(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前後に一対の脚部を備えた本体フレームと、前記本体フレームに傾動可能に支持された背面フレーム及び座面フレームと、前記背面フレームの傾動を付勢するスプリング機構とを備えた介護用椅子であって、
前記本体フレームの下部と前記背面フレームの下部とを連結する一対の連結フレームの一方の端部と、前記本体フレームとを回動可能に連結する第1の回動支点と、
前記スプリング機構の駆動杆の先端部と中間部において連結し、前記一対の連結フレーム間を連結する横桿を介して、前記連結フレームの他方の端部と、前記背面フレームの下部と、前記スプリング機構の駆動杆の先端部とを回動可能に連結する第2の回動支点と、
前記第2の回動支点に連結する前記背面フレームと、前記座面フレームとを回動可能に連結する第3の回動支点と、
一方の端部が、前記座面フレームの前後方向の中心点よりも前輪側であって座乗者の膝よりも後側に固着され、他方の端部が、前記座面フレームの高さよりも低い本体フレームの前輪側に取付けられる取付け金物の前記他方の端部を回動可能に連結する第4の回動支点とを備えたことを特徴とする介護用椅子。
【背景技術】
【0002】
近年の我が国の高齢化の進行に伴い、介護用椅子の利用者が急速に増加している。介護用椅子には、多様な機能が要求される。そのニーズに応えるため種々の工夫がなされ、毎年多数の特許出願が提出されている。
【0003】
介護用椅子に最も普遍的に要求される機能は、背凭れを傾斜させるリクライニング機能と、座乗者が椅子とベッドの間を容易に移乗できるようにする機能である。一般に車椅子その他の椅子類のリクライニング機能には、座面を傾斜させず、背凭れのみを傾斜させるリクライニング方式と、座面と背凭れの間の角度を維持したまま、背凭れを傾斜させるティルト方式がある。
【0004】
リクライニング方式では、リクライニング操作時に座乗者の臀部が前方に滑ってしまう危険性が有り、座乗者の背中と背凭れの表面がずれる「背ずれ」を起こしやすく、着衣のまくれが生じるという問題がある。一方、ティルト方式では、背凭れを傾斜させた時に、脚を曲げた状態になるため、膝や腰への負担が大きくなり、かつ椅子が後ろに倒れやすくなる。また、フル・リクライニングが難しいという問題がある。
【0005】
そのため、リクライニング時に、背凭れと座面の開き角を大きくするのに併せて、背ずれを防止するため、座面の後方を下方に沈み込ませる機能が必要となる。従来から、リクライニング時の背ずれを防止するための手段は、種々提案されている(例えば特許文献1、2、3など)。
【0006】
その中でも特許文献1には、「背部と座部を一体に回動する機能と、座部に対する背部の傾斜角度を可変にする機能とを併せ持った車椅子」が開示されている。 しかしこの方式では、2つの独立した機能のそれぞれを実現する機構と駆動手段(アクチュエータ)が別々に必要となり、車椅子下部の構造が複雑になってコスト高になるとともに、車椅子の重量が大きくなって好ましくない。
【0007】
そこでリクライニング時に、背凭れと座面の開き角を大きくする動作と座面の後方を下方に沈み込ませる動作を、機械的リンク機構で連動させて、1個のアクチュエータでリクライニングを可能にする手段が望まれている。かかるリンク機構を用いた例として、特許文献3の「座位変換可能な椅子装置」があげられる。
【0008】
この椅子装置の構造の詳細は省略するが、特許文献3のリンク機構では、座面の後方を下方に沈み込ませるストロークを大きく取ることができない。そのため、リクライニングの傾斜角を大きくすると、臀部が前方に滑って背ずれを起こすという問題を完全に解決するのは難しいと考えられる。そこで、特許文献3の椅子装置では、背面と座面の相対的傾斜角度を変更可能なリクライニング位置と、この傾斜角度を所定角度に固定するティルト位置とを選択的に切り換える手段が設けられている。
【0009】
特許文献4は車椅子のリクライニングに追従して車椅子側部を開放できるリクライニング可能な車椅子の手摺りが開示されている。ここで特許文献4が開示するリクライニング機構は、リンクフレーム7の下端部が車体フレーム2に枢結されており(第1枢結点)、背凭れフレーム6と腰受フレーム5とが枢結されており(第3枢結点)、車体フレーム2に腰受フレーム5が揺動自在に枢着している(第4枢結点)。そしてリンクフレーム7と背凭れフレーム6とが枢結されている(第2枢結点)。ここで、第4枢結点は腰受フレーム5の前から後方向の中心点よりも後において車体フレーム2と揺動自在に枢着されている。このため、背凭れフレーム6を後方に倒すと、特許文献4の
図3、
図6に見られるように、第4枢結点を中心にして前方が大きく持ち上がるように傾斜し、後方はほとんど沈み込まない。このため車椅子座乗者の背中と背凭れの表面とがずれる「背ずれ」が生じ、車椅子が不安定(重心が高くなり転倒し易くなる)となり、利用者は車椅子から転落する不安を感じる。引用文献4において、後輪が前輪に比較し数倍大きくなっているのは、重心高による車椅子の転倒を防止するためである
【0010】
次に、被介護者がベッドと椅子間を容易に移乗するために必要となるのは、椅子の側面をベッドの側面に密着させて横付けする機能と、移乗時に肘掛が邪魔にならないように、いずれか一方の肘掛を除去又は移動させる機能である。引用文献4には車椅子側部を開放できる手摺りが開示されている。しかし、引用文献4が開示する肘掛けは4節構造のため完全な平行四辺形の構造となり、肘掛け面と座面とは常に平行でなければならない。このため背凭れを後方に下げたとき腕の重さの一部を肩で受けなければならない。また、特許文献4の
図7に見られるように肘掛けが背凭れから大きくはみ出し、はみ出した部分が介護者の邪魔になるという問題がある。
【0011】
特許文献5には、車椅子の主車輪の後方に一対の回動可能なキャスターの後輪を配設し、介添え者がペダルを踏んで.主車輪を浮上させ、車椅子の横方向への移動を可能にした介護用椅子が開示されている。しかし、座乗者が自力で走行する必要が無い場合には、主車輪を設ける必要はなく、4輪全てを回動可能なキャスターで構成した介護用の車椅子又はベッドは、すでに広く使用されている。
【0012】
移乗時に車椅子の肘掛を移動させる手段の例として、特許文献6には、「肘掛け押下げ型車椅子のアームレスト」が開示されている。このアームレスト(肘掛け)は、その後端が背面フレームの支軸に回動可能に軸着され、その下面全長に亘って所定幅の切欠き溝が形成された肘掛けパイプと、この切欠き溝に沿ってパイプ内を前後に摺動可能な駒状のスライド部材と、その一方の端部がスライド部材の下端に回動可能に軸着され、他方の端部が本体フレームの所定の位置に回動可能に軸着された連結部材とから構成されている。連結部材を下方に押し下げることによって、肘掛けパイプの前方が下方に折れ曲がるという構造のものである。しかしこのアームレストは、それ自体の構造がかなり特異なものに限定される上に、肘掛けパイプの後方は背面フレームに軸着されたままなので、肘掛けパイプ全体を移動させる構造になっていないという問題がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、実施例の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施例である介護用椅子の、背凭れが正立した状態での外観を示す斜視図である。
図2はこの椅子のリクライニングした状態の斜視図である。なお、以下に説明する椅子は脚部にキャスターが取付けてある。このため、以下の説明においては本発明の一実施の形態である介護用椅子を車椅子と称する。
【0024】
図に見られるように、この車椅子は、その脚部1aに前輪2、後輪3が装着された本体フレーム1、背面フレーム4、座面フレーム5、肘掛けフレーム6、肘掛け支持フレーム7、ヘッドレストフレーム8、フットレストフレーム9、ガススプリング10、サイドガード11、ロック解除レバー12等から構成されている。なお、本明細書において前とは、座乗者の正面方向であり、後とは座乗者の背面方向をいう。
【0025】
このうち、ヘッドレストフレーム8は、リクライニング時に座乗者の頭部を支持するもので、背面フレーム4の上部に伸縮可能に取り付けられている。フットレストフレーム9は、座乗時及びリクライニング時に脚部を支持するもので、本体フレーム1の前端上部に、傾動可能に取り付けられている。
【0026】
また、サイドガード11は、座席下部の駆動部の保護と事故防止のためのもので、本体フレーム1の両側面に取り付けられたカバーからなる。これらのヘッドレストフレーム8、フットレストフレーム9、サイドガード11等は、従来の車椅子に多用されているものと同様なので、詳細は省略する。
【0027】
座面フレーム5には、座面パッド13が装着され、背面フレーム4には背凭れパッド(図示していない)が装着されている。背面フレーム4は、その中央部にフレーム構成材を配設せずに所定の強度を保持できるよう構成している。これは脊柱が屈曲している(円背の強い)被介護者の脊柱屈曲部が、フレーム構成材と当接することで生じる背痛緩和のためである。また、本実施例の車椅子では、径の大きい主車輪は使用されておらず、後輪も前輪と同様のキャスターで構成されている。これは、座乗者が自力で走行することを予定しておらず、介添者の手押しで移動することを前提にしているためである。
【0028】
本実施例では、前輪2、後輪3はともに、本体フレーム1の脚部に回動可能に取り付けられたキャスターからなっている。このように構成することによって、以下のメリットがある。すなわち、前後輪ともに任意の方向に駆動できるので、狭い場所で、車椅子の側面をベッドの側面に容易に密接させることができることと、主車輪がないため、被介護者の車椅子へ乗降及びベッドへの移乗が容易になるということである。
【0029】
ロックレバー12は、リクライニングの際に、ガススプリング10のピストンの動作をロックするためのもので、詳細は後述する。
本実施例では、本体フレーム1は、脚部フレーム1aと上部フレーム1bとが接合された構造なっているが、このように構成する必要はなく、両者一体に作製されていて差し支えない。以下、両者一体とみなして本体フレーム1と言う。
【0030】
本発明の特徴的な構成の第一は、リクライニングの支持機構である。以下、これについて説明する。
図3は、本実施例の車椅子の骨組みのみを示した側面図で、
図3(a)は正立の状態、
図3(b)はリクライニングの状態を示す。
【0031】
これらの図に見られるように、帯板状の連結フレーム14の下端が、本体フレーム1の下部に設けられた第1の回動支点15で、回動可能に支持され、連結フレーム14の上端には第2の回動支点16が設けられている。第2の回動支点16では、連結フレーム14に背面フレーム4の下部とガススプリング10のピストンロッド37の先端部が横桿45を介して回動可能に連結されている(
図7、5参照)。
【0032】
ピストンロッド37の外周にはコイルバネ47が外嵌されている。背面フレーム4を後方に下げるときにはピストンロッド37はガス室32を押し込むが、ガス室32による内圧で
背面フレーム4の前方への傾動が付勢される。また、背面フレーム4を前方に戻すときにはピストンロッド37に外嵌されているコイルバネ47の反発力により
背面フレーム4の前方への傾動が助勢される。これにより誰でも背凭れを容易にリクライニングさせることができる。
【0033】
背面フレーム4の第2の回動支点16から上方の所定位置に、第3の回動支点17が設けられ、ここで、座面フレーム5の後端が、背面フレーム4と回動可能に連結されている。また、座面フレーム5の前端の取付け金物19に第4の回動支点18が設けられ、座面フレーム5は本体フレーム1の上に回動可能に支持されている。
【0034】
本明細書で回動支点、及び後述のヒンジ支点とは、二つの部材の連結点であって、いずれか一方の部材に支軸となる円柱状の凸起が形成され、他方の部材に貫通孔又は挿入孔が形成され、両者が回動可能に嵌合されているものを言い、どちらの部材に支軸が設けられていても差し支えない。
【0035】
上述した第1の回動支点15と第4の回動支点18は、本体フレーム1に固定された固定支点であり、第2の回動支点16と第3の回動支点17は、固定されていない可動支点である。ただし、第2の回動支点16に横桿45(
図8参照)を介して連結されたガススプリング10のピストン37には、その前後動を拘束するロック機構が内蔵されており、このロック機構が作動している時は、第2の回動支点は、前後及び上下方向の動きが拘束され、準固定支点となる。そして、このロック機構が解除された時に、第2の回動支点16は上下・前後に自由に動きうる可動支点となる。
【0036】
上述した背面フレーム4は第2の回動支点16と第3の回動支点17で支持され、ガススプリング10のピストンロッド37がロックされている時は、背面フレーム4の下端の上下動、したがって背面フレーム4の傾動は制限され、上記のロック機構が解除された時に始めて、背面フレーム4が自由に傾動するようになる。
【0037】
一方、座面フレーム5は、第3の回動支点17で背面フレーム4と回動可能に支持されているから、背面フレーム4が傾斜した時に両者の開き角θが大きくなり、かつ、第3の回動支点17が下方に降下した時に座面フレーム5の後端も下方に降下する。しかし、座面フレーム5の前端が第4の回動支点18で固定されているから、座面の後部のみが下方に沈み込むようになる。
【0038】
このように、4個の回動支点で本体フレーム1、背面フレーム4、座面フレーム5及びガススプリング10のピストンロッド37を連結することにより、リクライニングに連動して、背面と座面の開き角を大きくする動作と、座面の後方を沈み込ませる動作が同時に行われるようにしていることが、本発明の特徴である。
【0039】
さらに、本発明では、背面フレーム4は、連結フレーム14を介して本体フレーム1に連結されている。これにより、リクライニングの際に、第2の回動支点16が前方に移動するとともに、下方に降下する。そのため、背面フレーム4の下端が下方に下がり、これに伴って第3の回動支点17も下方に下がる。したがって、座面フレーム5の後端の下方への沈み込みのストロークが大きくなるという効果が得られる。
【0040】
これに対して、背面フレーム4の下部を本体フレーム1に直接(回動可能に)取り付けた場合には、リクライニングの際に、背面フレーム4が下方に下がることはない。このように、連結フレーム14を用いて背面フレームを本体に連結することにより、リクライニングの際の座面後端の沈み込みストロークを大きくしたことが本発明の特徴の一つである。
【0041】
また、本発明の他の特徴は、第4の回動支点18を本体フレーム1の前輪側の先端部に設け、回動支点18と座面フレーム5の先端部とを取付け金物19により連結しているところにある。
【0042】
図4から
図6は、本実施例の車椅子のリクライニングの構造を骨組みのみで示した図である。第4の回動支点18の違いにより臀部部分の沈み込む深さ、膝部分の跳ね上がり高さ大きく異なる。
図4(a)は背面フレーム4がほぼ直立した状態であり、第4の回動支点18を座面フレームの前後方向の中心点よりも後側に設けたものである。
【0043】
図4(b)は第4の回動支点18を座面フレームの前後方向の中心点よりも前側に設けたものである。また、
図4(b)は座面フレーム5と第4の回動支点18との接続を取付け金物19で接続している。
【0044】
図5は背面フレーム5をやや後方に下げたときの座面フレーム5の臀部部分の沈み込む深さ、膝部分の跳ね上がり高さの違いを示した図である。
図5(a)と
図5(b)とを比較すると、
図5(b)(第4の回動支点18が座面の先端側にある)方が、臀部部分の沈み込みが大きく、膝部分の跳ね上がり高さが小さい。
【0045】
図6は背面フレーム4をフル・リクライニングしたときの座面フレーム5の臀部部分の沈み込む深さ、膝部分の跳ね上がり高さの違いを示した図である。第4の回動支点18を座面フレームの前後方向の中心点よりも後側に設けると、
図6(a)に示すように臀部部分の沈み込みに対し、膝部分が大きく跳ね上がる。これに対して、第4の回動支点18を座面フレームの前後方向の中心点よりも前側に設けると、
図6(b)に示すように臀部部分の沈み込みに比べ、膝部分の跳ね上がりは少ない。さらに、
図6(b)に示すように第4の回動支点18と座面とを取付け金物18で接続することにより、取付け金物18の長さと回転角に応じた距離だけ臀部部分が後ろ側にずれ、座乗者は心地よい安心感を得ることができる。
【0046】
即ち、第4の回動支点18が、座面フレーム5の前後方向の中心点よりも後ろにあると、臀部の下がるより膝の跳ね上がりが大きくなり、車椅子が不安定となりる。このため座乗者は背ずれや、椅子の転倒に対する不安を感じる。これに対して、第4の回動支点18が、座面フレーム5の前後方向の中心点よりも前にあり、第4の回動支点18と座面フレーム5とを一定の長さを有する取付け金物で連結すると、臀部が適度に下がり、臀部の沈み込みに対し膝の跳ね上がりが少なくなる。この結果、座乗者はリクライニング時に心地よい安心感を十二分に感じることができる。
【0047】
このように第4の回動支点18は出来る限り前側に設置することが好ましいが、膝よりも前に第4の回動支点18を設けると、背面フレーム4を後方に下げたときに臀部の下がりに伴い、膝も下がってしまうためリラックス効果が得難くなる。また、座面フレーム5より高い位置に第4の回動支点18を設けると、背面フレーム4を下げたときに下がりながら前方向に動くため心地よさ、リラックス効果は得難い。即ち、第4の回動支点18は、座面フレーム5の前後方向の中心点よりも可能な限り前側であって、座乗者の膝よりも後側で、かつ座面フレーム5より低い位置に設けることが好ましい。
【0048】
本実施例の車椅子において、リクライニングの傾動状態を安定に保つためには、ガススプリング10のロック機構が必要不可欠である。以下このロック機構について、やや詳しく説明する。
図7は、本実施例で用いたガススプリングのロック機構の説明図で、
図7(a)は側面図、
図7(b)はシリンダー部の断面図である。
【0049】
図7(b)に見られるように、シリンダー30の内部には、流体圧で前後動するフリーピストン31により、奥のガス室32と手前のオイル室33に仕切られている。オイル室33の内部を前後に摺動するピストンヘッド34によって、オイル室33は、第1オイル室33aと第2オイル室33bに分けられている。
【0050】
ピストンヘッド34の内部にはオイルの流路35とこの流路を開閉する一方向弁36が設けられている。シリンダー30の中心にピストンヘッド34を駆動する円管状のピストンロッド37が配設され、さらに、このピストンロッド37の内側にプッシュロッド38が摺動可能に挿通されている。プッシュロッド38の奥側端部は、一方向弁36を開状態にする機能を有し、手前側先端部はロック解除ピン39になっている。第2オイル室33bの手前側端部付近にシール材40が配置されて、オイルの流出を防いでいる。ピストンロッド37の外周にはコイルバネ47が、その端部がシリンダー30の端部等に固着された状態で外嵌されている。コイルバネ47がピストンロッド37の伸縮にともない伸縮することで、背面フレーム4の
前方への傾動を助勢する。
【0051】
オイル室のオイルは非圧縮性流体なので、一方向弁36が閉の状態では、第1オイル室33aと第2オイル室33bの間のオイルの流動が無いため、ピストンヘッド34は前後動することができず、ピストンロッド37はロック状態になる。ロック解除ピン39を押し込むことにより、一方向弁36が開状態になり、オイルの流通が可能になって、ピストンロッド37が自由に前後動できるようになる。
【0052】
リクライニング時には、ピストンロッド37が押し込まれてガス室32の内圧があがる。この押し込み動作を停止すると、ガス室32の内圧により、一方向弁36が閉状態になり、ピストンロッド37はその位置でロック状態になる。
このロックを解除する手段について、
図8(a)を用いて説明する。シリンダー30の前方に、支軸41で回転可能に支持されたロック解除ブラケット42が配設されている。このロック解除ブラケット42をワイヤ43で引いて、時計回りに回転させることにより、ロック解除ピン39が押し込まれ、一方向弁36が開状態になる。
【0053】
ワイヤ43は保護管44内に挿通され、ロック解除レバー12に連結されている。本実施例では、このロック解除レバー12はサイドガード11の一方の側面下部に取り付けられ、車椅子の介添者の操作によりロックを解除できるように構成されている。
【0054】
本実施例の車椅子では、リクライニングの任意の角度で、ピストンロッド37をロックすることが可能で、介添者がロックを解除しない限り、リクライニングの傾斜角は一定に保たれる。なお、かかる機能を有するガススプリングは一般に市販されている。
【0055】
図8は、本実施例におけるガススプリングのピストンロッドの先端の取付け構造を示す斜視図である。
ガススプリングのシリンダー30の中央から、ピストンロッド37が突き出している。ピストンロッド37の先端に当接して、ロック解除ブランケット42が配設されている。このロック解除ブラケット42は、
図7(b)に見られるように、
ワイヤ43で牽引して、ロック解除ピン39を押し込み、ピストンロッド37のロックを解除するために設けられているものである。
【0056】
図8に見られるように、ロック解除ブラケット42の左右両側に、一対の横桿45が、ピストンロッド37と直交するように取り付けられている。左右の横桿45の先端は、円柱状の軸となっており、両側それぞれに、背面フレーム5の貫通孔及び連結フレーム14の貫通孔46が、この軸に回動可能に嵌合されて、第2の回動支点16を形成している。
【0057】
リクライニングの際に、第2の回動支点16が前後動すると、横桿45で連結されたロック解除ブラケットも前後動(支軸41の周りで回転運動)し、これに伴って
ピストンロッド37も前後動する。逆にピストンロッド37が前後動すれば、第2の回動支点16も前後動する。
【0058】
背面フレーム4の左右両側の縦フレームは、その上部が横フレームで拘束され、連動して傾斜するようになっているから、1個のピストンロッド37で、左右2つの回動支点16の動きを制御することができる。
すなわち、
図8のような構造にすることにより、ピストンロッド37の先端が横桿45を介して、左右の第2の回動支点16に回動可能に連結されたものと見ることができる。
【0059】
図9は背面フレーム4を戻す際に必要な操作力とコイルバネ47及びガススプリング10の反力との関係を示した図である。横軸が背面フレーム4の角度(リクライニング角度)であり、縦軸が後ろに下がった背面フレーム4を前に戻すのに必要な操作力である。コイルバネ47の反発力がないとフル・リクライニング状態から初期状態に戻すには約600Nの操作力が必要である。これに対してコイルバネ47の反発力を利用すると最大でも約180Nとなり、だれでも容易に背面フレーム4を初期状態に戻すことができる。
【0060】
本発明の特徴的な構成の第二は、肘掛けの支持機構である。以下、これについて説明する。
図10は、本実施例の車椅子における肘掛けの骨組みを示す側面図で、
図10(a)は正立の状態、
図10(b)はリクライニングの状態を示す。
この肘掛けは、肘掛けフレーム6と肘掛け支持フレーム7からなる。肘掛けフレーム6は、その後端(進行方向後ろ側の端部)を背面フレーム4に設けられた取付回動支点51(A)で回動可能に支持されている。また肘掛けフレーム6の前端は、肘掛け支持フレーム7の上端に設けられた連結回動支点52(B)で回動可能に支持されている。
【0061】
一方、肘掛け支持フレーム7はその長手方向中央付近又はその下方に設けられたヒンジ継手により折り曲げ可能に構成され、肘掛け支持フレーム7の下端は、座面フレーム5の前端付近に回動可能に支持されている。本実施例では、肘掛け支持フレーム7は、上部の長尺片54と下部の短尺片55に分割され、両者がヒンジ支点53(C)により折り曲げ可能に接続されている。
【0062】
短尺片55の下端は、座面フレーム5の前端付近の取付け金物19の下部に設けられた第4の回動支点18で回動可能に支持されている。肘掛け支持フレーム7を折り曲げる外力が作用していない場合、短尺片55は、水平に対し一定の角度を保って、ほとんど回転しないように保持され、長尺片54のみがヒンジ支点53(C)で回動して傾斜する。
【0063】
このような構成においては、背面フレーム4、座面クレーム5、肘掛けフレーム6及び肘掛け支持フレーム7の4片をアームとし、これら相互の回動支点(符号A.B,C,Dで示す)を節点とする四辺形のリンク機構が形成されることになる。
【0064】
本発明は、上記のリンク機構の4節点を頂点とする四辺形の各対向する二辺(片ABと片CD及び片ADと片BC)がほぼ同じ長さになるように構成することを特徴とする。これにより、平行四辺形の原理で、リクライニングの角度(片ABと片ADの開き角)がどのように変わっても、座面クレーム5と肘掛けフレーム6とが概ね平行になるという効果が得られる。すなわち、リクライニングの際に、座乗者が何ら操作を行なうことなく、肘掛けの傾斜を適正な状態に変更することができる。これが本発明の第二の要点である。
【0065】
本発明の特徴的な構成の第三は、車椅子利用者の乗降又は移乗時の邪魔にならないように、肘掛けの位置を変える肘掛けの移動機構に関するものである。この目的のために、本発明の車椅子では、肘掛けフレーム6及び肘掛け支持フレーム7をそれぞれ2分してヒンジ継手で折り曲げ可能に接合するとともに、両者の取付け点を回動可能にしている。以下この移動機構について説明する。
【0066】
図11は、本実施例におけるに肘掛けフレームの構造を示す斜視図で、
図11(a)は伸ばした状態、
図11(b)は折り曲げた状態を示す。肘掛けフレーム6は、本体アーム61と支持部材62からなっている。本体アーム61の長手方向中央付近にヒンジ支点63が設けられ、その後端にロックピン64とこれを挿通する貫通孔(図示していない)が設けられている。また、前端は肘掛け支持フレーム7に連結されている。
【0067】
また、支持部材62の一方の端部(後端)は、背面フレーム4に設けられた肘掛取付支点51により、回動可能に固定され、他方の端部(前端)はヒンジ支点63で、本体アーム61に回動可能に連結されている。
【0068】
通常の座乗時には、
図11(a)に示すように、ロックピン64は支持部材62の根元付近に設けられた挿入孔(図示していない)に嵌挿され、本体アーム61と支持部材62が平行になった状態で、肘掛けフレーム6全体が、所定の高さに保持される。
【0069】
乗降又は移乗時には、
図11(b)に示すように、ロックピン64を外して、支持部材62の前端側は肘掛取付け支点51を軸として下方に90°折り曲げられる。これにより、本体アーム61の後端は座面フレームの高さ付近まで、下降する。
【0070】
図12は、本実施例におけるに肘掛け支持フレームの構造を示す斜視図で、
図12(a)は伸ばした状態、
図12(b)は折り曲げた状態を示す。肘掛け支持フレーム7は、長尺片54と短尺片55とからなり、両者はヒンジ支点53で折り曲げ可能に接合されている。
【0071】
長尺片54の上端は、肘掛けフレーム6の本体アーム61の前端の連結回動支点52で、回動可能に支持され、短尺片55の下端は、本体フレーム1の上部の第4の回動支点で、回動可能に支持されている。
図12(b)に示すように、ヒンジ継手を折り曲げると、本体アーム61の前端が、本体フレーム1付近まで下降する。
【0072】
なお、本実施例の肘掛け支持フレームでは、長尺片54と短尺片55との間の開き角は、120°程度以上にならないように制限されているが、長尺片54と短尺片55が直線状(開き角180°)になるような構成であっても差し支えない。
【0073】
図13は、本実施例におけるに肘掛けの取付け状況を示す斜視図で、
図13(a)は肘掛けの移動前の状態、
図13(b)は移動後状態を示す。
図13(a)に示すように、肘掛けの移動前(通常の座乗)の状態では、本体アーム61の後端は、ロックピン64により、背面フレーム付近に固定され、支持部材62は前方に張り出した状態になっている。
【0074】
また、本体アーム61の前端は、ヒンジ継手53が引き延ばされて、直立した肘掛け支持フレーム7に支持されている。これにより、本体アーム61は、座乗者の肘辺りの所定の高さでほぼ水平に保持されている。
【0075】
図13(b)に示すように、肘掛けの移動後(乗降時又は移乗時)の状態では、ロックピン64が引き抜かれ、支持部材62の前端が下方に垂れ下がり、本体アーム61の後端が下方に降下する。肘掛け支持フレーム7が、ヒンジ継手53により折り曲げられて、本体アーム61の前端も、座面フレーム5の付近まで降下し、この位置でほぼ水平に保持される。
【0076】
すなわち、ロックピン64を引き抜いて、本体アーム61を軽く押すだけで、肘掛けを乗降の邪魔に全くならない位置に移動することが可能になる。逆に、肘掛けを戻す時には、本体アーム61を軽く持ち上げて、ロックピン64を差し込めば、本体アーム61は元に位置に固定される。
【0077】
なお、本実施例では、本体アームのロック機構に、ロックピンとこれに対応する貫通孔及び挿入孔を用いているが、ロック機構をこの方法に限定する必要は無い。また、ロックピンの挿入孔を支持部材62の根元付近に設けているが、これが背面フレーム4の側面に設けられていてもよい。
【0078】
すでに述べたように、本発明のリクライニングの支持機構、肘掛けの支持機構、肘掛けの移動機構は、車椅子のみならず、各種用途のリクライニングチェアに広く適用し得るものである。
【課題】リクライニングに連動して、背面と座面の開き角を増大させかつ座面後方を沈み込ませる動作が行われ、座乗者が背ずれを起こさず、楽な姿勢を維持できるリンク機構を有する車椅子を提供する。
【解決手段】座面フレーム5の後端を背面フレーム4に回動可能に連結するとともに、背面フレームの下端を連結フレーム14を介して、上下動可能に本体フレーム1で支持し、背面フレームと連結フレームの第2の回動支点16に、ピストンの前後動をロックする機構を有するガススプリング10のピストン先端を連結して、このロック機構で背面フレーム下端を固定支持できるように構成する。