(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着剤層は、シリコーン系粘着剤を含有するシリコーン粘着剤層を、前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムとの界面に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム。
前記粘着剤層は、シリコーン系粘着剤を含有するシリコーン粘着剤層の単層からなる層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム)
本発明の一実施形態に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムについて、図面を参照しつつ、以下に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの一例を示す断面模式図である。
図1で示されるように、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、基材21上に粘着剤層22が設けられたダイシングテープ2と、フリップチップ型半導体裏面用フィルム40(以下、「半導体裏面用フィルム40」ともいう)とを備える構成である。また、本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムは、
図1で示されているように、ダイシングテープ2の粘着剤層22上において、半導体ウエハの貼着部分に対応する部分23のみにフリップチップ型半導体裏面用フィルム40が形成された構成であってもよいが、粘着剤層の全面に半導体裏面用フィルムが形成された構成でもよく、また、半導体ウエハの貼着部分に対応する部分より大きく且つ粘着剤層の全面よりも小さい部分に半導体裏面用フィルムが形成された構成でもよい。なお、半導体裏面用フィルムの表面(ウエハの裏面に貼着される側の表面)は、ウエハ裏面に貼着されるまでの間、セパレータ等により保護されていてもよい。
【0016】
粘着剤層22と半導体裏面用フィルム40とを界面で剥離した後に測定される粘着剤層22の表面自由エネルギーγ1と、半導体裏面用フィルム40の表面自由エネルギーγ2との差(γ2−γ1)は、10mJ/m
2以上であり、15mJ/m
2以上であることが好ましく、20mJ/m
2以上であることがより好ましい。
一般的に、フィルム表面の表面自由エネルギーは、構成材料として極性の高い成分が含まれるほど大きくなり、極性の低い成分が含まれるほど小さくなる。
前記差(γ2−γ1)が10mJ/m
2以上であるため、半導体裏面用フィルム40を構成する材料と、粘着剤層22を構成する材料とは、極性に差があるものが使用されている。そのため、一方の層の構成材料が他方の層へと移行しにくくなっている。従って、加熱されたとしても、ダイシングテープ2(粘着剤層22)と半導体裏面用フィルム40との間の剥離力の上昇を抑制することができる。
前記差(γ2−γ1)は、粘着剤層22を構成する材料や、半導体裏面用フィルム40を構成する材料を適宜選択することによりコントロールすることができる。
【0017】
なお、上記表面自由エネルギーは、製造された状態におけるダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の状態での各表面自由エネルギーをいう。例えば、粘着剤層22が放射線硬化型粘着剤(又はエネルギー線硬化型粘着剤)を含有している場合、放射線照射前(又はエネルギー線照射前)の表面自由エネルギーをいう。また、半導体裏面用フィルム40の表面自由エネルギーγ2は、熱硬化前の表面自由エネルギーをいう。
【0018】
前記表面自由エネルギーγ1は、γ2>γ1の関係を満たす限りにおいて、15mJ/m
2以下であることが好ましく、15〜5mJ/m
2の範囲内であるより好ましく、13〜7mJ/m
2の範囲内であることがさらに好ましい。前記表面自由エネルギーγ1が13mJ/m
2以下であると、前記差(γ2−γ1)をより大きくすることができる。
【0019】
また、前記表面自由エネルギーγ2は、γ2>γ1の関係を満たす限りにおいて、30mJ/m
2以上であることが好ましく、50〜30mJ/m
2の範囲内であるより好ましく、40〜32mJ/m
2の範囲内であることがさらに好ましい。前記表面自由エネルギーγ2が32mJ/m
2以上であると、前記差(γ2−γ1)をより大きくすることができる。
【0020】
ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1において、130℃で1時間加熱後の、測定温度23℃、引張速度300mm/分、T型剥離試験の条件下における、粘着剤層22から半導体裏面用フィルム40を剥離する際の剥離力は、0.02N/20mm以上0.4N/20mm以下であることが好ましく、0.03N/20mm以上0.3N/20mm以下であることがより好ましく、0.04N/20mm以上0.2N/20mm以下であることがさらに好ましい。前記剥離力が0.04N/20mm以上であると、ダイシング時にチップ飛びが生じる可能性がある。また、前記剥離力が、0.2N/20mm以下であると、ピックアップ時に好適に剥離させることかできる。
【0021】
(フリップチップ型半導体裏面用フィルム)
フリップチップ型半導体裏面用フィルム40(半導体裏面用フィルム40)は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含んで形成されていることが好ましい。
【0022】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0023】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下(好ましくは炭素数4〜18、更に好ましくは炭素数6〜10、特に好ましくは炭素数8又は9)の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。すなわち、本発明では、アクリル樹脂とは、メタクリル樹脂も含む広義の意味である。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0024】
また、前記アクリル樹脂を形成するための他のモノマー(アルキル基の炭素数が30以下のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル以外のモノマー)としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマー、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。尚、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸をいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
なかでも、半導体裏面用フィルム40の耐熱性を高める観点から、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン等を、モノマー成分として含む材料から形成したアクリル樹脂が好ましい。
【0025】
前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂の他、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。熱硬化性樹脂としては、特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等含有が少ないエポキシ樹脂が好適である。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂を好適に用いることができる。
【0026】
エポキシ樹脂としては、特に限定は無く、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオンレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型エポキシ樹脂、トリスグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂若しくはグリシジルアミン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0027】
エポキシ樹脂としては、前記例示のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0028】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。フェノール樹脂は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0029】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5当量〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8当量〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0030】
本発明では、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の熱硬化促進触媒が用いられていても良い。熱硬化促進触媒としては、特に制限されず、公知の熱硬化促進触媒の中から適宜選択して用いることができる。熱硬化促進触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化促進触媒としては、例えば、アミン系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホウ素系硬化促進剤、リン−ホウ素系硬化促進剤などを用いることができる。
【0031】
半導体裏面用フィルム40としては、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含む樹脂組成物や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂を含む樹脂組成物により形成されていることが好適である。これらの樹脂は、イオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体素子の信頼性を確保できる。
【0032】
半導体裏面用フィルム40は、半導体ウエハの裏面(回路非形成面)に対して接着性(密着性)を有していることが重要である。半導体裏面用フィルム40は、例えば、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂を含む樹脂組成物により形成することができる。半導体裏面用フィルム40を予めある程度架橋させておく為、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておいてもよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0033】
前記架橋剤としては、特に制限されず、公知の架橋剤を用いることができる。具体的には、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤が好適である。また、前記架橋剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−トなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。また、前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0035】
なお、架橋剤の使用量は、特に制限されず、架橋させる程度に応じて適宜選択することができる。具体的には、架橋剤の使用量としては、例えば、ポリマー成分(特に、分子鎖末端の官能基を有する重合体)100重量部に対し、通常7重量部以下(例えば、0.05重量部〜7重量部)とするのが好ましい。架橋剤の使用量がポリマー成分100重量部に対して7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。なお、凝集力向上の観点からは、架橋剤の使用量はポリマー成分100重量部に対して0.05重量部以上であることが好ましい。
【0036】
なお、本発明では、架橋剤を用いる代わりに、あるいは、架橋剤を用いるとともに、電子線や紫外線などの照射により架橋処理を施すことも可能である。
【0037】
半導体裏面用フィルム40は、着色剤を含有している。これにより、半導体裏面用フィルム40は、着色され、優れたマーキング性及び外観性を発揮させることができ、付加価値のある外観の半導体装置とすることが可能になる。このように、着色された半導体裏面用フィルムは、優れたマーキング性を有しているので、半導体素子又は該半導体素子が用いられた半導体装置の非回路面側の面に、半導体裏面用フィルムを介して、印刷方法やレーザーマーキング方法などの各種マーキング方法を利用することにより、マーキングを施し、文字情報や図形情報などの各種情報を付与させることができる。特に、着色の色をコントロールすることにより、マーキングにより付与された情報(文字情報、図形情報など)を、優れた視認性で視認することが可能になる。また、半導体裏面用フィルムは着色されているので、ダイシングテープと、半導体裏面用フィルムとを、容易に区別することができ、作業性等を向上させることができる。更に、例えば半導体装置として、製品別に色分けすることも可能である。半導体裏面用フィルムを有色にする場合(無色・透明ではない場合)、着色により呈している色としては特に制限されないが、例えば、黒色、青色、赤色などの濃色であることが好ましく、特に黒色であることが好適である。
【0038】
本実施の形態において、濃色とは、基本的には、L
*a
*b
*表色系で規定されるL
*が、60以下(0〜60)[好ましくは50以下(0〜50)、さらに好ましくは40以下(0〜40)]となる濃い色のことを意味している。
【0039】
また、黒色とは、基本的には、L
*a
*b
*表色系で規定されるL
*が、35以下(0〜35)[好ましくは30以下(0〜30)、さらに好ましくは25以下(0〜25)]となる黒色系色のことを意味している。なお、黒色において、L
*a
*b
*表色系で規定されるa
*やb
*は、それぞれ、L
*の値に応じて適宜選択することができる。a
*やb
*としては、例えば、両方とも、−10〜10であることが好ましく、より好ましくは−5〜5であり、特に−3〜3の範囲(中でも0又はほぼ0)であることが好適である。
【0040】
なお、本実施の形態において、L
*a
*b
*表色系で規定されるL
*、a
*、b
*は、色彩色差計(商品名「CR−200」ミノルタ社製;色彩色差計)を用いて測定することにより求められる。なお、L
*a
*b
*表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L
*a
*b
*)表色系と称される色空間のことを意味している。また、L
*a
*b
*表色系は、日本工業規格では、JISZ 8729に規定されている。
【0041】
半導体裏面用フィルム40には、目的とする色に応じた着色剤を用いることができる。このような着色剤としては、黒系色材、青系色材、赤系色材などの各種濃色系色材を好適に用いることができ、特に黒系色材が好適である。前記着色剤としては、顔料、染料などいずれであってもよい。前記着色剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、染料としては、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料等のいずれの形態の染料であっても用いることが可能である。また、顔料も、その形態は特に制限されず、公知の顔料から適宜選択して用いることができる。
【0042】
特に、前記着色剤として染料を用いると、半導体裏面用フィルム40中には、染料が溶解により均一又はほぼ均一に分散した状態となるため、着色濃度が均一又はほぼ均一な半導体裏面用フィルム40(ひいてはダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1)を容易に製造することができる。そのため、前記着色剤として染料を用いると、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムにおける半導体裏面用フィルムは、着色濃度を均一又はほぼ均一とすることができ、マーキング性や外観性を向上させることができる。
【0043】
黒系色材としては、特に制限されないが、例えば、無機の黒系顔料、黒系染料から適宜選択することができる。また、黒系色材としては、シアン系色材(青緑系色材)、マゼンダ系色材(赤紫系色材)およびイエロー系色材(黄系色材)が混合された色材混合物であってもよい。黒系色材は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。もちろん、黒系色材は、黒以外の色の色材と併用することもできる。
【0044】
具体的には、黒系色材としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなど)、グラファイト(黒鉛)、酸化銅、二酸化マンガン、アゾ系顔料(アゾメチンアゾブラックなど)、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライトなど)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素などが挙げられる。
【0045】
本発明では、黒系色材としては、C.I.ソルベントブラック3、同7、同22、同27、同29、同34、同43、同70、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、同71、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同48、同52、同107、同109、同110、同119、同154C.I.ディスパーズブラック1、同3、同10、同24等のブラック系染料;C.I.ピグメントブラック1、同7等のブラック系顔料なども利用することができる。
【0046】
このような黒系色材としては、例えば、商品名「Oil Black BY」、商品名「OilBlack BS」、商品名「OilBlackHBB」、商品名「Oil Black803」、商品名「Oil Black860」、商品名「Oil Black5970」、商品名「Oil Black5906」、商品名「Oil Black5905」(オリエント化学工業株式会社製)などが市販されている。
【0047】
黒系色材以外の色材としては、例えば、シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などが挙げられる。シアン系色材としては、例えば、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95;C.I.アシッドブルー6、同45等のシアン系染料;C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同15:6、同16、同17、同17:1、同18、同22、同25、同56、同60、同63、同65、同66;C.I.バットブルー4;同60、C.I.ピグメントグリーン7等のシアン系顔料などが挙げられる。
【0048】
また、マゼンダ系色材において、マゼンダ系染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同52、同58、同63、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同111、同121、同122;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、同13、同14、同21、同27;C.I.ディスパースバイオレット1;C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40;C.I.ベーシックバイオレット1、同3、同7、同10、同14、同15、同21、同25、同26、同27、28などが挙げられる。
【0049】
マゼンダ系色材において、マゼンダ系顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同42、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同49、同49:1、同50、同51、同52、同52:2、同53:1、同54、同55、同56、同57:1、同58、同60、同60:1、同63、同63:1、同63:2、同64、同641、同67、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同92、同101、同104、同105、同106、同108、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同146、同147、同149、同150、同151、同163、同166、同168、同170、同171、同172、同175、同176、同177、同178、同179、同184、同185、同187、同190、同193、同202、同206、同207、同209、同219、同222、同224、同238、同245;C.I.ピグメントバイオレット3、同9、同19、同23、同31、同32、同33、同36、同38、同43、同50;C.I.バットレッド1、同2、同10、同13、同15、同23、同29、同35などが挙げられる。
【0050】
また、イエロー系色材としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等のイエロー系染料;C.I.ピグメントオレンジ31、同43;C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同23、同24、同34、同35、同37、同42、同53、同55、同65、同73、同74、同75、同81、同83、同93、同94、同95、同97、同98、同100、同101、同104、同108、同109、同110、同113、同114、同116、同117、同120、同128、同129、同133、同138、同139、同147、同150、同151、同153、同154、同155、同156、同167、同172、同173、同180、同185、同195;C.I.バットイエロー1、同3、同20等のイエロー系顔料などが挙げられる。
【0051】
シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などの各種色材は、それぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、シアン系色材、マゼンダ系色材、イエロー系色材などの各種色材を2種以上用いる場合、これらの色材の混合割合(または配合割合)としては、特に制限されず、各色材の種類や目的とする色などに応じて適宜選択することができる。
【0052】
前記着色剤のなかでも、トルエンに対する23℃における溶解度が2g/100ml以下であるものが好ましい。前記溶解度は、1g/100ml以下が好ましく、0.5g/100ml以下がより好ましい。トルエンに対する23℃における溶解度が2g/100ml以下という極性の比較的高い着色剤を、極性の高い半導体裏面用フィルム40に含有させると、半導体裏面用フィルム40内に着色剤を留まらせ、粘着剤層22に移行することを抑制することができる。
【0053】
トルエンに対する23℃における溶解度が2g/100ml以下のこのような着色材としては、例えば、商品名「SOM−L−0543」(オリエント化学工業株式会社製)、商品名「ORIPACS B−1」(オリエント化学工業株式会社製)、商品名「SDO−7」(有本化学工業株式会社製)などが市販されている。
【0054】
前記着色剤のなかでも、アントラキノン骨格を有するものが好ましい。一般的に、ベンゼン環を複数有する分子は、分子同士の重なりにより溶媒への溶解性は低くなる。アントラキノン骨格は、ベンゼン環2つにシクロヘキサンが挟まれた構造であるため、フタロシアニン等の顔料に比較すれば、適度に分子間に溶媒が入り込む。その結果、溶剤への溶解性は維持できる。その一方で、トルエンに対する溶解度が低いため、粘着剤層に移行することは、抑制することができる。つまり、アントラキノン骨格を有する着色剤は、溶剤への溶解性と、粘着剤層への移行の抑制とのバランスに優れる。
【0055】
半導体裏面用フィルム40には、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば、充填剤(フィラー)、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤の他、増量剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0056】
前記充填剤としては、無機充填剤、有機充填剤のいずれであってもよいが、無機充填剤が好適である。無機充填剤等の充填剤の配合により、半導体裏面用フィルム40の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を図ることができる。なお、半導体裏面用フィルム40としては導電性であっても、非導電性であってもよい。前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田などの金属、又は合金類、その他カーボンなどからなる種々の無機粉末などが挙げられる。充填剤は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。充填剤としては、なかでも、シリカ、特に溶融シリカが好適である。なお、無機充填剤の平均粒径は0.1μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。無機充填剤の平均粒径は、例えば、レーザー回折型粒度分布測定装置によって測定することができる。
【0057】
前記充填剤(特に無機充填剤)の配合量は、有機樹脂成分100重量部に対して80重量部以下(0重量部〜80重量部)であることが好ましく、特に0重量部〜70重量部であることが好適である。
【0058】
また、前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。難燃剤は、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。イオントラップ剤は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0059】
半導体裏面用フィルム40は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と、必要に応じてアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して樹脂組成物を調製し、フィルム状の層に形成する慣用の方法を利用し形成することができる。
【0060】
なお、半導体裏面用フィルム40が、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合、半導体裏面用フィルム40は、半導体ウエハに適用する前の段階では、熱硬化性樹脂が未硬化又は部分硬化の状態である。この場合、半導体ウエハに適用後に(具体的には、通常、フリップチップボンディング工程で封止材をキュアする際に)、半導体裏面用フィルム40中の熱硬化性樹脂を完全に又はほぼ完全に硬化させる。
【0061】
このように、半導体裏面用フィルム40は、熱硬化性樹脂を含んでいても、該熱硬化性樹脂は未硬化又は部分硬化の状態であるため、半導体裏面用フィルム40のゲル分率としては、特に制限されないが、例えば、50重量%以下(0重量%〜50重量%)の範囲より適宜選択することができ、好ましくは30重量%以下(0重量%〜30重量%)であり、特に10重量%以下(0重量%〜10重量%)であることが好適である。半導体裏面用フィルムのゲル分率の測定方法は、以下の測定方法により測定することができる。
<ゲル分率の測定方法>
半導体裏面用フィルムから約0.1gをサンプリングして精秤し(試料の重量)、該サンプルをメッシュ状シートで包んだ後、約50mlのトルエン中に室温で1週間浸漬させる。その後、溶剤不溶分(メッシュ状シートの内容物)をトルエンから取り出し、130℃で約2時間乾燥させ、乾燥後の溶剤不溶分を秤量し(浸漬・乾燥後の重量)、下記式(a)よりゲル分率(重量%)を算出する。
ゲル分率(重量%)=[(浸漬・乾燥後の重量)/(試料の重量)]×100 (a)
【0062】
なお、半導体裏面用フィルムのゲル分率は、樹脂成分の種類やその含有量、架橋剤の種類やその含有量の他、加熱温度や加熱時間などによりコントロールすることができる。
【0063】
本発明において、半導体裏面用フィルムは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されたフィルム状物である場合、半導体ウエハに対する密着性を有効に発揮することができる。
【0064】
半導体裏面用フィルム40の未硬化状態における23℃での引張貯蔵弾性率は1GPa以上(例えば、1GPa〜50GPa)であることが好ましく、より好ましくは2GPa以上であり、特に3GPa以上であることが好適である。前記引張貯蔵弾性率が1GPa以上であると、半導体チップを半導体裏面用フィルム40と共に、ダイシングテープの粘着剤層22から剥離させた後、半導体裏面用フィルム40を支持体上に載置して、輸送等を行った際に、半導体裏面用フィルムが支持体に貼着するのを有効に抑制又は防止することができる。尚、前記支持体は、例えば、キャリアテープにおけるトップテープやボトムテープなどをいう。
【0065】
半導体裏面用フィルムの未硬化状態における前記引張貯蔵弾性率(23℃)は、樹脂成分(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)の種類やその含有量、シリカフィラー等の充填材の種類やその含有量などによりコントロールすることができる。
【0066】
なお、半導体裏面用フィルム40は、複数の層が積層された積層フィルムである場合(半導体裏面用フィルムが積層の形態を有している場合)、その積層形態としては、例えば、ウエハ接着層(着色剤を含まない層)とレーザーマーク層(着色剤を含まない層)とからなる積層形態などを例示することができる。また、このようなウエハ接着層とレーザーマーク層との間には、他の層(中間層、光線遮断層、補強層、着色層、基材層、電磁波遮断層、熱伝導層、粘着層など)が設けられていてもよい。なお、ウエハ接着層はウエハに対して優れた密着性(接着性)を発揮する層であり、ウエハの裏面と接触する層である。一方、レーザーマーク層は優れたレーザーマーキング性を発揮する層であり、半導体チップの裏面にレーザーマーキングを行う際に利用される層である。
【0067】
尚、前記引張貯蔵弾性率は、ダイシングテープ2に積層させずに、未硬化状態の半導体裏面用フィルム40を作製し、レオメトリック社製の動的粘弾性測定装置「Solid Analyzer RS A2」を用いて、引張モードにて、サンプル幅:10mm、サンプル長さ:22.5mm、サンプル厚さ:0.2mmで、周波数:1Hz、昇温速度:10℃/分、窒素雰囲気下、所定の温度(23℃)にて測定して、得られた引張貯蔵弾性率の値をいう。
【0068】
半導体裏面用フィルム40は、セパレータ(剥離ライナー)により保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまで半導体裏面用フィルムを保護する保護材としての機能を有している。セパレータは、半導体裏面用フィルム上に半導体ウエハを貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルム(ポリエチレンテレフタレートなど)や紙等も使用可能である。なお、セパレータは従来公知の方法により形成することができる。また、セパレータの厚さ等も特に制限されない。
【0069】
また、半導体裏面用フィルム40における可視光(波長:400nm〜800nm)の光線透過率(可視光透過率)は、特に制限されないが、例えば、20%以下(0%〜20%)の範囲であることが好ましく、より好ましくは10%以下(0%〜10%)、特に好ましくは5%以下(0%〜5%)である。半導体裏面用フィルム40は、可視光透過率が20%より大きいと、光線通過により、半導体素子に悪影響を及ぼす恐れがある。また、前記可視光透過率(%)は、半導体裏面用フィルム40の樹脂成分の種類やその含有量、着色剤(顔料や染料など)の種類やその含有量、無機充填材の含有量などによりコントロールすることができる。
【0070】
半導体裏面用フィルムの可視光透過率(%)は、次の通りにして測定することができる。即ち、厚さ(平均厚さ)20μmの半導体裏面用フィルム単体を作製する。次に、半導体裏面用フィルムに対し、波長:400nm〜800nmの可視光線[装置:島津製作所製の可視光発生装置(商品名「ABSORPTION SPECTRO PHOTOMETR」)]を所定の強度で照射し、透過した可視光線の強度を測定する。更に、可視光線が半導体裏面用フィルムを透過する前後の強度変化より、可視光透過率の値を求めることができる。尚、20μmの厚さでない半導体裏面用フィルムの可視光透過率(%;波長:400nm〜800nm)の値により、厚さ:20μmの半導体裏面用フィルムの可視光透過率(%;波長:400nm〜800nm)を導き出すことも可能である。また、本発明では、厚さ20μmの半導体裏面用フィルムの場合における可視光透過率(%)を求めているが、本発明に係る半導体裏面用フィルムは厚さ20μmのものに限定される趣旨ではない。
【0071】
また、半導体裏面用フィルム40としては、その吸湿率が低い方が好ましい。具体的には、前記吸湿率は1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.8重量%以下である。前記吸湿率を1重量%以下にすることにより、レーザーマーキング性を向上させることができる。また、例えば、リフロー工程に於いて、半導体裏面用フィルム40と半導体素子との間でボイドの発生などを抑制又は防止することもできる。尚、前記吸湿率は、半導体裏面用フィルム40を、温度85℃、相対湿度85%RHの雰囲気下で168時間放置する前後の重量変化により算出した値である。半導体裏面用フィルム40が熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合、前記吸湿率は、熱硬化後の半導体裏面用フィルムに対し、温度85℃、相対湿度85%RHの雰囲気下で168時間放置したときの値を意味する。また、前記吸湿率は、例えば、無機フィラーの添加量を変化させることにより調整することができる。
【0072】
また、半導体裏面用フィルム40としては、揮発分の割合が少ない方が好ましい。具体的には、加熱処理後の半導体裏面用フィルム40の重量減少率(重量減少量の割合)が1重量%以下が好ましく、0.8重量%以下がより好ましい。加熱処理の条件は、例えば、加熱温度250℃、加熱時間1時間である。前記重量減少率を1重量%以下にすることにより、レーザーマーキング性を向上させることができる。また、例えば、リフロー工程に於いて、フリップチップ型の半導体装置にクラックが発生するのを抑制又は防止することができる。前記重量減少率は、例えば、鉛フリーハンダリフロー時のクラック発生を減少させ得る無機物を添加することにより、調整することができる。なお、半導体裏面用フィルム40が熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物により形成されている場合、前記重量減少率は、熱硬化後の半導体裏面用フィルムに対し、加熱温度250℃、加熱時間1時間の条件下で加熱したときの値を意味する。
【0073】
半導体裏面用フィルム40の厚さは、特に限定されないが、例えば、2μm〜200μm程度の範囲から適宜選択することができる。更に、前記厚さは4μm〜160μm程度が好ましく、6μm〜100μm程度がより好ましく、10μm〜80μm程度が特に好ましい。
【0074】
(ダイシングテープ)
ダイシングテープ2は、基材21上に粘着剤層22が形成されて構成されている。このように、ダイシングテープ2は、基材21と、粘着剤層22とが積層された構成を有していればよい。基材は粘着剤層等の支持母体として用いることができる。基材21は放射線透過性を有していることが好ましい。基材21としては、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、フェルト、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体[特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など]等の適宜な薄葉体を用いることができる。本発明では、基材としては、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。このようなプラスチック材における素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体等のエチレンをモノマー成分とする共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;アクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリ塩化ビニリデン;ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体);セルロース系樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂などが挙げられる。
【0075】
また基材21の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後に基材21を熱収縮させることにより粘着剤層22と半導体裏面用フィルム40との接着面積を低下させて、半導体チップの回収の容易化を図ることができる。
【0076】
基材21の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0077】
基材21は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、基材21には、帯電防止能を付与する為、前記の基材21上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材21は単層あるいは2種以上の複層でもよい。
【0078】
基材21の厚さ(積層体の場合は総厚)は、特に制限されず強度や柔軟性、使用目的などに応じて適宜に選択でき、例えば、一般的には1000μm以下(例えば、1μm〜1000μm)、好ましくは10μm〜500μm、さらに好ましくは20μm〜300μm、特に30μm〜200μm程度であるが、これらに限定されない。
【0079】
なお、基材21には、本発明の効果等を損なわない範囲で、各種添加剤(着色剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤など)が含まれていてもよい。
【0080】
粘着剤層22は粘着剤により形成されており、粘着性を有している。このような粘着剤としては、特に制限されず、公知の粘着剤の中から適宜選択することができる。具体的には、粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ−プ特性改良型粘着剤などの公知の粘着剤(例えば、特開昭56−61468号公報、特開昭61−174857号公報、特開昭63−17981号公報、特開昭56−13040号公報等参照)の中から、前記特性を有する粘着剤を適宜選択して用いることができる。また、粘着剤としては、放射線硬化型粘着剤(又はエネルギー線硬化型粘着剤)や、熱膨張性粘着剤を用いることもできる。粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0081】
ただし、粘着剤層22を複層とする場合、少なくとも、シリコーン系粘着剤を含有するシリコーン粘着剤層を、半導体裏面用フィルム44との界面に有することが好ましい。このような構成とすることにより、前記表面自由エネルギーの差(γ2−γ1)を大きくし易い。なお、半導体裏面用フィルム44との界面にはならない他の層は、シリコーン系粘着剤以外の粘着剤を使用してもよい。
【0082】
また、粘着剤層22を単層とする場合、シリコーン系粘着剤を含有するシリコーン粘着剤層からなる層とすることが好ましい。このような構成とすることにより、前記表面自由エネルギーの差(γ2−γ1)を大きくし易い。
【0083】
前記アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体(単独重合体又は共重合体)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0084】
前記アクリル系粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が4〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適である。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状の何れであっても良い。
【0085】
なお、前記アクリル系重合体は、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分(共重合性単量体成分)に対応する単位を含んでいてもよい。このような共重合性単量体成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素含有モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどの複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子などを有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマー等が挙げられる。これらの共重合性単量体成分は1種又は2種以上使用できる。
【0086】
粘着剤として放射線硬化型粘着剤(又はエネルギー線硬化型粘着剤)を用いる場合、放射線硬化型粘着剤(組成物)としては、例えば、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するポリマーをベースポリマーとして用いた内在型の放射線硬化型粘着剤や、粘着剤中に紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分が配合された放射線硬化型粘着剤などが挙げられる。また、粘着剤として熱膨張性粘着剤を用いる場合、熱膨張性粘着剤としては、例えば、粘着剤と発泡剤(特に熱膨張性微小球)とを含む熱膨張性粘着剤などが挙げられる。
【0087】
本発明では、粘着剤層22には、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤(例えば、粘着付与樹脂、着色剤、増粘剤、増量剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、架橋剤など)が含まれていても良い。
【0088】
前記架橋剤としては、特に制限されず、公知の架橋剤を用いることができる。具体的には、架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられ、イソシアネート系架橋剤やエポキシ系架橋剤が好適である。架橋剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なお、架橋剤の使用量は、特に制限されない。
【0089】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ−ト、水素添加キシレンジイソシアネ−トなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。また、前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0090】
なお、本発明では、架橋剤を用いる代わりに、あるいは、架橋剤を用いるとともに、電子線や紫外線などの照射により架橋処理を施すことも可能である。
【0091】
粘着剤層22は、例えば、粘着剤(感圧接着剤)と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して、シート状の層に形成する慣用の方法を利用し形成することができる。具体的には、例えば、粘着剤および必要に応じて溶媒やその他の添加剤を含む混合物を、基材21上に塗布する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)上に前記混合物を塗布して粘着剤層22を形成し、これを基材21上に転写(移着)する方法などにより、粘着剤層22を形成することができる。
【0092】
粘着剤層22の厚さは特に制限されず、例えば、5μm〜300μm(好ましくは5μm〜200μm、さらに好ましくは5μm〜100μm、特に好ましくは7μm〜50μm)程度である。粘着剤層22の厚さが前記範囲内であると、適度な粘着力を発揮することができる。
【0093】
なお、本発明では、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1には、帯電防止能を持たせることができる。これにより、その接着時及び剥離時等に於ける静電気の発生やそれによる半導体ウエハ等の帯電で回路が破壊されること等を防止することができる。帯電防止能の付与は、基材21、粘着剤層22乃至フリップチップ型半導体裏面用フィルム40へ帯電防止剤や導電性物質を添加する方法、基材21への電荷移動錯体や金属膜等からなる導電層を付設する方法等、適宜な方式で行うことができる。これらの方式としては、半導体ウエハを変質させるおそれのある不純物イオンが発生しにくい方式が好ましい。導電性の付与、熱伝導性の向上等を目的として配合される導電性物質(導電フィラー)としては、銀、アルミニウム、金、銅、ニッケル、導電性合金等の球状、針状、フレーク状の金属粉、アルミナ等の金属酸化物、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。ただし、前記フリップチップ型半導体裏面用フィルム40は、非導電性であることが、電気的にリークしないようにできる点から好ましい。
【0094】
また、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シート(フィルム)が積層された形態で形成されていてもよい。例えば、ロール状に巻回された形態を有している場合、フリップチップ型半導体裏面用フィルムとダイシングテープとの積層体を、必要に応じてセパレータにより保護した状態でロール状に巻回して、ロール状に巻回された状態又は形態のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムとして作製することができる。なお、ロール状に巻回された状態又は形態のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1としては、基材21と、基材21の一方の面に形成された粘着剤層22と、粘着剤層22上に形成された半導体裏面用フィルム40と、基材21の他方の面に形成された剥離処理層(背面処理層)とで構成されていてもよい。
【0095】
なお、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の厚さ(半導体裏面用フィルムの厚さと、基材21及び粘着剤層22からなるダイシングテープの厚さの総厚)としては、例えば、7μm〜11300μmの範囲から選択することができ、好ましくは17μm〜1600μm(さらに好ましくは28μm〜1200μm)である。
【0096】
なお、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムにおいて、フリップチップ型半導体裏面用フィルムの厚さと、ダイシングテープの粘着剤層の厚さとの比や、フリップチップ型半導体裏面用フィルムの厚さと、ダイシングテープの厚さ(基材及び粘着剤層の総厚)との比をコントロールすることにより、ダイシング工程時のダイシング性、ピックアップ工程時のピックアップ性などを向上させることができ、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを半導体ウエハのダイシング工程〜半導体チップのフリップチップボンディング工程にかけて有効に利用することができる。
【0097】
(ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの製造方法)
本実施の形態に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの製造方法について、
図1に示すダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を例にして説明する。先ず、基材21は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0098】
次に、基材21上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて(必要に応じて加熱架橋させて)粘着剤層22を形成する。塗布方式としては、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。なお、粘着剤層組成物を直接基材21に塗布して、基材21上に粘着剤層22を形成してもよく、また、粘着剤組成物を表面に剥離処理を行った剥離紙等に塗布して粘着剤層22を形成させた後、該粘着剤層22を基材21に転写させてもよい。これにより、基材21上に粘着剤層22を形成されたダイシングテープ2が作製される。
【0099】
一方、半導体裏面用フィルム40を形成する為の形成材料を剥離紙上に乾燥後の厚みが所定厚みとなる様に塗布し、更に所定条件下で乾燥して(熱硬化が必要な場合などでは、必要に応じて加熱処理を施し乾燥して)、塗布層を形成する。この塗布層を粘着剤層22上に転写することにより、半導体裏面用フィルム40を粘着剤層22上に形成する。なお、粘着剤層22上に、半導体裏面用フィルム40を形成する為の形成材料を直接塗布した後、所定条件下で乾燥する(熱硬化が必要な場合などでは、必要に応じて加熱処理を施して乾燥する)ことによっても、半導体裏面用フィルム40を粘着剤層22上に形成することができる。以上により、本発明に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を得ることができる。なお、半導体裏面用フィルム40を形成する際に熱硬化を行う場合、部分硬化の状態となる程度で熱硬化を行うことが重要であるが、好ましくは熱硬化を行わない。
【0100】
ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、フリップチップボンディング工程を具備する半導体装置の製造の際に好適に用いることができる。すなわち、本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、フリップチップ実装の半導体装置を製造する際に用いられ、半導体チップの裏面に、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の半導体裏面用フィルム40が貼着している状態又は形態で、フリップチップ実装の半導体装置が製造される。従って、本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、フリップチップ実装の半導体装置(半導体チップが基板等の被着体に、フリップチップボンディング方式で固定された状態又は形態の半導体装置)に対して用いることができる。
【0101】
(半導体ウエハ)
半導体ウエハとしては、公知乃至慣用の半導体ウエハであれば特に制限されず、各種素材の半導体ウエハから適宜選択して用いることができる。本発明では、半導体ウエハとしては、シリコンウエハを好適に用いることができる。
【0102】
(半導体装置の製造方法)
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法について、
図2を参照しながら以下に説明する。
図2は、前記ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を用いた場合の半導体装置の製造方法を示す断面模式図である。
【0103】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、
ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1における半導体裏面用フィルム40上に半導体ウエハを貼着する工程Aと、
前記工程Aの後に、ダイシングテープ2側から半導体裏面用フィルム40にレーザーマーキングを行なう工程Bと、
前記半導体ウエハをダイシングして半導体素子を形成する工程Cと、
前記半導体素子を半導体裏面用フィルム40とともに、粘着剤層22から剥離する工程Dと、
前記半導体素子を被着体上にフリップチップ接続する工程Eとを少なくとも具備する。
【0104】
[マウント工程]
先ず、
図2(a)で示されるように、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の半導体裏面用フィルム40上に任意に設けられたセパレータを適宜に剥離し、当該半導体裏面用フィルム40上に半導体ウエハ4を貼着して、これを接着保持させ固定する(工程A)。このとき半導体裏面用フィルム40は未硬化状態(半硬化状態を含む)にある。また、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1は、半導体ウエハ4の裏面に貼着される。半導体ウエハ4の裏面とは、回路面とは反対側の面(非回路面、非電極形成面などとも称される)を意味する。貼着方法は特に限定されないが、圧着による方法が好ましい。圧着は、通常、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行われる。
次に、半導体裏面用フィルム40の半導体ウエハ40への固定を強固にするために、必要に応じて、ベーキング(加熱)を行なう。このベーキングは、例えば80〜150℃、0.1〜24時間の条件で行なう。
【0105】
[レーザーマーキング工程]
次に、
図2(b)で示されるように、ダイシングテープ2側からレーザーマーキング用のレーザー36を用いて、半導体裏面用フィルム40にレーザーマーキングを行なう(工程B)。レーザーマーキングの条件としては、特に限定されないが、半導体裏面用フィルム40に、レーザー[波長:532nm]を、強度:0.3W〜2.0Wの条件で照射することが好ましい。また、この際の加工深さ(深度)が2μm以上となるように照射することが好ましい。前記加工深さの上限は特に制限されないが、例えば、2μm〜25μmの範囲から選択することができ、好ましくは3μm以上(3μm〜20μm)であり、より好ましくは5μm以上(5μm〜15μm)である。レーザーマーキングの条件を前記数値範囲内とすることにより、優れたレーザーマーキング性が発揮される。
なお、トルエンに対する23℃における溶解度が2g/100ml以下という極性の比較的高い着色剤を、極性の高い半導体裏面用フィルム40に含有させた場合、例えば、前記ベーキング工程等の加熱によって前記着色剤が粘着剤層22に移行することが抑制される。その結果、ダイシングテープ2側からレーザー照射しても、ダイシングテープ2に移行した着色剤によりレーザーが遮られ、半導体裏面用フィルム40にレーザーが届かず、好適にレーザーマーキングできないといった問題は生じにくくなっている。
【0106】
なお、半導体裏面用フィルム40のレーザー加工性は、構成樹脂成分の種類やその含有量、着色剤の種類やその含有量、架橋剤の種類やその含有量、充填材の種類やその含有量などによりコントロールすることができる。
【0107】
[ダイシング工程」
次に、
図2(c)で示されるように、半導体ウエハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウエハ4を所定のサイズに切断して個片化(小片化)し、半導体チップ5を製造する(工程C)。ダイシングは、例えば、半導体ウエハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えば、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1まで切込みを行うフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウエハ4は、半導体裏面用フィルムを有するダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1により優れた密着性で接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウエハ4の破損も抑制できる。
【0108】
なお、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1のエキスパンドを行う場合、該エキスパンドは従来公知のエキスパンド装置を用いて行うことができる。エキスパンド装置は、ダイシングリングを介してダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を下方へ押し下げることが可能なドーナッツ状の外リングと、外リングよりも径が小さくダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを支持する内リングとを有している。このエキスパンド工程により、後述のピックアップ工程において、隣り合う半導体チップ同士が接触して破損するのを防ぐことが出来る。
【0109】
[ピックアップ工程]
ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1に接着固定された半導体チップ5を回収する為に、
図2(d)で示されるように、半導体チップ5のピックアップを行って、半導体チップ5を半導体裏面用フィルム40とともにダイシングテープ2より剥離させる(工程D)。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の基材21側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
本実施形態では、前記表面自由エネルギーγ1と、前記表面自由エネルギーγ2との差(γ2−γ1)が10mJ/m
2以上であるため、例えば、工程A等で、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムが加熱されたとしても、ダイシングテープとフリップチップ型半導体裏面用フィルムとの間の剥離力の上昇が抑制されている。従って、工程Dにおける剥離不良が抑制される。
なお、 粘着剤層22を構成する粘着剤として放射線硬化型粘着剤(又はエネルギー線硬化型粘着剤)を用いる場合、紫外線を照射してからピックアップを行なうことが好ましい。これにより容易にピックアップを行なうことが可能となる。特に、前記レーザーマーキング工程においては、半導体裏面用フィルム40と粘着剤層22との界面に気泡が発生する場合がある。そのため、粘着剤層22を構成する粘着剤として放射線硬化型粘着剤(又はエネルギー線硬化型粘着剤)を用い、レーザーマーキング工程の段階では粘着剤層22と半導体裏面用フィルム40とを強固に貼り付けて、気泡の発生を抑制しておき、ピックアップの際には、放射線(又はエネルギー線)を照射して、粘着力を低下させ、容易にピックアップを行なえるようにすることが好ましい。なお、ピックアップされた半導体チップ5は、その裏面が半導体裏面用フィルム40により保護されている。
【0110】
[フリップチップ接続工程]
ピックアップした半導体チップ5は、
図2(e)で示されるように、基板等の被着体に、フリップチップボンディング方式(フリップチップ実装方式)により固定させる(工程E)。具体的には、半導体チップ5を、半導体チップ5の回路面(表面、回路パターン形成面、電極形成面などとも称される)が被着体6と対向する形態で、被着体6に常法に従い固定させる。例えば、半導体チップ5の回路面側に形成されているバンプ51を、被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材(半田など)61に接触させて押圧しながら導電材を溶融させることにより、半導体チップ5と被着体6との電気的導通を確保し、半導体チップ5を被着体6に固定させることができる(フリップチップボンディング工程)。このとき、半導体チップ5と被着体6との間には空隙が形成されており、その空隙間距離は、一般的に30μm〜300μm程度である。尚、半導体チップ5を被着体6上にフリップチップボンディング(フリップチップ接続)した後は、半導体チップ5と被着体6との対向面や間隙を洗浄し、該間隙に封止材(封止樹脂など)を充填させて封止することが重要である。
【0111】
被着体6としては、リードフレームや回路基板(配線回路基板など)等の各種基板を用いることができる。このような基板の材質としては、特に限定されるものではないが、セラミック基板や、プラスチック基板が挙げられる。プラスチック基板としては、例えば、エポキシ基板、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板等が挙げられる。
【0112】
フリップチップボンディング工程において、バンプや導電材の材質としては、特に限定されず、例えば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材等の半田類(合金)や、金系金属材、銅系金属材などが挙げられる。
【0113】
なお、フリップチップボンディング工程では、導電材を溶融させて、半導体チップ5の回路面側のバンプと、被着体6の表面の導電材とを接続させているが、この導電材の溶融時の温度としては、通常、260℃程度(例えば、250℃〜300℃)となっている。本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムは、半導体裏面用フィルムをエポキシ樹脂等により形成することにより、このフリップチップボンディング工程における高温にも耐えられる耐熱性を有するものとすることができる。
【0114】
本工程では、半導体チップ5と被着体6との対向面(電極形成面)や間隙の洗浄を行うのが好ましい。当該洗浄に用いられる洗浄液としては、特に制限されず、例えば、有機系の洗浄液や、水系の洗浄液が挙げられる。本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムにおける半導体裏面用フィルムは、洗浄液に対する耐溶剤性を有しており、これらの洗浄液に対して実質的に溶解性を有していない。そのため、前述のように、洗浄液としては、各種洗浄液を用いることができ、特別な洗浄液を必要とせず、従来の方法により洗浄させることができる。
【0115】
次に、フリップチップボンディングされた半導体チップ5と被着体6との間の間隙を封止するための封止工程を行う。封止工程は、封止樹脂を用いて行われる。このときの封止条件としては特に限定されないが、通常、175℃で60秒間〜90秒間の加熱を行うことにより、封止樹脂の熱硬化(リフロー)が行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165℃〜185℃で、数分間キュアすることができる。当該工程における熱処理においては、封止樹脂だけでなく半導体裏面用フィルム40の半導体裏面用フィルム40の熱硬化も同時に行ってもよい。この場合、半導体裏面用フィルム40を熱硬化させるための工程を新たに追加する必要がない。ただし、本発明においてはこの例に限定されず、封止樹脂の熱硬化よりも前に、別途、半導体裏面用フィルム40を熱硬化させる工程を行なってもよい。
【0116】
前記封止樹脂としては、絶縁性を有する樹脂(絶縁樹脂)であれば特に制限されず、公知の封止樹脂等の封止材から適宜選択して用いることができるが、弾性を有する絶縁樹脂がより好ましい。封止樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、前記に例示のエポキシ樹脂等が挙げられる。また、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物による封止樹脂としては、樹脂成分として、エポキシ樹脂以外に、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(フェノール樹脂など)や、熱可塑性樹脂などが含まれていてもよい。なお、フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤としても利用することができ、このようなフェノール樹脂としては、前記に例示のフェノール樹脂などが挙げられる。
【0117】
また、上述した実施形態では、半導体チップ5と被着体6との間の空隙を、液状の封止材(封止樹脂など)を充填させて封止する場合について説明したが本発明はこの例に限定されず、シート状樹脂組成物を用いてもよい。シート状樹脂組成物を用いて半導体チップと被着体との間の空隙を封止する方法については、例えば、特開2001−332520号公報等、従来公知の方法を採用することができる。従って、ここでの詳細な説明は省略する。
【0118】
上述した実施形態では、ダイシング後に、半導体裏面用フィルム40を熱硬化させる場合について説明した。しかしながら、本発明は、この例に限定されず、ダイシング工程よりも前に、半導体裏面用フィルム40を熱硬化させてもよい。この場合、当該熱硬化させる工程における熱により、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムが加熱されたとしても、ダイシングテープとフリップチップ型半導体裏面用フィルムとの間の剥離力の上昇が抑制されている。従って、ピックアップ工程における剥離不良が抑制される。
【0119】
なお、前記封止工程の後、必要に応じて、熱処理(リフロー工程)を行ってもよい。この熱処理条件としては特に限定されないが、半導体技術協会(JEDEC)による規格に準じて行うことができる。例えば、温度(上限)が210〜270℃の範囲で、その時間が5〜50秒で行うことができる。当該工程により、半導体パッケージを基板(マザーボードなど)に実装することができる。
【0120】
本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを用いて製造された半導体装置は、フリップチップ実装方式で実装された半導体装置であるので、ダイボンディング実装方式で実装された半導体装置よりも、薄型化、小型化された形状となっている。このため、各種の電子機器・電子部品又はそれらの材料・部材として好適に用いることができる。具体的には、本発明のフリップチップ実装の半導体装置が利用される電子機器としては、いわゆる「携帯電話」や「PHS」、小型のコンピュータ(例えば、いわゆる「PDA」(携帯情報端末)、いわゆる「ノートパソコン」、いわゆる「ネットブック(商標)」、いわゆる「ウェアラブルコンピュータ」など)、「携帯電話」及びコンピュータが一体化された小型の電子機器、いわゆる「デジタルカメラ(商標)」、いわゆる「デジタルビデオカメラ」、小型のテレビ、小型のゲーム機器、小型のデジタルオーディオプレイヤー、いわゆる「電子手帳」、いわゆる「電子辞書」、いわゆる「電子書籍」用電子機器端末、小型のデジタルタイプの時計などのモバイル型の電子機器(持ち運び可能な電子機器)などが挙げられるが、もちろん、モバイル型以外(設置型など)の電子機器(例えば、いわゆる「ディスクトップパソコン」、薄型テレビ、録画・再生用電子機器(ハードディスクレコーダー、DVDプレイヤー等)、プロジェクター、マイクロマシンなど)などであってもよい。また、電子部品又は、電子機器・電子部品の材料・部材としては、例えば、いわゆる「CPU」の部材、各種記憶装置(いわゆる「メモリー」、ハードディスクなど)の部材などが挙げられる。
【実施例】
【0121】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の要旨をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
【0122】
(実施例1)
<半導体裏面用フィルムの作製>
エチルアクリレート主モノマーとするアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製,パラクロンW−197CM)100部に対して、エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1004)113部、フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H)121部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)246部、染料(OIL BLACK SOM−L−0543,オリエント化学工業製)5部をメチルエチルケトンに溶解して濃度23.6重量%となるように調整した。
この接着剤組成物の溶液を、剥離ライナとしてシリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、厚さ20μmの半導体裏面用フィルムAを作製した。
なお、「OIL BLACK SOM−L−0543」は、アントラキノン骨格を有する染料である。
【0123】
<ダイシングテープ>
実施例1に係るダイシングテープAとして、日東電工(株)社製、TRM−6250Lを準備した。TRM−6250Lは、ポリイミドの基材と、単層のシリコーン系粘着剤層とが積層された構成である。なお、TRM−6250Lは、例えば、リードフレームを樹脂封止する際に、樹脂漏れを防止するためにリードフレームの裏面にマスキング用に貼り付けるためのものであり、製品として、ダイシング用途のテープではない。
【0124】
<ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム>
半導体裏面用フィルムAを、ダイシングテープAの粘着剤層上に、ハンドローラーを用いて貼り合せ、実施例1に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを作製した。
【0125】
(実施例2)
ダイシングテープとして、日東電工(株)社製、TRM−3650Sを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを作製した。TRM−3650Sは、ポリイミドの基材と、単層のシリコーン系粘着剤層とが積層された構成である。なお、TRM−3650Sは、例えば、リードフレームを樹脂封止する際に、樹脂漏れを防止するためにリードフレームの裏面にマスキング用に貼り付けるためのものであり、製品として、ダイシング用途のテープではない。
【0126】
(比較例1)
ダイシングテープとして、日東電工(株)社製、DU−300を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを作製した。DU−300は、ポリオレフィンの基材と、紫外線硬化型のアクリル系粘着剤層とが積層された構成である。
【0127】
(比較例2)
ダイシングテープとして、日東電工(株)社製、BT−3100Pを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを作製した。BT−3100Pは、ポリオレフィンの基材と、アクリル系粘着剤層(紫外線硬化型ではないアクリル系粘着剤層)とが積層された構成である。
【0128】
(表面自由エネルギーの測定)
作製したダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムの粘着剤層と半導体裏面用フィルムとを界面で剥離した。その後、粘着剤層の表面自由エネルギーγ1と半導体裏面用フィルムの表面自由エネルギーγ2とを算出した。即ち、水及びヨードメタンの接触角を接触角計を用いて測定し、それらの接触角から幾何平均法により、表面自由エネルギー値を算出した。結果を表1に示す。また、差(γ2−γ1)も合わせて表1に示す。
【0129】
(130℃で1時間加熱後の粘着剤層から半導体裏面用フィルムを剥離する際の剥離力の測定)
作製したダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを、130℃で1時間加熱した。その後、引張試験機((株)島津製作所製、商品名「AGS−J」)を用いて、測定温度23℃、引張速度300mm/分、T型剥離試験の条件下で、粘着剤層半導体裏面用フィルムを剥離し、その際の剥離力を測定した。剥離力が0.2N/mm以下である場合を〇、0.2N/mmより大きい場合を×として評価した。結果を表1に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
(結果)
表面自由エネルギーの差(γ2−γ1)が、10mJ/m
2以上の実施例では、130℃で1時間加熱後も良好な剥離性を有していた。一方、表面自由エネルギーの差(γ2−γ1)が、10mJ/m
2よりも小さい比較例では、130℃で1時間加熱後の剥離力は、実施例よりも、高い値を示した。なお、比較例1は、加熱により紫外線硬化型のアクリル系粘着剤層が劣化し、剥離力が増大したものと思われる。