【文献】
Antimicrob. Agents Chemother.,1995年,Vol.39,p.707-713
【文献】
Eur. Polym. J.,1993年,Vol.29,p.715-720
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機溶媒が、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、トルエン、ピリジン、イソブチロニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールからなる群より選択される1つ以上の溶媒を含む請求項7に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
様々な出版物、記事及び特許が背景として引用又は説明され、本明細書全体を通して、その全内容が参照により本明細書に組み込まれているものとする。本発明の明細書に含まれている文書、作用、材料、装置、物品などについての説明は、本発明の内容を提供するためのものである。このような説明は、開示又は権利請求された任意の発明に関する従来技術の任意の又は全ての主題を容認するものではない。
【0018】
他に定義されている場合を除き、本明細書で使用されている全ての専門用語及び科学用語は、本発明に関連する当業者が一般的に理解しているものと同様の意味を有する。それ以外は、本明細書で使用されている特定の用語は、本明細書で設定された意味を有する。本明細書で引用された特許、公開された特許出願及び出版物は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれているものとする。明細書及び特許請求の範囲で使用されている単数形「a」、「an」、及び「the」は、特に明示した場合を除き、複数の場合も含む。
【0019】
本明細書で使用される「脂肪族」や「脂肪族基」は、飽和もしくは不飽和線形(すなわち、直鎖)又は分枝炭化水素基及び非芳香族環(すなわち、脂環式)を意味する。脂肪族は、炭素原子が単一結合により結合される(アルカン又はシクロアルカン)ことを意味する飽和であってもよく、炭素原子が二重結合(アルケン又はシクロアルケン)又は三重結合(アルキン又はシクロアルキン)により結合されることを意味する不飽和であってもよい。脂肪族基は、アルキル、アルケニル、アルキニル及び脂環式基を含む。
【0020】
他に注記されている場合を除き、本明細書で使用されている「アルキル」は少なくとも一つの炭素原子を含む飽和の、非分枝又は分枝の炭化水素鎖を意味する。アルキルは例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、ノニル、イソプロピル、イソブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、2-メチルヘキシル、2,3-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキル基は、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。
【0021】
他に注記されている場合を除き、本明細書で使用されている「アルケニル」は、一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する不飽和の、非分枝又は分枝の炭化水素鎖を意味する。アルケニルは、例えばエテニル、プロぺニル、ブテニル、ペンテニル、へキセニル、2-メチル-2-ペンテニル、2-エチル-2-ヘキセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルケニル基は、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。
【0022】
他に注記されている場合を除き、本明細書で使用されている「アルキニル」は、一つ以上の炭素-炭素三重結合を有する不飽和の、非分枝又は分枝の炭化水素鎖を意味する。アルキニルは、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、へキシニル、3-メチル-1-ブチニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
他に注記されている場合を除き、「アルコキシ」は、一般式-ORを有する有機単位を意味し、Rは脂肪族(すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル、脂環式)である。アルコキシ基は、例えばメトキシ及びエトキシとしてよい。アルコキシ基のその他の例として、プロポキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ及びtert-ブトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
他に注記されている場合を除き、「脂環式」は、少なくとも3個の炭素原子を含む非芳香族環状炭化水素環を意味する。脂環式基は、3-12個の炭素原子を有することが好適であり、環状構造に3-8個の炭素原子を有することがより好適であり、環状構造に5-6個の炭素原子を有することが最も好適である。脂環式基は、飽和(シクロアルカン)であっても、少なくとも2個の炭素原子が二重結合(シクロアルケン)又は三重結合(シクロアルキン)で結合されていることを意味する不飽和であってもよい。脂環式基は、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。
【0025】
本明細書で使用されている「複素環式」及び「複素環」は、脂環式基、すなわち少なくとも3個の炭素原子を有する飽和又は不飽和環状炭化水素環を意味し、環状炭化水素環の一つ以上の炭素原子は、酸素、窒素又は硫黄などの複素原子と置換されている。複素環は、複素原子に置換されている炭素原子の少なくとも一つを持つ環位置に、3-12個の炭素原子を有することが好適であり、環内の1-2個の炭素原子が複素原子で置換されている5-6個の炭素原子を有することがより好適である。複素環は、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。
【0026】
本明細書で使用されている「アリール」は、少なくとも5個の炭素原子を環位置に有する、芳香単環炭化水素基又は芳香多環炭化水素基を意味する。アリール基として、フェニル、ナフタレニルが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基は、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基に置換されていてもよく、上記置換は、環上のいずれの位置であってもよい。
【0027】
本明細書で使用されている「ヘテロアリール」及び「ヘテロアリール環」は、少なくとも5個の炭素原子を環位置に持つ単環又は多環の芳香環系を意味し、一つ以上の炭素原子は、窒素、酸素及び硫黄などの複素原子に置換されている。ヘテロアリール環は、複素原子と置換されている炭素原子の少なくとも一つを持つ環位置に、5-12個の炭素原子を有することが好適であり、複素原子と置換されている環に1-3個の、より好ましくは1-2個の上記の炭素原子を持つ5-6個の炭素原子を有することが、更に好適である。複素環は、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。ヘテロアリール環として、イミダゾリル、ピリミジニル、テトラゾリル、チエニル、ピリジル、ピロリル、ピラゾリル、オキサゾリル、トリアゾリル、ベンゾフリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用されている「アミン」の意味は当業者により周知であり、広義には、非共有電子対を持つ窒素原子を含む化合物を意味する。「アミン」は、脂肪族アミン(アルキルアミン、アレニルアミン、アルキニルアミン及び脂環式アミンを含む)、複素環アミン、アリールアミン、ヘテロアリールアミン、ポリアミン、塩基性アミノ酸、アミノ糖を含むものとする。好適な脂肪族アミンとして、アルキルアミンが挙げられる。アミンは、一つ以上の適切な置換基で置換されている。
【0029】
本明細書で使用されている「アルキルアミン」は、アミンを意味し、窒素原子は、メチル又はエチルなど、一つ以上のアルキル基と置換されている。アルキルアミンは、アミンが一つのアルキル基と置換されていることを意味する第一級アミンであってもよく、二つのアルキル基と置換されていることを意味する第二級アミンであってもよく、三つのアルキル基と置換されていることを意味する第三級アミンであってもよい。第二級又は第三級アミンの複数のアルキル基は、同じであっても異なっていてもよい。アルキルアミンの例として、ジメチルアミン(2個のメチル基で置換されている窒素原子を有する第二級アミン)、メチルエチルアミン(メチル基とエチル基で置換されている窒素原子を有する第二級アミン)、又はトリエチルアミン(3個のエチル基で置換されている窒素原子を有する第三級アミン)などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0030】
アルキルアミンは、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。置換アルキルアミンは、アルキルアミンの一つ以上のアルキル基が、一つ以上の適切な置換基で置換されていることを意味する。
【0031】
本明細書で使用されている「アルケニルアミン」は、窒素原子がエテニルやプロぺニルなど、一つ以上のアルケニル基で置換されているアミンを意味する。アルケニルアミンは、第一級アミン、第二級アミン、又は第三級アミンであればよい。第二級又は第三級アルケニルアミンの複数のアルケニル基は、同じでも異なっていてもよい。アルケニルアミンは、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。例えば、アルケニルアミンはメチルジアリルアミンであってもよいが、これに限定されない。
【0032】
本明細書で使用されている「アルキニルアミン」は、窒素原子がエチニルやプロピニルなど、一つ以上のアルキニル基で置換されているアミンを意味する。アルキニルアミンは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンであればよい。第二級又は第三級アルキニルアミンの複数のアルキニル基は、同じでも異なっていてもよい。アルキニルアミンは、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキニルアミンは、N-メチル-ジ(2-プロピニル)アミン又は2-プロピン-1-アミンであってもよいが、これに限定されない。
【0033】
本明細書で使用されている「複素環アミン」は、炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されている複素環を意味する。複素環アミンは、炭化水素環の1-2個の炭素原子が窒素原子と置換されていることが好適である。一つ以上の窒素原子を含む複素環の任意の位置で、複素環アミンは、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。複素環アミンは、炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子と置換されていることに加えて、一つ以上の炭素原子が酸素や硫黄など他の複素原子と置換されていてもよい。複素環アミンとしては例えばピペラジン、ピロリジン、モルホリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書で使用されている「アリールアミン」は、窒素原子が、一つ以上のフェニルなどのアリール基で置換されているアミンを意味する。アリールアミンの窒素原子は、1、2又は3個のアリール基での置換が可能である。アリールアミンは、窒素原子が、少なくとも一つのアリール基で置換され、アルキル基など一つ以上の脂肪族基で任意に置換されているアミン類を含むものとする。アリールアミンは、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。置換アリールアミンは、アリールアミンの一つ以上のアリール基が、また特定の実施態様では、アルキル基などの一つ以上の脂環式が、一つ以上の適正な置換基に置換されていることを意味する。例えば、アリールアミンとして、アニリン、N-メチルアニリン、4-メチルアニリン、及び4-ヒドロキシルアニリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書で使用されている「ヘテロアリールアミン」は、芳香環系の少なくとも一つの炭素原子が、窒素原子で置換されているヘテロアリール環を意味する。ヘテロアリールアミンは、芳香環の1-3個の炭素原子が窒素原子で置換されていることが好適であり、1-2個の炭素原子が窒素原子で置換されていることがより好適である。ヘテロアリールアミンは、無置換であってもよく、ヘテロアリール環の任意の位置で、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。ヘテロアリールアミンは、炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されていることに加え、一つ以上の炭素原子が酸素や硫黄などの他の複素原子で置換されていてもよい。ヘテロアリールアミンとして、ピリジン、ピロール、ピリミジン、イミダゾール、キナゾリン、プリン、ピラゾール、及びトリアゾールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用されている「脂環式アミン」は、窒素原子が、一つ以上のシクロヘキシルなどの脂環式基で置換されているアミンを意味する。脂環式アミンの窒素原子は、1、2又は3個の脂環式基で置換されていてもよい。脂環式アミンは、窒素原子が少なくとも一つの脂環式基とアルキル基などの少なくとも他の脂肪族基とで置換されているアミン類を包含するものとする。脂環式アミンは、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。置換脂環式アミンは、その一つ以上の脂環式基又はアルキル基が、一つ以上の適切な置換基で置換されていることを意味する。脂環式アミンとしては、シクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、及び4-メチルシクロヘキシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用されている「ポリアミン」は、非共有電子対を含む一つ以上の窒素原子を有する非環状アミンを意味する。「ポリアミン」は、「ジアミン」を包含するものとする。本明細書で使用されている「ジアミン」は、非共有電子対を含む2個の窒素原子を有するポリアミンである。ポリアミンは、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。ポリアミンとしては、ジアミンを含み、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、へキサメチレンジアミン、スペルミジン及びスペルミンが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0038】
アミノ酸は、アミノ、グアニジノ、イミノなど一つ以上のアルカリラジカル、又は炭素1以外の任意の炭素原子に結合されたヒドラジンラジカルを有する有機酸である。アミノ酸は、天然であっても非天然であってもよい。天然アミノ酸の大半は、「L型」アミノ酸だが、少数の「D型」アミノ酸も存在する。本明細書で使用されている「塩基性アミノ酸」は、塩基として作用可能な、すなわちプロトンを受容できる付加的なアルカリラジカルを有するアミノ酸を意味する。塩基性アミノ酸として、それぞれL型とD型の双方を有するアルギニン及びリジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用されている「アミノ糖」は、アミノ(-NH
2)基と置換された一つ以上の水酸基を有する単糖単位を意味する。アミノ糖のアミノ基は、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。アミノ糖として、グルコサミン及びN-メチルグルカミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用されている「水酸化四級アンモニウム」は、一般構造[NR
4+][OH
-]を持つ正の帯電イオンを意味し、Rはアルキル基を示す。水酸化四級アンモニウムは塩であり、カチオンは四級アンモニウム(NR
4+)イオン、陰イオンは水酸化イオン(OH
-)である。本明細書で使用されている「四級アンモニウムイオン」、「四級アンモニウムカチオン」、「四級アンモニウム」は、一般構造[NR
4+]を持つ、正の帯電イオンであり、Rはアルキル基を示す。四級アンモニウムイオンの4個のアルキル基は同じでも異なっていてもよい。アルキル基は、無置換であってもよく、一つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。水酸化四級アンモニウムとして、水酸化コリン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ジエチルジメチルアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。四級アンモニウムとしては、コリン、テトラエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
特定基がアミン、アルキル、脂肪族アミン(例:アルキルアミン、アルケニルアミン、アルキニルアミン、脂環式アミン)、複素環アミン、アリールアミン、ヘテロアリールアミン、ポリアミン、又はアミノ糖などで「置換」されるとき、この基は一つ以上の置換基を持つことができ、好適には1-5個の置換基、より好適には1-3個、最も好適には1-2個の置換基を持つことができる。基が一つ以上の置換基で置換されるとき、これらの置換基は同じでも、異なっていてもよい。特定基が置換可能な適正な置換基の代表的なものとしてヒドロキシル(−OH)、アルキル、アミノ(−NH
2)及びカルボキシル(−COOH)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な塩」という表現は、哺乳類に使用される薬剤として安全かつ効果的であり、所望の生物活性を有する、対象となる化合物の塩を意味する。薬学的に許容可能な塩は、規定化合物に存在する塩基性基の塩である塩基付加塩、及び規定化合物に存在する酸性基の塩である酸付加塩を含む。酸性基又は塩基性基は、有機であっても無機であってもよい。薬学的に許容可能な塩の検討については、参照により本明細書に組み込まれたBERGE et al, 66J. PHARM. SCI. 1-19 (1977)を見よ。
【0043】
本発明にかかる薬学的に許容可能な塩は、ニトロキソリンの塩基付加塩であることが好適である。塩基付加塩は、無機塩基及び有機塩基により形成された塩を含む。本明細書で使用される「無機塩基」の意味は、当業者によって通常理解されるもので、広義には、プロトン受容体として作用する無機化合物を意味する。本明細書で使用される「有機塩基」の意味もまた、当業者によって通常理解されるものであり、プロトン受容体として作用する有機化合物を意味する。
【0044】
特に注記されている場合を除き、「ニトロキソリン」は、以下の化学構造を有する化合物を意味する。
【化1】
【0045】
「ニトロキソリンの塩基付加塩」は、以下の化学構造を有する化合物を意味する。
【化2】
ここでX
+は、金属カチオン、アミンカチオン、アンモニウムカチオン(NH
4+)、又は四級アンモニウムカチオンなどのカチオンを示す。
【0046】
本明細書で使用されている「医薬組成物」は、治療上有効な量の活性医薬成分と薬学的に許容可能な担体とを含む製品又は組成物を包含するものとする。
【0047】
本明細書で使用されている「治療上有効な量」について、有効な医薬成分量という観点から、研究者、獣医、医者、又は他の臨床医などが求める動物又は人間の組織系における生物学的又は医薬的反応を引き出す活性医薬成分の量を意味し、上記反応には、治療される疾病、障害又は身体異常の症状緩和が含まれる。特定の実施態様において「治療上有効な量」は、疾病、障害、身体異常の発症を防いだり、遅らせるなど、予防的効果が得られる量を意味する。本発明の実施態様に係る治療上有効な活性医薬成分量を決定する方法は知られている。更に、当業者も理解しているように、任意の特定対象の規定用量レベルは、年齢、体重、健康状態、性別、食習慣、投与タイミング、投与ルート、排出率、これらを組み合わせて投与される治療薬剤、ならびに治療対象となる疾病、障害、身体異常の重症度を含む様々な要因によって変化する。
【0048】
一般的な態様において、本発明は、ニトロキソリンの塩基付加塩に関する。ニトロキソリンの塩基付加塩は、ニトロキソリンと塩基との組み合わせにより調製される。本発明の実施態様によれば、塩基は無機塩基であっても有機塩基であってもよい。
【0049】
塩基付加塩の形成に使用可能な無機塩基として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物、リチウムアミド、ナトリウムアミドなどの金属アミド、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸塩、水酸化アンモニウム及び炭酸アンモニウムなどのアンモニウム塩基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本発明の好適な実施態様において、無機塩基は、金属水酸化物と水酸化アンモニウムから選択される。好適な金属水酸化物として、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムが挙げられる。
【0051】
塩基付加塩の形成に使用可能な有機塩基として、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、及びカリウムtert-ブトキシドを含むカリウムアルコキシド、水酸化コリンなど水酸化四級アンモニウムを含む、リチウム、ナトリウム、及びカリウムアルコキシドなどの金属アルコキシド;ならびに脂肪族アミン(例;アルキルアミン、アルケニルアミン、アルキニルアミン及び脂環式アミン)、複素環アミン、アリールアミン、ヘテロアリールアミン、塩基性アミノ酸、アミノ糖、及びポリアミンなどを含み、これらに限定されないアミン類が挙げられる。好適な脂肪族アミン塩基としてはアルキルアミンが挙げられる。
【0052】
本発明の実施態様において、塩基は、四級アンモニウムイオンの一つ以上のアルキル基が任意に一つ以上の適正な置換基で置換されている水酸化四級アンモニウムであればよい。少なくとも一つのアルキル基が一つ以上のヒドロキシル基で置換されていることが好適である。本発明で使用可能な水酸化四級アンモニウムとして、例えば水酸化コリン、トリメチルエチルアンモニウム水酸化物、水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されることはなく、水酸化コリンが好適である。
【0053】
本発明の実施態様によれば、アルキルアミン塩基は置換されていても、無置換であってもよい。本発明において使用可能な無置換アルキルアミン塩基として、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、及びトリエチルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。置換アルキルアミン塩基は、一つ以上のヒドロキシル基で置換されていることが好適であり、また1-3個のヒドロキシル基で置換されていることが更に好適である。本発明において使用可能な置換アルキルアミン塩基として、2-(ジエチルアミノ)エタノール、N,N-ジメチルエタノールアミン(デアノール)、トロメタミン、エタノールアミン、及びジオールアミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
本発明の好ましい実施態様において、アルキルアミン塩基は、ジエチルアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、N,N-ジメチルエタノールアミン、トロメタミン、エタノールアミン、及びジオールアミンから選択される。
【0055】
本発明の実施態様において、ニトロキソリンの塩基付加塩の形成に使用可能なアミン塩基は複素環アミンであってもよい。本発明での使用に適した複素環アミン塩基として、ピペラジン、ピロリドン、及びモルホリンが挙げられるが、これらに限定されない。複素環アミンの一つ以上の窒素原子は、一つ以上の置換基で置換されていてもよい。好適な置換基として、メチルやエチルなどのアルキル、ヒドロキシル基で置換されたメチルやエチルなどの置換アルキルなどが挙げられる。本発明での使用に適した置換複素環アミン塩基として、1-(2-ヒドロキシルエチル)ピロリジン及び4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明の好ましい実施態様において、複素環アミン塩基は、ピペラジン、1-(2-ヒドロキシルエチル)ピロリジン及び4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリンから選択される。
【0057】
本発明の実施態様において、アミン塩基を、塩基性アミノ酸とすることも可能である。塩基性アミノ酸として、アルギニン及びリジンが挙げられるが、これらに限定されない。好適な実施態様において、塩基性アミノ酸はリジンである。
【0058】
本発明の他の実施態様において、アミン塩基はアミノ糖であってよく、N-メチルグルカミンやポリアミン、エチレンジアミンが好適である。
【0059】
本発明の他の実施態様において、ニトロキソリンの塩基付加塩の形成に使用可能なアミン塩基は、アニリンなどのアリールアミン、ピリジンなどのヘテロアリールアミン、シクロヘキシルなどの脂環式アミン、メチルジアリルアミンなどのアルケニルアミン、2-プロピン-1-アミンなどのアルキニルアミンであればよい。本開示において、任意のアリールアミン、ヘテロアリールアミン、脂環式アミン、アルケニルアミン、又はアルキニルアミンを使用することができる。
【0060】
本発明の実施態様において、ニトロキソリンの塩基付加塩は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、四級アンモニウム塩又はアミン塩であればよい。
【0061】
本明細書で使用される「アルカリ金属塩」は、化合物の塩を意味し、化合物の塩のカチオンはアルカリ金属である。本発明に係る好適なニトロキソリンアルカリ金属塩としては、ニトロキソリンナトリウム塩及びニトロキソリンカリウム塩が挙げられる。
【0062】
本明細書で使用される「アンモニウム塩」は、化合物の塩を意味し、化合物の塩のカチオンはアンモニウム(NH
4+)である。ニトロキソリン塩の場合、アンモニウム塩はニトロキソリンアンモニウム塩である。
【0063】
本明細書で使用される「四級アンモニウム塩」は、化合物の塩を意味し、化合物の塩のカチオンは四級アンモニウムである。本発明に係る好適なニトロキソリン四級アンモニウム塩としては、ニトロキソリンコリン塩が挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される「アミン塩」は、化合物の塩を意味し、化合物の塩のカチオンはアミンである。本発明の実施態様において、ニトロキソリンアミン塩は、ニトロキソリンアルキルアミン塩、ニトロキソリン複素環アミン塩、ニトロキソリンアリールアミン塩、ニトロキソリンヘテロアリールアミン塩、ニトロキソリンアミノ酸塩、ニトロキソリンポリアミン塩又はニトロキソリンアミノ糖塩であればよい。本発明に係るニトロキソリンのアミン塩の他の例としては、ニトロキソリンアルケニルアミン塩、ニトロキソリンアルキニルアミン塩、ニトロキソリン脂環式アミン塩が挙げられる。
【0065】
本発明の特に好ましい実施態様において、ニトロキソリンアミン塩は、ニトロキソリンジエチルアミン塩、ニトロキソリンエチレンジアミン塩、ニトロキソリンピペラジン塩、ニトロキソリンL-アルギニン塩、ニトロキソリン1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン塩、ニトロキソリン2-ジエチルアミノエタノール塩、ニトロキソリン4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン塩、ニトロキソリンN,N-ジメチルエタノールアミン塩、ニトロキソリンリジン塩、ニトロキソリントロメタミン塩、ニトロキソリンN-メチルグルカミン塩、ニトロキソリンエタノールアミン塩又はニトロキソリンジオールアミン塩である。
【0066】
本発明の他の好ましい実施態様において、ニトロキソリンの塩基付加塩は、以下から選択される化学構造を有する。
【化3】
【0067】
別の一般的な態様において、本発明は、ニトロキソリンの塩基付加塩を提供し、該塩は、ニトロキソリンと塩基との混合によって得られる。本開示において、有機塩基、無機塩基を含む、任意の塩基を使用することができる。好適には、塩基は、アミン塩基、金属水酸化物、水酸化アンモニウム又は水酸化四級アンモニウムである。
【0068】
本発明の実施態様によれば、ニトロキソリンの塩基付加塩は、ニトロキソリンと比較して、例えばpHが約4.5〜8の範囲での生理的条件において、溶解度と安定性を向上させた。「溶解度」と「可溶性」は、互換的に使用され、4.5と8との間のpHの水媒体での生理的条件における本発明の化合物の溶解度を意味する。本明細書で使用されている「水媒体」は、水、及び水と他の成分との混合物を意味し、上記混合物は、少なくとも水の50重量%、好適には少なくとも70重量%、最も好適には少なくとも90重量%を含むことが前提である。ある実施態様において、ニトロキソリンの塩基付加塩を参照して使用する際、「安定性」との用語は、昇華する傾向が低下することを意味する。本発明に係るニトロキソリンの塩基付加塩は、対象の尿での薬物排泄も増加させた。
【0069】
本開示を考慮して、本技術で知られる任意の方法を、本発明に係るニトロキソリンの塩基付加塩の溶解度を決定するため使用することができる。例えば、定義されたpHでの既知量の水媒体への既知の質量の化合物の添加を伴う平衡溶解度方法によって溶解度を決めることができる。平衡状態が得られるまで溶液を(例えば、撹拌によって)かき混ぜる。既知の分析方法(例:分光測光)により、定性的又は定量的に溶解度を決定することができる。化合物の溶解度を決定する他の方法は、「Physiochemical Properties of Prostaglandin F2α(Tromethamine Salt):Solubility Behavior, Surface Properties, and Ionization Constants(プロスタグランジンF2α(トロメタミン塩)の物理化学的性状:溶解度挙動、表面プロパティ及びイオン化定数)」:Journal of Pharmaceutical Sciences, 1973,62:pp.1680-5;「General treatment of pH solubility profiles of weak acids and bases. II. Evaluation of thermodynamic parameters from the temperature dependence of solubility profiles applied to a zwitterionic compound(弱酸及び塩基のpH溶解度プロファイルの一般療法II. 双極性イオン化合物に適用された溶解度プロファイルの温度依存性からの熱力学パラメータの評価)」:International Journal of Pharmaceutics, 1985,25:pp.135-145;及び米国特許No.7723119に記載されている。これらは、本明細書に参照により組み込まれる。
【0070】
本発明の実施態様によれば、溶解度が向上したニトロキソリンの塩基付加塩は、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5又は8.0のpHなど、4.5と8との間のpH値の水媒体において、少なくとも0.1 mg/mL、好適には0.1-1.0 mg/mL、より好適には1-10 mg/mL、より好適には30-100 mg/mL、より好適には>100 mg/mL、更に好適には、>1000 mg/mL の溶解度を有する。好ましい実施態様では、溶解度が向上したニトロキソリンの塩基付加塩は、水中で、少なくとも0.1 mg/mL、より好適には0.1-1.0 mg/mL、より好適には1-10 mg/mL、より好適には30-100 mg/mL, より好適には>100 mg/mL、更により好適には>1000 mg/mLの溶解度を有する。
【0071】
他の一般的な態様において、本発明は、ニトロキソリンの塩基付加塩の製造方法を提供する。本発明の実施態様によれば、ニトロキソリンの塩基付加塩の製造方法は、溶媒中でニトロキソリンと塩基とを混合して塩基付加塩を取得すること、及び溶媒からニトロキソリンの塩基付加塩を回収することを含む。
【0072】
本開示を考慮して、当業者に知られている任意の塩基を、本発明に係るニトロキソリンの塩基付加塩の製造方法で使用することができる。好適な塩基としては、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、水酸化四級アンモニウム、アミン塩基が挙げられる。特に好適な塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化コリン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン、L-アルギニン、1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、2-(ヒドロキシエチル)-モルホリン、N,N-ジメチルエタノールアミン、リジン、トロメタミン、N-メチルグルカミン、エタノールアミン、ジオールアミンが挙げられる。
【0073】
本発明の実施態様によれば、ニトロキソリンと塩基が溶媒中で混合される。この溶媒は、有機溶媒又は有機溶媒の混合液であることが好適である。本発明の方法での使用に適した有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、ジクロロメタンなどのハロゲン化溶媒、イソブチロニトリル、アセトニトリルなどのニトリル、トルエン、ピリジンなどの芳香族溶媒、テトラヒドロフラン及びその混合などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施態様によれば、溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール及びエタノールから成る群から選択される一つ以上の溶媒を含む。
【0074】
本発明の実施態様によれば、ニトロキソリンに対して約1.0-2.0モル当量の塩基が、ニトロキソリンの塩基付加塩の製造方法で使用される。例えば、ニトロキソリンに対して1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、18、1.9又は2.0モル当量の塩基を使用することができる。
【0075】
本開示を考慮して本技術で知られる任意の方法により、ニトロキソリンと塩基とを溶媒中で混合することができる。ニトロキソリンと塩基を、任意の順序で溶媒又は溶媒混合液に添加することができる。例えば、最初にニトロキソリンを溶媒に添加した後、塩基を溶媒に添加してもよく、最初に塩基を添加した後、ニトロキソリンを溶媒に添加してよく、又は塩基とニトロキソリンを同時に溶媒に添加してもよい。ニトロキソリン、塩基及び溶媒の混合物は、例えば撹拌棒を使用して反応過程で連続的に撹拌してもよく、この混合物を加熱還流してもよい。
【0076】
ニトロキソリンと塩基とを、数時間又は終夜、反応完了まで反応させる。上記反応の進行状況は、薄層クロマトグラフィ(TLC)などの、本開示を考慮して本技術で知られる任意の方法によりモニタすることができる。典型的には、窒素雰囲気下において、例えば18-25℃の室温又は周囲温度で反応を行う。ただし、使用される特定の塩基や、ニトロキソリン及び塩基の量によって温度を変えることができ、当業者の判断範囲内において、適正な反応時間が決定され、反応が完了したときがモニタされる。
【0077】
本発明の実施態様によれば、ニトロキソリンの塩基付加塩を、本開示を考慮して本技術で知られる任意の方法により、溶媒から回収することができる。例えば、ろ過や結晶化など溶媒を真空状態で除去することで塩基付加塩を回収することができる。好ましい実施態様によれば、ニトロキソリンの塩基付加塩は、適正な温度で結晶化することで、溶媒から回収する。
【0078】
塩基付加塩の分析は、本開示を考慮して本技術で知られる任意の分析方法、例えば、融点、
1H−NMR、質量スペクトロメトリ(MS)や液体クロマトグラフィ質量スペクトロメトリ(LCMS)及び示差走査熱量測定(DSC)によって可能であるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明は、新規な結晶形を有するニトロキソリンコリン塩を提供する。本発明の実施態様において、前記結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、精度±0.2θの回折角(2θ):9.96、12.12、17.72及び20.08にピークを有する。
図4及び
図8とを参照すること。本発明のニトロキソリンコリン塩のその他のピーク特性は、精度±0.2θの回折角(2θ):7.64、13.06、16.6、18.5、22.24、23.06、23.62、25.52及び27.06である。
【0080】
更に別の一般的な態様において、本発明は、治療上有効な量の本発明のニトロキソリンの塩基付加塩と一つ以上の薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物、及び該医薬組成物の製造方法に関する。医薬組成物は、本発明に係り、本明細書で説明されている任意のニトロキソリンの塩基付加塩を含んでいてもよい。
【0081】
本発明に係る医薬組成物は、注射(静脈)、粘膜、経口(固体薬、液体薬)、吸入、眼、直腸、局所、又は非経口(注入、注射、移植、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内)投与を含む、任意の投与形式で処方可能である。経口投与のための固体製剤として、粉末、カプセル、カプレット、ジェルキャップ、タブレットなどが挙げられるが、これらに限定されない。経口又は粘膜投与のための液状製剤として、懸濁液、乳状液、エリキシル剤、溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。局所製剤として、乳状液、ゲル、軟膏、クリーム、パッチ、ペースト、泡、ローション、液滴又はしょう液などが挙げられるが、これらに限定されない。非経口投与のための製剤例として、注射剤、薬学的に許容可能な注入用担体に溶解又は懸濁可能なドライ製品、注入可能な懸濁液、及び注入可能な乳状液が挙げられるが、これらに限定されない。他の適正な組成物として、点眼薬やその他の眼に関する薬品、鼻噴霧や吸入器などのエアゾール噴霧器、非経口投与に適した薬液形態、座薬及びトローチ剤などが挙げられる。
【0082】
好ましい実施態様において、医薬組成物は、注射により投与されるように処方される。
【0083】
本発明に係る医薬組成物は、薬剤製造業界で幅広く利用されている担体などの、薬学的に許容可能な担体を含む。薬学的に許容可能な担体は、非毒性であり、一種以上の結着剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース;可溶化剤、例えばポビドン、塩化セチルピリジニウム;酸性化剤、例えばアルギン酸;孔形成剤、例えばスクロース;滑沢剤、例えばフマル酸ステアリル;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;バインダー、懸濁化剤、乳化剤、希釈剤、充填剤、造粒剤、接着剤、崩壊剤、接着防止剤、流動促進剤、湿潤剤、ゲル化剤、緩衝剤、キレート剤、防腐剤、着色剤、風味剤、甘味料などを含んでいてもよい。薬学的に許容可能な担体は、投与形式に求められる製剤型に応じて、幅広い形態をとることができ、その量や型は、要求に応じて変化する。当業者は、本発明の医薬組成物に添加される適切な担体を、本開示を考慮して容易に決めることができる。
【0084】
ある実施態様において、本発明に係る医薬組成物は、徐放性組成物である。本明細書で使用される「徐放性」とは、活性医薬成分が医薬組成物から制御された速度で放出されることを意味し、活性成分の治療上有効な血中濃度が、長期間、例えば1-24時間、8-24時間、又は12-24時間にわたり維持される。
【0085】
本発明の実施態様によれば、本発明に係る医薬組成物の製造方法は、治療上有効な量のニトロキソリン塩基付加塩と、一つ以上の薬学的に許容可能な担体とを混合することを含む。ニトロキソリンの塩基付加塩と一つ以上の薬学的に許容可能な担体とを組み合わせるために、本開示を考慮して本技術で知られる任意の方法を使用できる。例えば、本発明に係る医薬組成物は、治療上有効な量のニトロキソリンの塩基付加塩を、従来の薬剤調合技術による一つ以上の薬学的に許容可能な担体と混合することで調製できる。上記薬剤調合技術としては、従来の混合、溶解、粒状化、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明に係るニトロキソリンの塩基付加塩の溶解度向上により、ニトロキソリンの処方が改良され、かつニトロキソリンの医薬組成物の製剤が改良された。特に、塩基付加塩の溶解度の向上により、上記ニトロキソリン塩を液体組成物として製剤可能となった。従って好ましい実施態様において、本発明に係る医薬組成物は、液体組成物である。特に好ましい実施態様において、医薬組成物は、注射投与を可能とするよう製剤化された液体組成物である。注射可能なニトロキソリン塩の製剤により、ニトロキソリンは、患者に対してその効果をより速く発揮することができる。
【0087】
本発明の他の一般的な態様は、それを必要とする対象における、疾病、障害又は身体異常の予防及び/又は治療のための、本発明の実施態様に係る医薬組成物の使用に関する。本発明の実施態様によれば、ニトロキソリンの塩基付加塩を含む医薬組成物を、ニトロキソリンが効果的と知られている対象の疾病、障害、又は身体異常を治療又は予防する方法に使用できる。
【0088】
本明細書で記載されている「対象」は、本発明の実施態様に係る医薬組成物又はニトロキソリンの塩基付加塩の処方がなされる又は既に処方されたことのある、任意の動物であり、哺乳類が好適であり、ヒトが最も好適である。本明細書で使用される「哺乳類」には、任意の哺乳動物が含まれる。哺乳類の例としては、雌牛、馬、羊、豚、猫、犬、マウス、ラット、兎、モルモット、猿、ヒトなどが挙げられ、ヒトが最も好適であるが、これらに限定されない。
【0089】
ある実施態様において、「治療」又は「治療行為」は、疾病、障害、又は、それらに起因すると識別できる少なくとも一つの症状の改善、予防、又は回復を意味する。他の実施態様において、「治療」又は「治療行為」は、哺乳類において、又は哺乳類により必ずしも識別できない、治療中の疾病や障害に関連する、少なくとも一つの測定可能な物理パラメータの改善、予防、又は回復を意味する。更に他の実施態様において、「治療」又は「治療行為」は、例えば識別可能な系の安定化など物理的に、又は物理パラメータの安定化など生理学的に、もしくは物理的かつ生理学的に、疾病や障害の進行を抑制又は遅延させることを意味する。他の実施態様において、「治療」又は「治療行為」は、疾病又は障害の発症を遅らせることを意味する。
【0090】
ある実施態様において、本発明の組成物は、予防手段として投与可能である。本明細書で使用される「予防」又は「予防行為」は、所定の疾病、障害又は身体異常をもたらすリスクの軽減を意味する。
【0091】
本発明の実施態様によれば、それを必要としている対象における疾病、障害又は身体異常を治療又は予防する方法は、本発明にかかる医薬組成物を上記対象に投与することを含む。本明細書で記載されているニトロキソリンの塩基付加塩を有する任意の医薬組成物は、本発明の方法で使用可能であり、上記対象に対する医薬組成物の任意の適切な投与方法を、本開示を考慮して使用することができる。
【0092】
本発明で使用される、治療上有効な量の化合物は、年齢、食習慣、健康など、特定の対象、症状の重症度、合併症やタイプ、治療又は予防する疾病、障害、もしくは身体異常、使用される製剤など、要因に応じて異なっていてよいことについて当業者は理解するであろう。当業者は、本開示を考慮して対象から所望の生物学的又は医薬的反応を引き出すため、対象に投与する化合物の治療的に有効な量を容易に決定することができる。
【0093】
ニトロキソリンが有効であることが知られている任意の疾病、障害、身体異常を、本発明の方法で治療又は予防することができる。このような疾病、障害、身体異常の例としては、尿路感染症、及び、腫瘍、癌などの血管新生に伴う疾病が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施態様において、本発明の方法は、血管新生又は癌の増殖及び侵襲の抑制に利用できる。
【0094】
本明細書で使用されている「尿路感染症」は、腎臓、尿管、尿道、膀胱など、尿路系の任意の部分の感染を意味する。典型的には、尿路感染症は、膀胱や尿道など、尿路系の下部に関する。尿路感染症には、膀胱炎(膀胱感染)、腎盂炎(片側又は両側の腎臓感染)及び尿道炎(尿道感染)が含まれる。尿路感染症は、
大腸菌属、ブドウ球菌属、クレブシエラ属、プロテウス属、シュードモナス属、エンテロバクター属、ウィルス又は菌類からの細菌種により引き起こされる。尿路感染症は、一般的には、
大腸菌により引き起こされる。
【0095】
癌は、通常の制御がきかなくなることに起因する制御不能の細胞の増殖であり、異常成長、分化の欠乏、局部組織の侵襲、そしてしばしば転移(癌腫)に至る。腫瘍は、細胞又は組織が異常成長したもので、良性又は悪性となる。本発明の医薬組成物により治療可能な腫瘍又は癌として、日光性角化症、副腎癌、基底細胞癌、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、食道癌、頭頸部癌、ホジキン病、カポジ肉腫、咽頭癌、白血病、肺癌、肝臓癌、黒色腫、多発性骨髄腫、中皮腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎癌、直腸癌、胃癌、扁平上皮癌、甲状腺癌、精巣(睾丸)癌、甲状腺癌、子宮癌などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
本発明に係るニトロキソリンの塩基付加塩は、ニトロキソリンと比較して、尿排泄による予想外の増加が見られる。従って、本発明の好ましい実施態様において、治療又は予防すべき疾病、障害又は身体異常を尿路感染症である。
【0097】
本発明は、泌尿器保護効果を与える方法を提供する。本発明の実施態様によれば、上記方法は、本発明に係るニトロキソリンの塩基付加塩を含有する医薬組成物を、それを必要としている対象へ投与することを含む。好ましい実施態様において、泌尿器保護効果を付与する方法により、尿路感染症に対する保護効果が得られる。
【0098】
本発明の実施態様による以下の実施例は、本発明の特徴を更に示すものである。以下の実施例が本発明を制限することはなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲により決まることが理解されるべきである。
【実施例】
【0099】
特に記載がない限り、温度はセ氏(℃)で表現する。実験は室温又は環境温度で実施され、「rt」又は「RT」と省略される(一般に、約18-25℃の範囲)。溶媒の蒸発は、60℃未満の浴温で減圧下(典型的には4.5-30 mmHg)において、回転蒸発装置を使用して行われた。反応過程は、典型的には、薄層クロマトグラフィ(TLC)によってモニタされた。融点は補正されない。製品から、十分な1H−NMR及び/又は微量分析データが得られた。以下の従来の略語もまた、実施例全体を通して使用される。L(リットル)、mL(ミリリットル)、mmol(ミリモル)、M(モル濃度、mol/L)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、min(分)、h (時間)、eq.(当量)、dd(両ダブレット)、d(片側ダブレット)、s(シングレット)、t(トリプレット)、m(多重)。
【0100】
特に規定されない限り、全ての溶媒及び試薬は、サプライヤーから調達され、精製されずに使用された。特に記載がない限り、窒素で覆われた状態で反応が実行された。化合物は、UVランプ(254nm)で可視化された。1HNMRスペクトルは、300 MHzにて300MHz NMRに記録された。
【0101】
実施例1から22には、様々な溶媒系での塩基又は酸試薬を使用してニトロキソリンを処理することで、様々なニトロキソリン塩を製造する方法が記載されている。例として、本発明の実施態様に係るニトロキソリンの新規な塩基付加塩を含む、ニトロキソリン塩の作製に使用可能な塩基と溶媒の実施例を表1に示すが、これらに限定されない。
【0102】
【表1】
【0103】
実施例1:ニトロキソリンHCl塩(APL−1071)の作製方法
4mL MeOHのニトロキソリン(0.2 g、1.05 mmol)の懸濁液に対して、1.3 eq. 36% HCl水溶液をゆっくりと添加した。オレンジ色の固体がろ過によって得られた(収量:0.15g、63%)。もしくは、ニトロキソリン(0.5g、2.63mmol)を、25mL 36% HCl水溶液中で還流した。透明な溶液が形成され、冷却した。ろ過により、黄色の固体(収量:0.33 g、55%)を得た。mp: 236-240℃;及び
1H-NMR (300 MHz、DMSO-d6)δ:9.20 (d、1H)、9.03-9.05 (dd、1H)、8.55-8.58 (d、1H)、7.91-7.95 (m、1H)、7.25-7.28 (d、1H)。
【0104】
実施例2:ニトロキソリンHBr塩(APL−1074)の作製方法
4mL THFのニトロキソリン(0.2g、1.05mmol)の溶液に対して、1.5eq. 40% HBr水溶液をゆっくりと添加した。ろ過により、黄色の固体を得た(収量:0.17g、60%)。もしくは、ニトロキソリン(0.5g、2.63mmol)を、25mL40% HBr水溶液中で還流した。透明な溶液が形成され、冷却した。ろ過により、黄色の固体(収量:0.43g、60%)を得た。mp: 274-276℃;及び
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.24-9.28 (dd、1H)、9.05-9.07 (dd、1H)、8.56-8.59 (d、1H)、7.95-7.99 (m、1H)、7.24-7.27 (d、1H)。
【0105】
実施例3:ニトロキソリンHNO3塩 (APL−1075)の作製方法
4mL THFのニトロキソリン(0.2g、1.05mmol)の溶液に対して、2.0eq. 60% HNO
3水溶液をゆっくりと添加した。ろ過により、暗黄色の固体を得た(収量:0.21g、79%)。mp: >290℃;及び
1H-NMR(300 MHz、DMSO-d6)δ:9.20-9.23 (dd、1H)、9.03-9.05 (dd、1H)、8.55-8.58 (d、1H)、7.91-7.96 (m、1H)、7.21-7.24 (d、1H)。
【0106】
実施例4:ニトロキソリンPhSO3H塩(APL−1076)の作製方法
4mL THFのニトロキソリン(0.2g、1.05mmol)の溶液に対して、1.5eq.のベンゼンスルホン酸をゆっくりと添加した。ろ過により、薄黄色の固体を得た(収量:0.24g、65%)。mp:238-241℃;及び
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6)δ:9.24-9.27 (dd、1H)、9.05-9.06 (dd、1H)、8.56-8.59 (d、1H)、7.95-7.99 (m、1H)、7.58-7.63 (m、2H)、7.32-7.36 (m、3H)、7.23-7.26 (d、1H)。
【0107】
実施例5:ニトロキソリンナトリウム塩(APL−1072)の作製方法
4mL EtOHのニトロキソリン(0.2 g、1.05 mmol)の懸濁液に対して、1.5eq. の水酸化ナトリウムをゆっくりと添加した。ろ過により、オレンジ色の固体を得た(収量:0.15g、67%)。mp: >290℃;及び
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6)δ:9.43-9.46 (dd、1H)、8.53-8.55 (dd、1H)、8.39-8.42 (d、1H)、7.55-7.59 (m、1H)、6.22-6.26 (d、1H)。
【0108】
実施例6:ニトロキソリンカリウム塩(APL−1077)の作製方法
4mL THFのニトロキソリン(0.2g、1.05mmol)の溶液に対して、1.5eq.の水酸化カリウムを含む水1mLをゆっくりと添加した。ろ過により、オレンジ色の固体を得た(収量:0.20 g、83%)。mp: >290℃;及び
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.43-9.46 (dd、1H)、8.51-8.53 (dd、1H)、8.33-8.36 (d、1H)、7.48-7.52 (m、1H)、6.11-6.14 (d、1H)。
【0109】
実施例7:ニトロキソリンアンモニウム塩(APL−1073)の作製方法
4mL THFのニトロキソリン(0.2g、1.05mmol)の溶液に対して、1.4eq. の水酸化アンモニウムをゆっくりと添加した。ろ過により、オレンジ色の固体を得た(収量:0.17g、78%)。mp: 188-192℃;及び
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.40-9.43 (dd、1H)、8.56-8.57 (dd、1H)、8.37-8.40 (d、1H)、7.52-7.57 (m、1H)、6.21-6.25 (d、1H)。
【0110】
実施例8:ニトロキソリンコリン塩(APL−1078)の作製方法
ニトロキソリン(25g、131.6mmol)とコリン(50%の水溶液、36.5g、150.7 mmol)を含むイソプロピルアルコール(IPA)(350 mL)の懸濁液を1時間還流し、透明な溶液を得た。真空状態で溶媒を除去した後、IPA(110 mL)を付加した。懸濁液を60℃まで加熱し、透明な溶液を得た。室温まで冷却後、ろ過により、黄色の固体(29g)を得た(収率:75.6%)。mp:110-113℃;
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.45-9.42 (dd、J=8.7 Hz、1.62 Hz、1H)、8.51-8.50 (dd、J=4.00 Hz、1.55 Hz、1H)、8.35-8.32 (d、J=9.93 Hz、1H)、7.50-7.46 (m、1H)、6.12-6.09 (d、J=9.90 Hz、1H)、5.34-5.31 (t、J=4.55 Hz、1H)、3.84 (m、2H)、3.41-3.38 (t、J=5.25 Hz、2H)、3.10 (s、9H)(
図1);LC/MS(M-1):189(
図2);DSC:112.50℃(
図3);ならびに粉末X線回折(pXRD)2θ及びピーク強度値を
図4に示す。
【0111】
実施例9:ニトロキソリンジエチルアミン塩(APL−1079)の作製方法
4mL THFのニトロキソリン(0.2g、1.05mmol)溶液に対して、1.8eq.のジエチルアミンをゆっくりと添加した。ろ過により、黄色の固体を得た(収量:0.20g、72%)。mp: 160-168℃;及び
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.41-9.44 (dd、1H)、8.57-8.59 (dd、1H)、8.37-8.40 (d、1H)、7.53-7.57 (m、1H)、6.22-6.25 (d、1H)、2.92-2.99 (dd、4H)、1.13-1.18 (t、6H)。
【0112】
実施例10:ニトロキソリンエチレンジアミン塩(APL−1080)の作製方法
4mL THFのニトロキソリン(0.2g、1.05mmol)溶液に対して、1.9eq.のエチレンジアミンをゆっくりと添加した。ろ過により、黄色の固体を得た(収量:0.20g、77%)。mp: 204-206℃;及び
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.40-9.43 (dd、1H)、8.55-8.57 (dd、1H)、8.37-8.40 (d、1H)、7.52-7.56 (m、1H)、6.22-6.26 (d、1H)、2.84 (s、4H)。
【0113】
実施例11:ニトロキソリンピペラジン塩(APL−1081)の作製方法
4mL THFのニトロキソリン(0.2g、1.05mmol)溶液に対して、1.5eq.のピペラジンをゆっくりと添加した。ろ過により、黄色の固体を得た(収量:0.25g、86%)。mp: 206-210℃;及び
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.41-9.44 (dd、1H)、8.58-8.59 (d、1H)、8.36-8.40 (d、1H)、7.53-7.57 (m、1H)、6.23-6.26 (d、1H)、2.91(s、8H)。
【0114】
実施例12:ニトロキソリンL-アルギニン塩(APL−1082)の作製方法
ニトロキソリン(0.2g、1.05mmol)及び1.0eq. L-アルギニンを含む4mL IPAの溶液を終夜還流した。室温まで冷却した後、ろ過により、黄色の固体を得た(収量:0.33g、78%)。mp: 198-200℃;及び
1H-NMR (300MHz、MeOD-d4)δ:9.46-9.49 (dd、1H)、8.71-8.72 (dd、1H)、8.58-8.61 (d、1H)、7.61-7.70 (m、1H)、6.67-6.70 (d、1H)、3.52-3.56(t、1H)、3.22-3.25 (t、2H), 1.81-1.89 (m、2H), 1.67-1.77 (m、2H)。
【0115】
実施例13:CH3CN内でのニトロキソリンコリン塩の結晶化
CH
3CN (100mL)のニトロキソリン水酸化コリン塩(3.5g)の懸濁液を50-60℃まで加熱し、透明な溶液を得た。これを室温まで冷却した後、ろ過により、薄黄色の固体である結晶(2.5g)を得た(収率:71.4%)。mp:110-113℃;及び
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.46-9.42 (dd、J=8.70 Hz、1.53 Hz、1H)、8.51-8.50 (dd、J=3.99 Hz、1.41 Hz、1H)、8.35-8.32 (d、J=8.33 Hz、1H)、7.50-7.46 (m、1H)、6.12-6.09 (d、J=9.90 Hz、1H)、5.33-5.30 (t、J=4.68 Hz、1H)、3.84 (m、2H)、3.41-3.38 (t、J=5.22 Hz、2H), 3.10 (s、9H) (
図5);LC/MS (M-1):189(
図6);DSC:113.31℃(
図7);ならびに粉末X線回折(pXRD)2θ及びピーク強度値を
図8に示す。
【0116】
実施例14:ニトロキソリン1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン塩(APL-1088)の作製方法
THF (20 mL)のニトロキソリン(1.0g、5.26mmol)溶液に対して、1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン(1.09g、9.46mmol)を室温で添加した。この混合液を室温で終夜撹拌し、得られた懸濁液を濾過し、黄色の固体を得た(収量:0.8g、50%)。mp: 102-104℃;
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.34 (d、1H)、8.69 (d、1H)、8.40-8.43 (d、1H)、7.61-7.65 (m、1H)、6.47-6.50 (d、1H)、3.59-3.63 (m、2H), 2.97-3.03 (m、6H), 1.77-1.84 (m、4H);及びLC/MS (M-1):189.46。
【0117】
実施例14:ニトロキソリン1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン塩(APL-1088)の作製方法
THF (20 mL)のニトロキソリン(1.0g、5.26mmol)溶液に対して、1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン(1.09g、9.46mmol)を室温で添加した。この混合液を室温で終夜撹拌し、得られた懸濁液を濾過し、黄色の固体を得た(収量:0.8g、50%)。mp: 102-104℃;
1H-NMR (300 MHz、DMSO-d6)δ:9.34 (d、1H)、8.69 (d、1H)、8.40-8.43 (d、1H)、7.61-7.65 (m、1H)、6.47-6.50 (d、1H)、3.59-3.63 (m、2H), 2.97-3.03 (m、6H), 1.77-1.84 (m、4H);及びLC/MS (M-1):189.46。
【0118】
実施例15:ニトロキソリン2-(ジエチルアミノ)エタノール塩(APL−1089)の作製方法
THF (20mL)のニトロキソリン(1.0g、5.26mmol)溶液に対して、2-(ジエチルアミノ)エタノール(1.1g、9.46mmol)を室温で添加した。この混合液を室温で終夜撹拌し、得られた懸濁液を濾過し、黄色の固体を得た(収量:0.7g、43%)。mp:76-78℃;
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.32 (d、1H)、8.70-8.72 (d、1H)、8.41-8.44 (d、1H)、7.62-7.66 (m、1H)、6.50-6.53(d、1H)、3.59-3.62 (m、2H), 2.87-2.95 (m、6H), 1.07-1.18 (m、6H);及びLC/MS (M-1):189.38。
【0119】
実施例16:ニトロキソリン4-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン塩(APL−1090)の作製方法
THF(20mL)のニトロキソリン(1.0g、5.26mmol)溶液に対して、4-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン(0.99g、7.54mmol)を室温で添加した。この混合液を室温で終夜撹拌し、0℃に冷却後、得られた懸濁液を濾過し、黄色の固体を得た(収量:0.8g、47%)。mp:124-128℃;
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.18 (d、1H)、8.95-8.96 (d、1H)、8.51-8.54 (d、1H)、7.81-7.86 (m、1H)、7.04-7.07(d、1H)、3.50-3.60 (m、6H)、2.45-2.50 (m、2H);及びLC/MS (M-1):189.44。
【0120】
実施例17:ニトロキソリン(N,N-ジメチルエタノールアミン)塩(APL−1091)の作製方法
【0121】
THF (20mL)のニトロキソリン(1.0g、5.26mmol)溶液に対して、N,N-ジメチルエタノールアミン(0.84g、9.46mmol)を室温で添加した。この混合液を室温で終夜撹拌し、得られた懸濁液を濾過し、黄色の固体を得た(収量:0.8g、55%)。mp:120-124℃;
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.31(d、1H)、8.73(d、1H)、8.42-8.45(d、1H)、7.64-7.68(m、1H)、6.55-6.58 (d、1H)、3.58-3.62(t、2H), 2.79-2.83(t、2H);及びLC/MS (M-1):189.38。
【0122】
実施例18:ニトロキソリンリジン塩(APL−1092)の作製方法
イソプロパノール(20mL)のニトロキソリン(1.0g、5.26mmol)溶液に対して、リジン(1.15g、7.87mmol)を室温で添加した。この混合液を加熱還流し、終夜撹拌した。この溶液を室温まで冷却し、得られた懸濁液を濾過して黄色の固体を得た(収量:1.2g、68%)。mp:188-190℃;
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.42 (d、1H)、8.56(d、1H)、8.35-8.38(d、1H)、7.51-7.53(m、1H)、6.17-6.20(d、1H)、3.17-3.20(m、2H), 2.76-2.80(t、2H);1.40-1.66(m、6H);及びLC/MS (M-1):189.41。
【0123】
実施例19:ニトロキソリントロメタミン塩(APL−1093)の作製方法
イソプロパノール(20mL)のニトロキソリン(1.0g、5.26mmol)溶液に対して、トロメタミン(0.95g、7.87mmol)を室温で添加した。この混合液を加熱還流し、1時間撹拌した。この溶液を室温まで冷却し、得られた懸濁液を濾過して黄色の固体を得た(収量:1.0g、61%)。mp:154-158℃;
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.40-9.43(m、1H)、8.57-8.58(m、1H)、8.35-8.38(m、1H)、7.52-7.56(m、1H)、6.22-6.26(d、1H)、5.10(m、3H)、3.63 (m、6H;及びLC/MS (M-1):189.40。
【0124】
実施例20:ニトロキソリンN-メチルグルカミン塩(APL−1116)の作製方法
THF(20mL)のニトロキソリン(3.0g、15.8mmol)溶液に対して、N-メチルグルカミン(5.54g、28.4mmol)を室温で添加した。この混合液を70℃まで加熱し、数時間撹拌した。この溶液を室温まで冷却し、得られた懸濁液を濾過して黄色の固体を得た(収量:4.5g、74%)。mp:173-176℃;
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.40 (m、1H)、8.58(dd、J=1.5 Hz、J=3.9 Hz、1H)、8.37 (d、J=9.9 Hz、1H)、7.54 (dd、J=3.9 Hz、J=9.0 Hz、1H)、6.24 (d、J=9.6 Hz、1H)、3.70-3.35 (m、4H)、3.10-2.85 (m、2H)、2.54 (s、3H);及びLC/MS (M-1):189.47。
【0125】
実施例21:ニトロキソリンエタノールアミン塩(APL−1117)の作製方法
THF(20mL)のニトロキソリン(3.0g、15.8mmol)溶液に対して、エタノールアミン(1.45g、23.7mmol)を室温で添加した。この混合液を70℃まで加熱し、数時間撹拌した。この溶液を室温まで冷却し、得られた懸濁液を濾過して黄色の固体を得た(収量:3.4g、76%)。mp:178-180℃;
1H-NMR (300MHz、DMSO-d6)δ:9.43 (dd、J=2.5 Hz、J=8.9 Hz、1H)、8.57(dd、J=2.5 Hz、J=4.2 Hz、1H)、8.39 (d、J=9.9 Hz、1H)、7.55 (dd、J=4.2 Hz、J=8.9 Hz、1H)、6.23 (d、J=9.9 Hz、1H)、3.60 (t、J=5.6 Hz、2H)、2.19(t、J=5.6 Hz、2H);及びLC/MS (M-1):189.43。
【0126】
実施例22:ニトロキソリンジオールアミン塩(APL−1118)の作製方法
THF(20mL)のニトロキソリン(3.0g、15.8mmol)溶液に対して、ジオールアミン(2.49g、23.7 mmol)を室温で添加した。この混合液を70℃まで加熱し、数時間撹拌した。この溶液を室温まで冷却し、得られた懸濁液を濾過して黄色の固体を得た(収量:3.39g、62%)。mp: 142-144℃;
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6)δ:9.41 (dd、J=1.5 Hz、J=8.7 Hz、1H)、8.61(dd、J=1.5 Hz、J=3.9 Hz、1H)、8.40 (d、 J=9.6 Hz、1H)、7.58 (dd、J=3.9 Hz、J=8.7 Hz、1H)、6.31 (d、J=9.6 Hz、1H)、3.64 (t、J=5.7 Hz、2H)、3.00 (t、J=5.7 Hz、2H);及びLC/MS (M-1):189.51。
【0127】
実施例23:ニトロキソリン及びニトロキソリン塩の溶解度試験
ニトロキソリン及びニトロキソリン塩の溶解度を以下のように測定した。その結果が表2にまとめられている。
1)以下に示すように、pHを変えた水性緩衝液を調製した:
i. 水:蒸留水;
ii. pH = 1.2 緩衝液: 7.65mL 36.5%のHCl溶液を水で希釈して1000mLとした;
iii. pH = 4.5 緩衝液:18gの酢酸ナトリウムと9.8mLの酢酸を水で希釈し、1000mLとした;
iv. pH = 5.0 緩衝液:pHが5.0に調節されるまで、0.2mol/Lリン酸一ナトリウム(NaH
2PO
4)液に水酸化ナトリウムを添加した;
v. pH = 6.0 緩衝液:18gの酢酸ナトリウムを20mLの酢酸(1M)に添加し、混合液を水で希釈し、500mLとした;
vi. pH = 6.8 緩衝液:250mLの0.2M リン酸一カリウム(KH
2PO
4)液を118mLの0.2M水酸化ナトリウム溶液に添加し、混合液を水で希釈して1000mLとした;
vii. pH = 7.4 緩衝液:1.36gのリン酸一カリウム(KH
2PO
4)を79mLの0.1M水酸化ナトリウム溶液に添加し、混合液を水で希釈して200mLとした;及び
viii. pH = 8.0 緩衝液:5.59gの重リン酸カリウム(K
2HPO
4)と0.41gのリン酸一カリウム(KH
2PO
4)を1000mLの水に添加し、混合した。
【0128】
2)溶解度試験が以下のように実施された。
温度25±2℃で、各塩の試料を10mg秤量し、100mL容量のボトルに添加した。0.25mLの緩衝液をボトルに入れ、5分おきに30秒間激しく振動させた。30分間で試料の溶解を観察した。試料が完全に溶解したら、その溶解度について、「>30mg/mL」と記録した。
試料が完全に溶解しなかった場合、同じ緩衝液を0.7mL添加し、同様の振動工程により溶解を観察した。試料が完全に溶解したら、その溶解度について「10<<30mg/mL」と記録した。
試料が完全に溶解しなかった場合、同じ緩衝液を8.5mL添加し、同様の振動工程で溶解を観察した。試料が完全に溶解したら、溶解度について「1<<10 mg/mL」と記録した。
試料が、それでも完全に溶解しなかった場合、同じ緩衝液を85mL添加し、同様の振動工程で溶解を観察した。試料が完全に溶解したら、溶解度について「0.1<<1mg/mL」と記録した。
試料が完全に溶解しなかった場合、溶解度について「<0.1mg/mL」と記録した。
【0129】
APL−1078(ニトロキソリンコリン塩)の溶解度試験
10 mgのAPL−1078は、0.25mLの水とpH=8.0の緩衝液に完全に溶解したので、溶解度について>30mg/mLと記録した。第二の試験では、50mgのAPL−1078を100mLの定量ボトルに入れて、0.45mLの水又はpH=8.0の緩衝液を個別に添加した。APL−1078は完全に溶解し、これは、両溶媒において溶解度が>100 mg/mLとなったことを示す。第三の試験では、50mgのAPL−1078を100mL容量のボトルに入れ、0.045mLの水又はpH=8.0の緩衝液を個別に添加した。APL−1078は完全に溶解し、これは、三種類全ての溶媒において溶解度が>1000mg/mLであったことを示す。
【0130】
【表2】
【0131】
表2に示す実験結果は、ニトロキソリン(化合物APL−1202)が、試験された全pH値、すなわちpH1.2-8で、溶解度が低いことを示している(<0.1mg/mL)。化合物APL−1071(塩酸塩)、APL−1074(臭化水素塩)、APL−1075(硝酸塩)及びAPL−1076(PhSO
3H塩)などのニトロキソリンの酸付加塩もまた、試験された全pH値での溶解度は低かった(<0.1mg/ml、ただし、pH 1.2で1-10 mg/mLの溶解度を示したAPL−1074及びAPL−1076は除く)。対照的に、塩基付加塩、特にニトロキソリンを金属水酸化物により処理したもの、例えば化合物APL−1072(ナトリウム塩)及びAPL−1077(カリウム塩)など、あるいはニトロキソリンをアミンにより処理したもの、例えばAPL−1078(コリン塩)、APL−1079(ジエチルアミン塩)、APL−1081(ピペラジン塩)及びAPL−1082(L-アルギニン)などは、生理学的に適切なpHすなわち4.5-8で、顕著に改善された溶解度を有する。
【0132】
従って、ある特定のニトロキソリン塩の溶解度は必ずしも予想可能ではないことを勘案すると、ニトロキソリンの塩基付加塩が生理学的pHの水媒体中で改善された溶解度を有することは本発明の驚くべき発見である。
【0133】
実施例24 ビーグル犬におけるニトロキソリン及びニトロキソリン塩の生体内尿排泄の測定
体重が10-13kgの3匹の雄のビーグル犬に対し、一晩絶食させた後に75mgのニトロキソリンを含むタブレットを経口投与した。0-2、2-4、4-6、6-8、8-24の時間帯で尿試料を収集した。尿試料はCTC自動回収装置、ABAPI4000質量分析計及びACQUITY UPLC BEH C18(2.1*50mm)を伴うアジレント社製1100 HPLCシステムを利用したLC/MS/MS方法で分析した。デキサメタゾンを内部標準として使用した。ニトロキソリンのピークを、目標とするm/z=190.9及び144.7のフラグメントによりモニタした。線形性の範囲は、25-5000ng/mLとした。様々な時間帯における尿試料中に観察されたニトロキソリンの量について表3にまとめる。
【0134】
【表3】
【0135】
同じ実験をAPL−1092、ニトロキソリンリジン塩についても繰り返した。犬には、それぞれモル換算で75mgのニトロキソリンと等量の133mgのAPL−1092のタブレットが投与された。様々な時間帯での尿試料内のニトロキソリン量を表4にまとめる。
【0136】
【表4】
【0137】
実施例25:マウスのニトロキソリン及びニトロキソリン塩の生体内尿排泄の測定
体重が15-20gの範囲の6匹の雄のCD−1ICRマウスそれぞれに対して、終夜絶食後、41.8mg/Kgのニトロキソリンを経口投与した。0-2、2-6、6-24時の各時間帯に尿試料を収集した。マウスの尿は少量なので、ケージ内収集システムは収集時間ごとに水で洗浄された。尿試料及び洗浄試料が、ビーグル犬の実験(実施例24)と同じ方法で分析された。様々な時間帯でのマウスの尿試料から観察されたニトロキソリン量について表5にまとめる。
【0138】
【表5】
【0139】
同じ実験をAPL−1092、ニトロキソリンリジン塩についても繰り返した。それぞれのマウスには、モル換算で41.8 mg/Kgのニトロキソリンと等量の77.7mg/kgのAPL−1092が投与された。様々な時間帯での尿試料及び洗浄試料に含まれていたニトロキソリン量について表6にまとめられている。
【0140】
【表6】
【0141】
さらに驚くべきことに、例24と25の実験結果により、本発明に係るニトロキソリン塩基付加塩、特にニトロキソリンリジン塩が、ニトロキソリン自体の場合と比較して、尿による生体排泄量が増えていることが示されている。表5及び6に示される結果がまとめられている表7が示すように、モル換算でニトロキソリンと等量でニトロキソリンリジン塩を投与した後、ニトロキソリンリジン塩は、ビーグル犬での尿中排出量がニトロキソリンの場合と比較して5倍を超える増加を示した。マウスの場合も、ニトロキソリンリジン塩は尿中排出量の増加を示したが、その増加はニトロキソリンの約2倍を超える程度であった。
【0142】
【表7】
【0143】
参考文献
1. Shim JS, Matsui Y, Bhat S, Nacev BA, Xu J, Bhang HE, Dhara S, Han KC, Chong CR, Pomper MG, So A, Liu JO. Effect of nitroxoline on angiogenesis and growth of human bladder cancer. J Natl Cancer Inst. 2010; 102(24):1855-73. Erratum in: J Natl Cancer Inst. 2011; 103(13):1070.
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6. Gao GY, Lin SY Thermodynamic Investigations of Nitroxoline Sublimation by Simultaneous DSC-FTIR Method and Isothermal TG Analysis J. Pharm. Sciences 2009: 1-7.
【0144】
当業者は、上述した態様の広い発明概念から逸脱せずに上記の態様に変化を加えることができることを理解するであろう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の精神又は範囲内での改変を包含する意図であることが理解される。