特許第6272893号(P6272893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許6272893-弁装置 図000002
  • 特許6272893-弁装置 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6272893
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/46 20060101AFI20180122BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   F02M59/46 N
   F02M59/44 N
   F02M59/46 B
   F02M59/46 P
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-543357(P2015-543357)
(86)(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公表番号】特表2015-536411(P2015-536411A)
(43)【公表日】2015年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2013070768
(87)【国際公開番号】WO2014079624
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年5月26日
(31)【優先権主張番号】102012221543.3
(32)【優先日】2012年11月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クラインドル
(72)【発明者】
【氏名】タミム ラティフ
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−202709(JP,A)
【文献】 特開2005−221043(JP,A)
【文献】 特開2007−132251(JP,A)
【文献】 特開2003−184698(JP,A)
【文献】 特表2009−520908(JP,A)
【文献】 実開平02−120560(JP,U)
【文献】 特開平07−293720(JP,A)
【文献】 特開平09−236088(JP,A)
【文献】 実開昭49−106928(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
F16K 15/00−15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁装置(22)であって、
ハウジング(30)と、流れ通路(38)と、該流れ通路(38)に配置された弁体(36)と、を備え、該弁体(36)は、前記弁装置(22)の閉鎖時に、シール部分(34)でハウジング側のシール座(32)に接触しており、
前記弁体(36)は、ハウジング側のガイド面(86)によって移動軸線(50)に沿ってガイドされていて、前記弁装置(22)の最大の開放時に、当接面(80)でハウジング側の移動制限面(78)に接触している弁装置において、
前記ガイド面(86)は、ガイドエレメント(58)に設けられており、
前記シール座(32)および前記移動制限面(78)は、前記ガイドエレメント(58)と別個に設けられており、
前記シール座(32)は、前記ハウジング(30)と別個のシール座エレメント(60)に設けられており、
前記移動制限面(78)は、前記ハウジング(30)と別個の移動制限エレメント(56)に設けられており、
前記弁体(36)は、円筒形の外面(84)と、前記移動軸線(50)と垂直な底部とを有し、前記外面(84)が前記ガイド面(86)によってガイドされていて、前記底部に前記シール部分(34)が設けられており、
前記弁体(36)は、深絞り加工部材の形態で製造されていることを特徴とする、弁装置(22)。
【請求項2】
前記ガイドエレメント(58)は、打ち抜き加工部材の形態で製造されている、請求項1記載の弁装置(22)。
【請求項3】
前記ガイドエレメント(58)と前記ハウジング(30)とは、摩擦接続および/または形状接続によって互いに結合されている、請求項1または2記載の弁装置(22)。
【請求項4】
前記シール座エレメント(60)と前記ハウジング(30)とは、摩擦接続および/または形状接続によって互いに結合されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の弁装置(22)。
【請求項5】
前記移動制限エレメント(56)は、打ち抜き加工部材の形態で製造されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の弁装置(22)。
【請求項6】
前記移動制限エレメント(56)と前記ハウジング(30)とは、摩擦接続および/または形状接続によって互いに結合されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の弁装置(22)。
【請求項7】
内燃機関の燃料システム(10)の高圧ポンプ(24)であって、
前記高圧ポンプ(24)の圧送室(23)から燃料を流出させる流出弁を有する高圧ポンプにおいて、
前記流出弁は、請求項1からまでのいずれか1項記載の弁装置(22)を有するかまたは弁装置(22)として形成されていることを特徴とする、高圧ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の弁装置ならびに請求項10の上位概念部に記載の高圧ポンプに関する。
【0002】
弁装置、たとえば内燃機関の燃料システムの高圧ポンプの流出弁は、市場から知られている。しばしば、このような弁装置は弁体を有している。この弁体はシール部分でハウジング側のシール座に接触し、これによって、弁装置を閉鎖することができる。
【0003】
欧州特許出願公開第2388470号明細書および欧州特許出願公開第2302195号明細書に基づき、弁体を移動軸線に沿ってガイドするガイド面と、弁体の開放ストロークを制限する移動制限面とを有する弁装置が公知である。
【0004】
本発明の根底にある課題は、可能な限り経済的に製造可能な弁装置を提供することである。
【0005】
発明の開示
本発明の根底にある問題は、請求項1に記載の弁装置ならびに請求項10に記載の高圧ポンプによって解決される。有利な改良態様は、従属請求項に記載されている。さらに、本発明にとって重要な多数の特徴が、以下の説明および図面に認められる。これらの特徴は、単独でも、種々異なる組合せでも、それをさらに明示的に説明することなしに、本発明にとって重要となり得る。
【0006】
本発明に係る弁装置では、弁体をガイドするためだけに働くガイドエレメントが設けられている。シール座と移動制限面とは、ガイドエレメントと別個に設けられているので、ガイドエレメントはその機能に関して、弁体をガイドするためだけに設計されればよい。これによって、ガイドエレメントおよび弁装置の、特に経済的で誤差の影響を受けにくい製造が可能となる。
【0007】
シール座と移動制限面とが、ガイドエレメントと別個に設けられていることによって、同形のガイドエレメントを、種々様々に形成されたシール座および/または移動制限面を有する弁装置に使用することができる。したがって、当該ガイドエレメントは、大量生産に特に良好に適している。それと同時に、たとえば規定されたシール座ジオメトリの選択および/またはストローク、すなわち、移動軸線に沿った弁体の移動距離の調整を可能にする移動制限面の位置の選択によって、弁装置の特性に廉価に影響を与えることができる。
【0008】
ガイドエレメントが別個に設けられていることによって、特に組み付けやすい解決手段が提供される。また、さらなる機能を排除することによって、誤差の影響の低減が可能となる。全体として、特に経済的に製造可能な弁装置を提供することができる。
【0009】
本発明に係る弁装置は、特に逆止弁である。
【0010】
本発明の1つの態様では、ガイドエレメントが、打ち抜き加工部材の形態で製造されている。これによって、ガイドエレメントの、正確に再現可能であると同時に経済的な製造が可能となる。
【0011】
弁装置の製造可能性のさらなる改善のために、ガイドエレメントとハウジングとが、特に材料接続的な結合は省略して、摩擦接続および/または形状接続によって互いに結合されていることが提案される。こうして、ガイドエレメントとハウジングとを、互いに容易に接合、たとえば互いに圧接することができる。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、弁体が深絞り加工部材の形態で製造されていることが提案されている。これによって、シール部分の経済的な製作が可能となり、特に内部に弁ばねの一部を収容することができるほぼポット形の弁体部分を提供することが可能となる。
【0013】
シール座は、ハウジングと一体に形成されていてよい。しかし、シール座が、ハウジングと別個のシール座エレメントに設けられていると好適である。これによって、同形のハウジングを使用して種々異なるシール座エレメントを用いることが可能となり、これらのシール座エレメントを所望のシールジオメトリに関して最適化することが可能となる。
【0014】
シール座エレメントの組付けを容易にするために、シール座エレメントとハウジングとが、特に材料接続的な結合は省略して、摩擦接続および/または形状接続によって互いに結合されていることが提案されている。たとえば、シール座エレメントとハウジングとは、プレス嵌めによって互いに結合されている。
【0015】
移動制限面は、ハウジングと一体に形成されていてよい。しかし、移動制限面が、ハウジングと別個の移動制限エレメントに設けられていると好適である。これによって、弁装置の組付けが容易になる。さらに、同形のハウジングと、それぞれ異なる寸法を有する移動制限エレメントとの使用の際には、移動制限面の位置ひいては弁体の最大の移動距離を容易に調整することができる。
【0016】
1つの好適な態様によれば、移動制限エレメントが打ち抜き加工部材の形態で製造されており、これによって、移動制限エレメントの、正確に再現可能なジオメトリを廉価に提供することができる。
【0017】
移動制限エレメントとハウジングとが、特に材料接続的な結合は省略して、摩擦接続および/または形状接続によって互いに結合されていると好適である。これによって、移動制限エレメントとハウジングとの単純な接合工程による組付けの簡略化が可能となる。
【0018】
以下に、本発明の実施の形態の一例を図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】高圧ポンプと弁装置とを備えた燃料システムの簡単な概略図である。
図2図1に示した弁装置の実施の形態の簡単な断面図である。
【0020】
図1には、内燃機関の燃料システム10が極めて簡単な図で示してある。燃料タンク12から、燃料がプレフィードポンプ16によって、吸込み管路14と、低圧管路18と、流入弁20とを介して、高圧ポンプ24の圧送室23に供給される。
【0021】
流入弁20は、たとえば流量制御弁であり、電磁石によって操作可能である。電磁石に代えて、たとえばピエゾアクチュエータまたはハイドロリックアクチュエータが使用されてもよい。
【0022】
高圧ポンプ24は流出弁を有している。この流出弁は、以下で詳細に説明する弁装置22の形態で形成されている。この弁装置22は高圧管路26を介して高圧蓄圧器28に連通している。
【0023】
燃料システム10の運転時には、プレフィードポンプ16が燃料を燃料タンク12から低圧管路18内に圧送する。その際、流入弁20が、高圧ポンプ24の圧送室23に供給される燃料量を決定する。
【0024】
弁装置22の機能は、高圧ポンプ24の圧送段階で開放して、圧送室23と高圧蓄圧器28との間に流体接続路を形成し、これによって、高圧蓄圧器28を、加圧された流体で満たすことができるようにすることにある。高圧ポンプ24の吸込み段階では、高圧蓄圧器28から圧送室23内への流体の望ましくない逆流を阻止するために、弁装置22が閉鎖されている。
【0025】
図2には、図1に示した弁装置22の実施の形態が簡単な断面図で示してある。図面に示した弁装置22のエレメントは、主として、長手方向軸線29を中心として回転対称的に形成されていて、ハウジング30を含んでいる。このハウジング30は、弁装置22の閉鎖時に弁体36のシール部分34が接触するシール座32を備えている。
【0026】
弁装置22は、シール座32の上流側に、長手方向軸線29に対して平行に延びる流れ通路38を有している。
【0027】
シール座32とシール部分34とは、面状にかつ互いに平行に形成されていて、共にシール領域42を形成している。
【0028】
選択的に、このシール領域42の上流側で流れ通路38の下流側に、ハウジング30に設けられた段状の凹部によって、泡壊室44が形成されている。この泡壊室44は、シール領域42からもしくはシール領域42の平面から直角に延びる衝突壁46と、制限壁48とによって画定されている。泡壊室44は、シール座32とシール部分34とをキャビテーション壊食に対して防護するために用いられる。
【0029】
制限壁48は移動軸線50に対して垂直に延びており、この移動軸線50に沿って弁体36が、弁装置22の開閉のために移動可能となる。移動軸線50と長手方向軸線29とは、好ましくは互いに平行であり、特に好ましくは互いに合致している。
【0030】
流体、特に燃料は、まず、流れ通路38の内部で長手方向軸線29に対してほぼ平行に流れ、その後、弁体36の手前で半径方向外向きに向きが変えられる。この流れの向きの変更は、流れ通路38を終端側において画定する縁部52の下流側で比較的早期にかつ少ない損失で、泡壊室44のハイドロリック作用によって行われる。
【0031】
さらに、弁装置22は、弁体36に閉鎖力を加える弁ばね54を有している。この弁ばね54は、移動制限エレメント56に支持されている。この移動制限エレメント56は、ハウジング30によって形成されていてよい。しかし、移動制限エレメント56が、ハウジング30と別個に設けられていると好適である。
【0032】
弁体36を移動軸線50に沿ってガイドするために、ハウジング30と別個に設けられたガイドエレメント58が設けられている。
【0033】
シール座32は、ハウジング30によって形成されていてよい。しかし、シール座32が、ハウジング30と別個に設けられたシール座エレメント60によって形成されていると好適である。
【0034】
弁装置22の開放された状態では、流体、特に燃料が、シール領域42において流体流れ方向に流れる。シール座32の、衝突壁46と反対側では、シール座32に流れ案内面64が続いている。
【0035】
衝突壁46と、シール座32と、流れ案内面64とは、共にハウジング側の突出部66を形成している。
【0036】
移動制限エレメント56は、打ち抜き加工部材の形態で製造されていて、長手方向軸線29に沿って延びる中心の開口68を有している。この開口68は、シール座エレメント60の流れ通路38と同じ直径を有していると好適である。
【0037】
移動制限エレメント56は、ばね支持面70を有しており、このばね支持面70は、ばねガイド面72と共にばね取付け領域74を画定している。
【0038】
弁ばね54は、シール領域42と反対側のばね端部76で、ばね支持面70に支持されている。図面において、ばね端部76と、ばね支持面70とは、見やすさを改善するために、互いに間隔を置いて示してある。移動制限エレメント56は、弁体36に向けられた移動制限面78を有しており、この移動制限面78は、好ましくは、弁体36の移動軸線50に対して垂直な平面内で延びている。
【0039】
弁体36は、ポット形の深絞り加工部材の形態で形成されていて、弁体36のシール部分34と反対側に、特に環状の当接面80を有している。この当接面80は、弁体36の最大開放位置では移動制限エレメント56の移動制限面78に接触している。
【0040】
弁体36は、弁ばね54を収容するためのほぼ円筒形の内室82を有している。さらに、弁体36は、円筒形の外面84を有しており、この円筒形の外面84は、ガイドエレメント58の中空円筒形のガイド面86よりも内側に、遊びを伴って収容されている。
【0041】
ガイドエレメント58は、半径方向外側に向けられた円筒形の外面88を有しており、この円筒形の外面88は、プレス嵌めによって、ハウジング30の中空円筒形のハウジング開口90内に収容されている。
【0042】
このハウジング開口90は、シール座エレメント60の高さにおける領域92で狭められている。この領域92は、長手方向軸線29に対して垂直に延びる当接面94に続いており、この当接面94に、シール座エレメント60が一方の端面96で接触している。さらに、シール座エレメント60は円筒形の外面98を有しており、この円筒形の外面98は、ハウジング30の領域92でこのハウジング30に圧接されている。
【0043】
「シールする」、「ガイドする」、「移動距離を制限する」という機能は、シール座エレメント60、ガイドエレメント58および移動制限エレメント56の形態の互いに別個の構成部材に設けられている。特にガイドエレメント58は、ガイド機能のみを有していて、シール機能および移動距離制限機能は有していない。シール座エレメント60は、シール機能のみを有していて、ガイド機能および移動距離制限機能は有していない。移動制限エレメント56は、開放方向への弁体36の移動距離を制限する機能のみを有していて、ガイド機能およびシール機能は有していない。
図1
図2