【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の、電解装置で使用される双極電極によって到達される。
【0008】
本発明の双極電極の使用が意図される電解装置は、使用時に、流れの方向を有する。双極電極の意図される用途を考慮して、電極は、以下に詳述されるように、特に供給開口部および流出開口部の存在によって特徴付けられる、供給側および出口側を有する。流れの方向と言う場合、この意味は、電極を電解装置で使用する際に生成されたガスが流れる全体的な方向を示す。したがって、流れの方向は、供給側から出口側に向かう方向になる。
【0009】
本発明による電極の意味合いにおいては、「対応するパターン」とは、1つの電極の第1の側とその上に配される同一の電極の第2の側のそれぞれの突起を当接せしめるパターン、すなわち具体的には、互いの鏡像であるパターンである。
【0010】
生成された水素ガスが強制対流を必要とせずに十分な流動性を保持しつつ、高い収量が達成できることが、本発明による双極電極の利点である。したがって、移送部品(例えば強制対流を発生させるポンプ)の必要がなくなり、効率的で、メンテナンスしやすい電解装置を実現することができる。
【0011】
製造によって引き起こされた材料の応力が、均一に分散されることにより脆弱箇所の発生を回避することが、上面が相似変換された多角形形状の突起を使用する利点である。突起は、反応の際に流体の適切な流れの障害となるおそれのある如何なる「デッドコーナー」も生じさせないことが、凸状の多角形形状を使用する利点である。
【0012】
本発明によれば、多角形形状は、意図される流れの方向に略垂直な(理想的には垂直な)方向に方向付けられた少なくとも1つの側面を有し、この少なくとも1つの側面の全長が、多角形形状の周囲長の35%を超過しない。
【0013】
方向は、厳密に垂直な方向と、わずかな角度差の範囲内である場合には、「略垂直」であるとみなされる。わずかな角度差は、好ましくは、厳密に垂直な方向のどちらか一方の側で10°以下であり、より好ましくは、どちらか一方の側で5°以下であり、最も好ましくは、どちらか一方の側で1°以下である。
【0014】
これに加えて、またはこの代わりに、多角形形状は、多角形形状の図心を内角が最も小さい多角形形状の角と結ぶベクトルが、流れの方向に略平行な(理想的には平行な)方向を有するように方向付けられてもよい。
【0015】
方向は、厳密に平行な方向と、わずかな角度差の範囲内である場合には、「略平行」であるとみなされる。わずかな角度差は、好ましくは、厳密に平行な方向のどちらか一方の側で10°以下であり、より好ましくは、どちらか一方の側で5°以下であり、最も好ましくは、どちらか一方の側で1°以下である。
【0016】
これらの特定の形状および方向付けを組み合わせることにより、流れの方向を実質的に横断する突起に、リッジ部分が発生するのを最小限に抑える。このような組み合わせを行わなければ、リッジ部分が、ガス気泡を捕集して、ガス気泡の自然な流れが妨げられやすくなる。
【0017】
本発明による双極電極の1つの実施形態では、突起の平面状の上面の面積の、それぞれの幾何学的底面の面積に対する比率は、1/4を上回る。
【0018】
この比率は、実験で好結果をもたらした。この比率をさらに低い数にすると、電気分解に関与する合計活性表面が小さくなりすぎるので、電極の効率の低下が予想される。
【0019】
本発明による双極電極の1つの実施形態では、突起のパターンは小さくされた構成で、突起の上側で繰り返される。例えば、突起がダイヤモンド形状である場合には、それらの上面に、複数の、もっと小さなダイヤモンド形状の突起のパターンをさらに設けてもよい。
【0020】
この実施形態は、反応器の様々な電極間の水の分配を改善し、電気分解反応を継続させるのに十分な量の反応物が確実に存在するようになる。
【0021】
本発明による双極電極の1つの実施形態では、突起のパターンは、2組の直線状の溝が形成されるようになっており、それぞれの組ごとにある溝は、共通の方向に軸を有し、この共通の方向は、その主要な構成要素を、意図される流れの方向に有する。言いかえれば、溝の軸の方向を表わすベクトルが、意図される流れの方向に平行な構成要素と、意図される流れに垂直な構成要素とに分解される場合、前者の構成要素は、後者の構成要素よりも大きい。
【0022】
発生したガスの気泡が、反応が起こり続けなければならない領域(すなわち突起の上面)に「デッドゾーン」を形成することなく、反応器からの好都合な出口を有することが、この実施形態の利点である。
【0023】
特定の実施形態では、突起のパターンは、それぞれの組ごとにある溝の平均幅が共通の方向に沿って増加するようになっている。言いかえれば、突起によって画定された溝は、供給側に最も近い端部から出口側に最も近い端部にかけて幅広になっている。
【0024】
特に小さな気泡が徐々に合体した結果として、サイズが大きくなった気泡が、適切な出口経路を有することが、この実施形態の利点である。
【0025】
本発明による双極電極の1つ実施形態では、平面状本体は金属でできている。
【0026】
本発明による双極電極の目的のために、金属は、成形性と形状安定性との間の良好なトレードオフバランスを提供する。好ましい金属には、鋼やチタンなどがある。
【0027】
本発明の1つの態様によれば、複数の上述されたような双極電極と、双極電極間に位置する、関連するイオン交換膜とを備えるとともに、電極が直列に電気的に接続されて積層して配置された、電解装置が提供される。
【0028】
双極電極の流れの特性が効率的であるので、強制対流手段を必要としない膜・電極接合体を組み立てることができる。したがって、非常に高密度なスタックで電極を組み合わせて、コンパクトで信頼性の高い電解装置を製造することができる。
【0029】
本発明の1つの態様によれば、前述の電解装置と、燃料電池と、電流インターフェースと、水素貯蔵タンクとを備えるエネルギー蓄積供給装置であって、前記電解装置が、電流を受け取るために前記電流インターフェースに連結され、および生成された水素を貯蔵するために前記水素貯蔵タンクに連結され、かつ、前記燃料電池が、前記燃料電池に電流を供給するために前記電流インターフェースに連結され、および貯蔵された水素を受け取るために前記水素貯蔵タンクに連結される、エネルギー蓄積供給装置が提供される。
【0030】
本発明による双極電極の利点を電解装置および/または燃料電池に適用して、効率的で、コンパクトで、信頼性の高いエネルギー蓄積供給装置を製造してもよい。この装置は、エネルギー蓄積用途において蓄電池の代わりに使用することができる。
【0031】
本発明の1つの態様によれば、水素を生成するための、前述の電解装置の使用が提供される。
【0032】
本発明の1つの態様によれば、上述の双極電極の製造方法が提供される。この方法は、第1の金属シートおよび第2の金属シートに、対応するパターンの突起をエンボス加工するステップと、平面状本体を形成するように、第1の金属シートおよび第2の金属シートを、突起が外側に面するように、ともに接合するステップとを含む。
【0033】
実質的に均一な厚さの金属シートだけを使用して、両側に適切な突起パターンを備えた平面状本体を形成できることが、この方法の利点である。
【0034】
本発明による方法の1つの実施形態では、共通マザーシートから第1の金属シートおよび第2の金属シートをカットする前に、第1の金属シートおよび第2の金属シートは、エンボス加工される。
【0035】
ただ1つのステップで、平面状本体の両側にエンボス加工できることが、この実施形態の利点である。
【0036】
1つの実施形態では、本発明による方法は、第1の金属シートおよび第2の金属シートに表面被覆を施すステップをさらに含む。
【0037】
本発明による方法の1つの実施形態では、エンボス加工が、ハイドロフォーミングによって実施される。
【0038】
突起が、それが複数の高さレベルからなる突起であっても、非常に高い精度で、材料の表面を破損せずに形成可能であることが、この実施形態の利点である。ハイドロフォーミングが一段階だけのプロセスであることが、さらなる利点である。
【0039】
Edward O.Benjaminに対する米国特許第1,328,981号明細書は、平頂の突起が形成または提供された表面を有する導電性材料のプレートを備える電解セルで使用する電極を開示しており、この平頂の突起は、上向きの溝が各突起間に形成されるように、垂直方向に位置合わせされている。この電極は、単極構成での使用を意図しており、その突起は、本発明による電極の突起のような特性を有していない。
【0040】
Heraeus Elektroden名義の国際公開第91/00379 A1号パンフレットは、ガスを発生させる電気分解プロセス用の、平行電極要素を有する少なくとも1つの電極を備える電解セルを開示している。電極要素は、放出された気泡の平均直径の3倍までの厚さを有し、電極要素間の毛細間隙は、ガス気泡が電極を通って実質的にアノードの反応面とカソードの反応面との間にある電界の方向に、または反対方向に移動するようになっている。この電極は、単極構成での使用を意図しており、その突起は、本発明による電極の突起のような特性を有していない。
【0041】
Reinz Dichtung GmbH名義の国際公開第2009/043600 A1号パンフレットは、電気化学システムとともに、電気化学システムで使用するための双極プレートを開示している。電気化学システムは、各場合において、双極プレートによって互いから分離される、数個のセルからなる積層体で構成され、双極プレートは、冷却用の開口またはセルから機能性媒質を除去するとともにセルに機能性媒質を供給する開口を備え、積層体は、機械的圧縮応力によって固定され、かつ、少なくとも1つのセルは、双極プレートの境界壁によって周囲が取り囲まれている電気化学活性領域を備え、かつ、双極プレートの溝構造は、媒質を均一に分布させるために電気化学活性領域の範囲内に設けられ、かつ、媒質を微細に分布させるために、少なくとも1つのガス拡散層が設けられている。溝構造と境界壁との間の境界領域に、溝構造と境界壁との間に流体がバイパスすることを回避するために、制限要素が設けられ、かつ、ガス拡散層は、溝構造および/または少なくとも制限要素の一部を被覆する。記載されている双極プレートは、燃料電池で使用するのに好適であるが、電解セルでは好適ではない。その突起は、本発明による電極の突起のような特性を有していない。
【0042】
本発明の実施形態による装置および/または方法のいくつかの実施形態を、例示の目的のためにのみ、添付の図面を参照して以下に説明する。