭化水素除去及び様々な添加剤と配合することを含む更なる処理のために、ライン119を介して仕上げセックションに向かう。分離された懸濁媒体は、少なくとも部分的にはライン110及び112を介してエチレンスラリー重合反応器100に再びリサイクルされ、過剰の懸濁媒体は、ライン118を介して保持タンク300へ送られる。新たな希釈剤は、また、ライン111を介して希釈剤供給ライン110に投入することができる。また、新たな希釈剤は、不純物、例えば、低沸点成分またはワックスを除去するために処理された保持タンク300から得られた新たな未処理された希釈剤または精製された希釈剤であり得る。
【0042】
新たなアルミニウムアルキルは、標的濃度でアルミニウムアルキルのレベルを維持するのに十分な量で、ポンプ401によってライン109を介して制御バルブ600へ伝達され得る。分析変換器601は、ライン110からリサイクル懸濁媒体の試料を取り、アルミニウムアルキル−含有懸濁媒体の分析に応答して、ライン110を介して流れるリサイクル懸濁媒体内にアルミニウムアルキルの重量分率を表すアルミニウムアルキル濃度信号602を伝達するように適合化する。信号602は、アナライザコントローラ603へプロセス変数入力として提供される。アナライザコントローラ603は、また、ライン110で流れるリサイクル懸濁媒体中に所望のアルミニウムアルキル濃度を表す設定点信号604が提供される。信号602に応答して、アナライザコントローラ603は、信号602と604との間の差を表す出力信号605を提供する。信号605は、ライン109に作動可能に配置されている制御バルブ600の位置を表すようにスケーリングされ、これは、信号604で表示される所望の濃度と実質的に等しいライン110に流れるリサイクル懸濁媒体の実際アルミニウムアルキル濃度を維持させるために必要である。信号605は、制御バルブ600のための調節信号としてアナライザコントローラ603から提供され、また、制御バルブ600は、それに応答して操作される。制御バルブは、エチレンスラリー重合反応器100に流れる新たなアルミニウムアルキルの量を増加させるようにさらに開放することができるとか、または前記流れを制限するように、さらに密接するようにすることができる。
【0043】
図1は、単一反応器を示す一方、本開示の主題は、また、複数の反応器が並列に駆動するシステムを含む。このように、供給流は、各反応器に別々に送られ、アルミニウム濃度は、各反応器に対する新たなアルミニウムアルキルの流量を調節することによって個別に調節されるだろう。並列に作動する他の反応器からのスラリー生成物は、ライン122を介して分離器200へ送られる。反応器100と同様に、組み合わせされたスラリー生成物は、分離器200から分離されるだろう。
【0044】
以下、直列に駆動する3つの反応器システムとして、すなわち、カスケードとして、本開示の方法の代替実施形態を示す図2に対して言及する。前述したように、製造された触媒スラリーは、ライン114を介してエチレンスラリー重合反応器100Aに流れる。
【0045】
アルミニウムアルキル供給流は、前述したように製造され、また、ライン109を介して制御バルブ600に流れる。希釈剤供給流は、ライン112Aを介してエチレン重合反応器100Aに供給される。エチレン及び共単量体は、それぞれライン115A、115B及び115Cを介して反応器100A、100B及び100Cに投入される。
【0046】
反応器に対する希釈剤供給流は、リサイクル懸濁媒体、新たな希釈剤、またはこれらの2つの混合物であることができ、ここで、希釈剤は、好ましくは、ヘキサンまたはイソブタンから選択される。
【0047】
反応器スラリーは、ライン117Aを介してエチレン重合反応器100Aを出て、エチレンスラリー重合反応器100Bに送られる。次に、反応器100Bから生成物スラリーは、反応器100Bを出て、ライン117Bを介して反応器100Cに送られる。次に、反応器100Cから生成物スラリーは、反応器100Cを出て、分離装置200に送られ、ここで、懸濁媒体は、固体粒状ポリエチレンから分離される。ポリエチレンは、制限されないが、炭化水素除去及び配合を含む更なる処理のために、ライン119を介して仕上げセックションに向かう。リサイクル懸濁媒体は、再び、ライン110及び112Aを介してエチレンスラリー重合反応器100A、100B及び/または100Cに再び、直接送られ、過剰の懸濁媒体は、ライン118を介して保持タンク300に送られる。新たな希釈剤は、また、ライン111を介して懸濁媒体リサイクルライン110に投入することができる。新たな希釈剤は、不純物を除去するために処理された保持タンク300から新たな未処理された希釈剤または精製された希釈剤であり得る。
【0048】
新たなアルミニウムアルキルは、リサイクル懸濁媒体中に0.05mmol/l〜3mmol/lのアルミニウムアルキルの濃度を維持するのに十分な量でライン109を介して制御バルブ600に供給される。これは、制御バルブ600によって達成される。分析変換器601は、ライン110からリサイクル懸濁媒体の試料を取り、アルミニウムアルキル−含有懸濁媒体の分析に応答して、ライン110を介して流れるリサイクル懸濁媒体内にアルミニウムアルキルの重量分率を表すアルミニウムアルキル濃度信号602を伝達するように適合化する。信号602は、アナライザコントローラ603にプロセス変数入力として提供される。アナライザコントローラ603は、また、ライン110を流れるリサイクル懸濁媒体中に所望のアルミニウムアルキルノングドを表す設定点信号604が提供される。信号602に応答して、アナライザコントローラ603は、信号602と604との間の差を表す出力信号605を提供する。信号605は、ライン109に作動可能に配置されている制御バルブ600の位置を表すようにスケーリングされ、これは、信号604に表示される所望の濃度と実質的に等しいライン110に流れるリサイクル懸濁媒体の実際アルミニウムアルキル濃度を維持させるのに必要である。信号605は、制御バルブ600のための調節信号として、アナライザコントローラ603から提供され、また、制御バルブ600は、それに応答して操作される。制御バルブは、エチレンスラリー重合反応器100に流れる新たなアルミニウムアルキルの量を増加させるようにさらに開放することができるとか、または、前記流れを制限するようにさらに密接するようにすることができる。
【0049】
本明細書に記載された本開示の主題の他の特徴、利点及び実施形態は、前述した開示内容を読んだ後、通常の技術者らに容易に明らかになるだろう。こうして、本開示の主題の具体的な実施形態は、かなり詳細に記載されたが、請求された開示内容の精神及び範囲を逸脱することなく、これらの実施形態の変形及び修正が行われることができる。
図1
図2