【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例、比較例を示すが、本発明は、この実施例に限定して解釈されるものではない。なお、製造した触媒サンプルは、次の要領で物性を測定した。
【0069】
<SEM測定>
実施例及び比較例の粉末サンプルに対して樹脂埋め、カーボン蒸着の前処理を行なった後、SEM測定を行った。SEM測定では、Carl Zeiss社製走査型電子顕微鏡ULTRA55を用いて触媒構造を観察した。加速電圧5kV、対物絞り60μm、後方散乱電子検出器(RBSD)の条件で測定を行った。また、Rontec社製のエネルギー分散型検出器X−Freshを用いて、観察した粉末粒子の定性分析を行った。さらに、画像解析ソフトWinROOFを用いて、粉末粒子内のBaSO
4の粒子径(円相当径:粒子の面積と等しい円面積を持つ円の直径。Heywood径とも呼ぶ)を100個以上計測し、その平均値をBaSO
4の平均粒子径(円相当径の平均値)とした。
【0070】
<EPMA測定>
実施例及び比較例のサンプルについて、EPMA測定にて元素分布の解析を行った。サンプルの測定面を下にしてモールドに貼り付け、樹脂と硬化剤を20/3の割合で混合した液を流し込み、一晩静置し硬化させた。樹脂埋めしたサンプルを研磨して、カーボン蒸着させて、サンプルの前処理を行った。
測定はJE0L社製の電子プローブマイクロアナライザーJXA−8100を用いた。加速電圧15KV、照射電流0.02μAの条件で測定を行った。検出器には波長分散型検出器を用いた。
【0071】
(相関係数の計算方法)
BaとAlの粒子内分布の相関係数Rは、EPMA測定により得られたBaとAlの特性X線の強度値から、以下の式(6)により算出した。
【0072】
【数2】
【0073】
本手法により計算されるBaとAlの粒子内分布の相関係数は、アルミナ粒子内にどの程度Ba粒子が分散しているか、言い換えればアルミナ粒子内でのBaの分散度の指標となる。相関係数が例えば+0.6より大きい場合、つまり強い正の相関がある場合はAlとBaの分布がよく一致していることを示しており、アルミナ粒子中にBaが非常に高分散していると言える。また、相関係数が正であっても小さいと、AlとBaの分布に相関性が低いことを示しており、アルミナ粒子中のBa分散性が低いことを意味する。一方、BaとAlの分布の相関係数が負の場合には、Alの分布とBaの分布が負の相関性にある、つまりBaが多い個所にAlが少なく、Baが少ない個所にAlが多いこととなり、アルミナ粒子と硫酸バリウム粒子が個別に存在していることを示している。
【0074】
<BET比表面積>
BET法により、下記耐久処理前後の粉末サンプルのBET比表面積を測定した。
(耐久方法)
粉末サンプルの耐久処理は以下の手順に基づいて実施した。
まず、管状炉用石英管の中に粉末サンプルの入ったセラミック容器を置き、表1の組成のガスを2.0L/分で流しながら、900℃、1時間還元処理を行った。その後、粉末サンプルを入れたまま容器を電気炉に移し、1,100℃、12時間かけて空気雰囲気下で焼成した。
【0075】
【表1】
【0076】
(BET比表面積低下率の算出)
BET比表面積低下率(%)は、調製時のBET比表面積値と耐久後のBET比表面積値から以下の式(7)により算出した。
【0077】
【数3】
【0078】
<粒度分布測定>
粉末サンプルの粒度分布は、SHIMADZU社製のナノ粒子径分布測定装置SALD−7100を用いて、レーザー散乱法により測定し、d50(50%粒度:フルイ下の粒子量の体積基準の積算値が全体の50%に達した時の粒子の直径、以下同じ)の他、d57.5、d70も測定し、メディアン径(d50)を平均粒子径とした。また、モード径も測定し、アルミナに起因する平均粒子径とした(粒度分布に二つのピークが出現した場合は、各々のピークのモード径を算出し、大粒子側をアルミナに起因する平均粒子径とした)。
【0079】
<細孔分布測定>
各種粉末サンプルを乾燥後、Thermo社製PASCAL140−440を用いて、Hg圧入法により、粉末サンプルの平均細孔径および細孔容積(細孔分布)を測定した。なお、平均細孔径としてモード径(直径)を採用した。
【0080】
<XRD測定>
PANalytical社製のX線回折測定装置X‘Pert PRO MPDを用いて、各種粉末サンプルの回折パターンを測定し、ICSDカードデータと照合することで、成分の同定を行なった。得られた回折パターンからガウス関数によるピーク分離を行い、半値幅を求めて、シェラーの式を用いて成分の結晶子径(直径)を算出した。
【0081】
<硫酸バリウムの分解温度測定>
硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの分解温度は、各種粉末サンプル10mgをメノウ乳鉢で粉砕して、アルミナ製サンプルホルダーに入れ、熱重量分析装置(TG)にて測定した。ガスとして1%H
2/N
2ガスを用い、流量を100mL/分とした。10℃/分の昇温速度で1,100℃まで昇温させ、含水分が脱離した後の重量減少が開始する温度を各サンプルの硫酸バリウムの分解温度とした。
【0082】
<OSC容量の測定方法>
実施例および比較例の粉末材料10mgをサンプリングして、TG−DTAで、OSC容量を測定した。TG―DTAの測定にはRigaku社製TG−8120を用いた。初めに空気中で650℃、10分の前処理を行った。前処理終了後350℃まで降温し、同温度で5分間保持した。その後1.0%H
2/N
2雰囲気に切り替えて5分保持し、その時の重量減少値ΔTG(350℃)を測定した。再び空気中に戻して5分保持した。同様の手法で650℃での重量減少値ΔTG(650℃)を測定した。各温度のΔTGとCeO
2からCeO
1.5への分子量変化からOSC容量を算出した。
【0083】
<実機耐久処理>
後述する直下用触媒を2個、床下用触媒を6個(実施例1〜5及び比較例1)用意し、直下用触媒と床下用触媒を1個ずつ触媒コンバーター内に格納した後、耐久ベンチに設置された耐久用エンジンの排気ラインの直下位置と床下位置にそれぞれ設置した。その後、エンジンを稼動し、A/F変動下、直下用触媒は触媒床温度を950℃になるように設定して150時間、床下用触媒は触媒床温度を800℃に設定して50時間の耐久処理をそれぞれ行った。
【0084】
<実機触媒の性能試験>
実施例7〜10及び比較例4では、実施例1〜5及び比較例1と同様にして実機耐久処理を行った後、実機触媒の性能を評価するために、評価用車両の排気ラインの直下位置に直下触媒を収納した触媒コンバーターを、床下位置に床下用触媒を収納した触媒コンバーターを各々配置した。
触媒性能は、走行モードLA−4にて評価を行なった。触媒のNOx浄化性能は、LA−4モードを走行した際の加速領域の平均NOx浄化率を測定して比較した。具体的には、LA−4走行モードの中で、特にNOx浄化反応の進み難い190〜220秒の加速領域、すなわちSVが高く、NOx排出量が多い領域を抽出して、直下触媒通過後のNOx排出量に対する床下触媒通過後のNOx排出量より平均NOx浄化率を算出した。
【0085】
(実施例1)
下記の要領で本発明の硫酸バリウムが担持されたアルミナ材料を調製し、その物性を測定した。
<BaSO
4−Al
2O
3>
BET比表面積150m
2/g、平均細孔径15nm、平均粒子径35μmのγ−アルミナ粉末A 848gに純水を加え、湿式ミリング装置で粉砕処理を行ない、メディアン径(d50)が1.5μmのアルミナ分散スラリーを得た。そこに結晶子径450nmの硫酸バリウムB 152gを添加し、ミキサーで分散混合した。この混合スラリーをスプレードライヤーで平均粒子径15μmまで造粒させて、さらに450℃、1時間の焼成を行なうことで、実施例1の15.2重量%硫酸バリウム−アルミナ 1,000gを得た。
【0086】
(物性測定と結果)
SEMの画像解析ソフトを用いて、硫酸バリウム−アルミナ粒子内の100個以上の硫酸バリウムの粒子径(円相当径)を計測し、それらの値から硫酸バリウムの平均粒子径(円相当径の平均値)を求め、その結果を
図1及び表2に示した。
また、
図2に示す硫酸バリウム−アルミナのEPMA粒子断面図からBa−Al間の相関係数を求め、その結果を
図8にまとめた。その他、造粒前の混合スラリーの粒度を表2に、耐久処理前後の硫酸バリウム−アルミナのBET比表面積、硫酸バリウムの分解温度を計測し、その結果を表3に、平均細孔径を表4にまとめた。また、耐久処理前後のBET比表面積からBET比表面積の低下率を求め、その結果を
図9にまとめた。さらに、熱重量分析装置(TG)を用い、硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの分解温度を求め、その結果を
図10にまとめた。その他、Ba−Al間の相関係数とBET比表面積の低下率の関係を
図11に、硫酸バリウムの分解温度との関係を
図12にまとめた。
【0087】
(評価)
本発明の実施例1では、得られた硫酸バリウム−アルミナ粒子内の硫酸バリウムをSEMで測定すると、平均粒子径が300nmであった(
図1及び表2参照)。一方、アルミナについては、SEMを用いた測定では切断面に生じたアルミナ粒子間の境が明確でないため、大きさを特定することが困難な上、アルミナ粒子断面が正確に最長径であるとはいえないため、径長を特定することは不可能であった。そのため、代理特性として、造粒前の硫酸バリウムとアルミナの混合スラリーの粒度分布を基に、アルミナの平均粒子径の算出を試みた。すなわち、硫酸バリウムとアルミナの混合スラリーの粒度分布において、両方の平均粒子径が大きく異なれば粒度分布が硫酸バリウムとアルミナの二つのピークに分離することを利用し、大粒子側のピークのモード径をアルミナに起因する平均粒子径とした。
実施例1で得られた硫酸バリウム−アルミナの場合は、粒度分布のピークは1つしか生じなかったが、モード径は1.3μmで、混合前のアルミナの平均粒子径である1.5μmや、57.6%粒度(d57.6:硫酸バリウムの混合比率15.2重量%とアルミナの混合比率84.8重量%、その1/2の値42.4重量%の場合、硫酸バリウムが57.6重量%の時の粒度)である1.2μmに近似していた。ちなみに、後述する他の実施例、比較例においても同様の結果が得られていることから、アルミナの平均粒子径の代用特性として混合スラリー中のモード径を用いることが妥当であると考えられる(表2参照)。また、同粒子内のBa−Al間の相関係数は0.51と良好な相関が見られた(
図8参照)。これらの結果は、硫酸バリウムの微粒子が硫酸バリウム−アルミナ粒子内でよく分散されていることを示している。
この様な状況にある実施例1の硫酸バリウム−アルミナは、モデルガスによる耐久処理前後におけるBET比表面積の低下が26.5%に抑えられており(表3参照)、触媒の材料として使用される場合においても優れた耐久性能を発揮することが期待される。また、酸化雰囲気下での硫酸バリウムの分解温度は1,600℃であるが、還元雰囲気下での硫酸バリウムの分解温度は表2に示すように832℃であり、反応性に乏しい硫酸バリウムからNOxの吸着材として機能するバリウム成分への移行が実際のガソリンエンジン稼働下でも容易に起こることが期待される。さらに、硫酸バリウム−アルミナの平均細孔径(14nm)も出発原料であるγ−アルミナA(同15nm)とほぼ同等であり(表4参照)、硫酸バリウムを添加しても細孔の閉塞も狭小も起こらず、硫酸バリウム−アルミナ粒子内のガスの拡散はγ−アルミナと同レベルであることが示唆される。
【0088】
(実施例2)
実施例1において、アルミナ粉末に硫酸バリウムを添加後に粉砕処理したが、ミキサーではなく、ミリング装置でアルミナ粉末Aと硫酸バリウムBを含むスラリーの粉砕処理を行い、両方の混合物のメディアン径(d50)が600nmのアルミナ−硫酸バリウム分散スラリーを得た。この混合スラリーを実施例1と同様な方法で平均粒子径が15μmとなるまで造粒し、実施例2の15.2重量%硫酸バリウム−アルミナ 1,000gを得た。
次いで、実施例1と同様にして、実施例2の硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの物性を測定し、平均粒子径を
図1及び表2に、分解温度を
図10にまとめた。また、実施例2の硫酸バリウム−アルミナのEPMA粒子断面図を
図3に、造粒前の混合スラリーの粒度を表2に、BET比表面積、硫酸バリウムの分解温度を表3に、平均細孔径を表4に、Ba−Al間の相関係数を
図8に、硫酸バリウムの平均粒子径とBET比表面積の低下率の関係を
図9に、硫酸バリウムの分解温度との関係を
図10にまとめた。また、Ba−Al間の相関係数とBET比表面積の低下率の関係を
図11に、硫酸バリウムの分解温度との関係を
図12にまとめた。
(評価)
本発明の実施例2で得られた硫酸バリウム−アルミナは、その粒子内の硫酸バリウムの平均粒子径が200nm(
図1及び表2参照)であり、アルミナの平均粒子径(モード径)が0.7μmであって、d57.6(0.7μm)と一致し(表2参照)、実施例1よりさらに小さくなり(
図1参照)、同粒子内のBa−Al間の相関係数も0.69と、実施例1よりさらに強い相関が見られた(
図8参照)。これらの結果は、硫酸バリウムのより細かな微粒子が硫酸バリウム−アルミナ粒子内で非常によく分散されていることを示している。
この様な状況にある実施例2の硫酸バリウム−アルミナは、モデルガスによる耐久処理前後におけるBET比表面積の低下が25.7%に抑えられており(表3参照)、触媒の材料として使用される場合においても優れた耐久性能を発揮することが期待される。また、還元雰囲気下での硫酸バリウムの分解温度が847℃(表3参照)であり、反応性に乏しい硫酸バリウムからNOxの吸着材として機能するバリウムへの移行が実際のガソリンエンジン稼働下でも容易に起こることが期待される。さらに、硫酸バリウム−アルミナの平均細孔径(13nm)も出発原料であるγ−アルミナA(同15nm)とほぼ同等であり(表4参照)、硫酸バリウムを添加しても細孔の閉塞も狭小も起こらず、硫酸バリウム−アルミナ粒子内のガスの拡散はγ−アルミナと同レベルであることが示唆される。
【0089】
(実施例3)
実施例2の硫酸バリウムBの代わりに、結晶子径が30nmの硫酸バリウムCを用いた他は実施例2と同様な方法で、実施例3の15.2重量%硫酸バリウム−アルミナ 1,000gを得た。
次いで、実施例1と同様にして、実施例3の硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの物性を測定し、平均粒子径を
図1及び表2に、分解温度を
図10にまとめた。また、実施例3の硫酸バリウム−アルミナのEPMA粒子断面図を
図4に、造粒前の混合スラリーの粒度を表2に、BET比表面積、硫酸バリウムの分解温度を表3に、平均細孔径を表4に、Ba−Al間の相関係数を
図8に、硫酸バリウムの平均粒子径とBET比表面積の低下率の関係を
図9に、硫酸バリウムの分解温度との関係を
図10にまとめた。また、Ba−Al間の相関係数とBET比表面積の低下率の関係を
図11に、硫酸バリウムの分解温度との関係を
図12にまとめた。
(評価)
本発明の実施例3で得られた硫酸バリウム−アルミナは、その粒子内の硫酸バリウムの平均粒子径が65nmと非常に小さくなって(
図1及び表2参照)、アルミナの平均粒子径(モード径)も1.3μmであり、d57.6(1.2μm)とほぼ一致し(表2参照)、実施例1と同等であった。さらに、同粒子内のBa−Al間の相関係数は0.95と、きわめて強い相関が見られた(
図8参照)。これらの結果は、硫酸バリウムの非常に細かな微粒子が硫酸バリウム−アルミナ粒子内でほぼ均一に分散されていることを示している。
この様な状況にある実施例3の硫酸バリウム−アルミナは、モデルガスによる耐久処理前後におけるBET比表面積の低下が24.1%に抑えられており(表3参照)、触媒の材料として使用される場合においても優れた耐久性能を発揮することが期待される。また、還元雰囲気下での硫酸バリウムの分解温度が752℃(表3参照)と実施例1より著しく低く、実施例3中の硫酸バリウムは非常に分解しやすいことが分かる。これにより、反応性に乏しい硫酸バリウムからNOxの吸着材として機能するバリウムへの移行が実際のガソリンエンジン稼働下でも非常に容易に起こることが考えられ、優れた脱硝性能を示すことが期待される。さらに、硫酸バリウム−アルミナの平均細孔径(14nm)も出発原料であるγ−アルミナA(同15nm)とほぼ同等であり(表4参照)、硫酸バリウムを添加しても細孔の閉塞も狭小も起こらず、硫酸バリウム−アルミナ粒子内のガスの拡散はγ−アルミナと同レベルであることが示唆される。
【0090】
(実施例4)
実施例2の硫酸バリウムBの代わりに、結晶子径が10μmの硫酸バリウムDを用いた他は実施例2と同様な方法で、実施例4の15.2重量%硫酸バリウム−アルミナ 1,000gを得た。
次いで、実施例1と同様にして、実施例4の硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの物性を測定し、平均粒子径を
図1に、分解温度を
図10にまとめた。また、実施例4の硫酸バリウム−アルミナのEPMA粒子断面を
図5に、造粒前の混合スラリーの粒度を表2に、BET比表面積、硫酸バリウムの分解温度を表3に、平均細孔径を表4に、Ba−Al間の相関係数を
図8に、硫酸バリウムの平均粒子径とBET比表面積の低下率の関係を
図9に、硫酸バリウムの分解温度との関係を
図10にまとめた。また、Ba−Al間の相関係数とBET比表面積の低下率の関係を
図11に、硫酸バリウムの分解温度との関係を
図12にまとめた。
(評価)
本発明の実施例4で得られた硫酸バリウム−アルミナは、その粒子内の硫酸バリウムの平均粒子径が550nm(
図1及び表2参照)、アルミナの平均粒子径(モード径)が3.6μmであって、d57.6(3.6μm)と一致し(表2参照)、実施例の中では比較的大きく(
図1参照)、同粒子内のBa−Al間の相関係数も0.34と、硫酸バリウムの粒子が大きくなった分、相関関係もやや低下した(
図8参照)。この結果は、硫酸バリウムの粒子が大きくなると、硫酸バリウム−アルミナ粒子内での分散性がやや低下することを示している。
この様な状況にある実施例4の硫酸バリウム−アルミナは、モデルガスによる耐久処理前後におけるBET比表面積の低下も32.0%となり、実施例1よりやや悪化しており(表3参照)、硫酸バリウムの分散性が材料の熱耐久性を向上しうると考えられる。また、還元雰囲気下での硫酸バリウムの分解温度は889℃(表3参照)と実施例1よりやや高く、硫酸バリウムが分解しにくいことが分かる。それは、反応性に乏しい硫酸バリウムからNOxの吸着材として機能するバリウムへの移行が実際のガソリンエンジン稼働下では他の実施例に比べやや劣ることが考えられる。さらに、硫酸バリウム−アルミナの平均細孔径(15nm)も出発原料であるγ−アルミナA(同15nm)と同じであり(表4参照)、硫酸バリウムを添加しても細孔の閉塞も狭小も起こらず、硫酸バリウム−アルミナ粒子内のガスの拡散はγ−アルミナと同レベルであることが示唆される。
【0091】
(実施例5)
ミリング装置でγ−アルミナ粉末A 600gと硫酸バリウムB 400gを含むスラリーの粉砕処理を行ない、両方の混合物のメディアン径(d50)が500nmのアルミナ−硫酸バリウム分散スラリーを得た。この混合スラリーを実施例1と同様な方法で15μmまで造粒し、実施例5の40重量%硫酸バリウム−アルミナ 1,000gを得た。
次いで、実施例1と同様にして、実施例5の硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの物性を測定し、平均粒子径を
図1に、分解温度を
図10にまとめた。さらに、実施例5の硫酸バリウム−アルミナのEPMA粒子断面図を
図6に、造粒前の混合スラリーの粒度を表2に、BET比表面積、硫酸バリウムの分解温度を表3に、平均細孔径を表4に、Ba−Al間の相関係数を
図8に、硫酸バリウムの平均粒子径とBET比表面積の低下率の関係を
図9に、硫酸バリウムの分解温度との関係を
図10にまとめた。また、Ba−Al間の相関係数とBET比表面積の低下率の関係を
図11に、硫酸バリウムの分解温度との関係を
図12にまとめた。
(評価)
本発明の実施例5で得られた硫酸バリウム−アルミナは、その粒子内の硫酸バリウムの平均粒子径が80nmと、実施例3並みに非常に小さく(
図1及び表2参照)、アルミナの平均粒子径(モード径)も0.7μm{d70:硫酸バリウムの混合比率40重量%とアルミナの混合比率60重量%の場合、その1/2の値30重量%と硫酸バリウム70重量%を混合した時の粒度(0.6μm)とほぼ一致し(表2参照)、実施例2並に小さかった。さらに、同粒子内のBa−Al間の相関係数も0.97と、極めて強い相関が見られた(
図8参照)。これらの結果は、硫酸バリウムの非常に細かな微粒子が硫酸バリウム−アルミナ粒子内でほぼ均一に分散されていることを示している。
一方で、実施例5の硫酸バリウム−アルミナは、モデルガスによる耐久処理前後におけるBET比表面積の低下は34.4%と、硫酸バリウムの平均粒子径がほぼ同レベル(65nm)の実施例3に比べかなり悪化している(表3参照)。これは、実施例5で得られた硫酸バリウム−アルミナ内の硫酸バリウムの混合比率が40重量%と実施例3(同15.2重量%)の2.6倍にもなっているため、硫酸バリウム自体のBET比表面積が低下する影響によるものと考えられる。但し、還元雰囲気下での硫酸バリウムの分解温度は782℃(表3参照)と実施例3(同752℃)よりやや高い程度と非常に優れており、実施例5中の硫酸バリウムは実施例3同様、非常に分解しやすいことが分かる。これにより、反応性に乏しい硫酸バリウムからNOxの吸着材として機能するバリウムへの移行が実際のガソリンエンジン稼働下でも非常に容易に起こると考えられ、優れた脱硝性能が期待される。さらに、硫酸バリウム−アルミナの平均細孔径(14nm)も出発原料であるγ−アルミナA(同15nm)とほぼ同等であり(表4参照)、硫酸バリウムを添加しても細孔の閉塞も狭小も起こらず、硫酸バリウム−アルミナ粒子内のガスの拡散はγ−アルミナと同レベルであると示唆される。
【0092】
(比較例1)
上記実施例に対して、γ−アルミナ粉末A 848gと硫酸バリウムB 152gを乾式ミキサーにて10分程度混合して、比較例1の硫酸バリウムとγ―アルミナ混合物 1,000gを得た。
次いで、実施例1と同様にして、比較例1の硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの物性を測定し、平均粒子径を
図1に、分解温度を
図10にまとめた。また、実施例2の硫酸バリウム−アルミナのEPMA粒子断面図を
図7に、造粒前の混合スラリーの粒度を表2に、BET比表面積、硫酸バリウムの分解温度を表3に、Ba−Al間の相関係数を
図8に、硫酸バリウムの平均粒子径とBET比表面積の低下率の関係を
図9に、硫酸バリウムの分解温度との関係を
図10にまとめた。また、Ba−Al間の相関係数と
、硫酸バリウムの平均粒子径の関係を
図11に、
BET比表面積の低下率との関係を
図12にまとめた。
(評価)
比較例1で得られた硫酸バリウム−アルミナは、その粒子内の硫酸バリウムの平均分散粒子径が1,000nmとなり(
図1及び表2参照)、アルミナの平均粒子径(モード径)は34.4μmであって、d57.6(34.6μm)とほぼ一致し(表2参照)、大きいままで存在した。さらに、同粒子内のBa−Al間の相関係数も−0.56と比較的強い負の相関が見られた(
図8参照)。この結果は、硫酸バリウム粒子が大きいままで、しかも、硫酸バリウム−アルミナ粒子内で、ほとんど分散しておらず個別に存在していることを示している。
この様な状況にある比較例1の硫酸バリウム−アルミナは、モデルガスによる耐久処理前後におけるBET比表面積の低下率が41.2%であり(表3参照)、触媒の材料として使用される場合、耐久性能に問題を生じる恐れがある。また、モデルガスによる還元雰囲気下での硫酸バリウムの分解温度は932℃(表3参照)と高く、硫酸バリウムが分解し難いことが分かる。つまり、反応性に乏しい硫酸バリウムからNOxの吸着材として機能するバリウムへの移行が実際のガソリンエンジン稼働下では起こり難い恐れがあり、Ba添加によりNOx浄化性能の向上があまり期待できない。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
(実施例6)
下記の要領で、Pd担持BaSO
4−Al
2O
3、Pd担持Al
2O
3、及びPd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物を調製し、種々の状態の硫酸バリウムと組み合わせることで、酸素吸蔵放出能力(OSC容量)がどの様に変化するかを測定した。
<Pd担持BaSO
4−Al
2O
3>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で1.2g量り取り、純水で希釈して、実施例5の40重量%硫酸バリウム−アルミナ 50gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間かけて空気中で焼成することで、2.34重量%Pd担持硫酸バリウム―アルミナaを調製した。
<Pd担持Al
2O
3>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で1.2g量り取り、純水で希釈して、γ−アルミナ粉末A 50gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間かけて空気中で焼成することで、2.34重量%Pd担持アルミナbを調製した。
<Pd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で0.8g量り取り、純水で希釈して、BET比表面積70m
2/g、平均細孔径16nmの45.0重量%セリア−5.0重量%酸化ランタン−50.0重量%ジルコニア複合酸化物粉末E 80gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間かけて空気中で焼成することで、0.99重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物cを調製した。
この0.99重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物c 8.08gに、2.34重量%Pd担持アルミナbと2.34重量%Pd担持硫酸バリウム―アルミナaを合計で5.12gになるように3水準(3.84g+1.28g、2.56g+2.56g、0.0g+5.12g)振って加え、乳鉢と乳棒でよく混合し、実施例6の3水準のOSC容量測定用サンプル(硫酸バリウム含有量:3.8重量%、7.6重量%、15.2重量%)を製造した。
また、OSC容量の基準サンプルとして、硫酸バリウムを含まないサンプル(0.99重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物c 8.08gと2.34重量%Pd担持アルミナb 5.12gの物理的混合物)も製造した。
次いで、実施例6の3水準のPd担持Al
2O
3、Pd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物、及びPd担持BaSO
4−Al
2O
3の物理的混合物とPd担持Al
2O
3及びPd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物の物理的混合物のOSC容量を各々測定し、両者の差異を
図13にまとめた。
(OSC量の増減)
図13を参照すると、実施例6のPd担持Al
2O
3、Pd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物、及びPd担持BaSO
4−Al
2O
3の物理的混合物は硫酸バリウムを含まないPd担持Al
2O
3及びPd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物の物理的混合物に比べ、BaSO
4含有量が9重量%以下ではOSCの量は硫酸バリウムを含まない物を上回っている。また、BaSO
4含有量が9重量%を超えるとOSCの量が硫酸バリウムの影響により硫酸バリウムを含まない物を下回るものの、減少量が約20μmol/g以内とその影響は軽微といえる。
この結果から、本発明の硫酸バリウム−アルミナが、OSCと物理的混合している程度であれば、硫酸バリウムがOSCに及ぼす悪影響は軽微であると考えられる。
【0097】
(比較例2)
酢酸バリウム結晶を硫酸バリウム換算で2水準(0.5g、2.0g)秤量した後、純水に溶解して、酢酸バリウム水溶液を2種類調製した。実施例6に対して、2.36重量%Pd担持硫酸バリウム―アルミナaを用いず、0.99重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物c 8.08g、2.34重量%Pd担持アルミナb 5.12gを純水に分散させ、そこに先ほどの2種類の酢酸バリウム水溶液を各々添加し、30分ほど撹拌してバリウムをアルミナに吸着させた。さらに、このバリウム、Pd担持アルミナ、及びPd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物を含む懸濁液に、硫酸アンモニウム(0.26g、1.04g)を純水に溶解させた水溶液を30分ほど撹拌しながら添加し(S/Ba比=1.0)、硫酸バリウムを析出させた遠心分離器にて固形分を回収後、500℃、1時間かけて空気中で焼成することで、比較例2の2水準のOSC容量測定用サンプル(硫酸バリウム含有量:3.6重量%、13.2重量%)を製造した。
次いで、比較例2の2水準のPd担持Al
2O
3及びPd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物に硫酸バリウムを含浸担持した物のOSC容量を測定し、Pd担持Al
2O
3及びPd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物の物理的混合物のOSC容量との差異を
図13にまとめた。
(OSC量の増減)
図13を参照すると、比較例2のPd担持Al
2O
3及びPd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物に硫酸バリウムを含浸担持した物は、硫酸バリウムを含まないPd担持Al
2O
3及びPd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物の物理的混合物に比べ、OSCの減少量が約75μmol/gと著しく小さい上、硫酸バリウムの含有量とは無関係に一定であった。
この結果は、硫酸バリウムが、OSCに直接担持されると、OSCの能力が極端に悪化することを示唆している。
【0098】
(比較例3)
実施例6に対して、2.36重量%Pd担持硫酸バリウム―アルミナaを用いず、0.99重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物c 8.08g、2.34重量%Pd担持アルミナb 5.12gに硫酸バリウムBを3水準(0.5g、1.0g、2.0g)振って加え、乳鉢と乳棒でよく混合し、比較例3の3水準のOSC容量測定用サンプル(硫酸バリウム含有量:3.6重量%、7.0重量%、13.2重量%)を製造した。
次いで、比較例3の3水準のPd担持Al
2O
3、Pd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物、及びBaSO
4の物理的混合物のOSC容量を測定し、Pd担持Al
2O
3及びPd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物の物理的混合物のOSC容量との差異を
図13にまとめた。
(OSC量の増減)
図13を参照すると、比較例3のPd担持Al
2O
3、Pd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物、及びBaSO
4の物理的混合物は、硫酸バリウムを含まないPd担持Al
2O
3及びPd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物の物理的混合物に比べ、BaSO
4含有量が3重量%以下では、OSCの量が硫酸バリウムを含まない物を上回っている。また、BaSO
4含有量が3重量%を超えると、OSCの量は硫酸バリウムの影響により硫酸バリウムを含まない物を下回る上、OSCの量は減少量が約130μmol/gまで急激に減少している。
【0099】
(実施例7)
下記の要領で、Pd担持Al
2O
3、Pd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物、Pd担持BaSO
4−Al
2O
3、及びPd担持Nd
2O
3−ZrO
2を調製した。
<Pd担持Al
2O
3>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で1.84g量り取り、純水で希釈して、γ−アルミナ粉末A 400gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間かけて空気中で焼成することで、0.458重量%Pd担持アルミナdを調製した。
<Pd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で1.35g量り取り、純水で希釈して、セリア−酸化ランタン−ジルコニア複合酸化物粉末E 400gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間かけて空気中で焼成することで、0.336重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物eを調製した。
<Pd担持BaSO
4−Al
2O
3>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で1.76g量り取り、純水で希釈して、実施例1の硫酸バリウム−アルミナ 200gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間かけて空気中で焼成することで、0.87重量%Pd担持硫酸バリウム―アルミナfを調製した。
また、硝酸パラジウム溶液をPd重量で3.6g、実施例1の硫酸バリウム−アルミナを450g用いて同様の処理を行うことにより、0.794重量%Pd担持硫酸バリウム―アルミナgを調製した。
<Pd担持Nd
2O
3−ZrO
2>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で3.6g量り取り、純水で希釈して、BET比表面積65m
2/g、平均細孔径25nmの15重量%酸化ネオジム−5重量%酸化ランタン−80重量%ジルコニア複合酸化物粉末F 550gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間かけて空気中で焼成することで、0.65重量%Pd担持酸化ネオジム−ジルコニア系複合酸化物hを調製した。
【0100】
次に、これらの材料を用いて、下記の要領でコージェライト製ハニカム担体に二層に塗布し、本発明の触媒(床下触媒)を得た。
<床下触媒の下層>
0.458重量%Pd担持アルミナd 400.23g、0.336重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物e 401.35g、0.87重量%Pd担持硫酸バリウム―アルミナf 200.22gに純水を加え、ポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。このスラリーを容積1.0Lのコージェライト製ハニカム担体{(400セル/inch
2(620k/m
2)、3.5ミル(0.089mm)}に所定量塗布し、80℃、20分かけて乾燥後、450℃で1時間焼成を行ない、実施例6の床下触媒の下層(触媒重量:100.18g/L、Pd:0.49g/L)を得た。
<床下触媒の上層>
0.65重量%Pd担持酸化ネオジム−ジルコニア系複合酸化物h 553.6g、0.794重量%Pd担持硫酸バリウム―アルミナg 453.6g、アルミナゾル(アルミナ換算で5g)に純水を加え、ポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。このスラリーを上記床下触媒の下層をコートしたハニカム担体に塗布して、実施例6の床下触媒の上層(触媒重量:101.22g/L、Pd:0.72g/L)を得た。
以上の一連の触媒調製法により、実施例7の床下触媒(触媒総重量:201.4g/L、Pd:1.21g/L)を得た。
【0101】
(触媒性能)
上記の床下触媒を下記の要領で調製した直下触媒と共に、各々を触媒コンバーター内に格納した後、耐久用ガソリンエンジンの排気システム内の直下位置、床下位置に各々のコンバーターを設置し、直下触媒は触媒床温度を950℃にして150時間、床下触媒は触媒床温度を800℃にして50時間耐久した。
その後、評価用車両の排気システムの直下位置、床下位置に各々の耐久処理済みコンバーターを設置し、走行モードLA−4にて評価を行った。
図14はLA−4モード走行時の加速領域の平均NOx浄化率を示している。本発明の硫酸バリウム−アルミナを用いた床下触媒は80.4%という高い脱硝性能を発揮した。
(直下触媒)
まず、下記の要領で、Pd担持Al
2O
3、Pd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物、Pd担持Nd
2O
3−ZrO
2を調製し、次にこれらをハニカム担体に被覆し触媒層を形成した。
<Pd担持Al
2O
3>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で12.0g量り取り、純水で希釈して、γ−アルミナ粉末A 300gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、3.85重量%Pd担持アルミナiを調製した。
また、硝酸パラジウム溶液をPd重量で8.0g、アルミナ粉末Aを400g用いて同様の処理を行うことにより、1.96重量%Pd担持アルミナjを調製した。
<Pd担持CeO
2−ZrO
2系複合酸化物>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で8.0g量り取り、純水で希釈して、セリア−ジルコニア系複合酸化物粉末C 1,200gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、0.662重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物kを調製した。
<Pd担持Nd
2O
3−ZrO
2>
硝酸パラジウム溶液をPd重量で8.0g量り取り、純水で希釈して、酸化ネオジム−ジルコニア系複合酸化物粉末F 400gに含浸担持した。この含水粉末を500℃、1時間空気中で焼成することで、1.96重量%Pd担持酸化ネオジム−ジルコニア系複合酸化物lを調製した。
<直下触媒の下層>
3.85重量%Pd担持アルミナi 312g、0.662重量%Pd担持セリア−ジルコニア系複合酸化物k 1,208g、硫酸バリウム 100gに純水を加え、ポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。容積1.0Lのコージェライト製ハニカム担体{(400セル/inch
2(620k/m
2)、3.5ミル(0.089mm)}にこのスラリーを所定量コーティングし、80℃、20分乾燥後、450℃1時間の焼成を行ない、直下触媒下層(触媒重量:162.0g/L、Pd:2.0g/L)を得た。
<直下触媒の上層>
1.96重量%Pd担持酸化ネオジム−ジルコニア系複合酸化物l 408g、1.96重量%Pd担持アルミナj 408g、アルミナゾル(アルミナ換算で35g)に純水を加え、ポットミルで混合粉砕してスラリーを調製した。このスラリーを上記床下触媒の下層をコートしたハニカム担体にコーティングして、直下触媒上層(触媒重量:85.1g/L、Pd:1.6g/L)を得た。
この様な一連の触媒調製法により、直下触媒(触媒総重量:247.1g/L、Pd:3.6g/L)を得た。
【0102】
(実施例8)
実施例1の硫酸バリウム−アルミナの代わりに、実施例2の硫酸バリウム−アルミナを用いた他は実施例7と同様な方法で、実施例8の床下触媒(触媒総重量:201.4g/L、Pd:1.21g/L)を得た。
(触媒性能)
上記の床下触媒を直下触媒と共に、各々を触媒コンバーター内に格納した後、耐久用ガソリンエンジンの排気システム内の直下位置、床下位置に各々のコンバーターを設置し、直下触媒は触媒床温度を950℃にして150時間、床下触媒は触媒床温度を800℃にして50時間耐久した。その後、評価用車両の排気システムの直下位置、床下位置に各々の耐久処理済みコンバーターを設置し、走行モードLA−4にて評価を行った。
図14はLA−4モード走行時の加速領域の平均NOx浄化率を示している。本発明の硫酸バリウム−アルミナを用いた床下触媒は85.6%という高い脱硝性能を発揮した。
【0103】
(実施例9)
実施例1の硫酸バリウム−アルミナの代わりに、実施例3の硫酸バリウム−アルミナを用いた他は実施例7と同様な方法で、実施例9の床下触媒(触媒総重量:201.4g/L、Pd:1.21g/L)を得た。
(触媒性能)
上記の床下触媒を直下触媒と共に、各々を触媒コンバーター内に格納した後、耐久用ガソリンエンジンの排気システム内の直下位置、床下位置に各々のコンバーターを設置し、直下触媒は触媒床温度を950℃にして150時間、床下触媒は触媒床温度を800℃にして50時間耐久した。その後、評価用車両の排気システムの直下位置、床下位置に各々の耐久処理済みコンバーターを設置し、走行モードLA−4にて評価を行った。
図14はLA−4モード走行時の加速領域の平均NOx浄化率を示している。本発明の硫酸バリウム−アルミナを用いた床下触媒は89.2%という高い脱硝性能を発揮した。
【0104】
(実施例10)
実施例1の硫酸バリウム−アルミナの代わりに、実施例4の硫酸バリウム−アルミナを用いた他は実施例7と同様な方法で、実施例10の床下触媒(触媒総重量:201.4g/L、Pd:1.21g/L)を得た。
(触媒性能)
上記の床下触媒を直下触媒と共に、各々を触媒コンバーター内に格納した後、耐久用ガソリンエンジンの排気システム内の直下位置、床下位置に各々のコンバーターを設置し、直下触媒は触媒床温度を950℃にして150時間、床下触媒は触媒床温度を800℃にして50時間耐久した。その後、評価用車両の排気システムの直下位置、床下位置に各々の耐久処理済みコンバーターを設置し、走行モードLA−4にて評価を行った。
図14はLA−4モード走行時の加速領域の平均NOx浄化率を示している。本発明の硫酸バリウム−アルミナを用いた床下触媒は78.2%と比較的高い脱硝性能を発揮した。
【0105】
(比較例4)
実施例1の硫酸バリウム−アルミナの代わりに、比較例1の硫酸バリウム−アルミナ混合物を用いた他は実施例6と同様な方法で、比較例4の床下触媒(触媒総重量:201.4g/L、Pd:1.21g/L)を得た。
上記実施例6で用いた直下触媒と比較例1の床下触媒を各々1個ずつ触媒コンバーターに格納した後、耐久エンジンの排気ラインの直下位置と床下位置に各々を設置した。その後、エンジンを稼動し、直下触媒の触媒床温度を950℃に、床下触媒の850℃に調節した後、直下触媒は150時間、床下触媒は50時間耐久処理した。その後、評価用車両の排気ラインの直下位置、床下位置に各々の触媒コンバーターを設置し、走行モードLA−4にて評価を実施した。触媒のNOx浄化性能は直下触媒と床下触媒の総和の脱硝性能で、LA−4モードの加速領域の平均NOx浄化率を
図14にまとめた。
また、
図1に示した比較例1の硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの平均粒子径と、
図14の平均NOx浄化率の関係を
図15にまとめた。さらに、
図8に示した比較例1の硫酸バリウム−アルミナのBa−Al間の相関係数と、
図14の平均NOx浄化率の関係を
図16にまとめた。
(触媒性能)
上記の床下触媒を直下触媒と共に、各々を触媒コンバーター内に格納した後、耐久用ガソリンエンジンの排気システム内の直下位置、床下位置に各々のコンバーターを設置し、直下触媒は触媒床温度を950℃にして150時間、床下触媒は触媒床温度を800℃にして50時間耐久した。その後、評価用車両の排気システムの直下位置、床下位置に各々の耐久処理済みコンバーターを設置し、走行モードLA−4にて評価を行った。
図14はLA−4モード走行時の加速領域の平均NOx浄化率を示している。比較用の硫酸バリウム−アルミナを用いた床下触媒は71.8%と脱硝性能が低かった。
【0106】
「結果と考察」
上記結果を示す
図1から、本発明の実施例1〜5で得られた硫酸バリウム−アルミナは、粒子中の硫酸バリウムの平均分散粒子径がいずれも600nm以下であった。一方、同様の方法で得られた比較例1の硫酸バリウム−アルミナは、硫酸バリウムの平均分散粒子径が1,000nmと本発明よりも大きかった。
また、
図8から、実施例1〜5の硫酸バリウム−アルミナは、粒子内のBa−Al間の相関係数がいずれも0.3以上で正の相関を示した。一方、同様の方法で得られた比較例1の硫酸バリウム−アルミナは、粒子内のBa−Al間の相関係数が−0.6弱で負の相関を示した。
【0107】
(I)硫酸バリウムを含むアルミナ材料について
本発明の実施例1〜5の硫酸バリウム−アルミナと比較例1の硫酸バリウム−アルミナは、平均粒子径と粒子内のBa−Al間の相関係数が上記のような差異を示しており、これらが、触媒反応と密接な関係を有するBET比表面積の低下率や硫酸バリウムの分解温度に影響を及ぼしたことが分かる。
具体的には、
図9及び10から明らかなように、還元処理−酸化処理を施した耐久前後におけるBET比表面積の低下率は、硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの平均粒子径が小さいほど低減し、硫酸バリウムの分解温度も硫酸バリウムの平均粒子径が小さいほど低くなった。但し、硫酸バリウムの混合比率が極端に増大すると、硫酸バリウム自体のBET比表面積の低下により、BET比表面積の低下率は悪化した。
同様な現象は、硫酸バリウム−アルミナ中のBa−Al間の相関係数との関係においても見られ、
図11及び12から明らかなように、平均粒子径が大きいほどBa−Al間の正の相関係数が低減し、また、Ba−Al間の正の相関係数が大きくなるほどBET比表面積の低下率は低減する傾向が見られた。
但し、硫酸バリウムの混合比率が極端に増大すると、硫酸バリウム自体のBET比表面積の低下により、BET比表面積の低下率は悪化した。
【0108】
(II)触媒について
これらアルミナ材料における結果は、硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの平均粒子径が10〜800nm、アルミナの平均粒子径が300nm〜5μmで、かつ、Ba−Al間の相関係数が0.3以上の値を取るのであれば、耐久中のBET比表面積の低下が抑制され、硫酸バリウムの分解も低い温度から生じることを示しており、バリウムが関与し、触媒が高温に曝される恐れのある触媒反応を促進するのに有効であることを示唆している。
実際に、本発明の実施例1〜4の硫酸バリウム−アルミナを用いて製造した実施例7〜10の床下触媒は、LA−4モード走行時の加速領域の平均NOx浄化率が75%を超える高い性能を示した。一方、比較例1の硫酸バリウム−アルミナを用いて製造された比較例4の床下触媒は、実施例7〜10の床下触媒と比べ、脱硝性能が低かった。
これらの結果を、硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの平均粒子径やBa−Al間の相関係数との比較で見てみると、
図15から明らかなように、実施例1〜4のように硫酸バリウム−アルミナ中の硫酸バリウムの平均粒子径が小さくなるほど脱硝性能が好転した。一方、本発明の硫酸バリウム−アルミナとOSCの関係をみると、
図13の実施例6から、硫酸バリウム−アルミナがOSCと物理的に混合している程度であれば、硫酸バリウムがOSCに及ぼす悪影響は軽微であると考えられ、硫酸バリウム−アルミナ中のBa−Al間の相関係数が正の値で大きくなるほど脱硝性能が好転した。
【0109】
こうした結果は、触媒に加えられた硫酸バリウムを含むアルミナ材料中の硫酸バリウムの粒子径やBa−Al間の相関係数が、脱硝性能の向上に重要な役割を果たしていることを示しており、具体的には、アルミナ材料中に分散している硫酸バリウムの平均粒子径が10〜800nm、アルミナの平均粒子径が300nm〜5μmで、かつ、Ba−Al間の相関係数が0.3以上の値を取ることにより、優れた脱硝性能が期待できることを意味している。
また、アルミナ材料の耐久性能の更なる向上が必要な場合には、アルミナをγ−アルミナから更に耐熱性の高いθ−アルミナやδ−アルミナに変更することや、耐熱性を向上すると言われている酸化ランタン、セリア、酸化ネオジム、酸化プラセオジム、酸化イットリウムなどの希土類酸化物をアルミナに添加することも有効であると言える。