(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜6のいずれかに規定されるような方法を使用して調製される、少なくとも15重量%の金属のナノ粒子を含んでなる極めて濃厚な金属のナノ粒子分散物を、必要な添加剤と混合することにより、塗装用または印刷用流体を調製する方法。
高沸点溶媒がジエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノールおよび2−ブトキシエタノールから選択される、請求項8〜10のいずれかに従う、塗装用または印刷用流体を調製する方法。
請求項7〜11のいずれかに規定される方法を使用して調製される印刷用または塗装用流体を、支持体上に適用する工程を含んでなり、その次に焼結工程が続く、金属の層またはパターンを調製する方法。
【背景技術】
【0002】
ある金属のバルクの特性に比較される時に、このような金属のナノ粒子の独特な特性のために、過去数十年間、金属のナノ粒子を含む印刷用または塗装用流体における興味が増加してきた。例えば、金属のナノ粒子の融点は、粒度の低下とともに低下して、それらを印刷電子工学、電子化学的、光学的、磁気および生物学的適用に対して興味深いものにさせる。
【0003】
例えば、インクジェット印刷またはスクリーン印刷により印刷することができ、または高速度で塗布することができる、安定で、濃厚な金属の印刷用または塗装用流体の生産は、それが低価格で電子装置の調製を可能にするために、極めて興味深い。
【0004】
金属のナノ粒子は典型的には、非特許文献1に開示されたポリオール合成法により、ポリオール合成法の誘導体により、または様々な還元剤の存在下で金属塩のインサイチューの還元により調製される(非特許文献1参照)。このような方法は例えば、特許文献1、2、3および4、5、6、7、8、9、10、11、12、13および14、15、16、17および18に開示されている(特許文献1〜18参照)。
【0005】
このようなポリオール合成において、しばしば、金属の前駆体または金属のナノ粒子を安定化するために、いわゆるキャッピング剤(capping agents)が使用される。このようなキャッピング剤は通常、チオール(−SH)、カルボキシル(−COOH)またはアミン(−NH)基のような官能基を含む。例えば特許文献19は、ナノ粒子がポリビニルピロリドン(PVP)のようなキャッピング物質によりキャップされるポリオール合成により製造される、金属のナノ粒子を含んでなる金属インクを開示している(特許文献19参照)。
【0006】
層の適用パターンの伝導率を誘発し/高めるために、支持体上に金属印刷用または塗装用流体を適用後に、高温における、硬化工程とも呼ばれる焼結工程が実施される。金属印刷用または塗布用流体の有機成分、例えばポリマーの分散剤またはキャッピング剤は、焼結効率、および従って層の適用パターンの伝導率、を低下する可能性がある。このため、有機成分を分解するために、しばしば、より高い焼結温度および、より長い焼結時間が必要とされる。
【0007】
このような高い焼結温度は、比較的低いガラス遷移温度をもつポリエチレン・テレフタレート(PET)またはポリカーボネートのような、一般のポリマーフォイルと相入れない。従って、伝導率の層またはパターンを得るために必要な、焼結温度を低下することに興味がもたれる。
【0008】
特許文献20は、熱重量分析法(Thermal Gravimetric Analysis)により測定されるように300℃未満の温度で95重量%の分解率をもつポリマーの分散剤を開示している(特許文献20参照)。このようなポリマーの分散剤を含んでなる金属の印刷用または塗布用流体を使用することにより、焼結温度および時間を低下させることができると考えられる。双方とも21−12−2011に出願された特許文献
21および22において、焼結温度を更に低下させるために特許文献20のポリマーの分散剤と組み合わせて、いわゆる焼結添加剤が使用されている(特許文献21、22、20参照)。
【0009】
05−05−2012に出願された特許文献23は、分散媒が特定の溶媒、例えば、2−ピロリドンを含んでなることを特徴とする分散媒を含んでなる、金属のナノ粒子の分散物を開示している(特許文献23参照)。分散媒としてこのような溶媒を使用する時は、安定な金属のナノ粒子の分散物を得るためにポリマーの分散物を必要としない。
【0010】
金属のナノ粒子の分散物の欠点はしばしば、金属ナノ粒子のそれらの限定される含量である。従って、適当な塗布用または印刷用流体を調製するためにはしばしば、このような分散物に対して濃縮工程を実施することが必要である。更に、希釈された分散物を保存することはしばしば、安定性の問題をもたらす可能性がある。
【0011】
特許文献24は、銀の粒子上に吸着された、短鎖および長鎖のキャッピング剤を含む、銀のナノ粒子組成物の調製を開示している(特許文献24参照)。該キャッピング剤は双方とも、特定の分子量をもつアニオンのポリ電解質である。
【0012】
特許文献25は、金属粒子の表面に結合し、そして凝集に対してそれらを安定化することができる、3〜7個の炭素を含むカルボン酸の存在下における、金属塩の化学的還元による金属ナノ粒子の合成法を開示している(特許文献25参照)。その合成は水中で実施される。
【0013】
特許文献26は、銀の塩の粒子がカルボン酸を含む溶液中で還元される、カルボン酸安定化された銀のナノ粒子の製法を開示している(特許文献26参照)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明に従う金属のナノ粒子分散物を調製する方法は、
−(a) 式I
【0023】
[式中、
R
1およびR
2は場合により置換されていてもよいアルキル基を表し、
R
1およびR
2は環を形成することができる]
に従う溶媒、並びに
(b) 式II
R−COOH
式II
[式中、
Rは場合により置換されていてもよいC
2−C
7アルキル、アルケニルまたはアルキニル基である]
に従うカルボン酸;
を含んでなる分散媒に、金属の前駆体を添加することにより、金属の前駆体分散物または溶液を形成する工程、
− 金属の前駆体を還元剤で還元して、金属のナノ粒子を形成する工程、
− 金属のナノ粒子を沈殿させて、少なくとも15重量%の金属のナノ粒子を含んでなる、濃厚な金属のナノ粒子分散物を獲得する工程:
を含んでなる。
【0024】
式Iに従う溶媒および式IIに従うカルボン酸の組み合わせ物を使用することにより、容易に再分散され、それにより高度に伝導率の層を調製することができる、金属のナノ粒子の、微細な、均質な沈殿物を得ることができることが認められた。可能な説明は、式Iに従う溶媒および式IIに従うカルボン酸双方が、粒子の凝集の不在下でもたらすことができる金属の前駆体粒子および/または金属のナノ粒子を安定化するということであるかも知れない。式Iに従う溶媒は特に金属ナノ粒子を安定化し、他方、カルボン酸は金属の前駆体粒子を安定化するという指摘がある。
【0025】
金属のナノ粒子
金属のナノ粒子は元素形態または合金形態の、1種以上の金属を含んでなる。金属は、好適には銀、金、銅、ニッケル、コバルト、モリブテン、パラジウム、白金、錫、亜鉛、チタン、クロム、タンタル、タングステン、鉄、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、アルミニウムおよび鉛よりなる群から選択される。銀、銅、モリブテン、アルミニウム、金、銅またはそれらの組み合わせ物に基づく金属のナノ粒子が特に好適である。最も好適なものは銀のナノ粒子である。
【0026】
用語「ナノ粒子」は、分散物調製の最終段階で200nm未満の平均粒度をもつ分散粒子を表す。金属のナノ粒子は分散物調製の最終段階で、200nm未満、好適には100nm未満、より好適には50nm未満、最も好適には30nm未満の平均粒度をもつ。
【0027】
カルボン酸
本発明の方法に使用される反応溶媒または分散媒は式II
R−COOH
式II
[式中、
Rは場合により置換されていてもよいC
2−C
7アルキル、アルケニルまたはアルキニル基である]
に従うカルボン酸を含む。
【0028】
C
2−C
7アルキル、アルケニルまたはアルキニル基は2〜7個の炭素原子を含む。
【0029】
Rは好適には、場合により置換されていてもよいC
2−C
7アルキル基である。用語「アルキル」は、アルキル基中の炭素原子の各数に対して可能なすべての可変物、すなわち3個の炭素原子に対し:n−プロピルおよびイソプロピル;4個の炭素原子に対し:n−ブチル、イソブチルおよび第四級ブチル;5個の炭素原子に対し:n−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピルおよび2−メチル−ブチル等、を意味する。
【0030】
好適にはRはn−アルキル基である。アルキル基の鎖長が長くなると、反応混合物の粘
度の増加が認められた。他方、より短いアルキル基をもつ酸は、受容され得ない臭いをもつ。式IIにおけるR基は最も好適には、C
4−C
6 n−アルキル基である。
【0031】
式IIに従う特に好適なカルボン酸はペンタン酸、ヘキサン酸およびヘプタン酸である。
【0032】
金属に対するカルボン酸のモル比として表される、本発明の方法に使用される、式IIに従うカルボン酸の量は、好適には、1〜10であり、より好適には2〜8であり、最も好適には3〜6である。
【0035】
[式中、
R
1およびR
2は場合により置換されていてもよいアルキル基を表し、そして
R
1およびR
2は環を形成することができる]
に従う溶媒を含む。
【0036】
好適な実施態様において、分散媒は式III、
【0038】
[式中、
Lは場合により置換されていてもよい線状または分枝状C
2−C
11アルキレン基である]
に従う溶媒を含んでなる。
【0039】
より好適な実施態様において、反応溶媒は、場合により置換されていてもよい2−ピロリドン、β−ラクタム、γ−ラクタム、δ−ラクタムまたはε−ラクタムから選択される溶媒を含んでなる。
【0040】
更により好適な実施態様において、反応溶媒は2−ピロリドン、4−ヒドロキシ−2−ピロリドン、δ−バレロラクタムまたはε−カプロラクタムから選択される溶媒を含んでなる。
【0041】
最も好適な実施態様において、反応溶媒は2−ピロリドンを含んでなる。
【0042】
金属に対する溶媒のモル比として表される溶媒の量は、好適には1〜20の間、より好適には2〜15、最も好適には3〜10の間である。
【0043】
補助溶剤
金属のナノ粒子分散物の分散媒は、式Iに従う溶媒に加えて、補助溶剤、好適にはアルコールまたはケトンを含んでなることができる。補助溶剤はより好適にはエタノールまたはメチルエチルケトン(MEK)である。補助溶剤は金属のナノ粒子分散物の調製開始から含まれても、または調製中または調製の最後に添加されてもよい。
【0044】
補助溶剤の量は好適には、式Iに従う溶媒の量に対して≦75重量%、より好適には≦50重量%、最も好適には≦25重量%である。
【0045】
ポリマー分散剤
分散媒は分散剤、典型的にはポリマーの分散剤を含むことができる。しかし、このようなポリマーの分散剤(または他の添加剤)は、低い焼結温度で金属のナノ粒子の分散物を使用して調製された塗膜の伝導率を低下する可能性があるので、それらを使用しないことが好適である。
【0046】
ポリマーの分散剤は典型的には、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルピロリジノン、ビニルブチラール、ビニルアセテートまたはビニアルコールモノマーから調製されるホモポリマーまたはコポリマーである。
【0047】
熱重力分析法により測定されて300℃未満の温度で95重量%の分解率をもつ、欧州特許第A2468827号明細書に開示されたポリマーの分散剤も使用することもできる。
【0048】
しかし、好適な実施態様において、本発明に従う金属のナノ粒子の分散物は、分散物の総重量に対し5重量%未満、より好適には1重量%未満、最も好適には0.1重量%未満のポリマー分散剤を含んでなる。特に好適な実施態様において、分散物はポリマー分散剤を全く含まない。
【0049】
金属前駆体の分散物
金属前駆体の分散物は、式Iに従う溶媒と式IIに従うカルボン酸とを含む分散媒に、金属前駆体を添加することにより調製される。
【0050】
金属前駆体の粒子は典型的には、粉末、フレーク、粒子または凝集粒子として入手できる。分散物の調製の前に、フレークまたは粉末は乾燥粉砕、湿式粉砕、高剪断分散法またはふるい法により粉末度を低下させることができる。
【0051】
金属前駆体の分散物はまた、式IIに従うカルボン酸を含む分散媒に、金属前駆体を添加することにより調製することができる。次に式Iに従う溶媒を後の工程で、還元工程中または還元工程後に添加することができる。
【0052】
分散の温度は好適には室温である。しかし、溶媒中のカルボン酸の溶解度に応じて、より高い温度を使用することができる。
【0053】
金属前駆体の分散物を調製するために、沈殿、混合、粉砕、インサイチューの合成また
はそれらの組み合わせ物のような典型的な分散法を使用することができる。温度、工程の時間、エネルギーインプット、等のような実験条件は、選択される方法に拠る。分散法は連続的、バッチ法または半バッチ法で実施することができる。
【0054】
混合装置は圧力混練機、開放混練機、遊星型ミキサー、溶解装置、高剪断スタンドミキサーおよびダルトンユニバーサルミキサー(Dalton Universal Mixer)を含むことができる。適切な粉砕および分散装置は、ボールミル、パールミル、コロイドミル、高速分散機、二重ローラー、ビーズミル、塗料コンディショナーおよび三重ローラーである。ガラス、セラミックス、金属およびプラスチックのような多数の異なるタイプの材料を、粉砕媒体として使用することができる。分散物はまた、超音波エネルギーを使用して調製することができる。
【0055】
重量%の金属で表される分散物の濃度は好適には1〜50重量%、より好適には2〜25重量%、最も好適には3〜15重量%である。
【0056】
還元工程
金属のナノ粒子は還元工程、例えば金属酸化物の金属への還元により金属前駆体の粒子から調製される。
【0057】
金属前駆体の粒子は金属酸化物、金属塩および金属水酸化物よりなる群から選択することができる。
【0058】
好適な金属酸化物の粒子は、銀酸化物、錫酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、カドミウム酸化物、銅酸化物または亜鉛酸化物粒子である。更にZnO:Al、SnO
2:FまたはSnO
2:Sb粒子のようなドープ金属酸化物粒子も使用することができる。
【0059】
好適な金属水酸化物の粒子は、銅水酸化物、チタン水酸化物、ジルコニウム水酸化物、タングステン水酸化物、モリブデン水酸化物、カドミウム水酸化物または亜鉛水酸化物の粒子である。
【0060】
好適な金属塩は硝酸塩、炭酸塩、塩化物、リン酸塩、ほう酸塩、スルホン酸塩および硫酸塩のような無機酸塩、並びにステアリン酸塩、ミリスチン酸塩または酢酸塩のような有機酸塩を含む。
【0061】
前記のように、特に好適な金属ナノ粒子は銀ナノ粒子である。これらは例えば、銀酸化物、銀硝酸塩または銀酢酸塩の還元により調製することができる。
【0062】
この還元工程に使用される還元剤は好適には、分散媒に可溶性である。還元剤はヒドロキシルアミンおよびその誘導体、ギ酸、蓚酸、アスコルビン酸、ヒドラジンおよびその誘導体、ジチオスレイトール、ホスファイト、ヒドロホスファイト、亜リン酸およびその誘導体、リチウムアルミニウム水素化物、ジイソブチルアルミニウム水素化物、ホウ水素化ナトリウム、亜硫酸塩、錫(II)錯体、鉄(II)錯体、亜鉛水銀アマルガム、ナトリウムアマルガム、原子水素またはリンドラー(Lindlar)触媒よりなる群から選択することができる。
【0063】
容易に再分散することができる金属ナノ粒子の均質な沈殿物は、余り反応性ではない還元剤を使用して得られることが認められた。
【0064】
好適な還元剤はヒドロキシルアミンまたはその誘導体であり、N,N−ジエチルヒドロ
キシルアミンが特に好適である。
【0065】
金属に対する還元剤のモル比として表される、使用される還元剤の量は、好適には、1〜10、より好適には2〜8、最も好適には3〜6である。
【0066】
還元は典型的には、室温で実施される。還元は典型的に発熱工程であるので、分散物の温度を一定に維持するために冷却が必要である。前記のように、溶媒中のカルボン酸の溶解度に応じて、より高温を使用することができる。
【0067】
金属ナノ粒子への金属の前駆体の還元の度合いは、好適には60〜100%の間である。
【0068】
還元剤は好適には、前駆体の早すぎる還元を防止するように、制御された方法で分散物に添加される。
【0069】
沈殿
少なくとも15重量%の金属ナノ粒子を含んでなる、著しく濃厚な金属ナノ粒子分散物を実現するために、還元工程の後に沈殿工程を実施する。
【0070】
沈殿工程の後に、金属ナノ粒子の微細な、均質な沈殿物が得られる。沈殿工程および場合による洗浄工程はまた、分散物から、塗膜の伝導率に不都合な影響をもつ可能性がある有機成分(溶媒、カルボン酸、還元剤、結合剤)の除去をもたらす。
【0071】
還元工程の後に、分散物は好適には、上澄み液を除去するために、撹拌機とチューブを含む沈殿容器に移される。しかし、上澄み液から沈殿物を分離するための他の方法も使用することができる。
【0072】
沈殿は好適には、混合物を、しばらく、例えば1晩、撹拌せずに、静置することにより実施される。しかし、沈殿は溶媒の蒸発により、非溶媒を添加することにより、遠心分離により、または超遠心分離により誘発または加速される可能性がある。
【0073】
沈殿が完了すると、上澄みが沈殿物から除去される。沈殿物からの上澄み液の分離中に沈殿物を乱さないことが非常に重要である。
【0074】
洗浄工程
好適には、更に、沈殿物中にまだ存在する望ましくない成分を、少なくとも一部除去するために、得られる沈殿物に対して、一回以上の洗浄工程が実施される。
【0075】
洗浄工程において、溶媒を沈殿物に添加し、生成される分散物をしばらく、例えば1時間または1時間半、撹拌する。
【0076】
次に混合物をしばらく、例えば1時間、撹拌せずに静置すると、沈殿物および上澄み液をもたらす。次に上澄み液を除去する。
【0077】
いくつかの洗浄工程を、同一のまたは異なる溶媒を使用して実施することができる。
【0078】
溶媒は、沈殿物からの望ましくない成分の除去と、その溶媒中の金属ナノ粒子の沈殿とを考慮に入れて選択される。金属ナノ粒子の可逆的凝集が沈殿を加速する可能性がある。本発明の方法により、すなわち式Iの溶媒と式IIに従うカルボン酸との存在下において調製される金属ナノ粒子は実際、このような可逆的凝集を特徴として示し、従って沈殿を
加速するが、再分散可能な沈殿物を容易に形成することが認められた。
【0079】
最後の洗浄工程に使用される溶媒もまた、分散物から製造される印刷用または塗装用流体の伝導率および印刷特性をも考慮に入れて選択される。
【0080】
好適な実施態様において、4回の洗浄工程が実施される。前半の2回の洗浄工程は1−メトキシ−2−プロパノールを使用し、後半の2工程はDOW CHEMICALSからのButylcellosolve
TM、ブチルグリコールエーテルを使用する。
【0081】
本発明の方法により得られる高度に濃厚な金属ナノ粒子分散物は、分散物の総重量に対して、少なくとも15重量%、より好適には少なくとも30重量%、最も好適には少なくとも50重量%の金属ナノ粒子を含む。特に好適には、金属ナノ粒子分散物は分散物の総重量に対して60〜80重量%
の間の金属ナノ粒子を含む。
【0082】
印刷用または塗装用流体
それぞれ金属のインクまたは金属の塗装用溶液とも呼ばれる金属の印刷用または塗装用流体は、本発明に従う方法を使用して調製される金属のナノ粒子分散物から調製される。
【0083】
金属ナノ粒子の分散物は、金属の印刷用または塗装用流体として直接使用することができる。しかし、塗装または印刷特性を最適にするために、そして更にそれが使用される適用に応じて、還元剤、湿潤剤/均染剤、デウェッティング剤(dewetting agents)、レオロジー修飾剤、接着剤、粘着付与剤、保湿剤、噴射剤(jetting
agents)、硬化剤、殺生剤または抗酸化剤のような添加剤を、金属ナノ粒子の分散物に添加することができる。
【0084】
好適には、添加剤の総量は、金属の印刷用または塗装用流体の総重量に対し、好適には0〜20重量%の間、より好適には1〜15重量%、そして更により好適には2〜10重量%である。
【0085】
増粘剤は印刷用または塗装用流体の粘度を増加するために添加することができる。好適な増粘剤は、非晶質シリカ、異なる分子量をもつポリビニルピロリドン、およびセルロース基剤の増粘剤、から選択することができる。特に好適な増粘剤はヒドロキシルプロピルセルロースである。
【0086】
高沸点の溶媒は好適には、印刷中にインクの乾燥を防止するためにインクに添加される。更に、このような高沸点の溶媒はまた、インクの伝導率に良好な影響をもつ。好適な高沸点溶媒はジエチレングリコール(DEG)、2−ブトキシエタノールおよび1−メトキシ−2−プロパノールである。
【0087】
更に、金属の印刷用または塗装用流体を調製する際に、金属分散物に希釈剤を添加することができる。これらの、場合により使用される希釈剤の量は好適には、インクの総重量に対して、75重量%未満、より好適には60重量%未満である。希釈剤はアルコール、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、より高分子の脂肪酸、カルビトール、セロソルブ、およびより高分子の脂肪酸エステルから選択することができる。適切なアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ブタノール、t−ブタノールを含む。適切な芳香族炭化水素はトルエンおよびキシレンを含む。適切なケトンはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2,4−ペンタンジオンおよびヘキフルオロアセトンを含む。更に、グリコール、グリコールエーテル、N,N−ジメチル−アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドを使用することができる。しかし、希釈剤として、式Iに従う溶媒、好適には金属ナノ粒子分散物を調
製するために使用されるものと同一の溶媒を使用することが好適である。
【0088】
金属の印刷用または塗装用流体の調製は、撹拌、高剪断混合、超音波処理またはそれらの組み合わせのような均質化法を使用することにより、金属のナノ粒子の分散物に対する、場合により使用される添加剤および/または希釈剤の添加を含んでなる。均質化工程は100℃までの高温で実施することができる。
【0089】
好適な実施態様において、均質化工程は60℃以下の温度で実施される。
【0090】
好適な実施態様において、金属のスクリーン印刷のインクが調製される。このようなスクリーン印刷のインクは、5000〜400000mPa.s
の間、好適には10000〜100000mPa.s
の間、より好適には20000〜50000mPa.s
の間の粘度をもつ。特に好適な実施態様に従うと、銀のスクリーン印刷のインクが調製される。
【0091】
他の好適な実施態様において、金属フレキソグラフインクが調製される。このようなフレキソグラフインクは100〜3000mPa.s
の間、好適には200〜1000mPa.s
の間、最も好適には300〜500mPa.s
の間の粘度をもつ。特に好適な実施態様に従うと、銀のフレキソグラフインクが調製される。
【0092】
他の好適な実施態様において、金属のインクジェットインクが調製される。このようなインクジェットインクは1〜50mPa.s
の間、好適には5〜30mPa.s
の間、より好適には7〜15mPa.s
の間の粘度をもつ。特に好適な実施態様に従うと、銀のインクジェットのインクが調製される。
【0093】
前記の粘度は、20〜25℃
の間の温度で1/sの剪断率で測定される(例えば、Texas InstrumentsのAR2000レオメーターを使用して)。
【0094】
金属の層またはパターン
金属の印刷用または塗装用流体から印刷または塗装される薄層またはパターンは、従来の金属の印刷用または塗装用流体を使用して得られるものに比較して、より低い焼結温度で伝導率にされることができる。従って、本発明の、金属の印刷用または塗装用流体から製造される伝導率薄層またはパターンは、例えば、PETのような、高温における熱処理に耐えることができない柔軟な支持体上に塗布または印刷されることができる。
【0095】
金属の層またはパターンは、恐らく一工程に合わされた、乾燥および/または焼結工程がその後に続く、支持体上に前記のような印刷用または塗布用流体を適用する工程を含んでなる方法により調製される。
【0096】
複数の金属の層またはパターン、すなわちパターン層または非パターン層の積み重ね、を支持体上に適用することができる。従って、金属の層またはパターンを調製する方法において言及される支持体はまた、以前に適用された金属の層またはパターンを包含する。
【0097】
金属の層またはパターンはまた、インクジェット印刷により、またはフレキソ印刷、オフセット、グラビアまたはスクリーン印刷のようなあらゆる従来の印刷法により、または吹き付け塗装、ナイフ塗装、スロットダイ塗装のようなあらゆる従来の塗装法により実施することができる。
【0098】
層またはパターンが支持体上に適用された後に、硬化工程とも呼ばれる焼結工程を実施する。この焼結工程中に、溶媒は蒸発し、金属粒子が一緒に焼結する。金属粒子間に連続的浸透ネットワーク(percolating network)が形成されると、層ま
たはパターンが伝導率になる。従来の焼結は熱を適用することにより実施される。焼結温度および時間は使用される支持体および金属層またはパターンの組成に左右される。金属層を硬化する焼結工程は250℃未満、好適には200℃未満、より好適には180℃未満、最も好適には160℃未満の湿度で実施することができる。
【0099】
焼結時間は、選択される温度、支持体および金属層の組成に応じて、≦60分間、好適には≦30分間そしてより好適には≦15分間である。
【0100】
しかし、熱を適用することによる従来の焼結の代わりに、またはそれに加えて、アルゴンレーザー、マイクロェーブ光線、UV光線または低圧アルゴンプラズマ、光硬化、プラズマもしくはプラズマにより促進された、電子ビームまたは拍動電流焼結に対する暴露のような代わりの焼結法を使用することができる。
【0101】
本発明の金属層は先行技術の方法より低い硬化温度を使用させる。その結果、例えばPETのような高温における熱処理に耐えることができないポリマーの支持体を使用することが可能である。硬化時間もまた、実質的に短縮することができ、先行技術の方法より時間当りに、より高い生産の可能性に導くことができる。金属層の伝導率は維持されるか、または特定の場合には改善すらされる。
【0102】
硬化後に、そしてバルク(金属の)の伝導率の%として表される金属層またはパターンの伝導率は≧10%、好適には≧20%、より好適には≧30%である。
【0103】
金属層またはパターンは、様々な電子装置、または例えば、有機光電池(OPV)、無機光電池(c−Si、a−Si、CdTe、CIGS)、OLEDディスプレー、OLED照明、無機照明、RFIDの有機トランジスター、薄膜電池、タッチスクリーン、e−ペーパー、LCD、プラズマ、センサー、膜スイッチまたは電磁シールドのような電子装置の部品中に使用することができる。
【実施例】
【0104】
材料
以下の実施例中に使用されるすべての材料は、別記されない限り、ALDRICH CHEMICAL Co.(ベルギー)およびACROS(ベルギー)のような標準の製造会社から容易に入手可能である。すべての材料は別記されない限り更に精製せずに使用された。
・Butylcellosolve
TMはDOW CHEMICALSからのブチルグリコールエーテルである。
・Dowanol PM
TMはDOW CHEMICALSからの1−メトキシ−2−プロパノールである。
・Klucel
TM JはHERCULESからのヒドロキシプロピルセルロースである。・DAPRO DF 6800はELEMENTISからの脱泡剤(疎水性に変性されたシリカを含むポリシロキサン)である。
・Disperbyk(登録商標)−2025はBYK Additives & Instrumentsからの湿潤添加剤である。
・IPAはイソプロピルアルコールである。
・EtOAcはエチルアセテートである。
・AcOHは酢酸である。
・THFはテトラヒドロフランである。
・MEKはメチルエチルケトンである。
・DMAはN,N−ジメチルアセトアミドである。
・NMPはN−メチルピロリドンである。
・銀酸化物はUMICOREからのものである。
【0105】
伝導率の測定
金属分散物はPETの支持体上に塗装された。湿った塗膜の厚さは20μmであった。120℃で3分間乾燥後、塗膜を150℃で30分間オーブン中に入れた。
【0106】
表面抵抗(SER)は四点の同一線上(collinear)プローブを使用して測定した。表面またはシート抵抗は以下の式:
【化4】
[式中、
SERはΩ/□に表される層の表面抵抗である;
Πはほぼ3.14に等しい数学的定数である;
ln2はほぼ0.693に等しい、値2の自然対数に等しい数学的定数である;
Vは四点プローブ測定装置の電圧計により測定された電圧である;
Iは四点プローブ測定装置により測定される供給源電流である]
により計算された。
【0107】
バルクの銀の伝導率の百分率として表された伝導率(%バルク銀)は以下の式:
伝導率 = 100 x σ/σ
(Ag) = 100/[SER
*h
* σ
(Ag))] x 10
5
[式中、
σはS/cmで表される層の比伝導率である;
SERはΩ/□で表される層の表面抵抗である;
hはμmで表される乾燥した層の厚さである;そして
σ
(Ag)は6.3 10
5S/cmに等しい銀の比伝導率である]
に従って計算された。
【0108】
実施例1
銀のペースト SP−01の調製
78.0gの銀酸化物を、275.0gのペンタン酸および401.0gの2−ピロリドンを含む1Lの反応器に、撹拌しながら、緩徐に添加した。混合物の温度は25℃に維持された。
【0109】
銀酸化物の添加完了後、懸濁物を25℃で1晩撹拌した。
【0110】
次に、懸濁物に1.5時間の時間をかけて300.0gのN,N−ジエチルヒドロキシルアミンを添加した。反応混合物の温度は25℃に維持された。すべての還元剤が添加された時、反応混合物を更に1時間撹拌しながら、25℃に維持した。
【0111】
次に反応混合物を沈殿容器に供給し、そこで撹拌せずに1晩維持した。上澄み液を注意して沈殿物から除去した。
【0112】
得られた沈殿物を、2回はDowanol PM
TM(547g)を使用し、そして2回はbutylcellosolve
TM(547g)を使用して、4回洗浄した。各洗浄工程において、沈殿物に溶媒を添加し、生成された懸濁物を300rpmで0.5時間撹拌した。次に、更に1時間、懸濁物を撹拌しないで維持し、上澄みを注意して除去した。
【0113】
butylcellosolve
TMを使用する最後の工程後、沈殿物を0.5時間、3000rpmでRousselet Robatel(フランス)からの遠心分離デカンター中で遠心分離した。これ
が70重量%の銀を含む銀のペーストSP−01をもたらした。
【0114】
実施例2
銀のインクSI−01の調製
反応容器中に、12.71gのKlucel J
TM、1.52のbutylcellosolve
TM/Dowanol PM
TM(90/10)混合物、0.21gのDapro
DF 6800および2.02gのジエチレングリコールの混合物を25分間撹拌した。
【0115】
次に1.23のDisperbyk 2025を撹拌しながら混合物に添加した。
【0116】
次に82.3gの銀のペーストSP−01を添加し、そして生成された混合物を更に1時間撹拌した。
【0117】
実施例3
銀のペーストSP−02〜SP−13の調製
銀のペーストSP−02〜SP−13をSP−01と同様に、しかし表1に示された酸および/または溶媒を使用して調製した。Agバルク%として表されるすべての銀ペーストの伝導率は前記のように測定された。これらの伝導率はまた、表1に示される。
【0118】
【表1】
【0119】
表1から、2−ピロリドン、δ−バレロラクタムまたはε−カプロラクタムと組み合わせてペンタン酸、ヘキサン酸またはヘプタン酸を使用して調製された銀ペーストの伝導率は、他の溶媒が使用される他の銀ペーストと比較すると、ずっと高いことが明白である。
【0120】
実施例3
本実施例においては、すべて2−ピロリドンと組み合わせた、異なるカルボン酸が使用される。
【0121】
ペーストは表2に示される酸を使用して、SP−01に対して実施例1に記載されたように調製された。しかし、銀/酸のモル比は、モノカルボン酸(SP−10〜SP−19)に対して4であるのに対して、ジカルボン酸(SP−20〜SP−24)に対しては2であった。SP−17、SP−18およびSP−19に対して、調製中、分散物の高すぎる粘度を回避するために、カルボン酸の濃度は低下された(銀/酸のモル比は、他のペーストに対する4の代わりに1であった)。更に、反応混合物の温度は、SP−18およびSP−19に対して、25℃からそれぞれ50および65℃に上昇させた。伝導率は前記
の通りに測定された(表2)。
【0122】
【表2】
【0123】
表2から、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸またはオクタン酸を使用して調製された銀ペーストは、他のカルボン酸を使用して調製されたペーストと比較されてずっと高い伝導率をもつことが明白である。
【0124】
実施例4
この実施例においては、常に2−ピロリドンと組み合わせて、異なる補助溶媒が試験された。分散物は実施例1に記載のように調製され、使用された溶媒は表3にリストにされている。伝導率は前記のように測定される(表3)。
【0125】
【表3】
【0126】
表3から、溶媒の混合物は、2−ピロリドンが存在する限り、本発明の方法に使用することができることが明白である。
【0127】
実施例5
本実施例において、金属ナノ粒子の分散物は米国特許第7931941号明細書(背景技術参照)に開示された方法に従って調製された。
【0128】
銀ペーストSP−39の調製
第1の溶液を50gのH
20、2.1gのNH
4OH(30重量%のNH
3)、7.8gのヘプタン酸および3gの50重量%のヒドラジン水溶液を添加することにより調製した。第2の溶液を34.3gの水に10gのAgN0
3を添加することにより調製した。
【0129】
第2の溶液を窒素下で撹拌しながら第1の溶液に添加した。生成された生成物は凝集し、静置された。過剰な水をデカント除去した。硬い銀のペーストを得た。
【0130】
銀のペーストをそのまま塗布することは不可能であったので、10gのペーストを0.23gのNH
4OH(25重量%のNH
3)と混合して、塗装可能な銀のペーストを得た。そのペーストを20μの湿った塗膜の厚さで下地のポリエステル上に塗装した。
【0131】
銀ペーストSP−40の調製
第1の溶液を、150gのH
20、7.56gのNH
4OH(25重量%のNH
3)、23.4gのオクタン酸および7.03gの65重量%のヒドラジン水溶液を添加することにより調製した。
【0132】
第2の溶液を103gの水に53.91gの、6NのAgN0
3水溶液(6M)を添加することにより調製した。
【0133】
第2の溶液を窒素下で撹拌しながら第1の溶液に添加した。生成された生成物は凝集し、静置された。過剰な水をデカントして除去した。硬い銀のペーストを得た。
【0134】
銀ペーストをそのまま塗布することは不可能であったので、10gのペーストを0.23gのNH
4OH(25重量%NH
3)と混合して、塗装可能な銀ペーストを得た。ペーストを20μの湿った塗膜の厚さを伴って下地のポリエステル上に塗装した。
【0135】
銀の塗膜の伝導率を前記のように測定し、結果は表4に示される。
【0136】
【表4】
【0137】
得られた銀ペーストが非常に硬かったので、米国特許第793194号明細書に開示された方法で得られた銀ペーストは、それを使用して塗装または印刷することが非常に困難であった。更に、その銀ペーストを使用して得られた銀塗膜は非常に低い伝導率を有した。