特許第6272972号(P6272972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6272972容積圧縮機を使用したLNGプラントでの並列圧縮
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6272972
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】容積圧縮機を使用したLNGプラントでの並列圧縮
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20180122BHJP
   F25J 1/02 20060101ALI20180122BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20180122BHJP
   F25B 1/053 20060101ALI20180122BHJP
   F25B 1/047 20060101ALI20180122BHJP
   F25B 1/10 20060101ALI20180122BHJP
【FI】
   F25J1/00 B
   F25J1/02
   F25B1/00 396G
   F25B1/00 396Z
   F25B1/053 A
   F25B1/047 Z
   F25B1/10 A
【請求項の数】29
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-188578(P2016-188578)
(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公開番号】特開2017-67432(P2017-67432A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2016年12月22日
(31)【優先権主張番号】14/870,557
(32)【優先日】2015年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ ジェラード ウェアーマン
(72)【発明者】
【氏名】ゴウリ クリシュナムルティ
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−526678(JP,A)
【文献】 特表2003−515720(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02444759(EP,A1)
【文献】 国際公開第2009/117787(WO,A1)
【文献】 特開昭61−003985(JP,A)
【文献】 特表2008−504509(JP,A)
【文献】 特開2005−023818(JP,A)
【文献】 特表2011−506893(JP,A)
【文献】 特開2000−283571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 41/06
F25B 1/00−1/10
F25J 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素流体を液化するための装置であって、
第1冷媒を圧縮して第1圧縮冷媒流を作り出すように運転可能に構成された圧縮システムであって、前記圧縮システムが速度形圧縮機を含む少なくとも1つの圧縮ステージを有する第1圧縮回路と、容積圧縮機を含む少なくとも1つの圧縮ステージを有する第2圧縮回路とを含み、前記第2圧縮回路が前記第1圧縮回路と流体流れ連通していて、前記第1圧縮回路の少なくとも第1部分と並列して配置され、前記圧縮システムが、前記第1圧縮回路の前記少なくとも1つの圧縮ステージ及び前記第2圧縮回路の前記少なくとも1つの圧縮ステージに電力を与えるように運転可能に構成されたドライバ組立体をさらに含む、圧縮システムと、
前記第1冷媒の少なくとも一部と前記炭化水素流体の間での間接熱交換によって前記炭化水素流体を冷却するように運転可能に構成された第1熱交換器と
を含む装置。
【請求項2】
前記第1圧縮回路の前記少なくとも1つの圧縮ステージが複数の圧縮ステージを含み、前記複数の圧縮ステージのそれぞれが速度形圧縮機であり、前記第2圧縮回路の前記少なくとも1つの圧縮ステージのそれぞれが容積圧縮機である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記圧縮システムが、前記第1圧縮回路の前記複数の圧縮ステージの少なくとも2つの間で前記第1冷媒を中間冷却するようにさらに運転可能に構成された、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1圧縮回路が複数の圧縮ステージを含み、前記第1圧縮回路が第2部分を含み、前記複数の圧縮ステージの少なくとも1つが前記第1部分に設置され、前記複数の圧縮ステージの少なくとも1つが前記第2部分に設置され、前記第2圧縮回路が前記第1圧縮回路の前記第1部分のみと並列して配置され、前記第1部分に設置された前記複数の圧縮ステージの前記少なくとも1つのそれぞれが、前記第2部分に設置された前記複数の圧縮ステージの前記少なくとも1つの全てより高い圧力で運転するように運転可能に構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記炭化水素流体が前記第1熱交換器によって冷却された後に、前記炭化水素流体と第2冷媒の間での間接熱交換によって、前記炭化水素流体をさらに冷却して液化するように運転可能に構成された第2熱交換器をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1冷媒が、プロパン、混合冷媒、又は窒素である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記炭化水素流体及び前記第2冷媒が、前記第2熱交換器のコイル巻付チューブ側を通じて流れた場合、前記第2熱交換器が、前記第2熱交換器のシェル側を通じて流れる前記第2冷媒との間接熱交換によって、前記炭化水素流体を液化して、前記第2冷媒を冷却するように運転可能に構成された、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記炭化水素流体が前記第1熱交換器によってさらに冷却される前に、前記炭化水素流体と第2冷媒の間での間接熱交換によって、前記炭化水素流体を予備冷却するように運転可能に構成された第2熱交換器をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第2冷媒がプロパンであり、前記第1冷媒が混合冷媒である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記炭化水素流体及び前記第1冷媒が、前記第1熱交換器のコイル巻付チューブ側を通じて流れた場合、前記第1熱交換器が、前記第1熱交換器のシェル側を通じて流れる前記第1冷媒との間接熱交換によって、前記炭化水素流体を液化して、前記第1冷媒を冷却するように運転可能に構成された、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記ドライバ組立体が前記第1圧縮回路のための第1ドライバと、前記第2圧縮回路のための第2ドライバとを含み、前記第1ドライバが前記第2ドライバから独立している、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第1圧縮回路と前記第2圧縮回路の間で、前記第1冷媒の流れの分布を制御するように運転可能に構成された弁をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記速度形圧縮機が遠心圧縮機であり、前記容積圧縮機がスクリュー圧縮機である、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
a.第1冷媒流に関して圧縮過程を実行する工程であって、前記圧縮過程が前記第1冷媒流を圧縮して圧縮第1冷媒流を作り出すことを含む工程と、
b.前記圧縮第1冷媒流に対する間接熱交換によって炭化水素流体を冷却して、第1炭化水素流体出力流及び加温第1冷媒流を作り出す工程と
を含む方法であって、
工程(a)が、前記第1冷媒流を第1部分と第2部分とに分けること、少なくとも1つの速度形圧縮機を含む第1圧縮過程で前記第1冷媒流の前記第1部分を圧縮して第1圧縮流を作り出すこと、少なくとも1つの容積圧縮機を含む第2圧縮過程で前記第1冷媒流の前記第2部分を圧縮して第2圧縮流を作り出すこと、及び、前記第1圧縮流と前記第2圧縮流とを組み合わせて複合圧縮冷媒流を作り出すことをさらに含む方法。
【請求項15】
工程(a)が、前記第1圧縮過程における複数の圧縮ステージで、前記第1冷媒流の前記第1部分を圧縮することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(a)が、前記第1冷媒流を前記第1部分と前記第2部分とに分ける前に、前記第1圧縮過程の前記複数の圧縮ステージの少なくとも1つで前記第1冷媒流を圧縮することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)が、前記複数の圧縮ステージの2つの間で前記第1冷媒流を冷却することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
工程(a)が、前記第1冷媒流を前記第1部分と前記第2部分とに分ける前に、前記第1冷媒流から前記第1冷媒の第3部分を除去することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
工程(a)が、少なくとも1つの第1冷媒副流を前記第1冷媒流と組み合わせることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
工程(a)が、前記第1冷媒流を前記第1部分と前記第2部分とに分ける前に、前記少なくとも1つの第1冷媒副流の少なくとも1つを前記第1冷媒流と組み合わせることをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(a)が、前記圧縮第1冷媒流を作り出す前に、少なくとも1つの熱交換器で前記複合圧縮冷媒流を冷却することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
工程(a)が、前記圧縮第1冷媒流を作り出す前に、前記複合圧縮冷媒流をさらに圧縮することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
工程(b)での間接熱交換の前に、前記圧縮第1冷媒流が冷却され膨張される、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
工程(a)が、前記第1冷媒流を前記第1部分と前記第2部分とに分けることをさらに含み、前記第1部分が前記第1冷媒流の少なくとも70%を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
(c)工程(b)を実行した後に、第2冷媒との間接熱交換によって前記第1炭化水素流体出力流を液化する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
(c)工程(b)を実行する前に、第2冷媒との間接熱交換によって前記炭化水素流体を予備冷却する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
工程(b)が、前記炭化水素流体を液化して、主要熱交換器のシェル側を通じて流れる混合冷媒との間接熱交換によって、前記主要熱交換器のコイル巻付チューブ側を通じて流れる前記混合冷媒を冷却して、炭化水素流体生成物流を作り出すことをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
a.第1冷媒流との間接熱交換によって熱交換システムで炭化水素流体を冷却して、前記第1冷媒流を加温して、加温第1冷媒流を作り出す工程と、
b.1つ又は複数の圧縮ステージで前記加温第1冷媒流を圧縮して、少なくとも1つの他の冷媒流と混合して、第2冷媒流を作り出す工程と、
c.前記第2冷媒流の少なくとも一部を少なくとも2つの部分、第1部分と第2部分とに分ける工程と、
d.少なくとも1つの速度形圧縮機を含む第1圧縮過程で前記第2冷媒流の前記第1部分を圧縮して、第1圧縮流を作り出す工程と、
e.前記第1圧縮過程と並列して配置される、少なくとも1つの容積圧縮機を含む第2圧縮過程で、前記第2冷媒流の前記第2部分を圧縮して、第2圧縮流を作り出す工程と、
f.前記第1圧縮流と前記第2圧縮流とを組み合わせて、複合圧縮冷媒流を作り出す工程と、
g.前記複合圧縮冷媒流を冷却して、冷却複合冷媒流を作り出す工程と、
h.前記冷却複合冷媒流を膨張させて、膨張冷媒流を作り出す工程と
を含む方法。
【請求項29】
工程(a)が、前記炭化水素流体を少なくとも部分的に液化することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
天然ガスを冷却、液化、及び任意選択で過冷却するための多くの液化システムが当技術分野でよく知られており、例えば、単一混合冷媒(SMR)サイクル、プロパン予備冷却混合冷媒(C3MR)サイクル、複混合冷媒(DMR)サイクル、C3MR−窒素ハイブリッド(例えば、AP−X(商標))サイクル、窒素又はメタンのエクスパンダーサイクル、及びカスケードサイクルである。典型的に、そのようなシステムにおいては、天然ガスは1つ又は複数の冷媒との間接熱交換によって冷却され、液化され、及び任意選択で過冷却される。様々な冷媒、例えば、混合冷媒、純成分、2相冷媒、ガス相冷媒などを用いることができる。窒素、メタン、エタン/エチレン、プロパン、ブタン、及びペンタンの混合物である混合冷媒(MR)が、多くのベースロード液化天然ガス(LNG)プラントで使用されている。MR流の組成は、典型的に、供給ガス組成及び運転条件に基づいて最適化される。
【0002】
冷媒は、1つ又は複数の熱交換器と1つ又は複数の冷媒圧縮システムとを含む冷媒回路において循環される。冷媒回路は閉ループ又は開ループであることができる。天然ガスは、熱交換機で冷媒に対する間接熱交換によって冷却され、液化され、及び/又は過冷却される。
【0003】
それぞれの冷媒圧縮システムは、循環する冷媒を圧縮して冷却するための圧縮回路と、圧縮機を駆動するのに必要な電力を供給するためのドライバ組立体とを含む。天然ガスを冷却、液化、及び任意選択で過冷却するのに必要とされる熱負荷を提供する低温低圧冷媒流を作るために、膨張する前に冷媒が高圧に圧縮されて冷却される必要があるため、冷媒圧縮システムは液化システムの不可欠な構成要素である。
【0004】
ベースロードLNGプラントでの冷媒圧縮の過半数は、高容量、可変速度、高効率、低メンテナンス性、小サイズなどを含むそれらの固有の能力のために、速度形(dynamic)圧縮機又は動的(kinetic)圧縮機、具体的には遠心圧縮機によって行われる。軸流圧縮機及び斜流圧縮機のような他の種類の速度形圧縮機がまた、同様の理由で使用されている。速度形圧縮機は、圧縮されるべき流体の運動量を増加させることによって機能する。反対に、容積圧縮機は、圧縮されるべき流体の容積を減らすことによって機能する。往復型圧縮機及びスクリュー圧縮機のような容積圧縮機は、典型的に、それらのより低い流れ能力のためにベースロードLNGサービスにおいて好ましくなく、多くのユニット、より高いコスト、及びより大きい敷地面積に対するニーズを次々にもたらす。
【0005】
LNGサービスにおいて使用されている4つの主な種類のドライバ、すなわち、産業用ガスタービン、航空転用ガスタービン、蒸気タービン、及び電気モータが存在する。
【0006】
幾つかのシナリオにおいては、LNG製造速度は、導入された冷媒圧縮機によって制限されることがある。1つのそのようなシナリオは圧縮機の運転点がアンチサージラインに近い場合である。サージは、圧縮機の最大ヘッド能力及び最小体積流れ限界に達した運転点として規定される。アンチサージラインは、サージに対する安全な運転方法においての運転点である。C3MRサイクルについてのそのようなシナリオの例は、最大ヘッド、それによって到達されるべき最低許容流量をもたらすプロパン予備冷却システムへの増大した負荷が存在する高い周囲温度の場合である。したがって、冷媒流量が制限され、次いで、それが冷媒及びLNG製造速度を制限する。
【0007】
LNG製造速度が、導入された冷媒圧縮機によって制限される別のシナリオは、圧縮機がストーンウォール又はチョークに近い場合である。ストーンウォール又はチョークは、圧縮機の最大安定体積流及び最小ヘッド能力に達した運転点として規定される。そのようなシナリオの例は、プラントがフル稼働であり最大LNG容量で稼働している場合である。圧縮機は、それを通じてより多くの冷媒流を扱うことができなくて、したがって、プラントが圧縮機の運転によって制限される。
【0008】
LNG製造が導入された冷媒圧縮機によって制限されることがある更なるシナリオは、圧縮機の運転点が圧縮機の設計仕様、例えば、流量計数、吸気マッハ数などによって制限される大きなベースロード設備に対してである。
【0009】
幾つかのシナリオにおいて、LNG製造は、利用可能なドライバ電力によって制限される。これは、プラントが高いLNG製造速度で運転している際に起こる場合がある。それはまた、減少した利用可能なガスタービン電力のために、高い周囲温度でガスタービンドライバを持つプラントに対して起こる場合がある。
【0010】
冷媒圧縮システムを除去するための1つの方法は、第1圧縮機の排出量でのそのドライバと共に、遠心圧縮機のような追加の速度形圧縮機を追加することである。これは、圧縮機がアンチサージラインの近くで運転しているというシナリオに対する圧縮システムに、より大きなヘッドを組み込むことを助けるが、第1圧縮機の排出量で追加の速度形圧縮機を追加することは、圧縮機がストーンウォールの近くで運転している場合に、限定された利益しか有さない。したがって、追加の速度形圧縮機を追加することは最大流量の制約の問題を解決しない。
【0011】
別のアプローチは、第1圧縮機と並列した、遠心圧縮機のような第2速度形圧縮機を追加することである。第2圧縮機は、典型的に、第1圧縮機と比較して容量が極めて小さく、このことは2つの並列圧縮機のバランスを取ること、及び、体積流量が一致しないことがあるが出口圧力を一致させることを確実にすることに関する課題を有する。典型的な速度形圧縮機の容量に対するヘッドの曲線を図1に示す。緩やかな曲線形状が与えられた場合、出口でのヘッドを一致させるが、全流量がは望の冷媒流を合計するということを確認することが難しくなる場合がある。システムを除去するために同様サイズの第2圧縮機を追加することは、圧縮機サイズを一致させることに関連する大きなコストのため、適した選択ではない。
【0012】
さらに、圧縮システムでの運転条件が変化する場合、(上で記載したような)異なる流れ特性を持つ2つの並列速度形圧縮機間での分流を調整することは難しい。例えば、アンチサージラインに近いC3MRプラント運転において、周囲温度が減少する場合、サージへの接近が増加して、第2圧縮機を通じてより低い流量が要求される。追加的に、第2圧縮機のパラメータ(例えば、速度)は変化させることができなく、それは、そのような変化が出口圧力における変化を引き起こし、第1圧縮機との不均衡を作り出すためである。さらに、第1圧縮機が混合冷媒圧縮機であるというシナリオにおいては、変化する供給組成及び周囲条件を伴うMR組成における任意の変化は、2つの圧縮機の不均衡を引き起こすことがある。これらの課題の多くは、両圧縮機が同一ではなく、第2圧縮機が典型的に主要圧縮機よりも極めて小さい容量であるという事実により駆り立てられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
概して、第1圧縮機と並列するより低い容量の速度形圧縮機を追加することは、効率的に設計及び運転するのが困難になる場合がある柔軟性のない設計をもたらす。したがって、必要とされることは、より単純かつより効率的な、LNGプラントでの負荷圧縮システムの除去方法である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この要旨は、発明の詳細な説明において以下でさらに説明される簡易化した形態での概念の選択を紹介するために提供される。この要旨は、特許請求の範囲に記載した主題の重要な特徴又は不可欠な特徴を特定することを意図するものでも、特許請求の範囲に記載した主題の範囲を限定するために使用されることを意図するものでもない。
【0015】
以下で説明され、以下に続く特許請求の範囲によって規定されるように、説明する実施形態は、LNG液化プロセスの一部として使用される圧縮システムの改善を提供する。記載される実施形態は、LNG液化プラントの1つ又は複数の冷媒圧縮システムにおける少なくとも1つの速度形圧縮機と並列する容積圧縮機を使用することによって、当技術分野におけるニーズを満足して、それによって、プラントが、別の方法でプラント容量を制限する条件下で運転することを可能とする。
【0016】
それに加えて、本発明のシステム及び方法の幾つかの具体的態様を以下で説明する。
【0017】
態様1−炭化水素流体を液化するための装置であって、
第1冷媒を圧縮して第1圧縮冷媒流を作り出すように運転可能に構成された圧縮システムであって、圧縮システムが速度形圧縮機を含む少なくとも1つの圧縮ステージを有する第1圧縮回路と、容積圧縮機を含む少なくとも1つの圧縮ステージを有する第2圧縮回路とを含み、第2圧縮回路が第1圧縮回路と流体流れ連通していて、第1圧縮回路の少なくとも第1部分と並列して配置され、圧縮システムが、第1圧縮回路の少なくとも1つの圧縮ステージ及び第2圧縮回路の少なくとも1つの圧縮ステージに電力を与えるように運転可能に構成されたドライバ組立体をさらに含む、圧縮システムと、
第1冷媒の少なくとも一部と炭化水素流体の間での間接熱交換によって炭化水素流体を冷却するように運転可能に構成された第1熱交換器と
を含む装置。
【0018】
態様2−第1圧縮回路の少なくとも1つの圧縮ステージが複数の圧縮ステージを含み、複数の圧縮ステージのそれぞれが速度形圧縮機であり、第2圧縮回路の少なくとも1つの圧縮ステージのそれぞれが容積圧縮機である、態様1に記載の装置。
【0019】
態様3−圧縮システムが、第1圧縮回路の複数の圧縮ステージの少なくとも2つの間で第1冷媒を中間冷却するようにさらに運転可能に構成された、態様2に記載の装置。
【0020】
態様4−第1圧縮回路が複数の圧縮ステージを含み、第1圧縮回路が第2部分を含み、複数の圧縮ステージの少なくとも1つが第1部分に設置され、複数の圧縮ステージの少なくとも1つが第2部分に設置され、第2圧縮回路が第1圧縮回路の第1部分のみと並列して配置され、第1部分に設置された複数の圧縮ステージの少なくとも1つのそれぞれが、第2部分に設置された複数の圧縮ステージの少なくとも1つの全てより高い圧力で運転するように運転可能に構成された、態様1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【0021】
態様5−炭化水素流体が第1熱交換器によって冷却された後に、炭化水素流体と第2冷媒の間での間接熱交換によって、炭化水素流体をさらに冷却して液化するように運転可能に構成された第2熱交換器をさらに含む、態様1〜4のいずれか1つに記載の装置。
【0022】
態様6−第1冷媒が、プロパン、混合冷媒、又は窒素である、態様1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【0023】
態様7−炭化水素流体及び第2冷媒が、第2熱交換器のコイル巻付チューブ側を通じて流れた場合、第2熱交換器が、第2熱交換器のシェル側を通じて流れる第2冷媒と間接熱交換することによって、炭化水素流体を液化して、第2冷媒を冷却するように運転可能に構成された、態様5〜6のいずれか1つに記載の装置。
【0024】
態様8−炭化水素流体が第1熱交換器によってさらに冷却される前に、炭化水素流体と第2冷媒の間での間接熱交換によって、炭化水素流体を予備冷却するように運転可能に構成された第2熱交換器をさらに含む、態様1に記載の装置。
【0025】
態様9−第2冷媒がプロパンであり、第1冷媒が混合冷媒である、態様1及び8のいずれか1つに記載の装置。
【0026】
態様10−炭化水素流体及び第1冷媒が、第1熱交換器のコイル巻付チューブ側を通じて流れた場合、第1熱交換器が、第1熱交換器のシェル側を通じて流れる第1冷媒との間接熱交換によって、炭化水素流体を液化して、第1冷媒を冷却するように運転可能に構成された、態様1及び8〜9のいずれか1つに記載の装置。
【0027】
態様11−ドライバ組立体が第1圧縮回路のための第1ドライバと、第2圧縮回路のための第2ドライバとを含み、第1ドライバが第2ドライバから独立している、態様1〜10のいずれか1つに記載の装置。
【0028】
態様12−第1圧縮回路と第2圧縮回路の間で、第1冷媒の流れの分布を制御するように運転可能に構成された弁をさらに含む、態様1〜11のいずれか1つに記載の装置。
【0029】
態様13−速度形圧縮機が遠心圧縮機であり、容積圧縮機がスクリュー圧縮機である、態様1〜12のいずれか1つに記載の装置。
【0030】
態様14−
a.第1冷媒流に関して圧縮過程を実行する工程であって、圧縮過程が第1冷媒流を圧縮して圧縮第1冷媒流を作り出すことを含む工程と、
b.圧縮第1冷媒流に対する間接熱交換によって炭化水素流体を冷却して、第1炭化水素流体出力流及び加温第1冷媒流を作り出す工程と
を含む方法であって、
工程(a)が、第1冷媒流を第1部分と第2部分とに分けること、少なくとも1つの速度形圧縮機を含む第1圧縮過程で第1冷媒流の第1部分を圧縮して第1圧縮流を作り出すこと、少なくとも1つの容積圧縮機を含む第2圧縮過程で第1冷媒流の第2部分を圧縮して第2圧縮流を作り出すこと、及び、第1圧縮流と第2圧縮流とを組み合わせて複合圧縮冷媒流を作り出すことをさらに含む方法。
【0031】
態様15−工程(a)が、第1圧縮過程における複数の圧縮ステージで、第1冷媒流の第1部分を圧縮することをさらに含む、態様14に記載の方法。
【0032】
態様16−工程(a)が、第1冷媒流を第1部分と第2部分とに分ける前に、第1圧縮過程の複数の圧縮ステージの少なくとも1つで第1冷媒流を圧縮することをさらに含む、態様14〜15のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
態様17−工程(a)が、複数の圧縮ステージの2つの間で第1冷媒流を冷却することをさらに含む、態様14〜16のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
態様18−工程(a)が、第1冷媒流を第1部分と第2部分とに分ける前に、第1冷媒流から第1冷媒の第3部分を除去することをさらに含む、態様14〜17のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
態様19−工程(a)が、少なくとも1つの第1冷媒副流を第1冷媒流と組み合わせることをさらに含む、態様14〜18のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
態様20−工程(a)が、第1冷媒流を第1部分と第2部分とに分ける前に、少なくとも1つの第1冷媒副流の少なくとも1つを第1冷媒流と組み合わせることをさらに含む、態様14〜19のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
態様21−工程(a)が、圧縮第1冷媒流を作り出す前に、少なくとも1つの熱交換器で複合圧縮冷媒流を冷却することをさらに含む、態様14〜20のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
態様22−工程(a)が、圧縮第1冷媒流を作り出す前に、複合圧縮冷媒流をさらに圧縮することをさらに含む、態様14〜20のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
態様23−工程(b)での間接熱交換の前に、圧縮第1冷媒流が冷却され膨張される、態様14〜22のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
態様24−工程(a)が、第1冷媒流を第1部分と第2部分とに分けることをさらに含み、第1部分が第1冷媒流の少なくとも70%を含む、態様14〜23のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
態様25−
(c)工程(b)を実行した後に、第2冷媒との間接熱交換によって第1炭化水素流体出力流を液化する工程をさらに含む、態様14〜24のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
態様26−
(c)工程(b)を実行する前に、第2冷媒との間接熱交換によって炭化水素流体を予備冷却する工程をさらに含む、態様14〜24のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
態様27−工程(b)が、炭化水素流体を液化して、主要熱交換器のシェル側を通じて流れる混合冷媒との間接熱交換によって、主要熱交換器のコイル巻付チューブ側を通じて流れる混合冷媒を冷却して、炭化水素流体生成物流を作り出すことをさらに含む、態様26に記載の方法。
【0044】
態様28−
a.第1冷媒流との間接熱交換によって熱交換システムで炭化水素流体を冷却して、第1冷媒流を加温して、加温第1冷媒流を作り出す工程と、
b.1つ又は複数の圧縮ステージで加温第1冷媒流を圧縮して、少なくとも1つの他の冷媒流と混合して、第2冷媒流を作り出す工程と、
c.第2冷媒流の少なくとも一部を少なくとも2つの部分、第1部分と第2部分とに分ける工程と、
d.少なくとも1つの速度形圧縮機を含む第1圧縮過程で第2冷媒流の第1部分を圧縮して、第1圧縮流を作り出す工程と、
e.第1圧縮過程と並列して配置される、少なくとも1つの容積圧縮機を含む第2圧縮過程で、第2冷媒流の第2部分を圧縮して、第2圧縮流を作り出す工程と、
f.第1圧縮流と第2圧縮流とを組み合わせて、複合圧縮冷媒流を作り出す工程と、
g.複合圧縮冷媒流を冷却して、冷却複合冷媒流を作り出す工程と、
h.冷却複合冷媒流を膨張させて、膨張冷媒流を作り出す工程と
を含む方法。
【0045】
態様29−工程(a)が、炭化水素流体を少なくとも部分的に液化することをさらに含む、態様28に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】速度形圧縮機及び容積圧縮機についての、入口体積流量率に対するヘッド率を示すグラフである。
図2】先行技術に従ったC3MRシステムの模式的フロー図である。
図3】先行技術に従ったC3MRシステムの予備冷却システムの模式的フロー図である。
図4】先行技術に従ったC3MRシステムのプロパン圧縮システムの模式的フロー図である。
図5】本発明の第1例示的実施形態に従ったC3MRシステムのプロパン圧縮システムの模式的フロー図である。
図6】本発明の第2例示的実施形態に従ったC3MRシステムのプロパン圧縮システムの模式的フロー図である。
図7】本発明の第3例示的実施形態に従ったC3MRシステムの混合冷媒圧縮システムの模式的フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の詳細な説明は、好ましい例示的実施形態を提供しているにすぎず、請求項に記載された本発明の範囲、利用可能性、又は構成を限定することを意図するものでない。むしろ、好ましい例示的実施形態における以下の詳細な説明は、当業者に、請求項に記載された本発明の好ましい例示的実施形態を実施することを可能とする説明を提供する。請求項に記載された本発明の趣旨及び範囲に逸脱することなく、部材の機能及び配置に様々な変更を施してもよい。
【0048】
図面に対応する本明細書で提示される参照番号は、他の特徴の文脈を提供するために、本明細書内での追加の説明をせずに1つ又は複数の次の図面で繰り返すことがある。
【0049】
特許請求の範囲においては、請求項に記載された工程を明確にするために文字が使用される(例えば、(a)、(b)、及び(c))。これらの文字は、その方法の工程を言い表すために使用され、そのような順序が特許請求の範囲において具体的に記載されない限りかつ明確に記載されている範囲でのみ、請求項に記載された工程を実施する順序を表すことを意図するものでない。
【0050】
方向を示す用語が、本明細書及び特許請求の範囲で使用され、本発明の一部を説明することがある(例えば、上、下、左、右など)。これらの方向を示す用語は、例示的実施形態を説明するのを助けることを単に意図しており、請求項に記載された発明の範囲を限定する意図ではない。本明細書で使用した場合、「上流」という用語は、基準点からの導管内の流体の流れ方向と反対である方向を意味することが意図される。同様に、「下流」という用語は、基準点からの導管内の流体の流れ方向と同一である方向を意味することが意図される。
【0051】
本明細書に別段の記載がない限り、明細書、図面及び特許請求の範囲で特定される任意の及び全ての百分率は、質量パーセント基準に基づいて理解されるべきである。本明細書に別段の記載がない限り、明細書、図面及び特許請求の範囲で特定される任意の及び全ての圧力は、ゲージ圧を意味すると理解されるべきである。
【0052】
「流体流れ連通」という用語は、明細書及び特許請求の範囲で使用された場合、部材間で液体、蒸気、及び/又は2相混合物を、制御された様式で(すなわち、漏れなしで)直接又は間接のいずれかで移送することを可能とする2以上の部材間での接続性を言い表す。互いに流体流れ連通しているような2以上の部材を結合するのは、当技術分野で公知の任意の適切な方法、例えば、溶接、フランジ付導管、ガスケット、及びボルトを使用した方法を伴うことができる。2以上の部材はまた、それらを分離することができるシステムの他の部材、例えば、弁、ゲート、又は流体流れを選択的に制限若しくは移動することができる他のデバイスを通じて一緒に結合することができる。
【0053】
「導管(conduit)」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、システムの2以上の部材間で流体を移送することができる1つ又は複数の構造を言い表す。例えば、導管としては液体、蒸気、及び/又はガスを移送する管、ダクト、通路、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0054】
「天然ガス」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、主成分のメタンを含有する炭化水素ガス混合物を意味する。
【0055】
「炭化水素ガス」又は「炭化水素流体」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、少なくとも1つの炭化水素を含むガス/流体を意味し、炭化水素が、ガス/流体の全体の組成の80%以上、及びより好ましくは90%以上を含む。
【0056】
「混合冷媒」(「MR」と省略される)という用語は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、少なくとも2つの炭化水素を含む流体を意味し、炭化水素が冷媒の全体の組成の80%以上を含む。
【0057】
「束(bundle)」及び「チューブ束」は本出願の範囲内においては同じ意味で使用され、同義であることが意図される。
【0058】
「周囲流体」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、周囲の圧力及び温度で又はその近くでシステムへ提供される流体を意味する。
【0059】
「圧縮回路」という用語は、互いに流体連通であり直列に配置された(以下、「直列流体流れ連通」)部材及び導管を言い表すために本明細書で使用され、第1の圧縮機又は圧縮ステージより上流で始まり、最終の圧縮機又は圧縮ステージより下流で終わる。「圧縮過程」という用語は、関連圧縮回路を含む部材及び導管によって行われる工程を言い表すことが意図される。
【0060】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「高−高」、「高」、「中」、及び「低」という用語は、これらの用語が使用される部材の性質に対する相対的な値を表現することが意図される。例えば、高−高圧流は、本出願中で説明され又は請求項に記載される、対応する高圧流若しくは中圧流若しくは低圧流よりも高い圧力を有する流れを示すことが意図される。同様に、高圧流は、本明細書又は請求項で説明される、対応する中圧流若しくは低圧流よりも高いが、本出願中で説明され又は請求項に記載される、対応する高−高圧流よりも低い圧力を有する流れを示すことが意図される。同様に、中圧流は、本明細書又は請求項で説明される、対応する低圧流よりも高いが、本出願中で説明され又は請求項に記載される、対応する高圧流よりも低い圧力を有する流れを示すことが意図される。
【0061】
本明細書で使用される場合、「寒剤(cryogen)」又は「低温流体」という用語は、液体、ガス、又は−70℃未満の温度を有する混合相流体を意味することが意図される。寒剤の例としては、液体窒素(LIN)、液化天然ガス(LNG)、液体ヘリウム、液体二酸化炭素及び加圧した混合相寒剤(例えば、LINと気体窒素との混合物)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「極低温」という用語は、−70℃未満の温度を意味することが意図される。
【0062】
表1は、説明する実施形態を理解する目的として、本明細書及び図面を通じて用いられる頭字語のリストを規定する。
【0063】
【表1】
【0064】
説明する実施形態は、炭化水素流体の液化に対する効率的なプロセスを提供し、特に天然ガスの液化に適用することができる。図2について言及すると、従来技術の典型的なC3MRプロセスが示される。供給流100(好ましくは天然ガスである)は、前処理部90において公知の方法によって洗浄及び乾燥されて、水と、CO2及びH2Sのような酸性ガスと、水銀のようなその他の汚染物質とを除去して、前処理供給流101を作り出す。前処理供給流101(実質的に水を含まない)は、予備冷却システム118で予備冷却されて予備冷却天然ガス流105を作り出し、MCHE108でさらに冷却、液化、及び/又は過冷却されて、LNG流106を作り出す。LNG流106は、典型的に、弁又はタービン(図示無し)を通過させることで圧力を下げて、次いで、LNG保存タンク109に送られる。タンク中での圧力減少及び/又はボイルオフの間に作り出された任意のフラッシュ蒸気は流れ107によって表され、それはプラントでの燃料として使用されて、供給するために循環されて、又は排出されることがある。
【0065】
前処理供給流101は、10℃未満、好ましくは約0℃未満、及びより好ましくは約−30℃の温度まで予備冷却される。予備冷却天然ガス流105は、約−150℃と約−70℃の間、好ましくは約−145℃と約−100℃の間の温度に液化され、その後、約−170℃と約−120℃の間、好ましくは約−170℃と約−140℃の間の温度に過冷却される。図2に示されるMCHE108は3つの束を持つコイル巻付熱交換器である。しかしながら、任意の数の束及び任意の熱交換器の種類を利用することができる。
【0066】
「実質的に水を含まない」という用語は、前処理供給流101での任意の残留水が、下流の冷却及び液化プロセスにおける水のフリーズアウトに関連する運転の問題を防止するのに十分に低い濃度で存在することを意味する。本明細書で説明する実施形態においては、水濃度は好ましくは1.0ppm以下であり、より好ましくは0.1ppmと0.5ppmの間である。
【0067】
C3MRプロセスで使用される予備冷却冷媒はプロパンである。図2に図示したように、プロパン冷媒110は、前処理供給流101に対して加温されて、加温低圧プロパン流114を作り出す。加温低圧プロパン流114は、4つの圧縮ステージを含むことができる1つ又は複数のプロパン圧縮機116で圧縮される。中圧レベルでの3つの副流111、112及び113が、それぞれ、プロパン圧縮機116の最終ステージ、第3ステージ及び第2ステージのサクションでプロパン圧縮機116に入る。圧縮プロパン流115は凝結装置117で凝結されて低温高圧流が作り出され、次いで圧力が減少され(減圧弁は図示無し)、プロパン冷媒110を作り出し、予備冷却システム118で前処理供給流101を冷却することが要求される冷却負荷を提供する。プロパン液体が加温されて加温低圧プロパン流114を作り出す場合は、プロパン液体を蒸発させる。凝結装置117は、典型的に、空気又は水のような周囲流体に対して熱を交換する。図では4つのステージのプロパン圧縮を示すが、任意の数の圧縮ステージを利用することができる。複数の圧縮ステージが説明され又は請求項に記載された場合、そのような複数の圧力ステージは、単一の複数ステージ圧縮機、複数圧縮機、又はそれらの組み合わせを含むことができることが理解されるべきである。圧縮機は単一ケーシング又は複数ケーシングの中にあることができる。プロパン冷媒を圧縮するプロセスは、一般的に、プロパン圧縮過程として本明細書で言い表される。プロパン圧縮過程は、図3においてより詳細に説明される。
【0068】
MCHE108において、冷媒の少なくとも一部、好ましくは冷媒の全てが、弁又はタービンを通過して圧力が減少した後に、冷媒流の少なくとも一部が蒸発することによって提供される。
【0069】
低圧ガスMR流130はMCHE108のシェル側の底から回収されて、低圧サクションドラム150を通じて送られ、任意の液体を切り離し、蒸気流131は低圧(LP)圧縮機151で圧縮されて中圧MR流132を作り出す。低圧ガスMR流130は、典型的に、プロパン予備冷却温度での温度か又はそれに近い温度、好ましくは約−30℃で、かつ、10bar(145psia)未満の圧力で回収される。中圧MR流132は、低圧最終冷却器152で冷却されて冷却中圧MR流133を作り出し、任意の液体が中圧サクションドラム153で排水され、中圧蒸気流134を作り出し、中圧(MR)圧縮機154でさらに圧縮される。得られた高圧MR流135は中圧最終冷却器155で冷却され、冷却高圧MR流136を作り出す。冷却高圧MR流136は、任意の液体が排出される高圧サクションドラム156に送られる。得られた高圧蒸気流137は、高圧(HP)圧縮機157でさらに圧縮され、高−高圧MR流138を作り出し、高圧最終冷却器158で冷却され、冷却高−高圧MR流139を作り出す。次いで、冷却高−高圧MR流139は予備冷却システム118で蒸発プロパンに対して冷却され、2相MR流140を作り出す。次いで、2相MR流140は蒸気−液体分離器159に送られ、MRL流141とMRV流143とが得られ、それらはMCHE108に戻されてさらに冷却される。相分離器を出た液体流は、産業においてMRLと言い表され、相分離器を出た蒸気流は、それらがその後に液化された後でさえ、産業においてMRVと言い表される。MCHE108の底から回収され、次いで、複数流としてMCHE108のチューブ側に戻ってきた後、MRを圧縮して冷却するプロセスは、一般的に、本明細書においてMR圧縮過程と言い表される。
【0070】
MRL流141及びMRV流143の両方が、MCHE108の2つの分離回路で冷却される。MRL流141が、第1の2束のMCHE108で冷却され、部分的に液化され、圧力が減少した冷却流を得て、冷却2相流142を作り出しMCHE108のシェル側に戻され、第1の2束のMCHEで要求される冷媒を提供する。MRV流143は、第1、第2及び第3の2束のMCHE108で冷却され、冷却高圧減圧弁を通過して圧力を低減され、流れ144としてMCHE108に導かれて、過冷却、液化、及び冷却工程での冷媒を提供する。MCHE108は、天然ガスの液化に適した任意の交換機、例えば、コイル巻付熱交換機、プレートフィン熱交換器又はシェルアンドチューブ熱交換器であることができる。コイル巻付熱交換器は、天然ガスの液化のための最新の交換機であり、流れプロセスのための複数の渦巻チューブ及び加温冷媒流を含む少なくとも1つのチューブ束と、冷却冷媒流を流すためのシェル空間とを含む。
【0071】
図3は、図1に示した予備冷却システム118及び予備冷却圧縮過程の例示的な配置を図示する。図1に記載されるように、前処理供給流101は蒸発器178、177、174及び171で冷却され、それぞれ、冷却プロパン流102、103、104及び105を作り出す。加温低圧プロパン流114は、1つ又は複数の圧縮機116で圧縮されて圧縮プロパン流115を作り出す。プロパン圧縮機116は、それに入る副流113、112及び111を持つ4つのステージの圧縮機として示される。圧縮プロパン流115は典型的に凝結器117で完全に凝結され、プロパン冷媒110を作り出し、プロパン膨張弁170で圧力を減少されることがあり、流れ120を作り出し、それは高−高圧蒸発器171で部分的に蒸発され2相流121を作り出して、次いで、それは蒸気−液体分離器192で蒸気流と液体冷媒流122とに分離されることがある。蒸気流は高圧副流111と言い表され、プロパン圧縮機116の第4圧縮ステージのサクションで導かれる。液体冷媒流122は減圧弁173で圧力を減少され、流れ123を作り出し、それは高圧蒸発器174で部分的に蒸発され、2相流124を作り出し、次いで、それは蒸気−液体分離器175で分離されることがある。蒸気部は中圧副流112と言い表され、プロパン圧縮機116の第3圧縮ステージのサクションで導かれる。液体冷媒流125は減圧弁176で圧力を減少されて流れ126を作り出し、それは中圧蒸発器177で部分的に蒸発され、2相流127を作り出し、それは蒸気−液体分離器192で相分離されることがある。蒸気部は低圧副流113と言い表され、プロパン圧縮機116の第2圧縮ステージのサクションで導かれる。液体冷媒流128は減圧弁179で圧力を減少されて流れ129を作り出し、それは低圧蒸発器178で完全に蒸発されて加温低圧プロパン流114を作り出し、プロパン圧縮機116の第1ステージのサクションに送られる。
【0072】
この方法においては、冷媒を4つの蒸発器の圧力レベルに対応する4つの温度レベルで供給することができる。4つ超又は4つ未満の蒸発器及び温度/圧力レベルを有することがまた可能である。任意の種類の熱交換器を、蒸発器171、174、177及び178、例えば、ケトル、コア、プレートフィン、シェルアンドチューブ、コイル巻付、コアインケトルなどに対して使用することができる。ケトルの場合においては、熱交換器及び蒸気−液体分離器を共通ユニットに組み合わせることができる。
【0073】
プロパン冷媒110は、典型的に、1つが前処理供給流101を予備冷却して予備冷却天然ガス流105を作り出し、もう1つが冷却高−高圧MR流139を冷却して2相MR流140を作り出す2つの並列システムに送られるべき2つの流れに分けられる。簡単にするため、供給予備冷却回路のみを図2に示す。
【0074】
図4は、C3MRシステムのプロパン圧縮システムを示す。プロパン圧縮機116は、4つの圧縮ステージを含む単一圧縮機又は4つの分離圧縮機であることができる。それはまた、4つ超又は4つ未満の圧縮ステージ/圧縮機を伴うことができる。約1〜5baraの圧力で加温低圧プロパン流114は第1プロパン圧縮ステージ116Aに入り、約1.5〜10baraの圧力で中圧プロパン流180を作り出す。次いで、中圧プロパン流180は低圧副流113と混合され中圧混合流181を作り出し、それは第2プロパン圧縮ステージ116Bに供給され、約2〜15baraの圧力で高圧プロパン流182を作り出す。次いで、高圧プロパン流182は中圧副流112と組み合わさり高圧混合流183を作り出し、それは第3圧縮ステージ116Cに送られ、約2.5〜20baraの圧力で高−高圧プロパン流184を作り出す。次いで、高−高圧プロパン流184は高圧副流111と組み合わさり高−高圧混合流185を作り出し、それは第4圧縮ステージ116Dに送られ、約2.5〜30baraの圧力で圧縮プロパン流115を作り出す。次いで、圧縮プロパン流115は図2の凝結器117で凝結される。
【0075】
図2〜4に示した予備冷却及び液化圧縮機は、典型的に、それらの高容量、可変速度、高効率、低メンテナンス性、小サイズなどが与えられる速度形圧縮機又は動的圧縮機、具体的には遠心圧縮機である。軸流圧縮機及び斜流圧縮機のような他の種類の速度形圧縮機がまた、同様の理由で使用されている。往復型圧縮機及びスクリュー圧縮機のような容積圧縮機は、典型的に、複数ユニット、より高いコスト、より大きい敷地面積に対するニーズをもたらすそれらのより低い流れ能力のため、ベースロードLNGサービスにおいて好ましくない。図1は、速度形圧縮機及び容積圧縮機についての、入口体積流量率に対する圧力比率(固定参照点に関する両方の値)の曲線を示す。その曲線が示すように、速度形圧縮機は、しばしば、容積圧縮機に比べてより高い入口体積流量で運転する。したがって、それらは、ベースロードLNGサービスにおいて有利である、より高い冷媒流容量を有する。また、図1で明らかなことは、速度形圧縮機についてはより緩やかな曲線であるのと反対に、容積圧縮機については急な曲線である。遠心圧縮機についての緩やかな曲線の利益は、それらが広い範囲の流量及び圧力で運転することができることで、それによりそれらを様々な運転シナリオに適するものにする。一方、容積圧縮機は、急な曲線のため狭い範囲の運転流量を提供する。速度の可変性は、遠心圧縮機の別の利益である。圧力及び体積流量は、プラント性能を最適化するために速度を変化させることにより調整することができる。容積圧縮機での速度変化の影響もあるが、しばしば、その速度範囲はより小さいものである。容積圧縮機のこれらの態様は、典型的に、ベースロードLNG圧縮サービスでの使用について考えられる欠点であるが、本明細書に記載される本発明は、LNGプラントを除去するような容積圧縮機を利用するための新規の方法を提供する。
【0076】
図2〜4で示される実施形態では、2つの第1圧縮回路が存在する。1つ目の第1圧縮回路はC3MRプロセスの一部であり、加温低圧プロパン流114で始まり、圧縮プロパン流115で終わり、4つの圧縮ステージ116A、116B、116C、116Dを含む。2つ目の第1圧縮回路はMR圧縮システムの一部であり、蒸気流131で始まり、高−高圧MR流138で終わり、LP圧縮機151、低圧最終冷却器152、中圧サクションドラム153、MP圧縮機154、中圧最終冷却器155、高圧サクションドラム156、及びHP圧縮機157を含む。
【0077】
図5は、本発明の例示的実施形態を表し、プラント性能はプロパン圧縮機、具体的にはプロパン圧縮機116の第4圧縮ステージ116Dによって制限される。本明細書で説明するものを除き、図5に示される実施形態は、上で説明され図2〜4を参照した実施形態と同一である。図5はプロパン圧縮過程を示し、プロパン圧縮機116は、116A、116B、116C、及び116Dと示される4つの圧縮ステージを含む。第4圧縮ステージ116Dが障害になることがある様々なシナリオが存在する。例えば、第4圧縮ステージ116Dは、最大流れ容量限界(ストーンウォールの状態に近い)である場合があり、又は、それは最大ヘッド制約(サージの状態に近い)である場合がある。これらのシナリオは、プラント運転条件、例えば、製造速度、周囲温度、供給ガス圧力などによって駆り立てられる。第4圧縮ステージ116Dはまた、任意の他の圧縮機設計仕様又は運転限界である場合がある。
【0078】
第4圧縮ステージ116Dを除去するために、容積圧縮機187が第4圧縮ステージ116Dと並列に提供される。高−高圧混合流185は2つ、第1圧縮流185Aと第2圧縮流185Bとに分けられる。好ましくは50%超の高−高圧混合流185が第1圧縮流185Aに向けられる。より好ましくは、70%超の高−高圧混合流185が第1圧縮流185Aに向けられる。比例弁(図示無し)又はその他の適切な制御デバイスを、任意選択で、第1圧縮流185Aと第2圧縮流185Bの間での分流の調整を可能とするために提供することができる。この実施形態においては、プロパン圧縮機116は、遠心圧縮機のような速度形圧縮機又は動的圧縮機であり、容積圧縮機187はスクリュー圧縮機又は往復型圧縮機である。代替実施形態において、容積圧縮機187は複数のステージ及び/又は複数の圧縮機からなることができる。
【0079】
両方の圧縮機116、187からの出口流186Aと186Bとは組み合わされて、圧縮プロパン流115を作り出し、それは図2の凝結器117に送られる。複数の凝結器(図示無し)をまた、必要であれば用いることができる。容積圧縮機187は、LNGプラントで利用可能な任意の余分なドライバ電力によって又は専用電気モータ若しくは任意の他の電力源によって駆動することできる。
【0080】
「第2」という用語は、本明細書では、「第1」流体流、圧縮回路、圧縮過程、及び圧縮機の少なくとも一部と並列して配置される流体流、圧縮回路、圧縮過程、及び圧縮機を識別するために使用される。「第2」という用語はまた、容積圧縮機の並列使用が、存在するLNGプラントでの1つ又は複数の速度形圧縮機への改造として組み入れることができるため使用される。本明細書で具体的に述べたものを除き、「第2」及び「第1」という用語は、相対的な容量又は性能特性を示すことを意図するものでない。この実施形態において、第2圧縮回路は、第2圧縮流185B、容積圧縮機187、及び出口流186Bからなる。
【0081】
圧縮プロパン流115の圧力は、凝結器117での凝結温度を決定し、それは、順に、予備冷却温度を決定し、LNGプラントの全体の効率に影響する。図5の実施形態の性能を改善するために、第4圧縮ステージ116Dと容積圧縮機187との出口圧力を一致させることが望ましい。容積圧縮機の流量に対する急なヘッド曲線が与えられたるため(図1参照)、圧力の一致が体積流量の影響を考慮せずに容積圧縮機187の特性によって自動的に達成される。したがって、第1圧縮流185Aと第2圧縮流185Bの間の分流は、所望の総冷媒流量及びプラント性能を達成するために調整することができる。プラント運転中に、容積圧縮機187の運転における変化に対する駆動力として、分流を調整することが望ましいことがある。更なるプロセスの調整を、第1圧縮回路における圧縮機又は第2圧縮回路における圧縮機の速度を独立して変化させることで行うことができる。
【0082】
図6図5の別の形であり、第2圧縮回路がプロパン圧縮機116の第3及び第4圧縮ステージ116C、116Dと並列して導入される。別段の記載があるものを除き、図6の実施形態は、図5を参照して上で説明した実施形態と同一である。この実施形態において、高圧混合流183は第1圧縮流183Aと第2圧縮流183Bとに分かれる。第1圧縮流183Aは、第1圧縮回路の第3圧縮ステージ116Cに送られて、その後、高圧副流111と混合され、第1圧縮回路の第4圧縮ステージ116Dで圧縮し、一方で、第2圧縮流183Bは第2圧縮回路の容積圧縮機187に送られる。出口流188Aと188Bとは混合されて圧縮プロパン流115を作り出し、それは図2の凝結器117に送られる。この実施形態においては、第2圧縮回路は、第2圧縮流185B、容積圧縮機187、及び出口流188Bからなる。
【0083】
この実施形態の配置は、圧縮機116の第3及び第4圧縮ステージ116C、116Dの両方がLNG製造を制限している場合に有利である。第1圧縮回路は遠心圧縮機のような少なくとも1つの速度形圧縮機を含み、一方で、第2圧縮回路はスクリュー圧縮機のような少なくとも1つの容積圧縮機を含む。代替実施形態においては、第2圧縮機は、任意の数の圧縮ステージと並列して提供されることがある。多くの用途において、第2圧縮回路と並列して設置されない任意の圧縮機又は圧縮ステージよりも高い圧力で運転する第1圧縮回路の圧縮機又は圧縮ステージと並列して配置される第2圧縮回路を有することが好ましい。
【0084】
図6の更なる変形として、第2圧縮回路は、容積圧縮機187が、ある運転条件下で第4圧縮ステージ116Dのみと並列して運転され、他の運転条件下で第3及び第4圧縮ステージ116C、116Dの両方と並列して運転することを可能とする、弁194、195及び導管193を備えることができる。従来技術を超えた本発明のこの実施形態の利益は、図5で示される実施形態に対して挙げられた多くの利益に加えて、圧縮システムの柔軟な運転を可能として、圧縮性能を除去することである。
【0085】
図5〜6及び関連する説明は、C3MR液化サイクルのプロパン予備冷却圧縮機を言い表すが、本発明は、限定されないが、2相冷媒、ガス相冷媒、混合冷媒、純成分冷媒(例えば窒素)などを含む任意の他の冷媒種に適用可能である。加えて、それは、予備冷却、液化又は過冷却を含む、LNGプラントで利用する任意のサービスに対して使用されるべき冷媒において潜在的に有用である。本発明は、SMR、DMR、窒素エクスパンダーサイクル、メタンエクスパンダーサイクル、AP−X、カスケード、及び任意の他の適切な液化サイクルを含む任意のプロセスサイクルを利用する天然ガス液化プラントでの圧縮システムに適用することができる。追加的に、本発明は開ループ及び閉ループの液化サイクルの両方に適用することができる。
【0086】
図7は、低圧MR(LP MR)圧縮機151がプラント性能を制限する本発明の更なる実施形態を表す。別段の記載があるものを除き、図7の実施形態は図2〜4を参照して上で説明した実施形態と同一である。加えて、図7の実施形態は図5の実施形態と組み合わせて実行することができる。
【0087】
この実施形態において、MR冷媒蒸気流131は、2つの流れ、第1圧縮流131Aと第2圧縮流131Bとに分けられる。第1圧縮流131Aは第1LP MR圧縮機151(第1圧縮回路の一部)に送られて出口流190Aを作り出す。第2圧縮流131Bは第2圧縮機191(第2圧縮回路の一部)に送られて出口流190Bを作り出す。出口流190Aと190Bとは組み合わされ中圧MR流132を作り出し、それは低圧最終冷却器152に送られて冷却中圧MR流133を作り出す。分離最終冷却器(図示無し)をまた必要であれば用いることができる。第1圧縮回路は遠心圧縮機のような少なくとも1つの速度形圧縮機を含み、一方で、第2圧縮回路はスクリュー圧縮機のような少なくとも1つの容積圧縮機を含む。この実施形態において、第2圧縮回路は第2圧縮流131Bで始まり、第2圧縮機191を含み、出口流109Bで終わる。
【0088】
従来技術を超えたこの実施形態の利益は、前述の実施形態について挙げられた全ての利益に加えて、MR組成の柔軟性の利益である。混合冷媒液化プロセスにおいて、MR流の組成は、所望の熱交換器冷却曲線及び全体のプロセス効率を達成するために、典型的に、供給組成変化、周囲温度変化、供給圧力変化、LNG製造速度変化などに基づいてプラントが運転する間に変化する。速度形圧縮機とは異なり、容積圧縮機はMR組成変化にほとんど影響を受けなく、したがって、第1圧縮回路と第2圧縮回路の間の分割は、ヘッドに影響を与えずに、MR組成変化を必要に応じて調整することができる。
【0089】
代替実施形態において、MR圧縮回路での任意の若しくは全てのステージ又は圧縮機と並列する第2圧縮回路を導入することが可能である。第2圧縮回路は、全体のMR圧縮システム又は制限しているステージ若しくは圧縮機とだけ並列して加えることができる。第2圧縮機191は、LNGプラントで利用可能な任意の余分なドライバ電力によって又は分離電気モータ若しくは任意の他の電力源によって駆動することができる。加えて、幾つかの実施形態において、冷媒の一部は、第1圧縮回路と第2圧縮回路の間で冷媒を分ける前に除去することができる。
【0090】
本発明の別の例示的実施形態は、LNG製造が利用可能なドライバ電力によって制限されるシナリオ、例えば、ガスタービンドライバに対する減少した利用可能な電力のために高い製造速度で又は高い周囲温度の中で適用可能である。そのような場合において、追加のドライバは第2圧縮機を駆動するために提供されることがある。これは、圧縮システムにおいて利用可能な電力を増加させ、同時に、圧縮システムへの追加の電力を分配する好都合な方法を提供して、制限しているステージを除去する。これは、存在するLNGプラントの容量を増加するために改造設計を行う場合に特に有益である。
【0091】
本明細書で記載した本発明の実施形態は、任意の数の圧縮機、圧縮機ケーシング、圧縮ステージ、内部冷却器又は最終冷却器の存在などを含む任意の圧縮機設計に適用可能である。追加的に、第2圧縮回路は、連続した若しくは並列した複数の圧縮機又は圧縮ステージを含むことができる。本発明は、往復型圧縮機又はピストン型圧縮機並びに回転羽又はスクリュー圧縮機のような様々な種類の容積圧縮機に適用可能である。本発明に関連する方法及びシステムは、新規のプラント設計の一部として又は存在するLNGプラントを除去するための改造として実行することができる。
【実施例】
【0092】
[例1]
以下は、本発明の例示的実施形態の運転例である。その例のプロセス及びデータは、約4百万メートルトン/年のLNGを製造して、具体的には図5に示される実施形態を言い表すプラントにおいて、図2〜4と同様のC3MRプロセスのシミュレーションに基づく。本例の説明を単純化するために、図5に示される実施形態に関して説明した部材及び参照番号を使用する。
【0093】
この例においては、プラント性能は、プロパン圧縮機116の第4圧縮ステージによって制限され、それは、可能である最大ヘッドでの遠心圧縮機の運転であり、高い周囲運転条件のためにアンチサージラインであった。スクリュー圧縮機を第4圧縮ステージ116Dと並列に追加した。加温低圧プロパン流114を、1.2bara(17.4psia)、−36℃(−33°F)かつ102826m3/時間(3631266ft3/時間)の流量で、第1プロパン圧縮ステージ116Aに入れて、2.3bara(33.4psia)、−10℃(14°F)で出した。それを、同じ圧力かつ73644m3/時間(2600713ft3/時間)の流量で低圧副流113と混合した。中圧混合流181を第2プロパン圧縮ステージ116Bに入れて、4.2bara(60.9psia)かつ9℃(48°F)に圧縮して、それを同じ圧力かつ62780m3/時間(2217055ft3/時間)の流量で中圧副流112と混合した。高圧混合流183を第3圧縮ステージ116Cに入れて、7.5bara(108.8psia)かつ29℃(84°F)に圧縮して、それを同じ圧力かつ84305m3/時間(2977203ft3/時間)の流量で高圧副流111と混合した。高−高圧混合流185を、第1圧縮流185Aと第2圧縮流185Bとに分けた。第2圧縮流185Bの流量は17160m3/時間(606000ft3/時間)であった。両方の流れを22.8bara(330.7psia)に圧縮して、出口流186Aと186Bとを作り出し、それらを組み合わせて22.8bara(330.7psia)かつ166694m3/時間(5886743ft3/時間)の流量で圧縮プロパン流115を作り出した。
【0094】
液化システムの電力要求が、スクリュー圧縮機を駆動するのに要する追加の電力を構成するために1.4%増加した。この場合において、この追加の電力量はLNGプラントで利用可能であり、第2圧縮機を駆動するのに利用した。プラントの全体のLNG製造は3.9%増加した。したがって、本発明はプロパン圧縮機を除去するのに成功して、改善したプラントの容量及び効率をもたらした。
【0095】
[例2]
以下は、本発明の例示的実施形態の運転例である。その例のプロセス及びデータは、約4百万メートルトン/年のLNGを製造して、具体的には図6に示される実施形態を言い表すプラントにおいて、図2〜4と同様のC3MRプロセスのシミュレーションに基づく。本例の説明を単純化するために、図6に示される実施形態に関して説明した部材及び参照番号を使用する。
【0096】
本例は例1と同様の運転シナリオであり、唯一の違いは、プロパン圧縮機の第3及び第4圧縮ステージ116C及び116Dの両方を、容積圧縮機187(本例において、それはスクリュー圧縮機)を使用して側管を通したことであった。加温低圧プロパン流114を、1.3bara(18.9psia)、−35℃(−31°F)かつ108070m3/時間(3816450ft3/時間)の流量で第1プロパン圧縮ステージ116Aに入れて、2.3bara(33.4psia)、−10℃(14°F)で出した。それを、同じ圧力かつ77133m3/時間(2723926ft3/時間)の流量で低圧副流113と混合した。中圧混合流181を第2プロパン圧縮ステージ116Bに入れて、4.2bara(60.9psia)かつ9℃(48°F)に圧縮して、同じ圧力かつ65111m3/時間(2299373ft3/時間)の流量で中圧副流112と混合した。高圧混合流183を第1圧縮流183Aと第2圧縮流183Bとに分けた。183Bの流量は9677m3/時間(341740ft3/時間)であった。第2圧縮流183Bを容積圧縮機187(本例ではそれは往復型圧縮機であった)で22.8bara(330.7psia)に圧縮した。第1圧縮流183Aを、第3圧縮ステージ116Cで7.5bara(108.8psia)かつ29℃(84°F)に圧縮して、同じ圧力かつ68011m3/時間(2401786ft3/時間)の流量で高圧副流111と混合した。高−高圧混合流185を第4圧縮ステージ116Dに入れて、22.8bara(330.7psia)に圧縮した。出口流188Aと188Bとを組み合わせて、22.8bara(330.7psia)かつ159207m3/時間(5622342ft3/時間)の流量で圧縮プロパン流115を作り出した。
【0097】
この場合において、液化システムの電力要求が、第2圧縮機(容積圧縮機)を駆動するために3%増加した。この追加の電力量はLNGプラントで利用可能であり、第2圧縮機を運転するのに利用した。プラントの全体のLNG製造は2%増加した。したがって、本発明はプロパン圧縮機を除去するのに成功して、高い周囲条件の中で改善したプラント容量をもたらした。
【0098】
本発明は、好ましい実施形態及びそれらの代替実施形態に関して開示している。もちろん、本発明の教訓からの様々な変化、変更、及び修正を、それらの意図した趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者によって実行することができる。本発明は、添付された特許請求の範囲の用語によって限定されるにすぎないことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7