特許第6273208号(P6273208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6273208フィードバックシステムを備える吸入デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6273208
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】フィードバックシステムを備える吸入デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20180122BHJP
【FI】
   A61M15/00 Z
【請求項の数】20
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-549468(P2014-549468)
(86)(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公表番号】特表2015-506201(P2015-506201A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2012076963
(87)【国際公開番号】WO2013098334
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】11195773.4
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12190139.1
(32)【優先日】2012年10月26日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514152060
【氏名又は名称】ベクチュラ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・コルプ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・シュヴェンドナー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・フーバー
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・ミュリンガー
【審査官】 落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−522003(JP,A)
【文献】 米国特許第5906202(US,A)
【文献】 国際公開第2011/083377(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0060199(US,A1)
【文献】 米国特許第5794612(US,A)
【文献】 特表2009−502287(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/052479(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが所望の吸息流量および/または吸息圧で吸入することを可能にするための吸入デバイスであって、
(a)空気流を制限するための流動制限器と、
(b)ユーザフィードバックシステムとを備え、
前記ユーザフィードバックシステムは
(i)前記ユーザの吸入動作時に1つまたは複数の吸入パラメータの実際の値に応答してセンサ信号を発生することができる感知デバイスであって、前記吸入パラメータのうちの少なくとも1つのパラメータは吸息流量、吸息圧、および吸入量から選択される、感知デバイスと、
(ii)前記吸入パラメータに対する1つまたは複数の目標範囲を格納することができる電子メモリと、
(iii)1つまたは複数の信号伝達部材を備える信号伝達デバイスであって、各々の信号伝達部材が、異なる強度の光を放射することができる、信号伝達デバイスと、
(iv)前記感知デバイスによって生成された前記センサ信号を受信し、前記電子メモリを読み出し、前記信号伝達デバイスを制御することができるコントローラとを備え、
前記ユーザフィードバックシステムは、前記吸入パラメータの前記実際の値が目標範囲内にあるかどうかを前記少なくとも1つの出力信号を使って吸入動作時にユーザに指示するように構成され
記信号伝達デバイスが、前記吸入パラメータの前記実際の値が前記目標範囲から大きく逸脱するほど強度が小さい光を放射する、吸入デバイス。
【請求項2】
液体を霧状エアロゾルに変換するための噴霧手段を備える、請求項1に記載の吸入デバイス。
【請求項3】
前記流動制限器は、前記吸息圧に応答する、請求項1または2に記載の吸入デバイス。
【請求項4】
前記信号伝達デバイスは、前記吸入パラメータの前記実際の値が目標範囲内にあるときに第1の出力信号を放射し、前記信号伝達デバイスは、前記吸入パラメータの前記実際の値がその目標範囲から外れたときに第2の出力信号を放射し、前記第1の出力信号および前記第2の出力信号は、互いに異なる、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項5】
前記電子メモリは、第1の目標範囲および第2の目標範囲を格納し、前記第2の目標範囲は前記第1の目標範囲より大きく、また前記第1の目標範囲を含み、
前記信号伝達デバイスは、少なくとも2つの異なる出力信号を放射することができ、
前記ユーザフィードバックシステムは、前記吸入パラメータの前記実際の値が前記第1の目標範囲内にあるかどうかを第1の出力信号を使って、また前記吸入パラメータの前記実際の値が前記第2の目標範囲内にあるかどうかを第2の出力信号を使って、前記ユーザに指示するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項6】
前記電子メモリは、第1の吸入パラメータに対する第1の目標範囲および第2の吸入パラメータに対する第2の目標範囲を格納し、
前記信号伝達デバイスは、少なくとも2つの異なる出力信号を放射することができ、
前記ユーザフィードバックシステムは、前記吸入パラメータの前記実際の値が前記第1の目標範囲内にあるかどうかを第1の出力信号を使って、また前記吸入パラメータの前記実際の値が前記第2の目標範囲内にあるかどうかを第2の出力信号を使って、前記ユーザに指示するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項7】
前記吸入パラメータの前記実際の値は、前記感知デバイスが複数のセンサ信号を発生する一定期間にわたって判定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項8】
時間信号を生成することができるタイマーをさらに備え、前記コントローラは、前記時間信号を受信することができ、前記ユーザフィードバックシステムは、所定の期間が経過したことを、出力信号を使って、吸入動作時に前記ユーザに指示するように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項9】
前記吸入デバイスは、前記空気流を遮断するための遮断特徴部をさらに備え、前記遮断特徴部は、前記感知デバイスから受信されたセンサ信号、および/またはタイマーから受信された時間信号に応答して前記コントローラによって制御される、請求項1から8のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項10】
前記感知デバイスは、圧力センサ、流量センサ、速度センサ、温度センサ、マイクロフォン、またはこれらの組み合わせを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項11】
前記信号伝達デバイスは、さらに、
a)光を間欠的に放射し、かつ/または
b)異なる波長の光を放射することができる、請求項1から10のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項12】
少なくとも1つの信号伝達部材は、発光ダイオードまたは半導体レーザーである、請求項1から11のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項13】
前記信号伝達部材は、前記ユーザから直接的には見えないが、前記ユーザが散光を受けるように配置構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項14】
マウスピースをさらに備え、前記マウスピースは、前記信号伝達デバイスに関連付けられ、かつ/または前記信号伝達デバイスによって放射された光によって照射される、請求項1から13のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項15】
前記マウスピースの少なくとも一部は、半透明材料から作られる、請求項14に記載の吸入デバイス。
【請求項16】
前記半透明材料は、ポリプロピレンであることを特徴とする請求項15に記載の吸入デバイス。
【請求項17】
前記信号伝達デバイスは、前記吸入パラメータの前記実際の値が目標範囲内にあるときの光の強度が、前記実際の値がその目標範囲を外れているときに比べて高い光を放射する、請求項1から16のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項18】
前記信号伝達デバイスは、前記吸入パラメータの前記実際の値が目標範囲内にあるときに第1の波長の光を、前記吸入パラメータの前記実際の値が前記目標範囲から外れているときに、前記第1の波長と異なる第2の波長の光を放射する、請求項1から17のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項19】
前記吸入デバイスはハンドヘルド型である、請求項1から18のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【請求項20】
超音波ネブライザーまたは振動メッシュ式ネブライザーであるか、または備える、請求項1から19のいずれか一項に記載の吸入デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入の分野、特に、エアロゾルの投与に有用な吸入デバイスおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル化薬剤の投与は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、新生児呼吸促迫症候群(IRDS)、肺動脈高血圧症(PAH)、または嚢胞性線維症(CF)などの多くの肺疾患に対する治療の主要な柱のうちの1つである。吸入療法の特別な利点は、原理上、エアロゾル化薬剤が、薬剤物質を肺に分配する全身血液循環にではなくむしろ、罹患器官、すなわち、呼吸器系に直接投与されるが、配合物が望ましくなく、配合物が副作用を引き起こす可能性のある他の器官および組織にも投与されるという点である。
【0003】
しかし、吸入投与経路を用いるエアロゾルの特異的送達は容易ではない。エアロゾルが呼吸器系内の目標送達部位に到達する程度は、医薬組成物およびこの組成物を吸入可能エアロゾルに変換するために使用した吸入デバイスから結果として得られる、エアロゾル化粒子または液滴の空気動力学的直径などのエアロゾルパラメータを含む多数のファクタに依存するが、吸入量(volume of inhalation)および、特に、吸息流量(inspiratory flow rate)および/または吸息圧(inspiratory pressure)などの、患者関係ファクタ(patient-related factors)にも依存する。たとえば、薬剤の「吸引」はより高い画分を肺の奥深くに送達し、そのため薬効が最も高くなると仮定して、多くの患者は、高すぎる吸息流量および/または負圧(underpressures)で吸入する。Tiddensら(Journal of Aerosol Medicine、第19巻、第4号、2006年、456〜465頁)は、嚢胞性線維症を患っている患者であってもドライパウダー式吸入器について試験された最高の抵抗ですべての患者について52L/分(範囲26〜70)(子供では47L/分(26〜62))の平均ピーク吸息流量(PFI)を達成し、その最高の抵抗における30、45、および60L/分の最小流量は、すべての患者の99%、80%、および22%で得られた、と説明している。ドライパウダー式吸入器では、粉末製剤を分散させるためにそのような高い流量が必要になる場合があるが、事前分散されたエアロゾルを放出する他の吸入デバイスには望ましくなく、これらは、エアロゾル粒子または液滴が肺よりはむしろ患者の喉に影響を及ぼす可能性を高める。喉への沈着は、治療配合物のそれぞれの画分が失われることを意味するだけでなく、全身の、または局部的な副作用を生じる危険性も高める。それに加えて、たとえば、ドライパウダー式吸入器ではすでに一般的であるような、流動(flow)抵抗をもたらすデバイスを通して吸入するのが速すぎる場合に、負圧が大きくなる。患者の肺の負圧が大きくなると、小肺胞および気管支の進行性狭窄が誘発され、その結果そこに沈着する薬物が少なくなる可能性がある。
【0004】
そこで、エアロゾル製剤の適切な沈着を達成するために適切な呼吸法を実行する訓練を患者に実施する試みがなされている。しかし、このような訓練は、患者および/または医療従事者によって面倒なことであると認識されることが多い。さらに、呼吸法の指導に従う患者の能力は千差万別である。特に子供、高齢の患者、運動的困難または精神的制限のある患者は、指示されたとおり正しく呼吸法を実行することができないことが多い。そのため、単独訓練の成功は限られている。
【0005】
さらに、これらの問題は、所望の1回分の薬を投与するのに必要な呼吸回数が増えた場合になおいっそう重要なものとなる。たとえば、多くのドライパウダー式吸入器、加圧定量式吸入器、および/またはソフトミスト吸入器は、作動後1回または2回の吸入動作だけで必要な用量を送達するが、超音波ネブライザー、ジェットネブライザー、および/または振動メッシュ式ネブライザーなどの大半のネブライザーを使用した薬物投与は、典型的に、より多くの吸入動作回数、それゆえより長い投与時間を伴う。訓練した呼吸法から逸脱する危険性は、たとえば、注意散漫になる、または集中度が低くなるため、投与時間とともに増加する。さらに、1回または2回の呼吸のみではよく耐えられる負圧、たとえば、ドライパウダー式吸入器による-40mbarの吸入は、より多くの吸入動作が必要になると、かなり不便で、疲れさせる原因となり得る。
【0006】
患者の困難および制限を代償するため、個別の患者の能力を考慮し、最適化された流動および量のエアロゾルを供給する改善された吸入デバイスが開発されている。たとえば、吸息流量だけでなく吸入量をも能動的に調節する制御ユニットと組み合わせた従来型のジェットネブライザーに基づくAKITA(登録商標)JET吸入システムは、患者のみによって制御される吸入と比べて目標領域内へのエアロゾル化薬物の沈着を実質的に改善する。このようなシステムを使用することでも、より再現性の高い肺沈着がもたらされ、したがって、より予測性の高い治療効果が得られる。
【0007】
流動と量を制御するそのようなシステムの制限の1つは、それらが簡単に持ち運べないという点である。その携帯性ゆえに患者によっては好ましいタイプの吸入器である、小型ハンドヘルドデバイス内に制御機構および機能を実装することは困難である。ハンドヘルドデバイスであっても、適切なエアロゾル吸入動作を確実にする、または少なくとも円滑にするいくつかの試みについて、従来技術では説明されている。
【0008】
欧州特許第2 283 887B1号では、低い圧力差(または、吸入の場合には、負圧、または陰圧)での可変流量制限、特に治療エアロゾルの吸入時の吸入流量の制限のための小型化デバイスを開示している。欧州特許第2 283 887B1号は、これが使用される粉末吸入器、加圧定量式吸入器、またはネブライザーなどの特定のタイプの吸入デバイスに関しては述べていないが、デバイスは十分に小さく、たとえば、ハンドヘルド吸入デバイス内に収納できる。他にもパラメータはあるが特に、デバイスの幾何学的寸法および/またはその中に使用される膜の柔軟性に応じて、流量制限のための前記デバイス(または流量制限器または流動制限器)は、可変流動制限を行う、すなわち、流量は、負圧の増大とともに直線的には増加しない、言い換えると、低い負圧では、高い負圧に比べて流動制限が比較的低いということである。その構成に応じて、そのような可変流動制限器は、最大流量に対応することすらできる、すなわち、患者がより速く吸入しようと試み、それにより負圧を増加させた場合であっても、流量は最大流量を大きく超えて増加することはない。
【0009】
しかし、望ましい低い吸息流量を確実にするために流動制限だけに頼るのは難しく、また望ましくない。たとえば、患者が約12から18L/分を超える流量を吸入するのを防止するために、実質的な流動抵抗を持つ流動制限器が使用されなければならず、このことに対して、特に喘息またはCOPDなどの閉塞性気道疾患を患っている患者はかなり不快であると考え得る。したがって、患者がたとえば15L/分の範囲内の望ましい流量の代わりにより高い流量、たとえば、約25〜30L/分までの流量を使用するのを防ぐことができないことと引き換えにより重い障害を持つ患者向けにより低い流動抵抗を選択することが必要になる場合がある。さらに、肺機能の障害の程度が低い患者は、吸息流量を発生する負圧をさらに高め、好ましくは約-20mbar以上であるべきデバイス内の圧力を約-30mbar以下の値まで下げさせることによって高い流動抵抗に直観的に反応し得る。本質的に、患者の肺の中の圧力はなおいっそう低くなるであろう。上で述べているように、そのような顕著な負圧は望ましくないが、それは、小肺胞および気管支の進行性狭窄を誘発し、その結果そこに沈着する薬物が少なくなる可能性があるからである。欧州特許第2 283 887B1号による可変流動制限器を装備する吸入デバイスは、負圧の制御を行わないので、このアプローチは、適切な再現性のある吸入動作を保証しない。それに加えて、欧州特許第2 283 887B1号では、吸入量または吸息時間などの他の吸息パラメータの制御も開示していない。
【0010】
国際公開第2011/083377A1号では、加圧定量式吸入器(pMDI)、ドライパウダー式吸入器(DPI)、または水性液体分注システムに結合され得るフィードバックおよびコンプライアンスデバイスを説明している。超音波ネブライザー、ジェットネブライザー、または振動メッシュ式ネブライザーなどのネブライザーは開示されていない。デバイスは、装置の使用に関係するパラメータを感知するためのセンサ、および1つまたは複数のフィードバックデバイスに前記センサの出力に基づく情報を患者に提供させるようにプログラムされた処理ユニットを備える。フィードバックが供給される装置の使用に関係するパラメータとして、たとえば、
i)装置内への薬剤貯蔵部の正しい挿入、
ii)薬物送達装置の適切な振盪、
iii)振盪後適切な時間内の吸入の開始、
iv)適切な期間における吸入、および/または
v)吸入後の息止め
が挙げられる。
【0011】
文献に記載の流れ図により、プリセットされたフィードバックは、典型的には、単純なyes-or-noの二分決定に従い、加圧定量式吸入器の正しい使用に特に適合している。
【0012】
国際公開第2011/083377A1号では、フィードバックデバイスは、薬剤貯蔵部の作動によって導入される流動を修正またはそれに干渉しないことを強調している。吸息流量および/または負圧などの吸息パラメータを制御するための備えもない。
【0013】
米国特許出願公開第2011/0226242A1号では、薬剤供給源を保持するためのハウジング、患者が吸入する弁付き保持室/スペーサー、およびそれに結合された可聴フィードバックデバイスを備える呼吸薬物送達装置を説明している。可聴フィードバックデバイスは、手動作動(たとえば、ボタンを押す、キャップを外す、薬剤供給源をハウジング内に挿入すること)によって引き起こされるセンサ信号に応答して、または装置の動作に関係するイベント(たとえば、加圧定量式吸入器(pMDI)の作動、スペーサー内の弁の開放など)に応答して可聴指示を発生するように適合された音響発生器である。前記可聴指示は、pMDIを振盪して作動させること、適切な吸入、および息を止めることに関係する事前に記録されている指示を含むものとしてよく、いずれも、間違った使用を正すか、または防止するか、または正しい使用を強化する。たとえば、デバイスは、息を吸い特定の呼吸数を数えるか、または特定の期間に吸入する可聴指示を出すように構成され得る。あるいは、可聴フィードバックデバイスは、患者が実行すべき次の動作に関して指示されるか、またはイベントもしくは問題のあることを警告される必要のあるときに音を発することを開始することができる、保持室内に一体形成された笛またはリードなどの音を立てる装置であってよい。
【0014】
米国特許出願公開第2011/0226242A1号では、薬物沈着の程度および部位に対して実質的な影響を有する呼吸動作に関係する重要なパラメータ、特に、吸息流量および吸入量に対する望ましい範囲については何も述べていない。文献では、患者への可聴フィードバックを使用して吸入を遅くすることを促す可能性についても述べているが、そのような一般的な指示で、患者が特定の目標流量および/または負圧で吸入を実際に達成できることは大いにありそうもない。
【0015】
米国特許出願公開第2005/087189A1号では、複数回の吸入時に薬物を含む、または薬物を含まない空気を送達するためのデバイスを開示している。薬物送達デバイスは、患者の呼吸パターンを監視するためのセンサと、前記呼吸パターンを分析して薬物含有の開始および持続時間を制御し、累積投薬量を計算するための内部クロックを持つプロセッサと、フィードバックインジケータとを備える。フィードバックインジケータは、監視されている呼吸パターンが薬物を含む空気を吸入するのに効果的であるか、または適しているかどうかに関する情報を患者に提供する。呼吸パターンが弱すぎたり、または不安定すぎる場合、薬物包含パルスは送達されないか、または早期に停止する。この目的のために、デバイスは、吸入の開始および終了を検出するセンサを備える。このデバイスは、保持室内への薬物の導入を検出するためのセンサも備えることができる。
【0016】
しかし、米国特許出願公開第2005/087189A1号では、呼吸動作に関係するいくつかの重要なパラメータ、特に、望ましい吸息流量、吸入量、および/または負圧を制御するための意図または手段を開示していない。
【0017】
米国特許第5,906,202A号では、たとえば、読み出し/書き込みメモリ手段および流動測定トランスデューサと組み合わせたマイクロプロセッサによって、患者の全気道容量、吸息流量、および吸息量を測定し、記録することができる容易に持ち運べるハンドヘルド型自給式呼吸薬物送達デバイスを説明している。これらの肺活量測定パラメータは、患者の吸入期に吸息空気流中へのエアロゾルボーラスの放出を作動させる時点、および前記エアロゾルボーラスの量を計算するために実際の投薬イベント(薬物送達イベントとも称される)の前に監視イベントにおいて測定される。作動は自動的に行われ、細孔サイズが定められている多孔質膜を通してブリスターストリップから液体薬物製剤の1回または複数回の投薬のバネ駆動の排出がなされる。エアロゾルボーラスの放出および患者によるその吸入の後、流動は、ボール弁、ニードル弁、仕切り弁、またはピンチ弁を使って完全にまたは部分的に遮断することができる。あるいは、デバイスは、患者に吸入の停止を要求する信号(光または音)を患者に送ることができる。
【0018】
このデバイスは、呼吸を止めていなければならない残り秒数をカウントダウン方式で患者に対して表示する光ダイオードなど視覚的フィードバックコンポーネントをさらに備えることができる。これは、視覚的信号(たとえば、点滅光)または可聴音信号のプロンプトによって通知されるまで息を止めるよう患者に指示することもできる。デバイスは流量センサを備えることができ、視覚的信号は、好ましい流量で吸入をするかどうかを患者に指示することができる。
【0019】
しかし、このタイプのフィードバックだけに基づきたとえば12から18L/分の望ましい低い流量を達成することは患者にとって困難である。むしろ、大半の患者は、実質的に変動する吸息流量を生じる傾向を有し、そのため、薬物沈着は可変であり、また治療効果は予測できない。フィードバックシステムでは、患者がフィードバック信号に完全に集中することを必要とするが、これは、特に子供および高齢者の患者にとって難しいが、長時間の吸入を必要とする治療計画の下で大半の他の患者にとっても困難な場合がある。
【0020】
そのため、目下知られているデバイスの制限のうちの1つまたは複数を克服する吸入デバイスが今も必要とされている。特に、非常に異なる患者母集団からの、また肺機能がかなり異なるレベルにある、患者が特定の治療用途に最適化された呼吸動作を実行し、所望の吸息流量を達成して維持し、および/または治療エアロゾルを吸入するときにあまりにも大きな負圧の印加を回避することを容易に行えるようにする改善された吸入デバイスが必要である。
【0021】
これらの要求は、目的がそのような改善されたデバイスを実現することである本発明によって応えられる。本発明の他の要求および目的は、説明および特許請求項に基づき明らかになるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許第2 283 887号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/083377号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0226242号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/087189号明細書
【特許文献5】米国特許第5,906,202号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Tiddens他、Journal of Aerosol Medicine、第19巻、第4号、2006年、456〜465頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、他にもあるがとりわけ、吸息流量、吸息圧、吸息時間、または吸入量などのパラメータに関して最適化された様式で吸入動作を実行するようにユーザをガイドする構成をとるユーザが所望の吸息流量および/または吸息圧で吸入することを可能にするための吸入デバイスを実現する。吸入デバイスは、デバイスを通り患者に流れる空気流を制限するための流動制限器を備える。これは、吸入動作時にユーザが自分が動作を正しく、たとえば、所定の範囲内の吸息流量および/または所望の圧力で実行しているかどうかを認識することを可能にするフィードバックシステムをさらに備える。さらに、フィードバックシステムは、エアロゾルが吸入され、呼吸器系の目標領域に送達されることが確実になされるようにユーザによる吸入動作の即時是正または適応を円滑にする。
【0025】
フィードバックシステムは、圧力センサまたは流量センサなどの、吸入パラメータを直接的にまたは間接的に感知することができる1つまたは複数のセンサを備える感知デバイスを具備する。感知デバイスは、吸入時にそれぞれの吸入パラメータの実際の値を感知し、この値に対応する信号を発生する。
【0026】
フィードバックシステムは、コントローラおよび電子メモリをさらに備える。コントローラは、感知デバイスによって生成された信号を受信して、それをメモリに格納されている1つまたは複数の目標値または目標範囲と比較する。
【0027】
さらに、システムは、ユーザによって知覚され得る1つまたは複数の出力信号を放射することができる信号伝達デバイスを備える。出力信号は、光信号、音響信号、触覚信号、またはこれらの組み合わせとすることができる。たとえば、信号伝達デバイスは、1つまたは複数の発光ダイオードを備えることができる。コントローラは、感知デバイスによって受信された信号に応答して信号伝達デバイスを操作し、または制御する。フィードバックシステムは、吸入パラメータの実際の値が所定の目標値または範囲と一致するかどうかを出力信号を使って吸入動作時にユーザに指示するように構成される。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の一態様において、メモリは、第1の目標範囲および第2の目標範囲を格納し、第2の目標範囲は第1の目標範囲より大きく、また第1の目標範囲を含み、信号伝達デバイスは、少なくとも2つの異なる出力信号を放射することができ、フィードバックシステムは、吸入パラメータの実際の値が第1の目標範囲内にあるかどうかを第1の出力信号を使って、また吸入パラメータの実際の値が第2の目標範囲内にあるかどうかを第2の出力信号を使って、ユーザに指示するように構成される。これは、吸入パラメータが吸息流量または吸息圧である場合に特に有利である。
【0029】
さらなる一態様では、信号伝達デバイスは、吸入パラメータの実際の値が目標範囲内にあるときの光の強度が、実際の値がその目標範囲を外れているときに比べて高い光を放射し、および/または信号伝達デバイスは、吸入パラメータの実際の値が目標範囲から逸脱するほど強度を下げる光を放射する。これも、吸入パラメータが吸息流量または吸息圧である場合に特に有利である。
【0030】
吸入デバイスは、好ましくは、液体を霧状エアロゾルに変換するための噴霧手段を備える。好ましくは、噴霧手段は、超音波または振動メッシュ式ネブライザーで一般に使用されている噴霧器などの、一定期間にわたって液体を連続的に霧化するための手段である。
【0031】
流動制限器は、好ましくは、圧力(すなわち、負圧の程度)に応答してデバイス内の空気流を制限することができる可変流動制限器である。
【0032】
本発明のさらなる態様、実施形態、および特徴は、以下の本発明の詳細な説明において開示される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明による噴霧手段、流動制限器、およびフィードバックシステムを装備する吸入デバイスの27人のボランティアユーザによって達成された吸息流量のボックスプロットを示す図である。詳細は実施例1を参照。
図2】この場合光強度が吸息流動(負圧を通じて決定される)に対するセンサ信号に応じて変化する光信号である出力信号に関して実施例1で使用されている吸入デバイスに組み込まれているフィードバックシステムの構成を示すグラフである。グラフ内の圧力値は、絶対値、すなわち、負の符号を持たない値であることに留意されたい。詳細は実施例1を参照。
図3】約-2mbarから約-20mbarまでの目標吸息圧範囲(2本の点線の間の領域によって示される)と一緒の3つの異なる流動制限器の負圧-流量グラフを示す図である。グラフ内の圧力値は、絶対値、すなわち、負の符号を持たない値であることに留意されたい。詳細は実施例2を参照。
図4】噴霧手段、フィードバックシステム、および3つの異なる流動制限器を装備する本発明による吸入デバイスの27人のボランティアユーザによって5回の呼吸の間に達成された吸息流量および負圧のボックスプロットを示す図である。グラフ内の圧力値は、絶対値、すなわち、負の符号を持たない値であることに留意されたい。詳細は実施例2を参照。
図5】本発明による吸入デバイスの特定の一実施形態の断面図である。
図6】矢印が発光ダイオードなどの、信号伝達部材の例示的な位置を示す、本発明による吸入デバイスの特定の一実施形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、ユーザが所望の吸息流量および/または吸息圧で吸入することを可能にするための吸入デバイスを実現するものであり、これは空気流を制限するための流動制限器およびユーザフィードバックシステムを備える。フィードバックシステムは、感知デバイスと、電子メモリと、信号伝達デバイスと、コントローラとを備える。感知デバイスは、ユーザの吸入動作時に1つまたは複数の吸入パラメータの実際の値に応答してセンサ信号を発生することができる。吸入パラメータのうちの少なくとも1つのパラメータは、吸息流量、吸息圧、および吸入量から選択される。電子メモリは、吸入パラメータに対する1つまたは複数の目標範囲を格納することができる。信号伝達デバイスは、1つまたは複数の信号伝達部材を備え、各々、光信号、音響信号、触覚信号、またはこれらの組み合わせから選択された少なくとも1つの出力信号を放射することができる。感知デバイス、メモリ、および信号伝達デバイスは、センサによって生成されたセンサ信号を受信し、電子メモリを読み出し、信号伝達デバイスを制御することができるコントローラに接続される。フィードバックシステム全体は、吸入パラメータの実際の値が目標範囲内にあるかどうかを少なくとも1つの出力信号を使って吸入動作時にユーザに指示するように構成される。
【0035】
好ましくは、吸入デバイスは、液体を霧状エアロゾルに変換するための噴霧手段を備える。
【0036】
発明者らは、驚いたことに、本発明による流動制限器およびユーザフィードバックシステムを備える吸入デバイスを使用することでユーザが最適化された吸入動作を素早く容易に行えることを発見した。1つまたは複数の吸入パラメータに関する指定された目標範囲に従って吸入動作を実行することは直観的ではないため、ユーザには、フィードバックシステムから受け取るガイダンスが実質的に役立つ。吸入期の次善最適動作の素早い是正は、吸入効率を高め、またユーザの呼吸器系内のエアロゾルの沈着パターンを改善することを意味し、したがって、無駄になるエアロゾルの量を減らし、エアロゾルが吸収されるか、または治療効果を有する目標部位に沈着するエアロゾルの量を増やし、望ましくない効果をもたらす可能性のある呼吸器系の他の部位に沈着するエアロゾルの量を減らすことになる。さらに、吸入動作の素早い是正は、エアロゾル投与の持続時間および利便性の最適化をもたらし得るという点でユーザの利便性向上に寄与し得る。
【0037】
本明細書で使用されているように、吸入デバイスは、ユーザがエアロゾルを吸入することを可能にするように、エアロゾルを放出することができるデバイスである。エアロゾルは、連続気相中への固相、半固相、または液相の分散であり、したがって、たとえば粉末エアロゾル-吸入用の粉末薬剤として知られている-および霧状エアロゾルを含む。粉末エアロゾルを送達するための吸入デバイスは、一般に、粉末吸入器と記述されている。エアロゾル化液体は、ネブライザー、加圧定量式吸入器、およびソフトミスト吸入器を含む様々な吸入デバイスを使って投与される。本発明は、移動式ネブライザーなどの移動式またはハンドヘルド型吸入デバイスと組み合わせると特に有用である。好ましい移動式ネブライザーは、外気または電源に依存しないタイプのものを含む。好ましいネブライザーとして、超音波ネブライザー、振動メッシュ式(または振動部材)ネブライザー、およびソフトミスト吸入器が挙げられる。本発明は、超音波ネブライザーとともに、または電子振動メッシュ式ネブライザーとともに実行されたときに特に有用である。これらのネブライザーは、通常、薬剤を1回分投与する際に、たとえば、ドライパウダー式吸入器、加圧定量式吸入器、およびソフトミスト吸入器に比べて、より多くの呼吸を必要とする。大量の吸入可能な薬物組成物は、ネブライザーでしか投与できない。典型的には、超音波ネブライザーまたは振動メッシュ式ネブライザーは、最大約45分までの数回の呼吸の過程で連続的に動作し、常時、またはユーザの呼吸パターンに合わせた、たとえば、吸入の開始をトリガーとする、パルスでエアロゾルを放出する。必要とされる特定の処置時間および/または呼吸数は、患者の全身状態、投与される投薬量、および吸入デバイスの出力効率のようなパラメータに依存する。多くの患者にとって、長い吸入時間にわたって呼吸動作を正しく実施することに集中することは容易でない。
【0038】
本明細書で使用されているように、ネブライザーは、噴霧手段(または霧化手段、もしくはエアロゾル発生器)、たとえば、圧電駆動振動メッシュアセンブリを使用して液体を吸入可能なエアロゾルに変換することができるデバイスである。いくつかの場合において、前記液滴は、液体キャリアの蒸発後に粉末微粒子に凝固し得る。本明細書で使用されているように、噴霧手段を備える吸入デバイスは、常時、またはユーザの呼吸パターンに合わせた期に分けて霧状エアロゾルを放出する連続動作デバイスと理解されるべきである。たとえば、噴霧手段によるエアロゾルの発生は、吸入でトリガーされる可能性がある。エアロゾルパルスの持続時間も、1秒などのかなり短い噴霧期から最大8秒などの長い噴霧期までの範囲内の、患者の呼吸パターンおよび/または肺機能パラメータに適合させることができる。比較的長い噴霧期は、特定の投薬量を投与するために必要な呼吸数を低減することが可能になるので、好ましい場合が多い。ネブライザーは、作動後、数ミリ秒と非常に短い期間内でのみ、定量エアロゾルを放出する、圧縮バネによって駆動されるデバイスなどの吸入デバイスと異なる。
【0039】
本明細書で使用されているように、患者およびユーザという用語は、同義として、交換可能に使用され、吸入デバイスのユーザを指す。患者という用語は、それぞれの人が急性の症状または疾患を患っていることを必ずしも暗示しない。本発明による吸入デバイスは、治療環境において使用され得るが、予防用または診断用製剤の吸入投与にも使用され得る。
【0040】
本発明によれば、吸入デバイスは、流動制限器およびフィードバックシステムを備える。好ましくは、これは噴霧手段も備え、したがって、吸入デバイスはネブライザーの機能を果たす、つまりネブライザーを備える。適宜、ネブライザーは、超音波ネブライザーまたは振動メッシュ式ネブライザーである。振動メッシュ式ネブライザーは、振動膜ネブライザーとも称される。
【0041】
空気流を制限する流動制限器は、好ましくは、吸息圧に応答する。本明細書で使用されているように、吸息圧は、呼吸動作の吸入期においてマウスピースのところで吸入デバイスにおいて測定可能なような空気圧である。圧力は、陽圧または陰圧であるものとしてよい。大半の吸入デバイスでは、患者がデバイスによって放出されるエアロゾルを吸入するために必要な吸息流動を発生することが必要である。この流動を発生するために、患者は、マウスピースを、すなわち、陰圧(または負圧)を、たとえば、ダイアフラムの移動を通して生じさせることによって「吸う」。
【0042】
本明細書で使用されているように、「吸息圧に応答する」は、流動制限器が、一定しないが、吸息圧に応答して可変である、流動抵抗をもたらすことを意味する。その結果、吸息流量は、吸息圧と線形的に相関しない。好ましくは、流動制限器は、吸息圧が陰圧になればなるほど大きな流動抵抗をもたらすように構成される。適宜、流動制限器は、流動抵抗を高めるように構成され、したがって、実質的に、強い陰圧(すなわち、患者によって生成される強い負圧)であっても事前に定義された最大流量を超えることはあり得ない。
【0043】
本発明による吸入デバイスに特に有用である流動制限器の一例が、参照により本明細書に組み込まれている欧州特許第2 283 887A号において説明されている。流動制限器は小型化され、小型ハンドヘルド型吸入デバイスにも収容できる。この流動制限器の流動抵抗特性は、たとえば、流動制限器内の空気流路の長さおよび空気入口と出口の開口部の直径などの、幾何学的寸法、および流動制限器内の可撓性壁の材料特性、および吸入時に、ユーザによって印加される負圧に依存する。
【0044】
適宜、流動制限器の流動抵抗は、最大流量が所望の吸息流量、すなわち、目標範囲に類似するように選択される。目標範囲は、目標値など、狭い範囲であってよいか、または特定の値の±20%など、いくぶん広い範囲であってもよい。
【0045】
あるいは、可変流動制限器の流動抵抗は、最大流量が所望の吸入流量範囲および/または値より高くなるように選択される。
【0046】
発明者らによって、たとえば、15±3L/分の最大流量を有する欧州特許第2 283 887A号による流動制限器は、多くのユーザにとってそのまま耐えられ、快適である流動抵抗を有していることがわかった。しかし、閉塞性気道疾患を患っている患者は、この流動抵抗により困難が生じていることを報告し、一部の患者は、ただし通常望ましい流量より高い最大流量、たとえば約25〜30L/分に対応するより低い抵抗を与える流動制限器を使用した場合にはより快適であると感じていた。
【0047】
前の方で説明されているように、上述のような低い吸息流量、たとえば、限定はしないが、エアロゾル粒子のごくわずかの画分が喉および/または上気道に沈着している場合に15±3L/分の目標範囲はエアロゾルを目標の肺の奥深くへの送達に有利である。しかし、肺胞または小気管支などの肺の奥深くの小さな構造に実際に到達するためには、吸入誘発負圧によるこれらの構造の収縮を回避することも重要になると思われる。たとえば、発明者らによって、流動制限器を備える収入デバイスを通して非常に強く吸入するユーザは、-30mbar以上の圧力(すなわち、より大きな陰圧)に到達することが多いことが発見された。これらの患者については、流動制限器によるたとえば15±3L/分の望ましい流量で吸入するとしても、そのような呼吸動作は最適ではないが、それは、顕著な負圧が非常に不便で疲れさせるだけでなく、潜在的に、呼吸器系の炎症および小さな肺構造物の収縮も引き起こすからである。これらの陰圧効果は、本発明によるフィードバックシステムを通じて容易に回避される。フィードバックシステムは、所望の吸息流量を維持するのに十分である(すなわち、十分に陰圧である)が必要以上に低くなりすぎない(すなわち、過度に陰圧ではない)最適な吸息圧を使用するようにユーザをガイドする構成をとり得る。
【0048】
たとえば特定の流動抵抗レベルの喘息またはCOPDによる重大な影響を受ける患者の問題は、必要ならば、より低い抵抗特性を持つ流動制限器を使用することによって克服することができる。このようなより低い抵抗および対応するより高い最大流量は、原理上、ユーザが最適な薬物沈着に望ましいものとされている以上に高い吸息流量でエアロゾルを吸入する可能性があるという効果を有する。特に、患者の肺機能がエアロゾル投与の過程で改善すると、患者は、徐々に速く吸入してゆくこともあり得る。しかし、これは、本発明によるフィードバックシステムによって防止され、ユーザは流量の目標範囲内に留まるようにガイドされる。
【0049】
ユーザフィードバックシステムは、吸入動作の過程で、この吸入動作の実行の仕方に関する指示をユーザに与えることができるコンポーネントおよび/またはデバイスの任意の組み合わせである。このフィードバックに基づき、ユーザは、自分の吸入動作を適切に修正することができる。本発明によれば、システムは、少なくとも感知デバイスと、電子メモリと、コントローラと、信号伝達デバイスとを備える。
【0050】
フィードバックは、たとえば、吸息流量および/または吸息圧が最適な範囲内にあるか、またはその範囲から外れているかをユーザに対して指示するものとしてよい。最適な範囲を外れている場合、これは、その吸息動作が最適な範囲からどれだけ外れて実行されているかを示す近似的指示をユーザに与えることもできる。さらに、フィードバックは、特定の吸入量に到達したこと、または特定の吸入時間が経過したことを指示することができる。
【0051】
吸入パラメータの実際の値に応答してセンサ信号を発生することができる感知デバイスは、好ましくは、1つまたは複数の圧力センサ、流量センサ、速度センサ、温度センサ、マイクロフォン、またはこれらの組み合わせを備えるべきである。特に、圧力センサおよび流量(または速度)センサは、吸入動作時に吸息流量を直接的にまたは間接的に決定するために使用することができる。流量は、任意の時点における吸入された量(または吸入量)を決定するための基礎としても使用され得る。それに加えて、フィードバックメカニズムは、コントローラによって受信され得る時間信号を発生することができるクロックまたはタイマーを備えることができ、所定の期間、たとえば、所望の吸入時間が経過したことを、出力信号を使って、吸入動作時にユーザに指示するように構成され得る。
【0052】
センサ(または複数のセンサ)が、吸入デバイス内の様々な位置に収容され得る。明らかに、流量または速度センサは、デバイスの流路または気道内に配置されるべきである。圧力センサも、流路内に、または流路と対応する少なくとも空隙内に位置決めされるべきである。好ましくは、吸入デバイスは、吸息圧を感知することができる少なくとも1つの圧力センサを備える。流動制限器の流動抵抗プロファイルおよび吸息圧の実際の値に応じて、吸息流量も、吸息圧から計算することができる。
【0053】
電子メモリは、吸入パラメータに対する1つまたは複数の目標範囲を格納することができる。適宜、複数の吸入パラメータに対する目標範囲を同時に格納することができる。本明細書で使用されているように、目標範囲は、特定のユーザまたは患者に関する、および特定の治療処置を考慮した、たとえば、治療の観点から、望ましいと見なされているパラメータに対する所定の値の範囲である。本発明の文脈において、目標範囲は、適切であれば、特定の目標値からのみなるという点でかなり小さく、または上限もしくは下限のみを定め、他の制限は不定である、という点でかなり広い範囲となり得る。多くの他の場合において、目標範囲は、上限と下限とを含む。
【0054】
たとえば、電子メモリは、12から18L/分(すなわち、15±3L/分)などの吸息流量、約-2mbarから約-20mbarまでなどの吸息圧、および/または少なくとも750mLなどの吸入量に対する特定の目標範囲を格納することができる。さらなる実施形態において、これは、吸息流量および/または吸息圧に対する追加の、より広い目標範囲を格納することができ、より広い範囲はより狭い範囲を包含する。たとえば、吸息流量の場合に、1から30L/分までなどのより広い範囲は、動作範囲を表すものとしてよく、フィードバックシステムは、動作範囲内でユーザが吸入動作を実行していることを示す指示をユーザに与えるように構成され得るが、12から18L/分までなどのより狭い範囲は、最適な範囲を表すことができ、フィードバックシステムは、最適な範囲内でユーザが吸入動作を実行していることを示す指示をユーザに与えるように構成され得る。
【0055】
吸入パラメータが、吸息圧である場合、より広い範囲は、たとえば、-2mbarから-20mbarであり、より狭い範囲は、たとえば、-3mbarから-8mbarであるものとしてよい。適宜、第1のフィードバック信号は、吸息圧がより広い範囲内にあるが、より狭い範囲の外にあることをユーザに指示することができ、第2のフィードバック信号は、吸息圧がより狭い範囲内にあることを指示することができる。
【0056】
それに加えて、フィードバックシステムは、目標吸入量に達したときにその達したことを指示することができる。
【0057】
流量を間接的に判定するために圧力センサが使用される場合、目標範囲は、それぞれの流量、たとえばP12L(12L/分の流量に対して)およびP18L(18L/分の流量に対して)に対応する圧力値(P)の形態で格納することもできる。これらの値の正確な相関は、使用される流動制限器の各々のタイプに固有である。あるいは、圧力値P15L(15L/分の流量に対応する圧力)は、使用される特定の流動制限器について決定され、圧力目標範囲は、たとえばP15L±3.5mbarとして定義され得る。
【0058】
メモリは、揮発性もしくは不揮発性の、任意のタイプの電子データストレージデバイスまたは半導体メモリであってよい。揮発性メモリの例として、スタティックランダムアクセスメモリおよびダイナミックランダムアクセスメモリが挙げられ、それらを使用するには、メモリに格納されている情報が必要とされる限り、電力が維持される必要がある。特定の実施形態において、メモリは、フラッシュメモリ、強誘電体または磁気抵抗ランダムアクセスメモリなどの、不揮発性メモリである。メモリは、チップまたはマイクロチップ内に集積化される、チップカードなどのポータブルキャリアに組み込まれるなど、適宜取り外し可能である。
【0059】
コントローラは、センサによって生成されるセンサ信号を受信し、電子メモリを読み出し、信号伝達デバイスを制御することができる集積回路内に電子プロセッサコアを備える任意のタイプのコントローラ、マイクロコントローラ、またはマイクロコンピュータである。コントローラが吸入動作時にこれらのオペレーションを実行するように構成されること、また出力信号が吸入動作の開始後まもなくユーザに送られることが重要である。センサ信号の短い変動の効果を低減するために、そのような変動が電子ノイズを通じてのもの、または吸入パラメータに対する実際に変動する値に応答するものであろうと、感知デバイスが複数のセンサ信号を発生する特定の期間にわたって、目標範囲と比較されるべき、実際の値を決定することが有用であると思われる。たとえば、実際の値は、50,100,200または500ミリ秒の期間にわたって、すなわち、そのような期間内に受信したセンサ信号の平均に基づき、決定され得る。
【0060】
信号伝達デバイスは、各々ユーザによって知覚可能であるか、または認識可能である出力信号を放出することができる1つまたは複数の信号伝達部材を備えるものとしてよい。出力信号は、光信号、音響信号、触覚信号、またはこれらの組み合わせとすることができる。出力信号は、フィードバック信号とも称され得る。特定の実施形態において、出力信号は、光信号であり、信号伝達デバイスは、光を間欠的に放出する、異なる波長の光を放出する、および/または異なる強度の光を放出することができる。光信号を放出するために使用できる信号伝達部材は、たとえば、発光ダイオードまたは半導体レーザーである。
【0061】
すでに述べているように、フィードバックシステムは、吸入パラメータの実際の値が目標範囲内にあるかどうかを出力信号を使って吸入動作時にユーザに指示するように構成される。実際、これは、様々な異なる方法で実行され得る。たとえば、システムは、信号伝達デバイスが吸入パラメータの実際の値が目標範囲から外れているときに出力信号を放射し、実際の値が目標範囲内にあるときに信号を放射しないように構成され得る。特定の一実施形態において、たとえば、吸入パラメータは、吸入量であり、目標範囲は、下限または最小値を使って定義され、出力信号は光信号(たとえば、一定の、または間欠的な光)である。この場合、光は、目標量がユーザによって吸入されると直ちにオフにされ、吸入動作の吸息期を終了するようユーザをガイドする。
【0062】
あるいは、システムは、吸入パラメータの実際の値が目標範囲内にあるときに出力信号を放射し、実際の値が目標範囲から外れているときに信号を放射しないように構成され得る。このタイプの構成により、フィードバックシステムは、ユーザに対して、たとえば点滅する、または一定の光を使って、ユーザが最適な吸息流量および/または吸息圧で吸入している、すなわち、メモリに格納されているそれぞれの目標範囲内にある吸息流量および/または圧力で吸入していることを指示することができるか、または吸息流量および/または圧力の広い目標範囲が、動作流量および/または圧力として定義される場合に、信号は、ユーザに対して、ユーザが動作-必ずしも最適でないとしても-流量および/または圧力範囲内で動作を現在実行中であることを指示する。実際の流量および/または圧力値が、目標範囲から外れると直ちに、光信号はオフにされ、したがって、ユーザはその動作を是正するようガイドされる。
【0063】
別の実施形態では、この構成は、信号伝達デバイスが、吸入パラメータの実際の値が目標範囲内にあるときに第1の出力信号を、吸入パラメータの実際の値がその目標範囲から外れているときに、第1の出力信号と異なる、第2の出力信号を放射するものである。この構成に対する例として、吸入パラメータが、吸息流量である場合、信号伝達デバイスは、第1の光信号、たとえば、赤色光または間欠的緑色光を使って、実際の流量値が目標範囲を外れていることを示し、異なる信号、たとえば、一定の緑色光により、実際の流量が目標範囲内に今も収まっていることを示すことが可能であり、したがってユーザをすぐにわかりやすくガイドすることができる。
【0064】
さらなる特定の実施形態において、メモリは、同じパラメータに対する2つの異なる目標範囲、たとえば、最適な吸息流量を定義するより狭い目標範囲(より広い範囲内の)とともに動作範囲を定義する吸息流量に対するかなり広い目標範囲を同時に格納する。この場合、吸入デバイスに、少なくとも2つの異なる出力信号を放射することができる信号伝達デバイスを備えることと、第1の出力信号、たとえば、間欠的な緑色光が放射されるようにフィードバックシステムを構成することとは有益であるが、実際の流量は、第1の(すなわち、動作)目標範囲内にあり、実際の流量が第2の(すなわち、最適な)目標範囲内にあるときに異なる出力信号、たとえば、一定の緑色光が放射される。第2の出力信号は、第1の信号を置き換えるか、もしくは優先するか、または第1の信号に加えて放射され得る。
【0065】
同様に、2つの異なる出力信号は、2つの異なる吸入パラメータに関してユーザをガイドするために使用され得る。たとえば、第1の信号は、実際の吸息流量が目標範囲内にあることを指示し得るが、第2の、および異なる信号は、目標吸入量に到達したときにそのことを指示する。より具体的には、一定の緑色光は、最適な吸息流量を指示するために使用され、点滅する赤色光は、目標量にまだ達していないことを指示するために使用され得る。
【0066】
類似の様式で、一定の緑色光は、最適な吸息流量を指示するために使用され得るが、陰圧が定義済み限界を下回っている場合に、たとえば、オレンジ色または赤色の光(または緑色と明確に区別できる他の色)がオンにされ得る。ユーザは、最初に使用する前に、たとえば、一定の緑色光によって指示されるような、吸息流量の目標範囲を達成するためにさほど労力を必要とせずに吸入する手順について、吸入デバイスのマニュアルおよび/または医師による説明を受けることができる。
【0067】
それに加えて、フィードバックシステムは、エラーを指示する出力信号を放射するように構成され得る。たとえば、点滅する赤色光は、この目的のために使用され、たとえば、電池残量が少なくなっていること、負の吸息流動(すなわち、期限切れ)、不正なまたは不完全なデバイスアセンブリ、目標範囲が存在しないこと、薬物製剤貯蔵容器が空であることなどを指示することができる。
【0068】
上で説明されている実施形態の任意の組み合わせも企図される。たとえば、1つの波長(たとえば、赤色)の点滅する光が、実際の吸息流量および/または圧力が(広く定められている)動作範囲内にあることを示し、それと同時に、目標吸入量にまだ達していないことを示すために使用されるものとしてよく、到達した後、点滅する光はオフにされる。それと平行して、別の波長(たとえば、緑色)の一定の光が、実際の吸息流量および/または圧力が(より狭く定義されている)最適な範囲内にあるときにそのことを示すために放射される。
【0069】
上で述べているように、出力信号、または出力信号のうちの1つまたは複数は、音響信号または触覚信号であってもよい。たとえば、非光信号を使用して第1の吸入パラメータの実際の値が目標範囲内にあるかどうかを示すこと、および光信号を使用して第2の吸入パラメータの実際の値が目標範囲内にあるかどうか、および/または第1の吸入パラメータの実際の値が第2の目標範囲内にあるかどうかを示すことは有用な場合がある。この実施形態によれば、音または振動などの非光信号は、実際の吸入量が目標範囲もしくは目標量に達したとき、または吸息圧が事前に定義されている限界を下回る場合にそのことを指示するために使用することができ、光信号は、実際の吸息流量および/または圧力が目標範囲内にある場合にそのことを指示するために使用することができる。このグループの実施形態の特定の利点は、ユーザが同じタイプの異なる信号、たとえば、異なる光信号を区別せずに済むという点にあり、したがって配慮と協調があまり必要でなく、混乱の危険性が最小限に抑えられる。そのため、精神障害のある患者であっても-障害の程度にもよるが-さらには協調問題のある幼児もしくは高齢者ユーザも、全体的に正しい、または適切な吸入動作を実行するようフィードバックシステムによって効果的にガイドされる。
【0070】
特に有利なさらなる特定の実施形態において、実際の吸息流量および/または吸息圧が最適な流量を定義する目標範囲内にあるかをユーザに対して指示するために使用される出力信号は、強度が変化する(または異なる)光である。特に、フィードバックシステムは、信号伝達デバイスが流量および/または圧力が最適な範囲内にある間により高い強度の光を放射し、流量および/または圧力が最適な範囲、または目標範囲から外れたときにより低い強度の(ただし好ましくは同じ波長の)光を放射するように構成され得る。さらに、光信号の強度は、実際の流量および/または圧力と目標範囲との間の差に応じて目標範囲を外れて変化してもよい。言い換えると、信号伝達デバイスは、吸入パラメータの実際の値が目標範囲から大きく逸脱するほど強度が小さい光を放射する。強度の変化は、連続的であっても、増分的であってもよい。発明者らによって、このタイプの構成は、異なるユーザによって最も容易に解釈され、最適な流量および/または圧力で吸入し呼吸しながらユーザは素早く、容易に、正しい仕方で反応し、自分の吸入動作を即座に是正することができることが明らかにされた。吸入デバイスをまだ使用したことのない訓練していないユーザであっても、この特定の構成のフィードバックシステムによってガイドされれば最適な吸入動作をすぐに実行することができる。
【0071】
同様に、可変非光信号を可変強度の光の代わりに使用することで、目標範囲または値からの吸入パラメータの逸脱の程度に関するフィードバックをユーザに提供することができる。たとえば、出力信号として使用される音声信号は、吸入パラメータ-特に、吸息流量および/または圧力-が目標範囲からどれくらい違っているかに応じて、異なるレベルのピッチ(すなわち、可聴周波数)または強度(すなわち、音量)を有し得る。より具体的には、ピッチまたは音量は、ユーザが目標流量および/または圧力を達成するまで段階的にまたは連続的に高めるように構成されるものとしてよく、ユーザが目標範囲内に留まらず、目標範囲を再び超えるか、または目標範囲に届かない場合、ピッチまたは音量は、目標範囲からの逸脱の程度に比例して段階的にまたは連続的に減少する。
【0072】
もちろん、最適な吸息流量および/または圧力をユーザが適用するようにガイドするために異なる強度の光、または可変強度もしくは波長の非光出力信号を使用するとともに、他の光および/または非光信号も併用することで、動作流量、圧力、吸入時間、または吸入する目標量、またはこれらすべてに関してユーザをガイドすることができる。たとえば、実際の流量が、広い動作範囲を外れている場合、通常流量が最適な範囲から外れ、またどれだけ外れているかを強度で示す光信号は、完全にオフにすることができる。あるいは、動作範囲に関するガイダンスを与えるために、異なる波長の光、間欠的な光、もしくは音、または他の信号が使用され得る。それに加えて、そのような別の信号は、目標吸入量に達したときにそのことを指示するために使用され得る。
【0073】
特定の一実施形態において、フィードバックシステムは、ユーザから直接的には見えないように配置構成された光信号を放射することができる1つまたは複数の信号伝達部材を備え、その代わりに、これらは、ユーザが散光を受けるように位置決めされる。このようにして、光信号は、ユーザの目を刺激することがない。一般に、光信号を、たとえば、光信号を反射する被照面を使って、または放射光の少なくとも一部を吸収し、および/または散乱する光学的に不透明もしくは半透明の材料を通じて、間接的に受ける方が、ユーザにとっては都合がよく、または好ましい。
【0074】
光を反射する、または光を透過して散乱する表面は、少なくとも約0.5cm2に広がり、特に、少なくとも1cm2に広がることが推奨される。さらなる実施形態において、その表面は、それぞれ、少なくとも2cm2、または少なくとも3cm2、または少なくとも5cm2に広がる。さらに、ユーザの便宜のために、デバイス吸入を適切に保持するときにユーザの視野の周辺領域内に1つまたは複数の被照面を位置決めすることも有益な場合がある。
【0075】
これを達成する有益な方法は、吸入デバイスのマウスピース、またはマウスピースの一部を照らすように、たとえば発光ダイオードを信号伝達手段として備える光信号伝達デバイスを位置決めすることである。たとえば、信号伝達デバイスは、吸入デバイスの内側の、マウスピース内に、またはマウスピースの近くに組み込まれ、マウスピースそれ自体は、ポリプロピレンなどの不透明または半透明の材料から作ることができる。すでに述べているように、信号伝達デバイスは、複数の信号伝達手段、たとえば、2つまたはそれ以上の発光ダイオードを備えることができ、これらは、マウスピースの内側の流路の中心軸の左右両側に配置構成され得る。たとえば、2対の発光ダイオードを使用することができ、各々の対は同じ波長を発光するが、第2の対は第1の対と異なる波長を発光し、デバイス内にこれらを配置構成する有用な方法は、各々の対の一方の部材をマウスピース内の流路の中心軸の左側に、各々の対の他方の部材をマウスピース内の流路の中心軸の右側に配置し、それぞれの光信号の各々がユーザの両目を通してユーザによって都合良く認識されるようにすることである。
【0076】
さらなる実施形態では、吸入デバイスは、デバイス内の空気流を遮断することができる遮断特徴部を備える。好ましくは、遮断特徴部は、感知デバイスから受信されたセンサ信号、および/またはタイマーから受信された時間信号に応答してコントローラによって制御される。たとえば、空気流は、吸入時間または吸入量に対する目標値もしくは目標範囲に到達したときに遮断されるか、または限りなく小さい流量に制限され得る。
【0077】
さらに、本発明は、エアロゾルを吸入するための方法をも対象とする。この方法は、上で説明されているような吸入デバイスを備えることを特徴とする。また、本発明の範囲内に、処置などを必要とする患者を治療する方法も含まれ、この方法は、本明細書で説明されているような吸入デバイスを使用してエアロゾルを投与するステップを含む。
【0078】
本発明によるこのような吸入デバイスの特定の一実施形態は、図5に示されている。このデバイスは、断面が図示されている、ハンドヘルドネブライザーである。このデバイスは、マウスピース(1)およびベースユニット(2)と、噴霧する液体製剤用の貯蔵容器(3)と、噴霧手段(4)と、流動制限器(5)と、ユーザフィードバックシステムとを備える。フィードバックシステムは、空気流路と流体的に接続する感知デバイス(6)と、マザーボード(7)の一体部分を形成する電子メモリと、信号伝達デバイス(8)と、コントローラ(9)とを備える。この特定の実施形態では、マウスピース(1)は、半透明ポリプロピレンなどの半透明、不透明材料から作られ、信号伝達デバイス(8)は、4つの発光ダイオード(LED)を備え、より具体的には、1つの緑色LEDおよび1つのオレンジ色LEDを、2セット備え、各々マザーボード(7)の前端と、マウスピース(1)の左右に配置され(すなわち、図5に示されている断面に対して垂直)、これにより散光をマウスピースに照射する。LEDの位置は、この特定の吸入デバイスの上面を示す図6の矢印でも示されている。この実施形態では、噴霧手段(4)は、振動メッシュアセンブリであり、これは圧電トランスデューサ本体部(13)の下流端にある振動メッシュ(10)と、細かい液滴のエアロゾルを生成して空気流路内に入れるためメッシュ(10)を振動させるための圧電素子(11)とを備える。この特定の実施形態では、吸入デバイスは、所定の吸入量および/または吸入時間に達した後、空気流を遮断することができる遮断弁(12)をさらに備える。
【0079】
本発明は、次の実施形態をさらに包含する。
(1)ユーザフィードバックシステムを備える吸入デバイスであって、前記フィードバックシステムは
(a)ユーザの吸入動作時に吸入パラメータの実際の値に応答してセンサ信号を発生することができる感知デバイスであって、前記パラメータは吸息流量および吸入量から選択される、感知デバイスと、
(b)吸入パラメータに対する1つまたは複数の目標範囲を格納することができる電子メモリと、
(c)出力信号を放射することができる信号伝達デバイスと、
(d)センサによって生成されたセンサ信号を受信し、電子メモリを読み出し、信号伝達デバイスを制御することができるコントローラとを備え、
フィードバックシステムは、吸入パラメータの実際の値が目標範囲内にあるかどうかを出力信号を使って吸入動作時にユーザに指示するように構成される、吸入デバイス。本発明による吸入デバイスであって、信号伝達デバイスは、吸入パラメータの実際の値が目標範囲内にあるときに出力信号を放射せず、信号伝達デバイスは、吸入パラメータの実際の値がその目標範囲から外れたときに出力信号を放射する、吸入デバイス。
(2)上の実施形態(1)による吸入デバイスであって、メモリは、第1の目標範囲および第2の目標範囲を格納し、第2の目標範囲は第1の目標範囲より大きく、また第1の目標範囲を含み、信号伝達デバイスは、少なくとも2つの異なる出力信号を放射することができ、フィードバックシステムは、吸入パラメータの実際の値が第1の目標範囲内にあるかどうかを第1の出力信号を使って、また吸入パラメータの実際の値が第2の目標範囲内にあるかどうかを第2の出力信号を使って、ユーザに指示するように構成される、吸入デバイス。
(3)上の実施形態(1)による吸入デバイスであって、メモリは、第1の吸入パラメータに対する第1の目標範囲および第2の吸入パラメータに対する第2の目標範囲を格納し、信号伝達デバイスは、少なくとも2つの異なる出力信号を放射することができ、フィードバックシステムは、吸入パラメータの実際の値が第1の目標範囲内にあるかどうかを第1の出力信号を使って、また吸入パラメータの実際の値が第2の目標範囲内にあるかどうかを第2の出力信号を使って、ユーザに指示するように構成される、吸入デバイス。
(4)上の実施形態(1)から(3)のいずれか一項による吸入デバイスであって、感知デバイスは、圧力センサ、流量センサ、速度センサ、温度センサ、マイクロフォン、またはこれらの任意の組み合わせを備える、吸入デバイス。
(5)上の実施形態(1)から(4)のいずれか一項による吸入デバイスであって、前記吸入デバイスの信号伝達デバイスの出力信号は、発光ダイオードまたは半導体レーザーなどの光であり、出力信号は光であり、前記吸入デバイスの信号伝達デバイスは、
(a)光を間欠的に放射し、
(b)異なる波長の光を放射し、および/または
(c)異なる強度の光を放射することができる、吸入デバイス。
(6)上の実施形態(5)による吸入デバイスであって、信号伝達デバイスの少なくとも1つの信号伝達部材は、光を間欠的に放射し、異なる波長の光を放射し、および/または異なる強度の光を放射することができる発光ダイオードまたは半導体レーザーであり、前記信号伝達部材は、ユーザから直接的には見えないが、ユーザが散光を受けるように配置構成される、吸入デバイス。
(7)上の実施形態(5)による吸入デバイスであって、信号伝達デバイスの少なくとも1つの信号伝達部材は、光を間欠的に放射し、異なる波長の光を放射し、および/または異なる強度の光を放射することができる発光ダイオードまたは半導体レーザーであり、前記信号伝達部材は、ユーザから直接的には見えないが、ユーザが散光を受けるように配置構成され、前記吸入デバイスは、信号伝達デバイスに関連付けられている、および/または光信号を照射されるマウスピースをさらに備え、適宜マウスピースの少なくとも一部は、ポリプロピレンなどの半透明材料から作られる、吸入デバイス。
(8)上の実施形態(5)による吸入デバイスであって、信号伝達デバイスの少なくとも1つの信号伝達部材は、ユーザから直接的には見えないが、ユーザが散光を受けるように配置構成された発光ダイオードまたは半導体レーザーであり、前記吸入デバイスは、光信号を照射される少なくとも部分的に半透明のマウスピースをさらに備え、信号伝達デバイスは、吸入パラメータの実際の値が目標範囲内にあるときの光の強度が、実際の値がその目標範囲を外れているときに比べて高い光を放射し、および/または信号伝達デバイスは、吸入パラメータの実際の値が目標範囲から大きく逸脱するほど強度が小さい光を放射する、吸入デバイス。
(9)上の実施形態(5)による吸入デバイスであって、信号伝達デバイスの少なくとも1つの信号伝達部材は、ユーザから直接的には見えないが、ユーザが散光を受けるように配置構成された発光ダイオードまたは半導体レーザーであり、前記吸入デバイスは、光信号を照射される少なくとも部分的に半透明のマウスピースをさらに備え、信号伝達デバイスは、吸入パラメータの実際の値が目標範囲内にあるときに第1の波長の光を、吸入パラメータの実際の値がその目標範囲から外れているときに、第1の波長と異なる第2の波長の光を放射する、吸入デバイス。
【0080】
[実施例1]
振動メッシュ型エアロゾル発生器、流動制限器、およびユーザフィードバックシステムを備える本発明によるハンドヘルドネブライザーは、次のように構成され、試験された。流動制限器は、吸息圧に応答した。吸入パラメータは、目標範囲が15±3L/分に設定された吸息流量であった。吸息圧を測定し、吸息流量を間接的に判定するなどのために圧力センサが流路内に組み込まれた。信号伝達デバイスは、可変強度の緑色の光を放射することができる発光ダイオード(LED)を備えていた。半透明のポリプロピレンでそれ自体作られたマウスピースを照射するなどのためにデバイスの内側にLEDが2セット組み込まれた。フィードバックシステムは、吸息流量が目標範囲内にあるときに最高の強度でマウスピースを照射するために緑色の光を放射するように構成された。この流量は、圧力センサにより測定された圧力値を介して判定された。ルックアップテーブルの形のデバイスの流量-圧力特性を用いることによって、流量が判定された。15±3L/分の流量は、マウスピースにおいて-3.7から-5.6mbarの圧力に対応するか、またはその圧力で達成された。この目標範囲を外れるが、動作範囲内にあれば(すなわち、同じ吸入パラメータに対して第2の、より広い目標範囲内にあれば)、信号伝達デバイスは、最大強度の100%未満の緑色の光を放射する。陰圧が減少すると(すなわち、-5.6mbarより小さくなると)、光強度は、強度が圧力-7.9mbar以下で5%の光強度のプラトーに達するまで減少した。マウスピースのところの陰圧が-3.7mbarより高い値に上昇すると、光強度も、-1.7mbarの圧力で0%に達するまで減少した。
【0081】
図2は、使用されている特定の可変流動制限器に対する陰圧値を通して決定されるような吸息流動に応答して変化するように光強度がどのように構成されたかを示している。グラフは、圧力に対する絶対値(またはモジュラス)を示し、負の符号を示さないことに留意されたい。光強度を0%に、ただし、目標範囲の右側にある値の、すなわち、7.9mbarの負圧「より上」の(すなわち、-7.9mbarより下の)陰圧については代わりに5%に、低減する目的は、ユーザに、吸入が遅すぎるよりはむしろ速すぎることを知らせることである。
【0082】
27人のボランティア(21〜72歳まで)を対象とし、そのうち13人にネブライザーまたは他の吸入器の経験がない、ボランティアたちに、さらに説明を与えることなく、実験デバイスを使用して20回の吸入動作を実行するように求めた。その結果、フィードバックシステムでガイドされた、ほぼ全員が、15L/分に非常に近い吸息流量で吸入し、図1に示されているように変動率は非常に低かった。
【0083】
[実施例2]
3つの異なる流動制限器を試験するために実施例1に類似のハンドヘルドネブライザーが使用されたが、すべて吸息圧に応答した。ここでもまた、27人のボランティア(21〜72歳まで)を対象とし、そのうち13人にネブライザーまたは他の吸入器の経験がない、ボランティアたちに、最大強度となるように緑色の光を目指し、光強度が低下した場合にはしかるべく吸入を調整すべきであるとの短い説明をボランティアに与えて、実験デバイスを使用して5回の吸入動作を実行するように求めた。
【0084】
図3は、約-2mbarから約-20mbarまでの目標圧力範囲(2本の点線の間の領域によって示される)と一緒の3つの流動制限器の負圧-流量グラフを示す。3つすべてのデバイスで、高い絶対圧力値における対応する流量の比較的小さな増加によって示されているように、陰圧の絶対値の増加とともに流動抵抗が増加する。曲線の勾配が大きければ大きいほど、流動抵抗器の全体的抵抗プロファイルは低くなる。流動制限器3などの非常に低い抵抗プロファイルを持つ流動制限器の場合、12から18L/分のような特定の目標流量範囲に対応する目標圧力範囲は、かなり狭く、ユーザが維持するには難しいものとなることに留意されたい。流動制限器1の場合などの、より高い全体的な流動抵抗プロファイルでは、吸息流量を最大値に物理的に制限することができ、したがって、最適な薬物沈着には高すぎる流量を防ぐことができる。しかし、これらは、ユーザがたとえば吸息流量が低すぎるという印象に応答してあまりにも低い負圧をかけてしまうという危険性を高める。吸息圧が約-20mbarより低い場合(すなわち、20mbarより高い負圧の場合)、ユーザは、そのまま、望ましい流量で吸入するが、利便性を犠牲にすることになる。さらに、肺の奥深くの微細構造の収縮の可能性がある。たとえば流動制限器2の場合のような、中間の全体的な流動抵抗プロファイルが妥協策となる。流動抵抗は十分に低く、喘息またはCOPDのような収縮性の気道疾患の深刻な影響を受ける患者であっても快適である。しかし、患者が吸入の努力を高めると、したがって負圧を高めると、望ましい速さよりも速く吸入する、すなわち、12L/分から18L/分の例示的な目標範囲を外れて吸入するおそれがある。
【0085】
図4は、27人のボランティアによって達成された吸息流量および負圧のボックスプロットを示している。流動制限器1では、ボランティアは平均-9mbarの吸息圧で吸入し、約15L/分の平均して一定の流量を生成した。変動率は吸息圧に対して非常に低く、すなわち、-7.5mbarから-10mbarであり、この圧力値で、すべてのユーザが15±3L/分の目標流量を達成したことが確認された。フィードバックシステムは、流動制限器1の最大流量が16L/分を超える流量を防ぎつつ高すぎる負圧値での吸入を防止することに成功した。
【0086】
流動制限器2では、ボランティア全員が平均して-5.5mbarのより低い負圧で吸入し、約15L/分の流量を生成した。-4.5mbarから-7mbarまでの間の吸息圧の低い変動率は、15±3L/分の目標流量範囲と両立し得る。この流動制限器ではかなり高い流量を許したであろうが、これらの流量はフィードバックシステムによって首尾良く防止された。
【0087】
流動制限器3の場合、ボランティアは、-3.8mbarのなおいっそう低い平均圧力で吸入し、個別の圧力値は-3.2から-10mbarの範囲内であった。流動制限器の負圧-流量曲線の勾配が急であるにも関わらず、ボランティアは、変動率が流動制限器1および2の場合に比べていくぶん高かったとしても、本発明による効果的なフィードバックシステムのおかげで、15L/分に近い平均流量をそれでも達成した。フィードバックシステムがなければ、このデバイスを使ってユーザが生成する平均流量は、典型的には、かなり高く、すなわち20L/分をはるかに超え、実質的により高い変動率に関連していた(データは図示されていない)ことに留意されたい。
【0088】
本発明は、図面および前記の説明に詳しく図解され、説明されているが、そのような図解および説明は、図解する、または例示するものとして考えるべきであり、制限するものと見なすべきでない。当業者であれば次の請求項の範囲内で変更および修正を加えることができることを理解するであろう。特に、本発明は、上および下で説明されている異なる実施形態からの特徴の任意の組み合わせを持つさらなる実施形態も対象とする。
【0089】
さらに、請求項において、「含む、備える」という語は、他の要素またはステップを除外せず、英語原文中の不定冠詞「a」または「an」は複数を除外しない。単一のユニットで、請求項に記載されているいくつかの特徴部の機能を遂行することができる。属性もしくは値に関連する「本質的に」、「約」、「おおよそ」、および同様の言い回しも、特に、属性を正確に、または値を正確に、それぞれ定義する。請求項内の参照記号は、範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0090】
1 マウスピース
2 ベースユニット
3 貯蔵容器
4 噴霧手段
5 流動制限器
6 感知デバイス
7 マザーボード
8 信号伝達デバイス
9 コントローラ
10 振動メッシュ
11 圧電素子
12 遮断弁
13 圧電トランスデューサ本体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6