特許第6272655号(P6272655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6272655
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】培養システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/04 20060101AFI20180122BHJP
   A01G 9/00 20180101ALI20180122BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20180122BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   A01G31/04 A
   A01G31/04 B
   A01G9/00 C
   A01G31/00 604
   B65G1/04 513
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-74697(P2013-74697)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-198003(P2014-198003A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】505098579
【氏名又は名称】ジャパンドームハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】北川 勝幸
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−196061(JP,U)
【文献】 特開昭63−063322(JP,A)
【文献】 特開2013−000087(JP,A)
【文献】 特開2012−182998(JP,A)
【文献】 特開2011−254737(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3131894(JP,U)
【文献】 特開2011−142902(JP,A)
【文献】 特開2008−154505(JP,A)
【文献】 特開2001−095404(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第01456759(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00,31/00−31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液を収容する凹部を有する複数の培養槽が垂直方向に並設された培養棚と、
前記培養棚に対して一方の端部近傍に配置され、前記凹部に収容された場合に前記培養液に接し培養される生物が保持された培養器を、前記複数の培養槽の少なくとも1つに搬入する搬入装置と、を備え、
前記搬入装置は、
前記培養槽の高さまで前記培養器を持ち上げる垂直移動機構と、
収容されるべき培養槽に収容された複数の培養器において、少なくとも1つの培養器を前記一方の端部側から略水平方向に押すことによって、前記複数の培養器を前記一方の端部とは反対側の他方の端部に向けて当接させてスライドさせる水平移動機構と、
前記他方の端部近傍に配置され、前記他方の端部近傍において前記培養槽に設けられた搬出位置決め部までスライドされた前記培養器を、前記培養槽から搬出する搬出装置とを備え、
前記複数の培養器は、発泡スチロールにて形成され、培養される生物が保持された状態にて前記培養液上に浮かんでおり、
前記搬入装置は、垂直方向に並設された2つ以上の培養槽のそれぞれに1つ以上の培養器を一度に搬入し、
前記搬出装置は、垂直方向に並設された前記2つ以上の培養槽のそれぞれから1つ以上の培養器を一度に搬出し、
前記2つ以上の培養槽の数は、垂直方向に並べられた前記複数の培養槽の数の約数であって、
前記搬入装置による搬入と、前記搬出装置による搬出とが交互に行われることを特徴とする培養システム。
【請求項2】
前記培養棚に垂直方向に並設された培養槽の数は、12個であることを特徴とする請求項1に記載の培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養システム、具体的には生物を培養するための培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
限りある農地を用いて、農作物(植物やキノコなど。農産物ともいう)の単位面積あたりの収穫量を向上させる技術が切望されてきた。このような技術の1つとして、多段式の栽培棚が知られている。たとえば特許文献1の技術では、空気環境の不均一性を解消可能な多段式の栽培棚が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−217392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、多段式の栽培棚では、段数が増えて棚が高くなるほど、搬出入に労力を要するという問題があった。たとえば特許文献1の技術では、栽培棚への植物の搬出入を人力で行なっていた。また、栽培棚の接地面積と同等以上の作業用のスペースを、栽培棚の周囲に確保する必要があった。そのため、単位面積あたりの収穫量に改善の余地があった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、多段式の培養システムへの生物の搬出入を容易に行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の培養システムは、培養液を収容する凹部を有する複数の培養槽が垂直方向に並設された培養棚と、培養棚に対して一方の端部近傍に配置され、凹部に収容された場合に培養液に接し培養される生物が保持された培養器を、複数の培養槽の少なくとも1つに搬入する搬入装置と、を備える。搬入装置は、培養槽の高さまで培養器を持ち上げる垂直移動機構と、収容されるべき培養槽に収容された複数の培養器において、少なくとも1つの培養器を一方の端部側から略水平方向に押すことによって、複数の培養器を一方の端部とは反対側の他方の端部に向けて当接させてスライドさせる水平移動機構と、を備える。
【0007】
この態様によると、多段式の培養棚への培養器の搬入を容易に行うことができる。
【0008】
また、培養システムは、他方の端部近傍に配置され、他方の端部近傍において培養槽に設けられた位置決め部までスライドされた培養器を、培養槽から搬出する搬出装置をさらに備えてもよい。この場合、搬入装置による搬入と、搬出装置による搬出とが交互に行われてもよい。この態様によると、培養器の搬出入を容易に行うことができる。また、この場合には、培養棚の側面に確保する空間は少なくてよい。そのため、より多くの培養システムを並列して配置することが可能となり、単位面積あたりの生物の生産量を大幅に増大させることができる。
【0009】
また、搬入装置は、2つ以上の培養槽のそれぞれに1つ以上の培養器を一度に搬入し、搬出装置は、2つ以上の培養槽のそれぞれから1つ以上の培養器を一度に搬出してもよい。この態様によると、多段式の培養棚への培養器の搬出入をより効率化することができる。
【0010】
また、2つ以上の培養槽の数は、垂直方向に並べられた複数の培養槽の数の約数であってもよい。この態様によると、無駄なく培養器の搬出入をすることができる。
【0011】
また、培養される生物が保持された培養器を搬入装置に供給するための搬入用ベルトコンベアをさらに備えてもよい。この態様によると、より効率的に培養器を搬入することができる。
【0012】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、多段式の培養システムにおいて、培養器を容易に搬入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る培養システムの概略図である。図1(A)は、実施の形態に係る培養システムの側面図である。図1(B)は、実施の形態に係る培養システムの平面図である。
図2】実施の形態に係る培養システムを図1の矢印X方向から見た正面図である。
図3図3(A)〜(I)は、実施の形態に係る培養システムに培養器を交互に搬入および搬出する手順を示す側面方向の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において重複する説明は適宜省略する。
【0016】
(実施の形態)
まず、本実施の形態の培養システム10を、図1および図2を参照して説明する。図1は、実施の形態に係る培養システム10の概略図である。図1(A)は、実施の形態に係る培養システム10の側面図である。図1(B)は、実施の形態に係る培養システム10の平面図である。図2は、実施の形態に係る培養システム10を図1の矢印X方向から見た正面図である。なお、図1では、図2に示す搬入用ベルトコンベア400の図示は省略している。また、図1(B)では、図1(A)に示した天板340および天板340の背面に設けられたライト330の図示は省略している。また、図2では、搬入装置100および搬入用ベルトコンベア400のみを示す。
【0017】
培養システム10は、搬入装置100、搬出装置200、培養棚300、搬入用ベルトコンベア400を主に備える。
【0018】
培養棚300は、溝状の凹部312を有し互いに略同一形状である複数の培養槽310が、所定の間隔にて垂直方向に並設されて形成されている。凹部312には、位置決め部314が形成されている。また、凹部312には、水耕栽培用の培養液316が収容される。培養液316は、後述する生物が生育可能な養分が、水に溶解された水溶液である。固定部材320は、複数の培養槽310を垂直方向に並べて固定する。図1では、12個の培養槽310が固定部材320により固定されている場合を示す。固定部材320は、固定部322において、床に固定されている。最下段の培養槽310以外の背面には、ライト330が取り付けられている。ライト330は、培養槽310が垂直方向に並べられた状態にて、1つ下の培養槽310に収容された生物に光を照射する。最上段の培養槽310に対しては、天板340の背面に設けられたライト330によって、光が照射される。
【0019】
培養器20は、培養される生物22が保持され、凹部312に収容された場合に培養液316に接する。培養器20には、培養される生物22を固定するための図示しない貫通穴が開けられている。培養される生物22がこの貫通穴を貫通するように配置されることによって、培養される生物22の根が培養器20の下側から培養液316に接触する。これにより、培養される生物22に培養液316を供給することができる。培養器20は、培養された生物24が保持された状態でも培養液316上で浮かぶようにするために、比重が1未満の材料で形成されていることが好ましい。このような材料として、発泡スチロールを好適に使用することができる。培養された生物24の重さを考慮して、培養器20の材料や体積を決定すればよい。
【0020】
生物22は、培養器20上で移動せずに生育する、水耕栽培に適した農産物であることが好ましい。本実施の形態のようにライト330を設けた場合には、農産物としては、光合成をする野菜、花、果物、穀物などが想定される。一方、ライト330を設けない場合には、農産物としては、モヤシや光合成をしないキノコなどが想定される。
【0021】
搬入装置100は、培養棚300に対して一方の端部近傍に配置され、凹部312に収容された場合に培養液316に接し培養される生物22が保持された培養器20を、複数の培養槽310の少なくとも1つに搬入する。搬入装置100は、移動部110と、垂直用モータ120と、垂直用ローラチェーン130と、水平用モータ140と、水平用ローラチェーン150と、制御部160とを備える。
【0022】
移動部110は、固定部112に取り付けられた複数の保持部114を有する。保持部114は、図2に示すように、2本のアームから形成されている。保持部114は、搬出入時に培養器20を保持する。また、保持部114には、図3で説明するように、押部116が設けられている。押部116は、培養器20を水平方向に押してスライドさせる。
【0023】
垂直用モータ120は、回転して垂直用ローラチェーン130を動かす。これにより、垂直用モータ120の回転運動が移動部110の垂直方向の移動(昇降)に変換される。水平用モータ140は、回転して水平用ローラチェーン150を動かす。これにより、水平用モータ140の回転運動が移動部110の水平方向(左右方向)の移動に変換される。
【0024】
制御部160は、垂直用モータ120と水平用モータ140の回転を制御することにより、移動部110の垂直方向および水平方向の移動を制御する。また、制御部160は、後述する搬出装置200に設けられた制御部260と無線または有線で通信することによって、搬入装置100による培養器20の搬入と搬出装置200による培養器20の搬出とを連携させる。また、制御部160は、後述する搬入用ベルトコンベア400から搬入装置100に培養器20を搬入するタイミングを制御する。
【0025】
搬出装置200は、他方の端部近傍に配置され、他方の端部近傍において培養槽310に設けられた位置決め部314までスライドされた培養器20を、培養槽310から搬出する。搬出装置200は、移動部210と、垂直用モータ220と、垂直用ローラチェーン230と、水平用モータ240と、水平用ローラチェーン250と、制御部260とを備える。
【0026】
移動部210は、固定部212に取り付けられた複数の保持部214を有する。搬出時には、培養後の生物24が裁置された培養器20が保持部214によって保持される。
【0027】
垂直用モータ220は、回転して垂直用ローラチェーン230を動かす。これにより、垂直用モータ220の回転運動が移動部210の垂直方向の移動(昇降)に変換される。水平用モータ240は、回転して水平用ローラチェーン250を動かす。これにより、水平用モータ240の回転運動が移動部210の水平方向(左右方向)の移動に変換される。
【0028】
制御部260は、垂直用モータ220と水平用モータ240の回転を制御することにより、移動部210の垂直方向および水平方向の移動を制御する。また、制御部260は、上述した搬入装置100に設けられた制御部160と無線または有線で通信することによって、搬出装置200による培養器20の搬出を搬入装置100による培養器20の搬入と連携させる。
【0029】
なお、ここでは搬入装置100と搬出装置200とを別々の装置として説明したが、同一の装置を用いて両者を構成してもよい。
【0030】
図2に示すように、搬入用ベルトコンベア400は、培養される生物22が保持された培養器20を搬入装置100に供給する。搬入用ベルトコンベア400は、筺体410と、複数の回転床420とを有する。複数の回転床420の高さは、移動部110が下まで降りた状態において、複数の保持部114のいずれかの高さとそれぞれ略同等となるように形成されている。この状態において、回転床420が制御部160によって回転させられることによって、新たな培養器20が保持部114に供給される。
【0031】
次に、本実施の形態の培養システム10を用いて、培養器20を培養槽310に搬出入する方法を説明する。図3は、実施の形態に係る培養システム10に培養器20を交互に搬入および搬出する手順を示す側面方向の概略図である。ここでは、垂直移動機構は主に移動部210、垂直用モータ220、垂直用ローラチェーン230によって、水平移動機構は主に保持部214、水平用モータ240、水平用ローラチェーン250によって、それぞれ構成されているものとする。ただし、簡略化するために、垂直移動機構を移動部210、水平移動機構を保持部214とする場合もある。また、搬出装置200が搬出する培養器20を培養器20a、搬出装置200が搬出する培養器20aに隣接する培養器20を培養器20b、搬入装置100が搬入する培養器20を培養器20c、搬入装置100が培養器20cの次に搬入する培養器20を培養器20dとして説明する。
【0032】
まず、制御部260は、搬出装置200の水平移動機構である保持部214を、培養液316中に移動させる(図3(A))。位置決め部314よりも搬出装置200寄りの位置にて、保持部214が培養液316の中に降ろされる。図3(B)は、保持部214が培養液中に移動した後の状態を示す図である。次に、保持部214が培養器20aに向けて水平移動する(図3(C))。保持部214が培養器20aを持ち上げ可能な位置まで移動した後、保持部214は培養器20aを垂直方向に持ち上げることによって、培養器20aを培養液316から取り出す(図3(D))。また、これに連動して、搬入装置100の水平移動機構である保持部214が培養器20cを搬入する。次に、搬出装置200は取り出した培養器20aを搬出する(図3(E))。培養槽310から搬出された培養器20aは、移動部210が最も下まで降下した場合に、培養システム10から搬出される。また、搬入装置100の保持部214が培養器20cを培養液316中に移動させる。
【0033】
次に、押部116が培養器20cを水平方向に押してスライドさせる(図3(F)の矢印)。押部116は、最も搬入装置100寄りの培養器20cを押すことによって、ある凹部312に収容された複数の培養器20全体を略水平方向に押す。これによって、1つの培養槽310に収容された培養器20が、まとめて反対側の端部に向けて当接させてスライドさせられる。その結果、最も搬出装置200寄りの培養器20bが、位置決め部314に到達するまで、培養器20がまとめて移動される(図3(G))。培養器20を発泡スチロールなどの比重の軽い材料で形成することによって、複数の培養器20を互いに当接させてまとめて容易に移動させることができる。培養器20bが搬入装置100の保持部114により位置決め部314まで移動させられた後、保持部114が水面下に下ろされることによって、培養器20cが培養液316上に浮かんだ状態となる(図3(H))。次に、搬入装置100の保持部114を搬入装置100に向けて水平に移動させて、培養器20cから離す(図3(I))。その後、制御部160は、移動部110を最も下まで下降させた上で、搬入用ベルトコンベア400を動かして保持部114に培養前の生物22が保持された培養器20dを載せる。培養器20dは、次に培養槽310に供給される。
【0034】
以上の図3(A)〜(I)を繰り返すことによって、培養槽310の培養器20を入れ替えることができる。所定の培養期間が経過した後、培養前の生物22が保持された培養器20と培養後の生物24が保持された培養器20とを入れ替える場合には、培養槽310に収容された培養器20の数だけ図3(A)〜(I)の操作を繰り返すことによって、培養器20を入れ替えればよい。
【0035】
ここでは、培養器20を1つの培養槽310に搬出入する例を示したが、搬入装置100および搬出装置200にそれぞれ取り付けられた複数の保持部114および保持部214を用いて、一度に複数の培養槽310に培養器20を搬出入することが好ましい。この場合、図1,2に示す培養システム10では、まず隣接する3段の培養槽310の入れ替えがすべて終わった後で、次の3段の入れ替えを行う。これにより、搬出入に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0036】
また、この場合には、一度に搬出入される培養器20の数、一度に使用される保持部114の数および保持部214の数は、いずれも培養棚300において垂直方向に並べられた複数の培養槽310の数の約数であることが好ましい。たとえば図1では、培養棚300は12段の培養槽310を有する。そのため、一度に2,3,4,6,12段の培養槽310に対して、培養器20を搬出入することが好ましい。これにより、無駄なく搬出入を行うことができる。また、保持部114および保持部214の長さをより長くすることによって、1つの培養槽310に対して一度に複数の培養器20を搬出入してもよい。
【0037】
また、培養槽310に培養器20が満杯でない場合には、搬出装置200を用いずに搬入装置100のみを用いて培養槽310に培養器20を搬入すればよい。また、図3では培養器20の搬出が先に、搬入が後に行われる行われる場合を示した。しかし、培養器20の搬入が先に、搬出が後に行われるように培養システム10が構成されてもよい。
【0038】
以上、本実施の形態の培養システム10によれば、多段式の培養棚300への培養器20の搬出入を容易に行うことができる。また、この場合には、培養棚300の側面に確保する空間は少なくてよい。そのため、単位面積あたりより多くの培養システム10を並列して配置することが可能となるため、単位面積あたりの生物の生産量を大幅に増大させることができる。
【0039】
なお、培養システム10において、搬入装置100と搬出装置200は両方設けられていることが好ましいが、いずれか一方のみが設けられていてもよい。この場合には、設けられていない装置の役割を人が担ってもよい。これにより、多段式の培養棚300への培養器20の搬入または搬出を容易に行うことができる。
【0040】
なお、培養システム10の設置場所は特に限定されないが、断熱効果の高い培養室(たとえば発泡スチロール製)の内部に培養システム10を設置することが好ましい。この場合、培養室内では室温の季節変動がほとんどないため、目的とする生物を年中培養することができる。たとえば、本実施の形態の培養システム10を用いて、1ヶ月で生育する植物を栽培した場合には、1ヶ月で単位面積あたり12倍の植物を栽培することができる。本実施の形態の培養システム10では、上述のように培養器20の搬出入が容易である。そのため、1年では単位面積あたりおよそ12×12=144倍の植物を栽培することができる。
【0041】
また、本実施の形態では、位置決め部314は培養槽310の搬出装置200側に形成されているが、搬入装置100側にも形成されていてもよい。これにより、培養器20の搬入装置100側への移動を防止することができる。また、この場合には、培養槽310の搬入装置100側の端部から搬入装置100側の位置決め部までの距離が、培養槽310の搬出装置200側の端部から位置決め部314までの距離と等しくなるように、搬入装置100側の位置決め部を形成することが好ましい。これにより、培養槽310を向きによらず使用することができる。
【0042】
また、搬入用ベルトコンベア400と同様の構造を有する搬出用ベルトコンベアが、搬出装置200に対して備え付けられてもよい。この搬出用ベルトコンベアでは、搬出装置200に隣接して設置された場合に、培養器20を搬出する方向に回転床が回転する。これにより、搬出用ベルトコンベアは、培養後の生物24が保持された培養器20を、搬出装置200から搬出することができる。また、搬入装置100および搬出装置200の昇降時間を短縮するために、搬入用ベルトコンベア400と搬出用ベルトコンベアをより上段の培養槽310にも設けたり、これらの回転床の数を増やしたりしてもよい。
【0043】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや工程の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0044】
10 培養システム、20 培養器、22 培養される生物、100 搬入装置、110 移動部、112 固定部、114 保持部、116 押部、160 制御部、300 培養棚、310 培養槽、312 凹部、316 培養液、320 固定部材
図1
図2
図3