【文献】
N. Engl. J. Med., 2011.09, vol.365, No.12, p.1088-1098
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒスチジンアセテートバッファーがpH5.7であり、バッファー中のヒスチジンアセテート濃度が20mMであり、製剤中のスクロースの濃度が175mMであり、ポリソルベート20の濃度が0.03%である、請求項1〜3の何れか一項に記載の製剤。
ヒスチジンアセテートバッファーがpH5.7であり、バッファー中のヒスチジンアセテート濃度が20mMであり、製剤中のスクロースの濃度が175mMであり、ポリソルベート20の濃度が0.03%である、請求項5又は6に記載の製剤。
20mMヒスチジンアセテートバッファー、pH5.7、175mMスクロース、0.03%ポリソルベート20中に安定性が延長されている抗IL13抗体を含有する製剤であって、製剤中の抗体の濃度が125mg/mL又は150mg/mLであり、製剤の粘度が25℃で15センチポアズ(cP)未満であり、抗IL13抗体が、配列番号10のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む、製剤。
【発明を実施するための形態】
【0023】
別段の定めがない限り、本明細書中で使用される技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,N.Y.1994)及びMarch,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure 4th ed.,John Wiley & Sons(New York,N.Y.1992)は、本願で使用される多くの用語に対する一般的な指針を当業者に提供する。
【0024】
幾つかの定義
本明細書を解釈する目的のために、次の定義が適用され、単数形で使用される用語は、適切であるときは複数も含み、逆もまた成り立つ。下記で示される何らかの定義が参照により本明細書中に組み込まれる何らかの書類と対立する場合、以下で示される定義が優先する。
【0025】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が別段に明確に規定しない限り、複数への言及を含む。従って、例えば、「タンパク質」又は「抗体」への言及は、複数のタンパク質又は抗体をそれぞれ含み、「細胞」への言及は細胞の混合物などを含む。
【0026】
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効となるような形態であり、製剤が投与される対象にとって受け入れがたく毒性である更なる成分を含有しない調製物を指す。このような製剤は滅菌性である。「薬学的に許容可能な」賦形剤(ビヒクル、添加物)は、用いられる有効用量の活性成分を提供するために対象哺乳動物に合理的に投与され得るものである。
【0027】
「滅菌」製剤は、無菌であるか、又は全ての生きている微生物及びそれらの胞子を含まないかもしくは基本的に含まない。
【0028】
「凍結」製剤は、0℃を下回る温度の製剤である。一般に、この凍結製剤は、凍結乾燥されておらず、前又は後にも凍結乾燥に供されない。所定の実施態様では、凍結製剤は、(ステンレス鋼タンク中での)保存のための凍結製剤原料又は(最終バイアル形態での)凍結製剤を含む。
【0029】
「安定な」製剤は、それらの中のタンパク質が、基本的に、保存時の、その物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を保持するものである。所定の実施態様では、本製剤は、基本的に、保存時の、その物理的及び化学的安定性並びにその生物学的活性を保持する。保存期間は一般に、本製剤の意図される使用期限に基づいて選択される。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「安定性が延長された」製剤は、5℃での1年以上にわたる保存時に、その中のタンパク質が基本的にその物理的安定性、化学的安定性及び生物学的活性を保持するものを意味する。所定の実施態様では、保存は、5℃で2年以上である。所定の実施態様では、保存は、5℃で最長3年である。
【0031】
色及び/又は透明性を目視で調べた際に、又はUV光散乱によるか、又はサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した場合に、タンパク質が、凝集、沈殿及び/又は変性の兆候を示さないか又は非常に僅かな兆候しか示さない場合、タンパク質は、製剤処方中で「その物理的安定性を保持している」。
【0032】
ある時間での化学的安定性が、タンパク質が以下で定められるようなその生物学的活性を依然として保持すると考えられるようなものである場合、タンパク質は、製剤処方中で「その化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、タンパク質の化学的に改変された形態を検出及び定量することによって評価され得る。化学的改変は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、SDS−PAGE及び/又はマトリクス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)を用いて評価され得るサイズ改変(例えば切り出し)を含み得る。他のタイプの化学的改変としては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー又は画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)により評価され得る荷電変化(例えば脱アミド化の結果として生じるもの)が挙げられる。
【0033】
ある時間での抗体の生物学的活性が、例えば抗原結合アッセイ又は効力アッセイにおいて調べた場合、製剤処方が調製された時間に示される生物学的活性の約10%以内(アッセイのエラー以内)である場合、抗体は、製剤処方中で「その生物学的活性を保持する」。
【0034】
本明細書中で、モノクローナル抗体の「生物学的活性」は、抗体の、抗原への結合能を指す。これには、抗原への抗体結合及び、結果としてインビトロ又はインビボで測定され得る測定可能な生物学的反応が生じることが更に含まれ得る。このような活性はアンタゴニスト性又はアゴニスト性であり得る。
【0035】
「脱アミド化された」モノクローナル抗体は、その1以上のアスパラギン残基が例えばアスパラギン酸又はイソアスパラギン酸に対して誘導体化されているものである。
【0036】
「脱アミド化されやすい」抗体は、脱アミド化する傾向があることが分かっている1以上の残基を含むものである。
【0037】
「凝集しやすい」抗体は、特に凍結及び/又は撹拌時に他の抗体分子と凝集することが分かっているものである。
【0038】
「断片化しやすい」抗体は、例えばそのヒンジ領域で2以上の断片に切断されることが分かっているものである。
【0039】
「脱アミド化、凝集又は断片化を減少させる」とは、異なるpHで又は異なるバッファー中で処方されたモノクローナル抗体と比較して、脱アミド化、凝集又は断片化を妨げるか又はその量を減少させることであるものとする。
【0040】
処方される抗体は、基本的に純粋であり、望ましくは基本的に均一である(例えば混入タンパク質など不含)。「基本的に純粋」な抗体は、組成物の総重量に対して少なくとも約90重量%の抗体、又は少なくとも約95重量%を含む組成物を意味する。「基本的に均一」な抗体は、組成物の総重量に対して少なくとも約99重量%の抗体を含む組成物を意味する。
【0041】
「等張性」とは、関心のある製剤が、ヒト血液と基本的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張性製剤は、一般に、約250から350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば蒸気圧又はアイスフリージング型の浸透圧計を用いて測定され得る。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「バッファー」は、その酸−塩基共役成分の作用によってpHが変化しにくい緩衝化された溶液を指す。
【0043】
「ヒスチジンバッファー」は、ヒスチジンイオンを含むバッファーである。ヒスチジンバッファーの例としては、ヒスチジンクロリド、ヒスチジンアセテート、ヒスチジンリン酸、ヒスチジン硫酸、ヒスチジンコハク酸などが挙げられる。一実施態様では、ヒスチジンバッファーは、ヒスチジンアセテートである。一実施態様では、ヒスチジンアセテートバッファーは、L−ヒスチジン(遊離塩基、固形物)を酢酸(液体)で滴定することによって調製される。所定の実施態様では、ヒスチジンバッファー又はヒスチジン−酢酸バッファーはpH4.5から6.5の間である。所定の実施態様では、ヒスチジンバッファー又はヒスチジン−酢酸バッファーは、pH5.4から6.0の間である。一実施態様では、バッファーのpHは5.6である。一実施態様では、バッファーのpHは5.7である。一実施態様では、バッファーのpHは5.8である。
【0044】
本明細書中で、「界面活性剤」は、表面活性剤、一般的には非イオン性界面活性剤を指す。本明細書中の界面活性剤の例としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80);ポロキサマー(例えばポロキサマー188);Triton;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウレル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−又はステアリル−スルホベタイン;ラウリル−、ミリスチル−、リノレイル−又はステアリル−サルコシン;リノレイル−、ミリスチル−又はセチル−ベタイン;ラウロアミドプロピル−、コカミドプロピル−、リノールアミドプロピル−、ミリストアミドプロピル−、パルミドプロピル−又はイソステアルアミドプロピル−ベタイン(例えばラウロアミドプロピル);ミリストアミドプロピル−、パルミドプロピル−又はイソステアルアミドプロピル−ジメチルアミン;メチルココイルタウリン酸ナトリウム又はメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム;及びMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール及び、エチレン及びプロピレングリコールのコポリマー(例えばプルロニック、PF68など)などが挙げられる。一実施態様では、界面活性剤はポリソルベート20である。
【0045】
「保存料」は、場合によっては、基本的にその中の細菌作用を減少させるために製剤中に含まれ得る、したがって例えば多用途製剤の製造を促進する化合物である。可能性のある保存料の例としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリドの混合物)及びベンゼトニウムクロリドが挙げられる。他のタイプの保存料としては、芳香族アルコール、例えばフェノール、ブチル及びベンジルアルコールなど、アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベンなど、カテコール、レゾルシノール、シクロへキサノール、3−ペンタノール及びm−クレゾールが挙げられる。一実施態様では、本明細書中の保存料はベンジルアルコールである。
【0046】
「ポリオール」は、複数のヒドロキシル基を有する物質であり、糖(還元及び非還元糖)、糖アルコール及び糖酸を含む。ポリオールは、本製剤中に場合によっては含まれ得る。所定の実施態様では、本明細書中のポリオールは、約600kD未満(例えば約120から約400kDの範囲)の分子量を有する。「還元糖」は、金属イオンを還元し得るか又はタンパク質中のリジン及び他のアミノ基と共有結合的に反応し得るヘミアセタール基を含有するものであり、「非還元糖」は、還元糖のこれらの特性を持たないものである。還元糖の例は、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース及びグルコースである。非還元糖としては、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース及びラフィノースが挙げられる。マンニトール、キシリトール、エリスリトール、スレイトール、ソルビトール及びグリセロールは、糖アルコールの例である。糖酸に関しては、これらには、L−グルコネート及びその金属塩が含まれる。製剤が凍結−融解安定性であることが望ましい場合、ポリオールは、一般的には、凍結温度(例えば−200℃)で結晶化して製剤中で抗体を不安定化しないものである。一実施態様では、ポリオールは非還元糖である。あるこのような実施態様において、非還元糖はスクロースである。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「喘息」は、不定で再発性の症状、原因となる炎症を付随していてもよいし、又は付随しなくてもよい、(例えば気管支拡張剤による)可逆性の気流閉塞及び気管支過敏性を特徴とする複合障害を指す。喘息の例としては、アスピリン過敏性/悪化喘息、アトピー性喘息、重度喘息、軽度喘息、中度から重度の喘息、コルチコステロイド未感作喘息、慢性喘息、コルチコステロイド耐性喘息、コルチコステロイド難治性喘息、新たに診断された及び未治療の喘息、喫煙による喘息、コルチコステロイドにおいてコントロール不良である喘息及びJ Allergy Clin Immunol(2010)126(5):926−938において述べられるような他の喘息が挙げられる。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「治療」は、治療されている個体又は細胞の自然経過を変化させようとする臨床的介入を指し、一連の臨床病態前又はその間に行われ得る。治療の所望の効果としては、疾患又はその状態もしくは症状の発症又は再発を予防すること、疾患の状態又は症状を緩和すること、疾患の何らかの直接的又は間接的な病理的帰結を軽減すること、疾患進行速度を遅らせること、疾患状態を改善又は緩和すること及び寛解又は予後の向上を達成することが挙げられる。
【0049】
「有効量」とは、所望の治療又は予防的結果を達成するための投与量で、それに必要な時間にわたって効果的である量を指す。治療剤の「治療的有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別及び体重並びに、抗体が個体において所望の反応を誘発する能力などの要因に従い変動し得る。治療的有効量はまた、治療剤の何らかの毒性又は有害作用を治療的に有益な効果が上回るものでもある。
【0050】
「個体」、「対象」又は「患者」は脊椎動物である。所定の実施態様では、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳動物としては、霊長類(ヒト及び非ヒト霊長類を含む。)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)が挙げられるが、これらに限定されない。所定の実施態様では、哺乳動物はヒトである。
【0051】
「医薬」は、疾患、障害及び/又は状態を治療するための活性のある薬物である。
【0052】
「抗体」(Ab)及び「免疫グロブリン」(Ig)は、同様の構造的特徴を有する糖タンパク質を指す。抗体が特異的な抗原に対する結合特異性を示し、一方で、免疫グロブリンは、一般に抗原特異性を欠く抗体及び他の抗体様分子の両方を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えばリンパ系により低レベルで、骨髄腫により高レベルで産生される。
【0053】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味において交換可能に使用され、モノクローナル抗体(例えば全長又はインタクトなモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多特異性抗体(例えば、それらが望ましい生物学的活性示す限り、二特異性抗体)を含み、(本明細書中でより詳細に記載されるような)ある一定の抗体断片も含み得る。抗体は、キメラ、ヒト、ヒト化及び/又は親和性成熟されたものであり得る。
【0054】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」という用語は、以下で定められるような抗体断片ではなく、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために、本明細書中で交換可能に使用される。この用語は、特に、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0055】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)
2及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;1本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。
【0056】
抗体のパパイン消化によって、それぞれが1個の抗原−結合部位及び残存「Fc」断片(この名称は、その易結晶化能を反映する。)を有する「Fab」断片と呼ばれる2個の同一の抗原−結合断片が生成される。ペプシン処理によって、2個の抗原−結合部位を有し、依然として抗原を架橋可能であるF(ab’)
2断片を生じる。
【0057】
「Fv」は、完全な抗原−結合部位を含有する最小抗体断片である。一実施態様では、2本鎖Fv種は、密着した非共有結合における1本の重鎖及び1本の軽鎖可変ドメインの二量体からなる。まとめると、Fvの6個のCDRは、抗体に対する抗原−結合特異性を付与する。しかし、1個の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3個のCDRしか含まないFvの半分)さえも、結合部位全体よりも親和性は低いものの、抗原を認識し、これに結合する能力を有する。
【0058】
Fab断片は、重鎖及び軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1以上のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加していることによってFab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’に対する本明細書中の指示記号である。F(ab’)
2抗体断片は元来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして作製された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
【0059】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、実質的に均一である抗体の集団から得られた抗体、すなわち、少量存在し得る突然変異の可能性、例えば天然の突然変異を除いて同一である集団を含む個々の抗体を指す。従って、修飾語「モノクローナル」は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。所定の実施態様では、このようなモノクローナル抗体は、一般に、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、ここで、標的−結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含む過程によって得られた。例えば、選択過程は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールなど、複数のクローンから特有のクローンを選択することであり得る。例えば、標的に対する親和性を向上させるために、標的結合配列をヒト化するために、細胞培養におけるその産生を向上させるために、インビボでのその免疫原性を低下させるために、多特異性抗体を作製するためになど、選択された標的結合配列を更に改変し得ること、及び改変された標的結合配列を含む抗体も本発明のモノクローナル抗体であることを理解されたい。一般に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤と対照的に、モノクローナル抗体製剤の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体製剤は、一般にはそれらに他の免疫グロブリンが混入していない点で有利である。
【0060】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団から得られるような抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法によって抗体の産生を必要とするものとして解釈されるものではない。例えば、本発明に従い使用しようとするモノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法(例えばKohlerら、Nature,256:495(1975);Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2
nd ed.1988);Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えばClacksonら、Nature,352:624−628(1991);Marksら、J.Mol.Biol.222:581−597(1992);Sidhuら、J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004);Leeら、J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004);及びLeeら、J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)参照及びヒト免疫グロブリン遺伝子座又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は全てを有する動物においてヒト又はヒト様抗体を作製するための技術(例えばWO98/24893;WO96/34096;WO96/33735;WO91/10741;Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature 362:255−258(1993);Bruggemannら、Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号;Marksら、Bio.Technology 10:779−783(1992);Lonbergら、Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−813(1994);Fishwildら、Nature Biotechnol.14:845−851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)及びLonberg及びHuszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)参照)を含む様々な技術によって作製され得る。
【0061】
本明細書中のモノクローナル抗体は、具体的に、重及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種由来であるか、又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又はそれと相同であり、一方で鎖の残りの部分が別の種由来であるか、又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又はそれと相同である、「キメラ」抗体並びに、望ましい生物学的活性を示す限りこのような抗体の断片を含む(米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6855−9855(1984))。
【0062】
「ネイティブ抗体」は、各種構造を有する天然の免疫グロブリン分子を指す。例えば、ネイティブIgG抗体は、ジスルフィド結合される2本の同一の軽鎖及び2本の同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。NからC末端へ、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)とそれに続く3個の定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有する。同様に、NからC末端へ、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)とそれに続く定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうち1つに割り当てられ得る。
【0063】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体を抗原に結合させることに関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に、各ドメインが4個の保存的フレームワーク領域(FR)及び3個の超可変領域(HVR)を含む、同様の構造を有する。(例えばKindtら、Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,91頁(2007)参照)。抗原−結合特異性を付与するためには、1個のVH又はVLドメインで十分であり得る。更に、特定の抗原に結合する抗体は、それぞれ相補的VL又はVHドメインのライブラリをスクリーニングするために、抗原に結合する抗体からのVH又はVLドメインを用いて単離され得る。例えばPortolanoら、J.Immunol.150:880−887(1993);Clarksonら、Nature 352:624−628(1991)を参照のこと。
【0064】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。所定の実施態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、及び一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、これにおいて、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに相当し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに相当する。ヒト化抗体は、場合によってはヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化型」とは、ヒト化が行われた抗体を指す。
【0065】
「超可変領域」又は「HVR」という用語は、本明細書中で使用される場合、配列において超可変性であり、及び/又は構造的に定められるループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの各領域を指す。一般に、ネイティブの4本鎖抗体は、6個のHVR;VHにおいて3個(H1、H2、H3)及びVLにおいて3個(L1、L2、L3)を含む。HVRは、一般に、超可変ループからの及び/又は「相補性決定領域」(CDR)からのアミノ酸残基を含み、後者は、最大の配列可変性であり、及び/又は抗原認識に関与する。代表的な超可変ループは、アミノ酸残基26−32(L1)、50−52(L2)、91−96(L3)、26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3)で生じる。(Chothia及びLesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。代表的なCDR(CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、CDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3)は、L1のアミノ酸残基24−34、L2の50−56、L3の89−97、H1の31−35B、H2の50−65及びH3の95−102で生じる(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。VH中のCDR1を除き、CDRは一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。CDRはまた、抗原に接触する残基である「特異性決定残基」又は「SDR」も含む。SDRは、短縮型−CDR又はa−CDRと呼ばれるCDRの領域内に含有される。代表的なa−CDR(a−CDR−L1、a−CDR−L2、a−CDR−L3、a−CDR−H1、a−CDR−H2及びa−CDR−H3)は、L1のアミノ酸残基31−34、L2の50−55、L3の89−96、H1の31−35B、H2の50−58及びH3の95−102で生じる。(Almagro及びFransson,Front.BioSci.13:1619−1633(2008)を参照のこと)。別段の指示がない限り、可変ドメイン中のHVR残基及び他の残基(例えばFR残基)は、Kabatら、上出に従い本明細書中で付番される。
【0066】
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含むものであり、及び/又は、本明細書中で開示されるようなヒト抗体を作製するための技術の何れかを用いて作製されてきた。このような技術としては、ヒト−由来コンビナトリアルライブラリ、例えばファージディスプレイライブラリをスクリーニングすること(例えばMarksら、J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)及びHoogenboomら、Nucl.Acids Res.,19:4133−4137(1991)参照);ヒトモノクローナル抗体の作製のためにヒト骨髄腫及びマウス−ヒトへテロ骨髄腫細胞株を使用すること(例えばKozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.55−93(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoernerら、J.Immunol,147:86(1991)参照);及び内因性免疫グロブリン産生を欠くヒト抗体の全レパートリーを産生可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)においてモノクローナル抗体を作製すること(例えばJakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci USA,90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature,362:255(1993);Bruggermannら、Year in Immunol.,7:33(1993)参照)が挙げられる。このヒト抗体の定義では、具体的に、非ヒト動物からの抗原−結合残基を含むヒト化抗体が排除される。
【0067】
「親和性成熟」抗体は、その1以上のCDRにおいて1以上の改変があり、その結果、そのような改変を持たない親抗体と比較して抗原に対する抗体の親和性が向上しているものである。一実施態様では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対するナノモル単位又は更にピコモル単位の親和性を有する。親和性成熟抗体は、当技術分野で公知の手順によって作製される。Marksら、Bio/Technology 10:779−783(1992)は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載する。HVR及び/又はフレームワーク残基の無作為突然変異誘発は、Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809−3813(1994);Schierら、Gene 169:147−155(1995);Yeltonら、J.Immunol.155:1994−2004(1995);Jacksonら、J.Immunol.154(7):3310−9(1995);及びHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889−896(1992)により記載されている。
【0068】
「遮断抗体」又は「アンタゴニスト抗体」は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低下させるものである。ある種の遮断抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を部分的に又は完全に阻害する。
【0069】
抗体の「クラス」は、その重鎖により保持されるあるタイプの定常ドメイン又は定常領域を指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に更に分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。
【0070】
本明細書中で使用される場合、「抗IL13抗体」は、レブリキズマブも指し、ヒトIL13に結合するヒト化IgG4抗体を意味する。一実施態様では、抗IL13抗体は、3つの重鎖CDR、つまり、CDR−H1(配列番号1)、CDR−H2(配列番号2)及びCDR−H3(配列番号3)を含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、3つの軽鎖CDRS、CDR−L1(配列番号4)、CDR−L2(配列番号5)及びCDR−L3(配列番号6)を含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDR、つまり、CDR−H1(配列番号1)、CDR−H2(配列番号2)、CDR−H3(配列番号3)、CDR−L1(配列番号4)、CDR−L2(配列番号5)及びCDR−L3(配列番号6)を含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号7及び8から選択されるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域、VHを含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域、VLを含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号7及び8から選択されるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域、VH、及び配列番号9のアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域、VLを含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号10又は配列番号11又は配列番号12又は配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。一実施態様では、抗IL13抗体は、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号13から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。抗IL13抗体は、国際公開第2005/062967号に更に記載されている。
【0071】
「単離された」生体分子、例えば核酸、ポリペプチド又は抗体などは、その天然環境の少なくとも一つの成分から、同定され、分離され、及び/又は回収されたものである。
【0072】
本明細書中の「約」値又はパラメーターに対する言及は、それ自体、その値又はパラメーターを対象とする実施態様を含む(及び記載する。)。例えば「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。
【0073】
「皮下投与デバイス」は、皮下経路によって、薬物、例えば、治療用抗体又は製剤処方を投与するために適用されるか又は設計される装置を指す。代表的な皮下投与デバイスとしては、プレフィルドシリンジを含むシリンジ、注射装置、注入ポンプ、ペン型注射器、針なし装置及びパッチ送達系が挙げられるが、これらに限定されない。皮下投与デバイスは、製剤処方のある一定の体積、例えば約1.0mL、約1.25mL、約1.5mL、約1.75mL又は約2.0mLを投与する。
【0074】
「添付文書」又は「ラベル」は、指示、用途、投与量、投与、禁忌、包装された製造品と組み合わせるべき他の治療用製造品に関する情報、及び/又はこのような治療用製造品又は医薬の使用に関する警告などを含有する治療用製造品又は医薬の市販パッケージ中に習慣的に含まれる説明書を指すために使用される。
【0075】
「キット」は、少なくとも一つの試薬、例えば喘息又は他の肺障害の治療のための医薬を含む何らかの製造品(例えばパッケージ又は容器)である。所定の実施態様では、本製造品は、本発明の方法を行うためのユニットとして販売促進、流通又は販売される。
【0076】
「標的視聴者」は、個人の患者、患者集団、新聞、医学文献及び雑誌の読者、テレビ又はインターネット視聴者、ラジオ又はインターネットリスナー、医師、製薬会社など、特に、特定の使用、治療又は適用に対して、マーケティングするか又は宣伝することなどによって、特定の医薬を販売促進するか又は、販売促進しようとする対象の人又は研究所の群である。
【0077】
「血清試料」という用語は、個体から得られる何らかの血清試料を指す。哺乳動物から血清を得るための方法は当技術分野で周知である。
【0078】
「全血」という用語は、個体から得られる何らかの全血試料を指す。一般的には、全血は、血液成分、例えば細胞成分及び血漿の全てを含有する。哺乳動物から全血を得るための方法は当技術分野で周知である。
【0079】
ある種の疾患又は障害に罹患している患者に対する臨床的利益の向上と関連するか又は特定の治療剤もしくは治療レジメンに対する反応を予測するバイオマーカーの「量」又は「レベル」は、生体試料中で検出可能なレベルである。これらは、当業者にとって公知であり、また本明細書中でも開示される方法によって測定され得る。評価されるバイオマーカーの発現レベル又は量は、治療又は治療剤に対する反応又は予測される反応を判定するために使用され得る。
【0080】
「発現のレベル」又は「発現レベル」という用語は、一般に交換可能に使用され、一般的に生体試料中のアミノ酸生成物又はタンパク質の量を指す。「発現」は一般的に、遺伝子にコードされる情報が細胞に存在し、操作する構造に変換される過程を指す。従って、本明細書中で使用される場合、遺伝子の「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、タンパク質への翻訳又は更にそのタンパク質の翻訳後修飾を指し得る。
【0081】
喘息及び他の肺疾患及びある種のアレルギー、自己免疫及び他の炎症性疾患
喘息は、気道炎症、応答性亢進及び閉塞を含む慢性肺疾患として記載される。生理的に、気道応答性亢進は、メタコリン又はヒスタミンでの気管支誘発試験後の気管支の気流減少によって明らかにされる。気道閉塞を誘発する他の誘発因子としては、冷気、運動、上気道ウイルス感染、喫煙及び呼吸器アレルゲンが挙げられる。アレルゲンでの気管支誘発試験により、迅速な初期免疫グロブリンE(IgE)が介在する気管支気流の減少と、多くの患者ではそれに続く4から8時間にわたる気管支気流減少を伴う晩期IgE介在反応が誘発される。初期反応は、ヒスタミン、PGD−2−、ロイコトリエン、トリプターゼ及び血小板活性化因子(PAF)などの炎症性物質の急性放出によって引き起こされ、一方で晩期反応は、デノボ合成されたプロ炎症性サイトカイン(例えばTNFα、IL4、IL13)及びケモカイン(例えばMCP−1及びΜΙΡ−Ια)によって引き起こされる(Busseら、Allergy:Principles and Practice,Ed.Middleston,1173(1998)において)。慢性喘息患者において、持続性の肺症状にはTh2細胞の反応の高まりが介在する。Th2サイトカインは、げっ歯類の喘息モデルで示されるように(Akbariら、Nature Med.,9:582(2003))、特に気道におけるNK表現型(NKT)があるTh2細胞により産生されるIL13及びIL4は、この疾患に極めて重要な関与があると考えられる(Larcheら、J Allergy Clin.Immunol.,111:450(2003))。喘息性気道の肉眼的所見は、肺の過膨脹、平滑筋肥厚、網状板肥大、粘膜浮腫、上皮細胞腐肉形成、繊毛細胞崩壊及び粘液腺分泌過多を示す。顕微鏡的に、喘息は、気管支組織における好酸球、好中球、リンパ球及び形質細胞数、気管支分泌物及び粘液の増加があることを特徴とする。最初に、活性化CD4+T−リンパ球による血流から気道への白血球の動員がある。活性化T−リンパ球はまた、好酸球、肥満細胞及びリンパ球からの炎症性メディエーターの放出にも向かわせる。更に、Th2細胞は、IL4、IL5、IL9及びIL13を産生する。IL4は、IL13と合わせて、IgMからIgE抗体へのスイッチをシグナル伝達する。
【0082】
アレルゲンによる膜−結合IgE分子の架橋によって、肥満細胞が脱顆粒し、ヒスタミン、ロイコトリエン及び、気道炎症を永続化させる他のメディエーターを放出する。IL5は、好酸球の動員及び活性化を活性化する。活性化された肥満細胞及び好酸球はまた、炎症の永続化を促進するそれらのサイトカインも産生する。肺組織に対する損傷とその後の修復を伴う、肺におけるこれらの炎症サイクルの反復は、気道の長期の構造的変化(「リモデリング」)を引き起こし得る。
【0083】
中度の喘息は、現在、破綻的症状又はアレルゲンもしくは運動誘発性喘息を軽減するために、抗炎症−コルチコステロイド又は肥満細胞阻害剤、例えばクロモグリク酸ナトリウム又はネドクロミルなどを毎日吸入することと、それに加えて必要に応じて(1日3から4回)β2−アゴニストを吸入することにより処置している。クロモグリク酸ナトリウム及びネドクロミルは、気管支痙攣及び炎症を阻止するが、通常は、アレルゲン又は運動に関連する喘息に対してのみ、及び一般的には若年性喘息に対してのみ有効である。コルチコステロイド吸入によって、炎症、気道反応性亢進及び閉塞を改善し、多くの急性増悪を抑える。しかし、効果が現れるまで少なくとも1ヶ月を要し、顕著な改善が生じるには最長1年かかる。最も頻度の高い副作用は、嗄声及び口腔真菌感染症、すなわちカンジダ症である。より重篤な副作用が報告されており、例えば部分的な副腎抑制、発育抑制及び骨形成の低下であるが、これはより高い用量を使用した場合のみである。ベクロメタゾン、トリアムシノロン及びフルニソリドはおそらく同様の効力を有し;一方でブデソニド及びフルチカゾンはより強力であり、全身的な副作用はあまりないと報告されている。
【0084】
軽度疾患がある患者さえも、活性化T細胞、肥満細胞及び好酸球による粘膜及び上皮の浸潤含め、気道炎症を示す。T細胞及び肥満細胞は、好酸球増殖及び成熟並びにIgE抗体の産生を促進するサイトカインを放出し、これらは、次に毛細血管透過性を向上させ、上皮を破壊し、神経反射及び粘液分泌腺を刺激する。その結果、喘鳴、咳及び呼吸困難により明らかとなる気道反応性亢進、気管支収縮及び分泌過多が起こる。
【0085】
従来、喘息は、経口及び吸入気管支拡張剤で治療されてきた。これらの薬剤は喘息の症状を助けるが、基礎となる炎症に対しては何もしない。この10年間の、又は喘息の原因における炎症の重要性の認識から、コルチコステロイドの使用が増加しているが、多くの患者は、喘息のコントロールは不良のままである。
【0086】
喘息に加えて、本発明の製剤によって治療され得る他の疾患としては、アレルギー、自己免疫疾患又は他の炎症性疾患が挙げられる。他のアレルギー性疾患としては、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物に対する過敏性及び蕁麻疹が挙げられ;免疫介在性の皮膚疾患は、水疱性皮膚疾患、多形性紅斑及び接触性皮膚炎が挙げられ;自己免疫疾患としては、乾癬、関節リウマチ、若年性慢性関節炎;炎症性腸疾患(すなわち、潰瘍性大腸炎、クローン病)が挙げられ;IL13が関連する他の疾患としては、特発性間質性肺炎、杯細胞化生、炎症性及び線維肺疾患、例えば嚢胞性線維症など、グルテン過敏性腸疾患及びウィップル病;肺の免疫性疾患、例えば好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺炎;慢性閉塞性肺疾患、RSV感染、ブドウ膜炎(uvelitis)、強皮症、骨粗鬆症及びホジキンリンパ腫が挙げられる。
【0087】
特発性肺線維症(IPF)は、本発明の製剤での治療に適している障害である。IPFは、肺実質の進行性の間質線維化を特徴とする拘束性肺疾患であり、米国でおよそ100,000人の罹患者がいる(Raghuら、Am J Respir Crit Care Med 174:810−816(2006))。IPFが関与するこの間質線維化は、進行性の肺機能の喪失に至り、その結果、殆どの患者が呼吸不全により死亡する。診断時からの生存期間の中央値は2から3年間である(Raghuら、Am J Respir Crit Care Med 183:788−824(2011))。IPFの病因及びキーとなる分子的及び病態生理学的な作動因子は不明である。IPF患者において生存を延長させることが示されている唯一の治療は肺移植である(Thabutら、Annals of internal medicine 151:767−774(2009))。しかし、肺移植は死亡率が無視できないものであり、全てのIPF患者が移植の適切な候補というわけではなく、適切なドナー肺は比較的不足状態にある。多くの試みにもかかわらず、一部の介入が一部の患者において肺機能低下の速度を遅らせると考えられているものの、今まで、IPF患者における無作為化プラセボ介入試験において実質的に生存を延長させることが示されている薬物療法はない(Raghuら、Am J Respir Crit Care Med 183:788−824(2011);Richeldiら、The New England J.of Med.365:1079−1087(2011))。
【0088】
全てのIPF患者について予後不良であるが、病状経過は非常に異なる(Raghuら、Am J Respir Crit Care Med 183:788−824(2011))。一部の患者は、比較的緩徐進行性の経過を示し、10年以上にわたり比較的一定の速度で肺機能が失われ、一方で、他の患者は、肺機能低下がより急速であり、診断の1又は2年以内に死を迎える。更に、一部の患者では疾患が急性に増悪し、一般的には肺機能の急激で劇的な低下を特徴とする。一般にこれらの患者は、急性事象後に完全に回復することはなく、増悪中又はその直後に死亡することが多い。病状経過がこのように様々であることから、それらの疾患の基礎となる病態生理学的要因がIPF患者によって異なり得、本発明の製剤などの分子的に標的化される治療剤の影響の受け易さも異なり得ることが示唆される。
【0089】
好酸球性炎症は、アレルギー性及び非アレルギー性両方の様々な疾病に関連する(Gonlugur(2006)Immunol.Invest.35(1):29−45)。炎症は、損傷に対する生体組織の修復反応である。炎症反応の特徴は、組織そのもので産生されるある種の化学物質による損傷組織における白血球の蓄積である。好酸球白血球は、アレルギー性障害、蠕虫感染及び新生物疾患などの多岐にわたる状態で蓄積する(Kudlaczら、(2002)Inflammation 26:111−119)。免疫系の成分である好酸球白血球は、粘膜表面の防御的エレメントである。これらは、抗原だけでなく、寄生生物、化学物質及び外傷に対しても反応する。
【0090】
組織好酸球増多は、湿疹、天疱瘡、急性蕁麻疹及び中毒性表皮剥離症などの皮膚疾患において、並びにアトピー性皮膚炎において生じる([Rzanyら、1996])。好酸球は、組織及びIgE介在性アレルギー性皮膚反応において空の顆粒タンパク質に蓄積する([Nielsenら、2001])。肥満細胞と組み合わさった好酸球は、関節の炎症を引き起こすと思われる(Miossecら、1997)。好酸球性炎症は、関節外傷を合併することがある。滑液好酸球増多は、関節リウマチ、寄生性疾患、過好酸球増加症候群、ライム病などの疾患及びアレルギーの過程並びに関節血症及び関節造影と関連し得る([Atanesら、1996])。好酸球性炎症は、骨にも影響を及ぼし得る([Yetiserら、2002])。好酸球性筋疾患の例としては、好酸球性筋周膜炎、好酸球性多発性筋炎及び局所性好酸球性筋炎が挙げられる([Lakhanpalら、1988])。骨格筋に影響を及ぼす好酸球性炎症は、寄生生物感染又は薬物又は過好酸球増加症の一部の全身性障害の特性(例えば特発性過好酸球増加症候群及び好酸球増多−筋痛症候群と関連し得る。好酸球は、自己免疫抗体により認識されるエピトープに対する炎症反応に関与する([Engineerら、2001])。結合組織疾患は、好中球性、好酸球性又はリンパ球性の血管の炎症に至り得る([Chenら、1996])。組織及び末梢血好酸球増多は、活動性リウマチ疾患において起こり得る。ある種の結合組織疾患である強直性脊椎炎における血清ECPレベルの上昇は、その根本的過程にも好酸球が関与することを示唆する(Felteliusら、1987)。ヴェーゲナー肉芽腫は、肺結節、胸水及び末梢血好酸球増多を示すことは稀であり得る([Krupskyら、1993])。
【0091】
少なくとも400/mm
3の末梢血好酸球増多は、全身性硬化症の症例の7%、局限性強皮症の症例の31%及び好酸球性筋膜炎の症例の61%で起こり得る([Falanga及びMedsger,1987])。強皮症は、マイスナー及びアウエルバッハ神経叢と酷似した炎症過程を生じ、これは、胃腸系において肥満細胞及び好酸球白血球からなる。好酸球由来の神経毒は、強皮症で起こるような胃腸運動機能不全に関与し得る([de Schryver Kecskemeti及びClouse,1989])。
【0092】
好酸球は、局所的([Varga及びKahari,1997])又は全身的([Bourosら、2002])結合組織増殖を伴い得る。これらは、線維芽細胞においてプロテオグリカン分解を阻害することによって線維症を誘発し得([Hernnasら、1992])、線維芽細胞は、GM−CSFを分泌することによって好酸球生存に介在する([Vancheriら、1989])。好酸球は、鼻腔([Bacherctら、2001])、気管支([Arguelles及びBlanco,1983])及び胃腸ポリープ組織([Assarian及びSundareson,1985])で見出され得る。同様に、好酸球は、炎症性偽腫瘍(筋線維芽細胞性腫瘍)に局在し得る。好酸球は、眼窩部における炎症性偽腫瘍に付随することが多く、この場合、この状態は、血管性浮腫又はアレルギー性鼻結膜炎と類似した症状を呈し得る([Liら、1992])。
【0093】
好酸球性炎症は、組織外傷(例えば手術又は損傷の結果として)で見出され得る。好酸球性炎症はまた、心血管系疾病(例えば好酸球性心筋炎、好酸球性冠動脈炎、虚血性心疾患、急性心筋梗塞、心臓破裂)とも関連し得る。壊死性炎症過程もまた好酸球性炎症(多発性筋炎、冠動脈解離、ニューロ・ベーチェット病の壊死性病変、認知症、脳梗塞)を含み得る。
【0094】
幾つかの治療剤
喘息及び他の肺疾患の治療のための治療剤が本明細書中で提供される。一実施態様では、治療剤は抗IL13抗体であり、またレブリキズマブとも呼ばれる。IgG4抗体としてのレブリキズマブ。一実施態様では、本抗IL13抗体は、3つの重鎖CDR、つまり、CDR−H1(配列番号1)、CDR−H2(配列番号2)及びCDR−H3(配列番号3)を含む。一実施態様では、本抗IL13抗体は、3つの軽鎖CDR、つまり、CDR−L1(配列番号4)、CDR−L2(配列番号5)及びCDR−L3(配列番号6)を含む。一実施態様では、本抗IL13抗体は、3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDR、つまり、CDR−H1(配列番号1)、CDR−H2(配列番号2)、CDR−H3(配列番号3)、CDR−L1(配列番号4)、CDR−L2(配列番号5)及びCDR−L3(配列番号6)を含む。一実施態様では、本抗IL13抗体は、配列番号7及び8から選択されるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域VHを含む。一実施態様では、本抗IL13抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域VLを含む。一実施態様では、本抗IL13抗体は、配列番号7及び8から選択されるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域VHと、配列番号9のアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域VLとを含む。一実施態様では、本抗IL13抗体は、配列番号10又は配列番号11又は配列番号12又は配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖を含む。一実施態様では、本抗IL13抗体は、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。一実施態様では、本抗IL13抗体は、配列番号10、配列番号11、配列番号12及び配列番号13から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。抗IL13抗体は、国際公開第2005/062967号で更に記載されている。
【0095】
別の態様では、抗IL−13抗体は、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。所定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含む抗IL−13抗体は、ヒトIL−13への結合能を保持する。所定の実施態様では、配列番号8において、全部で1から10個のアミノ酸が置換され、変更され、挿入され及び/又は欠失させられている。所定の実施態様では、CDRの外側の領域(すなわちFRにおいて)で、置換、挿入又は欠失が起こる。場合によっては、本抗IL13抗体は、その配列の翻訳後修飾を含め、配列番号8におけるVH配列を含む。
【0096】
別の態様では、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗IL−13抗体が提供される。所定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含む抗IL−13抗体は、IL−13への結合能を保持する。所定の実施態様では、全部で1から10個のアミノ酸が、配列番号9において置換され、挿入され、及び/又は欠失させられている。所定の実施態様では、CDRの外側の領域(すなわちFRにおいて)でこの置換、挿入又は欠失が起こる。場合によっては、本抗IL−13抗体はその配列の翻訳後修飾を含め、配列番号9におけるVL配列を含む。
【0097】
また別の実施態様では、本抗IL−13抗体は、配列番号9のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVL領域及び配列番号8のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するVH領域を含む。
【0098】
幾つかの分子バイオマーカー
ある例では、ある治療剤での治療のために患者を選択する手段として、患者から得られる生体試料においてバイオマーカー、例えば血清バイオマーカーを定量する。米国特許出願第61/459760号、同第61/465425号、同第61/484650号及び同第61/574485号(「Diagnosis and Treatments Related to TH2 Inhibition)は、ペリオスチンアッセイ及び本明細書中に記載の抗IL13抗体製剤での治療のために患者を選択する方法を記載する。
【0099】
製剤のための一般的技術
抗IL13抗体を含有する製剤は、当技術分野で公知であり、本明細書中で更に記載されるようなある一定の賦形剤及び技術を用いて調製され、分析され得る。所定の実施態様では、処方しようとする抗体は、予め凍結乾燥に供されておらず、本明細書中の関心のある製剤は水性製剤である。所定の実施態様では、本抗体は、全長抗体である。一実施態様では、本製剤中の抗体は、抗体断片、例えばF(ab’)2であり、この場合、全長抗体に対して起こり得ない問題(Fabへの抗体の切り出しなど)に対処する必要があり得る。本製剤中に存在する抗体の治療的有効量は、例えば所望の用量体積及び投与方式を考慮することにより決定される。本製剤において、代表的な抗体濃度は、約0.1mg/mLから約250mg/mL又は約10mg/mLから約200mg/mL又は約50mg/mLから約175mg/mLである。一実施態様では、本抗IL13抗体は、125mg/mLの濃度で処方される。一実施態様では、本抗IL13抗体は、150mg/mLの濃度で処方される。
【0100】
pH緩衝溶液中に本抗体を含有する水性製剤が調製される。所定の実施態様では、そのバッファーは、約4.5から約6.5の範囲のpHを有する。所定の実施態様では、pHは、5.0から6.0のpHの範囲であるか、又はpH5.25から5.75の範囲、又はpH5.3から5.6の範囲である。本発明の所定の実施態様では、本製剤は、5.6又は約5.6のpHを有する。本発明の所定の実施態様では、本製剤は、5.7又は約5.7のpHを有する。本発明の所定の実施態様では、本製剤は、5.8又は約5.8のpHを有する。この範囲内でpHを調整するバッファーの例としては、酢酸(例えばヒスチジンアセテート、アルギニン酢酸、酢酸ナトリウム)、コハク酸(ヒスチジンコハク酸、アルギニンコハク酸、コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸、クエン酸及び他の有機酸バッファー及びそれらの組合せが挙げられる。バッファー濃度は、例えば本製剤のバッファー及び所望の等張性に依存して、約1mMから約600mMであり得る。所定の実施態様では、theは、約5mMから40mMの濃度のヒスチジンを含有する。一実施態様では、バッファーは、20mMヒスチジンアセテート、pH5.7である。所定の実施態様では、バッファーは20mMヒスチジンコハク酸、pH5.7である。
【0101】
抗体製剤に界面活性剤が場合によっては添加され得る。代表的な界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート(例えばポリソルベート20、80など)又はポロキサマー(例えばポロキサマー188)などが挙げられる。添加される界面活性剤の量は、処方される抗体の凝集を減少させ、及び/又は本製剤中の微粒子の形成を最小限に抑え、及び/又は吸着を減少させるような量である。例えば、界面活性剤は、約0.001%から約0.5%又は約0.005%から約0.2%又は約0.01%から約0.1%の量で本製剤中に存在し得る。一実施態様では、界面活性剤は、0.03%の量で本製剤中に存在するポリソルベート20である。
【0102】
一実施態様では、本製剤は、上で特定された薬剤(例えば抗体、バッファー及び界面活性剤)を含有し、本質的に、1以上の保存料、例えばベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノール及びベンゼトニウムClなどは不含である。一実施態様では、本製剤は保存料を含有しない。別の実施態様では、特に本製剤が複数回用量製剤である場合、本製剤中に保存料が含まれ得る。保存料の濃度は、約0.1%から約2%又は約0.5%から約1%の範囲であり得る。1以上の他の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載のものなどが本製剤中に含まれ得るが、ただし、これらは本製剤の所望の特徴に悪影響を与えないものとする。許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤は、使用される投与量及び濃度で受容者に対して無毒性であり、更なる緩衝剤;共溶媒;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;キレート剤、例えばEDTAなど;金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体);生体分解性ポリマー、例えばポリエステルなど;及び/又は塩形成対イオンを含む。
【0103】
本明細書中のキレート剤の様々な記述はEDTAに焦点を当てることが多い一方で、当然のことながら、他の金属イオンキレート剤も本発明内に包含される。金属イオンキレート剤は、当業者にとって周知であり、金属イオンキレート剤としては、アミノポリカルボキシラート、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)、EGTA(エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸)、NTA(ニトリロトリ酢酸)、EDDS(エチレンジアミンジコハク酸)、PDTA(1,3−プロピレンジアミンテトラ酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)、ADA(β−アラニンジ酢酸)、MGCA(メチルグリシンジ酢酸)などが挙げられるが必ずしもこれらに限定されない。更に、本明細書中の幾つかの実施態様は、リン酸/ホスホン酸キレート剤を含む。所定の実施態様では、本製剤はメチオニンを含む。
【0104】
「安定化剤」として知られることがある等張剤は、液体組成物の等張性を調整するか又は維持するために存在する。タンパク質及び抗体などの大きな荷電生体分子で使用される場合、これらは、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それによって分子間及び分子内相互作用の可能性を減少させ得るので「安定化剤」と呼ばれることが多い。等張剤は、他の成分の相対量を考慮して、0.1%から25重量%又は1から5%の間の何れかの量で存在し得る。等張剤としては、多価糖アルコール、スリヒドリック(thrihydric)以上の糖アルコール、例えばグリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールが挙げられる。
【0105】
更なる安定化剤としては、増量剤から溶解促進剤、変性又は容器壁への付着を防ぐ薬剤まで機能が様々である、幅広い賦形剤が挙げられる。安定化剤は、0.1から10,000部/活性タンパク質又は抗体重量の範囲で存在し得る。典型的な安定化剤としては、多価糖アルコール(上記で列挙);アミノ酸、例えばアラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなど;有機糖又は糖アルコール、例えば、スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えばイノシトール)、ポリエチレングリコール;硫黄含有還元剤、例えば、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は他の免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンなど;単糖類(例えばキシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖類(例えばラクトース、マルトース、スクロース);三糖類、例えばラフィノース;及び多糖類、例えば、デキストリン又はデキストランが挙げられる。
【0106】
非イオン性界面活性剤又は洗剤(「湿潤剤」としても知られている。)は、治療剤の溶解を促進するために、並びに撹拌により誘導される凝集から治療用タンパク質を保護するために存在し、これによって、活性のある治療用タンパク質又は抗体の変性を引き起こさずにせん断表面応力に製剤を曝露させることも可能になる。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/mLから約1.0mg/mL、好ましくは約0.07mg/mLから約0.2mg/mLの範囲で存在する。
【0107】
適切な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポロキサマー(polyoxamer)(184、188など)、プルロニック(登録商標)ポリオール、Triton(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(Tween(登録商標)−20、Tween(登録商標)−80など)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50及び60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。使用され得るアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム及びスルホン酸ジオクチルナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0108】
タンパク質安定性を測定するための様々な分析技術は、当技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247−301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90(1993)で概説されている。安定性は、選択された時間にわたり選択された温度で測定され得る。所定の実施態様では、本製剤は、約40℃で少なくとも約2から4週間にわたり安定であり、及び/又は約5℃で少なくとも3ヶ月間にわたり安定であり、及び/又は約5℃で少なくとも6ヶ月間にわたり安定であり、及び/又は約5℃で少なくとも12ヶ月間にわたり安定であり、及び/又は約−20℃で少なくとも3ヶ月間又は少なくとも1年間にわたり安定である。所定の実施態様では、本製剤は、約25℃で少なくとも6ヶ月間にわたり安定であり、及び/又は約25℃で12ヶ月間にわたり安定であり、及び/又は約5℃で6ヶ月間にわたり安定であり、及び/又は約5℃で12ヶ月間にわたり安定であり、及び/又は約−20℃で少なくとも6ヶ月間にわたり安定であり、及び/又は約−20℃で少なくとも12ヶ月間にわたり安定であり、及び/又は5℃又は−20℃で少なくとも2年間にわたり安定である。所定の実施態様では、本製剤は、本製剤の凍結(例えば−70℃に)及び融解後、例えば1、2又は3サイクルの凍結及び融解後、安定である。凝集物形成を評価すること(例えばサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、濁度を測定することによって、及び/又は目視によって);陽イオン交換クロマトグラフィー、イメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)又はキャピラリーゾーン電気泳動を用いて電荷不均一性を評価することによるもの;アミノ末端又はカルボキシ末端配列分析;質量分析;還元された及びインタクトな抗体を比較するためのSDS−PAGE分析;ペプチドマップ(例えばトリプシン又はLYS−C)分析;抗体の生物学的活性又は抗原結合機能を評価することなどを含め、様々な異なる方法で安定性を定性的に及び/又は定量的に評価し得る。不安定性は、凝集、脱アミド化(例えばAsn脱アミド化)、酸化(例えばMet酸化)、異性化(例えばAsp異性化)、切り出し/加水分解/断片化(例えばヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン、N末端伸長、C末端プロセシング、グリコシル化の相違などのうち何れか1以上を含み得る。
【0109】
インビボ投与に対して使用しようとする製剤は滅菌状態でなければならない。これは、製剤調製前又は後の滅菌ろ過膜を通じたろ過によって容易に遂行される。
【0110】
公知の方法に従い、例えばボーラスとしての静脈内投与又は長時間にわたる持続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、局所又は吸入経路などによって、治療剤を投与し得る。場合によっては、様々な市販の装置を用いてミニポンプ注入を通じて投与を行い得る。
【0111】
本明細書中の製剤はまた、治療されている特定の適応症に対する必要に応じて、複数の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するもの、も含有し得る。あるいは、又は更に、本組成物は、細胞毒性剤、サイトカイン又は増殖阻害物質を含み得る。このような分子は、意図される目的に有効である量と組み合わせて適切に存在する。
【0112】
活性成分はまた、例えば、コアセルべーション技術によって又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中の、又はマクロエマルション中の、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル、及びポリ(メチルメタクリラート)マイクロカプセル中にも封入され得る。このような技術は、上出のRemington’s Pharmaceutical Sciences 18th edition中で開示される。
【0113】
持続放出製剤が調製され得る。持続放出製剤の適切な例としては、造形品の形態である、本抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリクス、例えばフィルム又はマイクロカプセルが挙げられる。持続放出マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタミン酸とのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)など、及びポリD−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。持続放出のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン−(rhIFN−)、インターロイキン−2及びMNrpg120を用いて良好に行われてきた。Johnsonら、Nat.Med.2:795−799(1996);Yasudaら、Biomed.Ther.27:1221−1223(1993);Horaら、Bio/Technology 8:755−758(1990);Cleland,”Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems”,Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach,Powell及びNewman,eds.,(Plenum Press:New York,1995),pp.439−462;WO97/03692;WO96/40072;WO96/07399;及び米国特許第5,654,010号。
【0114】
これらのタンパク質の持続放出製剤は、ポリ乳酸−コグリコール酸(PLGA)ポリマーが生体適合性であり、多岐にわたる生体分解特性を有するので、ポリ乳酸−コグリコール酸(PLGA)ポリマーを用いて開発され得る。PLGA、乳酸及びグリコール酸の分解産物はヒト体内で迅速に排除され得る。更に、このポリマーの分解性は、その分子量及び組成物に依存して、月から年単位で調整され得る。Lewis,”Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer”,Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems(Marcel Dekker;New York,1990),M.Chasin及びR.Langer(Eds.)pp.1−41。
【0115】
ポリマー、例えばエチレン−ビニルアセタート及び乳酸−グリコール酸などが100日間を超えて分子放出可能である一方で、ある種のヒドロゲルがタンパク質を放出する時間はより短い。封入された抗体が長時間にわたり身体に留まる場合、37℃で湿気に曝露される結果、これらは変性又は凝集し得、その結果、生物学的活性が失われ、免疫原性が変化する可能性がある。合理的なストラテジーは、関与するメカニズムに依存して安定化のために考案され得る。例えば、凝集メカニズムが、チオ−ジスルフィド交換を通じた分子間S−S結合形成であることが分かった場合、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含量を調節し、適切な添加物を使用し、特異的なポリマーマトリクス組成物を開発することによって安定化が達成され得る。
【0116】
リポソーム又はプロテイノイド組成物も、本明細書中で開示されるタンパク質又は抗体を処方するために使用され得る。米国特許第4,925,673号及び同第5,013,556号を参照のこと。
【0117】
無毒性の「水溶性多価金属塩」の使用を通じて、本明細書中に記載のタンパク質及び抗体の安定性が促進され得る。例としては、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Sn2+、Sn4+、Al2+及びAl3+が挙げられる。上記の多価金属カチオンと水溶性塩を形成し得る、例となる陰イオンとしては、無機酸及び/又は有機酸から形成されるものが挙げられる。このような水溶性塩の水中での溶解度(20℃)は、少なくとも約20mg/mL、あるいは少なくとも約100mg/mL、あるいは少なくとも約200mg/mLである。
【0118】
「水溶性多価金属塩」を形成させるために使用し得る適切な無機酸としては、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、チオシアン酸及びリン酸が挙げられる。使用し得る適切な有機酸としては、脂肪族カルボン酸及び芳香族酸が挙げられる。この定義内の脂肪族酸は、飽和又は不飽和C2−9カルボン酸(例えば脂肪族モノ、ジ及びトリカルボン酸)として定義され得る。例えば、この定義内の代表的なモノカルボン酸としては、飽和C2−9モノカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸及びカプリオン酸(capryonic)並びに不飽和C2−9モノカルボン酸、アクリル酸、プロプリオル酸(propriolic)、メタクリル酸、クロトン酸及びイソクロトン酸が挙げられる。代表的なジカルボン酸としては、飽和C2−9ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸及びピメリン酸が挙げられ、一方で不飽和C2−9ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸が挙げられる。代表的なトリカルボン酸としては、飽和C2−9トリカルボン酸、トリカルバリル酸及び1,2,3−ブタントリカルボン酸が挙げられる。更に、この定義のカルボン酸はまた、ヒドロキシカルボン酸を形成するための1又は2個のヒドロキシル基も含有し得る。代表的なヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸及びクエン酸が挙げられる。この定義内の芳香族酸としては、安息香酸及びサリチル酸が挙げられる。
【0119】
封入された本発明のポリペプチドの安定化を促進するために使用され得る一般に用いられる水溶性多価金属塩としては、例えば:(1)ハロゲン化物の無機酸金属塩(例えば塩化亜鉛、塩化カルシウム)、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩及びチオシアン酸塩;(2)脂肪族カルボン酸金属塩(例えば酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、プロプリオン酸カルシウム(calcium proprionate)、グリコール酸亜鉛、乳酸カルシウム、乳酸亜鉛及び酒石酸亜鉛);及び(3)安息香酸塩の芳香族カルボン酸金属塩(例えば安息香酸亜鉛)及びサリチル酸塩が挙げられる。
【0120】
所定の実施態様では、抗IL13抗体は、例えば、自己注射装置、自己注入装置又は自己投与用に設計された他の装置を用いて投与される。所定の実施態様では、抗IL13抗体は、皮下投与デバイスを用いて投与される。自己注入装置を含む様々な自己注射装置及び皮下投与デバイスは当技術分野で公知であり、市販されている。代表的な装置としては、プレフィルドシリンジ(Becton Dickinsonからの、BD HYPAK SCF(登録商標)、READYFILL(商標)及びSTERIFILL SCF(商標);BaxterからのCLEARSHOT(商標)コポリマープレフィルドシリンジ;及びWest Pharmaceutical Servicesから入手可能なDaikyo Seiko CRYSTAL ZENITH(登録商標)プレフィルドシリンジなど);使い捨てペン型注射装置、例えばBecton DickinsonからのBD Penなど;ウルトラシャープ及び極微針装置(Becton DickinsonからのINJECT−EASE(商標)及び微小注入装置;及びValeritasから入手可能なH−PATCH(商標)など)並びに針なし注射装置(Biojectから入手可能なBIOJECTOR(登録商標)及びIJECT(登録商標);及びMedtronicから入手可能なSOF−SERTER(登録商標)及びパッチ装置など)が挙げられるが、これらに限定されない。皮下投与デバイスのある一定の実施態様は、本明細書中で更に記載されている。このような自己注射装置又は皮下投与デバイスでの、少なくとも第二の治療用化合物との抗IL13抗体の同時処方又は同時投与が想定される。
【0121】
組換え法
抗体は、例えば米国特許第4816567号に記載のように、組換え法及び組成物を用いて作製され得る。一実施態様では、本明細書中に記載の抗IL13抗体をコードする単離核酸が提供される。このような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列をコードし得る(例えば抗体の軽及び/又は重鎖)。更なる実施態様において、このような核酸を含む1以上のベクター(例えば発現ベクター)が提供される。更なる実施態様において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。あるこのような実施態様において、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクター及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクターを含む(例えばこれらで形質転換されている。)。一実施態様では、宿主細胞は、真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えばY0、NS0、Sp20細胞)である。一実施態様では、抗IL13抗体を作製する方法が提供されるが、この方法は、抗体の発現に適切な条件下で上記で提供されるように抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養し、場合によっては宿主細胞(又は宿主細胞培養液)から抗体を回収することを含む。
【0122】
抗IL13抗体の組換え産生のために、例えば上述のような抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞での更なるクローニング及び/又は発現のために1以上のベクターに挿入する。このような核酸は、従来の手順を用いて容易に単離され、配列決定され得る(例えば抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)。
【0123】
抗体をコードするベクターのクローニング又は発現のための適切な宿主細胞としては、本明細書中に記載の原核又は真核細胞が挙げられる。例えば、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要でない場合、抗体を細菌中で産生させ得る。細菌中の抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば米国特許第5648237号、同第5789199号及び同第5840523号を参照のこと。(E.コリにおける抗体断片の発現を記載する、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245−254も参照のこと。)。発現後、この抗体を可溶性分画中の細菌の細胞ペーストから単離し得、更に精製し得る。
【0124】
原核生物に加えて、グリコシル化経路が「ヒト化」されている真菌及び酵母株を含め、真核微生物、例えば線維状真菌又は酵母などは、抗体をコードするベクターに対する適切なクローニング又は発現宿主であり、その結果、部分的又は完全にヒトグリコシル化パターンを有する抗体が産生される。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409−1414(2004)及びLiら、Nat.Biotech.24:210−215(2006)を参照のこと。
【0125】
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)由来でもある。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞の遺伝子移入のための、昆虫細胞と合わせて使用され得る多数のバキュロウイルス株が同定されている。
【0126】
植物細胞培養物も宿主として利用できる。例えば米国特許第5959177号、同第6040498号、同第6420548号、同第7125978号及び同第6417429号(トランスジェニック植物における抗体産生のためのPLANTIBODIESTM技術を記載)を参照のこと。
【0127】
脊椎動物細胞も宿主として使用し得る。例えば、縣濁液中で増殖するよう適応させられている哺乳動物細胞株は有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS−7)により形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚性腎臓株(例えばGrahamら、J.Gen Virol.36:59(1977)に記載のような293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えばMather,Biol.Reprod.23:243−251(1980)に記載のようなTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(HepG2);マウス乳腺腫瘍(MMT060562);例えばMatherら、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982)に記載のようなTRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR−CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216(1980));及び骨髄腫細胞株、例えばY0、NS0及びSp2/0などが挙げられる。抗体産生に適切なある種の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えばYazaki及びWu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255−268(2003)を参照のこと。
【0128】
アッセイ
当技術分野で公知の様々なアッセイによって、本明細書中で提供される抗IL13抗体を同定し、それらの物理的/化学的特性及び/又は生物学的活性についてスクリーニングするか、又は特徴を評価し得る。
【0129】
結合アッセイ及び他のアッセイ
ある態様において、例えばELISA、ウエスタンブロットなどの公知の方法によって、抗IL13抗体をその抗原結合活性について試験する。
【0130】
別の態様では、IL13への結合に対して抗IL13抗体と競合する抗体を同定するために競合アッセイを使用し得る。所定の実施態様では、このような競合抗体は、レブリキズマブ又は本明細書中で特定される別の抗IL13抗体が結合する同じエピトープ(例えば直鎖状又は立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な代表的方法は、Morris(1996)「Epitope Mapping Protocols」,Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)において提供される。
【0131】
代表的な競合アッセイにおいて、IL13に結合する第一の標識化抗体(例えばレブリキズマブ)と、IL13への結合に対する第一の抗体とのその競合能について試験される第二の非標識抗体と、を含む溶液中で固定化IL13を温置する。第二の抗体はハイブリドーマ上清中に存在し得る。対照として、第一の標識化抗体を含むが第二の非標識抗体を含まない溶液中で固定化IL13を温置する。第一の抗体のIL13への結合を許容する条件下での温置後、過剰な未結合の抗体を除去し、固定化IL13と会合する標識量を測定する。固定化IL13と会合する標識量は、対照試料と比較して試験試料中では実質的に減少し、このことから、第二の抗体がIL13への結合に対して第一の抗体と競合していることを示す。Harlow及びLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照のこと。
【0132】
活性アッセイ
ある態様において、生物学的活性を有する抗IL−13抗体を同定するために、アッセイが提供される。生物学的活性には、例えば喘息における活性が含まれ得る。インビボ及び/又はインビトロでこのような生物学的活性を有する抗体も提供される。所定の実施態様では、このような生物学的活性について本発明の抗体が試験される。
【0133】
製造品及びキット
本製剤を含有し、その使用に対する説明書を提供する製造品が提供される。本製造品は、容器を含む。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル(例えば二重チャンバーバイアル)、シリンジ(単一又は二重チャンバーシリンジなど)及び試験管が挙げられる。本容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。本容器は製剤を保持し、本容器上にあるか又は本容器と連結されるラベルは、再構成及び/又は使用に対する指示を示し得る。本ラベルは、製剤が皮下投与に対し有用であるか又は対象としたものであることを更に示し得る。製剤を保持する容器はマルチユースバイアルであり得、これにより再構成された製剤の反復投与(例えば2から6回投与)が可能となる。本製造品は、適切な希釈剤(例えばBWFI)を含む第二の容器を更に含み得る。希釈剤及び凍結乾燥製剤の混合時、再構成された製剤中の最終タンパク質濃度は一般に少なくとも50mg/mLとなろう。本製造品は、使用のための説明書とともに、他のバッファー、希釈液、フィルター、針、シリンジ及び添付文書を含め、商業上及びユーザーの観点から望ましい他の材料を更に含み得る。
【0134】
所定の実施態様では、均一用量の抗IL13抗体を患者に送達する皮下投与デバイスを含む製造品が提供され、この均一用量は、例えば37.5mg、75mg又は125mg又は150mgであるが限定されない。所定の実施態様では、本抗IL13抗体はレブリキズマブである。皮下投与デバイス中の抗IL13抗体は、バッファー、例えば、ヒスチジンpH5.7及び他の賦形剤、例えば、スクロース及びポリソルベート中で処方され、これが安定な製剤処方中で提供されるようになる。所定の実施態様では、皮下投与デバイスは、針及び場合によっては、ニードルシールド及びまた場合によってはニードルシールド装置付きのガラスバレルを含むプレフィルドシリンジである。所定の実施態様では、シリンジ中に含有される体積は、0.5mL、1mL、1.5mL又は2.0mL又は約0.5mL、約1mL、約1.5mL又は約2.0mLである。所定の実施態様では、針は、3ベベルチップ又は5ベベルチップを含む固定針である。所定の実施態様では、針は25ゲージ(G)から30Gの間である。所定の実施態様では、針は、1/2インチ長から5/8インチ長の間である。一実施態様では、皮下投与デバイスは、プレフィルド1.0mL低タングステンホウケイ酸ガラス(タイプI)シリンジ及びステンレス鋼5ベベル27G1/2インチ長の薄壁固定針を含む。所定の実施態様では、皮下投与デバイスは、剛性のニードルシールドを含む。所定の実施態様では、剛性のニードルシールドは、亜鉛含量が低いゴム配合物、例えば、FM27/0(Daetwyler)を含み、剛性のポリプロピレンシールドを含む。所定の実施態様では、プランジャーロッドはゴム製プランジャーストッパーを含む。所定の実施態様では、ゴム製プランジャーストッパーは、4023/50ゴム及びFluroTec(登録商標)エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)コーティング(West Pharmaceutical Services,Inc.)を含む。所定の実施態様では、皮下投与デバイスは、針安全装置を含む。代表的な針安全装置としては、Ultrasafe Passive(登録商標)Needle Guard X100L(Safety Syringes,Inc.)及びRexam Safe n Sound(商標)(Rexam)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
皮下送達に適切な更なる装置としては、例えば、注射装置、例えばINJECT−EASE(商標)及びGENJECT(商標)装置など;注入ポンプ、例えばACCU−CHECK(商標)など;ペン型注射器、例えばGENPEN(商標)など;針なし装置、例えばMEDDCTOR(商標)及びBIOJECTOR(商標)など;自己注射器及び皮下パッチ送達系が挙げられるがこれらに限定されない。
【0136】
キットは、一般的には、上述の容器及び、バッファー、希釈液、フィルター、針、シリンジ及び使用のための説明がある添付文書を含め、商業上及びユーザーの観点から望ましい材料を含む1以上の他の容器を含む。本組成物が特定の治療に使用されることを示すために容器上にラベルが存在し得る。
【実施例】
【0137】
次のものは、本発明の製剤及び方法の例である。上記で提供される全般的な記述を考慮すると、様々な他の実施態様が実施され得ることが理解される。
【0138】
実施例1
材料及び方法
材料及び試料調製手順
ヒト化IgG4モノクローナル抗体である抗IL13を除き、下記で記載される実験において使用される他の抗体は全て、ヒト化IgG1モノクローナル抗体であった。モノクローナル抗体をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株において発現させ、タンパク質A及びイオン交換クロマトグラフィー法を含め一連の標準的なクロマトグラフィー段階により精製した。溶液バッファー及び安定化剤が添加された接線流ろ過から濃縮溶液として精製抗体を得た。これらを、下記の研究のための出発材料として使用する保存用抗体溶液とした。
【0139】
これらの保存用mAb出発材料を更なる使用まで2から8℃で保存した。mAb溶液の更なる調製には、大きな微粒子を除去するための低イオン強度バッファーに対する透析及び0.22μmの改良PVDF(ポリビニリデンフルオリド)フィルター(Millipore Steriflip,Millipore Corp.,MA)を通じたろ過が含まれた。一般的には、透析後に140から150mg/mLのmAb濃度を得た。より高いmAb濃度を得るために、2700rpmで遠心してAmicon YM30 Centriprep(Millipore Corp,MA)の濃縮装置で10mLのmAbを濃縮した。重力による希釈及び280nmでの吸収率(A280)及び1cm経路長のクオーツキュベット中での、Agilentダイオードアレイ分光光度計モデル8453を用いた280nmでのUV吸収測定を使用することによって、透析し、遠心で濃縮した調製物の最終mAb濃度を決定した。定量的アミノ酸分析によって減衰係数を調べた。
【0140】
層流フード中での、既知の保存溶液濃度の重量測定による希釈によって、20mLシンチレーションバイアル中で、0.5から275mg/mLにわたる光散乱実験用のモノクローナル抗体溶液を調製した。シンチレーションバイアルは全て、脱イオン水で慎重に洗浄し、ろ過済みの圧縮窒素気流中で乾燥させた。タンパク質溶液に添加する前に、0.10μm Whatman Anotop25フィルターに通して全バッファー及び試薬溶液を更にろ過した。試料の調製又は希釈後、mAb溶液を均一になるように混合し、制御室温で2時間にわたり熱的及び化学的平衡に到達させた。タンパク質溶液を室温で3000rpmで20から30分間遠心し、光散乱に対する使用前に偶発的な塵及び泡を溶液から除去した。光散乱シグナルが最低限のノイズを示すまで、高濃度の溶液(mAb>170mg/mL)ほど長い時間遠心した。バイアルの表面欠陥からの不要な散乱を減少させるためにシンチレーションバイアルの外面をシリコーン油で薄く被覆した。上記のように調製した試料を測定のために光散乱測定器に直接置いた。
【0141】
マルチアングル光散乱によるB
2の測定
光散乱用の試料調製では、MilliQ水で洗浄し、ろ過済み窒素気流下で乾燥させた20mLのTeflon(登録商標)で裏打ちされた隔壁キャップバイアルを使用した。およそ80mg/mLの適切な体積の保存用mAb溶液を採取し、最初に適切なバッファーでおよそ8mg/mLに希釈し、次いで20mLの0.2μmろ過済みバッファーで最終希釈を行うことによって、様々な濃度の試料を調製した。測定開始前に、各バッファー状態に対する全部で8種類のタンパク質濃度(0.05から1.1mg/mL mAb)を室温で14から18時間平衡化した。測定は全て、タンパク質濃度が漸増する一連の溶液として行い、各実験は3つ組で行った。25mm Millipore(Millipore,Billerica,MA)溶媒フィルター(PVDF、0.1μm)付きのAgilent溶媒脱気装置及びアイソクラチックポンプ(Agilent,Palo Alto,CA)を0.5mL/分の連続流速で使用した。試料注入は、2mL注入ループ及び0.1μm、10mM PVDF膜付きのWyatt Technology Deutschlandインラインマイクロフィルターを用いて構成されるGilson GX281(Gilson,Inc.,Middleton WI)液体処理ユニットで自動化した。280nmで測定するAgilent MWD UV検出器、続いて増幅率を21xに低下させた18−アングルEOS MALS検出器(Wyatt Technology Corporation,Santa Barbara,CA)を用いて、濃度及び光散乱測定を順次行った。データを得て、Astra(商標)4.90.07(WTC)ソフトウェアで処理し、スライス結果を転送することによって更なる分析を行った。データの直線回帰フィッティングを行い、濃度に対するK
*c/R(θ=0)/K
*c/又は1/M
Wappのプロットから、勾配=2B
2及び1/Mwoの切片、無限希釈での重量平均分子量が得られる。
【0142】
高濃度マルチアングル静的光散乱(SLS)
23℃の水冷式ペルチェ温度制御セットを用いた全静的光散乱測定のために、Wyatt Technology(Santa Barbara,CA)からの30mW固体レーザー(λ=690nm)付きの18−アングルDawn EOS光散乱検出器を使用した。99.9%トルエン(クロマトグラフィーグレード)を用いてこの機器を較正した。典型的なシンチレーションバイアル実験の場合、38°から148°の固定角度で、全ての光ダイオードに対して1xの検出器増幅率設定を使用した。抗CD11aの回転半径(Rg)は10nm未満なので、各実験の終了時に21xの光ダイオード検出器の増幅率設定を使用して90°検出器に対する光ダイオードの角度依存性を正規化するために、抗CD11aの希釈溶液(1から2mg/mL)を各塩濃度で使用した。0.5mg/mLから275mg/mLのmAb濃度の関数として、及びNaCl濃度(0から600mM)の関数として、静的光散乱強度の測定を行った。12点/分の頻度のデータ回収で、5から10分の間隔で各試料/バイアルに対する散乱データを回収した。Astra4.90.07ソフトウェア(Wyatt Technology Corporation,Santa Barbara,CA)を使用して静的光散乱データを得て、処理し、計算に対して0.185のdn/dc値を適用し、スライス結果として転送し得た。Microsoft Excel,Origin v7.5及びMATLAB R14において、転送された結果を用いた更なる分析及び計算を行った。高濃度光散乱データについては、分子量の増加が濃度依存性の可逆的な自己会合の存在に相当した場合、M
Wapp対mAb濃度の形式の結果を解釈することがより容易であることが多かった。(例えばScherer,T.M.,ら、The Journal of Physical Chemistry B114(40):12948−12957(2010);Minton,A.P.,JPharm Sci 96(12):3466−9(2007);Minton,A.P.Biophysical Journal 93(4):1321−1328(2007)を参照のこと。
【0143】
UV分光法による濁度
Agilent8453分光光度計を使用することによって、高濃度光散乱実験からの試験タンパク質溶液に対する、及びpHスクリーニング実験からのタンパク質溶液に対する濁度を(それぞれ以下で更に記載のように)周囲温度で測定した。波長350nmでの吸収の平均として濁度を計算したが、340nmから360nmの波長範囲にわたる5nm増分での吸収値の合計を5で除した。1cm経路長の小体積クオーツキュベット中でタンパク質溶液の測定を行った。690nmでの吸収も記録した。
【0144】
溶融温度(Tm)のキャピラリー示差走査熱量測定(DSC)の特徴評価
MicroCalキャピラリー示差走査熱量計を使用することによって、タンパク質の熱立体構造安定性を評価した。バッファー中でMAbを1mg/mLに希釈した。500μLのタンパク質及びその適合バッファーを96ウェルプレートに入れた。60℃/時の走査速度で15から95℃に温度を上昇させながら、熱容量を監視した。VPViewer 2000 Cap DSCを使用してデータを得て、MicroCal,LLC DSC Data Analysisを使用してデータを分析した。Yadav,S.ら、J Pharm Sci.99(3):1152−68(2010)を参照のこと。
【0145】
比濁法
散乱強度の90°検出を行うHACH(モデル2100AN IS)Laboratory Turbidimeter Instrumentを使用して比濁測定を行った。0から0.5の相対濁度標準濃度でFormazin standard 4000ネフェロメ濁度単位(NTU)保存溶液を用いて検出器を較正した。試料をキュベットに入れ、2つ組で測定し、試料の平均NTUを報告した。
【0146】
レオロジー
円錐及び平板測定系を使用して、MCR300レオメータ(Anton Paar,Ashland,VA)により試料の粘度を測定した。試料を下の測定プレート上に載せ、25℃で熱平衡に来るようにした。溶媒蒸発を防ぐために、溶媒トラップを使用した。試料には、2サイクルのせん断速度掃引(各サイクルは、10秒
−1から1000秒
−1に一定の比率で上昇、1000秒
−1で1分間維持、1000秒
−1から10秒
−1に一定の比率で下降させることを含む。)を行った。サイクル間に1分間の休止が1回ある。報告値は、一つの試料の2回の1000秒
−1でのせん断速度掃引の平均である。エラーバーは、ミリパスカル−秒(mPas)の単位の2回の走査の標準偏差を表す。1000秒
−1で全部で2分間、試料をせん断応力下に置いた。発明者らは1000秒
−1を選んだが、これは、この範囲(200秒
−1<せん断速度<2000秒
−1)で、粘度がせん断速度に比較的依存しないからである。ある一つの試料の2つのアリコート間の粘度の相違は1000秒
−1で±0.5mPa以内であった。US200ソフトウェア(Anton Paar,Ashland,VA)を使用して各せん断速度での測定時間を最適化した。
【0147】
曇り点温度測定
液体−液体相分離(LLPS)が起こる系の場合、温度が低下する結果、一つの液相の液滴が他方の相において形成される。これらの液滴が形成される温度は、曇り点温度と呼ばれ、顕微鏡によるか又は溶液の透過性を監視することによるかの何れかで、実験的に測定され得る。ここに記載の実験の場合、曇り点温度は、Aviv 14DS分光光度計(Aviv Biomedical,Lakewood,NJ)における温度の関数として600nmでの透過性の喪失を監視することによって決定した。5mm平方のキュベットにおよそ0.6mLの抗体溶液を満たした。熱電冷却器を用いて0.5℃の刻み幅で25℃から0℃まで温度を低下させた。透過性を記録する前に各温度で試料を10分間平衡化した。曇り点温度は、%透過率が出発値の50%まで低下した温度とした(Asherie,2004)。Aviv Biomedicalモデル14S UV−Vis分光光度計を使用することによって、様々なタンパク質濃度及び様々な実験溶液での抗IL13相分離に対するTcを測定した。25℃から0℃の温度スキャンで、−0.5℃の刻み幅で、600秒の平衡時間及び600nmの波長で、温度データに対する%透過率を回収した。1cm経路長のクオーツキュベット中でタンパク質溶液の測定を行った。
【0148】
サイズ排除クロマトグラフィー
凝集物及び断片を定量するために、サイズ排除クロマトグラフィーを使用した。このアッセイは、TSK G3000 SWXLTM、7.8X300mmカラムを利用し、25℃にてHP1100TM HPLC系で行った。移動相で試料を2mg/mLに希釈し、注射体積を25μLとした。移動相は、0.2M K
2HPO
4、0.25M KCl、pH6.2であり、30分間にわたり0.5mL/分の一定流速でタンパク質を溶出した。280nmで溶出液吸収を監視した。HP CHEMSTATIONM(商標)ソフトウェアを用いて積分を行った。
【0149】
画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)
抗IL13抗体安定性試料の電荷(酸性及び塩基性)変異を定量するために、icIEFを使用して試料をアッセイした。この方法では、PrinCEマイクロインジェクター付きのiCE280Analyzer(Convergent Bioscience)においてフルオロカーボン被覆キャピラリー(Convergent Bioscience)を使用した。GE Healthcare Biosciencesから陽極液及び陰極液の溶液を購入し;Convergent BioscienceからpIマーカーの溶液を購入した。)。
【0150】
キャピラリー電気泳動−ドデシル硫酸ナトリウム(CE−SDS)
488nm励起のLIF検出器を備える、20から40±2℃でキャピラリー温度調節が可能なBeckman P/ACE MDQ又はPA800キャピラリー電気泳動系を使用してCE−SDSを行った。
【0151】
抗IL13抗体効力アッセイ
ヒト気管支上皮細胞株、L−Beas−2B細胞(ATCCより入手可能、ATCCカタログ番号CRL−9609(商標))において抗IL13抗体溶液のIL−13誘導性ルシフェラーゼ発現阻害能を測定する細胞培養アッセイを使用して、抗IL13抗体溶液の生物学的活性又は効力を評価した。様々な濃度の抗IL13抗体標準物質、対照及び試料を固定濃度のIL−13(例えばrhu−IL13、Peprotech、カタログ番号200−13)と混合し、2x10
5細胞/mLの濃度でL−Beas−2B細胞が播種されている96−ウェルプレートに添加した。温置後、製造者の説明書(Bright−Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ系、Promegaカタログ番号E2620、E2650又はBrite−Lite Plus,Perkin Elmer カタログ番号6016761)に従い、発光ルシフェラーゼ基質を使用して、ルシフェラーゼ発現を定量した。各抗体溶液に対する希釈曲線を作成し、参照物質と比較した。その結果を相対的発光単位(RLU)として表した。最小二乗及び平行線分析プログラムの方法を使用して、相対効力推定値を計算した。相対効力推定値に参照物質の比活性を乗じることによって、%比活性を計算した。
【0152】
抗IL13抗体(レブリキズマブ)アミノ酸配列
以下の表は、VH、VL、重鎖配列及び軽鎖配列とともに、レブリキズマブのCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3、CDR−L1、CDR−L2及びCDR−L3領域のアミノ酸配列を示す。以下の表1で示されるように、VH及び重鎖は、N末端グルタミンを含み得、重鎖はまた、C末端リジンも含み得る。当技術分野で周知であるように、N末端グルタミン残基はピログルタミン酸を形成し得、C末端リジン残基は、製造過程中に切り出され得る。
【0153】
表1.抗IL13抗体(レブリキズマブ)アミノ酸配列
【0154】
結果
様々なpHでの抗IL13抗体製剤の物理的及び化学的安定性
5.4から7.8のpH範囲をカバーするために、20mMヒスチジンアセテート又は20mMリン酸ナトリウムの何れかを使用して様々なpHのバッファーを調製した。ヒスチジンアセテートバッファーは5.4から6.0のpH範囲をカバーし、リン酸ナトリウムバッファーは6.6から7.8のpH範囲をカバーした。各バッファーpHに対して、次のものを一定に保持した:150mg/mLの抗IL13抗体濃度、175mMスクロース及び0.3mg/mL(0.03%)ポリソルベート20。
【0155】
以下の表2で示される時間及び温度でバイアル中で抗体溶液を保存した。様々な時間において、表2で「X」により示されるが、SEC、A350濁度及び非還元CE−SDSを含む物理的安定性を評価するための、及びicIEFを含む化学的安定性を評価するための様々な方法によって試料をアッセイした。
【0156】
表2.物理的及び化学的安定性抗IL13抗体溶液を判定するために使用した、安定性時間点及び条件
【0157】
図1は、SECにより測定した場合の、指定pHでのバッファー中での1週間あたりのパーセント単量体喪失を示す。
図1で示されるように、より高いpH範囲よりも、より低いpH範囲で%単量体喪失が少なくなり、%単量体喪失が最小だったのはpH5.7であり、0.056の%単量体喪失/週を示した。
【0158】
別の物理的安定性アッセイでは、pHの関数として、30℃での経時的な(A350により測定した場合の)濁度の変化を測定した。
図2で示されるように、最初の濁度及び変化は、pH5.4から6.0の間のバッファーに対して、より高いpH範囲の場合よりも大きくなる。
図2において、ニート(neat)濁度は、A350=1/T(式中、Tは、1cmという規定の経路長の350nmでの透過光強度である。)である。
【0159】
第三の物理的安定性アッセイでは、pHの関数として、抗IL13抗体溶液において、30℃での6週間の保存中の、低分子量(LMW)可溶性断片及び高分子量(HMW)凝集体の増加を測定した。
図3で示されるように、より低いpH範囲、pH5.4から6.6で、断片化速度及び凝集速度が最低になった。
【0160】
発明者らはまた、pHの関数として、30℃での経時的な酸性及び塩基性変異体形成速度の変化(
図4)及び、pHの関数として、30℃での経時的な塩基性変異体及び主要ピーク喪失の速度の変化(
図5)を調べるためにicIEFを使用して、化学的安定性も評価した。
図4で示されるように、酸性変異体の速度は低pH範囲で最小となり、高pH範囲で最大となり、一方で塩基性変異体(BV1ピーク)の速度は高pH範囲で最小となり、低pH範囲で最大となった。
図5で示される結果から、pH5.4から6.0の間で主要ピーク喪失が最小限となったことが示される。
【0161】
pHが溶液粘度に影響を与えるか否かを調べるために、発明者らは、様々なpH(pH5.5から7.2の範囲)で様々な抗IL13抗体濃度(0から200mg/mL抗体の範囲)のレオロジー特性評価を行った。各溶液には、175mMスクロース及び0.3mg/mLポリソルベート20が含まれた。結果を
図6で示す。これらの結果により、ある抗体濃度に対する溶液pHにかかわらず、一貫した粘度プロファイルが維持されたことが示される。特に、この結果から、より高い抗体濃度ではpHにより粘度に影響が及ぼされなかったことが示された。
【0162】
まとめると、
図1から6で与えられるデータから、pH5.4から6.0での殆どの物理的及び化学的変化に対して勾配が浅かったことが示される。従って、pH5.7の20mMヒスチジンアセテートバッファーをその後の研究及び製剤評価のために選択した。
【0163】
高濃度モノクローナル抗体溶液のレオロジー特性評価
20mMヒスチジンアセテート、pH5.7、175mMスクロース、0.3mg/mLポリソルベート20中で150mg/mLで処方された抗IL13抗体に対して観察された粘度(25℃で<15cP)が様々な異なる抗体に対して一般に観察されるか否かを探索するために、発明者らは、150mg/mLの同様の製剤中の3種類の更なる抗体の粘度を試験した。抗IL13抗体に対して観察されるようなこのような粘度プロファイルは、高抗体濃度での、薬物投与のある種の経路、例えば皮下注射のための製造に望ましい。
図7で示されるように、抗IL13抗体は、抗CD11a抗体と同様の粘度プロファイルを維持し、25℃で粘度は<15cPであった。一方で、抗CD20抗体及びmAb−1抗体は極めて異なる粘度プロファイルを示した。150mg/mLの抗CD20抗体の粘度は、25℃で>15cPであり、一方でmAb−1は、
図7で見られ得るとおり粘度に関する重大な問題ゆえに、このバッファー製剤中では150mg/mLで処方できなかった。
図7から、125mg/mLでのmAb−1の粘度が25℃で>45cPであったことが示される。従って、このデータから、20mMヒスチジンアセテート、pH5.7、175mMスクロース、0.3mg/mLポリソルベート20中で150mg/mLで処方される場合、抗体によってレオロジー特性が異なるということが明らかである。
【0164】
外観及び乳白光の特徴評価
発明者らは、90度比濁法及びA350濁度の測定を使用して、抗CD20抗体製剤と比較した、抗IL13抗体製剤の外観及び乳白光の特徴を評価した。
図8は、ネフェロメ濁度単位(NTU)における2種類の異なる抗体製剤の外観の定量を示す。
図8において、R1、R2、R3及びR4は参照標準物質を指し、R4は最大の視覚的な乳白光の度合いを有し、R1は最小である。抗IL13及び抗CD20抗体に対するA350濁度の測定は
図9で示す。
図9で示されるように、各抗体製剤に対して、タンパク質濃度の上昇につれて濁度が上昇した。これらの図で示される結果から、本質的に測定されるものが異なるために、特により高いタンパク質濃度で、2種類の抗体に対する外観の2種類の異なる測定が異なる傾向を有することが明らかとなる。このデータはまた、測定の傾向が、溶液乳白光が上昇しているように見えるこれらの2種類の抗体間で一致することも示す。
【0165】
発明者らは、濃度及びpHの関数として、抗IL13抗体濃度も調べた。結果は
図10で示す。最大濁度を示す溶液はmAb等電点(pI)の近傍であった。
【0166】
理論により縛られるものではないが、発明者らは、これらの結果を、タンパク質吸収バンドによる光の吸収ゆえにタンパク質濃度の上昇につれて350nm波長(濁度)での吸収が上昇したことを示すと解釈するが、このピークの端部が広いがために280nm周辺で最大となった。mAb溶液の濃度に対するA350上昇に対する第二の要因は、総透過光を減少させる、光散乱の非線形的上昇であった。
【0167】
更に、発明者らは、mAb濃度の関数として、肉眼では見えない粒子数を評価し、これらの結果を
図11で示す。HIAC光遮断分析によって、>2μmサイズの肉眼では見えない微粒子の有意な増加は観察されず、これにより、>2μmの微粒子物質が抗IL13抗体溶液の乳白光又は濁度に関与しないことが示される。
図12は、次第に孔径を小さくして(0.1μm又は100nmまで縮小)抗体溶液をろ過した場合の、抗IL13抗体の125mg/mL溶液の比濁、濁度及び静的光散乱の測定を示す。
図11及び12で示されるこれらの結果をまとめると、抗IL13抗体溶液及び薬学的製剤の外観は、光散乱の濃度依存性を誘導する、肉眼では見えないか又はサブミクロンの微粒子物質により決定されるものではないことが示される。
【0168】
次に、発明者らは、125mg/mL及び204mg/mLで、溶液pHの関数として、溶液の外観の依存性を調べた。600nmでの透過光強度の温度走査を使用して、溶液の外観を評価した。結果は
図13で示し、これにより、抗IL13抗体溶液乳白光は、温度低下の関数として一定のままであり、溶液成分が多岐にわたる溶解性を有し、個別の組成物の2つの分離相を形成する、液体−液体相分離などの臨界現象ゆえではなかったことが示される。このことから、典型的な保存及び/又は曝露温度の範囲にわたる溶液均一性(相分離)は、(室温での)最初の溶液乳白光/外観にかかわらず、温度によって影響を受けないことが示唆される。
【0169】
熱安定性(T
melt)実験
発明者らは、製剤組成及び溶液pHの関数として、キャピラリー示差走査熱量計において、2つの部分的に分解されたピークに対する熱融解転移ピークを測定した。結果を
図14で示す。
図14で示されるように、pHの関数として抗IL13に対する最大の融解転移挙動がpH6.0から7.5の間で観察された。一般的な科学的見解は、融解転移が起こるのが低いほど、何らかの期間での保存時のその系の予想される物理的安定性が低くなるというものである。例えばChiら、Protein Science 12(5):903−913(2003);Chiら、Pharmaceutical Research 20(9):1325−1336(2003);Goldbergら、J.Pharm.Sciences 100(4):1306−1315(2011)を参照のこと。従って、抗IL13抗体製剤(pH5.7)に対する本明細書中で示される物理的安定性データは驚くべきものであり、予想外であった。
【0170】
コロイド安定性
抗体の希釈溶液(0.10から1mg/mLの間)を使用した静的光散乱並びに200mg/mL超での抗体濃度の光散乱によってコロイド安定性を測定した。コロイド安定性とは、溶液中で懸濁された巨大分子の溶液挙動を指し、これによりモノクローナル抗体などの巨大分子間の平衡、時間平均相互作用を調べることができる。理論により縛られるものではないが、相互作用が反発的である場合、溶液組成物は安定なままであると予想され得る。しかし、溶質分子間で正味の誘因性相互作用が起こり、これは一般に相転移及びタンパク質溶解性の問題と関連する。
【0171】
発明者らは、単純なバッファー中の試料を用いて、溶液pHの関数として(0.1から1.0mg/mLの範囲の濃度で)抗IL13抗体に対する浸透圧第2ビリアル係数(B
2)を測定した。なお、
図15及び16において、0を上回る値は正の浸透圧第2ビリアル係数であり、これは正味の反発性相互作用を示し、0を下回る値は、負の浸透圧第2ビリアル係数であり、これは正味の誘引性分子間相互作用を示す。
図15のデータは、抗IL13抗体がpH範囲にわたり誘引性相互作用を有し、最大の誘引性相互作用がpH5.5から6.5の間で起こったことを示す。
図16で示される結果に対して、処方添加物を様々なpHで溶液に添加した。
図16で見られ得るように、pH5.5から6.5で、測定浸透圧第2ビリアル係数は負のままであり、したがって誘引性であった。0の散乱角度に対する強度を外挿する1から200mg/mLの濃度範囲にわたる多角度光散乱検出器での光散乱の測定を
図17で示す。これらのデータから、散乱される強度プロファイルが、HACH比濁計に対して観察されるものと非常に類似していたことが明らかとなった(
図17と
図8を比較)。両機器とも散乱光強度及び、したがってレイリー散乱を測定する。この散乱は、微粒子不含の溶液中で目立ち、散乱分子間の相互作用にも依存する、溶液の小さな密度及び濃度変動により生じる。分子が互いに徐々に密に接触するようになる場合、散乱光強度の低下が起こり、時間/空間のそれらの位置が相関するようになり、その結果、散乱光の相殺的干渉が起こる(例えばBettelheimら、Biophysical Journal 41(1):29−33(1983);Xiaら、Biophysical Journal 66(3_Pt_1):861−872(1994);及びXiaら、Biophysical Journal 41(1):29−33(1996)を参照のこと。
図18は、製剤pHの関数として、抗IL13抗体に対する静的光散乱データを示す。
図18のデータは、200mg/mL以下の抗体濃度で観察される見かけの分子量として表す。
図18で示されるデータは、mAb排除体積の単純な剛体球種モデルに対する理論的散乱(
図18の破線)と比較した、弱い程度(pH7.2)から中程度(pH6.5)に誘引性であるコロイド相互作用及び濃度範囲全体にわたる抗IL13抗体自己会合を示す。
【0172】
抗IL13及び抗CD20の両者とも、
図19で示されるように、誘引性コロイド相互作用及びmAb自己会合により引き起こされる同等レベルの濁度を示した。驚くべきことに、このような誘引性コロイド相互作用は、
図20で示されるように、抗IL13抗体に対する製剤では、高粘度(例えば150mg/mLで>15cP)又はレオロジーの問題として現れなかった。しかし、抗CD20抗体に対するコロイド相互作用は、溶液レオロジーにおいて影響があり、その結果、溶液乳白光だけでなく(
図8)、25℃及び150mg/mLで>15cPという高い粘度も生じた(
図20)。
【0173】
長期物理的、化学的及び効力安定性
長期の安定性及び効力を試験するために、20mMヒスチジンアセテート、pH5.7、175mMスクロース及び0.3mg/mLポリソルベート20中で125mg/mLで抗IL13抗体を処方し、次いで様々な保存条件に供した。5℃又は25℃の何れかで表3で示される週数にわたりバイアルを保存した(5℃で最長156週間及び25℃で最長26週間)。表3で示されるとおりの各時点で、発色及び透明性(CAC)、pH及び指定の化学的又は物理的安定性の測定について試料を分析した。更に、各時点で生物学的活性(効力)も評価した。表3で示されるデータにより示されるように、20mMヒスチジンアセテート、pH5.7、175mMスクロース及び0.3mg/mLポリソルベート20中で125mg/mLで処方された抗IL13抗体は、効力を維持し、5℃で全156週間(3年間)にわたり、及び25℃で全26週間にわたり、良好な化学的及び物理的安定性を示した。これらのデータから、この製剤が、長期にわたり抗IL13抗体の望ましい化学的、物理的及び効力特質を維持することが確認される。
【0174】
表3.安定性及び、抗IL13抗体の長期の物理的、化学的及び効力安定性を決定するための条件
CAC:発色及び透明性
SY=僅かに黄色
LIQ=液体
SOPL=僅かな乳白光
【0175】
結論
発明者らは、pH及び、長期の化学的及び物理的安定性の両方を促進し、効力を維持する賦形剤を伴う溶液条件で、抗IL13抗体が良好に処方されていることを示した。具体的に、その製剤は、20mMヒスチジンアセテート、pH5.7、175mMスクロース及び0.3mg/mLポリソルベート20中で125mg/mL及び150mg/mLを含め、100mg/mL以上の濃度で抗体を含んだ。驚くべきことに、発明者らは、本製剤が25℃で<15cPの望ましい粘度プロファイルを有することを見出した。このような粘度プロファイルは、製造可能性及びまた投与の容易さのために(例えば、患者の快適さ及びコンプライアンスを含め、幾つかの理由のために、小体積中の高濃度の製剤が最適である皮下注射のために)望ましい。発明者らは、同じ又は同様の製剤中の他の抗体が25℃で>15cPの望ましくない粘度プロファイルを有することを観察したが、これは、抗IL13抗体製剤に対する粘度プロファイルの予測不可能性を強調する。
【0176】
更に、しばしば使用される、タンパク質製剤選択に対する2つの基準としては、熱安定性及びコロイド安定性が挙げられる(Chiら、Protein Science 12(5):903−913(2003);Chiら、Pharmaceutical Research 20(9):1325−1336(2003)を参照のこと。)。抗IL13抗体溶液の変性温度の熱分析から、pH5.4から6.0の条件での物理的安定性が、本抗体製剤の物理的安定性に最適ではないであろうことが示唆された。抗IL13抗体溶液のコロイド安定性分析からまた、5.5から6.5のpH範囲での処方条件は、低凝集速度を維持するのに最も望ましくないであろうことも示唆された。また、驚くべきことに、ここで与えられるデータにより示されるように、pH5.7で処方された抗IL13抗体は、5℃で、及びまた加速条件下で、長期にわたり良好な物理的安定性を示した。これらの条件下での製造品安定性が、熱融解転移及びコロイド安定性が低かったとしても、物理的及び化学的両面で、より高いpHで見られるものを上回っていたことも驚くべきことであった。処方された抗IL13抗体溶液の外観(及び濁度)は、ある種の選択されなかった条件よりも選択された処方条件で乳白光が強かった一方で、分子特性及び処方組成が、リアルタイム及び加速保存条件の両方で最適の安定性を維持し、効力を維持し、小体積中の高濃度製剤の送達に対して望ましい溶液レオロジー特性をもたらした。
【0177】
皮下投与デバイス
様々な市販の部品を評価することによって、上述の抗IL13製剤の投与のための、針付きのプレフィルドシリンジ、プランジャーストッパー付きプランジャー、ニードルシールド及び針安全装置を含む皮下投与デバイスを選択した。例えば、評価した部品には、ガラスケーン、固定針付きの成形シリンジ、プランジャー及びプランジャーストッパー、剛性のニードルシールド及び針安全装置が含まれた。
【0178】
注射時の針ゲージ及び針の内径の影響及び製剤が本明細書中で記載のようなある一定の粘度を有する場合の滑り力(glide force)などの要因を含む、安定性及び患者の快適性及び便宜などの他の考慮すべき点を含むが限定されない、製剤特性への影響について、当業者にとって公知の方法に従い様々な組合せで様々な部品を評価した。これらの研究によって、発明者らは、本明細書中に記載のような高濃度処方レブリキズマブの投与のための最適な皮下投与デバイスとして、プレフィルド1.0mL低タングステンホウケイ酸ガラス(タイプI)シリンジ及び、FM27/0(Daetwyler)及び剛性のポリプロピレンシールドを含む剛性のニードルシールド付きのステンレス鋼5ベベル27G1/2インチ薄壁固定針を選択した。更に、プランジャーロッドには、4023/50ゴム及びFluroTec(登録商標)エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)コーティング(West Pharmaceutical Services,Inc.)を含むゴム製プランジャーストッパーが含まれた。この皮下投与デバイスにはまた、針安全装置、Ultrasafe Passive(登録商標)Needle Guard X100L(Safety Syringes,Inc.)も含まれた。上記で詳述した皮下投与デバイスは、以下で固定針プレフィルドシリンジ又は「SIN PFS」と呼ぶ。
【0179】
選択したSIN PFSと同等のバイアル中でのレブリキズマブ製剤の安定性を明らかにするために、発明者らは、40℃/周囲相対湿度で2ccバイアル又は1mL SIN PFSに手動で充填したGMP製剤原料を評価した。発明者らは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による単量体の変化並びに画像化キャピラリー等電点電気泳動(ICIEF)及びキャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(CE−SDS)によるパーセント主要ピークの変化によって特徴を評価した場合の分解速度を評価した。
【0180】
これらの研究から、40℃での4週間にわたる保存後、バイアルとSIN PFSとの間でSECにより測定した場合、単量体減少(それぞれ0.6%から0.9%の減少を示す。)又はパーセント主要ピークの低下(それぞれ、ICIEFにより測定した場合は18から21%の低下及びCE−SDSにより測定した場合は0.9%から1.5%の低下を示す。)に顕著な差がなかったことが明らかになった。更に、クロマトグラフィーのプロファイルは、互いに同等であり、バイアル試料と比較して、SIN PFS試料において新しいピークは観察されなかった。
【0181】
分解速度に僅かな差があった(40℃で4週間後、バイアルでは高分子量種が0.5%から0.6%増加したことに対し、SIN PFSでは高分子量種が0.8%増加)。この僅かな差がリアルタイムの保存中の品質に影響を与える可能性は低いと考えられた。
【0182】
従って、発明者らは、上述のデータから、バイアル中の上述のように処方される高濃度レブリキズマブ製剤の安定性が、上述の選択SIN PFS中での安定性と同等であることが示されると結論付ける。
【0183】
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