特許第6271873号(P6271873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6271873
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】窓開閉装置及び窓
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/63 20150101AFI20180122BHJP
   E06B 7/06 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   E05F15/63
   E06B7/06
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-122962(P2013-122962)
(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-240564(P2014-240564A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年4月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503428703
【氏名又は名称】オイレスECO株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005005
【氏名又は名称】不二サッシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内海 孝映
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 慎吾
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−036556(JP,A)
【文献】 特開2011−196086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/79
E06B 7/00−7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓開口を縁取る枠体と、
前記窓開口を閉じた状態と前記窓開口を開いた状態との間で変位する障子と、
前記障子が前記枠体に対して変位することを規制して前記閉じた状態を保持するロック機構であって、前記障子に設けられた被係合部と係合する位置と前記被係合部から離間した位置との間で変位可能な係合部を有する前記ロック機構と、
前記開いた状態に位置する前記障子を前記閉じた状態側に変位させるとともに、前記枠体に対して変位可能な作動部材と、
動力を発生する動力発生部と、
前記動力発生部で発生した動力を前記係合部及び前記作動部材に伝達する伝達部材であって、前記係合部及び前記作動部材を機械的に連動して作動させる伝達部材とを備え
前記作動部材は、前記枠体に沿って平行変位可能であり、
前記障子及び前記作動部材のうち少なくとも一方には、他方に設けられた摺接部と滑り接触することにより、前記作動部材の変位作動を前記障子の変位作動に変換するカム部が設けられており、
前記カム部は、前記摺接部と滑り接触する第1被摺接部及び第2被摺接部を有し、
前記第1被摺接部は、前記作動部材の変位方向に対して傾斜した面であり、
さらに、前記第2被摺接部は、前記障子が閉じた状態にあるときにおいて、前記作動部材の変位方向と略平行となる面であることを特徴とする窓開閉装置。
【請求項2】
前記枠体には、前記障子に設けられた被当接部に接触することにより、前記枠体に対する前記障子の最大変位量を規制する当接部が設けられており、
さらに、前記作動部材には、前記当接部と前記被当接部とが離間することを規制する規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の窓開閉装置。
【請求項3】
前記伝達部材は、ギヤードケーブルにより構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の窓開閉装置。
【請求項4】
前記障子には、重力を利用して前記障子を前記開いた状態側に変位させる錘部が設けられていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の窓開閉装置。
【請求項5】
前記障子は、矩形枠状の枠部を有するとともに、前記枠体に対して揺動変位可能であり、
さらに、前記被係合部は、前記障子の揺動中心軸線から離間した部位であって、前記揺動中心軸線と平行な部位である前記枠部の下端側に設けられていることを特徴とする請求項に記載の窓開閉装置。
【請求項6】
前記揺動中心軸線は水平方向に平行であり、
前記係合部は前記枠体の下端側に設けられ、かつ、前記被係合部は前記障子の下端側に設けられていることを特徴とする請求項に記載の窓開閉装置。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の窓開閉装置を備えたことを特徴とする窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓開閉装置及び窓に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、障子を揺動変位させるための開閉機構、及び障子を閉じた状態を保持するロック機構を備えている。そして、開閉機構用の電動モータとロック機構用の電動モータとを制御部を介して電気的に連動させて制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−105798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明では、2つの電動モータを制御部を介して電気的に連動させて制御しているので、制御部の構成を簡略化することが難しい。
本発明は、上記点に鑑み、障子を変位させる開閉機構等とロック機構とを簡易な構成で連動させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、窓開口(1A)を縁取る枠体(3)と、窓開口(1A)を閉じた状態と窓開口(1A)を開いた状態との間で変位する障子(5)と、障子(5)が枠体(3)に対して変位することを規制して閉じた状態を保持するロック機構であって、障子(5)に設けられた被係合部(7A)と係合する位置と被係合部(7A)から離間した位置との間で変位可能な係合部(7B)を有するロック機構(7)と、開いた状態に位置する障子(5)を閉じた状態側に変位させるとともに、枠体(3)に対して変位可能な作動部材(9)と、動力を発生する動力発生部(17)と、動力発生部(17)で発生した動力を係合部(7B)及び作動部材(9)に伝達する伝達部材(15)とを備えることを特徴とする。
【0006】
これにより、本発明では、動力発生部(17)で動力が発生すると、当該動力は伝達部材(15)を介して係合部(7B)及び作動部材(9)に伝達される。つまり、本発明では、係合部(7B)及び作動部材(9)は機械的に連動して作動する。
【0007】
したがって、本発明では、簡易な構成で作動部材(9)とロック機構(7)と連動させることが可能となる。そして、機械的に連動して作動する係合部(7B)及び作動部材(9)は、電気的な制御部を必要としない。このため、本発明に係る動力発生部(17)は、動力源を問わない。つまり、手動操作方式は勿論のこと、電動モータ方式にも本発明を適用できる。
【0008】
ところで、作動部材(9)と係合部(7B)との離間距離が大きいと、閉じた状態を保持する力、つまり閉じた状態の障子(5)を開いた状態とするに必要な力を大きくしつつ、閉じた状態において枠体(3)に作用する力を小さくする観点において有利である。
【0009】
つまり、本発明は、上記有利を確保しつつ、簡易な構成で作動部材(9)とロック機構(7)と連動させることを可能とできる。
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る窓開閉装置及び窓の正面図である。
図2】第1実施形態における閉鎖状態の窓開閉装置を示す説明図である。
図3】(a)は第1実施形態における換気状態の窓開閉装置を示す説明図である。(b)は第1実施形態における排煙状態の窓開閉装置を示す説明図である。
図4】(a)は係合部7Bと被係合部7Aとを水平方向から見た図である。(b)は係合部7Bと被係合部7Aとを上側から見た図である。
図5】(a)は閉鎖状態のロック機構7の状態を示す図である。(b)は換気状態のロック機構7の状態を示す図である。(c)は排煙状態のロック機構7の状態を示す図である。
図6】作動部材9を上側から見た図である。
図7】第2実施形態における閉鎖状態の窓開閉装置を示す説明図である。
図8】(a)は第2実施形態における換気状態の窓開閉装置を示す説明図である。(b)は第2実施形態における排煙状態の窓開閉装置を示す説明図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る窓開閉装置及び窓の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する「発明の実施形態」は実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではない。
【0012】
そして、本実施形態は、排煙窓用の窓開閉装置に本発明を適用したものである。以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものであり、本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「複数」や「2つ以上」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。
【0013】
(第1実施形態)
1.窓開閉装置の構成
図1に示す排煙窓1は、枠体3及び障子5を有している。枠体3は、外壁等の建築物(図示せず)の壁に設けられた窓開口1Aを縁取る窓枠である。本実施形態に係る窓開口1Aは矩形状であるため、枠体3も矩形枠状に形成されている。
【0014】
なお、枠体3は、アルミニウム等の軽金属製である。当該枠体3は、一対の縦枠部3A及び一対の横枠部3Bを有する。一対の縦枠部3Aは、障子5を挟んで水平方向両側に位置する。一対の横枠部3Bは、障子5を挟んで鉛直方向両側に位置する。
【0015】
障子5は、枠体3に対して変位可能である。すなわち、障子5は、窓開口1Aを閉じた状態と窓開口1Aを開いた状態との間で変位できる。本実形態に係る障子5は、揺動軸5Aを介して枠体3に対して揺動可能に組み付けられている。障子5は矩形枠状の枠部5Cを有している。枠部5Cには、ガラス板や金属板等の板状部材が嵌め込まれている。なお、枠部5Cはアルミニウム等の軽金属製である。
【0016】
各揺動軸5Aは、各縦枠部3Aに組み付けられている。障子5の揺動中心軸線L1は、水平方向に平行となっている。そして、窓開口1Aを開いた状態では、図3(a)に示すように、障子5の上端が枠体3より室内側に変位し、障子5の下端が枠体3より室外側に変位する。
【0017】
窓開口1Aを閉じた状態では、図2に示すように、障子5は、縦枠部3Aと略平行となるとともに、障子5の少なくとも一部が枠体3内に収納された状態となる。障子5には錘部5Bが設けられている。
【0018】
錘部5Bは、重力を利用して障子5を開いた状態側に変位させる。このため、錘部5Bは、障子5に対して障子5の変位方向にずれた位置に設けられている。なお、障子5の変位方向とは、閉じた状態にある障子5に対してずれた位置をいう。
【0019】
本実施形態では、揺動中心軸線L1の位置、つまり揺動軸5Aの位置は、縦枠部3Aの長手方向寸法中央より上側に設定されている。このため、障子5それ自体は、窓開口1Aを閉じた状態とする向きに揺動変位する。そこで、本実施形態に係る錘部5Bは、障子5の上端側であって、閉じた状態にある障子5に対して室内側にずれた位置に設けられている。
【0020】
ロック機構7は、障子5が枠体3に対して変位することを規制し、かつ、閉じた状態を保持する。当該ロック機構7は、図4(a)に示すように、係合部7B及び被係合部7A等を有する。被係合部7A及び係合部7B、つまりロック機構7は、図5(a)に示すように、複数設けられている。
【0021】
一対の被係合部7A及び一対の係合部7Bは、それぞれ水平方向において対称の位置に設けられている。一対の被係合部7A及び一対の係合部7Bは、形状も含めて対称の関係である。そこで、以下、図5(a)において右側に位置する係合部7B及び被係合部7Aを例にロック機構7の詳細を説明する。
【0022】
図4(b)に示すように、被係合部7Aは障子5に設けられている。係合部7Bが被係合部7Aと係合すると、閉じた状態が保持される。被係合部7Aは、図4(a)に示すように、円筒状又は円柱状の部位であって、ステー部材5Dを介して障子5の枠部5Cに固定されている。
【0023】
ステー部材5Dは、枠部5Cのうち、揺動中心軸線L1から離間した部位であって揺動中心軸線L1と平行な部位、つまり枠部5Cの下端側に固定されている。ステー部材5Dは、溶接等の接合手段又はねじ等の機械的締結手段にて枠部5Cに固定されている。被係合部7Aもステー部材5Dと同様な手法にてステー部材5Dに固定されている。
【0024】
なお、枠体3には、障子5が閉じた状態となったときに、障子5の枠部5Cと接触する当接部(図示せず。)が設けられている。当接部のうち枠部5Cと接触する部位には、ゴム等の弾性変形可能なパッキンが設けられている。
【0025】
そして、係合部7Bと被係合部7Aとが係合した状態では、パッキンが潰れて弾性変形するとともに、枠部5Cとの接触面圧が、係合部7Bと被係合部7Aとが係合する前に比べて上昇する。
【0026】
係合部7Bは、図5(a)に示す位置と図5(c)に示す位置との間で変位可能である。図5(a)に示す位置は、係合部7Bと被係合部7Aと係合する位置(以下、係合位置という。)である。図5(b)及び図5(c)に示す位置は、係合部7Bが被係合部7Aから離間した位置(以下、被係合位置という。)を示す。
【0027】
係合部7Bは、図4(b)に示すように、突起状の被係合部7Aの突出方向と直交する方向に変位可能である。そして、係合位置では、係合部7Bは、被係合部7Aに引っ掛かって被係合部7Aと係合する。なお、係合部7Bは、フック状の穴であって、その外縁が略J字状に形成された穴である。
【0028】
具体的には、係合部7Bは、略U字状又は半円状の円弧部7C及び誘導部7Dを有している。円弧部7Cは、係合部7Bと被係合部7Aとが係合したとき、つまり図4(b)に示す状態のときに被係合部7Aの外周面に接触して被係合部7Aと係合する。
【0029】
誘導部7Dは、被係合位置から係合位置に向けて係合部7Bが変位する際に、被係合部7Aを円弧部7Cに誘い込む。そして、係合部7Bと被係合部7Aと係合すると、障子5の枠部5Cと上記パッキンが弾性変形し、障子5と枠体3との隙間が密閉される。
【0030】
係合部7Bが設けられた金属製の変位部材7Eは、図4(a)に示すように、ガイドレール8により変位方向が案内される。ガイドレール8は、被係合部7Aの突出方向と直交する方向(本実施形態では、横枠部3Bに沿った方向)に延びて枠体3又はその周囲に固定されている。
【0031】
ガイドレール8は、金属製のレール本体8B及び樹脂製のケーブルガイド8Cを有している。レール本体8Bは、変位部材7Eに一体化された樹脂製のシュー8Aと滑り接触(以下、摺接ともいう。)する。
【0032】
このため、変位部材7Eは、がたつくことなく滑らかに変位できる。ケーブルガイド8Cは、第1伝達部材15Aを覆うとともに、第1伝達部材15Aと摺接可能な保護部材である。
【0033】
ケーブルガイド8Cは、円筒状に形成された樹脂製の部材であって、その長手方向に沿って延びるスリット状の切り欠き穴を有する。そして、ケーブルガイド8Cは、インサート成形法等によりレール本体8Bに一体化されている。
【0034】
第1伝達部材15Aは、連結部材7Fを介して変位部材7Eに連結されて変位部材7Eと一体的に変位する。そして、本実施形態に係る第1伝達部材15Aは、複数本の素線を撚り合わせた芯線に噛合線を螺旋状に巻き付けられてウォーム状にしたギヤードケーブルにて構成されている。
【0035】
枠体3又は枠体3の周囲壁等には、図1に示すように、作動部材9が設けられている。作動部材9は、枠体3に対して変位することにより、開いた状態に位置する障子5を閉じた状態側に変位させる。
【0036】
すなわち、作動部材9は、障子5を挟んで両側に設けられている。一対の作動部材9は、図2図3(a)及び図3(b)に示すように、枠体3のうち縦枠部3Aに沿って平行変位可能である。このため、一対の縦枠部3Aそれぞれには、縦枠部3Aに平行に延びて作動部材9の変位を案内するガイドレール11が設けられている。
【0037】
ガイドレール11は、図6に示すように、上記ガイドレール8と同一の構造である。すなわち、金属製のレール本体11B及び樹脂製のケーブルガイド11Cを有している。なお、ガイドレール11は、ブラケット11Aを介して縦枠部3Aに固定されている。
【0038】
レール本体11Bは、作動部材9に一体化された樹脂製のシュー9Bと摺接する。このため、作動部材9は、がたつくことなく滑らかに変位できる。ケーブルガイド11Cは、第2伝達部材15Bを覆うとともに、第2伝達部材15Bと摺接可能な保護部材である。
【0039】
第2伝達部材15Bは、連結部材9Cを介して作動部材9に連結されている。このため、第2伝達部材15Bは、作動部材9と一体的に変位する。第2伝達部材15Bもギヤードケーブルにて構成されている。
【0040】
第1伝達部材15Aと第2伝達部材15Bとは、図1に示すように、一体化されて1本のギヤードケーブルとなっている。つまり、当該1本のギヤードケーブル(以下、伝達部材15という。)の長手方向一端側が第1伝達部材15Aとして機能し、他端側が第2伝達部材15Bとして機能する。
【0041】
作動部材9は、図2に示すように、障子5に設けられたカム部13と摺接する摺接部9Aを有している。摺接部9Aは、少なくともカム部13と摺接する部位が曲面状となった部材である。なお、本実施形態に係る摺接部9Aは、円柱状又は円筒状の突起部により構成されている。
【0042】
カム部13は、摺接部9Aと摺接することにより、作動部材9の変位作動を障子5の変位作動に変換する。具体的には、本実施形態に係るカム部13は、摺接部9Aと摺接する第1被摺接部13A及び第2被摺接部13Bを有している。
【0043】
第1被摺接部13Aは、作動部材9の変位方向に対して傾斜した面であって、以下の傾斜の向きを有する傾斜面である。すなわち、第1被摺接部13Aは、摺接部9Aとの接触部において、作動部材9が「閉じの向き」に変位したときに障子5を閉じた状態側に変位させる分力を発生させる向きに傾斜している。
【0044】
「閉じの向き」とは、開いた状態に位置する障子5を閉じた状態側に変位させる際に、作動部材9が変位する向きをいう。なお、本実施形態に係る「閉じの向き」は、下側から上側に向かう向きである。なお、「閉じの向き」と逆向きを「開の向き」という。
【0045】
第2被摺接部13Bは、障子5が閉じた状態にあるときにおいて、作動部材9の変位方向と略平行となる面である。なお、第1被摺接部13Aは、障子5が閉じた状態にあるときにおいて、上方側に向かうほど室内側に近づくように傾斜している。
【0046】
したがって、作動部材9が、閉じの向き、つまり下側から上側に変位すると、図3(a)に示すように、第1被摺接部13Aと摺接部9Aとの接触部には、閉じた状態側に障子5を変位させる力F1が発生する。
【0047】
つまり、閉じの向きに作動部材9が変位したときに、カム部13は、摺接部9Aと摺接しながら作動部材9の変位作動を障子5の変位作動に変換する。なお、力F1は、作動部材9がカム部13に作用させる力Foの分力である。
【0048】
作動部材9が、開の向き、つまり上側から下側に変位すると、上記力Fo及びF1が消失する。このため、錘部5Bに作用する重力による揺動軸5A周りのモーメントによって、障子5は窓開口1Aを開く向きに変位する。
【0049】
そして、図3(b)に示すように、摺接部9Aがカム部13から離間すると、障子5は、枠体3に設けられた当接部3Cと接触するまで変位する。つまり、当接部3Cは、障子5に設けられた被当接部5Eに接触することにより、枠体3に対する障子5の最大変位量を規制する。
【0050】
本実施形態に係る被当接部5Eは、障子5の枠部5Cに設けられている。作動部材9には規制部9Dが設けられている。規制部9Dは、当接部3Cと被当接部5Eとが離間することを規制する。
【0051】
すなわち、規制部9Dは、作動部材9の変位方向において、カム部13を挟んで摺接部9Aと反対側に配設されている。そして、障子5に設けられた被規制部5Fに規制部9Dが摺接部9Aと反対側から接触することにより、当接部3Cと被当接部5Eとが離間することを規制する。
【0052】
本実施形態に係る被規制部5Fはカム部13に設けられている。具体的には、第2被摺接部13Bの裏面に被規制部5Fが設けられている。なお、本実施形態に係るカム部13は、少なくとも第1被摺接部13A及び第2被摺接部13Bが設けられた板状のブラケットである。そして、当該ブラケット、つまりカム部13は、障子5の枠部5C等にねじ等の機械的締結手段にて固定されている。
【0053】
一対の伝達部材15は、図1に示すように、その長手方向一端側にてウォームホィール状の第1歯車15Cに噛み合っている。このため、第1歯車15Cが回転すると、一対の伝達部材15、つまり一対の第1伝達部材15A及び一対の第2伝達部材15Bは、機械的に同期して変位するとともに、これに機械的に連動して作動部材9及び係合部7Bが変位する。
【0054】
動力発生部17は回転動力を発生する。動力発生部17で発生した回転動力は、第3伝達部材15D等を介して伝達部材15に伝達される。第3伝達部材15Dもギヤードケーブルで構成されている。
【0055】
第3伝達部材15D介して伝達された動力は、第2歯車15Eに伝達される。第2歯車15Eが回転すると、第1歯車15Cが同期して回転するため、動力発生部17で発生した動力は、係合部7B及び作動部材9に伝達される。
【0056】
なお、第1歯車15Cと第2歯車15Eとは、同軸上に配置された状態で一体化されているとともに、歯車箱15Fに収納されている。第3伝達部材15Dも伝達部材15と同様に、図5(a)に示すケーブルガイド15G内に収納されている。
【0057】
2.窓開閉装置の作動
本実施形態に係る動力発生部17は電動モータにより動力を回転発生する。図1に示す操作パネル17Aは、動力発生部17の作動、つまり電動モータの回転及び停止等を指示する第1操作部17B〜第3操作部17Dを有する。
【0058】
<閉鎖状態>
窓開口1Aが開いた状態、つまり、障子5が図3(a)又は図3(b)に示す状態にあるときに第1操作部17Bが操作されると、伝達部材15を介して動力が作動部材9及び変位部材7Eに作用する。
【0059】
そして、作動部材9、つまり摺接部9Aは、カム部13(第1被摺接部13A)と摺接しながら下側から上側に変位する。これにより、作動部材9の平行変位が障子5の揺動変位に変換されて、窓開口1Aを閉じる向きに障子5が変位する。
【0060】
窓開口1Aが開いた状態にあるときには、係合部7Bは、図5(b)又は図5(c)に示すように、被係合部7Aから離間している。変位部材7Eは、伝達部材15(第1伝達部材15A)から動力を得て図5(a)に示す位置に変位する。このため、係合部7Bと被係合部7Aとが係合し、障子5が枠体3に対して変位することを規制して閉じた状態が保持される。
【0061】
なお、電動モータの停止は、以下のいずれかの手法により停止させられる。(a)第1操作部17Bが操作されて電動モータへの通電が開始された時から予め決められた第1所定時間が経過したとき、(b)電動モータに流れる電流値が予め決められた所定電流値を超えたとき、(c)図示しない検出部により窓開口1Aが閉じた状態であることが検知されたときに電動モータへの通電が停止する。
【0062】
したがって、障子5が枠体3に対して変位することを規制して閉じた状態で第1操作部17Bが操作されたとき、又は障子5が枠体3に対して変位することを規制して閉じた状態になったときに電動モータは停止する。
【0063】
<換気状態>
窓開口1Aが閉じた状態、つまり障子5が図2に示す状態にあるときに、第2操作部17Cが操作されると、伝達部材15を介して動力が作動部材9及び変位部材7Eに作用する。
【0064】
そして、作動部材9が上側から下側に変位するため、図3(a)に示すように、錘部5Bに作用する重力によるモーメントによって障子5は窓開口1Aを開く向きに変位する。なお、換気状態においては、摺接部9Aがカム部13と接触することにより、障子5の最大変位量が規制される。
【0065】
窓開口1Aが閉じた状態にあるときには、係合部7Bは、図5(a)に示すように、被係合部7Aと係合している。変位部材7Eは、伝達部材15(第1伝達部材15A)から動力を得て図5(b)に示す位置に変位する。このため、係合部7Bと被係合部7Aと離間し、障子5が枠体3に対して変位可能な状態となる。
【0066】
図3(b)に示す排煙状態、つまり規制部9Dと被規制部5Fとが接触した状態にあるときに、第2操作部17Cが操作されると、作動部材9が下側から図3(a)に示す位置まで変位する。このため、摺接部9Aとカム部13(第1被摺接部13A)とが接触しながら作動部材9が上側に変位するため、障子5は、後述する排煙状態よりも窓開口1Aを閉じる向き側に変位する。
【0067】
<排煙状態>
窓開口1Aが閉じた状態又は換気状態にあるときに、第3操作部17Dが操作されると、伝達部材15を介して動力が作動部材9及び変位部材7Eに作用する。
【0068】
そして、作動部材9が上側から図3(b)に示す位置まで変位するため、当接部3Cと被当接部5Eと接触して障子5が最大変位した状態となるとともに、規制部9Dと被規制部5Fとが接触する。このため、当接部3Cと被当接部5Eとが離間することが規制される。
【0069】
なお、本実施形態では、障子5の位置を検知する検出部(図示せず。)が設けられている。閉鎖状態、換気状態及び排煙状態のいずれの状態に障子5が位置するかは、当該検出部からの信号を利用して判断される。
【0070】
3.本実施形態に係る窓開閉装置の特徴
本実施形態では、動力発生部17で動力が発生すると、当該動力は伝達部材15を介して係合部7B及び作動部材9に伝達される。つまり、本実施形態では、係合部7B及び作動部材9は機械的に連動して作動する。
【0071】
したがって、本実施形態では、簡易な構成で作動部材9とロック機構7と連動させることが可能となる。そして、機械的に連動して作動する係合部7B及び作動部材9は、電気的な制御部を必要としない。
【0072】
ところで、作動部材9と係合部7Bとの離間距離が大きいと、閉じた状態を保持する力、つまり閉じた状態の障子5を開いた状態とするに必要な力を大きくしつつ、閉じた状態において枠体3に作用する力を小さくする観点において有利である。
【0073】
そこで、本実施形態では、係合部7Bを枠体3の下端側に設け、かつ、窓開口1Aが閉じられた状態において、摺接部9Aを揺動軸5Aより上方側に位置させることにより、上記有利を確保しつつ、簡易な構成で作動部材9とロック機構7と連動させている。
【0074】
本実施形態では、作動部材9は、枠体3に沿って平行変位可能であり、さらに、障子5には、作動部材9と滑り接触することにより、作動部材9の変位作動を障子5の変位作動に変換するカム部13が設けられていることを特徴としている。
【0075】
これにより、本実施形態では、作動部材9が変位したときに、作動部材9が室内側に大きく突出変位することを抑制できる。したがって、窓開閉装置の意匠性が著しく損なわれることを抑制できる。
【0076】
因みに、特許文献1に記載の窓開閉装置では、枠体に揺動可能に組み付けられた規制アームにより障子を閉じる向きに変位させる。このため、規制アームが揺動作動すると、規制アームが室内側に大きく突出変位するので、窓開閉装置の意匠性が著しく損なわれる。
【0077】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る排煙窓1は、障子5が枠体3に対して揺動する方式であったが、本実施形態は、いわゆる「滑り出し窓」に本発明を適用したものである。「滑り出し窓」とは、例えば、図7及び図8(a)等に示すように、障子5の揺動軸5Aが枠体3に対して変位する窓装置である。
【0078】
以下、第1実施形態に係る排煙窓及び窓開閉装置と異なる部位のみを説明する。なお、第1実施形態に係る窓開閉装置等と同一の定義で特定される部位には、第1実施形態と同一の符号が付されている。
【0079】
1.窓開閉装置の構成
図7に示すように、揺動軸5Aは、枠体3に連結された第1アーム4Aの長手方向一端側に設けられ、かつ、障子5の枠部5Cに揺動可能に連結されている。第1アーム4Aの長手方向他端側は、枠体3又はその周囲に揺動可能に連結されている。
【0080】
第2アーム4Bの長手方向一端側は、障子5の枠部5Cに揺動可能に連結されている。第2アーム4Bの長手方向他端側は、枠体3又はその周囲に揺動可能に連結されている。
第2アーム4Bと枠部5Cとの連結部は、第1アーム4Aと揺動軸5Aとの連結部から少なくとも上下方向にずれた位置である。第2アーム4Bと枠体3等との連結部は、第1アーム4Aと枠体3等との連結部から少なくとも上下方向にずれた位置である。つまり、本実施形態では、枠部5C(障子5)、第1アーム4A、第2アーム4B及び枠体3等により四節リンク機構が構成されている。
【0081】
なお、「滑り出し窓」では、図8(b)に示すように、規制部9Dと第2アーム4B及び当接部3Cと第1アーム4Aとが接触することにより、障子5の最大変位量が規制される。因みに、本実施形態に係る錘部5Bは、枠部5Cの下端側に内蔵されている。
【0082】
2.窓開閉装置の作動
<閉鎖状態>
窓開口1Aが開いた状態、つまり、障子5が図8(a)又は図8(b)に示す状態にあるときに第1操作部17Bが操作されると、伝達部材15を介して動力が作動部材9及び変位部材7Eに作用する。
【0083】
そして、作動部材9、つまり摺接部9Aは、カム部13を兼ねる第2アーム4Bと摺接しながら下側から上側に変位する。これにより、作動部材9の平行変位が障子5の揺動変位に変換されて、図7に示すように、窓開口1Aを閉じる向きに障子5が変位する。なお、ロック機構7の作動は、第1実施形態と同じである。
【0084】
<換気状態>
窓開口1Aが閉じた状態にあるときに、第2操作部17Cが操作されると、伝達部材15を介して動力が作動部材9及び変位部材7Eに作用する。そして、作動部材9が上側から下側に変位するため、図8(a)に示すように、錘部5B及び障子5に作用する重力により第1アーム4Aが下方側に倒れるように揺動する。
【0085】
このため、窓開口1Aを開く向きのモーメントが障子5に作用するため、障子5は窓開口1Aが開く向きに変位する。そして、摺接部9Aが第2アーム4Bと接触することにより、障子5の最大変位量が規制される。なお、ロック機構7の作動は、第1実施形態と同じである。
【0086】
図8(b)に示す排煙状態にあるときに、第2操作部17Cが操作されると、作動部材9が下側から図8(a)に示す位置まで変位する。このため、摺接部9Aと第2アーム4Bとが接触しながら作動部材9が上側に変位するため、障子5は、排煙状態よりも窓開口1Aを閉じる向き側に変位する。
【0087】
<排煙状態>
窓開口1Aが閉じた状態又は換気状態にあるときに、第3操作部17Dが操作されると、伝達部材15を介して動力が作動部材9及び変位部材7Eに作用する。そして、作動部材9が上側から図8(b)に示す位置まで変位するため、規制部9Dと第2アーム4B及び当接部3Cと第1アーム4Aとが接触することにより、障子5が最大変位した状態となるとともに、障子5の最大変位量が規制される。
【0088】
(第3実施形態)
上述の実施形態では、第1伝達部材15A、第2伝達部材15B及び第3伝達部材15D(以下、これらを総称するときは「伝達部材15」いう。)は、ギヤードケーブルにより構成されていたが、本実施形態では、図9に示すように、シャフト15Hにより伝達部材15を構成したものである。なお、図9では枠体3は省略されている。
【0089】
シャフト15Hは、中心軸線周りに回転しながら動力を伝達する。そして、作動部材9及び変位部材7Eでは、ねじの原理により、シャフト15Hを介して伝達された回転動力を平行移動力に変換する。なお、回転動力の伝達の向きが転向される部位には、傘歯車等を有する転向ボックス15I等が設けられている。
【0090】
(その他の実施形態)
上述の実施形態の実施形態に係る動力発生部17は電動モータを利用したものであったが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、ハンドルボックス等の手動ハンドルにて動力を発生させるものであってもよい。
【0091】
上述の実施形態に係る障子5は、水平方向に延びる揺動中心軸線L1を有して枠体3に対して揺動する方式であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、鉛直方向に延びる揺動中心軸線L1を有する障子5、又は障子5が枠体3に対して平行移動する方式であってもよい。
【0092】
上述の実施形態に係る作動部材9は枠体3に沿って平行変位する方式であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、作動部材9が回転又は揺動する方式であってもよい。なお、作動部材9が回転又は揺動する方式であれば、カム部13を廃止することが可能となる。
【0093】
上述の実施形態では、窓開口1Aが開いた状態として、換気状態及び排煙状態が設定されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、換気状態及び排煙状態のうちいずれか一方の状態を窓開口1Aが開いた状態とした窓開閉装置であってもよい。
【0094】
上述の実施形態では、障子5の位置を検知する検出部を設けていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、換気状態及び排煙状態にする際には、一度、閉鎖状態にし、電動モータに流れる電流値が予め所定電流値を越えた時に、電動モータの回転を反転させて換気状態又は排煙状態としてもよい。
【0095】
上述の実施形態では、1つの動力発生部17にて1つ窓開閉装置を作動させるものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つの動力発生部17にて複数の窓開閉装置を作動させてもよい。
【0096】
具体的には、1本の第3伝達部材15Dにて複数の歯車箱15Fに動力を伝達する構成、又は複数本の第3伝達部材15Dにて複数の歯車箱15Fそれぞれに動力を伝達する構成としてもよい。
【0097】
上述の実施形態では、カム部13が障子5に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、カム部13を作動部材9に設け、かつ、摺接部9Aを障子5に設けてもよい。
【0098】
上述の実施形態では、伝達部材15として、ギヤードケーブル又はシャフトを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば伝達部材15としてコントロールケーブル等を用いてもよい。
【0099】
上述の実施形態では、係合部7Bと被係合部7A及び作動部材9はそれぞれ一対設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、窓のサイズによっては1つ設けるだけでもよい。
【0100】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0101】
1… 排煙窓 1A… 窓開口 3… 枠体 3A… 縦枠部 3B… 横枠部
3C… 当接部 4A… 第1アーム 4B… 第2アーム 5… 障子
5A… 揺動軸 5C… 枠部 5B… 錘部 5D… ステー部材
5E… 被当接部 5F… 被規制部 7… ロック機構 7B… 係合部
7A… 被係合部 7C… 円弧部 7D… 誘導部 7E… 変位部材
7F… 連結部材 8… ガイドレール 8B… レール本体
8C… ケーブルガイド 8A… シュー 9… 作動部材 9A…摺接部
9B… シュー 9C… 連結部材 9A… 摺接部 9D… 規制部
11… ガイドレール 11B… レール本体 11C… ケーブルガイド
11A… ブラケット 13… カム部 13A… 第1被摺接部
13B… 第2被摺接部 15… 伝達部材 15A… 第1伝達部材
15B… 第2伝達部材 15C… 第1歯車 15D… 第3伝達部材
15E… 第2歯車 17… 動力発生部 17A… 操作パネル
17B… 第1操作部 17C… 第2操作部 17D… 第3操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9