【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様において、0.60〜0.99μmの平均直径を有する多段屈折率分布型(grin)組成物コポリマー粒子;0.60〜0.99μmの平均直径を有
し、かつ理論ガラス転移温度(Tg)が20℃またはそれ以下のゴム状コアを有する多段コポリマー粒子
;およびそれらの混合物からなる群から選択される第1固体ポリマー粒子と、−60℃〜100℃の理論Tgおよび50nm〜
500nmの平均粒子直径を有する第2固体ポリマー粒子とを含む水性コーティング組成物であって、前記第1固体ポリマー粒子の前記第2固体ポリマー粒子に対する乾燥重量比が0.15:1〜10:1であり、そして前記水性コーティング組成物が10体積%未満の無機エキステンダー粒子を含む、水性コーティング組成物が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様において、(a)本発明の第1の態様の前記水性コーティング組成物を形成し;(b)前記コーティング組成物を基体に施用し;そして(c)前記コーティング組成物を乾燥するか、または乾燥させることを含む、コーティングを提供するための方法が提供される。
【0007】
本発明の第3の態様において、85°鏡面光沢度の20°鏡面光沢度に対する比が33以上である本発明の第2の態様の方法によって形成されるコーティングが提供される。
【0008】
本発明の水性コーティング組成物は第1固体ポリマー粒子と第2固体ポリマー粒子とを含む。本明細書中では「固体ポリマー粒子」によって、ポリマー粒子が、乾燥している場合、1以上の空隙を含まないことを意味する。
【0009】
本発明の水性コーティング組成物は、0.60〜0.99μmの平均直径を有する多段屈折率分布型(grin)組成物コポリマー粒子;0.60〜0.99μmの平均直径を有
し、かつ理論ガラス転移温度(Tg)が20℃またはそれ以下のゴム状コアを有する多段コポリマー粒子
;およびそれらの混合物からなる群から選択される第1固体ポリマー粒子を含む。本明細書において「水性」によって、組成物の連続相が主に水、好ましくは70重量%を超える水であり、連続相の任意の他の成分が水溶性溶媒、オリゴマー、ポリマー、およびその他であることを意味する。
【0010】
第1固体ポリマー粒子は、0.60〜0.99μmの平均直径、好ましくは0.80〜0.90μmの平均直径を有する。このサイズ範囲の粒子は、高角度(85°)で非常に高い鏡面光沢度をもたらす優れた表面平滑性を得るために重要である。この態様では、粒子サイズ均一性および粒子アスペクト比が重要である。0.99μmより大きな平均直径を有する第1固体ポリマー粒子はコーティングの表面の外側へさらに突出する傾向があり、したがって高角度で鏡面光沢度が減少する。低角度(20°)では、光の拡散は多段粒子、好ましくは粒子全体にわたって勾配屈折率を有する粒子によって増強される。0.60μm未満の平均直径を有するポリマー粒子は、所望の光沢プロフィールを提供するものではなく、高い光沢コーティングを生成する傾向がある。
【0011】
好ましくは、第1固体ポリマー粒子は、たとえば、コア−シェルまたはマルチローバル(multilobal)構造などの他の多段形態を有する多段ポリマーである。多段第1固体ポリマー粒子は、ポリマーコア相および1以上のポリマーシェル相を含み、屈折率分布型(grin)組成物であり得る。コアは様々なビニルモノマーから調製することができ、ゴム状またはガラス状ポリマーであってよい。コアは、ジオレフィン類、たとえばブタジエンまたはイソプレン;ビニル芳香族モノマー、たとえばスチレンまたはクロロスチレン;ビニルエステル、たとえば酢酸ビニルまたは安息香酸ビニル;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;(メタ)アクリレートエステル、たとえばメチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、およびベンジルアクリレート;塩化ビニル;ならびにフリーラジカル開始によって重合可能な他のモノマーなどのモノマーの重合もしくは共重合によって調製することができる。好ましくは、それらの主な成分によって記述される第1固体ポリマー粒子は、アクリル多段コポリマー粒子、ビニル多段コポリマー粒子、多段オレフィンポリマー粒子、多段ポリシロキサン粒子、多段合成ゴムコポリマー粒子、多段ウレタンコポリマー粒子、水分散性グラフトコポリマー粒子、それらの混合物、それらの組み合わせ、および単段架橋(コ)ポリマーとのそれらの混合物である。魅力的なコストでのそれらの熱、水分およびUV安定性のために、アクリル多段コポリマー粒子が特に好ましい。
【0012】
1つの実施形態において、第1固体ポリマー粒子は、ゴム状コア、すなわち20℃もしくはそれ以下、または10℃もしくはそれ以下の理論Tg計算を有するコアポリマーである。ゴム状コアは、合成もしくは天然ゴム、または好ましくはアクリルゴムを含み得る。アクリルゴムコアには、コモノマーの総重量基準で0〜15重量%、好ましくは0〜10重量%の1以上のクロスリンカー、コモノマーの総重量基準で0〜15重量%、好ましくは0〜10%の1以上のグラフトリンカー、およびコモノマーの総重量基準で0〜50重量%の1以上の共重合性エチレン性不飽和モノマーと共重合したアルキルアクリレートコポリマーであって、アルキル基が2〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートコポリマーが含まれる。アクリルゴムを取り囲む1以上のポリマーシェルのうち、最外シェルは第2固体ポリマー粒子と適合性である。シェル(複数可)は0〜40重量%の多段粒子を含み得る。
【0013】
第1固体ポリマー粒子用のゴム状コポリマーにおいて、好ましいアルキルアクリレートはt−BAまたはn−BAである。共重合性エチレン性不飽和モノマーは、モノエチレン性不飽和モノマー、例えばアルキルメタクリレートおよびモノエチレン性不飽和アレーン、例えばスチレンであり得る。エチレン性不飽和アレーンとしては、本明細書中で用いられる場合、スチレン、メチルスチレンおよびエチルスチレンなどのアルキルスチレン、置換基が重合を妨害しない他の置換ビニルベンゼンなどのモノエチレン性不飽和芳香族モノマー、ならびに類似のビニル多環式芳香族モノマーが挙げられる。コアポリマーの屈折率および第2ポリマー粒子の屈折率は、場合によって、ほぼ完全に透明な組成物を得るためにぴったり一致していてもよい。
【0014】
コアポリマーでの使用に好適な架橋性モノマーは概して、エチレン性不飽和基がほぼ等しい反応性を有する、他のコアモノマーと共重合可能な二または多エチレン性不飽和モノマー、例えばジビニルベンゼン(DVB);グリコールジ−およびトリ−(メタ)アクリレート、例えば1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、および1,6−ヘキサンジオールジアクリレート;トリオールトリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、およびその他である。好ましい架橋性モノマーはブチレングリコールジアクリレートである。
【0015】
コアポリマーでの使用に好適なグラフト結合性モノマーは概して、他のコアモノマーと共重合可能であり、例えば、アリルメタクリレート(ALMA)、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、アリルアクリルオキシプロピオネートなどの、不飽和基のうちの1つの反応性が、顕著な残留不飽和がコアポリマー中に残存することを可能にするために充分低い、二または多エチレン性不飽和モノマーである。好ましいグラフト結合性モノマーはALMAである。
【0016】
多段ポリマー粒子のコアを取り巻くのはポリマーの1以上のシェルである。シェルポリマーは、全粒子重量基準で約0.1〜約40%、好ましくは約5〜約40%、さらに好ましくは約15〜約35%であり得る。
【0017】
多段第1固体ポリマー粒子の外側シェルポリマーは、好ましくは第2固体ポリマー粒子の表面のポリマーと熱力学的に適合性である。例えば、ポリ(メチルメタクリレート)のシェルは、ポリ(メチルメタクリレート)またはポリ(塩化ビニル)の第2ポリマーと熱力学的に適合性である。第1および第2固体ポリマー粒子についての他のそのような適合性ポリマーの組み合わせは当業者に公知であり、そして他のものは、たとえば、提案された第1および第2固体ポリマー粒子のブレンドを調製し、混濁がないこと、1つのガラス転移温度が存在することなどのような適合性の証拠についてブレンドを試験することによる日常の実験によって容易に決定することができる。
【0018】
0.60〜0.99μmの平均粒子直径を有する粒子を提供することができる任意の方法によって第1固体ポリマー粒子を作製することができる。第1固体ポリマー粒子は、例えば、乳化重合、播種成長法(seeded growth process)、および懸濁重合法などの当該技術分野で公知の方法によって形成することができる。そのようなポリマーは、例えば米国特許第4,403,003号;同第7,768,602号;および同第7,829,626号で記載され、本明細書中でも例示されている。ポリマーは、多相粒子、すなわち粒子全体にわたる組成の勾配について相が混じり合う粒子をもたらし得るコア/シェル法、または組成を1以上の段階の間に変える勾配法などの多段法で作製することができる。
【0019】
好ましくは、第1固体ポリマー粒子を乳化重合によって形成する。本発明の好ましい実施形態において、コアまたは単段(コ)ポリマーのいずれかの少なくとも1つのモノマー成分の水性乳化重合によって第1固体ポリマー粒子を調製して、エマルジョン(コ)ポリマーまたはオリゴマーシード粒子を形成し、続いてシード粒子をコアの1以上のモノマー成分で、たとえば吸収により膨潤させ、そしてエマルジョンシード粒子内の1以上のモノマーを重合させて、所望の平均直径を有し、好ましくは狭い粒子サイズ分布を有する粒子を得る。粒子が所望のコアまたは単段(コ)ポリマーサイズに成長するまで膨潤および重合ステップを繰り返してもよい。シード粒子があらかじめ作製される場合、適切なサイズの膨潤性(コ)ポリマーまたはオリゴマーシードを使用することによって、第1固体ポリマー粒子としての使用に好適な様々なサイズおよび組成の粒子を製造することができる。シード粒子は、通常の乳化(共)重合によって作製することができる。第1固体ポリマー粒子を作製するために好適なシードポリマー前駆体には、たとえば、30〜500nmの範囲のオリゴマーエマルジョンポリマー粒子が含まれ得る。膨潤および重合ステップの1以上または全部は、結果として得られる(コ)ポリマーの分子量を制限する条件の非存在下、たとえば連鎖移動剤の非存在下で実施してもよい。しかしながら、最初に形成されるエマルジョン(コ)ポリマーシード粒子は、結果として得られる(コ)ポリマーの分子量を制限する条件下で形成されるより低い全体的な分子量を有するその後のより大きな粒子ほど容易に膨潤しない。少なくとも最終(共)重合段階は、典型的にはポリマー分子量を制限しない条件下で実施される。
【0020】
さらに好ましくは、コア(コ)ポリマーは、たとえばメルカプタンなどの連鎖移動剤を重合混合物中に含めて、さらに容易に膨潤可能なエマルジョンオリゴマーまたは(コ)ポリマーを形成することによって、形成される(コ)ポリマーの分子量を制限する条件を用いてモノマーを乳化重合することによって作製することができる。したがって、膨潤および重合ステップの1以上または全部は、ポリマー分子量を制限する条件を用いて実施することができ、そのようなステップは、結果として得られる(コ)ポリマーの分子量を制限する条件の非存在下で実施することができる膨潤および重合ステップの前または後に交互に実施してもよい。さらに好ましくは、コアまたは単段(コ)ポリマーは、たとえばメルカプタンなどの連鎖移動剤を重合混合物中に含めて、さらに容易に膨潤可能なエマルジョンオリゴマーまたは(コ)ポリマーを形成することによって、形成される(コ)ポリマーの分子量を制限する条件を使用してモノマーを乳化重合することによって作製することができる。したがって、膨潤および重合ステップの1以上または全部は、ポリマー分子量を制限する条件を用いて実施することができ、そのようなステップは、結果として得られる(コ)ポリマーの分子量を制限する条件の非存在下で実施することができる膨潤および重合ステップの前または後に交互に実施してもよい。
【0021】
あるいは、乾燥ポリマー粒子を所望のサイズに加工することができ、水分散可能である場合、すなわちヒドロキシル、カルボキシルまたはアミン基などの親水性基を含む場合、水中に分散させることができ、あるいは乳化させて、水中油エマルジョンを形成することができる。例えば、室温または25℃よりも高いTgを有する乾燥粒子を、たとえばジェットミリングによって粉砕してもよく、必要ならば、粒子分級機に通して、所望の平均直径および、所望により狭い粒子サイズ分布を形成することができる。乾燥ゴム状または熱可塑性粒子を低温粉砕し、分級機に通して所望の平均直径を創出することができる。
【0022】
エマルジョン(コ)ポリマーまたは(コ)ポリマーコアを製造するための他の代替技術は、例えば、単官能性および多官能性モノマーの混合物を重合し、続いて高濃度の多官能性モノマー、油溶性開始剤をあらかじめ形成されたシード上にステージングして微細顆粒を形成することを含むグローアウト(growout)法を記載する日本国特開昭62−84156号などの文献で開示されている。
【0023】
任意の(コ)ポリマーの架橋およびコア(コ)ポリマーのシェルポリマーへの任意のグラフト結合は、1以上の共重合性架橋性および/またはグラフト結合性モノマーを重合性モノマー混合物中に含めることに起因する。別法として、コアポリマーを架橋させてもよく、また、たとえばペンダント過酸化物基を有するモノマーからコポリマーを形成し、次いで重合で用いられるよりも高い温度に加熱することによって過酸化物を活性化することによるなど、後硬化反応などの他の公知技術を使用して、コアポリマーをシェルポリマーにグラフト結合させてもよい。活性化された過酸化物基は、コア/シェルポリマー成分のグラフト結合および架橋を促進するであろう。別の例では、架橋またはグラフト結合は、初期重合温度で安定であり、光または高温で活性化される第2のフリーラジカル開始剤を重合に加え、続いて開始剤を活性化させることによって、後硬化を達成することができる。
【0024】
高熱または高圧の条件でそれらの寸法を保持するために、勾配多段第1固体ポリマー粒子は変形に対する耐性および低熱可塑性を有することが好ましい。寸法の減少により、低角度での鏡面光沢度が高くなり、所望の光沢プロフィールによって提供される外観が損なわれる可能性がある。粒子の寸法安定性を増強するために、多段粒子は、多段粒子の重量基準で0.1〜20%、好ましくは2〜10%、さらに好ましくは4〜10重量%の共重合多価架橋性モノマーを含む。不十分な寸法安定性を有する粒子は、熱または圧力にさらされると変形または平坦化し、その結果、コーティング表面の光沢がすべての反射角で増加する。
【0025】
多段第1または第2固体ポリマー粒子はマルチローバルポリマー粒子であり得る。第2固体ポリマー粒子の場合、外側ポリマーすなわちローブ(lobe)はフィルム形成性でなければならない。マルチローバルは、異なる比較的不適合性のコアおよびローブ(コ)ポリマー組成物から、形成され、相互作用パラメータX
C−Lが約0.05を超える程度まで変化する。相互作用パラメータは、Krause et al., J. Chem. Physics, 43, 2144 (1965)の方法によってローブおよびコアポリマーについて算出することができる。算出に必要なHildebrand可溶性値の適切な値は、Van Krevelen, “Properties of Polymers,” Elsevier Publishers (New York), 1976で見いだすことができる。マルチローバルは、レドックス対または還元剤単独の初期増分を添加し、適切なローブ形成モノマーの漸次添加フィードと、モノマーフィードと同時にレドックス対の漸次添加を開始することによって形成することができ、この際、重合は同じまたはより高い添加速度で完了するまで進行し、この場合、増加したレベルの1以上の界面活性剤をローブ形成モノマーとともに、新しい粒子が開始されるレベルを少しだけ下回るレベルまで添加する。本明細書におけるマルチローバル粒子の平均直径は、等しい体積の球の直径と見なされる。
【0026】
水性コーティング組成物中の第1固体ポリマー粒子を安定化させて、分離または沈降を最小限に抑えることが好ましい。これは、例えば、水性コーティング組成物中に組み込まれた、アルカリ溶解性エマルジョンポリマー、疎水的に改質されたアルカリ溶解性ポリマー、疎水的に増強されたウレタン樹脂、および粘土系組成物などの増粘または粘度上昇材料(viscosity−building material)の使用によって達成することができる。
【0027】
本発明の水性コーティング組成物は、−60℃〜120℃の理論Tgと50nm〜500nmの平均粒子直径を有する第2固体ポリマー粒子を含む。
【0028】
第2固体ポリマー粒子のポリマーとしては、典型的には、少なくとも1つの非イオン性共重合エチレン性不飽和モノマー、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ウレイド官能性(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸のアセトアセテート、アセトアミドまたはシアノアセテートをはじめとする(メタ)アクリル酸エステルモノマー;スチレンまたは置換スチレン;エチレン;ビニルトルエン;ブタジエン;たとえば米国特許第5,162,415号で教示されているモノエチレン性不飽和アセトフェノンまたはベンゾフェノン誘導体;酢酸ビニルまたは他のビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、およびN−ビニルピロリドン(N−vinyl pyrollidone)などのビニルモノマー;(メタ)アクリロニトリル;N−アルキロール(メタ)アクリルアミドが挙げられる。本開示全体にわたって用いられる場合、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミドなどの、その後に別の語が続く「(メタ)」という用語の使用は、アクリレートまたはアクリルアミドならびにメタクリレートおよびメタクリルアミドの両方を指す。第2ポリマーはウレタンポリマーでもあり得る。第2ポリマーは実質的に非架橋であり、すなわち第1ポリマーはポリマーの重量基準で1重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、さらに好ましくは0重量%の共重合多エチレン性不飽和モノマーを含む。多エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびジビニルベンゼンが挙げられる。
【0029】
第2ポリマーは、典型的には5〜100の酸価を有し、これは第1ポリマー中1グラム当たりの酸のミリ当量数を決定し、水酸化カリウムの分子量をかけることによって算出される。酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸,モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、および無水マレイン酸などのカルボン酸モノマー;ならびにイオウおよびリン含有酸モノマーが挙げられる。好ましい酸モノマーはカルボン酸モノマーである。さらに好ましいモノマーは(メタ)アクリル酸である。
【0030】
第2ポリマーの理論ガラス転移温度(「Tg」)は−60℃〜100℃である。本明細書においてポリマーの「理論Tg」は、Fox式(T.G. Fox, Bull. Am. Physics Soc., Volume 1, Issue No. 3, page 123(1956))を使用することによって算出されるものであり、すなわちモノマーM1およびM2のコポリマーのTgの計算については、
1/Tg(calc.)=w(M1)/Tg(M1)+w(M2)/Tg(M2)
【0031】
式中、
Tg(calc.)はコポリマーについて算出されたガラス転移温度であり、
w(M1)は、コポリマー中のモノマーM1の重量分率であり、
w(M2)は、コポリマー中のモノマーM2の重量分率であり、
Tg(M1)はM1のホモポリマーのガラス転移温度であり、
Tg(M2)はM2のホモポリマーのガラス転移温度であり、
全ての温度は°Kである。
【0032】
ホモポリマーのガラス転移温度は、例えば、“Polymer Handbook”, edited by J. Brandrup and E.H. Immergut, Interscience Publishersで見出すことができる。本明細書中でTgを算出する際、共重合グラフト結合モノマーの寄与を除外する。多段第2固体ポリマー粒子について、本明細書において理論Tgは粒子の全体的な組成から算出されるものである。
【0033】
そのような第2ポリマー粒子を典型的には乳化重合によって調製するために使用される重合技術は、例えば、米国特許第4,325,856号;同第4,654,397号;および同第4,814,373号で開示されているように、当該技術分野で周知である。例えば、アルカリ金属またはアンモニウムアルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸、脂肪酸、およびオキシエチル化アルキルフェノールなどのアニオン性および/または非イオン性乳化剤などの通常の界面活性剤を用いてもよい。使用される界面活性剤の量は、通常、全モノマーの重量基準で0.1重量%〜6重量%である。熱またはレドックス開始プロセスのいずれかを用いてもよい。例えば、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、アンモニウムおよび/または過硫酸アルカリなどの通常のフリーラジカル開始剤を、典型的には全モノマーの重量基準で0.01%〜3.0重量%のレベルで使用してもよい。例えば、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸、硫酸ヒドロキシルアミンおよび重亜硫酸ナトリウムなどの好適な還元剤と結合した同じ開始剤を使用するレドックス系を、場合によって例えば鉄および銅などの金属イオンと組み合わせ、場合によって金属の錯化剤をさらに含めて類似したレベルで使用することができる。レドックスプロセスが好まれる。ある段階のためのモノマー混合物をニートで添加してもよいし、または水中エマルジョンとして添加してもよい。ある段階のためのモノマー混合物を1回以上で添加してもよいし、または均一もしくは様々な組成を用いて段階のために割り当てられた反応期間にわたって連続して添加してもよく、好ましいのは、第1および/または第2ポリマーモノマーエマルジョンを1回の添加として添加することである。たとえば、フリーラジカル開始剤、酸化剤、還元剤、連鎖移動剤、中和剤、界面活性剤、および分散剤などのさらなる成分を、段階のいずれかの前、最中、またはその後に添加してもよい。
【0034】
多段乳化重合法の結果、通常、少なくとも2つの相互に非適合性のポリマー組成物が形成され、それによって少なくとも2つの相が形成される。2つポリマー組成物の相互非適合性およびポリマー粒子の結果としての多相構造は、当該技術分野で公知の様々な方法で決定することができる。たとえば、相間の差異を強調するために染色技術を用いる走査電子顕微鏡法の使用がそのような技術である。多段エマルジョンポリマーは、コア/シェルポリマーと称される場合がある。ポリマー粒子は、たとえば、コア/シェルまたはコア/シース粒子、シェル相がコアを不完全に封入するコア/シェル粒子、および複数のコアを有するコア/シェル粒子などの様々な形状の2以上の相を含む。
【0035】
第2固体ポリマー粒子の平均粒子直径は50〜500ナノメートルである。例えば米国特許第4,384,056号および同第4,539,361号で開示されているものなど、多峰性粒子サイズ分布をもたらす方法を用いてもよい。
【0036】
本発明の水性コーティング組成物において、前記第1固体ポリマー粒子の前記第2固体ポリマー粒子に対する乾燥重量比は0.15:1〜10:1であり、水性コーティング組成物は、10%未満、好ましくは5%未満、さらに好ましくは2%未満、そして最も好ましくは0体積%の無機エキステンダー粒子を含む。本明細書において無機エキステンダー粒子は、1.8未満、典型的には1.3以上の屈折率を有する。無機エキステンダー粒子としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、粘土、焼成粘土、長石、霞石、閃長岩、珪灰石、珪藻土、アルミナシリケート、非フィルム形成性ポリマー粒子、酸化アルミニウム、シリカ、およびタルクが挙げられる。
【0037】
水性コーティング組成物を、コーティング技術分野で周知である技術によって調製する。第1および第2固体ポリマー粒子を低剪断撹拌下で所望により他のコーティングアジュバントとともに添加する。水性コーティング組成物は、第1および第2固体ポリマー粒子に加えて、第1または第2固体ポリマー粒子のパラメータの範囲内でないフィルム形成性または非フィルム形成性溶液またはエマルジョンポリマーを、第1および第2ポリマー粒子、顔料、ならびに通常のコーティングアジュバント、例えば、乳化剤、融合助剤(coalescing agent)、不凍液、硬化剤、緩衝液、中和剤、増粘剤、レオロジー改良剤、保湿剤、湿潤剤、可塑剤、消泡剤、UV吸収剤、蛍光像白剤、光または熱安定剤、殺生物剤、キレート化剤、分散剤、着色剤、着色剤分散液、ワックス、撥水剤、顔料、エキステンダー、および抗酸化剤の合計の0〜100重量%の量で含んでもよい。
【0038】
複数の成分、特に複数の粒状種を含む水性組成物の場合で一般的なように、個々の成分のコロイド安定性が減少する可能性を低減する、成分の安定性を変更する、または水性コーティング中または任意の乾燥プロセスの間に成分のいずれかを沈殿させるように有利に相互作用する、水性コーティング組成物中に含めるための材料を選択することが有益である。1つの態様では、望ましくない混合物は、コーティングの平滑度を低減し、高角度鏡面光沢度を減少させる際に、乾燥コーティングの所望の光沢プロフィールを得るのを妨害するゲルまたはグリットを生成させる可能性がある。別の態様では、望ましくない混合物は、基体上に水性コーティング組成物を施用することができる前にコーティング分離またはゲル化を引き起こす可能性があり、不良な物理的性能に至る欠陥を有する乾燥コーティングを作製する可能性がある。たとえば、分散剤、増粘剤、殺生物剤、および溶媒などのコーティング混合物の成分の誤った選択が潜在的な問題を引き起こす可能性があることは当業者には周知である。さらなる検討事項は、第1および第2固体ポリマー粒子のコロイド適合性である。しばしば、第1および第2固体ポリマー粒子はコロイド的に安定化された粒子の水性分散液として提供される。第2固体ポリマー粒子が第1固体ポリマー粒子とコロイド非適合性を示さないことが重要である。これは、同じ電荷の粒子を組み合わせる(すなわち、すべての粒子は負電荷または正電荷のいずれかを含む)によって達成することができるが、1つの電荷の1つの粒子と電荷を本質的に持たないまたは若干異なる電荷を持つ別の粒子とを組み合わせることによっても達成することができる。実質的に異なる電荷の粒子のブレンドによって、コロイド非適合性が生じ、これは粒子凝集(もしくは粒子グリット)またはコーティング組成物の完全ゲル化に至る可能性がある。この意味でコロイド的に適合性の混合物は、非ゲル化コーティング組成物またはグリットのないコーティングをもたらすであろう。
【0039】
ある実施形態では、例えば、米国特許第5,162,415号で教示されているようなベンゾフェノンまたは置換アセトフェノンもしくはベンゾフェノン誘導体などの感光性化合物を添加してもよい。ある実施形態では、本発明の水性コーティング組成物は、コーティング1リットルあたり150g未満、あるいは100g/リットル未満、またはさらには0g/リットル〜50g/リットルのVOC(揮発性有機化合物)レベルを有する。
【0040】
水性コーティング組成物の固形分は10体積%〜70体積%であり得る。水性コーティング組成物の粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて測定すると50センチポアズ〜50,000センチポアズであり得、適切な粘度は施用法によって大幅に異なる。
【0041】
本発明のコーティングを提供するための方法において、水性コーティング組成物を基体に施用し、乾燥するか、または乾燥させる。水性コーティング組成物を典型的には、例えば、木、金属、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルおよびその他のポリマー組成物、皮革、紙、ボール紙、織布または不織布、例えば、コンクリート、スタッコ、乾式壁、およびモルタルなどのセメント質基体、あらかじめ印刷、塗装もしくは下塗りした面、ならびに風化面に施用する。水性コーティング組成物は、例えば、塗装用はけ、塗装用ローラー、グラビアロール、カーテンコーターならびに、例えば、エア霧化スプレー(air−atomized spray)、空気アシスト式スプレー(air−assisted spray)、エアレススプレー、高体積低圧スプレー、および空気アシスト式エアレススプレーなどのスプレー法などの通常のコーティング施用方法を使用して基体に施用することができる。
【0042】
水性コーティイング組成物の乾燥は、たとえば5℃〜5℃などの周囲条件下で進行し得るか、またはコーティングをたとえば35℃〜150℃などの高温で乾燥することができる。
【0043】
特定の理論に束縛されることなく、コーティングは、主に第2固体ポリマー粒子が融合して連続フィルムを形成し、一方、第1固体ポリマー粒子はそれらの微粒子特性を保持するような方法で、水性ポリマーコーティングから形成されると考えられる。したがって、第2のエマルジョンポリマーのフィルム形成は、望ましくは、第1固体ポリマー粒子の粒状物質アイデンティティーおよび寸法の保持を危うくしないレベルまたは程度まで、融合助剤、熱などから恩恵を受け得る。
【0044】
本発明のコーティングは、着色される場合、好ましくはその臨界顔料体積濃度以下である。コーティングは所望の光沢プロフィールを示す、すなわち、85°鏡面光沢度の20°鏡面光沢度に対する比は、33以上であり、好ましくは40以上であり、さらに好ましくは50以上である。この光沢プロフィールを達成するために、第1固体ポリマー粒子は0.60μm〜0.99μmの平均直径を有するものであることが必要であり、第1固体ポリマー粒子がフィルム形成の過程でそれらの寸法を維持することが望ましい。コーティングのフィルム厚は、第1ポリマー粒子の平均直径よりも最低5nm大きいことが好ましい。
【0045】
以下の実施例は本発明を説明するはたらきをする。
【0046】
略号
エチルアクリレート EA
n−ブチルアクリレート BA
アクリル酸 AA
メタクリル酸 MAA
アリルメタクリレート ALMA
DI水=脱イオン水
【0047】
粒子サイズの測定
本明細書における40nm〜500nmの粒子直径は、Brookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90 PLUS(Brookhaven Instruments Company750 Blue Point Road, Holtsville, NY 11742)で測定されるものである。
【0048】
本明細書における0.60ミクロン〜0.99ミクロンの粒子直径は、Coulter Corporation Multisizer IIE粒子サイズ分析器を用いて測定されるものである。
【0049】
本明細書において1ミクロンよりも大きな粒子直径は、遠心分離およびスクロース勾配による沈降によってモードを分離するDisc Centrifuge Photosedimentometer(「DCP))(CPS Instruments, Inc.)を使用して測定されるものである。0.1%のラウリル硫酸ナトリウムを含有する10ccのDI水中に1〜2滴を添加することによってサンプルを調製した。15ccのスクロール勾配で満たされた回転ディスクに0.1ccのサンプルを注入した。サンプルをポリスチレン較正基準に対して分析した。特定の条件は次のとおりであった:スクロース勾配2〜8%;ディスク速度10,000rpm;較正基準は895nm直径ポリスチレンであった。
【0050】
鏡面光沢度の測定:25℃および50%相対湿度(RH)でバードアプリケーターを使用して白色Lenetaチャート上にコーティングのドローダウンを調製した。コーティングを24時間25℃および50%RHにて乾燥した後、光沢測定を実施した。ASTM D−523法にしたがってBYK micro−TRI−gloss u光沢計を使用して光沢値を測定した。各サンプルについての光沢値を20°、60°、および85°の3つの角度で報告した。
【0051】
サンプルA。第2固体ポリマー粒子の形成
サンプルA、組成:80(96.5EA/3.5AA)//20MMAを有する80nm2段エマルジョンポリマーの合成:段階1の理論Tgは−19.04℃であり、段階2の理論Tgは105℃である。
【0052】
【表A】
【0053】
スターラーおよび凝縮器を備えたリアクターに、1035gのDI水を装入した。窒素を水に30分間吹き込んだ。リアクターを次に窒素で覆い、混合物Aを装入した。20℃以下のリアクター混合物温度で、混合物B、CおよびDを迅速かつ連続してリアクターに添加した。10分以内に、重合が開始すると温度が上昇し、70℃付近で最高になった。ピーク温度の10分後に、混合物E、続いて混合物Fを添加した。リアクター中の材料を60℃まで冷却させ、そして混合物Gを添加し、続いて混合物HおよびIを添加した。5分後、バッチを冷却しながら、混合物JおよびKをリアクターに30分にわたって別々にはかり入れた。中和剤を次いで添加して重合酸を部分的に中和し、ポリマーサンプルを次いで100メッシュスクリーンを通して濾過して、凝塊を除去した。
【0054】
サンプルB。第1固体ポリマー粒子の前駆体の形成
水性分散液中で第1固体ポリマー粒子を作製するための直径0.045μmの架橋固体ポリマー粒子の調製。
【0055】
【表B】
【0056】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素で覆われたリアクターに混合物Aを装入し、83℃まで加熱した。リアクター内容物に、乳化混合物Bの10%および混合物Cの25%を添加した。温度を83℃で維持し、混合物を60分間撹拌し、その後、残りの混合物Bおよび混合物Cを撹拌しながら120分にわたってリアクターに添加した。撹拌を83℃で90分間続け、その後、リアクター内容物を室温まで冷却した。結果として得られるエマルジョンの粒子サイズおよび固形分はそれぞれ0.054μmおよび32.52%であった。
【0057】
サンプルC。第1ポリマー粒子の前駆体の形成
サンプルBの粒子を直径0.21μmまで成長させた。
【0058】
【表C】
【0059】
混合物Aを実施例1のリアクターに添加し、撹拌しながら88℃まで加熱した。リアクター中の空気を窒素で置換した。リアクター温度が88℃で安定化したら、混合物Bをリアクター中に装入した。乳化した混合物CおよびD、ならびに混合物Eを次いでリアクターに撹拌しながら300分にわたって添加した。撹拌を88℃で90分間続けた。リアクター内容物を65℃まで冷却した。混合物FおよびGを添加し、リアクター内容物を撹拌しながら1時間65℃で維持し、その後、リアクター内容物を室温まで冷却した。結果として得られたエマルジョン粒子は0.21μmの平均直径を有していた。
【0060】
サンプルD。第1固体ポリマー粒子の形成
サンプルCの粒子を膨張させて、平均直径0.84μmの第1固体ポリマー粒子を作製した。
【0061】
【表D】
【0062】
サンプルCのリアクターにA3を添加し、これを撹拌しながら90℃まで加熱した。リアクター中の空気を窒素で置換した。リアクター温度が90℃で安定化したら、混合物B3をリアクター中に装入した。混合物C3をホモジナイザーで乳化させ、リアクター中に装入した。リアクターを60℃で1時間撹拌した。混合物D3をホモジナイザーで乳化させ、リアクター中に装入した。1時間60℃で撹拌した後、リアクターを65〜70℃まで徐々に加熱し、その際、発熱重合が起こった。ピーク温度に達した後、撹拌を続けながら、リアクターを30分で73℃まで冷却した。混合物F3の半分を装入した。混合物E3、F3の残り、およびG3を次いでリアクターに2時間にわたって別々に添加した。温度を73〜75℃で維持し、撹拌を1時間続けた後、リアクターを室温まで冷却した。結果として得られる第1固体ポリマー粒子は0.84μmの直径を有していた。
【0063】
サンプルE。第1固体ポリマー粒子平均直径の範囲外の固体ポリマー粒子の形成
2段組成:80(96BA/4ALMA)//20(96MMA/4EA)を有する平均直径5μmのエマルジョンポリマーの合成;1段(ALMAを含まない)の理論Tgは−54.0℃である;2段の理論Tgは97.5℃である。
【0064】
粒子状ポリマーの調製で使用するためのシードポリマーの形成
特に断りのない限り、「装入した」または「添加した」という用語は、混合物のすべてを一度に添加することを意味する。以下の混合物を調製した:
【0065】
【表E.1】
【0066】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素で覆われたリアクターに混合物Aを装入し、82℃まで加熱した。リアクター内容物に混合物Bの15%および混合物Cの25%を添加した。温度を82℃で維持し、反応混合物を1時間撹拌し、その後、残りの混合物Bおよび混合物Cを撹拌しながら90分にわたってリアクターに測り入れた。撹拌を82℃で2時間続け、その後、リアクター内容物を室温まで冷却した。結果として得られたエマルジョン粒子の平均直径は0.2ミクロンであった。
【0067】
【表E.2】
【0068】
混合物A2をリアクターに添加し、撹拌しながら88℃まで加熱した。リアクター中の空気を窒素で置換した。リアクター温度が88℃で安定化したら、混合物B2をリアクター中に装入した。乳化混合物C2およびD2、ならびに混合物E2を次いでリアクターに撹拌しながら240分にわたって添加した。撹拌を88℃で90分間続けた。リアクター内容物を65℃まで冷却した。混合物F2およびG2を添加し、リアクター内容物を撹拌しながら1時間65℃で維持し、その後、リアクター内容物を室温まで冷却した。結果として得られるエマルジョン粒子は、Brookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90によって測定すると0.75ミクロンの直径を有していた。
【0069】
【表E.3】
【0070】
リアクターにA4を添加し、撹拌しながら76℃まで加熱した。リアクター中の空気を窒素で置換した。リアクター温度が76℃で安定化したら、混合物B4をリアクター中に装入した。混合物C4の20%をリアクター中に装入した。リアクターを60〜65℃で0.5時間撹拌した。混合物D4をリアクター中に装入した。23分間60〜65℃で撹拌後、発熱重合が起こった。ピーク温度に達した後、撹拌を続けながら、混合物C4の残りの80%を48分間にわたって添加した。混合物F4の27.5%を装入した。混合物E4、F4の残り、およびG4を次いでリアクター中に45分間にわたって別々に添加した。温度を75〜80℃で維持し、そして撹拌を1時間続けた後、リアクターを室温まで冷却した。結果としてのポリマー粒子の分散液に、エマルジョンの総重量基準で1.5%のACRYSOL(商標)ASE−60を添加し、トリエチルアミンの逐次添加によってpHをpH7〜9まで増加させた。
【0071】
比較例A。水性コーティング組成物の形成
プラスチック容器中でオーバーヘッドスターラーを使用してゆっくりと撹拌しながら成分の混合を実施した。まず、1.63gのACRYSOL(商標)ASE 60およびアンモニア28%(全体で0.27g)の一部を1分間混合した。11.35gのサンプルD(29.72%固形分)を前記ミキサーに連続して撹拌しながら添加し、次いでサンプルA(86.75g)およびアンモニア28%の残りを添加し、そしてさらに2〜3分間撹拌した。最終混合物は透明な水性コーティング組成物であった。
【0072】
ACRYSOL(商標)はThe Dow Chemical Companyの商標である。
【0073】
実施例1〜2.水性コーティング組成物の形成
実施例1〜2を作製する手順は、サンプルAおよびCの相対量を変えた以外は比較例Aで記載したものと同じであった。
【0074】
実施例3。オーバーヘッドスターラーを用いてプラスチック容器中で成分の混合を実施した。まず、1.87gのDI水および0.47gの1124を1分間混合した。次に、34.06gのTI−PURE(商標)R−746をゆっくりと2分間にわたって添加した。分散をさらに5分間続けた。サンプルD(28.29g)、RHOPLEX(商標)VSR−50(25.22g)、BYK(商標)−028(0.04g)、TEXANOL(商標)(0.57g)、および0.07gのアンモニア28%を上記ミキサーに連続して撹拌しながら添加した。撹拌速度を増大させ、0.86gのACRYSOL(商標)RM−2020をゆっくりと添加した。ACRYSOL(商標)RM−2020添加中に粘度の増加が観察された。次に1.27gのACRYSOL(商標)RM−8Wを高速撹拌下で添加した。最後に、7.28gのDI水を添加して、粘度を調節した。最終混合物は着色水性コーティング組成物であった。
【0075】
TAMOL(商標)およびRHOPLEX(商標)はThe Dow Chemical Companyの商標であり、TI−PURE(商標)はE.I.DUPONT DE NEMOURS COMPANYの商標であり;BYK(商標)はALTANA AGの商標であり;TEXANOL(商標)はEastman Chemical Companyの商標である。
【0076】
実施例4〜7および比較例B。実施例4〜7および比較例Bを作製する手順は、成分の量を下記表で示すように変える以外は実施例3で記載されているのと同じであった。
【0077】
比較例C。ステンレス鋼容器中で、7.31gの水、0.17gのTAMOL(商標)1124、0.01gのBYK(商標)−028、および0.02gのTRITON(商標)CF−10を、Cowles分散機を用いて1〜2分間混合した。次に、Cowles分散機を用いて高速撹拌(1000rpm)下で、6.98gのOMYACARB(商標)5をゆっくりと5分にわたって添加した。さらに10〜15分間1500rpmで分散を続けた。Hegmanゲージを使用してOMYACARB(商標)5の均一な分散を確認した。粉砕後、レットダウンおよび最終混合を実施例3で記載されている手順にしたがって実施した。
【0078】
OMYACARB(商標)はOMYA AGの商標である。
【0079】
比較例D〜E。比較例D〜Eを作製する手順は、OMYACARB(商標)5の量を下記表10−3で示すように変えること以外は比較例Cで記載されているのと同じであった。
【0080】
実施例8。透明コーティングの評価
1.5milバードアプリケーターを用いてLeneta Form 3B不透明度チャート上に水性コーティング組成物を施用した。手持ち式の光沢計を使用して不透明度チャートの黒色部分上で鏡面光沢度を測定した。
【0081】
【表8】
【0082】
本発明の実施例1〜2の水性コーティング組成物から形成されるコーティングは、比較例Aと比べて望ましい光沢プロフィールを示す。
【0083】
実施例9。着色コーティングの評価
【0084】
【表9】
【0085】
本発明の実施例3の水性コーティング組成物から形成されるコーティングは、比較例Bに対して所望の光沢プロフィールを示す。
【0086】
実施例10。着色コーティングの評価
この実施例では、第1ポリマー粒子の効果を無機(CaCO
3)エキステンダーの効果と対比する。
【0087】
【表10.1】
【0088】
【表10.2】
【0089】
【表10.3】
【0090】
本発明の実施例4〜7の水性コーティング組成物から形成されたコーティングは、第1ポリマー粒子が無機エキステンダーで置換された比較例C〜Eのものと比較して所望の光沢プロフィールを示す。