特許第6272877号(P6272877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62728771,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブチンを製造するための塩素化反応物の脱塩酸
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6272877
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブチンを製造するための塩素化反応物の脱塩酸
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20180122BHJP
   C07C 21/22 20060101ALI20180122BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180122BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C21/22
   !C07B61/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-534687(P2015-534687)
(86)(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公表番号】特表2015-530417(P2015-530417A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】US2013062080
(87)【国際公開番号】WO2014052695
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年7月7日
(31)【優先権主張番号】61/707,231
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/707,220
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュヨン・プオン
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・ジョーセフ・ナッパ
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−285471(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0288346(US,A1)
【文献】 Chambers, Richard D.; Roche, Alex J.,Eliminations from 2H-Heptafluorobut-2-ene,Journal of Fluorine Chemistry,1996年,79(2),121-124
【文献】 Sanchez, Veronique; Greiner, Jacques,Convenient preparation of unsymmetrical 1,2-bis(perfluoroalkyl)ethynes,Tetrahedron Letters,1993年,34(18),2931-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
C07C 21/22
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4個から12個の炭素原子のアルキル基を有する第4級アルキルアンモニウム塩又はその混合物の存在下において、Z−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンをアルカリ金属水酸化物の水溶液と反応させ、ヘキサフルオロ−2−ブチンを含む混合物を製造すること、そしてヘキサフルオロ−2−ブチンを回収すること、を含むヘキサフルオロ−2−ブチンを製造するための方法であって、ここでZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンからヘキサフルオロ−2−ブチンへの変換が、1時間当たり少なくとも50%であり、ここで該反応は100℃未満で起こ該アルカリ金属水酸化物が、さらにアルカリ金属ハロゲン化物を含む、上記方法。
【請求項2】
少なくとも8個の炭素の少なくとも1個のアルキル基を含む第4級アルキルアンモニウム塩の存在下において、E−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンを含むフルオロクロロオレフィンをアルカリ金属水素化物の水溶液と反応させること、そしてヘキサフルオロ−2−ブチンを回収すること、を含むヘキサフルオロ−2−ブチンを製造するための方法であって、ここでE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンからヘキサフルオロ−2−ブチンへの変換が、1時間当たり少なくとも50%であり、ここで該反応は100℃未満で起こる、上記方法。
【請求項3】
該アルカリ金属水酸化物が、さらにアルカリ金属ハロゲン化物を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
該第4級アルキルアンモニウム塩が、8個又はそれ以上の炭素原子の少なくとも3個のアルキル基を有する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
該第4級アルキルアンモニウム塩が、塩化メチルトリオクチルアンモニウムである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
該フルオロクロロオレフィンが、さらにZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、フッ素化オレフィンおよびフッ素化アルキンの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロカーボン業界は、モントリオール議定書の結果として段階的に廃止されつつあるオゾン破壊性のクロロフルオロカーボン(CFC)およびハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)のための代替冷媒を見出すために過去2、30年の間取り組んできている。多くの用途にとっての解決策は、冷媒、溶媒、消火剤、泡発泡剤および噴射剤としての使用のためのハイドロフルオロカーボン(HFC)化合物の商業化であった。これらの新しい化合物(例えば、HFC冷媒であるHFC−134aおよびHFC−125、ならびに発泡剤であるHFC−134aおよび245faが今のところ最も広く使用されている)は、ゼロのオゾン破壊係数を有しており、したがって、モントリオール議定書の結果としての現行規制の段階的廃止による影響を受けない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
オゾン層破壊の懸念に加えて、地球温暖化がこれらの用途の多くにおいて別の環境問題である。したがって、低いオゾン層破壊基準値を満たすのみならず、低い地球温暖化係数もまた有する組成物に対する必要性が存在する。特定のハイドロフルオロオレフィンは、両方の目標を達成すると考えられる。したがって、低い地球温暖化係数も有する塩素を全く含有しないハロゲン化炭化水素およびフルオロオレフィンを提供する製造方法に対する必要性が存在する。これらの目標を達成するいくつかのハイドロフルオロオレフィンが特定された。1つのそのようなオレフィンは、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンである。効率的な合成方法が、かかる化合物のために必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
相間移動触媒の存在下において塩素化反応物をアルカリ金属水酸化物の水溶液と反応させることを含むヘキサフルオロ−2−ブチンを製造するための方法が開示される。1つの実施形態において、塩素化反応物は、クロロルフルオロブタン(chlororfluorobutane)またはクロロフルオロブテンを含む。1つの実施形態において、塩素化反応物は、IHCFC−336mdd(2,3−ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタン)、HCFC−336mfa(2,2−ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタン)またはHCFO−1326mxz(E−またはZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテン)である。本明細書で使用される場合、HCFC−336は、上述のHCFC−336異性体のいずれかまたは両方を含むことが意図される。1つの実施形態において、相間移動触媒は、第4級アルキルアンモニウム塩である。1つの実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、少なくとも8個の炭素のアルキル基を少なくとも1個有し、ヘキサフルオロ−2−ブチンを回収し、ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタンの変換が、1時間当たり少なくとも50%である。
【0005】
4個〜10個の炭素原子のアルキル基を有する第4級アルキルアンモニウム塩およびそれらの混合物および非イオン性界面活性剤の存在下において塩素化反応物をアルカリ金属水酸化物の水溶液と反応させることと、ヘキサフルオロ−2−ブチンを回収することとを含むヘキサフルオロ−2−ブチンを製造するための方法であって、塩素化反応物からヘキサフルオロ−2−ブチンへの変換が、1時間当たり少なくとも20%である方法もまた開示される。
【0006】
上述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示および説明に役立つものであるにすぎず、添付の特許請求の範囲において定義される本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
少なくとも8個の炭素のアルキル基を少なくとも1個含む第4級アルキルアンモニウム塩の存在下において塩素化反応物をアルカリ金属水酸化物の水溶液と反応させることと、ヘキサフルオロ−2−ブチンを回収することとを含むヘキサフルオロ−2−ブチンを製造するための方法であって、ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタンの変換が、1時間当たり少なくとも50%である方法が開示される。
【0008】
4個〜10個の炭素原子のアルキル基を有する第4級アルキルアンモニウム塩およびそれらの混合物および非イオン性界面活性剤の存在下において塩素化反応物をアルカリ金属水酸化物の水溶液と反応させることと、ヘキサフルオロ−2−ブチンを回収することとを含むヘキサフルオロ−2−ブチンを製造するための方法であって、塩素化反応物からヘキサフルオロ−2−ブチンへの変換が、1時間当たり少なくとも20%である方法もまた開示される。
【0009】
多くの態様および実施形態が上に記載されたが、単に例示に役立つものであるにすぎず、限定するものではない。本明細書を読んだ後に、当業者は、他の態様および実施形態が本発明の範囲から逸脱することなく可能であることを理解する。
【0010】
実施形態のうちの任意の1つ以上のものの他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。さらに、本明細書に開示された実施形態の個々の特徴および要素は、以下に別個に説明、請求または例示されているとしても、別個に使用されてもよいし、互いに関連してまたは組み合わせて使用されてもよい。
【0011】
本明細書で使用される場合、位置異性体の指定のないHCFC−336という名称は、HCFC−336mdd(2,3−ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタン)またはHCFC−336mfa(2,2−ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタン)のいずれかまたは両方を指す。本明細書で使用される場合、立体化学の指定のないHCFC−1326mxzという名称は、E−またはZ−HCFC−1326mxz(E−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンまたはZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテン)のいずれかまたは両方を指す。
【0012】
HCFC−336は、潜在的に、多くの経路を介して入手可能であり、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの潜在的前駆体として興味深い。HCFC−336は、CFC−1316mxxの水素化によって、またはHFC−356mffの塩素化を介して調製され得るであろう。2度の脱塩酸によりヘキサフルオロ−2−ブチンが得られ、これが直ちに水素化されて、cis−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンが得られ得るであろう。最初の脱塩酸は簡単に見えるであろうが、塩化ビニルの脱塩酸はアセチレンを形成するための古典的な有機化学であり、かなり過酷な条件(例えば、非常に強い塩基(例えば、液体アンモニア中のナトリウム))を必要とする。より高い分子量のポリフッ化塩化ビニルが、100〜120℃から200または250℃までの温度で塩基水を用いてアルキンに脱ハロゲン化水素され得ることが報告されている。しかしながら、これらの温度では、ヘキサフルオロ−2−ブチンは、反応器内であまりに高い蒸気圧を有することになり、分解を起こし易くなるであろう。
【0013】
HCFC−336mddまたはHCFC−336mfaはいずれも、相間移動触媒としての第4級アルキルアンモニウム塩と組み合わせた塩基性水溶液を用いて100℃よりもかなり低い温度で2度脱塩酸され得ることが見出された。
【0014】
本明細書で使用される場合、相間移動触媒とは、水性相からまたは固相から有機相内へのイオン化合物の移動を促進する物質を意味するように意図される。相間移動触媒は、これらの異なる非混和性成分の反応を促進する。種々の相間移動触媒は様々な方法で機能し得るのであるが、相間移動触媒が脱塩酸反応を促進するものであるならば、それらの作用機序は、本発明におけるそれらの有用性の決定因ではない。
【0015】
本明細書で使用される場合の相間移動触媒は、アルキル基が4個〜10個の炭素原子を有するアルキル鎖である第4級アルキルアンモニウム塩である。1つの実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、塩化トリオクチルメチルアンモニウム(Aliquat 336)である。この塩のアニオンは、ハロゲン化物(例えば、塩化物または臭化物)、硫酸水素塩、または任意の他の一般的に使用されるアニオンであり得る。
【0016】
別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、塩化テトラオクチルアンモニウムである。さらに別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、硫酸水素テトラオクチルアンモニウムである。
【0017】
他の用途において相間移動触媒として一般的に考えられる他の化合物(クラウンエーテル、クリプタンドまたは非イオン性界面活性剤単独を含む)は、同じ様式での脱塩酸反応の変換または速度に対して著しい効果を有さない。
【0018】
別の実施形態において、HCFC−336mddまたはHCFC−336mfaはいずれも、アルキル基が少なくとも4個以上の炭素原子のアルキル鎖である第4級アルキルアンモニウム塩と組み合わせさらに非イオン性界面活性剤と組み合わせた塩基性水溶液を用いて100℃よりもかなり低い温度で2度脱塩酸され得る。そのような第4級アルキルアンモニウム塩の一例は、塩化テトラブチルアンモニウムである。
【0019】
1つの実施形態において、非イオン性界面活性剤は、エトキシ化ノニルフェノールまたはエトキシ化C12〜C15直鎖脂肪族アルコールである。好適な非イオン性界面活性剤としては、Stepan CompanyからのBio−soft(登録商標)N25−9およびMakon(登録商標)10が挙げられる。
【0020】
1つの実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、塩化テトラオクチルアンモニウム、臭化テトラオクチルアンモニウム、硫化水素テトラオクチルアンモニウム、塩化メチトリオクチルアンモニウム(methytrioctylammonium chloride)、臭化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化テトラデシルアンモニウム、臭化テトラデシルアンモニウム、および塩化テトラドデシルアンモニウムからなる群から選択される。
【0021】
HCFC−336の脱塩酸は、アルキル基が8個以上の炭素のアルキル鎖を少なくとも1個有するアルキル鎖である第4級アルキルアンモニウム塩を用いて実施され得る。別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、8個以上の炭素のアルキル鎖を3個有する(例えば、トリオクチルメチルアンモニウム塩)。さらに別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、テトラオクチルアンモニウム塩である。この塩のアニオンは、ハロゲン化物(例えば、塩化物または臭化物)、硫酸水素塩、または任意の他の一般的に使用されるアニオンであり得る。
【0022】
1つの実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、HCFC−336の0.5モルパーセント〜2.0モルパーセントの量で添加される。別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、HCFC−336の1モルパーセント〜2モルパーセントの量で添加される。さらに別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、HCFC−336の1モルパーセント〜1.5モルパーセントの量で添加される。1つの実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、HCFC−336の1モルパーセント〜1.5モルパーセントの量で添加され、添加される非イオン性界面活性剤の重量は、第4級アルキルアンモニウム塩の重量の1.0〜2.0倍である。
【0023】
1つの実施形態において、反応は、約60〜90℃の温度で行われる。別の実施形態において、反応は、70℃で行われる。
【0024】
本明細書で使用される場合、塩基性水溶液とは、主として7を超えるpHを有する水性液である液体(溶液か、分散液か、乳濁液か、懸濁液かなどを問わない)である。一部の実施形態において、塩基性水溶液は、8を超えるpHを有する。一部の実施形態において、塩基性水溶液は、10を超えるpHを有する。一部の実施形態において、塩基性水溶液は、10〜13のpHを有する。一部の実施形態において、塩基性水溶液は、水と混和性または非混和性であり得る少量の有機液体を含有する。一部の実施形態において、塩基性水溶液中の液体媒体は、少なくとも90%の水である。1つの実施形態において、水は水道水であり、他の実施形態において、水は脱イオン化または蒸留されたものである。
【0025】
塩基性水溶液中の塩基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびそれらの混合物の水酸化物塩、酸化物塩、炭酸塩、またはリン酸塩からなる群から選択される。1つの実施形態において、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、またはそれらの混合物を使用し得る塩基。
【0026】
ハイドロフルオロクロロオレフィンHCFC−1326mxzは、泡膨張剤として興味深い1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの合成のためのいくつかのスキームにおける不純物である。他の潜在的なスキームにおいて、これは、中間体であり得る。HCFC−1326mxzの1つの合成方法は、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2,3−ジクロロ−2−ブテンの水素化によるものである。合成方法がどのようなものであれ、二重結合に関するZ−およびE−立体異性体の混合物が典型的に得られる。あいにく、これはかなり高い毒性を示すので、不純物として形成されようと中間体として形成されようと、これを高収率で有用な生成物に変換することが望ましい。脱塩酸によりヘキサフルオロ−2−ブチンが得られ、これが水素化されて、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンが得られ得るであろう。古典的な有機化学において、アセチレンを形成するための塩化ビニルの脱塩酸は、かなり過酷な条件(例えば、非常に強い塩基(例えば、液体アンモニア中のナトリウム))を必要とする。より高い分子量のポリフッ化塩化ビニルが、100〜120℃から200または250℃までの温度で塩基水を用いてアルキンに脱ハロゲン化水素され得ることが報告されている。しかしながら、これらの温度では、ヘキサフルオロ−2−ブチンは、反応器内であまりに高い蒸気圧を有することになり、分解を起こし易くなるであろう。
【0027】
Z−およびE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンが、相間移動触媒としての第4級アルキルアンモニウム塩と組み合わせた塩基性水溶液を用いて100℃よりもかなり低い温度で脱塩酸され得ることが見出された。
【0028】
本明細書で使用される場合、相間移動触媒とは、水性相からまたは固相から有機相内へのイオン化合物の移動を促進する物質を意味するように意図される。相間移動触媒は、これらの異なる非混和性成分の反応を促進する。種々の相間移動触媒は様々な方法で機能し得るのであるが、相間移動触媒が脱塩酸反応を促進するものであるならば、それらの作用機序は、本発明におけるそれらの有用性の決定因ではない。
【0029】
本明細書で使用される場合の相間移動触媒は、アルキル基が4個〜12個の炭素原子を有するアルキル鎖である第4級アルキルアンモニウム塩である。1つの実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、テトラブチルアンモニウム塩である。この塩のアニオンは、ハロゲン化物(例えば、塩化物または臭化物)、硫酸水素塩、または任意の他の一般的に使用されるアニオンであり得る。
【0030】
別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、塩化トリオクチルメチルアンモニウム(Aliquat 336)である。別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、塩化テトラオクチルアンモニウムである。さらに別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、硫酸水素テトラオクチルアンモニウムである。
【0031】
他の用途において相間移動触媒として一般的に考えられる他の化合物(クラウンエーテル、クリプタンドまたは非イオン性界面活性剤単独を含む)は、同じ様式での脱塩酸反応の変換または速度に対して著しい効果を有さない。
【0032】
1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンのZ−異性体およびE−異性体は、脱塩酸に関して著しく異なる反応性を示し、この反応において有効な相間移動触媒として機能するものに対して異なる要件を有している。Z−異性体
CFCCl=CHCF
の脱塩酸は、アルキル基が4個〜12個の炭素原子を有するアルキル鎖である第4級アルキルアンモニウム塩を用いて実施され得る。この塩のアニオンは、ハロゲン化物(例えば、塩化物または臭化物)、硫酸水素塩、または任意の他の一般的に使用されるアニオンであり得る。1つの実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、テトラブチルアンモニウム塩である。別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、テトラヘキシルアンモニウム塩である。別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、テトラオクチルアンモニウム塩である。さらに別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、トリオクチルメチルアンモニウム塩である。
【0033】
1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンのE−異性体の脱塩酸は、アルキル基が8個以上の炭素のアルキル鎖を少なくとも1個有するアルキル鎖である第4級アルキルアンモニウム塩を用いて実施され得る。別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、8個以上の炭素のアルキル鎖を3個有する(例えば、トリオクチルメチルアンモニウム塩)。さらに別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、テトラオクチルアンモニウム塩である。さらに別の実施形態において、第4級アンモニウム塩は、テトラデシルアンモニウム塩である。さらに別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、テトラドデシルアンモニウム塩である。この塩のアニオンは、ハロゲン化物(例えば、塩化物または臭化物)、硫酸水素塩、または任意の他の一般的に使用されるアニオンであり得る。
【0034】
さらに別の実施形態において、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンのE−異性体の脱塩酸は、アルキル基が4個〜12個の炭素原子を有するアルキル鎖である第4級アルキルアンモニウム塩を用いて、非イオン性界面活性剤の存在下において実施され得る。非イオン性界面活性剤は、エトキシ化ノニルフェノールおよびエトキシ化C12〜C15直鎖脂肪族アルコールであり得る。好適な非イオン性界面活性剤としては、Stepan CompanyからのBio−soft(登録商標)N25−9およびMakon(登録商標)10が挙げられる。
【0035】
1つの実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンの0.5モルパーセント〜2.0モルパーセントの量で添加される。別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンの1モルパーセント〜2モルパーセントの量で添加される。さらに別の実施形態において、第4級アルキルアンモニウム塩は、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンの1モルパーセント〜1.5モルパーセントの量で添加される。
【0036】
1つの実施形態において、Z−またはE−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテンの脱塩酸は、アルカリ金属ハロゲン化物塩の存在下で行われる。1つの実施形態において、アルカリ金属は、ナトリウムまたはカリウムである。1つの実施形態において、ハロゲン化物は塩化物または臭化物である。1つの実施形態において、アルカリ金属ハロゲン化物塩は、塩化ナトリウムである。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、アルカリ金属ハロゲン化物塩は、相間移動触媒を安定させると考えられる。脱塩酸反応それ自体がアルカリ金属塩化物、特に、水酸化ナトリウムが塩基として使用される場合は塩化ナトリウムを生じるが、追加の塩化ナトリウムの添加は、ヘキサフルオロ−2−ブチンの収率を高めるというさらなる効果を提供する。
【0037】
アルカリ金属ハロゲン化物塩の添加はまた、反応からの排水中で測定されるフッ化物イオンの量を低減する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、フッ化物の存在は、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテン出発物質またはヘキサフルオロ−2−ブチン生成物のいずれかの分解の結果として生じると考えられる。
【0038】
いくつかの試料において、脱塩酸からの廃水中に見られるフッ化物イオンの量は、約6000ppmである。いくつかの実施例において、相間移動触媒1モル当たり30〜60当量の塩化ナトリウムを用いて、廃水中のフッ化物イオンの量は、2000ppmに低減される。1つの実施形態において、アルカリ金属ハロゲン化物は、相間移動触媒1モル当たり25〜100当量で添加される。別の実施形態において、アルカリ金属ハロゲン化物は、相間移動触媒1モル当たり30〜75当量で添加される。さらに別の実施形態において、アルカリ金属ハロゲン化物は、相間移動触媒1モル当たり40〜60当量で添加される。
【0039】
1つの実施形態において、反応は、約60〜90℃の温度で行われる。別の実施形態において、反応は、70℃で行われる。
【0040】
本明細書で使用される場合、塩基性水溶液とは、主として7を超えるpHを有する水性液である液体(溶液か、分散液か、乳濁液か、懸濁液かなどを問わない)である。一部の実施形態において、塩基性水溶液は、8を超えるpHを有する。一部の実施形態において、塩基性水溶液は、10を超えるpHを有する。一部の実施形態において、塩基性水溶液は、10〜13のpHを有する。一部の実施形態において、塩基性水溶液は、水と混和性または非混和性であり得る少量の有機液体を含有する。一部の実施形態において、塩基性水溶液中の液体媒体は、少なくとも90%の水である。1つの実施形態において、水は水道水であり、他の実施形態において、水は脱イオン化または蒸留されたものである。
【0041】
塩基性水溶液中の塩基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびそれらの混合物の水酸化物塩、酸化物塩、炭酸塩、またはリン酸塩からなる群から選択される。1つの実施形態において、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、またはそれらの混合物を使用し得る塩基。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」またはそれらの任意の他の変形は、非排他的包含を含むように意図される。例えば、列挙された要素を含むプロセス、方法、物品または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されるものではなく、明示的に列挙されていないあるいはそのようなプロセス、方法、物品または装置に固有の他の要素を含み得る。さらに、そうでないことが明示的に述べられていない限り、「または」は、排他的なまたはではなく包含的なまたはを指す。例えば、条件AまたはBは、以下のうちのいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(または存在し)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)かつBが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0043】
また、「a」または「an」の使用が、本明細書に記載される要素および成分を記載するために採用される。これは単に、便宜上、本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行われるにすぎない。この記載は、1つまたは少なくとも1つを包含すると解釈されるべきであり、単数形は、別段の意図が明らかでない限り複数形も包含する。
【0044】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料が本発明の実施形態の実施または試験において使用され得るが、好適な方法および材料が以下に記載される。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先することになる。さらに、材料、方法、および実施例は、例示にすぎず、限定するように意図されるものではない。
【実施例】
【0045】
本明細書に記載される概念を、以下の実施例においてさらに説明する。これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0046】
臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム(TBAB)、硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム(Aliquat(登録商標)336)、塩化テトラオクチルアンモニウム(TOAC)、硫酸水素テトラオクチルアンモニウム(TOAHS)および臭化トリブチルメチルアンモニウム(TBMAB)は、Sigma Aldrich,St.Louis,MOから入手可能である。Bio−soft(登録商標)N25−9およびMakon(登録商標)10は、Stepan Company,Northfield,Illinoisからのものであり、1326は、Synquest Labs,Incから入手可能である。
【0047】
凡例
HCFC−336mfaは、CFCClCHCFである。
HCFC−336mddは、CFCHClCHClCFである。
HCFC−1326mxyは、CFCCl=CHCFである。
HFBは、CFC≡CCFである。
【0048】
実施例1
実施例1は、Aliquat 336の存在下における336mddからヘキサフルオロブチンへの変換を実証する。
【0049】
NaOH水溶液(22mL、0.22mol)を、室温で、Aliquat(登録商標)336(0.53g、0.001325mol)の存在下において、336mdd(23.5g、0.1mol)および水(5.6mL)に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は2時間後に完結し、14gの生成物(変換率:100%;収率:86%)をドライアイストラップに捕集した。
【0050】
実施例2
実施例2は、Aliquat 336の存在下における336mfaからヘキサフルオロ−2−ブチンへの変換を実証する。
【0051】
NaOH水溶液(22mL、0.22mol)を、室温で、Aliquat(登録商標)336(0.53g、0.001325mol)の存在下において、336mfa(23.5g、0.1mol)および水(5.6mL)に添加する。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングする。反応は2時間後に完結し、ヘキサフルオロブチンをドライアイストラップに捕集する。
【0052】
実施例3
実施例3は、塩化テトラブチルアンモニウムおよび非イオン性界面活性剤の存在下における336mfaからヘキサフルオロ−2−ブチンへの変換を実証する。
【0053】
NaOH水溶液(22mL、0.22mol)を、室温で、臭化テトラブチルアンモニウム(0.45g、0.001325mol)およびMakon(登録商標)10(0.7g)の存在下において、336mfa(23.5g、0.1mol)および水(5.6mL)に添加する。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングする。反応は4.5時間後に完結し、ヘキサフルオロブチンをドライアイストラップに捕集する。
【0054】
比較例1
NaOH水溶液(23mL、0.23mol)を、37℃で、HCFC−336mfa(23.5g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加する。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。31時間後に。0.36gのヘキサフルオロ−2−ブチン(変換率:2.2%;収率:2.2%)をドライアイストラップに捕集した。
【0055】
比較例2
NaOH水溶液(10mL、0.10mol)を、15−Crown−5(0.65g、0.003mol)の存在下において、37℃で、HCFC−336mfa(11.8g、0.05mol)および水(18mL)の混合物に添加する。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングする。反応は30時間後に完結していない。1.16gのヘキサフルオロ−2−ブチン(変換率:14%;収率:14%)をドライアイストラップに捕集する。
【0056】
比較例3
NaOH水溶液(22mL、0.22mol)を、Makon(登録商標)10(0.7g)の存在下において、37℃で、HCFC−336mfa(23g、0.1mol)および水(18mL)に添加する。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングする。反応は22時間後に完結していない。1.09gのヘキサフルオロ−2−ブチン(変換率:17%;収率:6.8%)をドライアイストラップに捕集した。
【0057】
実施例4
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、35℃で、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム(0.45g、0.001325mol)の存在下においてZ−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は1時間後に完結し、15.4gの生成物(変換率:100%;収率:95%)をドライアイストラップに捕集した。
【0058】
実施例5
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、35℃で、硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム(0.43g、0.001325mol)の存在下において、Z−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は1時間後に完結し、11の生成物(変換率:100%;収率:71%)をドライアイストラップに捕集した。
【0059】
実施例6
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、35℃で、Aliquat(登録商標)336(0.53g、0.001325mol)の存在下において、Z−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は1時間後に完結し、15.6の生成物(変換率:100%;収率:96%)をドライアイストラップに捕集した。
【0060】
実施例7
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、42℃で、Aliquat(登録商標)336(0.53g、0.001325mol)の存在下において、E−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は1時間後に完結し、15.8gの生成物(変換率:100%;収率:98%)をドライアイストラップに捕集した。
【0061】
実施例8
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、42℃で、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム(0.45g、0.001325mol)の存在下において、E−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は7時間後に完結しなかった。12.6gの生成物(変換率:78%;収率:78%)をドライアイストラップに捕集した。
【0062】
実施例9
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、42℃で、硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム(0.43g、0.001325mol)の存在下において、E−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は7時間後に完結しなかった。12.6gの生成物(変換率:77%;収率:77%)をドライアイストラップに捕集した。
【0063】
実施例10
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、42℃で、臭化テトラオクチルアンモニウム(0.72g、0.001325mol)の存在下において、E−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は6時間半後に完結した。15.6gの生成物(変換率:100%;収率:95%)をドライアイストラップに捕集した。
【0064】
実施例11
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、42℃で、塩化テトラオクチルアンモニウム(0.43g、0.001325mol)の存在下において、E−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。5時間半後に、15.2gの生成物(変換率:95%;収率:93%)をドライアイストラップに捕集した。
【0065】
実施例12
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、42℃で、塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム(0.37g、0.001325mol)の存在下において、E−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。23時間後に、14.8gの生成物(変換率:90%;収率:87%)をドライアイストラップに捕集した。
【0066】
実施例13
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、42℃で、塩化トリブチルメチルアンモニウム(0.31g、0.001325mol)の存在下において、E−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。23時間後に、8gの生成物(変換率:59%;収率:49%)をドライアイストラップに捕集した。
【0067】
実施例14
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、38℃で、臭化テトラブチルアンモニウム(0.45g、0.001325mol)およびBio−soft(登録商標)N25−9(0.7g)の存在下において、ZE−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は5時間後に完結した。13gの生成物(変換率:100%;収率:80%)をドライアイストラップに捕集した。
【0068】
実施例15
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、38℃で、臭化テトラブチルアンモニウム(0.45g、0.001325mol)およびMakon(登録商標)10(0.7g)の存在下において、ZE−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は5時間後に完結した。11.2gの生成物(変換率:100%;収率:69%)をドライアイストラップに捕集した。
【0069】
実施例16
10M NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、37℃で、NaCl(2.3g、0.0393mol)およびAliquat(登録商標)336(0.53g、0.001325mol)の存在下において、ZE−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)に30分かけて添加した。添加後に、添加が完了した時に、反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は1時間20分後に完結し、水層を重量%フッ化物分析に供した。
【0070】
実施例17
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、37℃で、NaCl(4.6g、0.0786mol)およびAliquat(登録商標)336(0.53g、0.001325mol)の存在下において、ZE−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)に30分かけて添加した。添加後に、添加が完了した時に、反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は1時間20分後に完結し、水層を重量%フッ化物分析に供した。
【0071】
実施例18
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、37℃で、NaCl(3.45g、0.0590mol)およびAliquat(登録商標)336(0.53g、0.001325mol)の存在下において、ZE−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に30分かけて添加した。添加後に、添加が完了した時に、反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は2時間後に完結し、水層を重量%フッ化物分析に供した。
【0072】
比較例4
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、37℃で、ZE−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。31時間後に、0.36gの生成物(変換率:2.2%;収率:2.2%)をドライアイストラップに捕集した。
【0073】
比較例5
NaOH水溶液(6mL、0.06mol)を、15−Crown−5(0.65g、0.003mol)の存在下において、37℃で、ZE−1326(10g、0.05mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は30時間後に完結しなかった。1.16gの生成物(変換率:14%;収率:14%)をドライアイストラップに捕集した。
【0074】
比較例6
NaOH水溶液(12mL、0.12mol)を、Makon(登録商標)10(0.7g)の存在下において、37℃で、ZE−1326(20g、0.1mol)および水(18mL)の混合物に添加した。添加後に反応温度を70℃まで上げ、ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニタリングした。反応は22時間後に完結しなかった。1.09gの生成物(変換率:17%;収率:6.8%)をドライアイストラップに捕集した。
【0075】
【表1】
【0076】
概要または実施例において上に記載された作業の全てが必要とされるわけではないこと、特定の作業の一部が必要とされないことがあり得ること、および1つ以上のさらなる作業が記載された作業に加えて行われることがあり得ることに留意されたい。なおさらに、作業が記載されている順序は、必ずしもそれらが行われる順序ではない。
【0077】
上述の明細書において、特定の実施形態に関して概念を説明した。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に示される本発明の範囲から逸脱することなく種々の改変および変更が行われ得ることを理解する。したがって、本明細書および図は、限定的な意味ではなく例示的な意味で考えられるべきであり、全てのそのような改変形態は、本発明の範囲内に含まれるように意図されている。
【0078】
利益、他の利点、および課題の解決策を、特定の実施形態に関して上に記載した。しかしながら、その利益、利点、問題の解決策、および任意の利益、利点、または解決策を生じさせ得るもしくはより顕著にし得る任意の特徴は、任意のまたは全ての特許請求の範囲の決定的に重要な、必要なまたは本質的な特徴として解釈されるべきではない。
明確にするために別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されている特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されることもあり得ることが理解されるべきである。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈で記載されている種々の特徴は、別個にまたは任意の部分組み合わせで提供されることもあり得る。さらに、範囲で述べられる値への言及は、その範囲内のどの値も全て包含する。
【0079】
以上、本発明を要約すると下記のとおりである。
1.少なくとも8個の炭素のアルキル基を少なくとも1個含む相間移動触媒の存在下において塩素化反応物をアルカリ金属水酸化物の水溶液と反応させることと、ヘキサフルオロ−2−ブチンを回収することとを含むヘキサフルオロ−2−ブチンを製造するための方法であって、ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタンの変換が、1時間当たり少なくとも50%である、方法。
2.前記相間移動触媒が、第4級アルキルアンモニウム塩であり、前記相間移動触媒が、8個以上の炭素のアルキル基を少なくとも3個有する、上記1に記載の方法。
3.前記第4級アルキルアンモニウム塩が、塩化メチルトリオクチルアンモニウムである、上記1に記載の方法。
4.塩基性水溶液が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される塩基から作製される、上記1に記載の方法。
5.前記塩素化反応物が、クロロフルオロブタンまたはクロロフルオロブテンである、上
記1に記載の方法。
6.前記塩素化反応物が、HCFC−336mdd(2,3−ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタン)、HCFC−336mfa(2,2−ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタン)またはHCFO−1326mxz(E−またはZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテン)である、上記1に記載の方法。
7.4個〜10個の炭素原子のアルキル基を有する第4級アルキルアンモニウム塩又はそれらの混合物および非イオン性界面活性剤の存在下において塩素化反応物をアルカリ金属水酸化物の水溶液と反応させることと、ヘキサフルオロ−2−ブチンを回収することとを含むヘキサフルオロ−2−ブチンを製造するための方法であって、ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタンからヘキサフルオロ−2−ブチンへの変換が、1時間当たり少なくとも20%である、方法。
8.前記非イオン性界面活性剤が、エトキシ化ノニルフェノールおよびエトキシ化C12〜C15脂肪族アルコールからなる群から選択される、上記7に記載の方法。
9.前記第4級アルキルアンモニウム塩が、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、塩化テトラオクチルアンモニウム、臭化テトラオクチルアンモニウム、硫酸水素テトラオクチルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、臭化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化テトラデシルアンモニウム、臭化テトラデシルアンモニウム、および塩化テトラドデシルアンモニウムのうちの少なくとも1つである、上記7または8に記載の方法。
10.前記第4級アルキルアンモニウム塩が、テトラブチルアンモニウム塩である、上記7または8に記載の方法。
11.前記第4級アルキルアンモニウム塩が、トリオクチルメチルアンモニウム塩である、上記7または8に記載の方法。
12.前記塩基性水溶液が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される塩基から作製される、上記7または8に記載の方法。
13.前記第4級アルキアンモニウム塩が、テトラブチルアンモニウム塩であり、前記非イオン性界面活性剤が、エトキシ化ノニルフェノールである、上記7または8に記載の方法。
14.前記塩素化反応物が、クロロルフルオロブタンまたはクロロフルオロブテンである、上記7または8に記載の方法。
15.前記塩素化反応物が、HCFC−336mdd(2,3−ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタン)、HCFC−336mfa(2,2−ジクロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタン)またはHCFO−1326mxz(E−またはZ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロ−2−ブテン)である、上記7または8に記載の方法。
16.前記塩素化反応物を反応させる工程が、アルカリ金属ハロゲン化物の存在下で行われる、上記1または7または8に記載の方法。