特許第6272895号(P6272895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6272895
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】デバイスおよび装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20180122BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20180122BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20180122BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20180122BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20180122BHJP
【FI】
   C12M1/34 Z
   G01N37/00 101
   G01N35/02 B
   G01N35/10 A
   C12Q1/68 A
【請求項の数】19
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-544541(P2015-544541)
(86)(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公表番号】特表2016-506238(P2016-506238A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】GB2013053192
(87)【国際公開番号】WO2014087149
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】1221726.1
(32)【優先日】2012年12月3日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515148952
【氏名又は名称】ザ セクレタリー オブ ステイト フォー エンバイロンメント,フード アンド ルーラル アフェアーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】グラハム ガセル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ウェイカリー
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/051735(WO,A1)
【文献】 特表2006−520190(JP,A)
【文献】 米国特許第06431476(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/34
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料における標的核酸を検出するアッセイを実施するためのデバイスであって、内部に下記(a)〜(h)が形成されている本体を備えるデバイス:
a)試料入口ウェルまたは試料入口ウェルと係合するための手段を備える試料入口ウェル位置、ここで当該ウェルは第1容量を有し、第1チャンバおよび第2チャンバを備える
b)増幅ウェルまたは増幅ウェルと係合するための手段を備える増幅ウェル位置、ここで当該ウェルは第1容量よりも小さいまたは同じ第2容量を有し、そして当該ウェル内で標的核酸の核酸増幅反応が実施可能である;
c)前記試料入口ウェルの第1チャンバから延伸し試料入口ウェルと増幅ウェルとを連結する第1チャネル;
d)希釈剤ウェルまたは希釈剤ウェルと係合するための手段を備える希釈剤ウェル位置、ここで当該ウェルは密閉されており、第2容量より大きい第3容量を有し、そして非密閉状態に開放可能である;
e)非密閉状態にあるときの希釈剤ウェルと増幅ウェルとを連結する第2チャネル;
f)増幅ウェルから延伸する第3チャネル;
g)第3チャネルから試料を受けるよう配置され、内部で標的核酸を検出するラテラルフローデバイス;および
h)試料入口ウェルを閉鎖する蓋、ここで、当該蓋は、前記試料入口ウェルの第1チャンバと嵌合する寸法を有するように形成された突出遠位部を備え、使用する際に蓋を閉鎖位置にすると、試料入口ウェルの第1チャンバ内に含まれる所定の容量の液体が、第1チャネルを介し増幅ウェルに移動するようになっている。
【請求項2】
希釈剤ウェルは、デバイスの他の部分と係合可能な別個の密閉されたウェルとして形成され、デバイスの一部を形成するようになっている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
増幅ウェル位置は、デバイスの本体より、存在する場合増幅ウェル内部へ、延伸する突出を備え、ここで、当該突出は、第1および第2チャネルの出口開口部ならびに第3チャネルの入口開口部を備える、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
1チャネル出口開口部および第3チャネル入口開口部は、デバイス本体の前記突出の遠位部の領域内に形成される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
2チャネル出口開口部は、デバイス本体の前記突出の近位部の領域内に形成されている、請求項に記載のデバイス。
【請求項6】
増幅ウェルは、増幅ウェル位置においてデバイスの他の部分と係合可能な別個のウェルとして形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
幅ウェルは、前記突出との摩擦係合によりデバイスの他の部分と係合するような寸法である、請求項に記載のデバイス。
【請求項8】
第1チャンバは第1側壁を備え、第2チャンバは第2側壁を備え、第1側壁と第2側壁は連結壁によって隔てられており、前記蓋の突出部分を試料入口ウェルへ挿入すると、当該突出部分の遠位部の表面が連結壁と密閉接触を形成できるように位置決めされている、請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記密閉接触の形成により、第1チャンバに含まれる液体と第2チャンバに含まれる液体とが隔離される、請求項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記試料入口ウェルの少なくとも一部は、第1内径を有する円筒状の管として形成され、ここで、前記蓋の突出遠位部は第2外径を有する円筒として形成され、第2外径の少なくとも一部は第1内径と実質的に同一である、請求項1〜のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
開放状態にあり閉鎖状態へ移行可能な通気孔を備える請求項1〜10のいずれか1項に記載のデバイスであって、
当該通気孔が開放状態にあると第2チャネルとデバイスの空隙とが流体連通する、デバイス。
【請求項12】
希釈剤ウェルがデバイスの一部を形成および/またはデバイスと係合していると、希釈剤ウェルの液体内容物は希釈剤ウェル内に密閉されているが、希釈剤ウェルは、当該内容物を第2チャネル内に分注するように開放可能である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
釈剤ウェルは変形可能で、希釈剤ウェルが変形状態にあるとき開放され、希釈剤ウェルの液体内容物が希釈剤ウェルから第2チャネル内へ流入するように構成されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
増幅ウェルには、核酸増幅反応を実施するのに適する少なくとも1つの試薬が予め充填されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
第3チャネルを介して増幅ウェルに接続された混合ウェルを更に備える、請求項1〜14のいずれか1項に記載のデバイスであって、
当該第3チャネルは、増幅ウェルの内容物が混合ウェルに送達されるように配置され、
ラテラルフローデバイスは、混合ウェルからの試料を受けとり、内部で標的核酸を検出するように配置されている、デバイス。
【請求項16】
記混合ウェルは非直線状または蛇行形状である、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載のデバイスおよび密閉された希釈剤ウェルを備えるキットであって、
当該デバイスは、当該希釈剤ウェルと係合するための手段を備える希釈剤ウェル位置を備える、キット。
【請求項18】
試料における核酸を検出するアッセイを実施するためのシステムであって、下記デバイス(1)及び下記装置(2)の組み合わせを含むシステム:
(1)増幅ウェルと希釈剤ウェルを備える請求項1〜16のいずれか1項に記載のデバイス、並びに、
(2)a)前記デバイスを受けるための手段;および
b)前記増幅ウェルを制御可能に加熱して化学的または生化学的反応が当該ウェル内で起こるように配置された加熱手段;
を備える装置。
【請求項19】
試料における核酸を検出するアッセイを実施するための方法であって、
増幅ウェルと希釈剤ウェルを備える請求項1〜16のいずれか1項に記載のデバイスに、試料を加えること、
a)前記デバイスを受けるための手段;および
b)前記増幅ウェルを制御可能に加熱して化学的または生化学的反応が当該ウェル内で起こるように配置された加熱手段を備える装置に、前記デバイスを設置すること、
当該装置を操作して内部で核酸増幅反応および検出を行うこと、並びに、
ラテラルフローデバイスからの結果を読み取ること、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的または生化学的反応の実施およびその産物の検出、例えば、生体試料等の試料における核酸の検出に使用するための装置およびシステム、ならびにかかる装置およびシステム内で使用するためのデバイスまたはそれらの組み合わせ、特に使い捨てユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特に生体試料等の試料における核酸の検出は、研究、診断(特に、疾患および遺伝的条件に関する)、微生物の科学的捜査および検出(例えば、衛生、環境モニタリング、または細菌などの潜在的に有害な恐れのある微生物を迅速に検出することが必要な脅威削減のため)の分野においてよく知られている。
【0003】
ラテラルフローデバイス(LFD)は、ホルモン、抗原、抗体等を含むタンパク質などの標的解析対象を検出するための診断の分野において長い間使用されている。これらのデバイスでは、解析対象を含むまたはその疑いのある液体試料が膜に沿って流れ、当該膜において、標識、標識されたおよび/または固定された結合相手と順番に出会うことにより、試料中の解析対象の存在または非存在に応じて、検出可能な可視信号が膜上に展開される。
【0004】
一般的に、試料をLFDに沿って効果的に流動させるのに必要な液体の容量が非常に重要である。LFDの基質として使用される膜は、多孔性であり、一般にかなりの量の液体を吸収する。また、液体の流れは、標識した部分が確実にデバイスの検出ゾーンを通って運搬されるのに十分でなくてはならない。
【0005】
また、LFDは、RNAまたはDNAなどの核酸を含む解析対象を検出するために使用されることもある。この場合、解析対象の結合相手として、特定の標的配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、あるいは、例えば、予備増幅反応中にRNAまたはDNAに組み込まれる結合剤の結合相手といった結合相手が挙げられる。検出ゾーンにおいて捕捉しやすくするように、例えばビオチンなどの結合剤を標的に組み込むために核酸増幅反応を用いてもよい。ビオチンが標的核酸に組み込まれる場合、LFDの検出ゾーン内のストレプトアビジンまたは抗ビオチン抗体が存在すると、捕捉ゾーン内でビオチン標識された標的核酸が捕捉される。
【0006】
標識は、例えば、標的が検出ゾーン内で固定されると可視信号を発生するように標的配列にもハイブリダイズするいずれかの標識プローブを用いて行うことができる。また、標識は、例えば、もとから標識された産物を生成させるために標識プライマーを使用する増幅反応で標識を標的配列に組み込むことによって達成することもできる。好適な標識は、当該分野で周知である。例えば、フルオレセインまたはフルオレセイン誘導体を含む蛍光標識、またはシアニン色素、あるいはジゴキシゲニンのように酵素的に検出可能な標識といった化学的または生化学的標識が挙げられる。代替的または付加的に、標識は、可視信号を直接発生させる金、銀、及びラテックスビーズまたは粒子等の粒子状の標識を含んでもよい。これらは、検出ゾーン内の標的核酸と相互作用させるように配置してもよい。これを達成するために、粒子自体を標識し、例えば、標的核酸と相互作用する部分(例えば、標的核酸にハイブリダイズする他の核酸)に結合させる、あるいは粒子自体を、標的核酸配列に組み込まれたビオチンなどの結合相手と相互作用するストレプトアビジンなどの結合剤に結合してもよい。
【0007】
実際は、生体試料における標的核酸の濃度は低く、確実にLFDに可視信号を直接発生できるレベルを確実に下回る場合がほとんどである。したがって、核酸の増幅が予備段階として必要なのが一般的である。
【0008】
核酸増幅技術は、この分野における強力なツールである。多くの技術があり、一定の温度で実施するものもあるし、ポリメラーゼ連鎖反応のような熱サイクルが必要なものもあり、試料中に非常に少量しかない標的核酸も検出可能なレベルまで増幅可能である。
【0009】
しかし、これらの技術の感度が非常に良いということは、コンタミネーションやクロスコンタミネーションの影響を非常に受けやすいことを意味する。これらの方法では、非常に少量の夾雑核酸であっても増幅され、偽陽性を引き起こす可能性がある。
【0010】
この問題に対処するために、増幅プロセスからできる限り隔離された環境で確実に試料を処理することに主な焦点を当てて多くの試みがなされている。従って、反応容器を開ける必要がない均質な反応で増幅反応を実施し増幅産物を検出するための方法が開発されてきた。
【0011】
例えば、WO2004/065010は、DNAを単離および増幅し、ラテラルフローストリップ上でDNAを検出するための微小流体システムに関する。溶解した細菌細胞からのDNAを固体基板上に捕捉し、基板を通るように増幅試薬がポンピングされる。増幅されたDNAは、その後、ラテラルフローストリップ上にポンピングされる。試薬のポンピングが必要なので、システムは比較的複雑な装置を必要とする。ユーザは、凝固物の処理に必要な様々な液体をピペッティングする必要があるので、大きな汚染リスクがある。
【0012】
また、US2011/0039261は、DNAを増幅し、ラテラルフロー検査ストリップ上で増幅産物の検出をする核酸分析用の検査システムに関する。上記と同じく、いくつかのポンピング機構により、デバイス内の様々なキャビティ間で試料を送達することが必要である。増幅試料が検査ストリップに渡った後、ラテラルフローデバイスでの検出を容易にするためのランニングバッファをシステムに添加する。
【0013】
比較的未熟なユーザであっても、最小の汚染リスクかつ最大の効率で、厄介な手動操作を必要とせずにシステムを操作できるような簡単な装置を使用して迅速に分析できる一体化されたシステムが必要である。
【0014】
出願人は、分離ユニット内で最小の汚染リスクで核酸分析等の化学的および生化学的な反応を可能にする、使い捨てであってもよいデバイスを開発した。同様のデバイスの態様がWO2011/051735に記載されているが、本明細書はこれらに対し顕著な改善を提供し、本明細書に記載の利点をもたらすものである。
【発明の概要】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、試料における標的核酸を検出するアッセイを実施するためのデバイスであって、内部に下記(i)〜(vii)が形成されている本体を備えるデバイスを提供する:
(i)試料入口ウェルまたは試料入口ウェルと係合するための手段を備える試料入口ウェル位置、ここで当該ウェルは第1容量を有する;
(ii)増幅ウェルまたは増幅ウェルと係合するための手段を備える増幅ウェル位置、ここで当該ウェルは第1容量よりも小さいまたは同じ第2容量を有し、そして当該ウェル内の液相において標的核酸の核酸増幅反応が実施可能である;
(iii)試料入口ウェルと増幅ウェルとを連結する第1チャネル(例えば、ウェルおよび/またはチャネルを介在させることなく直接連結する);
(iv)希釈剤ウェルまたは希釈剤ウェルと係合するための手段を備える希釈剤ウェル位置、ここで当該ウェルは密閉されており、第2容量より大きい第3容量を有し、そして非密閉状態に開放可能である;
(v)非密閉状態にあるときの希釈剤ウェルと増幅ウェルとを連結する第2チャネル;
(vi)増幅ウェルから延伸する第3チャネル;および
(vii)第3チャネルから試料を受けるよう配置され、内部で標的核酸を検出するラテラルフローデバイス。
【0016】
試料入口ウェル、増幅ウェル、および希釈剤ウェルのいずれかまたは全てを、デバイスの一体的な部分として設けてもよい。あるいは、それらのいずれかまたは全てを別個のモジュールとして形成し、必要に応じて、試料入口ウェル位置、増幅ウェル位置、または希釈剤ウェル位置においてデバイスと係合できるようにしてもよい。希釈剤ウェルのみを別個のモジュールとし、他のウェルはデバイスと一体的にするのが最も典型的である。
【0017】
希釈剤ウェルが「密閉されている」とは、ウェルの内部が、デバイスの他の部分と流体連通していないことを示す。ユーザは、使用の際、希釈剤ウェルを非密閉状態に開放することができる。
【0018】
各ウェルの相対容量が異なるので、単純な「オーバーフロー」または差圧機構を利用することで試料がウェル間でチャネルを介し送達できる。これは、流体のデバイス内への流入による圧力の変化により、既にその場に存在する流体が、利用可能なチャネルを通ってデバイス内の別の位置へと移動するという意味である。この過程を本明細書でより詳細に説明する。
【0019】
チャネルは、好適には、デバイス内に囲まれ外部環境から隔離されていてもよい。例えば、チャネルをデバイスの本体の溝として形成し、この溝を覆うように本体表面をフィルムにより密閉する方法で外部環境から隔離してもよい。チャネルは、代替的にまたは追加的に、デバイスの本体または一部を通って延伸し、例えば、デバイスまたはその一部のある表面に形成されたウェルまたは溝と、デバイスまたはその一部の別の表面に形成されたウェルまたは溝とを連結する管として形成してもよい。これらの溝および/または管の配置の任意の組み合わせを使用できる。
【0020】
好ましくは、試料入口ウェルは、試料を加えた後であってアッセイを行うためのデバイスを装置内に位置決めする前に、例えば蓋(これは、キャップまたはプラグの形態であってもよい)によって閉鎖可能である。あるいは、デバイスを装置内に位置決めした後に、閉鎖してもよい。閉鎖は、手動または装置内の閉鎖手段を操作することによって行いうる。試料入口ウェル、増幅ウェル、および希釈剤ウェルはデバイスの本体に係合されており、試料ウェルの蓋が閉じられると、デバイス全体が「閉鎖」または密閉される、すなわち、ウェルおよび/またはチャネルが互いに連通可能であるが、外部環境からは隔離されている。上述のように、希釈剤ウェルを使用する前は、デバイスの他の部分と連通していない。
【0021】
以下でより詳細に概説するように、蓋および試料入口ウェルは互いに係合可能となるように形成されていて、典型的には、蓋をウェルの上および/または内部へ押し込むことにより試料入口ウェルを閉鎖すると、ウェル内の既知で予め計算された容量および/または所定の容量の液体が、第1チャネルに流れ増幅ウェルに入るようになっている。後述するように、希釈剤ウェル位置で希釈剤ウェルがデバイスと密閉係合するときまで、第1チャネルおよび増幅ウェルを占めていた空気が、第2チャネルにより解放されデバイスから逃げることができる。
【0022】
この試料入口ウェルおよび蓋の設計により、ユーザは、試料の容量がより大きいなら、未測定かつおよび/または不正確な容量であっても、試料入口ウェルにまず導入できるという大きな利点が提供される。その後、増幅反応での処理に適する所定の容量分のみが、増幅ウェルに送達される。ここで、当該所定の容量は、蓋およびウェルの相対的な寸法によって比較的正確に決定される。これにより、デバイスに最初に加える試料の容量を正確にする必要がなくなる、つまり、ユーザによって試料ウェルに添加される容量が、増幅ウェルに送達すべき容量と同じかまたはそれ以上である限り、この機構により蓋を閉じると正確な所定容量が確実に送達される。これは、デバイスが比較的非熟な技術者でも使用でき、そして試料容量を注意深く測定する必要なく迅速に操作できるので非常に有利である。
【0023】
特定の実施形態では、試料入口ウェルが、第1断面積を有する第1チャンバおよび第2断面積を有する第2チャンバを備えてもよい。断面積は、ウェルの底部からウェルの開口部へと延伸する試料入口ウェルの縦軸に対し垂直に測定される。いくつかの実施形態では、第2断面積は第1断面積より大きくてもよい。第1チャンバは、第2チャンバよりも容量が小さくてもよい。勿論、第1チャンバは、第1および第2チャンバの合計容量よりも容量が小さい。第1および第2チャンバは、互いに流体連通しており、それぞれが試料入口ウェル一部分を形成する。第1チャンバは、側壁によって形成されていてもよく、例えば、円筒形の管または長方形もしくは正方形の断面を有し、かつウェルの一端(使用の際は、下端部または底部となる)を形成する底壁を有する管の形状に形成されてもよい。また、第2チャンバは、第1チャンバと同じ形状である必要はないが、同様に側壁によって形成されていてもよく、例えば、円筒形の管または長方形もしくは正方形の断面を有する管の形状に形成されてもよい。しかしながら、当業者によって理解されるように、チャンバの正確な幾何学的形状は重要でない。上述および本明細書の他の箇所で概説するように、蓋を閉じる動作によって所定容量の試料が第1チャネルおよび増幅ウェルへ導入できるように形成しなくてはならない。
【0024】
典型的に、デバイスを使用する際、第1チャンバは、第2チャンバよりもデバイス内の下側に位置し(および/または、以下の具体的な説明に記載されるように、デバイス全体内の別の部分に位置してもよい)、そして、第1チャンバの管の縦軸がと第2チャンバの管の縦軸と一致する(すなわち、同一直線上にある)、つまり、デバイスを使用する際、軸が実質的に垂直となるように、第1チャンバの上に直接設置してもよい。第1チャンバの容量は、20〜100μl、または40〜70μl、または約58μl、59μl、60μl、61μl、62μl、63μl、64μl、65μl、または66μl、例えば約63μlであり得る。第2チャンバの断面積は、いくつかの実施形態では、第1チャンバの断面積よりも大きくてよい。
【0025】
第1チャンバの壁の上限は、第1チャンバの内容物と第2チャンバの内容物とを密閉隔離するように蓋と係合可能な連結壁によって、第2チャンバの壁の下限に結合している。連結壁は、例えば、第2チャンバの断面積が第1チャンバの下側断面積に向かって減少するように、階段状または傾斜肩の形態をとり得る(すなわち、円錐の一部を形成する)。あるいは、連結壁は、第1および第2のチャンバのそれぞれを形成する壁の間に、階段状の形状であって、第1および第2チャンバの断面積に平行する連結壁領域にあるウェルの断面積が小さくなるような形状を形成または備えてもよい。ここで、第1および第2チャンバの断面積は同じであっても異なっていてもよい。つまり、連結壁は、第1および第2チャンバの間に首部または狭い領域または通路を形成してもよい。。さらに代替的な実施形態として、連結壁は、第1チャンバと同じ寸法を有していてもよく、以下に説明するように密閉隔離が、蓋の一部と連結壁とを係合することによって達成できるようになっていてもよい。このような状況において、連結壁は、明らかに別個の領域でなく、第1チャンバの壁の上側部分であってもよい。
【0026】
試料入口ウェルと増幅ウェルとを連結する第1チャネルは、第1チャンバの壁から延伸する、すなわち、第1チャネルへのアクセスを可能にする第1チャンバの壁に形成された第1チャネル入口開口部または孔がある。上述のように、理想的には、第1チャンバは側壁および底壁によって形成され、開口部が底壁または側壁の底壁に近い位置に形成されてもよい。つまり、チャネルの開口部が試料入口ウェルの底部に形成されてもよい。いくつかの実施形態では、第1チャンバの底壁は、チャネルの開口部を形成し得る凹状または漏斗形状を有していてもよい。
【0027】
試料入口ウェルの蓋は、試料入口ウェルの第1チャンバと嵌合寸法を有するように形成された突出遠位部を有するように形成されている。「嵌合寸法」とは、試料入口ウェルが蓋により閉鎖されたときに、突出遠位部の材質が第1チャンバの容量を、実質的に、しかし必ずしも完全である必要なく、充填することを意味する。
【0028】
突出遠位部が入る前の第1チャンバの容量と、突出遠位部が完全に入った後に第1チャンバに残る容量の差分が、第1チャネルを介して増幅ウェルに移動する液体の容量である。この容量は、本明細書において試料入口容量と呼ぶが、典型的には、増幅に必要な容量と試料入口ウェルおよび増幅ウェル間の第1チャネルの容量の和である。従って、試料入口容量は、増幅容量より大きい。例えば、増幅容量が約25μl、第1チャネルの容量が約12μlなら、蓋の突出遠位部が入ることにより第1チャンバから移動する試料入口容量が約37μlである。第1チャンバおよび蓋の突出遠位部の適切な相対寸法は、デバイスを設置しある容量の液体試料をデバイスに送達するのが望ましい用途に応じて当業者により設計できる。
【0029】
蓋部分に関する用語「遠位部」および「基部」は、以下に記載されるように、蓋を使用して試料入口ウェル閉鎖するためにユーザが触れることができる蓋の外部領域を基準とる。つまり、本明細書の他の箇所に記載されているように、蓋の基部は、ユーザ(またはユーザによって操作される装置)がウェルを閉鎖するために触れる蓋の部分に最も近く、一方、遠位部は、最も遠く、使用時に試料入口ウェル内に突出する部分である。蓋を閉じると、遠位部が試料入口ウェルの第1チャンバ内に位置し、基部が第2チャンバ内に位置するようになる。
【0030】
突出遠位部の外面は、理想的には第1チャンバの壁の内表面に対し締り嵌めになり得る。以下に説明するように、この締り嵌めは、例えば、周縁密閉リングにより、突出遠位部の全体または一部の周囲にあってもよい。蓋の基部は、試料入口ウェルの第2チャンバと嵌合しない寸法を有するように形成してもよい、つまり、試料入口ウェルが蓋によって閉鎖されているとき、蓋の基部の材質が第2チャンバの容量を満たさないものであってもよい。これにより、蓋が閉じている場合でも、試料の一部が第1チャネル内に押し込まれずウェル内に留まる容量分があるので、試料が試料入口ウェルからあふれ出すまたは飛散することなく試料入口ウェルの蓋を閉鎖できるという利点がもたらされる。また、第2チャンバに連結されかつデバイスの他の部分から隔離された溢流チャンバをさらに設け、蓋の閉鎖により移動した任意の液体を、デバイスの他の部分を汚染するリスクなく溢流チャンバに流すようにしてもよい。
【0031】
使用の際、蓋を2段階のプロセスで閉じてもよい。蓋の突出遠位部を、まず、試料入口ウェルの第2チャンバに挿入して、第2チャンバの壁と第1チャンバの壁の間の連結壁と密閉接触させる。これは、遠位部と連結壁が正確に係合するように蓋の突出遠位部にテーパ状の鼻領域を設けると容易になる。代替的または追加的に、密閉リング(例えば、ゴムまたはエラストマーOリング)を蓋の遠位部の周囲(または蓋が円筒形ではない場合、外壁)に設けて、連結壁と密閉接触するようにしてもよい。蓋の遠位部と連結壁との密閉接触により、第1チャンバ内に位置する試料液体と第2チャンバに位置する試料液体とが隔離される。上記に概説したように、蓋の基部の構造は、遠位部を第2チャンバ内に貫通するように挿入することによる液体の移動が、液体が試料入口ウェルへ流出させず、または液体を(もしあれば)溢流チャンバのみに流出するようなものであり得る。
【0032】
蓋の遠位部は、例えば、密閉リングを介して、連結壁と密閉接触を形成し、閉鎖プロセスの第2段階において、突出遠位部を第1チャンバ内に満たすまたは実質的に満たすように蓋を更に押し下げたとき、第1チャンバ内の液体は第1チャネル入口の開口部(好ましくはウェルの底部に向けて配置されている)を介して試料入口ウェルから流出るようにする。ここで、移動する液体の容量は、試料の増幅容量が第1チャネルを通って増幅ウェルに送達されるのに十分な量である。上で概説したように、移動する液体の容量は、増幅容量と第1チャネルの容量の和に等しい。増幅容量とは、核酸増幅反応を実施するのに適切な試料の容量のことであり、例えば、15〜60μl、20〜50μl、典型的には、約23μl、24μl、25μl、26μl、または約28μl、理想的には約25μlであり得る。
【0033】
例示的だが非限定的な実施形態では、本明細書の他の箇所でより詳細に説明するように、試料入口ウェルは、一般的に、第1内径を有する円筒状の管で形成された第1チャンバおよび第2内径を有する円筒状の管で形成された第2チャンバを有する円筒形であり、これら2つのチャンバは傾斜肩部(すなわち、円錐部)によって接合されている。蓋は、蓋を閉じると第1チャンバ内に締り嵌めを形成するような寸法にされた円筒状の栓(例えば、栓の周囲に形成されたゴムまたはエラストマーOリング)の形態をとる。蓋の栓部分は、試料入口ウェルの第2チャンバの内径よりも大きい直径を有する円形プレートまたはフランジ部分にその近位部が結合されており、さらに、栓は、蓋が完全に閉じられているときは、栓の最遠位部が第1チャンバの端部または底部領域にほぼ到達し(しかし典型的には、端部または底部に接触しない)、かつ、栓と隣接したプレート部分の側面が第2チャンバの上部に接触するような長さである。栓の遠位部の移動の程度は、プレート部分がデバイスの上面、または第2チャンバの外側または口部の周囲の材質に当接することによって制限される。その結果、蓋が閉じられると、試料入口ウェルの口部はプレート部分によって覆われるようになる。蓋が閉じられると、栓部分の材質は、第2チャンバを通り第1チャンバ内へ延伸し、ここで、第1チャンバの容量を実質的に満たすように蓋が閉じられると、第2チャンバ内の栓材質の周囲の空間は、第1チャネル(および増幅チャンバ)に流入しなかった試料を収容できる。
【0034】
しかしながら、当業者は、円筒形以外の他の幾何学的形状を用いても、正確な所定容量の液体を増幅チャンバに送達するのと同じ原理が達成できることを理解するであろう。重要な特徴は、蓋を閉じる動作により、増幅試料入口ウェルの第1チャンバ内の試料の規定容量が第1チャンバから第1チャネル内へ押し出され、増幅チャンバへ向かうように、蓋の遠位部の外形寸法が試料入口ウェルの第1チャンバの内部寸法に対し嵌合寸法を有することで、少なくとも部分的な締り嵌めを達成するすることである。
【0035】
前述のように、デバイスは、希釈剤を収容するのに適し、第2チャネルを介し増幅ウェルに接続する希釈剤ウェルも備え、ここで第2チャネルは、希釈ウェルからの希釈剤が増幅ウェルに送達できるように配置されている。希釈剤ウェルは、好適には、希釈剤ウェル位置に予め位置決めされている、または、位置決め可能であってもよく、ここで、当該ウェルおよび位置は当初は非密閉関係にある。つまり、希釈剤ウェルは、希釈剤ウェル位置においてデバイスと非密閉係合が可能で、例えば、試料入口ウェルの蓋を閉じると第2チャネルを介して空気がデバイスの外部に逃げることができるようになっている。希釈剤ウェル位置は、希釈剤ウェルから分注された希釈剤とのアクセスを可能にする第2チャネルの入口開口部を備える、すなわち、希釈剤は第2チャネル内へ流れる。典型的には、使用の際に、希釈剤ウェル位置に希釈剤ウェルを配置する結果として、希釈剤ウェルは第2チャネル入口開口部の上に配置される。希釈剤が確実に第2チャネルに流れ込み、他の場所に逃げられないようにするために、希釈剤ウェルシールを、希釈剤ウェルと希釈ウェル位置との合わせ面の間に配置する。シールは、合わせ面の一方または両方に配置したガスケット、ワッシャー、Oリング、または他の柔軟な材料によって形成されてもよい。好ましくは、シールは、希釈ウェルが希釈剤ウェル位置の所定位置にあるとき、第2のチャネル入口開口部を取り囲む輪またはリングの形態である。
【0036】
希釈剤ウェル位置は、希釈剤ウェル係合手段を備え、希釈剤ウェルが希釈ウェル位置の所定位置に挟持または確実に配置できるようにしてもよい。これにより、ウェルが、デバイスの他の部分の所定位置に保持されるが、非密閉関係になることが可能になり、上記のように空気が逃げることができるようになる。この構成では、希釈剤ウェル位置に希釈剤ウェルを係合しても、希釈ウェルシールを圧縮せず密閉を形成しない。これにより、前述したように、第2チャネルは、試料を導入してからも大気へ開放状態のままにできる。例えば、ガスケット、ワッシャー、Oリング、または他の柔軟な材料によって形成された希釈剤ウェルシールを圧縮することにより、希釈ウェルを移動させて希釈剤ウェルシールが密閉できるようにし、これにより希釈剤ウェルが希釈剤ウェル位置と密閉係合するようにしてもよい。この圧縮は、デバイスを受けるように構成された装置内にデバイスを挿入することによって達成できる。
【0037】
さらに以下に概説するように、増幅ウェルは、希釈剤ウェルよりも容量が小さいので、第2チャネルによって希釈剤ウェルと増幅ウェルとを連結することにより、増幅ウェルの内容物を第3チャネルを介してLFDへ「流す」ことができる。試料入口ウェルの蓋を閉じることによって設けられる密閉の結果、閉鎖状態で通気されないので、液体は、第1チャネルを介して増幅ウェルから出ることができない。このシステムは、少量の液体で増幅反応が実施できるので、増幅反応に好適あるいは最適であることを意味する。希釈剤を添加することにより、増幅産物をその後希釈して十分に混合し、ラテラルフローデバイスに到着した時点で、ラテラルフローデバイスを自由に流れることができるようにしてもよい。十分に希釈するには、例えば、ラテラルフローデバイスの入口において測定した場合、少なくとも増幅容量:希釈剤容量の比が約1:4であることが必要な場合もあるが、増幅チャンバに向かって分注される希釈剤の初期量がもっと多いことが必要な場合もある。これは、デバイス内で使用する容量が小さいと、流体がチャネル内で混合せず、チャネルを通って順に移動し大容量のウェル内で混合されにくい傾向があるからである。例えば、増幅容量が約25μlの場合、約125μlの希釈剤のうち超過分の容量は、第2チャネルを通って増幅ウェルに送達される。この容量が第2チャネルを満たし、そして約100μlの希釈剤が第3チャネルに送達され、この分の液体が増幅ウェルからその先へ押しやられ第3チャネルを通ってラテラルフローデバイス(および、存在する場合、下記に記載するように、混合ウェル)に向かうことになる。これにより、ラテラルフローデバイスにおいて、1:4、すなわち、25μlの増幅容量と100μlの希釈剤で合計125μlの希釈度が達成される。25μlの希釈剤が、増幅ウェル内に取り残される。
【0038】
希釈剤ウェルは、典型的には、予め充填された希釈剤を含み、使用時に希釈剤が必要な場合にのみ開放される密閉容器として設けられる。したがって、希釈剤ウェルは、デバイスが開封/開放されるまでデバイスの他のいかなる部分とも流体連通していない。ウェルは、ウェルの口部を覆って形成された蓋、キャップ、プラグ、またはシール(例えば、膜)を用いて密閉できる。したがって、例えば、希釈剤は、希釈剤ウェルを形成する密閉された柔軟性のあるパウチ、ブリスターパック、またはアンプル内に含まれていてもよく、これらは、デバイス内に収容されていても、希釈剤ウェル位置で接触するように、または係合するように設けられていてもよい。典型的には、希釈剤ウェル内部に設けられたピンやカッターといった穿孔手段等の、パウチまたはアンプルを開口するための手段がある。穿孔手段は、希釈ウェルの一部を構成するのではなく、デバイスの本体の一部として形成されてもよい。いずれの場合においても、穿孔手段は、デバイスの操作過程において、圧力または力が容器または穿孔手段にかけられた場合のみ希釈剤ウェルが穿孔または開口されるように(すなわち、第2チャネルと流体接続するように)に配置されている。例えば、ウェルの口部を覆うように形成され、使用時に、外表面がデバイスの希釈剤ウェル位置に接触して配置されているフィルムまたは蓋で密閉された変形可能なトレイまたは容器として希釈剤ウェルが形成されていてもよい。希釈剤が必要な場合(増幅反応の完了後)、希釈剤容器の本体がフィルムの方向に押され、容器の本体内に形成された穿孔手段が必要な時にフィルムに穿孔接触し、これにより液体が第2チャネル入口開口部に流入できるようになっている。その後のみ、希釈剤ウェルがデバイスの他の部分と流体連通する。重要なのは、密閉されているが希釈剤が必要な場合にのみ開放される希釈剤ウェルのこのような使用により、使用前に液体希釈剤が時期尚早にラテラルフローデバイスの膜に接触するのを防ぎ、デバイスの劣化を引き起こし正常に動作なしくなって(そのような場合)廃棄しなくてはならないような事態を防ぐことができる。
【0039】
デバイスは、さらに以下に説明するように、装置と係合させるためのものである場合、希釈剤ウェルを押下する動作は、この装置によって自動的に簡単に実施できる。希釈剤が、ある時間、例えば、数秒程度の時間にわたって、デバイス内に流入するように押圧を制御してもよい。これにより、上記の増幅容量:希釈剤容量の比に応じて、デバイスに送達される希釈剤の容量が制御できるという利点を有し得る。希釈剤の容量は、使用前に希釈剤ウェルに含まれる希釈剤の容量よりも少なくなるのが一般的である。デバイスに送達される希釈剤の容量は、好ましくは、希釈剤の容量と第2チャネルの容量の和になる。例えば、前述のように、増幅容量が25μlの場合、希釈剤の容量は100μlであり得る。しかし、ラテラルフローデバイスの入口の時点で(すなわち、接触するときに)必要な希釈度を達成するために、デバイスに送達する希釈剤の量は125μlであり得る。一実施形態では、液体が吸引されデバイスを通って希釈剤ウェルに戻るのを避けるために、ユーザまたは装置は、少なくとも一定の期間、希釈剤ウェルを圧縮された状態に維持してもよい。代替的または追加的に、ウェルの圧縮は不可逆的であってもよい。
【0040】
前述のように、デバイスは、トンネル状ではなく溝として形成された場合、デバイス上またはデバイス内の表面の少なくとも一部を覆うように形成された1つまたは複数の密閉フィルム層を備え、チャネルを覆うようにしてもよい。密閉フィルム層は、LFDの表面とデバイスの外側との間にあってもよい。
【0041】
希釈剤ウェル位置は、閉鎖可能な通気孔を備えてもよい。これは、第2チャネルと流体連通する。通気孔は、第2チャネルを形成する材質内の、例えば、第2チャネル入口開口部の位置またはその近くの孔として形成されてもよい。以下でより詳細に説明するように、通気孔は、全体としてデバイスの外側に開口しておらず、デバイスの本体内部および/またはデバイスの本体とその表面を覆う1つまたは複数のフィルム層の間に位置するデバイスの空隙に開口している。用語「空隙」は、この文脈において、単にデバイスの本体内部および/または1つまたは複数のフィルム層とデバイスの本体の表面との間に位置する十分な空間のことで、希釈剤ウェルを押し込んでデバイスと密閉係合させることにより、希釈剤ウェルがデバイス内で非密閉から密閉係合状態に移る際に移動する少量の空気を含む空間のことである。例えば、空気は、希釈剤ウェルと希釈剤ウェル位置との合わせ面の間に位置する希釈剤ウェルシール内部または下部に見られる。
【0042】
デバイスを使用する前に、通気孔は、開放状態になり、上述のように、希釈剤ウェルが希釈剤ウェル位置で圧縮され、希釈剤ウェルがデバイスの他の部分と密閉係合する際に、希釈剤ウェルシール内部または下部から空隙に一定量の空気が逃げるのを可能にする。通気孔がないと、この容量の空気が、第2チャネルに流れ込み、試料を増幅ウェルから移動させることになり得るだろう、そして、もしこれが増幅反応を開始する前なら(使用前に、希釈剤ウェルをデバイスの他の部分と係合させるのが典型的である)、増幅が起こらないだろう。通気孔を閉鎖状態にして、空気または液体が更にこの経路を通って逃げることができないようにしてもよい。
【0043】
1の非限定的な例として、希釈剤を第2チャネルに流入させるために希釈ウェルを押し下げる動作と同時に通気孔を閉じてもよい。しかしながら、希釈剤ウェルを開口して希釈剤を第2チャネルに導入する前に通気孔を閉じるのが好ましい。一実施形態では、希釈剤ウェル自体が通気孔を閉塞するための手段を備えてもよい。例えば、本明細書の他の箇所で説明するように、希釈ウェルまたはその一部にかかる圧力により、希釈ウェルシールの一部が通気孔を形成するおよび/または取り囲む材質と密閉した関係になり、通気孔を閉塞し閉鎖状態にさせる。適切な構成が、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0044】
通気孔についての代替的な実施形態では、本明細書の他の箇所でより詳細に説明するように、通気孔を第2チャネルへの入口の底部内の孔として形成、すなわち、希釈剤ウェル位置内の第2チャネル入口開口部直下に位置させてもよい。したがって、上述のように、通気孔は、第2チャネルとデバイスの空隙との間で流体連通しているので、希釈剤ウェルが圧縮されその分注位置と密閉係合する際に第2チャネルを介して空気を空隙に逃がすことが可能になる。Oリング等の通気孔密閉部材は、通気孔が開放状態にあるときは非密閉状態で通気孔開口部内に配置してもよい。通気孔密閉部材は、例えばユーザによって操作可能な通気孔閉塞部材を作動および係合させることで、例えば、デバイスの本体の材質に対し密閉部材に圧力を加えることによって、密閉構成にしてもよい。通気孔閉塞部材は、デバイスと係合可能な装置によって自動的に作動させてもよい。
【0045】
デバイスの一実施形態では、増幅ウェルを、別個のモジュールとして設けて、使用の際に、増幅スピゴットである突起によりデバイスと係合させるようにしてもよい。これは、デバイスの本体から突出する部分、つまり、増幅ウェルの内側壁と摩擦係合できるように寸法決めされている外側壁を有し当該ウェル内部に延伸するスピゴットである。スピゴットは、増幅ウェル内部に深く突出する遠位端、およびデバイスの本体に最も近い端部である近位端を有する。あるいは、スピゴットは、デバイスの一部を形成するように製造されて増幅ウェル内部に延伸してもよい、すなわち、別個のモジュールではなくてもよい。
【0046】
スピゴットは、第1および第2チャネルのそれぞれの出口開口部および第3チャネルの入口開口を構成する。したがって、液体試料は第1チャネルを介して増幅ウェルに送達でき、そして液体希釈剤は第2チャネルを介して増幅ウェルに送達できる。液体試料がまず試料入口ウェルから増幅ウェルに分注されると、上記で概説したように、増幅ウェルに含まれる空気は、通気孔と流体連通している第2チャネルを介して逃げることができる。上述したように、液体希釈剤が増幅ウェルの容量よりも大きい容量で分注された時点で、試料入口ウェルが入口ウェルの蓋によって閉鎖されるので、通気孔が閉鎖状態になり、第1チャネルが密閉される。この結果、希釈剤を分注することによって増幅ウェルから押し出された液体は、逃げる経路が一つしかなくなり、増幅スピゴット内の第3チャネル入口開口部を介して第3チャネル内へ流入し、第3チャネルを通りLFDへ向かって移動する。
【0047】
スピゴットは不均一および/または非一体状に形成され、スピゴットの第1部分(本明細書中では第1スピゴット部分と呼ばれる)および第2スピゴット部分を有してもよい。第1スピゴット部分は、増幅ウェル内部に第2スピゴット部分よりも深く突出しており、第2スピゴット部分は、ウェル内部に第1スピゴット部分よりも浅く突出している。典型的には、第1チャネルの出口開口部および第3チャネルの入口開口部が第1スピゴット部分内に形成され、第2チャネルの出口開口部が第2スピゴット部分に形成され得る。従って、第1チャネル出口開口部および第3チャネル入口開口部は、増幅スピゴット(または突出)の最先端に対向して位置し、第2チャネル出口開口部は増幅スピゴットの基部領域に対向して位置する。というのは、第1部分は第2部分よりも長く、増幅ウェル内部により深く延伸しているからである。この構成は、デバイスを介する液体の送達を改善し、最も典型的に、ウェル/チャネルシステム内における望ましくない気泡の形成による詰まりが形成されるのを回避するのに有利であることが見出された。
【0048】
第2チャネル出口開口部および第3チャネル入口開口部は、典型的には、開口部または孔としてスピゴットの材質内に形成され、開口部が連結しているチャネルの断面積および形状と実質的に同じ断面積および形状を有する。しかし、第1チャネル出口開口部の場合、第1チャネルの断面積よりも大きい断面積を有する開口部を形成することが有利であることが見出された。第1チャネル出口開口部は、第1スピゴットの側壁および遠位部に形成され、例えば、第1スピゴット部分の側壁の材質内に開口スピゴットチャネルの形態をとってもよい。用語「開口チャネル」は、本明細書において、長手方向の全側面が囲まれていないチャネルを指すのに使用する。これにより、スピゴットチャネルの少なくとも一部が開口しているので、流体が増幅ウェルの内部側壁に隣接する位置において第1チャネルから出て、ウェルの底部内へ壁に沿って流れ落ちることができる結果になる。この構成は、デバイスのウェル/チャネルシステム内における気泡の形成を最小にし、従って、増幅ウェルを確実に充填しやすくし、そして流体が前方の第3チャネルへ移動するのに有利であることが見出された。本明細書の具体的な説明を参照することによって適切な構造の例が理解できるが、当業者は代替的な構成を想定し得る。例えば、第1チャネル出口開口部は、全体が第1スピゴット部分の側壁内に位置する開口部として形成し、第1スピゴット部分の遠位部に開口部を全く形成しなくともよい。言い換えれば、本明細書に記載の開口スピゴットチャネルの配置は単なる一実施形態に過ぎず、増幅ウェルの側面を流下する流体の少なくとも一部によって試料流体が増幅ウェルに送達するという目的が達成できるのであれば、他の配置を採用してもよい。
【0049】
第1チャネル出口開口部の位置および形成によって増幅ウェルへの液体試料の送達を制御することに加えて、第3チャネル入口開口部を第1スピゴット部分の遠位部に位置決めし、ウェルがデバイスと係合する際に遠位部を増幅ウェルの底部に対向するように位置決めすることにより、希釈剤を第2チャネルを介して増幅チャンバに添加する際に、流体が増幅ウェルから第3チャネルへ効率的に移動する結果となる。上述のように、液体希釈剤は増幅ウェルの容量よりも大きい容量の第2チャネルを通って分注されるので、液体混合物は、増幅スピゴット内の第3チャネル入口開口部を通って第3チャネルに流入する。試料入口ウェルの蓋を閉じることによって第1チャネルを閉鎖し、液体が第3チャネル内に移動するようにする。次いで、液体が第3チャネルを通りLFDに移動する。LFDの表面と密閉フィルム層との間に十分なスペースがあるので、第3チャネル内の空気が逃げることができ、液体が増幅ウェルから第3チャネル内部へ入るのを妨げない。このプロセスは、使用時に増幅ウェルの底部に向けて配置された第1スピゴット部分の遠位部に第3チャネル入口開口部を形成すると改善されることが見出された。
【0050】
上述のスピゴット部分の配置と同様に、これらの特徴は、デバイスのウェル/チャネルシステム内に気泡が形成されるのを回避しやすくするのに有利である。
【0051】
使用する容量に応じて、第3チャネルを流れる液体を、ウィッキングパッドを含み得るラテラルフローデバイスの試料受け部に直接送達してもよい。好ましい実施形態では、第3チャネルを通ってかなりの容量が送達される場合、(もしあれば)ウィッキングパッドを通ってLFDに到達する前に、第3チャネルから液体を受けるように配置された混合ウェルを設けると便利なことがある。これは、増幅容量が小さいこととデバイスのチャネル断面積が小さいことを考慮すると、希釈剤を増幅ウェルに加える際、増幅ウェル内で混合するよりむしろ、第3チャネル内へ混合物として移動する前に、前方の第3チャネル内部へ増幅容量を「押し込み」がちであることが見出されたからである。このような場合、ラテラルフローデバイスは、混合ウェルから試料を受けるように構成されるのが有利である。例えば、ラテラルフローデバイスの受け部が、混合ウェル内部へ突出してもよい。増幅ウェルから受けった増幅材料を効率的に希釈剤と混合させることに加えて、ラテラルフローデバイスの受け部によって直接吸収することが便利または速くできる場合よりも大きな容量を送達する場合に、便利なことがある。
【0052】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、試料における標的核酸を検出するアッセイを実施するための組み立てられたデバイスであって、下記(i)〜(vi)を備えるデバイスを提供する:
(i)標的核酸を含む試料をデバイスに充填できる試料入口ウェル;
(ii)第1チャネルによって試料入口ウェルに結合され、内部の液相内で標的核酸の核酸増幅反応が実施可能である、増幅ウェル;
(iii)所定容量の流体を第1チャネルを通り増幅ウェル内へ流入させるよう試料入口ウェルと係合可能な蓋;
(iv)第2チャネルによって増幅ウェルに結合されている希釈剤ウェル;
(v)第3チャネルによって増幅ウェルに結合されている混合ウェル、ここで、当該第3チャネルは、増幅ウェルの内容物が混合ウェルに送達できるように配置されている;および
(vi)試料を混合ウェルから受けその中の標的核酸を検出するように配置されたラテラルフローデバイス。
【0053】
本発明のデバイスは、一体型ユニットまたは一体型の物品として上述の要素を全て含む単一のデバイスであってもよい。例えば、デバイスの要素を全て単一の本体またはハウジング内に含めてもよい。しかし、特定の実施形態では、デバイスは、モジュール式で、特に、希釈剤ウェル(iv)を、使用時にデバイスに取り付け可能(すなわち、係合可能)な別個のユニットとして設けるようにしてもよい。同様に、増幅ウェル(ii)を、代替的にまたは追加的に、使用時にデバイスに、好ましくは上述のように増幅スピゴットを介して、取り付け可能(すなわち、係合可能)な別個のユニットとして設けてもよい。このような場合、個々のモジュール(そのうちの1つは上述のデバイスであるが、希釈剤または増幅ウェルではなく希釈剤および/または増幅ウェル受け手段を有するデバイス、もう一つは、上記受け手段に適合する希釈剤ウェルまたは増幅ウェルの各々である)も本発明の更なる態様を構成する。このようなモジュール式のウェルは、好適には自立式で、扱い易くそして受け手段に取り付け易くなるように、環状フランジまたはリップを設けてもよい。
【0054】
したがって、デバイスの一実施形態では、内部に下記(i)〜(vii)が形成されている本体を含む:
(i)試料入口ウェルと係合するための手段を備える試料入口ウェル位置;
(ii)増幅ウェルと係合するための手段を備える増幅ウェル位置;
(iii)試料入口ウェル位置と増幅ウェル位置とを連結する第1チャネル;
(iv)希釈剤ウェルと係合するための手段を備える希釈剤ウェル位置;
(v)希釈剤ウェル位置と増幅ウェル位置とを連結する第2チャネル;
(vi)増幅ウェルから延伸し、増幅ウェル位置と下記ラテラルフローデバイスとを連結する第3チャネル位置;
(vii)ラテラルフローデバイス
ここで、試料入口ウェル、増幅ウェル、および希釈剤ウェルがデバイスに係合しているとき、上述のように、デバイスは密閉または「閉鎖」していることを特徴とする。すなわち、ウェルおよびチャネルは、互いに連通しているが、大気から隔離されている。一実施形態では、希釈ウェル位置は、本明細書の他の箇所で説明するように、デバイス内で希釈剤ウェルと空隙との間に通気孔を備えてもよい。
【0055】
デバイスの特定の実施形態では、内部に下記(i)〜(vii)が形成されている本体を備える:
(i)第1容量を有する試料入口ウェルを備える試料入口ウェル位置;
(ii)増幅ウェルを備える増幅ウェル位置、ここで当該ウェルは第1容量よりも小さいまたは同じ第2容量を有し、そして当該ウェル内の液相において標的核酸の核酸増幅反応が実施可能である;
(iii)試料入口ウェルと増幅ウェルとを連結する第1チャネル(例えば、ウェルおよび/またはチャネルを介在させることなく直接連結する);
(iv)希釈剤ウェルと入口開口部とを係合するための手段を備える希釈剤ウェル位置;
(v)希釈剤ウェル位置と増幅ウェルとを連結する第2チャネル;
(vi)増幅ウェルから延伸する第3チャネル;および
(vii)第3チャネルから試料を受けるよう配置され、内部で標的核酸を検出するラテラルフローデバイス。
【0056】
上述のように、デバイスは、試料入口ウェルの蓋を更に備えるのが好ましい。本明細書の他の箇所で説明するように、デバイスは、希釈剤ウェル位置に、デバイス内の希釈剤ウェル位置と空隙との間に通気孔を更に備えてもよい。
【0057】
本明細書の他の箇所で説明するように、蓋(一体型または別個であってもよい)が試料入口ウェルと係合し閉じた後で、試料入口ウェルに添加した試料を外部雰囲気から隔離するために、上記の特徴を含めることにより本実施例に記載のデバイスを最適化する。必要な際に、密閉された希釈剤ウェル内の液体のみをシステムに導入することで、使用前にラテラルフローデバイスが劣化するのを防止する。システムを通る希釈剤の流れにより、適切な容量かつ希釈された形態で増幅ウェルの内容物を送達し、ラテラルフローデバイスに接触できるようにする。本明細書の他の箇所で説明するように、説明した特徴を組み合わせることによって、比較的未熟なユーザであっても、少ない汚染リスクで正確に使用できるデバイスが提供される。
【0058】
本明細書で使用する用語「ラテラルフローデバイス」は、吸水性膜に沿った液体の流れによって動作する任意のデバイスを指す。したがって、これは、垂直に使用できる従来の「試験紙」、ならびに膜を水平位置に固定して水平方向または横方向に膜に沿った流れが生じるようにされているデバイスを含む。
【0059】
用語「チャネル」は、特に、必ずしも毛細管現象を必要とせず、例えば、差圧および/または重力の影響により液体が自由に流れることができる固体の物体に形成された経路を指す。スピゴットチャネルを除く、本明細書に記載のチャネルのほとんどの実施形態では、ウェルを連結するチャネルは、上述したように、例えば、ハウジング内で、適切なトンネルまたは管、すなわち、取り囲まれたチャネルである。あるいは、チャネルは、デバイスの本体内に、溝が取り囲まれトンネルを形成するように、上記のようにデバイスの本体の少なくとも一部を密閉フィルムで覆うことによって閉じた溝として製造してもよい。このようなフィルムでLFDを覆ってもよく、そしていくつかの実施形態では、他の箇所で説明するように、フィルムと本体の材質との間に空隙を設けて空気をデバイスのチャネルから逃がし易くしてもよい。
【0060】
同じデバイス内に、吸収による流れによって液体が送達されるセクションと、通常に液体が流れることができるセクションとを組み合わせることにより、本発明のデバイスは、アッセイの各段階(増幅および検出)を好ましい条件下で実施できる。最適な増幅条件になるよう増幅ウェル内の任意の増幅反応混合物の容量を選択してもよい。特に、希釈剤を添加することによって容量を増加させて、混合ウェル、そしてラテラルフローデバイスへ送達しやすくし、ラテラルフローデバイスにおける使用に好ましい容量としてもよい。吸収による流れと通常の液体の流れのセクション間の液体の送達は、これらのセクションが同じデバイス内に含まれることによって容易になり、デバイスの内容物を大気や他の外的環境にさらすことなく送達が促進されるので有利である。さらに、デバイスは、アッセイの自動または半自動操作に適している。
【0061】
本明細書で使用する用語「閉鎖」は、ウェルおよび/またはチャネルが互いに連通できるが大気からは隔離されていることを意味する。希釈剤ウェルの場合、用語「閉鎖」は、デバイスの他の部分から隔離されていること、すなわち、チャネルまたはデバイスの他のウェルのいずれとも流体連通していないことを示す。同様に、用語「閉鎖可能」は、ウェルが、例えば、蓋、キャップ、プラグ、またはシールによって、大気から(およびデバイスの他の部分から)隔離可能であることを指す。この用語は、希釈剤ウェルの場合のように、使用前にウェルが閉鎖状態であるが、ウェルがデバイスに係合し、ウェルに含まれる液体がチャネルおよびデバイスのウェルを通り流れることができるようになった後に開放可能であることを示し得る。したがって、ウェルは、デバイスの他の部分と流体連通を形成するように開放可能であるが、本明細書に係るデバイスと共に使用する場合、決して大気に開放されることはない。本明細書の他の箇所で説明するように、希釈剤ウェルは、(存在する場合)通気口が閉鎖状態になるまで開放状態にならない。
【0062】
増幅および/または希釈剤ウェルが、デバイスから別個であるが取り付け可能な要素として設けられているモジュール式のデバイスの場合、デバイス自体に、ウェルの蓋、キャップ、プラグ、またはシールを設けてもよい。このような例では、デバイスは、例えば、スナップまたはねじ嵌めによって、関連するウェルの開口部に嵌合する突出突起またはスピゴットといった、適切な受け手段として設けられている。このような場合、取り付け可能なウェルは、当該ウェルに入るまたはそこから出るいかなるチャネルも収容し、デバイス内の所定位置にあるとき、ウェルの壁によってブロックされないようにしなくてはならないという条件が必要である。これは、増殖ウェル内に延伸する増殖スピゴットに関する先の記載により詳細に説明されている。
【0063】
混合ウェルを閉鎖し(例えば、密閉フィルムによって覆うことにより)、そして第3チャネルも囲む場合、大気への暴露を介することなく、よって汚染の危険性を最小限に抑えながら、増幅反応を実施し、得られた増幅産物を、その後、ラテラルフローデバイスに送達して検出できる。
【0064】
上述のように、増幅ウェルは、希釈ウェルより、そして存在する場合、混合ウェルよりも容量が小さい。さらに、概して試料入口ウェルよりも容量が小さい。例えば、増幅ウェルは、10〜250μl、例えば、15〜50μl、例えば約23μl、24μl、25μl、26μl、27μl、または約28μl、好ましくは約25μlの容量(または、増幅ウェルが、デバイスの他の部分と別々に設けられる場合に、デバイスと係合したときの容量)を有し、一方、希釈剤および混合ウェルは、40〜4000μl、例えば40〜2500μlの範囲内の容量を有するのが適切である。特定の実施形態では、希釈剤および混合ウェルは、それぞれ約500μlおよび125μlの容量を有し得る。試料入口ウェルは、40〜1000μl、例えば50〜250μl、例えば約100μlの容量を有し得る。上記のように、所定の容量が小さいなら、蓋の閉鎖により試料入口ウェルからデバイスに送達してもよい。増幅ウェルは、直径が例えば、4〜5mm(例えば、約4.7mm)の範囲内で、深さが約4〜10mm、例えば約4.8mmであり得る。デバイスのスピゴットと係合した後の増幅スピゴットの先端と増幅ウェルの底部との間の空間は、1〜2mmの範囲内、例えば約1.5mm、1.6mm、1.7mm、または1.8mmであり得る。
【0065】
対照的に、希釈剤および/または混合ウェルの直径は、7〜20mmの範囲内、例えば約12mmで、深さが約5mmであり得る。混合ウェルは、好ましくは比較的断面積が大きいチャネルの形態であり、好ましくは長手方向の縦軸長さに変化がある。これにより、ウェルに「蛇行」形状が作られ、混合が容易になる。例えば、混合ウェルは、約2mm×3mmの断面寸法および約20mmの長手方向の縦軸長さ(長手方向の変化を含む)を有し得る。
【0066】
試料入口、希釈剤、および混合ウェルは、容量が同じであっても、異なっていてもよい。各々、増幅ウェルよりも容量が大きい。上述のように、増幅容量が約25μlで第1チャネルの容量が約12μlの場合、蓋を閉じることにより試料入口ウェルの第1チャンバから移動する液体の容量は、約37μlであり得る。蓋が挿入された後に試料入口ウェルの第1チャンバ内に残っている容量があるため、第1チャンバの全容量は、約37μlより大きい。
【0067】
この構成は、デバイスが一連の化学的又は生化学的反応を実施するのに適しており、ここで、反応自体が比較的小さい容量の液体において最適に行われ、一般的に従来のラテラルフローデバイスで効果的にシグナルを示すのに必要な容量よりも小さい。
【0068】
特定の実施形態では、混合ウェルを非円形状に形成してもよい。例えば、少なくとも二つの屈曲部(ウェルの長手方向の縦軸長さが変化する)を含む略蛇行形状に形成してもよい。本発明者らは、特に、混合を容易にするべく混合ウェルを形成することを決定した。特に、希釈剤が希釈剤ウェルから増幅ウェルを介して移動する際、小さい容量の第2チャネルから小さい容量の増幅ウェルおよび小さい容量の第3チャネルを介して混合ウェルへ流れるので、増幅ウェルの内容物が希釈剤の「前に押し出される」傾向がある。混合ウェルの蛇行形状により、LFDと接触する前に、ウェルに流入する液体成分を効果的に混合しやすくなる。これにより、検出の信頼性を向上させ、偽陽性と偽陰性を低減できる。理想的には、混合ウェルの断面積は、第3チャネルの断面積よりも実質的に大きい。
【0069】
チャネルの断面寸法は、流体の流動挙動とウェルの壁の表面張力との間の妥協点として、本発明者らにより最適な値が決定される。そのようなものとして、それらの断面寸法は、層流を防いで効率的に混合しやすくするのに十分に大きいが、損失無く制御された液体の容量を維持して確実にラテラルフローデバイスへ送達するのに十分に小さい。混合ウェルの寸法が約2mm×3mmで、他の流体チャネルの断面寸法は、一般に約0.3mm×0.3mであることが理想的であることが見出された。
【0070】
いくつかの実施形態では、チャネルは、その長さ方向に沿って断面積が変化してもよい。例えば、上記のように、第1チャネルの試料入口ウェルに隣接する端部の断面積が大きくして、試料入口ウェルの蓋を閉じる際に試料を第1ウェルに入れやすくしてもよい。
【0071】
このようなデバイスの好ましい実施形態は、本明細書に記載の実施形態と同様の方法で、ラテラルフローデバイスの膜を適切な検出試薬と共に設けて実施する。適切な化学的および生化学的反応として、任意の形態の化学的または生化学的反応が挙げられる。
【0072】
適切には、ラテラルフローデバイスは、完全にデバイス全体に囲まれている、例えば、汚染リスクを最小限にすべくデバイスのハウジング内に収容される。この場合、観察窓をデバイスまたはハウジングに設けアッセイの結果を読み取ることができるようにするか、あるいはハウジング自体を、少なくともLFD上の領域で透明な材質にするのが好適である。
【0073】
ラテラルフローデバイスは、吸水性膜が混合ウェル内部に突出することで混合ウェルから直接試料を吸収するように配置してもよい。しかし、特定の実施形態では、液体流動要素、特に、1つまたは複数のウィッキング要素を設けて混合ウェルから試料を受け、この試料をラテラルフローデバイスの膜の受け部に送達するようにしてもよい。好適なウィッキング要素として、例えばセルロース等の密で親水性の繊維材料から成るウィッキング繊維製のパッドが挙げられる。ウィッキング要素または要素は、その一端が混合ウェル内部に突出または接触し、もう一端はラテラルフローデバイスの膜の端部領域に接触して、混合ウェルから膜上へ液体が許容範囲の制御された流れで確実に送達されるようにしてもよい。特定の実施形態では、ウィッキング要素は、混合ウェルの底部の少なくとも一部に裏打ちされ、ウェルに送達された液体が直接ウィッキング要素に適用されるようになっている。
【0074】
ウィッキング要素は、シグナルを増強するためのラテラルフローデバイスにおいて使用される試薬用のリザーバとして機能してもよい。例えば、上記のように適切に標識された増幅標的核酸に対する結合相手をウィッキング要素内に保存してもよい。その後、この要素が、試料とともにラテラルフローデバイスの膜に沿って膜上の適切な検出ゾーンへ送達される。
【0075】
デバイスは、一回きりの使用目的の使い捨てユニットであるのが好適である。デバイスの少なくとも一部が、好適には硬質プラスチック材製のハウジング内に含まれていてもよい。ハウジングは、溝が形成された表面を覆うことによって、デバイスの本体に溝として形成されたチャネルを囲むのに役立ち得る。
【0076】
増幅ウェルは、特に核酸増幅反応を内部で実施するように適合できる。本明細書の他の箇所で説明されるように、このような反応は、一般に、比較的小さい容量内で実施されるので増幅ウェルの容量は比較的小さい。
【0077】
しかしながら、特に、増幅ウェルは一般に核酸増幅反応を行う所望の温度に加熱できるようにされている。したがって、一般的な核酸増幅反応で使用する温度および/または温度の変動変化に耐えうる材質で変形または劣化しないような材質によりウェルを製造するのが好適である。例えば、ポリプロピレン材が適切であり得る。
【0078】
増幅ウェルは、制御可能な様式で加熱または冷却できる。抵抗加熱素子等の加熱素子、またはサーモスタット素子などの冷却素子、ならびにサーミスタや熱電対などの温度制御素子または温度測定素子をデバイス自体に含めてもよいが、特定の実施形態では、アッセイ目的のデバイスを収容する装置に隣接させる、接触させる、またはそのような素子によって包含されるように第1ウェルを配置する。第1ウェルを、加熱、理想的には制御加熱できるように、デバイスを装置に設置するのが好適である。
【0079】
特定の実施形態では、例えば外部の加熱装置、または、必要に応じてサーマルサイクラーを用いて、核酸増幅を達成するための加熱及び/又は冷却に供しやすくするために、増幅ウェルをデバイスの突出部または手足部に配置する。例えば、増幅ウェルを、ハウジングの外側、例えば、上述したような突出部に伸ばして、ブロックヒーターなどの加熱または熱サイクル素子(場合により、装置の一部を形成する)内の対応するウェル内に収容できるようにしてもよい。あるいは、突出しているウェルを、例えば、強制空気ヒータ、サーマルサイクラーまたはサーモスタットの空冷または加熱チャンバ内に収まるように配置してもよい。上述のように、使用前にデバイスに係合可能な別個のモジュールとして増幅ウェルを形成してもよい。
【0080】
デバイスは、デバイスが装置に設置されたときに装置内の加熱またはサーモスタット素子が増幅ウェルの周囲または隣接部にあるデバイス内部に突出し、第1ウェルの内容物を制御して加熱できるように配置された溝、チャネルまたは他の凹部を含んでもよい。
【0081】
好適には、流体は、空気圧、油圧または真空制御された流れの下で、第1および/または第2および/または第3チャネルを通って送達可能である。典型的かつ有利には、空気圧、油圧または真空の外部自動源を必要とせず、デバイス自体の構成要素の単純な動きおよび/または変形の作用によって送達が達成される。例えば、上述のように、試料入口ウェルの蓋を閉じる動作によって、第1チャネルを介し試料入口ウェルから増幅ウェルへと試料が送達され得る。同様に、上述のように、その後、希釈剤ウェルを開封または開口する動作によって、希釈剤が第2チャネルを介して送達され増幅ウェルを通過し、続いて増幅産物および希釈剤が第3チャネルを介して送達され得る。蓋の動作および/または(例えば、ウェルを変形することによる)希釈剤ウェルの開封または開口は、ユーザによって直接行ってもよいしまたは自動手段を介して行ってもよい。しかし、いくつかの実施形態では、更にハウジングに、試料入口ウェル、増幅ウェル、または希釈剤ウェルのいずれかにそれぞれ連結された少なくとも1つのポンプポートを備えることも考えられる。各ポンプポートは、通常、密閉されているが、アッセイを実施するためにデバイスを装置へ導入する際またはその直前に解放され、そして、運動エネルギー源、例えば、油圧または空気圧または真空源に接続され、希釈剤を当該ウェルからチャネルを介し別のウェルへ駆動する。各ポンプポートと同じウェルに接続させた対応するポートを設け、液体がチャネルを通って流れるようにしてもよい。
【0082】
必要な送達を促すようにチャネル自体を配置する。したがって、上述のように、例えば、第1チャネルを試料入口ウェルの底部に接続して、試料をそこから取り去ることができるようにしてもよい。上述のように、第1チャネルが、その側部領域における増幅ウェルに入るようにしてもよい。第3チャネルを、(例えば、増幅スピゴットの第1部分の遠位部に位置決めされた第3チャネル入口開口部により)増幅ウェルの底部近傍に位置させて、混合ウェルの上部領域に接続させてもよい。
【0083】
希釈剤ウェルの容量は、増幅ウェルよりも大きいので、増幅ウェルに送達された希釈剤は、効果的に増幅ウェルから第3チャネル、そして混合ウェル内に流れ出る。したがって、増幅ウェル内の任意の増幅産物は、希釈された形態で混合ウェルに送達できる。あるいは、希釈剤の送達により増幅ウェルの内容物を、希釈剤の前方にある第3チャネルを介して「押し出し」やすくし、増幅ウェルの内容物およびそれに続く希釈剤が混合ウェルに到達するまで、主な混合が行わないようにしてもよい。
【0084】
一般に、LFDの膜の試料受けゾーンを含む端部領域が混合ウェル内に配置され、増幅核酸を含む液体が膜に吸収され、そしてその長さ方向に沿って吸い上げられるようにする。標的部分に対する適切な結合相手が固定された1つまたは複数の検出または制御ゾーンを、試料受けゾーンの下流の膜上に従来の方法で設け、検出または制御ゾーン内で標的核酸が捕捉されるよう(あるいは競合アッセイ形式)にする。核酸は、直接増幅反応中において、あるいは増幅反応に導入したまたはLFDに移動可能に設けた標識プローブと接触させることのいずれかにより標識するのが好適である。従って、上述のように、検出ゾーンで、例えば、粒状標識(例えば、ラテックスビーズ)と結合した標識物質の蓄積により、LFDに可視シグナルを生じさせる。かかるデバイスの例は、例えば、US2004/0110167に例示される。
【0085】
適切な膜として、セルロース系材料、例えば、セルロース、ニトロセルロース、またはカルボキシメチルセルロース、親水性ポリマー(ポリエステル、ポリアミド、糖質ポリマー等の合成親水性ポリマーを含む)、疎水性ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン化ポリマー、ガラス繊維、または多孔質セラミックが挙げられる。
【0086】
特に適切な膜として、セルロース膜、特に、積層可能なニトロセルロース膜、例えば、Milliporeから入手可能なものが挙げられる。これらは、例えば、裏打ち材により支持されていてもよく、例えば、ポリエステル(Mylar(登録商標))またはPETで裏打ちされたセルロース膜など、プラスチックにより裏打ちされた膜が挙げられる。
【0087】
このような膜の裏打ち材は当然疎水性であるが、セルロース自体は親水性であるので、必要なウィッキング効果を生じる。しかし、親水性であると、免疫測定法で使用する場合に問題となり得る。必要に応じて、これらのデバイスで使用する膜を、従来のブロッキング剤を使用してブロックしてもよい。ブロッキング剤は、試料中の任意のタンパク質と膜と非特異的な相互作用を低減、あるいは試料のウィッキング速度を増大できるものである。これらは、一般に、固定された結合剤の適用後に適用され、通常、タンパク質、界面活性剤、および合成ポリマーを含む3種類の薬剤から選択される。ブロッキング剤として使用され得るタンパク質の具体例としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、またはカゼインのような非脂肪乾燥乳成分が挙げられる。
【0088】
ブロッキング材としての使用に適する合成ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン脂肪エーテル、例えば、ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコールから誘導されるもの、および商品名Brij(商標)で販売されるものが挙げられる。
【0089】
また、界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、商品名Tween(商標)20として販売されているポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートや例えばTriton X(商標)シリーズとしてDowより販売されているTriton X−100などのオクチルフェノールエトキシレート等が挙げられる。
【0090】
一般的に、2種類以上または2クラス以上のブロッキング剤の混合物、例えば、界面活性剤および上記のような合成ポリマーを含む混合物を用いてもよいことが認識されている。
【0091】
しかし、好ましい実施形態では、膜にブロッキング剤を使用しない。
【0092】
プライマー、酵素、プローブ等の増幅を行うための試薬を、予め増幅ウェルに充填して、増幅の際に直接試料を受けることができているようにしてもよい。特に、このような試薬は、分解や早期反応を確実に防ぐために、乾燥、特に、凍結乾燥した形態で存在していてもよい。これは、増幅ウェルが、典型的に増幅スピゴットとの摩擦係合により、デバイスの他の部分と係合可能な別のモジュールとして設けられている場合に特に便利である。
【0093】
必要な場合であって試料が適切な形で利用できる場合、試料を試料入口ウェルに直接加えてもよい。しかし、一般的に、試料から核酸を抽出し精製する必要がある。試料は、例えば、ヒトまたは動物から得られる生体試料であってもよい。また、核酸の検出は、例えば、環境水試料中の微生物の存在を検出する方法であってもよい。
【0094】
増幅緩衝液等の増幅反応の液体成分は、増幅反応の開始時のみに増幅ウェルに導入されることが好ましい。これにより、汚染リスクを最小限に抑え、また、早期に反応が起こらないようにする。
【0095】
これらの目的の両方を達成するために、試料を、抽出核酸およびアッセイ緩衝液などの増幅反応用の液体成分を含む液体の形態でデバイスに導入してもよい。したがって、デバイスに加える前に、試料に、例えば、試料中の微生物学的細胞を溶解し検出用の標的核酸を放出させるといった前処理を施してもよい。他の箇所で説明するように、(細胞破片などの他の成分を有するまたは有さない)標的核酸を、予め増幅緩衝液中で調製し、その後試料入口ウェルに加えてから蓋を閉じてもよい。
【0096】
同様に、装置は、所望の増幅反応をウェル内で行うことができる方法で、上記のような増幅ウェルと相互作用するように適合された加熱手段を含む。加熱手段は、増幅ウェルの全側面および/またはウェルの底部と上面全体に設けてもよい。例えば、増幅スピゴットおよび当該スピゴットと係合する増幅ウェルは、デバイスを使用する際に、デバイスの他の部分から突出するデバイスの一部に位置してもよく、ここで、この突出部はデバイスの一部を突出できる位置において装置に挿入可能で、増幅ウェルを含み、加熱手段に囲まれているかまたは隣接して配置される。
【0097】
一般的に、実施する増幅反応は、当技術分野で公知の多くの等温増幅反応の一つ、例えば、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、転写介在増幅(TMA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、Q−βレプリカーゼおよびローリングサークル増幅、3SR、分岐増幅(Zhang et al.,Molecular Diagnosis(2001)vol.6,p141〜150に記載のような)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(TwistDx,Cambridge,UKで利用可能)、等であることが好ましい。これに必要な加熱構成は、ポリメラーゼ連鎖反応のような熱サイクル反応ほど複雑ではない。しかし、装置が熱サイクル手段を含むなら、熱サイクルを必要とするポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ連鎖反応のような増幅反応を実施するのは可能である。
【0098】
処理装置は、デバイスが装置内の所定位置にあるとき、希釈剤ウェル位置に配置された希釈剤ウェルと係合可能な希釈剤投与手段を含み得る。希釈剤投与手段は、希釈剤ウェルを変形して希釈剤を第2チャネル入口開口部を介して増幅ウェル内に送達するように作動できる。上述したように、投与は、希釈剤が数秒程度の期間、例えば、1〜5秒、又は2〜4秒にわたって装置に流入するように装置によって制御できる。これにより、制御された容量の希釈剤が制御された速度でデバイスに送達できるという利点を有し得る。
【0099】
希釈剤投与手段を利用するさらなる利点は、例えば、所望の容量の希釈剤をデバイス内に送達するには希釈ウェルがどの程度変形されるべきかに関し、必要な希釈剤の所定容量を計算して、第2チャネルを通ってデバイス内に確実に送達できるように当該手段を正確に構成できることである。この構成は、使用する材質、増幅ウェル内で実施する反応の種類等を変更することで、投与する希釈剤の絶対容量が変わるので、特定のデバイスでの使用に適するように変更できる。更なる利点は、装置と希釈ウェルとの係合が、デバイスの他の部分の寸法ばらつきの影響を受けないことであり得る。
【0100】
上述のように、いくつかの実施形態では、デバイスは、通気孔を備えてもよい。通気孔は、希釈ウェルとデバイスとの係合により開放状態から閉鎖状態することができる。以下でより詳細に説明するように、一実施形態では、通気孔が、希釈剤ウェル位置に隣接する第2チャネルの開口部から延伸する通気孔チャネルを備えていてもよく、ここで、当該チャネルは、通気孔分割壁によって二つの部分に分割されている。希釈剤ウェルは、希釈剤ウェルが希釈剤ウェル位置に配置されたとき、通気孔分割壁と非密閉接触する変形可能なガスケットを備えていてもよい。この構成では、通気孔は開放状態で、空気が、壁の材質とガスケット材との間にある前半通気孔チャネル(これは、第2チャネル開口部に隣接する通気孔チャネルの端部から通気孔分割壁の方へ延伸している)から、後半通気孔チャネルおよび希釈剤ウェル位置を取り囲むデバイスの本体内へと流入可能である。希釈剤ウェルを押すことにより通気孔を閉鎖状態にすることができ、これにより、ガスケットを通気孔分割壁と密閉接触させて、空気がデバイスの内部から前半通気孔チャネルを通り、後半通気孔チャネル内へと流出させなくすことができる。デバイスが装置内の所定位置にあるとき、ガスケットを押圧して通気孔分割壁と密閉接触するように、希釈剤ウェルの少なくとも一部に圧力を印加するように構成された通気孔密閉手段によって達成できる。通気孔密閉手段は、希釈剤投与手段と同じであっても異なっていてもよい。理想的には、通気孔密閉手段は、希釈剤ウェルを開口し第2チャネルを介してデバイスへ希釈剤を投与する前に、通気孔が閉鎖状態になるように、希釈剤投与手段の作動の前に作動する。
【0101】
希釈ウェルの形状がほぼ円形である実施形態では、ウェルの周囲を取り囲む環状のチャネルを含んでもよい。希釈剤ウェルを押すように作動可能な装置内の中空円筒管状部材により形成された通気孔密閉手段の係合位置を設けて、希釈ウェル位置に配置されたときに、ガスケットと通気孔分割壁が密閉されるようにしてもよい。このような通気孔密閉手段は、希釈剤ウェルをデバイスの他の部分に対し非密閉係合から密閉係合状態にさせるのに利用してもよい。希釈剤投与手段は、円筒管状部材の内径よりも小さい直径を有し、希釈剤ウェルと係合する円筒管状部材を通って延伸する円筒状のピストン部材によって形成してもよい。上述のように、円筒状ピストン部材は、その後、希釈ウェルを変形し、デバイス内へ希釈剤を分注するように作動できる。
【0102】
上記で概説したように、通気孔の別の構成では、密閉部材を備え、これをデバイスの本体の材質に対し押すように密閉部材に圧力を加えることによって非密閉状態から密閉状態へと移動可能にしている。本明細書の他の箇所で説明したように、これは、例えば、通気孔内に配置されたOリングにより達成できる。
【0103】
したがって、上述のデバイスは、使用時に、デバイスを受けるような構成にされた装置に設置される。装置内に設置されると、様々な空気または真空ポートがデバイス内にある場合、装置の空気圧、油圧または真空システムに接続される。代替的または追加的に、希釈剤投与手段は希釈剤ウェルに係合し、そして適切な時に作動されデバイス内に希釈剤を投与しやすくなる。同様に、通気孔密閉手段をデバイスに接触するように配置して、通気孔を解放状態から閉鎖状態に移すようにしてもよい。上記のように、通気孔密閉手段は、例えば、希釈剤ウェルを押すように作動可能な装置内の円筒管状部材であってもよい。あるいは、通気孔密閉手段は、上述のように、密閉部材(例えば、Oリング等)と係合するような、デバイスの外側ハウジングの開口部を介して延伸可能なロッドまたはピンであってもよい。少なくとも本実施形態では、外側材質と密閉部材との間に形成されたフィルム層により通気孔はデバイスの外部から隔離されている。通気孔密閉手段は、フィルムを介して密閉部材と係合する、つまり、フィルムが密閉手段と密閉部材との間に配置されている。フィルムは薄くて柔軟性があるので、密閉手段が非密閉状態から密閉状態に移るのを妨げない。
【0104】
加えて、装置内に設けられた制御可能な加熱素子は、増幅ウェル内で核酸増幅反応を実施するように増幅ウェルと相互作用できる。好適には、単一の操作で確実に核酸を増幅および検出するような順番で、1のウェルから別のウェルへ液体を送達し、増幅ウェルを自動的に加熱することを含む工程を様々な段階で行うように装置はプログラムされている。
【0105】
かかる装置は、上述のようなデバイスおよび装置を備えるシステムと同様、本発明の更なる態様を構成する。
【0106】
したがって、特定の態様において、本発明は、更に、特に試料における核酸を検出するアッセイにおいて、化学的または生化学的反応を実施する、そして場合によりその産物を検出するための装置であって、下記(i)〜(ii)を備える装置を提供する:
(i)上述のような、好ましくは試料入口ウェル蓋が閉鎖状態にあるときにデバイスを受けるための手段、及び
(ii)増幅ウェルを制御可能に加熱して核酸増幅反応が当該ウェル内で起こるように配置された加熱手段。
【0107】
装置は、更に、(iii)デバイスを(i)の手段に受けたときに、希釈剤ウェルと係合するように配置された希釈剤投与手段であって、係合すると作動して希釈剤をデバイス内に分注する希釈剤投与手段を備えてもよい。代替的に又は付加的に、デバイスは、更に、(iv)本実施形態では、希釈剤ウェルと係合するように配置された通気孔密閉手段であって、係合すると作動して希釈剤ウェルを加圧し、希釈剤ウェルガスケットを通気孔分割壁と密閉接触させる通気孔密閉手段を備えてもよい。希釈剤が分注されると同時に通気孔が閉鎖されるように、希釈剤投与手段および通気孔密閉手段は同一であってもよい。あるいは、通気孔密閉手段は、希釈剤ウェルと独立した密閉部材と相互作用して通気孔を閉鎖状態にするように作動してもよい。
【0108】
必要な場合、装置は、更に、(v)デバイスのウェル間の試料の送達を促すようにデバイスに接続可能な、空気圧、水圧、真空システム等の輸送システムを備えてもよい。
【0109】
装置は、好適には、更に、加熱手段、そして存在する場合希釈剤投与手段および/または輸送システムを制御することにより、デバイス内で自動的に所望のアッセイ手順を行うコンピュータまたはマイクロコントローラシステムなどの制御システムを備える。
【0110】
本発明の更なる態様は、内部に下記(i)〜(vii)が形成されている本体を有するデバイスを備えるキットを含む:
(i)試料入口ウェルと係合するための手段を備える試料入口ウェル位置;
(ii)増幅ウェルと係合するための手段を備える増幅ウェル位置;
(iii)所定位置にあるときの試料入口ウェルと所定位置にあるときの増幅ウェルとを連結する第1チャネル;
(iv)希釈剤ウェルと係合するための手段を備える希釈剤ウェル位置、ここで当該ウェルは密閉状態になり得る;
(v)所定位置にありかつ非密閉状態にあるときの希釈剤ウェルと所定位置にあるときの増幅ウェルとを連結する第2チャネル;
(vi)所定位置にあるときの増幅ウェルから延伸する第3チャネル;および
(vii)第3チャネルから試料を受けるよう配置され、内部で標的核酸を検出するラテラルフローデバイス;
ここで、当該キットは更に試料入口ウェル位置に位置決め可能な試料入口ウェル、増幅ウェル位置に位置決め可能な増幅ウェル、および希釈剤ウェル位置に位置決め可能な希釈剤ウェルを含み、当該ウェルは密閉されているが非密閉状態に開放可能である。
【0111】
キットの実施形態では、試料入口ウェル、増幅ウェル、および/または希釈剤ウェルの1つまたは複数が、試料入口ウェルを備える試料入口ウェル位置および/または増幅ウェルを備える増幅ウェル位置および/または希釈剤ウェルを備える希釈剤ウェル位置と共にデバイスの一体的な部分として形成されることを意図する。したがって、キットに含まれる本明細書中に記載のデバイスは、デバイスの一体的な部分として形成される試料入口ウェル、増幅ウェル、および/または希釈剤ウェルのうちの1つまたは複数を備えていても、全てを備えていても、あるいは全く備えなくてもよい。ここで、非一体的なウェルは同じキットの一部としてまたは当該キットの他の部分とは別個のパッケージに設けられているかのいずれかにより、別々に設けられている。
【0112】
好ましい実施形態では、キットは、内部に下記(i)〜(vii)が形成されている本体を有するデバイスを備える:
(i)試料入口ウェルを備える試料入口ウェル位置;
(ii)増幅ウェルと係合するための手段を備える増幅ウェル位置;
(iii)試料入口ウェルと所定位置にあるときの増幅ウェルとを連結する第1チャネル;
(iv)希釈剤ウェルと係合するための手段を備える希釈剤ウェル位置、ここで当該ウェルは密閉状態になり得る;
(v)所定位置にありかつ非密閉状態にあるときの希釈剤ウェルと所定位置にあるときの増幅ウェルとを連結する第2チャネル;
(vi)所定位置にあるときの増幅ウェルから延伸する第3チャネル;および
(vii)第3チャネルから試料を受けるよう配置され、内部で標的核酸を検出するラテラルフローデバイス;
ここで、当該キットは更に増幅ウェル位置に位置決め可能な増幅ウェルおよび希釈剤ウェル位置に位置決め可能な希釈剤ウェルを含み、当該ウェルは密閉されているが非密閉状態に開放可能である。
【0113】
増幅ウェルおよび/または希釈剤ウェルは、キットの一体的な部分として設けてもよく、または別個に設けてもよい。
【0114】
別の実施形態では、キットは、内部に下記(i)〜(vii)が形成されている本体を有するデバイスを備える:
(i)試料入口ウェルを備える試料入口ウェル位置;
(ii)増幅ウェルを備える増幅ウェル位置;
(iii)試料入口ウェルと増幅ウェルとを連結する第1チャネル;
(iv)希釈剤ウェルと係合するための手段を備える希釈剤ウェル位置、ここで当該ウェルは密閉状態になり得る;
(v)所定位置にありかつ非密閉状態にあるときの希釈剤ウェルと増幅ウェルとを連結する第2チャネル;
(vi)増幅ウェルから延伸する第3チャネル;および
(vii)第3チャネルから試料を受けるよう配置され、内部で標的核酸を検出するラテラルフローデバイス;
ここで、当該キットは更に希釈剤ウェル位置に位置決め可能な希釈剤ウェルを含み、当該ウェルは密閉されているが非密閉状態に開放可能である。キットの任意の実施形態において、デバイスは、第2チャネルの入口を覆い、希釈剤ウェル位置に位置する密閉フィルムを更に備えてもよい。代替的または追加的に、上述のような試料入口ウェルの蓋を更に備えてもよい。デバイスは、上述のように、希釈剤ウェル位置に希釈剤ウェル位置とデバイスとの空隙間の孔である通気孔を更に備えてもよい。
【0115】
キットの全実施形態において、試料入口ウェルは第1容量を有し、増幅ウェルは第1容量より小さいまたは同じ第2容量を有し、希釈剤ウェルは第2容量より大きい第3容量を有する。
【0116】
本発明のデバイス、装置、キット、およびそれらの組合せは、核酸増幅および検出を行うのに有用かつ容易な操作手段をもたらす。デバイスの閉鎖ウェルにおける処理に必要な試薬を保存し、デバイスを使い捨てにすることにより、汚染リスクが最小限に抑えられる。
【0117】
更なる態様において、本発明は、試料における核酸を検出するアッセイを実施するための方法であって、試料を本発明に係るデバイスに添加すること、当該デバイスを本発明に係る装置内に設置すること、当該統治を操作して内部で核酸増幅反応および検出を行うこと、およびLFDからの結果を読み取ることを含む方法を提供する。例えば、本方法は、試料を試料入口ウェルに添加し試料入口ウェルの蓋を閉じることによって試料を増幅ウェルに送達すること、当該増幅ウェルを核酸増幅反応が起こる条件下に置くこと、その後、希釈剤ウェルを開口することにより希釈剤ウェル内の希釈剤を増幅ウェルに送達し、その内容物を第3チャネルに沿ってラテラルフローデバイスへ流入させること、およびその後ラテラルフローデバイスからの結果を読み取ることを含んでもよい。
【0118】
本方法は、希釈剤ウェル位置で密閉した希釈剤ウェルとデバイスの他の部分とを係合する工程を含んでもよい。最初は希釈剤ウェル位置でウェルとデバイスとを非密閉係合し、その後当該ウェルとデバイスとを密閉係合し、ウェルを開口することを含んでもよい。また、当該方法は、通気孔があればこれを解放状態から閉鎖状態にする工程を含んでもよい。
【0119】
本明細書および特許請求の範囲の記載を通して、用語「含む(comprise)」および「含む(contain)」および当該用語の変形、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むが限定されない」ことを意味し、他の部分、追加要素、構成要素、値、または工程を排除するものではない。文脈において特に断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲の記載を通して、単数形は複数形を包含する。特に非限定的な表現を用いる場合、文脈において特に断りのない限り、本明細書は単数および複数形の両者を包含するものと理解されるべきである。
【0120】
本発明の各態様の好ましい特徴は、記載した特徴に他の態様のいずれかを関連付けたものであってもよい。本発明の他の特徴は、以下の実施例から明らかになるであろう。一般的に言えば、本発明は、本明細書および添付の特許請求の範囲及び図面に開示された新規な特徴のいずれか一つまたはそれらの組み合わせにも及ぶ。したがって、本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載された特徴、値、特性、化合物、または化学的部分は、互換できないものでない限り、本明細書に記載の他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であると理解すべきである。
【0121】
また、特記しない限り、本明細書中に開示の任意の機能を、同一または類似の目的を果たす代替機能に置き換えてもよい。
【0122】
本発明を、特に下記の図1〜7を参照し実施例を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1図1は、本発明によるデバイスの外観を示す。
【0124】
図2図2は、図1のデバイスを形成する部分の分解図を示す。
【0125】
図3A図3Aは、蓋が開放状態にある試料入口ウェルを有するデバイスを示す。
【0126】
図3B図3Bは、試料入口ウェルの下側チャンバと密閉接触している状態の蓋の栓部分の詳細な断面図を示す。
【0127】
図3C図3Cは、蓋が閉鎖状態にあるデバイスを示す。
【0128】
図3D図3Dは、蓋が完全に閉鎖状態の栓部分の詳細な断面図であって、下側チャンバの試料入口ウェルの液体内容物が第1チャネルに流れてた状態を示す。
【0129】
図4A図4Aは、デバイスの中央部および希釈剤ウェルの相対的な位置決めを示す。
【0130】
図4B図4Bは、希釈剤ウェルおよび通気孔の実施形態の詳細を示す。
【0131】
図4C図4Cは、希釈剤ウェルおよび通気孔の実施形態の詳細を示す。
【0132】
図4D図4Dは、希釈剤ウェルおよび通気孔の実施形態の詳細を示す。
【0133】
図5図5は、通気孔の代替的な配置を示す。
【0134】
図6図6は、増幅スピゴットの下面図を示す。
【0135】
図7図7は、増幅スピゴットと係合した増幅ウェルの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0136】
図1は、本発明によるデバイス1の外観を示す。この図は、上側部分10および下側部分15を備える外側ハウジング5を示す。LFDが透けて見える窓20がハウジング5の上側部分10内に形成されている。このデバイスの図1では、蓋25が試料入口ウェルの上を覆っており、試料入口ウェルは示されていない。ここで、この蓋25は閉じている状態で示されている。蓋25は、ヒンジ30によりハウジングへ結合されており、ヒンジ30がハウジング5の上側部分10および下側部分15の間に位置する。
【0137】
図1は、更に、外側ハウジングの上側部分10の上面に位置する円形の隆起部によって形成されている希釈剤ウェルドック40内に弾性的に挟持された希釈剤ウェル35を示す。希釈剤ウェル35は、下面領域(図示せず)から下方に内側に向かって突出するスパイク状のボタン部45を備え、ユーザがボタン部45をハウジング5に向かって押すと、このスパイクが希釈剤ウェルの下に位置するフィルム(図示せず)を穿孔し、希釈剤ウェル35に含まれる希釈剤がデバイス内のチャネルの中へ放出されるようになっている。
【0138】
図1は、また、突出ノーズ部50を示し、突出ノーズ部50は増幅スピゴット55を備え、増幅スピゴット55はノーズ部50の下方に突出しており、増幅ウェル(図示ぜず)と係合可能である。デバイスは熱サイクル装置を備える処理装置(図示せず)と係合可能であり、係合されると増幅ウェルの内容物を熱サイクル装置に送られ、そこで、温度変動サイクルを用いる処理に供される。温度変動サイクルは、核酸増幅反応を促進するのに必要なことがある。また、この図において、ノーズ部50内に、第1チャネル60(スピゴットについている場合、試料入口ウェルを増幅ウェルに連結する)、第2チャネル65(希釈剤ウェル35を増幅ウェルに連結する)、および第3チャネル70(増幅ウェルを図1では不図示の混合ウェルに連結する)が見られる。例示目的のために、チャネル60、65、および70を図1で見えるように示すが、すべてのチャネルおよびウェルは、ノーズ部50を覆う透明または不透明上面またはフィルムによって外部環境から閉鎖されている。
【0139】
図2は、図1の装置を展開形式で示し、外側ハウジング5の上側部分10と下側部分15および中央層12によって形成されるデバイス本体全体を示す。中央層12の上面を覆う層を形成する上側フィルム層84も示す。同様に、下部フィルム層86も示す。
【0140】
外側ハウジングの上側部分10は、LFD観察窓20および試料入口ウェル22の上側部分、ならびに希釈剤ウェルドック40を備える。希釈剤ウェル35は、ウェルドック40と係合することによって、組み立てたデバイス本体に弾性的に挟持できる別個の消耗品として設けられている。希釈剤ウェル35を取り囲む環状チャネル37により、処理装置内の各種手段などの追加のツールを希釈剤ウェル35に係合できるようにしてもよく、そして更にウェルドック40と係合するように押し込んでもよい。ボタン部45を示すが、上述したように、ボタン部45からスパイクが希釈剤ウェル35の内側に突出している。フィルム47は希釈剤ウェル35を密閉しており、ボタン部45を押すことによりスパイク(図示せず)がフィルム47を穿孔すると開封されるようになっている。希釈剤ウェルはガスケット36も備える。ガスケット36は、フィルム47の外面に位置し、希釈剤ウェルがウェルドック40に係合すると、後述する希釈剤ウェル位置において上側フィルム層84に接触するようにする。
【0141】
ハウジング5の上側部分10および下側部分がデバイスの中央層12を覆い、デバイスを組み立てると、中央層12の端部領域(図2ではAとして示す)がハウジング5から突出しノーズ部50(図1で段状になっている)を形成する。様々なチャネルおよび開口部が、中央層12の材質に形成されている。試料入口ウェル22の凹部23が、試料入口ウェルの下側チャンバを形成し、ここから、チャネル60が延伸し、試料入口ウェル22の下側チャンバ23と増幅ウェル56とをスピゴット55を介し連結している。チャネル65によって、希釈剤受け漏斗67が増幅ウェルに連結している。チャネル70によって、増幅ウェルが混合ウェル75に連結している。段状開口部20bが中央層12に形成されており、LFD観察窓20の下側部分を構成する。LFD80は、中央層12の下に位置するウィッキング79によって混合ウェル75に連結している。また、図2には、希釈剤ウェルドック40の下の中央層12に位置する希釈剤ウェル位置(点線の円Bで示す)も示す。これは、中央層12の領域であり、デバイスを組み立てる際に、上側部分10の希釈剤ウェルドック40により形成される開口部の下に直接位置する。希釈剤ウェル位置は、さらに、以下に説明するように、希釈剤受け漏斗67および通気チャネル82および隔離壁83を含む。
【0142】
使用する際に、希釈剤ウェル35のボタン部45を押すと、フィルム47がスパイクによって穿孔され、希釈剤ウェル35内から希釈剤が希釈剤受け漏斗67を介してチャネル65内に移動し、その後、スピゴット55に連結されると、スピゴット55上を通過し増幅ウェル56に流れる。ボタン部45を押し続けると、希釈剤ウェル35に含まれる希釈剤の大部分がこの経路に沿って流れるので、チャネル60を密閉するよう蓋25が閉鎖状態にある場合、増幅ウェルの内容物がチャネル70を通り混合ウェル75に流れる。
【0143】
また、図2は、ヒンジ30を備える蓋25を示す。ヒンジ30は、リップ32と蓋25を結合させる。リップ32は、ハウジング5の下側部分の開口部Cに位置し、ハウジング5が組み立てられると、上側部分10および下側部分の間に把持され得る。蓋は、その下面から延伸する栓27およびユーザがウェルを閉じるのに触ることが可能な外表面28を有している。Oリング29は、栓27の外周に位置する。
【0144】
図3Aは、蓋が開放状態にあるデバイス1の別の図を示す。図3Bは、この構成をより詳細に示す。栓27は、鈍端部28およびOリング29を有し、Oリング29は栓27の外周に形成される。この図では、栓27が、テーパ状の肩部側壁101および垂直側壁103を含む試料入口ウェル22内に位置している。肩部側壁101および垂直側壁103が栓27と試料入口ウェル22の下側部分23とを係合させる役割をする。栓のOリング29が、点Cにおいて試料入口ウェル22と密閉接触する。スピゴット55を介して試料入口ウェル22を増幅ウェルに連結するチャネル60のチャネル入口が、試料入口ウェル22の下側部分23の底部110に形成されている(図示せず)。
【0145】
図3Cは、蓋が閉鎖状態にある図1のデバイスを示す。図3Dは、栓27が完全に試料入口ウェル22内に押し込まれ、栓27の鈍端部28が試料入口ウェル22の底部110に近接している状態を示す。Oリング29と試料入口ウェル22の下側部分23の側壁103による密閉接触により、下側部分23に含まれている液体が第1チャネル入口を通り、チャネル60を通って、増幅チャンバ55に流れる。栓27の外寸法は、試料入口ウェル22の上側部分の内寸法よりも小さいので、試料入口ウェル22の残りの部分(すなわち、下側部分23以外の部分)に含まれていた液体試料は、デバイスから液漏れや液はねせずに試料入口ウェル22の残り部分に収容される。
【0146】
図4は、通気機能の一実施形態をより詳細に示す。図4Aにおいて、例示目的で、希釈剤ウェル位置をBとして示し、ハウジングの上側および下側部分が無い状態でデバイスの中央層12を示す。Bは、中央層12の領域で、希釈剤ウェルドック40(この図では図示しないが、ハウジングの上側部分10に形成される)の下に位置する、すなわち、デバイスと係合したとき、領域Bは希釈剤ウェル35の下に位置する。通気孔チャネル82が領域B内の位置からデバイスの外側に延伸し、希釈剤受け漏斗67と結合(すなわち、流体連通)している。希釈剤受け漏斗67は、チャネル65の入口開口部である。通気孔チャネルの2つの部分82aおよび82bは壁83により分かれており、壁83は中央層12の材質により形成される。図4B、4Cおよび4Dに示すように、中央層フィルム84はデバイスの中央層12の上面を覆うように位置し、孔85が壁83の上部のフィルムに形成されている(図2も参照)。変形可能な発泡体ガスケット36が希釈剤ウェル35の下側に配置され、希釈剤ウェルドック40との係合により領域B上の位置にウェルを載置したとき、ガスケット36は孔83を覆うが壁83を密閉するような力はかけない(すなわち、空気が壁83とガスケット36との間で移動できる)。孔を覆うことにより、通気孔チャネル部分82aおよび82bを連結し、チャネル65および希釈剤ウェル漏斗67を通り生ずる空気が逃げることが可能なチャネル82を形成する。(図4Cに点線で示すような)システムを通るこのような空気の移動は、蓋25を閉じることにより液体試料がチャネル60を通って増幅ウェルに流れ出るときに生ずる。
【0147】
希釈剤ウェル35の環状チャネル37へ押し下げる動作により、例えば、処理装置内の手段による係合により希釈剤ウェル35を希釈剤ウェルドック40と更に係合させることにより、ガスケット36は壁83に密閉係合するように押し込まれ、通気が閉鎖される。したがって、希釈剤受け漏斗67に流れた希釈剤は、チャネル60を進み、増幅ウェルへ至り、そこからチャネル70を通って混合ウェル75へ流れる。フィルム84は、希釈剤受け漏斗67の領域で予め穿孔されていてもよく(例えば、図2に示すような開口部87)、あるいは、希釈剤ウェル35のスパイクが中央層フィルム84を穿孔し、希釈剤が希釈剤ウェル35から希釈剤受け漏斗67へ移動するようにしてもよい。
【0148】
図5は、通気機能の代替的な実施形態をより詳細に示す。この図では、デバイスの中央層12をハウジングの下側部分15と共に示す。中央層12は、上側密閉フィルム84および下側密閉フィルム86で覆われている。空隙90は、中央層12を形成する材質と下側密閉フィルム86の間に存在する。
【0149】
図5Aは、希釈剤ウェル位置の所定位置に挟持された希釈剤ウェル35を示す。希釈剤ウェル35は、希釈剤ウェル位置において上側フィルム84の材質を介し中心層12に接触する変形可能な下側発泡体ガスケット36を備える。希釈剤ウェル35は、第2チャネルの入口を形成する希釈剤受け漏斗67の上に位置する。受け漏斗67の底部に通気孔93があり、受け漏斗67と空隙90との間の流体の連通を可能にする。Oリング94は、受け漏斗67の底部内に位置し、中央開口部を備える。図5Aに示すように通気孔が開放状態にあるとき、中央開口部を通って、空気などの流体が通過できる。
【0150】
図5Bは、希釈剤ウェル35がデバイスと完全に密閉係合するように押し込まれて、発泡体ガスケット36が圧縮されている状態を示す。希釈剤ウェルは、未だ閉鎖状態にあり、デバイス全体と密閉係合状態にある。ガスケット36を圧縮すると、希釈剤ウェル35の下に存在する空気が通気孔93を介して空隙90内に逃げることができる。
【0151】
Oリング94は、その後、密閉部材の作動により閉鎖状態へと移る。密閉部材は、当該例示的な実施形態では、デバイスが係合する装置の一部であるピン95である。また、装置は、増幅反応が起こるのに必要な加熱/冷却サイクルおよび適時に希釈剤ウェルを開口しやすくする。図5Cに示すように、ピン95が、通気孔93直下のハウジングの下側部分15に形成された孔96を貫通して延伸する。孔96があるにもかかわらず、デバイスの内部は、通気孔および孔96の間にある下側密閉フィルム86の存在により外気から密閉される。ピン95が孔96を覆うフィルム86に接触している。フィルムは可塑性があるので、ピンがOリング94と接触するように上に位置することができる。Oリング94に対し上向きの圧力を与えると、図5Cに示すように、通気孔93が閉鎖状態になる。
【0152】
希釈剤ウェル35のボタン部45を押すと、希釈剤ウェル35の開口を覆うフィルム47(図示せず)が、希釈剤受け漏斗67の上にある上部密閉フィルム84と同様に、ウェル内で下方に突出したスパイク(図示せず)によって穿孔される。希釈剤は、その後、希釈剤受け漏斗67を通過し、第2チャネルおよび増幅ウェルに流入することにより、増幅ウェルの内容物が混合ウェルに向かい、そして最終的にLFDへと「流れ出る」。
【0153】
図6は、増幅スピゴット55の下面図である。増幅スピゴットは、一般的に円筒形状であり、ユーザがスピゴットに当接配置可能な増幅ウェルの内壁に摩擦係合できる円形の外壁200を有するか、または、ユーザによりすでにスピゴットを覆うように配置して設けられている。あるいは、増幅ウェルを、ウェル内に延伸するスピゴット55と共にデバイスと一体的な部分として形成してもよい。スピゴット55の形状は均一な円筒形ではなく、長い半部205および短い半部210を備える。長い半部205の材質に、それぞれ、チャネル60の出口およびチャネル70の入口である開口部260および270が形成されている。短い半部210の材質には、チャネル65の出口である開口部265が形成されている。開口部260は、長い半部205の側壁200内のチャネルまたは切り欠きとして形成されている。
【0154】
図7は、蓋25を閉じる動作により液体試料がチャネル60および開口部260を介して増幅ウェル56に移動した後で、希釈剤がデバイスに分注される前の時点における、増幅ウェル56が係合している状態のスピゴット55の断面図(チャネル65の二等分図)である。本図では、中央層12の材質内に溝部65aおよび下向きの管部65bとして形成されているチャネル65を示す。フィルム84は、中心層12の上面を覆っている。開口部265は、チャネル65の出口であり、スピゴットの短い半部210内に形成されている。断面図の方向の関係で、長い半部205内のチャネルおよび開口部は図示されていない。増幅ウェル56の内壁は、スピゴット55の外壁200と摩擦係合している。液体試料は、図7において300と付されている。
【0155】
増幅ウェルが別個のモジュールとして形成されておらず代わりに、デバイス1の一体的な部分として形成されている場合、もちろん、別個のスピゴットがなくてもよいが、上述のように、ウェル内へ延伸する同等の機能を有してもよい。いずれにせよ、入口および出口開口部260、265、および270に類似する構成を設けるのが好ましく、特に、開口部260および270を増幅ウェルの底部に近い領域に形成し、開口部265をウェルの底部からより離れた領域に形成するのが好ましい。デバイス内における流体の混合を促進するため、そしてデバイスの各種チャネルおよびウェル内ならびにLFD上において、液体が適切に移動するのを妨害するおそれのある気泡の形成を避けるための、これらの開口部の相対配置が本発明者らによって見出された。
【0156】
全図において、デバイスを使用する際、希釈剤ウェル35をまず希釈剤ウェルドック40内および増幅スピゴット55と係合している増幅ウェルの位置に配置してもよい。ユーザにより試料が試料入口ウェル22に添加され、そしてユーザがおそらく手で蓋25を閉じる。あるいは、デバイスを装置内に配置し、蓋25の開閉をその装置により自動的に行う。蓋25を閉じると、栓27がウェル22の下側部分23の壁と密閉係合され、これにより液体試料がチャネル60内に移動し、スピゴット55の方向へ向かうようになる。液体がチャネル60を通り開口部260から増幅ウェル内へ流れ、そして、開口部260の形状により、増幅ウェルの側壁へ送達される。ここから、液体が側壁を下りウェルの底部へと流れる。増幅ウェルおよびチャネル60からの空気は、開口部265およびチャネル65を通り、そして領域Bの通気孔チャネル82を通って外部に逃げることができる。デバイスは、希釈剤ウェル35を取り囲む環状チャネル37が装置の中空円筒状部材と係合するように、処理装置に係合する。円筒状部材は、環状チャネルの外周部と係合可能に互換できる外周部を有する。この筒状部材により、希釈剤ウェル35をドック40内部により深く押し込むことができ、一実施形態では、ガスケット36により通気壁83に対する希釈ウェル位置の表面部を密閉して通気孔82が閉じるようにする。代替的に、図5のように、ガスケット36を圧縮することによって密閉し、装置によりピン95を伸長させ、Oリング94に接触して通気孔93を閉じるようにする。
【0157】
デバイスは、装置内の加熱手段とも係合し、増幅反応を実施する。反応終了時に、装置の一部である可動プランジャによって希釈剤ウェル35のボタン45が押される。分注した希釈剤の容量の精度は、希釈剤ウェルの容量および寸法、そして予め計算して決定された可動プランジャの移動距離の組み合わせによって制御される。希釈剤は、希釈剤受け漏斗67、チャネル65、スピゴット55の開口部265を通過して、増幅ウェル内に流れる。希釈剤の容量は増幅ウェル量の容量より大きくなっており、増幅ウェル内の液体が、希釈剤の前方に押し出され、開口部270、チャネル70、混合ウェル75を通過して液体が混合されてから、LFD80に流れるする。チャネル60および試料入口ウェル22は蓋25の係合によって密閉されているので、増幅ウェル内の液体が開口部260内に押し出されることはない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7