(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コインを載せる台と、台の前方に連続して設けた凹状の椀とを備え、椀は、台上のコインを落とし込んで落とし込んだコインを手に取り込むものであり、コインの落とし込み部と、落とし込み部の上端で前方及び左右に連続したパームレスト部を有し、パームレスト部は、上向きの曲面であり、台と椀との境界が後方に向けて突出する平面視湾曲線状を成し、台は、左右及び後側に壁部を有すると共に後端が後方に突出する円弧状に湾曲してあり、左右端の間隔を椀との境界まで滑らかに連続して次第に間隔を狭めており、椀側の左右端に肩部のない形状としてあることを特徴とするキャッシュトレイ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のキャッシュトレイは、台から椀に落とし込んだコインを手に取り込むときに、取りこぼしが生じ易いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、椀内にあるコインの取りこぼしを防止できるキャッシュトレイの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、コインを載せる台と、台の前方に連続して設けた凹状の椀とを備え、椀は、台上のコインを落とし込んで落とし込んだコインを手に取り込むものであり、コインの落とし込み部と、落とし込み部の上端で前方及び左右に連続したパームレスト部を有し、パームレスト部は、上向きの曲面であり、台と椀との境界が後方に向けて突出する平面視湾曲線状を成し、台は
、左右及び後側に壁部を有すると共に後端が後方に突出する円弧状に湾曲してあり、左右端の間隔を椀との境界まで滑らかに連続して次第に間隔を狭めており、椀側の左右端に肩部のない形状としてあることを特徴とするキャッシュトレイである。
【発明の効果】
【0007】
請求項
1に記載の発明によれば、
図4(a)に示すように、台と椀との境界の形状が平面視湾曲線状にしているので、平面視直線状の場合に比較して、中指の指先が邪魔にならないから、中指を曲げたりすることなく、指の自然な動きで椀内にあるコインを手に取り込むことができ、椀内にあるコインの取りこぼしを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるキャッシュトレイの斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態にかかるキャッシュトレイの図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図、(d)は右側面図、(e)は(a)に示すA−A断面図、(f)は(a)に示すB−B断面である。
【
図3】本発明の実施の形態にかかるキャッシュトレイの図であり、(a)は底面図、(b)は(a)に示すC−C断面である。
【
図4】本発明の実施の形態にかかるキャッシュトレイの図であり、(a)は台と椀との境界と手の指先との関係を示す平面図、(b)は(a)に示すE−E断面図であり椀内の指先の動きを示す図である。
【
図5】評価試験で用いた比較例のキャッシュトレイの平面図であり、(a)は比較例1、(b)は比較例2である。
【
図6】評価試験の結果を示す図であり、(a)はコインのつかみやすさ、(b)は使い心地のよさを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態にかかるキャッシュトレイは、スーパーマーケット等の商店で支払われる金銭(コイン)を受けるものである。
図1及び
図2に示すように、キャッシュトレイ1は、コインを載せる台3と、台3の前方に連続して設けた凹状の椀5とを備えている。
台3は上面がコインの受け面7であり、受け面7には、前後方向の突条9が左右方向に間隔をあけて複数形成してある。
受け面7の周囲は、後端7aを後方に突出する円弧状に湾曲してあり、左右端7b、7cは各々円弧状を成し、椀5に向けて左右端7b、7c間の幅を後述する椀5と台3との境界7eまで滑らかに連続して狭めている。
【0010】
図2に示すように、本実施の形態では、キャッシュトレイ1の前後の長さL1は約216mmであり、左右端7b、7c間の幅は最大の箇所L2が約115mm、椀5との境界の箇所L3が約85mmである。受け面7の後端7aの円弧の曲率半径R1(以下「R」は曲率半径である)は約60mmの円弧であり、左右端7b、7cのR2は各々約230mmの円弧である。
受け面7の左右及び後側には上方ほど外側に広がるように傾斜した壁部11が設けてある。壁部11の高さH1(
図2(b)参照)は約23mmであり、傾斜角度K1(
図2(e)参照)は約125度である。
受け面7の前端、即ち台3と椀5との境界7eは、後方に向けて突出する平面視湾曲線状を成している。
図2(a)に示すように、本実施の形態では、境界7eの湾曲線はR3であり、R3は約43mmである。
尚、
図3に示すように、台3の裏面に設けてあるのは、レジスター等の機器にスライドにより取り付ける取付部13と、ボルトで固定する固定部14である。
【0011】
図1に示すように、椀5は、台3に載せたコインを落とし込むものであり、略半球状に凹んだ落し込み部15と、落し込み部15の上端で前方及び左右に連続して形成したパームレスト部17とを備えている。
図2(e)に示すように、落し込み部15は、前側壁15aの傾斜を後側壁15bの傾斜よりも大きくしてある。前側壁15aと後側壁15bとは縦断面が円弧としてあり、前側壁15aの円弧の曲率の方が後側壁15bの円弧の曲率よりも大きくしてある。本実施の形態では、縦断面における前側壁15aのR4は約35mmであり、後側壁15bのR5は約46mmである。
図2(f)に示すように、落し込み部15の左右の壁15c、15cは、断面において底15dに連続する一つの円弧としないで、落とし込み部の底15d側が大きく傾斜するように左右の各壁15c、15cを各々大きな曲率半径の円弧にして底15dで連続させている。本実施の形態では、左右の壁15c、15cは、落とし込み部15の上端から底15dまでのR8の円弧よりも大きなR6の円弧としてR6の中心を落とし込み部15から離れた位置にしてある。尚、本実施の形態では、R8が約25mmであり、左右の壁のR6は約72mmである。
【0012】
図4(b)に示すように、パームレスト部17は、掌を載せるようにした部分である。
図1及び
図2に示すように、このパームレスト部17は落とし込み部15の上端で椀5の境界7eよりも前側に形成してある。
図2(e)に示すように、パームレスト部17は椀5を形成する部材の肉厚よりも大きな巾を持って形成してあり且つ巾は上向きのR7の曲面としてある。本実施の形態では、パームレスト部のR7は約7.5mmである。
【0013】
次に、本実施の形態にかかるキャッシュトレイ1の作用効果について説明する。
図1及び2に示すように、台3に置かれたコインCは、手の指で掻き集めて、台3から椀5に落とし込み、次に、椀5内に落とし込んだコインCは、椀5内で人差し指から小指を滑らすようにしてコインCを掴み取る。
台3と椀5との境界7eは、
図4(a)(b)に示すように、手の指先の輪郭に沿って後方に向けて突出する平面視湾曲線状を成しているので、直線状の場合に比較して、他の指よりも指先が長い中指が邪魔にならないから、中指を曲げたりすることなく、指の自然の動きを妨げないで椀5にあるコインCを取り込むことができ、椀5内にあるコインCの取りこぼしを防止できる。
【0014】
図1及び
図2に示すように、台3において受け面7の後端7aが後方に突出する湾曲形状としてあるので、指を広げたときの指先の輪郭と同様の形状になるから、台3上に散らばっているコインCを集め易く且つコインが台3に残るのを防止できる。
台3の受け面7の後端7a及び左右端7b、7cに設けた壁部11は外側に広がるように傾斜しているから、コインCが受け面7の後端7aや左右端7b、7c等の隅にある場合でも指先を壁部11の傾斜面に当てて滑らすことで、隅にあるコインCを容易に集めることができる。
受け面7の左右端7b、7c間の間隔L2〜L3は境界7eまで滑らかに連続して次第に間隔を狭めており、
図5(b)の比較例2で示すような肩25がないので、台3上のコインCを集めて椀5側へ滑らすときに肩に引っ掛かることがなく、スムーズに椀5へ落とし込みできる。
更に、受け面7は左右端7b、7cの間隔が椀5側を次第に狭くしているので、散らばっているコインCを纏めて椀5に案内し易い。
椀5の落とし込み部15は、前側壁15aを後側壁15bよりも傾斜を大きくしているので、落とし込み部15内にあるコインCが集まり易く、且つ
図4(b)に示すように、コインCを指を丸めて手に取り込むときに、指先の自然な動きに沿わせることができ、コインCの取りこぼしを防止できる。
椀5の落とし込み部15の左右側壁15c、15cは、断面において底15dに連続する円弧としないで、底15d側が大きく傾斜するように湾曲して形成しているので、椀5の底にコインCを集め易い。
椀5には、パームレスト部17を設けているので、椀5内のコインCを手で掻き集めるときにパームレスト部17に掌を置いて手を安定にしたり、コインを受け取る作業をしていないときにもパームレスト部17に掌をおいて休むことができるから、疲労を軽減できる。
パームレスト部17は巾を持って形成してあるので、例えば、パームレスト部17に掌を載せないで落とし込み部15内のコインCを手に取り込もうとした場合に、コインCが前側壁15aを上方に滑って落とし込み部15から外に飛び出ようとしたときに、パームレスト部17にコインCが部分的に載ることができ、これを掌や指で押えることができるので、コインCがいきなり椀5から飛び出るのを防止できる。
パームレスト部17は、上向きの曲面としてあるので、パームレスト部17に掌を置いたときに、小口となっている場合に比較して掌を圧迫することがなく、心地良く掌を置くことができる。
【0015】
ここで、本実施の形態にかかるキャッシュトレイと比較例のキャッシュトレイについて、コインCのつかみやすさと、使い心地のよさの主観評価試験をおこなったので、その結果について説明する。
上述した本実施の形態にかかるキャッシュトレイ1を実施例とし、
図5(a)に示すように比較例1は椀5が平面視四角形状を成し、
図5(b)に示す比較例2は椀5の前方が平面視半円を成しており、比較例1及び比較例2は共に椀5と台3との境界7eは直線状としたものである。
主観評価試験は、実施例と比較例1及び2の各キャッシュトレイの椀内に同数のコインを置き、椀内のコインを手に取り込む作業を行った。そのときの「コインをつかみにくい」を0とし、「コインをつかみやすい」を100mmとして、0〜100mmまでの間の長さの直線上で、つかみやすさがどの位置にあるかを作業者に示してもらい、0からその位置までの長さmmを点数とした(VAS(Visual Analogue Scale)法)。例えば、0〜100mmの間でコインのつかみやすさが72mmの位置であれば、72点である。
【0016】
主観評価試験の平均値を
図6の(a)(b)に棒グラフで示した。また、実施例と各比較例1、2との間の確率の標準偏差をグラフ中に示した。作業者の数nは8人であった。
図6中のp1、p2、p3は、確率の標準偏差であり、p1<0.001、p2<0.01、p3<0.005であった。
図6(a)(b)に示すグラフから明らかなように、「コインのつかみやすさ」及び「使い心地のよさ」は、いずれも比較例1及び比較例2よりも高く、実施例によれば比較例1及び2よりもコインがつかみやすいと共に使い心地が良いことが分かる。
【0017】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、台3と椀5との境界7eは、手の指先の邪魔にならず、指の自然な動きを妨げない形状であれば、後方に向けて突出する円弧に限らず、円弧に近似するものや、楕円や方物線の一部やこれらに近似するものであっても良い。