特許第6272307号(P6272307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6272307防火システム用の双対リリース回路(dualreleasecircuit)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6272307
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】防火システム用の双対リリース回路(dualreleasecircuit)
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
   G08B17/00 C
   G08B17/00 J
   G08B17/00 E
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-511568(P2015-511568)
(86)(22)【出願日】2013年5月6日
(65)【公表番号】特表2015-517703(P2015-517703A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】US2013039669
(87)【国際公開番号】WO2013169637
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】61/643,701
(32)【優先日】2012年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507334934
【氏名又は名称】ファイアアウェイ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】110000132
【氏名又は名称】大菅内外国特許事務所特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マレー,ドナルド
【審査官】 望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−325700(JP,A)
【文献】 特開平7−228216(JP,A)
【文献】 実開平4−33192(JP,U)
【文献】 特開平9−313637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に直列に相互接続された複数のパイロテクニック・イニシエータと、
少なくとも、前記複数のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する第1回路ルートと、前記複数のパイロテクニック・イニシエータと同一のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する、前記第1回路ルートとは異なる第2回路ルートとを形成するため、前記パイロテクニック・イニシエータ間電気的に相互接続された複数のサブ回路と、
前記第1回路ルートと前記第2回路ルートに電気的に接続された制御部であって、前記第1回路ルートの第1パラメータを監視し、前記第2回路ルートの第2パラメータを監視し、前記第1パラメータ前記第2パラメータの少なくとも一方が所定のパラメータ範囲から外れたことを検知し、前記検知に基づいて警告示を生成するように構成された制御部と
を含むことを特徴とする双対リリース回路。
【請求項2】
前記制御部は、リリース要求を受信するよう構成されたポートを含、前記制御部は、前記リリース要求を受けて、前記第1回路ルート及び前記第2回路ルートの少なくとも一方にリリース電流を流し始めるように構成され、前記リリース電流は、前記パイロテクニック・イニシエータに点火するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の双対リリース回路。
【請求項3】
前記ポートは、火災検知部から前記リリース要求を受信するよう構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の双対リリース回路。
【請求項4】
前記ポートは、ユーザ・アクティベーション・インターフェースから前記リリース要求を受信するよう構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の双対リリース回路。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1回路ルートに第1監視定電流を流し、前記第2回路ルートに第2監視定電流を流し、前記第1回路ルートの端子第1電圧を前記第1パラメータとして監視し、前記第2回路ルートの端子第2電圧を前記第2パラメータとして監視することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の双対リリース回路。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1回路ルートに第1監視定電圧を加え、前記第2回路ルートに第2監視定電圧を加え、前記第1回路ルートに流れる第1電流を前記第1パラメータとして監視し、前記第2回路ルートに流れる第2電流を前記第2パラメータとして監視することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の双対リリース回路。
【請求項7】
前記第1回路ルートと前記第2回路ルートは、抵抗分圧回路を含むエンド・オブ・ライン回路を含むことを特徴とする、請求項6に記載の双対リリース回路。
【請求項8】
前記サブ回路は、前記パイロテクニック・イニシエータに電気的に接続された少なくとも1つのダイオードを含むことを特徴とする、請求項1に記載の双対リリース回路。
【請求項9】
電気的に直列に相互接続された複数のパイロテクニック・イニシエータであって、消火アセンブリの点火部に含まれるパイロテクニック・イニシエータと、
少なくとも、前記複数のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する第1回路ルートと、前記複数のパイロテクニック・イニシエータと同一のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する、前記第1回路ルートとは異なる第2回路ルートとを形成するため、前記パイロテクニック・イニシエータ間電気的に相互接続された複数のサブ回路と、
前記第1回路ルートと前記第2回路ルートに電気的に接続された制御部であって、前記第1回路ルートの第1パラメータを監視し、前記第2回路ルートの第2パラメータを監視し、前記第1パラメータ前記第2パラメータの少なくとも一方が所定のパラメータ範囲から外れたことを検知し、前記検知に基づいて警告示を生成し、リリース要求を受けて、前記第1回路ルート前記第2回路ルートの少なくとも一方を使用して前記パイロテクニック・イニシエータにリリース電流を流すように構成された制御部と、
を含むことを特徴とする防火アクチュエータ回路。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1回路ルートに第1監視定電流を流し、前記第2回路ルートに第2監視定電流を流し、前記第1回路ルートの端子第1電圧を前記第1パラメータとして監視し、前記第2回路ルートの端子第2電圧を前記第2パラメータとして監視することを特徴とする、請求項9に記載の防火アクチュエータ回路。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1回路ルートに第1監視定電圧を加え、前記第2回路ルートに第2監視定電圧を加え、前記第1回路ルートに流れる第1電流を前記第1パラメータとして監視し、前記第2回路ルートに流れる第2電流を前記第2パラメータとして監視することを特徴とする、請求項9に記載の防火アクチュエータ回路。
【請求項12】
前記リリース電流は、前記第1監視定電流と前記第2監視定電流の両方の電流強度値よりも大きい電流強度値を有することを特徴とする、請求項10に記載の防火アクチュエータ回路。
【請求項13】
火災検知部を含み、前記制御部が、前記火災検知部から前記リリース要求を受信するよう構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の防火アクチュエータ回路。
【請求項14】
ユーザ・アクティベーション・インターフェースを含み、前記制御部が、前記ユーザ・アクティベーション・インターフェースから前記リリース要求を受信するよう構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の防火アクチュエータ回路。
【請求項15】
前記制御部が、前記第1回路ルートの前記第1パラメータの監視と前記第2回路ルートの前記第2パラメータの監視を交互に開始するよう構成されていることを特徴とする、請求項9から請求項14のいずれか1つに記載の防火アクチュエータ回路。
【請求項16】
電気的に直列に相互接続された複数のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する第1回路ルートと、前記複数のパイロテクニック・イニシエータと同一のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する、前記第1回路ルートとは異なる第2回路ルートとを、スーパーバイザモードで監視することであって、前記第1回路ルートと前記第2回路ルートは、前記複数のパイロテクニック・イニシエータに電気的に相互接続された複数のサブ回路を含み、前記監視することは、前記第1回路ルートの第1パラメータと前記第2回路ルートの第2パラメータを監視することを含む、ことと
記第1パラメータか前記第2パラメータの少なくとも一方が所定のパラメータ範囲から外れたことを検知することと、
前記検知を受けて警告示を生成することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
リリース要求を受信することと、
前記リリース要求を受けて、リリースモードで前記第1回路ルートまたは前記第2回路ルートの少なくとも一方にリリース電流を流すことであって、前記リリース電流は前記複数のパイロテクニック・イニシエータに点火するよう構成される、ことと、
を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1回路ルートに第1監視定電流を流すことと、前記第2回路ルートに第2監視定電流を流すことを含、前記第1回路ルートの第1パラメータと前記第2回路ルートの第2パラメータを監視することは、前記第1回路ルートの端子間第1電圧を前記第1パラメータとして監視し、前記第2回路ルートの端子間第2電圧を前記第2パラメータとして監視することを含むことを特徴とする、請求項16及び請求項17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
回線チェックモードで、前記第1回路ルート、前記第2回路ルートに、前記リリース電流とは逆の方向に反復的に回線チェック電流を流すことであって、前記回線チェック電流の電流強度は、前記複数のパイロテクニック・イニシエータに点火するのに不十分である、ことと
リリースモードで、前記第1回路ルートか前記第2回路ルートの少なくとも一方にリリース電流を流すことであって、前記リリース電流の電流強度は、前記複数のパイロテクニック・イニシエータに点火するのに十分である、ことと、
を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記第1回路ルートに第1監視定電圧を加えることと、前記第2回路ルートに第2監視定電圧を加えることを含、前記第1回路ルートの第1パラメータと前記第2回路ルートの第2パラメータを監視することは、前記第1回路ルートに流れる第1電流を前記第1パラメータとして監視し、前記第2回路ルートに流れる第2電流を前記第2パラメータとして監視することを含むことを特徴とする、請求項16、請求項17、請求項19のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本出願は、「双対リリース回路」と題する2012年5月7日に出願された米国仮特許出願番号第61/643,701号によって主張される優先権を享受する利益を主張する。
【0002】
本特許文献は、双対(二重)リリース回路に関し、より具体的には、防火回路における双対リリースアクチュエータ回路に関する。
【背景技術】
【0003】
2006年、国際海事機関(IMO)は、消火システムが、火災から保護されているコンパートメント(例えばエンジンルーム)内に配置されている場合の消火システムの監視と作動に関する要件の明確化を含む船舶用の様々な防火要件を改訂した。
【0004】
従来、これらのシステムは、機械的なプルケーブル(pull-cable)か、空気圧手段のいずれかによって開放(リリース)されてきた。空気圧による方法に匹敵する電気的な方法はなかったが、電気式リリースの使用は禁止されなかった。船舶に電気ケーブルを取り付けることは、機械や空気圧による方法より安価であると考えられるため、IMO及びその他の海事当局が課す技術的要件を満たす適切な電気的方法という考え方が望ましいだろう。
【0005】
規制当局の1つの例として、アメリカ合衆国沿岸警備隊(USCG)はかつて、リリース方法へのアクセスを確実にし、かつシステムがその空間にあることにより損傷を受けないことを確実にするために、全ての消火システムを、保護を受けるべき空間外に配置することを要件にしていた。その結果、USCGは、双対回路空気圧リリース方法を使用したシステムのいくつかを空間内に置く事を許容したが、さらに評価した結果、装置に関して大失敗していたことが分かった。その結果、保護空間内に防火装置を配置するという慣習は、一般的に信頼性がないと考えられ、防火区域内に防火装置を配置する慣習は廃止された。海事当局が保護空間内に防火装置を再配置することを許容する場合は、装置の頑健性と作動方法に対する懸念を払拭することが求められるだろう。
【0006】
以上の理由により、防火システム用の電気的リリースの必要性が生じている。本明細書に記載する双対回路リリースによれば、火事や損傷に耐えうる、より頑健な装置を提供することができるだろう。この方法は、二重の(duplicated)リリースを提供するのみならず、機能不全が発生する前に機能不全発生の可能性を知らせるか、或いはそれを示すスーパーバイズ(supervision;管理)を提供する。提案する双対回路リリースは、システムが確実に頑健性を維持するために故障を検知し、修正する機会を提供するだろう。
【発明の概要】
【0007】
実施形態は、双対リリース回路、アクチュエータ回路、及び双対リリース回路とアクチュエータ回路の動作方法に関する。より詳細には、本発明は、防火回路における双対リリース回路の作動に関する。いくつかの実施形態は、1つの故障が回路の作動を妨げないように、故障を見つけるために監視を受ける少なくとも2つの回路に関する。実施形態は、可能な限り低い電流となる直列回路による方法を含むことができる。
【0008】
実施形態は、現在の方法よりも高い信頼性で、しかも、より安価な作動方法、作動装置、及び設置費用を提供することができる。これにより、空間要件を最小限にするため、コンテナが保護空間内、天井、そして壁に配置される新しい消火技術(エアロゾル)の採用が可能になる。
【0009】
提案する双対リリース回路の実施形態により、火災や損傷に耐えうる、より頑健な装置が実現可能になる。この方法は、複製リリースを提供するのみならず、機能不全が実際に発生する前に機能不全発生の可能性を知らせ、或いはこれを表示するスーパーバイズを提供する。提案する双対回路リリースは、故障を修正する機会を提供し、これによって、システムの頑健性が確実に維持されるだろう。
【0010】
防火作動システムの実施形態は、その信頼性と損傷に耐えうる機能に関して重点的に取り組む。回路は複製し、監視を受けることができる。監視は、イニシエータを介したスーパーバイズを含む。監視は、修正可能な故障を表示することができる。劣化状態(ショート回路や開回路など第1の故障)の場合、システムは、その全機能を維持したまま機能し、イニシエータをアクティブにする。
【0011】
実施形態は、双対リリース回路、アクチュエータ回路、及び双対リリース回路とアクチュエータ回路の動作方法に関する。双対リリース回路の1つの例は、電気的に直列に相互接続した複数のパイロテクニック・イニシエータ(pyrotechnic initiator)を含み、また、複数のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する第1回路ルートと、複数のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する第2回路ルートとを少なくとも形成するように、パイロテクニック・イニシエータ間電気的に相互接続された複数のサブ回路を含み、また、第1回路ルートと第2回路ルートに電気的に接続された制御部を含む。制御部は、第1回路ルートの第1パラメータを監視し、第2回路ルートの第2パラメータを監視し、少なくとも第1パラメータと第2パラメータのうち1つが所定のパラメータ範囲から外れるを検知し、その検知に基づいて警告指示を生成するように構成される。
【0012】
防火アクチュエータ回路の1つの例は、電気的に直列に相互接続した複数のパイロテクニック・イニシエータを含み、また、複数のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する第1回路ルートと複数のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する第2回路ルートとを少なくとも形成するように、パイロテクニック・イニシエータ間電気的に相互接続されたサブ回路を含み、また、第1回路ルートと第2回路ルートに電気的に接続した制御部を含む。パイロテクニック・イニシエータは、消火アセンブリの点火部の中に含められてもよい。制御部は、第1回路ルートの第1パラメータを監視し、第2回路ルートの第2パラメータを監視し、少なくとも第1パラメータか第2パラメータの1つが所定のパラメータ範囲から外れるを検知し、その検知に基づいて警告指示を生成し、リリース要求を受けて少なくとも第1回路ルートか第2回路ルートの1つを使用してパイロテクニック・イニシエータに電流をリリースするように構成される。
【0013】
双対リリース回路の動作方法の1つの例は、スーパーバイズモードで第1回路ルートと第2回路ルートを監視することを含む。第1回路ルートと第2回路ルートは、複数のパイロテクニック・イニシエータに電気的に相互接続した複数のサブ回路を含む。この監視することは、第1回路ルートの第1パラメータと第2回路ルートの第2パラメータを監視することと、第1パラメータか第2パラメータの少なくとも1つが所定のパラメータ範囲から外れたことを検知することと、この検知を受けて警告表示を生成することを含むことができる。
【0014】
上記の、また、その他の発明の特徴と利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明と、添付の図面とを併せ読むことによってさらに明確になるだろう。図面は、縮尺通りに記載されていない。発明の詳細な説明と図面は、発明を限定するものではなく、例示するものにすぎず、発明の範囲は、添付の特許請求の範囲とその均等物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面は、縮尺通りに記載されていないが、類似の数字は、異なる図における類似のコンポーネントを記載することができる。異なる添え字を有する類似の数字は、類似のコンポーネントの異なる例を表すことができる。一般的に、図面は限定目的ではなく、例示目的で、本明細書において議論する様々な実施例を示す。
【0016】
図1図1は、双対リリース回路の実施例の部分を示す。
図2A図2Aは、双対リリース回路のスーパーバイズモードの実施例を示す。
図2B図2Bは、双対リリース回路のスーパーバイズモードの実施例を示す。
図3A図3Aは、双対リリース回路のリリースモードの実施例の部分を示す。
図3B図3Bは、双対リリース回路のリリースモードの実施例の部分を示す。
図4図4は、制御部を有する双対リリース回路の実施例の図を示す。
図5図5は、防火システムの別の実施例の部分の図を示す。
図6図6は、双対リリース回路の別の実施例の部分を示す。
図7図7は、双対リリース回路のさらに別の実施例の部分を示す。
図8A図8Aは、スーパーバイズモードで動作する双対リリース回路の実施例を示す。
図8B図8Bは、スーパーバイズモードで動作する双対リリース回路の実施例を示す。
図9A図9Aは、リリースモードで動作する双対リリース回路の実施例を示す。
図9B図9Bは、リリースモードで動作する双対リリース回路の実施例を示す。
図10A図10Aは、回線チェックモードで動作する双対リリース回路の実施例を示す。
図10B図10Bは、回線チェックモードで動作する双対リリース回路の実施例を示す。
図11図11は、制御部を有する定電流双対リリース回路の実施例の図を示す。
図12図12は、防火システムの別の実施例の部分の図を示す。
図13図13は、双対リリース回路を動作する方法1300の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態は、安全設備の回路ベースのアクティブ化(activation)に関する。実施形態は、一連のパイロテクニック・イニシエータを電気的にリリース(アクティブ化)することに関する。これに対して、これらのイニシエータは、消火システムのリリース、装置の停止/開始、扉の開放/閉鎖などの動作といった活動を行う。図1に示す双対リリース回路は、信頼性の観点から、壊れた配線によって生じる開回路などの故障を知らせ、または表示するように回路を監視するリリース方法を提供する。リリースは、たとえ、故障があったとしても全てのパイロテクニック・イニシエータのリリースを行うために、いかなる単一の故障に対しても耐えうるものでなければならない。
【0018】
パイロテクニック・イニシエータは、花火、軍事/取り壊し/地雷用の爆発物、軍事用安全装置(航空機キャノピーイジェクションなど)を作動させるために使用することができる。これらの装置は、100ミリ秒にわたって1アンペアの、装置に対する一般的な「保証リリースエネルギー」を所定の時間にわたって流す電流とするために、一定レベルのエネルギー投入を必要とするかもしれない。さらに、極めて低いトリクル電流(例えば、3〜25ミリアンペア)を、装置が適切に配置され、作動可能か確認するための監視用のパイロテクニック・イニシエータに流すこともできる。回路は直列でも並列でもよいが、配置が単純であるだけでなく、並列による手法よりも必要な電流が低いため、直列による手法が最も一般的なルートである。作動すると、パイロテクニック・イニシエータは、消火ユニットなど、その他の装置を始動させるために使用することができる。イニシエータの作動は、その時点で開回路やショート回路のいずれかをもたらすことがあるが、有用な特徴としては、全ての装置がその故障である開回路やショート回路が深刻になる前に一斉に作動するための充分なエネルギーを受信していることである。
【0019】
バックアップを有しない単純な直列回路について、回路をリリースする技術者または装置は、導通を確認するための簡単な回路チェックを行い、これによって、イニシエータのリリース前に任意の故障が検知され、手作業で修正される。より好ましい手法は、アクチュエータ回路を「生き残れる(survivable)」(例えば、損傷や故障に耐えうる)マルチプル・イニシエータで実装することである。火災警報システムは、火災の検知と消火システムをリリースする信号用の両方の目的のためにスーパーバイズ回路を使用することができる。パイロテクニック・イニシエータや「爆竹」装置は、爆発物に分類されているため、リリース回路は、一般的にソレノイドを動作させる。こうしたソレノイドベースのリリース回路は、故障(「開回路」)が通知されるが、消火システムが機能して防火材をリリースするため、この故障が修理されるように、頻繁にスーパーバイズされる。この種の耐故障性を有しない回路は、一般に、B級回路と呼ばれる。より進歩した回路は、故障(「開回路」、「ショート回路」のいずれも含む)を監視し、故障を通知しつつも回路が機能性を全て保持しているA級回路である。一般に、ソレノイドベースのA級回路は、並列の回路トポロジーを使用するため、高コストとなる。スーパーバイズは、通常、作動装置自体(例えばソレノイド)ではなく、回路配線のためのものである。本明細書に記載する実施形態は、A級火災警報回路を実装し、直列でパイロテクニック・イニシエータを配置するために、ソレノイドではなく、マルチプル・パイロテクニック・イニシエータを使用する。
【0020】
一般的な火災警報リリース回路は、火災警報ベルを鳴らすために使用される回路と類似のものとすることができる。一般的に、これらは通常ベルやリリースソレノイドを介してスーパーバイズを行わない並列回路である。直列回路のスーパーバイズは、配線を介してエンド・オブ・ライン(end of line)抵抗器によって制限された電流をトリクル電流に供給することで達成される。警報部は、微小電流が回路に傷が無いことを確実に確認するように回路を監視する。一般的な火災警報システムにおいて、このスーパーバイズ電流は、警報装置やリリース装置には流れない。
【0021】
図1は、双対リリース回路100の実施例の部分を示す。双対リリース回路100は、複数のパイロテクニック・イニシエータ105A、105B、105Cを含む。パイロテクニック・イニシエータは、直列に配置され、その実施例は、Nを1より大きい正の整数とする、1からNまでの多数のパイロテクニック・イニシエータである。示した実施例において、第1回路ルート110(サイドA)と第2回路ルート115(サイドB)は、パイロテクニック・イニシエータと電気的に相互接続し、重複回路を作成する。各パイロテクニック・イニシエータは、配線の破損やショート回路の原因となる1つの回路ルートにおける物理的な損傷が、全てのイニシエータのリリースを妨げないように、2つの回路ルートによって電気的にアクティブにする。回路の重複を増加させるために、追加的な回路ルートを含むこともできる。
【0022】
開回路やショート回路が検知されるように、2つのリリース回路ルートはトリクル電流によってスーパーバイズすることができる。双対リリース回路100は、4つの状態を有する。それらは、スーパーバイズサイドA/第1サイド、スーパーバイズサイドB/第2サイド、リリースサイドA/第1サイド、リリースサイドB/第2サイドである。制御部(図4に示す)は、双対リリース回路100の状態を制御するため、第1回路ルートと第2回路ルートに電気的に接続することができる。スーパーバイズモードにおいて、制御部は、第1回路ルート110の第1パラメータと第2回路ルート115の第2パラメータを監視する。制御部が、第1パラメータと第2パラメータの少なくとも1つが所定(例えばプログラミングした)範囲から外れていることを検知すると、制御部は、警告指示(例えば、プロセスに対して発する警告信号またはユーザに対して発する音響や映像による指示)を生成することができる。
【0023】
図2Aは、スーパーバイズサイドA/第1サイドの実施例を示す。第1回路ルート210と第2回路ルート215は、エンド・オブ・ライン回路220を含むことができる。図示したエンド・オブ・ライン回路は、抵抗分圧回路とダイオードを含む。このスーパーバイズモードにおいて、制御部は、第1回路ルート210に対して定電圧を加え、第1パラメータとして、サイドAから第1回路ルート210に流れる電流を監視することができる。いくつかの実施例において、制御部は、サイドBはオフにして、サイドAからトリクル直流電流(DC)を監視する。加えられる定電圧の値と抵抗分圧回路の抵抗値が、スーパーバイズ用に使用されたトリクル電流を決定(判定)する。監視を受けた電流が予想した正常範囲にある場合、回路は「正常」とみなされて、オフにされ、続いてサイドBをオンにすることができる。監視を受けた電流が予想した範囲内にない場合、制御部は、その状態を知らせるために警告指示を生成することができ、その後サイドB/第2サイドのスーパーバイズに進むことができる。
【0024】
図2Bは、スーパーバイズサイドB/第2サイドの実施例を示す。このスーパーバイズモードにおいて、制御部は、第2回路ルート215に対して定電圧を加え、第2パラメータとして、サイドBから第2回路ルート215に流れる電流を監視することができる。監視を受けた電流が予想した範囲にある場合、回路は「正常」とみなされて、オフにされ、再びサイドAをオンにし、スーパーバイズを1サイクル内で反復することができる。サイドBの監視を受けた電流が予想した範囲内にない場合、制御部は、その状態を知らせるために警告表示を生成することができ、その後サイドA/第1サイドのスーパーバイズに進むことができる。双対リリース回路の監視のための反復サイクルは、何度も繰り返すことができる(例えば、継続してまたは計画に従って)。スーパーバイズモードでは、制御部は一方をオン、他方をオフにして、サイドAとサイドBとの間で循環させることができる。
【0025】
図3Aは、リリースサイドA/第1サイドの実施例を示す。パイロテクニック・イニシエータ305A、305B、305Cのリリースが要求されると、制御部は、リリースモードに入ることができる。図3Aの実施例において、制御部は、スーパーバイズモードとは異なる極性で、定電圧を加えることができる。この逆極性により、監視電流とは逆の電流が第1回路ルート310に流れることになる。第1回路ルート310に流れるリリース電流は、配線回路320の末端のダイオードに流れる。ダイオードの活性により第1回路ルートの抵抗が減少するため、リリース電流は、スーパーバイザモードで使用される監視電流よりも高くなる。リリース電流の強度あるいはレベルとリリース電流の継続によりエネルギーが発生し、一連のパイロテクニック・イニシエータに点火する。
【0026】
図3Bは、リリースサイドB/第2サイドの実施例を示す。リリースモードにおいて、リリースサイドA/第1サイドとリリースサイドB/第2サイドとの間で循環させることができる。リリースサイドB/第2サイドにおいて、サイドAは、一定時間経過後、オフにすることができ、サイドBは、加えた電圧を逆極性の状態でオンにすることができ、パイロテクニック・イニシエータにエネルギーを供給するプロセスが反復される。反復的なリリースサイクルは、システムがリリースされたという確証を得るうえで充分な数のサイクル分(例えば、サイドAとサイドBとの間)、継続することができる。制御部は、警告指示を生成できるような回路の故障(例えば開回路またはショート回路)を検知するために、監視を行うことができる。リリースモードでの循環は、双対リリース回路における全てのパイロテクニック・イニシエータを作動させる充分なエネルギーを供給するために、単一の最初の故障も解決することができる。リリース回路の頑健性を増すために、追加的な回路ルート(例えば、トリプル(三重)リリース回路など)が加えられてもよい。
【0027】
図4は、制御部425を有する双対リリース回路400の実施例の図を示す。制御部425は、スーパーバイズモード用の電力、サイクルタイミング及び故障の監視ならびにリリースモード用のサイクルタイミング及び逆極性を提供することができる。エネルギーを保存するために、制御部425は、リリース電流をパルスすることができる(例えば、16分の1秒につき、1アンペアの回路パルス)。制御部425は、リリース要求を受信するポート430を含むことが出来る。制御回路425はリリース要求を受信すると、リリース電流を第1回路ルート410または第2回路ルート415の少なくとも1つに流し始める。いくつかの実施例において、双対リリース回路400は、ユーザによってアクティブにされた防火システムに備えられ、リリース要求は、ユーザ・アクティベーション・インターフェースから受信することができる。いくつかの実施例において、双対リリース回路400は、海上で使用するための防火システムに備えられる。
【0028】
図5は、防火システムの別の実施例の部分の図を示す。システムは、双対リリース回路500、制御部525、火災検知部535を含む。火災検知部535は、火災を検知するための1つまたは複数のセンサーを含んでもよい。制御部525は、火災検知部535が火災の表示を検知したことを受けて、火災検知部535からのリリース要求を受信するためのポート530を含む。双対リリース回路500は、パイロテクニック・イニシエータのいずれかまたは全てを誤ってリリースする望ましくない電気スパイクへの対策として、双対リリース回路を調整する電気装置を含むことができる。制御部525と火災検知部535は、システム(例えば、C1、C2、…CN)内の類似のイニシエータアクチュエータ回路の数を増やすマルチリリース回路を提供することができる、より大きなシステムの一部分とすることができ、また、追加的な電源部、火災検知部、制御部を含み、通知と表示機能を備えることができる。
【0029】
図6は、双対リリース回路600の別の実施例の部分を示す。再び、双対リリース回路600は、第1回路ルート610と第2回路ルート615を形成するため、パイロテクニック・イニシエータ間電気的に相互接続された複数のサブ回路を含む。この実施例において、サブ回路は、ダイオードの他に抵抗器を含む。或いは、いくつかの実施例において、パイロテクニック・イニシエータと並行に配置された抵抗器(R)は、ダイオードであってもよい。スーパーバイズモードにおいて、制御部(図示せず)は、第1回路ルートに第1監視定電圧を加え、第2回路ルートに第2監視定電圧を加え、第1パラメータとして第1回路ルートに流れる第1電流を監視し、第2パラメータとして第2回路ルートに流れる第2電流を監視する。第1回路ルート610と第2回路ルート615は、エンド・オブ・ライン回路620を含むことができる。リリースモードにおいて、制御部は、回路ルートの一方または両方の端末で電圧を逆極性にすることができる。これにより、エンド・オブ・ライン回路におけるダイオードが活性化し、回路ルートに流れる電流を変化させてパイロテクニック・イニシエータをアクティブにする。
【0030】
図7は、双対リリース回路700のさらに別の実施例の部分を示す。再び、双対リリース回路700は、第1回路ルート710と第2回路ルート715を形成するため、パイロテクニック・イニシエータ間電気的に相互接続された複数のサブ回路を含む。しかし、図示した実施例において、エンド・オブ・ライン回路を含んでいない点に留意すべきである。スーパーバイズモードにおいて、制御部は、第1回路ルート710に第1監視定電流(電圧ではない)を流し、第2回路ルート715に第2監視定電流を流す。監視定電流を流したことを受けて、制御部は、第1パラメータとして第1回路ルート710の端子で第1電圧を監視し、第2パラメータとして第2回路ルート715の端子で第2電圧を監視する。
【0031】
図8A及び図8Bは、スーパーバイズモードで動作する双対リリース回路800の実施例を示す。図8Aは、スーパーバイズサイドA/第1サイドの実施例を示す。制御部は、第1回路ルート810に小さな強度の定電流を流し、結果生成したサイドA端子の電圧を監視する。パイロテクニック・イニシエータがリリースされないことを確実にするような強度と期間のうちの1つまたは両方を有する定電流を印加する。サイドAの監視を受けた電圧が予想値ではない、即ち、予想した範囲内にない場合、制御部は、警告指示を生成することができる。制御装置はその後サイドB/第2サイドのスーパーバイズに進むことができる。図8Bは、スーパーバイズサイドB/第2サイドの実施例を示す。制御部は、第2回路ルート815に小さな強度の定電流を流し、結果生成したサイドB端子の電圧を監視する。図中の実施例が示すように、監視電流は、第1回路ルート810とは異なる方向に第2回路ルート815に流すことができる(例えば、監視電流を一連のサブ回路の異なる端子に流すことができる)。サイドBの監視を受けた電圧が予想値ではない、即ち、予想した範囲内にない場合、制御部は、警告状態を生成することができる。制御装置はその後サイドA/第1サイドのスーパーバイズに進むことができる。制御部は、第1回路ルート810と第2回路ルート815のスーパーバイズ間で継続的に循環する、あるいは、計画に従って、第1と第2回路ルートの監視を交互に開始することができる。
【0032】
図9A及び図9Bは、リリースモードで動作する双対リリース回路の実施例を示す。図9Aは、リリースサイドA/第1サイドの実施例を示す。制御部は、パイロテクニック・イニシエータのリリースが要求されると、リリースモードに入る。リリースモードにおいて、制御部は、第1回路ルート910または第2回路ルート915の少なくとも1つにリリース電流を流すことができる。リリース電流は、スーパーバイズモードで使用する監視電流の強度より高い、つまり、大きな強度を有する。リリース電流の強度とリリース電流の期間が、エネルギーを供給し、一連のパイロテクニック・イニシエータに点火する。図示した実施例において、リリース電流は、スーパーバイズモードの間は監視電流と同じ方向に流れるが、制御部は、スーパーバイズモードの監視電流とは異なる方向にリリース電流を流してもよい。図9Bは、リリースサイドB/第2サイドの実施例を示す。制御部は、リリースモードにおいて、リリースサイドA/第1サイドとリリースサイドB/第2サイドとの間で循環することができる。リリースサイドB/第2サイドの間、一定の期間経過後、サイドAがオフにされ、サイドBがオンにされてもよい。システムがリリースされたという合理的な確証を提供するのに充分な数のサイクル分(例えば、サイドAとサイドBとの間)、リリースモードで循環を継続することができる。
【0033】
図10A及び図10Bは、回線チェックモードで動作する双対リリース回路1000の実施例を示す。回線チェックモードは、スーパーバイズモードに類似し、第1回路ルート1010と第2回路ルート1015の1つまたは複数が動作可能か確認するために実行される。回線チェックモードにおいて、回線チェックは、第1回路ルート1010と第2回路ルート1015に対して反復して行われる。回線チェック電流は、リリース電流とは逆方向に流され、回線チェック電流の強度は、複数のパイロテクニック・イニシエータに点火するには不十分である。回線チェック電流は、エネルギーを保存するためにパルスにすることができる。
【0034】
図11は、制御部1125を有する定電流双対リリース回路1100の実施例の図を示す。制御部1125は、スーパーバイズモード用、リリースモード用、そして回線チェック用の電力、サイクルタイミング及び故障の監視を提供することができる。制御部1125は、ユーザアクティベーション部または火災検知部からなどのリリース要求を受信するためのポート1130を含んでいてもよい。
【0035】
図12は、防火システムの別の実施例の部分の図を示す。システムは、定電流双対リリース回路1200、制御部1225、及び火災検知部1235を含む。火災検知部1235は、火災を検知するための1つまたは複数のセンサーを含んでもよい。制御部1225は、火災検知部1235が火災の表示を検知したことを受けて、火災検知部1235からのリリース要求を受信するためのポート1230を含む。システムは、システム内の類似のイニシエータアクチュエータ回路の数を増やすマルチリリース回路(例えば、C1、C2、…CN)を含むことができ、また、追加的な電源部、火災検知部、制御部を含み、警告または検知された故障の箇所を表示するための通知と表示機能を備えることができる。
【0036】
図13は、双対リリース回路を動作する方法1300の流れ図を示す。ブロック1305で、第1回路ルートと第2回路ルートは、スーパーバイザモードつまりスーパーバイズモードで監視される。第1回路ルートと第2回路ルートは、複数のパイロテクニック・イニシエータと電気的に相互接続した複数のサブ回路を含む。監視することは、第1回路ルートの第1パラメータ(例えば、電圧、電流または抵抗のうち1つまたは複数)を監視し、かつ、第2回路ルートの第2パラメータを監視することを含むことができる。ブロック1310で、第1パラメータまたは第2パラメータの少なくとも1つが所定のパラメータ値と等しくない、または、所定のパラメータ値範囲を外れていると検知される。ブロック1315で、この検知を受けて警告指示が生成される。いくつかの実施例において、方法1300は、ブロック1320において双対リリース回路におけるリリース要求を受信することを含む。リリース要求は、ユーザ・アクティベーション・インターフェースまたは火災検知部から受信した電気信号の形態とすることができる。ブロック1325において、リリース要求受信を受けてリリースモードが開始される。
【0037】
本明細書に記載した提案の方法と電気的配置は、防火コンテナの電気配線のスーパーバイズを行うだけでなく、これが操作可能で、それゆえに利用可能なことを確認するためにパイロテクニック・イニシエータを介したスーパーバイズも行う。防火システムは問題点(例えば配線の破損)を明らかにしつつ、相変わらずフルリリース機能を保持することができる。この消火システムによって、火災と損傷をこうむるコンパートメント内に配置したコンテナは、頑健さが鍵となる。防火用の頑健で信頼性の高い作動方法が望ましい。USCG及びその他の海事当局は、作動の監視を行うシステムが、損傷に耐え、使用するうえで信頼性の高いものであれば、より積極的に新しい消火技術と設置方法を受け入れる準備ができるだろう。電気双対リリース回路による方法は、従来の空気圧による方法を改良したものである。
【0038】
本明細書に記載した実施形態は、別個のコンパートメントから対象となるコンパートメントに対して消火剤をパイプ輸送する必要がなく、それゆえに設置費用を大幅に節約することができる。本明細書に記載した電気的作動の方法により、空間に設置することができる装置の費用と装置設置にかかる費用とを大幅に低減することができる。これは、電気ケーブルを設置するほうが、パイプと空気圧システムを設置するよりも遥かに容易かつ迅速だからである。外にある大きな別個のコンパートメントが消火装置を保存する必要がないため、消火システムが分散システムとして保護される機械空間内に設置でき、その中でコンテナが空間の壁や天井に配置できる場合、より少ない空間しか必要とならない。これにより、船上のデッキ空間(不動産)が、その他の有益な目的のために自由に使用できるようになり、別個のコンパートメントを建設する費用も不要となる。
【0039】
提案した双対リリース回路の別の方法は、2つの標準的火災警報リリース回路が使用できるように、1つではなく2つの電気的/パイロテクニック・アクチュエータを内蔵した消火コンテナを作成することだろう。しかし、これによると装置の費用が加算され、リリース装置が多額の費用を支払ってアメリカ保険業者安全試験所(Underwriters’ Laboratories)で再試験されなければならないことを意味する。また別の方法は、従来の海事慣習に則って複製空気圧回路を使用することだろう。このような方法による回路は、スーパーバイズを受けておらず、その信頼性は著しく劣るだろう。加えて、空気圧ルートは、複製のガスソース、バルブなどを必要とし、非常に煩雑である。別の方法は、消火コンテナの各々に対して並列回路を配置することだろう。これには遥かに高い電流が必要で、設置費用が大幅に増してしまう。1つの回路の故障によって1つの消火コンテナのリリースが不能になり、消火剤全てについて同等レベルの信頼性でリリースを実現するために、追加コンテナが追加費用を伴って必要となるだろう。さらに別の方法は、遥かに高い費用で防火コンテナを空間外に設置し続け、より低い費用ですませるために低い性能しか提供しない防火システムを設置し、機械ケーブルのプルを設置することである。これらの代替的な方法は、リリースすることができるコンテナ数を制限してしまうかもしれない。アクチュエータケーブルは、パイプまたはチューブの長さに渡って延長することができ、プーリや撓みが多くなるため、手作業のリリースのために充分な力でケーブルを引っ張ることは、物理的に困難である。
【0040】
本明細書に開示した発明の実施形態は、現在好ましいと考えられているが、発明の範囲を逸脱しなければ、様々な変更や改変が可能である。発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に示されており、均等物の意味合いと範囲内の全ての変更が、その特許請求の範囲内に包含されるものと意図されている。
【0041】
[追加的な実施例]
実施例1は、電気的に直列に相互接続した複数のパイロテクニック・イニシエータと、複数のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する第1回路ルートと、複数のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する第2回路ルートとを少なくとも形成するために、パイロテクニック・イニシエータ間で電気的に相互接続した複数のサブ回路と、第1回路ルートと第2回路ルートに電気的に接続した制御部を含んだ主題(装置または双対リリース回路など)を含むことができる。制御部は、第1回路ルートの第1パラメータを監視し、第2回路ルートの第2パラメータを監視し、第1パラメータと第2パラメータのうち少なくとも1つが所定のパラメータ範囲を外れると、これを検知し、この検知に基づいて警告指示を生成するよう構成することができる。
【0042】
実施例2において、実施例1の主題は、任意で、リリース要求を受信するよう構成したポートを含む制御部を含むことができ、制御部は、リリース要求を受けて、第1回路ルート及び第2回路ルートの少なくとも1つにリリース電流を流すように構成され、リリース電流は、パイロテクニック・イニシエータに点火するよう構成される。
【0043】
実施例3において、実施例1及び実施例2の1つまたはそれらの任意の組合せの主題は、任意で、火災検知部からのリリース要求を受信するよう構成したポートを含むことができる。
【0044】
実施例4において、実施例1から実施例3の1つまたはそれらの任意の組合せの主題は、任意で、ユーザ・アクティベーション・インターフェースからのリリース要求を受信するよう構成したポートを含むことができる。
【0045】
実施例5において、実施例1から実施例4の1つまたはそれらの任意の組合せの主題は、任意で、第1回路ルートに第1監視定電流を流し、第2回路ルートに第2監視定電流を流し、第1パラメータとして第1回路ルートの端子で第1電圧を監視し、第2パラメータとして第2回路ルートの端子で第2電圧を監視するよう構成した制御部を含むことができる。
【0046】
実施例6において、実施例1から実施例5の1つまたはそれらの任意の組合せの主題は、任意で、第1回路ルートに第1監視定電圧を加え、第2回路ルートに第2監視定電圧を加え、第1パラメータとして第1回路ルートに流れる第1電流を監視し、第2パラメータとして第2回路ルートに流れる第2電流を監視するよう構成した制御部を含むことができる。
【0047】
実施例7において、実施例6の主題は、任意で、抵抗分圧回路を含むエンド・オブ・ライン回路を含む第1回路ルートと第2回路ルートを含むことができる。
【0048】
実施例8において、実施例1から実施例7の1つまたはそれらの任意の組合せの主題は、任意で、パイロテクニック・イニシエータに電気的に接続した少なくとも1つのダイオードを含むサブ回路を含むことができる。
【0049】
実施例9は、電気的に直列に相互接続した複数のパイロテクニック・イニシエータと、複数のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する第1回路ルートと、複数のパイロテクニック・イニシエータを電気的に相互接続する第2回路ルートとを少なくとも形成するために、パイロテクニック・イニシエータ間で電気的に相互接続した複数のサブ回路と、第1回路ルートと第2回路ルートに電気的に接続した制御部を含んだ主題(装置または防火アクチュエータ回路など)またはこのような主題を含む実施例1から実施例8の1つまたは任意の組合せを含むことができる。パイロテクニック・イニシエータは、消火アセンブリの点火部に含むことができる。制御部は、第1回路ルートの第1パラメータを監視し、第2回路ルートの第2パラメータを監視し、少なくとも第1パラメータか第2パラメータの1つが所定のパラメータ範囲から外れると、これを検知し、その検知に基づいて警告表示を生成し、リリース要求を受けて、第1回路ルートか第2回路ルートの少なくとも1つを用いてパイロテクニック・イニシエータにリリース電流を流す。
【0050】
実施例10において、実施例9の主題は、任意で、第1回路ルートに第1監視定電流を流し、第2回路ルートに第2監視定電流を流し、第1パラメータとして第1回路ルートの端子で第1電圧を監視し、第2パラメータとして第2回路ルートの端子で第2電圧を監視するように構成した制御部を含むことができる。
【0051】
実施例11において、実施例9及び実施例10の1つまたはそれらの任意の組合せの主題は、任意で、第1回路ルートに第1定電圧を加え、第2回路ルートに第2定電圧を加え、第1パラメータとして第1回路ルートに流れる第1電流を監視し、第2パラメータとして第2回路ルートに流れる第2電流を監視するように構成した制御部を含むことができる。
【0052】
実施例12において、実施例9から実施例11の1つまたはそれらの任意の組合せの主
題は、任意で、第1回路ルートに第1定電圧を加え、第2回路ルートに第2定電圧を加え、第1パラメータとして第1回路ルートに流れる第1電流を監視し、第2パラメータとして第2回路ルートに流れる第2電流を監視するように構成した制御部を含むことができる。
【0053】
実施例13において、実施例9から実施例12の1つまたはそれらの任意の組合せの主
題は、任意で、火災検知部を含むことができ、制御部は、火災検知部からのリリース要求を受信するよう構成される。
【0054】
実施例14において、実施例9から実施例13の1つまたはそれらの任意の組合せの主題は、任意で、ユーザ・アクティベーション・インターフェースを含むことができ、制御部は、ユーザ・アクティベーション・インターフェースからのリリース要求を受信するよう構成される。
【0055】
実施例15において、実施例9から実施例14の1つまたはそれらの任意の組合せの主題は、任意で、第1回路ルートの第1パラメータの監視と第2回路ルートの第2パラメータの監視を交互に開始するよう構成した制御部を含むことができる。
【0056】
実施例16は、主題(方法、行為を行うための手段、または、機械によって行われるときに、機械に対して行為を行わせる指示を含む機械可読媒体)を含むことができ、または任意で、実施例1から実施例15の1つまたは任意の組合せの主題と組み合わせることができ、その中で主題は、第1回路ルートと第2回路ルートをスーパーバイザまたはスーパーバイズモードで監視することを含み、第1回路ルートと第2回路ルートは、複数のパイロテクニック・イニシエータ間に電気的に相互接続した複数のサブ回路を含み、監視することは、第1回路ルートの第1パラメータを監視し、第2回路ルートの第2パラメータを監視することを含み、少なくとも第1パラメータか第2パラメータの1つが所定のパラメータ範囲から外れたことを検知し、その検知を受けて警告指示を生成することを含む。
【0057】
実施例17において、実施例16の主題は、任意で、リリース要求を受信することと、リリース表示を受けて第1回路ルートと第2回路ルートの少なくとも1つに対してリリースモードでリリース電流を流すことを含むことができ、リリース電流は、複数のパイロテクニック・イニシエータに点火するよう構成される。
【0058】
実施例18において、実施例16及び実施例17の1つまたはそれらの任意の組合せの主題は、任意で、第1回路ルートに第1監視定電流を流すことと、第2回路ルートに第2監視定電流を流すことを含むことができ、第1回路ルートの第1パラメータと第2回路ルートの第2パラメータを監視することは、第1パラメータとして第1回路ルートの端子で第1電圧を監視し、第2パラメータとして第2回路ルートの端子で第2電圧を監視することを含む。
【0059】
実施例19において、実施例16から実施例18の1つまたはそれらの任意の組合せの主題は、任意で、第1回路ルート、第2回路ルートに、リリース電流とは逆の方向に回線チェックモードで反復的に回線チェック電流を流すことを含むことができ、回線チェック電流の電流強度は、複数のパイロテクニック・イニシエータに点火するのに不十分であり、かつ、第1回路ルートと第2回路ルートの少なくとも1つに、リリースモードでリリース電流を流すことができ、リリース電流の電流強度は、複数のパイロテクニック・イニシエータに点火するのに十分である。
【0060】
実施例20において、実施例16から実施例19の1つまたはそれらの任意の組合せの主題は、任意で、第1回路ルートに第1監視定電圧を加えることと、第2回路ルートに第2監視定電圧を加えることを含むことができ、第1回路ルートの第1パラメータと第2回路ルートの第2パラメータを含むことは、第1パラメータとして第1回路ルートに流れる第1電流を監視し、第2パラメータとして第2回路ルートに流れる第2電流を監視することを含む。
【0061】
実施例21は、実施例1から実施例20の任意の1つ若しくは複数の任意の部分の部分または組合せを含み、或いは任意で組合せ、実施例1から実施例20の1つまたは複数の機能を発揮させるための手段、または機械によって行われるときに機械に対して実施例1から実施例20の任意の1つまたは複数の機能を行わせる指示を含む機械可読媒体を含む主題を含むことができる。
【0062】
これらの非限定的な実施例は、任意の置換や組合せにおいて組み合わせることができる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13