(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271857
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 37/14 20060101AFI20180122BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
H02K37/14 535F
H02K7/06 A
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-90109(P2013-90109)
(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2013-226038(P2013-226038A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2016年4月5日
(31)【優先権主張番号】201210121441.8
(32)【優先日】2012年4月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502458039
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン ブルキ
(72)【発明者】
【氏名】ミハ ファーラン
【審査官】
森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−256465(JP,A)
【文献】
特開昭60−043060(JP,A)
【文献】
特開平09−098563(JP,A)
【文献】
特開昭62−254653(JP,A)
【文献】
特開2001−095192(JP,A)
【文献】
特開平10−122322(JP,A)
【文献】
特開2000−125534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 37/14
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータであって、
多数の磁極を形成する複数の相巻線を有するステータと、
ロータコアと、該ロータコアに固定される永久磁石とを有するロータと、
前記ロータコアに結合される出力軸と、
前記ロータを前記ステータに磁気吸引して、予め設定された、対応するトルク変動を発生させるディテントトルクでもって、前記ロータを前記ステータに対して所望の回転方向に保持するように構成されるディテント機構であって、半径方向外側突出部を有する少なくとも1のディテントプレートを含み、当該半径方向外側突出部がディテントプレートを保持してハウジングとの間で磁気連結を完成させるようモータのハウジングと係合するディテント機構と、
を備え、
前記相巻線は、非対称であり、前記ディテントトルクと組み合わせる場合、出力トルクのピークの35%よりも小さい所望のトルクリップルを有する組み合わせ出力トルクを生成する異なる励起トルクを発生させる、モータ。
【請求項2】
前記所望のディテントトルクが、前記ピーク出力トルクの5%と50%との間にある、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記所定のディテントトルクが、前記ピーク出力トルクの15%から30%の間にある、請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記ディテントトルクが、前記励起トルクの少なくとも10%である、請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
前記ステータ相の数が2であり、第1の相巻線が発生する前記ピーク励起トルクが第2の相巻線のピーク励起トルクよりも少なくとも10%だけ小さい、請求項1から4の何れかに記載のモータ。
【請求項6】
前記2つの相巻線が、異なる巻回数を有し、異なる励起トルクを発生する、請求項5記載のモータ。
【請求項7】
前記ステータが、前記2つの相に対応する2つの半体を有し、異なる寸法及び/又は歯状磁極形態を有し、異なる励起トルクを発生する、請求項5記載のモータ。
【請求項8】
前記2つの相の励起トルクの間の差異は、1.5倍程度である、請求項5から7のいずれかに記載のモータ。
【請求項9】
前記ディテントトルク及び前記励起トルクが、振幅及び位相において最適な補償を得るためにトルクリップルを低減するように設計され、前記ディテントトルクの周波数が、前記励起トルクの周波数の2倍であり、前記ディテントトルクの最小/最大は前記励起トルクの最小/最大と同相である、請求項5記載のモータ。
【請求項10】
前記モータが、ステッピングモータである、請求項1から9のいずれかに記載のモータ。
【請求項11】
請求項10によるステッピングモータを組み込んだリニアアクチュエータ。
【請求項12】
前記出力軸の回転が阻止され、前記出力軸は、前記ロータの回転が前記出力軸の直線運動を引き起こすようにスクリュー機構によって前記ロータに結合され、前記スクリュー機構が高い効率を有する、請求項11に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項13】
前記スクリュー機構が、30%よりも大きなスクリューナット効率を有する、請求項12に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項14】
前記スクリュー機構が、40%と60%との間のスクリューナット効率を有する、請求項12に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項15】
リニアステッピングモータであって、
多数の磁極を形成する複数の相巻線を有するステータと、
ロータコアと、該ロータコアに固定される永久磁石とを有するロータと、
前記ロータコアの回転が直線運動を引き起こすように、スクリュー機構を介して前記ロータコアに結合される出力軸と、
前記ロータを前記ステータに磁気吸引して、予め設定されたディテントトルクでもって、前記ロータを前記ステータに対して所望の回転方向に保持するように構成されるディテント機構であって、半径方向外側突出部を有する少なくとも1のディテントプレートを含み、当該半径方向外側突出部がディテントプレートを保持してハウジングとの間で磁気連結を完成させるようモータのハウジングと係合するディテント機構と、
を備え、
前記ステータの磁極ペアの数が、10より多く、前記スクリュー機構のスクリュー効率が、50%又はそれ以上である、リニアステッピングモータ。
【請求項16】
請求項11から15のいずれかに記載のリニアアクチュエータを組み込んだ車両用ヘッドライト調節機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータに関するものであり、保持トルクが高く振動が少ないステッピングモータを組み込んだリニアアクチュエータに特定の用途を有する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプ調節装置のような特定の自動車用途において、リニアアクチュエータは、装置の動的な調節のために使用される。直線移動は、ステッピングモータのロータコアと出力軸との間のねじ結合によってもたらされる。出力軸は回転が阻止されるので、ロータの回転は出力軸を軸方向に移動させる。アクチュエータの全体的挙動は、摩擦効果に大きく影響される。
【0003】
ステッピングモータは、滑らかに作動して、一般に望ましくないと考えられている振動及び可聴ノイズを低減するように設計される。ロータと出力軸との間のねじ結合である、回転運動を直線運動に変換する摩擦抵抗は、結果的にリニアアクチュエータの性能を支配する。
【0004】
リニアアクチュエータには相対する2つの特性、すなわち、可逆性及び非可逆性がある。各々は、異なる用途で望ましいものである。可逆性とは、モータを逆駆動できる能力、つまり出力軸に外力を加えることによって出力軸を移動させる能力である。これは、例えば、電源異常時又はモータ故障時にアクチュエータによって駆動されるデバイスを手動で動かす必要がある場合に望ましい。非可逆性とは、出力軸に外力が加えられた時にリニアアクチュエータが出力軸の動きに抵抗する能力である。これは、例えば、アクチュエータで動かされるデバイス(ヘッドランプ調節装置)が正常運転時に外力を受ける場合、アクチュエータが、モータへの電力供給がなくなる又は低減する間に位置を保持する必要がある場合、又はセキュリティが重要である場合(ドアロック機構)に望ましい。いくつかの用途では、可逆性及び不可逆性の組み合わせを必要とし(例えば、外部ミラー調節装置)、これは正常運転時に振動及び風力に耐えながら依然として電源異常時又はモータ故障時に手動で調節することができるように高い保持力を必要とする。可逆性は、スクリュー機構の摩擦に関連する。低い摩擦抵抗は、良好な可逆性及び高い効率をもたらす。高い摩擦抵抗は、良好な負荷保持能力又は非可逆性をもたらすが、同時に高い摩擦抵抗はリニアアクチュエータの効率を低下させる。従って、効率と負荷保持との間の妥協点を見つける必要がある。
【0005】
摩擦抵抗自体は、温度、歯車要素の相対速度、及び表面粗さ関連する。温度及び速度は、規則的に変化し、表面粗さは、摩耗を受けて変化する場合がある。ねじ山の効率が高い場合には低いエネルギー損失につながり、ねじ山の効率が低い場合には強い非可逆性につながることになる。非可逆性を呈するスクリューナットシステムを表す用語である自動ロック式ねじ山は、高い摩擦抵抗により一般的には50%をはるかに下回り、場合によっては30%又はそれ以下のスクリューナット伝達効率をもたらす、小さなねじ山の角度(小さなねじ山ピッチ)を有することになる。このようなねじは、軸方向の外力を加えた時に回転(逆駆動)しない。
【0006】
保持力は、モータを逆駆動しない状態で出力軸に対して軸方向に加えることができる最大の外力である。つまり、リニアアクチュエータの場合、アクチュエータが動くことなく耐える又は保持することができる、リニア出力軸に加えられる力である。前述のように、一般的にリニアアクチュエータの保持力は、ねじ結合の機械的摩擦に由来する。
【0007】
摩擦抵抗は、温度に大きく依存する。同じねじ山で異なる温度で可逆性及び不可逆性を有することができる。このことは、摩擦抵抗が、軸方向移動に対して自己保持力をもたらし(自動ブロッキング)、機能停止時にバウンシングを防止するように充分に大きくなければならないことを意味している。しかしながら、摩擦抵抗は、低温時での高い潤滑油粘度及び機能停止時でのブロッキングを含む低温始動問題を防止するように充分に小さいことが必要である。バウンシングは、モータが移動範囲の端部のような、ハードストップに当接する場合、ステッピングモータは、停止する代わりに、ハードストップから跳ね返るかのように反対方向に回転し続ける状態である。ブロッキングは、モータがハードストップに当接して動かなくなり、何れの方向にも動くことができない状態である。バウンシング及びブロッキングの問題は、摩擦抵抗が良好に制御されていない低効率伝達システムの結果であるか又はそれによって少なくとも助長される場合がある。
【0008】
最近のアクチュエータ設計において、この矛盾する要件は、基本的に、ギヤ要素を適切な寸法に決定して最適な潤滑油を選択することによる、機械的摩擦で解決されている。
図5は、ステッピングモータ1及び出力軸2を含む従来のリニアアクチュエータの断面図である。ステッピングモータは、ステータ3及びロータ4を有する。ロータは、少なくとも部分的にねじが切られたロータシャフト5を有する。出力軸2は中空であり、ロータシャフトのねじ部と係合してねじ結合6を形成する雌ねじ部を有する。ロータは、回転できるが軸方向の移動は制限される。出力軸2は、回転が制限されるが軸方向に動くことができる。ロータ4が回転すると、出力軸2はねじ結合6によりスクリューと同様の作用でロータシャフト5に沿って軸方向に移動する。ロータシャフトと出力軸との間のねじ結合6のねじ山の構成及びその間の潤滑油は、システムの機械的摩擦により大きく影響する。
【0009】
この方法は、例えば、潤滑油粘度及び材料弾性のような温度依存的作用によって大きく制限される。1つの特定の用途に適する特殊な潤滑油は、制限されたパラメータ範囲においてのみ機能し、高価である。
【0010】
欧州特許公開第0689278号には、高い保持トルクを有するステッピングモータが開示される。高い保持トルクは、高い磁気ディテントトルクを有するステータ及びロータ構成を使用することによって引き起こされる。ディテントトルクは、保持トルクの主成分を構成するのと同じくらいの大きさとすることができる。磁気ディテントトルクの温度依存性は機械摩擦よりも遙かに小さい。従って、アクチュエータは、モータ部とギヤボックス部とに分割することによって設計することができ、この場合、保持トルクは、モータ部によって少なくとも部分的にもたらされる。これにより、ギヤボックス部は、効率的かつ低い摩擦抵抗構成で回転運動を直線運動へ変換することができる。更に、アクチュエータの発熱、過度の摩耗、及び出力エネルギー低下を潜在的にもたらすギヤボックスの損失を最小限にすることができる。このことは、潤滑要件を緩和して安価な潤滑油の使用が可能になることも意味する。
【0011】
しかしながら、ディテントトルクの顕著な増大は、結果として生じる動的トルク出力に大きな変動(リップル)を発生させる重ね合わせディテントトルクに起因して、モータ作動時にモータの振動及び騒音の著しい増加につながる大きなトルク変動(トルクリップル)を発生させる。
図7及び
図8は、
図6に示すようなディテントトルクのない典型的なステッピングモータのトルクリップルと比較することができる、高いディテントトルクを有するステッピングモータのディテントトルクのトルクリップルへの影響を示す。
図7において、ディテントトルクは、励起トルクと整列するが、これは励起トルクが最大(ピーク)又はゼロの何れかである場合に最大値を有することを意味する。
図8において、ディテントトルクは、相励起トルクが最大(ピーク)又はゼロの何れかである場合にゼロとなるように90度だけ移相している。ディテントトルクの周波数は、励起トルクの周波数の2倍となるように設定されることに留意されたい。両グラフは、出力リップルトルクとして知られる大きな変動をもつ組み合せ出力トルクを発生させる、励起トルクに関するディテントトルクの悪影響を示す。
【0012】
意図的に高い磁気ディテントトルクのモータ部を単純に設計するだけでは、モータ作動時に大きな振動及び可聴ノイズがもたらされ、これは望ましいものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許公開第0689278号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、作動時に関連した大きな振動を発生することなく高いディテントトルクを有するステッピングモータを組み込んだ改良されたリニアアクチュエータに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このことは、本発明では、高いディテントトルクのステッピングモータ及び摩擦抵抗の小さなスクリュー機構を含むリニアギヤボックスを有するリニアアクチュエータを使用することで実現される。従って、モータの保持力を一定としたままでアクチュエータ効率を高くすることができる。モータの振動は、追加のディテントトルクの補正により、標準動トルクの変更によって制御され、動トルクの出力変動が滑らかになる(最小のトルクリップ)。このことは、非対称磁束を生じるステータを使用することによって実現される。
【0016】
従って、本発明の1つの態様では、本発明は電気モータを提供し、該モータは、多数の磁極を形成する複数の相巻線を有するステータと、ロータコア及び該ロータコアに固定される永久磁石を有するロータと、ロータコアに結合される出力軸と、ロータをステータに磁気的に吸引して、予め設定された、対応するトルク変動を発生させるディテントトルクでもって、ロータをステータに対して所望の回転方向に保持するように構成されるディテント機構と、を備え、相巻線は、非対称であり、ディテントトルクと組み合わせる場合、所望のトルクリップルを有する組合せ出力トルクを生成する異なる励起トルクを発生させる。
【0017】
出力トルクは、小さなトルクリップルを有することが好ましい。
所望のトルクリップルは、ピーク出力トルクの35%よりも小さいことが好ましい。
所定のディテントトルクは、ピーク出力トルクの5%と50%との間にあることが好ましい。
【0018】
所定のディテントトルクは、ピーク出力トルクの15%から30%の間にあることが好ましい。
ディテントトルクは、励起トルクの少なくとも10%であることが好ましい。
ステータ相の数が2であり、第1の相巻線が発生するピーク励起トルクが、第2の相巻線のピーク励起トルクよりも少なくとも10%だけ小さいことが好ましい。
【0019】
2つの相コイルは、異なる巻回数を有し、異なる励起トルクを発生することが好ましい。
2つの相に対応する2つのステータ半体は、異なる寸法及び/又は歯状磁極形態を有し、異なる励起トルクを発生することが好ましい。
2つの相の励起トルクの間の差異は、1.5倍程度であることが好ましい。
【0020】
ディテントトルク及び励起トルクは、振幅及び位相において最適な補償を得るためにトルクリップルを低減するように設計されて、ディテントトルクの周波数が励起トルクの周波数の2倍であり、ディテントトルクの最小/最大は、励起トルクの最小/最大と同相であることが好ましい。
モータは、ステッピングモータであるのが好ましい。
【0021】
本発明の第2の態様では、本発明は前述のステッピングモータを組み込んだリニアアクチュエータを提供する。
出力軸の回転が拘束され、出力軸は、ロータの回転が出力軸の直線運動を引き起こすようにスクリュー機構によってロータに結合され、スクリュー機構が高い効率を有することが好ましい。
スクリュー機構は、30%よりも大きなスクリューナット効率を有することが好ましい。
スクリュー機構が、40%と60%との間のスクリューナット効率を有することが好ましい。
【0022】
本発明のさらに別の態様では、本発明は、リニアステッピングモータを提供し、該モータは、多数の磁極を形成する複数の相巻線を有するステータと、ロータコア及び該ロータコアに固定される永久磁石を有するロータと、ロータコアの回転が直線運動を引き起こすようにスクリュー機構によってロータコアに結合される出力軸と、ロータをステータに磁気吸引して、予め設定されたディテントトルクでもって、ロータをステータに対して所望の回転方向に保持するように構成されるディテント機構とを備え、ステータの磁極ペアの数が10よりも多く、スクリュー機構のスクリュー効率が50%又はそれ以上である。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、前述のリニアアクチュエータを組み込んだ車両用ヘッドライト調節機構を提供する。
【0024】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付図面を参照して例示邸に説明する。図面において、2つ以上の図面で使用される同一の構造、要素、又は部品は、それらが表れる全ての図面において同一の参照符号を用いて表記される。各図面で示した構成部品及び要素の寸法は、説明の利便性及び明瞭化のため選択され、必ずしも正確な尺度を示していない
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の好ましい実施形態によるステッピングモータを示す。
【
図2】本発明の好ましい実施形態によるリニアアクチュエータの断面図。
【
図4】非対称相及び大きなディテントトルクを有する、
図1のモータのモータトルク対電気角のグラフ。
【
図5】トルクを保持するためにねじ山摩擦抵抗に依存する、従来のリニアステッピングモータの断面図。
【
図6】2対称相を有し、ディテントトルクを発生しない、典型的な従来のテッピングモータに関するモータトルク対電気角のグラフ。
【
図7】2非対称相を有し、励起トルクに対して同相のディテントトルクを有する、従来のステッピングモータに関するモータトルク対電気角のグラフ。
【
図8】2つの対称相を有し、励起トルクに対して90度だけ移相するディテントトルクを有する、従来のステッピングモータに関するモータトルク対電気角のグラフ。
【
図9】本発明によるリニアステッピングモータを使用するヘッドランプ組立体の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるステッピングモータ10を示す。
図2は、本発明の好ましい実施形態によるリニアアクチュエータの長手方向断面図であり、
図3は、ステータの一部の分解図である。
【0027】
図1のステッピングモータ10は、モータのステータの一部を形成するハウジング12を有する。ハウジングは、モータを対象物に固定するための貫通孔をもつ取付け耳部14を有する下部プレートを含む、複数のステータプレートを支持する。モータは、この場合、ロータの一部を形成する出力軸16を有する。ロータは永久磁石ロータである。ステータは2相巻線形ステータであり、モータ端子21は、ハウジングの開口から延びている。ステータの構造は、
図3に関して以下に詳細に説明する。
【0028】
図2のアクチュエータ40は、ステッピングモータを組み込んだリニア形式である。アクチュエータの断面は、リニアアクチュエータの1つの形式の構造を例示するために示されている。モータは、2つのボビン巻線形相巻線22、23、磁極プレート26、及びディテントプレート28を含む、ステータの一部を形成するハウジング12を有する。ステータは、
図3に関して以下に詳細に説明する。また、モータは、アクチュエータの出力軸16を駆動する永久磁石ロータを有する。
【0029】
ロータ30は、モータ軸33を支持するロータコア32及び円筒形リングマグネット34を有する。回転可能な軸受36は、ロータをハウジング12に結合する。モータ軸33は、ねじ山38を有し、ねじ山38は出力軸16のねじ山39と係合する。出力軸は、モータ軸線の方向に移動できるように構成されているが、軸線の周りでは回転できない。従って、ロータが回転すると、モータ軸33は、ナットがボルトに沿って移動するのと全く同じ方法で、ロータの回転方向に応じて出力軸を軸方向に移動させるように回転する。出力軸の端部には、リニアアクチュエータによって動かされる対象物と、本実施例では、車両のヘッドランプ組立体と係合するようになった連結器48が取り付けられている。
【0030】
図3は、好ましいステータ磁極構造体の分解図である。ステータは、第1及び第2のボビン24に巻き付けられた第1及び第2のコイル22、23と、4つの磁極プレート26と、多数のディテントプレート28とを含む。各磁極プレート26は、多数の軸方向に延びる磁極フィンガ27を有し、使用時、磁極フィンガはロータの円周方向外側表面の側に沿って延びるようになる。各ボビンは、2つの端子21を有し、この端子21に対してコイルのそれぞれの端部が接続される。磁極プレートは、ハウジングと共に、コイル22、23が発生する磁束の磁路を形成する。ディテントプレートの各々は、複数の半径方向内向きに延びるフィンガ29を備えた中央開口を有する。
【0031】
磁極プレート26及びディテントプレート28の各々は、半径方向外側突出部46を有し、突出部46は、各プレートを所定位置に保持して、
ハウジングとの間で磁気連結を完成させるようにハウジングと係合する。ディテントフィンガ29は、ロータのそれぞれの磁極を吸引するように配置される。中間のディテントプレート上に配置すると、ディテントの位置の管理が容易になる。本実施形態において、ディテントの位置は、結果として得られトルクが
図4に示す相トルクと整列するように配置される。図示のように、ディテントトルク曲線は、プラス側で第1の相トルク曲線と整列し、マイナス側で第2の相トルク曲線と整列する。従って、第1の相トルクのサイズを小さくすることによって、及び第2の相トルクのサイズを大きくすることによって、トルクリップルを含むモータの全体的な出力は、
図6のグラフで示すようなディテントトルクを全く生じないモータと同じにするか又はそれに類似したものにすることができる。ディテントトルクが無いことは、永久磁石を有する全てのモータが何らかのディテントトルクを有するので、有意に又は明白に増大したディテントトルクがないことを事実上意味しているが、これはモータの性能に著しく影響を与えないか、又は少なくとも容認できる影響を与える値まで低減することができる。
【0032】
非対称相は、例えば、様々な歯状幾何形状、様々な空隙、又は様々なコイル巻線の結果である様々な磁束に起因することができる。
図2及び
図3から理解できるように、好ましい実施形態の非対称相は、異なるコイル巻線によってもたらされ、第1のコイル22が第2のコイル23よりも非常に小さく、結果的に、第2のコイルから生じる磁界の強度は、第1のコイルから生じる磁界の強度よりも大きい。第1の相巻線から生じるピーク励起トルクは、第2の相巻線のピーク励起トルクよりも少なくとも10%だけ少ないことが好ましい。各相を通過する電流は、巻線サイズを適切に選択することによって同一に維持することができ、異なるコイル巻回数を補正することができる。
【0033】
従って、前記の説明から理解できるように、実質的に温度又は摩耗抵抗の影響を受けない高い保持力、効率的なねじ結合、及び最小限のノイズ及び振動又はトルクリップルを有するリニアアクチュエータを作ることが可能である。従って、良好な非可逆性で30%よりも高く、40%から60%に至るスクリューナット効率を有する効率的なリニアアクチュエータが最小限のノイズ、振動、及び不安定性で実現できる。
【0034】
モータ作動時、ディテントトルク及びより弱いステータトルクの総計は、マイナス側のディテントトルク未満の、強力なステータから生じるトルクに等しい。結果的に、励起トルクとディテントトルクの総計は(
図4)、同じ位相を有しディテントトルクを生じないモータの特性に近づくことになる。
【0035】
要約すると、リニアアクチュエータのモータ部をギヤボックス部から分離する利点は以下の通りである。摩擦抵抗の要件はそれほど厳しくなく、ねじ山幾何形状の開発が容易になる。潤滑油の要件は単純であり安価である。保持トルクは、良好に形成された磁気特性によって支配され、変化する機械的摩擦に依存しないので正確である。同じ理由で、保持トルクは長期間にわたり変動せず、保持トルクの温度依存性は著しく低減される。最適な補正及び少ないリップルを得るように設計された適切な非対称相の場合、複雑な電子駆動機構による解決策を必要としない。
【0036】
一般的なヘッドランプ調節装置用途の場合、リニアアクチュエータは、50Nの保持力及び20Nのリニア作動力を必要とする。一般的な従来のステッピングモータは、約1mNmのディテントトルク及び24mNmの励起モータトルクを有することになる。好ましい実施形態では、ステッピングモータは、効率が改善されたスクリュー機構と一緒に所要の50Nの保持力をもたらす、4〜10mNmのディテントトルクを有する。2つの相の対応する励起トルクは、それぞれ16及び24mNmである。従って、2つの相が生じる力は、一般的に1.5倍の非対称性がある。
【0037】
図4から理解できるように、1つの形態では、ディテントトルク及び励起トルクの作用は、振幅及び位相において、最適な補正及びピーク出力トルクの35%よりも小さい最小トルクリップルを得るように設計されており、ディテントトルクの周波数は励起トルクの周波数の2倍であり、ディテントトルクの最小/最大は、励起トルクの最小/最大と同相である。高さに関しては、ディテントトルクは、励起トルクの少なくとも10%、任意選択的にピーク励起トルクの20%〜50%の範囲である。また、ディテントトルクは、ピーク出力トルクの5%〜50%の間、好ましくはピーク出力トルクの15%〜30%の間にある。
図4において、ディテントトルクは±4mNmであり、ピークトルク出力の2つの相の総計最大トルク出力28mNmの14%の値に相当する。これは、16mNmのピーク励起トルクを有する弱い励起トルク(相1)の最大値の25%の値に相当する。
【0038】
図9は、本発明のリニアアクチュエータ40を使用する乗用車等の車両のヘッドランプ組立体50の概略図を示す。ヘッドランプ組立体50は、反射板を含むランプハウジング52を有する。ランプ54は、ランプハウジングによって支持される。ランプハウジングは、2つの調節可能なマウント56と、可変式マウント58によって車体のような支持体のフレームに固定される。マウントは、ランプハウジングをしっかりと取り付ける3つの取付け点が形成される。2つの調節可能なマウント56は、光の左/右照準を手動で調節するために、スパナのような工具で回転可能である。可変式マウント58は、リニアアクチュエータ40の出力軸16に結合される。出力軸の直線運動は、出力軸の運動方向に応じてランプハウジングを傾けて、結果的に反射鏡からの光ビームを上げるか又は下げる。ランプハウジングは、該ランプハウジングを取付け部にしっかりと保持することを可能にするばね構成によってフレームに任意選択的に保持される。この構成により、光ビームの高さを運転席から又はコンピュータ制御によって調節することができ、種々の車両荷重に対する補正を行うことが可能になる。最新の設計では、追加のアクチュエータ60を使用して、反射板と2つの調節可能なマウント56との間の自在軸受け連結部62によってランプの左右照準を変更することができる。
【0039】
本発明の別の態様では、高い効率を有するが、同様に高い保持トルク又は予め設定された保持トルクを有するリニアステッピングモータを製造する可能性を提供する。ディテントプレートを使用することで、ディテントトルクを所望のレベルに増大させて、非作動時に負荷によって動かされるのに抗してロータを保持することができる。ロータを出力軸に結合するスクリュー機構の効率は、保持力がスクリュー機構の摩擦抵抗に依存しないので50%又はそれ以上とすることができる。高い効率のスクリュー機構を用いてモータを作動させるために、ステータの磁極ペアの数は、有意に2倍又はそれ以上、及び10倍又はそれ以上の磁極ペアに増やすことができる。
【0040】
本明細書の説明及びクレームにおいて、「備える」、「含む」、「包含する」、及び「有する」という動詞の各々、及びその変形形態は包括的な意味で使用され、説明される項目の存在を特定するが付加的な項目の存在を排除しない。
【0041】
本発明は、1つ又はそれ以上の好ましい実施形態に関して説明されているが、様々な改良が実現可能であることは当業者には明らかであろう。従って、本発明の技術的範囲は、請求項を参照して決定されることになる。
【符号の説明】
【0042】
10 ステッピングモータ
12 ハウジング
14 取付け耳部
16 出力軸
21 端子
22 第1のコイル
23 第2のコイル
24 第1のボビン
25 第2のボビン
26 磁極プレート
27 磁極フィンガ
28 ディテントプレート
29 フィンガ
30 ロータ
32 ロータコア
33 モータ軸
34 リングマグネット
36 軸受
38 ねじ山
39 ねじ山
40 アクチュエータ
46 突出部
48 連結器
50 ヘッドランプ組立体
52 ランプハウジング
54 ランプ
56 マウント
58 マウント
60 アクチュエータ
62 自在軸受け連結部